(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】音電気変換装置
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20230703BHJP
H04R 1/04 20060101ALI20230703BHJP
H04R 1/06 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
H04R3/00 320
H04R1/04 B
H04R1/06 320
(21)【出願番号】P 2019113442
(22)【出願日】2019-06-19
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】入井 広一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 みか
(72)【発明者】
【氏名】宮内 コスモ
(72)【発明者】
【氏名】秋野 裕
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06681020(US,B1)
【文献】特開平07-058811(JP,A)
【文献】米国特許第06292560(US,B1)
【文献】米国特許第06751316(US,B1)
【文献】特開2020-141361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00- 3/14
H04R 1/04- 1/06
H04M 1/02- 1/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音を電気信号に変換する音電気変換装置であって、
前記電気信号を処理する端末における第1接点と接触可能な第1接続点、及び前記第1接点よりも低電位の第2接点と接触可能な第2接続点を有する接続部と、
外部から入力された音を電気信号に変換する音電気変換部と、
前記電気信号が前記端末に出力される非ミュート状態と、前記電気信号が前記端末に出力されないミュート状態とを切り替える切替スイッチと、
前記切替スイッチと前記接続部との間に設けられており、前記接続部が前記端末に接続されてから所定の時間が経過するまでの間、前記第1接点と前記第2接点との間に電流を流し、前記所定の時間が経過した後に、前記第1接点と前記第2接点との間に流れる電流を減少させる電流制御回路と、
を有
し、
前記電流制御回路は、
前記端末から供給される電流に基づく電荷を蓄積するコンデンサと、
前記コンデンサに電荷が蓄積されるまでの間に前記第1接続点と前記第2接続点との間を導通状態にし、前記所定の時間が経過した後に前記第1接続点と前記第2接続点との間を非導通状態にする電子スイッチと、
を有し、
前記電子スイッチが電界効果トランジスタであり、
前記コンデンサは、前記第1接続点と前記電界効果トランジスタのゲート端子との間に設けられており、
前記電界効果トランジスタのドレイン端子が前記第1接続点と電気的に接続されており、
前記電界効果トランジスタのソース端子が前記第2接続点と電気的に接続されている、
音電気変換装置。
【請求項2】
前記電流制御回路は、前記切替スイッチ及び前記第1接続点と前記電界効果トランジスタのドレイン端子との間に設けられた抵抗をさらに有する、
請求項
1に記載の音電気変換装置。
【請求項3】
前記音電気変換装置は、前記第1接続点における電圧を検出する電圧検出回路を有する前記端末に接続されるように構成されている、
請求項1又は2に記載の音電気変換装置。
【請求項4】
音を電気信号に変換する音電気変換装置であって、
前記電気信号を処理する端末における第1接点と接触可能な第1接続点、及び前記第1接点よりも低電位の第2接点と接触可能な第2接続点を有する接続部と、
外部から入力された音を電気信号に変換する音電気変換部と、
前記電気信号が前記端末に出力される非ミュート状態と、前記電気信号が前記端末に出力されないミュート状態とを切り替える切替スイッチと、
前記切替スイッチと前記接続部との間に設けられており、前記接続部が前記端末に接続されてから所定の時間が経過するまでの間、前記第1接点と前記第2接点との間に電流を流し、前記所定の時間が経過した後に、前記第1接点と前記第2接点との間に流れる電流を減少させる電流制御回路と、
を有
し、
前記端末は、前記第1接点における電圧を検出する電圧検出回路を有しており、前記電圧検出回路が検出した電圧が閾値以上である場合に前記端末に前記音電気変換装置が接続されていないと判定し、前記電圧検出回路が検出した電圧が前記閾値未満である場合に前記音電気変換装置が接続されていると判定するように構成されており、前記閾値は、前記端末に前記音電気変換装置が接続されてから前記所定の時間内に前記電圧検出回路が検出する電圧として想定される最大値以下に設定されている、
音電気変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音を電気信号に変換する音電気変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロホンからの音声出力をミュート状態にするためのスイッチが設けられたヘッドセットが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクロホンやヘッドセット等の音電気変換装置を接続可能な端末は、音電気変換装置が接続されたことを検知する接続検知機能を備えている。この接続検知機能は、音電気変換装置のプラグが接続されたときに音電気変換装置に電流が流れることによる電圧の変化を検出することにより、音電気変換装置の接続を検知する。ところが、従来の回路構成では、ミュート状態の音電気変換装置が端末に接続された場合には電流が流れず、端末は、接続検知機能によってマイクロホンが接続されたことを検知できない。そのため、マイクロホンやヘッドセットが端末に接続されても、端末がこれらを認識しないという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、ミュート状態の音電気変換装置が端末に接続された場合であっても、音電気変換装置が接続されたことを端末が検出できるようにする音電気変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の音電気変換装置は、音を電気信号に変換する音電気変換装置であって、前記電気信号を処理する端末における第1接点と接触可能な第1接続点、及び前記第1接点よりも低電位の第2接点と接触可能な第2接続点を有する接続部と、外部から入力された音を電気信号に変換する音電気変換部と、前記電気信号が前記端末に出力される非ミュート状態と、前記電気信号が前記端末に出力されないミュート状態とを切り替える切替スイッチと、前記切替スイッチと前記接続部との間に設けられており、前記接続部が前記端末に接続されてから所定の時間が経過するまでの間、前記第1接点と前記第2接点との間に電流を流し、前記所定の時間が経過した後に、前記第1接点と前記第2接点との間に流れる電流を減少させる電流制御回路と、を有する。
【0007】
前記電流制御回路は、前記端末から供給される電流に基づく電荷を蓄積するコンデンサと、前記コンデンサに電荷が蓄積されるまでの間に前記第1接続点と前記第2接続点との間を導通状態にし、前記所定の時間が経過した後に前記第1接続点と前記第2接続点との間を非導通状態にする電子スイッチと、を有してもよい。
【0008】
前記電子スイッチが電界効果トランジスタであり、前記コンデンサは、前記第1接続点と前記電界効果トランジスタのゲート端子との間に設けられており、前記電界効果トランジスタのドレイン端子が前記第1接続点と電気的に接続されており、前記電界効果トランジスタのソース端子が前記第2接続点と電気的に接続されていてもよい。前記電流制御回路は、前記切替スイッチ及び前記第1接続点と前記電界効果トランジスタのドレイン端子との間に設けられた抵抗をさらに有してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ミュート状態の音電気変換装置が端末に接続された場合であっても、音電気変換装置が接続されたことを端末が検出できるようにするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る音電気変換装置の構成を示す図である。
【
図2】音電気変換装置及び端末の構成を示す図である。
【
図3】音電気変換装置が端末に接続された場合の電圧の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[音電気変換装置1の概要]
図1は、実施形態に係る音電気変換装置1の構成を示す図である。音電気変換装置1は、音を電気信号に変換するデバイスであり、例えばマイクロホン装置である。音電気変換装置1は、ユーザの頭部に装着するためのヘッドセット等の他の装置であってもよい。音電気変換装置1は、端末2が生成した電気信号を音に変換するスピーカをさらに備えてもよい。
【0012】
端末2は、例えばゲーム機器、オーディオ機器、通信機器、スマートフォン又はコンピュータである。音電気変換装置1は端末2に着脱可能であり、端末2に接続されている状態で、変換した電気信号を端末2へ出力する。端末2は、音電気変換装置1から入力された電気信号を処理する。端末2は、例えば、入力された電気信号を音に変換したり、入力された電気信号を他の装置に転送したりする。
【0013】
[音電気変換装置1の構成]
図2は、音電気変換装置1及び端末2の構成を示す図である。音電気変換装置1は、音入力部10、切替スイッチ11、ケーブル12、接続部13及び電流制御回路14を備える。
【0014】
音入力部10は、外部から入力された音を電気信号に変換する音電気変換部であるマイクロホン101を有する。マイクロホン101は、例えばエレクトレットコンデンサマイクロホンである。
【0015】
切替スイッチ11は、音を変換した電気信号が端末2に出力される非ミュート状態と、音を変換した電気信号が端末2に出力されないミュート状態とを切り替える。切替スイッチ11は非ミュート状態では導通し、音電気変換装置1が端末2からの電力を受給できる。非ミュート状態では、マイクロホン101が生成した電気信号は、切替スイッチ11、ケーブル12及び接続部13を介して端末2に入力される。切替スイッチ11はミュート状態では非導通であり、端末2からの電力が音電気変換装置1へ供給されない。このため、ミュート状態では、マイクロホン101は外部の音を受けても電気信号への変換を行わない。
【0016】
ケーブル12は、音電気変換装置1と端末2とを接続する。ケーブル12は、マイクロホン101が音声を変換した電気信号を端末2に伝送する。
【0017】
接続部13は、例えばケーブル12の先端に設けられたコネクタプラグである。接続部13は、第1接続点131及び第2接続点132を有する。第1接続点131は端末2に設けられたコネクタジャックの第1接点Aと接触し、第2接続点132は第2接点Bと接触する。接続部13は、例えばプラグインパワー規格に適合しており、端末2から電力を受給する。第1接点Aは、例えば、端末2の電源(Vcc)に接続された金属端子である。第2接点Bは、例えば、端末2のグランドに接続された金属端子である。そのため、第1接点Aの電位は第2接点Bの電位よりも高い。
【0018】
電流制御回路14は、音電気変換装置1が端末2に接続されてから所定の時間が経過するまでの間に第1接点Aと第2接点Bとの間に電流を流すための回路である。電流制御回路14は、切替スイッチ11と接続部13との間に設けられている。電流制御回路14は、コンデンサ141、電子スイッチ142、抵抗143及び抵抗144を有する。
【0019】
コンデンサ141は、第1接続点131と、電子スイッチ142のゲート端子Gとの間に配置されている。コンデンサ141は、端末2から供給される電力に基づく電荷を蓄積する。
【0020】
電子スイッチ142は、例えば電界効果トランジスタである。電子スイッチ142のドレイン端子は、第1接続点131と電気的に接続されている。また、電子スイッチ142のソース端子は、第2接続点132と電気的に接続されている。コンデンサ141に電荷が蓄積されるまでの間、電子スイッチ142のゲート端子Gの電圧が上昇する。その結果、ゲート端子Gとソース端子Sとの電位差が大きくなり、電子スイッチ142のドレイン端子Dとソース端子Sとの間が導通状態になる。
【0021】
その後、コンデンサ141への充電が完了するとゲート端子Gの電圧が低下して、電子スイッチ142のドレイン端子Dとソース端子Sとの間が非導通状態になる。その結果、電子スイッチ142は、接続部13が端末2に接続されてから所定の時間が経過した後に、第1接点Aと第2接点Bとの間に流れる電流を減少させる。所定の時間はコンデンサ141の容量によって定まる時間である。
【0022】
電子スイッチ142のドレイン端子Dとソース端子Sとの間が非導通状態になると、電流制御回路14はハイインピーダンス状態になり、他の回路に影響を及ぼさなくなる。この状態で、第1接点Aと第2接点Bとの間には、マイクロホン101に入力された音に基づく電流が流れる。
【0023】
抵抗143は、第1接続点131及び切替スイッチ11と、電子スイッチ142のドレイン端子Dとの間に配置される。抵抗143は、電子スイッチ142のドレイン端子Dとソース端子Sとの間が導通した状態において第1接点Aと第2接点Bとの間が短絡することを防ぐ。抵抗144は、第2接続点132とコンデンサ141との間に設けられている。抵抗144は、音電気変換装置1が端末2に接続されてから所定の時間が経過するまでの間に流れる電流の大きさに応じて、ゲート端子Gの電位を上昇させる。その結果、コンデンサ141の充電量に応じてゲート端子Gの電位が変化する。
【0024】
[端末2の構成]
続いて、
図2を参照しながら、端末2の構成を説明する。端末2は、抵抗201、アンプ202、電圧検出回路203、音声処理回路204及び制御部205を備える。
【0025】
電圧検出回路203は、第1接点Aの電圧を検出する。電圧検出回路203は、検出した第1接点Aの電圧を制御部205に通知する。アンプ202は、マイクロホン101が音を変換した電気信号を増幅する。音声処理回路204は、例えば、アンプ202から入力された電気信号に基づく音をスピーカに出力する処理を実行したり、通信回線を介して送信する処理を実行したりする。
【0026】
制御部205は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、端末2の各部を制御する。制御部205は、電圧検出回路203が検出した電圧が閾値以上である場合に、端末2に音電気変換装置1が接続されていないと判定し、電圧検出回路203が検出した電圧が閾値未満である場合に、端末2に音電気変換装置1が接続されていると判定する。閾値は、端末2に音電気変換装置1が接続されてから所定の時間内の第1接点Aの電圧として想定される最大値以下に設定されている。制御部205は、例えば、電圧検出回路203が検出した第1接点Aの電圧に基づいて、端末2の内蔵のマイクロホン(不図示)をオン状態にするか否かを切り替える。
【0027】
[音電気変換装置1の接続による電圧変化]
図3は、音電気変換装置1が端末2に接続された場合の電圧の変化を示す図である。
図3におけるVccは、端末2の電源電圧である。
図3(a)は、電子スイッチ142のゲート端子Gとソース端子Sとの間の電圧を示す。
図3(b)は、電圧検出回路203が検出した第1接点Aの電圧を示す。
図3における時刻T1は、音電気変換装置1が端末2に接続された時刻を示す。
【0028】
図3(a)に示すように、電子スイッチ142のゲート端子Gとソース端子Sとの間の電圧は、時刻T1において端末2からの電力供給が開始されたことにより上昇する。その結果、ドレイン端子Dとソース端子Sとの間が導通することにより、第1接点Aと第2接点Bとの間に電流が流れる。電流が流入することによりコンデンサ141に電荷が蓄積するにつれて、コンデンサ141の端子間電圧が徐々に増加する。このため、ゲート端子G側に現れる電位は低くなり、ゲート端子Gとソース端子Sとの間の電圧は徐々に小さくなり、時刻T2において電子スイッチ142が非導通状態になる。
【0029】
図3(b)に示すように、第1接点Aの電圧は、時刻T1において音電気変換装置1が端末2に接続された時点でVccから下降し、時刻T2において電子スイッチ142が非導通状態になった後に上昇する。その後、電流制御回路14がハイインピーダンス状態になった時点で、第1接点Aの電圧はVccに達する。
【0030】
[変形例]
以上の説明においては電子スイッチ142が電界効果トランジスタである場合を例示したが、電子スイッチ142がNPNバイポーラトランジスタであってもよい。この場合、
図2における電界効果トランジスタのゲート端子、ソース端子及びドレイン端子が、NPNバイポーラトランジスタのベース端子、コレクタ端子及びエミッタ端子に対応する。
【0031】
また、以上の説明においては、電流制御回路14が電子スイッチ142により第1接点Aと第2接点Bとの間に流れる電流を制御する構成を例示したが、電流制御回路14の構成はこれに限らない。電流制御回路14が、例えばソフトウェアを実行することにより動作するプロセッサを有していてもよい。この場合、プロセッサが、端末2から電流が供給されることにより起動したプロセッサが第1接点Aと第2接点Bとの間に設けられた回路のインピーダンスを減少させることにより、第1接点Aと第2接点Bとの間に電流を流してもよい。プロセッサは、所定の時間が経過した後に第1接点Aと第2接点Bとの間に設けられた回路のインピーダンスを増加させて電流を遮断する。
【0032】
[音電気変換装置1による効果]
本実施形態に係る音電気変換装置1によれば、電流制御回路14は、接続部13が端末2に接続されてから所定の時間が経過するまでの間、第1接点Aと第2接点Bとの間に電流を流す。このため、端末2の制御部205は、電圧検出回路203が検出した電圧に基づいて、音電気変換装置1が接続されたか否かを判定することができる。また、電流制御回路14は、所定の時間が経過した後に第1接点Aと第2接点Bとの間に流れる電流を減少させ、ハイインピーダンス状態になる。このため、電流制御回路14は、マイクロホン101が生成した電気信号の特性に影響を及ぼさない。
【0033】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0034】
1 音電気変換装置
2 端末
10 音入力部
11 切替スイッチ
12 ケーブル
13 接続部
14 電流制御回路
101 マイクロホン
131 第1接続点
132 第2接続点
141 コンデンサ
142 電子スイッチ
143 抵抗
144 抵抗
201 抵抗
202 アンプ
203 電圧検出回路
204 音声処理回路
205 制御部