(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】米飯成形装置
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20230703BHJP
【FI】
A23L7/10 G
(21)【出願番号】P 2019122273
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】横井 淳
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-119362(JP,A)
【文献】特開2010-119361(JP,A)
【文献】特開2015-029465(JP,A)
【文献】特開2018-019626(JP,A)
【文献】特開2012-029617(JP,A)
【文献】特開2012-152150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米飯を成形することにより米飯成形物を作成する成形部と、
前記成形部の下方に配置されており、前記成形部が形成した後の米飯成形物を一時的に保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記米飯成形物を検出する検出部と、
前記成形部が前記米飯成形物を放出してから、
前記成形部が前記米飯成形物を放出してから前記検出部が前記米飯成形物を検出可能な位置まで落下するために要する時間よりも長い保持タイムアウト時間が経過するまでの間に前記検出部が前記米飯成形物を検出しない場合に、
前記保持部に前記米飯成形物を保持させるように前記米飯成形物の位置を補正するために前記保持部
が開いてから閉じる
ように前記保持部を制御する保持用開閉制御を実行する制御部と、
を有する米飯成形装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記成形部が前記米飯成形物を放出してから前記保持タイムアウト時間よりも長い検出タイムアウト時間が経過するまでの間に前記検出部が前記米飯成形物を検出した場合に、前記米飯成形物を前記保持部から解放するために前記保持部を開いた後に閉じる解放用開閉制御を実行する、
請求項1に記載の米飯成形装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記成形部が前記米飯成形物を放出した後、前記検出タイムアウト時間が経過するまでの間に前記保持用開閉制御を複数回実行する、
請求項2に記載の米飯成形装置。
【請求項4】
前記保持用開閉制御において前記保持部が開いてから閉じるまでの保持用開閉時間は、前記解放用開閉制御において前記保持部が開いてから閉じるまでの解放用開閉時間よりも短い、
請求項2又は3に記載の米飯成形装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記保持部が初期位置にある間に前記保持用開閉制御を実行し、前記保持部を前記初期位置から降下させた後に前記解放用開閉制御を実行する、
請求項2から4のいずれか一項に記載の米飯成形装置。
【請求項6】
前記成形部は、米飯を収容する凹部を有する複数の成形ローラを有し、
前記制御部は、前記検出部が前記米飯成形物を検出した場合に前記複数の成形ローラを逆転させることなく正転させ、前記成形部が前記米飯成形物を放出してから前記保持タイムアウト時間が経過するまでの間に前記検出部が前記米飯成形物を検出しない場合に前記複数の成形ローラを逆転させてから正転させる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の米飯成形装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記複数の成形ローラを逆転させると同時に、又は前記複数の成形ローラを逆転させた後に、前記保持用開閉制御を実行する、
請求項6に記載の米飯成形装置。
【請求項8】
前記成形ローラはn個(nは整数)の前記凹部を等間隔で有し、
前記制御部は、360度/n未満の回転角だけ前記複数の成形ローラを逆転させる、
請求項6又は7に記載の米飯成形装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記成形ローラを逆転させた後、前記米飯成形物が所定の位置に載置されるまでの間に、前記成形ローラの逆転を開始する前の位置に前記成形ローラを戻すように前記成形ローラを正転させる、
請求項6から8のいずれか一項に記載の米飯成形装置。
【請求項10】
前記保持用開閉制御において前記保持部が開いてから閉じるまでの保持用開閉時間は、前記米飯成形物が前記保持部の上端の位置から前記検出部が前記米飯成形物を検出する位置まで落下するために要する時間以下である、
請求項1から9のいずれか一項に記載の米飯成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米飯を成形するための米飯成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、寿司やおにぎりを作るために米飯を成形する装置が知られている。特許文献1に開示された米飯成形装置は、成形ローラにより成形した米飯成形物を保持部で一時的に保持した後に所定の位置に搬送し、保持部を開くことにより、米飯成形物をトレイに載置する。このような米飯成形装置は、米飯成形物を短時間で大量に自動で成形する場合に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の米飯成形装置においては、例えば、米飯の粘度又は米飯成形物の横幅の違いにより、成形ローラから放出された米飯成形物が保持部まで落下しない不具合がしばしば発生していた。この不具合は、米飯成形物が保持部の上端付近でとどまってしまうことに起因する。このように米飯成形物が保持部まで落下しない場合、米飯成形装置が米飯成形物をトレイに載置するという動作を実行できない。そのため、この不具合により、米飯成形装置は作業を途中で停止させ、米飯成形物の自動製造が妨げられていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、米飯成形装置において米飯成形物が保持部に保持されやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の米飯成形装置は、米飯を成形することにより米飯成形物を作成する成形部と、前記成形部の下方に配置されており、前記成形部が形成した後の米飯成形物を一時的に保持する保持部と、前記保持部に保持された前記米飯成形物を検出する検出部と、前記成形部が前記米飯成形物を放出してから保持タイムアウト時間が経過するまでの間に前記検出部が前記米飯成形物を検出しない場合に、前記保持部を開いてから閉じる保持用開閉制御を実行する制御部と、を有する。
【0007】
前記制御部は、前記成形部が前記米飯成形物を放出してから前記保持タイムアウト時間よりも長い検出タイムアウト時間が経過するまでの間に前記検出部が前記米飯成形物を検出した場合に、前記米飯成形物を前記保持部から解放するために前記保持部を開いた後に閉じる解放用開閉制御を実行してもよい。
【0008】
前記制御部は、前記成形部が前記米飯成形物を放出した後、前記検出タイムアウト時間が経過するまでの間に前記保持用開閉制御を複数回実行してもよい。
【0009】
前記保持用開閉制御において前記保持部が開いてから閉じるまでの保持用開閉時間は、前記解放用開閉制御において前記保持部が開いてから閉じるまでの解放用開閉時間よりも短い。
【0010】
前記制御部は、前記保持部が初期位置にある間に前記保持用開閉制御を実行し、前記保持部を前記初期位置から降下させた後に前記解放用開閉制御を実行してもよい。
【0011】
前記成形部は、米飯を収容する凹部を有する複数の成形ローラを有し、前記制御部は、前記検出部が前記米飯成形物を検出した場合に前記複数の成形ローラを逆転させることなく正転させ、前記成形部が前記米飯成形物を放出してから前記保持タイムアウト時間が経過するまでの間に前記検出部が前記米飯成形物を検出しない場合に前記複数の成形ローラを逆転させてから正転させてもよい。
【0012】
前記制御部は、前記複数の成形ローラを逆転させると同時に、又は前記複数の成形ローラを逆転させた後に、前記保持用開閉制御を実行してもよい。
【0013】
前記成形ローラはn個(nは整数)の前記凹部を等間隔で有し、前記制御部は、360度/n未満の回転角だけ前記複数の成形ローラを逆転させてもよい。
【0014】
前記制御部は、前記成形ローラを逆転させた後、前記米飯成形物が所定の位置に載置されるまでの間に、前記成形ローラの逆転を開始する前の位置に前記成形ローラを戻すように前記成形ローラを正転させてもよい。
【0015】
前記保持用開閉制御において前記保持部が開いてから閉じるまでの保持用開閉時間は、例えば、前記米飯成形物が前記保持部の上端の位置から前記検出部が前記米飯成形物を検出する位置まで落下するために要する時間以下である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、米飯成形装置において米飯成形物が保持部に落下し、作業停止を防止する効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】米飯成形装置の内部構成を模式的に示す図である。
【
図2】米飯成形部の基本動作を説明するための図である。
【
図3】米飯成形部の基本動作を説明するための図である。
【
図4】第1位置補正動作について説明するための図である。
【
図5】第2位置補正動作について説明するための図である。
【
図6】第2位置補正動作の流れを示すフローチャートである。
【
図7】第3位置補正動作について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[米飯成形装置Sの概要]
図1は、米飯成形装置Sの内部構成を模式的に示す図である。米飯成形装置Sは、にぎり寿司のシャリ玉又はおにぎり等の米飯成形物RBを製造するための装置である。米飯成形装置Sは、貯留部1と、撹拌部2と、圧縮部3と、米飯成形部4と、制御部5とを有する。米飯成形部4の下方には、製造された米飯成形物RBが載置されるトレイTが収容される。
【0019】
貯留部1は、内部に米飯が貯留される空間を有する。米飯成形装置Sのユーザは、貯留部1の上方の開口から、米飯成形物RBを製造するための米飯を入れる。貯留部1は貯留した米飯を撹拌部2に供給する。
撹拌部2は、貯留部1の下方に設けられている。撹拌部2は、貯留部1から供給される米飯を撹拌する機構を有する。撹拌部2は、撹拌した米飯を圧縮部3に供給する。
【0020】
圧縮部3は、撹拌部2から供給される米飯を圧縮する複数のローラ対を有する。圧縮部3は下方に向かうほど狭くなっており、米飯は下方に移動するにつれて圧縮される。圧縮部3は、圧縮後の米飯を米飯成形部4に供給する。米飯成形部4の詳細については後述する。
【0021】
制御部5は、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより米飯成形装置Sの各部を制御するプロセッサを有する。制御部5は、例えば、撹拌部2が有する機構を駆動するモータ、圧縮部3が有するローラ対を駆動するモータ、及び米飯成形部4が有する機構を駆動するモータ及びソレノイドを制御する。
【0022】
米飯成形装置Sは、形成された米飯成形物RBが米飯成形部4の内部に留まってしまい、トレイTに落下しないことがある。米飯成形装置Sは、米飯成形部4の内部の状態を検出しており、米飯成形物RBが落下しない状態で所定の検出タイムアウト時間(例えば5秒)が経過した場合には、米飯成形装置Sは米飯成形物RBの製造を停止する。
【0023】
[米飯成形部4の基本動作]
図2及び
図3は、米飯成形部4の基本動作を説明するための図である。米飯成形部4は、米飯成形装置Sにおいて米飯が収容されている貯留部1の下方に設けられている。米飯成形部4は、貯留部1から供給される米飯を圧縮して所定の形状の米飯成形物RBを形成し、米飯成形物RBをトレイTに載置する機能を有する。米飯成形部4は、一対の成形ローラ41(41R、41L)と、保持部42と、センサー43とを有する。
【0024】
成形ローラ41R及び成形ローラ41Lは、水平方向に並んで配置され、米飯成形物RBを作成するための成形部として機能する。成形ローラ41R及び成形ローラ41Lは、例えばモータにより駆動力が付与されることで、制御部5の制御に基づいて回転する。本明細書において、
図2の正面から見た場合に、成形ローラ41Rが時計回りに回転し、成形ローラ41Lが反時計回りに回転する動作を「正転」といい、成形ローラ41Rが反時計回りに回転し、成形ローラ41Lが時計回りに回転する動作を「逆転」という。
【0025】
成形ローラ41は、複数の凹部411と複数の凸部412とを有する。複数の凹部411は、米飯成形物RBを成形するための型として機能する。複数の凸部412のそれぞれは、隣接する2つの凹部411の間に形成されている。
図2に示す成形ローラ41は等間隔で配置された6つの凹部411を有するが、成形ローラ41が有する凹部411の個数は任意である。
【0026】
成形ローラ41R及び成形ローラ41Lが正転することにより、圧縮部3から供給される米飯が、成形ローラ41Rの1つの凹部411と成形ローラ41Lの1つの凹部411との間に入る。さらに成形ローラ41R及び成形ローラ41Lが正転することで、成形ローラ41R及び成形ローラ41Lは、凹部411の間に入った米飯を米飯成形物RBに成形する。成形ローラ41R及び成形ローラ41Lがさらに正転することにより、
図2(a)に示すように、米飯成形物RBが成形ローラ41R及び成形ローラ41Lから放出される。
【0027】
成形ローラ41R及び成形ローラ41Lから放出された米飯成形物RBは、落下し、保持部42に保持される。保持部42は、成形ローラ41の下方に配置されており、成形ローラ41が形成した後の米飯成形物RBを一時的に保持する。保持部42は制御部5の制御に基づいて水平方向及び鉛直方向に移動する。保持部42は、一時的に保持した米飯成形物RBをトレイTに載置するために、成形ローラ41に最も近い初期位置から米飯成形物RBを保持した状態で下降し、米飯成形物RBをトレイTに載置した後に上昇して初期位置に戻る。
【0028】
保持部42は、保持アーム421R、保持アーム421L、駆動部422R及び駆動部422Lを有する。保持アーム421R及び保持アーム421Lは板状の部材であり、制御部5の制御で作動する駆動部422R及び駆動部422Lにより開閉する。駆動部422R及び駆動部422Lは、例えばソレノイドを有する。
【0029】
図3(a)及び
図3(b)に示すように、開いた状態における保持アーム421Rと保持アーム421Lとの距離D2は、閉じた状態における保持アーム421Rと保持アーム421Lとの距離D1よりも大きい。保持アーム421R及び保持アーム421Lが閉じた状態においては、保持アーム421Rと保持アーム421Lとの間に米飯成形物RBが挟まる。一方、保持アーム421R及び保持アーム421Lが開いた状態においては、保持アーム421Rと保持アーム421Lとの間に米飯成形物RBが挟まらない。
【0030】
保持アーム421R及び保持アーム421Lの下方端の近傍における内側面には複数の突起(不図示)が形成されている。この複数の突起の摩擦力により、成形ローラ41R及び成形ローラ41Lから放出された米飯成形物RBは、
図2(b)に示すように、保持アーム421R及び保持アーム421Lの下方端付近に一時的に留まる。この複数の突起に代わり、複数の溝であっても良い。
【0031】
センサー43は、米飯成形物RBが保持部42に保持された米飯成形物RBを検出する検出部である。センサー43は、
図2(a)に示すように、保持アーム421R及び保持アーム421Lの後方における保持アーム421Rと保持アーム421Lとの間の位置に設けられている。
【0032】
センサー43は、米飯成形物RBの検出状態に応じて検出信号のレベルを変化させることにより、米飯成形物RBの検出状態を制御部5に通知する。
図2(a)に示すように保持アーム421Rと保持アーム421Lとの間に米飯成形物RBが挟まれていない状態において、センサー43は、米飯成形物RBの検出状態を示す検出信号を非検出状態に対応するレベルにする。
図2(b)に示すように保持アーム421Rと保持アーム421Lとの間に米飯成形物RBが挟まれた状態になると、センサー43は、検出信号を検出状態に対応するレベルにする。
【0033】
成形ローラ41が米飯成形物RBを解放してから予め定められた検出タイムアウト時間が経過するまでの間に、センサー43が米飯成形物RBを検出した場合に、制御部5は解放用開閉制御を実行する。解放用開閉制御は、米飯成形物RBを保持部42から解放するために、保持部42を開いた後に閉じるという制御である。具体的には、
図3(a)に示すように、まず制御部5は、センサー43から検出信号を受信すると保持部42を水平方向の所定の位置まで移動後、下降させる。保持部42は、保持アーム421Rと保持アーム421Lとの間に米飯成形物RBを挟んだ状態で、保持部42の先端がトレイTの近傍に位置するまで下降する。
【0034】
その後、制御部5は、
図3(b)に示すように保持部42を開かせ、米飯成形物RBをトレイTに載せた後、保持部42を上昇させる。保持部42が米飯成形物RBの上端よりも高い位置まで上昇した後に、制御部5が保持部42を閉じさせることにより、保持部42は
図2(a)の状態に戻る。
【0035】
成形ローラ41が米飯成形物RBを解放してから検出タイムアウト時間が経過してもセンサー43が米飯成形物RBを検出しない場合、制御部5は、米飯成形部4又は米飯成形物RBが異常な状態になっていると判定する。この場合、制御部5は米飯成形部4の動作を停止させて、異常な状態になったことをユーザに通知する。
【0036】
[位置補正動作]
続いて、米飯の粘度又は米飯成形物RBの横幅のばらつき等の要因により、米飯成形物RBが保持部42の上端付近で留まってしまった場合に、米飯成形物RBの位置を補正する動作について説明する。
【0037】
(第1位置補正動作)
図4は、第1位置補正動作について説明するための図である。第1補正動作は、保持部42が米飯成形物RBの位置を補正する動作である。第1補正動作は、成形ローラ41が米飯成形物RBを放出してから所定の保持タイムアウト時間が経過するまでにセンサー43が米飯成形物RBを検出しない場合に実行される。第1補正動作において、制御部5は、米飯成形物RBを保持部42に保持させるように米飯成形物RBの位置を補正するため、保持部42を開いてから閉じる保持用開閉制御を実行する
。保持タイムアウト時間は検出タイムアウト時間よりも短く、例えば2秒である。
【0038】
図4(a)は、保持アーム421R及び保持アーム421Lの上端に米飯成形物RBが留まっている状態を示している。この状態で米飯成形物RBが落下しないと、センサー43が米飯成形物RBを検出しないまま検出タイムアウト時間が経過してしまい、制御部5が成形ローラ41及び保持部42の動作を停止させてしまう。その結果、保持アーム421の上端に留まっている米飯成形物RBをユーザが取り除く処理をする必要が生じてしまうので、米飯成形物RBの自動製造に支障が生じる。
【0039】
この課題を解決するために、センサー43が米飯成形物RBを検出しない場合、
図4(b)に示すように、保持タイムアウト時間が経過後、制御部5は、保持アーム421Rと保持アーム421Lとの間隔を広げてから間隔を狭くする保持用開閉制御を実行する。保持アーム421R及び保持アーム421Lの上端に米飯成形物RBが乗った状態で保持アーム421Rと保持アーム421Lとの間が広がることにより、米飯成形物RBと保持アーム421R、421Lとの間の摩擦力が低下する。その結果、米飯成形物RBが保持アーム421Rと保持アーム421Lとの間に落下する。
【0040】
図4(b)に示すように、保持部42が初期位置にある状態において、米飯成形物RBがトレイTまで落下しないように、保持用開閉制御において保持部42が開いてから閉じるまでの保持用開閉時間は、解放用開閉制御において保持部42が開いてから閉じるまでの解放用開閉時間よりも短い。具体的には、保持用開閉時間は、米飯成形物RBが保持部42の上端の位置からセンサー43が米飯成形物RBを検出する位置まで落下するために要する時間以下である。例えば解放用開閉時間が例えば1秒であるのに対して、保持用開閉時間は、0.1秒である。
【0041】
図4(c)に示すように、制御部5が保持部42を開いてから短時間で保持部42を閉じることにより、センサー43が検出可能な位置で、米飯成形物RBが留まる。
図4(c)の状態は
図2(b)と同じ状態である。米飯成形物RBを検出したという通知をセンサー43から受けた制御部5は、保持部42を降下させて開放開閉制御を実行する。すなわち、
図4(b)及び
図4(c)に示すように、制御部5は、保持部42が初期位置にある間に保持用開閉制御を実行し、保持部42を初期位置から降下させた後に解放用開閉制御を実行する。制御部5がこのように動作することで、成形ローラ41が米飯成形物RBを放出してから検出タイムアウト時間が経過する前に、保持部42は米飯成形物RBをトレイTに載置する。
【0042】
制御部5は、成形ローラ41が米飯成形物RBを放出した後、検出タイムアウト時間が経過するまでの間に、保持用開閉制御を複数回実行してもよい。例えば、1回目の保持用開閉制御を行ってから所定の時間が経過するまでの間にセンサー43が米飯成形物RBを検出しない場合に、制御部5は、2回目の保持用開閉制御を実行する。所定の時間は、米飯成形物RBが保持部42の上端からセンサー43が検出可能な位置まで落下するために要する時間よりも長い。このように制御部5が複数回の保持用開閉制御を実行することにより、米飯成形物RBが保持部42に保持される確率はさらに向上する。
【0043】
(第2位置補正動作)
図5は、第2位置補正動作について説明するための図である。第2補正動作は、米飯成形物RBの位置を補正する動作である。第2補正動作は、制御部5が保持用開閉制御を実行するとともに成形ローラ41を逆転させる動作である。具体的には、成形ローラ41が米飯成形物RBを放出してから保持タイムアウト時間が経過するまでの間にセンサー43が米飯成形物RBを検出しない場合に、制御部5は複数の成形ローラ41を一時的に逆転させる。なお、センサー43が米飯成形物RBを検出した場合、制御部5は、複数の成形ローラ41を逆転させることなく正転させる。
【0044】
図5(a)に示すように、米飯成形物RBが保持部42の上端に留まっている場合、成形ローラ41が一時的に逆転することにより、凸部412は米飯成形物RBを動かす。その結果、米飯成形物RBが下方に向かって落下する。
【0045】
凸部412によって押された米飯成形物RBが保持部42に保持されやすくするために、
図5(b)及び
図5(c)に示すように、制御部5は、複数の成形ローラ41を逆転させると同時に、又は後に、保持用開閉制御を実行する。制御部5は、保持用開閉時間だけ保持部42を開く。保持用開閉時間は、例えば0.1秒である。
【0046】
制御部5は、成形ローラ41が逆転を開始した後、検出タイムアウト時間が経過するまでの間に、保持用開閉制御を複数回実行してもよい。制御部5は、例えば、1回目の保持用開閉制御をした後にセンサー43が米飯成形物RBを検出していない場合に、2回目の保持用開閉制御を実行する。制御部5がこのように動作することで、米飯成形物RBがセンサー43の検出位置まで落下する。すなわち、保持アーム421R及び保持アーム421Lの上端に留まっている米飯成形物RBが、1回目の保持用開閉制御により、保持アーム421Rと保持アーム421Lとの間に移動し、2回目の保持用開閉制御により、センサー43の検出位置まで落下する。
【0047】
制御部5は、検出タイムアウト時間が経過するまでの間に、成形ローラ41を複数回逆転させてもよい。この場合、制御部5は、成形ローラ41の1回目の逆転制御、保持部42の1回目の開閉制御、成形ローラ41の1回目の正転制御、成形ローラ41の2回目の逆転制御、保持部42の2回目の開閉制御、成形ローラ41の2回目の正転制御を順次実行する。
【0048】
制御部5が成形ローラ41を逆転させる際、制御部5は、例えば20度以上60度未満の回転角(例えば30度)だけ成形ローラ41を逆転させる。成形ローラ41がn個(nは整数)の凹部を等間隔で有する場合、制御部5は、360度/n未満の回転角だけ複数の成形ローラ41を逆転させる。制御部5がこのように動作することで、成形中の米飯(例えば
図5(a)のαの位置の米飯)が分解することを防ぎつつ、米飯成形物RBが保持部42に落下しやすくなる。
【0049】
制御部5は、成形ローラ41を逆転させた後、米飯成形物RBが所定の位置(例えばトレイT)に載置されるまでの間に、逆転する前の位置に戻すように成形ローラ41を正転させる。このような制御部5の制御は、成形ローラ41が逆転したことにより次の米飯成形物RBが形成されるタイミングが遅れてしまうことを防止する。
【0050】
図6は、第2位置補正動作の流れを示すフローチャートである。
図6に示すフローチャートは、成形ローラ41が米飯成形物RBを放出した時点から開始している(S10)。制御部5は、例えば成形ローラ41を正転させた角度が所定の値に達したことにより、成形ローラ41が米飯成形物RBを放出したと判定する。
【0051】
続いて、制御部5は、センサー43が米飯成形物RBを検出したか否かを判定する(S11)。制御部5は、センサー43が米飯成形物RBを検出したと判定した場合(S11においてYES)、保持部42を水平方向に移動した後に(S12)、トレイTの位置まで降下させ(S13)、解放用開閉制御を実行する(S14)。制御部5は、解放用開閉制御を実行した後にステップS11に処理を戻す。
【0052】
制御部5は、センサー43が米飯成形物RBを検出していないと判定した場合(S11においてNO)、第1タイムアウト時間T1(例えば2秒)が経過するまで待機する(S15)。第1タイムアウト時間T1が経過した場合(S15においてYES)、制御部5は成形ローラ41を逆転させるとともに(S16)、1回目の保持用開閉制御を実行する(S17)。その後、制御部5は、成形ローラ41を正転させることにより、逆転を開始させる前の状態に戻す(S18)。
【0053】
続いて、制御部5は、センサー43が米飯成形物RBを検出したか否かを判定する(S19)。制御部5は、センサー43が米飯成形物RBを検出したと判定した場合(S19においてYES)、ステップS13及びS14の処理を実行する。制御部5は、センサー43が米飯成形物RBを検出していないと判定した場合(S19においてNO)、第2タイムアウト時間T2(例えば2秒)が経過するまで待機する(S20)。第2タイムアウト時間T2が経過した場合(S20においてYES)、制御部5は、2回目の保持用開閉制御を実行する(S21)。制御部5は、2回目の保持用開閉制御を実行する前に成形ローラ41を逆転させ、2回目の保持用開閉制御を実行した後に成形ローラ41を正転させてもよい。
【0054】
続いて、制御部5は、センサー43が米飯成形物RBを検出したか否かを判定する(S22)。制御部5は、センサー43が米飯成形物RBを検出したと判定した場合(S22においてYES)、ステップS13及びS14の処理を実行する。制御部5は、センサー43が米飯成形物RBを検出していないと判定した場合(S22においてNO)、第3タイムアウト時間T3(例えば1秒)が経過するまで待機する(S23)。制御部5は、第3タイムアウト時間T3が経過した場合、成形ローラ41及び保持部42の動作を停止させる(S24)。なお、第1タイムアウト時間T1、第2タイムアウト時間T2及び第3タイムアウト時間T3の合計時間は、検出タイムアウト時間に相当する。
【0055】
(第3位置補正動作)
図7は、第3位置補正動作について説明するための図である。第3位置補正動作は、制御部5が米飯成形物RBの位置を補正する動作であり、成形ローラ41が米飯成形物RBを放出してから保持タイムアウト時間(例えば2秒)が経過するまでにセンサー43が米飯成形物RBを検出しない場合に発生する動作である。第3位置補正動作において、制御部5は成形ローラ41を逆転させることで、米飯成形物RBの位置を補正する。すなわち、第3位置補正動作において、制御部5は保持部42の保持用開閉制御を実行しない。
【0056】
図7(a)は、米飯成形物RBが保持アーム421R及び保持アーム421Lの上端で傾いた状態で留まっている様子を示している。制御部5が成形ローラ41を逆転させることにより、成形ローラ41Lの凸部412が米飯成形物RBに接触する。凸部412が米飯成形物RBを動かすことで、
図7(b)に示すように、米飯成形物RBは保持アーム421Rと保持アーム421Lとの間に入る。そして、
図7(c)に示すように、米飯成形物RBは、センサー43が米飯成形物RBを検出可能な位置まで落下する。
【0057】
ところで、所定の数の米飯成形物RBがトレイTに載置されると、トレイTの交換が必要になる。そこで、制御部5は、米飯成形物RBを製造する動作を一時的に停止させ、新たなトレイTが設置された後に米飯成形物RBの製造を再開する。制御部5が米飯成形物RBの製造を一時的に停止している間に、成形ローラ41に接触している米飯が自重で圧縮されてしまうと、次に製造される米飯成形物RBの密度が通常の密度と異なる状態になってしまう。
【0058】
そこで、所定の数の米飯成形物RBがトレイTに載置された後に、制御部5は、成形ローラ41に接触している米飯をほぐすことを目的として、成形ローラ41を逆転してもよい。すなわち、制御部5は、米飯成形物RBが保持部42の上端にない状態で、成形ローラ41を逆転させる。成形ローラ41に接触している米飯をほぐすことを目的として成形ローラ41を逆転させる場合、制御部5は、成形ローラ41を逆転させる角度を、米飯成形物RBを保持部42に保持させることを目的として成形ローラ41を逆転させる角度よりも大きくする。
【0059】
[本実施形態の米飯成形装置Sによる効果]
以上説明したように、本実施形態の米飯成形装置Sは、成形ローラ41が米飯成形物RBを放出してから保持タイムアウト時間が経過するまでの間にセンサー43が米飯成形物RBを検出しない場合に、保持部42を開いてから閉じる保持用開閉制御を実行する制御部5を有する。制御部5がこのように動作することで、保持部42の上端に留まっている米飯成形物RBが保持部42に落下しやすくなる。その結果、本実施形態の米飯成形装置Sは、米飯成形物RBが保持部42に保持されないことにより米飯成形装置Sの動作が停止してしまうことを防げるので、米飯成形物RBの製造効率が向上する。
【0060】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成できる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0061】
1 貯留部
2 撹拌部
3 圧縮部
4 米飯成形部
5 制御部
41 成形ローラ
42 保持部
43 センサー
411 凹部
412 凸部
421 保持アーム
422 駆動部
S 米飯成形装置