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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】静音化された巻尺
(51)【国際特許分類】
   G01B 3/1043 20200101AFI20230703BHJP
   G01B 3/1005 20200101ALI20230703BHJP
【FI】
G01B3/1043
G01B3/1005
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019137887
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2021021615
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000165882
【氏名又は名称】原度器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139044
【弁理士】
【氏名又は名称】笹野 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】原 照剛
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101358820(CN,A)
【文献】実開平04-034601(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第109458890(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01k 27/00
B65H 75/48
G01B 3/10-3/1094
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の歯体および1つ又は複数の歯止体から構成されたラチェット機構と、
上記歯体が設置され、測定テープが周囲に巻回されると共に、該測定テープの巻き取りばねが内装された回転ドラムと、
上記歯止体が設置され、引き出された上記測定テープの停止状態を解除するための測定テープ制動解除操作体と、
を備える巻尺であって
上記測定テープ制動解除操作体は、上記巻尺のケースの外部から操作可能に構成されており、第1の弾性手段によって該測定テープ制動解除操作体に備える上記歯止体が、上記回転ドラムに備える上記歯体の通過軌道の外方から通過軌道内に進入すると共に、ストッパ部材と干渉して上記通過軌道内に停止するように構成されている巻尺において、
上記測定テープ制動解除操作体と上記ストッパ部材との間に、第2の弾性手段が設けられていることを特徴とする静音化された巻尺。
【請求項2】
第2の弾性手段は、上記測定テープ制動解除操作体の歯止体が上記回転ドラムの歯体の通過軌道内に停止しているとき、第1の弾性手段の付勢力よりも弱い付勢力となっていることを特徴とする請求項1に記載の静音化された巻尺。
【請求項3】
上記ストッパ部材が上記巻尺のケースであり、該巻尺のケースの内壁と、上記測定テープ制動解除操作体の上記巻尺のケースの内部に位置している部位と、の間に、第2の弾性手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の静音化された巻尺。
【請求項4】
上記測定テープ制動解除操作体は、上記回転ドラムが支持される軸に、該軸方向に往復移動可能に装着されていることを特徴とする請求項1に記載の静音化された巻尺。
【請求項5】
上記1つ又は複数の歯体は、上記回転ドラムの内壁から上記回転ドラムの径方向内側ていることを特徴とする請求項1に記載の静音化された巻尺。
【請求項6】
上記測定テープ制動解除操作体の一部が操作ボタンとして上記巻尺のケースの内部から外方へ臨んでいる一方で、上記巻尺のケースの内部に位置する他の部位に鍔部が形成されており、上記歯止体は、該鍔部から外側方向に延設されていることを特徴とする請求項1に記載の静音化された巻尺。
【請求項7】
第1の弾性手段および第2の弾性手段が発条部材であり、第1の弾性手段のばね定数よりも第2の弾性手段のばね定数の方が小さいことを特徴とする請求項1に記載の静音化された巻尺。
【請求項8】
第2の弾性手段は、上記測定テープ制動解除操作体ないし上記ストッパ部材に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の静音化された巻尺。
【請求項9】
測定テープと、
上記測定テープの巻き取りばねが内装されている回転ドラムであって、該回転ドラムの周囲に上記測定テープが巻回されている、回転ドラムと、
上記回転ドラムが支持される軸に案内されて該軸方向に往復動することができるように、弾性体によって付勢された測定テープ制動解除操作体であって、該測定テープ制動解除操作体の一部が操作ボタンとして巻尺ケース内から外方へ臨んでいる一方で、上記巻尺ケース内に残る部分の周方向に沿って鍔部が形成されている、測定テープ制動解除操作体と、
1つ又は複数の歯体及び1つ又は複数の歯止体から構成されたラチェット機構と、
を備える巻尺であって、
上記1つ又は複数の歯体が、上記回転ドラムの内壁から上記回転ドラムの径方向内側へ延びている一方で、
上記1つ又は複数の歯止体は、上記鍔部から上記回転ドラムの径方向外側へ延びており、
上記弾性体に蓄積された弾性エネルギによって上記歯止体が上記回転ドラムの歯体の通過軌道の外方から通過軌道内まで動かされるときに上記測定テープ制動解除操作体が上記巻尺ケースの内壁面と干渉し得るように、上記測定テープ制動解除操作体ないし上記内壁面が所定の位置に配置されている、巻尺において、
上記鍔部と上記内壁面との間に発条部材が設けられており、
上記弾性体のばね定数よりも上記発条部材のばね定数の方が小さいことを特徴とする、静音化された巻尺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き出した測定テープがラチェット機構によって自動で停止するように構成された自動巻き取り式の巻尺に関し、詳しくは、測定テープの引き出し時に生じる騒音を低減できるようにした静音化された巻尺に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂製の測定テープを備える自動巻き取り式の巻尺は、衣服のポケットに嵩張ることなく入れておけるように、測定テープの幅が8mm前後で長さも2m以下の測定テープを備えた小型のケースに入るものが多く、さらに、引き出した測定テープが自動で停止するように使い勝手にも気が配られている巻尺が多い。
【0003】
そして、測定テープが非常に柔軟であることから、引き出した測定テープをしっかりと停止させておくことが可能な、歯体と歯止体とから構成されたラチェット機構を用いて自動停止構造が構成されている。ラチェット機構は、確立された自動停止機構であることから、安価に且つ嵩張ることなくケース内に設置することができるので、樹脂製の測定テープを備える自動巻き取り式の巻尺に用いられている。
【0004】
上述の樹脂製の測定テープを備えたラチェット機構による自動停止構造の巻尺の一実施例を図6および図7に示す。巻尺50は、ラチェット機構の歯体52が設けられて測定テープ54が巻回されると共に巻き取りばね56が内装された回転ドラム58(軸60に支持されている)と、斜面62および垂直面64が形成されたラチェット機構の歯止体66が設けられて引き出した測定テープ54を巻き取るときに操作されるコイルばね68によって付勢された制動解除操作体たる操作ボタン70と、から構成されている。
【0005】
そして、図6に示すように、測定テープ54が矢印J方向に引き出されて行くと回転ドラム58は矢印K方向に回転する。回転が進行すると、ラチェット機構により図7(a)および(b)に示すように、回転ドラム58の歯体52が操作ボタン70の歯止体66の斜面62に当接して歯止体66を通過している間は操作ボタン70の歯止体66を押し下げる。そして、回転ドラム58の歯体52が操作ボタン70の歯止体66を通過すると、図7(c)に示すように、歯止体66が復帰(操作ボタン70が復帰)する。
【0006】
これにより、操作ボタン70は、図7(a)に示した常態の位置である巻尺50のケース72から突出している位置(コイルばね68によって付勢されている位置)と、図7(b)に示したケース72の内方に引き込まれた位置(ラチェット機構部によって操作ボタン70がコイルばね68の付勢力に抗して矢印L方向に引き込まれた位置)と、を往復するように動く。なお、図7(c)は、回転ドラム58の歯体52が操作ボタン70の歯止体66を通過して操作ボタン70が復帰したところ(操作ボタン70がコイルばね68の付勢力によって矢印M方向に移動する)を示している。
【0007】
操作ボタン70が常態の位置に停止しているときは、操作ボタン70の基部に形成された鍔74がケース72の内壁面76に接触することで操作ボタン70の動きが止められている。このため、操作ボタン70が常態の位置に戻るとき(初期の位置に復帰:図7(b)から図7(c)に移行)は、コイルばね68の付勢力によって操作ボタン70の鍔74がケース72の内壁面76に向かって高速で移動し、鍔74の上面が内壁面76に強く衝突して停止する。この衝突により、測定テープ54が矢印J方向に引き出されている間中「ガーガー」と、非常に大きく耳障りな衝突音(騒音)が鳴り響くのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実用新案登録第2508122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、測定テープが引き出されているときに鳴り響く耳障りな衝突音(騒音)を低減することができる静音化された巻尺を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施例においては、1つ又は複数の歯体および1つ又は複数の歯止体から構成されたラチェット機構と、歯体が設置され、測定テープが周囲に巻回されると共に、測定テープの巻き取りばねが内装された回転ドラムと、歯止体が設置され、引き出された測定テープの停止状態を解除するための測定テープ制動解除操作体と、を備える巻尺であって、測定テープ制動解除操作体は、巻尺のケースの外部から操作可能に構成されており、第1の弾性手段によって測定テープ制動解除操作体に備える歯止体が、回転ドラムに備える歯体の通過軌道の外方から通過軌道内に進入すると共に、ストッパ部材と干渉して通過軌道内に停止するように構成されている巻尺であって、測定テープ制動解除操作体とストッパ部材との間に、第2の弾性手段が設けられている、静音化された巻尺を提供する。
【0011】
一実施例においては、第2の弾性手段は、測定テープ制動解除操作体の歯止体が回転ドラムの歯体の通過軌道内に停止しているとき、第1の弾性手段の付勢力よりも弱い付勢力となっている。
【0012】
一実施例においては、ストッパ部材が巻尺のケースであり、巻尺のケースの内壁と、測定テープ制動解除操作体の巻尺のケースの内部に位置している部位と、の間に、第2の弾性手段が設けられている。
【0013】
一実施例においては、測定テープ制動解除操作体は、回転ドラムが支持される軸に、軸方向に往復移動可能に装着されている。
【0014】
一実施例においては、1つ又は複数の歯体は、回転ドラムの内壁から回転ドラムの径方向内側ている。
【0015】
一実施例においては、測定テープ制動解除操作体一部が操作ボタンとして巻尺のケースの内部から外方へ臨んでいる一方で、巻尺のケースの内部に位置する(測定テープ制動解除操作体の)他の部位に鍔部が形成されており、歯止体は、該鍔部から外側方向に延設されている
【0016】
一実施例においては、第1の弾性手段および第2の弾性手段が発条部材であり、第1の弾性手段のばね定数よりも第2の弾性手段のばね定数の方が小さい。
【0017】
一実施例においては、第2の弾性手段が、測定テープ制動解除操作体ないしストッパ部材に、直接的にまたは間接的に設けられている。
【0018】
本発明の他の実施例においては、測定テープと、測定テープの巻き取りばねが内装されている回転ドラムであって、該回転ドラムの周囲に測定テープが巻回されている、回転ドラムと、回転ドラムが支持される軸に案内されて該軸方向に往復動することができるように、弾性体によって付勢された測定テープ制動解除操作体であって、該測定テープ制動解除操作体の一部が操作ボタンとして巻尺ケース内から外方へ臨んでいる一方で、巻尺ケース内に残る部分の周方向に沿って鍔部が形成されている、測定テープ制動解除操作体と、1つ又は複数の歯体及び1つ又は複数の歯止体から構成されたラチェット機構と、を備える巻尺であって、1つ又は複数の歯体が、回転ドラムの内壁から回転ドラムの径方向内側へ延びている一方で、1つ又は複数の歯止体は、鍔部から回転ドラムの径方向外側へ延びており、弾性体に蓄積された弾性エネルギによって歯止体が回転ドラムの歯体の通過軌道の外方から通過軌道内まで動かされるときに測定テープ制動解除操作体が巻尺ケースの内壁面と干渉し得るように、測定テープ制動解除操作体ないし内壁面が所定の位置に配置されている、巻尺において、鍔部と内壁面との間に発条部材が設けられており、弾性体のばね定数よりも発条部材のばね定数の方が小さいことを特徴とする、静音化された巻尺を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る静音化された巻尺の内部の一実施例を示す斜視図。
図2】操作ボタンの拡大斜視図。
図3】巻尺の斜視図。
図4】測定テープ引出時の操作ボタンの動きを示す内部を透視した側面図。
図5】操作ボタンに設置するばねの一実施例を示す図。
図6】従来の巻尺の内部を示す斜視図。
図7】従来の巻尺の測定テープ引出時の操作ボタンの動きを示す内部を透視した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の静音化された巻尺について、図1図5を参照しつつ説明する。
【0021】
巻尺1は、図1~3に示すように、歯体2および歯止体4から構成されたラチェット機構を備え、歯体2は、測定テープ6が周囲に巻回されると共に測定テープ6の巻き取りばね8が内装された回転ドラム10(ケース12に立設された軸14に支持されている)に備えられている。歯止体4は、引き出された測定テープ6の停止状態を解除するための外部から操作可能に構成された制動解除操作体たる操作ボタン16に備えられている。また、操作ボタン16は回り止め構造になっている(図示せず)。
【0022】
そして、操作ボタン16は、回転ドラム10が支持される軸14に、軸心方向に移動可能に嵌っていて、さらに、操作ボタン16は第1の弾性手段たるコイルばね22によって付勢されていて、操作ボタン16の歯止体4が回転ドラム10の歯体2の通過軌道の外から通過軌道内に進入すると共に、操作ボタン16のケース外への飛び出し(移動)を止めるストッパ部材たるケース12によって通過軌道内に停止するように構成されている。なお、回転ドラム10の歯体2の通過軌道とは、回転ドラム10と共に回転する歯体2が通って行く通り道である。歯体2は回転ドラム10と共に回転するので、歯体2の通り道は常に同じ位置(トラック)を通る。
【0023】
また、操作ボタン16の鍔部18と、ケース12の内壁20と、の間に、第2の弾性手段たるばね24が設けられており、ばね24は、操作ボタン16の歯止体4が回転ドラム10の歯体2の通過軌道内に停止しているとき、第1の弾性手段たるコイルばね22の付勢力に対し弱い付勢力となっている。
【0024】
ばね24は、操作ボタン16のボタン部26に、ボタン部26の軸心方向に伸縮可能に嵌っていて、また鍔部18の上面に位置している。ボタン部26の軸心方向と回転ドラム10が支持される軸14の軸心方向は同じ方向である。
【0025】
ばね24を設置する場合は、上述のように、操作ボタン16のボタン部26に伸縮可能に嵌めて鍔部18の上面に置くようにしてもよい。すなわち、ボタン部26が突出する開口28(図3参照)が形成されているケース12の蓋部と、回転ドラム10支持する軸14が設けられるケース12の本体とが固定されることで、ばね24の脱落は阻止される。また、操作ボタン16が常態の位置にあるとき、ばね24の上端部とケース12の蓋部(内壁)との間に、伸縮に影響が生じない程度の遊びを有していてもよい。ばね24の設置状態を安定させるため、鍔部18の上面、ないし、ばね24に対向するケース12の内壁20に、突起(ばね24の厚みと同程)や凹所(ばね24の径より少し広い)を形成してもよい。
【0026】
また、ばね24は、操作ボタン16の鍔部18、乃至、鍔部18の上面の鉛直方向のケース12の内壁20に、接着剤やねじなどの固定手段によって固定的に設けたり、操作ボタン16の成型時やケース12の成型時にばね24を同時に一体成形するようにして設けてもよい。
【0027】
操作ボタン16の動きを、測定テープが引き出されている時の操作ボタンの動きについて時間を追って示している図4(a)~図4(d)を用いて説明する。
【0028】
図1に示すように、測定テープ6が矢印A方向に引き出されて行くと回転ドラム10は矢印B方向に回転する。回転ドラム10の回転が進行すると、図4(a)に示すように、回転ドラム10の歯体2が操作ボタン16の歯止体4の斜面30に接近して行き、図4(b)に示すように、歯体2が歯止体4の斜面30に当接して歯止体4を押し下げ(操作ボタン16も矢印C方向に下がる)、さらに、図4(c)に示すように、歯体2が歯止体4を通過している間も歯止体4が押し下げられている(操作ボタン16も矢印D方向に下がる)。そして、回転ドラム10の歯体2が操作ボタン16の歯止体4を通過すると、図4(d)に示すように、歯止体4が復帰(操作ボタン16も矢印E方向に復帰)する。
【0029】
上述のように、操作ボタン16は、図4(a)に示した常態の位置である巻尺1のケース12から突出している位置(コイルばね22によって付勢されている位置)と、図4(c)に示したケース12の内方に引き込まれた位置(ラチェット機構部によって操作ボタン16がコイルばね22の付勢力に抗して矢印D方向に引き込まれた位置)と、を往復するように動く。なお、図4(d)は、回転ドラム10の歯体2が操作ボタン16の歯止体4を通過して操作ボタン16が復帰したところ(操作ボタン16がコイルばね22の付勢力によって矢印E方向に移動した)を示している。
【0030】
続いて、操作ボタン16の鍔部18に配置しているばね24の作用を説明する。
【0031】
図4(d)に示すように、回転ドラム10の歯体2が操作ボタン16の歯止体4を通過することで、歯止体4を有する操作ボタン16も矢印E方向に復帰して常態位置に停止するが、停止する前に、操作ボタン16と共に復帰方向に移動する鍔部18の上面に位置するばね24がケース12の内壁20によってその移動が阻止され、これによってばね24が縮み、操作ボタン16の復帰の速度を低下させながら操作ボタン16を常態位置に停止させる。
【0032】
また、操作ボタン16がコイルばね22の付勢力によって状態位置に復帰して停止したときに、圧縮されたばね24の付勢力によって操作ボタン16が押し返されないようにするため、付勢力が発生している状態で、ばね24の付勢力がコイルばね22の付勢力に対し劣るようにしている。
【0033】
これにより、操作ボタン16が停止する際に生じていた衝突音(騒音)を大きく低下させることができ、周囲に騒音を響かせることなく巻尺を使用することができる。
【0034】
なお、特許文献1に記載の巻尺は、衝撃音を一つの部屋に閉じ込めて騒音を低減させているので、部品を成形する金型も複雑であり、また部品の数も多くなるため製造費が高額となる欠点があったが、本発明の巻尺は、概ねばね24の追設によって騒音を低減させることができるため、製品の単価を上げることなく品質を向上させることができる。
【0035】
また、図5(a)~図5(d)に、操作ボタン16の鍔部18に設置するばね24の一実施例を示す。なお、ばね24の素材も鋼材や樹脂など適宜選定して用いればよい。
【0036】
図5(a)は、上述したばね24と同じ形態で、線状の材料を螺旋状に巻いたコイルばね24’である。図5(a)の(平面図)は、コイルばね24’が操作ボタン16の鍔部18に設置されたところを示しており、コイルばね24aが縮んだ状態になったときに、両端部が重ならないように形成している。図5(a)の(F-Fの端面図)は、図5(a)の(平面図)中のF-F線に沿って切り出されたコイルばね24’の端面を示している。図5(a)の(側面図)は、コイルばね24’を側面から見ている。
【0037】
図5(b)は、線状の材料を円錐状に巻いた円錐コイルばね32である。図5(b)の(平面図)は、円錐コイルばね32が操作ボタン16の鍔部18に設置されたところを示しており、円錐コイルばね32が縮んだ状態になったときに、並行する部分が重ならないようになっている。図5(b)の(G-Gの端面図)は、図5(b)の(平面図)中のG-G線に沿って切り出された円錐コイルばね32の端面を示している。図5(b)の(側面図)は、円錐コイルばね32を側面から見ている。
【0038】
図5(c)は、薄い板材をばねにした板ばね34である。図5(c)の(平面図)は、板ばね34が操作ボタン16の鍔部18に設置されたところを示しており、板ばね34が縮んだ状態になったときに安定して縮むように、ばね部分36を2か所に対向して設けている。図5(c)の(H-Hの端面図)は、図5(c)の(平面図)中のH-H線に沿って切り出された板ばね34の端面を示している。図5(c)の(側面図)は、板ばね34を側面から見ている。
【0039】
図5(d)は、中心に穴を開けた円盤を円錐状(皿形)に形成した皿ばね38である。図5(d)の(平面図)は、皿ばね38が操作ボタン16の鍔部18に設置されたところを示している。図5(d)の(I-Iの端面図)は、図5(d)の(平面図)中のI-I線に沿って切り出された皿ばね38の端面を示している。図5(d)の(斜視図)は、皿ばね38の斜視である。
【0040】
また、図5(a)~図5(d)に示したばね以外にも、薄い板材をばねにしたスプリングワッシャ、また、長方形の断面の薄い板材を円錐状に巻いた竹の子ばねなどを用いてもよい(図示せず)。図5(a)に示したコイルばね24’および 図5(b)に示した円錐コイルばね32は、螺旋部が一周(1ピッチ)以上設けられる場合もある。
【0041】
回転ドラム10に備える歯体2は、測定テープ6の巻回面に対し概ね直交する方向の回転ドラム10の内壁40から回転ドラムの中心方向に延設している。
【0042】
また、操作ボタン16に備える歯止体4は、操作ボタン16の鍔部18から操作ボタン16の突出方向に対し概ね直交する外側方向に延設されている。また、操作ボタン16におけるボタン部26の一部は、ケース12の内部から外方へ臨んでいる。なお、測定テープ6を巻き取る際に操作ボタン16をケース12の内方へ押し込んだとき、操作ボタン16の上面とケース12の外面とが概ね面一となるようにするのがよい。
【0043】
また、第1の弾性手段たるコイルばね22のばね定数よりも第2の弾性手段たるばね24のばね定数の方が小さい。
【0044】
また、回転ドラム10は、回転ドラム10から測定テープ6が引き出されて行くことによって回転ドラム10に内装された巻き取りばね8(バネぜんまいばね)が巻き上げられ、測定テープ6を回転ドラム10に巻き取る際に、弾性エネルギが巻き取りばね8に蓄積されるようになっている。
【0045】
また、操作ボタン16は、コイルばね22(第1の弾性手段)によって付勢されていて、付勢力に抗して押下させている間だけ、測定テープ6の引き出しによって巻き取りばね8に蓄積された弾性エネルギが解放されて、引き出した測定テープ6が巻き取られる。
【0046】
測定テープ6が所望の長さに引き出され、測定テープ6から手が放されたときは、ぜんまいばね24に蓄積された弾性エネルギが使われて、回転ドラム10が測定テープ6を巻き取る方向に動こうとする(測定テープ6の引き出し方向とは逆の方向に回転する)が、回転ドラム10の歯体2が操作ボタン16の歯止体4の垂直面42に当接して、測定テープ6を巻き取る方向に動こうとする回転ドラム10が止められる。
【符号の説明】
【0047】
1…巻尺
2…歯体
4…歯止体
6…測定テープ
8…巻き取りばね
10…回転ドラム
12…ケース
14…軸
16…操作ボタン
18…鍔部
20…内壁
22…コイルばね
24…ばね
24’…コイルばね
26…ボタン部
28…開口
30…斜面
32…円錐コイルばね
34…板ばね
36…ばね部分
38…皿ばね
40…内壁
42…垂直面
50…巻尺
52…歯体
54…測定テープ
56…巻き取りばね
58…回転ドラム
60…軸
62…斜面
64…垂直面
66…歯止体
68…コイルばね
70…操作ボタン
72…ケース
74…鍔
76…内壁面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7