(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 3/06 20060101AFI20230703BHJP
H05B 3/10 20060101ALI20230703BHJP
B29C 51/42 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
H05B3/06 B
H05B3/10 B
B29C51/42
(21)【出願番号】P 2019166775
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】304050369
【氏名又は名称】株式会社浅野研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺本 一典
(72)【発明者】
【氏名】西尾 翼
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-337954(JP,A)
【文献】特開2002-187201(JP,A)
【文献】実開昭61-109716(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/06
H05B 3/10
B29C 51/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱成形を行うシート部材を、加熱し、軟化させる加熱装置であって、前記シート部材に対向してマトリックス状に配列される輻射ヒータと、前記輻射ヒータを支持部材を介して保持する矩形状のフレーム体と、を備える加熱装置において、
前記支持部材は、前記矩形状のフレーム体の、所定の一辺と、前記所定の一辺に対向する辺と、を横架すること、
複数の前記輻射ヒータが 前記支持部材に対して、前記支持部材が横架する方向と平行な方向に、一列に取り付けられ、複数の前記支持部材が、横架する方向と直角な方向に並列することで、前記輻射ヒータがマトリックス状に配列されること、
前記支持部材は、前記フレーム体に、前記シート部材に対する距離を調整可能に結合されており、前記シート部材と、前記輻射ヒータとの距離を調整可能であること、
前記支持部材は、前記支持部材の横架する方向と平行な方向に回転軸を備え、前記回転軸を中心に回動し、任意の角度で固定可能であり、前記シート部材の形状に合わせて、前記輻射ヒータを対向させることが可能であること、
前記シート部材は、熱板により、前記輻射ヒータ側とは反対の側から、保持されるとともに加熱されていること、
前記熱板は、前記支持部材の横架する方向と直角な方向の断面視において、前記熱成形前に予め賦形するための、前記輻射ヒータの側に突出した凸部を有し、前記シート部材を前記凸部に沿った形状に成形すること、
を特徴とする加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱装置において、
前記輻射ヒータは、個別に出力調整が可能であること、
を特徴とする加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱成形を行うシート部材を、加熱し、軟化させる加熱装置であって、シート部材に対向してマトリックス状に配列される輻射ヒータと、輻射ヒータを支持部材を介して保持する矩形状のフレーム体と、を備える加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、シート状の熱可塑性樹脂(シート部材)の熱成形を行う前には、シート部材を加熱装置によりガラス転移温度まで加熱し、軟化させることが行われている。シート部材を加熱するための加熱装置としては、特許文献1、2に開示されるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-59789号公報
【文献】特開2009-117097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術には次のような問題があった。
特許文献1に開示される加熱装置は、輻射ヒータが平面状に並ぶものである。シート部材が平面状であれば、輻射ヒータとシート部材との距離を均一に保つことができ、シート部材を均一に加熱することが可能である。
しかし、近年、熱成形前に予め所定の形に賦形されたシート部材を加熱する必要があるなど、シート部材が平面状でなく、例えば凸面部を有する場合がある。この場合、特許文献1に開示される加熱装置のように輻射ヒータが平面状に並んでいては、シート部材の凸面部は、輻射ヒータとの距離が近くなる一方で、シート部材の凸面部以外の箇所は、輻射ヒータとの距離が離れてしまうため、輻射ヒータとシート部材の距離が不均一となる。すると、シート部材の凸面部は輻射ヒータにより非常に高温に加熱される一方で、シート部材の凸面部以外の箇所は、凸面部に比べて温度が低くなるなど、シート部材を均一に加熱することができないおそれがある。
【0005】
特許文献2に開示される加熱装置のように、ヒータ用ランプの輻射熱を反射する反射鏡を加熱対象物に対して近接離間させることで、加熱対象物を均一に加熱することが可能とするものも知られているが、加熱対象物が凸面部を有する場合には、凸面部でヒータ用ランプとの距離が近くなり、凸面部以外の箇所に比べて高温になりやすいことに変わりがなく、加熱対象物を均一に加熱することが難しい。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、シート部材の形状によらず、均一に加熱することが可能な加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の加熱装置は、次のような構成を有している。
(1)熱成形を行うシート部材を、加熱し、軟化させる加熱装置であって、シート部材に対向してマトリックス状に配列される輻射ヒータと、輻射ヒータを支持部材を介して保持する矩形状のフレーム体と、を備える加熱装置において、支持部材は、矩形状のフレーム体の、所定の一辺と、所定の一辺に対向する辺と、を横架すること、複数の輻射ヒータが 支持部材に対して、支持部材が横架する方向と平行な方向に、一列に取り付けられ、複数の支持部材が、横架する方向と直角な方向に並列することで、輻射ヒータがマトリックス状に配列されること、支持部材は、フレーム体に、シート部材に対する距離を調整可能に結合されており、シート部材と、輻射ヒータとの距離を調整可能であること、支持部材は、支持部材の横架する方向と平行な方向に回転軸を備え、回転軸を中心に回動し、任意の角度で固定可能であり、シート部材の形状に合わせて、輻射ヒータを対向させることが可能であること、シート部材は、熱板により、輻射ヒータ側とは反対の側から、保持されるとともに加熱されていること、熱板は、支持部材の横架する方向と直角な方向の断面視において、熱成形前に予め賦形するための、輻射ヒータの側に突出した凸部を有し、前記シート部材を前記凸部に沿った形状に成形すること、を特徴とする。
【0008】
(2)(1)に記載の加熱装置において、輻射ヒータは、個別に出力調整が可能であること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の加熱装置は、上記構成を有することにより次のような作用・効果を有する。
(1)に記載の加熱装置によれば、輻射ヒータが取り付けられた支持部材が、フレーム体に、シート部材に対する距離を調整可能に結合されているため、シート部材と、輻射ヒータとの距離を調整可能である。よって、シート部材と輻射ヒータとの距離を均一に保つことが可能であり、シート部材が凸面部を有するような形状であったとしても、均一に加熱することが可能である。
さらに、支持部材が、支持部材の横架する方向と平行な方向に回転軸を備え、回転軸を中心に回動し、任意の角度で固定可能であるため、シート部材の形状に合わせて、輻射ヒータの角度を調整し、対向させることが可能である。よって、シート部材に傾斜している部分があったとしも、輻射ヒータの角度を調整し、シート部材と輻射ヒータとをおおよそ平行に保つことができ、シート部材を均一に加熱することが可能である。
【0011】
(2)に記載の加熱装置によれば、輻射ヒータは、シート部材全体を均一に加熱することが可能である。
加熱装置の中央部付近は熱がこもり、温度が高くなりやすいため、シート部材全体が均一に加熱されないおそれがある。また、支持部材の角度調整により、輻射ヒータが中央部を向いている場合も、中央部付近に熱がこもり、温度が高くなるおそれがある。しかし、マトリックス状に配列された輻射ヒータのそれぞれにおいて出力調整が可能であるため、加熱装置の中央部付近に配列された輻射ヒータの出力を弱めることで、加熱装置内部の温度を均一に調整可能であり、シート部材全体を均一に加熱することが可能である。
【0012】
(3)に記載の加熱装置によれば、シート部材と輻射ヒータとの距離を均一に保つことが可能であり、シート部材の形状によらず、均一に加熱することが可能である。
【0013】
熱成形を行うに当たり、シート部材に急激な変形が起こらないよう、加熱装置での加熱時に、凸部を有する熱板により、予め熱成形で成形する形状に近い形状に賦形することが想定される。従来の平面状に配列された輻射ヒータによっては、シート部材と輻射ヒータとの距離が均一とならずに、シート部材を均一に加熱することができないおそれがある。しかし、本発明によれば、熱板によって凸部を有することとなったシート部材の形状に合わせて、輻射ヒータの高さ調整や角度調整が可能であるため、シート部材と輻射ヒータの距離を均一に保つことが可能であり、シート部材の形状によらず、均一に加熱することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図5】本実施形態に係る加熱装置に用いられる支持部材を表す図である。
【
図6】加熱装置において、支持部材のそれぞれの高さ調整を行った状態を表す図である。
【
図7】支持部材の角度調整を行った状態を表す図である。
【
図8】シート部材の形状に合わせて、支持部材の高さおよび角度の調整を行い、シート部材を加熱している状態を表す図である。
【
図9】本実施形態に係る加熱装置に用いられる輻射ヒータを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の加熱装置の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態に係る加熱装置1は、
図1乃至
図3に示すように、略正方形平板状をなす輻射ヒータ10と、輻射ヒータ10が一列に並べて取り付けられる支持部材20と、複数の支持部材20が並列して結合される矩形状のフレーム体30とを備えている。
【0016】
輻射ヒータ10は、
図9に示すように、略正方形平板状、正確には、正方形面の4つの角部がそれぞれ正方形面の辺稜部に対して45 °で交差する直線で切り落とされた八角形状をなしており、平板状の支持板11と、支持板11の
図1において下側を向く面に配設されるヒータエレメント12と、を有している。
【0017】
支持板11は、例えばステンレス鋼の板材を加工したものである。八角形面の辺稜部にそれぞれ八角形面に対して直交するように折り曲げられた側壁部11aを有しており、角盆状となっている。
【0018】
ヒータエレメント12は、帯状部12aと折り返し部12bとが交互に設けられ、蛇行するように構成されている。これは、薄板状をなすニクロム板を左右から交互に切れ目を入れることで構成されるものである。
【0019】
さらに、支持板11の、ヒータエレメント12が配設される側の面には、複数の張架支持部材16及び一対の接続端子13が立設されている。本実施形態においては、
図9に示すように、八角形面の左上側と右下側の対角に一対の接続端子13が配置され、これらの接続端子13の間に8個の張架支持部材16が、八角形面の上側と下側の対向する一対の辺稜部に沿って交互に配置されている。
【0020】
張架支持部材16のそれぞれは、ヒータエレメント12の折り返し部12bを固定し、接続端子13は、ヒータエレメント12の端部と接続されている。
また、接続端子13は、支持板11を貫通し、支持板11のヒータエレメント12が配設される側とは反対の面に、電源ケーブル(不図示)が接続される接続部14を有している(
図4,
図7参照)。
【0021】
以上のように構成された輻射ヒータ10が一列に縦列するように並べて取り付けられる支持部材20は、
図3及び
図5に示すように、長方形平板状をなしており、矩形状に構成されているフレーム体30において、対向する一対の梁部材31を横架している。そして、横架する方向とは直角の方向に、15個の支持部材20が並列されている。
【0022】
図5に示すように、支持部材20の幅方向中央には、幅方向に延びる長孔状をなして輻射ヒータ10の取付部15が挿通される取付孔20bが縦列するように配設されている。本実施形態においては12個の取付孔20bが設けられており、支持部材20には、支持部材20の長手方向に沿って、12個の輻射ヒータ10を縦列して取り付けることができるようになっている。12個の輻射ヒータ10が取り付けられた支持部材20が15個並列されているため、180個の輻射ヒータ10がマトリックス状に配列されることとなる。
【0023】
また、取付孔20bの幅方向両側には、一対の接続端子13の接続部14がそれぞれ挿通される端子孔20cが縦列するように配設されている。
【0024】
輻射ヒータ10の、支持部材20への取り付けは、輻射ヒータ10の取付部15を取付孔20bに挿通させるとともに、一対の接続端子13の接続部14が端子孔20cにそれぞれ挿通されるように配置させ、取付部15をクランプ部材(不図示)により固定することで行われる。端子孔20cに挿通された接続端子13の接続部14には、それぞれ電源ケーブル(不図示)が接続され、180個の輻射ヒータ10のそれぞれにおいて、個別に出力の調整が可能となっている。
【0025】
ここで、15個の支持部材20のうちの一部には、
図3に示すように、それぞれ隣り合う支持部材20側に向けて開口する半円状の切欠部20dが形成されている。この切欠部20dは、マトリックス状に配列された略正方形状の輻射ヒータ10の、正方形面の辺稜部に対して45 °で交差する直線で切り落とされた角部同士によってできた空隙部分に設けられており、輻射ヒータ10に干渉することなく形成されている。切欠部20dによって形成された円形の挿通孔60により、加熱装置1の上側(
図1,2中の上側)に配置される放射温度計(不図示)の赤外線を通過させることができ、輻射ヒータ10に対向するシート部材50の温度測定を行うことができる。
【0026】
支持部材20の長手方向両端には、
図4に示すように、回転ブロック体21と、固定ブロック体22と、結合部材23と、により構成される結合部を有し、当該結合部により、支持部材20がフレーム体30に結合されている。
【0027】
支持部材20には、支持部材20を回転ブロック体21に固定する固定ねじ25が挿通される固定孔20aが設けられている。この固定孔20aは、支持部材20の長手方向に延びる長孔となっている。そして、回転ブロック体21は、
図4中の上面に、固定用雌ねじ部21aを備えており、支持部材20の固定孔20aに挿通される固定ねじ25が螺合されることで、回転ブロック体21の上面に、支持部材20が固定される。
【0028】
さらに回転ブロック体21は 加熱装置1の外側に向く面(
図4中の右側の面)に回転軸用雌ねじ部21bを備えており、この回転軸用雌ねじ部21bには、回転軸としての回転軸ボルト24が、固定ブロック体22の備える貫通孔22aに、
図4中右側から挿通された上で螺合されている。
【0029】
貫通孔22aの内径は、回転軸ボルト24の外径よりも大きいため、回転軸ボルト24は、軸心を中心にして回動可能となっている。この回転軸ボルト24は、支持部材20の長手方向両端でそれぞれ螺合されており、支持部材20は、長手方向に平行な回転軸を備えることとなる。このため、
図7に示すように、支持部材20を、回転軸ボルト24を軸として、任意の角度に回動可能となっている。
【0030】
また、回転軸ボルト24を締めていくことで、回転ブロック体21と、固定ブロック体22の接触面に圧縮力が負荷され、回転ブロック体21の回動を抑えることができる。したがって、回転軸ボルト24を緩めた状態で、支持部材20を回転軸ボルト24を軸として任意の角度まで回動させた後、回転軸ボルト24を締めることで、支持部材20を任意の角度で固定することが可能である。そして、再び回転軸ボルト24を緩めれば、改めて支持部材20を回動させることができ、角度を調整することができる。
【0031】
さらに、固定ブロック体22は、
図4中の上面に、結合部材23が突設されている。この結合部材23は、円筒状であり、外周面にはねじ山が設けられている。結合部材23は、フレーム体30の 梁部材31に設けられた挿通孔31aに挿通される(
図4,
図7参照)。挿通孔31aの内径は結合部材23の外径よりも大きいため、結合部材23は上下方向に動くことができる。そのため、
図4に示す距離L11を、
図6に示す距離L12,L13,L14のように、任意に変動させることができる。そして、一対のナット32を上下から結合部材23に螺合させ、一対のナット32により梁部材31を挟持することで、結合部材23が上下方向できないよう固定可能となっている。そのため、
図6に示すように、任意の距離L12,L13,L14で、並列する支持部材20のそれぞれを固定可能である。
【0032】
なお、
図1に示すように並列する支持部材20の上下方向の位置が揃っている場合、支持部材20は隙間なく並列されている。これは、支持部材20同士の隙間を無くすことで、輻射ヒータ10による加熱効率を高めるためであるが、このままの状態で支持部材20を回動させようとすると、隣り合う支持部材20に干渉してしまい、回動させることができない。よって、支持部材20を回動する際には、回動させたい支持部材20の高さを隣り合う支持部材20よりも、高い位置または低い位置に移動させてから、回動させる。
ただし、回動に支障がない程度の隙間を持たせて支持部材20を並列することとしても良い。
【0033】
以上のような構成の加熱装置1により、熱成形を行うシート部材50の加熱を行う。
詳しく説明すると、
図8に示すように、加熱装置1に対向するように、熱板40が配置される。熱板40は、図中上方に突出した凸部40aを備えており、凸部40aにより加熱対象物であるシート部材50を、図中の下方から保持するとともに加熱を行う。
【0034】
また、凸部40aには、シート部材50を保持する表面から熱板40の図中下面に貫通する通気孔(不図示)を有しており、当該通気孔には真空ポンプ(不図示)が接続されている。当該真空ポンプは、通気孔を介して、熱板40に配設されるシート部材50を吸引し、凸部40aの表面に密着させる。シート部材50は、熱板40により加熱するとともに、真空ポンプによって凸部40aに密着されることで、凸部40aにならって賦形される。これは、熱成形を行うに当たり、シート部材50に急激な変形が起こらないよう、凸部40aにより、熱成形で成形する形状に近い形状に予め賦形することを目的としている。
【0035】
このように、シート部材50が、凸部40aに沿って賦形される等、熱成形前に予め曲面状にされたシート部材50を加熱する必要がある場合、従来の平面状に配列された輻射ヒータでは、シート部材50と輻射ヒータとの距離が均一とならず、シート部材50を均一に加熱することができない。しかし、本実施形態に係る加熱装置1は、輻射ヒータ10が縦列する支持部材20の角度や、上下方向の位置を調整可能である。
輻射ヒータ10が取り付けられた支持部材20が、フレーム体30に、シート部材50に対する距離を調整可能に結合されているため、シート部材50と、輻射ヒータ10との距離Wを調整可能である。よって、シート部材50と輻射ヒータ10との距離Wを均一に保つことが可能であり、シート部材50が凸部40aに沿った形状であったとしても、均一に加熱することが可能である。
さらに、支持部材20が、支持部材20の横架する方向と平行な方向に回転軸(回転軸ボルト24)を備え、回転軸(回転軸ボルト24)を中心に回動し、任意の角度で固定可能であるため、シート部材50の形状に合わせて、輻射ヒータ10の角度を調整し、対向させることが可能である。よって、シート部材50の傾斜している部分に合わせて、輻射ヒータ10の角度を調整し、シート部材50と輻射ヒータ10とをおおよそ平行に保つことができ、シート部材50を均一に加熱することが可能である。
【0036】
また、加熱装置1は、マトリックス状に配列された180個の輻射ヒータ10のそれぞれにおいて、出力調整が可能である。加熱装置1の中央部付近は熱がこもり、温度が高くなりやすいため、シート部材50全体が均一に加熱されないおそれがある。また、
図8に示すように、支持部材20の角度調整により、輻射ヒータ10が加熱装置1中央部を向いている場合も、中央部付近に熱がこもり、温度が高くなるおそれがある。しかし、マトリックス状に配列された輻射ヒータ10のそれぞれにおいて出力調整が可能であるため、加熱装置1の中央部付近に配列された輻射ヒータ10の出力を弱めることで、加熱装置1内部の温度を均一に調整可能であり、シート部材50全体を均一に加熱することが可能である。
なお、シート部材50は、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂からなり、厚みは1mm程度である。しかし、材質、厚みともにこれに限定されるものではない。
【0037】
シート部材50の加熱が完了した後は、熱成形用の金型によりシート部材50をさらに賦形する。このとき、加熱が完了した後に加熱装置1が移動し、熱成形用の金型が熱板40に対向する位置まで移動してきて、熱成形を行うものとしても良いし、熱板40が搬送装置により、熱成形用の金型が設置される位置まで搬送され、熱成形を行うものとしても良い。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る加熱装置1によれば、
(1)熱成形を行うシート部材50を、加熱し、軟化させる加熱装置1であって、シート部材50に対向してマトリックス状に配列される輻射ヒータ10と、輻射ヒータ10を支持部材20を介して保持する矩形状のフレーム体30と、を備える加熱装置1において、支持部材20は、矩形状のフレーム体30の、所定の一辺(梁部材31)と、所定の一辺に対向する辺(梁部材31)と、を横架すること、複数の輻射ヒータ10が 支持部材20に対して、支持部材20が横架する方向と平行な方向に、一列に取り付けられ、複数の支持部材20が、横架する方向と直角な方向に並列することで、輻射ヒータ10がマトリックス状に配列されること、支持部材20は、フレーム体30に、シート部材50に対する距離を調整可能に結合されており、シート部材50と、輻射ヒータ10との距離を調整可能であること、支持部材20は、支持部材20の横架する方向と平行な方向に回転軸(回転軸ボルト24)を備え、回転軸を中心に回動し、任意の角度で固定可能であり、シート部材50の形状に合わせて、輻射ヒータ10を対向させることが可能であること、を特徴とする。
【0039】
輻射ヒータ10が取り付けられた支持部材20が、フレーム体30に、シート部材50に対する距離を調整可能に結合されているため、シート部材50と、輻射ヒータ10との距離を調整可能である。よって、シート部材50と輻射ヒータ10との距離を均一に保つことが可能であり、シート部材が凸面部を有するような形状であったとしても、均一に加熱することが可能である。
さらに、支持部材20が、支持部材20の横架する方向と平行な方向に回転軸(回転軸ボルト24)を備え、回転軸(回転軸ボルト24)を中心に回動し、任意の角度で固定可能であるため、シート部材50の形状に合わせて、輻射ヒータ10の角度を調整し、対向させることが可能である。よって、シート部材50に傾斜している部分があったとしも、輻射ヒータ10の角度を調整し、シート部材50と輻射ヒータ10とをおおよそ平行に保つことができ、シート部材50を均一に加熱することが可能である。
【0040】
(2)(1)に記載の加熱装置1において、輻射ヒータ10は、個別に出力調整が可能であること、を特徴とするので、輻射ヒータ10は、シート部材50全体を均一に加熱することが可能である。
加熱装置1の中央部付近は熱がこもり、温度が高くなりやすいため、シート部材50全体が均一に加熱されないおそれがある。また、支持部材20の角度調整により、輻射ヒータ10が加熱装置1中央部を向いている場合も、中央部付近に熱がこもり、温度が高くなるおそれがある。しかし、マトリックス状に配列された輻射ヒータ10のそれぞれにおいて出力調整が可能であるため、加熱装置1の中央部付近に配列された輻射ヒータ10の出力を弱めることで、加熱装置1内部の温度を均一に調整可能であり、シート部材50全体を均一に加熱することが可能である。
【0041】
(3)(1)または(2)に記載の加熱装置1において、シート部材50は、熱板40により、輻射ヒータ10側とは反対の側から保持されていること、熱板40は、支持部材20の横架する方向と直角な方向の断面視において、輻射ヒータ10の側に突出した凸部40aを有し、シート部材50を凸部40aに沿った形状に成形すること、を特徴とするので、シート部材50と輻射ヒータ10との距離を均一に保つことが可能であり、シート部材50の形状によらず、均一に加熱することが可能である。
【0042】
熱成形を行うに当たり、シート部材50に急激な変形が起こらないよう、加熱装置1での加熱時に、凸部40aを有する熱板40により、予め熱成形で成形する形状に近い形状に賦形することが想定される。従来の平面状に配列された輻射ヒータによっては、シート部材50と輻射ヒータとの距離が均一とならずに、シート部材50を均一に加熱することができないおそれがある。しかし、本発明によれば、熱板40によって凸部40aを有することとなったシート部材50の形状に合わせて、輻射ヒータ10の高さ調整や角度調整が可能であるため、シート部材50と輻射ヒータ10の距離を均一に保つことが可能であり、シート部材50の形状によらず、均一に加熱することが可能である。
【0043】
なお、本実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
例えば、本実施形態において、凸部40aは、熱板40から上方へ膨出するような形状としているが、形状はこれに限らず、角状の突起としても良い。また、凸部40aが熱板40の上面に複数設けられることとしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 加熱装置
10 輻射ヒータ
20 支持部材
24 回転軸ボルト
30 フレーム体
31 梁部材
50 シート部材