(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】軒先構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/072 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
E04D13/072 502F
E04D13/072 502J
E04D13/072 502P
(21)【出願番号】P 2019215128
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000165505
【氏名又は名称】元旦ビューティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】舩木 元旦
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-144367(JP,A)
【文献】特開2019-173286(JP,A)
【文献】特開平08-165765(JP,A)
【文献】実開昭60-058731(JP,U)
【文献】特開平02-038657(JP,A)
【文献】特開2017-043951(JP,A)
【文献】特開2019-173536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の屋根面に敷設された屋根材の軒先に軒樋が取り付けられる軒先構造であって、
前記屋根面に固定される第1部材と、前記軒樋の建築物側の側面を外側から支持する支持部を備える第2部材とが角度調整機構を介して連結される軒先支持材を用い、
前記角度調整機構は、前記第1部材と前記第2部材とが回動可能に連結される軸部と、連結具が取り付けられる調整部とからなり、
更に前記第1部材と前記第2部材間に架け渡される補強材にて、前記軒樋と前記軒先支持材とが一体的に連結されていることを特徴とする軒先構造。
【請求項2】
補強材は、上端が第1部材と第2部材との調整部に取り付けられると共に下端が軒樋の建築物側の側面を内側から支持することで、軒樋を内面側と外面側から挟着状に保持することを特徴とする請求項1に記載の軒先構造。
【請求項3】
下端が、軒樋の軒先端と係合されると共に前記軒樋の上面を覆うカバー材の上端が、前記軒先支持材に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の軒先構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軒樋を設置していない屋根や、軒樋、鼻隠し、壁面等が損傷した建築物に対して容易に軒樋を設置でき、軒樋に対して任意の角度勾配の屋根面に適用できる軒先構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の軒先には、建築物の鼻隠しや壁面に一定間隔で樋受け金具等を固定し、その金具に対して軒樋を設置するのが一般的であるが、北海道などの積雪する地方の建物においては、屋根の軒先に軒樋があることが、冬期における落雪の妨げとなるものであった。
また、積雪地域では、軒樋内への積雪や落雪により、軒樋や樋受け金具が変形、破損したり、よりひどくなると、樋受け金具を固定している鼻隠しや壁面が破損したりする恐れもあった。そのため、建築物に軒樋自体を設置しない建築物も散見されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、軒樋を建築物からなくしてしまうと、積雪の融雪水や、冬季以外の降雨が軒先から垂れ落ちるという問題が生じてしまうものであった。
そこで、本発明は、前述のような軒樋を設置していない屋根や、軒樋、鼻隠し、壁面等が損傷した建築物に対して容易に軒樋を設置でき、軒樋に対して任意の角度勾配の屋根面に適用できる軒先構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、建築物の屋根面に敷設された屋根材の軒先に軒樋が取り付けられる軒先構造であって、前記屋根面に固定される第1部材と、前記軒樋の建築物側の側面を外側から支持する支持部を備える第2部材とが角度調整機構を介して連結される軒先支持材を用い、前記角度調整機構は、前記第1部材と前記第2部材とが回動可能に連結される軸部と、連結具が取り付けられる調整部とからなり、更に前記第1部材と前記第2部材間に架け渡される補強材にて、前記軒樋と前記軒先支持材とが一体的に連結されている軒先構造に関するものである。
【0005】
また、本発明は、前記軒先構造において、補強材は、上端が第1部材と第2部材との調整部に取り付けられると共に下端が軒樋の建築物側の側面を内側から支持することで、軒樋を内面側と外面側から挟着状に保持することを特徴とする軒先構造をも提案する。
【0006】
また、本発明は、前記軒先構造において、下端が、軒樋の軒先端と係合されると共に前記軒樋の上面を覆うカバー材の上端が、前記軒先支持材に取り付けられていることを特徴とする軒先構造をも提案する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の軒先構造は、屋根面(屋根材)に固定される第1部材に、軒樋を支持する第2部材を角度調整機構及び補強材にて連結した軒先支持材を用い、屋根面に対して軒樋の角度を任意に調整できる。なお、軒樋は、一般的に略水平状に設置されるので、該軒樋に対して任意の角度勾配の屋根面に適用することができる。
また、軒先支持材は、第1部材と第2部材と角度調整機構とを備え、更に第1部材と第2部材間に架け渡される補強材にて連結されているので、軒樋を押さえることで、第2部材からの脱落を防ぐと共に、極めて高い一体性を有するものであり、任意勾配の建築物の屋根面に、容易に且つ強固に軒樋を固定することができる。
【0008】
また、補強材は、上端が第1部材と第2部材との調整部に取り付けられると共に下端が軒樋の建築物側の側面を内側から支持することで、軒樋を内面側と外面側から挟着状に保持する場合には、軒樋がより安定に、且つ強固に保持されるものとなる。
【0009】
また、下端が、軒樋の軒先端と係合されると共に前記軒樋の上面を覆うカバー材の上端が、前記軒先支持材に取り付けられている場合、該カバー材にて軒樋の軒先端を引っ張るように保持するアームの役割が果たされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)本発明の軒先構造の一実施例(第1実施例)の要部を示す側断面図、(b)それに用いた軒先支持材のうち、第1部材を実線で、他の部材を点線で示した側面図、(c)軒先支持材のうち、第2部材を実線で、他の部材を点線で示した側面図である。
【
図2】(a)第1実施例における軒先支持材の第1部材の側面図、(b)第2部材の側面図、(c)補強材の側面図、(d)それらを組み合わせた状態を示す側面図である。
【
図3】(a)第1実施例の軒先構造の一部の要部を施工する手順のうち、第1部材と第2部材とを角度調整機構にて回動可能に連結した状態を示す側面図、(b)点線で示す補強材を、角度調整機構における回動とは直交する方向に回動できるように臨ませた状態を示す側面図、(c)連結具を締め付けて軒先支持材を一体化させると共に軒樋上面をカバー材で塞いだ状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の軒先構造は、建築物の屋根面に敷設された屋根材の軒先に軒樋が取り付けられる構造であって、前記屋根面に固定される第1部材と、前記軒樋の建築物側の側面を外側から支持する支持部を備える第2部材とが角度調整機構を介して連結される軒先支持材を用い、前記角度調整機構は、前記第1部材と前記第2部材とが回動可能に連結される軸部と、連結具が取り付けられる調整部とからなり、更に前記第1部材と前記第2部材間に架け渡される補強材にて、前記軒樋と前記軒先支持材とが一体的に連結されていることを特徴とし、軒樋を安定に保持することができる。
【0012】
前記本発明の軒先構造に用いられる屋根材は、建築物の屋根面に敷設されたものであって、新設や既設を問うものではなく、後述する図示実施例に示すように横葺き(横葺き屋根板)でも重ね葺き(スレート材)でもよく、水下側から水上側へ敷設されるものが好ましい。
【0013】
前記本発明の軒先構造に用いられる軒樋は、内部に雨水等の排水路が設けられているものであれば、底面及び両側面の形状は特に限定するものではないが、長さ方向に連続する長尺材としてもよいし、定尺材を接続する構成でもよい。
この軒樋の建築物側壁面の下方には、下方からこの軒樋を支持させるための(例えば角状の)被支持部が形成されていることが望ましい。また、この軒樋の上面を覆うようにカバー材が取り付けられていることが望ましい。さらに、この軒樋は、冬期における落雪の妨げとならないように保持されていることが望ましく、例えば図示実施例のようにその上面を覆うカバーが流れ方向に連続(途切れていないため雪が止まらない)し、その表面が平坦状(上方への凸部分がない)であることが好ましい。
【0014】
前記本発明の軒先構造に用いられる軒先支持材は、前述のように前記屋根面に固定される第1部材と、前記軒樋の建築物側の側面を外側から支持する支持部を備える第2部材とが角度調整機構を介して連結される構成であって、前記角度調整機構は、前記第1部材と前記第2部材とが回動可能に連結される軸部と、連結具が取り付けられる調整部とからなる。そして、前記第1部材と前記第2部材間に架け渡される補強材にて、前記軒樋と前記軒先支持材とが一体的に連結されている。
【0015】
前記第1部材は、従来の軒先唐草の機能を併せ持つ部材であって、前記屋根材もしくは前記屋根材を介して下地材に固定される部材であり、前記軒樋と同様に長さ方向に連続する長尺材としてもよいし、定尺材を接続する構成でもよいが、前記第2部材と回動可能に連結される軸部を形成する構成を備える。該軸部を形成する構成とは、第2部材における当該構成に応じて形成されるものであり、例えば後述する図示実施例のように一方を中芯状として、他方を外皮状として回動可能に連結(軸着)すればよい。
前記第2部材は、前記軒樋の建築物側の側面を外側から支持する支持部が設けられる部材であって、前述のように前記第1部材と回動可能に連結される軸部を形成する構成を備え、長さ方向に連続する長尺材としてもよいし、定尺材或いは短幅材を適宜間隔で前記第1部材に連結させるものでもよい。
【0016】
前記第1部材に設けられる、前記屋根材に固定される固定部は、この第1部材自体を適正位置に配設する為の構成であるが、この固定部は、前記屋根材に固定具を打ち込んで固定してもよい。但し、その場合には、該固定具の打ち込み孔が雨水等を浸入させる部位となるため、例えばこの固定部を覆う化粧材を取り付け、雨水の浸入を防止すると共に意匠性を高める効果をも付与することが望ましい。
【0017】
前記第2部材に設けられる、前記軒樋の建築物側の側面が支持される支持部は、前記軒樋の被支持部を下方から支持するものであって、前記被支持部を角状に形成した場合には、例えば角状の被支持部を外側から包む隅部状に形成すればよい。
【0018】
前記第1部材と前記第2部材とを連結する角部調整機構は、前述のように両部材が回動可能に連結される軸部と、連結具が取り付けられる調整部とからなる。
軸部については、既に説明したように例えば後述する図示実施例のように一方を中芯状として、他方を外皮状として回動可能に連結(軸着)すればよい。この軸部が設けられる位置についても特に限定するものではないが、後述する図示実施例のように第1部材では下端付近に、第2部材では上端付近に、それぞれ形成することで、吊り支持状に連結する構成でもよい。
調整部や連結具については、任意の回動角度にて連結できるものであれば特にその具体的構成を特定するものではない。
調整部については、例えば後述する図示実施例では、両部材に、軒先へ延在する腕状部をそれぞれ形成し、その腕状部の先端から直交状に上方へ重合縦部を延在させてそれらを係止状に重合させている。即ち第1部材の重合縦部が建築物側に、第2部材の重合縦部が軒先側に、配置される状態で重合し、第1部材の重合縦部には、軒先側へ突出する係止片が形成され、第2部材の重合縦部には、建築物側へ連続的に複数突出する受歯部が形成され、予め両腕状部の寸法等を調整して両重合縦部が重合状に配置されるので、第1部材の係止片は第2部材の受歯部に段状に係止される。
連結具についても、例えば後述する図示実施例のように、ボルト杆とナットを用いてもよく、第1部材と第2部材にそれぞれ予め孔を設けておき、第1部材の重合縦部(の孔)の建築物側からボルト杆を取り付け、第2部材の重合縦部(の孔)の軒先側に配置したナットを締め付けて連結する。
そして、このような角度調整機構では、第1部材と第2部材との相対関係を角度調整できるため、傾斜勾配が異なる屋根面でも、水平状に軒樋を維持させることができる。
【0019】
前記本発明の軒先構造に用いられる補強材は、前述のように前記第1部材と前記第2部材間に架け渡される部材であり、第1部材と第2部材との連結強度、即ち軒先支持材の一体性をより高めるものである。要するに第1部材と第2部材とは、前記角度調整機構に加え、この補強材でも連結されるので、一体性が高められるものである。
この補強材は、前記第1部材と前記第2部材間に架け渡されるので、例えば後述する図示実施例のように上端が、第1部材の調整部に取り付けられると共に下端が、第2部材の支持部に係止状に近接(当接)させるようにしてもよい。なお、補強材の上端を第1部材の調整部に取り付けるのは、具体的に連結具にて固定するが、この連結具は、第1部材の調整部のみに単独で固定されるものではなく、第2部材の調整部にも取り付けられるので、補強材の上端も、第1部材と第2部材との調整部に取り付けられる。
また、第2部材の支持部には、軒樋が配設されるので、補強材の下端は、軒樋の被支持部を内側から支持するように当接し、言い換えれば軒樋の被支持部を通して第2部材の支持部に係止される。
このように補強材は、第1部材と第2部材間に架け渡されて連結されるため、軒樋を押さえることで、第2部材からの脱落を防ぐと共に、軒先支持材の一体性を強固に保持するものである。
なお、図示実施例の補強材は、長さの途中に突出片が形成された短冊状板であるが、その突出片が、第2部材の腕状部の先端と係止することで、軒先側へ延在させた腕状部から先の荷重を安定に支持する役割をも果たす。
【0020】
なお、前記補強材は、前記角度調整機構における連結具に、予め回動可能に取り付けておくことが望ましい。ここで、“予め”とは、連結具の取り付けの際に補強材の上端を取り付けておくことを意味している。
この場合、前記角度調整機構にて、前記第1部材と前記第2部材との位置を特定した後、前記補強材を、前記角度調整機構における回動とは直交する方向に回動させ、補強材の上端を、第1部材と第2部材との調整部に取り付け、補強材の下端を、軒樋の建築物側の側面を内側から支持するように当接させることができる。
【0021】
前記第1部材の固定部は、前記屋根材に固定される部位であって、この軒先支持材自体を適正位置に配設する為の構成であるが、この固定部は、前記屋根材に固定具を打ち込んで固定する場合には、該固定具の打ち込み孔が雨水等を浸入させる部位となるため、該固定部分を覆う化粧材にて雨水の浸入を防止することが望ましい。
前記化粧材は、その軒端が前記第1部材に取り付けられ、その棟端が屋根材同士の係合部分に取り付けられている部材であり、前記第1部材の露出を抑えるため屋根の軒先としての意匠性を損なわず、また、前記第1部材の固定部も被覆されるため雨水等が浸入しにくいものとなる。なお、この化粧材を、屋根(屋根材)と同色、同材を用いることで、意匠性をより高めることができる。
【0022】
前記化粧材が取り付けられる被取付部は、後述する図示実施例では、起立状片の上端を水下側へ折曲した部位であり、上方から固定具を打ち込んで固定する構成であるが、この構成に限定されず、前記化粧材が取り付けられる部位であればどのようなものであっても良い。
【0023】
前記カバー材は、前記軒樋の上面を覆うように取り付けられる部材であって、その軒先端が前記軒樋の軒先端と係合して取り付けられ、後述する図示実施例に示すように軒先端に下方へ更に内側へ折曲した略コ字状の係合部を設けてその裏面側に軒樋の軒先端を係合する構成が望ましい。この略コ字状の係合部は、軒樋の軒先端を上方から引っ張るように保持して軒樋やその内部に保持した雨水等の荷重を保持できる。このカバー材は、内部に降雪が堆積したり、落ち葉等が侵入、堆積したりすることを防止する落ち葉除けの役割を果たす部材であって、その表面には雨水を内部へ導く導水口、例えば小径のスリット孔が形成されている。
このように軒樋の上面を覆うカバー材を、前記軒樋の軒先端と係合させた場合には、軒樋の軒先端を引っ張るように保持するアームの役割をも果たし、軒樋には雪が堆積したり落ち葉等が混入したりすることもない。
【0024】
以上の構成を有する本発明の軒先構造は、屋根面(屋根材)に固定される第1部材に、軒樋を支持する第2部材を、角度調整機構及び補強材にて連結した軒先支持材を用い、屋根面に対して軒樋の角度を任意に調整できる。なお、軒樋は、一般的に略水平状に設置されることが多いので、該軒樋に対して任意の角度勾配の屋根面に適用することができる。
また、軒先支持材は、第1部材と第2部材と角度調整機構とを備え、更に第1部材と第2部材間に架け渡される補強材にて連結されているので、極めて高い一体性を有するものであり、任意勾配の建築物の屋根面に、容易に且つ強固に軒樋を固定することができる。
【実施例1】
【0025】
図1(a)に示す第1実施例の軒先構造は、建築物の屋根面に敷設された屋根材5の軒先に軒樋1が取り付けられ、前記屋根材5に固定される第1部材2Aと、前記軒樋1の建築物側の側面13を外側から支持する支持部24を備える第2部材2Bとが角度調整機構(23,25)を介して連結される軒先支持材2を用いている。
前記角度調整機構(23,25)は、前記第1部材2Aと前記第2部材2Bとが回動可能に連結される軸部23と、連結具2d,2eが取り付けられる調整部25とからなり、更に前記第1部材2Aと前記第2部材2B間に架け渡される補強材2Cにて、前記軒樋1と前記軒先支持材2とが一体的に連結されている。
【0026】
この第1実施例における軒樋1は、略水平状の底面11の軒先側(図面では左側)に、三つの傾斜面と二つの略水平面とで構成される段状の側面12が形成され、前記底面11の内側(図面では右側)には、略垂直状に起立する側面13が形成され、これらの底面11及び側面12,13にて雨水等の排水路が形成されている。
前記軒先側の側面12の上端に位置する傾斜面と略水平面は、カバー材4に保持(係合)される軒先端121である。
また、前記内側面13の下端には、角状の被支持部131が設けられ、前記第2部材の支持部24に下方から支持される。
【0027】
この第1実施例における屋根材5は、水下側から水上側へ段状に重合敷設されるボード状の屋根板である。なお、最も水下側の屋根材5には、側面視三角状のバックアップ材を裏面側に配設した化粧材3が配設されている。この化粧材3の水上端31は、流れ方向に隣接する屋根材5,5間に挟着状に配設され、その水下側に、軒先支持材2を形成する第1部材2Aが配設されている。また、下地6Aは、傾斜勾配を形成するように配された野地材の表面側に防水紙6bを敷設した構成である。
【0028】
この第1実施例における軒先支持材2は、前述のように屋根面(屋根材5)に固定される前記第1部材2Aと、軒樋1を支持する前記第2部材2Bとが、角度調整機構(23,25)及び補強材2Cにて連結されたものであり、屋根面(屋根材5)に対して軒樋1の角度を任意に調整できる。尤も、軒樋1は、略水平状に設置されるため、該軒樋1に対して任意の角度勾配の屋根面に適用することができる。
【0029】
前記第1部材2Aは、
図1(b)に示すように従来の軒先唐草の機能を併せ持つ部材であって、前記屋根材5に固定される(固定部21を備える)部材であり、前記軒樋1と同様に長さ方向に連続する長尺材として形成されている。また、この第1部材2Aには、第2部材2Bと回動可能に連結される外皮状の軸部23aを備える。
前記第2部材2Bは、
図1(c)に示すように前記軒樋1を外側から支持する支持部4を備える部材であって、前記第1部材2Aの外皮状の軸部23aと回動可能に連結(軸着)される中芯状の軸部23bを備え、長尺材でも、定尺材或いは短幅材を適宜間隔で前記第1部材2Aに連結させるものでもよい。
前記補強材2Cは、上端が、前記第1部材2Aの調整部25(25a)に取り付けられると共に下端が、前記第2部材2Bの支持部24に係止状に当接させる部材であり、短冊状板として形成されている。
【0030】
図示実施例の軒先支持材2を、
図2に基づいて詳細に説明すると、前記第1部材2Aは、
図2(a)に示すように屋根面に沿わせる横片部71の軒先端を略垂直状に折り下げた縦片部72の下端に、建築物側には外皮状の軸部23aを、軒先側には軒先へ延在する腕状部73が、それぞれ形成され、前記腕状部73の先端から直交状に上方へ重合縦部74が延在する構成である。また、前記重合縦部74には、軒先側へ突出する係止片741と、連結具(ボルト杆)2dが挿通する孔742が形成されている。なお、屋根面に沿う前記横片部71の略中央付近が、固定具を打ち込む固定部21である。また、この固定部21の水下側には、化粧材3を取り付けるための起立状片の上端を水下側へ折曲した逆L字状の被取付部22が形成されている。
これらの構成のうち、前記重合縦部74が、前記調整部25を形成する第1部材2Aの調整部25aである。
【0031】
前記第2部材2Bは、
図2(b)に示すように上方が開放する略U字状部75の軒先側の側面の上端に中芯状の軸部23bが形成され、その軒先側には軒先へ延在する腕状部76が形成され、前記腕状部76の先端から直交状に上方へ重合縦部77が延在する構成である。また、前記重合縦部77には、建築物側へ連続的に複数突出する受歯部771と、連結具(ボルト杆)2dが挿通する孔772が形成されている。なお、前記略U字状部75の建築物側の側面が下方へ長く延在する脚状部78であり、その下端を軒先側へ折曲した下端781が前記支持部24である。
これらの構成のうち、前記重合縦部77が、前記調整部25を形成する第2部材2Bの調整部25bである。
【0032】
前記補強材2Cは、
図2(c)に示すように長さの途中に突出片792が形成された短冊状板79であって、上方部分791は、前記第2部材2Bの重合縦部77の外側に沿う湾曲状に形成され、更に連結具(ボルト杆)2dが挿通する孔794が形成され、下端793は、軒樋1を省略して示した
図2(d)に示すように、軒樋1がなければ第2部材2Bの支持部24に係止状に近接する構成である。このように軒樋1を押さえることで、第2部材2Bからの脱落を防ぐ。また、突出片792は、軒樋1を設置した後の補強材2Cと第2部材2Bの位置規制として働き、軒樋1(及び第2部材2B)に対して正対して配置させることができる。
【0033】
そして、前記第1部材2Aと前記第2部材2Bとを連結する角部調整機構(23,25)を、
図2(d)を用いて説明すると、両部材2A,2Bが回動可能に連結される軸部23a,23bと、連結具2d,2eが取り付けられる調整部25a,25bとからなる。
前記第1部材2Aの外皮状の軸部23aは、前記第2部材2Bの中芯状の軸部23bを包むように軸着され、この軸部23a,23bにより、第1部材2Aと第2部材2Bとは、吊り支持状に、且つ回動可能に連結される。この回動可能な連結状態において、前記第1部材2Aの調整部25aである重合縦部74は、前記第2部材2Bの調整部25bである重合縦部77と重合状に配置され、重合縦部74に形成された係止片741が重合縦部77に形成された受歯部771に当接する状態を維持して角度調整が果たされる。即ち係止片741の先端が、受歯部771に段状に当接しつつ角度調整が行われる。そして、重合縦部74,77には、それぞれ孔742,772が形成されているので、所望の位置にて連結具(ボルト杆)2dを挿通させ、ナット2eを締め付けて固定できる。
【0034】
また、前記第1部材2Aと前記第2部材2Bとを連結する補強材2Cの役割を、
図2(d)を用いて説明すると、前記第1部材2Aと前記第2部材2Bとを重合させて角度調整する際に、前記第2部材2Bの重合縦部77の外側にその上方部分791を沿わせているので、連結具(ボルト杆)2dは、第1部材2A、第2部材2B、及び補強材2Cを一連に貫通し、ナット2eで固定できるが、ここでは、補強材2Cが回動できる程度に緩めておくもの、即ち締め付けないでおくものとする。
即ちこの補強材2Cは、その上方部分791を、前記第2部材2Bの重合縦部77の外側に沿わせた状態で、前述の角度調整を行って第1部材2Aと第2部材2Bとの角度を決定したら、連結具2dを中心として、前記角度調整における回動とは直交する方向に回動させる。その際、前記補強材2Cの長さの途中には、突出片792が設けられ、該突出片792が第2部材2Bの腕状部76と重合縦部77との交差部、略L字状の交差部を下方から支持する構成となる。
そのため、当該補強材2Cは、単に前記第1部材2Aと前記第2部材2Bとを連結するばかりでなく、第2部材2B自体の荷重並びに軒先側へ延在させた腕状部76から先の荷重を支える役割をも果たす。そして、軒樋1を押さえることで、第2部材2Bからの脱落を防ぐ。また、突出片792は、軒樋1を設置した後の補強材2Cと第2部材2Bの位置規制として働き、軒樋1(及び第2部材2B)に対して正対して配置させることができる。
【0035】
図3は、第1実施例の軒先構造の一部の要部を施工する手順を示すものであって、必ずしも施工法を当該手順に限定するものではない。
まず、
図3(a)は、第1部材2Aと第2部材2Bとが角度調整機構(23,25)にて回動可能に連結された状態を示している。この第2部材2Bの配設に際し、その支持部24には、その建築物側の側面13が支持されるように前記軒樋1が既に配設されている。
なお、図中の破線の矢印は、第1部材2Aに対する第2部材2Bが回動可能であることを示しているが、実際のところ、軒樋1は、略水平状に設置されるので、該軒樋1に対して例えば急勾配でも緩勾配でもよく、任意の角度勾配の屋根面に適用できることが示されている。
【0036】
次に、
図3(b)は、第1部材2A及び第2部材2Bを挿通するように配設した連結具(ボルト杆)2dに対し、補強材2C及びナット2eを臨ませた状態を示している。
なお、図中の破線の矢印は、補強材2Cが前記角度調整における回動とは直交する方向に回動可能であることを示しているが、この“直交”とは、厳密なものではなく、解り易くするための表現に過ぎない。
【0037】
そして、
図3(c)は、補強材2Cを軒樋1を介して第2部材2Bの支持部24に係止させた状態を示すものであって、軒樋1は、この補強材2Cによって、内面側と外面側から挟着状に保持され、より安定に、且つ強固に保持されるものとなる。
なお、図中のカバー部材4は、軒樋1の上面を覆うように取り付けられる部材であって、内部に降雪が堆積したり、落ち葉等が侵入、堆積したり、鳥類等が巣作りすることを防止する部材であって、その表面(化粧面41)には雨水を内部へ導く導水口411として複数の小径のスリット孔が形成され、その下端である軒先端(係合部)42が前記軒樋1の軒先端121と係合して取り付けられ、略垂直状に折り上げた水上端43を、前記軒先支持材2の被取付部22の裏面側に臨ませている。
なお、このカバー材4は、前記軒樋1の上面を覆う部材であるが、冬期における落雪を確実に流下させるために、カバー材4が流れ方向に連続(途切れていないため雪が止まらない)し、その表面が平坦状(上方への凸部分がない)である。
前記軒先端42は、化粧面41の下端から斜め上方へ延在し、その先端を下方へ折曲し、更にその下端を内側へ折曲した略コ字状の係合部を形成している。
前記水上端43には、上方からビス等を打ち込んで、一体的に固定するようにしてもよい。
【0038】
前記
図1(a)の軒先構造に用いたそれ以外の部材について簡単に説明する。
前記化粧材3は、側面視がへ字状に成形された化粧面部31の水下端が前記第1部材2Aの被取付部22に取り付けられ(取付具3b)、その水上端が屋根材5,5同士の重合部分に取り付けられている。
この化粧材3は、前記第1部材2Aの固定部21を覆う部材であり、言い換えると、この化粧材3を配設した部分が、前記第1部材2Aを固定する固着具(図示しない)が打ち込まれる部位である。この化粧材3は、前記固着具の打ち込み孔からの雨水等の浸入を防止すると共に意匠性を高めることができる。
また、図中の6Aは、流れ方向に配設された鋼材(躯体)であって、6Bはそれに垂直状に配設された鼻隠し壁面、6Cは前記躯体6Aの上面側に配設された野地材(下地)、6dは前記野地材6Cの表面に配設された防水シートである。
【0039】
このような構成を有する
図1(a)の第1実施例の軒先構造は、屋根面(屋根材5)に固定される第1部材2Aと、軒樋1を支持する支持部24を有する第2部材2Bとが角度調整機構(23,25)を介して連結される軒先支持材2を用いたものであって、屋根面5に対して軒樋1の角度を任意に調整できる。
また、軒先支持材2は、第1部材2Aと第2部材2Bと角度調整機構(23,25)とを備え、更に第1部材2Aと第2部材2B間に架け渡される補強材2Cにて連結されているので、極めて高い一体性を有するものであり、任意勾配の建築物の屋根面5に、容易に且つ強固に軒樋を固定することができる。
【0040】
さらに、この第1実施例では、補強材2Cの、上端781が第1部材2Aと第2部材2Bとの調整部(25a,25b)に取り付けられると共に下端783が軒樋1の建築物側の側面13を内側から支持することで、軒樋1を内面側と外面側から挟着状に保持するので、軒樋1がより安定に、且つ強固に保持される。
また、この第1実施例では、下端(軒先端)42が、軒樋1の軒先端121と係合されると共に軒樋1の上面を覆うカバー材4の水上端43が、第1部材2Aに取り付けられているので、該カバー材4にて軒樋1の軒先端121を引っ張るように保持するアームの役割が果たされる。
さらに、この第1実施例では、軒樋1の上面を覆うカバー材4が流れ方向に連続(途切れていないため雪が止まらない)し、その表面が平坦状(上方への凸部分がない)であるため、屋根面からカバー材4上に導かれた降雪を、確実に流下させることができる。即ち冬期における落雪の妨げとならないようにカバー材4が配設されている。
【符号の説明】
【0041】
1 軒樋
11 底面
12 内側面
121 軒先端
13 外側面
131 被支持部
2 軒先支持材
2A 第1部材
2B 第2部材
2C 補強材
21 固定部
22 被取付部
23,23a,23b 軸部
24 支持部
25,25a,25b 調整部
73,76 腕状部
74,77 重合縦部
78 脚状部
79 短冊状板
3 化粧材
31 化粧面部
3b 取付具
3c バックアップ材
4 カバー材
41 化粧面部
42 軒先端
43 水上端
5 屋根材
5b 固着具
6A 下地(野地材)