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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】熱式流向センサ
(51)【国際特許分類】
   G01P 13/00 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
G01P13/00 E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020054687
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021156623
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】516355379
【氏名又は名称】ホルトプラン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100178124
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】林 泰正
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-198496(JP,A)
【文献】特開2015-210196(JP,A)
【文献】特開2015-68659(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0005635(US,A1)
【文献】特開平9-5135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P13/00-13/04
G01P 5/00- 5/26
G01F 1/68- 1/699
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給電流により熱を発生するヒータ素子と、流体の流速に応じて変化する前記ヒータ素子からの熱の温度を検出する測温素子とを有する複数の流向検出部と、
前記流向検出部の前記測温素子で検出された温度情報に基づいて、流体の流向を演算する回路部と、
少なくとも前記流向検出部が実装される基板とを備える熱式流向センサであって、
前記基板は、基板主要部と、前記流向検出部が実装される流向検出部用基板部分と、前記基板主要部から前記流向検出部用基板部分に一体的に延び、前記流向検出部を支持する細長形状の流向検出部用支持部とを備え、
前記流向検出部は、前記流向検出部用基板部分の表面および/または裏面において、一対の前記ヒータ素子と前記測温素子が対向状態に配置されるとともに、一対の前記ヒータ素子と前記測温素子による温度の検出軸方向と、前記流向検出部用支持部による前記流向検出部の支持軸方向とが交差する態様で実装されていることを特徴とする熱式流向センサ。
【請求項2】
前記流向検出部は、少なくとも4個設けられ、各流向検出部の前記測温素子を結ぶ軸方向が全て異なる方向となるように前記流向検出部用支持部に実装されている請求項1に記載の熱式流向センサ。
【請求項3】
前記流向検出部は、一対の前記ヒータ素子と前記測温素子による温度の検出軸方向と、前記流向検出部用支持部による前記流向検出部の支持軸方向とが45度~90度の角度で交差する態様で前記流向検出部用基板部分に実装されている請求項1または請求項2に記載の熱式流向センサ。
【請求項4】
前記流向検出部は、一対の前記ヒータ素子と前記測温素子による温度の検出軸方向と、前記流向検出部用支持部による前記流向検出部の支持軸方向とが90度の角度で交差する態様で前記流向検出部用基板部分に実装されている請求項3に記載の熱式流向センサ。
【請求項5】
前記流向検出部用基板部分および前記流向検出部用支持部が複数設けられ、
各流向検出部用基板部分の表面および/または裏面に一対の前記ヒータ素子と前記測温素子を有する前記流向検出部が設けられている請求項1から請求項4のいずれかに記載の熱式流向センサ。
【請求項6】
前記流向検出部用基板部分は、表面および/または裏面に一対の前記ヒータ素子と前記測温素子を有する前記流向検出部が設けられた第1の流向検出部用基板部分と第2の流向検出部用基板部分を備え、
前記流向検出部用支持部は、前記第1の流向検出部用基板部分に連設する第1の流向検出部用支持部と、前記第2の流向検出部用基板部分に連設する第2の流向検出部用支持部とを備える請求項5に記載の熱式流向センサ。
【請求項7】
前記流向検出部用支持部は、前記基板主要部から延びる流向検出部用支持部本体と、該流向検出部用支持部本体の先端部から分岐しながら延び、前記第1の流向検出部用基板部分および前記第2の流向検出部用基板部分にそれぞれ連設する前記第1の流向検出部用支持部および前記第2の流向検出部用支持部を備える請求項6に記載の熱式流向センサ。
【請求項8】
前記第1の流向検出部用支持部および前記第2の流向検出部用支持部は、互いに180度の角度で離間方向に分岐しながら延び、前記第1の流向検出部用基板部分および前記第2の流向検出部用基板部分にそれぞれ連設する請求項6または請求項7に記載の熱式流向センサ。
【請求項9】
前記第1の流向検出部用支持部および前記第2の流向検出部用支持部は、互いに90度の角度で離間方向に分岐しながら延び、前記第1の流向検出部用基板部分および前記第2の流向検出部用基板部分にそれぞれ連設する請求項6または請求項7に記載の熱式流向センサ。
【請求項10】
前記第1の流向検出部用支持部および前記第2の流向検出部用支持部は、互いに離間方向に分岐しながら延びたあと、互いに近接方向に屈曲して延びて前記第1の流向検出部用基板部分および前記第2の流向検出部用基板部分にそれぞれ連設する請求項6または請求項7に記載の熱式流向センサ。
【請求項11】
前記第1の流向検出部用支持部および前記第2の流向検出部用支持部は、前記第1の流向検出部用基板部分に実装されている前記流向検出部の一対の前記ヒータ素子と前記測温素子による温度の検出軸方向と、前記第2の流向検出部用基板部分に実装されている前記流向検出部の一対の前記ヒータ素子と前記測温素子による温度の検出軸方向とが90度の角度で交差する態様で前記第1の流向検出部用基板部分および前記第2の流向検出部用基板部分にそれぞれ連設する請求項6に記載の熱式流向センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱式の動作原理を用いて流体の流向を計測する熱式流向センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
居住空間、工業設備、栽培設備などの農業現場では、風速が重要な環境要素である。さらに、どの方向からの風かという風向の情報は、環境把握を行う上で重要である。例えば、居住空間では、タバコの煙など有害物質の流れの方向を把握できた方がよい。工業分野でもクリーンルームなどの風向きに留意を払うアプリケーションが存在する。また、ICT化・クラウド化等で中心的な役割を果たすデータセンタやサーバルームなどでは、気流管理が適切に行われないと、サーバの冷却が適切に行われなくなり、処理速度の制約を受けることになる。
【0003】
これらの環境では、屋外環境と異なり、空間の風速は1m/s以下であることが多く、また、設置場所も限られるため、小型である必要がある。また、屋外環境であっても、センサの小型化・低コスト化の要求は強くなっており、これらのニーズを満たすセンサデバイスが求められている。
【0004】
ところで、センサデバイスとして、様々な方式が提案・実用化されている。例えば、屋外気象観測で一般的に用いられるのは、いわゆる風見鶏タイプのもので、風の応力によって風下側に羽根が来るようにした風向計が知られている。また、気象庁や屋外気象観測は、これに風速検出のプロペラを仕込んだ飛行機型と呼ばれる風向風速計が用いられる。
【0005】
また、上述の風向風速計以外にも、超音波の伝達速度から風速と風向を求める、超音波式のものが知られている。これは、複数方向の風速を同時に計測し、その複数の風速からベクトルを導き出して風向を得る方法である。風向の算出には、最低2軸の超音波発振器と受信機が必要で、これを3組用いて3軸で計算すると、3次元での風向も得られる。
【0006】
ところが、これらの従来の風向風速計は、装置の大きさが20cm四方以上の空間を必要とするのが一般的であり、また装置コストも高額なものがほとんどである。また、1m/s以下の微風速を良好に検出できるのは、上述の風向風速計のうち超音波式のみであるが、超音波式の風向風速計も分解能を上げるためには使用周波数を上げるか、発振器と受信機の間の距離を広げなければならなかった。
【0007】
そこで、従来から熱式の風向風速計が実用化されていた。この熱式の風向風速計は、指向性を持たせたPt自己発熱式風速センサを3つ組み合わせて、指向性による感度の違いを利用して風向を算出するものであり、小型化が容易で、構造も比較的簡単であり、微風速を計測可能という特徴を備えている。
【0008】
この熱式の風向風速計に用いる熱式流向センサとして、基板上に必要な回路等を実装したものが知られている。具体的には、この熱式流向センサは、図8および図9に示すように、供給電流により熱を発生するヒータ素子20と、流体の流速に応じて変化するヒータ素子20からの熱の温度を検出する測温素子21(21a、21b、21c、21d)とを有する流向検出部2と、流体の気温を計測する気温計測部3と、流体の流向を演算する回路部4と、それらが実装される基板1とを備え、センサの周囲の空間における流体の流向を計測する(例えば、特許文献1参照)
【0009】
そして、この熱式流向センサは、流向検出部用基板部分11の表面および裏面において、一対のヒータ素子20および測温素子21(21a、21b、21c、21d)が基板支持部13による流向検出部2の支持軸方向に沿って対向状態に配置されていた。なお、流向検出部用基板部分11の表面および裏面の各測温素子21(21a、21b、21c、21d)を頂点とする四面体を形成し、各測測温素子21(21a、21b、21c、21d)を結ぶ軸は全て同じ方向とならないように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2016-118511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の熱式流向センサのヒータ素子20と測温素子21の配置構造の場合、流体の流速が大きくなるほど、流体の流向を誤検出する場合があるという問題があった。
【0012】
この点について、図10を参照しつつ具体的に説明する。図10は、流向検出部用基板部分11および流向検出部用支持部13を側面から見た図である。図を簡略化するため、測温素子21のみを図示している。流体は、流向検出部用基板部分11および流向検出部用支持部13の表面に垂直に当たっている状態とする。Qa1は、流向検出部2から放熱される熱を表わし、Qa2は流向検出部用支持部13から放熱される熱を表わし、Qbは流向検出部用支持部13内を伝達する熱を表わす。無風の状態であれば、Qa1およびQa2の放熱量は少なく、Qbの放熱量の方が1桁高い状態となる。
【0013】
ところが、流体が本センサとの間で相対速度を持って流れ始めると、Qa1およびQa2の放熱量は大きくなる。これは、熱式流速センサの測定原理で良く用いられるKingの下記[式1]で表される。
【0014】
[式1]
【0015】
このとき、Qは流体への放熱量でQa1およびQa2に相当する。Uは流体速度、Tは発熱体の温度、Taは流体の温度となる。aとbは定数で、aが流体速度に関わらず流体に流れる熱量を表し、bは流体速度に応じて増加する熱量を表わす。つまり、流体速度が上昇すると、√Uに比例して流体の熱伝導も増加することを意味する。
【0016】
本センサは、流向検出部用基板部分11よりも流向検出部用支持部13の方が表面積が大きいため、流体速度が大きくなればなるほど、Qa1よりもQa2が大きくなって、これに伴いQbが増加する。すると、流向検出部用支持部13から遠い測温素子21cより、流向検出部用支持部13に近い測温素子21aの温度が低くなる。風向検出の原理は、風上側の方が流体への放熱量が大きくなり、温度が低下する現象を用いていることから、本センサは下方位からの流向があると誤検知する虞があった。
【0017】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、流体の流向を精度良く計測することができる熱式流向センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記目的を達成するために、供給電流により熱を発生するヒータ素子と、流体の流速に応じて変化する前記ヒータ素子からの熱の温度を検出する測温素子とを有する複数の流向検出部と、前記流向検出部の前記測温素子で検出された温度情報に基づいて、流体の流向を演算する回路部と、少なくとも前記流向検出部が実装される基板とを備える熱式流向センサであって、前記基板は、基板主要部と、前記流向検出部が実装される流向検出部用基板部分と、前記基板主要部から前記流向検出部用基板部分に一体的に延び、前記流向検出部を支持する細長形状の流向検出部用支持部とを備え、前記流向検出部は、前記流向検出部用基板部分の表面および/または裏面において、一対の前記ヒータ素子と前記測温素子が対向状態に配置されるとともに、一対の前記ヒータ素子と前記測温素子による温度の検出軸方向と、前記流向検出部用支持部による前記流向検出部の支持軸方向とが交差する態様で実装されていることを特徴とする。
【0019】
これによれば、各流向検出部の測温素子がヒータ素子の熱を温度を検出する際、流向検出部用支持部における放熱の影響を軽減することができ、ひいては流体の流向を精度良く演算することが可能となる。
【0020】
また、前記流向検出部は、少なくとも4個設けられ、各流向検出部の前記測温素子を結ぶ軸方向が全て異なる方向となるように前記流向検出部用支持部に実装されているのが好ましい。これによれば、4個の測温素子の温度情報に基づいて流体の流向の三次元方位を求めることができる。
【0021】
また、前記流向検出部は、一対の前記ヒータ素子と前記測温素子による温度の検出軸方向と、前記流向検出部用支持部による前記流向検出部の支持軸方向とが45度~90度の角度で交差する態様で前記流向検出部用基板部分に実装されているのが好ましく、さらに好ましくは、前記流向検出部は、一対の前記ヒータ素子と前記測温素子による温度の検出軸方向と、前記流向検出部用支持部による前記流向検出部の支持軸方向とが90度の角度で交差する態様で前記流向検出部用基板部分に実装されているのがよい。これによれば、各流向検出部の測温素子がヒータ素子の熱を温度を検出する際、流向検出部用支持部における放熱の影響をより軽減することができる。
【0022】
また、前記流向検出部用基板部分および前記流向検出部用支持部が複数設けられ、各流向検出部用基板部分の表面および/または裏面に一対の前記ヒータ素子と前記測温素子を有する前記流向検出部が設けられているのが好ましい。これによれば、流向検出部と支持部の上述の配置構造を容易に製作することができる。
【0023】
前記流向検出部用基板部分は、表面および/または裏面に一対の前記ヒータ素子と前記測温素子を有する前記流向検出部が設けられた第1の流向検出部用基板部分と第2の流向検出部用基板部分を備え、前記流向検出部用支持部は、前記第1の流向検出部用基板部分に連設する第1の流向検出部用支持部と、前記第2の流向検出部用基板部分に連設する第2の流向検出部用支持部とを備えるのが好ましい。この場合、前記流向検出部用支持部は、前記基板主要部から延びる流向検出部用支持部本体と、該流向検出部用支持部本体の先端部から分岐しながら延び、前記第1の流向検出部用基板部分および前記第2の流向検出部用基板部分にそれぞれ連設する前記第1の流向検出部用支持部および前記第2の流向検出部用支持部を備えてもよい。また、前記第1の流向検出部用支持部および前記第2の流向検出部用支持部は、互いに180度の角度で離間方向に分岐しながら延び、前記第1の流向検出部用基板部分および前記第2の流向検出部用基板部分にそれぞれ連設してもよい。また、前記第1の流向検出部用支持部および前記第2の流向検出部用支持部は、互いに90度の角度で離間方向に分岐しながら延び、前記第1の流向検出部用基板部分および前記第2の流向検出部用基板部分にそれぞれ連設してもよい。また、前記第1の流向検出部用支持部および前記第2の流向検出部用支持部は、互いに離間方向に分岐しながら延びたあと、互いに近接方向に屈曲して延びて前記第1の流向検出部用基板部分および前記第2の流向検出部用基板部分にそれぞれ連設してもよい。これらによれば、簡易な構造にして、流向検出部用支持部における放熱の影響を確実に軽減することができる。
【0024】
前記第1の流向検出部用支持部および前記第2の流向検出部用支持部は、前記第1の流向検出部用基板部分に実装されている前記流向検出部の一対の前記ヒータ素子と前記測温素子による温度の検出軸方向と、前記第2の流向検出部用基板部分に実装されている前記流向検出部の一対の前記ヒータ素子と前記測温素子による温度の検出軸方向とが90度の角度で交差する態様で前記第1の流向検出部用基板部分および前記第2の流向検出部用基板部分にそれぞれ連設してもよい。これによれば、流向検出部用支持部における放熱の影響を確実に軽減するとともに、流体の流向を容易に計測することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、各流向検出部の測温素子がヒータ素子の熱を温度を検出する際、流向検出部用支持部における放熱の影響を軽減することができ、ひいては流体の流向を精度良く演算することが可能となる。
【0026】
また、流向検出部のヒータ素子と測温素子の配置を工夫したものであるため、熱式流向センサを低コストで製作、提供することがことができる。これにより、従来は価格面で設置が難しかった設置場所はもとより、従来は実験室に限定されていた風向検出を一般居住空間にも広げることができ、また従来は設置数を多く設けられなかったクリーンベンチなどにも設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施形態に係る熱式流向センサの構成概略図である。
図2図1の熱式流向センサの第1の流向検出部用基板部分および第2の流向検出部用基板部分の表面および裏面を示す拡大図である。
図3図1の熱式流向センサの電気的構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る熱式流向センサの構成概略図である。
図5図4の熱式流向センサの第1の流向検出部用基板部分および第2の流向検出部用基板部分の表面および裏面を示す拡大図である。
図6】本発明の第3の実施形態にに係る熱式流向センサの構成概略図である。
図7図6の熱式流向センサの第1の流向検出部用基板部分および第2の流向検出部用基板部分の表面および裏面を示す拡大図である。
図8】従来の熱式流向センサの構成概略図である。
図9図8の従来の熱式流向センサの流向検出部用基板部分の表面および裏面の拡大図である。
図10図8の従来の熱式流向センサにおける流向検出部用基板部分および流向検出部用支持部の放熱状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1の実施形態>
次に、本発明に係る熱式流向センサ(以下、本センサという)の第1の実施形態について図1図3を参照しつつ説明する。
【0029】
本センサは、図1に示すように、所定の形状に形成された基板1において、流向検出部2および気温計測部3が実装されており、前記流向検出部2の周囲の空間における流体の流向を計測する。なお、基板1の外部において回路部4が設けられている。以下、各構成について具体的に説明する。
【0030】
前記基板1は、多角形の薄板状に形成されており、基板主要部10と、流向検出部2が実装される2個の流向検出部用基板部分11と、気温計測部3が実装される2個の気温計測部用基板部分12と、基板主要部10から流向検出部用基板部分11まで一体的に延びる流向検出部用支持部13と、基板主要部10の両側部から気温計測部用基板部分12まで延びる2個の気温計測部用支持部14とから構成される。
【0031】
この基板1としては、プリント基板として一般に広く販売されているガラスエポキシ製のFR-4が好適に用いられるが、ポリアミド製の基板でもよく、セラミック製の基板、シリコン製の基板のように熱伝導率が低い部材で形成された基板でもよい。
【0032】
前記基板主要部10は、正面視矩形状に形成されており、表面と裏面が非対称または対称の所定の回路パターンが実装されている。なお、基板主要部10は、本センサを他の装置や構造物に取り付けるための取付孔15や、流向検出部2や気温計測部3の温度情報に関するデータをデジタル信号またはアナログ信号により外部の回路部4に伝達する電気的コネクタ16が設けられている。
【0033】
前記流向検出部用基板部分11は、正面視円形状の第1の流向検出部用基板部分111と第2の流向検出部用基板部分112からなり、第1の流向検出部用基板部分111と第2の流向検出部用基板部分112の表面および裏面に流向検出部2が実装されている。
【0034】
この流向検出部2は、流体の流向を検出するためのものであって、図2に示すように、供給電流により熱を発生するヒータ素子20と、流体の流速に応じて変化する前記ヒータ素子20からの熱の温度を検出する測温素子21(21a、21b、21c、21d)とを有し、一対のヒータ素子20と測温素子21(21a、21b、21c、21d)で一つの流向検出部2を構成する。また、一対のヒータ素子20と測温素子21(21a、21b、21c、21d)は、互いに対向状態で配置されており、流向検出部用基板部分11を介して熱的に直接接続された構造となっている。
【0035】
これらヒータ素子20および測温素子21(21a、21b、21c、21d)の配置について具体的に説明すると、図2(a)に示すように、第1の流向検出部用基板部分111の表面では、ヒータ素子20が図2の上側、測温素子21aが図2の下側となるように対向状態に配置される一方、図2(b)に示すように、第1の流向検出部用基板部分111の裏面では、ヒータ素子20が図2の下側、測温素子21bが図2の上側となるように対向状態に配置され、第1の流向検出部用基板部分111の表面と裏面で一対のヒータ素子20および測温素子21(21a、21b)が上下逆の配置となっている。
【0036】
一方、図2(a)に示すように、第2の流向検出部用基板部分112の表面では、ヒータ素子20が図2の下側、測温素子21cが図2の上側となるように対向状態に配置される一方、図2(b)に示すように、第2の流向検出部用基板部分112の裏面では、ヒータ素子20が図2の上側、測温素子21dが図2の下側となるように対向状態に配置され、これにより第2の流向検出部用基板部分112の表面と裏面で1対のヒータ素子20および測温素子21(21c、21d)が上下逆の配置となっている。
【0037】
なお、図2中のA(A1、A2)は、第1の流向検出部用基板部分111または第2の流向検出部用基板部分112の表面および裏面において、各流向検出部2のヒータ素子20と測温素子21(21a、21b、21c、21d)による温度の検出軸方向を示す。本実施形態では、第1の流向検出部用基板部分111の流向検出部2の検出軸方向A1と、第2の流向検出部用基板部分112の流向検出部2の検出軸方向A2は平行な状態になっている。
【0038】
また、上述の流向検出部2の4個の測温素子21(21a、21b、21c、21d)は、2個の測温素子21を結ぶ軸方向が全て異なる方向となるように配置されている。つまり、4個の測温素子21のうち、2個の測温素子21を直線でそれぞれ接続すると、6本の軸を有する四面体を構成するが、これらの軸の角度が同一となる組み合わせが生じないように4個の測温素子21を配置すると、流体の流向の三次元方位を求めることができる。
【0039】
また、本実施形態では、流向検出部2は、第1の流向検出部用基板部分111または第2の流向検出部用基板部分112の表面および裏面において、流向検出部の一対のヒータ素子20と測温素子21による温度の検出軸方向A(A1、A2)と、後述する第1の流向検出部用支持部131および第2の流向検出部用支持部132の支持軸方向Bとが90度の角度で交差する態様で実装されている。
【0040】
前記気温計測部用基板部分12は、図1に示すように、いずれも正面視矩形状に形成されており、表面に気温計測部3が実装されている。この気温計測部3は、図示略の気温計測用素子を有しており、気温計測用素子により気温計測部3の周囲の流体の気温を計測する。
【0041】
前記流向検出部用支持部13は、基板主要部10の長さ方向の一方端部の中央部から延びる細長形状の流向検出部用支持部本体130と、該流向検出部用支持部本体130の先端部から分岐しながら延び、第1の流向検出部用基板部分111に連設する細長形状の第1の流向検出部用支持部131と、該流向検出部用支持部本体130の先端部から分岐しながら延び、第2の流向検出部用基板部分112に連設する細長形状の第2の流向検出部用支持部132とを備え、第1の流向検出部用支持部131と第2の流向検出部用支持部132が流向検出部用支持部本体130の先端部から互いに180度の角度で離間方向に分岐しながら延びている。なお、図2中のBは、第1の流向検出部用支持部131および第2の流向検出部用支持部132の支持軸方向(第1の流向検出部用支持部131および第2の流向検出部用支持部132による第1の流向検出部用基板部分111および第2の流向検出部用基板部分112の流向検出部2を支持する軸線の方向)を示す。
【0042】
このため、第1の流向検出部用基板部分111および第2の流向検出部用基板部分112に実装された流向検出部2は、基板主要部10に一体的に形成された流向検出部用支持部13により支持された構造となっている。このように流向検出部用支持部13を細長形状に形成することにより、流向検出部2から基板主要部10への熱伝導を抑えることができる。
【0043】
前記気温計測部用支持部14は、基板主要部10の長さ方向の一方端部の両側部から気温計測部用基板部分12まで一体的に延びる細長形状に形成されており、先端部に気温計測部用基板部分12が同一平面上に連設されている。このため、気温計測部用基板部分12に実装された気温計測部3は、基板主要部10に一体的に形成された気温計測部用支持部14により支持された構造となっている。
【0044】
このように、基板1は、流向検出部用基板部分11と気温計測部用基板部分12がそれぞれ流向検出部用支持部13と気温計測部用支持部14を介して一体的に連設された構造となっている。よって、流向検出部用基板部分11に実装された流向検出部2と、気温計測部用基板部分12に実装された気温計測部3は、基板主要部10と所定距離を隔てるとともに、互いに所定距離を隔てた状態で配置されることになる。
【0045】
次に本センサの回路部4の電気的構成について、図3を参照しつつ説明する。
【0046】
本センサの回路部4は、量子化装置41(ADコンバータ)、演算装置42(CPU)、情報出力装置43によって構成されている。
【0047】
前記量子化装置41(ADコンバータ)は、流向検出部2の測温素子21からの温度情報と、気温計測部3からの温度情報を、それぞれデジタル信号に変換するAD変換機能を有している。
【0048】
前記演算装置42は、流向検出部2で検出されたヒータ素子20の温度情報と、気温計測部3で計測された周囲流体の気温情報とに基づいて流体の流向を演算する。具体的には、回路部4は、流体の三次元方位の流向を求めるために、測温素子21間の温度差を各軸(X軸、Y軸、Z軸)について演算する機能と、各測温素子21の誤差および温度特性に基づいて各軸(X軸、Y軸、Z軸)の温度差の値を補正する機能と、各軸(X軸、Y軸、Z軸)の合成ベクトルを演算する機能と、この合成ベクトル値から三次元方位を演算する機能を有している。
【0049】
前記情報出力装置43は、演算装置42により演算された流体の流向を所定の装置に出力する。
【0050】
なお、前記演算装置42は、流向検出部2で検出されたヒータ素子20の温度情報と、気温計測部3で計測された周囲流体の気温情報とに基づいて、KINGの式などの熱式の動作原理を用いて流体の流速や流量を演算してもよい。
【0051】
次に、本センサの作用動作について説明する。
【0052】
まず、流向検出部2において、流向検出部用基板部分11の内部電源配線(図示略)からの供給電流により、流向検出部用基板部分11の表面に実装されているヒータ素子20が加熱される。そして、本センサが流体中に配置されると、その流体の流速に応じてヒータ素子20の熱は変化して、流向検出部用基板部分11を介して測温素子21へと熱的に直接伝導する。そして、測温素子21が、ヒータ素子20から伝導してきた熱の温度を検出する。
【0053】
一方、気温計測部3において、図示略の気温計測用素子が気温計測部3の周囲の流体の気温を計測する。
【0054】
そして、回路部4において、流向検出部2で検出されたヒータ素子20の温度情報と、気温計測部3で計測された周囲流体の気温情報とに基づいて流体の流向を演算する。
【0055】
具体的には、本センサを流体中に配置すると、その流体の流速や流速に応じて各測温素子21で検出される温度に変化が生じるとともに、各測温素子21の位置関係による温度変化の違いが生じる。そして、流体中に置かれた発熱体であるヒータ素子20の上流側と下流側では、上流側が下流側より温度が低下し、また、上流側と下流側との間の温度差は流体の流速に応じて大きくなる。従って、この原理を利用して流体の流向を演算することができる。
【0056】
例えば、本実施形態の場合、図2(a)の左右方向をX軸として、右側をX軸のプラス方向とする。また、奥方向をY軸として、奥側Y軸のプラス方向とする。さらに、上下方向をZ軸方向として、上方向をZ軸のプラス方向とする。まず、測温素子21aおよび/または測温素子21bと、測温素子21cおよび/または測温素子21dとの温度差から流体のX軸方向の流れとその強さを表わすベクトルXを求める。このとき、X軸プラス側の2個の測温素子21およびマイナス側の2個の測温素子21の平均値から温度差を求めてもよいし、左右の個々の差を先に求めて、それらの平均値から温度差を求めてもよい。また、測温素子21bおよび/または測温素子21cと測温素子21aおよび/または測温素子21dとの温度差から、流体のZ軸方向の流れとその強さを表わすベクトルZを求める。このとき、上方位および下方位の2個の測温素子21の平均値を求めてから差を導いてもよいし、個別の測温素子21の差を求めてから平均化して差を求めてもよい。また、測温素子21aおよび/または測温素子21cと測温素子21bおよび/または測温素子21dとの温度差から、流体のY軸方向の流れとその強さを表わすベクトルYを求める。このようにして求めた3軸(X軸、Y軸、Z軸)のベクトルX、ベクトルY、ベクトルZから流体の流向の三次元方位を求めることができる。
【0057】
このとき、本センサは、流向検出部部用基板部分11よりも流向検出部用支持部13の方が表面積が多いため、流体速度が大きくなればなるほど、流向検出部用基板部分11からの放熱量Qa1よりも流向検出部用支持部13からの放熱量Qa2が大きくなって、これに伴い流向検出部用基板部分11から流向検出部用支持部13への放熱量Qbが増加する。このため、図8および図9に示すように、ヒータ素子20と測温素子21が流向検出部用支持部13の支持軸方向に沿って配置されている従来のセンサの場合、測温素子21cより測温素子21aの温度が低くなって、本センサは下方位からの流向があると誤検知する虞があった。
【0058】
この点、本実施形態では、各流向検出部2は、第1の流向検出部用基板部分111または第2の流向検出部用基板部分112の表面および裏面において、各流向検出部2における一対のヒータ素子20と測温素子21による温度の検出軸方向A(A1、A2)と、第1の流向検出部用支持部131または第2の流向検出部用支持部132の支持軸方向Bとが90度の角度で交差する態様で実装されている。
【0059】
このため、各流向検出部2の測温素子21がヒータ素子20の熱を温度を検出する際、流向検出部用支持部13における放熱の影響を軽減することができ、ひいては流体の流向を精度良く演算することが可能となる。
【0060】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る熱式流向センサの第2の実施形態について図4および図5を参照しつつ説明する。なお、以下では上記の実施形態と異なる構成についてのみ説明することとし、同一の構成については説明を省略して同一の符号を付すこととする。
【0061】
本センサは、図4に示すように、所定の形状に形成された基板1において、流向検出部2および気温計測部3が実装されており、前記流向検出部2の周囲の空間における流体の流向を計測する。なお、基板1の外部において回路部4が設けられている
【0062】
また、図5(a)に示すように、第1の流向検出部用基板部分111の表面では、ヒータ素子20が図2の右斜上側、測温素子21aが図2の左斜下側となるように対向状態に配置される一方、図5(b)に示すように、第1の流向検出部用基板部分111の裏面では、ヒータ素子20が図2の右斜下側、測温素子21bが図2の左斜上側となるように対向状態に配置され、第1の流向検出部用基板部分111の表面と裏面で一対のヒータ素子20および測温素子21(21a、21b)が上下逆の配置となっている。
【0063】
一方、図5(a)に示すように、第2の流向検出部用基板部分112の表面では、ヒータ素子20が図2の右斜下側、測温素子21cが図2の左斜上側となるように対向状態に配置される一方、図5(b)に示すように、第2の流向検出部用基板部分112の裏面では、ヒータ素子20が図2の右斜上側、測温素子21dが図2の左斜下側となるように対向状態に配置され、これにより第2の流向検出部用基板部分112の表面と裏面で1対のヒータ素子20および測温素子21(21c、21d)が上下逆の配置となっている。
【0064】
これにより、本実施形態では、第1の流向検出部用基板部分111の流向検出部2の検出軸方向A1と、第2の流向検出部用基板部分112の流向検出部2の検出軸方向A2が互いに90度の角度となるように各流向検出部2のヒータ素子20と各測温素子21(21a、21b、21c、21d)が対向状態に配置されている
【0065】
また、前記流向検出部用支持部13は、基板主要部10の長さ方向の一方端部の中央部から延びる細長形状の流向検出部用支持部本体130と、該流向検出部用支持部本体130の先端部から分岐しながら延び、第1の流向検出部用基板部分111に連設する細長形状の第1の流向検出部用支持部131と、該流向検出部用支持部本体130の先端部から分岐しながら延び、第2の流向検出部用基板部分112に連設する細長形状の第2の流向検出部用支持部132とを備え、第1の流向検出部用支持部131と第2の流向検出部用支持が流向検出部用支持部本体130の先端部から互いに90度の角度で離間方向に分岐しながら延びている。
【0066】
なお、図5中のB1は、第1の流向検出部用支持部131の支持軸方向(第1の流向検出部用支持部131による第1の流向検出部用基板部分111の流向検出部2を支持する軸線の方向)を示し、図5中のB2は、第2の流向検出部用支持部132の支持軸方向(第2の流向検出部用支持部132による第2の流向検出部用基板部分112の流向検出部2を支持する軸線の方向)を示す、
【0067】
而して、本実施形態では、流向検出部2は、第1の流向検出部用基板部分111および第2の流向検出部用基板部分112の表面および裏面において、各流向検出部2のヒータ素子20と測温素子21による温度の検出軸方向A(A1、A2)と、第1の流向検出部用支持部131および第2の流向検出部用支持部132の支持軸方向B(B1、B2)とが90度の角度で交差する態様で実装されることになる。
【0068】
このため、第1の流向検出部用支持部131および第2の流向検出部用支持部132が第1の流向検出部用支持部111および第2の流向検出部用支持部112に対して斜め下方位になるため、流体の流向の検出阻害となる角度が斜め下方位に集約される。よって、流体の流向を良好に検出できる角度が広がり、より実用的な流向検出部2を備えることが可能となる。
【0069】
なお、本実施形態における、流向の算出方法の例を以下に示す。図5(a)において、左右方向をX軸かつ右側をX軸のプラス方向とする。奥行方向をY軸とし、奥側をY軸のプラス方向とする。上下方向をZ軸とし、上方向をZ軸のプラス方向とする。説明を容易にするため、軸A1は、X軸、Z軸に対して45度の角度を持ち、軸A2も同様にX軸、Z軸に対して45度の角度を持つものとする。軸A1とA2は平行の関係ではない。このため、軸A1に配置される21aおよび21bの温度差および、軸A2に配置される21cおよび21dの温度差は、X軸とZ軸の双方の成分を測定している事となる。そのため、軸A1と軸A2の差から合成ベクトルのベクトルAVを計算し、三角関数を用いてベクトルAVからX軸に投影すれば、X軸の強さが判る。同様にして三角関数にてベクトルAVからZ軸に投影すれば、Z軸の強さが判る。同様にY軸に対しても三角関数で投影させる事も可能だが、表面に配置された21aおよび21cと、裏面に配置された21bおよび21dとの差から単純に得ることもできる。
【0070】
<第3の実施形態>
次に、本発明に係る流向検出センサの第2の実施形態について図6および図7を参照しつつ説明する。
【0071】
本センサは、図6に示すように、所定の形状に形成された基板1において、流向検出部2、気温計測部3および回路部4が実装されており、前記流向検出部2の周囲の空間における流体の流向を計測する。
【0072】
また、図7(a)に示すように、第1の流向検出部用基板部分111の表面では、ヒータ素子20が図7の右斜下側、測温素子21aが図7の左斜上側となるように対向状態に配置される一方、図7(b)に示すように、第1の流向検出部用基板部分111の裏面では、ヒータ素子20が図7の右斜上側、測温素子21bが図7の左斜下側となるように対向状態に配置され、第1の流向検出部用基板部分111の表面と裏面で一対のヒータ素子20および測温素子21(21a、21b)が上下逆の配置となっている。
【0073】
一方、図7(a)に示すように、第2の流向検出部用基板部分112の表面では、ヒータ素子20が図7の右斜上側、測温素子21cが図7の左斜下側となるように対向状態に配置される一方、図7(b)に示すように、第2の流向検出部用基板部分112の裏面では、ヒータ素子20が図7の右斜下側、測温素子21dが図7の左斜上側となるように対向状態に配置され、これにより第2の流向検出部用基板部分112の表面と裏面で1対のヒータ素子20および測温素子21(21c、21d)が上下逆の配置となっている。
【0074】
これにより、本実施形態では、第1の流向検出部用基板部分111の流向検出部2の検出軸方向A1と、第2の流向検出部用基板部分112の流向検出部2の検出軸方向A2が互いに90度の角度となるように各流向検出部2のヒータ素子20と各測温素子21(21a、21b、21c、21d)が対向状態に配置されている
【0075】
また、前記流向検出部用支持部13は、基板主要部10の長さ方向の一方端部の中央部から延びる細長形状の流向検出部用支持部本体130と、該流向検出部用支持部本体130の先端部から分岐しながら延びて第1の流向検出部用基板部分111に連設する細長形状の第1の流向検出部用支持部131と、該流向検出部用支持部本体130の先端部から分岐しながら延びて第2の流向検出部用基板部分112に連設する細長形状の第2の流向検出部用支持部132とを備える。第1の流向検出部用支持部131と第2の流向検出部用支持部132は、流向検出部用支持部本体130の先端部から互いに90度の角度で離間方向に分岐しながら延びたあと、互いに近接方向に屈曲して延びて前記第1の流向検出部用基板部分111および第2の流向検出部用基板部分112に連設する。
【0076】
なお、図7中のB1は、第1の流向検出部用支持部131の支持軸方向(第1の流向検出部用支持部131による第1の流向検出部用基板部分111の流向検出部2を支持する軸線の方向)を示し、図7中のB2は、第2の流向検出部用支持部132の支持軸方向(第2の流向検出部用支持部132による第2の流向検出部用基板部分112の流向検出部2を支持する軸線の方向)を示す、
【0077】
而して、本実施形態では、流向検出部2は、第1の流向検出部用基板部分111および第2の流向検出部用基板部分112の表面および裏面において、各流向検出部2におけるヒータ素子20と測温素子21による温度の検出軸方向A(A1、A2)と、第1の流向検出部用支持部131および第2の流向検出部用支持部132の支持軸方向B(B1、B2)とが90度の角度で交差する態様で実装されることになる。
【0078】
このため、第1の流向検出部用基板部分111の流向検出部2と第2の流向検出部用支持部112の流向検出部2の距離が近くなるため、流体の流向の検出範囲をピンポイントでとらえることが可能となる。
【0079】
以上の各実施形態では、流向検出部用基板部分11を2個設けるものとしたが、その他の個数設けてもよい。
【0080】
また、前記流向検出部用支持部13を2つに分岐させたが、その他の個数に分岐させてもよい。あるいは、流向検出部用支持部13を分岐させるのではなく、複数の流向検出部用支持部13を基板主要部10に直接設けてもよい。
【0081】
また、前記流向検出部用基板部分11の表面および裏面の各面に流向検出部2を実装したが、いずれか一方の面のみに実装してもよい。
【0082】
また、各流向検出部2のヒータ素子20と測温素子21による温度の検出軸方向Aと、流向検出部用支持部13による流向検出部2の支持軸方向Bを90度の角度で交差させたが、その他の角度で交差させてもよい。ただ、流体の流向を精度良く計測するためには、検出軸方向Aと支持軸方向Bは45度~90度(45度および90度を含む)の範囲内で交差させるのが好ましい。
【0083】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
応用分野としては、エアコン等の空調管理やそれによるエネルギーマネジメント分野など、人の生活環境への利用が見込まれる。また、産業分野では、クリーンルームなどの気流環境を重要視する製造現場や、温室などの栽培施設における風の管理など、従来ではセンサ設置が難しかった場所での設置が可能となる。
【符号の説明】
【0085】
1…基板
10…基板主要部
11…流向検出部用基板部分
111…第1の流向検出部用基板部分
112…第2の流向検出部用基板部分
12…気温計測部用基板部分
13…流向検出部用支持部
130…流向検出部用支持部本体
131…第1の流向検出部用支持部
132…第2の流向検出部用支持部
14…気温計測部用支持部
15…取付孔
16…電気的コネクタ
2…流向検出部
20…ヒータ素子
21(21a、21b、21c、21d)…測温素子
3…気温計測部
4…回路部
41…量子化装置
42…演算装置
43…情報出力装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10