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▶ ケモマウスピース,エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】口腔治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/12 20060101AFI20230703BHJP
   A61F 7/10 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A61F7/12 A
A61F7/10 300E
A61F7/10 320
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020540479
(86)(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 US2019014237
(87)【国際公開番号】W WO2019143968
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】15/875,395
(32)【優先日】2018-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521194932
【氏名又は名称】ケモマウスピース,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ヨスコウィッツ,デイビッド
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0354535(US,A1)
【文献】特開2008-018199(JP,A)
【文献】実開昭52-126692(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/12
A61F 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の口の口腔組織を冷却するための口腔治療装置であって;
近位端と遠位端を有し、0℃を下回る凝固点温度を有する第1の溶液を有する冷却媒体を保存するように構成された外部チャンバであって、使用者の口に挿入するためのマウスピースを形成する前記近位端は使用者の口の上歯茎と上歯の少なくとも主表面に密着関係で隣接して置かれるように構成された順応性のある頂部要素と、使用者の口の下歯茎と下歯の少なくとも主表面に密着関係で隣接して置かれるように構成された順応性のある底部要素とを有し、前記頂部要素は前記使用者の口への設置が可能なように前記底部要素と一体であるかまたは接続されており、使用時に外部チャンバの遠位端が使用者の口から外側に延びている、外部チャンバと;
前記外部チャンバ内に配置され、前記第1の溶液の冷却を助けるために前記第1の溶液の凝固点温度より高い凝固点温度を有する第2の溶液を保存するように構成された袋状体であって、近位端と中央部と遠位端を有し、前記近位端が少なくとも部分的に前記頂部要素と前記底部要素の間に配置されるように寸法決め及び構成された、袋状体と;を有し、
前記第1の溶液が、口内の冷却環境を保持するように前記頂部要素と前記底部要素の全体を流れるとともに
口腔治療装置のマウスピースおよび外部チャンバが一体ユニットとして一体的に形成され、使用時に、前記袋状体が前記一体ユニット内に配置され、且つ前記一体ユニットと前記袋状体との間の空間に前記第1の溶液が満たされることで、前記第1の溶液が前記マウスピースの内表面と前記袋状体の近位端との間を自由に流れ、前記袋状体の近位端を完全に取り囲むことが許容される、口腔治療装置
【請求項2】
前記第1の溶液が塩水である、請求項1に記載の口腔治療装置
【請求項3】
前記第2の溶液が水である、請求項1に記載の口腔治療装置
【請求項4】
前記袋状体の中央部が円形の断面形状を有する、請求項1に記載の口腔治療装置
【請求項5】
前記袋状体は、延伸され、前記マウスピースの中心縦軸に沿って延びている、請求項1に記載の口腔治療装置
【請求項6】
前記袋状体の近位端は、長方形の断面形状を有している、請求項1に記載の口腔治療装置
【請求項7】
前記袋状体の近位端がテーパ状である、請求項1に記載の口腔治療装置
【請求項8】
前記袋状体を密閉するように構成され、寸法決めされたプラグをさらに含む、請求項1に記載の口腔治療装置
【請求項9】
前記外部チャンバは、前記近位端が長方形の断面形状を有するように寸法決めされ、構成されている、請求項1に記載の口腔治療装置
【請求項10】
前記外部チャンバは、前記遠位端が円形の断面形状を有するように寸法決めされ、構成されている、請求項1に記載の口腔治療装置
【請求項11】
前記外部チャンバの前記遠位端は、前記外部チャンバをシールして閉じる遠位壁を有している、請求項1に記載の口腔治療装置
【請求項12】
前記外部チャンバの前記遠位端は、前記袋状体を受け入れるように構成され、寸法決めされた、開孔部を含む、請求項1に記載の口腔治療装置
【請求項13】
前記開孔部をシールするように寸法決めされ、構成されたキャップをさらに有する、請求項12に記載の口腔治療装置
【請求項14】
前記外部チャンバは、外側断熱壁を有している、請求項1に記載の口腔治療装置
【請求項15】
前記外側断熱壁は、使用者が内容物を圧搾し、前記冷却媒体の流れを補助することを可能にする、弾性を提供する材料から製造される、請求項14に記載の口腔治療装置
【請求項16】
前記外部チャンバの近位端は、前記頂部要素前記底部要素のそれぞれの対向する端部において直交するように接続する近位壁で終わる、請求項1に記載の口腔治療装置
【請求項17】
前記頂部要素、前記底部要素及び前記外部チャンバは、一体ユニットとして一体的に形成されている、請求項1に記載の口腔治療装置
【請求項18】
前記外部チャンバは、製造中に前記頂部要素と前記底部要素に接合されて水密シールを形成する別個の部品である、請求項1に記載の口腔治療装置
【請求項19】
前記外部チャンバは、入れ子状構造で前記袋状体を受け入れるように構成され、寸法決めされた、空洞を有している、請求項1に記載の口腔治療装置
【請求項20】
前記外部チャンバのそれぞれは、テーパ状の近位端部を有する、請求項1に記載の口腔治療装置
【請求項21】
前記マウスピースが前記作動可能な密着関係で口の中に配置されたときに、前記使用者が口を通して呼吸することを可能にする、横方向位置に配置され前記外部チャンバに隣接して延びる第1の開孔部をさらに有する、請求項1に記載の口腔治療装置
【請求項22】
前記マウスピースが前記作動可能な密着関係で口の中に配置されたときに、前記使用者が口を通して呼吸することを可能にする、前記第1の開孔部に対向する横方向位置に配置され前記外部チャンバに隣接して延びる第2の開孔部をさらに有する、請求項21に記載の口腔治療装置
【請求項23】
前記マウスピースが前記作動可能な密着関係で口の中に配置されたときに、前記使用者が口を通して呼吸することを可能にするように、前記外部チャンバ内に延び、前記外部チャンバの前記近位端および前記遠位端にそれぞれ形成された第1および第2の開孔部を有する、呼吸用チューブをさらに有する、請求項1に記載の口腔治療装置
【請求項24】
前記呼吸用チューブは、前記頂部要素と前記底部要素の間に延びる、請求項23に記載の口腔治療装置
【請求項25】
前記第2の開孔部は、前記外部チャンバの遠位端に位置するキャップを通して形成されている、請求項23に記載の口腔治療装置
【請求項26】
前記外部チャンバがシリコンから作られる、請求項1に記載の口腔治療装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年1月19日に出願された米国特許出願第15/875,395号の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、化学療法治療中に患者の口腔組織を冷却するためのマウスピースに関する。
【背景技術】
【0003】
癌患者の化学療法治療に関連する最も制限的な副作用の1つは、粘膜炎として知られる口腔粘膜組織の重度の炎症を特徴とする症状である。この炎症は口内炎を引き起こし、患者にとって非常に苦痛であるため、化学療法治療を完了する前に治療を弱めるか、または中断すらしなければならないことがしばしばあった。結果として、しばしば、癌患者は、その症状を効果的に治療するための必要な量の化学療法を受けることができない。同じように、治験責任医師による評価を受けている新しい治療が、粘膜炎に対する耐性がないため、プロコトルを中止する患者を有し、検査の評価に重大な問題を生じることがしばしばある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、化学療法治療中に口腔組織を冷たく保つことは、関連する血管の血管収縮を引き起こし、この組織に流入する化学療法剤の量を減少させることが知られている。口腔組織を冷却する既知の方法は、化学療法剤の投与中に患者の口腔内に定期的に氷を置くことを含む。この方法は、約1時間未満の短い治療期間における口内炎の形成を軽減する。
【0005】
口腔組織を冷却する既知の方法は短い治療には受け入れ可能だが、長時間継続するかもしれない延長された化学療法の治療には、少なくとも以下の理由により実用的ではなかった。第一に、急速に溶ける氷は常に交換しなければならないため、患者が眠ることが非常に困難であった。第二に、さらに重要なことに、炎症を起こしやすい口腔組織のすべてを常に均一に冷却することができなかった。この既知の方法は、延長された治療の間、口腔組織を一定の所望の温度に維持することはないため、粘膜炎および口内炎が不可避的に形成され、化学療法投与量を減少させるか、または、治療を中断させるという制限の問題となる。患者は軽減された化学療法の治療に耐えることができるかもしれないが、その有効性は限定され、治療にもかかわらず癌が制御不能な割合で増殖する可能性があった。
【0006】
従って、既知の方法が不適当なことに鑑み、化学療法治療の延長された期間にわたって、選択された口腔組織を効果的に冷却し、化学療法剤の吸収を減少させ、続く炎症と口内炎の発生を減少させる、口腔治療装置およびその装置を使用する方法に対する要求があった。そのような装置は、既知の方法によって克服されない従前の化学療法治療の有効性低下の問題を軽減または排除する。さらに、いかなる治療の期間にもわたって患者にとって快適であることを維持し、それによってリラクゼーションと睡眠さえも得られる口腔装置に対する要求があった。
【0007】
本発明は、上記の問題に対する解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、化学療法治療中の患者の口腔組織の冷却のためのマウスピースに関する。マウスピースは、少なくとも患者の口の上歯茎および歯の主表面に、密着関係で隣接して置かれるように構成された順応性のある頂部要素を含む。マウスピースはさらに、少なくとも患者の口の下歯茎および歯の主表面に、密着関係で隣接して置かれるように構成された順応性のある底部要素を含む。頂部要素は、一体ユニットとして口内に配置されるように、ボトム要素と一体化あるいは接続されている。マウスピースはさらに、マウスピースが作動可能で密着関係で口の中に置かれたときに、患者が口を通して呼吸できる正面位置に配置された開孔部を含む。マウスピースはさらに、頂部要素および底部要素内に収容された冷却媒体を含み、患者の口への毛細血管血流を減少させるのに十分な口内の冷却環境を保持することができる。
【0009】
本願発明の別の実施形態では、マウスピースは、塩水溶液を含む冷却媒体を収納するためにマウスピースの前面から延びる外部チャンバを含む。開孔部が、前面位置に配置され、外部チャンバを通って延びており、マウスピースが作動可能に密着関係で口の中に置かれたときに、患者が口を通して呼吸することを可能にする。一連の袋状体が頂部要素および底部要素内に配置され、頂部要素と底部要素を流通する冷却媒体を受け入れ、患者の口への毛細管血流を減少させるのに十分なように口内冷却環境を維持するため、該袋状体は外部チャンバに接続されている。
【0010】
別の実施形態では、外部チャンバおよび口内に適合する要素は分離可能であって、本明細書でさらに記述されるように冷却剤を冷却し、口内の要素に導入されることを可能にし、それにより、口内の要素を患者に最も適した大きさにすることを可能にする。
【0011】
例えば、マウスピースは、第1の外部チャンバの近位端がマウスピースの前面に取り外し可能に取り付けられるように寸法付けされ、構成された嵌合要素を含むことができる。嵌合要素は、取り外し可能なスナップフィット装着を可能にするためのさねはぎ嵌合表面を含むことができる。あるいは、嵌合要素は、取り外し可能なねじ嵌合装着を可能にするためのねじ嵌合表面を含むことができる。
【0012】
一実施形態では、少なくとも1つのバルブが、冷却媒体の流れを制御するために、袋状体と外部チャンバとの間に固定して配置されている。少なくとも1つのバルブは、冷却媒体の流れによって圧力が加えられたときに開くように構成された可撓性トンネルを含むダックビルバルブとすることができる。一方向弁タイプのバルブを含んで、他のタイプのバルブを、本発明に利用することができる。他の実施形態では、バルブは、使用者によって開閉するように調整できるハンドルを含むことができる。他の実施形態では、バルブは、ボールバルブを含むことができる。
【0013】
一実施形態では、第1の外部チャンバは、マウスピースと第2のチャンバの間に配置される。別の実施形態では、第1の外部チャンバは、入れ子状構造で第2のチャンバを受け入れるように構成され寸法決めされた遠位開孔部を形成する空洞を含む。第1の外部チャンバおよび第2のチャンバのそれぞれは、テーパ状の近位端分を含むことができる。
【0014】
別の実施形態では、支持装置が、外部チャンバを有するマウスピースを支持するために用いられる。装置は、外部チャンバを受け入れるための表面を有する吊り帯を含む。装置はさらに、吊り帯から延びる少なくとも2つの支持脚を含み、支持脚は、使用中に外部チャンバを支持するための堅い表面上に載るように構成されている。好ましくは、支持脚は、様々な環境に適応し、頑丈な支持を提供するように、伸縮し調整するように構成されている。
【0015】
別の実施形態では、マウスピースは、患者の口の上歯茎および歯の少なくとも主表面に密着関係で隣接して置かれるように構成された順応性のある頂部要素を含む。マウスピースは、患者の口の下歯茎および歯の少なくとも主表面に密着関係で隣接し置かれるように構成された順応性のある底部要素を含む。頂部要素は、一体ユニットとして口の中に設置することができるように、底部要素と一体化しているか、または底部要素に接続されている。外部チャンバは、0℃以下の凝固点温度を有する第1の溶液を有する冷却媒体を保存するために、マウスピースの前面から延びている。第1の溶液の冷却を補助するために第1の溶液の凝固点温度よりも高い凝固点温度を有する第2の溶液を保存するための、袋状体が外部チャンバ内に配置されている。第1の溶液は、患者の口内への毛細血管血流を減少させるのに十分な口内の冷却環境を保持するために、頂部要素および底部要素全体に流れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
添付図面において、
図1】化学療法治療を受けている患者の口内に配置された本発明によるマウスピースの説明図である。
図2図2~5は、本発明の第1の実施形態を示しており、図2は、図1の線2-2方向に見た第1の実施形態によるマウスピースの横断面図である。
図3図2のマウスピースの正面左上方向から見た、上歯茎のための冷却媒体袋状体が示されている斜視図である。
図4】冷却媒体を収容する複数の袋状体を示す図2のマウスピースの上面図である。
図5】一列のエアーポケットによって分離された2列の袋状体を示す図2のマウスピースの右上外壁の内面の立側面図である。
図6図6~10は、本発明の第2の実施形態を示しており、図6は、図1の線2-2方向に見た第2の実施形態によるマウスピースの横断面図である。
図7図6のマウスピースの正面左上方向から見た斜視図であって、上歯を断熱するための単一のU字形袋状体を示している。
図8】U字形上部断熱袋状体の咬み表面を示す図2のマウスピースの上面図である。
図9】さらに口蓋に接触するための拡張可能な上壁を有する図6のマウスピースの正面左上方向から見た斜視図である。
図10】さらに口の隅部に接触するための4つの可撓性アームを有する、図9のマウスピースの正面左上方向から見た斜視図である。
図11図11~14は、本発明の第3の実施形態を示しており、図11は、化学療法の治療を受けている患者の口内に配置されたマウスピースの説明図であり、外部チャンバがマウスピースの前面から延びていることが示されている。
図12】第3の実施形態による図11の線12-12の方向に見たマウスピースの横断面図である。
図13図12のマウスピースの正面左上方向から見た斜視図であって、そこでは上歯茎用の冷却媒体袋状体が示され、外部チャンバに接続されている。
図14図12のマウスピースの上面図であって、頂部要素と底部要素を流れ通った冷却媒体を受けるための一連の接続された袋状体が示されている。
図15】本発明の第4の実施形態を示し、図12のマウスピースの正面左上方向から見た斜視図であって、上歯茎用の冷却媒体袋状体が示され、該冷却媒体袋状体は外部チャンバに接続され、該外部チャンバは、塩水チャンバと、該塩水チャンバ内を自由に移動する純水チャンバを含む。
図16図16~20は、本発明の第5の実施形態を示しており、図16は、化学療法治療を受けている患者の口内に位置するマウスピースの説明図であり、取り外し可能な外部チャンバがマウスピースの前面から延びている。
図17図16の線17-17の方向から見た、第5の実施形態によるマウスピースの断面図である。
図18】上歯肉のための冷却媒体袋状体を示し、冷却媒体袋状体が取り外し可能な外部チャンバに接続されている、図16のマウスピースの正面左上方向から見た斜視図である。
図19】頂部要素および底部要素全体を流れる冷却媒体を受け入れるための一連の接続された袋状体を示す、図16のマウスピースの上面図である。
図20図20Aは、図16のマウスピースの正面左上方向から見た分解斜視図であって、外部チャンバがマウスピースから取り外されている。図20Bは、外部チャンバの近位端の正面左方向から見た分解斜視図であって、冷却媒体の流れを制御するための円筒形部材および弁を示している。
図21図21と22は、本発明の第6の実施形態を示しており、図21は、図12のマウスピースの正面左上方向から見た斜視図であって、上歯茎のための冷却媒体袋状体を示し、冷却媒体袋状体が外部チャンバに接続され、外部チャンバは、塩水チャンバと、塩水チャンバ内を自由に移動し、冷却媒体袋状体を自由に流れる複数の純水カプセルを含む。
図22図21のマウスピースの上面図であり、頂部要素と底部要素を自由に流れる塩水冷却媒体と純水カプセルの両方を受け入れる一連の接続された袋状体を示す。
図23】支持脚および吊り帯を有する支持装置をさらに有している、本発明の第7の実施形態を示す図である。
図24図24~34は、本発明の第8の実施形態を示しており、図24は、化学療法治療を受けている患者の口内に位置するマウスピースの説明図であり、外部チャンバがマウスピースの前面から延びている。
図25図24の線25-25から見た第8の実施形態によるマウスピースの断面図である。
図26図24のマウスピースの右側分解斜視図であり、袋状体がマウスピースと外部チャンバの間に挿入されるように配置されて示されている。
図27図24のマウスピースの右側分解斜視図であり、袋状体が外部チャンバとキャップの間に挿入されるように配置されて示されている。
図28図24のマウスピースの右側分解斜視図であり、頂部要素と底部要素を接続するマウスピースの近位壁を示す。
図29図24のマウスピースの右側分解斜視図であり、外部チャンバ内に挿入された袋状体を示す。
図30図24のマウスピースの上面図であり、頂部要素と底部要素全体を流れる冷却媒体を受け入れるための袋状体を示す。
図31】第1の被験者に対するマウスピースの冷却効果を示す口腔内赤外線温度画像である。
図32】第1の被験者に対するマウスピースの冷却効果を示す口腔内赤外線温度画像である。
図33】第2の被験者に対するマウスピースの冷却効果を示す口腔内赤外線温度画像である。
図34】第2の被験者に対するマウスピースの冷却効果を示す口腔内赤外線温度画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0018】
図1は、化学療法治療を受けている患者の口内に配置された本発明によるマウスピース10を示している。図2および図6に示すように、治療装置は、患者の上歯201と202ならびに下歯203と204に同時に係合し、マウスピースが作動可能に密着関係で口に装着されているときに患者が口を通して呼吸することを可能にする正面位置の開孔部70を含む。一実施形態によれば、可撓性チューブ(図示せず)が開孔部70に貫挿され或いは接続され、患者が楽に呼吸しながら口の外側から空気を吸入するのを助けるように、患者の口の内側に配置され得る。他の実施形態では、この可撓性チューブは、医学的に保証されるならば、患者に酸素を供給するために使用することができる。
【0019】
図2~5は、本発明の第1の実施形態を示しており、マウスピース10は、順応性があり、患者の口腔組織と生体適合性があり、以下にさらに詳細に説明するように、患者の口のサイズおよび形状に合わせて装置を形成するために使用できる材料からなる。適切な材料として、例えば、アクリル、プラスチック、シリコンおよびゴムが含まれる。後述する本発明の第2の実施形態とは異なり、マウスピースの材料自体は冷却媒体であることを意図しておらず、むしろ以下に説明するように、冷却媒体として作用するように構成された他の要素や袋状体を収容する枠組を形成する。
【0020】
マウスピースは、頂部要素18および底部要素19を含み、それらは集合的に化学療法の治療中に口全体の被覆を提供する。頂部要素18は、口内に一体のユニットとして配置できるように、底部要素19と一体であるか、または底部要素19に接続されている。頂部要素18は、順応性のある材料からなり、患者の口の上歯茎211,212および上歯201,202の少なくとも主表面に密着関係で隣接するように構成されている。底部要素19は、順応性のある材料からなり、患者の口の下歯茎213,214および下歯203,204の少なくとも主表面に密着関係で隣接するように構成されている。
【0021】
一実施形態では、治療装置は、最初に患者の歯の咬合記録に合わせてストーン型を作成することによって形成される。型は、患者の咬合をシミュレートするために咬合器に取り付けられ、咬合器は、4~6mmの垂直咬合スペースを形成するように調節される。
【0022】
次に、好ましい治療装置の囲壁が着手される。ワックスパターンが製造されて囲壁に加えられ、このパターンはマウスピースの内壁および外壁を画定する。好ましい材料が、開孔部70の位置も同様に、ワックスパターンを含むように加えられる。好ましい材料は、室温で、または加圧ポットのような加熱源の中の昇温された温度で硬化または保存処理されるようにすることができる。
【0023】
次いで、硬化された装置は、沸騰水中またはオーブンのような高温雰囲気中に置かれ、ワックスパターンを溶融させ、ワックスを注ぎ出して中空の装置を形成する。その後、装置は仕上げられ、成形され、輪郭付けされる。最後に、完成した装置の外面が患者の口の輪郭に適切に合致することを確かにするために、装置は正確な適合を確認するために口の中に配置される。装置は快適にフィットしなければならず、患者が吐き気をするほど患者の口の中に延びてはならない。
【0024】
別の実施形態では、上記のように毎回ストーン型からあつらえの装置を作る必要がなく、マウスピース材料が十分な順応性を有し、患者の口のサイズに合うように様々なサイズが製造される。例えば、マウスピースは、小、中、大、および特大のサイズで提供することができる。マウスピースは、自らの形状を患者の口の大きさおよび形状に合わせるように自己調節する可撓性の内壁および外壁を含むことができる。
【0025】
図2を参照すると、別個の冷却媒体が頂部要素18および底部要素19内に収容され、化学療法の治療後の口内炎および口腔内不快感を防止するように、患者の口腔への毛細血管血流を減少させるのに十分な口内の冷却環境を保持するようにすることができる。冷却媒体は、マウスピースの内側空洞に沿った所定の位置に配置された複数の袋状体81~88内に収容することができる。使用前に、マウスピースは、冷却媒体を所望の温度に冷却するために、冷蔵庫または他の温度制御環境に保存される。マウスピースの冷却媒体は、投与される薬物のタイプおよび患者の歯茎および口に対するそれらの既知の効果に依存して、口腔組織を冷却するためにマウスピースが患者の口の中にある間、化学療法治療の一部の時間を通して、必要な温度を維持することができるのが好ましい。例えば、2時間の化学療法治療のセッションの間に、治療の15分の部分のみが歯茎および口に悪影響を及ぼすことがある。このため、本発明のマウスピースは、最も効果的な時間にマウスピースの冷却効果が最大になるように、最も必要とされる化学療法治療の時間中に患者の口に挿入することができる。
【0026】
冷却媒体は、患者の口腔内の選択された口腔組織と接触して冷却するように、マウスピース内に配置される。また、冷却媒体は、口腔組織内で発生した熱のヒートシンクとして機能するマウスピースを部分的に冷却する。冷却媒体は、熱が口腔組織および装置から継続的に取り去られるように機能し、化学療法治療中に口腔組織を冷たく保ち、装置が著しく温まるのを防止する。治療用装置の著しい温まりは、炎症および口内炎が形成され、その結果治療が減少または中止されることを許容する。
【0027】
好ましくは、冷却媒体は、摂氏約0度~約5度の温度に維持される。冷却媒体は、装置の密封されたチャンバによって運ばれ、そして装置は使用前に冷凍庫または他の冷却装置で適切な温度に冷却される。冷却媒体は、無毒性ゲル、または、初期温度を維持できるヒドロキシエチルセルロース(CELLUSIZE(商標))、ポリアクリル酸ナトリウムまたはビニル被覆シリカゲルを添加して製造した類似の物質であってもよい。
【0028】
図2図1の線2-2方向に見た横断面図である。患者の右上歯201および右上歯茎211は、合わせてU字形の空洞を形成する右上壁41,51と61と係合する。袋状体81,82は、垂直壁41,51にそれぞれ設けられ、上述したように冷却媒体を収容する。該袋状体は、図2に示すように、右上歯茎211の少なくとも主要面に隣接するように寸法決めされている。同様に、患者の口の他の残りの象限は、上述したのと同じ方法で処理されるため、さらなる議論を要しない。
【0029】
図3は、マウスピースの正面左上方向から見た斜視図を示しており、上歯茎のための冷却媒体袋状体が示されている。開孔部70は、マウスピース10が作動可能に密着関係で口の中に置かれたときに、患者が口を通して呼吸することができるように正面位置に配置されている。開孔部70は単一の開孔部として図示されているが、本発明の他の実施形態では、1つより多い開孔部を含むことができる。図示されているように、頂部要素18は底部要素19と、それらの隣接面に沿って、一体であり、それらの間に単一の連続した側壁を集合的に形成し、一体のユニットとして口内に配置することを可能にする。他の実施形態では、頂部要素18は、顎骨の関節に隣接する遠位端において底部要素19にヒンジ式に接続することができる。この実施形態では、患者は、冷却媒体を上および下の歯茎および歯と接触させた状態を維持しながら、口を開閉することができる。
【0030】
図4は、冷却媒体を収容する複数の袋状体を示したマウスピースの上面図である。図示の実施形態では、マウスピース10の内壁に沿っていくつかの離散化された冷却チャンバ(袋状体)81~84が設けられている。いくつかの離散化された冷却チャンバ間の冷却媒体の分配は、呼吸孔70と干渉することなく、患者の歯茎と接触するための順応性のある表面を提供する。該離散チャンバの数およびサイズは、マウスピースの全体的のサイズおよび治療される特定の患者により変化し得る。好ましくは、各チャンバは、適切な接着剤または使用中の脱落を防止する他の手段を用いてマウスピースに固着される。別の実施形態では、各チャンバは取り外し可能に取り付けられ、冷却の量およびタイミングを制御するため、あるいは、使用者の独特な歯の解剖学的構造に対するマウスピースの適合を調整するため、様々なサイズの袋状体と交換することができる。例えば、患者は、隣接する歯からくぼんだりまたは曲がったりする1つ以上の歯を有しているかもしれない。この不一致に対応するために、より小さなまたはより大きな袋状体をマウスピースのこの位置に適合させることができ、それによってよりあつらえ向きの適合を生じさせることができる。
【0031】
図5は、2列の袋状体が1列のエアーポケットによって分離されていることを示す、マウスピースの右上外壁41の内面の立側面図である。第1列の袋状体801は、底部の近くに配置され、患者の右上歯201(図2参照)の近くに位置するように意図されている。第2列の袋状体802は、頂部の近くに配置され、患者の右上歯茎211(図2参照)の近くに位置するように意図されている。歯茎と歯に対して種々の冷却ゾーンを提供するために、異なる体積、および/または、異なるタイプの冷却材料をそれぞれ第1および第2の列に配置することができる。例えば、袋状体801の第1列は、袋状体802の第2列内に含まれる冷却媒体と比較して、より速く温まり、歯からより少なく熱を除去する(したがって、より少なく歯を冷却する)冷却媒体を含むことができる。このことは、比熱が低いゴムまたはプラスチック材料を利用することによっても達成することができる。一般に、特にもし患者が様々な理由により敏感な歯を有する場合は、患者の歯は歯茎よりも冷却されないことが好ましい。
【0032】
別の実施形態では、一列のエアーポケット803が、第1および第2列の袋状体の間に配置される。エアーポケットは、袋状体801と802の第1列および第2列を熱的に分離し、それらの間の熱伝達を最小にするように作用する。他の実施形態では、エアーポケットの列は装置に含まれていない。エアーポケットの列の代わりに、他の熱障壁を利用することもできる。
【0033】
別の実施形態では、マウスピースは、患者の頬と接触してその口腔組織を冷却し、また、上顎および下顎に沿って歯茎を冷却するために、マウスピースの側壁の外側の側面に沿って分離された冷却媒体(図示せず)を含む。
【0034】
別の実施形態では、マウスピースは、口蓋に接触する任意の上壁29(図2参照)に沿って、また、口の基部と接触する任意の下壁30(図2参照)に沿って、また、舌と接触する内壁の一部に沿って冷却媒体(図示せず)を有する。これらの壁部分は、囲んでいる口蓋および口の底部、ならびに舌および隣接する歯茎を冷却するために利用することができる。
【0035】
図6~10は、本発明の第2の実施形態を示し、そこではマウスピース10自体が、順応性があって患者の口腔組織と生体適合性があって、患者の口の大きさおよび形状に従って装置を形成するために使用され得る材料であるのみならず、以下でより詳細に説明するように、マウスピースを形成する材料自体が冷却媒体として作用するように意図されている材料で構成されている。マウスピースを構成する材料には、非毒性ゲル、または、初期温度を維持できるヒドロキシエチルセルロース(CELLUSIZE(商標))、ポリアクリル酸ナトリウムまたはビニル被覆シリカゲルを添加して製造した類似の物質を含むようにしてよい。
【0036】
マウスピースは頂部要素18と底部要素19を含み、それらは集合的に化学療法の治療中の口の全体的な被覆および冷却を提供する。頂部要素18は、底部要素19と一体となって又は接続されて、一体のユニットとして口内へ配置することを可能にする。頂部要素18は、順応性のある材料からなり、患者の口の上歯茎211,212および上歯201,202の少なくとも主表面に密着関係で隣接するように構成されている。底部要素19は、順応性のある材料からなり、患者の口の下歯茎213,214および下歯203,204の少なくとも主表面に密着関係で隣接するように構成されている。
【0037】
図6は、図1の線2-2方向から見た横断面図である。患者の右上歯201および右上歯茎211は、合わさってU字形の空洞を形成する右上壁41,51および61と係合している。マウスピース自体が冷却媒体であるため、上記の図2~5を参照して説明した追加の袋状体は必要ではなく、含まれていない。U字形の絶縁袋状体91が、縦壁41,51の間にそれぞれ取り付けられ、冷却保存装置からマウスピースを取り出し後に非常に迅速に温かくなる材料で構成されている。これにより、該U字形の絶縁袋状体91は、マウスピースの使用中に歯が冷却されるのを実質的に防止する。U字形の袋状体91は、図6に示すように、右上歯201の少なくとも主表面に隣接して置かれるように寸法決めされている。同様に、患者の口の他の残りの象限は、上述したのと同じ方法で処理されるため、さらなる議論を要しない。
【0038】
図7は、マウスピースの正面左上方向から見た斜視図を示しており、上歯を絶縁するための単一のU字形袋状体90が上述のように示されている。他の実施形態では、U字形袋状体は複数の部分から構成することができる。
【0039】
図8は、上述したU字形上部絶縁袋状体90の咬合面を示すマウスピースの平面図である。U字形絶縁袋状体を形成する材料は、順応性があって患者の口内に挿入されている間に快適な咬合面を提供するようにすることができる。
【0040】
図9は、口蓋に接するための拡張可能な上壁をさらに備える、図6のマウスピースの正面左上方向から見た斜視図である。特に、マウスピースの右上内壁51(図6参照)から垂直に延びる第1部分29aと、マウスピースの左上内壁52(図6参照)から垂直に延びる第2部分29bとによって形成されている。第1部分29aは、第2部分29bの上を摺動し、患者の口蓋に接する概略連続した上壁を形成し、そして、これによって化学療法治療中にこの領域を冷却もするようにしている。第1部分29aおよび第2部分29bは、マウスピースの残りの部分と同様の冷却材料から構成され、または、追加の材料及び/又は内部構造補強を有し、それによって頂部が適切な構造的完全性を維持し、口蓋との接触を維持するための上方へ付勢する力を概して有することを確かにするようにしてもよい。上部は、第1部分29aと第2部分29bの重なり配置のため、幅を広げたり狭めたりする能力を有する。したがって、マウスピースは、患者の口蓋を冷却する能力を維持しながら、様々なサイズの口の幅に対応することができる。
【0041】
斜視図には示されていないが、マウスピースの底部は、口の床から舌の下側の中央部まで延びている粘膜の小さな折り畳みである舌の小帯(舌ウェブ、舌側裂孔または裂孔腔内唇とも呼ばれる)と干渉しないようにしながら、患者の口の底/床に接触するように構成されている類似の下部(図6参照)を含む。
【0042】
図10は、使用中に口の隅部に接触するように構成された4つの可撓性アーム301~304をさらに備える、図9のマウスピースの正面左上方向から見た斜視図である。各可撓性アームは、マウスピースの前面に配置された開孔部70の近くの近位端に取り付けられ、マウスピースが患者の口の内側に配置されていないときは、半径方向に伸びている。可撓性アーム301~304は、マウスピースの残りの部分と類似の冷却材料から構成され、適切な構造的な完全性を確実にするために追加の材料および/または内部構造補強を有するようにしてもよい。例えば、適切な構造的な完全性と適切な可撓性を提供するために、各可撓性アームの内側に弾性の長手方向芯を収容するようにすることができる。使用中、マウスピース10が患者の口に挿入される。次に、各可撓性アームが挿入され、患者の口の各隅部に位置決めされる。これにより、可撓性アームは、親知らずの近くの患者の口の隅部の到達困難な領域に追加の冷却ゾーンを提供する。したがって、この実施形態では、マウスピースは、患者の口の隅部を、これらの領域に隣接する歯茎および頬を含めて、冷却する能力を維持しながら、口の様々なサイズに対応することができる。
【0043】
本発明による治療装置は、患者の頬、歯茎、舌、口蓋および口の床を常に均一に冷却する。それは患者の口の輪郭に緊密に一致するため、不快感を与えることなく広範な治療に使用することができる。さらに、その均一な冷却作用は、延長された化学療法処置の間に炎症および口内炎の生成を低減または防止する。
【0044】
本発明の別の実施形態では、化学療法の治療中に患者の口腔組織を冷却するためのシステムが開示される。該システムは、同時に冷却される複数のマウスピースを含む。使用中、第1のマウスピースが選択されて患者の口に挿入され、残りのマウスピースは、温度制御された冷却環境で保存され続ける。予め選択された時間の後、または予め選択された口の温度に到達した後、第1のマウスピースが取り除かれ、第1のマウスピースから消え始めた所望の冷却効果を取り戻すように第2のマウスピースと交換される。このようにして、化学療法治療中の患者の使用のために、冷却されたマウスピースの継続した供給が可能となる。例えば、複数のマウスピースを、冷蔵庫、冷凍庫、氷を入れたタブなどに保存することができ、患者のすぐ近くで到達できるようにすることができる。
【0045】
図11~14は、外部チャンバ300がマウスピース10の前面から延びている、本発明の第3の実施形態を示している。断熱壁301が、液体内容物の低温維持を助けるために、外部チャンバ300を取り囲んでいる。外部チャンバ300は、好ましくは、塩水チャンバ303と純水チャンバ304とを含む。分離壁302が、塩水チャンバ303と純水チャンバ304との間の障壁となっている。一実施形態では、塩水チャンバ303と純水チャンバは、分離壁302に沿って互いに隣接する面を有している。分離壁は、薄いゴムまたはプラスチック材料のような可撓性材料で作ることができる。別の実施形態では、
分離壁は、アルミニウムまたは他の種類の高伝導性材料で作ることができる。
【0046】
塩水および純水は、その安全性および容易な入手可能性のために好ましいが、塩水のように摂氏0度より十分低い凝固点を有する他の材料と摂氏0度の凝固点を有する純水、または、凝固点が摂氏0度に近い一方の溶液と凝固点が摂氏0度未満の凝固点を有する他方の溶液が、塩水、純水またはその両方に代わることができる。
【0047】
マウスピースは、頂部要素18と底部要素19を含み、それらは集合的に化学療法治療中の口の全体の被覆および冷却を提供する。頂部要素18は、底部要素19と一体であるか、または底部要素19に接続され、口内への一体ユニットとしての配置を可能にする。頂部要素18は、順応性のある材料からなり、患者の口の上歯茎211,212および上歯201,202の少なくとも主表面に密着関係で隣接するように構成されている。底部要素19は、順応性のある材料からなり、患者の口の下歯茎213,214および下歯203,204の少なくとも主表面に密着関係で隣接するように構成されている。
【0048】
図12は、図11の線12-12の方向に見た横断面である。患者の右上歯201および右上歯茎211は、集合的にU字形の空洞を形成する右上壁41,51,61に係合する。袋状体181,182はそれぞれ垂直壁41,51に取り付けられ、上述のように冷却媒体を収容する。袋状体は、図12に示すように、右上歯茎211の少なくとも主表面に隣接して置かれるに寸法決めされている。同様に、患者の口の残りの他の象限は、上述したのと同じ方法で処理され、したがって、さらなる議論を要しない。
【0049】
図13は、上歯茎用の冷却媒体袋状体181,189,183,190が示されている、マウスピースの正面左上方向から見た斜視図を示している。開孔部70は、正面位置に配置され、外部チャンバ300を通って延在し、マウスピース10が作動可能に密着関係で口の中に置かれたときに患者が口から呼吸することを可能にする。開孔部70は単一の開孔部として図示されているが、本発明の他の実施形態では、2つ以上の開孔部を含めることができる。開孔部70の内壁は、外部チャンバ300の重量の下で圧し潰されることなくその形状を維持する、プラスチック、硬質ゴムなどの剛性または半剛性材料から作られる。図示のように、頂部要素18は、隣接面に沿って底部要素19と一体であり、集合的にその間に単一の連続した側壁を形成し、一体のユニットとして口内に配置することを可能にする。他の実施形態では、頂部要素18は、顎骨の関節に隣接する遠位端において底部要素19にヒンジ式に接続することができる。この実施形態では、患者は、冷却媒体を上および下の歯茎および歯と接触させた状態を維持しながら、口を開閉することができる。
【0050】
図14は、1つ以上の流路305,306を通って塩水チャンバ303から流れる塩水溶液を収容する複数の袋状体を示したマウスピースの上面図である。マウスピースおよび外部チャンバは、使用前に冷凍庫に保管され、純水チャンバ304に保存された水が凍るようにする。純水チャンバ304は、図に矢印で示すようにマウスピース内の袋状体を通って流れる塩水に冷却効果を与える。図示の実施形態では、マウスピース10の内壁に沿って一連の冷却チャンバ(袋状体)181~184が設けられている。いくつかの接続されたチャンバ間の冷却媒体の分配は、呼吸孔70と干渉することなく、患者の歯茎と接触する順応性のある表面を提供する。離散チャンバの数およびサイズは、マウスピースの全体的のサイズおよび治療される特定の患者により変化し得る。一連の袋状体は、完全に接続されたネットワークを形成する。例えば、袋状体189は、マウスピースの後面に配置され、袋状体181を袋状体182に接続する。同様に、袋状体190はマウスピースの後面に配置され、袋状体183を袋状体184に接続する。好ましくは、各袋状体は、使用中の脱落を防止するために、適切な接着剤または他の手段によってマウスピースに固着される。別の実施形態では、袋状体は取り外し可能に取り付けられ、冷却の量およびタイミングを制御するため、または、使用者の独特な歯の解剖学的構造に対するマウスピースの適合を調整するため、様々なサイズの袋状体と交換することができる。例えば、患者は、隣接する歯からくぼんだりまたは曲がったりする1つ以上の歯を有しているかもしれない。この不一致に対応するために、より小さなまたはより大きな袋状体をマウスピースのこの位置に適合させることができ、それによってよりあつらえ向きの適合を生じさせることができる。
【0051】
図15は、本発明の第4の実施形態を示し、上歯茎用の冷却媒体袋状体が示されておりかつ外部チャンバに接続されており、該外部チャンバは塩水チャンバ303と、該塩水チャンバ内で自由に移動する純水チャンバ304を含む、図12のマウスピースの正面左上方向から見た斜視図である。図示の例では、純水チャンバ304は球形であるが、他の形状を採用することもできる。さらに、本発明のこの実施形態には、複数の水チャンバ304を含めることができる。
【0052】
外部チャンバ303の外側断熱壁は、その形状を維持するように選択され、さらに、使用者が内容物を定期的に圧搾し、マウスピースの一連の袋状体を通って塩水溶液の流れを助けることを可能にするように、弾力性を提供する。
【0053】
別の実施形態(図示せず)では、塩水チャンバ303のみがあり、純水チャンバ304は存在しない。塩水チャンバ303のサイズは、純水(凍結)チャンバを必要とせずに、冷却効果が必要とされる量と時間長さに応じて調整することができる。
【0054】
別の実施形態(図示せず)では、調整可能な支持バンドが、外部チャンバの重量を支持するのを助けるために、使用者の頭の周りを包み込むように外部チャンバに取り付けられている。支持バンドは、フック・アンド・ループファスナー、バックル、スナップなどを介して固定することができる。
【0055】
図16~20は、本発明の第5の実施形態を示す。図16は、化学療法治療を受けている患者の口内に位置するマウスピースの説明図であり、取り外し可能な外部チャンバ300がマウスピースの前面から延びている。
【0056】
外部チャンバ300は、好ましくは、塩水チャンバ303および純水チャンバ304を含んでいる。断熱層(図示せず)が、塩水チャンバ303と純水チャンバ304との間にバリアを提供するために、含まれてよい。
【0057】
塩水および純水はその安全性および容易な入手可能性のために好ましいが、塩水のように摂氏0度より十分低い凝固点を有する他の材料と摂氏0度の凝固点を有する純水、または、凝固点が摂氏0度に近い一方の溶液と凝固点が摂氏0度未満の凝固点を有する他方の溶液が、塩水、純水またはその両方に代わることができる。
【0058】
マウスピースは、頂部要素18および底部要素19を有し、それらは集合的に化学療法治療中に口の全体的な被覆および冷却を提供する。頂部要素18は、一体ユニットとして口内に配置することができるように、底部要素19と一体であるか、又は接続されている。頂部要素18は、順応性のある材料からなり、密着関係で、患者の口内の上歯茎211、212および上歯201、202の少なくとも主表面に隣接して置かれるように構成されている。底部要素19は、順応性のある材料からなり、密着関係で、患者の口の下歯茎213、214および下部歯203、204の少なくとも主表面に隣接して置かれるように構成されている。
【0059】
図17は、図16の線17-17の方向から見た第5の実施形態によるマウスピースの断面図である。患者の右上歯201および右上歯茎211が、集合的にU字型の空洞を形成する右上壁41、51および61と係合している。袋状体181および182は、それぞれ垂直壁41および51に取り付けられ、上述のように冷却媒体を収容する。袋状体は、図17に示すように、右上歯茎211の少なくとも主表面に隣接して置かれるように寸法決めされている。同様に、患者の口の他の残りの象限は、上記と同じ方法で処置されため、これ以上の説明を要しない。
【0060】
図18は、図16のマウスピースの正面左上方向から見た斜視図であって、そこには上歯茎のための冷却媒体袋状体181、189、183、および190が示され、それらは外部の取り外し可能なチャンバに接続されている。開孔部70は、正面位置に配置され、外部チャンバ300を通って延在しており、そのことはマウスピース10が作動可能に密着関係で口の中に置かれたときに患者が口から呼吸することを可能にする。開孔部70は、単一の開孔部として示されているが、本発明の他の実施形態では、1つ以上の開孔部を含むことができる。本発明の全ての実施形態において、開孔部70は、円形、溝形、楕円形、長方形、または他の任意の形状であってもよい。開孔部70の内壁は、外部チャンバ300の重量の下で圧し潰されることなくその形状を維持するように、プラスチック、硬質ゴムなどの剛性または半剛性の材料から作ることができる。図示されているように、頂部要素18は、隣接する表面に沿って底部要素19と一体であり、その間に単一の連続した側壁を集合的に形成し、一体ユニットとしての口内への配置を可能にする。他の実施形態では、頂部要素18は、顎骨の接合部に隣接する遠位端で底部要素19にヒンジ状に連結することができる。この実施形態では、患者は、冷却媒体を上および下の歯茎および歯と接触させた状態を維持しながら、口を開閉することができる。
【0061】
図19は、マウスピースの上面図であり、塩水チャンバ303から1つ以上のチャネル305および306を介して流れる塩水溶液を収容する複数の袋状体を示している。マウスピースおよび外部チャンバは、純水チャンバ304内に保存された水が凍結するように、使用前に冷凍庫内に保管される。純水チャンバ304は、図面中の矢印によって示されるように、マウスピース内の袋状体を流れる塩水に対して冷却効果を与える。図示された実施形態では、一連の冷却チャンバ(袋状体)181~184がマウスピース10の内壁に沿って設けられている。いくつかの接続されたチャンバ間の冷却媒体の分配は、呼吸孔70と干渉することなく、患者の歯茎と接触するための順応性のある表面を提供する。離散チャンバの数およびサイズは、マウスピースの全体的なサイズおよび治療される特定の患者に応じて異り得る。一連の袋状体は、完全に接続されたネットワークを形成する。例えば、袋状体189は、マウスピースの後面に配置され、袋状体181を袋状体182に接続する。同様に、袋状体190は、マウスピースの後面に配置され、袋状体183を袋状体184に接続する。好ましくは、各袋状体は、使用中にそのずれを防止するために、適切な接着剤または他の手段を用いてマウスピースに固定的に取り付けられる。別の実施形態では、チャンバは取り外し可能に取り付けられており、冷却の量およびタイミングを制御するために;または使用者の独自の歯科解剖学のためにマウスピースの適合性を調整するために、様々なサイズの袋状体と交換することができる。例えば、患者が、隣接歯から凹んだり曲がったりする歯を1本以上有している場合があり、この不一致に対応するために、より小さいまたはより大きい袋状体をマウスピースのこの位置に装着することで、よりカスタムフィットを作成することができる。
【0062】
図20Aは、図16のマウスピースの正面左上方向から見た分解斜視図であり、そこでは外部チャンバ300がマウスピース10から取り外されている。一実施形態では、外部チャンバ300は、入れ子状構造で純水チャンバ304を受け入れるように構成され、寸法決めされた遠位開孔部を形成する空洞を有する塩水チャンバ303を有している。塩水チャンバ303および純水チャンバ304のそれぞれは、テーパ状の近位端を有することができる。可撓性の断熱膜(図示せず)が、臨床環境で患者を治療する際に、おそらく約72度Fの暖かい温度となる周囲空気に対する断熱性を提供するために、外部チャンバを取り囲むことができる。
【0063】
外部チャンバ300がマウスピース10から取り外し可能であるため、マウスピースは、小児患者から成人男性まで様々な患者に対応するために、様々なサイズで製造されてよい。しかし、外部チャンバは、あらゆるサイズのマウスピースにも接続可能であるため、限られた数のサイズでのみ製造されればよい。これは、外部チェンバの不必要な製造および工具コストを最小限に抑えつつ、口内に適合する要素の高度にカスタマイズされた適合を可能にする。さらに、使用前に外部チャンバのみを冷蔵庫に入れる必要があり、それによって、冷蔵庫あたり最大数の外部チャンバを保存することができる。さらに、特により長い治療のために、第2の外部チャンバが冷蔵庫に保管され、その後最初にマウスピースに取り付けられた第1の外部チャンバと交換されることができ、そしてこの交換は、マウスピースが患者の口の中に残っている間に、非常に簡単にすべて行うことができる。
【0064】
嵌合要素が、第1の外部チャンバ303の近位端がマウスピース10の前面に取り外し可能に取り付けられることを可能にするように、寸法決めされ、構成されている。一実施形態では、嵌合要素は、スナップフィット装着を可能にするように、さねはぎ嵌合面401および411を有している。別の実施形態では、嵌合要素は、取り外し可能なねじ嵌合装着を可能にするようにねじ嵌合表面(図示せず)を有している。これは、別個のねじ付きカラーを利用することによっても達成され得る。一実施形態では、マウスピースは、溝401を有する側壁を有する円筒状突起400を有している。1つ以上のチャネル305及び306が、円筒状突起400から延びることができ、塩水チャンバ303への導管を提供する1つ以上の対応する開孔部417及び418(図20Bを参照)と整列するように構成されている。
【0065】
図20Bは、外部チャンバの近位端の正面左方向の分解斜視図であって、円筒状部材410と冷却媒体の流れを制御するためのバルブ501および502を示している。一実施形態では、バルブ501および502は、冷却媒体の流れによって圧力が加えられたときに開くように構成された可撓性トンネルを含むダックビルバルブである。可撓性トンネルは、図示のように円錐形にすることができ、または他の適切な形状にすることができる。圧力は、使用中に柔軟性を維持するように構成されている塩水チャンバ303の外側を、使用者が圧迫することによって加えることができる。好ましくは、バルブは、マウスピースを通る一方向流パターンで流体を導くように方向付けられ、温度を維持するのを助けるために塩水の継続的な循環を提供することによって、乱流を減少させ、口内の熱伝達と冷却効果を最大にする。例えば、バルブ501は遠位方向に流れを向けることができ、バルブ502は近位方向に流れを向けることができる。
【0066】
他のタイプのバルブが、一方向弁タイプのバルブを含んで、本発明に利用することができる。他の実施形態では、バルブは、使用者によって開閉するために調整可能なハンドルを含むことができる。他の実施形態では、バルブはボールバルブを含むことができる。バルブは、開孔部417および418に固定的に取り付けられる必要がある。代替的に、バルブは、マウスピースのチャネル305及び306に位置決めされて固定的に取り付けられることができる。さらに別の実施形態では、バルブは、開孔部417及び418並びにチャネル305および306の両方に含まれることができる。別の実施形態では、バルブは使用されず、代わりに、適切な圧力が加えられるまで、接着剤などで固定された1つ以上のフラップが導管を覆い、適切な圧力が加えられるとフラップ材料を開くか、または破って冷却媒体の流れを可能にする。別の実施形態では、導管をシールするために何も使用されず、代わりに、外部チャンバ300が、重力によって開孔部417および418から流体が漏れ出すのを防ぐように、直立位置に維持される。別の実施形態では、気泡が存在する場合、閉じ込められた気泡が、閉じたループシステムから逃げることを可能にするために、1つ以上のリリーフ開孔部が装置に含まれる。
【0067】
図21~22は、本発明の第6の実施形態を示す。図21は、図12のマウスピースの正面左上方向から見た斜視図を示し、そこでは上歯茎のための冷却媒体袋状体が示され、冷却媒体袋状体が外部チャンバ300に接続され、外部チャンバは、塩水チャンバ303と、塩水チャンバ303内を自由に移動し、冷却媒体袋状体を通って自由に流れる複数の純水カプセル307とを含んでいる。純水カプセル307は、球状の形状であってもよいし、ランダムな不定形形状を含めて他の形状であってもよい。好ましくは、各純水カプセル307は、ほぼ同様の体積を有するように均一なサイズにされる。
【0068】
図22は、図21のマウスピースの上面図であり、頂部要素および底部要素を自由に流れる塩水冷却媒体および純水カプセル307の両方を受け入れるための一連の接続された袋状体を示している。一実施形態では、純水カプセル307は直径約4から5mmであり、チャネル305および306は、純水カプセルがマウスピース10を通して自由に流れるようにするために、直径約23から28mmである。水カプセルが詰まることなくチャネルを自由に通過できるほどに十分に小さい限り、水カプセル307とチャネル305及び306は、任意の他の適切な寸法であってもよい。
【0069】
図23は、支持脚801~804および吊り帯805を含む任意の補助支持装置800をさらに含む本発明の第7の実施形態を示している。外部チャンバの補助支持装置は、使用中の快適性をより高め、使用者の筋肉疲労を防止する。支持脚は、様々な位置に対応し、頑丈な支持を提供するために、自在に伸縮し、調節するように構成されることができる。例えば、支持装置800は、使用者600が着座している間、支持脚801および802を椅子700の右アームレスト701上に置き、次いで支持脚803および804を椅子700の左アームレスト702上に置くことにより、外部チャンバ300を支持するように用いられることができる。別の例(図示せず)では、支持装置800は、使用者600がよりリクライニングした姿勢に着座している間、支持脚801~804を使用者600の胸部に置くことにより、外部チャンバ300を支持するように用いられることができる。
【0070】
図24~34は、本発明の第8の実施形態を示す。図24は、化学療法治療を受けている患者の口内に配置されたマウスピースの説明図であり、そこでは外部チャンバ900はマウスピースの前面から延びている。
【0071】
外部チャンバ900は、好ましくは純水袋状体910を含み、間隙920が、塩水を保持するために、袋状体910と外部チャンバ900との間に形成されている。断熱層(図示せず)が、純水袋状体910と周囲の塩水との間にバリアを提供するために含まれてよい。一実施形態では、袋状体910は、塩に対して透過性ではない材料、例えばラテックスベースの材料から作られる。袋状体910は、塩水の冷却を補助するために、塩水の凝固点温度以上の凝固点温度を有する第2の溶液を保存する。好ましい実施形態では、袋状体910内に保存される第2の溶液は純水である。一実施形態では、外部チャンバ900は、使用者が内容物を圧搾して冷却媒体の流れを補助することを可能にするように、弾性を供する外側断熱壁(図示せず)を含む。
【0072】
塩水および純水はその安全性および容易な入手可能性のために好ましいが、塩水のように摂氏0度より十分低い凝固点を有する他の材料と摂氏0度の凝固点を有する純水、または、凝固点が摂氏0度に近い一方の溶液と凝固点が摂氏0度未満の凝固点を有する他方の溶液が、塩水、純水またはその両方に代わることができる。一実施形態では、塩水溶液は、1%から25%の範囲の比率の塩の混合物を含む。一実施形態では、塩水溶液は、約10%の比率での塩の混合物を含み、これは、溶液が華氏約17度まで液体の形態のままでいることを可能にする。一実施形態では、マウスピースの温度は、治療中は20度から25度の範囲である。
【0073】
マウスピースは、頂部要素18および底部要素19を含み、これらは集合的に化学療法治療中の口の全体の被覆および冷却を提供する。頂部要素18は、底部要素19と一体型であるか、または底部要素19に接続されて、一体ユニットとして口の内に配置されることを可能にする。頂部要素18は、順応性のある材料からなり、患者の口の上歯茎211及び212と上歯201及び202の少なくとも主表面に密着関係で隣接して置かれるように構成されている。底部要素19は、順応性のある材料からなり、患者の口の下歯茎213及び214と下歯203及び204の少なくとも主表面に密着関係で隣接して置かれるに構成されている。
【0074】
図25は、図24の線25-25の方向から見た第8の実施形態によるマウスピースの断面図である。患者の右上歯201および右上歯茎211が、集合的にU字型の空洞を形成する右上壁41、51および61と係合している。マウスピースは、好ましくは、純水袋状体910の近位端911を取り囲む単一の連続した内部空洞920を形成するように、予め定められた所定位置で折り曲げられ、折り畳まれた単一の材料の層から形成される。特に、マウスピースの壁は曲げられて、マウスピースを一体に保持し、患者の右歯および右歯茎(上下両方)に隣接して存在する空洞の領域を形成する右外壁45を形成している。同様に、マウスピースの壁は曲げられて、マウスピースを結合し、患者の左歯および左歯茎(上下両方)に隣接して存在する空洞の領域を形成する左外壁46を形成している。マウスピースは、患者の歯および歯茎がU字型の空洞内に密着関係で適合されるように、適切な大きさであることが理解されるべきである。したがって、図25は、患者の歯および歯茎の外側表面とU字型の空洞の壁との間の隙間を示しているが、他の実施形態(図示せず)では、そのような隙間は存在せず(または最小限の隙間)、患者の歯および歯茎はU字型の空洞の壁に対して直接接触する。同様に、患者の口の他の残り象限は、上述と同じ方法で治療されるため、さらなる議論を要しない。
【0075】
純水袋状体910の近位端911は、断面が長方形であってよい。他の実施形態では、純水袋状体910の近位端911は、断面において楕円形であってもよいし、または不定形形状を含めて他の断面形状であってもよい。純水袋状体910の近位端911は、右咬合面壁61と63の間に適合し、及び、左咬合面壁62と64の間に適合するように構成され、寸法決めされている。さらに、純水袋状体910の近位端911は、右外壁45と左外壁46との間に適合するように構成され、寸法決めされている。さらに、冷却効果を最大化し、口内で実質的に均一な温度を維持するために、十分な隙間または空間が、周囲の塩水がマウスピースのすべての表面上およびその間を自由に流れることができるように、純水袋状体910の近位端911を完全に取り囲むことが許容されるべきである。
【0076】
図26は、図24のマウスピースの右側分解斜視図であり、袋状体910が、マウスピース10と外部チャンバ900との間に挿入できるように配置されて示されている。対向する2つの開孔部931および932は、横方向の位置に配置されており、マウスピース10が作動可能に密着関係で口内に配置されたときに患者が口から呼吸することを可能にするように、外部チャンバ900の外側に沿って延在している。開孔部931および932は、2つの別個の開孔部として示されているが、本発明の他の実施形態では、1つの開孔部のみを含むことができ、または3つ以上の開孔部を含むことができる。他の実施形態では、1つ以上の呼吸開孔部は、外部チャンバ900の頂端および/または底端に沿って配置されてもよく、または他の任意の軸に沿って配置されてもよい。本発明の全ての実施形態において、開孔部は、円形、溝形、楕円形、長方形、または他の任意の形状であってもよい。開孔部の内壁は、圧し潰されることなく外部チャンバ900の重量の下でその形状を維持するように、プラスチック、硬質ゴムなどの剛性または半剛性の材料から作ることができる。
【0077】
図示されているように、マウスピース10は、純水袋状体910の近位端911の挿入を可能にするように構成され寸法付けされた正面開孔部11を有している。さらに、前面開孔部11は、外部チャンバ900の近位端901に形成された近位開孔部904の大きさに対応するように構成され、寸法決めされている。図26に示された実施形態では、マウスピース10と外部チャンバ900は別個の部品である。図示されていないが、外部チャンバ900の遠位端902は、外部チャンバをシールして閉じる遠位壁を含む。この実施形態では、袋状体910は純水で満たされ、次いで開孔部913が密封される。次いで、袋状体は、マウスピース10と外部チャンバ900との間に挿入される。次に、マウスピース10は、接着性シール剤または他のタイプの結合剤を使用して、外部チャンバにシールされ、水密シールを形成する。最後に、シリンジを使用して、外部チャンバ900内の塩水を袋状体910を取り囲む間隙に汲み入れる。
【0078】
図27は、図24のマウスピースの右側分解斜視図であり、袋状体910は、外部チャンバ900とキャップ940の間に挿入されるように配置されて示されている。マウスピースおよび外部チャンバは、純水袋状体910内に保存されている水が凍結するように、使用前に冷凍庫内に保管される。純水袋状体910は、外部チャンバ900およびマウスピース10を通って流れる塩水に対して冷却効果を提供する。図示された実施形態では、マウスピース10と外部チャンバ900は、例えば単一の金型から製造することにより、一体ユニットとして一体的に形成されている。この実施形態では、袋状体910が純水で満たされると、外部チャンバ900内に挿入され、その後、キャップ940を用いて外部チャンバを水密シールとして密封する。キャップは、ねじ嵌合構造、スナップフッィト構造、熱活性化接着剤、および/または任意の他のタイプの結合剤または接着剤を介して密封することができる。外部チャンバ900とマウスピース10との間の冷却媒体の分配は、外部チャンバ900の外側に沿って配置された呼吸孔と干渉することなく、患者の口に冷却効果を提供する。
【0079】
好ましい実施形態では、袋状体910は、近位端911及び遠位端912ならびに中央部914を含む。近位端911および中央部914は、入れ子状構造を可能にするように、外部チャンバ900の内面形状に対応する外面形状を形成する。好ましくは、袋状体910は、外部チャンバ900内に自由に配置される。これにより、袋状体910は、凍結中に膨張し、氷が溶け始めると収縮することができる。しかしながら、他の実施形態では、袋状体910は、外部チャンバ内の相対的な位置を維持することができるように、外部チャンバ900の内面に1つ以上の位置で取り付けられる。
【0080】
図28は、図24のマウスピースの右側分解斜視図であり、頂部要素と底部要素とを接続するマウスピース10の近位壁15を示している。さらに、上壁29および対応する下壁30(図示せず)は、近位壁15と一緒に、マウスピースおよびその液体内容物を支持するための全体の枠組みを提供する一方で、マウスピースの空洞の外側表面を形成するように、両方に作用する。一実施形態では、これらの表面、特にマウスピースの表面に使用される材料は、使用中にマウスピースを所望の形状に維持するために、他の表面よりも幾分剛性が高いものとすることができる。本発明のすべての実施形態において、材料は、患者の治療中に水密シールを維持するのに十分な耐久性を有し、患者が使用中にマウスピースを噛んだ場合でも、適用される如何なる力にも耐えることができるべきである。例えば、漏れを生じ得る穿孔または他の可能な損傷を防止するように、金属メッシュ材料が外部表面内に埋め込まれてもよい。いずれにしても、漏れが発生した場合でも、内容物が無毒で好ましくは水、塩、および他の無害な物質を含んでいるため、患者に害はない。
【0081】
本発明の全ての実施形態において、マウスピースは、小児患者から成人男性患者まで様々な患者に対応するように、様々なサイズを製造されることができる。しかし、外部チャンバは、限られた数のサイズを製造するのみで足りる。
【0082】
図29は、図24のマウスピースの右側分解斜視図であり、外部チャンバ内に挿入された袋状体を示している。一実施形態では、袋状体の遠位端912は、外部チャンバ900の長さを超えて延びている。純水袋状体910の開孔部913は、キャップ940を外部チャンバ900上に配置する前に密閉される。一実施形態では、水密シールを形成するために、袋状体の開孔部913内にストッパー(図示せず)を配置してよい。
【0083】
図30は、図24のマウスピースの上面図であり、頂部要素と底部要素全体を流れる冷却媒体を受け入れるための袋状体を示している。上述したように、袋状体910の近位端911は、好ましくは、治療中の冷却効果を最大にするために、少なくとも部分的に患者の上歯と下歯の間に延びている。一実施形態では、袋状体910を取り囲む間隙920は、マウスピースの最近位端を含めて、袋状体910の周囲の全部に実質的に延びている。
【0084】
図24~30に記載された実施形態では、患者は、治療中に所望の冷却効果を実現するために、マウスピースを口の中に30分間保持するだけでよいかもしれない。一実施形態では、マウスピースは、華氏50度から60度の間の口内温度を実現する。
【0085】
別の実施形態では、外部チャンバは、温度が治療中に使用するための所望の開始温度および終了温度に達したときに色を変化させて示す1つまたは複数の感熱性指標をさらに含むことができる。例えば、指標は、保存中に口の中に挿入するのに十分であると考えられる予め定められた温度に達したときに、緑色を示すことができる。同様に、指標は、たとえば使用中に所定の温度に達し、マウスピースの有効性が低下し、マウスピースを口から取り外して使用を終了し、または口の中に配置される準備ができて待機している別の第2のマウスピースとの交換が可能であるときに、黄色を示すことができる。別の実施形態では、装置の温度が、患者の口の中に配置するには冷たすぎると考えられる所定の温度、これは患者に不快感、または患者に害を与える可能性がある温度に達している場合には、赤色を示すことができる。任意の他の色コード、または温度変化に反応する他のタイプの指標を利用することができる。本発明の一実施形態では、装置は、たとえば袋状体が外部袋状体から取り外し可能ではなく、袋状体および外部チャンバの両方が第1の溶液および第2の溶液で予め充填されているように、すぐに使用可能なアセンブリで顧客に出荷される。一実施形態では、装置は、使い捨て装置として使用されるように意図されている。
【0086】
図31~32は、第1の被験者に対するマウスピースの冷却効果を示す口腔内赤外線温度画像である。
【0087】
図33~34は、第2の被験者に対するマウスピースの冷却効果を示す口腔内赤外線温度画像である。
【0088】
別の実施形態(図示せず)では、電池式または電気コンセントに直接差し込まれた電気冷却装置を利用することができ、冷却装置は、外部チャンバを冷却するように適合されている。冷却装置は、電源スイッチを含み、冷却媒体の冷却を補完するために、または冷却媒体を冷却するための主要な手段として使用することができる。
【0089】
本発明の好ましい実施形態の前記説明は、本発明の原理を例示するために提示されたものであり、本発明を例示された特定の実施形態に限定するものではない。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲内に包含されるすべての実施形態、およびそれらの等価物によって定義されることが意図されている。
図1
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