IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブリーデンの特許一覧

<>
  • 特許-ルアー 図1
  • 特許-ルアー 図2
  • 特許-ルアー 図3
  • 特許-ルアー 図4
  • 特許-ルアー 図5
  • 特許-ルアー 図6
  • 特許-ルアー 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】ルアー
(51)【国際特許分類】
   A01K 85/00 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
A01K85/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021074461
(22)【出願日】2021-04-26
(65)【公開番号】P2022168755
(43)【公開日】2022-11-08
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】503275521
【氏名又は名称】株式会社ブリーデン
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】森 健太郎
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-036650(JP,U)
【文献】特開2001-190184(JP,A)
【文献】特開2005-000100(JP,A)
【文献】特開2001-078627(JP,A)
【文献】実開平06-052444(JP,U)
【文献】実開昭57-089466(JP,U)
【文献】国際公開第2016/092668(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/133971(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0007582(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の内部空間を有するボディを備え、
前記ボディは、
前記内部空間にそれぞれ連通し、前記内部空間への水の出入りと前記内部空間への空気の出入りを行う第1の孔と第2の孔とを備え、
前記第1の孔は、前記第2の孔よりボディ後端側に設けられるものであり、
前記第1の孔よりボディ後端側の前記内部空間を水の貯留領域とし、
前記内部空間から一部排出され前記貯留領域に残留した水がボディ後端側に重心を形成する、
ことを特徴とするルアー。
【請求項2】
前記ボディは、透光性を有する
請求項1に記載のルアー。
【請求項3】
前記ボディ内部の上方側に、前記内部空間とは別室の空気室が設けられる
請求項1又は2に記載のルアー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルアーに関する。
【背景技術】
【0002】
魚や蛙等の生物の外形を模したルアー(疑似餌)が、釣り具の1つとして提供されている。この中で、キャストの際に投げ出されたルアーの飛距離を伸ばし、着水後、より魚の動きに近い動作を実現するための重心移動機構を備えたルアーが、従来から提供されている。下記特許文献1に、このような重心移動機構を備えたルアーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平5-80262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のルアーは、中空状のボディと、ボディ内部に水若しくはそれより比重の重い液体を注入するための孔を備える。また、ボディ内部に空洞が残るように液体が注入(導入)された後、ボディが密封される。その結果、特許文献1に開示のルアーにおいて、キャスト後の飛行中及び着水後の潜水中にボディ内部の液体が動き、これに応じてルアーの重心が移動する。
【0005】
しかしながら、特許文献1のルアーにおいて、液体は、ルアーの使用時以外でもボディ内部に常時貯留される。そのため、例えば、使用中に外部から衝撃が加わりボディが破損するような事態が起これば、液体がボディ外に漏れ出てしまう。また、これを修理するにあたり、ルアー使用者が、ボディ内部に再び適量の液体を封入することは難しい。更に、ルアーの製造段階でボディ内部に液体を封入するため、その分の手間が掛かる。更に、ボディ内部の空洞の大きさによっては、ルアーが水中に十分沈まないことも想定される。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、重心移動機能を損なわず、ルアーの使用段階において、ボディに設けた孔から空気や水を適宜出し入れし、ボディ内部に所定量の水を簡便に導入(貯留)可能であるルアーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
中空の内部空間を有するボディを備え、
前記ボディは、
前記内部空間にそれぞれ連通し、前記内部空間への水の出入りと前記内部空間への空気の出入りを行う第1の孔と第2の孔とを備え、
前記第1の孔は、前記第2の孔よりボディ後端側に設けられるものであり、
前記第1の孔よりボディ後端側の前記内部空間を水の貯留領域とし、
前記内部空間から一部排出され前記貯留領域に残留した水がボディ後端側に重心を形成することを特徴とする。
【0009】
更に、本発明に係るルアーにおいて、
ボディは透光性を有することが好ましい。
【0010】
更に、本発明に係るルアーにおいて、
ボディ内部の上方側に、前記内部空間とは別室の空気室が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1の孔と第2の孔とをボディの内部空間にそれぞれ連通させることで、第1の孔及び第2の孔を通じて、ボディの内部空間に水や空気を適宜出入りさせることができる。そのため、例えば、ボディが水中に浸けられた際、ボディ内部に水を導入できると共に、ボディが水中から引き上げられた際、ボディ内部の水の一部をボディ外に排出できる。その結果、極めて簡便な操作によって、ボディ内部に所定量の水を貯留することができる。特に、孔の位置に応じて、ボディ内部に貯留可能な水量を設定(調整)できる。一方、釣りが終わった後は、ボディ内部から水を排出し、ボディ内部を空にできるため、ルアーの破損等によって水が漏れ出るおそれもない。更に、貯留された水の移動によって、ルアーの適切な重心移動が担保される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るルアーの斜視図。
図2図1とは別方向から見た本実施形態に係るルアーの斜視図。
図3】本実施形態に係るルアーの断面図。
図4】本実施形態の別の態様のルアーの断面図。
図5】本実施形態に係るルアーの作用を説明する図(第1の孔を通じてボディ内部に水が導入される態様を示す図)。
図6】本実施形態に係るルアーの作用を説明する図(水中から引き上げられたボディの第1の孔から水が排出される態様を示す図)。
図7】本実施形態に係るルアーの作用を説明する図(飛行中のルアーにおいて、ボディ内部に貯留された水の位置を示す図)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るルアーを詳細に説明する。まず、図1から図3を参照して、本発明の一実施形態に係るルアー1の全体構成を説明する。ここで、図1は、ルアー1を斜め底方側から見た斜視図である。また、図2は、ルアー1を斜め上方側から見た斜視図である。更に、図3は、ルアー1の断面図である。なお、本実施形態に係るルアー1を説明するにあたり、「前後」方向は、ルアー1の奥行き方向(長さ方向)に対応し、「左右」方向は、ルアー1の幅方向に対応し、「上下」方向は、ルアー1の高さ方向に対応する。
【0014】
図1に示されるように、本実施形態に係るルアー1は、ボディ10と、ボディ頭部側の端部に対応する前端11と、ボディ尾部側の端部に対応する後端12等を備える。また、ボディ10は、中空の内部空間13を有する。
【0015】
ボディ10は、例えば、魚の外形を模した長尺部材である。ボディ10の素材は、特に限定されないが、製造コストや成形性の観点から、合成樹脂製であることが好ましい。なお、本実施形態におけるボディ10は、前述のように、魚の外形を模したものであるが、魚以外の生物(例えば、蛙や鼠等)を模したものであってもよい。また、ボディ10は、透明であっても不透明であってもよい。
【0016】
更に、図1に示されるように、ボディ10は、内部空間13に連通する第1の孔21を備える。これにより、ボディ10が水中に浸けられた際、例えば、第1の孔21を通じて、ボディ10の内部に水が導入される。ここで、第1の孔21からボディ10の内部に導入される水は、ボディ10が水中に浸けられた際の周囲の水(川の淡水や海の海水)である。
【0017】
これに対して、例えば、ボディ10が水中から引き上げられた際、第1の孔21を通じてボディ10の内部の水が排出される。ただし、第1の孔21を通じてボディ10に出入りする媒体は、主に水であるが、第1の孔21を通じてボディ10に空気が出入りしてもよい。
【0018】
なお、本実施形態における第1の孔21は、ボディ10の前後方向の略中央に設けられる。ただし、第1の孔21の位置は、これに限られない。また、本実施形態における第1の孔21の数は1つであるが、複数であってもよい(例えば、複数の孔を格子状(メッシュ状)に配列した態様などが考えられる)。更に、本実施形態における第1の孔21は、平面視円形を呈するが、これに限定されない。例えば、平面視において、三角形や四角形などの多角形であってもよい。更に、第1の孔21を複数設ける場合、各々の形状は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0019】
更に、図2に示されるように、ボディ10は、内部空間13に連通する第2の孔22を備える。また、第2の孔22は、第1の孔21よりボディ10の前端11側に設けられることが好ましい。これにより、ボディ10が水中に浸けられた際、例えば、第2の孔22を通じて、ボディ10から空気が排出される。
【0020】
これに対して、ボディ10が水中から引き上げられた際、第2の孔22を通じて、ボディ10の内部に空気が導入される。ただし、第2の孔22を通じてボディ10に出入りする媒体は、主に空気であるが、第2の孔22を通じてボディ10に水が出入りしてもよい。
【0021】
なお、本実施形態における第2の孔22の数は1つであるが、複数であってもよい(例えば、複数の孔を格子状(メッシュ状)に配列した態様などが考えられる)。更に、本実施形態における第2の孔22は、平面視円形を呈するが、これに限定されない。例えば、平面視において、三角形や四角形などの多角形であってもよい。更に、第2の孔22を複数設ける場合、各々の形状は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0022】
なお、本実施形態に係るルアー1は、前記のような構造を備えるが、図4に示されるように、更に、ボディ10の内部に空気を収容する空気室14(内部空間13とは別室)を備えてもよい。特に、図4に示されるように、空気室14を内部空間13より上方側(背中側)に設ければ、水中のルアー1の姿勢を略水平に保つことができる(ルアー1を略水平に泳動させたい場合に適切に対応できる)。
【0023】
次に、図5から図7を参照して、本実施形態に係るルアー1の作用を説明する。ここで、図5は、第1の孔21を通じてボディ10の内部空間13に水Wが導入される態様を示す図である。また、図6は、水Wから引き上げられたボディ10の第1の孔21からボディ10に導入された水の一部30が排出される態様を示す図である。更に、図7は、飛行中のルアー1において、ボディ10の内部空間13に貯留された水31の位置を示す図である。
【0024】
まず、図5に示されるように、例えば、ルアー1の使用者によって、空のボディ10が水Wに浸けられる。ルアー1(ボディ10)がツール40に連結されている場合、ボディ10は、後端12側(尾部側)から水Wに浸かる。このとき、まず第1の孔21が水Wに臨む。これにより、ボディ10の周囲にある水Wは、第1の孔21を通じてボディ10の内部空間13に導入される。
【0025】
これに対して、第2の孔22は、第1の孔21より前端11側に設けられている。そのため、ボディ10内の空気は、第1の孔21を通じてボディ10の内部空間13に導入された水30に押し出されて、第2の孔22からボディ10外に排出される。その後、ボディ10の内部空間13に導入される水量が増え、図5に示されるように、ボディ10の内部空間13は、水30によってほぼ満たされる。
【0026】
なお、ボディ10が透光性を有する場合、前述のように、ボディ10内に残留する空気(気泡)の量を極めて低減することができるため、所望の屈折感(反射感)を呈し、幼魚やプランクトン等といった透光の餌により近いルアーを提供できる。
【0027】
続いて、図6に示されるように、ルアー1(ボディ10)が水中Wから引き上げられると、ツール40と連結するボディ10の前端11側が上方を向く一方、ボディ10の後端12側が下方(水Wの側)を向く。その結果、第2の孔22を通じてボディ10の内部空間13に空気が導入されると共に、水30の一部(ボディ10の前端11側に収容されていた水)は、空気に押し出されて、第1の孔21を通じてボディ10の外に排出される。
【0028】
最終的に、ボディ10の内部空間13に収容された水30のうち、第1の孔21より前端11側の領域にあった水30が排出される。これに対して、ボディ10の内部空間13に収容された水30のうち、第1の孔21より後端12側の領域にある水31は、ボディ10の内部に貯留される。
【0029】
続いて、図7に示されるように、水中Wから引き上げられたルアー1が、図7の方向Aに向けてキャストされる(飛行する)。前述のように、ボディ10の内部空間13には、水31の領域と、それに隣接する空気の領域が形成されるところ、ルアー1(ボディ10)の重心は、水31の領域に対応する。すなわち、図7に示されるルアー1の重心(飛行中のルアー1の重心)は、水31が配されるボディ10の後端12側となる。これにより、ルアー1の飛行方向と重心位置とを対応させることができる。その結果、ルアー1の飛距離を伸ばすことができる。更に、着水後、例えば第1の孔21からボディ10の内部空間13に水Wが導入され、ルアー1の重心が後端12側でなくなる。
【0030】
このように、本実施形態によれば、極めてシンプルな構造によって、ボディ10に貯留される水31の領域を後端12側に配する(ルアー1の重心をボディ10の後端12側に配する)ことができる。その結果、キャストの際の飛距離を担保しつつ、コスト高騰を招かないルアー1を提供できる。それに加えて、着水後は、ボディ10に再び水Wが導入され、ルアー1の重心が後端12側でなくなる。
【0031】
特に、本実施形態のルアー1は、重心移動機構として、ボディ10の内部に錘や錘を支持するスプリング等の別部材を備える必要がない。そのため、コスト高騰を招かないことはもちろん、様々な外形や内部構造を持つ種々のルアー(ボディ)に本実施形態のルアー1を適用することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、水中Wからボディ10を引き上げる操作のみによって、ボディ10の内部空間13に導入された水30の一部(前端11側に配された水)をボディ10の外に排出することができる。
【0033】
更に、水中Wからボディ10を引き上げる操作のみによって、ボディ10の内部空間13に貯留される水を第1の孔21からボディ10の後端12側の領域に配することができる。その結果、極めて簡便な作業によって、ルアー1の重心位置(水31が配される位置)を後端12側に移し、ルアー1の飛距離を伸ばすことができる。
【0034】
本発明の実施形態について詳細に説明した。ただし、前述の説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定する趣旨で記載されたものではない。本発明には、その趣旨を逸脱することなく、前述の実施形態から変更、改良され得るものを含み得る。また、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1,2…ルアー
10…ボディ
11…ボディの前端
12…ボディの後端
21…第1の孔
22…第2の孔
30,31…ボディ内部の水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7