(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】チェーンバケットスキマー
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/10 20060101AFI20230703BHJP
C02F 1/40 20230101ALI20230703BHJP
【FI】
B23Q11/10 E
C02F1/40 C
(21)【出願番号】P 2022189410
(22)【出願日】2022-11-28
【審査請求日】2022-11-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594204756
【氏名又は名称】株式会社ブンリ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 誠
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録実用新案第20-0330860(KR,Y1)
【文献】実開昭55-144589(JP,U)
【文献】実開昭56-287(JP,U)
【文献】実公昭63-8465(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/10;
F02C 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液に浮かぶ浮遊物を除去するチェーンバケットスキマーであって、
前記液の液面の下方に位置する下降端と前記液面の上方に位置する上昇端との間を移動するエンドレスのチェーンと、
前記チェーンに取付けられ、前記液が流入する開口部と、前記液を収容する液収容部とを有し、前記下降端から前記上昇端に向かって移動するとき前記開口部が上を向き、前記上昇端を過ぎて前記下降端に向かうと前記開口部が下を向くバケットと、
前記チェーンと前記バケットとを有し、前記下降端から前記上昇端に向かって移動するバケット上昇部と、前記上昇端から前記下降端に向かって移動するバケット下降部とを含むチェーンバケットユニットと、
前記チェーンバケットユニットを移動させる駆動部と、
前記液面と接する位置に配置され、回転軸を中心に回転することにより前記液を前記チェーンバケットユニットに向けて第1の方向に移動させる第1ファンと、
前記チェーンバケットユニットを挟んで前記第1ファンと反対側に配置され、前記回転軸を中心に回転することにより前記液を前記チェーンバケットユニットに向けて第2の方向に移動させる第2ファンと、
前記バケット上昇部と
水平方向に向かい合い、
前記液面から前記液の液中に延び、前記第1ファンと前記第2ファンとに対応した高さに
前記第1ファンと前記第2ファンとにわたり配置され
、前記第1ファンと前記第2ファンとの回転によって移動する前記液及び浮遊物の一部を前記バケット上昇部に向かわせる第1の流れ制御部材と、
前記バケット下降部と
水平方向に向かい合い、
前記液面から前記液の液中に延び、前記第1ファンと前記第2ファンとに対応した高さ
に前記第1ファンと前記第2ファンとにわたり配置され
、前記第1ファンと前記第2ファンとの回転によって移動する前記液及び浮遊物の一部を前記バケット下降部に向かわせる第2の流れ制御部材と、
前記第1の流れ制御部材の内側で
前記第1ファンと前記第2ファンとの間に形成され、前記バケット上昇部が配置され、前記第1の流れ制御部材の内側に流入した前記液及び浮遊物が入る第1の流入部と、
前記第2の流れ制御部材の内側で
前記第1ファンと前記第2ファンとの間に形成され、前記バケット下降部が配置され、前記第2の流れ制御部材の内側に流入した前記液及び浮遊物が入る第2の流入部と、
を具備したことを特徴とするチェーンバケットスキマー。
【請求項2】
請求項1に記載のチェーンバケットスキマーにおいて、
前記第1ファンの羽根のねじれ方向と前記第2ファンの羽根のねじれ方向とが互いに反対であり、
前記第1ファンと前記第2ファンとが前記回転軸を中心に同一方向に回転するチェーンバケットスキマー。
【請求項3】
請求項2に記載のチェーンバケットスキマーにおいて、
前記回転軸に設けられたファン駆動スプロケットを有し、前記ファン駆動スプロケットが前記チェーンに噛合い、前記チェーンが移動すると前記第1ファンと前記第2ファンとが同じ方向に回転するチェーンバケットスキマー。
【請求項4】
請求項1に記載のチェーンバケットスキマーにおいて、
前記第1の流れ制御部材と前記第2の流れ制御部材との間に形成され、前記第1ファンと向かい合う第1の開口と、
前記第1の流れ制御部材と前記第2の流れ制御部材との間に形成され、前記第2ファンと向かい合う第2の開口と、
を有したチェーンバケットスキマー。
【請求項5】
請求項1に記載のチェーンバケットスキマーにおいて、
前記バケットが樹脂の一体成形品からなり、
前記バケットが前記バケット上昇部に位置した状態において、
第1の上端を有した第1の底板と、
前記第1の上端よりも高さが大きい第2の上端を有し前記第1の底板と協働して前記液収容部を形成する第2の底板と、
前記バケットの幅方向の一端に形成された第1の側板と、
前記バケットの幅方向の他端に形成された第2の側板と、
前記第1の側板と前記第2の側板との間で前記バケットの幅方向の全体に形成され、前記第1の上端よりも低い位置に下端を有したアンダーフロー制御板と、
前記アンダーフロー制御板と前記第1の底板との間に形成されたアンダーフロー流通部と、
を有したチェーンバケットスキマー。
【請求項6】
請求項5に記載のチェーンバケットスキマーにおいて、
前記バケットを前記チェーンに上下方向に回動可能に取付けるバケット取付けピンと、
前記バケットが前記バケット上昇部に位置した状態において前記開口部が上を向くよう前記バケットを支持するストッパ部材と、
を有したチェーンバケットスキマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クーラント等の液の液面に浮く例えば油等の浮遊物を除去するためのチェーンバケットスキマーに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械を冷却するためにクーラントが使用されている。使用されたクーラントは工作機械からタンクに戻され、ポンプによって再び工作機械に供給される。このためワークの表面に付着していた油や工作機械の作動油、潤滑油などがクーラントに混入することが避けられない。クーラントに混入した油はクーラントの液面に浮く。また液面の近くにスラッジ等の細かな除去対象物が漂うこともある。
【0003】
クーラント等の液の液面に漂う油やスラッジ等の浮遊物を除去するために、従来より、オイルスキマー(oil skimmer)と称される装置が使用されてきた。オイルスキマーの典型的な例は、液面付近に漂う油を付着させる無端のベルトと、前記ベルトを液中と液外との間で移動させるモータと、前記ベルトの表面に付着した油を擦り落とすスクレーパ等を備えている。
【0004】
オイルスキマーの一例が特許文献1に開示されている。特許文献1のオイルスキマーはファンを備えている。ファンを回転させることにより、タンク内の液に流れを生じさせ、液面に浮遊する油をベルトに付着させる。ファンを用いるオイルスキマーは、ファンを用いない従来のオイルスキマーと比較して、油の回収効率を高めることができる、とのことである。
【0005】
油を付着させるための前記ベルトを使用する代わりに、チェーンバケットを使用するオイルスキマーも公知である。この種のオイルスキマーはチェーンバケットスキマー(chain bucket skimmer)と称され、当業界で活躍している。チェーンバケットスキマーの一例が特許文献2に開示されている。
【0006】
特許文献2に記載されたチェーンバケットスキマーは、モータによって上下方向に移動するエンドレスのチェーンと、チェーンに取付けられたバケットとを有している。前記バケットを液中か上方に移動させることにより、液面に漂う油を前記バケットに取り込む。前記バケットは、上昇端に達したのち下降端に向かって下降する。その際にバケットが反転し開口部が下を向くことにより、バケット内の油を含む液がシュート上に排出される。
【0007】
特許文献2に記載されたチェーンバケットスキマーは、ベルトを使用する従来のオイルスキマーと比較して油等の回収効率が高い。しかもチェーンバケットスキマーは、ベルトの摩耗や破損等の問題を生じない。このためベルトを交換するなどの保守管理に要する手間が少なくて済むという利点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国登録実用新案第20-0330860号公報
【文献】特開2005-14127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ベルトを使用する従来のオイルスキマーは油の回収効率が低い。このため液(例えばクーラント)の使用量が多い工作機械では、油を回収しきれないという問題がある。特許文献1に示されたオイルスキマーのようにファンを備えていたとしても、液面に浮遊する油を効率良くベルトに向かわせることができるとは限らない。
【0010】
特許文献2のチェーンバケットスキマーは、一般的なオイルスキマーと比較して油の回収効率が高く、しかもベルトの摩耗や破損等の問題を生じない。しかしクーラントの使用量が多い工作機械では、油の回収効率が不足することがある。このためチェーンバケットスキマーの利点を生かしつつ、油の回収効率をさらに高めることが望まれた。
【0011】
この発明の目的は、液に浮く油や液面付近に漂う除去対象物を効率良く除去することができるチェーンバケットスキマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの実施形態は、液に浮かぶ浮遊物を除去するチェーンバケットスキマーであって、エンドレスのチェーンとバケットとを含むチェーンバケットユニットを有している。前記チェーンは、前記液の液面の下方に位置する下降端と、前記液面の上方に位置する上昇端との間を移動する。前記バケットは前記チェーンに取付けられ、前記液が流入する開口部と、前記液を収容する液収容部とを有している。
【0013】
前記バケットは、前記下降端から前記上昇端に向かって移動するとき前記開口部が上を向き、前記上昇端を過ぎて前記下降端に向かうと反転して前記開口部が下を向く。前記チェーンバケットユニットは、前記下降端から前記上昇端に向かって移動するバケット上昇部と、前記上昇端から前記下降端に向かって移動するバケット下降部とを含んでいる。
【0014】
本実施形態のチェーンバケットスキマーは、前記チェーンバケットユニットを移動させる駆動部と、第1ファンと、第2ファンと、第1の流れ制御部材と、第2の流れ制御部材と、第1の流入部と、第2の流入部とを有している。前記第1ファンと前記第2ファンとは、それぞれ前記液面と接する位置に配置されている。
【0015】
前記第1ファンは、回転軸を中心に回転することにより、前記液を前記チェーンバケットユニットに向けて第1の方向に移動させる。前記第2ファンは、前記チェーンバケットユニットを挟んで前記第1ファンと反対側に配置されている。前記第2ファンが前記回転軸を中心に回転すると、前記液が前記チェーンバケットユニットに向けて第2の方向に移動する。
【0016】
前記第1の流れ制御部材は、前記バケット上昇部と水平方向に向かい合い、前記液面から前記液の液中に延び、前記第1ファンと前記第2ファンとに対応した高さに前記第1ファンと前記第2ファンとにわたり配置され、前記第1ファンと前記第2ファンとの回転によって移動する前記液及び浮遊物の一部を前記バケット上昇部に向かわせる。前記第2の流れ制御部材は、前記バケット下降部と水平方向に向かい合い、前記液面から前記液の液中に延び、前記第1ファンと前記第2ファンとに対応した高さに前記第1ファンと前記第2ファンとにわたり配置され、前記第1ファンと前記第2ファンとの回転によって移動する前記液及び浮遊物の一部を前記バケット下降部に向かわせる。前記第1の流入部は、前記第1の流れ制御部材の内側で前記第1ファンと前記第2ファンとの間に形成され、前記バケット上昇部が配置され、前記第1の流れ制御部材の内側に流入した前記液及び浮遊物が入る。前記第2の流入部は、前記第2の流れ制御部材の内側で前記第1ファンと前記第2ファンとの間に形成され、前記バケット下降部が配置され、前記第2の流れ制御部材の内側に流入した前記液及び浮遊物が入る。
【0017】
本実施形態のチェーンバケットスキマーにおいて、前記第1ファンの羽根のねじれ方向と前記第2ファンの羽根のねじれ方向とが互いに反対であり、前記第1ファンと前記第2ファンとが前記回転軸を中心に同一方向に回転してもよい。前記回転軸に設けられたファン駆動スプロケットを有し、前記ファン駆動スプロケットが前記チェーンに噛合い、前記チェーンが移動すると前記第1ファンと前記第2ファンとが同じ方向に回転してもよい。
【0018】
前記第1の流れ制御部材と前記第2の流れ制御部材との間に、前記第1ファンと向かい合う第1の開口が形成されてもよい。前記第1の流れ制御部材と前記第2の流れ制御部材との間に、前記第2ファンと向かい合う第2の開口が形成されてもよい。前記第1の開口は前記第1の流入部と第2の流入部とに連通している。第2の開口も前記第1の流入部と第2の流入部とに連通している。
【0019】
前記バケットが樹脂の一体成形品からなり、第1の上端を有した第1の底板と、前記第1の上端よりも高さが大きい第2の上端を有した第2の底板と、第1の側板と、第2の側板と、アンダーフロー制御板と、アンダーフロー流通部とを有しているとよい。前記第2の底板は、前記第1の底板と協働して前記液収容部を形成する。前記アンダーフロー制御板は前記バケットの幅方向の全体に形成され、前記第1の上端よりも低い位置に下端を有している。前記アンダーフロー流通部は、前記アンダーフロー制御板と前記第1の底板との間に形成されている。
【0020】
前記チェーンバケットユニットが、前記バケットを前記チェーンに上下方向に回動可能に取付けるバケット取付けピンと、前記バケットが前記バケット上昇部に位置した状態において前記開口部が上を向くよう前記バケットを下側から支持するストッパ部材とを有してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本実施形態のチェーンバケットスキマーによれば、油等の浮遊物を含む液を第1ファンと第2ファンとによって、チェーンバケットユニットのバケット上昇部に向けて移動させることができる。そしてバケット上昇部付近に移動してきた油等の浮遊物を、上方に移動するバケットの内部に効率良く取り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】1つの実施形態に係るチェーンバケットスキマーの斜視図。
【
図2】
図1中のF2-F2線に沿うチェーンバケットスキマーの断面図。
【
図3】
図2中のF3-F3線に沿うチェーンバケットスキマーの断面図。
【
図4】
図3中のF4-F4線に沿うチェーンバケットスキマーの断面図。
【
図5】
図1に示されたチェーンバケットスキマーのバケットの背面図。
【
図6】
図5中のF6-F6線に沿うバケットの断面図。
【
図7】
図6に示されたバケットが上昇端を過ぎて反転した状態を示す断面図。
【
図8】1つの実施形態のチェーンバケットスキマーの油の回収量と、従来のチェーンバケットスキマーの油の回収量を表わしたグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、チェーンバケットスキマーの1つの実施形態について、
図1から
図8を参照して説明する。
図1は、チェーンバケットスキマー10の斜視図である。
図2は、
図1中のF2-F2線に沿うチェーンバケットスキマー10の断面図である。
図3は、
図2中のF3-F3線に沿うチェーンバケットスキマー10の断面図である。
【0024】
チェーンバケットスキマー10は、水溶性のクーラント等の液Qを収容するタンク11(
図2に一部のみ示す)に設置されている。タンク11に収容された液Qの液面Q1に油等の浮遊物Q2が浮遊している。チェーンバケットスキマー10は、油等の浮遊物Q2を除去するための液浄化装置として機能する。タンク11に収容された液Qは、ポンプによって工作機械等の液使用部に供給される。液使用部において使用された液Qは再びタンク11に戻される。
【0025】
チェーンバケットスキマー10は、上下方向に移動するエンドレスのチェーン20と、チェーン20に取付けられた複数のバケット21とを含んでいる。チェーン20とバケット21によって、上下方向に移動するチェーンバケットユニット22が構成されている。チェーンバケットユニット22は筐体23の内側に配置されている。チェーン20は、液面Q1の下方に位置する回転体25と、液面Q1の上方に位置する駆動スプロケット26との間に巻き掛けられている。
【0026】
駆動スプロケット26は、減速機付きのモータ30によって一定の方向に回転する。駆動スプロケット26とモータ30とは、チェーンバケットユニット22を上下方向に移動させるための駆動部31を構成している。電気ケーブル32(
図1と
図2に一部を示す)によってモータ30に電力が供給される。
【0027】
筐体23の側面の一部に、取り外し可能なカバー部材23aが設けられている。カバー部材23aを貫通してシュート35が配置されている。シュート35は、駆動スプロケット26に近い第1の端部35aから、カバー部材23aの外側に配置された第2の端部35bに向かって、高さが低くなるよう傾斜している。第2の端部35bの下方に油水分離装置が配置されている。
【0028】
チェーンバケットユニット22は、バケット21が上方に移動するバケット上昇部22aと、バケット21が下方に移動するバケット下降部22bとを含んでいる。バケット上昇部22aは、下降端に位置する回転体25から上昇端に位置する駆動スプロケット26に向けて移動する。バケット下降部22bは、駆動スプロケット26から回転体25に向けて移動する。
【0029】
回転体25と駆動スプロケット26との間に、チェーン20の張り具合を自動調整するテンション機構40が設けられている。テンション機構40は、筐体23に固定されたガイド部材41と、ロッド42と、ばね43などを含んでいる。ロッド42は、ガイド部材41によって上下方向に移動可能に支持されている。ロッド42の下端に回転体25が配置されている。ロッド42がばね43によって下方に付勢されることにより、チェーン20に適度な張力が与えられる。
【0030】
図4は、
図3中のF4-F4線に沿うチェーンバケットスキマー10の断面図である。
図5は、チェーン20の一部とバケット21を示す背面図である。
図6は、
図5中のF6-F6線に沿うバケット21の断面図である。
図2と
図5に示された両方向矢印A1は、チェーン20の長さ方向を示している。
【0031】
図5と
図6とに示されたように、チェーン20は、一対のリンクプレート50,51からなるリンク対52と、ピン53と、ピン53に設けられたローラ54とを有している。チェーン20の長さ方向に隣り合うリンク対52が、ピン53によって互いに回動可能に接続されている。
【0032】
チェーン20の長さ方向の一部に、バケット21を取付けるためのボルト形のバケット取付けピン55が設けられている。バケット21の背面にブラケット部21aが形成されている。ブラケット部21aの孔21bにバケット取付けピン55が通され、ダブルナット56がねじ込まれる。バケット21は、バケット取付けピン55を中心に、
図6に両方向矢印A2で示された方向に回転することができる。
【0033】
図6は、バケット21が上方に移動するとき、すなわちバケット21がバケット上昇部22aに位置したときの状態を示している。バケット21は、液Qを流入させることができる開口部60と、液Qを収容する液収容部61とを有している。バケット21が上方に移動するときには開口部60が上を向く。すなわちバケット21が上向き状態となる。このときバケット21はストッパ部材62によって下側から支持される。
【0034】
バケット21が上昇端の駆動スプロケット26を通り、バケット下降部22bに移動すると、バケット21がバケット取付けピン55を中心に、
図7に実線B1で示す位置から2点鎖線B2で示す位置に反転する。これにより開口部60が下を向く。すなわちバケット21が下向き状態となる。このようにバケット21は上下方向に回動可能であり、バケット21が上方に移動するときには上向き状態となり、下方に移動するときに下向き状態となる。
【0035】
バケット21は樹脂の一体成形品からなる。
図5と
図6とに示されたように、バケット21は、第1の上端70を有した第1の底板71と、第2の上端72を有した第2の底板73と、第1の側板74と、第2の側板75と、アンダーフロー制御板76とを有している。
図5に示されたように第1の側板74はバケット21の幅方向の一端に形成されている。第2の側板75はバケット21の幅方向の他端に形成されている。
【0036】
図6に示されたようにバケット21が上向き状態にあるとき、第2の上端72の高さは、第1の上端70の高さよりも大きい。第1の底板71と第2の底板73とは、側面方向から見て互いに角度θ1をなし、第1の底板71と第2の底板73とが協働して液収容部61を形成している。
【0037】
図5に示されたようにアンダーフロー制御板76は、第1の側板74と第2の側板75との間で、バケット21の幅方向の全体にわたり形成されている。
図6に示されたようにバケット21が上向き状態において、アンダーフロー制御板76の下端77は、第1の上端70よりも低い位置にある。アンダーフロー制御板76と第1の底板71との間に、アンダーフロー流通部78と、アンダーフロー用スリット79が形成されている。
【0038】
図1から
図4に示されたように、本実施形態のチェーンバケットスキマー10は、ファンユニット80と、第1の流れ制御部材81と、第2の流れ制御部材82とを備えている。第1の流れ制御部材81と第2の流れ制御部材82とによって、流れ制御ユニット83が構成されている。さらにチェーンバケットスキマー10は、第1の流れ制御部材81の内側に形成された第1の流入部85と、第2の流れ制御部材82の内側に形成された第2の流入部86とを備えている。
【0039】
ファンユニット80は、第1ファン91と、第2ファン92と、回転軸93と、ファン駆動部94とを含んでいる。第1ファン91は、回転軸93を中心に回転する例えば4枚の羽根91aを有している。
図4に示されたように第2ファン92は、チェーンバケットユニット22を挟んで第1ファン91と反対側に配置されている。第2ファン92は、例えば4枚の羽根92aを有し、回転軸93を中心に第1ファン91と同じ方向に回転する。第1ファン91の羽根91aと第2ファン92の羽根92aとは、それぞれ、液面Q1と接する位置に配置されている。なお、第1ファン91と第2ファンの羽根の数は、それぞれ4枚以外でもよい。
【0040】
工作機械の運転状況に応じてタンク11の液面Q1の位置が変化する。例えば工作機械が停止していると、液面Q1の位置は、第1ファン91と第2ファン92の上部付近に位置している。工作機械が運転され、液Qが使用されると、液面Q1の位置が下がる。液面Q1の高さが変化しても、第1ファン91の羽根91aと第2ファン92の羽根92aとが液に触れることができるように、ファンユニット80の高さが設定されている。
【0041】
ファン駆動部94は、回転軸93に設けられたファン駆動スプロケット95を有している。ファン駆動スプロケット95はチェーン20に噛み合い、チェーン20の移動に伴って回転する。ファン駆動スプロケット95が回転すると回転軸93が回転し、第1ファン91と第2ファン92とが互いに同じ方向に回転する。
【0042】
図2に示されたようにファンユニット80を側面方向から見て、第1ファン91の羽根91aと第2ファン92の羽根91aとは、互いに反対方向にねじれている。第1ファン91と第2ファン92とが、それぞれ
図3に矢印R1で示す方向に回転すると、第1ファン91の近くの液Qがチェーンバケットユニット22に向かって第1の方向M1(
図2と
図4に示す)に移動する。これと同時に、第2ファン92の近くの液Qがチェーンバケットユニット22に向かって第2の方向M2(
図2と
図4に示す)に移動する。
【0043】
第1の流れ制御部材81と第2の流れ制御部材82とによって、流れ制御ユニット83が構成されている。第1の流れ制御部材81と第2の流れ制御部材82とは、それぞれ、基板100に固定されている。基板100は筐体23の下方に設けられている。第1の流れ制御部材81と第2の流れ制御部材82との間、すなわち流れ制御ユニット83の内側に、ファンユニット80が配置されている。
【0044】
図1から
図3に示されたように、第1の流れ制御部材81は、チェーンバケットユニット22のバケット上昇部22aと水平方向に向かい合っている。第2の流れ制御部材82は、バケット下降部22bと水平方向に向かい合っている。第1の流れ制御部材81と第2の流れ制御部材82とは、それぞれ、第1ファン91と第2ファン92とに対応した高さに配置されている。
【0045】
図3と
図4とに示されたように、第1の流れ制御部材81の幅方向の両端にフランジ81a,81bが形成されている。フランジ81a,81bは、第2の流れ制御部材82に向かって曲がっている。第2の流れ制御部材82の幅方向の両端にフランジ82a,82bが形成されている。フランジ82a,82bは、第1の流れ制御部材81に向かって曲がっている。第2の流れ制御部材82のフランジ82a,82bの幅W2(
図4に示す)は、第1の流れ制御部材81のフランジ81a,81bの幅W1よりも大きい。
【0046】
第1の流れ制御部材81の内側に第1の流入部85が形成されている。第1の流入部85は、第1ファン91と第2ファン92との間で、バケット21が上昇する側、すなわちバケット上昇部22aが配置された側に位置している。第2の流れ制御部材82の内側に第2の流入部86が形成されている。第2の流入部86は、第1ファン91と第2ファン92との間で、バケット21が下降する側、すなわちバケット下降部22bが配置された側に位置している。
【0047】
図4に示されたように、第1の流れ制御部材81の一方のフランジ81aと第2の流れ制御部材82の一方のフランジ82aとの間に、第1の開口111が形成されている。第1の開口111は、第1ファン91と向かい合っている。第1の開口111は、第1の流入部85と第2の流入部86とに連通している。第1の流れ制御部材81の他方のフランジ81bと第2の流れ制御部材82の他方のフランジ82bとの間に、第2の開口112が形成されている。第2の開口112は、第2ファン92と向かい合っている。第2の開口112は、第1の流入部85と第2の流入部86とに連通している。
【0048】
次に、本実施形態のチェーンバケットスキマー10の作用について説明する。
駆動部31によって駆動スプロケット26が回転すると、チェーン20が移動することにより、チェーンバケットユニット22が
図3に矢印A3,A4で示す方向に移動する。チェーン20が移動すると、第1ファン91と第2ファン92とが
図3に矢印R1で示す方向に回転する。
【0049】
第1ファン91の羽根91aのねじれ方向と第2ファン92の羽根92aのねじれ方向とが互いに逆である。このため第1ファン91と第2ファン92とが回転軸93を中心に回転すると、第1ファン91によって、液面Q1の近くに第1の流入部85と第2の流入部86に向かう流れ(
図2と
図4に矢印M1で示す)が生じる。また第2ファン92によって、液面Q1の近くに第1の流入部85と第2の流入部86に向かう流れ(矢印M2で示す)が生じる。
【0050】
チェーンバケットユニット22が移動すると、バケット21が上昇する側の第1の流入部85では、上向き状態のバケット21が液面Q1から上方に出てゆく。よって、バケット21の体積に相当する量の液が第1の流入部85の周りから第1の流入部85に流れ込む。これに対し第2の流入部86では、下向き状態のバケット21が液面Q1に進入する。よって、下向き状態のバケット21の体積に相当する量の液が、第2の流入部86から第2の流入部86の周りに移動する。
【0051】
このような理由から、流れ制御ユニット83の内側に、第2の流入部86から第1の流入部85に向かう液の流れが生じる。このため第1の流入部85に油等の浮遊物Q2が集まってくる。第1の流入部85では、上方に移動する上向き状態のバケット21が液面Q1から出てゆく。このため第1の流入部85の液面に存在する浮遊物Q2をバケット21に効率良く取り込むことができる。
【0052】
図6は、上向き状態のバケット21の液収容部61に液Qと浮遊物Q2とが収容された状態を示している。バケット21が液面Q1の上に移動すると、第1の上端70よりも上に存在していた液が、アンダーフロー流通部78を通って排出される。すなわち液収容部61に存在していた大部分の液が、
図6に矢印M3で示されたように、アンダーフロー用スリット79から流出する。
【0053】
このため液収容部61に入っていた液Qの液面が、
図6に2点鎖線Q3で示した位置から、第1の上端70と同じ位置まで下がる。液収容部61の液面に浮いていた油等の浮遊物Q2は、アンダーフロー制御板76によって移動が阻止されるため、液収容部61に残る。このため油分の濃度が高い液が液収容部61に収容された状態で、バケット21が上方に移動する。
【0054】
図7は、バケット21が上昇端の駆動スプロケット26を越えて下降し始めた状態を示している。バケット21が上昇端を越えて下降すると、バケット21はバケット取付けピン55を中心に矢印R2,R3で示した方向に反転する。このためバケット21が
図7に2点鎖線B2で示す下向き状態となる。
【0055】
バケット21が下向き状態となり、開口部60が下を向くと、液収容部61に入っていた浮遊物Q2を含む液がバケット21から排出され、シュート35の上に落ちる。シュート35に落ちた浮遊物Q2を含む液は油水分離装置に流入し、処理される。
【0056】
図8は、本実施形態のチェーンバケットスキマーと、従来のチェーンバケットスキマーのそれぞれの油の回収量を表わしたグラフである。本実施形態のチェーンバケットスキマーは、ファンユニット80と流れ制御ユニット83とを有している。従来のチェーンバケットスキマーは、ファンユニット80と流れ制御ユニット83とを有していない。油の投入量は両者とも1225cc、液面に浮く油の厚さを約5mmとした。
【0057】
図8中の実線L1は、本実施形態のチェーンバケットスキマーによる油の回収量を示している。
図8中の1点鎖線L2は、従来のチェーンバケットスキマーによる油の回収量を示している。本実施形態のチェーンバケットスキマーが運転され、60分が経過したときの油の回収量は980ccであり、油の約80%を回収することができた。これに対し従来のチェーンバケットスキマーの回収量610ccであり、油の約50%が回収された。本実施形態のチェーンバケットスキマーは、従来のチェーンバケットスキマーと比較して油の回収量が約60%増加することが確認された。
【0058】
本発明を実施するに当たり、液はクーラント以外であってもよい。本発明のチェーンバケットスキマーは、液面に浮く油や微細なスラッジ等の浮遊物を除去する用途に適している。本発明に係るチェーンバケットスキマーを構成する要素、例えばチェーンやバケット、ファンユニット、第1の流れ制御部材、第2の流れ制御部材、第1の流入部、第2の流入部などの形態を、必要に応じて変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0059】
Q…液、Q1…液面、Q2…浮遊物、10…チェーンバケットスキマー、11…タンク、20…チェーン、21…バケット、22…チェーンバケットユニット、22a…バケット上昇部、22b…バケット下降部、23…筐体、25…回転体、26…駆動スプロケット、31…駆動部、35…シュート、40…テンション機構、55…バケット取付けピン、60…開口部、61…液収容部、62…ストッパ部材、70…第1の上端、71…第1の底板、72…第2の上端、73…第2の底板、74…第1の側板、75…第2の側板、76…アンダーフロー制御板、78…アンダーフロー流通部、79…アンダーフロー用スリット、80…ファンユニット、81…第1の流れ制御部材、82…第2の流れ制御部材、83…流れ制御ユニット、85…第1の流入部、86…第2の流入部、91…第1ファン、92…第2ファン、93…回転軸、94…ファン駆動部。
【要約】
【課題】液面に浮かぶ油を効率良く回収できるチェーンバケットスキマーを提供する。
【解決手段】チェーンバケットスキマー10は、チェーン20とバケット21とを含むチェーンバケットユニット22と、第1の流れ制御部材81と、第2の流れ制御部材82と、第1ファン91と、第2ファン92とを有している。第1ファン91と第2ファン92とによって、液がチェーンバケットユニット22に向けて移動する。第1の流れ制御部材81は、チェーンバケットユニット22のバケット上昇部22aと向かい合う側に配置されている。第2の流れ制御部材82は、バケット下降部22bと向かい合う側に配置されている。第1の流れ制御部材81の内側に第1の流入部85が形成されている。第2の流れ制御部材82の内側に第2の流入部86が形成されている。
【選択図】
図4