IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジャパン・フィールド株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-被洗浄物の洗浄装置 図1
  • 特許-被洗浄物の洗浄装置 図2
  • 特許-被洗浄物の洗浄装置 図3
  • 特許-被洗浄物の洗浄装置 図4
  • 特許-被洗浄物の洗浄装置 図5
  • 特許-被洗浄物の洗浄装置 図6
  • 特許-被洗浄物の洗浄装置 図7
  • 特許-被洗浄物の洗浄装置 図8
  • 特許-被洗浄物の洗浄装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】被洗浄物の洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/08 20060101AFI20230703BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
B08B3/08 A
B08B3/04 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023023355
(22)【出願日】2023-02-17
【審査請求日】2023-02-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390019884
【氏名又は名称】ジャパン・フィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000501
【氏名又は名称】翠弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】内野 正英
【審査官】沖田 孝裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-118847(JP,A)
【文献】特開平07-204590(JP,A)
【文献】特開平02-059086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/08
B08B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液を収納可能とするとともに当該洗浄液を加熱する加熱機構を備えた底部側の液収納部、当該液収納部の上方に位置する蒸気洗浄部、及び開口部側の内周に配置した洗浄蒸気の凝縮機構を備えた洗浄槽と、この洗浄槽内にて移動可能に組付けられるとともに、上記蒸気洗浄部に発生させた上記洗浄液の洗浄蒸気を凝縮可能とする冷却ラジエーターと、上記洗浄槽には、当該洗浄槽と連通管を通じて連通するとともに上記凝縮機構により凝縮された凝縮液を回収可能とするプール槽とを備え、上記連通管には連通弁を備え、上記洗浄液は、高沸点液と、当該高沸点液よりも沸点が低い低沸点溶剤にて構成され、上記液収納部には高沸点液を収納するとともに、上記プール槽には上記低沸点溶剤を収納し、上記連通弁は、開弁することにより上記連通管を通じて上記プール槽内の低沸点溶剤を上記収納部内の高沸点液に必要な分量のみ添加可能としたことを特徴とする被洗浄物の洗浄装置。
【請求項2】
上記凝縮機構は、上記洗浄槽の開口部側の内周に配置した冷却コイルにて形成するとともに、当該凝縮機構に付着した凝縮液を、上記洗浄槽に設けた連通路を通じて上記プール槽内に回収可能としたことを特徴とする請求項1の被洗浄物の洗浄装置。
【請求項3】
上記冷却ラジエーターは、上記洗浄槽内において上記蒸気洗浄部側から上記洗浄槽の開口部側まで上下方向に移動可能としたことを特徴とする請求項1の被洗浄物の洗浄装置。
【請求項4】
上記洗浄槽は上記蒸気洗浄部の上方位置であって当該洗浄槽の軸方向とは交差方向に、上記冷却ラジエーターを挿入可能とする収納袋部を上記蒸気洗浄部から連続して突設し、上記冷却ラジエーターは、当該収納袋部と上記蒸気洗浄部の上方位置との間で移動可能としたことを特徴とする請求項1の被洗浄物の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
願発明は、工作作業時に機械部品、電子部品、医療機器等の被洗浄物の洗浄方法およびこの洗浄方法に用いる洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-136013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年問題となっている地球温暖化の影響等により、被洗浄物の洗浄作業に使用可能な洗浄溶剤は制限されている。また現時点で使用可能な洗浄溶剤であっても、例えばフッ素系溶剤等は高価であるため一回の洗浄作業で大量に使用することは困難であった。一方、安価なアルコール系溶剤については現在も使用されているが、可燃性で引火点も低いため一度に大量に使用した場合は火災を引き起こす等の懸念がある。更に石油系溶剤は比較的安価に使用することができるものの、沸点が150℃以上のものが多いため大気圧では蒸気洗浄が難しく減圧下で使用するのが一般的であるため、この減圧洗浄のための装置が高価なものとなり広く一般的に普及させることは困難であった。
【0005】
そこで、蒸気洗浄の際に最小限の蒸気のみを発生させることにより洗浄を行うものとして特許文献1の如き洗浄装置が既に公知となっている。この洗浄装置は、蒸気洗浄槽の洗浄蒸気の供給を行うために、当該蒸気洗浄槽内に収納した加熱液中に適量の洗浄溶剤を添加して当該洗浄溶剤の沸点以上に加熱することにより、当該洗浄溶剤の洗浄蒸気を発生させて被洗浄物の蒸気洗浄を行うことができるものである。
【0006】
しかしながら、上記発明においては、蒸気洗浄を行う前に上記加熱液中にて被洗浄物の浸漬洗浄を行った場合に、当該被洗浄物が上記加熱液によって加熱されるものとなる。そのため、浸漬洗浄後に当該被洗浄物の蒸気洗浄を行った場合に、当該被洗浄物が上記浸漬洗浄によって温められた状態であるため、当該被洗浄物に洗浄蒸気が接触しても十分な凝縮比を得ることができないため凝縮が生じにくく、十分な洗浄効果を得ることが困難となるという問題が生じるおそれがある。
【0007】
そこで本願では上述の如き課題を解決しようとするものであって、加熱液によって被洗浄物の浸漬洗浄を行った後に蒸気洗浄を行った場合であっても、当該被洗浄物にて上記洗浄蒸気の凝縮を十分なものとし、洗浄効果を向上させることができる洗浄装置及びその方法を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の如き課題を解決するため、本願発明は、洗浄液を収納可能とするとともに当該洗浄液を加熱する加熱機構を備えた底部側の液収納部、当該液収納部の上方に位置する蒸気洗浄部、及び開口部側の内周に配置した洗浄蒸気の凝縮機構を備えた洗浄槽と、この洗浄槽内にて移動可能に組付けられるとともに、上記蒸気洗浄部に発生させた上記洗浄液の洗浄蒸気を凝縮可能とする冷却ラジエーターと、上記洗浄槽には、当該洗浄槽と連通管を通じて連通するとともに上記凝縮機構により凝縮された凝縮液を回収可能とするプール槽とを備え、上記連通管には連通弁を備え、上記洗浄液は、高沸点液と、当該高沸点液よりも沸点が低い低沸点溶剤にて構成され、上記液収納部には高沸点液を収納するとともに、上記プール槽には上記低沸点溶剤を収納し、上記連通弁は、開弁することにより上記連通管を通じて上記プール槽内の低沸点溶剤を上記収納部内の高沸点液に必要な分量のみ添加可能としたものである。
【0009】
また上記凝縮機構は、上記洗浄槽の開口部側の内周に配置した冷却コイルにて形成するとともに、当該凝縮機構に付着した凝縮液を、上記洗浄槽に設けた連通路を通じて上記プール槽内に回収可能としたものであっても良い。
【0010】
また上記冷却ラジエーターは、上記洗浄槽内において上記蒸気洗浄部側から上記洗浄槽の開口部側まで上下方向に移動可能としたものであっても良い。
【0011】
また上記洗浄槽は上記蒸気洗浄部の上方位置であって当該洗浄槽の軸方向とは交差方向に、上記冷却ラジエーターを挿入可能とする収納袋部を上記蒸気洗浄部から連続して突設し、上記冷却ラジエーターは、当該収納袋部と上記蒸気洗浄部の上方位置との間で移動可能としたものであっても良い。
【発明の効果】
【0012】
願発明は上記の如く、当該洗浄蒸気中に冷却ラジエーターを配置するとともに当該冷却ラジエーターによって上記洗浄蒸気を凝縮液化することにより、この凝縮液化で当該冷却ラジエーターに生じた凝縮液を上記被洗浄物に滴下することによって、当該被洗浄物のシャワー洗浄及び冷却を行うものである。そのため、上記凝縮液によって当該シャワー洗浄及び冷却を行うことにより、加熱した高沸点液で液洗浄によって温められた被洗浄物を蒸気洗浄を行う前に十分に冷却することが可能となる。従って、被洗浄物に接触した洗浄蒸気を十分に凝縮させることができるため、蒸気洗浄の洗浄効果を高めることが可能となる。
【0013】
また、洗浄蒸気が上記冷却ラジエーターにて冷やされ凝縮液化し蒸気洗浄が行われるとともに、凝縮液化した洗浄液又は低沸点溶剤が液収納部に回収され再び洗浄蒸気として蒸気洗浄に使用される、というサイクルを洗浄槽内で繰り返すことができ、上記被洗浄物のシャワー洗浄及び冷却を継続的に行うことが可能となる。
【0014】
そのため、上記の如きシャワー洗浄及び冷却時間を、精密洗浄時には長時間としたり、あるいは一般洗浄時には短時間とする等、洗浄目的に応じて適宜変更することができる。更に、シャワー洗浄は冷却ラジエーターを用いることにより容易に行うことができるため、シャワー洗浄専用のシャワーヘッドやポンプ、配管等の特別な装置を必要とせず、装置の洗浄コストを低く抑えることができる。
【0015】
た、上記洗浄槽に収納した高沸点液中に低沸点溶剤を添加するものであるから、蒸気洗浄時に必要とする最小限の量の低沸点溶剤のみで十分な蒸気洗浄を行うことができる。よって、低沸点溶剤として高価なものを使用することができるとともに、引火点の低い溶剤でも少量のみの使用であるため安全性を十分に確保することができる。
【0016】
また液洗浄に用いる高沸点液として、石油系溶剤や親水性溶剤、工作油などの安価なものを使用することができるため、全体的な洗浄コストを低く抑えることが可能となる。また、上記の如く凝縮液化された低沸点溶剤を回収して再利用することができるため、再利用される低沸点溶剤は純度が高く良好な質を保った状態で使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1の浸漬洗浄時及び自熱乾燥時を示す概念図。
図2】実施例1において洗浄蒸気の発生時を示す概念図。
図3】実施例1において被洗浄物の蒸気洗浄、シャワー洗浄、及び冷却時を示す概念図。
図4】実施例1において被洗浄物の蒸気洗浄時を示す概念図。
図5】実施例2の浸漬洗浄時及び自熱乾燥時を示す概念図。
図6】実施例2において洗浄蒸気の発生時を示す概念図。
図7】実施例2において被洗浄物の蒸気洗浄、シャワー洗浄、及び冷却時を示す概念図。
図8】実施例2において被洗浄物の蒸気洗浄時を示す概念図。
図9】実施例3の浸漬洗浄時及び自熱乾燥時を示す概念図。
【実施例1】
【0018】
願発明である実施例1について説明すると、図1に示す如く(1)は洗浄槽であって、この洗浄槽(1)の底部側を液収納部(2)とし、当該液収納部(2)に洗浄液(3)を収納するとともに、当該液収納部(2)の上方を蒸気洗浄部(4)としている。そして上記液収納部(2)にはヒーター(5)を備えるとともに、上記洗浄液(3)の液温を調節可能とするサーモスタット(6)を備えている。更にこの洗浄槽(1)の開口部側の内周には冷却コイル(7)を配置するとともに、当該冷却コイル(7)の下方には、当該冷却コイル(7)に付着した凝縮液(16)を回収可能とする回収トレー(8)を設けている。
【0019】
また、上記洗浄槽(1)の開口部側には、図1に示す如く平盤状の冷却ラジエーター(10)を水平方向に配置している。この冷却ラジエーター(10)は、図1の矢印にて示す如く内部に冷却媒体を流通可能とするとともに、駆動機構(図示せず。)によって上記洗浄槽(1)の開口部側から回収トレー(8)の位置まで任意の位置に上下方向に移動及び固定配置可能としている。また上記洗浄槽(1)の外方には、上記洗浄液(3)と同一の液を収納したプール槽(11)を備えるとともに、当該プール槽(11)の底部と上記洗浄槽(1)との間には、当該洗浄槽(1)の回収トレー(8)の下方位置から上記プール槽(11)にかけて両者を連通可能とする連通管(12)を設けている。
【0020】
次に、上記構成の洗浄装置を使用した被洗浄物(17)の洗浄方法について、以下に説明する。まず、図1に示す如く上記冷却ラジエーター(10)を上記洗浄槽(1)の開口部付近に配置するとともに、上記連通管(12)に設けた連通弁(13)を閉止状態としておく。尚、上記冷却ラジエーター(10)は、冷却液を循環させることにより冷却状態としておく。
【0021】
また、上記洗浄槽(1)の液洗浄部(2)及び上記プール槽(11)には、洗浄液(3)を収納するとともに、上記洗浄槽(1)内のヒーター(5)を作動させて上記洗浄液(3)を加熱する。そして、上記サーモスタット(6)にて当該洗浄液(3)の温度を当該洗浄液(3)の沸点未満に保持しておく。
【0022】
そして図1に示す如く、上記洗浄液(3)中に被洗浄物(17)を浸漬し、当該被洗浄物(17)の浸漬洗浄を行う。そしてこの浸漬洗浄が終了した後、上記被洗浄物(17)を上記洗浄槽(1)の蒸気洗浄部(4)に配置し、以下の蒸気洗浄を行う。まず図2に示す如く、上記冷却ラジエーター(10)を上記洗浄槽(1)の開口部側から下方に移動させ、回収トレー(8)の位置に固定配置する。
【0023】
また、上記ヒーター(5)及びサーモスタット(6)により、上記洗浄槽(1)内の洗浄液(3)を当該洗浄液(3)の沸点以上に加熱する。これにより、図2に示す如く当該洗浄液(3)からの洗浄蒸気(14)が上記洗浄槽(1)の蒸気洗浄部(4)に発生するとともに、この洗浄蒸気(14)は冷却ラジエーター(10)に接触するものとなる。
【0024】
これにより、当該洗浄蒸気(14)は上記冷却ラジエーター(10)により冷やされて凝縮液化し、図3に示す如くこの凝縮液(16)が当該冷却ラジエーター(10)から上記被洗浄物(17)に滴下する。このような上記被洗浄物(17)への凝縮液(16)の滴下によって、当該被洗浄物(17)は、上記凝縮液(16)によってシャワー洗浄が施されるとともに当該凝縮液(16)によって冷却されるものとなる。またこれと同時に、上記洗浄液(3)の洗浄蒸気(14)は上記被洗浄物(17)にも接触し、当該洗浄蒸気(14)によって、図4に示す如く上記被洗浄物(17)の蒸気洗浄が行われる。
【0025】
ここで、当該蒸気洗浄時においては上記冷却ラジエーター(10)からの凝縮液(16)によるシャワー洗浄及び冷却により、上記浸漬洗浄時に洗浄液(3)によって温められた被洗浄物(17)の表面が冷やされるものとなる。このように冷やされた被洗浄物(17)に洗浄蒸気(14)が付着した場合には、当該洗浄蒸気(14)と上記被洗浄物(17)との温度差が大きくなることから、当該被洗浄物(17)に接触した洗浄蒸気(14)を十分に凝縮させることができる。よって、上記冷却ラジエーター(10)からの凝縮液(16)の滴下によって、上記被洗浄物(17)の蒸気洗浄時における洗浄効果を高めることが可能となる。
【0026】
また上記の如く、洗浄液(3)からの洗浄蒸気(14)が上記冷却ラジエーター(10)にて冷やされ凝縮液化し蒸気洗浄が行われるとともに、凝縮液化された洗浄液(3)が上記洗浄液(3)中に回収されるというサイクルを単一の洗浄槽(1)内で繰り返すことができる。そのため、冷却ラジエーター(10)から凝縮液(16)を滴下して行うシャワー洗浄及び冷却時間を、精密洗浄時には長時間としたり、あるいは一般洗浄時には短時間とする等、洗浄目的に応じて適宜変更することができる。
【0027】
また上記シャワー洗浄は、上記冷却ラジエーター(10)によって容易に行うことができるため、シャワー洗浄専用のシャワーヘッドやポンプ、配管等の特別な装置を必要とせず、装置の洗浄コストを低く抑えることができる。尚、上記冷却ラジエーター(10)が蒸気洗浄時の位置に留まる時間については、蒸気洗浄の目的や被洗浄物(17)の種類に応じて適宜変更することができる。
【0028】
そして、上記蒸気洗浄が終了した後、上記ヒーター(5)の作動を停止するとともに上記冷却ラジエーター(10)を上方に移動させ、図1に示す如く洗浄槽(1)の開口部位置に配置する。これにより、上記洗浄液(3)からの洗浄蒸気(14)の発生が停止され、液洗浄部中の洗浄蒸気(14)は全て上昇するとともに当該開口部側に配置した上記冷却コイル(7)により凝縮液化され、回収トレー(8)及び当該回収トレー(8)とプール槽(11)とを連通可能とする回収管(15)を通じて当該プール槽(11)内に回収されるものとなる。その後、上記の如く蒸気洗浄部(4)に配置していた被洗浄物(17)を、図1の二点鎖線にて示す如く上記洗浄槽(1)の冷却コイル(7)の位置に配置するとともに上記冷却コイル(7)位置に配置した被洗浄物(17)の自熱乾燥が行われ、一連の洗浄作業が終了する。
【実施例2】
【0029】
次に、本願発明の実施例2について以下に説明する。図5に示す如く(21)は洗浄槽であって、この洗浄槽(21)の底部側を液収納部(22)とし、当該液収納部(22)に高沸点液(23)を収納するとともに、当該液収納部(22)の上方を蒸気洗浄部(24)としている。そして上記液収納部(22)にはヒーター(25)を備えるとともに、上記高沸点液(23)を当該高沸点液(23)の沸点未満、且つ以下に説明する低沸点溶剤(32)の沸点以上に保持可能とするサーモスタット(26)を備えている。更にこの洗浄槽(21)の開口部側の内周には冷却コイル(27)を配置するとともに、当該冷却コイル(27)の下方には、当該冷却コイル(27)に付着した凝縮液(30)を回収可能とする回収トレー(28)を設けている。
【0030】
また、上記洗浄槽(21)の開口部側には、平盤状の冷却ラジエーター(31)を水平方向に配置している。この冷却ラジエーター(31)は、図5の矢印にて示す如く内部に冷却媒体を流通可能とするとともに、駆動機構(図示せず。)によって上記洗浄槽(21)の開口部側から回収トレー(28)の位置まで任意の位置に上下方向に移動及び固定配置可能としている。また上記洗浄槽(21)の外方には、低沸点溶剤(32)を収納したプール槽(33)を備えるとともに、当該プール槽(33)と上記洗浄槽(21)との間には、当該プール槽(33)の底部と上記洗浄槽(21)とを連通可能とする連通管(34)と、当該洗浄槽(21)の回収トレー(28)の下方位置から上記プール槽(33)とを連通可能とする回収管(35)とをそれぞれ設けている。
【0031】
次に、上記構成の洗浄装置を使用した被洗浄物(37)の洗浄方法について、以下に説明する。まず、図5に示す如く上記冷却ラジエーター(31)を上記洗浄槽(21)の開口部付近に配置するとともに、上記連通管(34)に設けた連通弁(36)を閉止状態とし、また上記冷却ラジエーター(31)を冷却状態としておく。
【0032】
また、上記洗浄槽(21)の液洗浄部(22)には、高沸点液(23)として石油系溶剤や親水性溶剤、又は工作油等の液体を収納するとともに、上記プール槽(33)には当該高沸点液(23)よりも沸点が低いアルコール系溶剤又はフッ素系溶剤等の低沸点溶剤(32)を収納しておく。そして上記洗浄槽(21)内のヒーター(25)を作動させて上記高沸点液(23)を加熱するとともに、サーモスタット(26)にて当該高沸点液(23)の温度を当該高沸点液(23)の沸点未満であって、且つ上記低沸点溶剤(32)の沸点以上の温度を保持しておく。
【0033】
そして、上記温度に保持した高沸点液(23)中に被洗浄物(37)を浸漬し、当該被洗浄物(37)の浸漬洗浄を行う。そしてこの浸漬洗浄が終了した後、上記被洗浄物(37)を上記洗浄槽(21)の蒸気洗浄部(24)に配置し、以下の蒸気洗浄を行う。この蒸気洗浄について説明すると、まず上記冷却ラジエーター(31)を上記洗浄槽(21)の開口部側から下方に移動させ、図6に示す如く回収トレー(28)の位置に固定配置する。
【0034】
また、上記連通弁(36)を開弁し、当該連通管(34)の連通路を通じて上記プール槽(33)の低沸点溶剤(32)を当該液収納部(22)の高沸点液(23)中に必要な分量のみ添加する。この時、上記の如く高沸点液(23)は、当該高沸点液(23)の沸点未満且つ上記低沸点溶剤(32)の沸点以上の温度に保持されていることから、添加された低沸点溶剤(32)が上記高沸点液(23)によって当該低沸点溶剤(32)の沸点以上に加熱されるものとなる。これにより、図6に示す如く当該低沸点溶剤(32)よる洗浄蒸気(38)が上記洗浄槽(21)の蒸気洗浄部(24)に発生する。
【0035】
そしてこの洗浄蒸気(38)が冷却ラジエーター(31)に接触することにより、当該冷却ラジエーター(31)により冷やされて凝縮液化し、図7に示す如くこの凝縮液(30)が当該冷却ラジエーター(31)から上記被洗浄物(37)に滴下するものとなる。このような上記被洗浄物(37)への凝縮液(30)の滴下によって、当該被洗浄物(37)は、上記凝縮液(30)によるシャワー洗浄が施されるとともに当該凝縮液(30)によって冷却されるものとなる。
【0036】
またこれと同時に、上記低沸点溶剤(32)の洗浄蒸気(38)は上記被洗浄物(37)に接触し、図8に示す如く当該洗浄蒸気(38)によって上記被洗浄物(37)の蒸気洗浄が行われる。ここで、上記の如く上記冷却ラジエーター(31)からの凝縮液(30)によるシャワー洗浄及び冷却によって、先の浸漬洗浄時に高沸点液(23)で温められた被洗浄物(37)の表面が冷やされるものとなる。よって、このように冷やされた被洗浄物(37)に洗浄蒸気(38)が付着した際には、上記被洗浄物(37)の温度と洗浄蒸気(38)の温度との間に大きな差が生じるため、当該被洗浄物(37)に接触した洗浄蒸気(38)を十分に凝縮させることができるため、洗浄効果をより高めることが可能となる。
【0037】
また上記の如く、蒸気洗浄時に必要とする最小限の量の低沸点溶剤(32)を高沸点液(23)に添加するのみで十分な蒸気洗浄を行うことができる。よって、低沸点溶剤(32)の使用量を必要最小限に抑えることができ、高価な低沸点溶剤(32)についてもコストを気にすることなく使用することが可能となる。また、低沸点溶剤(32)として引火点の低い溶剤を使用する場合でも、本実施例では少量のみであるため、安全性を十分に確保することができる。更に、上記洗浄槽(21)の液収納部(22)に収納する高沸点液(23)としては、石油系溶剤や親水性溶剤、工作油などの安価なものを使用することができるため、全体的な洗浄コストを低く抑えることが可能となる。
【0038】
また上記の如く、高沸点液(23)に加熱されて発生した洗浄蒸気(38)が、上記冷却ラジエーター(31)にて冷やされ凝縮液化し蒸気洗浄が行われるとともに、凝縮液化した低沸点溶剤(32)は上記高沸点液(23)中に回収されるというサイクルを、単一の洗浄槽(21)内で繰り返し行うことができる。そのため、冷却ラジエーター(31)から凝縮液(30)を滴下して行うシャワー洗浄及び冷却時間を、精密洗浄時には長時間としたり、あるいは一般洗浄時には短時間とする等、洗浄目的に応じて適宜変更することができる。
【0039】
また上記シャワー洗浄は、上記冷却ラジエーター(31)によって容易に行うことができるため、シャワー洗浄専用のシャワーヘッドやポンプ、配管等の特別な装置を必要とせず、装置の洗浄コストを低く抑えることができる。また、上記冷却ラジエーター(31)が蒸気洗浄部(24)に留まる時間については、蒸気洗浄の目的や被洗浄物(37)の種類に応じて適宜変更することができる。
【0040】
そして、上記蒸気洗浄が終了した後、上記冷却ラジエーター(31)を上方に移動させ、洗浄槽(21)の開口部位置に配置するとともに、上記の如く蒸気洗浄部(24)に配置していた被洗浄物(37)を、図5の二点鎖線にて示す如く上記洗浄槽(21)の冷却コイル(27)の位置に配置する。また上記連通弁(36)を閉止してプール槽(33)から洗浄槽(21)への低沸点溶剤(32)の供給を停止する。
【0041】
これにより、液収納部(22)に添加された低沸点溶剤(32)は全て高沸点液(23)により加熱され洗浄蒸気(38)となって上記冷却コイル(27)により凝縮液化され、回収トレー(28)及び回収管(35)を通じてプール槽(33)内に回収される。これにより、液収納部(22)内には高沸点液(23)のみが残留するものとなるため洗浄蒸気(38)の供給が停止するものとなる。その後、上記冷却コイル(27)位置に配置した被洗浄物(37)の自熱乾燥が行われ、一連の洗浄作業が終了する。
【実施例3】
【0042】
また上記実施例1、2の冷却ラジエーター(10)(31)は、上記洗浄槽(1)(21)内において上記蒸気洗浄部(44)側から上記洗浄槽(1)(21)の開口部側まで上下方向に移動可能としているが、本実施例3では冷却ラジエーター(50)を水平方向に移動可能としている。本実施例3について以下に説明すると、図9に示す如く(41)は洗浄槽であって、この洗浄槽(41)の底部側を液収納部(42)とし、当該液収納部(42)に高沸点液(43)を収納するとともに、当該液収納部(42)の上方を蒸気洗浄部(44)としている。そしてこの液収納部(42)にはヒーター(45)を備えるとともに、上記高沸点液(43)を当該高沸点液(43)の沸点未満、且つ以下に説明する低沸点溶剤(53)の沸点以上に保持可能とするサーモスタット(46)を備えている。更にこの洗浄槽(41)の開口部側の内周には冷却コイル(47)を配置するとともに、当該冷却コイル(47)の下方には、当該冷却コイル(47)に付着した凝縮液(58)を回収可能とする回収トレー(48)を設けている。
【0043】
また、上記冷却コイル(47)と回収トレー(48)との間に、平盤状の冷却ラジエーター(50)を水平方向に配置するとともに、上記洗浄槽(41)の冷却コイル(47)と回収トレー(48)との間に、当該洗浄槽(41)の軸方向とは垂直方向に突出した収納袋部(51)を突設している。この収納袋部(51)は、上記洗浄槽(41)の側壁(52)から連続するとともに上記冷却ラジエーター(50)よりも一回り大きい断面コ字型の凹部であって、その内部に上記冷却ラジエーター(50)を収納可能としている。
【0044】
そして上記冷却ラジエーター(50)は、当該洗浄槽(41)の蒸気洗浄部(44)の上方位置から収納袋部(51)内部までの間を駆動機構(図示せず。)によって水平方向に移動可能なものとしている。尚、上記冷却ラジエーター(50)は内部に冷却媒体を流通循環可能としている。
【0045】
また上記洗浄槽(41)の外方には、低沸点溶剤(53)を収納したプール槽(54)を備えるとともに、当該プール槽(54)と上記洗浄槽(41)との間には、当該プール槽(54)の底部と上記洗浄槽(41)とを連通可能とする連通管(34)と、当該洗浄槽(41)の回収トレー(48)の下方位置から上記プール槽(54)とを連通可能とする回収管(35)とをそれぞれ設けている。
【0046】
次に、本実施例の洗浄装置を使用した被洗浄物(49)の洗浄方法について、以下に説明する。まず、上記冷却ラジエーター(50)を収納袋部(51)から上記洗浄槽(41)の蒸気洗浄部(44)の上方位置に移動させるとともに、上記連通管(55)に設けた連通弁(57)を閉止状態としておく。尚、上記冷却ラジエーター(50)は、予め冷却液を流通及び循環させることにより冷却状態としておく。
【0047】
また、上記洗浄槽(41)の液洗浄部に高沸点液(43)として石油系溶剤や親水性溶剤、又は工作油等の液体を収納するとともに、上記プール槽(54)には当該高沸点液(43)よりも沸点が低いアルコール系溶剤又はフッ素系溶剤等の低沸点溶剤(53)を収納する。そして、上記ヒーター(45)を作動させて当該高沸点液(43)を加熱するとともに、サーモスタット(46)にて当該高沸点液(43)の温度が当該高沸点液(43)の沸点未満であって、且つ上記低沸点溶剤(53)の沸点以上の温度を保持しておく。
【0048】
そして図9の二点鎖線にて示す如く、上記の如く加熱した高沸点液(43)中に被洗浄物(49)を浸漬し、当該被洗浄物(49)の浸漬洗浄を行う。そしてこの浸漬洗浄を終了した後、上記被洗浄物(49)を上記洗浄槽(41)の蒸気洗浄部(44)に配置し、以下の蒸気洗浄を行う。
【0049】
即ち、上記連通管(55)に設けた連通弁(57)を開弁することにより、当該連通管(55)の連通路を通じて上記プール槽(54)の低沸点溶剤(53)を当該液収納部(42)内の高沸点液(43)に必要な分量のみ添加する。この時、上記の如く当該高沸点液(43)はこの高沸点液(43)の沸点未満且つ上記低沸点溶剤(53)の沸点以上の温度に保持されていることから、添加された上記低沸点溶剤(53)が上記高沸点液(43)によって当該低沸点溶剤(53)の沸点以上に加熱され、図9に示す如く当該低沸点溶剤(53)による洗浄蒸気(60)が上記洗浄槽(41)の蒸気洗浄部(44)に発生するものとなる。
【0050】
そしてこの洗浄蒸気(60)は、上記回収トレー(48)の位置に配置した冷却ラジエーター(50)に接触するものとなる。これにより、当該洗浄蒸気(60)は上記冷却ラジエーター(50)により冷やされて凝縮液化して凝縮液(58)が上記被洗浄物(49)に滴下し、この滴下によって当該被洗浄物(49)に対して上記凝縮液(58)によるシャワー洗浄及び冷却が行われるものとなる。
【0051】
またこれと同時に、洗浄蒸気(60)は上記被洗浄物(49)にも接触することから、当該洗浄蒸気(60)によって上記被洗浄物(49)の蒸気洗浄が行われる。ここで、上記の如く洗浄蒸気(60)の冷却液の滴下によって、上記浸漬洗浄時に高沸点液(43)で温められた被洗浄物(49)が冷やされるものとなる。これにより、当該被洗浄物(49)に接触した洗浄蒸気(60)を十分に凝縮させることができることから、蒸気洗浄の洗浄効果を高めることが可能となる。
【0052】
そして、上記蒸気洗浄が終了した後、上記冷却ラジエーター(50)を水平方向に移動させ、図9の二点鎖線にて示す如く上記収納袋部(51)内の元の位置に復元収納するとともに、上記の如く蒸気洗浄部(44)に配置していた被洗浄物(49)を、上記洗浄槽(41)の冷却コイル(47)の位置に配置する。また上記連通弁(57)を閉止してプール槽(54)から洗浄槽(41)への低沸点溶剤(53)の供給を停止する。
【0053】
これにより、液収納部(42)に添加された低沸点溶剤(53)は洗浄蒸気(60)となって上記冷却コイル(47)により凝縮液化され、回収トレー(48)及び回収管(56)を通じてプール槽(54)内に回収される。これにより、液収納部(42)内には高沸点液(43)のみが残留するものとなり洗浄蒸気(60)の発生が停止される。この状態で、上記冷却コイル(47)位置に配置した被洗浄物(49)の自熱乾燥が行われ、一連の洗浄作業を終了する。
【符号の説明】
【0054】
1,21,41 洗浄槽
2,22,42 液収納部
3 洗浄液
4,24,44 蒸気洗浄部
7,27,47 冷却コイル
10,31,50 冷却ラジエーター
11,33,54 プール槽
14,38,60 洗浄蒸気
16,30,58 凝縮液
17,37,49 被洗浄物
23,43 高沸点液
32,53 低沸点溶剤
51 収納袋部
【要約】
【課題】
加熱液によって被洗浄物の浸漬洗浄を行った後に蒸気洗浄を行った場合であっても、当該被洗浄物にて上記洗浄蒸気の凝縮を十分なものとし、洗浄効果を向上させることができる洗浄装置及びその方法を得る。
【解決手段】
洗浄槽1内に収納するとともに加熱した洗浄液3にて被洗浄物17の液洗浄を行った後、当該洗浄液3から洗浄蒸気14を発生させ、当該洗浄蒸気中に冷却ラジエーター10を配置するとともに当該冷却ラジエーター10の下方に上記被洗浄物17を配置し、当該冷却ラジエーター10によって上記洗浄蒸気14を凝縮液化することにより、この凝縮液化によって生じた凝縮液16を上記冷却ラジエーター10から上記被洗浄物17に滴下することによって当該被洗浄物17のシャワー洗浄及び冷却を行うとともに、上記洗浄蒸気14を上記被洗浄物17に接触させることによって当該被洗浄物17の蒸気洗浄を行う。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9