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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/90 20130101AFI20230703BHJP
【FI】
A61F2/90
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019136844
(22)【出願日】2019-07-25
(65)【公開番号】P2021019710
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516375126
【氏名又は名称】エス・アンド・ジー・バイオテック・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】S&G BIOTECH,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】カン・ソングォン
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-521217(JP,A)
【文献】特表2002-538897(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0169498(US,A1)
【文献】特開2004-033579(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038145(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/191005(WO,A1)
【文献】特表2018-511421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤにより構成されている斜格子状の網目構造の筒状体を有するステントであって、
前記ワイヤは、第1部分と第2部分とを含み、
前記網目構造は、前記筒状体の軸方向において互いにずれた位置に配置されている複数の段を含み、
前記第1部分は、それぞれ各段において前記軸方向にジグザグに振れつつ前記筒状体の周方向に1周回分よりも長い範囲に亘って延在している複数のジグザグ延在部を含み、
各ジグザグ延在部は、第1傾斜方向に延在する第1延在部と、前記第1傾斜方向とは逆向きの第2傾斜方向に延在する第2延在部と、が交互に繰り返し連なった形状であり、前記周方向に延在した先で隣の段のジグザグ延在部に連なっており、
各ジグザグ延在部は、ジグザグに振れた先で隣の段のジグザグ延在部と互いに係合してフック部を形成しており、
各ジグザグ延在部の一端の前記第2延在部は、当該ジグザグ延在部の他端の前記第2延在部の周囲に巻き付けられており、
前記第2部分は、各ジグザグ延在部の前記第2延在部のうち互いに延長上に配置されている前記第2延在部の周囲に順次巻き付けられているステント。
【請求項2】
前記第2部分は、前記ジグザグ延在部どうしが係合しているフック部に対して巻き付けられている巻付部を含み、当該巻付部を境界として、延在方向が切り替わっている請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記網目構造の両端部以外の部分において、前記第2部分の各部は、互いに並列に延在している請求項1又は2に記載のステント。
【請求項4】
ワイヤにより構成されている斜格子状の網目構造の筒状体を有するステントであって、
前記ワイヤは、第1部分と第2部分とを含み、
前記網目構造は、前記筒状体の軸方向において互いにずれた位置に配置されている複数の段を含み、
前記第1部分は、それぞれ各段において前記軸方向にジグザグに振れつつ前記筒状体の周方向に1周回未満の範囲で延在している複数のジグザグ延在部を含み、
各ジグザグ延在部は、ジグザグに振れた先で隣の段のジグザグ延在部と互いに係合してフック部を形成しており、前記周方向に延在した先で隣の段のジグザグ延在部に連なっており、
前記第2部分は、前記複数のジグザグ延在部の集合体と相補的に前記網目構造を構成するように、前記軸方向にジグザグに振れつつ隣の段に順次に連なりながら前記筒状体の周方向に複数周回延在しており、且つ、ジグザグに振れた先で対応する段の前記ジグザグ延在部と互いに係合してフック部を形成しているステント。
【請求項5】
前記網目構造の両端部の前記ジグザグ延在部におけるジグザグの振れ数よりも、前記網目構造の両端部以外の部分の前記ジグザグ延在部におけるジグザグの振れ数が少ない請求項4に記載のステント。
【請求項6】
前記網目構造の両端部以外の部分において、各ジグザグ延在部におけるジグザグの振れ数が互いに等しい請求項5に記載のステント。
【請求項7】
前記第2部分のジグザグ形状は、2段分斜めに延在する第1延在部と、前記第1延在部が延在した先から前記第1延在部とは逆の斜め向きに折り返されて1段分斜めに延在する第2延在部と、が交互に繰り返し連なった形状である請求項5又は6に記載のステント。
【請求項8】
ワイヤにより構成されている斜格子状の網目構造の筒状体を有するステントであって、
前記ワイヤとして、第1ワイヤと第2ワイヤとを含み、
前記第1ワイヤは、第1部分と第2部分とを含み、
前記網目構造は、互いに同軸で重なり合って配置されている筒状の第1構造と第2構造とを含み、
前記第1構造は、前記第1ワイヤにより構成されている斜格子状のものであり、前記筒状体の軸方向において互いにずれた位置に配置されている複数の段を含み、
前記第1部分は、それぞれ前記第1構造の各段において前記軸方向にジグザグに振れつつ前記筒状体の周方向に1周回分よりも長い範囲に亘って延在している複数の第1ジグザグ延在部を含み、
各第1ジグザグ延在部は、第1傾斜方向に延在する第1延在部と、前記第1傾斜方向とは逆向きの第2傾斜方向に延在する第2延在部と、が交互に繰り返し連なった形状であり、前記周方向に延在した先で前記第1構造における隣の段の第1ジグザグ延在部に連なっており、
各第1ジグザグ延在部は、ジグザグに振れた先で前記第1構造における隣の段の第1ジグザグ延在部と互いに係合してフック部を形成しており、
各第1ジグザグ延在部の一端の前記第2延在部は、当該第1ジグザグ延在部の他端の前記第2延在部の周囲に巻き付けられており、
前記第2部分は、各第1ジグザグ延在部の前記第2延在部のうち互いに延長上に配置されている前記第2延在部の周囲に順次巻き付けられており、
前記第2ワイヤは、第3部分と第4部分とを含み、
前記第2構造は、前記第2ワイヤにより構成されている斜格子状のものであり、前記筒状体の軸方向において互いにずれた位置に配置されている複数の段を含み、
前記第3部分は、それぞれ前記第2構造の各段において前記軸方向にジグザグに振れつつ前記筒状体の周方向に1周回未満の範囲で延在している複数の第2ジグザグ延在部を含み、
各第2ジグザグ延在部は、ジグザグに振れた先で前記第2構造における隣の段の第2ジグザグ延在部と互いに係合してフック部を形成しており、前記周方向に延在した先で前記第2構造における隣の段の第2ジグザグ延在部に連なっており、
前記第4部分は、前記複数の第2ジグザグ延在部の集合体と相補的に前記第2構造を構成するように、前記軸方向にジグザグに振れつつ前記第2構造における隣の段に順次に連なりながら前記筒状体の周方向に複数周回延在しており、且つ、ジグザグに振れた先で前記第2構造における対応する段の前記第2ジグザグ延在部と互いに係合してフック部を形成しているステント。
【請求項9】
前記第1構造と前記第2構造とが互いに編組されている請求項8に記載のステント。
【請求項10】
前記第2ジグザグ延在部が、ジグザグに振れる度に、前記第1ワイヤの外面側と内面側とを交互に通過していることによって、前記第1構造と前記第2構造とが互いに編組されている請求項9に記載のステント。
【請求項11】
互いに同軸で多重に配置されている複数の前記網目構造と、
複数の前記網目構造どうしを相互に連結している連結ワイヤと、
を備える請求項8から10のいずれか一項に記載のステント。
【請求項12】
前記筒状体と同軸に配置されている管状体を更に備える請求項1から11のいずれか一項に記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤにより構成されている斜格子状の網目構造の筒状体を有するステントとしては、例えば、特許文献1に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-175654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な構造のステントを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ワイヤにより構成されている斜格子状の網目構造の筒状体を有するステントであって、
前記ワイヤは、第1部分と第2部分とを含み、
前記網目構造は、前記筒状体の軸方向において互いにずれた位置に配置されている複数の段を含み、
前記第1部分は、それぞれ各段において前記軸方向にジグザグに振れつつ前記筒状体の周方向に1周回分よりも長い範囲に亘って延在している複数のジグザグ延在部を含み、
各ジグザグ延在部は、第1傾斜方向に延在する第1延在部と、前記第1傾斜方向とは逆向きの第2傾斜方向に延在する第2延在部と、が交互に繰り返し連なった形状であり、前記周方向に延在した先で隣の段のジグザグ延在部に連なっており、
各ジグザグ延在部は、ジグザグに振れた先で隣の段のジグザグ延在部と互いに係合してフック部を形成しており、
各ジグザグ延在部の一端の前記第2延在部は、当該ジグザグ延在部の他端の前記第2延在部の周囲に巻き付けられており、
前記第2部分は、各ジグザグ延在部の前記第2延在部のうち互いに延長上に配置されている前記第2延在部の周囲に順次巻き付けられているステントを提供するものである。
【0006】
また、本発明は、ワイヤにより構成されている斜格子状の網目構造の筒状体を有するステントであって、
前記ワイヤは、第1部分と第2部分とを含み、
前記網目構造は、前記筒状体の軸方向において互いにずれた位置に配置されている複数の段を含み、
前記第1部分は、それぞれ各段において前記軸方向にジグザグに振れつつ前記筒状体の周方向に1周回未満の範囲で延在している複数のジグザグ延在部を含み、
各ジグザグ延在部は、ジグザグに振れた先で隣の段のジグザグ延在部と互いに係合してフック部を形成しており、前記周方向に延在した先で隣の段のジグザグ延在部に連なっており、
前記第2部分は、前記複数のジグザグ延在部の集合体と相補的に前記網目構造を構成するように、前記軸方向にジグザグに振れつつ隣の段に順次に連なりながら前記筒状体の周方向に複数周回延在しており、且つ、ジグザグに振れた先で対応する段の前記ジグザグ延在部と互いに係合してフック部を形成しているステントを提供するものである。
【0007】
また、本発明は、ワイヤにより構成されている斜格子状の網目構造の筒状体を有するステントであって、
前記ワイヤとして、第1ワイヤと第2ワイヤとを含み、
前記第1ワイヤは、第1部分と第2部分とを含み、
前記網目構造は、互いに同軸で重なり合って配置されている筒状の第1構造と第2構造とを含み、
前記第1構造は、前記第1ワイヤにより構成されている斜格子状のものであり、前記筒状体の軸方向において互いにずれた位置に配置されている複数の段を含み、
前記第1部分は、それぞれ前記第1構造の各段において前記軸方向にジグザグに振れつつ前記筒状体の周方向に1周回分よりも長い範囲に亘って延在している複数の第1ジグザグ延在部を含み、
各第1ジグザグ延在部は、第1傾斜方向に延在する第1延在部と、前記第1傾斜方向とは逆向きの第2傾斜方向に延在する第2延在部と、が交互に繰り返し連なった形状であり、前記周方向に延在した先で前記第1構造における隣の段の第1ジグザグ延在部に連なっており、
各第1ジグザグ延在部は、ジグザグに振れた先で前記第1構造における隣の段の第1ジグザグ延在部と互いに係合してフック部を形成しており、
各第1ジグザグ延在部の一端の前記第2延在部は、当該第1ジグザグ延在部の他端の前記第2延在部の周囲に巻き付けられており、
前記第2部分は、各第1ジグザグ延在部の前記第2延在部のうち互いに延長上に配置されている前記第2延在部の周囲に順次巻き付けられており、
前記第2ワイヤは、第3部分と第4部分とを含み、
前記第2構造は、前記第2ワイヤにより構成されている斜格子状のものであり、前記筒状体の軸方向において互いにずれた位置に配置されている複数の段を含み、
前記第3部分は、それぞれ前記第2構造の各段において前記軸方向にジグザグに振れつつ前記筒状体の周方向に1周回未満の範囲で延在している複数の第2ジグザグ延在部を含み、
各第2ジグザグ延在部は、ジグザグに振れた先で前記第2構造における隣の段の第2ジグザグ延在部と互いに係合してフック部を形成しており、前記周方向に延在した先で前記第2構造における隣の段の第2ジグザグ延在部に連なっており、
前記第4部分は、前記複数の第2ジグザグ延在部の集合体と相補的に前記第2構造を構成するように、前記軸方向にジグザグに振れつつ前記第2構造における隣の段に順次に連なりながら前記筒状体の周方向に複数周回延在しており、且つ、ジグザグに振れた先で前記第2構造における対応する段の前記第2ジグザグ延在部と互いに係合してフック部を形成しているステントを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新規な構造のステントを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るステントを撮像した画像を示す図である。
図2】第1実施形態に係るステントの模式的な平面図である。
図3】第1実施形態に係るステントの第1構造における第1部分を示す模式的な展開図である。
図4】第1実施形態に係るステントの第1構造における第2分を示す模式的な展開図である。
図5】第1実施形態に係るステントの第1構造を示す模式的な展開図である。
図6】第1実施形態に係るステントの第2構造における第3部分を示す模式的な展開図である。
図7】第1実施形態に係るステントの第2構造における第4部分を示す模式的な展開図である。
図8】第1実施形態に係るステントの第2構造を示す模式的な展開図である。
図9】第1実施形態に係るステントの第1構造と第2構造との編組構造を示す模式的な展開図である。
図10】第1実施形態に係るステントの模式的な横断面図である。
図11】第4実施形態に係るステントを撮像した画像を示す図である。
図12】第4実施形態に係るステントの模式的な横断面図である。
図13図13(a)は第5実施形態に係るステントの模式的な横断面図であり、図13(b)は第5実施形態に係るステントの模式的な平断面図である。
図14図14(a)は第6実施形態に係るステントの模式的な横断面図であり、図14(b)は第6実施形態に係るステントの模式的な平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。
【0011】
〔第1実施形態〕
まず、図1から図10を用いて第1実施形態を説明する。
図2においては、筒状体10の網目構造10aの第1構造11(図5)を構成する第1ワイヤ31の一部分が他の一部分の周囲に巻き付けられている部位(撚線部39)について、網掛けで示している。
図3は、網目構造10aの第1構造11において第1ワイヤ31の第1部分32により構成されている構造を、平坦に展開したときの形状を示している。実際は、図3に示す構造は、図3における上下方向を軸方向とする筒状に形成されている。つまり、図3において、左右方向は、当該筒状の構造の周方向であり、図3に示す構造の右端は左端に連なっている。
同様に、図4は、網目構造10aの第1構造11において第1ワイヤ31の第2部分33により構成されている構造を、平坦に展開したときの形状を示している。実際は、図4に示す構造は、図4における上下方向を軸方向とする筒状に形成されている。図4における左右方向は、当該筒状の構造の周方向であり、図4に示す構造の右端は左端に連なっている。なお、図4において、第1部分32(図3に示す構造)については、二点鎖線で示している。
同様に、図5は、網目構造10aの第1構造11を平坦に展開したときの形状を示している。実際は、図5に示す構造は、図5における上下方向を軸方向とする筒状に形成されている。図5における左右方向は、第1構造11の周方向であり、図5に示す構造の右端は左端に連なっている。
同様に、図6は、網目構造10aの第2構造12(図8)において第2ワイヤ41の第3部分42により構成されている構造を、平坦に展開したときの形状を示している。実際は、図6に示す構造は、図6における上下方向を軸方向とする筒状に形成されている。図6における左右方向は、当該筒状の構造の周方向であり、図6に示す構造の右端は左端に連なっている。
同様に、図7は、網目構造10aの第2構造12において第2ワイヤ41の第4部分43により構成されている構造を、平坦に展開したときの形状を示している。実際は、図7に示す構造は、図7における上下方向を軸方向とする筒状に形成されている。図7における左右方向は、当該筒状の構造の周方向であり、図7に示す構造の右端は左端に連なっている。なお、図7においては、第3部分42(図6に示す構造)については、二点鎖線で示している。
同様に、図8は、網目構造10aの第2構造12を平坦に展開したときの形状を示している。実際は、図8に示す構造は、図8における上下方向を軸方向とする筒状に形成されている。図8における左右方向は、第2構造12の周方向であり、図8に示す構造の右端は左端に連なっている。
同様に、図9は、網目構造10aを平坦に展開したときの形状を示している。実際は、網目構造10aは、図9における上下方向を軸方向とする筒状に形成されている。図9における左右方向は、網目構造10aの周方向であり、図9に示す構造の右端は左端に連なっている。
【0012】
なお、筒状体10、網目構造10a、第1構造11及び第2構造12の軸方向は、互いに一致しており、以下の説明では、これら軸方向を区別せず単に軸方向と称する場合がある。
同様に、筒状体10、網目構造10a、第1構造11及び第2構造12の周方向は、互いに一致しており、以下の説明では、これら周方向を区別せず単に周方向と称する場合がある。
【0013】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るステント100は、ワイヤにより構成されている斜格子状の網目構造10aの筒状体10を有する。
ステント100は、ワイヤとして、第1ワイヤ31(図2図5)と第2ワイヤ41(図2図6図8)とを含む。第1ワイヤ31は、第1部分32(図3)と第2部分33(図4図5)とを含む。
網目構造10aは、互いに同軸で重なり合って配置されている筒状の第1構造11(図5)と第2構造12(図8)とを含む。
図5に示すように、第1構造11は、第1ワイヤ31により構成されている斜格子状のものであり、筒状体10の軸方向において互いにずれた位置に配置されている複数の段13(図3図5)を含む。
第1部分32は、それぞれ第1構造11の各段13において軸方向にジグザグに振れつつ筒状体10の周方向に1周回分よりも長い範囲に亘って延在している複数の第1ジグザグ延在部34(図3)を含む。
図3に示すように、各第1ジグザグ延在部34は、第1傾斜方向(図3において右上がり方向)に延在する第1延在部35と、第1傾斜方向とは逆向きの第2傾斜方向(図3において右下がり方向)に延在する第2延在部36と、が交互に繰り返し連なった形状であり、周方向に延在した先で第1構造11における隣の段の第1ジグザグ延在部34に連なっている。
各第1ジグザグ延在部34は、ジグザグに振れた先で第1構造11における隣の段13の第1ジグザグ延在部34と互いに係合してフック部37を形成している。
各第1ジグザグ延在部34の一端の第2延在部36(図3に示す第2延在部36a)は、当該第1ジグザグ延在部34の他端の第2延在部36の周囲に巻き付けられている。つまり、第2延在部36どうしが撚線(撚線部39)を構成している。
図4及び図5に示すように、第2部分33は、各第1ジグザグ延在部34の第2延在部36のうち互いに延長上に配置されている第2延在部36の周囲に順次巻き付けられている。つまり、第2延在部36と第2部分33とによっても撚線(撚線部39)が構成されている。
第2ワイヤ41は、第3部分42(図6)と第4部分43(図7図8)とを含む。
図8に示すように、第2構造12は、第2ワイヤ41により構成されている斜格子状のものであり、筒状体10の軸方向において互いにずれた位置に配置されている複数の段14(図6図8)を含む。
図6に示すように、第3部分42は、それぞれ第2構造12の各段14において軸方向にジグザグに振れつつ筒状体10の周方向に1周回未満の範囲で延在している複数の第2ジグザグ延在部44を含む。
各第2ジグザグ延在部44は、ジグザグに振れた先で第2構造12における隣の段14の第2ジグザグ延在部44と互いに係合してフック部47を形成しており、周方向に延在した先で第2構造12における隣の段14の第2ジグザグ延在部44に連なっている。
図7に示すように、第4部分43は、複数の第2ジグザグ延在部44の集合体(図6参照)と相補的に第2構造12(図8)を構成するように、軸方向にジグザグに振れつつ第2構造12における隣の段14に順次に連なりながら筒状体10の周方向に複数周回延在しており、且つ、ジグザグに振れた先で第2構造12における対応する段14の第2ジグザグ延在部44と互いに係合してフック部48を形成している。
【0014】
本実施形態によれば、このような新規な構造のステント100を提供することができる。
より詳細には、ステント100の筒状体10の網目構造10aは、第1構造11と第2構造12とを含んでいる。
第1構造11は、各段13の第1ジグザグ延在部34どうしが、ジグザグに振れた先のフック部37において係合し合った構造であるため、良好な保形性を有する。ここで、ステント100が良好な保形性を有するとは、ステント100が径方向に圧縮された際に、径方向に拡張(復元)しようとする拡張力(radial force)を十分に有することである。各段13の第1ジグザグ延在部34は、ジグザグに振れつつ筒状体10の周方向に1周回分延在しているため、第1構造11の実質的に全域に亘ってまんべんなく十分な保形性を実現することができる。しかも、各第1ジグザグ延在部34の一端の第2延在部36は、自らの他端の第2延在部36に巻き付けられているので、第1構造11は更に良好な保形性を有する。加えて、第1構造11を構成する第1ワイヤ31の第2部分33は、各第1ジグザグ延在部34の第2延在部36のうち互いに延長上に配置されている第2延在部36の周囲に順次巻き付けられているので、第1構造11は一層良好な保形性を有する。
第2構造12は、各段14の第2ジグザグ延在部44どうしが、ジグザグに振れた先のフック部47において係合し合った構造であるため、良好な保形性を有する。しかも、第2構造12を構成する第2ワイヤ41の第4部分43は、ジグザグに振れた先のフック部48において各第2ジグザグ延在部44と係合しているため、第2構造12は更に良好な保形性を有する。加えて、第4部分43は、複数の第2ジグザグ延在部44の集合体と相補的に斜格子状の第2構造12を構成しているため、第2構造12の全域に亘ってまんべんなく十分な保形性を実現することができる。
このように、本実施形態によれば、ステント100の良好な保形性を実現することができる。
なお、本実施形態の場合、第1構造11の第1延在部35については、一部の第1延在部35を除いて撚線となっていないので、ステント100は十分な柔軟性を有する。ここで、ステント100が柔軟性を有するとは、軸力(axial force)が適度に小さいことである。
【0015】
以下、より詳細に説明する。
【0016】
本実施形態の場合、第1ワイヤ31は1本のワイヤである。第1部分32は第1ワイヤ31の長手方向における一部分であり、第2部分33は第1ワイヤ31の長手方向における残りの部分である。
同様に、第2ワイヤ41は1本のワイヤであり、第3部分42は第2ワイヤ41の長手方向における一部分であり、第4部分43は第2ワイヤ41の長手方向における残りの部分である。
第1ワイヤ31及び第2ワイヤ41の材料は、特に限定されず、金属材料であってもよいし、樹脂材料であってもよい。
第1ワイヤ31及び第2ワイヤ41の線径(外径)は、特に限定されないが、例えば、0.05mm以上0.5mm以下であることが好ましい。
【0017】
図10に示すように、筒状体10は、例えば、円筒状に形成されている。
上述のように、網目構造10aは、それぞれ筒状の第1構造11(図5)と第2構造12(図8)とを含む。このうち第1構造11は、第1ワイヤ31により構成されており、第2構造12は、第2ワイヤ41により構成されている。
第1構造11と第2構造12とは、互いに同軸で重なり合って配置されている。本実施形態の場合、第1構造11と第2構造12とは、互いに編組されている。このため、軸方向において第1構造11と第2構造12との位置ずれを抑制できるとともに、径方向において第1構造11と第2構造12との分離を抑制できる。
【0018】
本実施形態の場合、第1構造11と第2構造12とが互いに編組されているため、第1構造11及び第2構造12は、一方が外周側に配置され、他方が内周側に配置されているという位置関係には無い。ただし、本発明は、この例に限らず、網目構造10aは、第1構造11と第2構造12との一方が外周側に配置され、他方が内周側に配置されている二重筒構造(或いは、第1構造11及び第2構造12以外の他の層を含む三重以上の構造)であってもよい。
【0019】
以下、図3から図5を用いて、第1構造11について詳細に説明する。
先ず、図3を用いて、第1構造11のうち、第1ワイヤ31の第1部分32により構成されている部分の構造について詳細に説明する。
図3に示すように、第1構造11を構成する第1ワイヤ31の第1部分32は、複数の第1ジグザグ延在部34を含む。
第1構造11の各段13につき、1つずつの第1ジグザグ延在部34が配置されている。
個々の第1ジグザグ延在部34は、第1傾斜方向(図3において右上がり方向)に延在する第1延在部35と、第1傾斜方向とは逆向きの第2傾斜方向(図3において右下がり方向)に延在する第2延在部36と、が交互に繰り返し連なった形状である。
図3の例では、最上段の第1ジグザグ延在部34は、2つの第1延在部35と2つの第2延在部36とを含んで構成されている。
上から2段目以降の第1ジグザグ延在部34は、5つの第1延在部35と6つの第2延在部36とを含んで構成されている。本実施形態の場合、2段目以降の第1ジグザグ延在部34において、5つの第1延在部35と5つの第2延在部36を含む部分が、第1構造11の1周回分に相当している。つまり、上から2段目以降の第1ジグザグ延在部34は、第1構造11の1周回分に亘って延在する部分に加えて、1つの第2延在部36を有する。つまり、2段目以降の各段13の第1ジグザグ延在部34は、1周回分よりも長い範囲に亘って延在している。
なお、各段13の第1ジグザグ延在部34における第1延在部35及び第2延在部36の数は、ステント100の直径や網目構造10aの所望の目の細かさなどに応じて変更することができる。
隣り合う段13の第1ジグザグ延在部34は、軸方向において互いに反転した形状となっている。つまり、図3において、上から数えて奇数段目の第1ジグザグ延在部34は、左から順に、第1延在部35と第2延在部36とを交互に備えているのに対し、上から数えて偶数段目の第1ジグザグ延在部34は、左から順に、第2延在部36と第1延在部35とを交互に備えている。
【0020】
図3において、第1部分32は、一端32aを始端として、順次に段13を変えつつ複数周回延在している。
最上段の第1ジグザグ延在部34は、左端の第1延在部35を基端として、周方向に延在している。最上段の第1ジグザグ延在部34における右端の(つまり終端の)第2延在部36は、上から2段目の第1ジグザグ延在部34における左から3つ目の第2延在部36に連なっている。
上から2段目の第1ジグザグ延在部34は、左から3つ目の第2延在部36を基端として、周方向に延在している。上から2段目の第1ジグザグ延在部34の終端の第2延在部36は、当該第1ジグザグ延在部34における基端の第2延在部36の周囲に巻き付けられている。上から2段目の第1ジグザグ延在部34の終端の第2延在部36は、上から3段目の第1ジグザグ延在部34における左から3つ目の第2延在部36に連なっている。
上から3段目の第1ジグザグ延在部34は、左から3つ目の第2延在部36を基端として、周方向に延在している。上から3段目の第1ジグザグ延在部34の終端の第2延在部36は、当該第1ジグザグ延在部34における基端の第2延在部36の周囲に巻き付けられている。上から3段目の第1ジグザグ延在部34の終端の第2延在部36は、上から4段目の第1ジグザグ延在部34における左から4つ目の第2延在部36に連なっている。
上から4段目の第1ジグザグ延在部34は、左から4つ目の第2延在部36を基端として、周方向に延在している。上から4段目の第1ジグザグ延在部34の終端の第2延在部36は、当該第1ジグザグ延在部34における基端の第2延在部36の周囲に巻き付けられている。上から4段目の第1ジグザグ延在部34の終端の第2延在部36は、上から5段目の第1ジグザグ延在部34における左から4つ目の第2延在部36に連なっている。
上から5段目の第1ジグザグ延在部34は、左から4つ目の第2延在部36を基端として、周方向に延在している。上から5段目の第1ジグザグ延在部34の終端の第2延在部36は、当該第1ジグザグ延在部34における基端の第2延在部36の周囲に巻き付けられている。上から5段目の第1ジグザグ延在部34の終端の第2延在部36は、上から6段目の第1ジグザグ延在部34における左から5つ目の第2延在部36に連なっている。
以下同様に、各段13の第1ジグザグ延在部34が順次に連なっており、各段13の第1ジグザグ延在部34における一端の第2延在部36aが、当該第1ジグザグ延在部34における他端の第2延在部36の周囲に巻き付けられている。
【0021】
ここで、第1延在部35と第2延在部36との境界の角部が図3における上方に向けて凸の形状となっている部分を山部と称し、第1延在部35と第2延在部36との境界の角部が図3における下方に向けて凸の形状となっている部分を谷部と称する。
最上段の第1ジグザグ延在部34は、2山分の構造であり、2段目以降の第1ジグザグ延在部34は、5山分の構造となっている。
【0022】
上述のように、各第1ジグザグ延在部34は、ジグザグに振れた先で隣の段の第1ジグザグ延在部34と互いに係合してフック部37を形成している。
各フック部37においては、一方の第1ジグザグ延在部34の谷部と他方の第1ジグザグ延在部34の山部とがそれぞれループ形状となっている。一方の第1ジグザグ延在部34の谷部と他方の第1ジグザグ延在部34の山部とが、互いのループをくぐり、且つ、延在する向きが反転していることによって、フック部37が形成されている。
各段13の第1ジグザグ延在部34の各谷部は、1段下の第1ジグザグ延在部34の各山部と係合してフック部37を形成している。
【0023】
ここで、第1ワイヤ31の一部分が第1ワイヤ31の他の一部分の周囲に巻き付けられていることにより構成されている部分を、撚線部39と称する。
第1ジグザグ延在部34の一端の第2延在部36aが当該第1ジグザグ延在部34の第2延在部36の周囲に巻き付けられることにより構成されている部分などが、撚線部39である。
上述のように、上から2段目以降の第1ジグザグ延在部34は1周回分+1つの第2延在部36分の範囲に亘って延在している。そして、第1ジグザグ延在部34の一端の第2延在部36aが当該第1ジグザグ延在部34の第2延在部36の周囲に巻き付けられることにより撚線部39が構成されている。このため、図3に示すように、第1部分32により構成されている各段の撚線部39は、互いに延長上に位置する配置となって斜めに連なっている。つまり、各段の撚線部39は、螺線状に連なっている。
【0024】
例えば、図3に示すように、第1部分32の他端32bは、例えば、最下段の第1ジグザグ延在部34の第2延在部36どうしの撚線部39を形成し、折り返し点32cにて第1部分32が折り返された後、更に1つ分の第1延在部35だけ延長した先に存在する。
なお、第1部分32の他端32bを含む第1延在部35は、最下段の第1ジグザグ延在部34において、当該第1延在部35と対応する第1延在部35の周囲に巻き付けられて、撚線部39を構成している。
第1部分32の他端32bは、例えば、フック部37に対して結びつけられている。
【0025】
次に、図4を用いて、網目構造10aの第1構造11のうち、第1ワイヤ31の第2部分33により構成されている部分の構造について説明する。
図4において、第2部分33は、一端33aを始端としている。なお、第2部分33の一端33aは、第1部分32の一端32aと同一箇所である。つまり、第1ワイヤ31において、一端32a(一端33a)を境界とする一方の部分が、第1部分32(図4における二点鎖線部分)であり、他方の部分が、第2部分33(図4における実線部分)である。
第2部分33は、先ず、一端33aから左方向に向けて3山分のジグザグ延在部33cを形成している。ジグザグ延在部33cの各谷部は、上から2段目の第1ジグザグ延在部34の各山部と係合してフック部37を形成している。
ジグザグ延在部33cの終端33dを始端として、左方向に1山分だけ第1ジグザグ延在部34の周囲に第2部分33を巻き付けることにより撚線部39が形成されている。
この撚線部39の終端において、フック部37に対して第2部分33が巻き付けられることによって、巻付部38(図4に示す巻付部38a)が形成されている。
この巻付部38aを境界として、第2部分33の延在方向は、左下がりの方向から、右下がりの方向に切り替わっている。
【0026】
巻付部38aの先において、第2部分33は、各第1ジグザグ延在部34の第2延在部36のうち互いに延長上に配置されている第2延在部36の周囲に順次巻き付けられている。
第2部分33において、巻付部38aの先の部分は、各第2延在部36の周囲に巻き付けられて撚線部39を形成しつつ、巻付部38aから右下がりに延在し、図4における右端に示す中間点33eに至る。この中間点33eは、図4における左端にも示されている。
第2部分33は、引き続き、図4における左端の中間点33eから右下がりに延在しつつ各第2延在部36の周囲に巻き付けられて撚線部39を形成し、図4における最下段における右端のフック部37に至る。
第2部分33は、このフック部37に対して巻き付けられて巻付部38を形成している。この巻付部38を境界として、第2部分33の延在方向は、右下がりの方向から左下がりの方向に切り替わっている。
更に、第2部分33は、最下段の第1ジグザグ延在部34の1つの第1延在部35の周囲に巻き付けられて、当該第1ジグザグ延在部34の谷部に至った後、延在方向が左下がりの方向から左上がりの方向に切り替わっている。
引き続き、第2部分33は、互いに延長上に配置されている第2延在部36の周囲に順次巻き付けられて、図4における左端に示す中間点33fに至る。この中間点33fは、図4における右端にも示されている。
第2部分33は、引き続き、図4における右端の中間点33fから左上がりに延在しつつ各第2延在部36の周囲に巻き付けられて、図4における左端の中間点33gに至る。この中間点33gは、図4における右端にも示されている。
第2部分33は、引き続き、ジグザグ延在部33cの右端における1山分の周囲に巻き付けられている。第2部分33は、ジグザグ延在部33cの1山分の周囲に巻き付けられる過程で、延在方向が左上がりの方向から左下がりの方向に切り替わっている。
第2部分33は、ジグザグ延在部33cの右端における1山分の周囲に巻き付けられた後、フック部37に巻き付けられて巻付部38を形成している。この巻付部38を境界として、第2部分33の延在方向は、左下がりの方向から右下がりの方向に切り替わっている。
引き続き、第2部分33は、互いに延長上に配置されている第2延在部36の周囲に順次巻き付けられて、図4における右端に示す中間点33hに至る。この中間点33hは、図4における左端にも示されている。
第2部分33は、引き続き、図4における左端の中間点33hから右下がりに延在しつつ各第2延在部36の周囲に巻き付けられて、図4における右端の中間点33iに至る。この中間点33iは、図4における左端にも示されている。
引き続き、第2部分33は、互いに延長上に配置されている第2延在部36の周囲に順次巻き付けられて、図4における最下段におけるフック部37に至る。第2部分33は、このフック部37に対して巻き付けられて巻付部38を形成している。この巻付部38を境界として、第2部分33の延在方向は、右下がりの方向から左下がりの方向に切り替わっている。
更に、第2部分33は、最下段の第1ジグザグ延在部34の1つの第1延在部35の周囲に巻き付けられて、当該第1ジグザグ延在部34の谷部に至った後、延在方向が左下がりの方向から左上がりの方向に切り替わっている。
引き続き、第2部分33は、互いに延長上に配置されている第2延在部36の周囲に順次巻き付けられて、図4における左端に示す中間点33jに至る。この中間点33jは、図4における右端にも示されている。
第2部分33は、引き続き、図4における右端の中間点33jから左上がりに延在しつつ各第2延在部36の周囲に巻き付けられて、図4における左端の中間点33kに至る。この中間点33kは、図4における右端にも示されている。
引き続き、第2部分33は、互いに延長上に配置されている第2延在部36に順次巻き付けられた後、ジグザグ延在部33cの左端における1山分の周囲に巻き付けられ、他端33bに至る。他端33bは、例えば、第1部分32に対して結びつけられている。
なお、一端32aは、第1ワイヤ31の一端であり、他端33bは、第1ワイヤ31の他端である。
【0027】
このように、第2部分33は、第1ジグザグ延在部34どうしが係合しているフック部37に対して巻き付けられている巻付部38を含み、当該巻付部38を境界として、延在方向が切り替わっている。このため、第1部分32に対する第2部分33の位置ずれを抑制しつつ、第2部分33を様々な方向に延在させながら第1部分32に対して巻き付けることができる。
【0028】
ここで、図5に示すように、網目構造10aの軸方向における両端部(図5等に示す端部15a、15b)以外の部分において、第2部分33の各部は、互いに並列に延在している。つまり、図5において、網目構造10aの軸方向における両端部以外の部分では、第2部分33の各部は、第2延在部36の周囲に巻き付けられており、右下がりの方向(第2傾斜方向)に延在している。つまり、図5において、網目構造10aの軸方向における両端部以外の部分では、第2部分33の各部は、右上がりの方向(第1傾斜方向)に延在している部分を含まないため、ステント100が適度な変形性も有するようにできる。
換言すれば、網目構造10aの軸方向における両端部以外の部分では、撚線部39は右下がりの方向に延在しており、右上がりの方向に延在する撚線部39を含まないため、ステント100が十分な柔軟性を有するようにできる。
【0029】
第1構造11は、以上のように構成されている。
【0030】
以下、図6から図8を用いて、第2構造12について詳細に説明する。
先ず、図6を用いて、第2構造12のうち、第2ワイヤ41の第3部分42により構成されている部分の構造について詳細に説明する。
図6に示すように、第2構造12を構成する第2ワイヤ41の第3部分42は、複数の第2ジグザグ延在部44を含む。
第2構造12の各段14につき、1つずつの第2ジグザグ延在部44が配置されている。
個々の第2ジグザグ延在部44は、第3傾斜方向(図6において右上がり方向)に延在する第1延在部45と、第3傾斜方向とは逆向きの第4傾斜方向(図6において右下がり方向)に延在する第2延在部46と、が交互に繰り返し連なった形状である。
図6の例では、最上段の第2ジグザグ延在部44は、5つの第2延在部46と4つの第1延在部45とを含んで構成されている。最下段の第2ジグザグ延在部44は、5つの第2延在部46と5つの第1延在部45とを含んで構成されている。それ以外の各段14の第2ジグザグ延在部44は、4つの第2延在部46と4つの第1延在部45とを含んで構成されている。
図6の例では、5つの第2延在部46と5つの第1延在部45とで第2構造12の1周回分に相当している。このため、最下段以外の各第2ジグザグ延在部44は、1周回分未満の範囲に亘って延在していることになる。
【0031】
図6において、第3部分42は、一端42aを始端として、順次に段14を変えつつ複数周回延在している。
最上段の第2ジグザグ延在部44は、一端42aを含む第2延在部46を基端として、周方向に延在している。最上段の第2ジグザグ延在部44における終端の第2延在部46は、図6における左端に示されている。最上段の第2ジグザグ延在部44における終端の第2延在部46は、上から2段目の第2ジグザグ延在部44における左端の第2延在部46に連なっている。
上から2段目の第2ジグザグ延在部44における右端の第2延在部46は、上から3段目の第2ジグザグ延在部44の第2延在部46に連なっている。
同様に、上から3段目の第2ジグザグ延在部44から、下から2段目の第2ジグザグ延在部44についても、各段14において軸方向にジグザグに振れつつ、周方向に延在し、周方向に延在した先で、隣の段の第2ジグザグ延在部44の第2延在部46に連なっている。
【0032】
ここで、第1延在部45と第2延在部46との境界の角部が図6における上方に向けて凸の形状となっている部分を山部と称し、第1延在部45と第2延在部46との境界の角部が図6における下方に向けて凸の形状となっている部分を谷部と称する。
最上段の第2ジグザグ延在部44は、4.5山分の構造である。上から2段目の第2ジグザグ延在部44から、下から2段目の第2ジグザグ延在部44については、それぞれ3.5山分の構造となっている。最下段の第2ジグザグ延在部44は、5山分の構造となっている。
【0033】
このように、網目構造10aの両端部(端部15a、15b)の第1ジグザグ延在部34におけるジグザグの振れ数よりも、網目構造10aの両端部以外の部分の第1ジグザグ延在部34におけるジグザグの振れ数が少ない。
また、網目構造10aの両端部以外の部分において、各第1ジグザグ延在部34におけるジグザグの振れ数が互いに等しい。
【0034】
上述のように、各第2ジグザグ延在部44は、ジグザグに振れた先で隣の段の第2ジグザグ延在部44と互いに係合してフック部47を形成している。
各フック部47においては、一方の第2ジグザグ延在部44の谷部と他方の第2ジグザグ延在部44の山部とがそれぞれループ形状となっている。一方の第2ジグザグ延在部44の谷部と他方の第2ジグザグ延在部44の山部とが、互いのループをくぐり、且つ、延在する向きが反転していることによって、フック部47が形成されている。
各段14の第2ジグザグ延在部44の各谷部のうち、1段下の第2ジグザグ延在部44の各山部と対応する位置にある谷部については、それぞれ対応する山部と係合してフック部47を形成している。
【0035】
第3部分42の他端42bは、例えば、最下段の第2ジグザグ延在部44における右端の第1延在部45の延長上に位置しており、下から2段目の第2ジグザグ延在部44と下から3段目の第2ジグザグ延在部44とのフック部47に対して結びつけられている。
【0036】
図6に示すように、第2構造12のうち、第2ワイヤ41の第3部分42により構成されている部分は、部分的にブランクが存在する斜格子状に形成されている。
【0037】
次に、図7を用いて、網目構造10aの第2構造12のうち、第2ワイヤ41の第4部分43により構成されている部分の構造について説明する。
図7において、第4部分43は、一端43aを始端としている。なお、第4部分43の一端43aは、第3部分42の一端42aと同一箇所である。つまり、第2ワイヤ41において、一端42a(一端33a)を境界とする一方の部分が、第3部分42(図7における二点鎖線部分)であり、他方の部分が、第4部分43(図7における実線部分)である。
上述のように、第4部分43は、複数の第2ジグザグ延在部44の集合体(図7における二点鎖線部分)と相補的に、斜格子状の第2構造12(図8)を構成するように、延在している。すなわち、第4部分43は、軸方向にジグザグに振れつつ、第2構造12における隣の段14に順次に連なりながら、周方向に複数周回延在している。そして、第4部分43は、ジグザグに振れた先で第2ジグザグ延在部44と互いに係合してフック部48を形成している。
各フック部48においては、第4部分43の山部又は谷部と、第2ジグザグ延在部44の山部又は谷部とが、それぞれループ形状となっており、互いのループをくぐり、且つ、延在する向きが反転している。
【0038】
より詳細には、第4部分43のジグザグ形状は、2段分斜めに延在する第1延在部49と、第1延在部49が延在した先から第1延在部49とは逆の斜め向きに折り返されて1段分斜めに延在する第2延在部50と、が交互に繰り返し連なった形状である。
図7において、第1延在部49は左下がりの方向に延在しており、第2延在部50は左上がりの方向に延在している。
【0039】
なお、第2構造12の各段14の第2ジグザグ延在部44における第1延在部45及び第2延在部46の数は、ステント100の直径や網目構造10aの所望の目の細かさなどに応じて変更することができる。
一方、第2構造12の第4部分43のジグザグ形状は、例えば、ステント100の直径などにかかわらず一定形状(2段分斜めに延在する第1延在部49と、第1延在部49が延在した先から第1延在部49とは逆の斜め向きに折り返されて1段分斜めに延在する第2延在部50と、が交互に繰り返し連なった形状)とすることができる。
【0040】
第4部分43の他端43bは、フック部47に対して結びつけられている。
一端42aは、第2ワイヤ41の一端であり、他端43bは、第2ワイヤ41の他端である。
【0041】
第2構造12は、以上のように構成されている。
【0042】
ここで、本実施形態の場合、上述のように、第1構造11と第2構造12とが互いに編組されている。
より詳細には、図9に示すように、第2ジグザグ延在部44が、ジグザグに振れる度に、第1ワイヤ31の外面側と内面側とを交互に通過していることによって、第1構造11と第2構造12とが互いに編組されている。
なお、図9において、第1ワイヤ31により構成されている第1構造11(図5)は、簡略化して示されており、第1構造11における各フック部は不図示としているとともに、撚線部39の形成範囲は網掛けで示されている。
【0043】
図9に示すように、第1構造11における網目の寸法と、第2構造12における網目の寸法は、互いに等しいことが好ましい。
また、第1構造11における網目と、第2構造12における網目とは、周方向において互いにずれて配置されていることが好ましく、周方向における網目の寸法の1/2ずつずれていることが更に好ましい。
【0044】
図1に示すように、筒状体10には、X線不透過性のマーカー63が設けられている。マーカー63は、例えば、金などの細線をコイル状に巻回することにより構成されており、第1ワイヤ31又は第2ワイヤ41に外挿されている。
マーカー63は、例えば、筒状体10の軸方向における一方又は両方の端部に設けられている。また、マーカー63は、筒状体10の周方向における複数箇所に設けられていてもよい。
【0045】
ステント100を構成する網目構造10aを作製する手順は、特に限定されないが、例えば、第1構造11を先に作製した後、第2構造12を作製することによって、網目構造10aが得られる。
第1構造11は、第1ワイヤ31の一端(一端32a)側から順に編むことによって作製してもよいし、第1ワイヤ31の他端(他端33b)側から順に編むことによって作製してもよい。
同様に、第2構造12は、第2ワイヤ41の一端(一端42a)側から順に編むことによって作製してもよいし、第2ワイヤ41の他端(他端43b)側から順に編むことによって作製してもよい。
【0046】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態を説明する。
上記の第1実施形態では、網目構造10aが第1構造11と第2構造12とを含んで構成されている例を説明したが、本実施形態の場合、網目構造10aは、第2構造12を含んでおらず、第1構造11と第2構造12とのうち第1構造11(図5)を選択的に備える構成となっている。
【0047】
すなわち、本実施形態に係るステント100は、ワイヤ(第1ワイヤ31)により構成されている斜格子状の網目構造10aの筒状体10を有するステント100であって、ワイヤ(第1ワイヤ31)は、第1部分32と第2部分33とを含み、網目構造10aは、筒状体10の軸方向において互いにずれた位置に配置されている複数の段13を含み、第1部分32は、それぞれ各段13において軸方向にジグザグに振れつつ筒状体10の周方向に1周回分よりも長い範囲に亘って延在している複数のジグザグ延在部(上述の第1ジグザグ延在部34)を含み、各ジグザグ延在部(第1ジグザグ延在部34)は、第1傾斜方向に延在する第1延在部35と、第1傾斜方向とは逆向きの第2傾斜方向に延在する第2延在部36と、が交互に繰り返し連なった形状であり、周方向に延在した先で隣の段13のジグザグ延在部(第1ジグザグ延在部34)に連なっており、各ジグザグ延在部(第1ジグザグ延在部34)は、ジグザグに振れた先で隣の段のジグザグ延在部(第1ジグザグ延在部34)と互いに係合してフック部37を形成しており、各ジグザグ延在部(第1ジグザグ延在部34)の一端の第2延在部36は、当該ジグザグ延在部(第1ジグザグ延在部34)の他端の第2延在部36の周囲に巻き付けられており、第2部分33は、各ジグザグ延在部(第1ジグザグ延在部34)の第2延在部36のうち互いに延長上に配置されている第2延在部36の周囲に順次巻き付けられている。
【0048】
本実施形態によれば、このような新規な構造のステント100を提供することができる。
より詳細には、ステント100の筒状体10の網目構造10aは、各段13の第1ジグザグ延在部34どうしが、ジグザグに振れた先のフック部37において係合し合った構造であるため、良好な保形性を有する。各段13の第1ジグザグ延在部34は、ジグザグに振れつつ筒状体10の周方向に1周回分延在しているため、網目構造10aの実質的に全域に亘ってまんべんなく十分な保形性を実現することができる。しかも、各第1ジグザグ延在部34の一端の第2延在部36は、自らの他端の第2延在部36に巻き付けられているので、網目構造10aは更に良好な保形性を有する。加えて、網目構造10aを構成する第1ワイヤ31の第2部分33は、各第1ジグザグ延在部34の第2延在部36のうち互いに延長上に配置されている第2延在部36の周囲に順次巻き付けられているので、網目構造10aは一層良好な保形性を有する。
また、本実施形態の場合も、第1構造11の第1延在部35については、一部の第1延在部35を除いて撚線となっていないので、ステント100は十分な柔軟性を有する。
このように、本実施形態によっても、ステント100の保形性と柔軟性とを両立させることができる。
【0049】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態を説明する。
上記の第1実施形態では、網目構造10aが第1構造11と第2構造12とを含んで構成されている例を説明したが、本実施形態の場合、網目構造10aは、第1構造11を含んでおらず、第1構造11と第2構造12とのうち第2構造12(図7)を選択的に備える構成となっている。
【0050】
すなわち、本実施形態に係るステント100は、ワイヤ(第2ワイヤ41)により構成されている斜格子状の網目構造10aの筒状体10を有するステント100であって、ワイヤ(第2ワイヤ41)は、第1部分(上述の第3部分42)と第2部分(上述の第4部分43)とを含み、網目構造10aは、筒状体10の軸方向において互いにずれた位置に配置されている複数の段14を含み、第1部分(第3部分42)は、それぞれ各段13において軸方向にジグザグに振れつつ筒状体10の周方向に1周回未満の範囲で延在している複数のジグザグ延在部(上述の第2ジグザグ延在部44)を含み、各ジグザグ延在部(第2ジグザグ延在部44)は、ジグザグに振れた先で隣の段14のジグザグ延在部(第2ジグザグ延在部44)と互いに係合してフック部47を形成しており、周方向に延在した先で隣の段14のジグザグ延在部(第2ジグザグ延在部44)に連なっており、第2部分(第4部分43)は、複数のジグザグ延在部(第2ジグザグ延在部44)の集合体と相補的に網目構造10aを構成するように、軸方向にジグザグに振れつつ隣の段14に順次に連なりながら筒状体10の周方向に複数周回延在しており、且つ、ジグザグに振れた先で対応する段14のジグザグ延在部(第2ジグザグ延在部44)と互いに係合してフック部48を形成している。
【0051】
本実施形態によれば、このような新規な構造のステント100を提供することができる。
より詳細には、ステント100の筒状体10の網目構造10aは、各段14の第2ジグザグ延在部44どうしが、ジグザグに振れた先のフック部47において係合し合った構造であるため、良好な保形性を有する。しかも、網目構造10aを構成する第2ワイヤ41の第4部分43は、ジグザグに振れた先のフック部48において各第2ジグザグ延在部44と係合しているため、網目構造10aは更に良好な保形性を有する。加えて、第4部分43は、複数の第2ジグザグ延在部44の集合体と相補的に斜格子状の網目構造10aを構成しているため、網目構造10aの全域に亘ってまんべんなく十分な保形性を実現することができる。
なお、第2構造12は、第1構造11とは異なり、撚線部39を含まないため、ステント100が十分な柔軟性を有する。
このように、本実施形態によっても、ステント100の保形性と柔軟性とを両立させることができる。
【0052】
〔第4実施形態〕
次に、図11及び図12を用いて第4実施形態を説明する。
図11及び図12に示すように、本実施形態に係るステント100の筒状体10は、第1実施形態で説明した網目構造10aが2重に配置された構造となっている。
なお、本発明は、この例に限らず、筒状体10は、第1実施形態で説明した網目構造10aが3重以上に配置された構造となっていてもよい。
図11に示すように、複数の網目構造10aどうしは、連結ワイヤ61によって相互に連結されている。連結ワイヤ61の材料は、特に限定されず、金属材料であってもよいし、樹脂材料であってもよい。
連結ワイヤ61は、複数の網目構造10aの網目どうしを縫い付けるようにして、複数の網目構造10aの網目に挿通されている。例えば、連結ワイヤ61は、筒状体10の軸方向における一端側と他端側において、それぞれ周回状に配置されている。
【0053】
このように、本実施形態に係るステント100は、互いに同軸で多重に配置されている複数の網目構造10aと、複数の網目構造10aどうしを相互に連結している連結ワイヤ61と、を備える。
このため、軸方向において複数の網目構造10aどうしの位置ずれを抑制できるとともに、径方向において複数の網目構造10aどうしの分離を抑制できる。
【0054】
本実施形態の場合、複数の網目構造10aにおける撚線部39の延在方向は、互いに同一の斜め方向であってもよいし、互いに交差する(互いに逆向きの)斜め方向であってもよい。
【0055】
マーカー63は、例えば、筒状体10の軸方向における一方又は両方の端部に設けられている他、筒状体10の軸方向における中央部に設けられている。
【0056】
なお、筒状体10が備える複数の網目構造10aの各々は、上記の各実施形態のいずれかで説明した網目構造10aとすることでき、異なる実施形態で説明した網目構造10aどうしを重ねて筒状体10が構成されていてもよい。
【0057】
〔第5実施形態〕
次に、図13(a)及び図13(b)を用いて第5実施形態を説明する。
本実施形態に係るステント100は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係るステント100と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係るステント100と同様に構成されている。
【0058】
本実施形態の場合、ステント100は、筒状体10と同軸に配置されている管状体62を更に備える。このため、ステント100は、イングロース(ステント100内部への腫瘍等の侵入)に対する良好な抵抗性を有するものとなる。
管状体62は、例えば、樹脂材料により構成されている。管状体62は、図13(a)及び図13(b)に示すように、筒状体10の外周面を覆っていてもよいし、これとは逆に、筒状体10が管状体62の外周面を覆っていてもよい。或いは、管状体62は、樹脂材料を筒状体10の網目構造10aに含浸させることによって構成されていてもよい。
【0059】
〔第6実施形態〕
次に、図14(a)及び図14(b)を用いて第6実施形態を説明する。
本実施形態に係るステント100は、以下に説明する点で、上記の第4実施形態に係るステント100と相違しており、その他の点では、上記の第4実施形態に係るステント100と同様に構成されている。
【0060】
本実施形態の場合、ステント100は、筒状体10と同軸に配置されている管状体62を更に備える。管状体62は、第5実施形態と同様のものである。
管状体62は、図14(a)及び図14(b)に示すように、筒状体10の外周面を覆っていてもよいし、これとは逆に、筒状体10が管状体62の外周面を覆っていてもよい。或いは、管状体62は、樹脂材料を筒状体10の網目構造10aに含浸させることによって構成されていてもよい。
また、本実施形態の場合、管状体62は筒状体10の複数の網目構造10aどうしの間に挟まれた位置に配置されていてもよい。つまり、例えば、網目構造10a、管状体62及び網目構造10aが径方向内側からこの順に配置された3重構造となっていてもよい。
【0061】
本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0062】
例えば、上記の第1実施形態では、図4に示すように、ジグザグ延在部33cが第2部分33の一部分であるという説明を行ったが、ジグザグ延在部33cは、第1部分32(図3)における最上段の第1ジグザグ延在部34の一部分であってもよい。つまり、最上段の第1ジグザグ延在部34は、5つの第1延在部35と5つの第2延在部36とを含んで構成されていてもよい。
この場合、例えば、第1部分32の一端(第1ワイヤ31の一端)は、図4に示す一端33aとすることができる。
【0063】
また、上記の第1実施形態においては、第1構造11を構成する第1ワイヤ31と第2構造12を構成する第2ワイヤ41とが別個のワイヤである例を説明したが、第1ワイヤ31と第2ワイヤ41は、1本のワイヤの1部分ずつでもよい。
また、上記の第1実施形態では、第1部分32と第2部分33とが1本の第1ワイヤ31の一部分ずつである例を説明したが、第1部分32と第2部分33とは、別個のワイヤであってもよい。また、上記の第1実施形態では、第3部分42と第4部分43とが1本の第2ワイヤ41の一部分ずつである例を説明したが、第3部分42と第4部分43とは、別個のワイヤであってもよい。
【0064】
また、第2実施形態又は第3実施形態に係るステント100が、管状体62を備えていてもよい。
【0065】
また、上記の各実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、適宜に組み合わせることができる。
【0066】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)ワイヤにより構成されている斜格子状の網目構造の筒状体を有するステントであって、
前記ワイヤは、第1部分と第2部分とを含み、
前記網目構造は、前記筒状体の軸方向において互いにずれた位置に配置されている複数の段を含み、
前記第1部分は、それぞれ各段において前記軸方向にジグザグに振れつつ前記筒状体の周方向に1周回分よりも長い範囲に亘って延在している複数のジグザグ延在部を含み、
各ジグザグ延在部は、第1傾斜方向に延在する第1延在部と、前記第1傾斜方向とは逆向きの第2傾斜方向に延在する第2延在部と、が交互に繰り返し連なった形状であり、前記周方向に延在した先で隣の段のジグザグ延在部に連なっており、
各ジグザグ延在部は、ジグザグに振れた先で隣の段のジグザグ延在部と互いに係合してフック部を形成しており、
各ジグザグ延在部の一端の前記第2延在部は、当該ジグザグ延在部の他端の前記第2延在部の周囲に巻き付けられており、
前記第2部分は、各ジグザグ延在部の前記第2延在部のうち互いに延長上に配置されている前記第2延在部の周囲に順次巻き付けられているステント。
(2)前記第2部分は、前記ジグザグ延在部どうしが係合しているフック部に対して巻き付けられている巻付部を含み、当該巻付部を境界として、延在方向が切り替わっている(1)に記載のステント。
(3)前記網目構造の両端部以外の部分において、前記第2部分の各部は、互いに並列に延在している(1)又は(2)に記載のステント。
(4)ワイヤにより構成されている斜格子状の網目構造の筒状体を有するステントであって、
前記ワイヤは、第1部分と第2部分とを含み、
前記網目構造は、前記筒状体の軸方向において互いにずれた位置に配置されている複数の段を含み、
前記第1部分は、それぞれ各段において前記軸方向にジグザグに振れつつ前記筒状体の周方向に1周回未満の範囲で延在している複数のジグザグ延在部を含み、
各ジグザグ延在部は、ジグザグに振れた先で隣の段のジグザグ延在部と互いに係合してフック部を形成しており、前記周方向に延在した先で隣の段のジグザグ延在部に連なっており、
前記第2部分は、前記複数のジグザグ延在部の集合体と相補的に前記網目構造を構成するように、前記軸方向にジグザグに振れつつ隣の段に順次に連なりながら前記筒状体の周方向に複数周回延在しており、且つ、ジグザグに振れた先で対応する段の前記ジグザグ延在部と互いに係合してフック部を形成しているステント。
(5)前記網目構造の両端部の前記ジグザグ延在部におけるジグザグの振れ数よりも、前記網目構造の両端部以外の部分の前記ジグザグ延在部におけるジグザグの振れ数が少ない(4)に記載のステント。
(6)前記網目構造の両端部以外の部分において、各ジグザグ延在部におけるジグザグの振れ数が互いに等しい(5)に記載のステント。
(7)前記第2部分のジグザグ形状は、2段分斜めに延在する第1延在部と、前記第1延在部が延在した先から前記第1延在部とは逆の斜め向きに折り返されて1段分斜めに延在する第2延在部と、が交互に繰り返し連なった形状である(5)又は(6)に記載のステント。
(8)ワイヤにより構成されている斜格子状の網目構造の筒状体を有するステントであって、
前記ワイヤとして、第1ワイヤと第2ワイヤとを含み、
前記第1ワイヤは、第1部分と第2部分とを含み、
前記網目構造は、互いに同軸で重なり合って配置されている筒状の第1構造と第2構造とを含み、
前記第1構造は、前記第1ワイヤにより構成されている斜格子状のものであり、前記筒状体の軸方向において互いにずれた位置に配置されている複数の段を含み、
前記第1部分は、それぞれ前記第1構造の各段において前記軸方向にジグザグに振れつつ前記筒状体の周方向に1周回分よりも長い範囲に亘って延在している複数の第1ジグザグ延在部を含み、
各第1ジグザグ延在部は、第1傾斜方向に延在する第1延在部と、前記第1傾斜方向とは逆向きの第2傾斜方向に延在する第2延在部と、が交互に繰り返し連なった形状であり、前記周方向に延在した先で前記第1構造における隣の段の第1ジグザグ延在部に連なっており、
各第1ジグザグ延在部は、ジグザグに振れた先で前記第1構造における隣の段の第1ジグザグ延在部と互いに係合してフック部を形成しており、
各第1ジグザグ延在部の一端の前記第2延在部は、当該第1ジグザグ延在部の他端の前記第2延在部の周囲に巻き付けられており、
前記第2部分は、各第1ジグザグ延在部の前記第2延在部のうち互いに延長上に配置されている前記第2延在部の周囲に順次巻き付けられており、
前記第2ワイヤは、第3部分と第4部分とを含み、
前記第2構造は、前記第2ワイヤにより構成されている斜格子状のものであり、前記筒状体の軸方向において互いにずれた位置に配置されている複数の段を含み、
前記第3部分は、それぞれ前記第2構造の各段において前記軸方向にジグザグに振れつつ前記筒状体の周方向に1周回未満の範囲で延在している複数の第2ジグザグ延在部を含み、
各第2ジグザグ延在部は、ジグザグに振れた先で前記第2構造における隣の段の第2ジグザグ延在部と互いに係合してフック部を形成しており、前記周方向に延在した先で前記第2構造における隣の段の第2ジグザグ延在部に連なっており、
前記第4部分は、前記複数の第2ジグザグ延在部の集合体と相補的に前記第2構造を構成するように、前記軸方向にジグザグに振れつつ前記第2構造における隣の段に順次に連なりながら前記筒状体の周方向に複数周回延在しており、且つ、ジグザグに振れた先で前記第2構造における対応する段の前記第2ジグザグ延在部と互いに係合してフック部を形成しているステント。
(9)前記第1構造と前記第2構造とが互いに編組されている(8)に記載のステント。
(10)前記第2ジグザグ延在部が、ジグザグに振れる度に、前記第1ワイヤの外面側と内面側とを交互に通過していることによって、前記第1構造と前記第2構造とが互いに編組されている(9)に記載のステント。
(11)互いに同軸で多重に配置されている複数の前記網目構造と、
複数の前記網目構造どうしを相互に連結している連結ワイヤと、
を備える(8)から(10)のいずれか一項に記載のステント。
(12)前記筒状体と同軸に配置されている管状体を更に備える(1)から(11)のいずれか一項に記載のステント。
【符号の説明】
【0067】
10 筒状体
10a 網目構造
11 第1構造
12 第2構造
13 第1構造の段
14 第2構造の段
15a、15b 端部
31 第1ワイヤ
32 第1部分
32a 一端
32b 他端
32c 折り返し点
33 第2部分
33a 一端
33b 他端
33c ジグザグ延在部
33d 終端
33e、33f、33g、33h、33i、33j、33k 中間点
34 第1ジグザグ延在部(ジグザグ延在部)
35 第1延在部
36 第2延在部
36a 一端の第2延在部
37 フック部
38、38a 巻付部
39 撚線部
41 第2ワイヤ
42 第3部分
42a 一端
42b 他端
43 第4部分
43a 一端
43b 他端
44 第2ジグザグ延在部(ジグザグ延在部)
45 第1延在部
46 第2延在部
47、48 フック部
49 第1延在部
50 第2延在部
61 連結ワイヤ
62 管状体
63 マーカー
100 ステント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14