(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】熱処理設備
(51)【国際特許分類】
C21D 11/00 20060101AFI20230703BHJP
C21D 1/00 20060101ALI20230703BHJP
F27B 19/04 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
C21D11/00 105
C21D1/00 111
F27B19/04
(21)【出願番号】P 2022009298
(22)【出願日】2022-01-25
【審査請求日】2022-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】藤野 智彦
(72)【発明者】
【氏名】森岡 福次郎
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特許第5669981(JP,B1)
【文献】特許第5686918(JP,B1)
【文献】特開2017-218655(JP,A)
【文献】特開2006-063363(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0071955(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 11/00
C21D 1/00
F27B 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理する被処理物を装入させる装入装置と、被処理物を熱処理する複数の処理装置と、処理装置において熱処理された被処理物を抽出させる抽出装置と、前記の装入装置と処理装置と抽出装置との間で移動して、装入装置における被処理物を処理装置に装入させ、処理装置において熱処理された被処理物を抽出装置に装入させる搬送装置とを備えた熱処理設備において、
前記の搬送装置が、被処理物を前記の処理装置と装入装置と抽出装置との間で出し入れするための搬送室を備え、
熱処理する前の被処理物を装入させない状態で搬送装置を装入装置の位置から熱処理された被処理物を抽出させる処理装置の位置に移動させる時間Tx1と、
処理装置において熱処理された被処理物を搬送装置に装入させる時間Tx2と、
熱処理された被処理物が装入された搬送装置を抽出装置の位置に移動させる時間Tx3と、
搬送装置から熱処理された被処理物を抽出装置に装入させる時間Tx4と、
熱処理された被処理物を抽出装置に装入させた搬送装置を装入装置の位置に移動させる時間Tx5と、
装入装置から熱処理する前の被処理物を搬送装置に装入させる時間Tx6と、
熱処理する前の被処理物が装入された搬送装置を被処理物の熱処理を行う処理装置の位置に移動させる時間Tx7と、
搬送装置から熱処理する前の被処理物を処理装置に装入させる時間Tx8と、
熱処理する前の被処理物を処理装置に装入させた搬送装置を装入装置の位置に移動させる時間Tx9との合計時間を搬送サイクル時間TSXとすると共に、
前記の搬送サイクル時間TSXから、搬送装置を熱処理する前の被処理物を装入させない状態で装入装置の位置から熱処理された被処理物を抽出させる処理装置の位置に移動させる時間Tx1と、熱処理する前の被処理物を処理装置に装入させた搬送装置を前記の装入装置の位置に移動させる時間Tx9を引いた時間を入替操作時間BXとし、
前記の各処理装置において被処理物を熱処理する時間を、制御装置によりそれぞれ前記の搬送サイクル時間TSXの倍数から前記の入替操作時間BXを引いた時間に調整すると共に、
前記の装入装置から熱処理する前の被処理物を前記の搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理するにあたり、制御装置により、各処理装置において被処理物を熱処理する時間に基づいて、
処理装置に新たに装入させて熱処理する被処理物の熱処理完了時刻が、他の熱処理装置において熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻と重ならず、且つ処理装置に新たに装入させて熱処理する被処理物の抽出装置での滞在時刻が、他の処理装置において熱処理されている各被処理物の抽出装置での滞在時刻と重ならないように、搬送サイクル時間ごとに制御することを特徴とする熱処理設備。
【請求項2】
熱処理する被処理物を装入させる装入装置と、被処理物を熱処理する複数の処理装置と、処理装置において熱処理された被処理物を抽出させる抽出装置と、前記の装入装置と処理装置と抽出装置との間で移動して、装入装置における被処理物を処理装置に装入させ、処理装置において熱処理された被処理物を抽出装置に装入させる搬送装置とを備えた熱処理設備において、
前記の搬送装置が、被処理物を前記の処理装置と装入装置と抽出装置との間で出し入れするための搬送室と、熱処理された被処理物を高温状態で保持する保温室とを備え、
熱処理する前の被処理物を装入させない状態で搬送装置を装入装置の位置から熱処理された被処理物を抽出させる処理装置の位置に移動させる時間Ty1と、
処理装置において熱処理された被処理物を搬送装置における搬送室を通して保温室に装入させる時間Ty2と、
熱処理された被処理物が保温室に装入された状態で搬送装置を装入装置の位置に移動させる時間Ty3と、
熱処理された被処理物が保温室に装入された搬送装置の搬送室に装入装置から熱処理する前の被処理物を装入させる時間Ty4と、
熱処理された被処理物が保温室に装入されると共に搬送室に熱処理する前の被処理物が装入された搬送装置を被処理物の熱処理を行う処理装置の位置に移動させる時間Ty5と、
搬送室に装入された熱処理する前の被処理物を搬送装置から処理装置に装入させる時間Ty6と、
熱処理する前の被処理物を処理装置に装入させた搬送装置を抽出装置の位置に移動させる時間Ty7と、
保温室に装入された熱処理された被処理物を、搬送室を通して搬送装置から抽出装置に装入させる時間Ty8と、
熱熱処理された被処理物を抽出装置に装入させた搬送装置を装入装置の位置に移動させる時間Ty9との合計時間を搬送サイクル時間TSYとすると共に、
前記の搬送サイクル時間TSYから、搬送装置を熱処理する前の被処理物を装入させない状態で装入装置の位置から熱処理された被処理物を抽出させる処理装置の位置に移動させる時間Ty1と、熱処理する前の被処理物を処理装置に装入させた搬送装置を抽出装置の位置に移動させる時間Ty7と、保温室に装入された熱処理された被処理物を、搬送室を通して搬送装置から抽出装置に装入させる時間Ty8と、熱熱処理された被処理物を抽出装置に装入させた搬送装置を装入装置の位置に移動させる時間Ty9を引いた時間を入替操作時間BYとし、
前記の各処理装置において被処理物を熱処理する時間を、制御装置によりそれぞれ前記の搬送サイクル時間TSYの倍数から前記の入替操作時間BYを引いた時間に調整すると共に、
前記の装入装置から熱処理する前の被処理物を前記の搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理するにあたり、制御装置により、各処理装置において被処理物を熱処理する時間に基づいて、
処理装置に新たに装入させて熱処理する被処理物の熱処理完了時刻が、他の熱処理装置において熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻と重ならず、且つ処理装置に新たに装入させて熱処理する被処理物の抽出装置での滞在時刻が、他の処理装置において熱処理されている各被処理物の抽出装置での滞在時刻と重ならないように、搬送サイクル時間ごとに制御することを特徴とする熱処理設備。
【請求項3】
熱処理する被処理物を装入させる装入装置と、被処理物を熱処理する複数の処理装置と、処理装置において熱処理された被処理物を抽出させる抽出装置と、前記の装入装置と処理装置と抽出装置との間で移動して、装入装置における被処理物を処理装置に装入させ、処理装置において熱処理された被処理物を抽出装置に装入させる搬送装置とを備えた熱処理設備において、
前記の搬送装置が、被処理物を前記の処理装置と装入装置と抽出装置との間で出し入れするための搬送室と、搬送室に装入された熱処理前の被処理物を待機させる待機室とを備え、
装入装置から熱処理する前の被処理物を搬送装置における搬送室を通して待機室に装入させる時間Tz1と、
搬送装置を被処理物の熱処理が完了した処理装置の位置に移動させる時間Tz2と、
処理装置において熱処理された被処理物を搬送装置の搬送室に装入させる時間Tz3と、
搬送室に熱処理された被処理物が装入された搬送装置を抽出装置の位置に移動させる時間Tz4と、
搬送装置の搬送室から熱処理された被処理物を抽出装置に装入させる時間Tz5と、
熱処理された被処理物を抽出装置に装入させた搬送装置を被処理物の熱処理を行う処理装置の位置に移動させる時間Tz6と、
搬送装置の待機室に装入された熱処理する前の被処理物を前記の処理装置に装入させる時間Tz7と、
熱処理する前の被処理物を処理装置に装入させた搬送装置を装入装置の位置に移動させる時間Tz8の合計時間を搬送サイクル時間TSZとすると共に、
前記の搬送サイクル時間TSZから、装入装置から熱処理する前の被処理物を搬送装置における搬送室を通して待機室に装入させる時間Tz1と、待機室に熱処理する前の被処理物が装入された前記の搬送装置を熱処理された被処理物を抽出させる処理装置の位置に移動させる時間Tz2と、熱処理する前の被処理物を処理装置に装入させた搬送装置を前記の装入装置の位置に移動させる時間Tz8を引いた時間を入替操作時間BZとし、
前記の各処理装置において被処理物を熱処理する時間を、制御装置によりそれぞれ前記の搬送サイクル時間TSZの倍数から前記の入替操作時間BZを引いた時間に調整すると共に、
前記の装入装置から熱処理する前の被処理物を前記の搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理するにあたり、制御装置により、各処理装置において被処理物を熱処理する時間に基づいて、
処理装置に新たに装入させて熱処理する被処理物の熱処理完了時刻が、他の熱処理装置において熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻と重ならず、且つ処理装置に新たに装入させて熱処理する被処理物の抽出装置での滞在時刻が、他の処理装置において熱処理されている各被処理物の抽出装置での滞在時刻と重ならないように、搬送サイクル時間ごとに制御することを特徴とする熱処理設備。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の熱処理設備において、装入装置から熱処理する前の被処理物を前記の搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理するにあたり、前記の制御装置は、装入装置から搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理する被処理物の熱処理完了時刻が、他の処理装置において熱処理されている各被処理物の熱処理完了時刻と重なる場合、或いは前記の被処理物が抽出装置で滞在する時刻が、他の処理装置において熱処理されている各被処理物の抽出装置で滞在する時刻と重なる場合には、装入装置から搬送装置を介して被処理物を前記の処理装置に装入させる動作を行わないようにし、1搬送サイクル時間後に再度判定する一方、前記の熱処理完了時刻が重ならず、且つ前記の被処理物が抽出装置で滞在する時刻が、他の処理装置において熱処理されている各被処理物の抽出装置で滞在する時刻と重ならない場合には、装入装置から搬送装置を介して被処理物を前記の処理装置に装入させる動作を行うようにすることを特徴とする熱処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理する被処理物を装入させる装入装置と、被処理物を熱処理する複数の処理装置と、処理装置において熱処理された被処理物を抽出させる抽出装置と、前記の装入装置と処理装置と抽出装置との間で移動して、装入装置における被処理物を処理装置に装入させ、処理装置において熱処理された被処理物を抽出装置に装入させる搬送装置とを備えた熱処理設備に関するものである。特に、装入装置から熱処理する前の被処理物を搬送装置に装入させ、前記の被処理物を搬送装置により各処理装置に装入させて熱処理し、被処理物を各処理装置から搬送装置に装入し、熱処理された被処理物をこの搬送装置から前記の抽出装置に抽出させるようにして被処理物を順々に熱処理させるにあたり、処理時間が異なる各種の被処理物を前記のように熱処理する場合においても、熱処理する前の被処理物を適切なタイミングで搬送装置により処理装置に搬入させて、処理時間が異なる被処理物を各処理装置において効率のよい熱処理設備の搬送タイムチャートを自動的に作成し、被処理物の熱処理が完了する時刻が重ならないように制御できるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、被処理物を熱処理する熱処理設備としては、被処理物を長い連続処理炉内に順々に装入させて、この連続処理炉内において被処理物を順々に移動させ、被処理物に対して加熱、均熱、冷却等の熱処理を連続的に行うようにした連続式の熱処理設備と、独立したバッチ式の処理装置内に被処理物を装入させ、この処理装置内において、前記の被処理物に対して、加熱、均熱、冷却等の熱処理を個別に行うようにしたバッチ式の熱処理設備とが知られている。
【0003】
また、近年においては、特許文献1に示されるように、熱処理する被処理物を装入させる装入装置と、被処理物を熱処理する複数の処理装置と、処理装置において熱処理された被処理物を抽出させる抽出装置と、前記の装入装置と処理装置と抽出装置との間で移動して、装入装置における被処理物を処理装置に装入させ、処理装置において熱処理された被処理物を抽出装置に装入させる搬送装置とを備えた熱処理設備が示されている。
【0004】
また、特許文献2に示されるように、搬送装置に保温室と待機室を設け、処理装置において熱処理された被処理物を搬送装置に抽出する動作と、搬送装置から被処理物を各搬送装置に装入させる動作とを続けて行って入替できるようにした熱処理設備が示されている。
【0005】
ここで、前記の熱処理設備において、各処理装置において処理する被処理物の処理時間が同じ場合には、前記の搬送装置から処理物を各処理装置に一定時間の間隔で順々に装入して熱処理し、このように熱処理された被処理物を各処理装置から一定時間の間隔で順々に搬送装置に装入させ、搬送装置に装入された被処理物を前記の抽出装置に順々に抽出させるようにして、被処理物を一定した時間で順々に処理させることができる。
【0006】
しかし、近年では被処理物が多品種におよび、熱処理時間がそれぞれ規則性無く異なったものを連続して生産する必要がでてきている。そのように処理時間が異なる被処理物を前記のように搬送装置から各処理装置に被処理物を順々に搬出させて熱処理し、このように熱処理された被処理物を各処理装置から搬送装置に装入させて、搬送装置に装入された被処理物を抽出装置に抽出させるようにした場合、搬送装置が1台しかないことから、装入装置から搬送装置に装入された被処理物を搬送させて処理装置に装入させる動作時間と、他の処理装置において熱処理された被処理物を搬送装置により抽出装置に搬送させて、抽出装置に抽出させる動作時間とが重なる場合がある。
【0007】
また、後述する搬送サイクル時間は動作開始から動作完了までに一定の時間が必要なことから、異なる熱処理時間の被処理材を搬送サイクル時間と無関係に処理装置に装入すると、処理装置へ装入する時刻や各処理装置から抽出する時刻が近い場合には、これらの動作時間が重なってしまう。
【0008】
このような場合において、搬送装置に装入された被処理物を搬送させて処理装置に装入させる動作を優先すると、処理装置において熱処理された被処理物を抽出させるタイミングを遅らせる必要が生じ、被処理物の熱処理時間が予定よりも長くなって製品不良が発生するという問題が生じる一方、処理装置において熱処理された被処理物を搬送させて抽出装置に抽出させる動作を優先させると、装入装置から被処理物を処理装置に装入させるタイミングを遅らせる必要が生じ、処理装置が空いた時間が長くなって、生産性が低下するという問題が生じ、これらが数多く複合されると、装入装置から搬送装置に装入された被処理物を搬送させて各処理装置に装入させるタイミングや、各処理装置において熱処理された被処理物を抽出するタイミングか非常に複雑になり、被処理物を各処理装置において効率のよい熱処理設備の搬送タイムチャートを作成することが非常に困難になっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5669981号公報
【文献】特許第5686918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、熱処理する被処理物を装入させる装入装置と、被処理物を熱処理する複数の処理装置と、処理装置において熱処理された被処理物を抽出させる抽出装置と、前記の装入装置と処理装置と抽出装置との間で移動して、装入装置における被処理物を処理装置に装入させ、処理装置において熱処理された被処理物を抽出装置に装入させる搬送装置とを備えた熱処理設備における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0011】
すなわち、本発明は、前記のような熱処理設備において、装入装置から熱処理する前の被処理物を搬送装置に装入させ、前記の被処理物を搬送装置により各処理装置に装入させて熱処理し、被処理物を各処理装置から搬送装置に装入し、熱処理された被処理物をこの搬送装置から前記の抽出装置に抽出させるようにして被処理物を順々に熱処理させるにあたり、処理時間が異なる各種の被処理物を前記のように熱処理する場合においても、熱処理する前の被処理物を適切なタイミングで搬送装置により処理装置に搬入させて、処理時間が異なる被処理物を各処理装置において効率のよい熱処理設備の搬送タイムチャートを自動的に作成し、被処理物の熱処理が完了する時刻が重ならないように制御できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明における第1の熱処理設備においては、前記のような課題を解決するために、熱処理する被処理物を装入させる装入装置と、被処理物を熱処理する複数の処理装置と、処理装置において熱処理された被処理物を抽出させる抽出装置と、前記の装入装置と処理装置と抽出装置との間で移動して、装入装置における被処理物を処理装置に装入させ、処理装置において熱処理された被処理物を抽出装置に装入させる搬送装置とを備えた熱処理設備において、前記の搬送装置が、被処理物を前記の処理装置と装入装置と抽出装置との間で出し入れするための搬送室を備え、搬送装置を熱処理する前の被処理物を装入させない状態で装入装置の位置から熱処理された被処理物を抽出させる処理装置の位置に移動させる時間Tx1と、処理装置において熱処理された被処理物を搬送装置に装入させる時間Tx2と、熱処理された被処理物が装入された搬送装置を抽出装置の位置に移動させる時間Tx3と、搬送装置から熱処理された被処理物を抽出装置が装入させる時間Tx4と、熱処理された被処理物を抽出装置に装入させた搬送装置を装入装置に移動させる時間Tx5と、装入装置から熱処理する前の被処理物を搬送装置に装入させる時間Tx6と、熱処理する前の被処理物が装入された搬送装置を処理装置の位置に移動させる時間Tx7と、搬送装置から熱処理する前の被処理物を処理装置に装入させる時間Tx8と、熱処理する前の被処理物を処理装置に装入させた搬送装置を装入装置の位置に移動させる時間Tx9との合計時間を搬送サイクル時間TSXとすると共に、前記の搬送サイクル時間TSXから、搬送装置を熱処理する前の被処理物を装入させない状態で装入装置の位置から熱処理された被処理物を抽出させる処理装置の位置に移動させる時間Tx1と、熱処理する前の被処理物を処理装置に装入させた搬送装置を前記の装入装置の位置に移動させる時間Tx9を引いた時間を入替操作時間BXとし、前記の各処理装置において被処理物を熱処理する時間を、制御装置によりそれぞれ前記の搬送サイクル時間TSXの倍数から前記の入替操作時間BXを引いた時間に調整すると共に、前記の装入装置から熱処理する前の被処理物を前記の搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理するにあたり、制御装置により、各処理装置において被処理物を熱処理する時間に基づいて、処理装置に新たに装入させて熱処理する被処理物の熱処理完了時刻が、他の熱処理装置において熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻と重ならず、且つ処理装置に新たに装入させて熱処理する被処理物の抽出装置での滞在時刻が、他の処理装置において熱処理されている各被処理物の抽出装置での滞在時刻と重ならないように、搬送サイクル時間ごとに制御するようにした。
【0013】
また、本発明における第2の熱処理設備においては、前記のような課題を解決するために、熱処理する被処理物を装入させる装入装置と、被処理物を熱処理する複数の処理装置と、処理装置において熱処理された被処理物を抽出させる抽出装置と、前記の装入装置と処理装置と抽出装置との間で移動して、装入装置における被処理物を処理装置に装入させ、処理装置において熱処理された被処理物を抽出装置に装入させる搬送装置とを備えた熱処理設備において、前記の搬送装置が、被処理物を前記の処理装置と装入装置と抽出装置との間で出し入れするための搬送室と、熱処理された被処理物を高温状態で保持する保温室とを備え、熱処理する前の被処理物を装入させない状態で搬送装置を装入装置の位置から熱処理された被処理物を抽出させる処理装置の位置に移動させる時間Ty1と、処理装置において熱処理された被処理物を搬送装置における搬送室を通して保温室に装入させる時間Ty2と、熱処理された被処理物が保温室に装入された状態で搬送装置を装入装置の位置に移動させる時間Ty3と、熱処理された被処理物が保温室に装入された搬送装置の搬送室に装入装置から熱処理する前の被処理物を装入させる時間Ty4と、熱処理された被処理物が保温室に装入されると共に搬送室に熱処理する前の被処理物が装入された搬送装置を被処理物の熱処理を行う処理装置の位置に移動させる時間Ty5と、搬送室に装入された熱処理する前の被処理物を搬送装置から処理装置に装入させる時間Ty6と、熱処理する前の被処理物を処理装置に装入させた搬送装置を抽出装置の位置に移動させる時間Ty7と、保温室に装入された熱処理された被処理物を、搬送室を通して搬送装置から抽出装置に装入させる時間Ty8と、熱熱処理された被処理物を抽出装置に装入させた搬送装置を装入装置の位置に移動させる時間Ty9との合計時間を搬送サイクル時間TSYとすると共に、前記の搬送サイクル時間TSYから、搬送装置を熱処理する前の被処理物を装入させない状態で装入装置の位置から熱処理された被処理物を抽出させる処理装置の位置に移動させる時間Ty1と、熱処理する前の被処理物を処理装置に装入させた搬送装置を抽出装置の位置に移動させる時間Ty7と、保温室に装入された熱処理された被処理物を、搬送室を通して搬送装置から抽出装置に装入させる時間Ty8と、熱熱処理された被処理物を抽出装置に装入させた搬送装置を装入装置の位置に移動させる時間Ty9を引いた時間を入替操作時間BYとし、前記の各処理装置において被処理物を熱処理する時間を、制御装置によりそれぞれ前記の搬送サイクル時間TSYの倍数から前記の入替操作時間BYを引いた時間に調整すると共に、前記の装入装置から熱処理する前の被処理物を前記の搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理するにあたり、制御装置により、各処理装置において被処理物を熱処理する時間に基づいて、処理装置に新たに装入させて熱処理する被処理物の熱処理完了時刻が、他の熱処理装置において熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻と重ならず、且つ処理装置に新たに装入させて熱処理する被処理物の抽出装置での滞在時刻が、他の処理装置において熱処理されている各被処理物の抽出装置での滞在時刻と重ならないように、搬送サイクル時間ごとに制御するようにした。
【0014】
また、本発明における第3の熱処理設備においては、前記のような課題を解決するために、熱処理する被処理物を装入させる装入装置と、被処理物を熱処理する複数の処理装置と、処理装置において熱処理された被処理物を抽出させる抽出装置と、前記の装入装置と処理装置と抽出装置との間で移動して、装入装置における被処理物を処理装置に装入させ、処理装置において熱処理された被処理物を抽出装置に装入させる搬送装置とを備えた熱処理設備において、前記の搬送装置が、被処理物を前記の処理装置と装入装置と抽出装置との間で出し入れするための搬送室と、搬送室に装入された熱処理前の被処理物を待機させる待機室とを備え、装入装置から熱処理する前の被処理物を搬送装置における搬送室を通して待機室に装入させる時間Tz1と、搬送装置を被処理物の熱処理が完了した処理装置の位置に移動させる時間Tz2と、処理装置において熱処理された被処理物を搬送装置の搬送室に装入させる時間Tz3と、搬送室に熱処理された被処理物が装入された搬送装置を抽出装置の位置に移動させる時間Tz4と、搬送装置の搬送室から熱処理された被処理物を抽出装置の装入させる時間Tz5と、熱処理された被処理物を抽出装置に装入させた搬送装置被処理物の熱処理を行う処理装置の位置に移動させる時間Tz6と、搬送装置の待機室に装入された熱処理する前の被処理物を前記の処理装置に装入させる時間Tz7と、熱処理する前の被処理物を処理装置に装入させた搬送装置を装入装置の位置に移動させる時間Tz8の合計時間を搬送サイクル時間TSZとすると共に、前記の搬送サイクル時間TSZから、装入装置から熱処理する前の被処理物を搬送装置における搬送室を通して待機室に装入させる時間Tz1と、前記の搬送装置を熱処理された被処理物を抽出させる処理装置の位置に移動させる時間Tz2と、熱処理する前の被処理物を処理装置に装入させた搬送装置を前記の装入装置の位置に移動させる時間Tz8を引いた時間を入替操作時間BZとし、前記の各処理装置において被処理物を熱処理する時間を、制御装置によりそれぞれ前記の搬送サイクル時間TSZの倍数から前記の入替操作時間BZを引いた時間に調整すると共に、前記の装入装置から熱処理する前の被処理物を前記の搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理するにあたり、制御装置により、各処理装置において被処理物を熱処理する時間に基づいて、処理装置に新たに装入させて熱処理する被処理物の熱処理完了時刻が、他の熱処理装置において熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻と重ならず、且つ処理装置に新たに装入させて熱処理する被処理物の抽出装置での滞在時刻が、他の処理装置において熱処理されている各被処理物の抽出装置での滞在時刻と重ならないように、搬送サイクル時間ごとに制御するようにした。
【0015】
ここで、本発明における第1~第3の各熱処理設備において、前記のように制御装置により、各処理装置において被処理物を熱処理させる時間に基づいて、前記の各処理装置において被処理物の熱処理が完了する時刻が重ならないように搬送サイクル時間ごとに制御するにあたっては、装入装置から前記の搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理する被処理物の熱処理完了時刻が、他の処理装置において熱処理されている各被処理物の熱処理完了時刻と重なる場合、或いは前記の被処理物が抽出装置で滞在する時刻が、他の処理装置において熱処理されている各被処理物の抽出装置で滞在する時刻と重なる場合には、装入装置から搬送装置を介して被処理物を前記の処理装置に装入させる動作を行わないようにし、1搬送サイクル時間後に再度判定する一方、前記の熱処理完了時刻が重ならず、且つ前記の被処理物が抽出装置で滞在する時刻が、他の処理装置において熱処理されている各被処理物の抽出装置で滞在する時刻と重ならない場合には、装入装置から搬送装置を介して被処理物を前記の処理装置に装入させる動作を行うようにすることができる。
【0016】
このようにすると、各処理装置において処理時間が異なる被処理物を熱処理する場合であっても、被処理物の熱処理が完了した処理装置から熱処理された被処理物を適切に取り出すことができると共に、熱処理する前の被処理物を搬送サイクル時間に対応した適切なタイミングで装入装置から搬送装置を介して処理装置内に装入させて熱処理することができ、処理時間が異なる被処理物についても、各処理装置において効率のよい熱処理の熱処理設備の搬送タイムチャートを作成できるようになり、本発明の熱処理装置の制御装置により、このような効率のよい熱処理設備の搬送タイムチャートが自動的に作成できるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明における第1~第3の各熱処理設備においては、前記のように各処理装置において被処理物を熱処理する時間を、それぞれ制御装置により前記の搬送サイクル時間の倍数から入替操作時間を引いた時間に調整すると共に、装入装置から熱処理する前の被処理物を前記の搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理するにあたり、前記の制御装置により、各処理装置において被処理物を熱処理する時間に基づいて、前記の各処理装置において被処理物の熱処理が完了する時刻が重ならないようにして、搬送サイクル時間ごとに制御するようにしたため、各処理装置において処理時間が異なる被処理物を熱処理する場合であっても、被処理物の熱処理が完了した処理装置から熱処理された被処理物を、搬送サイクル時間に対応したタイミングで適切に取り出すことができると共に、熱処理する前の被処理物を、搬送サイクル時間に対応した適切なタイミングで装入装置から搬送装置を介して処理装置内に装入させて熱処理することができ、処理時間が異なる被処理物についても、各処理装置において効率のよい熱処理設備の搬送タイムチャートを自動的に作成し、被処理物の熱処理が完了する時刻が重ならないように制御できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態における熱処理設備において、搬送装置として、被処理物を処理装置と装入装置と抽出装置との間で出し入れするための搬送室を備えたものを用い、装入装置から熱処理する前の被処理物を搬送装置の搬送室に装入させ、前記の被処理物を搬送装置により各処理装置に装入させて熱処理し、被処理物を各処理装置から搬送装置に装入し、熱処理された被処理物をこの搬送装置から前記の抽出装置に抽出させるようにして被処理物を順々に熱処理させる全搬送サイクル工程を示した概略説明図である。
【
図2】前記の実施形態1における熱処理設備において、搬送装置を被処理物が熱処理された処理装置に移動させて、熱処理された被処理物を処理装置から搬送装置に装入させ、この搬送装置を抽出装置の位置に移動させて、熱処理された被処理物を搬送装置から抽出装置に装入させた後、搬送装置を装入装置の位置に移動させる抽出操作サイクルを示した概略説明図である。
【
図3】前記の実施形態1における熱処理設備において、装入装置から熱処理する前の被処理物を搬送装置に装入させ、この搬送装置を処理装置の位置に移動させて、熱処理する前の被処理物を処理装置内に装入させた後、この搬送装置を前記の装入装置の位置に移動させる装入操作サイクルを示した概略説明図である。
【
図4】前記の実施形態1に係る熱処理設備において、被処理物の熱処理が完了した1つの処理装置に、新たな被処理物を装入装置から搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理するにあたり、(A)は被処理物の熱処理が完了した処理装置に装入させて熱処理する新たな被処理物の熱処理完了時刻が、他の処理装置において熱処理されている各被処理物の熱処理完了時刻と重なって搬送がうまくいかない状態における熱処理と被処理物の搬送のタイミングを示した搬送タイムチャートであり、(B)は新たな被処理物を処理装置に装入させるタイミングを抽出時刻が重なる判定により1搬送サイクル時間ずらせるにあたって、搬送装置によって熱処理が完了した被処理物を処理装置から取り出して抽出装置に装入し、1搬送時間の待ち時間を空けてから、抽出時刻が重ならない判定により新たな被処理物を装入装置から取り出して処理装置に装入させる本発明の状態における熱処理と被処理物の搬送のタイミングを示した搬送タイムチャートである。
【
図5】前記の実施形態1に係る熱処理設備において、新たな被処理物を装入させる予定の処理装置の入替時間の開始までに処理物が装入装置に準備できなかった場合に、最短時間で回復させた状態における熱処理と被処理物の搬送のタイミングを示した搬送タイムチャートである。
【
図6】本発明の第2の実施形態における熱処理設備において、搬送装置として、被処理物を処理装置と装入装置と抽出装置との間で出し入れするための搬送室と、熱処理された被処理物を高温状態で保持する保温室とを備えたものを用い、装入装置から熱処理する前の被処理物を搬送装置の搬送室に装入させ、前記の被処理物を搬送装置により各処理装置に装入させて熱処理し、被処理物を各処理装置から搬送装置に装入し、熱処理された被処理物をこの搬送装置から前記の抽出装置に抽出させるようにして被処理物を順々に熱処理させる全搬送サイクル工程を示した概略説明図である。
【
図7】前記の実施形態2における熱処理設備において、搬送装置を被処理物が熱処理された処理装置に移動させて、熱処理された被処理物を処理装置から搬送装置に装入させ、この搬送装置を抽出装置の位置に移動させて、熱処理された被処理物を搬送装置から抽出装置に装入させた後、搬送装置を装入装置の位置に移動させる抽出操作サイクルを示した概略説明図である。
【
図8】前記の実施形態2における熱処理設備において、装入装置から熱処理する前の被処理物を搬送装置に装入させ、この搬送装置を処理装置の位置に移動させて、熱処理する前の被処理物を処理装置内に装入させた後、この搬送装置を前記の装入装置の位置に移動させる装入操作サイクルを示した概略説明図である。
【
図9】前記の実施形態2に係る熱処理設備において、被処理物の熱処理が完了した1つの処理装置に、新たな被処理物を装入装置から搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理するにあたり、(A)は被処理物の熱処理が完了した処理装置に装入させて熱処理する新たな被処理物の熱処理完了時刻が、他の処理装置において熱処理されている各被処理物の熱処理完了時刻と重なって搬送がうまくいかない状態における熱処理と被処理物の搬送のタイミングを示した搬送タイムチャートであり、(B)は新たな被処理物を処理装置に装入させるタイミングを抽出時刻が重なる判定により1搬送サイクル時間ずらせるにあたって、搬送装置によって熱処理が完了した被処理物を処理装置から取り出して抽出装置に装入し、1搬送時間の待ち時間を空けてから、抽出時刻が重ならない判定により新たな被処理物を装入装置から取り出して処理装置に装入させる本発明の状態における熱処理と被処理物の搬送のタイミングを示した搬送タイムチャートである。
【
図10】本発明の第3の実施形態における熱処理設備において、搬送装置として、被処理物を処理装置と装入装置と抽出装置との間で出し入れするための搬送室と、搬送室に装入された熱処理前の被処理物を待機させる待機室とを備えたものを用い、装入装置から熱処理する前の被処理物を搬送装置の搬送室に装入させ、前記の被処理物を搬送装置により各処理装置に装入させて熱処理し、被処理物を各処理装置から搬送装置に装入し、熱処理された被処理物をこの搬送装置から前記の抽出装置に抽出させるようにして被処理物を順々に熱処理させる全搬送サイクル工程を示した概略説明図である。
【
図11】前記の実施形態3における熱処理設備において、搬送装置を被処理物が熱処理された処理装置に移動させて、熱処理された被処理物を処理装置から搬送装置に装入させ、この搬送装置を抽出装置の位置に移動させて、熱処理された被処理物を搬送装置から抽出装置に装入させた後、搬送装置を装入装置の位置に移動させる抽出操作サイクルを示した概略説明図である。
【
図12】前記の実施形態3における熱処理設備において、装入装置から熱処理する前の被処理物を搬送装置の待機室に装入させ、この搬送装置を処理装置の位置に移動させて、熱処理する前の被処理物を搬送装置の待機室から処理装置内に装入させた後、この搬送装置を前記の装入装置の位置に移動させる装入操作サイクルを示した概略説明図である。
【
図13】前記の実施形態3に係る熱処理設備において、被処理物の熱処理が完了した1つの処理装置に、新たな被処理物を装入装置から搬送装置を介して処理装置に装入させて熱処理するにあたり、(A)は被処理物の熱処理が完了した処理装置に装入させて熱処理する新たな被処理物の熱処理完了時刻が、他の処理装置において熱処理されている各被処理物の熱処理完了時刻と重なって搬送がうまくいかない状態における熱処理と被処理物の搬送のタイミングを示した搬送タイムチャートであり、(B)は新たな被処理物を処理装置に装入させるタイミングを抽出時刻が重なる判定により1搬送サイクル時間ずらせるにあたって、搬送装置によって熱処理が完了した被処理物を処理装置から取り出して抽出装置に装入し、1搬送時間の待ち時間を空けてから、抽出時刻が重ならない判定により新たな被処理物を装入装置から取り出して処理装置に装入させる本発明の状態における熱処理と被処理物の搬送のタイミングを示した搬送タイムチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る熱処理設備を、添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る熱処理設備は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0020】
(実施形態1)
実施形態1に係る熱処理設備においては、
図1~
図3に示すように、熱処理する被処理物Wを装入させる装入装置10と、被処理物Wを熱処理する複数(図に示す例では5つ)の処理装置20(20a~20e)と、処理装置20において熱処理された被処理物を抽出させる抽出装置30と、前記の装入装置10と処理装置20と抽出装置30との間で移動して、装入装置10における被処理物Wを処理装置20に装入させ、処理装置20において熱処理された被処理物Wを抽出装置30に装入させる搬送装置40とを備えている。
【0021】
そして、この実施形態1における前記の搬送装置40は、被処理物Wを前記の処理装置20と装入装置10と抽出装置30との間で出し入れさせる搬送室41を備えている。
【0022】
そして、この実施形態1に係る熱処理設備においては、初期段階として、前記の装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40の搬送室41に順々に装入させ、このように搬送室41に熱処理する前の被処理物Wが装入された搬送装置40を順々に各処理装置20(20a~20e)の位置に移動させ、熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40における搬送室41に通して、各処理装置20(20a~20e)に順々に装入させて、被処理物Wを各処理装置20(20a~20e)において熱処理させるようにしている。
【0023】
ここで、この実施形態1に係る熱処理設備においては、熱処理する前の被処理物を装入させない状態で搬送装置40を装入装置10の位置から熱処理された被処理物を抽出させる処理装置20の位置に移動させる時間Tx1と、処理装置20において熱処理された被処理物Wを搬送装置40に装入させる時間Tx2と、熱処理された被処理物Wが装入された搬送装置40を抽出装置30の位置に移動させる時間Tx3と、搬送装置40から熱処理された被処理物Wを抽出装置30に装入させる時間Tx4と、熱処理された被処理物Wを抽出装置30に装入させた搬送装置40を装入装置10の位置に移動させる時間Tx5と、装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40に装入させる時間Tx6と、熱処理する前の被処理物Wが装入された搬送装置40を処理装置20の位置に移動させる時間Tx7と、搬送装置40から熱処理する前の被処理物Wを処理装置20に装入させる時間Tx8と、熱処理する前の被処理物Wを処理装置20に装入させた搬送装置40を装入装置10の位置に移動させる時間Tx9との合計時間を搬送サイクル時間TSX(Tx1+Tx2+Tx3+Tx4+Tx5+Tx6+Tx7+Tx8+Tx9)とし、また、前記の搬送サイクル時間TSXから、熱処理する前の被処理物を装入させない状態で搬送装置40を装入装置10の位置から熱処理された被処理物を抽出させる処理装置20の位置に移動させる時間Tx1と、熱処理する前の被処理物Wを処理装置20に装入させた搬送装置40を装入装置10の位置に移動させる時間Tx9を引いた時間を入替操作時間BX(Tx2+Tx3+Tx4+Tx5+Tx6+Tx7+Tx8)としている。
【0024】
そして、この実施形態1に係る熱処理設備においては、前記の各処理装置20(20a~20e)において被処理物Wを熱処理する時間(Ta,Tb,Tc,Td,Te)を、制御装置50によってそれぞれ前記の搬送サイクル時間TSXの倍数から前記の入替操作時間BXを引いた時間になるように調整している。このようにすると、熱処理時間(Ta,Tb,Tc,Td,Te)=(Tx1+Tx2+Tx3+Tx4+Tx5+Tx6+Tx7+Tx8+Tx9)×n-(Tx1+Tx9)の式で表すことができるようになり、従来はバラバラであった熱処理時間(Ta,Tb,Tc,Td,Te)を、搬送サイクル時間TSXを用いて規則性を持たせることができる。
【0025】
ここで、この実施形態1の熱処理設備において、例えば、1つの処理装置20cにおいて被処理物Wの熱処理が完了し、この処理装置20cから熱処理された被処理物Wを抽出させる抽出操作を行う場合には、
図2に示すように、装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを装入させない状態で、搬送装置40を装入装置10の位置から熱処理された被処理物Wを抽出させる処理装置20cの位置に移動させて(Tx1)、前記の処理装置20cにおいて熱処理された被処理物Wを搬送装置40に装入させ(Tx2)、このように熱処理された被処理物Wが装入された搬送装置40を抽出装置30の位置に移動させて(Tx3)、この搬送装置40から熱処理された被処理物Wを抽出装置30に装入させ(Tx4)、その後、この搬送装置40を元の装入装置10の位置に移動させる(Tx5)抽出操作(Tx1+Tx2+Tx3+Tx4+Tx5)を行うようにする。
【0026】
また、この実施形態1の熱処理設備において、前記のように熱処理された被処理物Wが抽出された処理装置20cに熱処理する前の被処理物Wを装入させる場合には、
図3に示すように、装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40に装入させ(Tx6)、この搬送装置40を前記の処理装置20cの位置に移動させて(Tx7)、前記の搬送装置40から熱処理する前の被処理物Wを処理装置20cに装入させ(Tx8)、その後、前記の搬送装置40を元の装入装置10の位置に移動させる(Tx9)装入操作(Tx6+Tx7+Tx8+Tx9)を行うようにする。
【0027】
次に、
図4(A),(B)においては、搬送装置40の動作状態と各処理装置20(20a~20e)における熱処理状態を、時間の流れを横軸(行)として示している。
【0028】
ここで、この実施形態1に係る熱処理設備では、各処理装置20(20a~20e)において被処理物Wを熱処理するにあたり、例えば、1つの処理装置20cにおいて被処理物Wの熱処理が完了すると、制御装置50により、この処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻(Tc’)が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻(Ta’,Tb’,Td’,Te’)と重なるか否かを判定する。
【0029】
続いて、処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻と重なるか否かを判定する。
【0030】
そして、処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻(Tc’)が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻(Ta’,Tb’,Td’,Te’)が重ならず、且つ各被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻が重ならない場合には、前記の
図2に示すように、被処理物Wの熱処理が完了した処理装置20cから熱処理された被処理物Wを抽出させる抽出操作(Tx1+Tx2+Tx3+Tx4+Tx5)を行い、続けて、前記の
図3に示すように、熱処理された被処理物Wを抽出された処理装置20cに熱処理する前の被処理物Wを装入させる装入操作(Tx6+Tx7+Tx8+Tx9)を行うようにする。
【0031】
ここで、
図4(A),(B)においては、処理する前の被処理物Wが装入されていない搬送装置40を被処理物Wの熱処理が完了した処理装置20cの位置に移動させる操作を行う時間(Tx1)を操作時間AXとし、処理装置20cにおいて熱処理された被処理物Wを搬送装置40に装入し(Tx2)、このように熱処理された被処理物Wが装入された搬送装置40を抽出装置30の位置に移動させ(Tx3)、この搬送装置40から熱処理された被処理物Wを抽出装置30に装入させ(Tx4)、この搬送装置40を元の装入装置10の位置に移動させ(Tx5)、装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40に装入し(Tx6)、この搬送装置40を前記の処理装置20cの位置に移動させ(Tx7)、前記の搬送装置40から熱処理する前の被処理物Wを処理装置20cに装入させる(Tx8)一連の入替操作を行う時間(Tx2+Tx3+Tx4+Tx5+Tx6+Tx7+Tx8)を入替操作時間BXとし、熱処理する前の被処理物Wを処理装置20に装入させた搬送装置40を装入装置10の位置に移動させる操作を行う時間(Tx9)を操作時間CXとして示している。
【0032】
一方、前記の処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻(Tc’)が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻(Ta’,Tb’,Td’,Te’)と重なる場合、或いは抽出装置30で前記の被処理物Wが滞在する時刻が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの抽出装置30で滞在する時刻と重なる場合には、例えば、
図4(A)に示すように、他の処理装置20aにおいて熱処理されている被処理物Wの熱処理完了時刻Ta’と重なる場合には、前記の
図2に示すように、被処理物Wの熱処理が完了した処理装置20cから熱処理された被処理物Wを抽出させる抽出操作(Tx1+Tx2+Tx3+Tx4+Tx5)だけを行い、この状態で前記の搬送装置40を装入装置10の位置に待機させる。
【0033】
次いで、前記のように制御装置50により、処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻(Tc’)が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻(Ta’,Tb’,Td’,Te’)と重なるか否かと、処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻と重なるか否かとを、搬送サイクル時間ごとに判定する。
【0034】
そして、前記の制御装置50により、処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻(Tc’)が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻(Ta’,Tb’,Td’,Te’)と重ならず、且つ各被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻についても重ならないと判断された場合には、前記の
図3に示すように、熱処理された被処理物Wを抽出された処理装置20cに、熱処理する前の被処理物Wを装入させる装入操作(Tx6+Tx7+Tx8+Tx9)を行うようにする。
【0035】
ここで、前記のように被処理物Wの熱処理が完了した処理装置20cから熱処理された被処理物Wを抽出させる抽出操作(Tx1+Tx2+Tx3+Tx4+Tx5)だけ行う場合、
図4(A),(B)においては、処理する前の被処理物Wが装入されていない搬送装置40を被処理物Wの熱処理が完了した処理装置20cの位置に移動させる操作を行う時間(Tx1)を操作時間DXとし、処理装置20cにおいて熱処理された被処理物Wを搬送装置40に装入し(Tx2)、このように熱処理された被処理物Wが装入された搬送装置40を抽出装置30の位置に移動させ(Tx3)、この搬送装置40から熱処理された被処理物Wを抽出装置30に装入させ(Tx4)、この搬送装置40を元の装入装置10の位置に移動させる(Tx5)一連の操作時間(Tx2+Tx3+Tx4+Tx5)を操作時間EXとし、また、熱処理された被処理物Wが抽出された処理装置20cに熱処理する前の被処理物Wを装入させる装入操作(Tx6+Tx7+Tx8+Tx9)だけを行う場合には、装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40に装入し(Tx6)、この熱処理された搬送装置40を前記の処理装置20cの位置に移動させ(Tx7)、前記の搬送装置40から熱処理する前の被処理物Wを処理装置20cに装入させる(Tx8)一連の操作時間(Tx6+Tx7+Tx8)を操作時間FXと、熱処理する前の被処理物Wを処理装置20に装入させた搬送装置40を装入装置10の位置に移動させる操作を行う時間(Tx9)を操作時間GXとし、また処理装置20cにおいて、熱処理された被処理物Wが抽出された後、熱処理する前の被処理物Wが装入されるまでの間を「待ち時間」として示している。
【0036】
また、図示していないが、前記の処理装置20c以外の他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいても、被処理物Wの熱処理が完了した場合には、前記の処理装置20cの場合と同様に、前記の制御装置50により、被処理物Wの熱処理が完了した処理装置20a,20b,20d,20eに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻が、他の処理装置20a,20b,20c,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻と重なるか否かと、処理装置20a,20b,20d,20eに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻が、他の処理装置20a,20b,20c,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻と重なるか否かとを判定し、前記の処理装置20cの場合と同様にして、各処理装置20a,20b,20d,20eにおいて被処理物Wを熱処理させるようにする。
【0037】
そして、この実施形態1に示すように、各処理装置20(20a~20e)において被処理物Wを熱処理させる時間(Ta,Tb,Tc,Td,Te)を、それぞれ制御装置50により前記の搬送サイクル時間TSXの倍数から入替操作時間BXを引いた時間になるように調整すると共に、装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40により各処理装置20(20a~20e)に装入させて熱処理するにあたり、前記の制御装置50により、各処理装置20(20a~20e)において被処理物Wが熱処理される時間に基づいて、各処理装置20(20a~20e)において被処理物Wの熱処理が完了する時刻が重ならず、且つ被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻についても重ならないように、搬送サイクル時間TSXごとに制御すると、各処理装置20(20a~20e)において処理時間が異なる被処理物Wを熱処理する場合であっても、被処理物Wの熱処理が完了した処理装置20(20a~20e)から熱処理された被処理物Wを搬送サイクル時間TSXに対応したタイミングで適切に取り出すことができると共に、熱処理する前の被処理物Wを搬送サイクル時間TSXに対応した適切なタイミングで装入装置10から搬送装置40を介して処理装置20(20a~20e)内に装入させて熱処理することができ、各処理装置20(20a~20e)において効率のよい熱処理設備の搬送タイムチャートを作成できるようになり、前記の制御装置50により、このような効率のよい熱処理設備の搬送タイムチャートを自動的に作成して、被処理物Wの熱処理が完了する時刻が重ならないように制御できるようになる。
【0038】
なお、被処理物Wが熱処理される時間やタイミングによっては、搬送装置40は、搬送サイクル時間TSXの全時間、装入装置10の位置で止まっていることもある。
【0039】
また、突発的に被処理物Wを装入装置10に準備するタイミングが遅れた場合でも、搬送サイクル時間TSXを採用したことによって、回復が簡単に考えられるようになる。
【0040】
例えば、
図4(B)の処理装置20dにおいて、三角印(▲)の時刻に被処理物Wが装入装置10に準備できなかった場合、
図5に示すように、処理装置20dで熱処理が完了した被処理物Wの抽出のみを行い、その後、装入装置10に準備できた被処理物WはTe’で示す時刻にTeと入替を行い、処理装置20eで熱処理される。そして、処理装置20dでは、他の処理装置20a,20b,20c,20eで被処理物Wの入替が行われない最初の搬送サイクル時間TSXを利用して、被処理物Wを星印(★)で示す時刻に装入のみを行う。
【0041】
このようにすると、被処理物Wの準備が遅れても、
図5に示すように、装入を予定していた処理装置20に故意に待ち時間2をつくり、被処理物Wを装入する処理装置20を他の処理装置20にずらすことにより、全ての処理装置20(20a~20e)の空き時間を総合的に最短にしながら操業を回復することができる。
【0042】
この実施形態1の熱処理設備においては、以上のような制御を行うために、設備および熱処理の条件、例えば搬送サイクル時間(TSX)、入替操作時間BX(Tx2+Tx3+Tx4+Tx5+Tx6+Tx7+Tx8)、各被処理物Wの熱処理時間(Ta,Tb,Tc,Td,Te)、抽出装置30での滞在時間などを制御装置50へ入力することにより適切な搬送タイムチャートを自動的に作成し、被処理物Wの熱処理が完了する時刻が重ならないように制御できるようにすれば、簡単に処理装置20(20a~20e)での処理時間が異なる被処理物Wを効率良く熱処理できるようになる。
【0043】
(実施形態2)
実施形態2に係る熱処理設備においては、
図6~
図8に示すように、熱処理する被処理物Wを装入させる装入装置10と、被処理物Wを熱処理する複数(図に示す例では5つ)の処理装置20(20a~20e)と、処理装置20において熱処理された被処理物を抽出させる抽出装置30と、前記の装入装置10と処理装置20と抽出装置30との間で移動して、装入装置10における被処理物Wを処理装置20に装入させ、処理装置20において熱処理された被処理物Wを抽出装置30に装入させる搬送装置40とを備えている。
【0044】
そして、この実施形態2における前記の搬送装置40は、被処理物Wを前記の処理装置20と装入装置10と抽出装置30との間で出し入れさせる搬送室41と、熱処理された被処理物Wを高温状態で保持する保温室42とを備えている。
【0045】
また、この実施形態2に係る熱処理設備においても、初期段階として、前記の装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40により、各処理装置20(20a~20e)に順々に装入させて、被処理物Wを各処理装置20(20a~20e)において熱処理させるようにしている。
【0046】
ここで、この実施形態2に係る熱処理設備においては、熱処理する前の被処理物Wを装入させない状態で搬送装置40を装入装置10の位置から熱処理された被処理物Wを抽出させる処理装置の位置に移動させる時間Ty1と、処理装置20において熱処理された被処理物Wを搬送装置40における搬送室41を通して保温室42に装入させる時間Ty2と、熱処理された被処理物Wが保温室42に装入された状態で搬送装置40を装入装置10の位置に移動させる時間Ty3と、熱処理された被処理物Wが保温室42に装入された搬送装置40の搬送室41に装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを装入させる時間Ty4と、熱処理された被処理物Wが保温室42に装入されると共に搬送室41に熱処理する前の被処理物Wが装入された搬送装置40を被処理物Wの熱処理を行う処理装置20の位置に移動させる時間Ty5と、搬送室41に装入された熱処理する前の被処理物Wを前記の搬送装置40から処理装置20に装入させる時間Ty6と、熱処理する前の被処理物Wを処理装置20に装入させた前記の搬送装置40を抽出装置の位置に移動させる時間Ty7と、保温室42に装入された熱処理された被処理物Wを、搬送室41を通して搬送装置40から抽出装置30に装入させる時間Ty8と、熱熱処理された被処理物Wを抽出装置30に装入させた搬送装置40を装入装置10の位置に移動させる時間Ty9との合計時間を搬送サイクル時間TSY(Ty1+Ty2+Ty3+Ty4+Ty5+Ty6+Ty7+Ty8+Ty9)とし、前記の搬送サイクル時間TSYから、搬送装置40を熱処理する前の被処理物Wを装入させない状態で装入装置10の位置から熱処理された被処理物Wを抽出させる処理装置20の位置に移動させる時間Ty1と、熱処理する前の被処理物Wを処理装置20に装入させた搬送装置40を抽出装置30の位置に移動させる時間Ty7と、保温室42に装入された熱処理された被処理物Wを、搬送室41を通して搬送装置40から抽出装置30に装入させる時間Ty8と、熱熱処理された被処理物Wを抽出装置30に装入させた搬送装置40を装入装置10の位置に移動させる時間Ty9を引いた時間を入替操作時間BY(Ty2+Ty3+Ty4+Ty5+Ty6)としている。
【0047】
そして、この実施形態2に係る熱処理設備においては、前記の各処理装置20(20a~20e)において被処理物Wを熱処理する時間(Ta,Tb,Tc,Td,Te)を、制御装置50によってそれぞれ前記の搬送サイクル時間TSYの倍数から前記の入替操作時間BYを引いた時間になるように調整している。このようにすると、熱処理時間(Ta,Tb,Tc,Td,Te)=(Ty1+Ty2+Ty3+Ty4+Ty5+Ty6+Ty7+Ty8+Ty9)×n-(Ty2+Ty3+Ty4+Ty5+Ty6)の式で表すことができるようになり、従来はバラバラであった熱処理時間(Ta,Tb,Tc,Td,Te)を、搬送サイクル時間TSYを用いて規則性を持たせることができる。
【0048】
ここで、この実施形態2の熱処理設備において、例えば、1つの処理装置20cにおいて被処理物Wの熱処理が完了し、この処理装置20cから熱処理された被処理物Wを抽出させる抽出操作を行う場合には、
図7に示すように、装入装置10から搬送装置40に熱処理する前の被処理物Wを装入させないで、この搬送装置40を装入装置10の位置から熱処理された被処理物Wを抽出させる処理装置20cの位置に移動させて(Ty1)、前記の処理装置20cにおいて熱処理された被処理物Wを搬送装置40における搬送室41を通して保温室42に装入させ(Ty2)、このように熱処理された被処理物Wが保温室42に装入された搬送装置40を抽出装置30の位置に移動させて(Ty7)、熱処理された被処理物Wを搬送装置40の保温室42から搬送室41を通して抽出装置30に装入させ(Ty8)、その後、この搬送装置40を元の装入装置10の位置に移動させる(Ty9)抽出操作(Ty1+Ty2+Ty7+Ty8+Ty9)を行うようにする。
【0049】
また、この実施形態2の熱処理設備において、前記のように熱処理された被処理物Wが抽出された処理装置20cに熱処理する前の被処理物Wを装入させる場合には、
図8に示すように、装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40の搬送室41に装入させ(Ty4)、この搬送装置40を前記の処理装置20cの位置に移動させて(Ty5)、前記の搬送装置40から熱処理する前の被処理物Wを処理装置20cに装入させ(Ty6)、その後、前記の搬送装置40を元の装入装置10の位置に移動させる(Ty3)装入操作(Ty4+Ty5+Ty6+Ty3)を行うようにする。
【0050】
次に、
図9(A),(B)においては、搬送装置40の動作状態と各処理装置20(20a~20e)における熱処理状態を、時間の流れを横軸(行)として示している。
【0051】
ここで、この実施形態2に係る熱処理設備では、各処理装置20(20a~20e)において被処理物Wを熱処理するにあたり、例えば、1つの処理装置20cにおいて被処理物Wの熱処理が完了すると、制御装置50により、この処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻(Tc’)が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻(Ta’,Tb’,Td’,Te’)と重なるか否かを判定する。
【0052】
続いて、処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻と重なるか否かを判定する。
【0053】
そして、処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻(Tc’)が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻(Ta’,Tb’,Td’,Te’)と重ならず、且つ各被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻についても重ならないと判断された場合には、前記の
図6に示すように、熱処理する前の被処理物Wを装入させない状態で搬送装置40を装入装置10の位置から熱処理された被処理物Wを抽出させる処理装置20cの位置に移動させ(Ty1)、処理装置20cにおいて熱処理された被処理物Wを搬送装置40における搬送室41を通して保温室42に装入させ(Ty2)、熱処理された被処理物Wが保温室42に装入された状態で搬送装置40を装入装置10の位置に移動させ(Ty3)、熱処理された被処理物Wが保温室42に装入された搬送装置40の搬送室41に装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを装入させ(Ty4)、熱処理された被処理物Wが保温室42に装入されると共に搬送室41に熱処理する前の被処理物Wが装入された搬送装置40を被処理物Wの熱処理を行う処理装置20cの位置に移動させ(Ty5)、搬送室41に装入された熱処理する前の被処理物Wを前記の搬送装置40から処理装置20cに装入させ(Ty6)、熱処理する前の被処理物Wを処理装置20に装入させた前記の搬送装置40を抽出装置30の位置に移動させ(Ty7)、保温室42における熱処理された被処理物Wを、搬送室41を通して搬送装置40から抽出装置30に装入させ(Ty8)、熱熱処理された被処理物Wを抽出装置30に装入させた搬送装置40を装入装置10の位置に移動させる(Ty9)一連の搬送サイクル操作を行うようにする。
【0054】
ここで、
図9(A),(B)においては、処理する前の被処理物Wが装入されていない搬送装置40を被処理物Wの熱処理が完了した処理装置20cの位置に移動させる操作を行う時間(Ty1)を操作時間AYとし、処理装置20cにおいて熱処理された被処理物Wを搬送装置40における搬送室41を通して保温室42に装入させ(Ty2)、熱処理された被処理物Wが保温室42に装入された状態で搬送装置40を装入装置10の位置に移動させ(Ty3)、熱処理された被処理物Wが保温室42に装入された搬送装置40の搬送室41に装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを装入させ(Ty4)、熱処理された被処理物Wが保温室42に装入されると共に搬送室41に熱処理する前の被処理物Wが装入された搬送装置40を被処理物Wの熱処理を行う処理装置20cの位置に移動させ(Ty5)、搬送室41に装入された熱処理する前の被処理物Wを前記の搬送装置40から処理装置20cに装入させる(Ty6)一連の入替操作を行う時間(Ty2+Ty3+Ty4+Ty5+Ty6)を入替操作時間BYとし、熱処理された被処理物Wが保温室42に装入された搬送装置40を抽出装置30の位置に移動させ(Ty7)、熱処理された被処理物Wを搬送装置40の保温室42から搬送室41を通して抽出装置30に装入させ(Ty8)、この搬送装置40を装入装置10の位置に移動させる(Ty9)一連の操作時間(Ty7+Ty8+Ty9)を操作時間CYとして示している。
【0055】
一方、前記の処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻(Tc’)が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻(Ta’,Tb’,Td’,Te’)と重なる場合、或いは抽出装置30で前記の被処理物Wが滞在する時刻が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの抽出装置30で滞在する時刻と重なる場合、例えば、
図9(A)に示すように、他の処理装置20aにおいて熱処理されている被処理物Wの熱処理完了時刻Ta’と重なる場合には、前記の
図7に示すように、搬送装置40を熱処理された被処理物Wを抽出させる処理装置20cの位置に移動させ、この処理装置20cから熱処理された被処理物Wを抽出させる前記の抽出操作(Ty1+Ty2+Ty7+Ty8+Ty9)だけ行い、この状態で前記の搬送装置40を装入装置10の位置に待機させる。
【0056】
次いで、前記のように制御装置50により、処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻(Tc’)が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻(Ta’,Tb’,Td’,Te’)と重なるか否かと、処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻と重なるか否かとを、搬送サイクル時間ごとに判定する。
【0057】
そして、前記の制御装置50により、処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻(Tc’)が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻(Ta’,Tb’,Td’,Te’)と重ならず、且つ抽出装置30での滞在時刻が重ならないと判断された場合には、前記の
図8に示すように、熱処理された被処理物Wを抽出された処理装置20cに、熱処理する前の被処理物Wを装入させる前記の装入操作(Ty4+Ty5+Ty6+Ty3)を行うようにする。
【0058】
ここで、前記のように被処理物Wの熱処理が完了した処理装置20cから熱処理された被処理物Wを抽出させる抽出操作(Ty1+Ty2+Ty7+Ty8+Ty9)だけを行う場合、
図9(A),(B)においては、処理する前の被処理物Wが装入されていない搬送装置40を被処理物Wの熱処理が完了した処理装置20cの位置に移動させる操作を行う時間(Ty1)を操作時間DYとし、処理装置20cにおいて熱処理された被処理物Wを搬送装置40の搬送室41を通して保温室42に装入し(Ty2)、このように熱処理された被処理物Wが装入された搬送装置40を抽出装置30の位置に移動させ(Ty7)、熱処理された被処理物Wを搬送装置40の保温室42から搬送室41を通して抽出装置30に装入させ(Ty8)、この搬送装置40を元の装入装置10の位置に移動させる(Ty9)一連の操作時間(Ty2+Ty7+Ty8+Ty9)を操作時間EYとし、また、熱処理された被処理物Wが抽出された処理装置20cに熱処理する前の被処理物Wを装入させる装入操作(Ty4+Ty5+Ty6+Ty3)だけを行う場合には、装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40に装入し(Ty4)、この搬送装置40を前記の処理装置20cの位置に移動させ(Ty5)、前記の搬送装置40から熱処理する前の被処理物Wを処理装置20cに装入させる(Ty6)一連の操作時間(Ty4+Ty5+Ty6)を操作時間FYとし、熱処理する前の被処理物Wを処理装置20に装入させた搬送装置40を装入装置10の位置に移動させる操作を行う時間(Ty3)を操作時間GYとし、また処理装置20cにおいて、熱処理された被処理物Wが抽出された後、熱処理する前の被処理物Wが装入されるまでの間を「待ち時間」として示している。
【0059】
また、図示していないが、前記の処理装置20c以外の他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいても、被処理物Wの熱処理が完了した場合には、前記の処理装置20cの場合と同様に、前記の制御装置50により、被処理物Wの熱処理が完了した処理装置20a,20b,20d,20eに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻が、他の処理装置20a,20b,20c,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻と重なるか否かと、処理装置20a,20b,20d,20eに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻が、他の処理装置20a,20b,20c,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻と重なるか否かとを判定し、前記の処理装置20cの場合と同様にして、各処理装置20a,20b,20d,20eにおいて被処理物Wを熱処理させるようにする。
【0060】
そして、この実施形態2に示すように、各処理装置20(20a~20e)において被処理物Wを熱処理させる時間(Ta,Tb,Tc,Td,Te)を、それぞれ制御装置50により前記の搬送サイクル時間TSYの倍数から入替操作時間BYを引いた時間になるように調整すると共に、装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40により各処理装置20(20a~20e)に装入させて熱処理するにあたり、前記の制御装置50により、各処理装置20(20a~20e)において被処理物Wが熱処理される時間に基づいて、各処理装置20(20a~20e)において被処理物Wの熱処理が完了する時刻が重ならず、且つ被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻についても重ならないように、搬送サイクル時間TSYごとに制御すると、各処理装置20(20a~20e)において処理時間が異なる被処理物Wを熱処理する場合であっても、被処理物Wの熱処理が完了した処理装置20(20a~20e)から熱処理された被処理物Wを搬送サイクル時間TSYに対応したタイミングで適切に取り出すことができると共に、熱処理する前の被処理物Wを搬送サイクル時間TSYに対応した適切なタイミングで装入装置10から搬送装置40を介して処理装置20(20a~20e)内に装入させて熱処理することができ、各処理装置20(20a~20e)において効率のよい熱処理設備の搬送タイムチャートを作成できるようになり、前記の制御装置50により、このような効率のよい熱処理設備の搬送タイムチャートを自動的に作成して、被処理物Wの熱処理が完了する時刻が重ならないように制御できるようになる。
【0061】
なお、この実施形態2の熱処理設備においても、前記の実施形態1の熱処理設備と同様に、この被処理物Wが熱処理される時間やタイミングによっては、搬送装置40は、搬送サイクル時間TSYの全時間、装入装置10の位置で止まっていることもあり、また突発的に被処理物Wを装入装置10に準備するタイミングが遅れた場合でも、搬送サイクル時間TSYを採用したことによって、回復が簡単に考えられるようになる。
【0062】
(実施形態3)
実施形態3に係る熱処理設備においては、
図10~
図12に示すように、熱処理する被処理物Wを装入させる装入装置10と、被処理物Wを熱処理する複数(図に示す例では5つ)の処理装置20(20a~20e)と、処理装置20において熱処理された被処理物を抽出させる抽出装置30と、前記の装入装置10と処理装置20と抽出装置30との間で移動して、装入装置10における被処理物Wを処理装置20に装入させ、処理装置20において熱処理された被処理物Wを抽出装置30に装入させる搬送装置40とを備えている。
【0063】
そして、この実施形態3における前記の搬送装置40は、被処理物Wを前記の処理装置20と装入装置10と抽出装置30との間で出し入れさせる搬送室41と、搬送室41に装入された熱処理前の被処理物Wを待機させる待機室43とを備えている。
【0064】
また、この実施形態3に係る熱処理設備においても、初期段階として、前記の装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40により、各処理装置20(20a~20e)に順々に装入させて、被処理物Wを各処理装置20(20a~20e)において熱処理させるようにしている。
【0065】
ここで、この実施形態3に係る熱処理設備においては、装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40における搬送室41を通して待機室43に装入させる時間Tz1と、搬送装置40を被処理物の熱処理が完了した処理装置20の位置に移動させる時間Tz2と、処理装置20において熱処理された被処理物Wを搬送装置40の搬送室41に装入させる時間Tz3と、搬送室41に熱処理された被処理物Wが装入された搬送装置40を抽出装置30の位置に移動させる時間Tz4と、搬送装置40の搬送室41から熱処理された被処理物Wを抽出装置30に装入させる時間Tz5と、熱処理された被処理物Wを抽出装置30に装入させた搬送装置40を被処理物Wの熱処理を行う処理装置20の位置に移動させる時間Tz6と、搬送装置40の待機室43に装入された熱処理する前の被処理物Wを前記の処理装置20に装入させる時間Tz7と、熱処理する前の被処理物Wを処理装置20に装入させた搬送装置40を装入装置10の位置に移動させる時間Tz8との合計時間を搬送サイクル時間TSZ(Tz1+Tz2+Tz3+Tz4+Tz5+Tz6+Tz7+Tz8)とし、前記の搬送サイクル時間TSZから、装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40における搬送室41を通して待機室43に装入させる時間Tz1と、前記の搬送装置40を熱処理された被処理物Wを抽出させる処理装置の位置に移動させる時間Tz2と、熱処理する前の被処理物Wを処理装置20に装入させた搬送装置40を前記の装入装置10の位置に移動させる時間Tz8を引いた時間を入替操作時間BZ(Tz3+Tz4+Tz5+Tz6+Tz7)としている。
【0066】
そして、この実施形態3に係る熱処理設備においては、前記の各処理装置20(20a~20e)において被処理物Wを熱処理する時間(Ta,Tb,Tc,Td,Te)を、制御装置50によってそれぞれ前記の搬送サイクル時間TSZの倍数から前記の入替操作時間BZを引いた時間になるように調整している。このようにすると、熱処理時間(Ta,Tb,Tc,Td,Te)=(Tz1+Tz2+Tz3+Tz4+Tz5+Tz6+Tz7+Tz8)×n-(Tz3+Tz4+Tz5+Tz6+Tz7)の式で表すことができるようになり、従来はバラバラであった熱処理時間(Ta,Tb,Tc,Td,Te)を、搬送サイクル時間TSZを用いて規則性を持たせることができる。
【0067】
ここで、この実施形態3の熱処理設備において、例えば、1つの処理装置20cにおいて被処理物Wの熱処理が完了し、この処理装置20cから熱処理された被処理物Wを抽出させる場合には、
図11に示すように、熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40に装入させない状態で、搬送装置40を装入装置10の位置から熱処理された被処理物Wを抽出させる処理装置20cの位置に移動させて(Tz2)、前記の処理装置20cにおいて熱処理された被処理物Wを搬送装置40の搬送室41に装入させ(Tz3)、このように熱処理された被処理物Wが搬送室41に装入された搬送装置40を抽出装置30の位置に移動させて(Tz4)、熱処理された被処理物Wを搬送装置40の搬送室41から抽出装置30に装入させ(Tz5)、その後、この搬送装置40を前記の処理装置20c位置に移動させ(Tz6)、さらに搬送装置40を前記の処理装置20c位置から装入装置10の位置に移動させる(Tz8)抽出操作(Tz2+Tz3+Tz4+Tz5+Tz6+Tz8)を行うようにする。なお、
図11においては、熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40に装入させない状態で、この搬送装置40を熱処理された被処理物Wを抽出させる処理装置20cの位置に移動させる状態を示したが、熱処理する前の被処理物Wが搬送装置40の待機室43に装入された状態で、搬送装置40を熱処理された被処理物Wを抽出させる処理装置20cの位置に移動させることもできる。
【0068】
また、この実施形態3の熱処理設備において、前記のように熱処理された被処理物Wが抽出された処理装置20cに熱処理する前の被処理物Wを装入させる場合には、
図12に示すように、装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40における搬送室41を通して待機室43に装入させ(Tz1)、待機室43に熱処理する前の被処理物Wが装入された搬送装置40を前記の処理装置20cの位置に移動させて(Tz2)、前記の搬送装置40の待機室43に装入された熱処理する前の被処理物Wを、搬送室41を通して前記の処理装置20に装入させ(Tz7)と、熱処理する前の被処理物Wを処理装置20に装入させた搬送装置40を装入装置10の位置に移動させる(Tz8)装入操作(Tz1+Tz2+Tz7+Tz8)を行うようにする。
【0069】
次に、
図13(A),(B)においては、搬送装置40の動作状態と各処理装置20(20a~20e)における熱処理状態を、時間の流れを横軸(行)として示している。
【0070】
ここで、この実施形態3に係る熱処理設備では、各処理装置20(20a~20e)において被処理物Wを熱処理するにあたり、例えば、1つの処理装置20cにおいて被処理物Wの熱処理が完了すると、制御装置50により、この処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻(Tc’)が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻(Ta’,Tb’,Td’,Te’)と重なるか否かを判定する。
【0071】
続いて、処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻と重なるか否かを判定する。
【0072】
そして、処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻(Tc’)が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻(Ta’,Tb’,Td’,Te’)と重ならず、且つ各被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻についても重ならない場合には、装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40における搬送室41を通して待機室43に装入させ(Tz1)、この状態で、搬送装置40を装入装置10の位置から熱処理された被処理物Wを抽出させる処理装置20cの位置に移動させて(Tz2)、前記の処理装置20cにおいて熱処理された被処理物Wを搬送装置40の搬送室41に装入させ(Tz3)、このように熱処理された被処理物Wが搬送室41に装入された搬送装置40を抽出装置30の位置に移動させて(Tz4)、熱処理された被処理物Wを搬送装置40の搬送室41から抽出装置30に装入させ(Tz5)、その後、この搬送装置40を前記の処理装置20c位置に移動させ(Tz6)、この搬送装置40の待機室43に装入されている熱処理する前の被処理物Wを、搬送室41を通して前記の処理装置20cに装入させて(Tz7)、この搬送装置40を前記の処理装置20c位置から装入装置10の位置に移動させる(Tz8)ようにする。
【0073】
ここで、
図13(A),(B)においては、装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40の搬送室41を通して待機室43に装入させ(Tz1)、この搬送装置40を装入装置10の位置から熱処理された被処理物Wを抽出させる処理装置20cの位置に移動させる(Tz2)一連の操作時間(Tz1+Tz2)を操作時間AZとし、処理装置20cにおいて熱処理された被処理物Wを搬送装置40の搬送室41に装入させ(Tz3)、熱処理された被処理物Wが搬送室41に装入された搬送装置40を抽出装置30の位置に移動させ(Tz4)、この搬送装置40の搬送室41から熱処理された被処理物Wを抽出装置30に装入させ(Tz5)、この搬送装置40を前記の処理装置20c位置に移動させて(Tz6)、待機室43に装入されている熱処理する前の被処理物Wを、搬送室41を通して搬送装置40から処理装置20cに装入させる(Tz7)一連の入替操作を行う時間(Tz3+Tz4+Tz5+Tz6+Tz7)を入替操作時間BZとし、この搬送装置40を装入装置10の位置に移動させる操作を行う時間(Tz8)を操作時間CZとして示している。
【0074】
一方、前記の処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻(Tc’)が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻(Ta’,Tb’,Td’,Te’)と重なる場合、或いは抽出装置30で前記の被処理物Wが滞在する時刻が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの抽出装置30で滞在する時刻と重なる場合、例えば、
図13(A)に示すように、他の処理装置20aにおいて熱処理されている被処理物Wの熱処理完了時刻Ta’と重なる場合には、前記の
図11に示すように、搬送装置40を装入装置10の位置から熱処理された被処理物Wを抽出させる処理装置20cの位置に移動させ、この処理装置20cから熱処理された被処理物Wを抽出させる前記の抽出操作(Tz2+Tz3+Tz4+Tz5+Tz6+Tz8)だけ行い、この状態で前記の搬送装置40を装入装置10の位置に待機させる。
【0075】
次いで、前記のように制御装置50により、処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻(Tc’)が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻(Ta’,Tb’,Td’,Te’)と重なるか否かと、処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻と重なるか否かとを、搬送サイクル時間ごとに判定する。
【0076】
そして、前記の制御装置50により、処理装置20cに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻(Tc’)が、他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻(Ta’,Tb’,Td’,Te’)と重ならず、且つ各被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻についても重ならないと判断された場合には、前記の
図12に示すように、熱処理された被処理物Wを抽出された処理装置20cに、熱処理する前の被処理物Wを装入させる前記の装入操作(Tz1+Tz2+Tz7+Tz8)を行うようにする。
【0077】
ここで、
図13(A),(B)においては、前記のように被処理物Wの熱処理が完了した処理装置20cから熱処理された被処理物Wを抽出させる抽出操作(Tz2+Tz3+Tz4+Tz5+Tz6+Tz8)だけを行う場合、搬送装置40を装入装置10の位置から熱処理された被処理物Wを抽出させる処理装置20cの位置に移動させる操作を行う時間(Tz2)を操作時間DZとし、処理装置20cにおいて熱処理された被処理物Wを搬送装置40の搬送室41に装入させ(Tz3)、熱処理された被処理物Wが搬送室41に装入された搬送装置40を抽出装置30の位置に移動させて(Tz4)、熱処理された被処理物Wを搬送装置40の搬送室41から抽出装置30に装入させ(Tz5)、この搬送装置40を前記の処理装置20c位置に移動させ(Tz6)、さらに搬送装置40を前記の処理装置20c位置から装入装置10の位置に移動させる(Tz8)一連の操作時間(Tz3+Tz4+Tz5+Tz6+Tz8)を操作時間EZとし、また、熱処理された被処理物Wが抽出された処理装置20cに、熱処理する前の被処理物Wを装入させる装入操作(Tz1+Tz2+Tz7+Tz8)だけを行う場合、装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40における搬送室41を通して待機室43に装入させ(Tz1)、待機室43に熱処理する前の被処理物Wが装入された搬送装置40を前記の処理装置20cの位置に移動させて(Tz2)、搬送装置40の待機室43に装入された熱処理する前の被処理物Wを、搬送室41を通して前記の処理装置20に装入させる(Tz7)一連の操作時間(Tz1+Tz2+Tz7)を操作時間FZと、搬送装置40を前記の処理装置20c位置から装入装置10の位置に移動させる操作を行う時間(Tz8)を操作時間GZとし、また処理装置20cにおいて、熱処理された被処理物Wが抽出された後、熱処理する前の被処理物Wが装入されるまでの間を「待ち時間」としている。
【0078】
また、図示していないが、前記の処理装置20c以外の他の処理装置20a,20b,20d,20eにおいても、被処理物Wの熱処理が完了した場合には、前記の処理装置20cの場合と同様に、前記の制御装置50により、被処理物Wの熱処理が完了した処理装置20a,20b,20d,20eに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの熱処理完了時刻が、他の処理装置20a,20b,20c,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの熱処理完了時刻と重なるか否と、処理装置20a,20b,20d,20eに新たに装入させて熱処理する被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻が、他の処理装置20a,20b,20c,20d,20eにおいて熱処理されている各被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻と重なるか否かとを判定し、前記の処理装置20cの場合と同様にして、各処理装置20a,20b,20d,20eにおいて被処理物Wを熱処理させるようにする。
【0079】
そして、この実施形態3に示すように、各処理装置20(20a~20e)において被処理物Wを熱処理させる時間(Ta,Tb,Tc,Td,Te)を、それぞれ制御装置50により前記の搬送サイクル時間TSZの倍数から入替操作時間BZを引いた時間になるように調整すると共に、装入装置10から熱処理する前の被処理物Wを搬送装置40により各処理装置20(20a~20e)に装入させて熱処理するにあたり、前記の制御装置50により、各処理装置20(20a~20e)において被処理物Wが熱処理される時間に基づいて、各処理装置20(20a~20e)において被処理物Wの熱処理が完了する時刻が重ならず、且つ被処理物Wの抽出装置30での滞在時刻についても重ならないように、搬送サイクル時間TSZごとに制御すると、各処理装置20(20a~20e)において処理時間が異なる被処理物Wを熱処理する場合であっても、被処理物Wの熱処理が完了した処理装置20(20a~20e)から熱処理された被処理物Wを搬送サイクル時間TSYに対応したタイミングで適切に取り出すことができると共に、熱処理する前の被処理物Wを搬送サイクル時間TSZに対応した適切なタイミングで装入装置10から搬送装置40を介して処理装置20(20a~20e)内に装入させて熱処理することができ、各処理装置20(20a~20e)において効率のよい熱処理設備の搬送タイムチャートを作成できるようになり、前記の制御装置50により、このような効率のよい熱処理設備の搬送タイムチャートを自動的に作成して、被処理物Wの熱処理が完了する時刻が重ならないように制御できるようになる。
【0080】
なお、この実施形態3の熱処理設備においも、前記の実施形態1、2の熱処理設備と同様に、この被処理物Wが熱処理される時間やタイミングによっては、搬送装置40は、搬送サイクル時間TSZの全時間、装入装置10の位置で止まっていることもあり、また突発的に被処理物Wを装入装置10に準備するタイミングが遅れた場合でも、搬送サイクル時間TSZを採用したことによって、回復が簡単に考えられるようになる。
【0081】
また、前記の実施形態1~3における搬送サイクル時間TSX,TSY,TSZは、必要なサイクルに要する時間よりも長くしても差し支えない。特に、抽出装置30での滞在時間が搬送サイクル時間TSX,TSY,TSZよりも長い場合には、搬送サイクル時間TSX,TSY,TSZを、抽出装置30での滞在時間の約数倍(1倍を含む)に延長することが好ましい。
【符号の説明】
【0082】
10 :装入装置
20(20a~20e) :処理装置
30 :抽出装置
40 :搬送装置
41 :搬送室
42 :保温室
43 :待機室
50 :制御装置
BX :入替操作時間
BY :入替操作時間
BZ :入替操作時間
TSX :搬送サイクル時間
TSY :搬送サイクル時間
TSZ :搬送サイクル時間
Ta :処理装置20a内の被処理物Wの熱処理時間
Tb :処理装置20b内の被処理物Wの熱処理時間
Tc :処理装置20c内の被処理物Wの熱処理時間
Td :処理装置20d内の被処理物Wの熱処理時間
Te :処理装置20e内の被処理物Wの熱処理時間
Ta’ :処理装置20a内の被処理物Wの熱処理完了時刻
Tb’ :処理装置20b内の被処理物Wの熱処理完了時刻
Tc’ :処理装置20c内の被処理物Wの熱処理完了時刻
Td’ :処理装置20d内の被処理物Wの熱処理完了時刻
Te’ :処理装置20e内の被処理物Wの熱処理完了時刻
W :被処理物W
【要約】
【課題】 被処理物を装入させる装入装置と、被処理物を熱処理する複数の処理装置と、熱処理された被処理物を抽出する抽出装置と、被処理物を装入装置と処理装置と抽出装置との間で移動させる搬送装置とを備えた熱処理設備において、処理時間が異なる被処理物も効率よく熱処理できるようにする。
【解決手段】 装入装置10から搬送装置40に装入された熱処理前の被処理物Wを処理装置20において熱処理する場合に、各処理装置で被処理物を熱処理する時間を、被処理物を搬送装置により装入装置と処理装置と抽出装置30との間で移動させる搬送サイクル時間TSXの倍数から入替操作時間BXを引いた時間にし、被処理物に対する熱処理が、制御装置50により、各処理装置において被処理物の熱処理が完了する時刻等と重ならないように、搬送サイクル時間ごとに制御する。
【選択図】
図1