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特許7305387ブラケット及びそれを備えた電装ユニット並びに電装ユニットの組み付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】ブラケット及びそれを備えた電装ユニット並びに電装ユニットの組み付け方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/22 20110101AFI20230703BHJP
【FI】
F24F1/22
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019054854
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020153633
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 遼平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 純一
(72)【発明者】
【氏名】野田 文月
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-027755(JP,A)
【文献】特開平05-133569(JP,A)
【文献】特開2015-227741(JP,A)
【文献】特開2009-079870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材上に設置されるとともにエアコンの室外機の電装箱がフランジ部にて固定支持される支持部材に取り付けられるブラケットであって、
平面視したときに長方形状とされたレール板と、
該レール板の長手方向における一の長辺から立ち上げられたガイド板と、
前記レール板の前記一の長辺に対向する他の長辺の縁から前記一の長辺に向かって、かつ、前記レール板の短手方向に沿って切り込まれ、前記フランジ部が差し込み可能な第1スリットと、
該第1スリットと前記長手方向に所定距離だけ離間した位置において、前記他の長辺の縁から前記一の長辺に向かって、かつ、前記短手方向に沿って切り込まれ、前記フランジ部が差し込み可能な第2スリットと、
を備えているブラケット。
【請求項2】
前記ガイド板は、側面視したときに、前記長手方向に沿って立ち上がり高さが第1高さとされた第1区間と、前記長手方向に沿って立ち上がり高さが前記第1高さよりも低い第2高さとされた第2区間と、の2区間を有して、
前記第2区間側が、前記支持部材に取り付けられ、
長手方向に沿った前記第1区間の長さは、前記電装箱の奥行寸法程度とされている請求項1に記載のブラケット。
【請求項3】
前記レール板は、前記第1区間側に位置する前記短手方向の一の短辺から前記ガイド板の立ち上がり方向とは反対の方向に突出する引っ掛かり部を有している請求項2に記載のブラケット。
【請求項4】
前記第1スリットは、前記第2スリットよりも前記一の短辺側に形成され、
前記第2スリットは、前記フランジ部に差し込まれたとき、前記引っ掛かり部が前記ベース部材の縁部に架かる位置に形成されている請求項3に記載のブラケット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のブラケットと、
前記ベース部材上に設置された前記支持部材と、
前記電装箱と、
を備えている電装ユニット。
【請求項6】
前記支持部材の側面から面方向に突出するとともに、平面視したときに離間している2つの板状部を備え、
前記ブラケットの前記レール板は、側面視したときに、一の板状部と他の板状部との間に差し込まれた状態で固定されている請求項5に記載の電装ユニット。
【請求項7】
前記ベース部材は、前記ブラケットが架かる部分の縁部に、前記ブラケットの前記レール板の板厚に対応する切り欠き高さとされた切り欠きが形成されている請求項5又は6に記載の電装ユニット。
【請求項8】
請求項1から4のいずれかに記載のブラケットと、
前記ベース部材上に設置された前記支持部材と、
前記電装箱と、
を備える電装ユニットの組み付け方法であって、
前記ブラケットは、前記第1スリット又は前記第2スリットに前記フランジ部が差し込まれた状態で前記支持部材に固定され、
前記電装箱を前記レール板及び前記ガイド板に接触させた状態で前記長手方向に沿ってスライドする工程を含む電装ユニットの組み付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラケット及びそれを備えた電装ユニット並びに電装ユニットの組み付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ビル用マルチエアコンの室外機の機械室には、電装部品等が収容された電装箱が設けられる。電装箱に収容される電装部品の中には、例えばパワー素子など通電時に発熱する発熱部品がある。
【0003】
電装部品を適正な温度環境下で作動させるために発熱部品を冷却に供する必要があり、例えば特許文献1には、発熱部品を間接的に冷媒に接触させることで発熱部品を冷却する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-27755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発熱部品を冷却に供する他の方法としては、発熱部品と熱的に接続するとともに電装箱の背面から突出する放熱フィンを、電装箱に設けることが考えられる。
【0006】
このような電装箱は、放熱フィンが機械室内に予め設置されて空気が流通するダクト内に入り込むように取り付けられる。このとき、電装箱は、その背面がダクトの正面(前面)に固定される。
【0007】
ところが、電装箱を予め設置されているダクトに取り付けるに際して、電装箱のサイズがダクトのサイズよりも大きい場合、電装箱の背面側及びダクトの正面側が目視できないので電装箱とダクトとの適切な位置関係を把握できない可能性がある。このため、電装箱の背面から突出した放熱フィンとダクトとが干渉する可能性がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、電装箱と支持部材との適切な位置関係が把握できない場合であっても、電装箱を支持部材の適切な位置に近接させることができるブラケット及びそれを備えた電装ユニット並びに電装ユニットの組み付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のブラケット及びそれを備えた電装ユニット並びに電装ユニットの組み付け方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の一態様に係るブラケットは、ベース部材上に設置されるとともにエアコンの室外機の電装箱がフランジ部にて固定支持される支持部材に取り付けられるブラケットであって、平面視したときに長方形状とされたレール板と、該レール板の長手方向における一の長辺から立ち上げられたガイド板と、前記レール板の前記一の長辺に対向する他の長辺の縁から前記一の長辺に向かって、かつ、前記レール板の短手方向に沿って切り込まれ、前記フランジ部が差し込み可能な第1スリットと、該第1スリットと前記長手方向に所定距離だけ離間した位置において、前記他の長辺の縁から前記一の長辺に向かって、かつ、前記短手方向に沿って切り込まれ、前記フランジ部が差し込み可能な第2スリットとを備えている。
【0010】
本態様に係るブラケットによれば、平面視したときに長方形状とされたレール板と、該レール板の長手方向における一の長辺から立ち上げられたガイド板と、前記レール板の前記一の長辺に対向する他の長辺の縁から前記一の長辺に向かって、かつ、短手方向に沿って切り込まれ、前記フランジ部が差し込み可能な第1スリットと、該第1スリットと前記長手方向に所定距離だけ離間した位置において、前記他の長辺の縁から前記一の長辺に向かって、かつ、前記レール板の前記短手方向に沿って切り込まれ、前記フランジ部が差し込み可能な第2スリットとを備える。
【0011】
これによって、支持部材(例えば、ビル用マルチエアコンの室外機内に画定された機械室内のダクト)に電装箱を固定するに際して、電装箱を支持部材に取り付けられたブラケットのレール板及びガイド板に当てながらブラケットの長手方向にスライドさせることで、電装箱をブラケットによってガイドさせながら支持部材に近接させることができる。このため、電装箱の背面側が目視できずに電装箱と支持部材との適切な位置関係が把握できない場合であっても、電装箱の背面側にある構造物(例えば、放熱フィン)と支持部材とを干渉させることなく電装箱を支持部材に近接させることができる。また、電装箱を支持部材から取り外すに際して、電装箱をブラケットによってガイドさせながら支持部材から離間させることができる。
【0012】
このとき、ブラケットには、支持部材のフランジ部が差し込まれる2つのスリットが形成されている。このため、フランジ部をいずれかのスリットに差し込むことによって、電装箱の固定や取り外しに応じてブラケットの位置を選択することができる。また、適切に選択された位置に配置されたブラケットを、例えば、ネジなどで支持部材に固定することで、その位置にブラケットを固定することができる。
【0013】
ここで、スリットは、長手方向に離間して2つ形成されており、どのスリットにフランジ部を差し込むかによって、ブラケットの位置を電装箱のスライド方向に沿って調整できる。例えば、電装箱を支持部材に固定するために近接させるときは、ブラケットがスライド方向奥側に配置されるよう一のスリットにフランジ部を差し込む。一方、電装箱を支持部材から取り外すために離間させるときは(例えば、電装箱のメンテナンス時)、ブラケットがスライド方向手前側に配置されるよう他のスリットにフランジ部を差し込む。これによって、作業に応じて適切なブラケットの位置を選択できる。
【0014】
電装箱を支持部材から取り外すに際して、ブラケットを手前側に配置する理由は次の通りである。すなわち、支持部材はベース部材上に固定されており、電装箱はベース部材上に載置されている。電装箱を支持部材から取り外すために電装箱を手前側にスライドさせるが、ベース部材の手前側に凹状の窪みが形成されている場合、電装箱が窪みに落ち込む可能性がある。そこで、ブラケットをスライド方向の手前側に配置することで、その窪みを超えるようにブラケットを架け渡すことができる。そして、窪みを乗り越えたブラケットを用いて電装箱をスライドさせることで、電装箱が窪みに落ち込むことを防止できる。
【0015】
また、本発明の一態様に係るブラケットにおいて、前記ガイド板は、側面視したときに、前記長手方向に沿って立ち上がり高さが第1高さとされた第1区間と、前記長手方向に沿って立ち上がり高さが前記第1高さよりも低い第2高さとされた第2区間と、の2区間を有して、前記第2区間側が、前記支持部材に取り付けられ、長手方向に沿った前記第1区間の長さは、前記電装箱の奥行寸法程度とされている。
【0016】
本態様に係るブラケットによれば、側面視したときに、前記ガイド板の立ち上がり高さが第1高さとされた前記長手方向に沿った第1区間と、前記ガイド板の立ち上がり高さが前記第1高さよりも低い第2高さとされた前記長手方向に沿った第2区間との2区間を有して、前記第2区間側が、前記支持部材に取り付けられ、長手方向に沿った前記第1区間の長さは、前記電装箱の奥行長さ以上とされている。
これによって、支持部材に取り付けられる側の第2区間のガイド板の高さ寸法を小さくでき、支持部材に対する固定に用いられるネジなどに容易にアクセスできるようになる。一方、ガイド板の高さが確保された第1区間の長さを電装箱の奥行長さ(側面視したときの幅方向長さ)程度とすることで、少なくとも第1区間においては、ガイド板による電装箱の安定性を確保できる。
【0017】
また、本発明の一態様に係るブラケットにおいて、前記レール板は、前記第1区間側に位置する前記短手方向の一の短辺から前記ガイド板の立ち上がり方向とは反対の方向に突出する引っ掛かり部を有している。
【0018】
本態様に係るブラケットによれば、レール板は、第1区間側に位置する短手方向の一の短辺からガイド板の立ち上がり方向と反対の方向に突出する引っ掛かり部を有している。
これによって、ブラケットを電装箱のスライド方向手前側に配置したとき、ベース部材の縁部に引っ掛かり部を架けることがきる。このため、ブラケットの位置を安定させることができる。
【0019】
また、本発明の一態様に係るブラケットにおいて、前記第1スリットは、前記第2スリットよりも前記一の短辺側に形成され、前記第2スリットは、前記フランジ部に差し込まれたとき、前記引っ掛かり部が前記ベース部材の縁部に架かる位置に形成されている。
【0020】
本態様に係るブラケットによれば、第1スリットは、第2スリットよりも一の短辺側に形成され、第2スリットは、フランジ部に差し込まれたとき、引っ掛かり部がベース部材の縁部に架かる位置に形成されている。
これによって、第2スリットにフランジ部を差し込むことで、ブラケットを電装箱のスライド方向手前側に配置させるとともにベース部材の縁部にレール板の引っ掛かり部を架けることができる。
【0021】
また、本発明の一態様に係る電装ユニットは、上述のブラケットと、前記ベース部材上に設置された前記支持部材と、前記電装箱とを備えている。
【0022】
本態様に係る電装ユニットによれば、上述のブラケットと、ベース部材と、ベース部材上に設置された支持部材と、電装箱とを備えている。
【0023】
また、本発明の一態様に係る電装ユニットは、前記支持部材の側面から面方向に突出するとともに、平面視したときに離間している2つの板状部を備え、前記ブラケットの前記レール板は、側面視したときに、一の板状部と他の板状部との間に差し込まれた状態で固定されている。
【0024】
本態様に係る電装ユニットによれば、支持部材の側面から面方向に突出するとともに、平面視したときに離間している2つの板状部を備え、ブラケットのレール板は、側面視したときに、一の板状部と他の板状部との間に差し込まれた状態で固定されている。これによって、ブラケットの長手方向における回転を規制できる。
【0025】
また、本発明の一態様に係る電装ユニットにおいて、前記ベース部材は、前記ブラケットの前記引っ掛かり部が架かる部分の前記縁部に、前記ブラケットの前記レール板の板厚に対応する切り欠き高さとされた切り欠きが形成されている。
【0026】
本態様に係る電装ユニットによれば、ブラケットの前記引っ掛かり部が架かる部分の縁部に、ブラケットのレール板の板厚に対応する切り欠き高さとされた切り欠きが形成されている。これによって、レール板の板厚分を切り欠きによって吸収できるので、レール板と縁部とで段差が生じることがない。
【0027】
また、本発明の一態様に係る電装ユニットの組み付け方法は、上述のブラケットと、前記ベース部材上に設置された前記支持部材と、前記電装箱とを備える電装ユニットの組み付け方法であって、前記ブラケットは、前記第1スリット又は前記第2スリットに前記フランジ部が差し込まれた状態で前記支持部材に固定され、前記電装箱を前記レール板及び前記ガイド板に接触させた状態で前記長手方向に沿ってスライドする工程を含む。
【0028】
本態様に係る電装ユニットの組み付け方法によれば、ブラケットは、第1スリット又は第2スリットにフランジ部が差し込まれた状態で支持部材に固定され、電装箱をレール板及びガイド板に接触させた状態で長手方向に沿ってスライドする工程を含む。これによって、電装箱をスライドさせるに際して、ブラケットが電装箱の位置を規制するので、電装箱を安定させた状態でスライドさせることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るブラケット及びそれを備えた電装ユニット並びに電装ユニットの組み付け方法によれば、電装箱と支持部材との適切な位置関係が把握できない場合であっても、電装箱を支持部材の適切な位置に近接させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係る電装ユニットの機械室内における背面斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電装ユニットの正面斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る電装ユニットの背面斜視図である。
図4】ブラケットが固定されたダクトの正面斜視図である。
図5】ベース部材に設置された電装ユニットの正面斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係るブラケットの斜視図である。
図7図6に示すブラケットの平面図である。
図8図6に示すブラケットの側面図である。
図9】係止部の斜視図である。
図10】ブラケットが差し込まれた状態の係止部の斜視図である。
図11】ブラケットが固定された状態の係止部の斜視図である。
図12】ブラケットが取り付け位置に固定されている状態の電装ユニットの側面図である。
図13】ブラケットが取り外し位置に固定されている状態の電装ユニットの側面図である。
図14】電装箱をダクトに対して接近又は離間させているときの背面斜視図である。
図15図5に示すA部を正面視した部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態に係るブラケット及びそれを備えた電装ユニット並びに電装ユニットの組み付け方法について図面を用いて説明する。
【0032】
まず、電装ユニット10について説明する。
図1に示すように、電装ユニット10は、例えば、ビル用マルチエアコンの室外機に画定された機械室12に設置されるものであって、エアコンの制御を実行する電装部品等が収容される電装箱60付近の構造物である。
【0033】
図2及び図3に示すように、電装ユニット10は、内部に空気が流通するダクト(支持部材)40と、ダクト40の奥行方向の前面に設置され、電装部品62が収容された電装箱60とを備えている。
なお、ここで言う「前面」とは、図2において手前側、図3において奥側に位置する面である。
【0034】
図3及び図4に示すように、ダクト40は、立方体形状に作製された箱型であって前面が開口とされた筐体41を有している。この開口は、後述の放熱フィン64が挿入されるための入口とされている。
【0035】
筐体41は、前面の周囲縁に形成されたフランジ部42を有している。フランジ部42は、電装箱60の背面に対して面接触するように構成されている。
【0036】
ダクト40の側面(図4において右側面)には、後述するブラケット70が係止部44を介して取り付けられている。
【0037】
ダクト40の内部には、ダクト40の内部の空間を水平方向(同図において左右方向)に分割する仕切り板46が設けられている。仕切り板46は、上下方向に延在している板状の部材であって、その上部がダクト40の上内面に接続され、下部が下内面に接続されている。
【0038】
仕切り板46によって分割されたダクト40内の各空間の上部には、気流を発生させるためのファン48が1つずつ設けられている。このファン48が駆動することでダクト40の内部に空気の流れが形成される。同図に示すダクト40の場合、空気の流れは、下方から上方に向かう方向に形成される。
【0039】
図1に示すように、ダクト40は、機械室12を画定する部材とされたベース部材20及びドレンパン14に対して固定支持されている。
【0040】
ベース部材20は、機械室12の下方に配置された面状の部材とされ、その上面にダクト40の下部が固定される。一方、ドレンパン14は、ベース部材20に対向するように機械室12の上方に配置された面状の部材とされ、その下面にダクト40の上部が固定される。
【0041】
図2及び図3に示すように、電装箱60は、立方体形状に作製された箱型の筐体61を有している。
電装箱60の筐体61は、ダクト40の筐体41に比べて大きく設計されている。このため、電装箱60の正面からでは後述する放熱フィン64やダクト40の内部が目視できない。
【0042】
図2に示すように、電装箱60の内部には、エアコンの制御を実行するための複数種類の電装部品62が収容されている。これら電装部品62の中には作動時に発熱するものが含まれている。
【0043】
図3に示すように、電装箱60の背面には、電装部品62が発する作動熱を放熱するための放熱フィン64が設けられている。放熱フィン64は、電装箱60の背面側から突出するように設けられており、作動熱を発する電装部品62に対して熱的に接触している。同図においては、4つの放熱フィン64が設けられている。
【0044】
図1から図3に示すように、電装箱60は、その背面側がダクト40の正面側に対して固定されている。詳細には、電装箱60の背面が筐体41に形成されたフランジ部42の前面に対して固定されている。固定の手段としては、例えばボルト・ナットによる締結とされる。
なお、電装箱60は、ベース部材20及びドレンパン14に対して固定されていない。
【0045】
図5に示すように、ベース部材20には、ベース面22から上方に向かって突出した凸条の支持桁28が2本並列して設けられている。電装箱60はこの2本の支持桁28に載置されている。ただし、電装箱60がダクト40に固定されている状態においては、電装箱60の荷重は、そのほとんどが支持桁28ではなくダクト40によって支えられている。
【0046】
図3に示すように、電装箱60がダクト40に固定された状態において、ダクト40の前面に設けられた開口から挿入された放熱フィン64は、ダクト40の内部の空間に収容される。同図の場合、仕切り板46によって分割された各空間に2つずつの放熱フィン64が収容されている。
【0047】
ダクト40に放熱フィン64が収容された状態でファン48を駆動することで、ダクト40の内部に発生する気流によって放熱フィン64を冷却(空冷)させることができる。
【0048】
機械室12には、電装ユニット10の他に例えば圧縮機(図示せず)などの機器が収容されている。
【0049】
次に、ブラケット70について説明する。
図3及び図4に示すように、ブラケット70は、係止部44を介してダクト40の側面に取り付けられるアングル材形状の部材であって、電装箱60をダクト40に固定する(取り付ける)、又は、取り外す際に電装箱60をガイドするための部材である。
【0050】
図6から図8に示すように、ブラケット70は、レール板72とガイド板74とを有している。
【0051】
レール板72は、平面視したときに(図7)、長方形状とされている所定の厚みを持った板状の部材である。
【0052】
図7に示すように、レール板72には、短手方向に沿って切り込まれ、長手方向において所定距離だけ離間した2つスリット(第1スリット76及び第2スリット78)が形成されている。第1スリット76及び第2スリット78は、レール板72の一の長辺から他の長辺(一の長辺に対向する長辺)に向かってU字状に形成されている。同図の場合、左側の長辺から右側の長辺に向かって形成されている。第1スリット76及び第2スリット78には、ダクト40のフランジ部42を差し込むことができる。
【0053】
図6及び図8に示すように、レール板72には、一の短辺から下方に向かって略直角に折り曲げられた引っ掛かり部82が設けられている。
【0054】
図7に示すように、レール板72において、第1スリット76と第2スリット78との間の区間、及び、第2スリット78よりも他の短辺(一の短辺に対応する短辺)側の区間に、それぞれ1つずつ貫通孔80が形成されている。この貫通孔80は、ブラケット70を係止部44に取り付けるためのネジを挿通させる孔である。
【0055】
図6から図8に示すように、ガイド板74は、レール板72の他の長辺から上方に向かって略直角に立設されている所定の厚みを持った板状の部材である。
【0056】
図8に示すように、ガイド板74は、立ち上がりの高さが異なる2つの区間(第1区間74A及び第2区間74B)を有している。
第1区間74Aの高さを第1高さH1として、第2区間74Bの高さを第2高さH2としたとき、第1高さH1は第2高さH2に対して大きく設定されている。
【0057】
図9に示すように、ブラケット70を取り付けるための係止部44は、ダクト40の側面に設けられている。
【0058】
係止部44は、ダクト40の側面から面方向に突出した2つの板状部材(第1突出部44A及び第2突出部44B)を有している。
【0059】
第1突出部44Aには、ネジ穴50が形成されており、ブラケット70を係止部44に取り付けるためのネジが螺合される。
【0060】
第1突出部44Aと第2突出部44Bとは、ダクト40の奥行方向において離間している。すなわち、図9に示すダクト40を平面視したとき、第1突出部44Aと第2突出部44Bとはダクト40の奥行方向に離間して設けられている。
【0061】
ダクト40のフランジ部42側に位置する第1突出部44Aは、図9に示すダクト40を側面視したとき、ダクト40の高さ方向(同図において上下方向)において、第2突出部44Bよりも低い位置に設けられている。
【0062】
図10に示すように、第1突出部44Aと第2突出部44Bとの高さ方向の隙間には、ブラケット70のレール板72を差し込むことができる。第1突出部44Aと第2突出部44Bとの高さ方向の隙間にレール板72を差し込んだとき、第1突出部44Aの上面とレール板72の下面とが接触するとともに第2突出部44Bの下面とレール板72の上面とが接触する。このとき、ブラケット70の重心を第1突出部44Aよりもフランジ部42側に設定することで、第1突出部44Aを支点にしたブラケット70の回転が第2突出部44Bによって規制される。これによってブラケット70が係止部44に支持される。
【0063】
図11に示すように、ブラケット70が係止部44に支持された状態で、ネジ(例えば蝶ネジ)を上方からブラケット70の貫通孔80に挿通させるとともにネジ穴50に螺合することで、ブラケット70が係止部44に固定される。
【0064】
このとき、第1区間74Aよりも高さ寸法が小さい第2区間74Bを係止部44側に設けているので、作業員が容易にネジへアクセスできる。
【0065】
ブラケット70が、例えば図10に示されている位置にて係止部44に固定された状態においては、図7に示すように、第1スリット76にダクト40のフランジ部42が差し込まれている。このブラケット70の位置を「取り付け位置」と言う(図12参照)。
【0066】
一方、図7に示すように、第2スリット78にダクト40のフランジ部42が差し込まれている状態のブラケット70の位置を「取り外し位置」と言う(図13参照)。
【0067】
図12及び図13に示すように、取り付け位置と取り外し位置とでは、ダクト40の奥行方向(側面視している図12及び図13においては左右の幅方向)におけるブラケット70の位置が異なる。この位置の差異は、第1スリット76と第2スリット78との離間距離に依存している。
【0068】
第2スリット78の位置は、次のように設定される。すなわち、図13及び図5に示すように、ブラケット70を取り外し位置にて固定したときに、ベース面22から立ち上げられた縁部24の前面に引っ掛かり部82が架かるようなブラケット70の位置になるように、第2スリット78がレール板72に形成される。
【0069】
次に、ダクト40に対する電装箱60の固定について説明する。
電装箱60をダクト40に固定する際には、ブラケット70を取り付け位置(図12参照)に固定しておく。
【0070】
図14に示すように、ブラケット70が取り付け位置にて固定された状態おいて、作業者が、電装箱60をダクト40のフランジ部42に接近させる。このとき、電装箱60の角部66をブラケット70のレール板72及びガイド板74(詳細にはガイド板74の第1区間74A)に当接させる。これによって、電装箱60をブラケット70によってガイドさせながらブラケット70の長手方向にスライドさせることができる。
【0071】
電装箱60をブラケット70によってガイドさせた状態で、更に電装箱60をフランジ部42に向かってスライドさせて、図12に示すように、電装箱60の背面をフランジ部42の前面に当接させる。これによって、電装箱60を安定的にスライドさせつつダクト40に対して適切な位置にスライドさせることができる。
【0072】
なお、ブラケット70が有するガイド板74の第1区間74Aの長手方向の寸法は、電装箱60の奥行方向(側面視している図12においては左右の幅方向)の寸法程度あればよい。これによって、電装箱60をダクト40に取り付けるに際して、高さ寸法が大きく設定された第1区間74Aを用いて電装箱60を安定的にスライドさせることができる。
【0073】
なお、図14に示されているブラケット70のガイド板74は一部が切り欠かれて描画されているが、これは説明のための描画であって実際の形状とは異なる。
【0074】
次に、ダクト40に対する電装箱60の取り外しについて説明する。
図12に示すように、ダクト40に電装箱60が取り付けられ、ブラケット70が取り付け位置に固定されている状態から、図13及び図5に示すように、ブラケット70を取り外し位置に固定する。
なお、電装箱60がダクト40に固定されている状態においては、ブラケット70に電装箱60の荷重が負荷されていないので、容易にブラケット70を移動させることができる。
【0075】
ブラケット70が取り外し位置に固定された状態において、電装箱60とダクト40との締結を解除する。
【0076】
その後、電装箱60をブラケット70によってガイドさせながら、電装箱60をダクト40から離間する方向にスライドさせる。
【0077】
図5及び図13に示すように、支持桁28と縁部24との間には凹状の窪み30が形成されているが、引っ掛かり部82が縁部24に架けられた状態のブラケット70は、その窪み30を乗り越えている。これによって、電装箱60が窪み30に落ち込むことを回避させつつ電装箱60をダクト40から離間する方向にスライドさせることができる。
【0078】
このとき、図15に示すように、引っ掛かり部82が架かる縁部24の上縁には、レール板72の板厚と同程度の高さ寸法とされた切り欠き26を形成することが好ましい。これによって、レール板72の上面と縁部24の上縁とで段差が生じないので、電装箱60を円滑にスライドさせることができる。
【0079】
なお、電装箱60の取り外し時以外(例えば、エアコンの運転中など)においては、ブラケット70を取り付け位置に固定しておくことが好ましい。
【0080】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
電装箱60をダクト40に固定するに際して、電装箱60をブラケット70のレール板72及びガイド板74に当接させながらブラケット70の長手方向にスライドさせ、ブラケット70によってガイドさせることで、ダクト40に安定的に近接させることができる。このため、電装箱60の背面側が目視できずに電装箱60とダクト40との適切な位置関係が把握できない場合であっても、電装箱60の背面側にある放熱フィン64とダクト40(仕切り板46を含む)とを干渉させることなく放熱フィン64をダクト40の内部に収容させることができる。また、反対に、電装箱60をダクト40から取り外すに際して、電装箱60をブラケット70によってガイドさせることで、電装箱60を安定的にダクト40から離間させることができる。
【0081】
このとき、ブラケット70には、ダクト40のフランジ部42が差し込まれる第1スリット76及び第2スリット78が形成されている。このため、フランジ部42を第1スリット76又は第2スリット78に差し込むことによって、ブラケット70が係止部44に対して位置決めされ、電装箱60の固定や取り外しに応じてブラケット70の位置を適切に選択することができる。
【0082】
また、電装箱60をダクト40から取り外すに際して、ベース部材20には窪み30が形成されているため、そのままでは電装箱60が窪み30に落ち込む可能性がある。そこで、ブラケット70を取り外し位置に固定することで、その窪み30を超えるようにブラケット70を架け渡すことができる。そして、窪み30を乗り越えたブラケット70を用いて電装箱60をスライドさせることで、電装箱60が窪み30に落ち込むことを防止できる。
【0083】
また、ブラケット70は、引っ掛かり部82を有している。これによって、ブラケット70を取り外し位置(図13参照)に固定するとき、ベース部材20の縁部24に引っ掛かり部82を架けることがきる。このため、ブラケット70の位置を安定させることができる。
【符号の説明】
【0084】
10 電装ユニット
12 機械室
14 ドレンパン
20 ベース部材
22 ベース面
24 縁部
26 切り欠き
28 支持桁
30 窪み
40 ダクト(支持部材)
41 筐体
42 フランジ部
44 係止部
44A 第1突出部
44B 第2突出部
46 仕切り板
48 ファン
50 ネジ穴
60 電装箱
61 筐体
62 電装部品
64 放熱フィン
66 角部
70 ブラケット
72 レール板
74 ガイド板
74A 第1区間
74B 第2区間
76 第1スリット
78 第2スリット
80 貫通孔
82 引っ掛かり部
H1 第1高さ
H2 第2高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15