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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】モータおよびモータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/30 20160101AFI20230703BHJP
   H02K 3/46 20060101ALI20230703BHJP
   H02K 5/04 20060101ALI20230703BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
H02K11/30
H02K3/46 B
H02K5/04
H02K15/02 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019056253
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020162205
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000228730
【氏名又は名称】ニデックアドバンスドモータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】高橋 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】水上 浩二
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-192268(JP,A)
【文献】特開平07-298575(JP,A)
【文献】特開2008-029105(JP,A)
【文献】特開2015-122854(JP,A)
【文献】特開2014-039429(JP,A)
【文献】実開平01-116566(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/30
H02K 3/46
H02K 5/04
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸周りに回転可能に支持されたロータと、
前記ロータを径方向外側から囲むステータと、
前記ステータと電気的に接続される回路基板と、
前記ステータ、前記回路基板および前記ロータが収容されるモータケースと、を備え、
前記モータケースは、
少なくとも前記ロータおよび前記ステータが収容される有底筒状の第1ケース部と、
有頂筒状の第2ケース部であって、前記第2ケース部の開口が前記第1ケース部の開口と対向し、前記第1ケース部と連結される第2ケース部と、
前記ステータは、
前記中心軸を囲み周方向に広がる外周面を有するステータコアと、
前記ステータコアに固定されるインシュレータと、を有し、
前記インシュレータは、前記ステータコアよりも軸方向一方側に延び、前記中心軸を中心とする筒部を有し、
前記筒部は、軸方向一方側の端縁から突出する柱状のピンを有し、
前記回路基板は、基板外周部において前記ピンの基部側が収容されるピン収容部を有し、
前記ピンは、一端において、前記ピン収容部に収容される部位よりも幅が広い幅広部360を少なくとも有し、
前記回路基板は、一対の板面が軸方向を向き、前記端縁に接触し、
前記回路基板の前記基板外周部において、前記幅広部の上面は、前記回路基板の軸方向一方側の前記板面から突出し、
前記幅広部の下面の少なくとも一部は、前記回路基板の軸方向一方側の前記板面に接触しており、
前記筒部の前記端縁が、軸方向から見て多角形状であり、
前記筒部は、前記端縁の複数の角部のうち、少なくとも1つの角部に配置され、前記端縁から軸方向一方側に向けて突出する前記ピンを有し、
前記回路基板は、多角形状であり、
前記回路基板の外周部に、周方向に並ぶ複数の基板角部を有し、
前記複数の基板角部は、
前記端縁の複数の角部のうち前記ピンが配置される前記角部と軸方向に対向する第1の基板角部と、
前記端縁の複数の角部のうち前記ピンが配置されない前記角部と軸方向に対向する第2の基板角部と、を有し、
前記第1の基板角部は、前記ピンが収容される前記ピン収容部を有し、
前記第1の基板角部において、前記幅広部の上面は、前記回路基板の軸方向一方側の前記板面から突出し、
前記幅広部の下面の少なくとも一部は、前記回路基板の軸方向一方側の前記板面に接触しており、
前記第2ケース部は、前記回路基板に軸方向一方側から接触する基板押さえ部を有し、
前記基板押さえ部は、軸方向から見て、前記第2の基板角部と重なって配置される、
モータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータであって、
前記ピンは、複数設けられ、
複数の前記ピンは、前記端縁に配置される、モータ。
【請求項3】
請求項1に記載のモータであって、
前記第2の基板角部は、複数設けられ、
前記基板押さえ部は、複数設けられる、モータ。
【請求項4】
請求項1または3に記載のモータであって、
前記ピンは、複数設けられ、
前記基板押さえ部は、複数設けられ、
前記ピンと、前記基板押さえ部とが、周方向に交互に並ぶ、モータ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のモータであって、
前記第1の基板角部は、複数設けられ、
前記第2の基板角部は、複数設けられ、
前記第1の基板角部と前記第2の基板角部とが、周方向に交互に並ぶ、モータ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のモータであって、
前記ピン収容部は、複数設けられ、
複数の前記ピン収容部の各々は、前記基板外周面から径方向内側に窪んで軸方向に延びる溝、および、前記回路基板を軸方向に貫通する孔のいずれかである、モータ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のモータであって、
前記ピンは、複数設けられ、
複数の前記ピンは、前記端縁の複数の角部のうち、少なくとも2つの角部にそれぞれ配置され、
前記第1の基板角部は、複数設けられる、モータ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のモータであって、
前記ピンは、熱可塑性樹脂である、モータ。
【請求項9】
請求項1から8に記載のいずれか一項に記載のモータの製造方法であって、
前記回路基板を準備する工程と、
前記ピンを前記ピン収容部に収容し、前記回路基板を前記筒部の端縁に載置する工程と、
前記ピンの一端を加熱して溶融し、前記ピンの一端に前記幅広部を形成して前記幅広部の少なくとも一部を前記回路基板の軸方向一方側の板面に溶着する工程と、
を含む、
モータの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のモータの製造方法であって、
前記ピンを前記ピン収容部に収容し、前記回路基板を前記筒部の端縁に載置する工程を実施するとき、前記ピンの一端は、前記回路基板の軸方向一方側の前記板面から突出する、
モータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータおよびモータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータは、ロータと、ステータと、回路基板と、モータケースと、を備える。特許文献1のモータは、樹脂製のハウジングを備える。ステータは、ステータコアと、インシュレータと、コイルと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-150520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記したインシュレータの構成では、コイルの回路基板へのはんだ付けの際に、インシュレータに対して回路基板が支持されてないため、インシュレータと回路基板との相対移動を抑制できず、作業性が悪いという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、コイルの回路基板へのはんだ付けの作業を簡単に行えるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、中心軸周りに回転可能に支持されたロータと、ロータを径方向外側から囲むステートと、ステータと電気的に接続される回路基板と、ステータ、回路基板およびロータが収容されるモータケースと、を備え、モータケースは、少なくともロータおよびステータが収容される有底筒状の第1ケース部と、有頂筒状の第2ケース部であって、第2ケース部の開口が第1ケース部の開口と対向し、第1ケース部と連結される第2ケース部と、ステータは、中心軸を囲み周方向に広がる外周面を有するステータコアと、ステータコアに固定されるインシュレータと、を有し、インシュレータは、ステータコアよりも軸方向一方側に延び、中心軸を中心とする筒部を有し、筒部は、軸方向一方側の端縁から突出する柱状のピンを有し、回路基板は、基板外周部においてピンの基部側が収容されるピン収容部を有し、ピンは、一端において、ピン収容部に収容される部位よりも幅が広い幅広部を少なくとも有し、回路基板は、一対の板面が軸方向を向き、端縁に接触し、回路基板の前記基板外周部において、前記幅広部の上面は、回路基板の軸方向一方側の前記板面から突出し、幅広部の下面の少なくとも一部は、回路基板の軸方向一方側の前記板面に接触しており、前記筒部の前記端縁が、軸方向から見て多角形状であり、前記筒部は、前記端縁の複数の角部のうち、少なくとも1つの角部に配置され、前記端縁から軸方向一方側に向けて突出する前記ピンを有し、前記回路基板は、多角形状であり、前記回路基板の外周部に、周方向に並ぶ複数の基板角部を有し、前記複数の基板角部は、前記端縁の複数の角部のうち前記ピンが配置される前記角部と軸方向に対向する第1の基板角部と、前記端縁の複数の角部のうち前記ピンが配置されない前記角部と軸方向に対向する第2の基板角部と、を有し、前記第1の基板角部は、前記ピンが収容される前記ピン収容部を有し、前記第1の基板角部において、前記幅広部の上面は、前記回路基板の軸方向一方側の前記板面から突出し、前記幅広部の下面の少なくとも一部は、前記回路基板の軸方向一方側の前記板面に接触しており、前記第2ケース部は、前記回路基板に軸方向一方側から接触する基板押さえ部を有し、前記基板押さえ部は、軸方向から見て、前記第2の基板角部と重なって配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様のモータによれば、回路基板がインシュレータに固定されているため、インシュレータと回路基板との相対移動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態のモータを示す斜視図である。
図2図2は、本実施形態のモータを示す縦断面図である。
図3図3は、図2のIII-III断面を示す横断面図であり、コイルの図示を省略している。
図4図4は、図2のIV-IV断面を示す横断面図であり、回路基板およびコイルの図示を省略している。
図5図5は、図2のV-V断面を示す横断面図である。
図6】ステータが挿入された状態の第1ケース部側を示す斜視図である。
図7】回路基板がピンを介して筒部に固定された状態を示す一部拡大断面図である。
図8】準備工程および載置工程を説明する斜視図である。
図9】載置工程の実施後、筒部に回路基板が載置された状態を示す側面図である。
図10】溶着工程を説明する側面図である。
図11】溶着工程実施後、回路基板がピンを介して筒部に固定された状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[モータ]
本発明の一実施形態のモータ1について、図面を参照して説明する。本実施形態のモータ1は、例えば冷蔵庫や冷凍庫等のファンを駆動するモータである。モータ1は、例えば、8極8スロットの単相モータである。モータ1は、中心軸Jを有する。各図において、中心軸JはZ軸方向に沿って延びる。Z軸方向は、モータ1の組み立て時においては例えば鉛直方向であるが、モータ1を装置に設置して使用する際には、鉛直方向でもよいし、水平方向でもよいし、それ以外の方向でもよい。
【0010】
以下の説明においては、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向を単に「軸方向」と呼ぶ。中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Jに近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸Jから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。中心軸Jを中心とする周方向、すなわち中心軸Jの軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。なお、本実施形態において、「平行な方向」は略平行な方向を含み、「直交する方向」は略直交する方向を含む。
【0011】
図1図5に示すように、モータ1は、中心軸Jを中心とするロータ2と、複数のベアリング24,25と、ステータ3と、回路基板5と、モータケース10と、複数の締結ネジ7と、配線部材9と、を備える。ステータ3の軸方向位置と、回路基板5の軸方向位置とは、互いに異なる。本実施形態では、軸方向のうち、ステータ3から回路基板5へ向かう方向を軸方向一方側(+Z側)と呼び、回路基板5からステータ3へ向かう方向を軸方向他方側(-Z側)と呼ぶ。
【0012】
ロータ2は、シャフト21と、ロータコア22と、マグネット(図示省略)と、を有する。シャフト21は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる。シャフト21は、モータケース10に設けられる複数のベアリング24,25により、中心軸J周りに回転自在に支持される。本実施形態では、ベアリング24,25が軸方向に互いに離れて一対設けられる。ベアリング24,25は、例えばボールベアリング等である。
【0013】
ロータコア22は、中心軸Jを中心とする環状である。本実施形態では、ロータコア22が筒状である。ロータコア22は、シャフト21の径方向外側に配置される。ロータコア22の内周面は、シャフト21の外周面と固定される。ロータコア22は、シャフト21とともに中心軸J回りに回転させられる。図示を省略するが、マグネットは、ロータコア22の外周面に配置される。マグネットは、周方向に並んで複数設けられる。なお、マグネットは、中心軸Jを中心とする円筒状のリングマグネットでもよい。
【0014】
ステータ3は、ロータ2の径方向外側に配置される。ステータ3は、ロータコア22を径方向外側から周方向の全周にわたって囲う。ステータ3は、ロータ2のマグネットと径方向に隙間をあけて対向する。つまりステータ3は、ロータ2と径方向に対向する。ステータ3は、ステータコア31と、インシュレータ32と、複数のコイル33と、を有する。
【0015】
ステータコア31は、中心軸Jを中心とする環状である。ステータコア31は、ロータ2の径方向外側に配置される。ステータコア31は、ロータ2を径方向外側から囲う。ステータコア31は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成される鋼板積層体である。
【0016】
ステータコア31は、コアバック31aと、第1溝部31dと、複数のティース31bと、を有する。コアバック31aは、中心軸を中心とする環状である。コアバック31aは、軸方向に延びる円筒状である。中心軸Jに垂直な横断面視(以下、単に「横断面視」という場合がある)で、コアバック31aのコア外周面31cは、円形状である。つまり横断面視において、ステータコア31のコア外周面31cは、円形状である。
【0017】
第1溝部31dは、コア外周面31cから径方向内側に窪んで軸方向に延びる。第1溝部31dは、コア外周面31cの軸方向の全長にわたって延びる。第1溝部31dは、径方向から見て、ティース31bと重なって配置される。本実施形態では、第1溝部31dが、コア外周面31cにおいて周方向に互いに間隔をあけて複数配置される。ただしこれに限らず、第1溝部31dは、コア外周面31cに1つのみ設けられてもよい。
【0018】
ティース31bは、コアバック31aの内周面から径方向内側に延びる。複数のティース31bは、コアバック31aの内周面に、周方向に互いに間隔をあけて配置される。ティース31bは、ロータ2と径方向に対向する。ティース31bの径方向内側面が、ロータ2のマグネットに径方向外側から隙間をあけて対向する。
【0019】
インシュレータ32は、ステータコア31に装着される。インシュレータ32は、ステータコア31に対して、少なくとも周方向および径方向に移動不能に取り付けられる。インシュレータ32は、ステータコア31に固定される。インシュレータ32の材料は、例えば樹脂などの絶縁材料である。インシュレータ32は、複数のティース31bを覆う部分と、筒部34と、を有する。
【0020】
筒部34は、インシュレータ32のうち、最も軸方向一方側に位置する部分であり、最も径方向外側に位置する部分である。筒部34は、ステータコア31よりも軸方向一方側に延びる。筒部34は、中心軸Jを中心とする筒状である。「筒状」には、円形筒状、多角形筒状が含まれる。本実施形態に示す筒部34は、軸方向に延びる多角形筒状である。筒部34は、4角形以上の多角形筒状である。すなわち、横断面視において、筒部34の外周面は、4つ以上の辺と、4つ以上の角と、を有する。本実施形態では、筒部34が8角形筒状である。横断面視において、筒部34の外周面は、8つの辺と、8つの角と、を有する。
【0021】
筒部34は、横断面視において外周面が多角形状である。筒部34は、横断面視において、外周面の形状が6角形状、8角形状、9角形状、10角形状および12角形状のいずれかである。本実施形態では、横断面視において、筒部34の外周面が、8角形状である。具体的には、横断面視において、筒部34の外周面が正8角形状である。筒部34は、筒部34の軸方向一方側を向く端縁34aが、軸方向から見て多角形状である。本実施形態では、端縁34aが、軸方向から見て8角形状であり、具体的には正8角形状である。筒部34は、筒部34の軸方向一方側を向く端縁34aが、軸方向から見て多角形状である。
【0022】
筒部34は、複数のインシュレータ平面部34bと、第2溝部35と、ピン36と、を有する。複数のインシュレータ平面部34bは、筒部34の外周面において、周方向に並ぶ。各インシュレータ平面部34bは、それぞれ、筒部34の外周面の周方向の一部を構成する。インシュレータ平面部34bは、径方向外側を向く。インシュレータ平面部34bは、径方向と直交する方向に広がる平面状である。径方向から見て、インシュレータ平面部34bは、四角形状である。径方向から見て、インシュレータ平面部34bは、軸方向の長さよりも周方向の長さが大きい長方形状である。
【0023】
インシュレータ平面部34bの数は、コイル33の数と等しい。つまりコイル33の数と、インシュレータ平面部34bの数とは、互いに同じである。本実施形態では、モータ1が8極8スロットであり、つまりコイル33の数が8つであり、筒部34が8角形筒状であり、筒部34の外周面が横断面視で8角形状であり、筒部34の外周面に、インシュレータ平面部34bが周方向に配列して8つ設けられる。本実施形態では、コイル33の数(スロット数)に合わせて、筒部34の外周面の多角形の数を決めている。
【0024】
本実施形態によれば、横断面視において筒部34の外周面を、コイル33の数(スロット数)と同じ辺の数を有する多角形状とすることができる。そして、各コイル33と各インシュレータ平面部34bとを、一対一で配置できる。このため、筒部34の構造を単純化でき、筒部34を作りやすい。
【0025】
第2溝部35は、インシュレータ平面部34bから径方向内側に窪んで軸方向に延びる。第2溝部35は、インシュレータ平面部34bの軸方向の全長にわたって延びる。第2溝部35の軸方向他方側の端部は、第1溝部31dの軸方向一方側の端部と繋がる。つまり第2溝部35は、第1溝部31dと軸方向に繋がる。本実施形態では、第2溝部35が、複数のインシュレータ平面部34bのうち、1つのインシュレータ平面部34bにのみ設けられる。つまり第2溝部35は、筒部34の外周面において1つ設けられる。第2溝部35は、インシュレータ平面部34bの周方向の中央部に配置される。
【0026】
コイル33は、インシュレータ32のティース31bを覆う部分を介して、ティース31bに装着される。複数のコイル33は、インシュレータ32を介して各ティース31bに導線が巻き回されることにより構成される。つまり複数のコイル33は、インシュレータ32を介してステータコア31に装着される。
【0027】
コイル33の数は、6個以上であり、具体的には、6個、8個、9個、10個および12個のいずれかである。本実施形態では、コイル33の数が8個である。本実施形態のように、モータ1が単相モータである場合、コイル33の数が6個(6スロット)以上であると、例えば、単相モータで一般的な4スロットの場合と比べて、コギングを低減できる。ここで、コイル33の数と、インシュレータ平面部34bの数とが互いに等しいことは、上述した通りである。本実施形態では、コイル33の数が多くなるほど、つまりインシュレータ平面部34bの数が多くなるほど、コギングを低減できる。また、コイル33の数が6個(6スロット)、9個(9スロット)および12個(12スロット)と3の倍数である場合は、このモータ1を3相モータに容易に適用できる。
【0028】
回路基板5は、ステータ3と電気的に接続される。回路基板5は、図1に示す配線部材9を介して、図示しない外部電源と電気的に接続される。回路基板5は、外部電源から供給される電力を、ステータ3のコイル33に供給する。回路基板5は、コイル33に供給する電流を制御する。
【0029】
回路基板5は、一対の板面5a,5bが軸方向を向く板状である。回路基板5は、中心軸Jを中心とする環状である。回路基板5は、筒部34の軸方向一方側に配置される。回路基板5は、筒部34の軸方向一方側を向く端縁34aに、軸方向一方側から接触する。
【0030】
回路基板5は、軸方向から見て、回路基板5の基板外周面が多角形状である。回路基板5は、軸方向から見て、回路基板5の基板外周面が円形状でもよい。本実施形態に示す回路基板5の基板外周面は、軸方向から見て、4角形以上の多角形状である。すなわち、軸方向から見て、回路基板5の基板外周面は、4つ以上の辺と、4つ以上の角と、を有する。軸方向から見て、基板外周面の形状は、6角形状、8角形状、9角形状、10角形状および12角形状のいずれかである。本実施形態では、軸方向から見て、基板外周面が、8角形状である。軸方向から見て、基板外周面は、8つの辺と、8つの角と、を有する。具体的に本実施形態では、軸方向から見て、基板外周面が正8角形状である。
【0031】
軸方向から見て、回路基板5の基板外周面と、筒部34の外周面とは、中心軸J回りの略全周にわたって重なる。軸方向から見て、回路基板5の基板外周面の形状と、筒部34の外周面の形状とは、略一致する。軸方向から見て、基板外周面の複数(8つ)の辺部と、筒部34の複数(8つ)のインシュレータ平面部34bとは、互いに重なる。特に図示しないが、軸方向から見て、回路基板5の基板外周面の外接円の直径は、ステータコア31の外径よりも大きい。すなわち、軸方向から見て、基板外周面の複数の角を通り、中心軸Jを中心とする外接円の直径は、コア外周面31cの外径よりも大きい。また、軸方向から見て、回路基板5の基板外周面の内接円は、コア外周面31cと重なる。すなわち、軸方向から見て、基板外周面の複数の辺に接し、中心軸Jを中心とする内接円は、コア外周面31cと略一致する。本実施形態によれば、回路基板5の板面の面積を大きく確保できる。これにより、回路基板5の配線パターンの自由度が高められ、回路基板5の熱上昇が抑えられ、ノイズが抑制される。
【0032】
回路基板5は、シャフト孔5cと、複数の基板角部と、基板凹部5fと、を有する。シャフト孔5cは、軸方向から見て回路基板5の中央部に配置される。シャフト孔5cは、回路基板5を軸方向に貫通する。本実施形態では、シャフト孔5cが円孔状である。シャフト孔5cには、シャフト21が軸方向に挿入される。
【0033】
複数の基板角部は、回路基板5の外周部において、周方向に並ぶ。複数の基板角部は、第1の基板角部5dと、第2の基板角部5eと、を有する。第1の基板角部5dは、筒部34の軸方向一方側を向く端縁34aの複数の角部のうち、ピン36が配置される角部と、軸方向に対向する。
【0034】
第1の基板角部5dは、ピン収容部5gを有する。ピン収容部5gには、ピン36が挿入される。ピン収容部5gは、回路基板5の基板外周面から径方向内側に窪んで軸方向に延びる溝、および、回路基板5を軸方向に貫通する孔のいずれかであり、本実施形態では溝である。第1の基板角部5dは、複数設けられ、ピン収容部5gも、複数設けられる。本実施形態では、第1の基板角部5dが、周方向に等ピッチで4つ設けられ、ピン収容部5gも周方向に等ピッチで4つ設けられる。
【0035】
ピン36は、柱状であり、筒部34の軸方向一方側を向く端縁34aから軸方向一方側に向けて突出する。本実施形態に示すピン36は、軸方向に延びる略円柱状である。ピン36は、軸方向に延びる略角柱状でもよい。ピン36の軸方向の長さは、回路基板5の軸方向の長さ、つまり回路基板5の一対の板面間の長さ(厚さ)よりも大きい。ピン36の先端は、回路基板5の軸方向一方側を向く板面よりも軸方向一方側に突出する。
【0036】
ピン36は、端縁34aの複数の角部のうち、少なくとも1つの角部に配置される。本実施形態では、ピン36が、複数設けられる。複数のピン36は、端縁34aの複数の角部のうち、少なくとも2つの角部にそれぞれ配置される。本実施形態では、端縁34aが軸方向から見て8角形状であり、8つの角部を有する。ピン36は、角部の全数(8つ)のうち、半数(4つ)に配置される。ピン36は、4つの角部に1つずつ配置される。端縁34aにおいて、ピン36が配置される角部と、ピン36が配置されない角部とは、周方向に交互に並ぶ。
【0037】
本実施形態によれば、ピン36がピン収容部5gに挿入されることにより、インシュレータ32と回路基板5とを、径方向および周方向に容易に位置合わせできる。また、ピン36と、ピン36が挿入されるピン収容部5gとの組が、複数設けられることにより、インシュレータ32と回路基板5との、中心軸Jに垂直な仮想の平面に沿うすべての方向での相対移動を抑制することが可能になる。
【0038】
さらに、本実施形態では、図6に示すように、複数のピン36は、その一端(先端)において、径方向外側に広がる幅広部360をそれぞれ有しており、回路基板5の基板外周部において回路基板5の軸方向一方側の板面5aから突出している。なお、インシュレータ32およびピン36は、単一の部材であってもよいし、別部材であってもよい。
【0039】
図7に示すように、幅広部360は、ピン36の先端部分において緩やかな裾広がり形状を有する。図示の例では、幅広部360のうち、回路基板5の板面5aと接していない面が上面となっている。当該上面は、板面5aから突出している。一方、幅広部360のうち、回路基板5の板面5aと接している面が下面となっている。当該下面が回路基板5の板面5aに接触している。本実施形態によれば、回路基板5は、各ピン36の幅広部360によって筒部34の端縁34aに固定されている。すなわち、回路基板5は、インシュレータ32の上に位置決めされた状態で、インシュレータ32に対して動かないように固定されている。
【0040】
ピン36は、熱溶着可能な部材によって構成される。熱溶着可能な部材としては、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂が用いられる。本実施形態によれば、ピン36の幅広部360の下面のうちの少なくとも一部が、回路基板5の軸方向一方側の板面5aに溶着されているため、インシュレータ32と回路基板5との、中心軸Jに垂直な方向の平面に沿うすべての方向での相対移動を確実に抑制することができる。
【0041】
第2の基板角部5eは、筒部34の軸方向一方側を向く端縁34aの複数の角部のうち、ピン36が配置されない角部と、軸方向に対向する。第2の基板角部5eは、複数設けられる。本実施形態では、第2の基板角部5eが、周方向に等ピッチで4つ設けられる。回路基板5の外周部において、第1の基板角部5dと第2の基板角部5eとは、周方向に交互に並ぶ。本実施形態によれば、インシュレータ32に対して回路基板5をより安定して位置合わせできる。また、回路基板5を筒部34により安定的に固定できる。
【0042】
基板凹部5fは、回路基板5の基板外周面から径方向内側に窪む。基板凹部5fは、回路基板5の基板外周面において、軸方向に延びる。基板凹部5fは、基板外周面の軸方向の全長(厚さ全域)にわたって延びる溝状である。基板凹部5fは、基板外周面に1つのみ設けられる。基板凹部5fは、基板外周面の8つの辺部のうち、1つの辺部に配置される。基板凹部5fは、基板外周面の辺部において周方向の中央部に配置される。
【0043】
図1及び図2に示すように、モータケース10には、ロータ2、ステータ3および回路基板5が収容される。さらにモータケース10には、複数のベアリング24,25および配線部材9の一部が収容される。モータケース10は、第1ケース部11と、第2ケース部12と、配線保持部材16と、を備える。モータケース10を構成する部材のうち、少なくとも第1ケース部11は、樹脂製である。本実施形態では、第2ケース部12も樹脂製である。
【0044】
図3に示すように、第1ケース部11には、少なくともロータ2およびステータ3が配置される。さらに第1ケース部11には、回路基板5、ベアリング24、および配線保持部材16の一部が配置される。第1ケース部11は、有底筒状である。第1ケース部11は、周壁部11aと、底壁部11bと、を有する。なお周壁部11aは、第1周壁部11aと言い換えてもよい。さらに第1ケース部11は、複数のケース平面部11cと、コア突き当て部11kと、コア支持部11dと、第1回り止め部11eと、第2回り止め部11fと、環状溝部11gと、第1耳部11iと、ナット部11jと、第1ホルダ支持筒11hと、シャフト通し孔11mと、を有する。
【0045】
周壁部11aは、軸方向に延びる筒状である。本実施形態では、周壁部11aが、軸方向一方側へ向かうにしたがい直径が大きくなるテーパ筒状である。周壁部11aは、円錐筒状の部分と、多角形筒状の部分と、を有する。円錐筒状の部分は、周壁部11aのうち軸方向他方側の端部に位置する。円錐筒状の部分は、底壁部11bと繋がる。多角形筒状の部分は、周壁部11aのうち軸方向他方側の端部以外の部分に位置する。周壁部11aの多角形筒状の部分は、4角形以上の多角形筒状である。本実施形態では、多角形筒状の部分が、8角形筒状である。
【0046】
第1ケース部11は、横断面視において周壁部11aの外周面が多角形状である。具体的には、横断面視において、周壁部11aの多角形筒状の部分の外周面が、多角形状であり、本実施形態では8角形状である。本実施形態によれば、第1ケース部11の外観のデザイン性を高めることができる。
【0047】
第1ケース部11は、横断面視において周壁部11aの内周面が多角形状である。具体的には、横断面視において、周壁部11aの多角形筒状の部分の内周面が、多角形状であり、本実施形態では8角形状である。横断面視において、周壁部11aの外周面と内周面とは、互いに相似形状である。本実施形態によれば、第1ケース部11の周壁部11aの厚さを周方向において一定にすることができ、周方向の全域で周壁部11aの剛性を確保できる。
【0048】
複数のケース平面部11cは、周壁部11aの内周面において、周方向に並ぶ。各ケース平面部11cは、それぞれ、周壁部11aの内周面の周方向の一部を構成する。ケース平面部11cは、周壁部11aのうち多角形筒状の部分の内周面に配置される。ケース平面部11cは、径方向内側を向く。ケース平面部11cは、径方向と交差する方向(略直交する方向)に広がる平面状である。横断面視において、ケース平面部11cは、径方向と直交する方向に延びる。
【0049】
本実施形態では、周壁部11aの多角形筒状の部分が8角形筒状であり、ケース平面部11cの数は8つである。すなわち、ケース平面部11cの数と、インシュレータ平面部34bの数とが、互いに同じである。また、ケース平面部11cの数と、コイル33の数とも、互いに同じである。ケース平面部11cは、径方向において、ステータコア31および筒部34と対向する。具体的には、ケース平面部11cとコア外周面31cとが、径方向に隙間をあけて対向する。ケース平面部11cとインシュレータ平面部34bとが、径方向に隙間をあけて対向する。軸方向から見て、ケース平面部11cとインシュレータ平面部34bとは、互いに平行に配置される。
【0050】
コア突き当て部11kは、周壁部11aの内周面から径方向内側に突出し、ステータコア31に軸方向他方側から接触する。コア突き当て部11kは、軸方向に延びるリブ状である。コア突き当て部11kは、コア突き当て部11kの軸方向一方側を向く端面が、コアバック31aの軸方向他方側を向く面と接触する。コア突き当て部11kは、周壁部11aの内周面において、周方向に互いに間隔をあけて3つ以上配置される。本実施形態では、コア突き当て部11kが、周方向に互いに等間隔をあけて4つ設けられる。コア突き当て部11kは、ケース平面部11cに配置される。コア突き当て部11kは、ケース平面部11cにおいて周方向の中央部に位置する。本実施形態によれば、3つ以上のコア突き当て部11kが、ステータコア31のコアバック31aと軸方向に接触することにより、第1ケース部11に対するステータ3の軸方向の位置が安定して決まる。
【0051】
図3に示すように、コア支持部11dは、周壁部11aの内周面から径方向内側に突出し、コア外周面31cと接触する。すなわち、コア支持部11dの径方向内側面が、コア外周面31cと接触する。コア支持部11dは、軸方向に延びるリブ状である。コア支持部11dが周壁部11aの内周面から径方向内側に突出する高さは、コア突き当て部11kが周壁部11aの内周面から径方向内側に突出する高さよりも小さい。コア支持部11dが周壁部11aの内周面から径方向内側に突出する高さは、軸方向一方側に向かうにしたがい大きくなる。これにより、コア支持部11dは、コア外周面31cの軸方向全長にわたって、コア外周面31cと接触する。
【0052】
コア支持部11dは、周壁部11aの内周面において、周方向に互いに間隔をあけて3つ以上配置される。本実施形態では、コア支持部11dが、周方向に互いに等間隔をあけて4つ設けられる。コア支持部11dの数と、コア突き当て部11kの数とは、互いに同じである。コア支持部11dは、ケース平面部11cに配置される。コア支持部11dは、ケース平面部11cにおいて周方向の中央部に位置する。コア支持部11dの周方向位置と、コア突き当て部11kの周方向位置とは、互いに同じである。コア支持部11dとコア突き当て部11kとは、軸方向に互いに繋がる。
【0053】
第1回り止め部11eは、周壁部11aの内周面から径方向内側に突出し、インシュレータ平面部34bと接触しまたは接触可能に配置される。すなわち、第1回り止め部11eの径方向内側面が、インシュレータ平面部34bと接触しまたは接触可能に対向する。また第1回り止め部11eは、径方向において、回路基板5の基板外周面と対向する。第1回り止め部11eは、基板外周面のうち平面部、つまり軸方向から見て基板外周面の辺部と、径方向に隙間をあけて対向する。第1回り止め部11eは、軸方向に延びるリブ状である。第1回り止め部11eの径方向内側面の径方向位置と、コア支持部11dの径方向内側面の径方向位置とは、互いに同じである。つまり第1回り止め部11eの径方向内側面と、コア支持部11dの径方向内側面とは、径方向の位置に関して互いに面一である。
【0054】
第1回り止め部11eが周壁部11aの内周面から径方向内側に突出する高さは、コア支持部11dが周壁部11aの内周面から径方向内側に突出する高さよりも僅かに大きい。第1回り止め部11eが周壁部11aの内周面から径方向内側に突出する高さは、軸方向一方側に向かうにしたがい大きくなる。これにより、第1回り止め部11eは、インシュレータ平面部34bの軸方向全長にわたって、インシュレータ平面部34bと接触しまたは接触可能に配置される。第1回り止め部11eは、周壁部11aの内周面に少なくとも1つ配置される。
【0055】
本実施形態によれば、第1ケース部11の3つ以上のコア支持部11dが、ステータコア31のコア外周面31cと接触することにより、第1ケース部11とステータ3とが同軸に位置合わせされる。すなわち、3つ以上のコア支持部11dが、コア外周面31cを周方向の一部、つまり「点」でそれぞれ支持する。これにより、樹脂製の第1ケース部11と、ステータ3との相対的な径方向位置が安定して定まり、径方向においてこれらの相対的な位置精度が確保される。また、第1回り止め部11eがインシュレータ平面部34bと接触することにより、第1ケース部11とステータ3との中心軸J回りの相対回転が抑制される。したがって、樹脂製の第1ケース部11を用いてモータ1の製造コストを低減しつつも、モータケース10とステータ3との位置合わせが安定して行え、かつ、モータケース10とステータ3との空転が抑制される。
【0056】
好ましくは、第1回り止め部11eは、周壁部11aの内周面において、周方向に互いに間隔をあけて3つ以上配置される。本実施形態では、第1回り止め部11eが、周方向に互いに等間隔をあけて4つ設けられる。第1回り止め部11eの数と、コア支持部11dの数とは、互いに同じである。第1回り止め部11eは、ケース平面部11cに配置される。第1回り止め部11eは、ケース平面部11cにおいて周方向の中央部に位置する。第1回り止め部11eの周方向位置と、コア支持部11dの周方向位置とは、互いに同じである。第1回り止め部11eとコア支持部11dとは、軸方向に互いに繋がる。
【0057】
本実施形態では、コア支持部11dと第1回り止め部11eとが軸方向に繋がることにより、コア支持部11dと第1回り止め部11eの組が、軸方向に延びる1つのリブとなる。例えば、コア支持部11dと第1回り止め部11eとを第1ケース部11に別々に設ける場合と比べて、本実施形態によれば、第1ケース部11の構造を簡素化できる。さらに本実施形態では、コア突き当て部11kが、コア支持部11dと軸方向に繋がるため、第1ケース部11の構造を簡素化できるという効果がより格別となる。
【0058】
また、第1回り止め部11eがケース平面部11cに配置されるため、第1回り止め部11eが、インシュレータ平面部34bに対してより安定して接触させられる。具体的に本実施形態では、第1回り止め部11eが、横断面視において、インシュレータ平面部34bのうち最も径方向内側に位置する部分と径方向に対向する。すなわち、横断面視において、第1回り止め部11eは、インシュレータ平面部34bの周方向の中央部と、径方向に対向する。本実施形態によれば、第1ケース部11とステータ3との相対回転の許容量をより小さく抑えられ、モータケース10とステータ3との空転をより抑制できる。
【0059】
第2回り止め部11fは、周壁部11aの内周面から径方向内側に突出し、軸方向に延びる。第2回り止め部11fは、軸方向に延びるリブ状である。第2回り止め部11fは、周壁部11aのうち多角形筒状の部分に配置され、多角形筒状の部分の軸方向全長にわたって延びる。第2回り止め部11fは、周壁部11aの内周面に1つ配置される。第2回り止め部11fは、ケース平面部11cに配置される。第2回り止め部11fは、ケース平面部11cにおいて周方向の中央部に配置される。第2回り止め部11fは、ケース平面部11cの軸方向全長にわたって配置される。
【0060】
第2回り止め部11fは、径方向において、ステータコア31、筒部34および回路基板5と対向する。第2回り止め部11fは、径方向において、コア外周面31cと対向する。第2回り止め部11fは、径方向において、インシュレータ平面部34bと対向する。第2回り止め部11fは、回路基板5の基板外周面のうち平面部、つまり軸方向から見て基板外周面の辺部と、径方向において対向する。
【0061】
第2回り止め部11fは、第1溝部31dに挿入される。本実施形態によれば、第2回り止め部11fが第1溝部31dに挿入されることにより、第1ケース部11とステータコア31との中心軸J回りの相対回転がより抑制される。したがって、第1ケース部11とステータ3との空転がより抑制される。
【0062】
第2回り止め部11fは、第2溝部35に挿入される。本実施形態によれば、第2回り止め部11fが第2溝部35に挿入されることにより、第1ケース部11と筒部34との中心軸J回りの相対回転がより抑制される。したがって、第1ケース部11とステータ3との空転がより抑制される。
【0063】
第2回り止め部11fは、基板凹部5fに挿入される。本実施形態によれば、第2回り止め部11fが基板凹部5fに挿入されることにより、第1ケース部11およびステータ3と、回路基板5との周方向の位置合わせを簡単に行うことができる。
【0064】
環状溝部11gは、周壁部11aの軸方向一方側を向く端面から軸方向他方側に窪み、周方向に延びる。環状溝部11gは、中心軸Jを中心とする環状である。
【0065】
第1耳部11iは、周壁部11aの軸方向一方側の端部から径方向外側に突出する。第1耳部11iは、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。第1耳部11iは、第1耳部11iを軸方向に貫通するネジ挿入孔を有する。ナット部11jは、第1耳部11iのネジ挿入孔内に埋め込まれる。
【0066】
底壁部11bは、一対の板面が軸方向を向く板状である。底壁部11bの外周部は、周壁部11aの軸方向他方側の端部、つまり円錐筒状の部分と繋がる。第1ホルダ支持筒11hは、底壁部11bから軸方向一方側に向けて延びる筒状である。
【0067】
シャフト通し孔11mは、底壁部11bを軸方向に貫通する。シャフト通し孔11mには、シャフト21が通される。シャフト21の軸方向他方側の端部は、シャフト通し孔11mを通して、モータ1の外部に露出する。つまりシャフト21は、シャフト通し孔11mよりも軸方向他方側に位置する部分を有する。シャフト21の軸方向他方側の端部には、図示しないファンが固定される。
【0068】
第2ケース部12の軸方向位置と、第1ケース部11の軸方向位置とは、互いに異なる。したがって本実施形態においては、軸方向のうち、第1ケース部11から第2ケース部12へ向かう方向を軸方向一方側(+Z側)と呼んでもよく、第2ケース部12から第1ケース部11へ向かう方向を軸方向他方側(-Z側)と呼んでもよい。第2ケース部12は、第1ケース部11に軸方向一方側から対向し、第1ケース部11と連結される。
【0069】
第2ケース部12には、ベアリング25、配線部材9の一部および配線保持部材16の一部が配置される。第2ケース部12は、有頂筒状である。第2ケース部12は、周壁部12aと、頂壁部12bと、を有する。なお周壁部12aは、第2周壁部12aと言い換えてもよい。さらに第2ケース部12は、押さえリブ部12cと、基板押さえ部12dと、環状リブ部12eと、第2耳部12gと、第2ホルダ支持筒12fと、を有する。
【0070】
周壁部12aは、軸方向に延びる筒状である。本実施形態では、周壁部12aが、略円筒状である。周壁部12aは、軸方向他方側へ向かうにしたがい直径が僅かに大きくなる。押さえリブ部12cは、周壁部12aの内周面から径方向内側に突出し、軸方向に延びる。押さえリブ部12cの軸方向一方側の端部は、頂壁部12bと繋がる。押さえリブ部12cの軸方向他方側の端部は、回路基板5よりも軸方向一方側に位置する。押さえリブ部12cの軸方向他方側の端部は、回路基板5の第2の基板角部5eと軸方向において対向する。押さえリブ部12cは、周壁部12aの内周面に、周方向に互いに間隔をあけて複数配置される。本実施形態では、押さえリブ部12cが、周方向に互いに等間隔をあけて、4つ配置される。押さえリブ部12cは、押さえリブ部12cの軸方向他方側の端部に、基板押さえ部12dを保持する。
【0071】
基板押さえ部12dは、押さえリブ部12cに支持される。基板押さえ部12dは、押さえリブ部12cの軸方向他方側の端部に固定される。本実施形態では、基板押さえ部12dが、有底筒状である。基板押さえ部12dは、基板押さえ部12dの軸方向他方側を向く端面が、中心軸Jに垂直な平面状である。基板押さえ部12dは、回路基板5に軸方向一方側から接触する。基板押さえ部12dは、軸方向から見て、第2の基板角部5eと重なって配置される。基板押さえ部12dの軸方向他方側を向く端面は、第2の基板角部5eと軸方向に接触する。
【0072】
本実施形態によれば、筒部34の端縁34aと基板押さえ部12dとにより、軸方向の両側から回路基板5を押さえて固定できる。ネジ等を用いることなく回路基板5を固定できるので、モータ1の製造工数を削減でき、製造が容易である。また基板押さえ部12dが、回路基板5の外周部に位置する第2の基板角部5eを押さえるので、回路基板5の配線パターンの自由度が良好に維持される。また、基板押さえ部12dが第2の基板角部5eを押さえるので、基板押さえ部12dが第1の基板角部5dを押さえる場合に考えられるピン36との干渉が抑制されて、回路基板5が安定して固定される。
【0073】
基板押さえ部12dは、複数設けられる。本実施形態では、基板押さえ部12dが、周方向に等ピッチで4つ設けられる。基板押さえ部12dの数と、第2の基板角部5eの数とは、互いに同じである。各基板押さえ部12dは、各第2の基板角部5eを軸方向から押さえる。本実施形態によれば、複数の基板押さえ部12dによって、回路基板5をより安定して固定できる。
【0074】
基板押さえ部12dは、ゴム製または樹脂製であり、本実施形態ではゴム製である。本実施形態によれば、基板押さえ部12dが回路基板5に接触しても、回路基板5が傷つきにくい。また、基板押さえ部12dが非金属製のため、例えば金属製のネジ等で回路基板5を固定する場合と比べて、回路基板5のノイズを抑えることができる。
【0075】
環状リブ部12eは、周壁部12aの軸方向他方側を向く端面から軸方向他方側に突出し、周方向に延びる。環状リブ部12eは、中心軸Jを中心とする環状である。環状リブ部12eは、環状溝部11g内に挿入される。
【0076】
第2耳部12gは、周壁部12aの軸方向他方側の端部から径方向外側に突出する。第2耳部12gは、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。第2耳部12gは、第2耳部12gを軸方向に貫通するネジ挿入孔を有する。軸方向から見て、各第2耳部12gと、各第1耳部11iとは、互いに重なって配置される。各第2耳部12gと、各第1耳部11iとは、軸方向において互いに接触する。第2耳部12gのネジ挿入孔および第1耳部11iのネジ挿入孔を通して、締結ネジ7がナット部11jにねじ込まれることにより、第1ケース部11と第2ケース部12とが、互いに固定される。
【0077】
頂壁部12bは、一対の板面が軸方向を向く板状である。頂壁部12bの外周部は、周壁部12aの軸方向一方側の端部と繋がる。第2ホルダ支持筒12fは、頂壁部12bから軸方向他方側に向けて延びる筒状である。
【0078】
配線保持部材16は、径方向に延びる筒状である。配線保持部材16の内部は、モータケース10の内部と外部とに通じる。配線保持部材16は、配線保持部材16の内周面で配線部材9の一部を保持する。配線保持部材16は、軸方向において、第1ケース部11の周壁部11aと第2ケース部12の周壁部12aとの間に配置されて、周壁部11aと周壁部12aとにより保持される。
【0079】
特に図示しないが、配線部材9は、外部電源と電気的に接続される。配線部材9は、回路基板5と電気的に接続される。配線部材9は、外部電源から供給される電力を、回路基板5に供給する。図示を省略するが、配線部材9は、電源用配線と、信号用配線と、接地用配線と、を有する。
【0080】
[モータの製造方法]
本実施形態におけるモータ1の製造方法は、以下の準備工程、載置工程、および溶着工程を含む。以下に、各工程について詳述する。なお、図8-11では、各工程の説明の便宜上、図6に示した第1ケース部11が省略されている。実際には、第1ケース部11の内側にロータ2およびステータ3を配置した状態で、各工程を行う。図示の例のように、第1ケース部11内にロータ2およびステータ3を配置する前、すなわち、第1ケース部11を外した状態で各工程を行ってもよい。
【0081】
(1)準備工程
図8に示すように、インシュレータ32に固定する回路基板5を準備する。筒部34の形状に応じた回路基板5を準備することが好ましい。本実施形態では、筒部34は、軸方向から見て、8角形筒状である。この場合は、軸方向から見て、基板外周面の形状が8角形状を有する回路基板5を準備する。
【0082】
(2)載置工程
インシュレータ32に対して回路基板5を接近させ、回路基板5のシャフト孔5cにシャフト21を挿入するとともに、各ピン36aを各ピン収容部5gに収容し、回路基板5の板面5bを筒部34の端縁34aに載置する。各ピン36aが各ピン収容部5gに収容されることにより、図9に示すように、インシュレータ32と回路基板5とが、径方向および周方向に容易に位置合わせされた状態となる。このように、載置工程を実施すると、各ピン36aの先端は、回路基板5の板面5aから突出した状態となる。
【0083】
(3)溶着工程
回路基板5の位置決めが完了したら、例えば接触式のヒータから構成される加熱部40を用いて、回路基板5の板面5aから突出したピン36aの一端(先端)を加熱し溶融させながら、ピン36aを回路基板5に熱溶着させる。具体的には、図10に示すように、高温状態の加熱部40をピン36aの先端に接触させ、加熱部40とピン36aとが接触した面(界面)がピン36aの融点を超えると、ピン36aの先端側が溶融する。この状態で、加熱部40を下方にむけて押し付けることによって、ピン36aの先端が押し潰されて径方向外側に変形する。
【0084】
ピン36aの先端の変形が進むと、図7に示したピン36のように、ピン36の一端に幅広部360が形成される。図11に示すように、すべてのピン36aの一端に幅広部360がそれぞれ形成される。続いて、幅広部360が冷却されると、幅広部360の下面が回路基板5の板面5aに溶着される。回路基板5は、ピン36を介してインシュレータ32に対して強固に固定される。なお、本実施形態に示す加熱部40は、接触式の加熱治具を用いたが、この構成に限定されることはない。例えば、はんだごて等の冶具でもよい。また、非接触式の加熱装置を用いて、ピン36aの一端を加熱して溶融し、一端に幅広部360を形成してもよい。
【0085】
溶着工程を実施した後、例えば、はんだ付け工程が実施される。はんだ付け工程では、コイルと回路基板5とがはんだ付けによって電気的に接続される。
【0086】
はんだ付け工程を実施する前に、予めに溶着工程を実施しておくことにより、はんだ付けの際に、回路基板5に荷重が加わったとしても、回路基板5がインシュレータ32から外れることがないため、はんだ付けの作業を円滑に行うことが可能となる。その結果、モータの製造効率がより向上する。
【0087】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0088】
1…モータ、2…ロータ、3…ステータ、5…回路基板、5a,5b…板面、5c…シャフト孔、5d…第1の基板角部、5e…第2の基板角部、5f…基板凹部、5g…ピン収容部、10…モータケース、11…第1ケース部、11a…周壁部、11c…ケース平面部、11d…コア支持部、11e…第1回り止め部、11f…第2回り止め部、12…第2ケース部、12d…基板押さえ部、31…ステータコア、31c…コア外周面、31d…第1溝部、32…インシュレータ、33…コイル、34…筒部、34a…端縁、34b…インシュレータ平面部、35…第2溝部、36、36a…ピン、360:幅広部 40…加熱部 J…中心軸

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11