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特許7305414地図データ更新システム、走行プローブ情報収集装置、走行プローブ情報提供装置および走行プローブ情報収集方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】地図データ更新システム、走行プローブ情報収集装置、走行プローブ情報提供装置および走行プローブ情報収集方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20230703BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20230703BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
G09B29/00 C
G09B29/10 A
G08G1/01 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019077686
(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公開番号】P2020177065
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】須藤 修一
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-180980(JP,A)
【文献】特開2012-168796(JP,A)
【文献】特開2008-164824(JP,A)
【文献】特開2019-153128(JP,A)
【文献】特開2018-112838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 29/00-29/14
G08G 1/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載機とサーバ装置とを備えた地図データ更新システムであって、
上記車載機は、
自車両の走行位置および周辺環境のうち少なくとも上記走行位置を検出する検出部と、
上記サーバ装置から送信された更新用の地図データを受信する地図データ受信部と、
上記更新用の地図データを用いて、地図データ記憶部に記憶されている既存の地図データを更新する地図データ更新部と、
上記サーバ装置から送信され、走行プローブ情報の送信が無用な道路区間である送信無用区間の両端点を特定するために必要な情報、および、どの方向が上記送信無用区間に該当するのかを特定するために必要な情報を少なくとも有する区間情報を含む送信停止指示情報を受信する停止情報受信部と、
上記停止情報受信部が上記サーバ装置から上記送信停止指示情報を受信した場合に、上記区間情報に基づいて、上記地図データ記憶部に記憶されている既存の地図データの上記送信無用区間の両端点に対して、上記送信無用区間の両端点であることを示す情報、および、どの方向が送信無用区間であるかを示す方位情報を含むフラグ情報を設定する送信無用区間設定部と、
上記地図データ記憶部に記憶されている地図データを参照して、上記検出部により検出された走行位置に対応する道路区間が、上記検出部により検出された情報を上記走行プローブ情報として送信することが無用な区間か否かを判定し、無用な区間でなければ上記走行プローブ情報を上記サーバ装置に送信し、無用な区間であれば上記走行プローブ情報の送信を停止する走行プローブ情報送信部とを備え、
上記サーバ装置は、
上記走行プローブ情報を受信する走行プローブ情報受信部と、
上記走行プローブ情報受信部により受信された走行プローブ情報に基づいて上記更新用の地図データを生成する更新用地図データ生成部と、
上記更新用地図データ生成部により生成された上記更新用の地図データを上記車載機に送信する地図データ送信部と、
上記走行プローブ情報を用いて生成される上記更新用の地図データに関して、上記更新用の地図データの内容が確定する段階から上記更新用の地図データの上記車載機への送信が行われる段階に至るまでの期間に含まれる所定段階において、上記区間情報を含む上記送信停止指示情報を上記車載機に送信する停止情報送信部とを備えた
ことを特徴とする地図データ更新システム。
【請求項2】
上記走行プローブ情報送信部は、上記停止情報受信部が上記送信停止指示情報を受信した場合には、それ以降、上記送信停止指示情報により示される上記送信無用区間において上記走行プローブ情報の送信を停止することを特徴とする請求項1に記載の地図データ更新システム。
【請求項3】
上記停止情報送信部は、上記更新用の地図データの内容が確定した段階で、上記送信停止指示情報を上記車載機に送信することを特徴とする請求項2に記載の地図データ更新システム。
【請求項4】
上記停止情報送信部は、生成された上記更新用の地図データが所定の精度要件を満たすと判定されたことをもって内容が確定した段階で、上記送信停止指示情報を上記車載機に送信することを特徴とする請求項3に記載の地図データ更新システム。
【請求項5】
上記車載機は、上記地図データ記憶部に記憶されている既存の地図データにより示される自車両の周辺の情報と、上記検出部により検出される自車両の周辺の情報との差分を検出する差分検出部を更に備え、
上記走行プローブ情報送信部は、上記差分検出部により差分が検出された場合に、当該差分が検出された道路区間である差分道路区間の走行プローブ情報を上記サーバ装置に送信するように構成され、
上記地図データ更新部が上記地図データ記憶部に記憶されている既存の地図データを更新する際に、上記送信無用区間を示す情報の設定を解除することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の地図データ更新システム。
【請求項6】
車載機とサーバ装置とを備えた地図データ更新システムであって、
上記車載機は、
自車両の走行位置および周辺環境のうち少なくとも上記走行位置を検出する検出部と、
上記サーバ装置から送信された更新用の地図データを受信する地図データ受信部と、
上記更新用の地図データを用いて、地図データ記憶部に記憶されている既存の地図データを更新する地図データ更新部と、
上記サーバ装置から送信された送信停止指示情報を受信する停止情報受信部と、
上記検出部により検出された走行位置に対応する道路区間が、上記検出部により検出された情報を走行プローブ情報として送信することが無用な区間か否かを判定し、無用な区間でなければ上記走行プローブ情報を上記サーバ装置に送信し、無用な区間であれば上記走行プローブ情報の送信を停止する走行プローブ情報送信部とを備え、
上記サーバ装置は、
上記走行プローブ情報を受信する走行プローブ情報受信部と、
上記走行プローブ情報受信部により受信された走行プローブ情報に基づいて上記更新用の地図データを生成する更新用地図データ生成部と、
上記更新用地図データ生成部により生成された上記更新用の地図データを上記車載機に送信する地図データ送信部と、
上記走行プローブ情報を用いて生成される上記更新用の地図データに関して、その内容が確定する段階から上記車載機への送信が行われる段階に至るまでの期間に含まれる所定段階において、上記更新用の地図データに含まれる道路区間について上記走行プローブ情報の送信の停止を指示する上記送信停止指示情報を上記車載機に送信する停止情報送信部とを備え、
上記車載機は、上記地図データ記憶部に記憶されている既存の地図データにより示される自車両の周辺の情報と、上記検出部により検出される自車両の周辺の情報との差分を検出する差分検出部を更に備え、
上記車載機の上記走行プローブ情報送信部は、上記差分検出部により差分が検出された場合に、当該差分が検出された道路区間である差分道路区間が、上記検出部により検出された情報を上記走行プローブ情報として送信することが無用な区間か否かを上記サーバ装置に問い合わせ、その応答として上記サーバ装置から送信された上記送信停止指示情報を上記停止情報受信部が受信した場合に、上記走行プローブ情報の送信を停止し、
上記サーバ装置の上記更新用地図データ生成部は、上記更新用の地図データに関して、上記更新用の地図データの内容が確定する段階から上記更新用の地図データの上記車載機への送信が行われる段階に至るまでの期間に含まれる所定段階において、サーバ側地図データ記憶部に記憶されている地図データに対して、上記走行プローブ情報の送信が無用な道路区間である送信無用区間を示す情報を設定し、
上記サーバ装置の上記停止情報送信部は、上記車載機からの問い合わせに応じて、上記サーバ側地図データ記憶部に記憶されている地図データを参照して、上記差分道路区間が上記送信無用区間に該当すると判定された場合に、上記送信停止指示情報を上記車載機に送信することを特徴とする地図データ更新システム。
【請求項7】
更新用の地図データを生成するために用いる走行プローブ情報を車載機から収集する走行プローブ情報収集装置であって、
上記車載機において検出された車両の走行位置および周辺環境のうち少なくとも上記走行位置を示す上記走行プローブ情報を上記車載機から受信する走行プローブ情報受信部と、
上記走行プローブ情報受信部により受信された走行プローブ情報に基づいて上記更新用の地図データを生成する更新用地図データ生成部と、
上記更新用地図データ生成部により生成された上記更新用の地図データを上記車載機に送信する地図データ送信部と、
上記走行プローブ情報を用いて生成される上記更新用の地図データに関して、上記更新用の地図データの内容が確定する段階から上記更新用の地図データの上記車載機への送信が行われる段階に至るまでの期間に含まれる所定段階において、走行プローブ情報の送信が無用な道路区間である送信無用区間の両端点を特定するために必要な情報、および、どの方向が上記送信無用区間に該当するのかを特定するために必要な情報を少なくとも有する区間情報を含む送信停止指示情報を上記車載機に送信する停止情報送信部とを備えた
ことを特徴とする走行プローブ情報収集装置。
【請求項8】
更新用の地図データを生成するために用いる走行プローブ情報をサーバ装置に提供する走行プローブ情報提供装置であって、
自車両の走行位置および周辺環境のうち少なくとも上記走行位置を検出する検出部と、
上記サーバ装置から送信された更新用の地図データを受信する地図データ受信部と、
上記更新用の地図データを用いて、地図データ記憶部に記憶されている既存の地図データを更新する地図データ更新部と、
上記サーバ装置から送信され、走行プローブ情報の送信が無用な道路区間である送信無用区間の両端点を特定するために必要な情報、および、どの方向が上記送信無用区間に該当するのかを特定するために必要な情報を少なくとも有する区間情報を含む送信停止指示情報を受信する停止情報受信部と、
上記停止情報受信部が上記サーバ装置から上記送信停止指示情報を受信した場合に、上記区間情報に基づいて、上記地図データ記憶部に記憶されている既存の地図データの上記送信無用区間の両端点に対して、上記送信無用区間の両端点であることを示す情報、および、どの方向が送信無用区間であるかを示す方位情報を含むフラグ情報を設定する送信無用区間設定部と、
上記地図データ記憶部に記憶されている地図データを参照して、上記検出部により検出された走行位置に対応する道路区間が、上記検出部により検出された情報を上記走行プローブ情報として送信することが無用な区間か否かを判定し、無用な区間でなければ上記走行プローブ情報を上記サーバ装置に送信し、無用な区間であれば上記走行プローブ情報の送信を停止する走行プローブ情報送信部とを備えた
ことを特徴とする走行プローブ情報提供装置。
【請求項9】
更新用の地図データを生成するために用いる走行プローブ情報をサーバ装置が車載機から収集する方法であって、
上記サーバ装置の走行プローブ情報受信部が、上記車載機において検出された車両の走行位置および周辺環境のうち少なくとも上記走行位置を示す上記走行プローブ情報を上記車載機から受信するステップと、
上記サーバ装置の更新用地図データ生成部が、上記走行プローブ情報受信部により受信された走行プローブ情報に基づいて上記更新用の地図データを生成するステップと、
上記サーバ装置の地図データ送信部が、上記更新用地図データ生成部により生成された上記更新用の地図データを上記車載機に送信するステップと、
上記サーバ装置の停止情報送信部が、上記走行プローブ情報を用いて生成される上記更新用の地図データに関して、上記更新用の地図データの内容が確定する段階から上記更新用の地図データの上記車載機への送信が行われる段階に至るまでの期間に含まれる所定段階において、走行プローブ情報の送信が無用な道路区間である送信無用区間の両端点を特定するために必要な情報、および、どの方向が上記送信無用区間に該当するのかを特定するために必要な情報を少なくとも有する区間情報を含む送信停止指示情報を上記車載機に送信するステップとを有する
ことを特徴とする走行プローブ情報収集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図データ更新システム、走行プローブ情報収集装置、走行プローブ情報提供装置および走行プローブ情報収集方法に関し、特に、走行中の車両からプローブ情報を収集して地図データの更新を行うシステムに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ナビゲーション装置では、経路探索や走行案内の処理を行うために地図データを使用する。また、自動運転機能を備えた車両において自動運転を行う際にも地図データを使用する。この地図データは、実際の道路を反映して生成される。そのため、新規道路の開通や通行止めの発生など、実際の道路に様々な変化が起きるたびに随時、地図データを更新して最新の状態を保つ必要がある。
【0003】
従来、地図データにおいて道路が存在しない区間を実際に車両が走行した場合に得られる走行プローブ情報に基づいて、地図データの更新を自動的に行うようにした技術が知られている。例えば、車両に搭載された車載機にて検出される走行軌跡等の情報を走行プローブ情報として通信ネットワークを介してサーバ装置にアップロードし、複数の車両から収集される走行プローブ情報に基づいてサーバ装置が新規道路を含む更新用の地図データを生成する。そして、生成した更新用の地図データをサーバ装置から車載機にダウンロードすることにより、車載機に記憶されている地図データを更新する。
【0004】
特に、自動運転をするには、自車両がどこにいるのか、そして周囲にはどのような形状の物体があるのかをセンチメートル単位の精度で把握する必要があるため、高精細な地図データが必要となる。高精細な地図データとは、ナビゲーション装置が経路探索や走行案内を行うために有している通常の道路データのみならず、道路幅、道路中心、区画線、路肩線、道路と道路のつながり、横断歩道、停止線、交通標識、信号機、看板などの様々な情報を含む地図データであり、かつ、それらの情報と実物との位置誤差が小さく精度が高いものをいう。
【0005】
一般に、このように高精細な地図データを生成するために、車両は、GPS受信機や自律航法センサはもちろんのこと、ミリ波レーダや超音波センサ、レーザレーダ(LiDERとも呼ばれる)、光学式カメラなどの各種センサを搭載し、これらの各種センサから得られる情報を走行プローブ情報として車載機からサーバ装置にアップロードする。サーバ装置では、これらの各種情報を含む走行プローブ情報に基づいて、更新用の高精細な地図データを生成し、車載機にダウンロードする。
【0006】
なお、車両がナビゲーション装置の備える地図データに含まれない道路を走行する際の走行軌跡情報をプローブデータとして地図配信センタに送信し、地図配信センタがこのプローブデータを収集して新規道路情報を生成するとともに、新規道路の車両の走行数に基づいて優先順位を設定し、設定された優先順位に従って新規道路情報の報知を行うようにした地図情報配信システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-164824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、地図データを更新して最新の状態を保つためには、車載機からサーバ装置へ走行プローブ情報を随時アップロードする必要がある。しかし、全ての車両から全ての走行分のプローブ情報を随時サーバ装置にアップロードすると、通信量が増大するため、運用コストが上昇するという問題が生じる。特に、自動運転用の高精細な地図データを生成するために用いる走行プローブ情報はデータ量が極めて大きく、通信量も増大する。
【0009】
従来、このような問題に対応するため、新規道路および既存道路を含めて、車載機の地図データにより示される道路および周辺物の情報と、各種センサにより検出される実際の道路および周辺物の情報との差分を検出し、差分を有する道路区間(以下、差分道路区間という)の走行プローブ情報のみをサーバ装置にアップロードするといった対策がとられている。
【0010】
しかしながら、走行プローブ情報をアップロードする対象の車両を、差分道路区間を走行中の車両に限定したとしても、サーバ装置側で収集した走行プローブ情報から更新用の地図データを生成して車載機に配信するまでの間は、差分道路区間を走行する複数の車両の車載機から走行プローブ情報がサーバ装置にアップロードされ続け、その間は通信量が増加してしまう。そのため、走行プローブ情報の通信量を更に削減できるようにすることが望まれる。
【0011】
本発明は、上述のような問題を解決するために成されたものであり、更新用の地図データを生成するために必要な走行プローブ情報の収集に要する通信量を削減することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するために、本発明の地図データ更新システムでは、車載機が、自車両の走行位置および周辺環境のうち少なくとも走行位置を検出し、検出された情報を走行プローブ情報としてサーバ装置に送信する。そして、車載機は、サーバ装置から送られてくる更新用の地図データを用いて、地図データ記憶部に記憶されている既存の地図データを更新する。また、サーバ装置が、車載機から受信した走行プローブ情報に基づいて更新用の地図データを生成し、生成した更新用の地図データを車載機に送信する。このとき、サーバ装置は、走行プローブ情報を用いて生成する更新用の地図データに関して、その内容が確定する段階から車載機への送信が行われる段階に至るまでの期間に含まれる所定段階において、走行プローブ情報の送信が無用な道路区間である送信無用区間の両端点を特定するために必要な情報、および、どの方向が送信無用区間に該当するのかを特定するために必要な情報を少なくとも有する区間情報を含む送信停止指示情報を車載機に送信する。車載機は、この送信停止指示情報を受信した場合、それ以降、送信停止指示情報により示される道路区間において走行プローブ情報の送信を停止する。また本発明の別の態様として、車載機は、既存の地図データにより示される自車両の周辺の情報と、検出部により検出される自車両の周辺の情報との差分を検出する機能を備えており、当該差分を検出した場合に、当該差分を検出した道路区間である差分道路区間が走行プローブ情報として送信することが無用な区間か否かをサーバ装置に問い合わせ、その応答としてサーバ装置から送信された送信停止指示情報を停止情報受信部が受信した場合に、走行プローブ情報の送信を停止する。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成した本発明によれば、サーバ装置において走行プローブ情報に基づいて生成される更新用の地図データの内容が確定する段階から車載機への送信が行われる段階までの間の所定段階に達した後は、車載機からサーバ装置に対する走行プローブ情報の送信が停止される。このため、サーバ装置が車載機から受信した走行プローブ情報に基づいて更新用の地図データを生成して車載機に送信するまでの間ずっと、更新用の地図データの内容が確定した後も車載機からサーバ装置に走行プローブ情報が送信され続けてしまう状態を回避し、無用な走行プローブ情報の送信にかかる無用な通信をなくすことができる。これにより、更新用の地図データを生成するために必要な走行プローブ情報の収集に要する通信量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態による地図データ更新システムの全体構成例を示す図である。
図2】本実施形態による車載機およびサーバ装置の機能構成例を示すブロック図である。
図3】本実施形態の更新用地図データ生成部による更新用地図データの生成手順を示す図である。
図4】既存の地図データに対する送信無用区間の設定例を模式的に示す図である。
図5】車載機からサーバ装置に走行プローブ情報を送信して蓄積する動作例を示すフローチャートである。
図6】走行プローブ情報に基づいて更新用の地図データを生成して地図データの更新を行う動作例を示すフローチャートである。
図7】他の実施形態による車載機およびサーバ装置の機能構成例を示すブロック図である。
図8】車載機からサーバ装置に走行プローブ情報を送信して蓄積する動作例を示すフローチャートである。
図9】走行プローブ情報に基づいて更新用の地図データを生成して地図データの更新を行う動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による地図データ更新システムの全体構成例を示す図である。図1に示すように、本実施形態の地図データ更新システムは、複数の車両に搭載される複数の車載機100と、サーバ装置200とを備えて構成される。車載機100とサーバ装置200との間は、インターネットや携帯電話網などの通信ネットワーク300を介して接続される。車載機100は特許請求の範囲の走行プローブ情報提供装置に相当し、サーバ装置200は特許請求の範囲の走行プローブ情報収集装置に相当する。
【0016】
本実施形態の地図データ更新システムでは、走行中の車両の車載機100からサーバ装置200に走行プローブ情報を送信し、サーバ装置200がこの走行プローブ情報に基づいて更新用の地図データを生成して車載機100に送信することにより、車載機100に記憶されている地図データの更新を行う。これにより、新規道路の開通や車線拡張、通行止めの発生、信号機や看板の新規取り付けまたは変更など、実際の道路またはその周辺環境に何らかの変化が起きたときに、その変化を反映するように地図データを更新し、最新の状態を保つことができるようにしている。
【0017】
図2は、本実施形態による車載機100およびサーバ装置200の機能構成例を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態の車載機100は、記憶媒体として、地図データ記憶部10を備えている。また、本実施形態の車載機100は、機能構成として、検出部11、差分検出部12、走行プローブ情報送信部13、地図データ受信部14、地図データ更新部15、停止情報受信部16および送信無用区間設定部17を備えている。
【0018】
上記各機能ブロック11~17は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック11~17は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0019】
図2に示すように、本実施形態のサーバ装置200は、記憶媒体として、走行プローブ情報記憶部20を備えている。また、本実施形態のサーバ装置200は、機能構成として、走行プローブ情報受信部21、更新用地図データ生成部22、地図データ送信部23および停止情報送信部24を備えている。
【0020】
上記各機能ブロック21~24は、ハードウェア、DSP、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック21~24は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0021】
車載機100の地図データ記憶部10は、地図データを記憶する。本実施形態において、地図データ記憶部10に記憶される地図データは、車両が自動運転をするのに必要な高精細な地図データである。高精細な地図データは、目的地までの走行軌跡を設定するために用いる道路リンク情報およびノード情報の他に、周辺環境および自己位置との関係に基づいて自律的に走行制御を行うために必要となる道路幅、道路中心、区画線、路肩線、横断歩道、停止線、交通標識、信号機、看板などの様々な周辺環境の情報を含んでいる。周辺環境の情報は、どの位置にどのような周辺物があるかを示した情報を含んでいる。
【0022】
検出部11は、自車両の走行位置および周辺環境を検出する。すなわち、検出部11は、車両が搭載しているGPS受信機や自律航法センサから得られる情報に基づいて、自車両の走行位置を検出する。走行位置に関する情報は、例えば、緯度・経度を用いた絶対位置情報、所定サンプリング期間前からの変位を表した相対位置情報である。
【0023】
また、検出部11は、車両が搭載しているミリ波レーダ、超音波センサ、レーザレーダ、光学式カメラなどの各種センサから得られる情報に基づいて、自車両の周辺に存在する様々な物体(道路、区画線、路肩線、横断歩道、停止線、交通標識、信号機、看板など)を自車両の周辺環境として検出する。検出部11は、自車位置から見てどの位置にどのような周辺物があるかを検出する。なお、検出部11が検出する周辺物は、地図データ記憶部10に記憶されている地図データに周辺環境の情報として含まれている周辺物である。
【0024】
検出部11は、この検出処理を所定の時間間隔で繰り返し実行する。これにより、検出部11は、車両の走行中(信号待ちなどで停止中も含む)は随時、自車両の走行位置および周辺環境を検出している。
【0025】
差分検出部12は、地図データ記憶部10に記憶されている既存の地図データにより示される自車両の周辺環境の情報(特許請求の範囲における「自車両の周辺の情報」に相当)と、検出部11により検出された自車両の周辺環境の情報(特許請求の範囲における「自車両の周辺の情報」に相当)との差分を検出する。すなわち、差分検出部12は、検出部11により検出された自車位置の周辺に関する地図データを地図データ記憶部10から読み出し、その読み出した地図データに含まれている周辺環境の情報と、検出部11により検出された周辺環境の情報とを比較し、差分を検出する。差分とは、既存の地図データにはない新たな周辺物の追加、既存の地図データに存在する周辺物の位置や大きさなどの変化、既存の地図データに存在する周辺物の消失などである。差分検出部12は、検出部11と同様、差分検出処理を所定の時間間隔で繰り返し実行する。
【0026】
走行プローブ情報送信部13は、検出部11により検出された走行位置に対応する道路区間が、検出部11により検出された情報(自車両の走行位置および周辺環境に関する情報)を走行プローブ情報としてサーバ装置200に送信することが無用な区間(以下、送信無用区間という)か否かを判定し、送信無用区間でなければ走行プローブ情報をサーバ装置200に送信し、送信無用区間であれば走行プローブ情報の送信を停止する。この走行プローブ情報には、当該走行プローブ情報が検出された車両をユニークに識別可能な識別情報が含まれている。なお、送信無用区間か否かの判定法についての詳細は後述する。
【0027】
本実施形態において、走行プローブ情報送信部13は、差分検出部12により差分が検出された場合に、当該差分が検出された道路区間(以下、差分道路区間という)の走行プローブ情報をサーバ装置200に送信する。差分が検出された道路区間とは、例えば、所定の時間間隔で繰り返し実行されている検出部11および差分検出部12の処理によって差分が検出されている間に車両が走行した区間とする。または、差分が検出されている間に車両が走行した区間を含む道路リンクで特定される区間としてもよい。本実施形態では、差分が生じていない道路区間については車載機100からサーバ装置200に走行プローブ情報を送信しないので、通信量を削減することができる。
【0028】
サーバ装置200の走行プローブ情報受信部21は、車載機100から送信された走行プローブ情報を受信する。走行プローブ情報受信部21は、複数の車載機100から随時送られてくる走行プローブ情報を受信し、走行プローブ情報記憶部20に随時記憶させる。これにより、走行プローブ情報記憶部20には、1以上の差分道路区間における複数の走行プローブ情報が蓄積されていく。
【0029】
更新用地図データ生成部22は、走行プローブ情報受信部21により受信された走行プローブ情報(走行プローブ情報記憶部20に蓄積された走行プローブ情報)に基づいて、更新用の地図データを生成する。すなわち、更新用地図データ生成部22は、走行プローブ情報記憶部20に蓄積された走行プローブ情報が十分な量に達したことを検出すると、その蓄積された走行プローブ情報を用いて更新用の地図データを生成する。十分な量とは、高精細な地図データを生成するのに最低限必要と想定される量であり、例えば、1つの差分道路区間について所定数の走行プローブ情報とすることが可能である。更新用の地図データとは、差分道路区間を含む所定範囲の地図データである。所定範囲は任意に定め得る。例えば、地図データが所定サイズの矩形形状をした区画単位で構成されている場合に、差分道路区間を含む1以上の区画で特定される範囲を所定範囲とするといった態様が考えられる。
【0030】
図3は、更新用地図データ生成部22による更新用地図データの生成手順を示す図である。更新用地図データ生成部22は、走行プローブ情報記憶部20に蓄積された走行プローブ情報が十分な量に達したことを検出すると、その蓄積された走行プローブ情報を用いて、差分道路区間を含む地図データを生成する(ステップS31)。そして、更新用地図データ生成部22は、生成した地図データの合否判定を行う(ステップS32)。この合否判定は、例えば、生成された地図データが所定の精度要件を満たすか否かの判定である。なお、この合否判定の内容(合格と判定するために必要な要件)は、任意に定めることが可能である。
【0031】
ここで、生成された地図データが所定の精度要件を満たさないと判定された場合、更新用地図データ生成部22は、その後さらに走行プローブ情報記憶部20に蓄積された走行プローブ情報を追加して用いて、地図データを生成し直す。そして、生成された地図データが所定の精度要件を満たすと判定された場合、更新用地図データ生成部22は、その地図データを車載機100で使える形態の所定のフォーマットに変換し(ステップS33)、既存の地図データに適切に組み合わることが可能かどうかのデータベース論理検証を行った後(ステップS34)、差分配信用の地図データを生成する(ステップS35)。このようにして生成される差分配信用の地図データが、更新用の地図データである。
【0032】
地図データ送信部23は、更新用地図データ生成部22により生成された更新用の地図データを複数の車載機100に送信する。車載機100の地図データ受信部14は、サーバ装置200から送信された更新用の地図データを受信する。地図データ更新部15は、地図データ受信部14により受信された更新用の地図データを用いて、地図データ記憶部10に記憶されている既存の地図データを更新する。
【0033】
サーバ装置200の停止情報送信部24は、走行プローブ情報を用いて生成される更新用の地図データに関して、その内容が確定する段階から車載機100への送信が行われる段階までの間の所定段階において、更新用の地図データに含まれる差分道路区間について走行プローブ情報の送信の停止を指示する送信停止指示情報を複数の車載機100に送信する。例えば、停止情報送信部24は、更新用地図データ生成部22により生成される更新用の地図データの内容が確定した段階で送信停止指示情報を車載機100に送信する。すなわち、停止情報送信部24は、図3のステップS32において、更新用地図データ生成部22により生成された地図データが所定の精度要件を満たすと判定されたことをもって内容が確定した段階で、送信停止指示情報を車載機100に送信する。
【0034】
図3を用いて説明したように、更新用地図データ生成部22は、ステップS32の合否判定で地図データが所定の精度要件を満たさないと判定されている間は、地図データの生成をやり直すため、更新用の地図データの内容は確定しない。この場合、生成される地図データの精度を上げていくために、サーバ装置200は車載機100から追加の走行プローブ情報を収集することが必要である。
【0035】
一方、ステップS32の合否判定で地図データが所定の精度要件を満たしていると判定されると、更新用地図データ生成部22はステップS33以降の処理を実行し、更新用の地図データを生成する。この場合、更新用地図データ生成部22が走行プローブ情報を用いて地図データを生成し直すことはないため、車載機100から追加の走行プローブ情報を収集することは不要である。従って、停止情報送信部24は、ステップS32において地図データが所定の精度要件を満たすと判定された時点で、送信停止指示情報を車載機100に送信する。
【0036】
送信停止指示情報は、送信無用区間の位置を示す区間情報を含んでいる。送信停止指示情報により示される送信無用区間とは、内容が確定した更新用の地図データに含まれる差分道路区間である。
【0037】
車載機100の停止情報受信部16は、サーバ装置200から送信された送信停止指示情報を受信する。停止情報受信部16が送信停止指示情報を受信した場合、走行プローブ情報送信部13は、それ以降、送信停止指示情報により示される送信無用区間において走行プローブ情報の送信を停止する。この送信無用区間は、送信無用区間設定部17によって、地図データ記憶部10に記憶されている地図データ上に設定される。
【0038】
送信無用区間設定部17は、停止情報受信部16がサーバ装置200から送信停止指示情報を受信した場合に、送信無用区間の位置を示した区間情報に基づいて、地図データ記憶部10に記憶されている既存の地図データに対して、送信無用区間を示す情報を設定する。
【0039】
図4は、既存の地図データに対する送信無用区間の設定例を模式的に示す図である。図4において、RT1,RT2は既存道路であり、その道路データや周辺物のデータ(周辺環境の情報)が地図データ記憶部10に既に記憶されている。RT3は新規道路であり、その道路データや周辺物のデータが地図データ記憶部10にまだ記憶されていない。この新規道路RT3の区間が差分道路区間であり、送信停止指示情報に含まれる区間情報によって示される送信無用区間である。
【0040】
図4に示すように、送信無用区間設定部17は、新規道路RT3の差分道路区間の両端点P1,P2に、送信無用区間の両端点であることを示すフラグ情報を設定する。フラグ情報を設定する両端点P1,P2の位置は、例えば、既存道路RT1,RT2の道路リンク上の緯度・経度情報と、道路リンクの始点からの距離情報とにより特定することができる。なお、既存道路における道路その他の周辺物に変化があった場合に検出された差分道路区間が送信無用区間として設定されるときは、送信無用区間の両端点P1,P2をノードの位置として設定することも可能である。
【0041】
送信無用区間の両端点P1,P2に設定されるフラグ情報には、送信無用区間の両端点P1,P2以外にどの方向が送信無用区間に該当するのかを示した方位情報D1,D2が含まれている。サーバ装置200が送信する送信停止指示情報に含まれる区間情報は、送信無用区間の両端点P1,P2および方位情報D1,D2を特定するために必要な情報を含んでいる。なお、ここに示した送信無用区間の設定方法は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、既存道路において検出された差分道路区間が送信無用区間として設定される場合に、既存道路の道路リンクを送信無用区間として設定するようにしてもよい。
【0042】
車載機100の走行プローブ情報送信部13は、停止情報受信部16により受信された送信停止指示情報により示される送信無用区間において走行プローブ情報の送信を停止する。すなわち、走行プローブ情報送信部13は、検出部11により検出された自車両の走行位置に対応する道路区間が、地図データ記憶部10に記憶されている地図データに設定された送信無用区間に該当するか否かを判定し、該当すると判定された場合に、走行プローブ情報の送信を停止する。
【0043】
このように、本実施形態によれば、ある差分道路区間に関して更新用地図データ生成部22により生成される地図データの内容が図3のステップS32で確定した後、ステップS35において更新用の地図データが生成されて車載機100に送信されるまでの間、その差分道路区間が送信無用区間として設定され、当該送信無用区間においては車載機100からサーバ装置200に対する走行プローブ情報の送信が行われなくなる。これにより、走行プローブ情報の通信量を削減することができる。
【0044】
地図データ更新部15は、地図データ記憶部10に記憶されている既存の地図データを、地図データ受信部14により受信された更新用の地図データによって更新する際に、送信無用区間を示す情報の設定を解除する。これにより、送信無用区間として設定されていた道路区間が地図データの更新によって既存道路の区間となった後に、当該道路区間において何らかの変化が生じた場合には、差分検出部12により差分道路区間として検出され、車載機100からサーバ装置200に走行プローブ情報が送信されるようになる。
【0045】
図5および図6は、以上のように構成した本実施形態による地図データ更新システムの動作例を示すフローチャートである。図5は、車載機100からサーバ装置200に走行プローブ情報を送信して蓄積する動作の内容例を示す。図6は、サーバ装置200に蓄積された走行プローブ情報に基づいて更新用の地図データ生成し、これによって車載機100の地図データを更新する動作の内容例を示す。図5に示す動作と図6に示す動作は並列に実行される。
【0046】
図5において、車載機100の検出部11は、車両が搭載しているGPS受信機や自律航法センサ、ミリ波レーダ、超音波センサ、レーザレーダ、光学式カメラなどの各種センサから得られる情報に基づいて、自車両の走行位置および周辺環境を検出する(ステップS1)。次いで、差分検出部12は、地図データ記憶部10に記憶されている既存の地図データにより示される自車両の周辺環境の情報と、検出部11により検出された自車両の周辺環境の情報とを比較し(ステップS2)、差分が検出されたか否かを判定する(ステップS3)。
【0047】
差分が検出されない場合、処理はステップS1に戻り、自車位置および周辺環境の検出を継続する。一方、差分検出部12により差分が検出された場合、走行プローブ情報送信部13は、ステップS1で検出部11により検出された自車両の走行位置が、地図データ記憶部10に記憶されている地図データに設定された送信無用区間に該当するか否かを判定する(ステップS4)。ここで、送信無用区間に該当すると判定された場合、処理はステップS1に戻り、自車位置および周辺環境の検出を継続する。
【0048】
一方、検出部11により検出された自車位置が送信無用区間に該当しないと判定された場合、走行プローブ情報送信部13は、ステップS1で検出された走行位置および周辺環境に関する情報を走行プローブ情報としてサーバ装置200に送信する(ステップS5)。その後、車載機100は、車両のACC(アクセサリスイッチ)がオフされたか否かを判定し(ステップS6)、オフされていない場合、処理はステップS1に戻り、自車位置および周辺環境の検出を継続する。一方、ACCがオフされた場合、図5のフローチャートに示す車載機100の処理を終了する。
【0049】
上記ステップS5で車載機100から走行プローブ情報が送信されると、サーバ装置200の走行プローブ情報受信部21がこれを受信する(ステップS7)。そして、走行プローブ情報受信部21は、受信した走行プローブ情報を走行プローブ情報記憶部20に記憶する(ステップS8)。サーバ装置200では、車載機100から走行プローブ情報が送信されてくる都度、このステップS7,S8の処理を繰り返し実行する。これにより、走行プローブ情報記憶部20には、複数の走行プローブ情報が蓄積されていく。
【0050】
図6において、走行プローブ情報記憶部20に蓄積された走行プローブ情報が十分な量に達すると、サーバ装置200の更新用地図データ生成部22は、図3に示した手順に従って、差分道路区間を含む更新用の地図データの生成を開始する(ステップS11)。ステップS11の処理は、図3に示したステップS31の処理に相当する。そして、更新用地図データ生成部22は、生成した地図データが所定の精度要件を満たすか否かを判定する(ステップS12)。このステップS12の処理は、図3に示したステップS32の合否判定処理に相当する。
【0051】
ここで、生成した地図データが所定の精度要件を満たしていない場合、処理はステップS11に戻り、走行プローブ情報記憶部20に記憶された追加の走行プローブ情報を更に用いて、差分道路区間を含む地図データを生成し直す。一方、生成した地図データが所定の精度要件を満たすと判定した場合、停止情報送信部24は、差分道路区間について走行プローブ情報の送信の停止を指示する送信停止指示情報を車載機100に送信する(ステップS13)。
【0052】
また、更新用地図データ生成部22は、図3に示したステップS33~S35の処理を行うことにより、更新用の地図データを生成する(ステップS14)。そして、地図データ送信部23は、更新用地図データ生成部22により生成された更新用の地図データを車載機100に送信する(ステップS15)。これにより、ある1つの差分道路区間について更新用の地図データを生成して送信するサーバ装置200の処理が終了する。
【0053】
一方、車載機100では、サーバ装置200から送信停止指示情報を受信したか否かを停止情報受信部16により監視するとともに(ステップS16)、サーバ装置200から更新用の地図データを受信したか否かを地図データ受信部14により監視する(ステップS18)。停止情報受信部16が送信停止指示情報を受信した場合、送信無用区間設定部17は、送信停止指示情報に含まれる送信無用区間の位置を示す区間情報に基づいて、地図データ記憶部10に記憶されている既存の地図データに対して、送信無用区間を示すフラグ情報を設定する(ステップS17)。
【0054】
また、地図データ受信部14が更新用の地図データを受信した場合、地図データ更新部15は、地図データ記憶部10に記憶されている既存の地図データを、地図データ受信部14により受信された更新用の地図データによって更新する(ステップS19)。このとき、地図データ更新部15は、既存の地図データに設定されている送信無用区間を示す情報の設定を解除する。その後、車載機100は、車両のACCがオフされたか否かを判定し(ステップS20)、オフされていない場合、処理はステップS16に戻る。一方、ACCがオフされた場合、図6のフローチャートに示す車載機100の処理を終了する。
【0055】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、サーバ装置200は、走行プローブ情報を用いて生成される更新用の地図データに関して、その内容が確定した段階において、更新用の地図データに含まれる差分道路区間について走行プローブ情報の送信の停止を指示する送信停止指示情報を車載機100に送信する。車載機100は、この送信停止指示情報を受信した場合、それ以降、送信停止指示情報により示される差分道路区間(地図データに設定された送信無用区間)において走行プローブ情報の送信を停止する。
【0056】
このように構成した本実施形態によれば、サーバ装置200において走行プローブ情報に基づいて生成される更新用の地図データの内容が確定した後は、車載機100からサーバ装置200に対する走行プローブ情報の送信が停止される。このため、サーバ装置200が車載機100から受信した走行プローブ情報に基づいて更新用の地図データを生成して車載機100に送信するまでの間ずっと、更新用の地図データの内容が確定した後も車載機100からサーバ装置200に走行プローブ情報が送信され続けてしまう状態を回避し、無用な走行プローブ情報の送信にかかる無用な通信をなくすことができる。これにより、更新用の地図データを生成するために必要な走行プローブ情報の収集に要する通信量を削減することができる。
【0057】
なお、上記実施形態では、停止情報送信部24は、更新用地図データ生成部22により生成される更新用の地図データの内容が確定した段階(図3のステップS32の合否判定で合格した段階)で送信停止指示情報を車載機100に送信する例について説明したが、これに限定されない。例えば、ステップS33のフォーマット変換が完了した段階、またはステップS34のデータベース論理検証が完了した段階の何れかの時点で送信停止指示情報を送信するようにしてもよい。ただし、追加の走行プローブ情報が不要となる段階のできるだけ早い段階で送信停止指示情報を送信するのが好ましい。できるだけ早い段階で送信停止指示情報を送信することで、車載機100からサーバ装置200へ走行プローブ情報が無駄に送信される状態をできるだけ早い段階から回避し、通信量の削減効果を大きくすることができるからである。
【0058】
また、上記実施形態では、検出部11において自車位置および周辺環境(自車位置から見てどの位置にどのような周辺物があるか)を検出した上で、差分検出部12により既存の地図データにより示される情報との差分を検出し、差分道路区間についてのみ走行プローブ情報をサーバ装置200に送信する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、車載機100から差分検出部12を省略し、差分道路区間か否かによらず、各種センサから出力される情報をサーバ装置200に送信し、サーバ装置200において自車位置および周辺環境の検出および差分道路区間の検出を行うようにしてもよい。ただし、差分道路区間についてのみ走行プローブ情報をサーバ装置200に送信することによって通信量を削減することができる点で、上記実施形態のように構成するのが好ましい。
【0059】
また、上記実施形態では、自動運転用の高精細な地図データを処理対象とする例について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、ナビゲーション用の地図データを対象として、上記実施形態を適用することも可能である。この場合、車両が搭載しているGPS受信機や自律航法センサから得られる情報に基づいて自車両の走行位置を検出し、この走行位置情報を走行プローブ情報として用いるようにしてもよい。また、この場合、差分検出部12は、地図データ記憶部10に記憶されている既存の地図データにより示される自車両の周辺の情報として自車位置周辺の道路データを用いる一方、検出部11により検出される自車両の周辺の情報として走行位置に基づく走行軌跡を用い、両者との差分を検出するようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、車載機100が地図データ記憶部10に記憶している地図データに対して送信無用区間の情報を設定し、走行プローブ情報送信部13がこの地図データを参照することによって走行プローブ情報の送信の有無を決定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、サーバ装置200がマスターの地図データを記憶して、このマスターの地図データに対して送信無用区間の情報を設定し、車載機100が差分道路区間を走行中であることが検出された場合に、その差分道路区間が送信無用区間に該当するか否かをサーバ装置200に問い合わせるようにしてもよい。
【0061】
図7は、このように問い合わせを行う場合における車載機100’およびサーバ装置200’の機能構成例を示すブロック図である。なお、この図7において、図2に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。
【0062】
図7に示す構成において、車載機100’は、走行プローブ情報送信部13および停止情報受信部16に代えて走行プローブ情報送信部13’および停止情報受信部16’を備えている。また、車載機100’は、図2に示した送信無用区間設定部17は備えていない。サーバ装置200’は、更新用地図データ生成部22および停止情報送信部24に代えて更新用地図データ生成部22’および停止情報送信部24’を備えるとともに、地図データ記憶部25(特許請求の範囲のサーバ側地図データ記憶部に相当)を備えている。
【0063】
サーバ装置200’の更新用地図データ生成部22’は、走行プローブ情報受信部21により受信された走行プローブ情報(走行プローブ情報記憶部20に蓄積された走行プローブ情報)に基づいて、更新用の地図データを生成する。また、更新用地図データ生成部22’は、生成した更新用の地図データを反映させたマスターの地図データを生成し、地図データ記憶部25に記憶させる。
【0064】
また、更新用地図データ生成部22’は、更新用の地図データの内容が確定する段階から車載機100’への送信が行われる段階までの間の所定段階において、地図データ記憶部25に記憶させた地図データに対して、送信無用区間を示す情報を設定する。例えば、更新用地図データ生成部22’は、ある差分道路区間について生成中である更新用の地図データが所定の精度要件を満たすと判定されたことをもって内容が確定した段階で、その差分道路区間を送信無用区間として設定するための情報を地図データに設定する。
【0065】
車載機100’の走行プローブ情報送信部13’は、差分検出部12により差分が検出された場合に、当該検出された差分道路区間が送信無用区間であるか否かをサーバ装置200’に問い合わせる。この問い合わせには、検出部11により検出された車両の走行位置を示す情報と進行方向を示す情報とが含まれる。これらの情報により、車両が走行している差分道路区間を特定することが可能である。
【0066】
そして、走行プローブ情報送信部13’は、問い合わせに対する応答としてサーバ装置200’から送信された送信停止指示情報を停止情報受信部16’が受信した場合に、走行プローブ情報の送信を停止する。問い合わせに対する応答として停止情報受信部16’が送信停止指示情報を受信していない場合は、走行プローブ情報送信部13’は走行プローブ情報をサーバ装置200’に送信する。
【0067】
サーバ装置200’の停止情報送信部24’は、車載機100’の走行プローブ情報送信部13’から送られてくる問い合わせに応じて、その問い合わせにより示される差分道路区間が、地図データ記憶部25に記憶されている地図データに設定された送信無用区間に該当するか否かを判定し、該当すると判定された場合に送信停止指示情報を車載機100’に送信する。一方、差分道路区間が送信無用区間に該当しないと判定した場合は、その旨を通知する情報を車載機100’に送信する。
【0068】
図8および図9は、図7のように構成した地図データ更新システムの動作例を示すフローチャートである。図8は、車載機100’からサーバ装置200’に走行プローブ情報を送信して蓄積する動作の内容例を示す。図9は、サーバ装置200’に蓄積された走行プローブ情報に基づいて更新用の地図データ生成し、これによって車載機100’の地図データを更新する動作の内容例を示す。図8に示す動作と図9に示す動作は並列に実行される。なお、この図8および図9において、図5および図6に示したフローチャートと同様の処理を行う部分には同一のステップ番号を付し、重複する説明を省略する。
【0069】
図8において、ステップS3において差分検出部12により差分が検出された場合、走行プローブ情報送信部13’は、検出された差分道路区間が送信無用区間であるか否かをサーバ装置200’に問い合わせる(ステップS31)。サーバ装置200’の停止情報送信部24’は、車載機100’から送られてくる問い合わせに応じて、その問い合わせにより示される差分道路区間が、地図データ記憶部25に記憶されている地図データに設定された送信無用区間に該当するか否かを確認し(ステップS32)、その確認結果を車載機100’に送信する(ステップS33)。ここで、停止情報送信部24’は、差分道路区間が送信無用区間に該当すると判定した場合、確認結果として送信停止指示情報を車載機100’に送信する。一方、差分道路区間が送信無用区間に該当しないと判定した場合は、その旨を通知する情報を確認結果として車載機100’に送信する。
【0070】
車載機100’では、問い合わせに対する確認結果をサーバ装置200’から受信し(ステップS34)、その確認結果に基づいて、ステップS1で検出部11により検出された自車両の走行位置に対応する差分道路区間が送信無用区間に該当するか否かを判定する(ステップS35)。ここで、サーバ装置200’から送信停止指示情報が送信された場合は、それが停止情報受信部16’にて受信され、走行プローブ情報送信部13’に供給される。これにより、走行プローブ情報送信部13’は、差分道路区間が送信無用区間に該当すると判定することができる。これ以降のステップS5~S8の処理は、図5と同様である。
【0071】
図9において、更新用地図データ生成部22’は、生成した更新用の地図データが所定の精度要件を満たすと判定した場合(ステップS12:Yes)、その更新用の地図データを生成している差分道路区間を送信無用区間として設定するための情報を地図データに設定する(ステップS41)。それ以外のサーバ装置200’の動作は図6と同様である。一方、車載機100’の動作は、図6に示したステップS16,S17の処理がないこと以外は、図6と同様である。
【0072】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0073】
10 地図データ記憶部
11 検出部
12 差分検出部
13,13’ 走行プローブ情報送信部
14 地図データ受信部
15 地図データ更新部
16,16’ 停止情報受信部
17 送信無用区間設定部
20 走行プローブ情報記憶部
21 走行プローブ情報受信部
22,22’ 更新用地図データ生成部
23 地図データ送信部
24,24’ 停止情報送信部
25 地図データ記憶部
100,100’ 車載機(走行プローブ情報提供装置)
200,200’ サーバ装置(走行プローブ情報収集装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9