(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】品質管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20230703BHJP
E02D 3/02 20060101ALI20230703BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20230703BHJP
E02D 3/061 20060101ALI20230703BHJP
E02D 3/026 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
G06Q50/08
E02D3/02
G05B19/418 Z
E02D3/061
E02D3/026
(21)【出願番号】P 2019098051
(22)【出願日】2019-05-24
【審査請求日】2021-12-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504024597
【氏名又は名称】独立行政法人水資源機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(74)【代理人】
【識別番号】100208524
【氏名又は名称】小曳 満昭
(72)【発明者】
【氏名】坂本 博紀
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘明
(72)【発明者】
【氏名】神戸 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 勝利
【審査官】石田 紀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-102894(JP,A)
【文献】特開2019-002184(JP,A)
【文献】特開2010-249553(JP,A)
【文献】特開2020-176401(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101582198(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
E02D 3/02
G05B 19/418
E02D 3/061
E02D 3/026
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
盛立材料製造装置によって製造されて、運搬機械によって運搬されて締固められ盛立構造物を形成する盛立材料の品質を
区画された複数の締固め対象領域ごとに管理する品質管理システムであって、
品質情報取得部、運搬機械位置取得部、締固め機械位置取得部、締固め情報取得部、及び照合部を備え、
前記盛立材料製造装置は、細粒材と粗粒材を混合して盛立材料を製造するものであって、
前記品質情報取得部は、前記盛立材料製造装置に設けられ、混合後の前記盛立材料の品質情報を取得時刻と共に取得し、
前記盛立材料は、混合後の前記品質情報の取得後、
前記盛立材料製造装置から前記運搬機械に積み込まれ、運搬され、荷下ろしされ
るものであり、
前記運搬機械位置取得部が
、前記盛立材料の積み込み時刻、
前記盛立材料の積み込み位置、及び前記盛立材料の荷下ろし位置である盛立位置情報を取得
し、
前記締固め機械位置取得部
は、締固め機械位置を取得
し、
前記締固め情報取得部
は、締固め情報を取得
し、
前記照合部は、前記盛立材料の前記品質情報の取得時刻と前記盛立材料の積み込み時刻を紐付け、前記盛立材料の前記盛立位置情報と前記締固め機械位置を紐付け、
前記品質情報と前記盛立位置情報及び前記締固め情報とを照合し、
前記照合を
区画された複数の前記締固め対象領域ごとに行う、
品質管理システム。
【請求項2】
前記盛立材料製造装置は、含水比取得部、及び粒度取得部を備え、
前記含水比取得部及び前記粒度取得部は前記盛立材料の含水比及び粒度のそれぞれを連続的に測定する、
請求項
1に記載の品質管理システム。
【請求項3】
前記照合部は、前記運搬機械に設けられた荷重計から得られた積込信号の検知によって前記盛立材料に積み込み時刻を紐付ける、
請求項1
又は2に記載の品質管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運搬されて締固められる盛立材料の品質を管理する品質管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、セメント系材料を管理する材料管理システムが記載されている。材料管理システムは、セメント系材料に関する情報を集中管理する工事事務所に設けられたサーバ装置と、セメント系材料の試験室、プラント、搬送車両、ブルドーザ及び振動ローラのそれぞれに設けられたクライアント装置とを備える。材料管理システムでは、個々の搬送車両によって現場に搬送されたセメント系材料をブルドーザで敷均した後に振動ローラで締固めたものを管理ブロックと見なして管理を行う。
【0003】
材料管理システムでは、上記の管理ブロックごとに、材料投下情報、敷均し転圧情報、品質管理情報、及び材料情報を管理している。材料投下情報は材料の投下位置と投下日時を含んでおり、敷均し転圧情報は敷均し日時、転圧回数及び転圧日時を含んでいる。品質管理情報は物性情報及び試験日時を含んでおり、材料情報は配合情報、計量情報及び製造日時を含んでいる。
【0004】
特許文献2には、土木構造物を管理する建築情報管理装置が記載されている。建築情報管理装置は、CIM(Construction Information Modeling/Management)又はBIM(Building Information Modeling)に用いられるデータを保持するコンピュータである。CIM及びBIMのそれぞれは、土木構造物の三次元モデル及び属性情報等を設計から施工及び維持管理まで統一的に用いるシステムである。
【0005】
建築情報管理装置は、他のコンピュータから三次元モデルの電子ファイルを受信する受信部を有する。受信部は、当該電子ファイルを受信すると、当該電子ファイルのファイル名、ファイルの内容に含まれる文字列、及び当該他のコンピュータにおける電子ファイルの保存場所を示す階層構造、を記憶装置に記憶する。建築情報管理装置は記憶装置に記憶されているファイル名、文字列及び階層構造を検索する検索部を有し、検索部はユーザ等によって入力された検索条件に基づくキーワードを用いて検索を行う。検索部によって三次元モデルのファイルの検索を自動的に行うことにより、三次元モデルのデータ検索の手間の削減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-102894号公報
【文献】特開2017-134760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ダム等で用いられる盛立材料の締固めでは、所望の透水係数を確保するため、盛立材料の含水比及び粒度等の盛立工事の品質管理を適切に行う必要がある。このため、盛立材料は、含水比及び粒度等が調整され、現場に運搬された後に締固めされる。しかしながら、盛立材料の品質管理は、例えばストックパイルから抜き取りで品質検査を行う抜き取り検査が行われているにすぎないという現状がある。すなわち、運搬される大量の盛立材料のほんの一部が抜き取られて品質検査されているため、品質管理の精度が低く品質保証が不十分という現状がある。
【0008】
現場において、盛立材料は、区画された複数の締固め対象領域のいずれかに運搬され、その後敷均されてから締固められる。しかしながら、現状では、どの品質のどの盛立材料がどの締固め対象領域に運搬されたかがトレースできていない。すなわち、運搬、敷均し及び締固めが行われる盛立材料のトレーサビリティが不十分であるため、盛立材料のトレーサビリティの点においても改善の余地がある。
【0009】
前述した材料管理システム及び建築情報管理装置では、材料等の情報を記憶することにより、材料等の情報の管理を行っている。しかしながら、盛立材料の含水比又は粒度等の品質情報、及び盛立材料の現場施工に関する情報の管理が不十分である。すなわち、盛立材料の品質情報の管理が十分になされていないため、盛立工事の品質管理の点において改善の余地がある。
【0010】
本開示は、運搬されて締固められる盛立工事の品質管理の高度化を図ることができ、盛立材料のトレーサビリティを高めることができる品質管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る品質管理システムは、運搬されて締固められ盛立構造物を形成する盛立材料の品質を管理する品質管理システムであって、盛立材料の品質情報を取得するステップと、品質情報の取得後、運搬された盛立材料の盛立位置情報及び締固め情報を取得するステップと、品質情報と盛立位置情報及び締固め情報とを照合するステップと、を備える。
【0012】
この品質管理システムにおいて、盛立材料は運搬されて締固められることによって盛立構造物を形成する材料であって、運搬される前に品質情報が取得される。品質情報が取得された後に、盛立材料は現場に運搬されて締固められる。そして、現場に運搬されて締固められる過程で盛立材料の盛立位置情報及び締固め情報を取得し、運搬される前の盛立材料の品質情報と盛立位置情報及び締固め情報とを照合する。このように、盛立材料の品質情報と盛立位置情報及び締固め情報とを照合することにより、品質情報と盛立位置情報及び締固め情報とを一元管理することができる。また、運搬前に盛立材料の品質情報を連続的に取得することにより、盛立材料の品質情報の全数管理を行うことができるので、品質管理の精度を格段に向上させることができる。更に、品質情報と照合される盛立材料の盛立位置情報及び締固め情報を取得することにより、どの品質の盛立材料がどの締固め対象領域に運搬されてどのように締固められているかをトレースすることができる。従って、運搬前後及び締固めの過程における盛立材料の状態を連続的にトレースすることができるので、締固めの品質を高めると共に締固めを効率よく行うことができる。
【0013】
また、盛立位置情報及び締固め情報を取得するステップでは、盛立材料を締固める締固め機械の位置情報を取得してもよい。この場合、盛立材料を締固める締固め機械の位置情報をトレースすることが可能となるため、盛立材料の締固めの状況をトレースすることができる。従って、盛立材料の締固めを高精度に且つ効率よく行うことができる。
【0014】
また、品質情報を取得するステップでは、盛立材料の含水比を取得してもよい。この場合、品質情報の取得のときに盛立材料の含水比を取得することにより、盛立構造物の透水係数を所望の値に確保することができる。従って、盛立構造物の品質を高めることができると共に、品質が高い盛立構造物を効率よく形成することができる。
【0015】
また、品質情報を取得するステップでは、盛立材料の粒度を取得してもよい。この場合、盛立材料の粒度を取得することにより、盛立構造物の透水係数をより確実に所望の値にすることができる。従って、盛立構造物の施工の品質を更に高めることができる。
【0016】
また、盛立材料の品質情報を取得した後に、盛立材料を運搬する運搬機械の位置情報を取得してもよい。この場合、盛立材料の品質情報を取得した後に運搬機械の位置情報を取得することによって、品質情報を取得した後の盛立材料の位置をトレースすることができる。
【0017】
また、盛立材料を運搬する運搬機械の位置情報を取得した後に、盛立位置情報として、区画された複数の締固め対象領域のどの領域に盛立材料が運搬されたかを取得してもよい。この場合、運搬機械による盛立材料の運搬時の位置情報と、運搬された盛立材料がどの締固め対象領域に荷下ろしされたかに関する盛立位置情報との両方を把握することができる。従って、盛立材料を運搬する運搬機械の位置情報と締固め対象領域とを照合することにより、盛立材料の運搬、荷下ろし及び締固めの一連の情報をトレースすることができる。よって、盛立材料のトレーサビリティを更に高めることができる。
【0018】
また、盛立位置情報及び締固め情報を取得するステップでは、区画された複数の締固め対象領域のそれぞれの転圧回数と、各締固め対象領域の盛立面の剛性と、を取得してもよい。この場合、盛立材料に対する転圧回数と盛立面の剛性とを取得することにより、締固めにおける盛立材料の状態をより高精度に取得することができる。更に、締固め時における盛立材料のトレーサビリティを高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、運搬されて締固められる盛立工事の品質管理の高度化を図ることができ、盛立材料のトレーサビリティを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態に係る品質管理システムが適用される現場の例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る品質管理システムの機能の例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る品質管理方法の工程の例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図3の品質管理方法の結果得られた管理テーブルの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る品質管理システムの実施形態について詳細に説明する。図面において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解を容易にするため、一部を簡略化又は誇張して描いており、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0022】
本明細書において、「盛立材料」は、運搬されて締固められると共に構造物を形成する材料を示している。「盛立構造物」は、盛立材料によって形成される構造物を示している。盛立材料の「品質情報」とは、盛立構造物の遮水性等の品質に関する情報を示しており、例えば、盛立材料の含水比及び粒度に関する情報を含む。「盛立位置情報」とは、盛立材料の位置の情報を示しており、例えば、運搬される盛立材料の位置、及び締固められる盛立材料の位置、を含んでいる。
【0023】
「締固め情報」とは、盛立材料の締固めに関する情報を示しており、例えば、締固め回数(転圧回数)、締固めエネルギー、盛立面の剛性、及び盛立面の高さを含んでいる。「盛立位置情報と締固め情報を照合する」とは、盛立材料の盛立位置情報と締固め情報とを取得し、当該盛立位置情報と当該締固め情報とを紐付けること、更には、締固め情報を取得し、当該盛立位置情報と当該締固め情報とを紐付けて記憶することを示している。
【0024】
図1は、実施形態に係る品質管理システム1が適用される現場Aの一例を模式的に示す図である。
図2は、実施形態に係る品質管理システム1の機能を示すブロック図である。なお、品質管理システム1のブロック図は、あくまで一例であって、品質管理システム1の機能は
図2に示されるブロック図に限定されない。例えば、品質管理システム1は、盛立材料Mの品質情報の統合管理を行う統合管理システムである。
【0025】
例えば、
図1に示される現場Aでは盛立材料Mが運搬されて締固められる。一例として、盛立材料Mは、中央遮水壁型のロックフィルダムの遮水壁として用いられる。本実施形態では、一例として、ロックフィルダムの遮水壁が盛立構造物に相当する。ロックフィルダムは、例えば、遮水壁と、遮水壁の両側に位置するフィルタ層と、フィルタ層の更に両側に位置するロック層と、を備えている。遮水壁は、コア部と称される部位であり、高い遮水性を有する粘性土となっている。フィルタ層は遮水壁を両側から支える砂又は砂利の層であり、ロック層はフィルタ層を両側から支える岩石の層である。
【0026】
例えば、ロックフィルダムにおいて、遮水壁を構成する盛立材料Mでは、高い遮水性能が求められるため、盛立材料Mの品質は厳しく管理されることが望ましい。盛立材料Mの品質の中でも、特に盛立材料Mの含水比及び粒度に関する情報は重要である。一例として、本実施形態では、含水比及び粒度を調整しつつ盛立材料Mを製造する盛立材料製造装置10が用いられる。なお、盛立材料製造装置10の構成は、後述の例に限られず適宜変更可能である。
【0027】
例えば、盛立材料製造装置10では、細粒材及び粗粒材の混合と、細粒材及び粗粒材の含水比の調整と、が行われる。盛立材料製造装置10は、細粒材及び粗粒材が供給されるホッパ11と、ホッパ11に供給された細粒材及び粗粒材を搬送するコンベア12と、細粒材及び粗粒材を撹拌するミキサ13と、を備える。盛立材料製造装置10は、盛立材料M(細粒材及び粗粒材)への加水及び減水の少なくともいずれかを行う含水比調整装置を備えていてもよい。
【0028】
一例として、コンベア12は、盛立材料Mの搬送方向に沿って斜め上方に延びており、斜め上方に細粒材及び粗粒材を搬送する。ミキサ13は、例えば、コンベア12の上端から斜め下方に延びており、斜め下方に落下する細粒材及び粗粒材を撹拌する。一例としてのミキサ13は、全体として筒状を呈しており、ミキサ13の内部に細粒材及び粗粒材を流通可能となっている。ミキサ13は、例えば、複数の筒体13bを備えており、複数の筒体13bが互いに異なる方向に回転可能に連結されている。複数の筒体13bのうち、一の筒体13bが隣接する他の筒体13bの反対方向に回転することにより、筒体13bの内部において細粒材及び粗粒材の撹拌混合及び均一化を促進させることが可能となっている。
【0029】
以上のようにミキサ13において撹拌混合された盛立材料Mは、ミキサ13の下方に排出される。排出された盛立材料Mは、盛立材料Mを運搬する運搬機械2によって、例えば、ロックフィルダムを構築する盛土領域Dに運搬されて遮水壁として用いられる。運搬機械2は、例えば、ダンプトラックである。なお、以上のコンベア12及びミキサ13の構成は前述した例に限られず適宜変更可能である。
【0030】
盛土領域Dでは、敷均し機械3によって運搬された盛立材料Mを敷均し、その後、締固め機械4で盛立材料Mを転圧することによって盛立材料Mの締固めを行う。例えば、敷均し機械3はブルドーザを含んでおり、締固め機械4は振動ローラ4bを含む。敷均し機械3で敷均された直後の盛立材料Mは空気と水分を多く含んでいるので柔らかい状態となっている。しかしながら、締固め機械4の転圧で盛立材料Mの空気を減らすことにより、盛立材料Mが所望の固さとなるように締固められる。
【0031】
締固め機械4は、例えば、略円柱状を成す前述の振動ローラ4bと、振動ローラ4bに取り付けられた起振装置とを備えていてもよく、起振装置で振動ローラ4bを振動させながら盛土領域D上を移動してもよい。この場合、締固め機械4を盛土領域D上で移動させると、締固め機械4の自重及び振動ローラ4bの振動によって盛土領域D上の盛立材料Mが効果的に締固められる。
【0032】
盛土領域Dは、例えば、四角形状(一例として正方形状)の複数の締固め対象領域D1(締固め管理ブロック)に区画されて、締固め対象領域D1ごとに盛立材料Mが十分に締固められた否かが判定される。盛土領域Dの複数の締固め対象領域D1において、締固め機械4は、盛土領域Dを複数回転圧して盛土領域Dの締固めを行う。盛土領域Dは更に高さ方向(後述するZ方向)に区画されていてもよい。
【0033】
盛土領域Dの締固めでは、盛土領域D全体における満遍ない転圧を複数回繰り返してもよいし、盛土領域Dの一部における転圧を複数回繰り返した後に盛土領域Dの他の箇所における転圧を複数回繰り返してもよい。盛土領域Dの各締固め対象領域D1は、例えば、XYZ座標系を有する。例えば、X方向及びY方向は、水平方向であると共に互いに交差する方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0034】
図1及び
図2に示されるように、盛立材料製造装置10は、例えば、盛立材料M(細粒材及び粗粒材)の含水比を取得する含水比取得部16、及び盛立材料Mの粒度を取得する粒度取得部17を備える。含水比取得部16及び粒度取得部17は、例えば、品質管理システム1の品質情報取得部15を構成する。例えば、含水比取得部16及び粒度取得部17はホッパ11とコンベア12の間に設けられており、ホッパ11からコンベア12に供給される盛立材料Mの含水比及び粒度のそれぞれを連続的に測定する。なお、盛立材料製造装置10は、盛立材料M(細粒材及び粗粒材)への加水及び減水のいずれかを行う含水比調整装置を備えていてもよい。この場合、盛立材料製造装置10の盛立材料Mの出口に含水比取得部16が設けられることが好ましい。また、粒度取得部17は、盛立材料製造装置10の盛立材料Mの出口に設けられることが好ましい。
【0035】
含水比取得部16は、例えば、近赤外線センサ等の赤外線含水比測定装置であり、細粒材及び粗粒材のそれぞれに赤外線を照射し、当該赤外線の照射による細粒材及び粗粒材からの反射赤外線を検出することによって、細粒材及び粗粒材の含水比をリアルタイムで測定する。例えば、含水比取得部16は、近赤外線によって盛立材料Mの含水比をモニタリングする。このように、含水比取得部16では、非接触で細粒材及び粗粒材の含水比を測定することが可能となっている。
【0036】
粒度取得部17は、例えば、盛立材料Mを撮影し、盛立材料Mの撮影画像から盛立材料Mの粒度を測定する。一例として、粒度取得部17は、搬送される盛立材料Mの画像から盛立材料Mの粒度をモニタリングする。以上のように、品質情報取得部15(含水比取得部16及び粒度取得部17)では、搬送される盛立材料Mの品質情報を連続的に測定する連続監視を行う。
【0037】
品質管理システム1は、例えば、前述した品質情報取得部15と、制御部20と、盛立位置情報取得部30と、締固め情報取得部40と、表示部50とを備える。制御部20は、一例として、サーバに設けられており、品質情報取得部15、盛立位置情報取得部30、締固め情報取得部40及び表示部50のそれぞれと通信可能とされている。品質情報取得部15(含水比取得部16及び粒度取得部17)によって取得された含水比及び粒度を含む品質情報は、品質情報取得部15から制御部20にリアルタイムで送信される。
【0038】
制御部20が設けられるサーバは、例えば、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等を実行するプロセッサ(例えばCPU)と、ROM及びRAM等によって構成される主記憶部と、ハードディスク又はフラッシュメモリ等で構成される補助記憶部と、ネットワークカード又は無線通信モジュールで構成される通信制御部と、キーボード又はマウス等の入力装置と、モニタ等の出力装置とを備える。
【0039】
制御部20のサーバの各機能要素は、プロセッサ又は主記憶部に所定のソフトウェアを読み込ませて当該ソフトウェアを実行することによって実現される。プロセッサは、当該ソフトウェアに従って、前述した通信制御部、入力装置又は出力装置を動作させ、主記憶部又は補助記憶部におけるデータの読み出し及び書き出しを行う。サーバの処理に必要なデータ又はデータベースは主記憶部又は補助記憶部に格納される。
【0040】
表示部50は、パーソナルコンピュータ又はノートパソコン等の情報端末のディスプレイ、及び、携帯電話又はタブレット等の携帯端末のディスプレイを含んでいる。制御部20は、例えば、盛立材料Mの品質情報を照合する照合部21と、受信した各種情報を記憶する記憶部22と、記憶部22に記憶されている各種情報の表示部50への表示制御を行う表示制御部23とを備える。
【0041】
盛立位置情報取得部30は、例えば、各工程(ステップ)における盛立材料Mの位置情報を取得する。一例として、盛立位置情報取得部30は、盛立材料Mを運搬する運搬機械2の位置を取得する運搬機械位置取得部31と、敷均し機械3の位置を取得する敷均し機械位置取得部32と、締固め機械4の位置を取得する締固め機械位置取得部33とを備える。運搬機械位置取得部31が取得した運搬機械2の位置、敷均し機械位置取得部32が取得した敷均し機械3の位置、及び締固め機械位置取得部33が取得した締固め機械4の位置、はそれぞれ制御部20にリアルタイムに送信される。
【0042】
運搬機械位置取得部31は、例えば、GPS衛星から電波を受信して運搬機械2の位置を取得するGPS受信装置である。この場合、運搬機械位置取得部31は、運搬機械2に取り付けられたGPS用のアンテナを含んでおり、このアンテナでGPS衛星からの電波を受信すると、受信した電波を復調して情報を取り出す。
【0043】
例えば、運搬機械位置取得部31は、受信されている各GPS衛星の情報を用いて運搬機械2の位置情報(緯度及び経度等)を算出し、算出した運搬機械2の位置情報を制御部20に送信する。運搬機械2がダンプトラックである場合、荷下ろし位置(例えば、どの締固め対象領域D1に盛立材料Mが荷下ろしされたか)が算出される。また、盛立材料Mがストックパイル方式で運搬される場合には、運搬機械位置取得部31は、運搬機械2の位置情報と併せて盛立材料Mのストックパイルの位置情報(例えば、複数のストックパイルのうちどのストックパイルに運搬されたか)を取得してもよい。
【0044】
敷均し機械位置取得部32及び締固め機械位置取得部33のそれぞれは、運搬機械位置取得部31と同様、GPS受信装置であってもよい。この場合、運搬機械位置取得部31、敷均し機械位置取得部32及び締固め機械位置取得部33は、運搬機械2、敷均し機械3及び締固め機械4のそれぞれのGPSトレーサビリティを行う。例えば、敷均し機械位置取得部32は、ブルドーザの履帯の中央の位置を取得してもよいし、ブルドーザの高さ位置を取得してもよい。締固め機械位置取得部33は、例えば、振動ローラ4bの接地部分4cの位置を取得してもよいし、振動ローラ4bの高さ位置を取得してもよい。
【0045】
敷均し機械位置取得部32が取得した敷均し機械3の位置情報、及び締固め機械位置取得部33が取得した締固め機械4の位置情報は、それぞれ制御部20にリアルタイムに送信される。なお、運搬機械位置取得部31、敷均し機械位置取得部32及び締固め機械位置取得部33のそれぞれは、GPS受信装置でなくてもよく、例えば、トータルステーション等、他の機器であってもよい。
【0046】
締固め情報取得部40は、例えば、GNSS(Global NavigationSatellite System:全球測位衛星システム)を用いて複数の締固め対象領域D1のそれぞれの締固め度合をリアルタイムで取得する。一例として、締固め情報取得部40は、各締固め対象領域D1のCEL(Compaction Energy Level:締固めエネルギー)を取得する。また、締固め情報取得部40は、例えば、CCV(Compaction Control Value:地盤反力データ)によって各締固め対象領域D1の剛性を取得してもよい。
【0047】
締固め情報取得部40は、例えば、盛土領域Dを複数の締固め対象領域D1に区画して、締固め対象領域D1ごとに盛立材料Mが十分に締固められたか否かの情報を取得してもよい。締固め情報取得部40は、締固め対象領域D1ごとに、転圧による盛立材料Mの沈下量を算出すると共に盛立材料Mが十分に締固められたか否かを判定してもよい。以下では、締固め情報取得部40の構成の例について説明する。
【0048】
締固め情報取得部40は、転圧回数取得部41と、盛立面形状取得部42と、盛立面剛性取得部43と、を備える。転圧回数取得部41は、締固め機械4の移動経路から、締固め対象領域D1ごとに締固め機械4の転圧回数を算出してもよい。この場合、転圧回数取得部41は、例えば、締固め機械4が締固め対象領域D1を形成する各頂点(x1,y1)、(x1,y2)、(x2,y1)、(x2,y2)に1回ずつ到達したときに当該締固め対象領域D1の転圧回数を1加算してもよい。このように、転圧回数取得部41は、複数の締固め対象領域D1のそれぞれに対して転圧回数を取得し、転圧回数取得部41が取得した転圧回数はリアルタイムで制御部20に送信される。
【0049】
盛立面形状取得部42は、例えば、締固め対象領域D1における盛立面Sの3次元データを測定する。なお、盛立面形状取得部42は盛立面Sの2次元データを取得してもよい。盛立面形状取得部42は、締固め機械4が盛土領域D全体を1回移動して転圧を行った後に盛立面Sの3次元データを取得してもよいし、盛土領域Dの一部の転圧が繰り返される度に盛立面Sの3次元データを取得してもよい。この場合、盛立面形状取得部42が検出した締固め対象領域D1ごとの3次元データはリアルタイムで制御部20に送信される。また、盛立面形状取得部42は、各締固め対象領域D1の盛立材料Mの層厚を走査し、走査した層厚を制御部20に連続的に送信してもよい。
【0050】
例えば、制御部20は、転圧回数取得部41から受信した転圧回数、及び盛立面形状取得部42から受信した3次元データを用いて、各締固め対象領域D1における盛立材料M(盛立面S)の高さを算出してもよい。また、制御部20は、締固め対象領域D1ごとに、転圧回数と盛立材料Mの高さと盛立材料Mの沈下量との関係を示す締固め管理テーブル等を作成してもよい。
【0051】
盛立面剛性取得部43は、例えば、締固め機械4の振動ローラ4bの振動加速度を検出する加速度計であって、振動加速度から各締固め対象領域D1の盛立面Sの剛性を取得する。盛立面剛性取得部43は、転圧と同時に盛立面Sの剛性を取得してもよいし、所定回数の転圧後に盛立面Sの剛性を取得してもよい。一例として、盛立面剛性取得部43は、転圧後に、締固めの度合を示す指標であるCCV(Compaction Control Value)によって地盤剛性評価値を取得してもよい。盛立面剛性取得部43が取得した盛立面Sの剛性はリアルタイムで制御部20に送信される。
【0052】
制御部20は、品質情報取得部15から受信した盛立材料Mの品質情報、盛立位置情報取得部30から受信した盛立材料Mの盛立位置情報、及び締固め情報取得部40から受信した盛立材料Mの締固め情報を記憶及び統合する。照合部21は、制御部20が受信した盛立材料Mの含水比、粒度、運搬機械2の位置、敷均し機械3の位置、締固め機械4の位置、転圧回数、盛立面Sの形状、及び盛立面Sの剛性を照合する。記憶部22は、制御部20が受信した上記の各情報を記憶する。
【0053】
照合部21は、例えば、時刻記録部21bを備える。時刻記録部21bは、含水比取得部16による盛立材料Mの含水比の取得、及び粒度取得部17による盛立材料Mの粒度の取得と共に、含水比の取得時刻、及び粒度の取得時刻を記憶部22に記録する。すなわち、時刻記録部21bは、盛立材料Mの含水比の測定時刻、及び盛立材料Mの粒度の測定時刻、のそれぞれを記憶部22に記録する。
【0054】
例えば、時刻記録部21bは、運搬機械2への盛立材料Mの積み込み時刻、及び、運搬機械2からの盛立材料Mの荷下ろし時刻を記憶部22に記録する。更に、時刻記録部21bは、敷均し機械3による盛立材料Mの敷均し開始時刻、敷均し機械3による盛立材料Mの敷均し終了時刻、締固め機械4による締固め開始時刻、及び締固め機械4による締固め終了時刻、のそれぞれを記憶部22に記録してもよい。例えば、時刻記録部21bによる敷均し開始時刻、敷均し終了時刻、締固め開始時刻及び締固め終了時刻の記録は、締固め対象領域D1ごとに行われる。
【0055】
表示制御部23は、制御部20が受信した上記の各情報の表示部50への表示制御を行う。表示制御部23は、例えば、盛土領域Dの各締固め対象領域D1における盛立面Sの剛性評価値マップを表示部50に表示する。盛立面Sの剛性評価値マップは、一例として、盛立面剛性取得部43によって取得された締固め対象領域D1ごとの盛立面Sの剛性を地図と共に示したマップである。このように、表示制御部23が表示部50に剛性評価値マップを表示することにより、盛立面Sの均質性に関する情報を容易に把握することが可能となる。
【0056】
例えば、表示制御部23は、盛土領域Dの各締固め対象領域D1における転圧回数を地図と共に示した転圧回数マップを表示部50に表示してもよい。また、表示制御部23は、盛立材料Mの含水比及び粒度と、GNSSによる盛立材料Mの盛立位置情報と、盛立材料Mの締固め後の盛立面Sの剛性と、を表示部50にリアルタイムに表示してもよい。そして、制御部20は、盛立材料Mの粒度及び含水比と、盛立位置情報と、盛立面Sの剛性とをCIM(Construction Information Modeling)に保存してもよい。この場合、盛立材料Mの品質情報、盛立位置情報及び施工情報のトレーサビリティを行うと共にこれらの情報を一元管理することが可能となる。
【0057】
次に、実施形態に係る盛立材料Mの品質管理方法の各ステップの例について
図3を参照しながら説明する。なお、
図3に示されるフローチャートはあくまで例示であって品質管理方法のステップの内容及び順序は適宜変更される。まず、
図1及び
図3に示されるように、ホッパ11に盛立材料Mが投入されると、含水比取得部16が盛立材料Mの含水比を取得すると共に、時刻記録部21bが含水比の取得時刻を記憶部22に記録する(含水比を取得するステップ、ステップS1)。
【0058】
このとき、例えば近赤外線センサである含水比取得部16が盛立材料Mの含水比を測定すると共に、測定した盛立材料Mの含水比が制御部20に送信される。そして、盛立材料Mの含水比と含水比測定時刻が記憶部22に記録される。また、粒度取得部17が盛立材料Mの粒度を取得すると共に、時刻記録部21bが粒度の取得時刻を記憶部22に記録する(粒度を取得するステップ、ステップS2)。
【0059】
粒度取得部17は、例えば、盛立材料Mの画像から盛立材料Mの粒度を測定し、測定した盛立材料Mの粒度は制御部20に送信される。そして、制御部20に送信された盛立材料Mの粒度及び粒度測定時刻が記憶部22に記録される。なお、前述した含水比を取得するステップと、粒度を取得するステップの順序は、例えば上記の逆であってもよく、特に限定されない。
【0060】
そして、盛立材料Mは、コンベア12及びミキサ13を経て搬送及び混合撹拌された後、運搬機械2によって盛土領域Dに運搬される。運搬機械2の位置は運搬機械位置取得部31によって随時制御部20に送信されており、例えば、運搬機械位置取得部31は運搬機械2の積み込み位置を取得する。運搬機械位置取得部31が取得した盛立材料Mの積み込み位置は制御部20に送信され、例えば、積み込み位置と共に時刻記録部21bが盛立材料Mの積み込み時刻を記憶部22に記録する(積み込み時刻を取得するステップ、ステップS3)。
【0061】
運搬機械2が盛立材料Mの運搬を開始した後も、運搬機械2の位置は運搬機械位置取得部31によって制御部20に連続的に送信されており、これにより、盛立材料Mを運搬する運搬機械2の位置をリアルタイムで取得する(運搬機械の位置を取得するステップ、ステップS4)。
【0062】
運搬機械2が盛立材料Mを盛土領域Dに運搬して盛立材料Mを荷下ろしした後には、運搬機械位置取得部31が運搬機械2の荷下ろし位置を取得する。例えば、運搬機械位置取得部31は、盛立材料Mが盛土領域Dのどの締固め対象領域D1に下ろされたか(盛立材料Mが下ろされた盛立位置情報)を取得し、取得した盛立材料Mの締固め対象領域D1を制御部20に送信する(盛立位置情報を取得するステップ、ステップS5)。そして、時刻記録部21bは、例えば、荷下ろし位置と共に盛立材料Mの荷下ろし時刻を記憶部22に記録する(荷下ろし時刻を取得するステップ、ステップS6)。
【0063】
例えば、敷均し機械3が盛土領域Dの盛立材料Mを敷均しているときに、盛土領域Dにおける敷均し機械3の位置が敷均し機械位置取得部32によって取得される。また、締固め機械4が盛土領域Dの盛立材料Mを締固めているときに、盛土領域Dにおける締固め機械4の位置は締固め機械位置取得部33によって取得される。
【0064】
そして、転圧回数取得部41は、例えば、締固め機械位置取得部33によって取得された締固め機械4の移動経路から、各締固め対象領域D1の転圧回数を取得する(転圧回数を取得するステップ、ステップS7)。また、盛立面形状取得部42が各締固め対象領域D1の盛立面Sの形状を2次元データ又は3次元データとして取得し、盛立面剛性取得部43が各締固め対象領域D1の盛立面Sの剛性を取得する(盛立面の形状及び剛性を取得するステップ、ステップS8)。
【0065】
以上の各ステップを経て、締固め機械4による盛土領域Dの締固めが完了した後に一通りのステップが完了する。なお、転圧回数を取得するステップ、盛立面Sの形状を取得するステップ、及び盛立面Sの剛性を取得するステップの順序は、上記の例に限定されず、適宜変更可能である。
【0066】
以下では、含水比取得部16が取得する盛立材料Mの含水比、及び粒度取得部17が取得する盛立材料Mの粒度を含む品質情報と、盛立位置情報及び締固め情報との照合の例についてより詳細に説明する。例えば、照合部21は、含水比取得部16が盛立材料Mの含水比を取得した含水比取得時刻、及び粒度取得部17が盛立材料Mの粒度を取得した粒度取得時刻、のそれぞれを品質情報取得時刻T1として、品質情報が取得された盛立材料Mに紐付ける。
【0067】
次に、照合部21は、盛立材料Mが仮置きされる場合には、例えば、ストックパイル形成時刻T21及びストックパイル位置情報R21を、品質情報が取得された盛立材料Mに紐付ける。一方、照合部21は、盛立材料Mが直接積み込みされる場合には、例えば、直接積み込み位置情報R22を、品質情報が取得された盛立材料Mに紐付ける。続いて、照合部21は、盛立材料Mが運搬機械2に積み込まれるときに、例えば、運搬機械2に設けられた荷重計から得られた積込信号の検知等によって、運搬機械位置情報R3及び積込時刻情報T3を、品質情報が取得された盛立材料Mに紐付ける。
【0068】
そして、照合部21は、盛立材料Mを荷下ろしするときに、例えば、運搬機械2の荷重計から得られた荷下ろし信号の検知等によって、荷下ろし位置情報R4及び荷下ろし時刻情報T4を、品質情報が取得された盛立材料Mに紐付ける。その後、照合部21は、盛立材料Mの敷均し及び締固めにおいて、敷均し機械3及び締固め機械4のそれぞれの位置から得られる盛立材料Mの敷均し時刻情報T5及び締固め時刻情報T6を、品質情報が取得された盛立材料Mに紐付ける。更に、照合部21は、加速度センサ等から得られる締固め品質情報Q(例えば盛立面Sの形状及び剛性)を、品質情報が取得された盛立材料Mに紐付ける。
【0069】
照合部21が以上のように機能する場合、品質情報が取得された盛立材料Mに、品質情報取得時刻T1、ストックパイル形成時刻T21及びストックパイル位置情報R21又は直接積み込み位置情報R22、運搬機械位置情報R3及び積込時刻情報T3、荷下ろし位置情報R4及び荷下ろし時刻情報T4、敷均し時刻情報T5及び締固め時刻情報T6、並びに、締固め品質情報Qが紐付けられる。従って、品質情報が取得された盛立材料Mに対し、ストックパイルへの仮置き等から積み込み、運搬、荷下ろし、敷均し及び締固めまでの一連のステップにおける情報を一元的に紐付けることができる。なお、品質情報が取得された盛立材料Mの各種情報は、ICチップ又はICタグによって管理されてもよい。このように、品質情報が取得された盛立材料Mに各ステップの情報を紐付けることができるので、盛立材料Mの製造から施工までのトレーサビリティを高精度に行うことができる。
【0070】
以上のように、本実施形態に係る品質管理方法では、盛立材料Mの製造、運搬及び締固めの各ステップにおいて制御部20が盛立材料Mの情報を受信することにより、盛立材料Mのトレーサビリティが高められている。
【0071】
図4は、制御部20が得た盛立材料Mの情報から表示制御部23が生成した盛立材料Mのデータを示す表の一例である。
図4に示される表は、例えば、表示制御部23によって表示部50に表示される。この表では、盛立材料Mの含水比、粒度、含水比測定時刻、粒度測定時刻、盛立材料Mの積み込み時刻、盛立材料Mの荷下ろし時刻、盛立材料Mの盛立位置情報、盛立材料Mの盛立面Sの転圧回数、及び盛立材料Mの盛立面Sの剛性が一元管理されている。
【0072】
なお、表示制御部23によって表示部50に表示されるデータは、
図4に示される表に限られない。例えば、前述した転圧回数マップ、及び盛立面Sの剛性評価値マップを含む盛立材料Mの締固め情報を示すマップ、運搬機械2、敷均し機械3及び締固め機械4の位置を示すマップ等を表示制御部23が表示部50に表示してもよい。このように、表示部50に表示される盛立材料Mの品質情報のデータ、盛立位置情報のデータ、及び締固め情報のデータの表示態様は適宜変更可能である。
【0073】
続いて、本実施形態に係る品質管理システム1から得られる作用効果について詳細に説明する。
図1及び
図2に示されるように、品質管理システム1において、盛立材料Mは運搬されて締固められることによってロックフィルダムの遮水壁を形成する材料であって、運搬される前に含水比及び粒度を含む品質情報が取得される。品質情報を取得した後に、盛立材料Mは盛土領域Dに運搬されて締固められる。そして、盛土領域Dに運搬されて締固められる過程で盛立材料Mの盛立位置情報及び締固め情報を照合部21が照合する。このように、盛立材料Mの品質情報と盛立位置情報及び締固め情報とを照合することにより、品質情報と盛立位置情報及び締固め情報とを一元管理することができる。
【0074】
また、運搬前に盛立材料Mの品質情報を連続的に取得することにより、盛立材料Mの品質情報の全数管理を行うことができるので、品質管理の精度を格段に向上させることができる。更に、品質情報と照合される盛立材料Mの盛立位置情報及び締固め情報を取得することにより、どの品質の盛立材料Mがどの締固め対象領域D1に運搬されてどのように締固められているかをトレースすることができる。従って、運搬前後及び締固めの過程における盛立材料Mの状態を連続的にトレースすることができるので、締固めの品質を高めると共に締固めを効率よく行うことができる。
【0075】
本実施形態において、盛立位置情報及び締固め情報を取得するステップは、運搬されて荷下ろしされる盛立材料Mの位置情報を取得することを含む。よって、運搬されて荷下ろしされる盛立材料Mの位置情報、すなわち、運搬する過程における盛立材料Mの位置情報を取得することにより、運搬時における盛立位置情報をより高精度に取得することができる。従って、盛立材料Mのトレーサビリティを高めることができる。
【0076】
本実施形態において、盛立位置情報及び締固め情報を取得するステップでは、盛立材料Mを締固める締固め機械4の位置情報を取得する。よって、盛立材料Mを締固める締固め機械4の位置情報をトレースすることが可能となるため、盛立材料Mの締固めの状況をトレースすることができる。従って、盛立材料Mの締固めを高精度に且つ効率よく行うことができる。
【0077】
本実施形態において、品質情報を取得するステップでは、盛立材料Mの含水比を取得する。よって、品質情報の取得のときに盛立材料Mの含水比を取得することにより、ロックフィルダムの遮水壁の透水係数を所望の値に確保することができる。従って、遮水壁の品質を高めることができると共に、品質が高い遮水壁を効率よく形成することができる。
【0078】
本実施形態において、品質情報を取得するステップでは、盛立材料Mの粒度を取得することを含んでいる。よって、盛立材料Mの粒度を取得することにより、ロックフィルダムの遮水壁の透水係数をより確実に所望の値にすることができる。従って、遮水壁の施工の品質を更に高めることができる。
【0079】
本実施形態において、盛立材料Mの品質情報を取得した後に、盛立材料Mを運搬する運搬機械2の位置情報を取得する。従って、盛立材料Mの品質情報を取得した後に運搬機械2の位置情報を取得することによって、品質情報を取得した後の盛立材料Mの位置をトレースすることができる。
【0080】
本実施形態において、盛立材料Mを運搬する運搬機械2の位置情報を取得した後に、盛立位置情報として、区画された複数の締固め対象領域D1のどの領域に盛立材料Mが運搬されたかを取得する。よって、運搬機械2による盛立材料Mの運搬時の位置情報と、運搬された盛立材料Mがどの締固め対象領域D1に荷下ろしされたかに関する盛立位置情報との両方を把握することができる。従って、盛立材料Mを運搬する運搬機械2の位置情報と締固め対象領域D1とを照合することにより、盛立材料Mの運搬、荷下ろし及び締固めの一連の情報をトレースすることができる。よって、盛立材料Mのトレーサビリティを更に高めることができる。
【0081】
本実施形態において、盛立位置情報及び締固め情報を取得するステップでは、区画された複数の締固め対象領域D1のそれぞれの転圧回数と、各締固め対象領域D1の盛立面Sの剛性と、を取得する。すなわち、盛立材料Mに対する転圧回数と盛立面Sの剛性と、を取得する。よって、盛立材料Mに対する転圧回数と盛立面Sの剛性とを取得することにより、締固めにおける盛立材料Mの状態をより高精度に取得することができる。更に、締固め時における盛立材料Mのトレーサビリティを高めることができる。
【0082】
更に、本実施形態において、制御部20は、盛立材料Mの含水比、粒度及びCEL(現場締固めエネルギー)を連続的に受信する。盛立材料Mの含水比、粒度及びCELは、締固められる盛立材料Mの性能を規定する重要な3要素である。この3要素を制御部20が連続的に受信することにより、表示部50から含水比、粒度及びCELの連続管理記録をリアルタイムで確認することができる。また、上記の3要素を全量管理に近い形で管理することにより、締固め後に求められる盛立材料Mの強度、密度、遮水性及び対沈下性等を全量管理することが可能となる。
【0083】
また、本実施形態では、制御部20が各種管理記録をCIMに取り込むことによって盛立材料Mの締固めに関する施工情報のトレーサビリティを強化することができる。更に、制御部20は、表示部50に転圧後の盛立材料Mの盛立面Sの地盤剛性指標の記録(統計処理記録又はマップ等)を表示することにより、盛立面Sの均質性に関する情報の確認が可能となる。
【0084】
以上、本開示に係る品質管理システムの実施形態について説明した。しかしながら、本発明に係る品質管理システムは、前述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、品質管理システムの各部の構成、並びに、工程の内容及び順序は、各請求項の要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0085】
例えば、前述の実施形態では、盛立材料Mの品質情報として含水比と粒度を取得する例について説明した。しかしながら、盛立材料の品質情報は、含水比及び粒度のいずれかのみであってもよいし、含水比及び粒度以外の情報であってもよい。例えば、盛立材料の品質情報は、盛立材料の透水係数等を含んでいてもよい。
【0086】
また、前述の実施形態では、締固め情報取得部40がCCVによって各締固め対象領域D1の剛性を取得する例について説明した。しかしながら、各締固め対象領域の剛性を取得する手段は、CCVに限られず適宜変更可能である。更に、前述の実施形態では、運搬機械位置取得部31が運搬機械2の位置を取得することによって、盛立材料Mの盛立位置情報を取得する例について説明した。しかしながら、例えば、盛立材料MにIC(Integrated Circuit)チップを埋め込み、埋め込んだICチップを介して盛立材料Mの盛立位置情報を取得してもよい。このように、盛立材料Mの盛立位置情報を取得する手段は適宜変更可能である。
【0087】
また、前述の実施形態では、運搬機械位置取得部31、敷均し機械位置取得部32及び締固め機械位置取得部33がGPS衛星から電波を受信して位置を取得するGPS受信装置である例について説明した。しかしながら、運搬機械位置取得部、敷均し機械位置取得部及び締固め機械位置取得部は、GPS以外の手段によって位置を取得してもよく、運搬機械、敷均し機械及び締固め機械のそれぞれの位置を取得する手段は適宜変更可能である。
【0088】
また、前述の実施形態では、運搬機械位置取得部31、敷均し機械位置取得部32及び締固め機械位置取得部33を有する盛立位置情報取得部30、並びに、転圧回数取得部41、盛立面形状取得部42及び盛立面剛性取得部43を有する締固め情報取得部40、について例示した。しかしながら、運搬機械位置取得部、敷均し機械位置取得部、締固め機械位置取得部、転圧回数取得部、盛立面形状取得部及び盛立面剛性取得部の構成及び機能は前述の例に限られず適宜変更可能である。
【0089】
また、運搬機械位置取得部、敷均し機械位置取得部、締固め機械位置取得部、転圧回数取得部、盛立面形状取得部及び盛立面剛性取得部の少なくともいずれかが省略されてもよい。更に、盛立位置情報取得部及び締固め情報取得部の構成及び機能についても前述の例に限られず適宜変更可能である。
【0090】
また、前述の実施形態では、照合部21、記憶部22及び表示制御部23を有する制御部20を備えた品質管理システム1について例示した。しかしながら、品質管理システムの制御部の照合部、記憶部及び表示制御部の構成は、上記の例に限られず適宜変更可能である。更に、品質管理システムの制御部の構成についても、上記の例に限られず適宜変更可能である。
【0091】
また、前述の実施形態では、ホッパ11、コンベア12及びミキサ13を備える盛立材料製造装置10によって製造される盛立材料Mの品質情報を取得する例について説明した。しかしながら、盛立材料製造装置はホッパ11、コンベア12及びミキサ13の少なくともいずれかを備えていないものであってもよく、盛立材料製造装置の構成は適宜変更可能である。また、本発明に係る品質管理システムは、盛立材料製造装置によって製造されていない盛立材料に対しても適用可能である。
【0092】
また、前述の実施形態では、細粒材及び粗粒材を含む盛立材料Mについて例示した。しかしながら、盛立材料の種類は、細粒材及び粗粒材を含むものに限られず適宜変更可能である。更に、前述の実施形態では、盛立構造物がロックフィルダムの遮水壁である例について説明した。しかしながら、本発明に係る品質管理システムは、ロックフィルダムの遮水壁以外の盛立構造物に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
1…品質管理システム、2…運搬機械、3…敷均し機械、4…締固め機械、4b…振動ローラ、4c…接地部分、10…盛立材料製造装置、11…ホッパ、12…コンベア、13…ミキサ、13b…筒体、15…品質情報取得部、16…含水比取得部、17…粒度取得部、20…制御部、21…照合部、21b…時刻記録部、22…記憶部、23…表示制御部、30…盛立位置情報取得部、31…運搬機械位置取得部、32…敷均し機械位置取得部、33…締固め機械位置取得部、40…締固め情報取得部、41…転圧回数取得部、42…盛立面形状取得部、43…盛立面剛性取得部、50…表示部、A…現場、D…盛土領域、D1…締固め対象領域、M…盛立材料、S…盛立面。