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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】撹拌脱泡機及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/00 20060101AFI20230703BHJP
   B01F 29/10 20220101ALI20230703BHJP
   B01F 29/31 20220101ALI20230703BHJP
【FI】
B01D19/00 102
B01F29/10
B01F29/31
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019125833
(22)【出願日】2019-07-05
(65)【公開番号】P2021010871
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000162180
【氏名又は名称】共立精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】岡田 全博
(72)【発明者】
【氏名】石渡 光平
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-243158(JP,A)
【文献】特開2001-304386(JP,A)
【文献】特開2011-092912(JP,A)
【文献】特開平07-275604(JP,A)
【文献】特開2016-151288(JP,A)
【文献】特開2013-244475(JP,A)
【文献】特許第6388992(JP,B1)
【文献】特開2017-080645(JP,A)
【文献】特許第2711964(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00-19/04
B01F 29/00-33/87
B04B 1/00-15/12
B01F 35/00-35/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、前記支持体に取り付けられた単一の駆動モータと、前記支持体に対して回転可能に支持されたロータと、前記ロータの公転軸に対して傾斜した自転軸で前記ロータに対して回転可能に支持されたカップホルダと、前記駆動モータの駆動力を前記ロータ及び前記カップホルダに伝達する動力伝達機構とを備えた撹拌脱泡機において、
前記動力伝達機構に組み込まれていて前記ロータの回転速度と前記カップホルダの回転速度の比率を設定する無段変速機と、前記無段変速機を制御する制御モータからなるアクチュエータとを有し、該アクチュエータが予め設定された制御プログラムに基づいて前記無段変速機を制御することを特徴とする撹拌脱泡機。
【請求項2】
前記アクチュエータがステッピングモータ又はサーボモータであることを特徴とする請求項1に記載の撹拌脱泡機。
【請求項3】
前記ロータの回転速度を読み取るための第一のセンサと前記カップホルダの回転速度を読み取るための第二のセンサとを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の撹拌脱泡機。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の撹拌脱泡機を使用し、前記撹拌脱泡機の運転中において前記アクチュエータが前記制御プログラムに基づいて前記無段変速機を制御することにより前記比率を複数回にわたって連続的に又は断続的に変更することを特徴とする撹拌脱泡機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌脱泡機及びその制御方法に関し、更に詳しくは、運転中において公転軸と自転軸の回転速度の比率を自在に変更することを可能にした撹拌脱泡機及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撹拌脱泡機において、効率的な撹拌脱泡を行うためには運転中に自転と公転の回転比率を変える必要がある。これに対して、従来の撹拌脱泡機では、自転用及び公転用の2つの駆動モータを備えることにより回転数の変更を可能にしていた。しかしながら、このような撹拌脱泡機では、運転中に各駆動モータが互いに干渉して回生力が発生することがあり、この回生力によってエラーが生じるという問題がある。更には、自転用と公転用の駆動モータが互いに抑制し合ってしまい、2つの駆動モータを使用しているにもかかわらず駆動力が小さく、大半は熱エネルギーに変換されてしまうため、効率的でない。
【0003】
これに対して、1つの駆動モータと無段変速機を備えた撹拌脱泡機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。上述した特許文献1に記載の撹拌脱泡機によれば、電力の無駄を少なくしつつ、自転速度と公転速度の回転速度比を変えることができるが、上記撹拌脱泡機では手動式の無段変速機が用いられており、運転中における細かな設定条件の変更に対応して公転及び自転させることは難しく、被混練物の撹拌や脱泡に対して効率的な運転を行うには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-243158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、運転中において公転軸と自転軸の回転速度の比率を自在に変更することを可能にした撹拌脱泡機及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の撹拌脱泡機は、支持体と、前記支持体に取り付けられた単一の駆動モータと、前記支持体に対して回転可能に支持されたロータと、前記ロータの公転軸に対して傾斜した自転軸で前記ロータに対して回転可能に支持されたカップホルダと、前記駆動モータの駆動力を前記ロータ及び前記カップホルダに伝達する動力伝達機構とを備えた撹拌脱泡機において、前記動力伝達機構に組み込まれていて前記ロータの回転速度と前記カップホルダの回転速度の比率を設定する無段変速機と、前記無段変速機を制御する制御モータからなるアクチュエータとを有し、該アクチュエータが予め設定された制御プログラムに基づいて前記無段変速機を制御することを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の撹拌脱泡機の制御方法は、上述した撹拌脱泡機を使用し、前記撹拌脱泡機の運転中において前記アクチュエータが前記制御プログラムに基づいて前記無段変速機を制御することにより前記比率を複数回にわたって連続的に又は断続的に変更することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、支持体と、支持体に取り付けられた単一の駆動モータと、支持体に対して回転可能に支持されたロータと、ロータの公転軸に対して傾斜した自転軸でロータに対して回転可能に支持されたカップホルダと、駆動モータの駆動力をロータ及びカップホルダに伝達する動力伝達機構とを備えた撹拌脱泡機において、動力伝達機構に組み込まれていてロータの回転速度とカップホルダの回転速度の比率を設定する無段変速機と、無段変速機を制御するアクチュエータとを有しているので、ロータの回転速度とカップホルダの回転速度の比率を自在に変更することができる。特に、無段変速機の制御をアクチュエータにより自動化することで、運転中において公転と自転の回転速度を迅速かつ正確に設定することができる。また、運転中において複数回の設定変更を容易に行うことができ、細かな設定条件に対応することができる。これにより、運転中における被混練物の発熱を抑えることができ、被混練物に対する悪影響を抑制することができる。これに対して、無段変速機に対してアクチュエータが取り付けられていない場合(無段変速機の制御が手動式の場合)、運転中に設定条件を変更する作業は煩雑であり、瞬時に所望の回転速度に設定することも困難である。
【0009】
本発明の撹拌脱泡機において、アクチュエータはステッピングモータ又はサーボモータに代表される制御モータであることが好ましい。アクチュエータとして上述した制御モータを用いた場合、制御モータは無段変速機を構成するプーリに対して位置決め機能を有し、同じ設定条件で繰り返し制御することが可能となり、被混練物の撹拌や脱泡に対してより効率的な運転を行うことができる。これに対して、制御モータが位置決め機能を有しない場合(例えば、制御モータとしてインダクションモータを用いた場合)、同じ回転速度で繰り返し回転させることができない。
【0010】
ロータの回転速度を読み取るための第一のセンサとカップホルダの回転速度を読み取るための第二のセンサとを有することが好ましい。このようにロータとカップホルダの両方の回転速度をセンサにより検知することで、回転速度を表示すると共に、回転速度を補正することが可能になる。
【0011】
また、本発明の制御方法において、予めアクチュエータに所定の制御プログラムを登録し、撹拌脱泡機の運転中にアクチュエータは制御プログラムに基づいて無段変速機を制御することにより上記比率を設定することが好ましい。これにより、事前に登録した比率に基づいて精度の高い運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態からなる撹拌脱泡機を示す断面図である。
図2図1の撹拌脱泡機をII-II矢視で示す平面図である。
図3図1の撹拌脱泡機をIII-III矢視で示す平面図である。
図4】(a)~(f)はそれぞれ本発明の実施形態からなる撹拌脱泡機を用いた場合の運転例を示すグラフである。
図5】本発明の実施形態からなる撹拌脱泡機の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1図3は本発明の実施形態からなる撹拌脱泡機を示すものである。なお、図面に関しては、構成が分かり易いように寸法を変化させており、各部材の厚さや幅、長さ等の比率と、実際に製造するものの比率とは必ずしも一致させていない。
【0014】
図1図3に示すように、撹拌脱泡機1は、有底筒状に形成された架台フレーム2と該架台フレーム2の上部において開閉自在に構成された蓋部3とを備えている。この架台フレーム2の内部には、複数の連結部材4を介して平板状の支持体5が水平に保持されている。この支持体5には、ロータ6がその中心軸を鉛直方向にして回転可能に支持され、単一の駆動モータ7が取り付けられている。
【0015】
支持体5には、鉛直方向に延びる複数本の支持部材5aと、各支持部材5aの両端に接合された板材5bと、支持部材5aの下端に接合された板材5bを架台フレーム2の底部に固定する固定部材5cとが設けられている。支持部材5aの上端に接合された板材5bは連結部材4を介して架台フレーム2に固定されている。
【0016】
連結部材4は、一端が架台フレーム2に連結され、他端が支持部材5aの上端に接合された板材5bに連結されている。連結部材4は、例えば円環状を有する金属製のワイヤにより構成することができ、連結部材4としてバネを用いた場合に比べて耐久性の観点で優れている。
【0017】
駆動モータ7は回転駆動する駆動軸7aを有している。駆動モータ7の駆動力は、動力伝達機構10を介してロータ6及び有底筒状のカップホルダ8に伝達される。これにより、ロータ6が中心軸(公転軸X)の廻りに回転し、少なくとも一つのカップホルダ8が中心軸(自転軸Y)の廻りに回転する。カップホルダ8の自転軸Yは、ロータ6の公転軸Xに対して傾斜している。
【0018】
動力伝達機構10は、駆動モータ7に設けられた駆動軸7aの回転をロータ6に伝達する公転伝達手段20aと、公転伝達手段20aを介して伝達された回転をカップホルダ8に伝達する自転伝達手段30aとを有している。この自転伝達手段30aには、ロータ6の回転速度とカップホルダ8の回転速度の比率を設定する無段変速機11と、無段変速機11を制御するアクチュエータ12とが組み込まれている。ここでは、アクチュエータ12として制御モータ12aが使用されている。
【0019】
公転伝達手段20aは、公転用伝達軸21、公転用プーリP1,P2及びベルトV1からなる。具体的に、公転伝達手段20aは、駆動軸7aに設けられた公転用プーリP1と、一端がロータ6に接続されて他端が無段変速機11に接続された公転用伝達軸21と、公転用伝達軸21の延在方向の中央部に設けられた公転用プーリP2と、公転用プーリP1と公転用プーリP2との間に架け渡されたベルトV1とを有している。公転用伝達軸21は支持体5及び支持部材5aの上端に接合された板材5bを貫通し、ロータ6と一体的に回転する。駆動モータ7の駆動軸7aの回転は、公転用伝達軸21、公転用プーリP1,P2及びベルトV1を介してロータ6に伝達される。
【0020】
自転伝達手段30aは、無段変速機11、自転用伝達軸31,32、自転用プーリP3~P9及びベルトV2~V4からなる。具体的に、自転伝達手段30aは、制御モータ12aにより制御される無段変速機11と、自転用伝達軸31に配設されて一体的に回転する自転用プーリP3と、一端が無段変速機11に接続されて他端に自転用プーリP3が設けられた自転用伝達軸31と、公転用伝達軸21の廻りに回転自在に設けられた自転用プーリP4と、自転用プーリP3と自転用プーリP4との間に架け渡されたベルトV2と、ロータ6を貫通してロータ6に対して回転自在に構成された自転用伝達軸32と、自転用伝達軸32の一端に設けられた自転用プーリP5と、自転用伝達軸32の他端に設けられた自転用プーリP6と、自転用プーリP4と自転用プーリP5との間に架け渡されたベルトV3と、カップホルダ8の外周に配設された自転用プーリP7と、自転用プーリP6と自転用プーリP7との間に設けられたベルトV4と、この架け渡されたベルトV4を案内する自転用プーリP8及び自転用プーリP9とを有している。自転用伝達軸31は支持体5を貫通し、支持体5に対して回転自在に構成される。公転用伝達軸21の回転は、無段変速機11により適宜変速され、自転用伝達軸31,32、自転用プーリP3~P9及びベルトV2~V4を介してカップホルダ8に伝達される。
【0021】
無段変速機11は、ベルト接触径の変化により入力軸の入力回転数と出力軸の出力回転数の比率である変速比率を無段階に変化させる無段変速機能を備えている。この無段変速機11は、入力プーリ13と出力プーリ14とベルト15とを有している。具体的に、入力プーリ13は、組み合わされてV字形状の溝を形成する入力固定板13aと入力誘導板13bから構成され、入力誘導板13bは制御モータ12aにより制御されて軸方向に沿って移動する。出力プーリ14は、組み合わされてV字形状の溝を形成する出力固定板14aと出力誘導板14bから構成され、出力誘導板14bは出力固定板14aに向かって付勢されている。ベルト15は長さが一定であるため、入力固定板13aと入力誘導板13bとの相互間隔に応じて出力誘導板14bが軸方向に沿って移動するようになっている。ベルト15は、入力プーリ13のV字形状をなす溝と、出力プーリ14のV字形状をなす溝に掛け渡されている。入力プーリ13は公転用伝達軸21に接続され、出力プーリ14は自転用伝達軸31に接続され、無段変速機11は公転用伝達軸21の回転を適宜変速することができる。
【0022】
制御モータ12aとして、例えばステッピングモータやサーボモータ等の電動式のモータを用いることができる。制御モータ12aに所定の制御プログラムを設定できるように構成してもよい。その場合、制御モータ12aは当該制御プログラムに基づいて無段変速機11を制御することが可能になる。図示の例では、アクチュエータ12として電動式のモータを用いたが、これに限定されるものではなく、油圧式又は空圧式のモータや、電動式、油圧式又は空圧式のシリンダを用いることができる。なお、撹拌脱泡機1には、操作盤を設けることができ、操作盤により与えられた指示又は予め設定した制御プログラムに基づいて、制御モータ12aは無段変速機11の動作を制御することができる。
【0023】
上記撹拌脱泡機において、架台フレーム2の内部には、公転用プーリP2に隣接してスリット板S1が設けられ、自転用プーリP4に隣接してスリット板S2が設けられている。これらスリット板S1,S2には、それぞれの周縁部に径方向に沿って複数のスリットが間隔をおいて形成されている。スリット板S1は公転用プーリP2と一体的に回転し、スリット板S2は自転用プーリP4と一体的に回転する。即ち、スリット板S1の回転速度はロータ6の回転速度と同等であり、スリット板S2の回転速度はカップホルダ8の回転速度と同等である。また、ロータ6(スリット板S1)の回転速度を読み取るための第一のセンサ16と、カップホルダ8(スリット板S2)の回転速度を読み取るための第二のセンサ17とが配設されている。これら第一のセンサ16と第二のセンサ17により、ロータ6とカップホルダ8の各々の回転速度をセンサ16,17により検知することで、回転速度を表示すると共に、回転速度を補正することが可能になる。
【0024】
上述した撹拌脱泡機1を用いて被混練物を撹拌及び脱泡する場合、予めカップホルダ8内に、被混練物を投入したカップを収容しておく。そして、駆動モータ7を駆動し、駆動軸7aの回転が公転伝達手段20aを経由してロータ6に伝達され、ロータ6が回転(公転)する。それと同時に、公転伝達手段20aを構成する公転用伝達軸21の回転は、無段変速機11によって公転用伝達軸21の回転速度の比率が変更されると共に、自転伝達手段30aを経由してカップホルダ8に伝達され、カップホルダ8が回転(自転)する。撹拌時にはロータ6の回転速度(公転速度)に対するカップホルダ8の回転速度(自転速度)の比率を高くなるように設定し、脱泡時には公転速度に対する自転速度の比率を低くなるように設定するとよい。
【0025】
撹拌時又は脱泡時において、制御モータ12aは無段変速機11を制御し、ロータ6の回転速度とカップホルダ8の回転速度の比率を複数回にわたって連続的に又は断続的に設定する。このようにして無段変速機11によって回転速度の比率を適宜変更しながら運転することができる。
【0026】
特に、予め制御モータ12aに所定の制御プログラムを登録した場合、制御モータ12aは、撹拌脱泡機1の運転中に制御プログラムに基づいて無段変速機11を制御し、無段変速機11は、それに応じたロータ6の回転速度とカップホルダ8の回転速度の比率に変更する。その結果、事前に登録した比率に基づいて精度の高い運転を行うことができる。
【0027】
図4(a)~(f)は運転時の公転と自転の回転速度の比率を示すものである。各図において、縦軸が駆動モータ7の回転速度の最高値に対する公転の回転速度又は自転の回転速度の比率(%)であり、横軸が時間(分)である。図示の実線が公転の回転速度の比率であり、一点鎖線が自転の回転速度の比率である。図4(a)~(c)は、上記比率を時間の経過に応じて段階的に変化させた例であり、図4(d)~(f)は、上記比率を時間の経過に応じて連続的に変化させた例である。また、図4(a)~(d)に示すように、公転の回転速度と自転の回転速度を変更するタイミングを同時点にすることができ、図4(e),(f)に示すように、そのタイミングを異ならせることもできる。
【0028】
更に詳しくは、図4(a)に示すように、公転速度の比率を100%とすると共に自転速度の比率を50%に維持した簡易運転が可能であり、図4(b)に示すように、公転速度と自転速度の比率を段階的に変更して3段階で変速した変速運転が可能であり、図4(c)に示すように、撹拌時と脱泡時とで別々の回転速度の比率を設定し、撹拌時の自転速度の比率を40%に維持し、脱泡時の自転速度の比率を10%に維持したモード運転が可能である。また、図4(d)に示すように、公転速度の比率を100%で維持しながら自転速度の比率を連続的に(徐々に)低下させた減速運転が可能であり、図4(e)に示すように、公転速度の比率と自転速度の比率を変更するタイミングを互いに異ならせた複合運転が可能であり、図4(f)に示すように、公転速度の比率と自転速度の比率を連続的に増減させた連続加減速運転が可能である。本発明によれば、様々な方式で運転することができ、各種の被混練物に適した運転に対応できる。
【0029】
上述した撹拌脱泡機では、支持体5と、支持体5に取り付けられた単一の駆動モータ7と、支持体5に対して回転可能に支持されたロータ6と、ロータ6の公転軸Xに対して傾斜した自転軸Yでロータ6に対して回転可能に支持されたカップホルダ8と、駆動モータ7の駆動力をロータ6及びカップホルダ8に伝達する動力伝達機構10とを備えた撹拌脱泡機において、動力伝達機構10に組み込まれていてロータ6の回転速度とカップホルダ8の回転速度の比率を設定する無段変速機11と、無段変速機11を制御するアクチュエータ12とを有しているので、ロータ6の回転速度とカップホルダ8の回転速度の比率を自在に変更することができる。特に、無段変速機11の制御をアクチュエータ12により自動化することで、運転中において公転と自転の回転速度を迅速かつ正確に設定することができる。また、運転中において複数回の設定変更を容易に行うことができ、細かな設定条件に対応することができる。これにより、運転中における被混練物の発熱を抑えることができ、被混練物に対する悪影響を抑制することができる。これに対して、無段変速機に対して制御モータが取り付けられていない場合(無段変速機の制御が手動式の場合)、運転中に設定条件を変更する作業は煩雑であり、瞬時に所望の回転速度に設定することも困難である。
【0030】
特に、図1に示す撹拌脱泡機1の構造は、配置スペースが限られた比較的小型の撹拌脱泡機に適用することが好適である。
【0031】
上記撹拌脱泡機において、アクチュエータ12はステッピングモータ又はサーボモータに代表される制御モータであることが好ましい。より好ましくはサーボモータであり、モータの始動直後から所定の比率に合わせて運転を再開することができる。アクチュエータ12として上述した制御モータを用いた場合、制御モータ12aは無段変速機11を構成するプーリに対して位置決め機能を有し、同じ設定条件で繰り返し制御することが可能となり、被混練物の撹拌や脱泡に対してより効率的な運転を行うことができる。これに対して、制御モータが位置決め機能を有しない場合(例えば、制御モータとしてインダクションモータを用いた場合)、同じ回転速度で繰り返し回転させることができない。
【0032】
また、駆動モータ7、無段変速機11及びアクチュエータ12の各々は支持体5の下部に配置されているとよい。このように重量物を支持体5の下部に配置することで、装置全体が低重心となって安定し、運転時の揺れを抑制することができる。
【0033】
図5は本発明の実施形態からなる撹拌脱泡機の変形例を示すものである。なお、図5に示す実施形態からなる撹拌脱泡機1は、図1に示す実施形態からなる撹拌脱泡機1の構成を一部変更したものであるので、同一の構成要素については同一の符号を配し、その説明を省略する。
【0034】
図5に示すように、架台フレーム2の内部には支持体5が水平に保持されている。この支持体5は、第一の支持体5Aと第二の支持体5Bから構成されており、第二の支持体5Bの上段に第一の支持体5Aが配置されている。第一の支持体5Aが第二の支持体5Bに連結され、第二の支持体5Bが架台フレーム2の内壁に連結され、支持体5全体が架台フレーム2に対して固定されている。第一の支持体5A及び第二の支持体5Bに対してロータ6が回転可能に支持され、第二の支持体5Bに対して単一の駆動モータ7が取り付けられている。
【0035】
動力伝達機構10は、駆動モータ7に設けられた駆動軸7aの回転をロータ6に伝達する公転伝達手段20bと、公転伝達手段20bを介して伝達された回転をカップホルダ8に伝達する自転伝達手段30bとを有している。自転伝達手段30bには無段変速機11及び制御モータ12aが組み込まれている。
【0036】
公転伝達手段20bは、公転用伝達軸22、公転用プーリP1,P10及びベルトV5からなる。具体的に、公転伝達手段20bは、駆動軸7aに設けられた公転用プーリP1と、ロータ6に接続され、支持体5に対して回転自在に構成された公転用伝達軸22と、公転用伝達軸22の下端側に設けられた公転用プーリP10と、公転用プーリP1と公転用プーリP10との間に架け渡されたベルトV5とを有している。公転用プーリP10は段状に形成されており、下段にベルトV5が設けられている。公転用伝達軸22は第一の支持体5A及び第二の支持体5Bを貫通してロータ6と一体的に回転する。駆動モータ7の駆動軸7aの回転は、公転用伝達軸22、公転用プーリP1,P10及びベルトV5を介してロータ6に伝達される。
【0037】
自転伝達手段30bは、無段変速機11、自転用伝達軸33,34、自転用プーリP11,P12、ベルトV6及びギアGからなる。具体的に、自転伝達手段30bは、制御モータ12aにより制御される無段変速機11と、公転用プーリP10の上段に設けられた自転用プーリP11と、自転用伝達軸33に配設されて一体的に回転する自転用プーリP12と、一端が無段変速機11に接続されて他端に自転用プーリP12が設けられた自転用伝達軸33と、自転用プーリP11と自転用プーリP12との間に架け渡されたベルトV6と、一端が無段変速機11に接続されて他端がギアGに接続された自転用伝達軸34と、自転用伝達軸34に配設されてカップホルダ8を回転させるギアGとを有している。互いに隣接して設けられた上段の自転用プーリP11と下段の公転用プーリP10とは一体的に構成される。自転用伝達軸34は、公転用伝達軸22の内部に配置され、公転用伝達軸22に対して回転自在に構成され、ギアGと一体的に回転する。
【0038】
無段変速機11において、入力プーリ13は自転用伝達軸33に接続され、出力プーリ14は自転用伝達軸34に接続されている。無段変速機11は、自転用プーリP11,P12、ベルトV6及び自転用伝達軸33を介して伝達された公転用伝達軸22の回転を適宜変速することができる。
【0039】
図5に示す撹拌脱泡機においても、図1図3に示す撹拌脱泡機と同様に、ロータ6の回転速度とカップホルダ8の回転速度の比率を自在に変更することができる。特に、無段変速機11の制御を電動化することで、運転中において公転と自転の回転速度を迅速かつ正確に設定することができる。また、運転中において複数回の設定変更を容易に行うことができ、細かな設定条件に対応することができる。特に、図5に示す撹拌脱泡機1の構造は、比較的大型の撹拌脱泡機に適用することが好適である。
【0040】
本発明において、撹拌脱泡機の動力伝達機構は、上述した実施形態の構造に限定されるものではなく、単一の駆動モータの駆動力をロータ及びカップホルダに伝達するものであれば、種々の形態を採用することができる。また、無段変速機は動力伝達機構の任意の位置に組み込むことができる。更に、動力伝達機構は、プーリやベルト、歯車からなる構成に限定されるものではなく、チェーン等の他の伝達手段を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 撹拌脱泡機
2 架台フレーム
3 蓋部
4 連結部材
5 支持体
6 ロータ
7 駆動モータ
8 カップホルダ
10 動力伝達機構
11 無段変速機
12 アクチュエータ
20a,20b 公転伝達手段
30a,30b 自転伝達手段
X 公転軸
Y 自転軸
図1
図2
図3
図4
図5