(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】超音波プローブ及び超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20230703BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A61B8/00
H04R17/00 332
H04R17/00 330H
(21)【出願番号】P 2019141063
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】四方 浩之
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-132497(JP,A)
【文献】特開昭61-245700(JP,A)
【文献】特開2014-183858(JP,A)
【文献】特開2009-105762(JP,A)
【文献】特開昭60-114239(JP,A)
【文献】特開昭60-005133(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00142215(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0007964(US,A1)
【文献】特開2017-056030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
H04R 1/00 - 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状に分割された圧電振動子群と、
前記圧電振動子群の背面に敷設され、前記圧電振動子群に対する複数の電極を略同心円状に並列接続する配線を有する基板と、
を備え
、
前記基板は、前記圧電振動子群側に各圧電振動子に対応する格子状の複数の電極を有し、かつ、当該複数の電極を略同心円状に並列接続する複数の環状の配線を前記圧電振動子群側とは異なる側に有する、超音波プローブ。
【請求項2】
前記基板は、前記
複数の環状の配線によって、
前記格子状の複数の電極のうち前記圧電振動子群の中心からの距離が近い複数の電極を略同心円状に並列接続するFPC(Flexible preprint circuits)である、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記基板としての第1のFPCに加え、
前記第1のFPCの背面に敷設され、前記第1のFPCにおける導電部の位置に対応する位置に導電部を有し、前記第1のFPCとの間で信号を送受信する第2のFPCをさらに備え、
前記第1のFPCと前記第2のFPCとの間は、前記導電部間が導電接合によって導通されるとともに、前記導電接合された位置以外の空隙が非導電の接着剤によって充填されている、請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記基板は、複数層を介した
前記複数の環状の配線によって、前記圧電振動子群の中心からの距離が近い複数の電極を略同心円状に並列接続する多層基板である、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項5】
略同心円状に並列接続された電極に対応する圧電振動子群は、単一、又は、複数の駆動回路にそれぞれ並列接続され、単一、又は、複数の駆動回路に並列接続された各圧電振動子群の間で、圧電振動子数と駆動回路数との比が、略一定に保たれる、請求項1~4のいずれか1つに記載の超音波プローブ。
【請求項6】
複数の駆動回路に並列接続される圧電振動子群は、前記圧電振動子群の中心からの平均距離が略一定の間隔に保たれる、請求項5に記載の超音波プローブ。
【請求項7】
格子状に分割された圧電振動子群と、前記基板とを揺動させる搖動部をさらに備える、請求項1~6のいずれか1つに記載の超音波プローブ。
【請求項8】
前記複数の環状の配線は、前記格子状の複数の電極を駆動回路に接続するように構成された配線であって、複数の同心円状の配線によって形成され、当該複数の同心円状の配線によって前記格子状の複数の電極を並列に接続することで、複数の圧電振動子群を形成させる、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項9】
格子状に分割された圧電振動子群と、前記圧電振動子群の背面に敷設され、前記圧電振動子群に対する複数の電極を略同心円状に並列接続する配線を有する基板と、を有
し、前記基板は、前記圧電振動子群側に各圧電振動子に対応する格子状の複数の電極を有し、かつ、当該複数の電極を略同心円状に並列接続する複数の環状の配線を前記圧電振動子群側とは異なる側に有する超音波プローブと、
前記超音波プローブによって受信された信号に基づいて超音波画像を生成する生成部と、
を備える、超音波診断装置。
【請求項10】
前記超音波プローブを揺動させる搖動機構をさらに備える、請求項
9に記載の超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波プローブ及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波検査は、技師または医師が超音波プローブを被検体の体表上で操作して、人体内部の組織構造、血流等の情報を得ることによって実施される。例えば、技師や医師は、診断部位や診断内容に応じて、超音波を送受信する超音波プローブを体表上で操作することによって被検体内を超音波で走査して、組織構造を示す超音波画像や、血流等の情報を示す超音波画像を収集する。
【0003】
このような超音波検査のための超音波プローブとしては、例えば、2次元アレイプローブが知られている。2次元アレイプローブは、板状の振動子を格子状に分割した振動子アレイを有する。この2次元アレイプローブは、素子数(分割後の振動子数)が多数のため、振動子近傍に駆動回路が設けられ、受信時には部分的なビームフォーミングを行って装置本体に限られた信号数を接続する。
【0004】
一方、格子状に分割された振動子アレイに対して、多重同心円状の電極を設け、アニュラアレイとして装置に接続する技術も知られている。アニュラアレイでは、超音波ビームを偏向したり、移動したりすることで断面を走査することができないため、振動子を機械的に揺動して走査することが必要になるが、ビーム形状が優れ、高画質が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭59-202059号公報
【文献】特開2003-87897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、格子状に分割した振動子アレイを面積効率よく多重同心円状に接続することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の超音波プローブは、圧電振動子群と、基板とを備える。圧電振動子群は、格子状に分割される。基板は、前記圧電振動子群の背面に敷設され、前記圧電振動子群に対する複数の電極を略同心円状に並列接続する配線を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る超音波プローブの構成の一例を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、第1の実施形態に係る第1のFPCを説明するための図である。
【
図3B】
図3Bは、第1の実施形態に係る第1のFPCを説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る超音波プローブにおけるチャンネルを説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る超音波プローブにおける送受信回路との接続を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る超音波プローブにおける振動子数と平均距離との関係を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る搖動機構の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係る超音波プローブの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願に係る超音波プローブ及び超音波診断装置の実施形態を詳細に説明する。なお、本願に係る超音波プローブ及び超音波診断装置は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。また、以下の説明において、同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態における超音波診断装置について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ2と、ディスプレイ3と、入力インターフェース4と、装置本体5とを有し、超音波プローブ2と、ディスプレイ3と、入力インターフェース4とが装置本体5と通信可能に接続される。
【0011】
超音波プローブ2は、装置本体5に含まれる送受信回路51に接続される。超音波プローブ2は、例えば、プローブ本体に複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、送受信回路51から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ2は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ2は、プローブ本体において、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ2は、装置本体5と着脱自在に接続される。ここで、本実施形態に係る超音波プローブ2は、格子状に分割した振動子アレイを面積効率よく多重同心円状に接続された超音波プローブであるが、この点については、後に詳述する。
【0012】
超音波プローブ2から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ2が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0013】
ディスプレイ3は、超音波診断装置1の操作者が入力インターフェース4を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体5において生成された超音波画像や表示情報等を表示したりする。また、ディスプレイ3は、装置本体5の処理状況や処理結果を操作者に通知するために、各種のメッセージや表示情報を表示する。また、ディスプレイ3は、スピーカーを有し、音声を出力することもできる。
【0014】
入力インターフェース4は、所定の位置(例えば、関心領域等)の設定や、画像の表示方向の設定、数値の入力、モードの切り替え等を行うための操作を受け付ける。例えば、入力インターフェース4は、トラックボール、スイッチ、ボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチモニタ、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。入力インターフェース4は、後述する処理回路55に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換し処理回路55へと出力する。なお、本明細書において入力インターフェース4は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路55へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0015】
装置本体5は、送受信回路51と、Bモード処理回路52と、ドプラ処理回路53と、メモリ54と、処理回路55とを有する。
図1に示す超音波診断装置1においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ54へ記憶されている。送受信回路51、Bモード処理回路52、ドプラ処理回路53、及び、処理回路55は、メモリ54からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各回路は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0016】
送受信回路51は、パルス発生器、送信遅延回路、パルサ等を有し、超音波プローブ2に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延回路は、超音波プローブ2から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ2に駆動信号(駆動パルス)を印加する。ここで、本実施形態に係る送受信回路51は、格子状に分割された圧電振動子群が多重同心円状に接続された素子グループ(圧電振動子群)ごとに遅延を与えた駆動信号を供給する。この点については、後に詳述する。
【0017】
なお、送受信回路51は、後述する処理回路55の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0018】
また、送受信回路51は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延回路、加算器等を有し、超音波プローブ2が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延回路は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延回路によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。なお、送受信回路51は、駆動回路の一例である。
【0019】
Bモード処理回路52は、送受信回路51から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0020】
ドプラ処理回路53は、送受信回路51から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。本実施形態の移動体は、血管内を流動する血液や、リンパ管内を流動するリンパ液等の流体である。
【0021】
なお、Bモード処理回路52及びドプラ処理回路53は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、Bモード処理回路52は、2次元の反射波データから2次元のBモードデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。また、ドプラ処理回路53は、2次元の反射波データから2次元のドプラデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成する。3次元のBモードデータは、3次元走査範囲の各走査線上で設定された複数の点(サンプル点)それぞれに位置する反射源の反射強度に応じた輝度値が割り当てられたデータとなる。また、3次元のドプラデータは、3次元走査範囲の各走査線上で設定された複数の点(サンプル点)それぞれに、血流情報(速度、分散、パワー)の値に応じた輝度値が割り当てられたデータとなる。
【0022】
メモリ54は、処理回路55が生成した表示用の超音波画像を記憶する。また、メモリ54は、Bモード処理回路52やドプラ処理回路53が生成したデータを記憶する。また、メモリ54は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。
【0023】
処理回路55は、超音波診断装置1の処理全体を制御する。具体的には、処理回路55は、
図1に示す制御機能551、画像生成機能552、及び、表示制御機能553に対応するプログラムをメモリ54から読み出して実行することで、種々の処理を行う。
【0024】
制御機能551は、入力インターフェース4を介して操作者から入力された各種設定要求や、メモリ54から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路51、Bモード処理回路52、ドプラ処理回路53の処理を制御する。
【0025】
画像生成機能552は、Bモード処理回路52及びドプラ処理回路53が生成したデータから超音波画像を生成する。すなわち、画像生成機能552は、Bモード処理回路52が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像データを生成する。Bモード画像データは、超音波走査された領域内の組織形状が描出されたデータとなる。また、画像生成機能552は、ドプラ処理回路53が生成した2次元のドプラデータから移動体情報を表すドプラ画像データを生成する。ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。ドプラ画像データは、超音波走査された領域内を流動する流体に関する流体情報を示すデータとなる。
【0026】
ここで、画像生成機能552は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像を生成する。具体的には、画像生成機能552は、超音波プローブ2による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像を生成する。
【0027】
また、画像生成機能552は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像生成機能552は、超音波画像に、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
【0028】
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成機能552が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像である。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
【0029】
更に、画像生成機能552は、Bモード処理回路52が生成した3次元のBモードデータに対して座標変換を行なうことで、3次元のBモード画像データを生成することもできる。また、画像生成機能552は、ドプラ処理回路53が生成した3次元のドプラデータに対して座標変換を行なうことで、3次元のドプラ画像データを生成することもできる。すなわち、画像生成機能552は、「3次元のBモード画像データや3次元のドプラ画像データ」を「3次元の超音波画像データであるボリュームデータ」として生成することもできる。
【0030】
更に、画像生成機能552は、ボリュームデータをディスプレイ3にて表示するための各種の2次元画像データ(超音波画像)を生成するために、ボリュームデータに対してレンダリング処理を行なうこともできる。
【0031】
表示制御機能553は、メモリ54が記憶する表示用の超音波画像をディスプレイ3にて表示するように制御する。また、制御機能551は、各機能による処理結果をディスプレイ3にて表示するように制御する。
【0032】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、格子状に分割した振動子アレイを面積効率よく多重同心円状に接続した超音波プローブを有する。上述したように、2次元アレイプローブは、圧電振動子近傍に駆動回路が設けられ、各圧電振動子の駆動が制御されることから、走査の自由度が高く、3次元でのスキャンが可能である。しかしながら、2次元アレイプローブは、超音波プローブに内蔵される集積回路(IC:Integrated Circuit)の面積や消費電力の制約から、装置本体で駆動する場合に比べて送受信性能が劣るため、S/N(Signal-to-Noise)や、ダイナミックレンジ、帯域幅等に制約があり、高画質の断面画像を得ることが難しい。
【0033】
また、上述したアニュラアレイは、高画質の断面画像を得ることができるが、格子状に分割された振動子アレイに対して多重同心円状の電極を設けることで形成されるアニュラアレイでは、チャンネル間を音響的、電気的に分離するために、同心円状の電極間に1素子分以上のギャップが必要になるため、振動子アレイにおける有効面積の減少や、サイドローブの上昇を招いてしまう。
【0034】
また、一般に、アニュラアレイでは、駆動回路に対する負荷(振動子の静電容量)をチャンネル間で一定にし、均一な特性とするため、同心円状の各チャンネルに含まれる振動子数が一定となるように形成される。したがって、アニュラアレイでは、各チャンネル間の半径ピッチが、中心部では粗く、周辺部では細かく変化することとなる。そのため、中心部では、チャンネルあたりの口径、遅延の制御が粗くなり、小口径で送受信する近距離での画質が悪化する。また、周辺部では、電極間のギャップの比率が大きくなり、非効率となる。
【0035】
そこで、本願では、格子状に分割された圧電振動子群に対する電極を略同心円状に並列接続する配線を設けた基板を用いることで、格子状に分割した振動子アレイを面積効率よく多重同心円状に接続したアニュラアレイを実現する。また、本願では、上記構成により、中心部での半径ピッチを細かくすることができるため、小口径で送受信する近距離においても良好なビーム形状を実現することができ、近距離での画質を向上させることができる。
【0036】
以下、第1の実施形態に係る超音波プローブ2の詳細について説明する。
図2は、第1の実施形態に係る超音波プローブ2の構成の一例を示す図である。ここで、
図2においては、超音波プローブ2の断面図を示す。また、
図2では、格子状に分割された圧電振動子群に対する電極を略同心円状に並列接続する配線を設けた基板として、FPC(Flexible preprint circuits)を用いる場合の例を示す。
【0037】
図2に示すように、超音波プローブ2は、窓部材21と、音響整合層22と、圧電振動子23と、第1のFPC24と、第2のFPC25と、バンプ26と、背面材(バッキング)27と、モータ28とを有する。
【0038】
圧電振動子23は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などであり、音響放射面側(図中、上側)と背面側(図中、下側)に対向する電極を有し、送受信回路51による制御のもと超音波を送受信する。本実施形態に係る超音波プローブ2においては、圧電振動子23が格子状に分割されることで、2次元マトリクス状に配列された振動子群を形成する。なお、圧電振動子23の音響放射面側には、さらに、圧電振動子と被検体との間の音響インピーダンスの不整合を緩和する音響整合層22や、被検体と接触する窓部材21などが設けられる。
【0039】
第1のFPC24は、圧電振動子23の背面側に敷設され、圧電振動子23側とは異なる側の導電パターンによって、圧電振動子23の中心からの距離が近い複数の電極を略同心円状に並列接続する。具体的には、第1のFPC24は、圧電振動子23における格子状の各振動子において、圧電振動子23のアレイ中心からの距離が近似する規定数の振動子群を並列接続する導電パターンが背面側に配設される。すなわち、第1のFPC24は、背面側に略同心円状の導電パターンが配設される。
【0040】
図3A及び
図3Bは、第1の実施形態に係る第1のFPC24を説明するための図である。ここで、
図3Aは、第1のFPCにおける圧電振動子23側の面を示し、
図3Bは、背面側の面を示す。例えば、第1のFPC24は、
図3Aに示すように、圧電振動子23側の面に格子状の導電パターン241を有する。導電パターン241は、圧電振動子23における格子状の各振動子に対応し、各振動子の電極と接合される。
【0041】
また、例えば、第1のFPC24は、
図3Bに示すように、背面側の面に略同心円状の導電パターン242を有する。導電パターン242は、環状に形成された複数の配線により、圧電振動子23の各振動子に対応する複数の電極を略同心円状に並列接続する。すなわち、導電パターン242は、1つの環状の配線によって複数の電極を並列接続し、並列接続された電極に対応する振動子を1つの振動子グループとして形成させる。1例を挙げると、
図3Bに示す導電パターン242における最も外側に位置する配線は、圧電振動子23側において対応する位置にある複数の振動子の電極を並列接続することで、1つの振動子グループを形成させる。本実施形態に係る超音波プローブ2では、上記した1つの振動子グループが1チャンネルとなる。
【0042】
同様に、略同心円状に形成された環状の各配線が、圧電振動子23側において対応する位置にある複数の振動子の電極を並列接続することで、各振動子グループを形成させる。なお、
図3Bでは、環状の配線を細い円で示しているが、実際には、格子状の振動子を環状に並列接続させるために、配線はある程度の太さを有し、円ではない環状で形成される場合でもよい。
【0043】
ここで、
図3Bに示すように、超音波プローブ2における導電パターン242が、中心からの半径ピッチが細かい複数の配線が形成されることで、チャンネル間の半径ピッチが細かいアニュラアレイとなる。
図4は、第1の実施形態に係る超音波プローブ2におけるチャンネルを説明するための図である。
図4では、同心円状に同一のハッチングで示した領域に含まれる複数の振動子が1つの振動子グループ、すなわち、1つのチャンネルを構成する。例えば、超音波プローブ2におけるチャンネルは、上述した導電パターン242によって、
図4に示すように、中心から外側に向かってn個のチャンネルが形成される。
【0044】
また、超音波プローブ2においては、
図4に示すように、半径のピッチが隣接するチャンネル間で略一定となるように形成される。すなわち、第1のFPC24における導電パターン242は、半径のピッチが隣接するチャンネル間で略一定となるように、振動子アレイの中心からの距離が近似する複数の振動子を並列接続する。
【0045】
このように、本実施形態に係る超音波プローブ2では、各振動子に対応する電極を第1のFPC24の背面側で略同心円状に並列接続させることで、チャンネル間で音響的及び電気的な分離を行うためのギャップを意図的に設ける必要がなく、導電パターン242の内側の全ての振動子を超音波の送受信に利用することができ、格子状に分割した振動子アレイを面積効率よく多重同心円状に接続することができる。
【0046】
図2に戻って、第2のFPC25は、第1のFPC24の背面に敷設され、第1のFPC24における導電部の位置に対応する位置に導電部を有し、第1のFPC24との間で信号を送受信する。具体的には、第2のFPC25は、第1のFPC24の導電パターン242側に敷設されたI/O(Input/Output)用の基板である。第2のFPC25は、装置本体5と接続するためのケーブルに含まれる信号線と接続される。
【0047】
バンプ26は、第1のFPC24と第2のFPC25とを電気的に接続する。ここで、第1のFPC24と第2のFPC25とは、導電部の露出位置を合わせるように形成される。すなわち、第1のFPC24と第2のFPC25とが重ねられた際に、第1のFPC24における導電パターン242の露出位置と、第2のFPC25における導電部の露出位置とが対応するように、各FPCにおける導電部の露出位置が決定される。
【0048】
ここで、第1のFPC24における導電パターン242の導電部(露出位置)は、各チャンネルに対応する配線ごとに設けられる。一例を挙げると、
図4に示したチャンネル1~nのn個の配線それぞれについて導電部が設けられる。なお、第1のFPC24における導電部(露出位置)は、十分な電流が流れるようにインピーダンスが確保されていれば、数及び位置は任意である。
【0049】
バンプ26は、第1のFPC24における導電パターン242の露出位置と、第2のFPC25における導電部の露出位置との間に配置され、第1のFPC24と第2のFPC25とを電気的に接続する。なお、第1のFPC24と第2のFPC25との間でバンプ26以外の空隙は非導電の接着剤によって充填されている。
【0050】
モータ28は、制御機能551の制御に沿って、圧電振動子23を揺動する。具体的には、モータ28は、格子状に分割された圧電振動子群と、基板とを揺動させる。例えば、モータ28は、制御機能551から受信した制御信号に基づいて、
図2に示す交点61を回転軸として、矢印62で示す方向に、音響整合層22、圧電振動子23、第1のFPC、第2のFPC25、バンプ26、及び、背面材27を揺動する。なお、モータ28は、搖動部の一例である。
【0051】
アニュラアレイでは、圧電振動子の駆動制御によって超音波ビームを走査方向に偏向させることが難しいため、超音波プローブ2は、モータ28を有し、モータ28による揺動によって走査を行う。
【0052】
上述したように、超音波プローブ2は、第1のFPC24の背面側に、格子状に分割された圧電振動子群に対する電極を略同心円状に並列接続する配線を設けることで、格子状に分割した振動子アレイを面積効率よく多重同心円状に接続したアニュラアレイを実現する。
【0053】
さらに、本実施形態に係る超音波プローブ2は、各チャンネルを駆動する送受信回路51に対する負荷(振動子静電容量)を概ね一定とし、均一の特性を実現するために、各チャンネルを駆動する送受信回路51の数と、振動子グループに含まれる振動子の数との比が概ね一定となるように構成される。
【0054】
具体的には、略同心円状に並列接続された電極に対応する振動子グループは、単一、又は、複数の送受信回路51にそれぞれ並列接続され、単一、又は、複数の送受信回路51に並列接続された各振動子グループの間で、振動子数と送受信回路数との比が、略一定に保たれる。すなわち、含まれる振動子の数が少ない振動子グループは、少ない送受信回路51によって駆動され、含まれる振動子の数が多い振動子グループは、多い送受信回路51によって駆動される。
【0055】
図5は、第1の実施形態に係る超音波プローブ2における送受信回路51との接続を説明するための図である。なお、
図5では、説明の便宜上、送受信回路51と接続される導電パターン242として、最も内側の配線と最も外側の配線の2つのみを示しているが、実際には、その他複数の配線がそれぞれ送受信回路51と接続される。例えば、超音波プローブ2は、
図5に示すように、最も内側の配線で並列接続された振動子グループは、含まれる振動子数が少なく、単一の送受信回路51によって駆動される。一方、最も外側の配線で並列接続された振動子グループは、含まれる振動子数が多く、例えば、4つの送受信回路51によって駆動される。
【0056】
このように、超音波プローブ2における各振動子グループは、含まれる振動子の数に応じた数の送受信回路51と並列接続され、並列接続された送受信回路51によってそれぞれ駆動される。ここで、各振動子グループの間で、振動子数と送受信回路数との比を略一定に保つことによって、各チャンネルを駆動する送受信回路51に対する負荷(振動子静電容量)を概ね一定とし、均一の特性を実現することができる。
【0057】
図6は、第1の実施形態に係る超音波プローブ2における振動子数と平均距離との関係を示す図である。
図6においては、縦軸をエレメント数(振動子数)及び振動子アレイの中心からの平均距離を示し、横軸はチャンネル(グループNo.)を示す。また、
図6においては、線L1が各チャンネルのエレメント数を示し、線L2が各チャンネルにおける振動子の中心からの平均距離を示す。
【0058】
例えば、超音波プローブ2においては、
図6における線L1に示すように、チャンネルのよって振動子数を変化させる。ここで、超音波プローブ2における各チャンネルに含まれる振動子数は、送受信回路51の数の対応を容易にするため、線L1に示すように、離散的に変化させる。すなわち、超音波プローブ2においては、同一数の振動子を含むチャンネルが複数存在し、含まれる振動子の数を離散的に増加させる。
【0059】
ここで、各チャンネルは、含まれる振動子数に応じた数の送受信回路51と並列接続される。例えば、
図6に示す超音波プローブ2では、矢印63の範囲に含まれるチャンネルに対して2以上の送受信回路51が並列接続され、矢印63の範囲外(0から矢印63の左端まで)のチャンネルに対して1つの送受信回路51が接続される。なお、矢印63の範囲に含まれるチャンネルについては、振動子数が多いチャンネルほど、並列接続される送受信回路51の数が増加する。
【0060】
このような構成の超音波プローブ2では、
図6における線L2に示すように、各チャンネルにおける振動子の中心からの平均距離が線形に変化することとなる。特に、
図6の矢印64で示した範囲(2以上の送受信回路51が並列接続されたチャンネル)では、振動子グループに含まれる振動子の中心からの平均距離がより線形に変化することとなる。すなわち、複数の送受信回路51に並列接続される振動子グループでは、中心からの平均距離が略一定の間隔に保たれており、口径及び遅延の制御を精度よく行うことができる。
【0061】
上述したように、超音波プローブ2は、格子状に分割した振動子アレイを面積効率よく多重同心円状に接続し、各チャンネルを駆動する送受信回路51に対する負荷(振動子静電容量)を概ね一定とし、均一の特性を実現したアニュラアレイとなる。ここで、上述した例では、圧電振動子23等を内蔵されたモータ28によって搖動することで断面を走査する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものでなく、例えば、外付けの機構を用いて超音波プローブ2の位置や向きを変化させることで断面を走査する場合でもよい。
【0062】
図7は、第1の実施形態に係る搖動機構の一例を示す図である。ここで、
図7においては、超音波プローブ2に対して搖動機構7が外付けされた場合の例を示す。また、
図7においては、超音波プローブ2が取り付けられた状態の搖動機構7を、超音波プローブ2の搖動方向(左上)、搖動方向に直交する方向(右上)、超音波プローブ2の送受信面側(下)から見た場合の図を示す。
【0063】
例えば、搖動機構7は、
図7に示すように、被検体との接触面が、超音波プローブ2の送受信面と同一の曲率を有し、超音波プローブ2に取り付けられた状態のときに、送受信面と高さが同一となる。そして、搖動機構7は、取り付けられた超音波プローブ2を支持する支持機構を有する。すなわち、超音波プローブ2は、支持機構によって回転可能に軸支される。操作者は、超音波プローブ2を把持した状態で支持機構に直交する方向に超音波プローブ2を傾けることで、超音波ビームの向きを変化させることができる。
【0064】
ここで、
図7に示す超音波プローブ2には、位置センサ6が取り付けられる。すなわち、操作者による手動の走査のため、データと収集位置とを対応付けるために、位置センサ6が用いられる。かかる場合には、例えば、画像生成機能552が、位置センサ6から位置情報を取得する。そして、画像生成機能552は、時間情報に基づいて、位置センサ6によって取得された位置情報を、Bモード処理回路52及びドプラ処理回路53が生成したデータに対応付けてメモリ54に格納する。
【0065】
すなわち、画像生成機能552は、反射波データの収集時刻と、位置センサ6によって取得された位置情報の取得時刻とに基づいて、位置情報とデータとを対応付ける。これにより、画像生成機能552は、手動での走査で正確な超音波画像を生成することができる。なお、位置センサ6としては、例えば、トランスミッタによって形成された3次元の磁場を検出することで位置情報を取得する磁気センサである。
【0066】
また、上述した例では、超音波プローブ2が操作者によって手動で走査される場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、超音波プローブ2がロボットアームに保持され、ロボットの制御によって走査される場合でもよい。かかる場合には、例えば、画像生成機能552は、ロボットアームに保持された超音波プローブ2の所定の位置を初期位置として設定する。そして、取得機能162は、超音波プローブ2を保持するロボットアームの初期位置からの移動量を、超音波プローブ2の位置及び方向の変位量として取得し、取得した変位量に基づいて、データと位置情報とを対応付ける。
【0067】
次に、
図8を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の処理について説明する。
図8は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の処理の手順を説明するためのフローチャートである。なお、
図8は、モータ28によって走査される場合について示す。また、ステップ101~110は、処理回路55がメモリ54から制御機能551、画像生成機能552、表示制御機能553に対応するプログラムを読み出して実行することで実現されるステップである。
【0068】
図8に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1では、処理回路55が、スキャンが開始されたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、スキャンが開始された場合には(ステップS101、肯定)、処理回路55は、圧電振動子23等の原点位置を検出して(ステップS102)、検出した原点位置に基づくモータ28の制御により、圧電振動子23等を初期ラスタ位置に移動させる(ステップS103)。なお、スキャンが開始されるまで、処理回路55は、待機状態である(ステップS101、否定)。
【0069】
そして、処理回路55は、超音波を送受信するように送受信回路51を制御することで(ステップS104)、ビームを形成させ(ステップS105)、受信波形をメモリ54に記憶させる。その後、処理回路55は、1フレーム分の受信波形の収集が終了したか否かを判定する(ステップS107)。ここで、1フレーム分の受信波形の収集が終了していない場合には(ステップS107、否定)、処理回路55は、モータ28を制御して、圧電振動子23等を次のラスタ位置に移動させ(ステップS108)、ステップS104以降の処理を継続する。
【0070】
一方、ステップS107において、1フレーム分の受信波形の収集が終了している場合には(ステップS107、肯定)、処理回路55は、超音波画像を生成して表示させ(ステップS109)、スキャンが終了したか否かを判定する(ステップS110)。ここで、スキャンが終了していない場合には(ステップS110、否定)、処理回路55は、ステップS103に戻って、処理を継続する。一方、スキャンが終了している場合には(ステップS110、肯定)、処理回路55は、処理を終了する。
【0071】
上述したように、第1の実施形態によれば、圧電振動子23は、格子状に分割される。基板は、圧電振動子群の背面に敷設され、圧電振動子群に対する複数の電極を略同心円状に並列接続する配線を有する。従って、第1の実施形態に係る超音波プローブ2は、チャンネル間で音響的及び電気的な分離を行うためのギャップを意図的に設ける必要がなく、導電パターン242の内側の全ての振動子を超音波の送受信に利用することができ、格子状に分割した振動子アレイを面積効率よく多重同心円状に接続したアニュラアレイの実現を可能にする。また、第1の実施形態に係る超音波プローブ2は、サイドローブの上昇がないアニュラアレイの実現を可能にする。また、第1の実施形態に係る超音波プローブ2は、圧電振動子23の中心部における振動子グループの半径や、中心部の半径ピッチを小さくでき、小口径で送受信する近距離においても良好なビーム形状を実現して、高画質の超音波画像を取得することを可能にする。
【0072】
また、第1の実施形態によれば、基板は、圧電振動子群側とは異なる側の導電パターンによって、圧電振動子の中心からの距離が近い複数の電極を略同心円状に並列接続する第1のFPC24である。従って、第1の実施形態に係る超音波プローブ2は、格子状に分割した振動子アレイを面積効率よく多重同心円状に接続したアニュラアレイを容易に実現することを可能にする。また、第1の実施形態に係る超音波プローブ2は、振動子としてPZT等の強誘電体を用いることができ、PVDF(PolyVinylidene DiFluoride)等の高分子圧電体を用いるアニュラアレイと比べて、電気音響変換効率が上げ、感度が向上させることを可能にする。
【0073】
また、第1の実施形態によれば、基板としての第1のFPC24に加え、第1のFPC24の背面に敷設され、第1のFPC24における導電部の位置に対応する位置に導電部を有し、第1のFPC24との間で信号を送受信する第2のFPC25をさらに備え、第1のFPC24と第2のFPC25との間は、導電部間が導電接合によって導通されるとともに、導電接合された位置以外の空隙が非導電の接着剤によって充填されている。従って、第1の実施形態に係る超音波プローブ2は、信号引き出しの構成を容易に実現することを可能にする。
【0074】
また、第1の実施形態によれば、略同心円状に並列接続された電極に対応する振動子グループは、単一、又は、複数の送受信回路51にそれぞれ並列接続され、単一、又は、複数の送受信回路51に並列接続された各振動子グループの間で、振動子数と送受信回路数との比が、略一定に保たれる。従って、第1の実施形態に係る超音波プローブ2は、各送受信回路51に対する負荷(振動子静電容量)を概ね一定にすることができ、均一な特性を実現することを可能にする。
【0075】
また、第1の実施形態によれば、複数の送受信回路51に並列接続される振動子グループは、中心からの平均距離が略一定の間隔に保たれる。従って、第1の実施形態に係る超音波プローブ2は、圧電振動子23の外周部まで、半径ピッチをほぼ一定にすることができ、FPC裏面のみでリング状配線が可能であり、構成を単純化することを可能にする。
【0076】
また、第1の実施形態によれば、モータ28は、格子状に分割された圧電振動子23と、基板とを揺動させる。従って、第1の実施形態に係る超音波プローブ2は、断面を走査することを可能にする。
【0077】
また、第1の実施形態によれば、搖動機構7は、超音波プローブ2を揺動させる。従って、第1の実施形態に係る超音波プローブ2は、モータ28などの機械的な搖動機構を内蔵することなく、断面を走査することを可能にする。
【0078】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、基板としてFPCを用いる場合について説明した。第2の実施形態では、基板として多層基板を用いる場合について説明する。
図9は、第2の実施形態に係る超音波プローブの構成の一例を示す図である。ここで、
図9においては、超音波プローブ2の断面図を示す。また、第2の実施形態に係る超音波プローブ2は、第1の実施形態と比較して、基板として多層基板を用いる点が異なる。以下、この点を中心に説明する。
【0079】
図9に示すように、第2の実施形態に係る超音波プローブ2は、窓部材21と、音響整合層22と、圧電振動子23と、第2のFPC25と、背面材(バッキング)27と、モータ28と、多層基板29とを有する。
【0080】
多層基板29は、複数層を介した配線によって、圧電振動子23の中心からの距離が近い複数の電極を略同心円状に並列接続する。例えば、多層基板29は、音響放射面側(図中、上側)の外面に、圧電振動子23における格子状の各振動子に対応し、各振動子の電極と接合される導電部を有する。そして、多層基板29は、内層及び背面側の外層を介した接続により、圧電振動子23における複数の電極を略同心円状に並列接続する。
【0081】
なお、
図9においては、モータ28によって圧電振動子23等を揺動して走査する構成を示しているが、第2の実施形態に係る超音波プローブ2においても、第1の実施形態と同様に、搖動機構7や、ロボットアームなどで搖動することで走査することもできる。
【0082】
上述したように、第2の実施形態によれば、基板は、複数層を介した配線によって、圧電振動子23の中心からの距離が近い複数の電極を略同心円状に並列接続する多層基板29である。従って、第2の実施形態に係る超音波プローブ2は、多層基板を用いて実現することを可能にする。
【0083】
(その他の実施形態)
さて、これまで第1及び第2の実施形態について説明したが、上述した第1及び第2の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0084】
図1では、上述した各処理機能が単一の処理回路55によって実現される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、処理回路55は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路55が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0085】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリに保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、メモリにプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
【0086】
なお、上記の実施形態の説明で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0087】
以上、説明したとおり、実施形態によれば、格子状に分割した振動子アレイを面積効率よく多重同心円状に接続することを可能にする。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0089】
1 超音波診断装置
2 超音波プローブ
7 搖動機構
23 圧電振動子
24 第1のFPC
25 第2のFPC
28 モータ
29 多層基板
51 送受信回路