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特許7305504不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20230703BHJP
   C08G 18/09 20060101ALI20230703BHJP
   C08G 18/18 20060101ALI20230703BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20230703BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20230703BHJP
   C08K 5/5313 20060101ALI20230703BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20230703BHJP
   C08K 3/02 20060101ALI20230703BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20230703BHJP
【FI】
C08G18/00 J
C08G18/09 020
C08G18/18
C08G18/42 008
C08L75/04
C08K5/5313
C08K5/521
C08K3/02
C08G101:00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019179135
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021054942
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆康
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-064263(JP,A)
【文献】特開2004-115797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C08G 101/00
C08L 75/00-75/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールを含む組成物Aとポリイソシアネートを含む組成物Bとから構成され、かかるポリオールとポリイソシアネートとの反応と、該組成物A又は該組成物Bに配合されてなる発泡剤による発泡とにより、ポリウレタンフォームが形成される発泡性組成物にして、
前記組成物Aに、触媒として、少なくとも三量化触媒が含有させられると共に、有機ホスフィン酸金属塩及び赤リンが、別個に或いは共に、前記組成物A及び前記組成物Bの少なくとも何れか一方に含有せしめられ、更に、それら有機ホスフィン酸金属塩及び赤リンが、合計量において、前記ポリオールの50質量部に対して30質量部以上、180質量部以下の割合において含有され、且つ該有機ホスフィン酸金属塩の含有量が、前記ポリオールの50質量部に対して25質量部以上となるように構成したことを特徴とする不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項2】
ポリオールを含む組成物Aとポリイソシアネートを含む組成物Bとから構成され、かかるポリオールとポリイソシアネートとの反応と、該組成物A又は該組成物Bに配合されてなる発泡剤による発泡とにより、ポリウレタンフォームが形成される発泡性組成物にして、
前記組成物Aに、触媒として、少なくとも三量化触媒が含有させられると共に、有機ホスフィン酸金属塩、赤リン及び有機リン酸エステルが、別個に或いは共に、前記組成物A及び前記組成物Bの少なくとも何れか一方に含有せしめられ、更に、それら有機ホスフィン酸金属塩、赤リン及び有機リン酸エステルが、合計量において、前記ポリオールの50質量部に対して30質量部以上、180質量部以下の割合において含有され、且つ該有機ホスフィン酸金属塩及び該赤リンの含有量が、それぞれ、前記ポリオールの50質量部に対して5質量部以上となるように構成したことを特徴とする不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項3】
前記有機リン酸エステルが、モノリン酸エステル及び縮合リン酸エステルからなる群より選択されることを特徴とする請求項2に記載の不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項4】
前記有機リン酸エステルが、トリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェートであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項5】
前記有機ホスフィン酸金属塩が、リン原子に、メチル基、エチル基又はフェニル基が結合してなる構造の有機ホスフィン酸と、Mg、Al、Ca、Ti及びZnからなる群より選ばれた金属との塩であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項6】
前記赤リンが、表面コーティング層を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項7】
前記表面コーティング層が、金属の酸化物乃至は水酸化物及び/又は熱硬化性樹脂により形成されている請求項6に記載の不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項8】
前記三量化触媒が、第四級アンモニウム塩であることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項9】
前記ポリオールが、芳香族系ポリエステルポリオールであることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項10】
前記芳香族系ポリエステルポリオールが、フタル酸系ポリエステルポリオールであることを特徴とする請求項9に記載の不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項11】
前記発泡剤が、ハイドロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィンからなる群より選ばれる有機の発泡剤であることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載の不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【請求項12】
水の含有量が、前記ポリオールの50質量部に対して0.5質量部以下の割合となるように調整されていることを特徴とする請求項1乃至請求項11の何れか1項に記載の不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物に係り、特に、我国の建築基準法にて規定される不燃特性を有するポリウレタンフォームを有利に形成し得る発泡性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリウレタンフォームは、その優れた断熱性や接着性、軽量性等の特性を利用して、主に断熱材料として、建築用内外壁材やパネル等の断熱、金属サイディングや電気冷蔵庫等の断熱、ビル・マンション・冷凍倉庫等の躯体壁面、天井、屋根等の断熱及び結露防止、輸液パイプ等の断熱に用いられ、更には、土木工事において発生する空隙を埋める裏込材や、土木工事に際しての補強材等としても、実用されている。また、そのようなポリウレタンフォームは、一般に、ポリオールに発泡剤、更に必要に応じて、触媒や整泡剤、難燃剤等の各種助剤を配合したポリオール配合液(プレミックス液)からなる組成物Aと、ポリイソシアネートを主体として含む組成物Bとを、混合装置により連続的に又は断続的に混合して、ポリウレタンフォーム用発泡性組成物とし、これを、スラブ発泡法、注入発泡法、スプレー発泡法、ラミネート連続発泡法、軽量盛土工法、注入裏込め工法等の方式により、発泡させて、硬化させることにより、製造されている。
【0003】
しかしながら、上記のようにして形成されるポリウレタンフォームは、火に晒された場合は易燃性であるために、その用途上からも高い難燃性が要求されている。そのため、各種の難燃剤を配合せしめてなる難燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物が提案されてきており、例えば、特表2014-524954号公報(特許文献1)においては、改善された難燃特性を有する吹付け可能な弾性ポリウレタンコーティングを製造するための反応性処方物として、イソシアネートプレポリマー及び任意の難燃性化合物を含むポリイソシアネート成分と、芳香族ポリエステルポリオール、赤リン及び触媒、そして更なる難燃剤等の成分を含むポリオール成分とからなる反応性処方物が提案され、これによって、改善された燃焼性特性を有する弾性ポリウレタンコーティングが形成され得ることが、明らかにされている。なお、そこでは、更に添加、含有せしめられる難燃性添加物として、ハロゲン含有化合物、ホスフェート類、無機フィラー、アンチモンオキシド、亜鉛等が、例示されている。
【0004】
また、特表2014-532098号公報(特許文献2)においては、ポリウレタンフォームの煙抑制剤として、リン酸トリアルキルを用いることが提案され、これによって、燃やした場合に煙の発生が著しく少ない、即ち、改善された発煙抑制特性を有するポリウレタンフォームが得られることが、明らかにされている。そして、そこでは、ポリウレタンフォームの形成のために、ウレタン触媒やイソシアネートの三量化触媒が用いられることや、加工容易性のための金属系無機充填剤、例えば、金属水和物やホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛等の亜鉛塩等を含有せしめることが出来ることを、明らかにしている。
【0005】
さらに、特開2015-193839号公報(特許文献3)においては、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、三量化触媒、発泡剤及び整泡剤と共に、添加剤の一つとして、赤リンの所定量を配合せしめてなる難燃性ウレタン樹脂組成物が明らかにされており、それによって、少量の難燃剤(赤リン)の添加で、優れた難燃性を発現することが出来、且つ取り扱いに優れた難燃性ウレタン樹脂組成物が提供され得ることが、明らかにされている。更に、そこでは、添加剤の一つとして、金属水酸化物、結晶水含有無機化合物、粘土鉱物等の水分放出物質の配合が必須とされている他、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤等も、添加剤として更に配合せしめられ得ることが、明らかにされている。
【0006】
しかしながら、それら特許文献のうち、特許文献1や特許文献2において得られた難燃性ポリウレタンコーティングや発煙抑制性能が改善されたポリウレタンフォームにあっては、その難燃特性において、近年における厳しい難燃化要請に充分に応え得るものではなかったのである。例えば、特許文献1において得られる難燃性ポリウレタンコーティングは、弾性を有する被覆層についての特性を明らかにしているに過ぎないものであって、ポリウレタンフォーム(発泡体)に要求される厳しい難燃特性を充分に満たすものではなかったのであり、更に、特許文献2に開示のポリウレタンフォームにあっても、単に、発煙抑制性能の改善を目的としているに過ぎないものであって、より厳しい難燃性能に係る要請に充分に応え得るものではなかったのである。
【0007】
また、特許文献1や特許文献3において用いられている赤リンは、ポリウレタンフォームの燃焼時に、ポリウレタンフォームの難燃性を高めるのに必要な表面炭化層の形成を促して、炎の伝搬を抑制する等の優れた難燃効果を発揮せしめるものではあるが、難燃効果を高めるべく、その使用量を多くすると、赤リン自体が燃える性質を有しているところから、ポリウレタンフォームに着火した時に、含有せしめられている赤リンが燃焼するようになるために、ポリウレタンフォームの初期発熱量が高くなる問題があり、そして自己消火に至る時間が長くなる問題を内在している。
【0008】
一方、特開2010-195920号公報(特許文献4)や特開2012-236874号公報(特許文献5)等においては、ポリウレタン樹脂に難燃性を付与するためのフィラー(難燃剤)として、有機ホスフィン酸塩化合物を用いることが明らかにされているのであるが、そのような有機ホスフィン酸塩化合物のみを用いて形成されるポリウレタン発泡体にあっては、その着火時に、良好な自己消火性を発揮するものの、その難燃性を高めるのに必要な、ポリウレタン発泡体表面における炭化層の形成が不充分となり、燃焼熱によって炭化層にひび割れが発生し易い問題を内在している。そして、炭化層にひび割れが発生すると、そこから更なる燃焼を招き、発熱量が増大することになる恐れを内在している。
【0009】
ところで、我国の建築基準法においては、材料の耐火・防火性能に関して、難燃材料、準不燃材料及び不燃材料に区分されて、難燃材料から、準不燃材料、更には不燃材料となる程、より厳しい防火性能が要求されているのであるが、ポリオールとポリイソシアネートとを反応せしめると共に、発泡させて得られるポリウレタンフォームからなる発泡体材料に対し、高度の難燃性を付与せしめるべく、上記した公報に開示の如き従来の難燃剤を用いたところで、最も厳しい防火性能の要求される不燃材料における不燃性能を満たすことは、困難なことであった。特に、かかる建築基準法にて規定される不燃材料に要求される特性、即ち放射熱強度:50kW/m2 にて加熱したときに、加熱開始後から20分間の総発熱量が8.0MJ/m2 以下となる不燃特性を得るために、ポリウレタンフォーム用発泡性組成物に対して、上記した公知の難燃剤の配合量を増加せしめたりすると、ポリオールとポリイソシアネートとの反応が阻害されて、目的とする発泡体を得ることが出来なくなったり、また、得られる発泡体の熱伝導率等の物理的乃至は機械的特性が悪化する等の問題が、惹起されるようになるのである。
【0010】
なお、前記建築基準法の規定(施行令第1条第五号)によれば、不燃材料は、上記せる総発熱量を満たすものであると共に、最高発熱速度が、10秒を超えて連続して200kW/m2 を超えることがないこと、そして防炎上有害な、裏面まで貫通する亀裂及び穴がないこととされているのであるが、従来の難燃剤を配合してなるポリウレタン発泡体材料は、ポリウレタン樹脂としての有用な物理的乃至は機械的特性を確保しつつ、そのような不燃性能の要請に充分に応え得るものではなかったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特表2014-524954号公報
【文献】特表2014-532098号公報
【文献】特開2015-193839号公報
【文献】特開2010-195920号公報
【文献】特開2012-236874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、難燃性をより一層高めてなる不燃性のポリウレタンフォームを有利に形成すると共に、燃焼時の発熱量が低く且つ優れた自己消火性を有するポリウレタンフォーム用発泡性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものである。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書の記載から把握され得る発明思想に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0014】
(1) ポリオールを含む組成物Aとポリイソシアネートを含む組成物Bとから構成され 、かかるポリオールとポリイソシアネートとの反応と、発泡剤による発泡とにより 、ポリウレタンフォームが形成される発泡性組成物にして、前記組成物Aに、触媒 として、少なくとも三量化触媒が含有させられると共に、有機ホスフィン酸金属塩 及び赤リンが、別個に或いは共に、前記組成物A及び前記組成物Bの少なくとも何 れか一方に含有せしめられ、更に、それら有機ホスフィン酸金属塩及び赤リンが、 合計量において、前記ポリオールの50質量部に対して30質量部以上の割合にお いて含有され、且つ該有機ホスフィン酸金属塩の含有量が、前記ポリオールの50 質量部に対して25質量部以上となるように構成したことを特徴とする不燃性ポリ ウレタンフォーム用発泡性組成物。
(2) ポリオールを含む組成物Aとポリイソシアネートを含む組成物Bとから構成され 、かかるポリオールとポリイソシアネートとの反応と、発泡剤による発泡とにより 、ポリウレタンフォームが形成される発泡性組成物にして、前記組成物Aに、触媒 として、少なくとも三量化触媒が含有させられると共に、有機ホスフィン酸金属塩 、赤リン及び有機リン酸エステルが、別個に或いは共に、前記組成物A及び前記組 成物Bの少なくとも何れか一方に含有せしめられ、更に、それら有機ホスフィン酸 金属塩、赤リン及び有機リン酸エステルが、合計量において、前記ポリオールの5 0質量部に対して30質量部以上の割合において含有され、且つ該有機ホスフィン 酸金属塩及び該赤リンの含有量が、それぞれ、前記ポリオールの50質量部に対し て5質量部以上となるように構成したことを特徴とする不燃性ポリウレタンフォー ム用発泡性組成物。
(3) 前記有機リン酸エステルが、モノリン酸エステル及び縮合リン酸エステルからな る群より選択されることを特徴とする前記態様(2)に記載の不燃性ポリウレタン フォーム用発泡性組成物。
(4) 前記有機リン酸エステルが、トリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェート であることを特徴とする前記態様(2)又は前記態様(3)に記載の不燃性ポリウ レタンフォーム用発泡性組成物。
(5) 前記有機ホスフィン酸金属塩が、リン原子に、メチル基、エチル基又はフェニル 基が結合してなる構造の有機ホスフィン酸と、Mg、Al、Ca、Ti及びZnか らなる群より選ばれた金属との塩であることを特徴とする前記態様(1)乃至前記 態様(4)の何れか1つに記載の不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
(6) 前記赤リンが、表面コーティング層を有していることを特徴とする前記態様(1 )乃至前記態様(5)の何れか1つに記載の不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性 組成物。
(7) 前記表面コーティング層が、金属の酸化物乃至は水酸化物及び/又は熱硬化性樹 脂により形成されている前記態様(6)に記載の不燃性ポリウレタンフォーム用発 泡性組成物。
(8) 前記三量化触媒が、第四級アンモニウム塩であることを特徴とする前記態様(1 )乃至前記態様(7)の何れか1つに記載の不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性 組成物。
(9) 前記ポリオールが、芳香族系ポリエステルポリオールであることを特徴とする前 記態様(1)乃至前記態様(8)の何れか1つに記載の不燃性ポリウレタンフォー ム用発泡性組成物。
(10) 前記芳香族系ポリエステルポリオールが、フタル酸系ポリエステルポリオール であることを特徴とする前記態様(9)に記載の不燃性ポリウレタンフォーム用発 泡性組成物。
(11) 前記発泡剤が、ハイドロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロ クロロフルオロオレフィンからなる群より選ばれる有機の発泡剤であることを特徴 とする前記態様(1)乃至前記態様(10)の何れか1つに記載の不燃性ポリウレ タンフォーム用発泡性組成物。
(12) 水の含有量が、前記ポリオールの50質量部に対して0.5質量部以下の割合 となるように調整されていることを特徴とする前記態様(1)乃至前記態様(11 )の何れか1つに記載の不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物。
(13) 前記ポリウレタンフォームが、ISO-5660に規定される発熱性試験方法 に準拠して、放射熱強度:50kW/m2 にて加熱したときに、加熱開始から20
分間の総発熱量が8.0MJ/m2 以下である不燃特性を有していることを特徴と
する前記態様(1)乃至前記態様(12)の何れか1つに記載の不燃性ポリウレタ
ンフォーム用発泡性組成物。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明に従う不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物にあっては、ポリオールとポリイソシアネートとの反応触媒として、少なくとも三量化触媒が用いられると共に、難燃剤として、有機ホスフィン酸金属塩と赤リンとが併用、又は有機ホスフィン酸金属塩、赤リン及び有機リン酸エステルが併用されて、それらが、所定の割合において、ポリオール含む組成物Aとポリイソシアネートを含む組成物Bのうちの少なくとも何れか一方に添加、含有せしめられているところから、かかる三量化触媒によって導入されるイソシアヌレート構造の存在下において、有機ホスフィン酸金属塩と赤リン、又は有機ホスフィン酸金属塩、赤リン及び有機リン酸エステルが、それぞれの有する難燃化作用を相乗的に発現せしめ得ることとなるのであり、これによって、得られるポリウレタンフォームの難燃性がより一層高められ得て、総発熱量を効果的に低減し、以て、目的とする不燃性能が有利に付与され得ることとなるのである。
【0016】
特に、そのような本発明に従う発泡性組成物から形成されるポリウレタンフォームにあっては、燃焼時の初期発熱量が有利に低減せしめられ得て、自己消火性を高める効果が効果的に発揮され、以て、その難燃性が有利に高められ得ることとなることに加えて、着火時に、ポリウレタンフォームの表面に炭化層が生成するのを効果的に促進して、その表面にひび割れが発生するのを抑制し、以て、そのひび割れの箇所からの燃焼を阻止して、発熱量が増大するのを阻止する効果をもたらすことになる。
【0017】
かくして、本発明に従って、有機ホスフィン酸金属塩と赤リンとを併用することによって、上述の如き難燃作用の相乗効果により、ポリウレタンフォームの燃焼に際して、その表面に生成する炭化層と自己消火性のバランスがより一層良好となり、着火しても燃え続けることがなく、且つ高い耐熱分解性を有するポリウレタンフォームとなるのであり、これによって、極めて燃焼し難く、また自己消火性の高められたポリウレタンフォームが、有利に提供され得ることとなったのである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に従う不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物について詳細に説明して、その具体的構成を、更に明らかにすることとする。
【0019】
先ず、本発明に従う不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物は、ポリオールを主体として含む組成物Aと、ポリイソシアネートを主体として含む組成物Bとから構成され、それらポリオールとポリイソシアネートとの反応と共に、発泡剤による発泡にて、目的とするポリウレタンフォームが形成されることとなる発泡性組成物であるが、そこで用いられる組成物Aを構成する主たる成分であるポリオールには、ポリイソシアネートと反応してポリウレタンを生じる、公知の各種のポリオール化合物が、単独で又は適宜に組み合わされて、用いられることとなる。そして、そこでは、ポリオールとして、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール等が、好適に用いられるのである。勿論、それらポリオールの他にも、公知の各種のポリオール化合物、例えば、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ポリマーポリオール等も、単独で又は適宜に組み合わされて用いられ得ることは、言うまでもないところである。
【0020】
具体的には、そのようなポリオールの中で、ポリエーテルポリオールは、多価アルコール、糖類、脂肪族アミン、芳香族アミン、フェノール類、マンニッヒ縮合物等の少なくとも1種の開始剤に対し、アルキレンオキシドを反応させて、得られるものである。なお、そこにおいて、アルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、エチレンオキシド等を挙げることが出来る。また、開始剤としての多価アルコールには、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等があり、また糖類としては、シュクロース、デキストロース、ソルビトール等があり、更に脂肪族アミンとしては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンや、エチレンジアミン等のポリアミン等があり、そして芳香族アミンとしては、トリレンジアミンと総称されるフェニレンジアミンの各種のメチル置換体の他、そのアミノ基にメチル、エチル、アセチル、ベンゾイル等の置換基が導入されてなる誘導体や、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、p-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン等が挙げられ、更にまたフェノール類としては、ビスフェノールA、ノボラック型フェノール樹脂等を挙げることが出来る。また、マンニッヒ縮合物としては、フェノール類、アルデヒド類およびアルカノールアミン類をマンニッヒ縮合反応させて得られるマンニッヒ縮合物を挙げることが出来る。
【0021】
また、ポリエステルポリオールとしては、多価アルコール-多価カルボン酸縮合系のポリオールや、環状エステル開環重合体系のポリオール等を挙げることが出来る。そこにおいて、多価アルコールとしては、上記したものを用いることが出来、特に、2価アルコールが好ましく用いられることとなる。また、多価カルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、及びこれらの無水物等を挙げることが出来、更に環状エステルとしては、ε-カプロラクトン等が用いられることとなる。
【0022】
中でも、ポリエステルポリオールとしては、難燃性や相溶性の観点から、芳香族系のポリエステルポリオールを用いることが好ましく、具体的には、フタル酸系ポリエステルポリオールを用いることが好ましく、更にそのようなポリエステルポリオールの2種類以上を組み合わせることも有効である。なお、フタル酸系ポリエステルポリオールには、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びこれらの無水物等と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の二価アルコールとの縮合物からなるフタル酸系ポリエステルポリオールが、好ましく用いられることとなる。このようなフタル酸系ポリエステルポリオールを使用すると、低温(-10℃~5℃程度)下において、現場発泡を実施した場合でも、生じたフォームの建築躯体等からの剥離が惹起され難く、更に現場発泡後のフォーム端部の処理が比較的容易な程度の柔軟性を有する硬質ポリウレタンフォームを得ることが出来る利点がある。特に、ハイドロフルオロオレフィン系発泡剤又はハイドロクロロフルオロオレフィン系発泡剤を含有せしめた際に、組成物としての保存安定性に優れたものを与える特徴がある。
【0023】
一方、組成物Bにおけるポリイソシアネートは、組成物Aに対して配合せしめられて、かかる組成物A中のポリオールと反応して、ポリウレタン(樹脂)を生成するものであって、分子中に2つ以上のイソシアネート基(NCO基)を有する有機イソシアネート化合物であり、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ポリトリレントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートの他、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等を挙げることが出来る。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いられてもよく、また2種以上が併用されてもよい。一般的には、反応性や経済性、取り扱い性等の観点から、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)が、好適に用いられることとなる。
【0024】
なお、かかる組成物B中のポリイソシアネートと前記した組成物A中のポリオールとの使用割合は、形成されるフォームの種類(例えば、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート)によって、適宜に決定されることとなるが、一般に、ポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)とポリオールの水酸基(OH)との比率を示すNCO/OHインデックス(当量比)が、0.9~3.5程度の範囲内となるように、適宜に決定されることとなる。
【0025】
そして、本発明にあっては、上述の如き組成物Aと組成物Bとが混合され、触媒の存在下において反応せしめられると共に、発泡剤により発泡させられて、硬化せしめられることにより、硬質のポリウレタンフォームが形成されることとなるのであるが、そこで用いられる触媒として、少なくとも三量化触媒、換言すればポリイソシアネートの有するイソシアネート基を反応させて、三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進する触媒(イソシアヌレート化触媒)が、組成物Aに含有せしめられることとなる。この三量化触媒としては、公知の各種のものを適宜に選択して、用いることが可能であるが、好ましくは、第四級アンモニウム塩や、オクチル酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、酢酸ナトリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩;トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン等の含窒素芳香族化合物;トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の第三級アンモニウム塩等を挙げることが出来る。これらのうち、第四級アンモニウム塩を用いることが、難燃性の向上の点から、好ましく、中でも、2種類以上の第四級アンモニウム塩を併用することが、更なる難燃性の向上とポリウレタンフォームの密度を低減させることによる施工性の向上の点からも、特に好ましい。
【0026】
ここで有利に用いられる第四級アンモニウム塩における第四級アンモニウム基(窒素原子に4個の有機基が共有結合した形態の1価のカチオン)としては、テトラメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、プロピルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、ヘプチルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、ノニルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ウンデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、トリデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム等の脂肪族アンモニウム基、(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、トリメチルアミノエトキシエタノール、ヒドロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウム等のヒドロキシアンモニウム基、1-メチル-1-アザニア-4-アザビシクロ[2,2,2]オクタニウム、1,1-ジメチル-4-メチルピペリジニウム、1-メチルモルホリニウム、1-メチルピペリジニウム等の脂環式アンモニウム基等が、挙げられる。これらの中でも、触媒活性に優れ、工業的に入手可能であるところから、テトラメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウム、1-メチル-1-アザニア-4-アザビシクロ[2,2,2]オクタニウム、及び1,1-ジメチル-4-メチルピペリジニウム等の第四級アンモニウム基が、好ましく採用されることとなる。
【0027】
また、かくの如き第四級アンモニウム基とイオン結合して、第四級アンモニウム塩を構成する1価のアニオンである有機酸基又は無機酸基としては、例えば、ギ酸基、酢酸基、オクチル酸基、蓚酸基、マロン酸基、コハク酸基、グルタル酸基、アジピン酸基、安息香酸基、トルイル酸基、エチル安息香酸基、メチル炭酸基、フェノール基、アルキルベンゼンスルホン酸基、トルエンスルホン酸基、ベンゼンスルホン酸基、リン酸エステル基等の有機酸基や、ハロゲン基、水酸基、炭酸水素基、炭酸基等の無機酸基が挙げられる。これらの中でも、触媒活性に優れ且つ工業的に入手可能なことから、ギ酸基、酢酸基、オクチル酸基、メチル炭酸基、ハロゲン基、水酸基、炭酸水素基、及び炭酸基が、好ましく採用される。
【0028】
そして、上述のような構成の第四級アンモニウム塩からなる触媒としては、各種のものが市販されており、例えば、U-CAT 18X、U-CAT 2313(サンアプロ株式会社製)、カオーライザーNo.410、カオーライザーNo.420(花王株式会社製)等を挙げることが出来る。
【0029】
なお、このように、触媒の一つとして用いられる三量化触媒の使用量としては、その触媒としての機能を有効に発揮させるべく、組成物A中のポリオール全体の50質量部に対して、0.1~10質量部、好ましくは1~8質量部の範囲内において、選択されることとなる。この三量化触媒の使用量が、0.1質量部よりも少なくなると、ポリイソシアネートの三量化が充分に実現され得ず、そのために難燃性の向上効果を充分に達成することが困難となる等の問題があり、一方10質量部よりも多くなると、反応が進み過ぎて、固化が早くなるため、吹付け施工が困難となる。
【0030】
そして、本発明にあっては、かかる三量化触媒と共に、樹脂化触媒であるウレタン化触媒を併用することも可能である。このウレタン化触媒としては、ジブチルスズジラウレート、オクチル酸ビスマス(2-エチルヘキシル酸ビスマス)、ネオデカン酸ビスマス、ネオドデカン酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等の脂肪酸ビスマス塩、ナフテン酸鉛等の公知のものを挙げることが出来る。
【0031】
また、そのような樹脂化触媒の使用量としては、その触媒としての機能を有効に発揮させるべく、組成物A中のポリオール全体の50質量部に対して、0.1~5質量部、好ましくは0.5~3質量部の範囲内において、選択されることとなる。なお、この樹脂化触媒の使用量が0.1質量部よりも少なくなると、得られるフォームがべたつき、ゴミ等が付着して、外観が悪くなる問題があり、またスプレー発泡操作においては、床等に付着した飛沫がべたつくことになるために、施工性が悪くなる等の問題があり、一方5質量部よりも多くなると、樹脂化反応時に発熱が高くなり、フォームの黄変等、外観に異常をきたし、発泡中に発生する飛沫に含まれる第四級アンモニウム塩を含む触媒により、吹付け施工を行なっている作業現場の作業環境を悪化せしめる恐れがある。
【0032】
さらに、上述の如き三量化触媒や樹脂化触媒に加えて、更に必要に応じて、従来からポリウレタンフォームの製造に際して用いられている公知の触媒が、適宜に選択されて、ポリオールを主体として含む組成物A中に含有せしめられることとなる。例えば、アミン系触媒は、ポリウレタンの初期発泡性を有利に向上せしめ得るものであり、またスキン層とコア層との密度差を変えることなく、フォームの密度を全体的に下げる作用があり、更にフォームのべたつきを改善して、ゴミ等の付着による外観の悪化を有利に阻止し得ると共に、スプレー発泡法においては、床等に付着した飛沫のべたつきによる作業性の悪化等を改善する特徴を発揮するものである。そして、そのようなアミン系触媒としては、化学構造内にOH基やNH基を有する反応性アミン化合物や、環状構造を有する環式アミン化合物を用いることが推奨され、中でも、反応性アミン化合物を触媒として用いることによって、より一層臭気の低減を図ることが出来る。
【0033】
なお、そのようなアミン系触媒として用いられる反応性アミン化合物や環式アミン化合物は、公知のウレタン化触媒の中から適宜に選択され得るところであって、例えば、反応性アミン化合物としては、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、テトラメチルグアニジン、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール、エトキシ化ヒドロキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノ-2-プロパノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、1,4-ビス(2-ヒドロキシプロピル)、2-メチルピペラジン、1-(2-ヒドロキシプロピル)イミダゾール、3,3-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、N-メチル-N’-ヒドロキシエチルピペラジン等を挙げることが出来る。また、環式アミン化合物としては、トリエチレンジアミン、N,N’-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジシクロヘキシルメチルアミン、メチレンビス(ジメチルシクロヘキシル)アミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、モルフォリン、N-メチルモルフォリン、N-エチルモルフォリン、N-(2-ジメチルアミノエチル)モルフォリン、4,4’-オキシジエチレンジモルフォリン、N,N’-ジエチルピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N-メチル-N’-ジメチルアミノエチルピペラジン、1,8-ジアゾビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7等を挙げることが出来る。
【0034】
そして、かかる触媒の一つとして用いられるアミン系触媒の使用量としては、その触媒としての機能を有効に発揮させつつ、臭気や作業環境の悪化等の問題を低減して、有効なフォーム特性を得るべく、ポリオール組成物中のポリオール全体の50質量部に対して、0.1~7質量部、好ましくは0.2~3質量部、より好ましくは0.3~1質量部の範囲内において、選択されることとなる。なお、このアミン系触媒の使用量が0.1質量部よりも少なくなると、触媒としての機能を充分に発揮せしめ難くなると共に、得られるフォームがべたつき、ゴミ等が付着して、外観が悪くなる等の問題があり、またスプレー発泡操作においては、床等に付着した飛沫がべたつくことになるために、施工性が悪くなる等の問題を惹起する。また、かかるアミン系触媒の使用量が7質量部よりも多くなると、得られるポリウレタンフォームの臭気が顕著となり、また発泡中に揮発するアミン系触媒により、吹付け作業環境が悪化する問題を惹起するようになる。このため、臭気の点から、かかるアミン系触媒は、その使用量が少ないことが好ましいのである。
【0035】
しかも、本発明にあっては、上述の如き三量化触媒を、少なくとも触媒の一つとして、組成物Aに含有せしめて、組成物A中のポリオールと組成物B中のポリイソシアネートとを反応させ、ポリウレタンを生成せしめることに加えて、難燃剤として、有機ホスフィン酸金属塩と赤リンとを併用し、それらを、別個に或は共に、組成物A及び組成物Bの少なくとも何れか一方に含有せしめることにより、生成するポリウレタンフォームの難燃性が相乗的に高められ得たのであり、これによって、それら難燃剤を単独で使用するよりも、高度の難燃性を有するポリウレタンフォームが、有利に提供され得たのである。
【0036】
ところで、ここで用いられる有機ホスフィン酸金属塩は、ホスフィン酸を構成するリン原子に、炭素数が1~6の直鎖状のアルキル基やフェニル基等の有機基の1つ又は2つが共有結合されてなる構造の有機ホスフィン酸に、公知の各種の金属がイオン結合して、塩形態を呈するものであって、一般に、リン原子には、メチル基、エチル基又はフェニル基が結合したものが好ましく、また金属としては、Mg、Al、Ca、Ti又はZnであることが望ましく、特に、Al又はZnであることが好ましい。具体的には、(モノ又はジ)メチルホスフィン酸亜鉛、(モノ又はジ)エチルホスフィン酸亜鉛、(モノ又はジ)フェニルホスフィン酸亜鉛、(モノ又はジ)メチルホスフィン酸アルミニウム、(モノ又はジ)エチルホスフィン酸アルミニウム、(モノ又はジ)フェニルホスフィン酸アルミニウム等を挙げることが出来る。
【0037】
また、そこで用いられる赤リンとしては、公知のものが、何れも対象とされ、通常、市販品の中から適宜に選択して用いられることとなる。(例えば、燐化学工業株式会社製の「NOVARED」、「NOVAEXCEL」、日本化学工業株式会社製の「HISHIGUARD」、クラリアントケミカルズ株式会社製の「EXOLIT RP」等の名称にて販売されているものを挙げることが出来る。中でも、そのような粉末状の赤リンは、取扱い性乃至は作業性の向上と共に、樹脂組成物中への分散性を高め、その添加効果を有利に向上せしめる上において、その表面にコーティング層が形成されているものであることが望ましく、具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の金属の水酸化物や、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属の酸化物からなる無機化合物、及び/又はフェノール樹脂、フラン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂による被覆層を粒子表面に形成してなる赤リン粉末が、有利に用いられることとなる。なお、かかる被覆層は、一般に、赤リンの100質量部に対して、1~30質量部程度の割合において、形成されている。
【0038】
さらに、かかる粉末状の赤リンの平均粒径は、一般に1~100μm程度、好ましくは5~50μm程度である。この赤リンの粒径が小さくなり過ぎると、その取扱いや樹脂組成物中への均一な分散が困難となる等の問題を惹起し、またその粒径が大きくなり過ぎても、樹脂組成物中における均一な分散効果を得ることが難しく、そのために本発明の目的を充分に達成し得ない問題を惹起する。
【0039】
そして、上記の如き有機ホスフィン酸金属塩と赤リンとを、ポリウレタンフォームの難燃剤として併用して用いることにより、ポリウレタンフォームの燃焼時に、ポリウレタンフォーム表面に充分な強度を有する炭化層の形成を促し、かかる炭化層にひび割れを生じさせることなく、ポリウレタンフォームの総発熱量の増大を効果的に防ぐ効果と共に、ポリウレタンフォームの燃焼時の初期発熱量を低減せしめ、自己消火性を高める効果が有利に奏されることにより、有機ホスフィン酸金属塩と赤リンのどちらか一方を単独でポリウレタンフォームに含有せしめる場合よりも、それら難燃剤の持つ難燃特性を相乗的に発揮せしめ得、以て、極めて燃焼し難く、自己消火性の高められたポリウレタンフォームが、有利に形成され得ることとなるのである。
【0040】
なお、このような有機ホスフィン酸金属塩や赤リンの使用量としては、それらの使用量の合計において、前記した組成物A中のポリオールの50質量部に対して、30質量部以上となる割合を採用する必要があり、中でも、有利には35質量部以上、より好ましくは40質量部以上の割合が採用されることが望ましい。また、そのような有機ホスフィン酸金属塩と赤リンとの合計量において、有機ホスフィン酸金属塩は、ポリオールの50質量部に対して、25質量部以上の割合となるように構成する必要があり、好ましくは28質量部以上の割合において用いられることとなり、赤リンは、ポリオールの50質量部に対して、5質量部以上の割合となるように構成することが好ましい。なお、それら有機ホスフィン酸金属塩と赤リンの合計量が少なくなり過ぎたり、有機ホスフィン酸金属塩の使用量が少なくなり過ぎたりすると、それら有機ホスフィン酸金属塩と赤リンとの相乗作用による難燃性向上効果が充分に奏され難くなる。一方、それらの使用量が多くなり過ぎると、ポリウレタンフォームを形成するための触媒効果を低下させ、発泡阻害等の問題が惹起されるようになるところから、それら有機ホスフィン酸金属塩と赤リンの合計量の上限としては、ポリオールの50質量部に対して、一般に180質量部以下、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下となる割合が、有利に採用されることとなる。
【0041】
また、本発明にあっては、上述の如き有機ホスフィン酸金属塩及び赤リンと共に、更に、有機リン酸エステルが併用されて、それらが、本発明に従う発泡性組成物中に存在せしめられていることが、望ましい。かかる有機リン酸エステルは、ポリウレタンフォームの燃焼時の発熱量を低下せしめる効果を有することで、そのような発泡性組成物から形成されるポリウレタンフォームの難燃性が、相乗的により一層向上せしめられ得て、我国の建築基準法にて規定される不燃材料に合致する不燃性ポリウレタンフォームが、有利に形成されることとなる。なお、それら有機ホスフィン酸金属塩、赤リン及び有機リン酸エステルは、別個に或いは共に、前記した組成物A及び組成物Bの少なくとも何れか一方に、含有せしめられることとなるのである。
【0042】
ところで、ここで用いられる有機リン酸エステルとしては、特に限定されるものではなく、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等の公知のものを、単独で又は組み合わせて、用いることが出来る。この有機リン酸エステルは、薬液(組成物Aや組成物B)の粘度を効果的に低下せしめ得て、吹付け等の作業性を向上せしめ得る減粘剤としても、作用するものである。
【0043】
具体的には、それら有機リン酸エステルの中で、モノリン酸エステルとしては、特に限定はないが、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル-2-アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レジルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、ホスファフェナントレン、トリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェート等を挙げることが出来る。
【0044】
また、縮合リン酸エステルとしては、特に限定はないが、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ-2,6-キシリル)ホスフェート(大八化学工業株式会社製PX-200)、ハイドロキノンポリ(2,6-キシリル)ホスフェート、並びにこれらの縮合物等の縮合リン酸エステルを挙げられる。更に、市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(CR-733S)、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート(CR-741)、芳香族縮合リン酸エステル(CR747)、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(株式会社ADEKA製アデカスタブPFR)、ビスフェノールAポリクレジルホスフェ-ト(FP-600、FP-700)等を挙げることが出来る。
【0045】
上記の中でも、硬化前の組成物中の粘度を低下させる効果と初期の発熱量を低減させる効果が高いため、モノリン酸エステルを使用することが好ましく、特にトリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェートを使用することが、より好ましい。
【0046】
そして、このような有機リン酸エステルの使用量としては、同時に用いられる有機ホスフィン酸金属塩及び赤リンとの合計使用量において、前記した組成物A中のポリオールの50質量部に対して、30質量部以上となる割合を採用する必要があり、中でも、有利には35質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上の割合が採用されることが望ましい。また、かかる有機ホスフィン酸金属塩、赤リン及び有機リン酸エステルの併用系において、有機ホスフィン酸金属塩及び赤リンは、それぞれ、ポリオールの50質量部に対して、5質量部以上の割合となるように構成する必要があり、好ましくは10質量部以上の割合において用いられ、これによって、有機リン酸エステルと赤リンの使用量を効果的に低減させることが可能となる。なお、それら有機ホスフィン酸金属塩、赤リン及び有機リン酸エステルの合計量が少なくなり過ぎたり、有機ホスフィン酸金属塩や赤リンの使用量が少なくなり過ぎたりすると、それら有機ホスフィン酸金属塩、赤リン及び有機リン酸エステルの三者の相乗作用による難燃性向上効果が充分に奏され難くなる。一方、それらの使用量が多くなり過ぎると、ポリウレタンフォームを形成するための触媒効果を低下させ、発泡阻害等の問題が惹起されるようになるところから、それら有機ホスフィン酸金属塩、赤リン及び有機リン酸エステルの合計量の上限としては、ポリオールの50質量部に対して、一般に180質量部以下、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下となる割合が、有利に採用されることとなる。
【0047】
さらに、本発明にあっては、上述の如き有機ホスフィン酸金属塩と赤リンの併用、或いは有機ホスフィン酸金属塩、赤リン及び有機リン酸エステルの併用に加えて、更に、添加剤の一つとして、金属水酸化物を、前記した組成物A及び/又は組成物Bに配合させて、含有せしめることが可能であり、それによってポリウレタンフォームの不燃性をより一層高めることが出来る。なお、そのような金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等を挙げることが出来、これらが単独で若しくは2種以上の組み合わせにおいて、組成物A及び/又は組成物Bに配合せしめられることとなる。また、かかる金属水酸化物の使用量としては、組成物A中のポリオールの50質量部に対して、一般に、5~50質量部程度、好ましくは10~40質量部の範囲内であることが好ましい。
【0048】
ところで、本発明に従う不燃性ポリウレタンフォーム用発泡性組成物を構成する組成物A又は組成物Bには、上記した配合成分乃至は含有成分に加えて、更に、生成するポリウレタンを発泡させるための発泡剤が配合され、加えて、必要に応じて、公知の整泡剤や、更なる他の難燃剤等の、従来から知られている各種の助剤を適宜に選択して、配合せしめることも可能である。
【0049】
そして、ここで用いられる発泡剤としては、公知の各種非フロン系・フロン系の発泡剤が、適宜に選択され得るものであるが、特に、本発明にあっては、非フロン系発泡剤(及び/又はその発生源)が有利に用いられ、具体的には、ハイドロカーボン(HC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)等の有機の発泡剤が、含有せしめられる。
【0050】
例えば、それら本発明において用いられ得る発泡剤の一つである、フロン系発泡剤のハイドロフルオロカーボン(HFC)としては、ジフルオロメタン(HFC32)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(HFC125)、1,1,1-トリフルオロエタン(HFC143a)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1-ジフルオロエタン(HFC152a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC227ea)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC365mfc)、及び1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン(HFC4310mee)等を挙げることが出来る。
【0051】
また、本発明において好適に用いられる非フロン系発泡剤の一つであるハイドロカーボン(HC)としては、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、イソブタン等を挙げることが出来る。更に、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)としては、例えば、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO1225ye)等のペンタフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO1234ye)等のテトラフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO1243zf)等のトリフルオロプロペン、テトラフルオロブテン(HFO1345)類、ペンタフルオロブテン異性体(HFO1354)類、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO1336mzz)等のヘキサフルオロブテン異性体(HFO1336)類、ヘプタフルオロブテン異性体(HFO1327)類、ヘプタフルオロペンテン異性体(HFO1447)類、オクタフルオロペンテン異性体(HFO1438)類、ノナフルオロペンテン異性体(HFO1429)類等を挙げることが出来、加えて、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)としては、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)、ジクロロトリフルオロプロペン(HCFO1223)等を挙げることが出来る。特に、これらハイドロフルオロオレフィン(HFO)やハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)は、化学的に不安定であるために、地球温暖化係数が低く、そのために、環境に優しい発泡剤として、好適に用いられ得るのである。
【0052】
なお、本発明にあっては、発泡剤として、上述したものの他、水を使用することも可能である。しかしながら、そのような水がポリオールを含む組成物A中に存在するようになると、かかる組成物Aとポリイソシアネート含有の組成物Bとが混合せしめられて、反応させられるときに、かかる水とポリイソシアネートとが反応して、ポリイソシアネートが消費されてしまい、反応系のポリイソシアネートが少なくなることで、イソシアヌレート環の総量が少なくなり、生成するポリウレタンフォームの難燃性の低下を招くようになる恐れがある。このことから、本発明に従う発泡性組成物中において、水は実質的に含有されていないことが望ましく、そのため、水の含有量は、ポリオール50質量部に対して、一般に0.5質量部以下、好ましくは0.3質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下となるように、調整されることとなる。
【0053】
また、整泡剤は、ポリウレタンフォームのセル構造を均一に整えるために用いられるものであって、ここでは、シリコーン系のものや非イオン系界面活性剤が、好適に採用される。具体例として、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ラウリル脂肪酸エチレンオキシド付加物等を挙げることが出来、これらのうちの、1種が単独で、或いは2種以上が組み合わされて、用いられる。なお、この整泡剤の配合量は、所期のフォーム特性や、使用する整泡剤の種類等に応じて適宜に決定されるところであるが、組成物A中のポリオール全体の50質量部に対して、0.1~10質量部、好ましくは1~8質量部の範囲で選択される。
【0054】
そして、上述の如くして得られた、ポリオールを含む組成物Aとポリイソシアネートを含む組成物Bとを用いて、少なくとも三量化触媒の存在下で反応させて、発泡・硬化せしめるに際しては、公知の各種のポリウレタンフォームの製造手法が、適宜に採用され得るところであって、例えば、それら組成物Aと組成物Bとの混合物を面材上に塗布して、板状に発泡・硬化を行なうラミネート連続発泡法、電気冷蔵庫等の断熱性の要求される空間内や軽量・高強度ボードのハニカム構造内、土木工事において発生する空隙内等に注入、充填して、発泡・硬化を行なう注入発泡法、または現場発泡機のスプレーガンヘッドから所定の被着体(構造体)へ吹き付けて発泡・硬化させるスプレー発泡法等によって、本発明に従う発泡性組成物は発泡・硬化せしめられ、目的とする、高度の難燃性が付与されてなるポリウレタンフォームにて、我国の建築基準法により規定される不燃材料が有利に形成されることとなるのである。
【実施例
【0055】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、比較例と対比することにより、本発明の特徴を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には、上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。なお、以下に示す百分率(%)及び部は、特に断りのない限り、何れも、質量基準にて示されるものである。
【0056】
また、以下の実施例や比較例において求められたポリウレタンフォームの密度や最大発熱速度、総発熱量、自己消火時間及び燃焼試験後の表面のひび割れの状態について、それぞれ、以下の如くして評価乃至は測定した。
【0057】
(1)最大発熱速度及び総発熱量の測定
測定対象である発体から、100mm×100mm×50mmのサイズのコーンカロリーメーター試験用サンプルを切り出し、ISO-5660に規定される燃焼試験法に準拠して、放射熱強度50kW/m2 にて、20分間加熱したときの最大発熱速度及び総発熱量を、それぞれ、測定する。そして、かかる最大発熱速度が200kW/m2 以下である場合及び総発熱量が8MJ/m2 以下である場合を合格とする。
【0058】
(2)密度の測定
発泡体から切り出された前記コーンカロリーメーター試験用サンプルについて、その寸法を、ノギスを使用して計測する一方、電子天秤を用いて、その質量を計測して、それら得られた計測値から、かかるサンプル(発泡体)の密度を算出する。
【0059】
(3)自己消火時間の測定
前記ISO-5660に準拠した燃焼試験を実施したときの、加熱による着火から火が消えるまでの時間を測定した。
【0060】
(4)ひび割れ(残渣)の状態の評価
前記ISO-5660に準拠した燃焼試験を実施したときに得られる、試験終了後の前記試験用サンプルにおいて、表面にひび割れが認められない場合には「○」とし、その表面にひび割れが観察される場合には「×」とし、更に、ひび割れがそのサンプル裏面まで到達した場合には「××」として、評価する。
【0061】
先ず、以下の実施例及び比較例において用いられる成分として、以下の各種原料を準備した。
ポリオール化合物:フタル酸系ポリエステルポリオール(川崎化成工業株式会社製RF K505、水酸基価:250mgKOH/g)
:フタル酸系ポリエステルポリオール(川崎化成工業株式会社製RD K133、水酸基価:315mgKOH/g)
三量化触媒:第四級アンモニウム塩(サンアプロ株式会社製U-CAT 18X)
:第四級アンモニウム塩(花王株式会社製カオーライザーNo.420)
樹脂化触媒:オクチル酸ビスマス(日本化学産業株式会社製プキャット25)
:イミダゾール系触媒(東ソー株式会社製TOYOCAT-DM70)
難燃剤:ジエチルホスフィン酸アルミニウム(クラリアントケミカルズ株式会社製EX OLIT OP930、平均粒子径(D50):3~5μm)
:ジエチルホスフィン酸アルミニウム(クラリアントケミカルズ株式会社製EX OLIT OP935、平均粒子径(D50):2~3μm)
:赤リン(燐化学工業株式会社製ノーバエクセル140、赤リン成分:92%以 上、平均粒子径:24~36μm)
:赤リン(燐化学工業株式会社製ノーバレッド120、赤リン成分:85%以上 、平均粒子径:20~30μm)
:有機リン酸エステル[TCPP:トリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフ ェート]
:有機リン酸エステル(ポリリン酸エステル:株式会社ADEKA製アデカスタ ブPFR)
発泡剤:HCFO-1233zd(Honeywell社製1-クロロ-3,3,3- トリフルオロプロペン)
:HFO-1336mzz(Chemours社製1,1,1,4,4,4-ヘ キサフルオロ-2-ブテン)
:HFC365mfc(SOLVAY社製1,1,1,3,3-ペンタフルオロ ブタン)
:HFC245fa(セントラル硝子株式会社製1,1,1,3,3-ペンタフ ルオロプロパン)
:水
整泡剤:シリコーン系整泡剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパ ン合同会社製Niax Silicone L-6100)
【0062】
-ポリオール組成物(組成物A)の調製-
上記で準備した各種の原料、即ち、ポリオール、三量化触媒、樹脂化触媒、アミン系触媒、難燃剤、発泡剤及び整泡剤を、下記表1~表3に示される各種の組み合わせ及び配合割合において、均一に混合せしめて、実施例1~15及び比較例1~12に係る各種のポリオール組成物を、それぞれ、調製した。
【0063】
-ポリイソシアネート組成物(組成物B)の調製-
ポリイソシアネートとして、ポリメリックMDI(万華化学ジャパン株式会社製Wannate PM-130)を準備して、このポリイソシアネートのみによって、組成物Bを構成した。
【0064】
-ポリウレタンフォームの製造-
上記で得られた各種のポリオール組成物(組成物A)の80部とポリイソシアネートのみからなる組成物Bの80部(質量比1:1)とを、それぞれ、液温20℃に調節した後、300容量部のポリプロピレン製容器に収容して、撹拌機:TKホモディスパー(プライミクス株式会社製)を用いて、10秒間混合した。その後、その混合した液を2000容量部のポリプロピレン製容器に注ぎ、発泡・硬化せしめて、目的とする発泡体を得た。なお、比較例11においては、組成物Aと組成物Bを混合した後、70℃の恒温槽に12時間保持して硬化させることにより、目的とする発泡体を得た。また、比較例10においては、比較例11と同様の条件で発泡体を作製しようとしたものの、硬化することはなかった。
【0065】
そして、かくして得られた各種のポリウレタンフォームを用いて、その密度、最大発熱速度、総発熱量、自己消火時間及びひび割れ(残渣)の状態について、それぞれ測定乃至は評価して、それら得られた結果を、それぞれ、下記表1~表3にまとめて示した。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
かかる表1及び表2の結果から明らかなように、本発明に従う実施例1~15において採用された、ポリオール組成物(組成物A)とポリイソシアネート(組成物B)との組み合わせからなる発泡性組成物にあっては、何れも、ISO-5660に準拠した燃焼試験法において、総発熱量(20分)が8MJ/m2 以下となる、高度の難燃性を有するポリウレタンフォームを得ることが出来ると共に、火が着いてから自己消火に至るまでの時間が短いことが、確認された。また、燃焼試験後のサンプルにおいては、何れも、表面にひび割れが何等認められず、高い難燃性を実現できるものであることが理解される。
【0070】
これに対して、表3に示される結果から明らかな如く、難燃剤として、有機リン酸エステルは用いられているものの、有機ホスフィン酸金属塩や赤リンは用いられていない比較例9や、何等の難燃剤も含有せしめられていない比較例12にあっては、サンプル裏面にまで到達するひび割れが発生して、不燃材料となるポリウレタンフォームの形成が困難であることが認められた。また、有機ホスフィン酸金属塩が用いられず、赤リン又は赤リンと有機リン酸エステルが使用されている比較例1,2及び5では、燃焼試験後のサンプル表面に、ひび割れは観察されないものの、自己消火されるまでの時間が長くなっていることが確認された。加えて、比較例2の如く、赤リンの添加量を多くすると、総発熱量(20分)は減少するものの、自己消火時間が長くなることが明らかとなった。
【0071】
さらに、比較例3,4及び6にあっては、難燃剤として有機ホスフィン酸金属塩又は有機ホスフィン酸金属塩及び有機リン酸エステルは用いられているものの、赤リンが用いられていないことから、何れも、燃焼試験後のサンプル表面に、ひび割れが観察された。更にまた、難燃剤としての有機ホスフィン酸金属塩の使用量が少ない比較例7及び8の場合にあっては、総発熱量(20分)が8MJ/m2 よりも大きな値となり、建築基準法にて規定される不燃特性を有するポリウレタンフォームを得ることが出来なかった。加えて、ポリウレタンフォームの形成に際して、三量化触媒を用いることなく、樹脂化触媒を用いてなる比較例10の場合にあっては、発泡体の硬化が充分に進行せず、その為に、ISO-5660に準拠した試験に供し得るサンプルを得ることが出来ない結果となった。そして、2種の樹脂化触媒を併用した比較例11のポリウレタンフォームにあっては、三量化触媒によって導入されるイソシアヌレート構造が存在しないために、所定量の難燃剤が添加されていても、最大発熱速度が規定値以上となることが明らかとなった。