(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】背負い式送風作業機
(51)【国際特許分類】
E01H 1/08 20060101AFI20230703BHJP
F04D 25/08 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
E01H1/08 B
F04D25/08 301Z
(21)【出願番号】P 2019182030
(22)【出願日】2019-10-02
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢司
(72)【発明者】
【氏名】千葉 光胤
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-204931(JP,A)
【文献】特開2014-148951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 1/08
F04D 25/08
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の背中に背負うように被着される背中フレームと、該背中フレームに搭載されるボリュートケースと、前記ボリュートケース内に装備される遠心ファンと、前記ボリュートケースに組み付けられ前記遠心ファンを回転させる電動モータと、前記背中フレームに取り付けられ前記電動モータに給電するバッテリとを備えた背負い式送風作業機であって、
前記背中フレームは、上段部に、背負い用の肩掛け帯を備えると共に前記ボリュートケースが配備され、
前記上段部とは別体の下段部に
、前記バッテリの搭載スペースを備え
、
前記下段部は、前記ボリュートケースの下側に設けた連結部で前記上段部に連結され、前記バッテリの搭載スペースには、複数の前記バッテリが上下に配列されたバッテリ保持部が設けられていることを特徴とする背負い式送風作業機。
【請求項2】
前記バッテリの搭載スペースは、前後方向の長さに比べて上下方向と左右方向の長さが長いことを特徴とする請求項1記載の背負い式送風作業機。
【請求項3】
前記下段部に配備された部品の重量が前記上段部に配備された部品の重量より重いことを特徴とする請求項1又は2記載の背負い式送風作業機。
【請求項4】
前記上段部に搭載された部品の重心位置が前記下段部に搭載された部品の重心位置より前側にあることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の背負い式送風作業機。
【請求項5】
前記下段部に搭載された部品の前後方向における後方側の端部は、前記上段部に搭載された部品の前後方向における後方側の端部と同等の位置又はより後方の位置にあることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載の背負い式送風作業機。
【請求項6】
前記遠心ファンは、前記電動モータに対して後方側に配置されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項記載の背負い式送付作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背負い式送風作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の背負い式送風作業機(ブロア)は、ショルダーストラップにて作業者の背中に背負うようにした背負いフレームと、背負いフレームに搭載されたボリュートケースと、ボリュートケース内に回転可能に支持された遠心ファンと、ボリュートケースに組み付けられ遠心ファンを回転させる電動モータと、背負いフレームに着脱自在に取り付けられ電動モータに給電するバッテリパックとを備えたものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の背負い式送風作業機は、重量物である電動モータやバッテリパックが搭載された背負いフレームをショルダーストラップのみで作業者に被着している。このため、作業を長時間継続するに際して、肩に集中して大きな負荷が掛かり、肩の疲労が大きくなる問題があった。
【0005】
また、従来の背負い式送風作業機は、作業中に送風圧の反力で背負いフレームが作業者の背中から離れる方向に移動しようとすることがあり 、これによっても肩への負荷が大きくなり、肩の疲労が大きくなる問題があった。また、上記した送風圧の反力や、背中に搭載した重量物の重力に対抗して、作業者が後方(腰や脚を起点として背中側に回転する方向)へ倒れないように踏ん張ることで、腰や脚への負担が大きくなってしまう問題があった。
【0006】
そして、前述したように肩・腰や脚への負担が大きくなることを避けようとすると、容量の大きなバッテリを搭載することができなくなるので、長時間の継続作業ができなくなるという問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものである。すなわち、作業中の肩・腰・脚への負荷を少なくして、肩・腰・脚の疲労を軽減すること、大きなバッテリを搭載して、長時間の継続作業ができるようにすること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
作業者の背中に背負うように被着される背中フレームと、該背中フレームに搭載されるボリュートケースと、前記ボリュートケース内に装備される遠心ファンと、前記ボリュートケースに組み付けられ前記遠心ファンを回転させる電動モータと、前記背中フレームに取り付けられ前記電動モータに給電するバッテリとを備えた背負い式送風作業機であって、前記背中フレームは、上段部に、背負い用の肩掛け帯を備えると共に前記ボリュートケースが配備され、前記上段部とは別体の下段部に、前記バッテリの搭載スペースを備え、前記下段部は、前記ボリュートケースの下側に設けた連結部で前記上段部に連結され、前記バッテリの搭載スペースには、複数の前記バッテリが上下に配列されたバッテリ保持部が設けられていることを特徴とする背負い式送風作業機。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、前述した特徴を具備しており、大きなバッテリを搭載しても、背中フレームの下段部を腰で支持することができ、作業中の肩、腰、及び脚への負担を少なくすることができる。また、作業中に送風圧の反力が加わった場合にも、重量配分の大きい背中フレームの下段部が腰で支持されるので、腰や脚を基点とする回転方向の負担が軽減されて、過度に肩や腰や脚への負担がかかることがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。図示の矢印は、Xの方向が前方向(その逆が後方向)、Yの方向が横(左右いずれかの)方向、Zの方向が上方向(その逆が下方向)を指している。
【0012】
図1~
図5に示すように、背負い式送風作業機1は、背中フレーム2と、背中フレーム2に搭載されるボリュートケース3と、ボリュートケース3内に装備される遠心ファン30と、ボリュートケース3に組み付けられて遠心ファン30を回転させる電動モータ4と、背中フレーム2に取り付けられて電動モータ4に給電するバッテリ5とを備えている。そして、ボリュートケース3の吹き出し口3Aには、送風筒31が接続されている。作業者Mは、
図5に示すように、背負い式送風作業機1を背負った状態で送風筒31を手で操作しながら、落ち葉の清掃等の送風作業を行う。
【0013】
背中フレーム2は、作業者の背中に背負うように被着される枠体であり、上段部2Aと下段部2Bを備えている。背中フレーム2の上段部2Aと下段部2Bは、その両方の前側が背当て面20になっており、上段部2Aの上側には、取手21が設けられている。図示の例では、上段部2Aと下段部2Bは別体で構成され、両者は連結部2Cで連結されている。
【0014】
背中フレーム2の上段部2Aには、ボリュートケース3が搭載されている。ボリュートケース3内には、
図4に示すように、遠心ファン30が装備されており、遠心ファン30を回転させる電動モータ4が上段部2Aに支持されている。上段部2Aには、前述した背当て面20の背面側に、電動モータ4が配備され、電動モータ4に対しての後方側に遠心ファン30が配置されている。重量の重い電動モータ4が背中フレーム2側に配置されることで、上段部2Aに搭載される部品の重心位置G1は、
図2に示すように、背中フレーム2に近い位置になる。
【0015】
背中フレーム2の下段部2Bは、前述したバッテリ5の搭載スペースが備えられている。下段部2Bにおけるバッテリ5の搭載スペースには、バッテリ保持部50が支持されており、バッテリ保持部50は、バッテリ5を長手方向に沿ってスライド自在に保持している。バッテリ保持部50は、バッテリ5が長手方向を横向きにして、上下に複数配列されるように、複数のバッテリ保持部51,52を備えている。
【0016】
全てのバッテリ5の搭載スペースは、
図2に示すように、前後方向(図示X方向)に沿って長さL1を有すると共に、上下方向(図示Z方向)に沿って長さL2を有し、また、
図3に示すように、左右方向(図示Y方向)に沿って長さL3を有している。そして、このバッテリ5の搭載スペースは、前後方向の長さL1に比べて上下方向の長さL2と左右方向の長さL3がそれぞれ長いスペースになっている。
【0017】
背中フレーム2の下段部2Bには、複数のバッテリ5を配備することで、下段部2Bに配備された部品(バッテリ5とバッテリ保持部50)の重量が、背中フレーム2の上段部2Aに配備された部品(ボリュートケース3と遠心ファン30と電動モータ4)の重量より重くなっている。
【0018】
また、背中フレーム2の上段部2Aに搭載された部品の前後方向における後方側の端部(
図2のT1の位置)と下段部2Bに搭載された部品の前後方向における後方側の端部(
図2のT2の位置)とを比較した場合、
図2に示したT2の位置が
図2に示したT1の位置に対して同等又はそれより後方の位置になっている。また、背中フレーム2の上段部2Aに搭載された部品の重心位置G1が、下段部2Bに搭載された部品の重心位置G2より前側(図示X方向側)になっている。
【0019】
このような背負い式送風作業機1は、
図5に示すように、背中フレーム2の上段部2Aが背負い用の肩掛け帯6を備えており、肩掛け帯6を作業者Mの肩に掛けて背中フレーム2を背負うようにして送風作業を行う。この際、背中フレーム2の上段部2Aに搭載された部品と、下段部2Bに搭載された部品の重量配分によって、肩掛け帯6を作業者Mの肩に掛けた状態では、下段部2Bが前方に移動するように、作業者Mの肩周りに背中フレーム2が回転するように支持される。このため、作業中は、下段部2Bが作業者Mの身体に近づく状態が維持されるようになる。これによると、作業者Mの肩に掛かる負担が作業者の腰当たりに分散されることになり、作業中の肩、腰、及び脚への負担が少なくなる。
【0020】
そして、下段部2Bに搭載されるバッテリ5の搭載スペースは、前後方向の長さL1に比べて、上下方向の長さL2と左右方向の長さL3が長くなっているので、大きな重量のバッテリ5が、比較的広い面積で腰付近に支持されることになり、安定した状態で背中フレーム2を背負うことができる。
【0021】
更には、
図5に示すように、下段部2Bに腰巻き用の腰巻き帯7を設けて、腰巻き帯7を腰に巻き付けるようにすることで、下段部2Bを固定することができる。このように下段部を2Bを腰に固定した場合には、より安定した状態で背中フレーム2を背負うことができる。
【0022】
この際、背中フレーム2は、上段部2Aと下段部2Bが連結部2Cで連結されていることが好ましく、更に、連結部2Cは、屈曲自在であることが好ましい。上段部2Aと下段部2Bを別体にして連結することで、重量配分の大きい下段部2Bを上段部2Aの動きから切り離して、作業者Mの腰付近に固定しておくことができる。これにより、作業中に送風圧の反力が加わって上段部2Aが移動してしまう場合であっても、重量配分の大きい背中フレーム2の下段部2Bが腰付近で支持されることで、腰や脚を基点とする回転方向の負担が軽減されることになり、作業者Mにとっては過度に肩・腰・脚へ負担がかかることがない。上段部2Aと下段部2Bは、作業中は連結されているが、非作業中には両者が分離可能であっても良い。
【0023】
このような背負い式送風作業機1は、重く大きなバッテリ5を搭載した場合にも、その重量によってより、安定して背中フレーム2を背負うことができ、作業者への負担を軽減することできる。このため、大きなバッテリ5を複数配置して、背負い式送風作業機1の作業を長時間継続させることができる。この際、複数のバッテリ5の配置は、バッテリ5の長手方向を横向きにして、複数のバッテリが上下に配列されるようにしているので、複数のバッテリ5を身体に近づけた状態で、広い面積で腰付近に支持することができる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0025】
1:背負い式送風作業機,
2:背中フレーム,2A:上段部,2B:下段部,2C:連結部,
20:背当て面,21:取手,
3:ボリュートケース,3A:吹き出し口,30:遠心ファン,31:送風筒,
4:電動モータ,5:バッテリ,50,51,52:バッテリ保持部,
6:肩掛け帯,7:腰巻き帯