(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】床見切材
(51)【国際特許分類】
E04F 19/02 20060101AFI20230703BHJP
E04F 15/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
E04F19/02 T
E04F15/00 S
(21)【出願番号】P 2019189847
(22)【出願日】2019-10-17
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221580
【氏名又は名称】東都積水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小河原 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 誠
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-041837(JP,U)
【文献】特表2001-527611(JP,A)
【文献】特開2013-181281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 19/02
E04F 15/00
E04F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一床面と、該第一床面よりも低い第二床面との段差部に跨って設置される樹脂製の床見切材であって、
上下に延びて前記第一床面と前記第二床面との境界部分に位置される脚部と、該脚部の上端部から前記第一床面の側へ延びる第一腕部と、該脚部の上端側の部分から前記第二床面の側へ延びる第二腕部と、を備え、
前記第一腕部は、少なくとも先端側の部分が、前記脚部および前記第二腕部よりも軟質の部材で形成されており、
前記第二腕部は、先端部にアール部を有し
、
前記第二腕部の下面の最下部と、前記第一腕部の基端部の下面との間の高低差が、前記第一床面と前記第二床面との段差量のバラ付き分だけ該段差量よりも大きくなっていることを特徴とする床見切材。
【請求項2】
請求項1に記載の床見切材であって、
前記第二腕部は、少なくとも先端側の下面に、前記第二床面に対して面接触される平坦な当接部を有していることを特徴とする床見切材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の床見切材であって、
前記第二腕部は、基端側の下面に、凹部を有していることを特徴とする床見切材。
【請求項4】
請求項1ないし請求項
3のいずれか1項に記載の床見切材であって、
前記第二腕部の上面に、該第二腕部の先端部へ向かって下り勾配に延びるスロープ部が形成され、
該スロープ部は、前記脚部の上端の前記第一腕部側の部分から開始されていることを特徴とする床見切材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、床見切材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建物には床(または床部)が設けられる。床部には、例えば、第一床面と、第一床面よりも低い第二床面とが段差部を有して隣接形成されるような場合が存在している。このような場合、床部には、第一床面と第二床面との間の段差部に跨るように床見切材が設置される(例えば、特許文献1参照)。床見切材は、床材の見切部分を整えるための部材である。段差部には段差部用の床見切材が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された床見切材は、複数の部品を組み合わせた複雑な構造になっているため、部品コストがかかり、また、施工に手間がかかることで、工期が長くなったり施工コストがかかったりするなどの問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記した問題点の改善に寄与することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に対して、本発明は、
第一床面と、該第一床面よりも低い第二床面との段差部に跨って設置される樹脂製の床見切材であって、
上下に延びて前記第一床面と前記第二床面との境界部分に位置される脚部と、該脚部の上端部から前記第一床面の側へ延びる第一腕部と、該脚部の上端側の部分から前記第二床面の側へ延びる第二腕部と、を備え、
前記第一腕部は、少なくとも先端側の部分が、前記脚部および前記第二腕部よりも軟質の部材で形成されており、
前記第二腕部は、先端部にアール部を有し、
前記第二腕部の下面の最下部と、前記第一腕部の基端部の下面との間の高低差が、前記第一床面と前記第二床面との段差量のバラ付き分だけ該段差量よりも大きくなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上記構成によって、床見切材の構造を簡略化して部品コストを下げたり、施工を容易化して工期の短縮や施工コストの低下を図ったりすることなどができる。
また、第二腕部の下面の最下部と、第一腕部の基端部の下面との間の高低差が、第一床面と第二床面との段差量のバラ付き分だけ段差量よりも大きくなっていることで、床見切材を、第一床面や第二床面を構成する床材の厚みの誤差によって生じる段差量のバラ付きを吸収できる形状にしつつ、第一腕部と第二腕部との高さの差を最小限に抑えることができる。よって、床見切材を見栄えの良いものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態にかかる床見切材が設けられる建物の居室の、クローゼットの周辺部分を示す斜視図である。
【
図2】
図1のクローゼットの内外の様子を示す斜視図である。
【
図3】
図2と同様のクローゼットの内外の様子を示す側面図(縦断面図)である。
【
図5】
図4の床見切材を段差部に施工した状態を示す縦断面図である。
【
図6】第一床面と第二床面との段差量にバラ付きがある場合の、
図5と同様の縦断面図である。
【
図7】床見切材が傾いて施工された場合の、
図5と同様の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1~
図8は、この実施の形態を説明するためのものである。
【実施例1】
【0010】
<構成>以下、構成について説明する。
【0011】
図1に示すように、住宅などの建物1には床(床部2)が設けられる。この床部2には、
図2に示すように、第一床面3と、第一床面3よりも低い第二床面4とを隣接形成することで、間に段差部5を有するものが存在する。この場合、床部2には、必要に応じて、第一床面3と第二床面4との間の段差部5に跨るように床見切材6が設置される。
【0012】
ここで、段差部5は、例えば、第一床面3と、第二床面4とに、それぞれ厚みの異なる床材を使用することなどによって発生される。第一床面3は、例えば、クローゼットなどの収納部7の床面(収納内床面)などとすることができる。また、第二床面4は、例えば、収納部7を有する居室8の床面(居室床)などとすることができる。この場合、段差部5は、収納部7の扉9(例えば、折戸など)の開閉領域11、または、それよりも収納部7の内側となる位置などに形成される。
図3では、段差部5は、収納部7の入口部に設けられた折戸縦枠12よりも内側(居室8側)の位置に形成されている。
【0013】
床見切材6は、床材の見切部分を整えるための部材である。段差部5には段差部用の床見切材6が用いられる。段差部用の床見切材6は、段差部5の形状を整えて、段差部5による影響を緩和するためのものである。床見切材6は、樹脂製や金属製などとすることができるが、この実施例では、後述するように樹脂製のものとされる。
【0014】
なお、以下の説明では、上下方向13および隣接方向14は、それぞれ矢印で示す方向となっている。
【0015】
そして、上記のような構成に対し、この実施例の床見切材6は、以下のような構成を備えることができる。
【0016】
(1)
図4、
図5に示すように、床見切材6は、
上下に延びて第一床面3と第二床面4との境界部分21に位置される脚部22と、脚部22の上端部から第一床面3の側へ延びる第一腕部23と、脚部22の上端側の部分から第二床面4の側へ延びる第二腕部24と、を備えている。
そして、第一腕部23の少なくとも先端側の部分は、脚部22および第二腕部24よりも軟質の部材25で形成される。
【0017】
ここで、床見切材6は、長手方向に均一断面を有する長尺材とされる。床見切材6は、脚部22と第一腕部23と第二腕部24とによって、側面視ほぼT字状の断面形状になっている。脚部22と第一腕部23と第二腕部24とは、樹脂成形によって一体に形成されることで、一部品のものとして構成される。床見切材6は、段差部5に沿って紙面と垂直な方向に設置される。床見切材6は、所要の長さに切断して使用したり、継足して使用したりすることが可能である。
【0018】
脚部22は、側方から見て、均一肉厚を有して上下方向13へ延びる部位とされている。脚部22は、第一床面3と第二床面4との段差量Dよりも大きい上下方向13の長さ(高さ)を有している。この実施例では、脚部22は、段差量Dのほぼ倍程度、または、それよりも若干大きい上下方向13の長さ(高さ)を有している。脚部22は、全体が硬質樹脂26(例えば、硬質塩ビ材)で形成されている。
【0019】
脚部22は、第一床面3と第二床面4との境界部分21に形成された凹所27へ挿入されて、凹所27に接着剤28で固定される固定部となっている。凹所27は、例えば、第二床面4の第一床面3側の上縁部分を加工(例えば、L字状に切除)して形成される。凹所27は、脚部22が接触することなく収まる大きさに形成される。例えば、凹所27は、脚部22の上下方向13の長さ(高さ)よりも深く(例えば、第二床面4を構成する床材の板厚の半分程度の深さ)、脚部22の肉厚よりも隣接方向14に対して大きい幅(例えば、脚部22の肉厚の倍程度以上)を有するように形成される。
【0020】
脚部22は、凹所27の側面を構成する第一床面3および第二床面4の立面と接触しないようにしつつ、凹所27の内部で、第一床面3の側へ片寄せられると共に、上下方向13へ向けられた状態で接着固定される。
【0021】
第一腕部23は、側方から見て、横へ延びる部位である。第一腕部23は、脚部22の高さよりも短い長さで隣接方向14へほぼ水平に延ばされる。この実施例では、第一腕部23は、少なくとも先端側が、水平に対し、下へ向かって緩く湾曲する湾曲形状とされている。このように、第一腕部23をほぼ水平でありながら若干下へ向かうような湾曲形状のものとすることで、第一腕部23は、少なくとも、先端部(脚部22とは反対側の端部)が第一床面3に点接触(または、床見切材6の長手方向に対しては線接触)に近い状態で接触されるものとなる(第一接触部31)。また、床見切材6の設置状況によっては、
図6に示すように、第一腕部23の先端部に加えて第一腕部23の基端部(脚部22側の端部、付根部)も第一床面3に点接触(または、床見切材6の長手方向に対しては線接触)に近い状態で接触されることになる(第二接触部32)。
【0022】
より具体的には、第一腕部23は、側方から見て、下面のほぼ全体が下へ向かって緩く湾曲している(下面湾曲部33)。また、第一腕部23は、上面の基端側のほぼ半部がほぼ水平となっている(上面水平部34)。そして、第一腕部23は、上面水平部34よりも先端側のほぼ半部が下へ向かって緩く湾曲している(上面湾曲部35)。この際、上面湾曲部35を下面湾曲部33よりも僅かに大きく下へ向かって湾曲させることで、第一腕部23の先端側の部分がほぼ先細り形状になっている(先細部36)。これにより、第一腕部23は、基部側がほぼ均一肉厚となり、先端側が均一肉厚ではないものとなるが、構造的には、第一腕部23の全体をほぼ均一肉厚のものとすることも可能である。先細部36とされた先端部は、そのまま尖らせた状態にしておいても良いが、丸く面取りを行って小さなアール部37を形成しても良い。また、第一腕部23の下面と脚部22とが合わされるコーナー部にも応力集中防止用の面取部38などを形成しても良い。
【0023】
そして、第一腕部23は、第一床面3との高さの差が目立たないように、また、変形され易いように、全体として、脚部22よりも肉薄に形成されている。また、第一腕部23は、軟質の部材25とされた部分を有している(軟質部)。そして、第一腕部23の軟質の部材25とされる部分は、軟質樹脂(例えば、軟質塩ビ材)によって形成される。
【0024】
より具体的には、第一腕部23は、基端部の僅かな部分(例えば、脚部22側の一部、例えば、ほぼ均一肉厚となっている部分のほぼ半部)が硬質樹脂26(例えば、硬質塩ビ材)で形成されており(硬質部)、その先の部分(基端部の一部よりも先端側の部分、例えば、ほぼ均一肉厚となっている部分の残りのほぼ半部と先細部36)が軟質樹脂(例えば、軟質塩ビ材)となっている(軟質部)。このように、第一腕部23のほぼ全体を軟質樹脂で形成することにより、第一腕部23は、より柔軟で変形が容易なものになる。
【0025】
第一腕部23における硬質樹脂26と軟質樹脂とは、2種の樹脂を使って同時に成形することで一体のものとして得ることができる。この場合、硬質樹脂26と軟質樹脂との境界面39は、硬質樹脂26と軟質樹脂との結合性を高めるために、肉厚方向(ほぼ上下方向13)へ向いた状態とするよりは、肉厚方向に対して斜めに傾いた状態にして境界面39の面積を大きくするのが好ましい。この際、第一腕部23における軟質樹脂の割合をより大きくするために、境界面39は、上へ向かうに従って第二腕部24に近付くような傾斜形状にするのが好ましい。これにより、第一腕部23の基端部をしっかりしたものにすることができる。
【0026】
脚部22の上端部は、脚部22の上側の端部のことであり、第一床面3とほぼ同じ高さか、それよりも若干(第一腕部23のほぼ肉厚分程度)高い位置に設置される。これにより、第一腕部23は、床見切材6を段差部5に設置したときに、第一床面3の上側に位置されて、第一床面3に上側から係止保持される。
【0027】
第二腕部24は、側方から見て、第一腕部23よりも低い位置にて横へ延びる部位である。第二腕部24は、先端部が、脚部22の上下方向13のほぼ中間(第二床面4の位置)に位置されるように、隣接方向14や上下方向13などへ適宜延ばされる。第二腕部24は、床見切材6を段差部5に設置したときに、第二床面4の上側に位置されて、第二床面4に上側から係止保持される。第二腕部24は、第一腕部23のほぼ2倍程度かまたはそれ以上の長さとされている。また、第二腕部24は、脚部22の高さと比べても長くなるように形成されている。
【0028】
第二腕部24は、全体として、脚部22とほぼ同じ肉厚かそれよりも厚肉に形成される。そして、第二腕部24は、全体が硬質樹脂26(例えば、硬質塩ビ材)で形成されている。第二腕部24の詳細については、後述する。
【0029】
脚部22の上端側の部分は、脚部22の上端部や、脚部22の上端近傍の側面のことである。第二腕部24の基端部は、第一腕部23の基端部よりも上下方向13に対して広い範囲で脚部22と繋げられている。
【0030】
そして、床見切材6は、上記により、硬質樹脂26で形成された脚部22と第二腕部24との間に、所要の保形性を有すると共に、硬質樹脂26で形成された脚部22とほぼ軟質樹脂で形成された第一腕部23との間に、所要の変形性を有するものになる。
【0031】
(2)第二腕部24は、少なくとも先端側の下面に、第二床面4に対して面接触される平坦な当接部41を有しても良い。
【0032】
ここで、平坦な当接部41は、第二床面4における凹所27の外側となる部分に対して第二腕部24の先端部(の凹所27の外側へ出る部分のほぼ全体)を広く接触させられるように設けられる。平坦な当接部41は、第二腕部24の先端側のほぼ半部に亘って隣接方向14に拡がるように形成される。平坦な当接部41は、床見切材6を段差部5に設置したときに、第二床面4に面接触されることで、ほぼ水平な面(水平当接面)となる。そして、平坦な当接部41が第二床面4と面接触されて水平になることで、床見切材6は、段差部5に正しく設置されたことになる。
【0033】
(3)第二腕部24は、先端部にアール部42を有しても良い。
【0034】
ここで、アール部42は、第二腕部24の先端部の上面と下面との間に形成される丸い面取り部分のことである。この実施例では、第二腕部24の先端部は、第一腕部23の基端部よりも厚肉とされており、この比較的厚肉の第二腕部24の先端部に対し、アール部42は、側方から見て第二腕部24の先端部の肉厚をほぼ直径とするほぼ半円形状となるように形成されている。第二腕部24の先端部のアール部42は、第一腕部23の先端部のアール部37とは異なる大きさのもの(第一腕部23のアール部37と比べて十分に大きなもの)とされる。
【0035】
(4)第二腕部24は、基端側の下面に、凹部43を有しても良い。
【0036】
ここで、凹部43は、平坦な当接部41よりも基端部側の部分に、平坦な当接部41と隣接させて形成される。凹部43は、第二床面4の高さを基準として第二床面4よりも上側へ凹むように形成される。凹部43は、第二床面4に設けられた凹所27のほぼ上側の位置に形成される。凹部43は、どのような形状としても良いが、具体的な凹部43の形状については後述する。
【0037】
なお、上記したように、第一腕部23の下面に下面湾曲部33を設けることにより、第一腕部23の下面と第一床面3との間にも小さな隙間状の凹部が形成可能となるが、
第二腕部24の凹部43は、第一腕部23の下面と第一床面3との間の隙間と比べて十分に大きなものとされる。
【0038】
(5)第二腕部24の下面の最下部と、第一腕部23の基端部の下面との間の高低差Hが、第一床面3と第二床面4との段差量Dのバラ付きd(
図6)の分だけ段差量Dよりも大きくなっても良い(高低差H>段差量D)。
【0039】
ここで、第二腕部24の下面の最下部は、第二腕部24の先端部の下面、または、平坦な当接部41となっている。また、第一腕部23の基端部の下面は、第一腕部23の硬質樹脂26で形成された部分(硬質部)の下面となる。
【0040】
高低差Hは、設計上の段差量Dと等しくするのが理想的である。しかし、段差量Dにはバラ付きdがあるため、高低差Hを設計上の段差量Dと等しく設定してしまうと、実際に施工したときに床見切材6をうまく設置できないケースが発生するおそれがある。
【0041】
即ち、第一床面3に使用される床材や、第二床面4に使用される床材が木質系の場合、床材は材質的に厚みにバラ付きが生じるのを避けることができない。よって、段差量Dのバラ付きdは、このような床材の厚みのバラ付きによって発生される。
【0042】
そこで、高低差Hを、設計上の段差量Dに、段差量Dのバラ付きdの最大値を考慮した分の余裕代h(
図5)を加えた寸法に予め設定する(H=D+h)。余裕代hはほぼ数ミリ程度またはそれ以下の大きさとなる。
【0043】
これにより、第一床面3に使用される床材や、第二床面4に使用される床材が、バラ付きがなく正確な厚みとなっている場合には、
図5に示すように、第二腕部24を第二床面4に上側から係止させたときに、第一腕部23の先端部が第一床面3に接触されて(第一接触部31)、第一腕部23の基端部の下面と第一床面3との間に余裕代h分の隙間を有する状態になって、床見切材6が段差部5へ設置されることになる。
【0044】
また、第一床面3に使用される床材や、第二床面4に使用される床材の厚みに、最大限のバラ付きがある場合には、
図6に示すように、第二腕部24を第二床面4に上側から係止させたときに、第一腕部23の先端部が第一床面3に接触され(第一接触部31)、上記した隙間がほぼなくなることで、第一腕部23の基端部の下面と第一床面3とが更に接触(第二接触部32)された状態になって、床見切材6が段差部5へ設置されることになる。なお、
図6は、第二床面4にバラ付きがある(板厚が薄い)場合の例となっているが、第一床面3にバラ付きがある場合や、第一床面3と第二床面4の両方にバラ付きがある場合も同様である。
【0045】
よって、予め余裕代hを設定しておくことで、いずれの場合にも、床見切材6は段差部5に対して支障なく設置することが可能になる。
【0046】
なお、第一腕部23の上面の最上部は、第一腕部23のほぼ水平な基端部の上面(の上面水平部34)となる。そして、第二腕部24の下面の最下部と、第一腕部23の上面の最上部との間の高低差は、設計上の段差量Dと余裕代hと第一腕部23の基端部の肉厚とを加えた値になる。よって、床見切材6の外部から見える部分はスリムなものとなっている。この際、第一腕部23の基端部の肉厚を薄くすることで、床見切材6の外部から見える部分は更にスリム化される。
【0047】
(6)第二腕部24の上面に、第二腕部24の先端部へ向かって下り勾配に延びるスロープ部51が形成されても良い。
スロープ部51は、脚部22の上端の第一腕部23側の部分22aから開始されても良い。
【0048】
ここで、脚部22の上端の第一腕部23側の部分22aは、脚部22の幅中心位置(肉厚の半分の位置)よりも第一腕部23側とすることができる。この実施例では、上記した部分22aは、脚部22の第一腕部23側の側面の位置、または、第一腕部23側の側面よりも若干第二腕部24寄りの位置となっている。
【0049】
脚部22の上端の第一腕部23側の部分22aを、スロープ部51の開始位置とすることで、第一腕部23に影響を与えずに、床見切材6の隣接方向14の幅が同じであっても、スロープ部51をより長いものにすることができる。
【0050】
床見切材6の上面の、主に、第二腕部24側の部分にスロープ部51を形成することで、第二腕部24は、側方から見て脚部22から(隣接方向14へ)離れるに従い第一床面3に近付くように下り勾配に傾斜したものとなる。これにより、床見切材6は、側面視ほぼカタカナの「イ」字状になる。
【0051】
この際、第二腕部24の基端側の下面の凹部43を、側方から見てほぼ直角三角形状にして、ほぼ直角三角形状の斜辺52を基端側の上面のスロープ部51とほぼ平行にすることで、第二腕部24は、全体がほぼ均一肉厚に近い状態となる。ほぼ直角三角形状の凹部43は、脚部22の側面と、第二床面4に沿った線とが直交する2辺となっている。
【0052】
この際、スロープ部51は全体を直線的なものにしても良いが、スロープ部51は、緩い曲線状の部分を有するものとするのが好ましい。具体的には、第二腕部24の下面には、基端側のほぼ直角三角形状をした凹部43を形成する斜辺52と、平坦な当接部41とが連続して設けられることによって、鈍角状のコーナー部53が形成されている。これに合わせて、例えば、スロープ部51における、第二腕部24の基端側の部分を直線状または上に凸の緩い曲線状とし(基部直線部54または基部凸曲線部55)、第二腕部24の先端側の部分を下に凸の緩い曲線状としても良い(先端凹曲線部56)。これにより、先端凹曲線部56が、より水平に近い傾きになるので、スロープ部51の勾配を緩く見せたり、第二腕部24の隣接方向14の寸法をより短くしたりすることが可能になる。この際、スロープ部51における、基部凸曲線部55と先端凹曲線部56との変曲点57を、第二腕部24の下面のコーナー部53の近傍の位置に設定することで、第二腕部24は、変曲点57やコーナー部53の位置の周辺部分が最も厚肉になるものの、全体としてより均一肉厚に近い状態に仕上げることができる。
【0053】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0054】
樹脂製の床見切材6を、第一床面3と、第一床面3よりも低い第二床面4との段差部5に跨るように設置して、段差部5を床見切材6で覆い隠す。これにより、段差部5の見栄えを良くすることができる。床見切材6は、上面にスロープ部51を有するものとすることで、段差部5をならして段差部5の見栄えをより良くすることができる。
【0055】
この際、床見切材6は、脚部22が、第一床面3と第二床面4との境界部分21に形成された凹所27へ挿入された状態で凹所27に接着剤28で固定される。これにより、床見切材6を段差部5にしっかり取付けることができる。
【0056】
そして、床見切材6は、第一腕部23が、脚部22の上端部から第一床面3の側へ延びることで、第一床面3に上側から係止されると共に、第一床面3の段差部5の周辺を第一腕部23によって覆い隠す。第一腕部23は、少なくとも先端部の下面の少なくとも一部(第一接触部31や第二接触部32)が、第一床面3に対して点接触(または、床見切材6の長手方向に線接触)される。
【0057】
また、床見切材6は、第二腕部24が、脚部22の上端側の部分から第二床面4の側へ延びることで、第二床面4に上側から係止されると共に、第二床面4の段差部5の周辺を第二腕部24によって覆い隠す。第二腕部24は、先端側の下面の平坦な当接部41が、第二床面4に対してほぼ面接触される。
【0058】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0059】
(効果 1)床見切材6を、脚部22と、第一腕部23と、第二腕部24とを備えたものとした。これにより、床見切材6の構造を簡略化すると共に、部品コストを下げることが可能になる。また、床見切材6を、段差部5に対する施工が容易で、工期の短縮や施工コストの低下などを図れるものにすることができる。
【0060】
この床見切材6の第一腕部23は、少なくとも先端部分が、軟質の部材25で形成されている。これにより、第一腕部23の軟質の部材25で形成された少なくとも先端部分が、床見切材6の他の部分よりも変形し易い状態となる。そのため、例えば、第二腕部24を第二床面4に合わせるようにして、床見切材6を段差部5に設置するだけで、軟質の第一腕部23が床見切材6の設置状況に応じて段差部5に馴染むように自然に変形される。よって、段差部5にフィットするように床見切材6をうまく設置することができ、床見切材6の施工が容易になる。このことは、特に、第一床面3と第二床面4との段差量Dにバラ付きdがある場合などに有効であり、軟質の第一腕部23の少なくとも先端部分の変形によって、段差量Dのバラ付きdを自然に吸収することが可能になる。また、軟質の第一腕部23が段差部5の状況に応じて容易に変形されることで、設計的にも第一腕部23をより薄肉にしたり、第一腕部23をより水平に近い状態にしたりし易くなり、床見切材6を見栄え良く仕上げるのに有利となる。
【0061】
そして、第一腕部23の少なくとも先端側の部分を、軟質の部材25で形成することにより、第一腕部23の少なくとも先端側の部分を容易に後加工できるようになる。よって、現場での床見切材6の施工時に、必要に応じて、第一腕部23の少なくとも先端側の部分を加工することで、床見切材6を段差部5によりフィットするように修正ことなども容易にできるようになる。
【0062】
(効果 2)床見切材6は、第二腕部24の少なくとも先端側の下面に、第二床面4に対して面接触される平坦な当接部41を有しても良い。これにより、平坦な当接部41が第二床面4に対し広い面積で面接触されることにより、床見切材6に上方からの外力が作用した場合でも、外力を平坦な当接部41を介して第二床面4に受けさせることができる。そのため、外力に対する床見切材6や第二腕部24の強度確保が容易になる。ちなみに、床見切材6は、第二床面4に対して平坦な当接部41が若干浮いた状態で施工されたとしても、外力が作用したときに、平坦な当接部41が第二床面4に面接触されれば、第二床面4に外力を確実に受けさせることができる。
【0063】
(効果 3)床見切材6は、第二腕部24の先端部にアール部42を有しても良い。これにより、第二腕部24の先端部に設けたアール部42が、第二腕部24の先端部と第二床面4との見切部分に影を作ることになり、この影によって、第二床面4の不陸(例えば、第二床面4の波打ち)などを目立ち難くすることができる。
【0064】
(効果 4)床見切材6は、第二腕部24の基端側の下面に凹部43を有しても良い。これにより、凹部43によって、第二腕部24の基端側の部分が局所的に薄肉化されるため、凹部43を設けない場合と比べて、第二腕部24の基端部分が脚部22に対して変形(角度変化)され易くなるので、仮に、
図7に示すように、床見切材6が傾いた状態に施工された場合でも、第二腕部24の基端側の部分が床見切材6の傾きに合わせて若干変形されることで、段差部5に床見切材6がうまく収まると共に、第二床面4に第二腕部24の先端部周辺が接触されることによって、第二腕部24の平坦な当接部41と第二床面4との間に大きな隙間が生じないようにできる。
【0065】
また、第一床面3と第二床面4との境界部分21に形成した凹所27へ脚部22を挿入して、脚部22を凹所27に接着剤28で固定するように床見切材6を設置する場合などに、余剰の接着剤28が第二腕部24の基端側の凹部43へ入り込むことで、床見切材6の外部への接着剤28のハミ出しなどを防止することができる。よって、床見切材6を美しく施工することができる。
【0066】
(効果 5)床見切材6は、第二腕部24の下面の最下部と、第一腕部23の基端部の下面との間の高低差Hが、第一床面3と第二床面4との段差量Dのバラ付きd分だけ段差量Dよりも大きくなるように形成しても良い。これにより、床見切材6を、第一床面3や第二床面4を構成する床材の厚みの誤差によって生じる段差量Dのバラ付きdを吸収できる形状にしつつ、第一腕部23と第二腕部24との高さの差を最小限に抑えることができる。よって、床見切材6を見栄えの良いものにすることができる。
【0067】
(効果 6)第二腕部24の上面に、第二腕部24の先端部へ向かって下り勾配に延びるスロープ部51が形成されても良い。スロープ部51は、脚部22の上端の第一腕部23側の部分22aから開始されても良い。これにより、第一床面3と第二床面4との間の段差部5をスロープ部51によってならすことができると共に、スロープ部51を脚部22の上端の第一腕部23側の部分22aから開始させることによって、第二腕部24のみにスロープ部51を設ける場合と比べて、スロープ部51をより広い範囲に形成できるので、その分、スロープ部51の勾配を最小限に抑えることが可能になる。よって、床見切材6を見栄えの良いものにすることができる。
【0068】
以上、この実施例の床見切材6について説明したが、更に、
図8の比較例を用いてこの実施例対比を行う。比較例の床見切材61は、この実施例の床見切材6と同様に、軸部62と第一腕部63と第二腕部64とを有するものとなっているが、全体が硬質樹脂26または金属で構成されている。これにより、第一腕部63が軟質の部材25で形成されないので、この実施例の床見切材6と比べると、段差部5に馴染むように床見切材61を設置するのが難しくなる。また、段差部5のバラ付きdに対処させることも難しくなる。
【0069】
そして、第二腕部24の下面に平坦な当接部41が設けられていないので、この実施例の床見切材6と比べると、外力に対する床見切材61や第二腕部64の強度確保が難しくなっている。そのために、この実施例の床見切材6よりも、第二腕部64の少なくとも基部を厚肉にして強度を確保する必要が生じる。しかし、第二腕部64の基部を厚肉にすると、例えば、軸部62と第二腕部64との間の変形が起こり難く成るので、床見切材61が斜めに傾いて設置された場合の対処が難しくなる。よって、比較例の床見切材61は、段差部5に対して使用することができるものの、この実施例の床見切材6と蔵へ経て使い難く、この実施例の床見切材6の方が、比較例のものよりもより有効に使用することができる。
【符号の説明】
【0070】
3 第一床面
4 第二床面
5 段差部
6 床見切材
21 境界部分
22 脚部
22a 部分
23 第一腕部
24 第二腕部
25 軟質の部材
41 当接部
42 アール部
43 凹部
51 スロープ部
D 段差量
d バラ付き
H 高低差