(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】血液採取装置およびシステム、およびその方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/151 20060101AFI20230703BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20230703BHJP
A61M 1/02 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A61B5/151
A61J1/05 313M
A61J1/05 313N
A61M1/02 165
(21)【出願番号】P 2019513102
(86)(22)【出願日】2017-05-18
(86)【国際出願番号】 CN2017084838
(87)【国際公開番号】W WO2017198186
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-03-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-31
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518412874
【氏名又は名称】伊勒伯科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】WINNOZ TECHNOLOGY, INC
【住所又は居所原語表記】5F.-1, No.238, Liancheng Rd., Zhonghe Dist., New Taipei City, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】熊 樂昌
(72)【発明者】
【氏名】林 芳瑜
(72)【発明者】
【氏名】呉 睿軒
(72)【発明者】
【氏名】歐 俐岑
(72)【発明者】
【氏名】陳 柏均
(72)【発明者】
【氏名】ウ チュアンファ エリック
【合議体】
【審判長】樋口 宗彦
【審判官】櫃本 研太郎
【審判官】石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-522593(JP,A)
【文献】特開2002-58661(JP,A)
【文献】国際公開第2014/172245(WO,A1)
【文献】特表2009-513179(JP,A)
【文献】特表2010-502278(JP,A)
【文献】特表2005-502033(JP,A)
【文献】国際公開第2007/108518(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/22
A61M 1/02
A61J 1/05-1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
採取ユニットと、貯蔵ユニットとを備える血液サンプルを採取する装置であって、
前記採取ユニットは、
上部窓と、
上部表面と、
前記上部窓と連通する流路と、
前記上部窓に隣接する上端部を有する少なくとも1つの毛細管と、
前記流路と連通し、
前記採取ユニットから外向きに延伸して、圧力制御ユニットに接続することで、前記流路から空気を除去し
、前記流路内に交互の負圧を生成する真空コネクタと、
を含み、
前記少なくとも1つの毛細管の上端部と前記採取ユニットの上部表面との間の距離が、1.0mm以上5.0mm以下の範囲内にあり、
前記貯蔵ユニットは前記採取ユニットの下に位置し、
前記少なくとも1つの毛細管の上端部は穿刺部からの血液滴と接触し、前記血液滴の表面張力を破壊することにより、前記少なくとも1つの毛細管の内部または前記少なくとも1つの毛細管に沿って前記貯蔵ユニットに流れ込む血液採取を連続的に行
い、
前記採取ユニットは、前記圧力制御ユニットから取り外し可能である血液サンプルを採取する装置。
【請求項2】
前記採取ユニットの上部表面に設けられるパッドをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記採取ユニットは、前記少なくとも1つの毛細管を取り囲む漏斗構造をさらに備える、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記採取ユニットは、前記流路と連通し、前記圧力制御ユニットに接続されて前記流路内に前記交互の負圧を生成する通気コネクタをさらに備える、請求項1~3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
チューブ状、缶状、ビン状、シリンジ状貯蔵ユニット
、またはそれらの任意の組み合わせを含む前記貯蔵ユニットが、血液サンプルを輸送するように前記採取ユニットから取り外し可能である、請求項1~4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
貯蔵流路、貯蔵ウェル、吸収性材料
、またはそれらの任意の組み合わせを含む貯蔵ユニットが、前記採取ユニットから取り外し不可能である、請求項1~4のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の前記採取ユニットおよび前記貯蔵ユニットとを備えるカートリッジと、
圧力制御ユニットを含むドッキングステーションと
、を備え
、
前記採取ユニットおよび前記貯蔵ユニットは、前記ドッキングステーションから取り外し可能である、血液サンプルを採取するためのシステム。
【請求項8】
前記カートリッジは、前記システムから取り外し可能である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記血液サンプルの体積を検出するように構成される少なくとも1つのセンサーをさらに備える、請求項7または8に記載のシステム。
【請求項10】
上部窓と、上部表面と、前記上部窓と連通する流路とを有
し、圧力制御ユニットから取り外し可能である採取ユニットを提供する工程と、
少なくとも1つの毛細管であって、穿刺部からの血液滴を前記少なくとも1つの毛細管の内部または前記少なくとも1つの毛細管に沿って流れるように案内して前記上部窓に隣接する上端部を有し、前記毛細管の上端部と前記採取ユニットの上部表面との間の距離は1.0mmから5.0mmの範囲にある、少なくとも1つの毛細管を前記採取ユニット内に設置する工程と、
前記流路と、
前記圧力制御ユニットを接続することで、前記
流路と連通し、前記採取ユニットから外向きに延伸する真空コネクタを介して流路から空気を除去し、前記流路内に交互の負圧を生成する工程と、
前記採取ユニットの下に配置される貯蔵ユニットに血液サンプルを貯蔵する工程と
を含み、
前記少なくとも1つの毛細管の上端部は穿刺部からの血液滴と接触し、前記血液滴の表面張力を破壊することにより、前記少なくとも1つの毛細管の内部または前記少なくとも1つの毛細管に沿って前記貯蔵ユニットに流れ込む血液採取を連続的に行う
血液サンプルを採取する方法。
【請求項11】
穿刺部位との緊密な接触または加温のために、前記採取ユニットの前記上部表面にパッドを設ける工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記負圧は-10kPaから-80kPaの範囲にある、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記交互の負圧は通気コネクタを介して前記流路および前記圧力制御ユニットを連結することにより、前記流路に生成される、請求項10~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記流路内の前記負圧の制御に協働する少なくとも1つのセンサーを使用して前記血液サンプルの特定の体積を採取する工程をさらに含む、請求項10~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
使用者の指先を前記採取ユニットの上に配置される圧縮ユニットで絞り込み、前記穿刺部から血液サンプルを採取する工程をさらに含む、請求項10~14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血液採取装置および輸送システム、特に、血液の凝固を防止しながら採血を行うシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、身体から血液を採取するためにいくつかの方法が使用されている。そのうちの1つは、シリンジを使用して血液を採取することである。しかし、この一般的な方法にはいくつかの欠点がある。例えば、訓練されていない人がシリンジを使用して血液を採取する場合、予期しなかった怪我を引き起こす恐れという高いリスクがある。さらに、いくつかの極端な条件、例えばマイクロ重力環境(micro-gravitational environment)で従来のシリンジを血液の採取に使用することは適切ではない。
【0003】
また、指先血液での診断ニーズのために、指先血液を輸送するための様々な既存手段が一般的に提供されている。指先血液の輸送の主な課題の1つは、指先血液の量は通常少なすぎて輸送できないということである。指先血液の輸送に毛細管が使用されるのは最も一般的である。それにもかかわらず、より多くの指先血液が必要な場合、より多くの毛細管が消費される。さらに、毛細管は通常脆弱であるので、輸送の際中に破損し、検体の汚染を引き起こす可能性がある。
【0004】
既存の方法は血液採取の代替手段として提供されてきたが、場所、特にマイクロ重力の宇宙センターで、誰でも血液を採取できる使い易い装置が望ましい。さらに、より信頼性の高い、試験部位へ指先血液を輸送する血液処理機構がより好ましい。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、毛細管と負圧環境とを含み、毛細管が穿刺部からの血液滴と接触し、血液滴の表面張力を破壊して血液凝固を回避することにより、血液採取を連続的に行えるようにした血液サンプル採取装置を提供する。負圧環境は、穿刺部の出血を促すので、短時間で十分な量の血液サンプルを採取することができる。
【0006】
本開示の一態様によれば、血液サンプルを受け入れる上部窓と、上部表面と、前記上部窓と連通する流路と、前記上部窓に隣接する上端部を有する少なくとも1つの毛細管とを含む採取ユニットと、前記採取ユニットから延伸し、前記流路と連通して前記流路の空気を排出することで負圧を提供する真空コネクタと、採取ユニットの下に位置し、前記血液サンプルを貯蔵する貯蔵ユニットとを備え、前記少なくとも1つの毛細管の上端部と採取ユニットの上部表面との間の距離が、1.0mm以上5.0mm以下の範囲内にある、血液サンプルを採取するための装置が提供される。
【0007】
本開示のもう一つの態様は血液サンプルを採取するためのシステムである。前記システムはカートリッジおよびドッキングステーションを備える。前記カートリッジは採取ユニットと貯蔵ユニットとを含み、前記ドッキングステーションは圧力制御ユニットを含む。血液サンプルを受け入れる上部窓と、上部表面と、前記上部窓と連通する流路と、前記上部窓に隣接する上端部を有する少なくとも1つの毛細管とを含む採取ユニットと、前記採取ユニットから延伸し、前記流路と連通する真空コネクタとを有する。前記少なくとも1つの毛細管の上端部と採取ユニットの上部表面との間の距離が、1.0mm以上5.0mm以下の範囲内にある。前記貯蔵ユニットは、前記血液サンプルを貯蔵するために前記採取ユニットの下に位置される。前記圧力制御ユニットは前記流路に交互の負圧を生成するための通気ユニットおよび真空ユニットを備える。
【0008】
さらに、本開示は、穿刺部を収容する上部窓と、上部表面と、前記上部窓と連通する流路とを有する採取ユニットを設置する工程と、少なくとも1つの毛細管であって前記上部窓に隣接し、前記穿刺部からの血液滴を前記少なくとも1つの毛細管の内側または前記毛細管に沿って流れるように案内する上端部を有し、前記上端部と前記採取ユニットの上部表面との間の距離は1.0mmから5.0mmの範囲にある前記少なくとも1つの毛細管を前記採取ユニット内に提供する工程と、真空コネクタを介して前記流路から空気を除去し、前記流路に負圧を生成する工程と、前記採取ユニットの下に配置される貯蔵ユニットに前記血液サンプルを貯蔵する工程とを含む血液サンプルを採取する方法が提供される。
【0009】
本開示の装置、システムおよび方法のこれらおよび他の特徴および利点は、本開示の例示的な実施例を参照しながら以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、様々な条件、場所を問わずに誰でも容易に本開示を使用できることを説明する概念図である。
【
図2】
図2は、本開示の第1の実施例による血液サンプルを採取するための装置を説明する図である。
【
図3】
図3は、
図2の線a-a´に沿った装置を説明する等角図である。
【
図4】
図4は、本開示の第1の実施例によるデバイスの動作を説明する断面図である。
【
図5A】
図5Aは、本開示の第2の実施例による血液サンプルを採取するためのデバイスを説明する断面図である。
【
図5B】
図5Bは、本開示の第2の実施例による血液サンプルを採取するためのデバイスを説明する断面図である。
【
図5C】
図5Cは、本開示の第2の実施例による血液サンプルを採取するためのデバイスを説明する断面図である。
【
図5D】
図5Dは、本開示の第2の実施例による血液サンプルを採取するためのデバイスを説明する断面図である。
【
図5E】
図5Eは、本開示の第2の実施例による血液サンプルを採取するためのデバイスを説明する断面図である。
【
図5F】
図5Fは、本開示の第2の実施例による血液サンプルを採取するためのデバイスを説明する断面図である。
【
図5G】
図5Gは、本開示の第2の実施例による血液サンプルを採取するためのデバイスを説明する断面図である。
【
図6】
図6は、本開示の第3の実施例による血液サンプルを採取するためのデバイスを説明する等角図である。
【
図7】
図7は、本開示の第4の実施例による、血液サンプルを採取するためのデバイスを説明する部分斜視図である。
【
図8】
図8は、本開示の第5の実施例による血液サンプルを採取するためのデバイスを説明する断面図である。
【
図9】
図9は、血液サンプルを採取するためのシステムを説明する機能ブロック図である。
【
図10】
図10は、本開示の第6の実施例による血液サンプルを採取するためのシステムを説明する断面図である。
【
図11】
図11は、本開示の第7の実施例による血液サンプルを採取するためのシステムを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の特定の実施例は、本開示を説明するために提供され、本明細書の開示を読んだ後に、当業者によってその利点および効果が明らかに理解され得る。
【0012】
本明細書および添付の図面に示される構造、比率、サイズなどは、当業者の理解と読解を容易にするために、明細書の内容に合わせるように記載されているに過ぎず、本開示を特定の条件に制限するものでなく、技術的な実質的な意味も有さないことを理解されたい。本明細書の開示により奏し得る効果および達成可能な目的に影響を与えない構造、比率の関係の変更、またはサイズの調整は、本明細書の開示の範囲に含まれるべきである。技術内容を実質的に変更しない相対的関係の変更または調整も、本開示の実施し得る範囲に含まれていると認定すべきである。
【0013】
図1は、本開示の用途を示す概念図を示す。本開示は、様々な条件で場所を問わずに誰でも容易に使用することができる。例えば、本開示は、兵士がバイオ攻撃を受けているかを判断できるように、戦場の兵士が血液サンプル(5)を採取するために使用することができ、または宇宙飛行士がマイクロ重力環境で使用することもできる。さらに、本開示は、医療機関から離れた領域に住む患者の血液サンプル(5)を採取し適時の診断のために使用することができる。さらに、本開示は、家庭介護および実験室利用などの様々の目的に適用可能である。
【0014】
図2および
図3は、血液採取装置の第1の実施例を示す。血液サンプル(5)の採取装置は、採取ユニット(1)と、採取ユニット(1)の下に取り付けられる貯蔵ユニット(2)とを含む。採取ユニット(1)は、上部窓(16)、下部窓(164)、および上部窓(16)と下部窓(164)とを連通する流路(18)を含んで構成される。採取ユニット(1)は、採取ユニット(1)内に配置される毛細管(14)と、採取ユニット(1)から外向きに延伸する真空コネクタ(12)とをさらに有する。採取ユニット(1)は、流路(18)の中心に形成され、流路(18)の方向に沿って延在する毛細管(14)を保持するためのホルダー(11)をさらに備える。採取ユニット(1)は、血液サンプル(5)を貯蔵ユニット(2)に案内するための流路(18)内に位置する漏斗構造(13)をさらに備える。漏斗構造(13)と毛細管(14)との間にスペース(131)が設けられている。この実施例における貯蔵ユニット(2)は、採取ユニット(1)の下部窓(164)に取り付けられ、血液サンプル(5)を収容する取り外し可能な円筒状容器である。ここで、貯蔵ユニット(2)は、チューブ状、缶状、ビン状、これらの類似物、またはこれらの任意の組み合わせを含む。なお、採取された血液サンプル(5)を吸収する吸収性材料(244、
図10を参照)を貯蔵ユニット(2)の内部に配置してもよい。
【0015】
図4において、指は穿刺され、かつ採取ユニット(1)の上部窓(16)に配置される。指の穿刺部は、血液滴(5)が穿刺部から容易に放出されるように、毛細管(14)の上端に位置を合わせてもよい。弾性パッド(15)は、流路(18)内の負圧環境の生成を確実にする気密状態を提供できるように、採取ユニット(1)の上面(162)に取り付けられる。パッド(15)は、穿刺部位を保温することにより出血を増加させるヒーターまたはその類似物であってもよい。注目すべきことに、穿刺された指の腹は、様々な負圧において上部窓(16)に部分的に引き込まれる。また、毛細管(14)の上端部と採取ユニット(1)の上部表面(162)との距離(A)は、1.0mm~5.0mmであり、好ましくは1.5mm~4.5mmであり、より好ましくは2.0mm~4.0mmである。距離(A)は、血液滴(5)をより効果的に放出できるように、血液滴(5)と毛細管(14)の上端部との接触を確実にするものである。具体的には、血液滴(5)が毛細管(14)の上端部に接触すると、血液滴(5)の表面張力は崩壊し、血液(5)が毛細管(14)の内部または毛細管(14)に沿って貯蔵ユニット(2)に流れ込む。血液滴(5)が漏斗構造(13)に入り込んでも、血液滴(5)は、毛細管(14)と漏斗構造(13)との間のスペース(131)を介して、貯蔵ユニット(2)に流れ込むことができる。真空コネクタ(12)は圧力制御ユニット(3)(
図9に示す)に接続され、流路(18)内に所定の交互負圧を生成するために、流路(18)から空気を除去する。本発明者らの観察によれば、交互の負圧は、指先の血液の穿刺部からの吸出しを促す。また、第1の実施例の貯蔵ユニット(2)は、採取した血液サンプル(5)を以降の検査へ輸送するために着脱可能である。
【0016】
図5Aは、本開示の第2の実施例を示しており、採取された血液サンプル(5)を容易に輸送および分配するために、貯蔵ユニット(2)(
図4参照)は、キャップ(241)およびバリア(242)を有するシリンジ状貯蔵ユニット(24)に変更してもよい。
図5Bおよび5Cは、第2の実施例の別の変形例を示す。シリンジ状貯蔵ユニット(24)は、バリア(242)の開口部を閉塞してバリア(242)内の血液サンプル(5)の汚染を防止する弾性ストッパ(243)をさらに備える。キャップ(241)を取り外した後、変形可能なストッパ(243)をバリア(242)に押し込むことにより、バリア(242)内の血液サンプル(5)を分配できる。また、
図5Dおよび
図5Eに示すキャップ(241)を、バリア(242)に差し込むプランジャとして使用して、ストッパ(243)をさらに押し込むことができる。
図5Fおよび
図5Gにおいて、採取された血液サンプル(5)を吸収する吸収材(244)がバリア(242)の内側に配置される。
【0017】
図6は、本開示の第3の実施例を示す。便宜上、第1の実施例と同様または類似する第3の実施例の要素および効果を省略し、異なる部分のみを説明する。この実施例では、漏斗構造(13、
図3参照)は省略され、毛細管(14)を保持するための2つのホルダー(11)が設けられている。流路(18)における仕切板(122)は、採取された血液サンプル(5)が真空コネクタ(12)を介して圧力制御ユニット(3、
図9参照)に流れるのを防止するように設計されている。
【0018】
図7は、本開示の第4の実施例を示す。単一の毛細管(14)の代わりに、複数の毛細管(14)を用いて毛細管(14)の束を形成する。ホルダー(11)は毛細管(14)の束を保持する。流路(18)は、ホルダー(11)により、上部と下部に分けられている。ホルダーは、漏斗構造(13、
図3に示す)、またはその類似物で置き換えてもよい。前記上部と下部は毛細管(14)の束を介して連通している。真空コネクタ(12)が流路(18)の下部に連通されるとともに、通気コネクタ(17)が流路(18)の上部に連通されている。真空コネクタ(12)および通気コネクタ(17)は共に真空ユニット(31)および通気ユニット(32)を含む圧力制御ユニット(3、
図9に示す)に接続される(
図9参照)。真空ユニット(31)は、ポンプまたは他の機構を備え、排気ユニット(32)は、バルブまたは他の機構を備える。真空ユニット(31)が真空コネクタ(12)を通って空気を除去すると、通気ユニット(32)が切り替えられて流路(18)の内部に交互の負圧環境が作り出される。具体的には、通気ユニット(32)を交互に切り替えて流路(18)の上部に流入する空気を制御し、上側部分と下側部分との間の圧力差により、毛細管(14)の束に残った血液サンプル(5)が貯蔵ユニット(2)へ誘導される。
【0019】
図8は本開示の第5の実施例を説明する。第1の実施例(
図2~4)と類似な第5の実施例の要素および効果は、ここでは簡潔にするため省略し、異なる部分のみを説明する。
図8に示すように、採取ユニット(1)と貯蔵ユニット(2)とが1つのカートリッジ(6)に統合されている。この実施例(
図8)の採取ユニット(1)は、第3の実施例(
図6)の採取ユニット(1)、第4の実施例の採取ユニット(
図7)、その類似物、またはそれらの任意の組み合わせに変更できる。さらに、この実施例の貯蔵ユニット(2)は、貯蔵流路(22)、貯蔵ウェル、吸収性材料(244、
図10参照)、その類似物、またはそれらの任意の組み合わせを含み、採取ユニット(1)から取り外し不能である。
【0020】
図9は、採血システムの機能ブロック図を示し、
図10は、システムの第6の実施例を示す。このシステムは、カートリッジ(6)およびドッキングステーション(4)を備える。カートリッジ(6)は、ドッキングステーション(4)から取り外し可能な採取ユニット(1)および貯蔵ユニット(2)を含む。本実施例の採取ユニット(1)および貯蔵ユニット(2)は、
図2~7に示す実施例、その類似物、またはそれらの任意の組み合わせに変形することができる。採取ユニット(1)は、少なくとも1つの毛細管(14)、真空コネクタ(12)、およびパッド(15)を備える。さらに、採取ユニット(1)は、上部窓(16)に隣接して配置される穿刺機構(43)をさらに備え、穿刺機構(43)は、指を穿刺するための伸縮先端部を備える。さらに、貯蔵ユニット(2)は、採取ユニット(1)から取り外し可能である。貯蔵ユニット(2)は、チューブ状、缶形状、ビン状、シリンジ形状の貯蔵ユニット(24)、その類似物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。広義的に、吸収された材料(244)は、採取された血液サンプル(5)を吸収するように、貯蔵ユニット(2)の内部に配置される。
【0021】
ドッキングステーション(4)は、圧力制御ユニット(3)を備える。真空ユニット(31)および通気ユニット(32)を含む圧力制御ユニット(3)は、真空コネクタ(12)および通気コネクタ(17)の両方に接続され、交互の負圧を生成する。ここで、真空ユニット(31)は、流路(18)内の空気を除去するためのポンプまたは類似物であってもよい。通気ユニット(32)は、バルブまたは類似物であってもよい。
【0022】
ドッキングステーション(4)は、コントローラー(41)および電源(42)をさらに備える。コントローラー(41)は、血液採取システム内の全ての電子部品の制御、特に圧力制御ユニット(3)を制御して流路(18)に交互の負圧を生成するために使用される。
【0023】
さらに、ドッキングステーション(4)は、採取された血液サンプル(5)の容量を検出する少なくとも1つのセンサー(21)をさらに備える。センサー(21)は、光学センサー、超音波センサー、湿度センサー、インピーダンスセンサー、静電容量センサー、重量センサー、または必要に応じた任意の実施可能なセンサーであってもよい。採取された血液サンプル(5)の量は十分であることがセンサー(21)によって検出されると、圧力制御ユニット(3)をオフにして流路(18)内の負圧の生成を停止させる。
【0024】
広義的には、ドッキングステーション(4)は、指先を絞って穿刺部から血液サンプル(5)を得るための圧縮ユニット(44)をさらに備える(
図10)。圧縮ユニット(44)は、採取ユニット(1)の上方に位置し、指の配置を可能にする通路(441)を含む。圧縮ユニット(44)は、通路(441)に沿って配置される複数のエアーカフ(442)も含む。エアーカフ(442)は圧力制御ユニット(3)に接続されているので、指を絞り込むようにエアーカフ(442)に空気が注入され、穿刺部からの出血を加速させる。エアーカフ(442)は、例えば、偏心円、空気充填可能なパック、または指クリップで置き換えることができる。
【0025】
図11は、採血システムの変形例である第7の実施例を示す。第7の実施例の第6の実施例(
図10に示す)と同様の要素および効果は、ここでは簡潔にするため省略し、異なる部分のみを説明する。この実施例では、採取ユニット(1)と貯蔵ユニット(2)とは不可分である。貯蔵ユニット(2)は、貯蔵流路(22)、貯蔵ウェル、吸収性材料(244)、その類似物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。また、カートリッジ(6)内の貯蔵ユニット(2)に隣接する箇所に取り付けられる少なくとも1つのセンサー(21)が、採取された血液サンプル(5)の容積の検出に使用される。
【0026】
また、本発明の血液サンプル(5)の採取方法は、以下のように記載されている。前記方法は、
穿刺機構(43)(
図10参照)または従来のランセットによって指腹に穿刺部を作ることと、
穿刺部を収容するための上部窓(16)を設けることと、
指と採取ユニット(1)との間の緊密な接触を提供する、または穿刺部を温めるパッド(15)を設けることと、
採取ユニット(1)の上部窓(16)に隣接する上端部を有する少なくとも1つの毛細管(14)であって、上端と採取ユニット(1)の上部表面(162)との間の距離(A、
図4参照)が、1.0mm~5.0mm、好ましくは1.5mm~4.5mm、より好ましくは2.0mm~4.0mmの範囲にある少なくとも1つの毛細管(14)を、穿刺部からの血液滴(5)が少なくとも1つの毛細管(14)の内側または少なくとも1つの毛細管(14)毛細管に沿って流れるように、採取ユニット(1)に提供することと、
圧力制御ユニット(3)に接続される真空コネクタ(12)により流路(18)から空気を除去することによって、流路(18)(
図10参照)内に負圧を生成することと、
通気コネクタ(17)との協働により、前記負圧は、-10kPa~-80kPa、好ましくは-20kPa~-60kPa、より好ましくは-40kPa~-50kPaの範囲の交互の負圧に形成されるようにさらに制御されることと、
採取ユニット(1)の上に配置され、指先を絞り込んで穿刺部から血液(5)を得るための圧縮ユニット(44)を提供することと、
負圧の制御と協働する少なくとも1つのセンサー(21)を使用して、1ml以下の特定の体積の血液(5)を採取することと、
採取された血液(5)を貯蔵ユニット(2)(
図10及び
図11参照)に貯蔵し、さまざまな応用に提供することと
を含む。
【0027】
本開示は、例示的な実施例を用いて本開示の原理および効果を説明するが、本開示を限定することは意図されていない。本開示は、前提として精神および範囲から逸脱することがない場合、当業者によって様々な変更および修正を行うことができる。したがって、本開示の権利の保護範囲、要求の範囲は本文に記載する必要がある。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定されるべきである。
【符号の説明】
【0028】