(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】薬剤送達デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/307 20060101AFI20230703BHJP
A61M 5/155 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A61M5/307
A61M5/155
(21)【出願番号】P 2019534089
(86)(22)【出願日】2017-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2017084143
(87)【国際公開番号】W WO2018115310
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-11
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-20
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・クレム
(72)【発明者】
【氏名】ディートマー・ハーメン
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】村上 聡
【審判官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-223562(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0154369(US,A1)
【文献】特表2006-524120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/307
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達デバイス(10、110)であって:
薬剤リザーバ(12)から薬剤を受けるように構成される薬剤受容要素(14)と;
該薬剤受容要素(14)の方に流体蒸気を導くように構成された流体出口(29b)を有する少なくとも1つの流体チャンバ(16)と;
該少なくとも1つの流体チャンバ(16)内の流体を加熱するための加熱要素(30)と;
を含み、
該デバイス(10)は、使用のとき、加熱要素(30)が、少なくとも1つの流体チャンバ(16)内の流体を少なくとも部分的に蒸発させるように流体を加熱し、
閾値に達するまで少なくとも1つの流体チャンバ(16)内の蒸気圧が上昇し、それによって流体が自動的に少なくとも1つの流体チャンバ(16)から流体出口(29b)を通って薬剤受容要素(14)の方へと排出され、薬剤受容要素(14)の中を通過して、患者の皮膚の方に向けて薬剤を同伴す
るように、構成され
、
ここで、流体出口(29b)は、微小ノズルまたは逆止弁(33)を含む、
前記薬剤送達デバイス。
【請求項2】
加熱要素(30)は、抵抗式であり、流体を加熱するために電流パルスを受けるように構成される、請求項
1に記載の薬剤送達デバイス(10、110)。
【請求項3】
少なくとも1つの流体チャンバ(16)は、放熱を防ぐように断熱要素(31)を含む、請求項1
または2に記載の薬剤送達デバイス(10、110)。
【請求項4】
流体リザーバ(15)と、
該流体リザーバ(15)から少なくとも1つの流体チャンバ(16)に流体をポンプ輸送するための流体ポンプ機構(27)と
を含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス(10、110)。
【請求項5】
薬剤受容要素(14)は、多孔質部材(35)を含み、該多孔質部材は、薬剤を保持するように構成され、使用のとき薬剤が、多孔質部材(35)から、少なくとも1つの流体チャンバ(16)の流体出口(29b)から排出された流体内に同伴されて患者の皮膚の方へと通過するように、配置される、請求項1~
4のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス(10)。
【請求項6】
薬剤受容要素(14)は、分配篩(32)を含み、該分配篩は、使用のとき薬剤が、該分配篩(32)の中を、少なくとも1つの流体チャンバ(16)の流体出口(29b)から排出された流体内に同伴されて患者の皮膚の方へと通過するように、配置される、請求項1~
5のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス(10)。
【請求項7】
薬剤受容要素(14)は、薬剤を受けるように構成されたチャンバ(36)を含み、該チャンバ(36)は、薬剤を該チャンバ(36)から患者に送達するための送達部分(34)を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス(110)。
【請求項8】
複数の流体チャンバ(16)を含む、
請求項1~
7のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス(10、110)。
【請求項9】
薬剤のカートリッジを含む、
請求項1~
8のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス(10、110)。
【請求項10】
患者への薬剤送達を制御するプロセッサ(18)を含む、
請求項1~
9のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス(10、110)。
【請求項11】
薬剤送達デバイス(10)は、インスリン送達デバイスである、請求項1~
10のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス(10、110)。
【請求項12】
プロセッサ(18)が患者へのインスリン送達を制御するように、プロセッサ(18)に患者の血糖に関するデータを送るように構成された血糖センサを含む、請求項
10または11に記載の薬剤送達デバイス(10、110)。
【請求項13】
薬剤受容要素(14)は、ガス透過性である、請求項1~
12のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス(10、110)。
【請求項14】
薬剤が薬剤受容要素(14)へと輸送され、その後に加熱要素(30)が少なくとも1つの流体チャンバ(16)内の流体を加熱して該流体を少なくとも部分的に蒸発させるように構成された、請求項1~
13のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス(10、110)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に薬剤を送達するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
針ベースの薬剤送達デバイスは、患者に薬剤を投与するために最もよく使用される手段の1つである。著しい進歩にもかかわらず、このタイプのデバイスにはいまだに欠点がある。1つのそのような欠点は、患者の皮膚内に薬剤を注射する針の使用が不可避的に注射部位に穴を作ることを伴い、それによって組織損傷が引き起こされる、という欠点である。加えて、皮膚内への注射針の貫入は、患者、特に子供にとって苦痛となり得ることが知られている。
【0003】
1型または2型の糖尿病患者によって使用されるインスリンポンプなどのパッチポンプは、針ベースの薬剤送達デバイスの特定のタイプである。このタイプのデバイスは、皮下注射針を用いて患者に固定量のインスリンを自動的に定期的に注射するように構成されている。1つの欠点は、針が患者の体内に恒久的に挿入されなければならないことである。これは、患者にとって不快で心地悪く、炎症および合併症につながることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
少なくとも特定の実施形態では、本発明は、上述の問題のうちの少なくともいくつかを克服または緩和することを目的とする。具体的には、本発明は、患者の皮膚内への針の導入および/または存在により引き起こされる不快感を低減させる薬剤送達デバイスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様は、薬剤送達デバイスに関する。
【0006】
本発明のさらなる一態様によれば、薬剤受容要素と、薬剤受容要素の方に流体蒸気を導くように構成された流体出口を有する少なくとも1つの流体チャンバと、少なくとも1つの流体チャンバ内の流体を加熱するための加熱要素とを含む薬剤デバイスが提供される。デバイスは、使用のとき、加熱要素が、少なくとも1つの流体チャンバ内の流体を少なくとも部分的に蒸発させるようにその流体を加熱し、それによって流体が少なくとも1つの流体チャンバから流体出口を通って薬剤受容要素の方へと排出されて患者の皮膚の方に向けて薬剤を同伴するほどまで少なくとも1つの流体チャンバ内の蒸気圧が上昇するように、構成される。
【0007】
流体出口は、微小ノズルを含むことができる。
【0008】
流体出口は、逆止弁を含むことができる。
【0009】
加熱要素は、抵抗式とすることができ、流体を加熱するために電流パルスを受けるように構成される。
【0010】
少なくとも1つの流体チャンバは、放熱を防ぐように断熱要素を含むことができる。
【0011】
薬剤送達デバイスは、流体リザーバと、流体リザーバから少なくとも1つの流体チャンバに流体をポンプ輸送するための流体ポンプ機構とを含むことができる。
【0012】
薬剤受容要素は、多孔質部材を含むことができる。多孔質部材は、薬剤を保持するように構成され、使用のとき薬剤が、多孔質部材から、少なくとも1つの流体チャンバの流体出口から排出された流体内に同伴されて患者の皮膚の方へと通過するように、配置される。
【0013】
薬剤受容要素は、分配篩を含むことができる。分配篩は、使用のとき薬剤が、分配篩の中を、少なくとも1つの流体チャンバの流体出口から排出された流体内に同伴されて患者の皮膚の方へと通過するように、配置される。
【0014】
薬剤受容要素は、薬剤を受けるように構成されたチャンバを含むことができる。チャンバは、薬剤をチャンバから患者に送達するための送達部分を含む。
【0015】
薬剤送達デバイスは、複数の流体チャンバを含むことができる。
【0016】
薬剤送達デバイスは、薬剤のカートリッジを含むことができる。
【0017】
薬剤送達デバイスは、患者への薬剤送達を制御するプロセッサを含むことができる。
【0018】
薬剤送達デバイスは、インスリン送達デバイスとすることができる。
【0019】
薬剤送達デバイスは、プロセッサが患者へのインスリン送達を制御するように、プロセッサに患者の血糖に関するデータを送るように構成された血糖センサを含むことができる。
【0020】
一実施形態では、薬剤受容要素は、ガス透過性である。
【0021】
一実施形態では、薬剤送達デバイスは、流体が少なくとも1つの流体チャンバから流体出口を通って排出されて薬剤受容要素を通過するように構成される。
【0022】
一実施形態では、薬剤送達デバイスは、薬剤が薬剤受容要素へと輸送され、その後に加熱要素が少なくとも1つの流体チャンバ内の流体を加熱して流体を少なくとも部分的に蒸発させるように、構成される。
【0023】
一実施形態では、加熱要素は、少なくとも1つの流体チャンバ内の流体を加熱するように温度が上がるように構成される。
【0024】
本発明のさらなる一態様によれば、上述のような薬剤送達デバイスにおいて使用されるための流体チャンバが提供される。
【0025】
本発明のさらなる一態様によれば、薬剤受容要素と、薬剤受容要素の方に流体蒸気を導くように構成された流体出口を有する少なくとも1つの流体チャンバと、少なくとも1つの流体チャンバ内の流体を加熱するための加熱要素とを含む薬剤送達デバイスを使用することを含む、薬剤を送達する方法が提供される。方法は、加熱要素を使用して、少なくとも1つの流体チャンバ内の流体を少なくとも部分的に蒸発させるように流体を加熱し、それによって流体が少なくとも1つの流体チャンバから流体出口を通って薬剤受容要素の方へと排出されて患者の皮膚の方に向けて薬剤を同伴するほどまで少なくとも1つの流体チャンバ内の蒸気圧が上昇するようにすることを含む。
【0026】
本明細書で相互交換可能に使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味する。
【0027】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物をヒトまたは(獣医学用途が本開示によって明確に企図される場合)動物の体内に直ちに投薬するように設計されたあらゆるタイプのデバイス、システムまたは装置を包含すると理解されたい。「直ちに投薬」とは、薬物送達デバイスからの薬物の放出と、ヒトまたは動物の体内への投与との間に、使用者による薬物の任意の必須の中間操作がないことを意味する。限定されることなく、薬物送達デバイスの典型的な例は、注射デバイス、吸入器、および胃管用の供給システムに見られる。やはりまた限定されることなく、例示的な注射デバイスは、たとえばパッチデバイス、自動注射器、注射ペンデバイスおよび脊髄注射システムを含むことができる。
【0028】
添付の図面を参照して、本発明の例示的な実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1A】本発明による薬剤送達デバイスの一実施形態の概略断面図である。
【
図1B】
図1Aの薬剤送達デバイスの一変形形態の一部の概略断面図である。
【
図2】本発明による薬剤送達デバイスのさらなる一実施形態の一部の概略断面図である。
【
図3】
図2の薬剤送達デバイスに使用される弁の概略図である。
【
図4】本発明による薬剤送達デバイスに使用される流体チャンバの一変形形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態は、薬剤送達デバイスであって、薬剤受容要素と、薬剤受容要素の方に流体蒸気を導くように構成された流体出口を有する少なくとも1つの流体チャンバと、少なくとも1つの流体チャンバ内の流体を加熱するための加熱要素とを含む、薬剤送達デバイスを提供する。デバイスは、使用のとき、加熱要素が、少なくとも1つの流体チャンバ内の流体を少なくとも部分的に蒸発させるように流体を加熱し、それによって流体が少なくとも1つの流体チャンバから流体出口を通って薬剤受容要素の方へと排出され患者の皮膚の方に向けて薬剤を同伴するほどまで少なくとも1つの流体チャンバ内の蒸気圧が上昇するように、構成される。そのような薬剤送達機構を提供することによって、患者への薬剤の送達に注射針を使用することを回避することが可能となる。注射針が必要ないので、薬剤送達において注射部位に穴をあける必要がなくなり、したがって、組織損傷ならびに痛みや不快感の発生が回避される。加えて、患者の皮膚内への針の導入および/または存在により起こり得る炎症および合併症が回避される。
【0031】
本開示のいくつかの実施形態によれば、
図1には、本明細書では単に「デバイス10」と称される例示的な薬物送達デバイス10が示されている。
【0032】
この適用例の文脈では、本明細書における用語「近位」および「遠位」はそれぞれ患者に相対的により近いおよび患者から相対的により遠いことを示す。さらに、本明細書では、用語「上流」および「下流」は、通常の使用においてデバイスの中の薬剤の流れおよび流体の流れの方向に関して使用される。さらに、本明細書では、用語「垂直方向に」、「水平方向に」などは、添付の図面に示されるデバイスの向きに関して使用される。
【0033】
本明細書に記載されるような薬物送達デバイスは、薬剤を患者に注射するように構成される。そのようなデバイスは、患者、または看護師もしくは内科医などの介護者によって操作される。本発明によるデバイスは、「大」量の(典型的には、約2ml~約10ml、またはそれを上回る)薬剤を送達するために、ある時間にわたって(たとえば、約5、15、30、60もしくは120分間、またはそれよりも長く)患者の皮膚に粘着されるように構成される、大容量デバイス(「LVD」)またはパッチポンプを含む。以下により詳細に説明するように、本明細書に記載の実施形態では、薬剤送達デバイスは、繰り返しの薬剤放出または「ショット」によって薬剤を送達するように構成される。
【0034】
特定の薬剤と組み合わせて、上述したデバイスは、必要な仕様内で動作するためにカスタマイズすることもできる。たとえば、デバイスは、ある時間内に(たとえば、約10分~約60分間、またはそれよりも長く)薬剤を注射するようにカスタマイズすることができる。他の仕様は、低いまたは最低限のレベルの不便さ、すなわち人的要因、保存可能期間、満期、生体適合性、環境的考慮などに関する一定の条件に対する不便さを含むことがある。そのような変化は、たとえば粘度が約3cP~約50cPの範囲の薬物など、様々な要因により起こることがある。
【0035】
本明細書に記載の送達デバイスは、1つまたはそれ以上の自動化機能を含むこともできる。たとえば、薬剤の注射を自動化することができる。1つまたはそれ以上の自動化工程のためのエネルギーは、1つまたはそれ以上のエネルギー源によって供給される。エネルギー源は、たとえば機械的、空気圧、化学的、または電気的エネルギーを含むことができる。たとえば、機械的エネルギー源として、エネルギーを蓄積または解放するための、ばね、てこ、エラストマー、または他の機械的機構を挙げることができる。1つまたはそれ以上のエネルギー源は、単一のデバイスに一体化することができる。デバイスは、エネルギーをデバイスの1つまたはそれ以上の構成要素の動きに変換するための、歯車、弁、または他の機構をさらに含むことができる。
【0036】
本薬物送達デバイスの1つまたはそれ以上の自動化機能はそれぞれ、起動機構を介して起動される。このような起動機構は、ボタン、レバーまたは他の起動構成要素のうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。自動化機能の起動は、一段階プロセスまたは多段階プロセスとすることができる。すなわち、自動化機能を行わせるために、使用者は1つまたはそれ以上の起動構成要素を起動する必要があり得る。たとえば一段階プロセスにおいて、薬剤の注射を行わせるために、使用者はボタンを押し下げる、またはユーザーインターフェースと相互に作用することができる。他のデバイスでは、自動化機能の多段階の起動が必要となり得る。
【0037】
デバイス10は、典型的には注射予定の液体薬剤充填済みのリザーバ12および送達プロセスの1つまたはそれ以上の工程の促進に必要な構成要素を収容する、本体またはハウジング11を含む。デバイス10は、ハウジング11に取り外し可能に取り付けられる保護カバー13をさらに含むことができる。典型的には、最初にデバイス10を使用するとき、使用者は、ハウジング11から保護カバー13を除去しなければならず、それからデバイス10を操作することができる。
【0038】
図1に示されるように、デバイス10は、薬剤リザーバ12から薬剤を受けるように構成される薬剤保持要素または薬剤受容要素14を含む。デバイス10は、流体リザーバ15と、流体リザーバ15から流体を受けるように構成される複数の流体チャンバ16とをさらに含む。デバイス10は、デバイス10の動作の監視および/または制御のためのプロセッサ18と、使い捨てもしくは再充電可能な電池などの電力供給源20またはパルス電流を生成するように構成される電力供給源20とをさらに含む。デバイス10は、ユーザーインターフェース19と、無線通信装置21とをさらに含む。
【0039】
デバイス10は、ウェアラブルデバイスであることが好ましい。そのようなデバイスは、身に着けられるという性質または使用者の皮膚に貼着されることから、一般的に「パッチポンプ」と呼ばれる。デバイス10は、デバイス保持要素22を含む。デバイス保持要素22は、たとえば真空によりデバイス10を患者の皮膚に付着させるように動作する。あるいは、保持要素22は、患者の皮膚に付着するように構成される粘着パッドの形態であってもよい。粘着パッドは、デバイス10の皮膚取り付け側に取り付けられ、デバイス10の最初の使用の前は保護カバー13で覆われる。
【0040】
本明細書に記載のデバイス10において、薬剤受容要素14は、分配篩、メッシュまたはフリース32の形態である。分配篩32は、流体チャンバ16の下流に配置される。使用のとき、分配篩32には薬剤リザーバ12から流れる薬剤が送り込まれ、分配篩32はその薬剤の小滴を患者の皮膚に送達する。保護カバー13は、デバイス10の最初の使用の前は分配篩32に取り付けてあってよい。
【0041】
デバイス10は、薬剤が中を薬剤リザーバ12から分配篩32の方へと流れることができる薬剤流出ライン23を含む。薬剤流出ライン23内には、薬剤を薬剤リザーバ12から分配篩32の方にポンプ輸送するための薬剤ポンプ機構24が設けられる。薬剤ポンプ機構24は、薬剤が薬剤リザーバ12から分配篩32の方に薬剤流出ライン23の中を一方向にしか流れることができないようにする逆止弁またはチェック弁25を含む。
【0042】
流体リザーバ15は、流体を受けるおよび/または収納するように適用される。流体は、蒸発し、分配篩32の中を患者の皮膚の方に向けて薬剤を同伴または推進させるためのものである。本明細書に記載のデバイス10において使用される流体は、たとえば滅菌水である液体である。デバイス10から薬剤を排出するための流体として使用される水は、中性溶液であり患者にいかなる副作用も与えないという利点を有する。
【0043】
流体リザーバまたは水リザーバ15は、流体流出ライン26によって流体チャンバ16に連結される。流体流出ライン26内には、流体を流体リザーバ15から流体チャンバ16へとポンプ輸送するための流体ポンプ機構27が設けられる。流体ポンプ機構27は、流体が流体リザーバ15から流体チャンバ16の方に流体流出ライン26の中を一方向にしか流れることができないようにする逆止弁またはチェック弁28を含む。
【0044】
流体チャンバ16は、流体リザーバ15の下流かつ分配篩32の上流に配置される。流体チャンバ16は、互いに水平方向に心合わせされる。流体チャンバ16は、流体入口29aと、流体またはスチームの出口29bとを含む。流体入口29aは、流体チャンバ16の上壁内に配置される。流体出口29bは、流体チャンバ16の下壁内に配置される。流体出口29bは、流体チャンバ16から実質的に垂直方向に延びる。流体出口29bは、流体蒸気を分配篩32の方に導くように構成される。流体チャンバ16は互いに類似している。デバイス10の流体チャンバ16の数は、ある時間にわたって注射予定の流体または薬剤の量に応じて決まる。デバイス10がインスリンなどの薬剤の長期投与に使用することが意図される実施形態では、デバイスは、(
図1Bに示されるような)単一の流体チャンバ16を含むことができる。デバイス10が、たとえば10ml以上の薬剤をたとえば1時間で送達するように構成される、大容量デバイス(「LVD」)である実施形態では、デバイス10は、2つ以上の流体チャンバ16を含むことができる。好ましい実施形態では、デバイス10は、2つの流体チャンバ16を含む。使用のとき、デバイス10は、同じ注射部位に繰り返し薬剤注射を行うことによる患者の皮膚の炎症を回避するように、患者の皮膚上のいくつか異なる場所に配置(position)することができる。さらに、デバイス10は、同じ注射部位に繰り返し注射を行った後に見られることがある不安な記憶からくる痛みの感覚を低減させるために、患者の皮膚上のいくつか異なる場所に配置してもよい。
【0045】
流体出口29bは、流体チャンバ16の断面積よりも実質的に小さい断面積を有する。本明細書に記載のデバイス10では、流体出口29bは、微小ノズルの形態である。流体出口29bをそのような構造にすることによって、流体が流体チャンバ16内で蒸発すると、流体チャンバ16内で蒸気圧のサージが生じることが確実になる。流体チャンバ16内で流体が蒸発すると、流体チャンバ16内の蒸気圧が閾値に達するまで上昇し、達したところで流体蒸気が流体チャンバ16から微小ノズルを通って吐出され分配篩32内に一気に放出される。換言すると、流体チャンバ16内の蒸気圧が閾値に達すると、流体チャンバ16内で水蒸気爆発またはスチーム噴射が起こり、それによって水蒸気が流体チャンバ16から流体出口29bを通って分配篩32内へと推進される。
【0046】
加熱要素30は、流体チャンバ16内の流体を加熱するように設けられる。加熱要素30は、流体チャンバ16内に配置される。加熱要素30は、使用のとき、流体チャンバ16に受けられる水と接触するように配置される。加熱要素30は、たとえば、流体チャンバ16の内壁に配置される抵抗層または抵抗成形体の形態である。本明細書に記載の実施形態では、加熱要素30は、流体チャンバ16内の水を加熱するために、電力供給源20から電流パルスを受けるように構成される。より具体的には、加熱要素30は、流体チャンバ16内の流体を断続的に加熱するように構成され、この加熱により流体チャンバ16内でそれに対応した蒸気圧の不連続なサージが引き起こされ、それに対応して薬剤が患者の皮膚の方に向けて放出される。
【0047】
流体チャンバ16内で水を蒸発させるのに必要な加熱電力の概算には、下式が使用される。
【数1】
【0048】
式中、ΔQは加熱要素30から水に伝達されるエネルギー量、ΔTは温度差、Cは水蒸気の熱容量、mは加熱される水の質量、cは水蒸気の質量熱容量(mass heat capacity)である。たとえば、10μLの水滴を100Kの温度上昇を用いて1秒間加熱するには、4.18Wの加熱電力を必要とする。同じ温度上昇を用いて同じ量の水をわずか100ms間で加熱するには、41.8W必要となる。たとえば、電圧5ボルトで100Wの加熱電力を有するように、デバイス10は0.25オームの抵抗を有する抵抗器の形態の加熱要素30を含むことができる。
【0049】
加熱要素30は、適切な電子構成要素と組み合わされるバイメタル過熱防止器または温度センサなどの温度過昇保護装置(protection)(図示せず)によって保護される。
【0050】
加熱要素30は、最低限の熱損失で水を最適に加熱するように配置される。熱損失をさらに最低に抑えるため、流体チャンバ16は、断熱要素31を含む。断熱要素31は、流体チャンバ16からの放熱を防ぐように設けられ、それによって流体チャンバ16内の水の加熱効率が向上する。断熱要素31は、たとえば、流体チャンバ16の外壁上に設けられる、たとえば流体チャンバ16の外壁を囲繞する、断熱層の形態である。
【0051】
薬剤送達のパラメータは、送達予定薬剤および薬剤が送達される患者に応じて適用される。具体的には、網羅的でなく、分配篩32を通る薬剤の流速、微小ノズルのサイズ、水蒸気の温度および使用される水の量は、たとえば活性成分の粘度である薬剤の活性成分の特性に応じて、およびたとえば患者の皮膚のタイプなど患者に応じて適用される。
【0052】
プロセッサ18は、他のデバイスとの間で無線により情報を送信および/または受信するように構成される無線通信装置21を制御する。そのような伝送は、たとえば、無線伝送または光伝送に基づいていてよい。いくつかの実施形態では、無線通信装置21は、Bluetooth送受信機である。あるいは、無線通信装置21は、他のデバイスとの間で、たとえばケーブルまたはファイバ接続を介した有線接続により情報を送信および/または受信するように構成される有線装置によって代用または補完してもよい。データが送信されるとき、転送されるデータの単位(値)は、明示的または暗示的に定められる(defined)。たとえば、インスリン用量の場合、常に国際単位(IU)が使用され、またはそうでない場合、使用される単位は、たとえば符号化された形式で明示的に転送される。
【0053】
デバイス10は、患者の血糖に関するデータをプロセッサ18に送るように構成される血糖センサ(図示せず)を含むことができる。したがって、プロセッサ18は、たとえば患者の血糖値に応じて、患者へのインスリン送達を制御することができる。たとえば、米国特許出願公開第20040162470A1号に記載されるような血糖センサを使用することができる。
【0054】
次に、本発明による薬剤注射デバイス10の動作について説明する。
【0055】
デバイス10は、使用者がさらにプラグラムする必要がないように、たとえば製造設備でまたはヘルスケア提供者によって、予めプログラムされる。デバイス10は、1日の時間ごとに異なる速度で、または異なる条件下で、患者に薬物を送達するようにプログラムされる。たとえば、1日当たり最大2mLのインスリン量を必要とする患者の場合、デバイス10は、たとえば25μLの注射を1時間当たり4回行うようにプログラムすることによって、1時間当たり0.1mLのインスリンを20時間かけて送達するようにプログラムされる。
【0056】
注射は以下のように行われる。使用のとき、使用者は、ユーザーインターフェース19によりデバイス10を起動する。薬剤は、薬剤ポンプ機構24によって薬剤リザーバ12から薬剤流出ライン23を通って分配篩32の方に向けてポンプ輸送される。その間、滅菌水が、流体ポンプ機構27によって流体リザーバ15から流体流出ライン26を通って流体チャンバ16の方に向けてポンプ輸送される。水は、流体入口29aから流体チャンバ16に入る。そして、電流パルスが電力供給源20によって生成され、抵抗加熱要素30内を循環する。その結果、加熱要素30の温度が上昇し、熱が加熱要素30から流体チャンバ16内の水に伝達される。水は加熱されると蒸発し、流体チャンバ16内の蒸気圧が上昇する。水は、流体チャンバ16内で加熱され蒸発するとき、流体チャンバ16内で再度殺菌されることに留意されたい。蒸気圧は、閾値に達するまで上昇し、達したところで水蒸気が流体チャンバ16から微小ノズル29bを通って吐出されて分配篩32の方に向けて一気に放出され、分配篩32の中を患者の皮膚の方に向けて薬剤を同伴する。
【0057】
流体チャンバ16から外に推進される水ストリームによって、薬剤の流れが、皮膚バリアに打ち勝ち患者の皮膚に十分な深さまで貫入できるほど十分な速度を有することが確実になる。患者の皮膚内への薬剤の注射深さは、やはりまた流体出口29bを形成する微小ノズルの直径によっても決まる。一例として、微小ノズル直径が約100μmであり、薬剤の流れが約100m/sで移動する場合、約2mmの注射深さが達成される。
【0058】
さらに、水蒸気の蒸気圧は分配篩32内で低下するので、その結果、ストリームの温度が低下する。室温の液体薬剤の場合、分配篩32を通ってデバイス10から流出する薬剤ストリームの温度は、注射の間に患者が薬剤ストリームの温度で不快さを感じないほど十分に低い。
【0059】
第1の実施形態のデバイス10は、分配篩の形態の薬剤受容要素14を有するとして述べてきたが、本発明は、この特定のタイプのデバイスに対する限定を意図するものではなく、他のタイプのデバイスも本発明の範囲内に入るものとする。たとえば、一代替実施形態では、薬剤受容要素は、たとえばキャリアウェブまたは吸収性パッドである、多孔質部材を含む。吸収性パッドは、流体チャンバの下流に配置され、吸収によって薬剤を保持するように適用される。使用のとき、吸収性パッドには、薬剤リザーバから流れる薬剤が送り込まれる。流体チャンバから流体出口を通って排出された水蒸気は、吸収性パッドの中を流れ、そこで薬剤と接触し、患者の皮膚の方に向けてその薬剤を同伴する。さらなる一代替実施形態では、薬剤受容要素は、吸収性パッドと分配篩の両方を含む。吸収性パッドは、分配篩の上に配置される。吸収性パッドと分配篩は、流体チャンバの下流に配置される。使用のとき、流体チャンバから流体出口を通って排出された水蒸気は、吸収性パッドに流入し、そこで薬剤と接触し、その薬剤を同伴して分配篩の中を患者の皮膚の方に向かって通過する。
【0060】
第2の実施形態の薬剤送達デバイス110は、
図2に示され、第1の実施形態のデバイス10と類似している。同じ構成は、同じ参照数字のままになっており、そのような同じ構成の詳細は繰り返し説明しない。
【0061】
第1の実施形態のデバイス10に対する第2の実施形態のデバイス110の違いは、第2の実施形態のデバイス110では、デバイス110は、単一の流体チャンバ16を含むことである。しかし、一変形形態では、デバイス110は、2つ以上の流体チャンバ16を含むことができる。
【0062】
第1の実施形態のデバイス10に対する第2の実施形態のデバイス110のさらなる違いは、第2の実施形態のデバイス110では、流体入口29aが、流体チャンバ16の側壁に配置されることである。加えて、薬剤受容要素14は、スチーム出口29bの下流において、スチーム出口29bに連結されるチャンバ36の形態をしている。チャンバ36は、チャンバ36から下向きに延びる投薬ノズル34の形態の送達部分を含む。投薬ノズル34は、微小ノズルであってよい。投薬ノズル34は、薬剤がデバイス110からそこを通って流れ出るオリフィスを提供するだけでなく、患者の皮膚に接触する面も提供する。流体出口29bは、減少した直径の通路の形態であり、したがってベンチュリ通路またはベンチュリノズル38が形成される。ベンチュリノズル38内には、たとえばばねにより張力が掛けられるボールチェック弁(
図3に示される)である、逆止弁またはチェック弁33が配置される。チェック弁33によって、確実に、蒸気圧が閾値に達するより前に水蒸気が流体チャンバ16から漏れなくなる。チェック弁33は、投薬ノズル34を通って流れる薬剤ストリームが、患者の皮膚に向かって流れるときに十分な速度を有するように調節される。一代替実施形態では、流体出口29bは、圧力センサと組み合わせられた電磁弁を含む。そのような代替構成は、流体出口29bを通って流れるスチームを制御しやすいという利点を有する。
【0063】
デバイス110では、水蒸気は、チャンバ36内を流れている間に冷める。この温度の低下によって、水と薬剤が効率良く混合されるようになり、それによってデバイス110から患者の皮膚の方に向かう薬剤の効率の良い輸送が可能になる。
【0064】
第1および第2の実施形態のデバイス10、110は流体流出ライン26内に配置される流体ポンプ機構27を有するとして述べてきたが、本発明は、この特定のタイプのデバイスに対する限定を意図するものではなく、他のタイプのデバイス、たとえば
図4に示されるように流体ポンプ機構27が流体チャンバ16の流体入口29a内に配置されるデバイスも、本発明の範囲内に入るものとする。
【0065】
第1および第2の実施形態10、110の流体チャンバは、単一の流体出口をそれぞれ含むが、本発明は、この特定のタイプの流体チャンバに対する限定を意図するものではなく、他のタイプの流体チャンバ、たとえば2つ以上の流体出口を有する流体チャンバも、本発明の範囲内に入るものとする。
【0066】
デバイス10、110は、薬剤充填済みの薬剤リザーバ12を含む。しかし、本発明は、この特定のタイプのデバイスに対する限定を意図するものではなく、他のタイプのデバイス、たとえばデバイスの2回の連続使用の合間またはカートリッジが空になったら交換することができる薬剤カートリッジを受けるカートリッジホルダを含むデバイスも、本発明の範囲内に入るものとする。
【0067】
薬剤リザーバ12および流体リザーバ15は、デバイス10、110を再使用できるように再充填することができる。しかし、本発明は、この特定のタイプのデバイスに対する限定を意図するものではなく、他のタイプのデバイス、たとえば、全部使い捨てのデバイス、またはたとえば使い捨て薬剤カートリッジおよび/もしくは使い捨て流体リザーバである、使い捨て部材と、たとえばデバイスの残りの部分である、再使用可能な部材とを含むデバイスも、本発明の範囲内に入るものとする。
【0068】
上記の実施形態では、加熱要素30は、抵抗加熱要素を含む。しかし、代替実施形態(図示せず)では、加熱要素は、異なる構成を有することができると理解されたい。たとえば、加熱要素は、ペルチエコントローラのような、流体チャンバ内の流体を加熱するように構成される熱電式コントローラを含むことができる。他の実施形態では、加熱要素は、燃焼により流体チャンバ内の流体を加熱するように構成される。たとえば、加熱要素は、流体チャンバ内の流体を加熱するために点火されるプロパンのようなガスである燃料の供給源を含むことができる。他の実施形態では、加熱要素は、流体チャンバ内の流体を加熱するために放射を放出する。一実施形態では、加熱要素は、流体を加熱するために流体チャンバの表面に照射されるレーザーを含む。
【0069】
用語「薬物」または「薬剤」は、本明細書において同意語として使用され、1つまたはそれ以上の医薬品有効成分または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物と、場合により、薬学的に許容される担体とを含む医薬製剤を示す。医薬品有効成分(「API」)とは、最も広範な言い方で、ヒトまたは動物に生物学的影響を及ぼす化学構造のことである。薬理学では、薬物または薬剤が、疾患の処置、治療、予防、または診断に使用され、またはそれとは別に、身体的または精神的健康を向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限られた継続期間、または慢性疾患では定期的に、使用される。
【0070】
以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つのAPI、またはその組み合わせを含むことができる。APIの例としては、分子量が500Da以下である低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが含まれ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込まれる。1つまたはそれ以上の薬物の混合物もまた企図される。
【0071】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物または薬剤をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。それだけには限らないが、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、潅流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み型デバイス(たとえば、薬物またはAPIコーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。
【0072】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含まれる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、リザーバ、または1つもしくはそれ以上の薬物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の固体もしくは可撓性の容器とすることができる。たとえば、場合によって、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を収納するように設計される。場合によって、チャンバは、約1カ月から約2年の間薬物を保存するように設計される。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。場合によって、薬物容器は、投与予定の医薬製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえばAPIおよび希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成される。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成される。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成される。
【0073】
本明細書において説明される薬物送達デバイス内に含まれる薬物または薬剤は、数多くの異なるタイプの医学的障害の処置および/または予防に使用される。障害の例としては、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症が含まれる。障害の別の例としては、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチがある。APIおよび薬物の例としては、たとえば、それだけには限らないが、ハンドブックのRote Liste 2014、主グループ12(抗糖尿病薬物)または主グループ86(腫瘍薬物)、およびMerck Index、第15版などに記載されているものがある。
【0074】
1型もしくは2型の糖尿病、または1型もしくは2型の糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物、またはそれらの任意の混合物が含まれる。本明細書において使用される用語「類似体」および「誘導体」は、元の物質と構造的に十分に類似しており、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。特に、用語「類似体」は、天然のペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から、天然のペプチド中に見出される少なくとも1つのアミノ酸残基を欠失させるおよび/もしくは交換することによって、ならびに/または少なくとも1つのアミノ酸残基を付加することによって式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換されるアミノ酸残基は、コード可能なアミノ酸残基、または他の天然の残基もしくは完全に合成によるアミノ酸残基とすることができる。インスリン類似体は「インスリン受容体リガンド」とも呼ばれる。特に、用語「誘導体」は、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば、脂肪酸)が1つまたはそれ以上のアミノ酸に結合している、天然のペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然のペプチド中に見出される1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失され、かつ/もしくはコード不可能なアミノ酸を含む他のアミノ酸によって置換されていてもよく、または、コード不可能なアミノ酸を含むアミノ酸が、天然のペプチドに付加されていてもよい。
【0075】
インスリン類似体の例としては、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置換されているヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンがある。
【0076】
インスリン誘導体の例としては、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標))、B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ω-カルボキシヘプタデカノイル-γ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))、B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンがある。
【0077】
GLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストの例としては、たとえば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標)、エキセナチド(エキセンディン-4、Dyetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(Syncria(登録商標))、デュラグルチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン(Eligen)、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenがある。
【0078】
オリゴヌクレオチドの例としては、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))がある。
【0079】
DPP4阻害剤の例としては、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンがある。
【0080】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストが含まれる。
【0081】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩が含まれる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、ハイランG-F20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0082】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例には、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが含まれる。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばネズミ)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、これはFc受容体との結合を支持せず、たとえば、突然変異した、または欠失したFc受容体結合領域を有する。用語の抗体はまた、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)および/または交差結合領域の配向性を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗体結合分子を含む。
【0083】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、単一特異性抗体フラグメント、または二重特異性、三重特異性、四重特異性および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの多重特異性抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、または二価、三価、四価および多価抗体などの多価抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例が当技術分野で知られている。
【0084】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0085】
抗体の例としては、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ)、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ)、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ)がある。
【0086】
本明細書において説明される任意のAPIの薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける薬物または薬剤の使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。
【0087】
本明細書に記載のAPIs、配合、装置、方法、システムおよび実施形態の様々な構成要素の修正(追加および/または削除)は、本発明の全範囲および趣旨から逸脱することなく行うことができ、本発明は、そのような修正、および本発明のあらゆる均等物もすべて包含することが当業者には理解されよう。