(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】NMDAアンタゴニスト及びD2/5HT2A又は選択的5HT2Aアンタゴニストによるうつ病の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/496 20060101AFI20230703BHJP
A61K 31/41 20060101ALI20230703BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20230703BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A61K31/496
A61K31/41
A61P25/24
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2019568331
(86)(22)【出願日】2018-05-24
(86)【国際出願番号】 IL2018050565
(87)【国際公開番号】W WO2018229744
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-04-27
(32)【優先日】2017-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516128500
【氏名又は名称】グリテック, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・シー・ジャヴィット
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-522075(JP,A)
【文献】MENTAL HEALTH WEEKLY,2017年,Vol. 27, No. 35,p. 6
【文献】J Pharmaceutical Sci,1964年,Vol. 53, No. 10,pp. 1173-1180
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
うつ病及び関連する自殺傾向の治療のための医薬組成物であって、前記医薬組成物が、
D-サイクロセリンのNMDAR-アンタゴニスト有効量と、
ルラシドン及びブレクスピプラゾールから選択される、組み合わされたドーパミンD2/5-HT2A受容体アンタゴニストである非定型抗精神病剤の有効量と、
を含み、
前記D-サイクロセリンのNMDAR-アンタゴニスト有効量が、25マイクログラム/mL超~125マイクログラム/mL未満の持続された血中血漿濃度をもたらすのに十分であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬組成物が、徐放用に配合される請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
腸溶コーティングを更に含む請求項1から2のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記D-サイクロセリンのNMDAR-アンタゴニスト有効量が、プロドラッグとして提供される請求項1から3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
うつ病又は自殺傾向を罹患し、非定型抗精神病剤による治療を必要としているが、組み合わされたドーパミンD2/5-HT2A受容体アンタゴニストである前記非定型抗精神病剤の副作用を低減する必要がある対象の治療における使用のための請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記副作用が少なくとも1つの不安を惹起する(anxiogenic)副作用である請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの不安を惹起する副作用が、アカシジア、激越、不安、及び自殺傾向からなる群から選択される請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記うつ病が、大うつ病又は双極性うつ病である請求項5に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
これは、2012年7月12日出願の米国仮特許出願第61/741,114号明細書及び米国仮特許出願第61/741,115号明細書に対して優先権を主張する2013年7月7日出願の米国特許出願公開第13/936,198号明細書の継続出願である、2017年7月16日出願の米国特許出願公開第15/650,912号明細書の一部継続出願である。2017年6月12日出願の米国仮特許出願第62/518,020号明細書に対する利益を更に主張する。前述の特許出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、うつ病の治療に使用するための、且つ特定の抗うつ病医薬及び抗精神病医薬の不安を惹起する(anxiogenic)副作用を同時に緩和することができる組合せ組成物に関し、それによって継続的な抗うつ病及び抗精神病の治療を可能にする。同時に薬の副作用、特に不安、アカシジア、及び関連する自殺傾向を軽減しながらうつ病を治療する方法も本明細書に記載される。
【背景技術】
【0003】
統合失調症は、妄想や幻覚などの精神病症状、並びに仕事、社会的関係、又はセルフケアなどの領域における機能低下に関連する臨床症候群である。
【0004】
統合失調症の診断は、米国精神医学会が出版したDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders-fifth edition(DSM-5)など、標準的な技術のテキストを用いて決定されることができる。統合失調症の症状は、通常、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)などの評価尺度を使用して測定される。
【0005】
統合失調症の症状は、主にドーパミンD2受容体をブロックすることにより機能する抗精神病医薬で治療される。
【0006】
大うつ病は、悲しい気分が持続したり、活動に興味を失ったりすることを含む臨床症候群であり、治療が行われない場合で少なくとも2週間持続する。大うつ病の症状は通常、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)又はベックうつ病質問票(BDI)などの評価尺度を使用して測定される。抑うつ気分に関連する症状を含めることに加えて、HAM-Dには、罪悪感、離人症/現実感消失、及び偏執病のための項目を含む精神病に敏感な症状も含まれる。大うつ病は、不安の症状にも関連することがあり、ハミルトン不安評価尺度(HAM-A)などの評価尺度で測定されることができる。うつ病性障害は、大うつ病(MDD)と双極性うつ病(BPD)に分類され、米国精神医学会によって出版され、精神障害の追加説明も提供するDiagnostic and Statistical Manual,5th edition(DSM-5)に記載されている基準を用いて、診断されることができる。大うつ病は、メランコリー型の特徴を伴う場合と伴わない場合もある。更に、全般性不安障害、解離性障害、パーソナリティ障害、又は抑うつ気分を伴う適応障害などの不安障害の状況において、抑うつ症状が発生することがある(DSM-5)。
【0007】
5-HT2A受容体は、神経伝達物質セロトニン(5-HT)の受容体の一種である。5-HT2Aアンタゴニストは、5-HT2A受容体におけるセロトニンなどのアゴニストの効果を阻害する化合物である。選択的5-HT2A受容体アンタゴニスト及びインバースアゴニストは、うつ病及び精神病の両方の治療のために現在開発中であり、潜在的な抗うつ剤/抗精神病剤と見なされる。
【0008】
N-メチル-D-アスパラギン酸(aspartate)受容体(NMDAR)は、脳神経伝達物質グルタメートの受容体の一種である。NMDARは、感覚処理、認知、及び感情調節を含む様々な脳機能に関与する。
【0009】
NMDARは、GluN1、GluN2、及びGluN3(以前は、NR1、NR2、NR3)と呼ばれる複数のサブユニットから構成される。GluN1、GluN2、及びGluN3の複数の形態が存在する。特に、GluN2サブユニットは、NR2A-Dサブユニットとも呼ばれるGluN2A-Dサブフォームに分けられる。NMDARは、種々の量のGluN1、GluN2、及びGluN3サブユニットの種々の組合せからなることができる。アゴニスト及びアンタゴニストは、全てのNMDARに同等に影響を及ぼすことができる、又は特定のサブユニットタイプを含むNMDARにおいて選択的であることができる。
【0010】
NMDARは、神経伝達物質グルタメート及び内因性調節アミノ酸であるグリシンとD-セリンの両方の結合部位を含む。グルタメート結合部位はまた、合成グルタメート誘導体N-メチル-D-アスパラギン酸(aspartate)を高い親和性で選択的に結合する。この部位は、NMDARのNMDA認識部位のグルタメート認識部位とも呼ばれる。
【0011】
グリシン/D-セリン結合部位は、グリシン調節部位、アロステリックな調節部位、又はグリシン-B受容体と呼ばれている。NMDARは、フェンシクリジン(PCP)、ケタミン、又はジゾシルピン(MK-801)などの幾つかの依存性薬物によってブロックされるイオンチャネルを形成する。これらの化合物は、PCP受容体と呼ばれている部位に結合する。NMDAR関連イオンチャネルをブロックする剤は、非競合的NMDARアンタゴニスト又はNMDARチャネルブロッカーと総称される。チャネルブロッカーによるNMDARの遮断は、統合失調症によく似た臨床精神病状態をもたらす。
【0012】
NMDARは、グルタメート認識部位、グリシン認識部位、又はチャネル結合部位に結合するアンタゴニストによっても阻害されることができる。
【0013】
NMDARは、グリシン認識部位に結合するアンタゴニストによっても阻害されることができる。グリシン認識部位におけるアンタゴニストは、増加される用量に応じて、NMDAR活性を単調に減少させる完全アンタゴニスト、又は異なる用量範囲内で異なってNMDAR機能に影響を及ぼす部分アゴニスト(混合アゴニスト/アンタゴニスト)であることができる。具体的には、部分アゴニストは、低用量ではアゴニストとして作用し、高用量ではアンタゴニストとして作用する。
【0014】
D-サイクロセリンは、部分的グリシン-部位アンタゴニストとして作用する化合物である。血液(例えば、血漿又は血清)におけるD-サイクロセリンのレベルは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含むがこれに限定されない標準のクロマトグラフィー結果を用いて評価されることができる。一般に、D-サイクロセリンのレベルは、血清又は血漿のいずれを決定に使用しても同等である。
【0015】
一般に、D-サイクロセリンは、10マイクログラム/mL未満の血中濃度をもたらす用量で正味アゴニスト効果(net agonist effect)、及び25マイクログラム/mLを超える濃度をもたらす用量で正味アンタゴニスト効果を有する。一般に、D-サイクロセリンがアゴニストとして作用するヒトの用量は、10mg/日~100mg/日の範囲である。一般に、25マイクログラム/mLを超える持続された血中レベルを達成するには、500mg/d(例えば、70kgの平均的な成人では700mg/d)を大幅に超えるヒトの用量が必要とされる。
【0016】
治療難治性うつ病とは、現在利用可能な治療への反応が不十分なうつ病の形態を指し(例えば、nimh.nih.gov/trials/practical/stard/index.shtml June 2011)、うつ病の他の形態と比べて異なった根本的な疫学病理学的メカニズムを有することがある。抗うつ剤の組合せは、難治性うつ病に対する単独療法よりも優れていることは示されてなく、通常、副作用のリスクを増加させるので推奨されない。
【0017】
大うつ病のための現在の治療は主に、1960年代に初めて開発されたモノアミン酸化酵素阻害剤(MAOI)及び三環系抗うつ剤(TCA)(例えば、イミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、クロミプラミン)などの古い抗うつ剤と、四環系抗うつ剤(TeCA)、(例えば、アモキサピン、セチプチリン、マプロチリン、ミアンセリン、ミルタザピン)、セロトニン(SSRI)、及びセロトニン/ノルエピネフリン(norephinephrine)(SNRI)再取り込み阻害薬(例えば、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、デュロキセチン、ベンラファキシン、ダポキセチン、インダルピン(indalpine)、バロゾドン(valozodone))などの新しい剤と、からなる。これらの剤は、モノアミン、特にノルエピネフリン及びセロトニンの脳中レベルを調節することで、及び/又は5-HT2A受容体をブロックすることで機能する。MAOIとTCAは、その後開発されたSSRI/SNRIよりも「より広範な範囲の」剤と見なされる MAOI、TCA、TeCA、SSRI、及びSNRIは、合わせて従来の抗うつ剤と見なされることができる。
【0018】
抗精神病剤は、うつ病の治療にも効果的であることができる。潜在的に有益な抗精神病医薬としては、リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、クエチアピンXR、アリピプラゾール、クロザピン、イロペリドン、セルチンドール、アセナピン、ルラシドン、カリプラジン、及びブレクスピプラゾールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
広い範囲の薬理学的選択肢にもかかわらず、統合失調症及びうつ病に対する現在の治療アプローチは、厳しい制限を有する。僅か60%~65%の患者が初期の治療レジメンに反応し、反応する者の中で、半分未満が寛解に達するか、症状がなくなる。抗うつ剤治療の最初のコースに反応しない個人は、多くの場合、異なる薬物に切り替えられ、結果は一般に中程度(modest)で増加性である。
【0020】
更に、うつ病性障害では、自殺のリスクが顕著に増加するが、全体として抑うつ症状に対して薬物療法と異なる反応を示すことがある。自殺が起こると、多くの場合無価値観又は不適切な罪悪感、並びに死又は自殺念慮の繰り返しの考えが付随し、罪悪感は、自殺の受け入れられた代わりのもの(proxy)である。うつ病性障害の対象では自殺のリスクが高くなり、うつ病性障害を治療するためにこれまで一般に使用されていた医薬は、逆説的に自殺傾向を増加させる。
【0021】
抗精神病医薬及び抗うつ病医薬の使用における主な制限は、行動の副作用、特に不安、激越、アカシジアをもたらす易罹病性(liability)であり、これらは全て、精神病患者又はうつ病患者の自殺傾向の発生又は悪化に関連する。時間経過と症状の特定のパターンの両方を考慮することにより、これらの行動の副作用を病気の症状と区別することができる。
【0022】
アカシジアに加えて、抗精神病剤は、こわばり、振戦、ジスキネジアなどの錐体外路症状ももたらす。しかしながら、アカシジアは、錐体外路症状とは区別され、異なる治療反応を示す。現在、抗精神病剤により誘発されたアカシジアの承認された治療方法はない。
【0023】
抗うつ剤の使用も、不安、激越、アカシジアをもたらす易罹病性によって制限される。
【0024】
抗うつ剤の制限は、以下のようにFDAが必要とする「ブラックボックス」警告にまとめられている。「以下の症状、不安、激越、パニック発作、不眠症、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、アカシジア(精神運動不穏状態)、軽躁病、及び躁病が、大うつ病性障害のための、並びに精神病及び非精神病の両方における他の兆候のための抗うつ剤で治療されている成人及び小児患者で報告されている。そのような症状の出現と、うつ病の悪化及び/又は自殺衝動の出現との間の因果関係は確立されていないが、そのような症状は出現する自殺傾向の前兆を表すかもしれないという懸念がある」(Trivedi et al.,J Clin Psychiatry,72:765-774,2011)
【0025】
抗精神病剤により誘発されたアカシジアと同様に、現時点では、抗うつ剤により誘発された不安、激越、又はアカシジアの承認された治療はない。
【発明の概要】
【0026】
本発明は、ヒトにおけるうつ病及び精神病の治療のための組成物に関する。より具体的には、本発明は、D2受容及び5-HT2A受容体(セロトニン-ドーパミンアンタゴニスト、「SDA」)の両方を標的にし、競合的NMDARアンタゴニストも含む、選択的5-HT2A受容体アンタゴニスト/インバースアゴニスト及び/又は非定型抗精神病医薬を含む抗精神病医薬及び/又は抗うつ病医薬を含む製剤に関する。本発明はまた、抗うつ病及び/又は抗精神病有効量での本発明の組成物の投与による、うつ病、及び統合失調症を含む他の精神病を罹患しているヒトの治療方法に関する。
【0027】
1つの実施形態においては、本発明は、2つの治療薬から実質的になる経口又は非経口投与レジメンを提供し、前記2つの有効成分の1つは、抗うつ剤又は抗精神病剤であり、他の剤は、NMDAR受容体アンタゴニストからなる。
【0028】
本発明の幾つかの実施形態においては、第1の化合物は、定型又は非定型抗精神病剤からなるが、「第1の」化合物がNMDAR受容体アンタゴニストであり、「第2の」化合物が抗うつ剤又は抗精神病剤である特定の実施形態においては、「第1の」及び「第2の」を逆にすることができることが理解される。
【0029】
本発明の幾つかの実施形態においては、第1の治療薬は、アミスルプリド、アリピプラゾール、アセナピン、バイオアンセリン(bioanserin)、ビフェプルノックス、カリプラジン、クロチアピン、クロザピン、イロペリドン、ルマトペロン(lumatoperone)(ITI-007)、MIN-101、ルラシドン、モサプロミン(mosapromine)、オランザピン、パリペリドン、ペロスピロン、クエチアピン、レモキシプリド、リスペリドン、セルチンドール、スルピリド、ジプラシドン、ゾテピンを含むリストから選択される。
【0030】
幾つかの実施形態においては、第1の治療薬は、四環系抗うつ剤(TeCA)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン/ノルエピネフリン(norephinephrine)再取り込み阻害薬(SNRI) 5-HT2Aアンタゴニスト/インバースアゴニスト 混合アゴニスト/アンタゴニスト活性を有する非定型抗うつ剤、又はそれらの組合せを含む。
【0031】
5-HT2A受容体アンタゴニスト/インバースアゴニストは、ボリナンセリン(MDL100,907、M100907としても知られる)プルバンセリン(EMD281014)、エプリバンセリン(SR-46,349)、CYR-101、及びピマバンセリン(ACP-103)を含むリストから選択されることができる。
【0032】
NMDARアンタゴニストは、グリシン認識部位、グルタメート認識部位、又はポリアミン認識部位でのアンタゴニストから選択されることができる。
【0033】
NMDARアンタゴニストは、NR2Aサブユニット又はNR2Bサブユニットなどの特定のサブユニットを含むNMDARでの非選択的アンタゴニスト又は選択的アンタゴニストであることができる。
【0034】
本発明の幾つかの実施形態においては、前記第1の治療薬は、アゴメラチン、F2695、lEP-227162、LuAA24530、SEP-225289、LY12624803、HY10275、TIK-301/LY156735、ロナセン、LU-31-130、SLV313、エディボキセチン、OPC-34712、リスデキサンフェタミン、サコメリン(sacomeline)、コルラセタム(clouracetam)、及びBMS-82036を含むリストから選択される。
【0035】
幾つかの実施形態においては、第2の治療薬は、ケタミン、デキストロメトルファン、CNS-1102、AZD6765、又はCGS-19755を含むリストから選択される。
【0036】
本発明の好ましい実施形態においては、第2の治療薬は、1日当たり500mg超~1日当たり1000mg未満のNMDARアンタゴニスト投与量で投与された、D-サイクロセリンからなり、特定の実施形態においては、10mg/kg以上の投与量である(平均的な成人において、1日当たり700mgを超える)。
【0037】
幾つかの実施形態においては、NMDARアンタゴニストは、25マイクログラム/mL超~125マイクログラム/mL未満のピーク血中レベルをもたらす用量で投与された、D-サイクロセリンからなる。
【0038】
幾つかの実施形態においては、NMDARアンタゴニストは、25マイクログラム/mL超~125マイクログラム/mL未満の持続された血中レベルをもたらす用量で投与された、D-サイクロセリンからなる。幾つかの実施形態においては、これらのレベルは、D-サイクロセリンの投与後12時間の期間持続する。
【0039】
幾つかの実施形態においては、本発明は、それを必要としている対象における精神病の治療方法を提供し、前記方法は、本明細書に記載される経口又は非経口投与レジメンを前記対象に提供することを含む。
【0040】
幾つかの実施形態においては、本発明は、それを必要としている対象におけるうつ病の治療の方法を提供し、前記方法は、本明細書に記載される経口又は非経口投与レジメンを前記対象に提供することを含む。
【0041】
幾つかの実施形態においては、前記対象は、躁病を罹患する、又は幾つかの実施形態においては、前記対象は、双極性障害を罹患する。
【0042】
幾つかの実施形態においては、本発明は、それを必要としている対象における自閉症の症状を治療する方法を提供し、前記方法は、本明細書に記載される経口又は非経口投与レジメンを前記対象に提供することを含む。
【0043】
幾つかの実施形態においては、本発明は、抗精神病医薬に関連する副作用を軽減する方法をそのような治療を必要としている対象に提供し、前記方法は、本明細書に記載される経口又は非経口投与レジメンを前記対象に提供することを含む。
【0044】
幾つかの実施形態においては、本発明は、抗うつ病医薬に関連する副作用を軽減する方法をそのような治療を必要としている対象に提供し、前記方法は、本明細書に記載される経口又は非経口投与レジメンを前記対象に提供することを含む。
【0045】
幾つかの実施形態においては、本発明は、NMDARアンタゴニスト医薬に関連する副作用を軽減する方法をそのような治療を必要としている対象に提供し、前記方法は、本明細書に記載される経口又は非経口投与レジメンを前記対象に提供することを含む。
【0046】
幾つかの実施形態においては、1以上の薬学的に許容される賦形剤と共に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのゲル化剤は、徐放性剤の製造に用いられる。
【0047】
幾つかの実施形態においては、徐放性製剤は、1以上の薬学的に許容される賦形剤と共に、ゲル化剤、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、NMDARアンタゴニスト、抗うつ剤、及びその薬学的に許容される塩を含む親水性マトリックスを含む。
【0048】
幾つかの実施形態においては、徐放性製剤は、NMDARアンタゴニストを加水分解から保護することにより、NMDARアンタゴニスト又は抗うつ剤の胃内分解を低減する。
【0049】
幾つかの実施形態においては、加水分解と胃の分解に対する感応性を減らすために、D-サイクロセリンに共有結合修飾が作られる。幾つかの実施形態においては、前記共有結合修飾は、加水分解及び胃の分解に耐性であるプロドラッグを作成する。幾つかの実施形態においては、前記共有結合的修飾は、D-サイクロセリンの第一級アミン基に作られる。幾つかの実施形態においては、前記共有結合修飾は、D-サイクロセリン分子の第二級アミド基に作られる。幾つかの実施形態においては、前記共有結合修飾はメチル基の付加からなる。幾つかの実施形態においては、前記共有結合修飾は、完全に又は部分的に水素化されたポリアルキル部分からなる。幾つかの実施形態においては、前記共有結合修飾は、D-サイクロセリンプロドラッグを生成し、これが体内でD-サイクロセリンに代謝される。
【0050】
幾つかの実施形態においては、NMDARアンタゴニスト、及び抗うつ病医薬又は抗精神病医薬の両方は、共通の徐放性のために製造される。
【0051】
幾つかの実施形態においては、NMDARアンタゴニストは、徐放性のために製造され、抗うつ剤又は抗精神病剤と組み合わされる。
【0052】
幾つかの実施形態においては、前記抗うつ剤又は抗精神病剤は、徐放性のために製造され、NMDARアンタゴニストと組み合わされる。
【0053】
1つの実施形態においては、NMDARアンタゴニスト、及び抗うつ剤又は抗精神病剤が、組み合わせた薬の1日1回の投与が可能である放出特性のために選択され、別の徐放性製造を必要としない。
【0054】
更なる実施形態においては、本明細書に記載される医薬組成物は、薬の調製、及び/又はうつ病又は自殺傾向を罹患し、非定型抗精神病剤による治療を必要としているが、組み合わされたドーパミンD2/5-HT2A受容体アンタゴニストである非定型抗精神病剤の副作用を低減する必要がある対象の治療において、用いられることができる。記載されるように、そのような組成物は、本明細書に記載されるNMDARアンタゴニストと、具体的な実施形態においては、ルラシドン、クエチアピン、クエチアピンXR、リスペリドン、カリプラジン、ITI-007、MIN-101、アリピプラゾール、又はブレクスピプラゾールである組み合わされたドーパミンD2/5-HT2A受容体アンタゴニストとを含む。
【0055】
前述及び他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】
図1は、経口(PO)投与後の強制水泳試験(FST)での不動時間におけるD-サイクロセリン(DCS)の効果を示す。10頭~50頭のマウスを、対象(溶媒)、セルトラリン(20mg/kg)、又はD-サイクロセリン(30mg/kg~1000mg/kg)のいずれかで処置した。*p<.05対対照。***p<.001対対照。この試験で不動を表すために用いられた主変数は、6分間の試験期間中の合計不動時間だった。対照条件に対するDunnett事後試験を用いた分散分析(ANOVA)、又は必要に応じてt-検定によって、統計を実施した。
【
図2】
図2は、ルラシドンの非存在下及び存在下の両方での腹腔内(IP)投与後の強制水泳試験(FST)での不動時間におけるD-サイクロセリン(DCS)の効果を示す。10頭~50頭のマウスを、対象(溶媒)、セルトラリン(20mg/kg)、ルラシドン(1mg/kg及び3mg/kg)、又はD-サイクロセリン(30mg/kg~1000mg/kg)のいずれかで処置した。***p<.001対対照。この試験で不動を表すために用いられた主変数は、6分間の試験期間中の合計不動時間だった。対照条件に対するDunnett事後試験を用いた分散分析(ANOVA)、又は必要に応じてt-検定によって、統計を実施した。
【
図3】
図3は、齧歯類におけるDCSの薬物動態を示す。どの用量が>25マイクログラム/mLのDCS血漿レベルの効果をもたらすか(produces)を決定するために、8頭のマウスを30mg/kg、100mg/kg、300mg/kg、500mg/kg、及び1000mg/kgのDCSで処理し、IPで投与した。グラフに示されているのは、血漿(±sem)DCSレベル対用量である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
I.用語
別段の説明がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。「a」、「an」、及び「the」という単数形の用語には、文脈が明確に示さない限り、複数の参照を含む。同様に、「又は」という言葉は、文脈が明確に示さない限り、「及び」を含むことを意図している。更に、核酸又はポリペプチドに与えられた全ての塩基サイズ又はアミノ酸サイズ、及び全ての分子量又は分子質量の値は、おおよそであり、説明のために提供されることが理解される。本明細書に記載のものと類似又は同等の方法及び材料を本開示の実施又は試験に使用することができるが、適切な方法及び材料を以下に記載する。「comprises」という用語は、「includes」を意味する。「consisting essentially of」は、リストされた特徴のみをアクティブ又は必須な要素として含む組成物、方法、又はプロセスを示すが、更に非アクティブ要素を含むことができる組成物、方法、又はプロセスを示す。略語「e.g.」は、ラテン語のexempli gratiaに由来し、非限定的な例を示すために本明細書中で使用される。したがって、略語「e.g.」は、「for example」などの用語と同義である。
矛盾する場合、用語の説明を含む本明細書が考慮される。更に、全ての材料、方法、及び例は例示的であり、限定することを意図したものではない。
【0058】
本明細書で使用されるように、本明細書で参照される治療薬の「有効」量又は「治療有効量」への言及は、毒性はないが、望ましい効果を提供するのに十分な量の同じものを意味する。本発明の併用療法において、組合せの1つの成分の「有効量」は、組合せの他の成分と組み合わせて使用される場合に、所望の効果を提供するのに効果的な化合物の量である。「有効である」量は、個体の年齢及び一般的な状態、特定の活性剤又は剤などに応じて、対象ごとに異なる。したがって、正確な「有効量」を指定することは常に可能ではない。しかしながら、任意の個々の場合における適切な「有効」量は、通常の実験を用いて当業者によって決定されることができる。
【0059】
本明細書で使用される「治療すること」及び「治療」という用語は、症状の重症度及び/又は頻度の低下、症状及び/又はその根本的な原因の除去、症状及び/又はその根本的な原因の発生の防止、及び損傷の改善又は修復を指す。したがって、例えば、患者を「治療する」ことは、影響を受けやすい個体における特定の障害又は有害な生理学的事象の予防、並びに臨床的に症状のある個体の治療を含む。
【0060】
D-サイクロセリン又はDCSは、化学的D-サイクロセリン(CA指標名:3-イソオキサゾリジノン,4-アミノ-,(4R)-(9CI);CAS登録番号68-41-7)、又はその薬学的に許容される塩を指す。DCSは、結核の治療のための、FDA(米国食品医薬品局)が認可した薬物であり、Eli Lilly and CompanyからSeromycin(登録商標)の商標名で販売されている。DCSは、D-アラニンの構造類似体であり、Streptomyces orchidaceus及びS.garphalusの幾つかの株によって産生される広域抗生物質である。
【0061】
治療難治性うつ病とは、現在利用可能な治療への反応が不十分なうつ病の形態を指し(例えば、nimh.nih.gov/trials/practical/stard/index.shtml June 2011に記載される)、うつ病の他の形態と比べて異なった根本的な疫学病理学的メカニズムを有することがある。抗うつ剤の組合せは、難治性うつ病に対する単独療法よりも優れていることは示されておらず、通常、副作用のリスクを増加させるので推奨されない。
【0062】
「プロドラッグ」は、投与後、薬理学的に活性な薬物に代謝される(すなわち体内で変換される)医薬又は化合物である。不活性プロドラッグは、体内で活性形態に代謝される薬理学的に不活性な医薬である。
【0063】
II.副作用を低減したうつ病及び統合失調症の治療用組成物
本明細書に示されるように、選択的に、>25マイクログラム/mLの持続された血中(例えば、血清又は血漿)レベルをもたらす用量で、予想外に、NMDAR正味アンタゴニストが、抗うつ治療及び/又は抗精神病治療に関連するアカシジア及び不安を低減する用量で、D-サイクロセリンは、齧歯類における抗うつ病効果を誘発する。
【0064】
特に、持続された血中D-サイクロセリン濃度>25マイクログラム/mLをもたらす用量で与えられると、D-サイクロセリンは、抗うつ治療及び/又は抗精神病治療に関連するアカシジア及び不安を低減することを予想外に示す。ここで、持続されたD-サイクロセリン濃度25マイクログラム/mL未満をもたらす用量で与えられると、D-サイクロセリン用量は、抗うつ治療及び/又は抗精神病治療に関連するアカシジア又は不安を低減しないことも予想外に示す。
【0065】
本明細書で議論されるように、抗うつ剤は、NMDARアゴニストの使用に関連する精神病症状を予防することも予想外に観察された。
【0066】
更に、D-サイクロセリンの胃の分解を減少させる操作は、投与された用量に対して増加した血中レベルをもたらすことができることを予想外に示す。
【0067】
これらの及び他の観察を考慮して、うつ病と統合失調症の治療に用いられることができ、低減した不安を惹起する副作用を有する医薬組成物が、本明細書に記載される。前記低減した不安を惹起する副作用により、患者は、記載されている有害な副作用のために以前は可能ではなかったうつ病及び統合失調症(精神病)の治療を提供すること又は維持することが可能である。幾つかの実施形態においては、前記組成物は、経口、非経口、又は静脈内投与レジメンで提供され、それを必要としている対象における統合失調症又はうつ病の治療、又はそれを必要としている対象又は集団における発生又はアカシジア又は不安の低減において、有用である。
【0068】
特定の実施形態においては、前記組成物は、D-サイクロセリンの正味NMDAR-アンタゴニスト有効量と、組み合わされたドーパミンD2/5-HT2A受容体アンタゴニストである非定型抗精神病剤の有効量とを含み、D-サイクロセリンのNMDAR-アンタゴニスト有効量は、25マイクログラム/mL超~125マイクログラム/mL未満の持続された血中濃度をもたらすのに十分である。
【0069】
幾つかの実施形態においては、記載される組成物は、2つの有効成分から実質的になる経口又は非経口投与レジメンを提供し、前記成分の1つ目は、抗精神病剤又は抗うつ剤であり、2つ目の有効成分は、NMDAR受容体アンタゴニストである。幾つかの実施形態においては、本態様によれば、前記第1の治療薬は、例えば、四環系抗うつ剤(TeCA)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン/ノルエピネフリン(norephinephrine)再取り込み阻害薬(SNRI)、選択的5-HT2A受容体アンタゴニスト、選択的5-HT2A受容体インバースアゴニスト、非定型抗うつ剤、又はうつ病の治療における使用のために認可された抗精神病剤、又はそれらの組合せなど、本明細書に記載される任意の剤を含む。
【0070】
N-メチル-D-アスパラギン酸(aspartate)受容体(NMDAR)は、脳神経伝達物質グルタメートの受容体の一種である。NMDARは、感覚処理、認知、感情調節を含む様々な脳機能に関与する。
【0071】
NMDARは、GluN1、GluN2、及びGluN3(以前は、NR1、NR2、NR3)と呼ばれる複数のサブユニットから構成される。GluN1、GluN2、及びGluN3の複数の形態が存在する。特に、GluN2サブユニットは、NR2A-Dサブユニットとも呼ばれるGluN2A-Dサブフォームに分けられる。NMDARは、種々の量のGluN1、GluN2、及びGluN3サブユニットの種々の組合せからなることができる。アゴニスト及びアンタゴニストは、全てのNMDARに同等に影響を及ぼすことができる、又は特定のサブユニットタイプを含むNMDARにおいて選択的であることができる。
【0072】
NMDARは、神経伝達物質グルタメート及び内因性調節アミノ酸であるグリシンとD-セリンの両方の結合部位を含む。
【0073】
グルタメート結合部位も、合成グルタメート誘導体N-メチル-D-アスパラギン酸(aspartate)を高親和性で選択的に結合する。この部位は、NMDARのNMDA認識部位のグルタメート認識部位とも呼ばれる。
【0074】
グリシン/D-セリン結合部位は、グリシン調節部位、アロステリックな調節部位、又はグリシン-B受容体と呼ばれている。
【0075】
NMDARは、フェンシクリジン(PCP)、ケタミン、又はジゾシルピン(MK-801)などの幾つかの依存性薬物によってブロックされるイオンチャネルを形成する。これらの化合物は、PCP受容体と呼ばれている部位に結合する。NMDAR関連イオンチャネルをブロックする剤は、非競合的NMDARアンタゴニスト又はNMDARチャネルブロッカーと総称される。チャネルブロッカーによるNMDARの遮断は、統合失調症によく似た臨床精神病状態をもたらす。
【0076】
チャネル部位を介してNMDARをブロックする他の化合物は、AZD6765(AstraZeneca)を含む。
【0077】
他のNMDARアンタゴニストは、その全体を参照によって本明細書に援用する2011年12月15日出版の米国特許出願公開第20110306586号明細書に記載される。
【0078】
メマンチンなどの低親和性NMDARアンタゴニストは、PCP、ケタミン、又はジゾシルピンなどの高親和性アンタゴニストとは区別されることができる。一般に、低親和性NMDARアンタゴニストは、齧歯類における統合失調症様精神病又はPCP様行動効果を誘発しない。
【0079】
NMDARは、グルタメート認識部位、グリシン認識部位、又はポリアミン(酸化還元感応性)結合部位に結合するアンタゴニストによっても阻害されることができる。
【0080】
内因性アミノ酸であるグルタメート又はグリシンのそれぞれの結合部位への結合をブロックし、固有の活性を有さない剤は、競合的グルタメート又はグリシン部位アンタゴニストと呼ばれる。これらの部位に結合するが、内因性リガンドよりも低い固有活性を有する剤は、部分アゴニスト又は混合アゴニスト又はアンタゴニストと呼ばれる。
【0081】
セルフォテル(CGS19755)は、グルタメート認識部位に結合するアンタゴニストの例である。幾つかのこのような化合物は、脳卒中やてんかんなどのCNS適応症を対象として開発された。NMDARを有意に阻害するのに十分な用量で用いられると、チャネルブロッカーのようなこれらの化合物は、臨床的な精神異常発現性症状をもたらす。
【0082】
グルタメート認識部位のアンタゴニストとして機能する追加の化合物は、アプチガネル(Cerestat、CNS-1102)及びJ Med Chem 37:260-7.1994(Reddy等)に記載される関連化合物を含む。
【0083】
グルタメート認識部位のアンタゴニストとして機能する追加の化合物は、様々なスペーサーユニットによって分離されたα-アミノ-カルボン酸及び及びホスホン酸機能性を含む。修飾されていない例は、2-アミノ-5-ホスホノバレリアン酸(AP5)(Watkins,J.C.;Evans,R.H.,Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol.1981,21,165)であり、飽和炭素鎖を含む。構造的剛性、それによって効力を高める要素を含むより複雑な例は、CPP、cis-4-(ホスホノメチル)-2-ピペリジンカルボン酸(CGS-19755)(Lehman,J.et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.1988,246,65)、及び(E)-2-アミノ-4-メチル-5-ホスホノ-3-ペンテン酸(CGP-37849)(Schmutz,M.et al.,Abs.Soc.Neurosci.1988,14,864)を含む。その全体を参照によって援用する、2008年3月18日発行の米国特許第7,345,032号明細書及び米国特許第5,168,103号明細書を参照。
【0084】
記載されている組成物及び方法における使用のためのNMDARアンタゴニストの非制限的な例としては、ケタミン、セルフォテル、アプチガネル、CPP、CGP-37849、フェルバメート、ガベスチネルN-(6,7-ジクロロ-2,3-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-キノキサリン-5-イル)-N-(2-ヒドロキシ-エチル)-メタンスルホンアミド及び6,7-ジクロロ-5-[3-メトキシメチル-5-(1-オキシピリジン-3-イル)-[1,2,4]トリアゾル-4-イル]-1,4-ジヒドロ-キノキサ-リン-2,3-ジオン、4-(3-ホスホノ-プロピル)-ピペラジン-2-カルボン酸(CPP)、D-(E)-4-(3-ホスホノプロプ-2-エニル)ピペラジン-2-カルボン酸(D-CPPene)、SDZ-220581、PD-134705、LY-274614、及びWAY-126090);キノリン酸(キヌレン酸、7-クロロ-キヌレン酸、7-クロロ-チオキヌレン酸、及び5,7-ジクロロ-キヌレン酸など)、そのプロドラッグ(4-クロロキヌレニン及び3-ヒドロキシ-キヌレニンなど);4-アミノテトラヒドロキノリン-カルボキシラート(L-689,560など);4-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン(L-701,324など);キノキサリンジオン(リコスチネル(licostinel)(ACEA-1021)及びCGP-68,730Aなど);4,6-ジクロロ-インドール-2-カルボキシラート誘導体(MDL-105,519、ガベスチネル(GV-150,526)、及びGV-196,771Aなど);三環式化合物(ZD-9,379及びMRZ-2/576など)、(+)-HA-966、モルフィナン誘導体(デキストロメトルファン及びデキストロファン(dextrophan)など);ベンゾモルファン(BIII-277CLなど);他のオピオイド(デキストロプロポキシフェン、ケトベミドン、デキストロメタドン(dextromethadone)、及びD-モルヒネなど);アミノ-アダマンタン(アマンタジン及びメマンチンなど);アミノ-アルキル-シクロヘキサン(MRZ-2/579など);イフェンプロジル及びイフェンプロジル様化合物(エリプロディル及びPD-196,860など);イミノピリミジン;又は他のNMDA-アンタゴニスト(ニトロプルシド、D-サイクロセリン、1-アミノシクロプロパン-カルボン酸、ジゾシルピン(MK801)及びその類似体、(R)-ケタミン、(S)-ケタミン、レマセミド(remacemide)及びその脱グリシニル-代謝物(des-glycinyl-metabolite)FPL-12,495、AR-R-15,896、メサドン、スルファゾシン、AN19/AVex-144、AN2/AVex-73、ベソンプロジル、CGX-1007、EAB-318、及びNPS-1407が挙げられる。
【0085】
グリシン認識部位に結合するアンタゴニストによってNMDARが阻害されることもできる。
【0086】
D-サイクロセリンは、部分的グリシン-部位アンタゴニストとして作用する化合物であり、混合アゴニスト/アンタゴニストとも呼ばれる。NMDARにおけるD-サイクロセリンの効果は、薬物の血中レベルに依存する。D-サイクロセリンは、血中レベル<10マイクログラム/mLで正味グリシン-部位アゴニストとして、血中レベル>25マイクログラム/mLで正味グリシン-部位アンタゴニストとして機能する。
【0087】
D-サイクロセリンは、通常250mgのカプセルで供給され、1日当たり250mg、500mg、750mg、又は1000mgでの投与量が可能である。D-サイクロセリンは、例えば、1日当たり200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、850mg、900mg、又は950mgの中間用量で投与されることもできる。
【0088】
特定の実施形態においては、記載された組成物のD-サイクロセリン成分は、1日当たり500mg超~1日当たり1000mg未満の投与量で投与され、正味NMDARアンタゴニスト効果をもたらし、持続された血清レベルは、25マイクログラム/mL超~125マイクログラム/mL未満である。効果的な正味アンタゴニスト量を提供するための代表的な投与量は、10mg/kg/日(70kgの平均的成人において700mg)以上である。記載された組成物の特定の実施形態は、26マイクログラム/mL以上、27マイクログラム/mL以上、28マイクログラム/mL以上、29マイクログラム/mL以上、30マイクログラム/mL以上、31マイクログラム/mL以上、32マイクログラム/mL以上、33マイクログラム/mL以上、34マイクログラム/mL以上、及び35マイクログラム/mL以上などの25マイクログラム/mL~40マイクログラム/mLの持続された血清レベルをもたらす投与量で投与されたD-サイクロセリン成分を含む。
【0089】
500mgの用量後のヒトにおけるD-サイクロセリンの薬物動態(PK)が、過去に研究されてきた。血中の薬物のPKを調査するときの重要なパラメーターは、投与間隔中に達成された最大(ピーク)濃度(Cmax)、最大濃度までの時間(Tmax)、及び曲線下面積(AUC)を含む。
【0090】
例えば、Zhu等(Zhu M,Nix DE,Adam RD,Childs JM,Peloquin CA.Pharmacokinetics of cycloserine under fasting conditions and with high-fat meal,orange juice,and antacids.Pharmacotherapy.2001;21(8):891-7)は、空腹条件下で500mgのD-サイクロセリンを一回投与した後、12.1マイクログラム/mL~30.6マイクログラム/mLの範囲において、14.8マイクログラム/mLの中央値Cmax値を示した。24時間に亘る中央値AUCレベルは、163~352の範囲で、214マイクログラム-hr/mLであり、6.8マイクログラム/mL~14.7マイクログラム/mLの範囲で、8.9マイクログラム/mLの中央値持続血漿レベルに対応する。
【0091】
Park等(Park SI,Oh J,Jang K,Yoon J,Moon SJ,Park JS,Lee JH,Song J,Jang IJ,Yu KS,Chung JY.Pharmacokinetics of Second-Line Antituberculosis Drugs after Multiple Administrations in Healthy Volunteers.Antimicrob Agents Chemother.2015;59(8):4429-35.)は、12時間毎にPOで投与される250mgのD-サイクロセリンの薬物動態を評価し、24.9マイクログラム/mLの平均Cmax値及び242.3mg-時間/Lの12時間に亘る平均AUCを観察し、これは、20.2マイクログラム/mLの平均血漿レベルに対応する。
【0092】
Hung等(2014年)(Hung WY,Yu MC,Chiang YC,Chang JH,Chiang CY,Chang CC,Chuang HC,Bai KJ.Serum concentrations of cycloserine and outcome of multidrug-resistant tuberculosis in Northern Taiwan.Int J Tuberc Lung Dis.2014;18(5):601-6)は、DCSによる臨床治療中のPKレベルを評価した。対象に亘る平均用量は、8.8mg/kgであり、対象の大部分(n=27)が500mg/日のDCSを投与され、少数が750mg/d(n=4)又は250mg/d(n=2)のいずれかだった。投与後2時間及び6時間でのDCS濃度は、19.7マイクログラム/mL及び18.1マイクログラム/mLだった。
【0093】
Hung等(2014年)は、mg/kgの相関関係としての投与量も評価し、血清濃度とD-サイクロセリン用量との間の非常に有意な相関を見出した。この関係に基づいて、25マイクログラム/mLを超える血清レベルをもたらすには、10mg/kgを超えるヒトの用量が必要とされる。この用量は、平均70kgの個人に対して700mg/kgの1日用量に変換される。
【0094】
したがって、ヒトのD-サイクロセリンPK研究の一貫した知見は、500mg/日の用量でのD-サイクロセリンの投与後の持続された血中レベルが、一貫して25マイクログラム/mL未満であり、記載された組成物及び方法に必要な正味NMDARアンタゴニストとして作用することは期待されない。拡大解釈すると、本明細書に記載された組成物及び方法において必要とされる正味NMDARアンタゴニスト効果を達成するには(25マイクログラム/mL超)、500mg/日超のDCSが必要とされ、平均的な個人においては、700mg/kg超の一日用量が好ましく、>10mg/kgの重量基準投与量が好ましい。記載された組成物は、12mg/kg/日、14mg/kg/日、15mg/kg/日、16mg/kg/日、20mg/kg/日、22mg/kg/日、及び24mg/kg/日などを含むがこれらに限定されない10mg/kg/日~25mg/kg/日の重量基準用量で提供されたD-サイクロセリンを含むことができる。
【0095】
もたらされる持続された血中濃度、mg/kg/日、及びmg/日の一日用量によって本明細書に記載されている投与量に加えて、投与量は、モル濃度で表されることができる。D-サイクロセリンの分子量が、102g/モルとすると、25μg/mLを超える提案された濃度は、245マイクロモル濃度を超えるモル濃度基準レベルに対応する。前述のように、本明細書に示されるように(例えば、表4を参照)、この濃度未満の投与量は、現在の組成物及び方法で利用される正味アンタゴニスト効果を提供しない。
【0096】
腸溶コーティングの含有は、胃での加水分解に対する医薬の感応性を低下させることが知られている。腸溶コーティングによる加水分解の減少は、25マイクログラム/mL~125マイクログラム/mL、特に25マイクログラム/mL~40マイクログラム/mLの望ましいNMDAR-アンタゴニスト血中レベルを達成するために必要なD-サイクロセリンの経口用量を減少させる。したがって、医薬組成物が腸溶コーティングを含む特定の実施形態においては、D-サイクロセリンは、450mg/日、400mg/日、350mg/日、300mg/日、250mg/日、又は更に低い量など、500mg/日未満で提供されることができる。記載された組成物で使用するためのD-サイクロセリンの投与量は、25マイクログラム/mL~125マイクログラム/mLの持続された血中レベル及びピークに対応する正味NMDARアンタゴニスト効果をもたらすものであることが理解される。胃の分解から化合物を保護するための追加のアプローチは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,105,626号明細書、米国特許第4,853,230号明細書、米国特許第6,328,994号明細書、米国特許出願公開第2002/0039597号明細書、及び特開昭62-277322号公報に開示される。
【0097】
フェルバメートは、グリシン結合部位を介して作用することができるNMDARアンタゴニスト化合物の別の例である。ヒトに投与すると、フェルバメートは、その臨床的有用性を制限する精神病効果をもたらす(例えば、Besag FM,Expert Opin Drug Saf 3:1-8,2004)。
【0098】
ガベスチネル(GV-150,526)は、グリシン結合部位アンタゴニストの別の例である。他の化合物は、参照により本明細書に組み込まれる、DiFabrio et al.,J Med Chem 40:841-50,1997に記載される。
【0099】
GlyX-13(ラパスチネル)は、グリシン部位で混合されたアゴニスト/アンタゴニストとして機能するテトラペプチド(スレオニン-プロリン-プロリン-スレオニン)である。NRX-1074(apostimel)は、GlyX-13と同様の特性を有する経口的に利用可能な分子である。NYX-2925((2S,3R)-3-ヒドロキシ-2-((R)-5-イソブチリル-1-オキソ-2,5-ジアザスピロ[3.4]オクタン-2-イル)ブタンアミド)は、GlyX-13の効果に基づいて設計された小分子である。AGN-241751(Allergan)は、GlyX-13の経口的に利用可能な小分子類似体である。CERC-301(Rislenemdaz)は、経口活性のある選択的なNMDARサブユニット2Bアンタゴニストである。AZD-6765(ラニセミン)は、低トラップのNMDARアンタゴニストである。S-ケタミン(esketamin)は、ラセミ体のケタミンのS-異性体である。R-ケタミンは、ラセミ体のケタミンのR-異性体である。AV-101(4-クロロキヌレニン(4-Cl Kyn)は、7-クロロキヌレン酸の経口的に活性な小分子プロドラッグであり、NMDARグリシン部位として作用する。
【0100】
グリシン結合部位をブロックするのに効果的な他の化合物は、参照により本明細書に組み込まれる、2012年4月5日出願の米国特許出願公開第13/440368号明細書及び2014年1月23日出願の米国特許出願公開第14/162328号明細書に記載される。
【0101】
本発明の医薬組成物及び方法における使用に適したグリシン部位アンタゴニストの他の例は、以下で参照されるものである。2003年12月23日に発行された米国特許第6,667,317号明細書;2000年6月27日に発行された米国特許第6,080,743号明細書;1999年11月23日に発行された米国特許第5,990,108号明細書;1999年8月24日に発行された米国特許第5,942,540号明細書;1999年7月15日に発行された世界特許出願国際公開第99/34790号;1998年10月29日に出版された世界特許出願国際公開第98/47878号;1998年10月1日に出版された世界特許出願国際公開第98/42673号;1991年12月29日に出版された欧州特許出願公開第966475A1号明細書;1998年9月11日に出版された世界特許出願国際公開第98/39327号;1998年2月5日に出版された世界特許出願国際公開第98/04556号;1997年10月16日に出版された世界特許出願国際公開第97/37652号;1996年10月9日に発行された米国特許第5,837,705号明細書;1997年6月12日に出版された世界特許出願国際公開第97/20553号;1999年3月23日に発行された米国特許第5,886,018号明細書;1998年9月1日に発行された米国特許第5,801,183号明細書;1995年3月23日に発行された世界特許出願国際公開第95/07887号;1997年11月11日に発行された米国特許第5,686,461号明細書;1997年4月22日に発行された米国特許第5,622,952号明細書;1997年3月25日に発行された米国特許第5,614,509号明細書;1996年4月23日に発行された米国特許第5,510,367号明細書;1992年12月9日に出版された欧州特許出願公開第517,347A1号明細書;1993年11月9日に出版された米国特許第5,260,324号明細書。前述の特許及び特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0102】
本発明の医薬組成物及び方法において用いられることができるグリシン部位アンタゴニストの他の例は、N-(6,7-ジクロロ-2,3-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-キノキサリン-5-イル)-N-(2-ヒドロキシ-エチル)-メタンスルホンアミド及び6,7-ジクロロ-5-[3-メトキシメチル-5-(1-オキシピリジン-3-イル)-[1,2,4]トリアゾル-4-イル]-1,4-ジヒドロ-キノキサ-リン-2,3-ジオンである。
【0103】
追加のNMDARアンタゴニストは、N含有ホスホン酸(ノルバリン(AP5)、D-ノルバリン(D-AP5)、4-(3-ホスホノ-プロピル)-ピペラジン-2-カルボン酸(CPP)、D-(E)-4-(3-ホスホノプロプ-2-エニル)ピペラジン-2-カルボン酸(D-CPPene)、cis-4-(ホスホノメチル)-2-ピペリジンカルボン酸(セルフォテル、CGS19755)、SDZ-220581、PD-134705、LY-274614、及びWAY-126090など);キノリン酸(キヌレン酸、7-クロロ-キヌレン酸、7-クロロ-チオキヌレン酸、及び5,7-ジクロロ-キヌレン酸など)、そのプロドラッグ(4-クロロキヌレニン及び3-ヒドロキシ-キヌレニンなど);4-アミノテトラヒドロキノリン-カルボキシラート(L-689,560など);4-ヒドロキシキノリン-2(1H)-オン(L-701,324など);キノキサリンジオン(リコスチネル(licostinel)(ACEA-1021)及びCGP-68,730Aなど);4,6-ジクロロ-インドール-2-カルボキシラート誘導体(MDL-105,519、ガベスチネル(GV-150,526)、及びGV-196,771Aなど);三環式化合物(ZD-9,379及びMRZ-2/576など)、(+)-HA-966、モルフィナン誘導体(デキストロメトルファン及びデキストロファン(dextrophan)など);ベンゾモルファン(BIII-277CLなど);他のオピオイド(デキストロプロポキシフェン、ケトベミドン、デキストロメタドン(dextromethadone)、及びD-モルヒネなど);アミノ-アダマンタン(アマンタジン及びメマンチンなど);アミノ-アルキル-シクロヘキサン(MRZ-2/579など);イフェンプロジル及びイフェンプロジル様化合物(エリプロディル及びPD-196,860など);イミノピリミジン;又は他のNMDAR-アンタゴニスト(ニトロプルシド、D-サイクロセリン、1-アミノシクロプロパン-カルボン酸、ジゾシルピン(MK801)及びその類似体、フェンシクリジン(PCP)、ケタミン((R,S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(メチルアミノ)シクロヘキサン-1-オン)、(R)-ケタミン、(S)-ケタミン、レマセミド(remacemide)及びその脱グリシニル-代謝物(des-glycinyl-metabolite)FPL-12,495、AR-R-15,896、メサドン、スルファゾシン、AN19/AVex-144、AN2/AVex-73、ベソンプロジル、CGX-1007、EAB-318、フェルバメート、及びNPS-1407など)を含むが、これらに限定されない。NMDA-アンタゴニストは、例えば、 “Analgesics,”(H.Buschmann,T.Christoph,E.Friderichs,C.Maul,B.Sundermann,2002,Wiley-VCH Verlag GmbH&Co.KGaA,Weinheim,Germanyにより編集された)の特に389頁~428頁に開示される。記載のそれぞれの部分は、参照により本明細書に組み込まれ、本開示の一部を形成する。
【0104】
アンタゴニストは、GluN2B(NR2B)を含むサブタイプに対して選択的であることができる。NR2Bを含む受容体に選択的な化合物の例としては、イフェンプロジル、トラキソプロジル(traxoprodil)(CP-101,606)、ベソンプロジル、Ro25-6981、MK-0657、及びEVT-101を含む。
【0105】
同定されたNMDARアンタゴニストに加えて、追加のこのような化合物は、NMDAグルタメート部位アゴニストに対するNMDA-受容体を介した応答の調節などの十分に検証された電気生理学的アッセイ、又はNMDA PCP-受容体チャネル結合部位への結合の調節などの放射線受容体アッセイなどを用いて同定されることができる。グリシン部位アゴニスト及びアンタゴニストは、チャネル部位に結合するフェンシクリジン(PCP)又はケタミンなどの化合物からの受容体結合及び電気生理学の両方に基づいて区別されることができる。部分アゴニストは、完全アゴニストに対して、受容体の立体構造の変化を誘発する効果が低下した化合物(通常40%~80%)として定義され、低用量ではアゴニスト効果を誘発し、高用量ではアンタゴニスト効果を誘発することができる。
【0106】
NMDARアンタゴニストケタミンは、現在麻酔剤として認可されている。また、小規模臨床試験で治療抵抗性うつ病に有益な効果を示すことが報告されている。ただし、その有用性は、精神異常発現性効果によって制限される。低親和性NMDARアンタゴニストのメマンチンは、認知症での使用が認可されている。それ以外の場合、NMDARアンタゴニストは、確立された臨床的有用性を有さない。
【0107】
一般に、NMDARアンタゴニストは、統合失調症又はうつ病での使用は禁忌とみなされている。例えば、NMDARアンタゴニストD-サイクロセリンは、うつ病、重度の不安、又は精神病における使用について、FDAによって禁忌とされている。Barlow(米国特許出願公開第2010/0216805号明細書)は、D-サイクロセリンは、うつ病を治療するのに効果的であることができるが、100マイクロモル濃度未満の濃度でのみであり、11マイクログラム/mL以下(under)の血漿濃度に対応し、D-サイクロセリンは、FDAの禁忌及び現在の発明の正味アンタゴニスト活性ではなく、正味アゴニストとして作用することを提案した。
【0108】
D-サイクロセリンの血漿レベルは、高速液体クロマトグラフィーを含むがこれに限定されない標準のクロマトグラフィー結果を用いて評価されることができる。一般に、25マイクログラム/mL超の血中レベルは、精神異常発現性効果における増加したリスクをもたらす。
【0109】
抗精神病化合物の抗うつ病効果は、強制水泳試験などのよく確立された齧歯類の行動試験を用いて評価されることができる(例えば、Cryan et al.,Neuroscience and biobehavioral reviews.29:547-69,2005)。
【0110】
特定の実施形態においては、本明細書に記載される組成物は、抗精神病剤を含む。受容体結合、前臨床効果、及び副作用プロファイルに基づき、抗精神病剤は、定型(例えば、クロルプロマジン、ハロペリドール、ペルフェナジン)、及び非定型(例えば、アミスルプリド、アリピプラゾール、アセナピン、バイオアンセリン(bioanserin)、ビフェプルノックス、カリプラジン、クロチアピン、クロザピン、イロペリドン、ルマトペロン(lumatoperone)(ITI-007)、ルラシドン、モサプロアミン(mosaproamine)、オランザピン、パリペリドン、ペロスピロン、クエチアピン、レモキシプリド、リスペリドン、セルチンドール、スルピリド、ジプラシドン、ゾテピン)に分けることができる。抗精神病医薬の臨床的に有効な用量は、通常、ドーパミンD2受容体の>60%占有率をもたらす。非定型抗精神病剤は、部分的又は完全なD2アンタゴニストであることができ、5-HT2A及び5-HT2C受容体、アドレナリン性アルファ1及びアルファ2受容体を含む、追加のカテコールアミン及びセロトニン受容体タイプでの活性も有することができる。非定型抗精神病剤は、ムスカリン性コリン作動性受容体など、他の受容体タイプにも影響を及ぼすことができる。
【0111】
D2及び5-HT2A受容体の2重アンタゴニストとして機能する抗精神病剤(「セロトニンドーパミンアンタゴニスト」又はSDAとしても知られる)の例としては、アリピプラゾール、アセナピン、カリプラジン、クロチアピン、クロザピン、イロペリドン、ルマトペロン(lumatoperone)(ITI-007)、MIN-101、ルラシドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、レモキシプリド、リスペリドン、セルチンドール、ジプラシドンが挙げられる。D2対5-HT2A受容体アンタゴニズムの相対的な割合は、化合物によって異なることがある。記載された組成物及び方法の特定の実施形態は、本明細書に記載されるように、D2及び5-HT2A受容体の2重アンタゴニストと、NMDAR正味アンタゴニスト、より具体的な例として、本明細書に記載される正味アンタゴニスト用量で提供されるDCSと、の組合せを含む。
【0112】
特定の実施形態においては、記載された組成物は、ルラシドンを含み、20mg/日~200mg/日の用量で提供されることができる。
【0113】
非定型抗精神病剤の不安を惹起する副作用を低減することにより、本明細書に記載される組合せ組成物及び治療は、特定の実施形態において、過去に利用できなかったルラシドンなどの剤による治療の提供及び維持を可能にし得ることが理解される。例えば、特定の対象においては、ルラシドンの提供は、副作用を誘発することがあり、治療を中止しなくてはならない。しかしながら、D-サイクロセリンとの現在の組合せ、又は代替のNMDAR正味アンタゴニスト化合物という文脈においては、ルラシドン治療を継続することができる、又は以前の副作用を継続又は増加させることなく投与量を増やすことさえできる。
【0114】
抗精神病剤は、うつ病の治療にも効果的であることができる。潜在的に有益な抗精神病医薬としては、リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、クエチアピンXR、アリピプラゾール、クロザピン、イロペリドン、セルチンドール、アセナピン、ルラシドン、カリプラジン、及びブレクスピプラゾール(OPC-34712)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
市販又は開発中の他の抗精神病剤及び抗うつ剤は、Valdoxan(アゴメラチン)、AGO178)(Servier、Novartis)、F2695、SEP-227162(Sepracor)、LuAA24530(tedatioxetine、Lundbeck、Takeda)、SEP-225289(Sepracor)、LY12624803、HY10275(Lilly、Hypnion)、TIK-301/LY156735(Tikvah Therapeutics)、ロナセン(バイオアンセリン(bioanserin)、Dainippon)、LU-31-130(Lundbeck)、SLV313(Solvay)、エディボキセチン(LY2216684、Lilly)、OPC-34712(ブレクスピプラゾール、Otsuka/Lundbeck)、Vyvanse(リスデキサンフェタミン、Shire)、BCI-224(サコメリン(sacomeline)、BrainCells)、BCI-540(コルラセタム(clouracetam)、BrainCells)、BMS-82036(BMS/AMRI)を含む。
【0116】
5-HT2A受容体は、神経伝達物質セロトニン(5-HT)の受容体の一種である。5-HT2Aアンタゴニストは、5-HT2A受容体におけるセロトニンなどのアゴニストの効果を阻害する化合物である。インバースアゴニストは、更に、基礎レベル未満に活性を低下させる化合物である。5-HT2A受容体アンタゴニストは、5-HT2A対他のセロトニン受容体(例えば、5-HT2C)において非選択的であることができる、又は5-HT2A受容体において選択的であることができる。その全体が参照により本明細書に組み込まれる2010年5月11日に発行された米国特許第7,713,995号明細書に記載されるものなどの標準アッセイ手順を用いて、選択的5-HT2Aアンタゴニストは、発現され、特徴づけられることができる。
【0117】
非選択的セロトニン受容体アンタゴニストとして作用する剤は、リタンセリン、ケタンセリン、セガンセリン、及びICI-169369を含む。選択的5-HT2Aアンタゴニスト又はインバースアゴニストとして作用する剤は、ボリナンセリン(MDL100,907、M100907としても知られる)プルバンセリン(EMD281014)、エプリバンセリン(SR-46349、Citryri)、CYR-101、及びピマバンセリン(ACP-103)を含む。選択的5-HT2A受容体アンタゴニスト及びインバースアゴニストは、うつ病及び精神病の両方の治療のために現在開発中であり、潜在的な抗うつ剤/抗精神病剤と見なされる。
【0118】
追加の5-HT2A受容体アンタゴニスト又はインバースアゴニストは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2011年1月25日に発行された米国特許第7,875,632号明細書;2011年1月11日に発行された米国特許第7,868,176号明細書;2011年1月4日に発行された米国特許第7,863,296号明細書;2010年10月26日に発行された米国特許第7,820,695号明細書;及び/又は2010年5月11日に発行された米国特許第7,713,995号明細書に記載される。
【0119】
特定の実施形態においては、記載された組成物は、定型又は非定型抗精神病剤からなる抗精神病剤を含み、幾つかの実施形態においては、セロトニンドーパミンアンタゴニスト(SDA)であることができる。幾つかの実施形態においては、抗精神病剤は、アミスルプリド、アリピプラゾール、アセナピン、バイオアンセリン(bioanserin)、ビフェプルノックス、ブレクスピプラゾール、カリプラジン、クロチアピン、クロザピン、イロペリドン、ルラシドン、モサプロアミン(mosaproamine)、オランザピン、パリペリドン、ペロスピロン、クエチアピン、レモキシプリド、リスペリドン、セルチンドール、スルピリド、ジプラシドン、ゾテピンからなる群から選択される。
【0120】
5-HT2A受容体アンタゴニストを含む抗精神病剤及び抗うつ剤は、双極性障害(躁うつ病)、アルツハイマー病、パーキンソン病、痴呆症、不安障害、外傷後ストレス障害、痛み、自閉症を含む発達障害の治療にも治療的に用いられることができる。幾つかの実施形態においては、2つの有効成分が、単一の医薬組成物で提供され、幾つかの実施形態においては、本明細書は、前記2つの有効成分のそれぞれを含むキット又は組み合わされたディスペンサーパケットを考慮する。
【0121】
記載された組成物は、「同時投与」によって提供され、特定の実施形態では、対象への2つの有効成分のいずれかの同時投与が、単一製剤に組み合わされることができることを理解されたい。他の実施形態においては、有効成分は別々の製剤で提供され、その投与は、同時に行われることができる又はずらして行われることができる。
【0122】
本明細書に記載される組成物は、静脈内、腹腔内、非経口(parentally)、筋肉内、又は経口を含む、様々な確立された医薬経路によって投与されることができる。
【0123】
幾つかの実施形態においては、経口投与のための固体組成物は、コーンスターチ、ゼラチン、ラクトース、アカシア、スクロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、リン酸二カルシウム、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、脂質、アルギン酸、又は制御された緩効性のための成分などの適した担体又は賦形剤を含むことができる。用いられることができる崩壊薬は、微結晶セルロース、コーンスターチ、デンプングリコール酸ナトリウム、及びアルギン酸を含むが、これらに限定されない。用いられることができる錠剤の結合剤は、アカシア、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(methylcellulaose)、スクロース、デンプン、及びエチルセルロースを含むが、これらに限定されない。
【0124】
幾つかの実施形態においては、水又は他の水性溶媒で調製される経口投与用の液体組成物は、活性化合物と共に湿潤剤、甘味料、着色剤、及び香味料を含む、溶液、エマルジョン、シロップ、及びエリキシル剤を含むことができる。
【0125】
他の実施形態においては、本明細書に記載される製剤、特に経口製剤に関しては、緩効性錠剤製剤を含むことが考えられる。そのような緩効性錠剤製剤は、例えば、イフェクサー(登録商標)又はセロクエル(登録商標)などの例えば、公知の抗うつ病医薬を含む市販の製剤を含み、いずれも拡大した長さ(extended length)(XR)製剤において既に利用可能であり、製剤は、更にNMDA受容体アンタゴニストを組み込むように改変されることができる。
【0126】
他の実施形態においては、本明細書に記載される製剤は、特に経口製剤に関して、短時間作用型製剤と持続放出型製剤の両方を含むことが想定される。
【0127】
放出の制御に用いられることができるその他の化合物は、セルロース、エチルセルロース、ゼラチン、ヒプロメロース、酸化鉄、及び酸化チタンを含む。幾つかのマトリックス系においては、薬物の放出は、ポリマーでの侵食ではなく、主にマトリックスの細孔を介した拡散によって制御される。薬物送達は、塗布膜を横切る浸透勾配により放出が制御されるリザーバー型系の使用により制御されることもできる。異なるマイクロカプセル化特性を有する顆粒を含むカプセルを製造することができ、混合して所望の放出率を有する組成物を達成することができる。
【0128】
幾つかの実施形態においては、本発明は、1以上の薬学的に許容される賦形剤と共に、本明細書に記載される剤を含む、更にゲル化剤を含む、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び11-[4-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]-1-ピペラジニル]ジベンゾ-[b.f][1,4]チアゼピン、又はその薬学的に許容される塩を含む徐放性製剤の使用/提供を考慮する。本明細書で使用される用語「ゲル化剤」は、水と接触するとゲルを形成する任意の物質を意味する。
【0129】
本明細書に記載される組成物の有効量を、経口又は非経口投与量又は非経口注射の形態で投与することにより、それを必要としている対象におけるうつ病を治療する方法も本明細書で提供される。
【0130】
幾つかの実施形態においては、対象は、統合失調症、又は大うつ病性障害若しくは双極性うつ病性障害を含むうつ病性障害を罹患する。
【0131】
幾つかの実施形態においては、本発明は、本明細書に記載される組成物の経口又は非経口又は非経口投与レジメンを対象に提供することによって、それを必要としている対象又は集団において、自殺の発生を減少させる又は自殺念慮及び行動の重症度を減少させる方法を提供する。
【0132】
本明細書に記載される方法及び組成物による治療を受けている対象は、うつ病における有意な改善を経験すると予期される。うつ病のための代替治療で治療された対象に対して、幾つかの実施形態においては、適宜治療された対象は、臨床的に認められたうつ病の評価方法(例えば、21項目のハミルトンうつ病評価尺度)で測定すると、より大きな改善、又はより長期間続く改善を経験する。同様に、記載された組成物及び方法による治療を受けている対象は、不安に対する著しい改善を経験することができる。不安のための代替治療で治療された対象に対して、幾つかの実施形態においては、適宜治療された対象は、臨床的に認められた不安の評価方法(例えば、ハミルトン不安評価尺度)で測定すると、より大きな改善、又はより長期間続く改善を経験する。同様に、記載された組成物及び方法による治療を受けている対象は、アカシジアの著しい改善を経験することができる。アカシジアのための代替治療で治療された対象に対して、幾つかの実施形態においては、適宜治療された対象は、臨床的に認められたアカシジアの評価方法(例えば、Barnesアカシジア評価尺度)で測定すると、より大きな改善、又はより長期間続く改善を経験する。また、記載された組成物及び方法による治療を受けている対象は、精神病の著しい改善を経験することができる。精神病のための代替治療で治療された対象に対して、幾つかの実施形態においては、適宜治療された対象は、臨床的に認められた精神病の評価方法(例えば、陽性・陰性症状評価尺度)で測定すると、より大きな改善、又はより長期間続く改善を経験する。
【0133】
他の薬剤が一般に全ての患者に利益をもたらすわけではないように、全ての対象が記載された組成物及び方法から治療的に利益を得るわけではないことに留意すべきである。
【0134】
下記の実施例は、特定の特徴及び/又は実施形態を説明するために提供される。これらの実施例は、記載された特定の特徴又は実施形態に開示を限定するものと解釈されるべきではない。
実施例
【0135】
実施例1:選択的5-HT2Aアンタゴニスト、又は組み合わされたD2/5-HT2A受容体アンタゴニストとして機能する非定型抗精神病剤によって誘発されるアカシジアにおけるNMDARアンタゴニストの効果
【0136】
背景
薬物誘発アカシジアは、抗精神病医薬と抗うつ病医薬の両方の共通の副作用であり、新しい非定型抗精神病剤でも見られることがある(Iqbal et al.,CNS Spectrums,12:1-13,2007)。この症候群は、不安/イライラ(jitteriness)症候群とも記載され(Sinclair et al.,Br J Psychiatry,194:483-90,2009)、SSRIと三環系抗うつ剤の両方の後にも見られる。
【0137】
正確な動物モデルは、現在存在していないが、部分的な不穏状態を評価する齧歯類の活動の測定値は、表面的妥当性を有すると提案され(Sachdev and Brune,Neurosci Biobehav Rd 24:269-277,2000)、それらの使用を正当化する。(+/-)-1-(2,5-ジメトキシ-4-ヨードフェニル)-2-アミノプロパン(DOI)などの5-HT2A受容体でのアゴニストは、4プレート試験(four-plate test)又は高架式十字迷路などの齧歯類の試験で検出されることができる、よく記載された抗不安特性を有する(Nic Dhonnchadha et al,Behavioural brain research.147:175-84,2003)。5-HT2Aリガンドの効果は、GABAシステムを介して部分的に媒介されることができ(Masse et al.,Behav Brain Res 177:214-26,2007)、アカシジアに対するこのメカニズムの関連性を増加させる。
【0138】
本調査は、選択的5-HT2Aアンタゴニスト/インバースアゴニスト、抗うつ剤、及び非定型抗精神病剤を含む5-HT2A遮断を介して、全体的に又は部分的に機能する剤のアカシジア誘発効果をNMDARアンタゴニストが逆転させることができるという仮説を試験する。本明細書で説明されているように、アカシジアの減少及び/又は逆転と自殺傾向との関連性を考慮すると、特定の非定型抗精神病医薬によって誘発されることがある増加した自殺傾向と、自殺傾向の減少とを示唆していると理解される。
【0139】
方法
医薬の行動効果を評価するために、全ての研究は、高架式十字迷路(EPM)装置を用いて、PsychoGenics,Inc.(765 Old Saw Mill River Road,Tarrytown,NYに本社がある)で行われた。
【0140】
準備
Jackson Laboratories(Bar Harbor、Maine)から雄のC57Bl/6Jマウスを本研究のために使用した。マウスは、6週齢で受領した。受領時に、特有の識別番号(尾に印を付ける)をマウスに割り当て、OPTIマウス換気ケージに4マウス/ケージでグループで収容した。研究の残りの間、全ての動物は、4頭のグループに収容されたままだった。全てのマウスは、試験前に少なくとも1週間コロニー室に馴化させ、その後平均7週齢で試験した。
【0141】
馴化期間中、マウスを定期的に調査し、取り扱い、体重を測定して、適切な健康と適合性を保証した。動物を12/12明/暗サイクルで維持し、試験を明るい段階の間に行った。室温を20℃~23℃で維持し、相対湿度を30%~70%で維持した。研究期間中、食物と水は自由に提供された。各試験において、動物は処置グループでランダムに割り当てられた。研究終了後、全ての動物を安楽死させた。
【0142】
装置
高架式十字迷路試験は、不安を評価した。迷路(Kinder Scientific;Poway,CA)は、十字を形成する、2つのクローズドアーム(高さ14.5cm×幅5cm×長さ35cm)と、2つのオープンアーム(幅6cm×長さ35cm)とからなり、正方形の中心プラットフォーム(6cm×6cm)を有する。目に見える表面は、全て黒いアクリルからなる。迷路の各アームは、床から56cmで支柱の上に配された。帯電防止用の黒色ビニルカーテン(高さ7’)は、EPMを囲み、幅5’×長さ5’の囲いを作った。動物は、試験の少なくとも1時間前に実験室に馴化させた。マウスを、クローズドアームに面した高架式十字迷路の中心に置き、5分間走らせた。全ての動物を一度試験した。費やした時間、移動距離、各アームへの進入は、コンピューターによって自動的に記録された。各試験後に、EPMを徹底的に洗浄した。
【0143】
医薬
医薬をIP注射によって投与した。全ての医薬を適切な溶媒に溶解した。用量は、キログラムあたりのミリグラム(mg/kg)で表される。表1に示される試験化合物を試験30分前に投与した。全ての場合において、2,5-ジメトキシ-4-ヨードアンフェタミン(DOI)2mg/kgを試験の10分前に投与した。
【0144】
統計分析
この研究の主要な依存指標は、オープンアーム内で費やされた時間の%からなり、これは抗不安効果の指標と見なされる。p<.05の両側有意性を用いたt検定又は事後のDunnett検定を用いて、条件間比較を実施した。
【0145】
結果
EPMの露出された部分対囲まれた部分への進入意欲を測定する、オープンアームでの%時間の測定値を用いて、不安/アカシジア関連症状におけるNMDARアンタゴニストの特異的効果を評価した。これは、オープンアームとクローズドアームの活動間の比率を表すので、全体的な活動レベルの変化に対して比較的非感受性である。全体の活動化の指標である移動した総距離を用いて、潜在的な非特異的効果を評価した。
【0146】
NMDARアンタゴニストにより誘発される自発運動亢進は、精神病の齧歯類モデルと考えられている。5-HT2Aアンタゴニストは、齧歯類の活動における非競合的NMDARチャネルブロッカーの効果を逆転させ、抗精神病剤としての潜在的な使用を反映することが知られている。しかしながら、高親和性5-HT2Aアンタゴニスト、又は5-HT2A受容体でのアンタゴニズムに潜在的に関連する抗うつ剤又は非定型抗精神病剤などの他の化合物の潜在的なアカシジア関連の不安を惹起する効果を逆転するための、グリシン部位又はグルタメート部位のいずれかで作用する競合的NMDARアンタゴニストの能力に関する研究は、過去に調査されていない。
【0147】
結果の記載
MDL100,907、EMD281,014、及びケタンセリンを含む選択的5-HT2A受容体アンタゴニストは、オープンアームにおける移動距離及びオープンアームにおける%時間を有意に減少させ、不安及び/又はアカシジアにおける有意な増加を示唆することを過去に実証してきた(米国特許第9,846,453号明細書)。
【0148】
300mg/kgのNMDARアンタゴニスト用量でのD-サイクロセリンは、MDL100,907の存在下で、オープンアームにおける移動距離及びオープンアームにおける%時間を有意に増加させ、EMD281,014との組合せで数値的増加をもたらしたことも実証した。D-サイクロセリンと非定型抗精神病剤ルラシドンとの組合せでもこれらの結果が示された。前述のデータは、このような抗うつ剤と非定型抗精神病剤によって誘発される自殺傾向を減少させる可能性の示唆でもあった。過去に示された齧歯類のデータは、その後初期のヒト試験によって支持されている(clinicaltrials.gov,trial identification number NCT01833897参照)。
【0149】
ここで、高用量(300mg/kg、即ち、25マイクログラム/mLの血中濃度超に相当する正味NMDARアンタゴニスト効果をもたらす用量)対低用量(30mg/kg、非アンタゴニスト用量)で投与されたD-サイクロセリンの優先的な抗アカシジア/不安(それによって抗自殺傾向)効果を支持する追加のデータを提供する。
【0150】
ここで、選択的5-HT2A受容体アンタゴニスト又は非定型抗精神病剤によって誘発されるアカシジアの処置における、競合的対非競合的NMDARアンタゴニストの優先的な効果を支持する追加データを提供する。結果を表1に示し、以下で更に説明される。
【表1】
【表2】
【0151】
DCS単独、及び5-HT2A受容体アンタゴニストMDL100907と組み合わせたDCSの効果を表1に示す。最初に、D-サイクロセリンは、300mg/kgの用量では、オープンアームにおける%時間が選択的に増加するが、30mg/kgの用量では増加しないことを実証する(系統3対系統2)。
【0152】
ここで、非競合的NMDARアンタゴニストケタミンは、オープンアームにおける移動距離又はオープンアームにおける%時間のいずれも有意に変化しないことを実証する(系統4)。
【0153】
ここで、選択的5-HT2A受容体アンタゴニストMDL100,907がオープンアームにおける移動距離及び%オープンアーム活動の両方を有意に減少させ、増加したアカシジア/不安を実証するという拡大されたデータセットにおける知見を繰り返して述べる(系統5)。
【0154】
ここで、D-サイクロセリンが、300mg/kgの用量でMDL100,907の効果を有意に逆転させるが、30mg/kgでは逆転しないという実証を繰り返して述べる(系統6及び系統7)。
【0155】
ここで、2つの非競合的NMDARアンタゴニスト、PCP、及びケタミンが、オープンアーム行動に有意に影響を及ぼさないことを更に実証した(系統8及び系統9)。更に、これらの剤は、総走行距離を減少させ、特定の抗アカシジア効果の代わりに一般的な鎮静効果を示唆する。
【0156】
特定の非定型抗精神病剤の効果を表2に示す。ここで、.1mg/kg~.3mg/kgの用量でのルラシドンは、オープンアームにおける移動距離(DTO)及びオープンアームにおける%時間(PCT)での用量依存的な減少をもたらし、.2mg/kgでの最大効果を有することを示す(系統1、系統3、系統5)。ここで、300mg/kgの用量でのD-サイクロセリンが、ルラシドンの効果を有意に逆転させることを示す(系統2、系統4、系統6)。
【0157】
ここで、クエチアピンがルラシドンと同様の結果をもたらしたことを示す。これらの結果は、D-サイクロセリンによってトレンドレベルで逆転された(系統7及び系統8)。
【0158】
ここで、アリピプラゾールがオープンアームにおける移動距離を有意に減少させたが、オープンアームでの時間の%は減少せず、アリピプラゾールの存在下では、D-サイクロセリンが有意な効果を有さなかったことを示す(系統11及び系統12)。
【0159】
全体として、これらの知見は、D-サイクロセリンが選択的5-HT2A受容体アンタゴニストによって又はSDA-型非定型抗精神病剤で誘発されるアカシジア(それによって自殺傾向)を逆転させることに有効であることを実証する。有効性は、300mg/kgの用量で観察されるが、30mg/kgの用量では観察されない。
【0160】
全体として、これらの知見は、ルラシドンにより誘発される行動効果を逆転させることにおけるD-サイクロセリンの優先的な効果を実証し、うつ病及び統合失調症を含む精神障害での使用のためのD-サイクロセリンとルラシドンの組み合わされた治療の使用を支持する。
【0161】
概要
これらの知見は、MDL100709、ケタンセリンなどの5-HT2Aアンタゴニスト又はルラシドンを含む非定型抗精神病剤によって誘導される、高架式十字迷路の費やされた%時間及びオープンアームにおける移動距離における減少を逆転させるという、高用量における(即ち、正味NMDARアンタゴニスト効果をもたらすとき)D-サイクロセリンの予想外の能力を実証する。プロ治療(pro-therapeutic)効果は、D-サイクロセリンだけでなく、D-CPPene、CGS19755、又はCP101606などの他のNMDARアンタゴニストにも見られた。対照的に、従来のチャネルブロッカーPCPは、DCSに対し、性能が悪化し、グルタメート又はグリシン結合部位で作用する剤、又はGlyX-13などの低親和性チャネルブロッカーは、PCP又はMK-801などの高親和非競合的アンタゴニストよりも優れていることができる。更に、5-HT2Aアンタゴニストは、ケタミン、MK-801、又はPCPなどのNMDAチャンネルブロッカーによって誘発される運動亢進を逆転させることが知られているが、%オープンアーム測定(オープンアーム対クローズドアームの移動距離を比較)は、活動レベルの全体的な変化を修正する。
【0162】
これらの知見は、D-サイクロセリンが、予想外に300mg/kgの正味アンタゴニスト用量で選択的に活性を逆転させるが、30mg/kgの用量で逆転させないことを実証する。
【0163】
反応は、非定型抗精神病剤によって異なった。非定型抗精神病剤であるルラシドン、リスペリドン、及びブレクスピプラゾールを組み合わせたD-サイクロセリンで、予想外に優れた効果が観察された。
【0164】
実施例2:齧歯類の強制水泳試験における単独、並びに抗精神病剤及び抗うつ剤と組み合わされたNMDARアンタゴニストの効果
この研究では、齧歯類の強制水泳試験を用いて、NMDARアンタゴニストの抗うつ病効果を評価した。NMDARアンタゴニストは、単独で及び特定の5-HT2A受容体アンタゴニストと組み合わせて研究された。
【0165】
全ての試験は、PsychoGenics Inc,765 Old Saw Mill River Road,Tarrytown,NY 10591,USAで実施された。
【0166】
Jackson Laboratories(Bar Harbor、Maine)から雄のBalbC/Jマウス(8週齢)を使用した。受領時に、特有の識別番号(尾に印を付ける)をマウスに割り当て、OPTImiceケージにグループで収容した。全ての動物は、試験前に1週間コロニー室に馴化させた。馴化期間中、動物を定期的に調査し、取り扱い、体重を測定して、適切な健康と適合性を保証した。動物を12/12明/暗サイクルで維持した。室温を20℃~23℃で維持し、相対湿度を30%~70%で維持した。研究期間中、食物と水は自由に提供された。全ての試験を動物の明るいサイクルの段階で実施した。
【0167】
マウスは、試験開始の少なくとも1時間前に試験室に馴化させた。強制水泳試験は、各試験動物につき、23℃±2℃の温度及び12cmの深さ(約800ml)での新鮮な水道水を含む個々の不透明なシリンダー(15cm長×10cm幅、1000mlビーカー)における1回の6分間のセッションの強制水泳からなる。6分間の試行に亘って動物が不動で過ごした時間を記録した。セッションの開始から1分ごとに累積不動時間を記録し、研究データ記録シートに記録した。不動は、水に浮かぶ姿勢維持位として定義した。動物は一般に、背中が僅かに曲がり、動きがない状態又は手足の動きが僅かに安定化された状態で頭が水の上にある状態で観察された。水泳試験の後、各動物を、加熱パッドを備えた予熱されたケージに入れ、乾燥させた。
【0168】
この試験で不動を表すために用いられた主変数は、6分間の試験期間中の合計不動時間だった。対照条件に対するDunnett事後試験を用いた分散分析(ANOVA)、又は必要に応じてt-検定によって、統計を実施した。
【0169】
図1及び
図2に示される1つのセットの研究では、経口(PO)又は腹腔内(IP)投与後に、D-サイクロセリンの効果を調査した。既知の抗うつ剤であるセルトラリンは、ポジティブコントロールとして用いられる。
【0170】
表3に示される2つ目のセットの研究では、D-サイクロセリンの効果を、抗精神病医薬及び/又は抗うつ病医薬と組み合わせて調査した。
【0171】
図1及び
図2に示されるように、D-サイクロセリン(DCS)は、IP又はPO投与後の強制水泳試験アッセイで、30mg/kgの用量で有意な効果はなかった。また、示されるように、経口投与中、PO又はIP投与後に100mg/kg以上の用量で投与した場合、D-サイクロセリン(DCS)は、非常に有意(p<.001)だった。
【表3】
【0172】
表3に示されるように、ルラシドン単独では、強制水泳試験における不動に有意に影響を及ぼさなかった。同様に、D-サイクロセリン(DCS)は、ルラシドンと組み合わせて30mg/kgの用量で投与した場合、強制水泳試験における不動を有意に減少させなかった。対照的に、.2mg/kg~3mg/kgの用量で投与されたルラシドンと組み合わせて、300mg/kgの正味アンタゴニスト用量で投与した場合、D-サイクロセリン(DCS)は、強制水泳試験における不動を有意に減少させた。同様に、化合物ブレクスピプラゾールと組み合わせて300mg/kgの用量で投与した場合、D-サイクロセリン(DCS)は、強制水泳試験における不動を有意に減少させた。表に示されるように、ブレクスピプラゾール(brexpiparazole)単独では不動が有意に増加した。DCSは、この増加を有意に逆転させた。
【0173】
また、表3に示されるように、アリピプラゾールと組み合わせて300mg/kgの用量で投与した場合、D-サイクロセリン(DCS)は、強制水泳試験における不動を有意に減少させなかった。
【0174】
まとめると、表3で示される知見は、D-サイクロセリンは、正味のNMDARアンタゴニスト用量で投与されると、既知の抗うつ剤及び抗精神病剤と相乗効果のある有意な抗うつ剤効果をもたらし、更にD-サイクロセリンは、化合物ルラシドン及びブレクスピプラゾール(bexpiprazole)との組み合わせで、予想外に優れた有益な効果をもたらすことを実証する。これらの知見はまた、D-サイクロセリンの抗うつ病効果が300mg/kg以上の用量でのみ予想外に起こることを実証する。
【0175】
実施例3:齧歯類におけるD-サイクロセリンの薬物動態
この研究では、齧歯類におけるD-サイクロセリンの薬物動態を評価した。この研究では、上記の実施例で示されたDCSの抗アカシジア及び抗うつ病効果が、>25マイクログラム/mLの持続された血中DCSレベルをもたらす処置レベルで特異的に観察されるという仮説を試験する。
【0176】
この研究において、Jackson Laboratories(Bar Harbor、Maine)から雄のC57BL/6Jマウス(8週齢)を使用した。D-サイクロセリン(30mg/kg、100mg/kg、300mg/kg、500mg/kg、及び1000mg/kg)をPTS溶媒(5%PEG200:5%Tween80:90%NaCl)に溶解し、10mL/kgの用量体積でIP投与した。
【0177】
各処置グループについて、合計12匹のマウスに投与し、30分間、60分間、及び120分間で4匹のマウスを集めた。平均血漿レベルをこの期間に亘って計算した。
【0178】
血漿中のDCSの分析は、Acquity UPLCクロマトグラフシステム及びQuattro Premier XEトリプル四重極質量分析計(いずれもWatersから)からなるUPLC/MS/MSシステムを用いて実施した。5ng/mLのLLOQを提供した5分間(合計実行時間)のHILIC方法論を用いて、DCSの単離を達成した。
【0179】
実験の結果を表4に示す。
【0180】
図3に示されるように、末梢性のD-サイクロセリン投与は、30分間~120分の血漿D-サイクロセリンにおける用量依存的増加に関連していた(p<.0001)。30mg/kgDCS治療に関連する血漿レベルは、25マイクログラム/mL未満の平均血漿レベルに関連していた。100mg/kg以上の用量に関連する血漿レベルは全て、有意に25マイクログラム/mL超だった。最大許容用量は、500mg/kg~1000mg/kgであり、約125μg/mLの最大許容血中レベル(maximum tolerated blood level)を示唆する。
【0181】
実施例4:胃の分解からのD-サイクロセリンの保護の利点
中でも、Malspeis and Gold,J Pharmaceutical Sci,53:113-80,1964に記載されるように、D-サイクロセリンは、その化学的構造のために、胃で観察され得るような酸性(低pH)条件下において、水溶液中で加水分解を受けやすい。
【0182】
胃内容排出は、最大3時間持続することができ、最大50%の経口投与されたD-サイクロセリンの加水分解のための時間を許容する。
【0183】
腸溶コーティング及びプロドラッグの製造は、胃での加水分解に対する医薬の感応性を低下させることが知られている。中でも、プロドラッグの例として、Fedor et al.,Int J Pharmaceutics 22:197-205,1984に記載される。腸溶コーティング又は耐加水分解性プロドラッグの製造による加水分解の減少は、>25マイクログラム/mLの望ましい血漿レベルを達成するために必要とされるD-サイクロセリンの経口用量を減少させる。
【0184】
胃の分解からの保護の様々なレベルの効果を表4に示し、腸溶コーティング又はプロドラッグ修飾が存在しない場合、D-サイクロセリンの50%の胃の分解を想定する。
【表4】
【0185】
この分析は、徐放性及び胃の分解からの保護のためのD-サイクロセリンの製剤の潜在的な利点を示す。
【0186】
実施例5:NMDARアンタゴニスト化合物の非うつ病効果
この研究では、潜在的な抗うつ病効果を示唆する齧歯類のFST試験における不動時間を減少させる能力について、更なるNMDARアンタゴニスト化合物を試験し、ヒトにおける不安、アカシジア、及び自殺傾向を誘発する潜在的な易罹病性を示唆するEPMのオープンアームにおける費やされた時間の減少をもたらす能力について、更なる5-HT2ARアンタゴニストを試験した。
【0187】
表5は、FSTにおけるセルトラリン、並びにNMDARアンタゴニストCGS-19755、D-CPPene、及びガベスチネルのためのデータを示す。示されるように、CGS-19755とガベスチネルの両方が、指示された用量でFSTにおける不動を数値的に減少させ、臨床的抗うつ病効果と一致する。
【表5】
【0188】
表6は、統計分析と共に、示された化合物のEPM試験のオープンアームにおける移動距離を示す。理解されるように、選択的5-HT2ARアンタゴニストSR46349B、EMD281014、及びピマバンセリンは、溶媒に対しオープンアームにおける移動距離を有意に減少させた(DOI、(2mg/kg)を全ての条件において添加した)。また、非定型抗精神病剤であるカリプラジン、リスペリドン、及びブレクスピプラゾールにも有意な効果が観察され、治療抵抗性の大うつ病性障害の治療に有効であることができる。対照的に、抗うつ病化合物であるベンフラキシン(venflaxine)、フルオキセチン、イミプラミン、ボルチオキセチン、又はレボミルナシプランには有意な効果は観察されなかった。
【0189】
これらの知見は、うつ病及び自殺傾向の治療におけるグルタメート又はグリシン結合部位を介して作用するNMDARアンタゴニストと、及び大うつ病性障害を治療するのに使用される非定型抗精神病剤とNMDARアンタゴニストとの相乗的相互作用との治療的有用性を実証する。
【表6】
【0190】
開示された発明の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮して、図示された実施形態は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでないことを認識すべきである。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって、これらの特許請求の範囲及び精神に含まれる全てのものを発明として主張する。