IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アヴェクシン エーエスの特許一覧

特許7305562線維性疾患の治療のための組成物および方法
<>
  • 特許-線維性疾患の治療のための組成物および方法 図1
  • 特許-線維性疾患の治療のための組成物および方法 図2
  • 特許-線維性疾患の治療のための組成物および方法 図3-1
  • 特許-線維性疾患の治療のための組成物および方法 図3-2
  • 特許-線維性疾患の治療のための組成物および方法 図3-3
  • 特許-線維性疾患の治療のための組成物および方法 図4
  • 特許-線維性疾患の治療のための組成物および方法 図5
  • 特許-線維性疾患の治療のための組成物および方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】線維性疾患の治療のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/121 20060101AFI20230703BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230703BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230703BHJP
   C07C 323/22 20060101ALI20230703BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20230703BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALN20230703BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230703BHJP
【FI】
A61K31/121
A61P43/00 111
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P13/12
A61P11/00
A61P1/16
A61P9/00
A61P7/00
A61P1/04
A61P17/02
A61P17/00
A61P9/10
C07C323/22
C12Q1/686 Z ZNA
C12Q1/6876 Z
C12N15/09 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019569468
(86)(22)【出願日】2018-06-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2018066028
(87)【国際公開番号】W WO2018229284
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】1709671.0
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1806661.3
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511294121
【氏名又は名称】アヴェクシン エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンセン、ベリト
(72)【発明者】
【氏名】フェウエハーム、アストリド-ジュルムストロ
(72)【発明者】
【氏名】アレビゾポロス、コンスタンティノス
(72)【発明者】
【氏名】セルヴィク、リン-カリーナ
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-528813(JP,A)
【文献】特表2005-518419(JP,A)
【文献】特表2013-540713(JP,A)
【文献】特表2016-500092(JP,A)
【文献】国際公開第2016/173923(WO,A1)
【文献】特表2003-509485(JP,A)
【文献】国際公開第2002/060535(WO,A1)
【文献】British Journal of Pharmacology,2012年,167(8),1691-1701
【文献】Lipid MAPS Annual Meeting ,2015年,17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 323/22
A61P 43/00
A61K 31/121
A61K 45/00
A61P 13/12
A61P 11/00
A61P 1/16
A61P 9/00
A61P 7/00
A61P 1/04
A61P 17/02
A61P 17/00
A61P 9/10
C12Q 1/686
C12Q 1/6876
C12N 15/09
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維性疾患の治療または予防のための、式(IV)の化合物またはその塩を含む組成物であって、前記線維性疾患が、肺線維性疾患である組成物。
R-Y1-CH2-CO-X (IV)
式中、
Rは、炭素数10~24の直鎖状の非置換不飽和アルキレン基であり、前記基は少なくとも4つの非共役二重結合を含み、
Xは、CF3であり、
Y1は、O、S、SO、またはSO2から選択される。
【請求項2】
前記R基が5~7つの二重結合を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記式(IV)において、いずれの二重結合もカルボニル基と共役していない、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記R基において、二重結合は全てシス配置であるか、または、カルボニル基に最も近い二重結合を除く全ての二重結合がシス配置である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記R基が炭素原子を17から19含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記R基が直鎖状である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記式(IV)の化合物が下記式を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【化4】
式中、Xは、CF3である。
【請求項8】
前記式(IV)の化合物が化合物Aまたは化合物Bである、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【化5】
【請求項9】
前記線維性疾患が、傷害に起因するか、または特発性である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記傷害が虚血性事象であるか、または放射線、化学物質、もしくは感染病原体への曝露によるものである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記化合物は、対象が線維化病変を発症した後に投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
薬学的に許容可能な賦形剤を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
1以上の補助治療剤を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記線維性疾患が、特発性肺線維症、間質性肺疾患、間質性肺線維症、慢性間質性肺炎、ハマン-リッチ症候群、通常型間質性肺炎(UIP)、線維化肺胞炎、肺サルコイドーシス、肺の進行性塊状線維症、肺の全身性硬化症、または肺移植に関連する線維症から選択される一つである、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
におけるヒドロキシプロリン含量またはI型コラーゲンのmRNA発現量のいずれか1以上を低減させる薬剤としての使用のための、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
線維性疾患の治療または予防のための薬剤の製造のための、式(IV)の化合物またはその塩の使用であって、前記線維性疾患が、肺線維性疾患である使用。

R-Y1-CH2-CO-X (IV)
式中、
Rは、炭素数10~24の直鎖状の非置換不飽和アルキレン基であり、前記基は少なくとも4つの非共役二重結合を含み、
Xは、CF3であり、
Y1は、O、S、SO、またはSO2から選択される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線維性疾患または線維性障害の治療に使用する組成物に関する。特に、本発明は、線維化もしくはこれに関連する状態がもたらす症状の治療、予防、または軽減における、特定の多価不飽和長鎖ケトンの使用に関する。本発明はまた、本明細書中で定義する多価不飽和長鎖ケトン化合物を使用して、線維性疾患または線維性障害に関連する症状を治療、予防、または軽減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線維化は、多くの慢性炎症性疾患の特徴であり、世界中で罹患や死亡の重要な原因となっている。線維化は、線維性結合組織を形成する細胞外マトリックス成分(例えば、コラーゲン、フィブロネクチン)が、炎症組織または損傷組織の内部および周囲に過剰に蓄積することを特徴とする。線維化により、例えば、その下にある臓器または組織の構造を破壊する過成長、硬化、および/または瘢痕化が引き起こされる場合がある。制御された組織の再構築および瘢痕化は、正常な創傷治癒過程の一部であるが、一方で、重度もしくは反復性の傷害または調節不全の創傷治癒に起因する過剰かつ長期にわたる瘢痕化は、最終的に恒久的な瘢痕化、臓器障害、および臓器不全を引き起こす場合があり、さらには死に至る場合さえある。
【0003】
線維化およびこれに伴う変化は、末梢血管疾患等の血管障害、心疾患、脳疾患、ならびにあらゆる主要な組織および臓器系(例えば、肺、肝臓、腎臓、心臓、皮膚)で起こり得る。線維性障害としては、全身性硬化症や多巣性線維硬化症等の多系統障害、ならびに、肺線維症、肝線維症、および腎線維症等の臓器特異的障害を含む、広範囲な臨床症状が挙げられる。個々の線維性障害の病因および原因機序は様々であり(例えば、虚血性事象や、化学物質、放射線、または感染病原体への曝露)、完全には解明されていないが、ほぼ全ての線維性障害において、患部組織における細胞外マトリックスの異常かつ過剰な沈着という共通の特徴が見られる。
【0004】
線維性疾患の症状を治療、予防、または軽減する明らかに有効な治療法が存在しないことから、本発明者らは、線維性疾患を治療するための新規な方法を探求した。このように、これらの障害に関連する症状の治療、予防、または軽減に効果的な方法が求められている。本発明者らは、驚くべきことに、線維性疾患の症状の治療、予防、または軽減に、ある種の多価不飽和長鎖ケトンが使用可能であることを見出した。
【0005】
多価不飽和長鎖ケトン自体は、新規なものではない。多価不飽和ケトン化合物の製造方法は、非特許文献1に開示されている。しかしながら、これらの化合物を線維性疾患の症状の治療、予防、または軽減に使用することは、これまでに示唆されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】J.Chem.Soc.,Perkin Trans 1,2000,2271-2276
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、一態様において、線維性疾患の治療または予防に使用するための、式(I)の化合物またはその塩を提供する。
【0008】
R-L-CO-X (I)
式中、
Rは、S、O、N、SO、SO2から選択される1以上のヘテロ原子またはヘテロ原子群が任意に介在していてもよい炭素数10~24の不飽和炭化水素基であり、前記炭化水素基は少なくとも4つの非共役二重結合を含み、
Lは、R基とカルボニルCOとの間に1~5つの原子からなる橋かけを形成する連結基であり、ここでLは、連結基の骨格中にヘテロ原子を少なくとも1つ含み、
Xは電子求引基である。
【0009】
本発明は、別の態様において、線維化の治療または予防に使用するための、式(I)の化合物またはその塩を提供する。
【0010】
R-L-CO-X (I)
式中、
Rは、S、O、N、SO、SO2から選択される1以上のヘテロ原子またはヘテロ原子群が任意に介在していてもよい炭素数10~24の不飽和炭化水素基であり、前記炭化水素基は少なくとも4つの非共役二重結合を含み、
Lは、R基とカルボニルCOとの間に1~5つの原子からなる橋かけを形成する連結基であり、ここでLは、連結基の骨格中にヘテロ原子を少なくとも1つ含み、
Xは電子求引基である。
【0011】
本発明は、別の態様において、線維性障害の治療または予防に使用するための、式(I)の化合物またはその塩を提供する。
【0012】
R-L-CO-X (I)
式中、
Rは、S、O、N、SO、SO2から選択される1以上のヘテロ原子またはヘテロ原子群が任意に介在していてもよい炭素数10~24の不飽和炭化水素基であり、前記炭化水素基は少なくとも4つの非共役二重結合を含み、
Lは、R基とカルボニルCOとの間に1~5つの原子からなる橋かけを形成する連結基であり、ここでLは、連結基の骨格中にヘテロ原子を少なくとも1つ含み、
Xは電子求引基である。
【0013】
本発明は、別の態様において、線維性疾患に関連する症状を治療、予防、または軽減する方法であって、それを必要とする動物、好ましくは哺乳動物、例えばヒトに、本明細書中で先に記載した式(I)の化合物またはその塩を有効量投与することを含む方法を提供する。
【0014】
本発明は、別の態様において、線維性障害の症状を治療、予防、または軽減するための医薬品の製造における、本明細書中で先に記載した式(I)の化合物またはその塩の使用を提供する。
【0015】
本発明は、別の態様において、臓器におけるヒドロキシプロリン含量またはI型コラーゲンのmRNA発現量のいずれか1以上を低減させる方法であって、それを必要とする動物、好ましくは哺乳動物、例えば、ヒトに、本明細書中で先に記載した式(I)の化合物またはその塩を有効量投与する工程を含む方法を提供する。前記方法の一実施形態では、前記臓器は、腎臓、肺、または肝臓から選択される。
【0016】
本発明は、別の態様において、腎臓、肺、または肝臓等の臓器におけるヒドロキシプロリン含量またはI型コラーゲンのmRNA発現量のいずれか1以上を低減させるための医薬品の製造における、式(I)の化合物またはその塩の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、腎臓切片のシリウスレッド染色によって明らかになるUUO誘発性腎線維症の代表的な顕微鏡写真を示す。UUOにより、偽対照と比較して、有意な腎線維症が誘発された(ビヒクル群)。腎線維症は、化合物Bで治療したUUO動物において有意に軽減した(×200:適用倍率)。
図2図2は、腎臓切片のPAS染色によって明らかになるUUO誘発性腎炎の代表的な顕微鏡写真を示す。UUOにより、偽対照と比較して、有意な腎炎が誘発された(ビヒクル群)。腎炎は、化合物Bで治療したUUO動物、特に、高投与量群において軽減した。(×100、×400:倍率が異なる同一サンプル)。
図3-1】図3は、cPLA2αに対する選択的阻害剤により、TGF-β1で処理した細胞における線維化マーカーのmRNA発現が低下することを示している。
図3-2】図3は、cPLA2αに対する選択的阻害剤により、TGF-β1で処理した細胞における線維化マーカーのmRNA発現が低下することを示している。
図3-3】図3は、cPLA2αに対する選択的阻害剤により、TGF-β1で処理した細胞における線維化マーカーのmRNA発現が低下することを示している。
図4図4は、化合物Bにより、TGF-β1処理ラット腎線維芽細胞の上清中の炎症誘発性エイコサノイドPGE2のレベルが低下することを示している。
図5図5は、腎臓切片のシリウスレッド染色によって明らかになるUUO誘発性腎線維症の代表的な顕微鏡写真を示す。UUOにより、偽対照と比較して、有意な腎線維症が誘発された(ビヒクル群)。腎線維症は、化合物Bで治療したUUO動物において有意に軽減した。×200:適用倍率。ID:サンプル番号に相当。
図6図6は、腎臓切片のPAS染色によって明らかになるUUO誘発性腎炎の代表的な顕微鏡写真を示す。UUOにより、偽対照と比較して、有意な腎炎が誘発された(ビヒクル群)。腎炎は、化合物Bで治療したUUO動物、特に、高投与量群(15mg/kg)において軽減した。×100、×400:倍率が異なる同一サンプル、ID:サンプル番号に相当。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[発明の詳細な説明]
本開示は、線維性障害または線維性疾患の症状の予防、寛解、治療、または軽減のための方法を提供する。本明細書中で使用する「治療または予防」という用語は、疾患そのものを治療または予防すること、あるいは、疾患に関連する症状を治療または予防することに関し、疾患および/または症状を軽減すること、ならびに/あるいは、疾患および/または症状の進行を遅らせることを含むものと解釈し得る。線維化という用語は、傷害または損傷に対する修復反応として、線維性結合組織が形成されることを指す。損傷を受けた組織の修復は、炎症反応中に死細胞や損傷細胞の秩序立った入れ替えを可能にする基本的な生物学的プロセスであり、生存に不可欠なメカニズムである。修復プロセスは、典型的には2つの異なる段階、すなわち、損傷細胞が同種の細胞と入れ替わり、損傷の痕跡が残存しなくなる再生段階と、正常な実質組織が結合組織と入れ替わる、線維増殖または線維化として知られる段階を含む。有害な作用物質によって引き起こされる損傷を遅らせたり、あるいは元に戻すために、これらの段階の両方が必要である場合がほとんどである。しかしながら、治癒プロセスは、初期には有益であるものの、抑制されないまま継続すると病原性となる場合があり、相当量の組織の再構築や恒久的な瘢痕組織の形成が起こる恐れがある。線維性瘢痕化は、しばしば、おかしくなった創傷治癒反応と定義される。
【0019】
傷害とは、組織を損傷し、創傷治癒プロセスを開始させる事象である。傷害後、機械的シグナル(すなわち、細胞外マトリックス、ECMの破壊によって引き起こされる細胞外ストレス)および化学的シグナル(例えば、TGFβのような炎症性メディエーター)により、線維芽細胞が活性化されて細胞外マトリックス(ECM)の構成成分の産生が増加し、これにより、線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化のプロセスが開始される(Tomasek et al.,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.3:349,2002;Werner et al.,Physiol.Rev.83:835,2003)。再構築の過程にある組織の種類に応じ、分化する線維芽細胞は、局在する線維芽細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、骨髄由来の線維細胞を含む異なる供給源から得られる場合もあるし、上皮間葉転換(EMT)によって得られる場合もある(Hinz et al.,Am.J.Pathol.170:1807,2007)。創傷治癒は、新たに形成された、架橋結合したECMが機械的負荷を引き継ぐと完了したと見なされ、これがシグナルとなって、筋線維芽細胞がアポトーシスを起こす(Tomasek et al.,2002;Carlson et al.,J.Surg.Res.110:304,2003)。
【0020】
傷害が重症または反復性である場合、あるいは創傷治癒プロセスが調節不全である場合には、線維化が病原性となり、その結果、組織の恒久的な瘢痕化または硬化、臓器の機能障害または機能不全が生じ、最終的には死に至る。例えば、特発性肺線維症(IPF)は、完全に解明されてはいないが、肺移植以外に有効な治療がほとんどない、進行性かつ致死性の肺疾患と考えられている(Mason et al.,Ann.Thorac.Surg.84:1121-8,2007)。診断から5年後の生存率中央値は、20%未満である。ほとんどの形態の間質性肺疾患、およびその他の形態の肺線維症は、線維化病変、肺胞構造における進行性の歪みの発生、および過剰なECM沈着を伴う線維性組織または瘢痕組織への置き換えを特徴とする(American Thoracic Society,Am.J.Respir.Crit.Care Med.161:646,2000;Noble et al.,Clin.Chest Med.25:749,2004;Selman et al.,Ann.Intern,Med.134:136,2001)。これにより、進行性の呼吸困難および肺機能の喪失が起こり得る。特徴的な形態的病変は、完全に確立された線維症領域、顕微鏡レベルの蜂巣状部、およびコラーゲン産生している線維芽細胞/筋線維芽細胞を含む線維化が進行中の領域、すなわち、しばしば「線維化病巣」と称されるこれらの領域に、直接隣接する正常な肺の領域を含む空間的および経時的不均一性である。
【0021】
「線維性障害」または「線維性疾患」という用語(本明細書中ではこれらは同義に用いられる)は、炎症組織または損傷組織の内部および周囲に細胞外マトリックスが過剰に沈着する、進行性および/または不可逆的な線維化を特徴とする病状を指す。ある実施形態では、線維性障害または線維性疾患は、線維化病巣または線維化病変の内部および周囲に筋線維芽細胞が持続的に存在することに関連して起こる。過剰で持続的な線維化により、正常な組織の再構築や破壊が徐々に進行する可能性があり、これにより、患部臓器の機能障害や機能不全が起こり、最終的に死に至る場合もある。線維性障害は、体内のあらゆる組織に影響を及ぼす可能性があり、また、一般的には、傷害や、線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化転換によって開始される。
【0022】
本明細書中で使用する「傷害」は、組織を損傷し、線維化を開始させる事象を指す。傷害は、機械的侵襲(例えば、切り傷、外科手術)、放射線への曝露、化学物質(例えば、化学療法薬、毒素、刺激物質、煙)への曝露、または感染因子(例えば、細菌、ウイルス、または寄生生物)への曝露等の外的要因によって生じる場合がある。傷害は、例えば、慢性自己免疫性炎症、アレルギー反応、HLA不適合(例えば、移植レシピエント)、または虚血(すなわち、「虚血性事象」または「虚血」とは、組織への血液供給を制限し、その結果、組織の損傷または機能障害を引き起こす傷害を指すものであり、かかる障害は、血管の問題、アテローム性動脈硬化、血栓症または塞栓症によって起こり得るものであり、種々の組織および器官に影響を与え得る。虚血性事象としては、例えば、心筋梗塞、脳卒中、臓器移植または組織移植、または腎動脈狭窄症が挙げられる)によって生じる場合がある。ある実施形態では、線維性障害を引き起こす傷害は、病因不明(すなわち、特発性)のものであり得る。
【0023】
線維性障害または線維性疾患の非限定的な例としては、腎(腎臓)線維症、特発性肺線維症等の肺線維症、嚢胞性線維症、肝線維症(例えば、硬変症)、心臓線維症、心内膜心筋線維症、血管線維症(例えば、アテローム性動脈硬化症、狭窄症、再狭窄)、心房線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、後腹膜線維症、進行性塊状線維症(例えば、肺)、腎性全身性線維症、クローン病、肥厚性瘢痕、ケロイド、強皮症、全身性硬化症(例えば、皮膚、肺)、関節線維症(athrofibrosis)(例えば、膝、肩、その他の関節)、ペロニー病、デュピュイトラン拘縮、癒着性関節包炎、臓器移植に関連する線維症、虚血に関連する線維症等が挙げられる。
【0024】
一実施形態では、本発明は、腎(腎臓)線維症に関連する症状の治療、予防、または軽減に関する。「腎線維症」または「腎臓線維症」(本明細書中ではこれら2つの用語は同義に用いられる)と記載した場合、重篤な病気を引き起こし、死に至る場合さえある種々の疾患の進行性の線維化の発現を意味する。例えば、慢性腎臓病(CKD)は、一部の患者において、生命を脅かす可能性のある線維化表現型で発現することがある。この状態(線維化を伴うCKD)は、糖尿病性腎症、高血圧、糸球体腎炎(GN)、および多嚢胞性疾患等、種々の他の重篤な兆候から生じる場合がある。理論に制約されることを望むものではないが、これらの疾患を治療しようとする従来の治療法は、重篤な病気や場合によっては死に至る可能性さえる線維化の発生または進行を阻止するには、しばしば不十分であると考えられていた。本発明は、例えば、CKD、糖尿病性神経障害、高血圧、糸球体腎炎(GN)、および/または多嚢胞性疾患を罹患している、罹患していると疑われる、あるいは発症のリスクがある患者において、線維化の発生および/または進行に焦点を当てた方法を提供することにより、この問題に対処しようとするものである。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、肺線維性障害の治療に関する。「肺線維性障害」と記載した場合、肺組織の線維性肥大もしくは線維化を特徴とする疾患または障害を意味する。肺線維性障害の例としては、肺線維症、特発性肺線維症、間質性肺疾患、間質性肺線維症、慢性間質性肺炎、ハマン-リッチ症候群、通常型間質性肺炎(UIP)、線維化肺胞炎、肺サルコイドーシス、進行性塊状線維症(例えば、肺)、全身性硬化症(例えば、肺)、肺移植に関連する線維症等が挙げられる。
【0026】
本発明は、線維性障害の治療または予防における、式(I)の化合物またはその塩の使用を含む。式(I)の化合物
R-L-CO-X (I)
またはその塩において、
Rは、S、O、N、SO、SO2から選択される1以上のヘテロ原子またはヘテロ原子群が任意に介在していてもよい炭素数10~24の不飽和炭化水素基であり、前記炭化水素基は少なくとも4つの非共役二重結合を含み、
Lは、R基とカルボニルCOとの間に1~5つの原子からなる橋かけを形成する連結基であり、ここでLは、連結基の骨格中にヘテロ原子を少なくとも1つ含み、
Xは電子求引基である。
【0027】
R基は、好ましくは5つ~9つの二重結合、好ましくは5つまたは8つの二重結合、例えば、5つまたは6つの二重結合等、5つ~7つの二重結合を含む。これらの結合は、非共役である必要がある。さらに、二重結合は、カルボニル官能基と共役していないことが好ましい。
【0028】
R基に存在する二重結合は、シス配置であってもトランス配置であってもよいが、存在する二重結合の大部分(すなわち、少なくとも50%)がシス配置であることが好ましい。さらに有利な実施形態においては、R基における全ての二重結合がシス配置であるか、あるいは、カルボニル基に最も近い二重結合(トランス配置であってもよい)を除く全ての二重結合がシス配置である。
【0029】
基Rは、10~24の炭素原子、好ましくは12~20の炭素原子、特に17~19の炭素原子を有してもよい。
【0030】
R基において、少なくとも1のヘテロ原子またはヘテロ原子群が介在していてもよいが、これは好ましいものではなく、R基の骨格は、炭素原子のみを含有することが好ましい。
【0031】
R基は、置換基を3つまで保有してもよく、前記置換基は、例えば、ハロ、炭素数1~6のアルキル、例えば、メチル、または炭素数1~6のアルコキシから選択されてもよい。置換基が存在する場合、前記置換基は、非極性で小さいことが好ましく、例えば、メチル基である。しかしながら、R基は、非置換のままであることが好ましい。
【0032】
R基は、アルキレン基であることが好ましい。
【0033】
R基は、直鎖状であることが好ましい。R基は、長鎖脂肪酸または長鎖エステル等の天然源由来であることが好ましい。特に、R基は、AA、EPA、またはDHA由来であってもよい。
【0034】
そのため、別の態様では、本発明は、式(I’)の化合物またはその塩を採用する。
【0035】
R-L-CO-X (I’)
式中、
Rは、炭素数10~24の非置換不飽和アルキレン基であり、前記基は少なくとも4つの非共役二重結合を含み、
Lは、R基とカルボニルCOとの間に1~5つの原子からなる橋かけを形成する連結基であり、ここでLは、連結基の骨格中にヘテロ原子を少なくとも1つ含み、
Xは電子求引基である。
【0036】
Rは直鎖状であることが理想的である。したがって、Rは、炭素数10~24の不飽和ポリアルキレン鎖であることが好ましい。
【0037】
連結基Lは、R基とカルボニルとの間に1~5つの骨格原子、好ましくは2~4つの骨格原子、2つの原子等からなる橋かけ基を提供する。前記リンカーの骨格原子は、炭素であってもよく、かつ/または、N、O、S、SO、SO2等のヘテロ原子であってもよい。前記原子は環の一部を成すべきではなく、前記連結基の骨格原子は、側鎖、例えば、炭素数1~6のアルキル、オキソ、アルコキシ、またはハロ等の基で、置換することができる。
【0038】
前記連結基の好ましい成分は、-CH2-、-CH(炭素数1~6のアルキル)-、-N(炭素数1~6のアルキル)-、-NH-、-S-、-O-、-CH=CH-、-CO-、-SO-、-SO2-であり、これらを任意の(化学的に意味のある)順序で互いに組み合わせて連結基を形成することができる。よって、2つのメチレン基および1つの-S-基を使用することにより、リンカーである-SCH2CH2-が形成される。前記リンカーの少なくとも1つの成分により、前記骨格にヘテロ原子が提供されることがわかる。
【0039】
連結基Lは、骨格中に少なくとも1つのヘテロ原子を含む。さらに、R基に結合した連結基の最初の骨格原子がヘテロ原子またはヘテロ原子群であることも好ましい。
【0040】
連結基Lが、その骨格に少なくとも1つの-CH2-結合を含むことが非常に好ましい。理想的には、カルボニルに隣接する連結基の原子は-CH2-である。
【0041】
R基またはL基(L基のサイズにもよるが)は、カルボニルに対してα位、β位、γ位、またはδ位、好ましくは、カルボニルに対してβ位またはγ位に位置するヘテロ原子またはヘテロ原子群を提供することが好ましい。好ましくは、前記ヘテロ原子は、O、N、もしくはS、またはSO等の硫黄誘導体である。
【0042】
したがって、非常に好ましい連結基Lは、-NH2CH2、-NH(Me)CH2-、-SCH2、-SOCH2-、または-COCH2-である。
【0043】
連結基は、環を含むべきではない。
【0044】
非常に好ましい連結基Lは、SCH2、NHCH2、およびN(Me)CH2である。
【0045】
別の態様では、本発明は、式(II)の化合物またはその塩を採用する。
【0046】
R-L-CO-X (II)
式中、
Rは、炭素数10~24の直鎖状の非置換不飽和アルキレン基であり、前記基は少なくとも4つの非共役二重結合を含み、
Lは、-SCH2-、-OCH2、-SOCH2、または-SO2CH2-であり、
Xは電子求引基である。
【0047】
X基は、電子求引基である。この点で好適な基としては、O-C1-6アルキル、CN、OCO2-C1-6アルキル、フェニル、CHal3、CHal2H、CHalH2が挙げられ、ここで、Halは、ハロゲンを表し、例えば、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素、好ましくはフッ素である。
【0048】
好ましい実施形態において、前記電子求引基は、CHal3、特に、CF3である。
【0049】
よって、好ましい式(I)の化合物は、式(III)で表されるものである。
【0050】
R-Y1-Y2-CO-X (III)
式中、
Rは、炭素数10~24の非置換不飽和アルキレン基であり、前記基は少なくとも4つの非共役二重結合を含み、
Xは、本明細書中で先に定義した通りであり、
Y1は、O、S、NH、N(炭素数1~6のアルキル)、SO、またはSO2から選択され、
Y2は、(CH2nまたはCH(炭素数1~6のアルキル)であり、または
nは1~3、好ましくは1である。
【0051】
さらに、式(I)の好ましい化合物は、式(IV)で表されるものである。
【0052】
R-Y1-CH2-CO-X (IV)
式中、
Rは、炭素数10~24の直鎖状の非置換不飽和アルキレン基であり、前記基は少なくとも4つの非共役二重結合を含み、
Xは、本明細書中で先に定義した通りであり(例えば、CF3)、
Y1は、O、S、SO、またはSO2から選択される。
【0053】
本発明において使用する非常に好ましい化合物を以下に示す。
【0054】
【化1】
【0055】
式中、Xは、本明細書中で先に定義した通りであり、CF3等である。
【0056】
以下の化合物は、本発明での使用において非常に好ましい。
【0057】
【化2】
【0058】
肺もしくは腎臓の線維症の治療または予防に化合物AまたはBを使用することが特に好ましい。
【0059】
本発明の化合物は、可能な場合には、塩、水和物、または溶媒和物の形態で投与でき、特に塩の形態で投与することができる。
【0060】
薬学的に許容可能な塩は、典型的には、所望の酸を使用することにより容易に調製できる。塩は、溶液中に沈殿したものをろ過によって捕集してもよいし、あるいは、溶媒を蒸発させて回収してもよい。例えば、塩酸等の酸の水溶液を式(I)の化合物の水性懸濁液に添加し、得られた混合液を蒸発乾固(凍結乾燥)させ、固体の酸付加塩を得てもよい。あるいは、式(I)の化合物を適当な溶媒に溶解し、前記酸を同じ溶媒または別の適当な溶媒中に添加してもよい。次に、得られた酸付加塩を直接沈殿させるか、またはジイソプロピルエーテルやヘキサンなどの極性の低い溶媒を加えて沈殿させ、ろ過により単離してもよい。
【0061】
好適な付加塩は、無毒性の塩を形成する無機酸または有機酸から形成されるものであり、これらの例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、グルコン酸塩、コハク酸塩、ピルビン酸塩、シュウ酸塩、オキサロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、糖酸塩、安息香酸塩、アルキルスルホン酸塩またはアリールスルホン酸塩(例えば、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、またはp-トルエンスルホン酸塩)およびイセチオン酸塩が挙げられる。代表的な例としては、トリフルオロ酢酸塩およびギ酸塩が挙げられ、例えば、ビストリフルオロ酢酸塩またはトリストリフルオロ酢酸塩およびモノギ酸塩またはジギ酸塩であり、特に、トリストリフルオロ酢酸塩またはビストリフルオロ酢酸塩およびモノギ酸塩である。
【0062】
式(I)の化合物は、公知の化学合成経路を用いて製造してもよい。市販の化合物である、アラキドン酸(AA)、EPA(all-Z-エイコサ-5,8,11,14,17-ペンタエン酸)、またはDHA(all-Z-ドコサ-4,7,10,13,16,19-ヘキサエン酸)から合成を開始することが便利である。これら化合物の酸性官能基の、例えば、-COCF3基への変換は、例えば、カルボン酸を対応する酸クロリドに変換し、これをピリジンの存在下、無水トリフルオロ酢酸と反応させることによって容易に行うことができる。
【0063】
炭素鎖へのヘテロ原子の導入もまた、容易に行われる。例えば、前記出発酸をアルコールに還元し、さらに、必要な場合には対応するチオールに変換すれば便利である。そして、求核性チオールを、BrCH2COCF3等の基と反応させ、これにより、カルボニルおよび電子求引性種を導入してもよい。合成プロトコールの詳細は、J.Chem.Soc.,Perkin Trans 1,2000,2271-2276またはJ.Immunol.,1998,161,3421に記載されている。
【0064】
該組成物中の本発明の化合物の量は、必要な投与量に応じ、医師により決定されることが多い。
【0065】
本発明の組成物は、主として線維性障害の治療または予防に使用するために提案されている。
【0066】
治療すること、または治療とは、以下のうちの少なくとも1つを意味する。
(i)疾患を抑制すること、すなわち、疾患の発症もしくはその再発、または疾患の少なくとも1つの臨床症状もしくは亜臨床症状を抑止、軽減、または遅延させること、または
(ii)疾患の1以上の臨床症状または亜臨床症状を緩和または減弱させること。
【0067】
予防とは、(i)哺乳動物において発症する疾患の臨床症状の発現を予防または遅延させることを意味する。
【0068】
治療対象への恩恵は、統計的に有意であるか、あるいは、少なくとも患者または医師が認知可能である。一般に、当業者であれば、「治療」がいつ発生するかを理解可能である。本発明の組成物は、予防目的よりはむしろ治療目的に、すなわち、既に現れている症状を治療するために使用することが特に好ましい。本発明の組成物は、予防目的よりも治療目的で使用する方がより効果的な場合がある。
【0069】
本発明の組成物は、任意の対象動物、特に哺乳動物、より詳細には、ヒトまたは疾患のモデルとしての役割を果たす動物(例えば、マウス、サル等)に使用することができる。
【0070】
疾患を治療するためには、有効量の活性組成物を患者に投与する必要がある。「治療有効量」とは、状態、障害、または症状を治療するために動物に投与する場合、このような治療を行うのに十分な組成物の量を意味する。「治療有効量」は、組成物、疾患およびその重症度、ならびに治療対象の年齢、体重、健康状態、および反応性によって異なるものであり、最終的には主治医の裁量で決定される。
【0071】
本発明に従って線維化を治療するために、本発明の組成物を一定の間隔で再投与しなければならない場合がある。適切な投与計画は、医師が指示することができる。
【0072】
本発明の組成物は、典型的には、意図する投与経路および標準的な薬務を考慮して選択される少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体と混合された活性成分を含む。
【0073】
「担体」という用語は、活性化合物と共に投与する希釈剤、賦形剤、および/またはビヒクルを指す。本発明の医薬組成物は、2以上の担体の組み合わせを含有し得る。このような医薬担体は、当技術分野で周知である。医薬組成物は、さらに、任意の適切な結合剤、滑沢剤、懸濁剤、コーティング剤、および/または溶解補助剤等(いずれも1種または複数種)を含んでもよい。該組成物は、さらに、他の活性成分、例えば、癌治療のための他の薬剤を含有し得る。
【0074】
本発明に従って使用される医薬組成物は、経口、非経口、経皮、舌下、局所、インプラント、経鼻、または経腸投与(または他の粘膜投与)される懸濁液、カプセル、または錠剤の形態であってもよく、これらは、1以上の薬学的に許容可能な担体または賦形剤を用いて従来の方法で製剤化し得ることが理解されるであろう。本発明の組成物は、ナノ粒子製剤として製剤化することができる。
【0075】
しかしながら、線維化の治療のために、本発明の組成物の投与は、経口または非経口(例えば、皮下、筋肉内、または静脈内)等、種々の経路で行うことができる。本発明の多くの実施形態では、皮下投与が好ましい。したがって、本発明の組成物を経口投与する実施形態では、当該組成物を、錠剤または注射用の溶液の形態で提供してもよい。
【0076】
本発明の医薬組成物は、体積当たり0.01~99重量%の活性物質を含有してもよい。治療用量は、一般に、約10~2000mg/日、好ましくは、約30~1500mg/日である。使用し得るその他の範囲としては、例えば、50~500mg/日、50~300mg/日、100~200mg/日が挙げられる。
【0077】
投与は、1日1回、1日2回、またはより頻回としてもよく、疾患または障害の維持期においては減らしてもよく、例えば、毎日または1日2回の代わりに、2日または3日に1回としてもよい。投与量および投与頻度は、臨床徴候に応じて決定されるものであり、当業者に公知の急性期の臨床徴候の少なくとも1以上、好ましくは2以上が軽減または消失したことに基づき、寛解期の維持が確認される。
【0078】
本発明による治療は、問題となっている線維性疾患のための他の公知の治療と併せて実施してもよい。例えば、肺線維症の患者に酸素を投与してもよい。本発明による治療は、同一または異なる医薬組成物における他の公知の治療と組み合わせた他の実施形態で実施してもよい。「併用剤」の例としては、特に、シクロスポリン、アザチオプリン、シクロホスファミド、またはミコフェノール酸モフェチルを含むが、これらに限定されない免疫抑制剤;副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾン)、サイトカイン(インターフェロンα、インターフェロンγ、インターロイキン12、TNF阻害剤、CCR2阻害剤、CCR5阻害剤、またはVAP1阻害剤を含むが、これらに限定されない)を含むが、これらに限定されない抗炎症剤;サリドマイド;ACE阻害剤、ARB、レニン阻害剤、およびミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(例えば、カプトプリル、ラミプリル、リシノプリル、ロサルタン、テルミサルタン、アリスキレン、スピロノラクトン、フィネレノン、CS-3150、MT-3995、エプレレノン等)を含むが、これらに限定されない降圧剤;特に、CTGF、TGF-β、MCP-1、IL-4、およびIL-13を標的とする、モノクローナル抗体またはその他の薬剤;ニンテダニブおよびJNK(キナーゼ)阻害剤タンジセルチブ(CC-930)、またはルキソリチニブ(ジャカビ(商標))を含むが、これらに限定されない複数の受容体型チロシンキナーゼ阻害剤;N-アセチルシステイン、ピルフェニドン、ビタミンE、S-アデノシルメチオニン、ピリドリン、GKT137831、またはペニシラミン等が挙げられるが、これらに限定されない抗酸化剤;リジルオキシダーゼ様2(LOXL2酵素)等を含むが、これらに限定されない酵素阻害剤;αvβ6等が挙げられるが、これに限定されないインテグリン阻害剤;リゾホスファチジン酸受容体拮抗薬、HMG-CoA還元酵素阻害剤、ステアロイル-CoA脱飽和酵素阻害剤、PPAR阻害剤、チアゾリンジオン(thiazolindiones)、またはコレステロール吸収阻害剤を含むが、これらに限定されない脂質受容体モジュレータまたは脂質低下剤;アトラセンタン等のETA阻害剤、カナグリフロジン等のSGLT2阻害剤を含むが、これらに限定されない脈管構造または血管新生に影響を及ぼす阻害剤;ポマリドミド;IDN-6556またはGS-4997等のアポトーシス阻害剤;CTP-499等のPDE阻害剤;トロンボモジュリン阻害剤、または臍帯幹細胞、自家幹細胞、および骨髄幹細胞等の幹細胞(SC)に基づく治療が挙げられる。
【0079】
本発明を、以下の非限定的な実施例および図面を参照してさらに説明する。
【実施例
【0080】
[実施例1]
片側尿管結紮(UUO)は、間質性腎線維症の病態生理の研究に利用される、十分に検証された腎損傷のげっ歯類モデルである。このモデルは、いずれか一つ(左または右)の尿管を麻酔下で外科的に結紮し、閉塞の結果として生じる静水圧の上昇を誘発し、これにより、アポトーシスおよびネクローシスによる進行性の尿細管細胞死、間質性炎症性浸潤、腎実質の消失を伴う毛細血管希薄化および進行性の線維化、筋線維芽細胞の活性化、および細胞外マトリックスの沈着を引き起こすものである(Dendooven A et al,Int.J.Exp.Path.(2011),92,202-210で考察されている)。UUO誘発性腎線維症は、尿管結紮後7日または14日以内に発症させることができるため、このモデルは、げっ歯類に投与した化合物の抗線維化効果を適度に短期間で評価するのに適している(Eddy A et al,Pediatr Nephrol.2012 Aug;27(8):1233-47)。
【0081】
[被験物質および製剤]
【0082】
【化3】
【0083】
化合物Bを、皮下投与用として、化合物Bを2mg/ml、MCTオイル(類脂質)を2mg/ml、ポリソルベート80(フルカ社)を2mg/ml、クエン酸ナトリウム緩衝液を10mM(pH7)含有するナノエマルジョンとして製剤化した。最終溶液をろ過により滅菌し、アルゴン5.0AGAで飽和した後、10mlの試験管に分注し、さらなる使用時まで-20℃で保存した。また、化合物BおよびMCTオイルを含まない、別個のポリソルベート80およびクエン酸ナトリウム緩衝液ベースのビヒクル溶液を調製し、滅菌、分注、保存したものを、UUO動物試験に使用するビヒクル皮下投与対照とした。
【0084】
[動物]
週齢7週の雌のC57BL/6Jマウスを、日本エスエルシー社(日本)から得た。動物は、12時間の明暗周期(8時から20時まで点灯)の下、動物飼育室設備内で23℃±2℃の温度、45±10%の湿度で飼育した。汚染防止のため、実験室内は、20±4Paの高圧を維持した。動物は、TPXケージ(日本クレア社)内に収容され、自由に摂取できるようにケージの上の金属蓋に置かれた滅菌済みの一般飼料(CE-2;日本クレア社、日本)を与えられた。また、ゴム栓とシッパーチューブを備えた水筒から自由に摂取できるように純水を供給した。
【0085】
[実験計画]
雌のC57BL/6Jマウス29匹を複数の群に分け、下記表1の計画に従って治療した(0日目から13日目)。
【0086】
【表1】
【0087】
[UUOの誘発]
麻酔(メデトミジン、ミダゾラム、ブトルファノール)下のマウスの腹部左側を剃毛した。メスで皮膚を垂直に切開し、皮膚を後方へ退けた。2度目の切開で腹膜を切開し、同様に皮膚を後方へ退けて腎臓を露出させた。鉗子を用いて腎臓を表面に移動させ、左尿管の中央部を4-0ナイロン外科用絹糸で2箇所結紮した。結紮処理した腎臓を正しい解剖学的位置へと戻し、滅菌生理食塩水を加えて失った体液を補った。切開部を縫合し、さらなる実験のため、マウスを一匹づつケージに入れた。
【0088】
[各群の治療]
上記の表1に、当該検証における治療スケジュールを要約している。化合物B(投与量6mg/kgまたは12mg/kg)またはビヒクルを、UUOを行った(2群~4群)後、13日間、毎日皮下投与(SC)した。正常/偽(疾患無し)群として供した1群の動物には、UUOは行わなかった。14日目に動物を屠殺した。
【0089】
[各群の評価]
生存率、臨床徴候、および挙動を毎日モニターした。個体の体重を、治療の前に毎日測定した。各回の投与のおよそ60分後にマウスを観察し、毒性、瀕死、および死亡の有意な臨床徴候を調べた。動物は、標準的な倫理的手順に従い、14日目にイソフルラン麻酔下での直接心臓穿刺により失血死させた。
【0090】
[サンプル採取、アッセイ、および測定]
[血漿生化学の測定]
血漿生化学検査のため、非絶食時の血液を、抗凝固剤(ノボ・ヘパリン、持田製薬株式会社、日本)を入れたポリプロピレンチューブに採取し、1,000×gで4℃で15分間遠心分離した。上清を回収し、使用時まで-80℃で保存した。血漿中尿素窒素(BUN)を、FUJI DRI-CHEM7000(富士フイルム社、日本)により測定した。
【0091】
[腎臓生化学の測定]
腎臓中ヒドロキシプロリン含量を定量するために、凍結した左の腎臓のサンプルを、アルカリ酸加水分解法によって以下のように処理した。腎臓サンプルを2N NaOHに65℃で溶解し、121℃で20分間オートクレーブ処理した。溶解したサンプル(400μL)を、400μLの6N HClを用いて121℃で20分間酸加水分解し、活性炭を10mg/mL含有する400μLの4N NaOHで中和した。AC緩衝液(2.2M 酢酸/0.48M クエン酸、400μL)を前記サンプルに添加し、次いで、遠心分離して上清を回収した。ヒドロキシプロリンの標準曲線を、16μg/mLを開始濃度としたトランス-4-ヒドロキシ-L-プロリン(シグマ-アルドリッチ社、米国)の段階希釈により構築した。調製したサンプルおよび標準物質(各400μL)を、クロラミンT溶液(和光純薬工業社、日本)400μLと混合し、室温で25分間インキュベートした。次いで、前記サンプルをエールリッヒ溶液(400μL)と混合し、65℃で20分間加熱して発色させた。サンプルを氷上で冷却し、遠心分離して沈殿物を除去した後、各上清の光学密度を560nmで測定した。ヒドロキシプロリンの濃度は、ヒドロキシプロリン標準曲線から算出した。腎臓サンプルのタンパク質濃度をBCAタンパク質分析キット(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、米国)を用いて求め、これを用いて、算出したヒドロキシプロリン値を正規化した。腎臓中ヒドロキシプロリン含量は、タンパク質1mg当たりのμgとして表した。
【0092】
[病理組織学的分析]
PAS染色では、パラフィンブロックから切片を切り出し、シッフ試薬(和光純薬工業社)による染色を取扱説明書に従って行った。尿細管損傷を観察するために、皮髄領域の明視野画像をデジタルカメラ(DFC295、ライカマイクロシステムズ社、ドイツ)を用いて100倍および400倍の倍率で撮影した。
腎臓を10%中性緩衝ホルマリン(和光純薬工業社)で固定し、パラフィン中に包埋した。コラーゲン沈着を可視化するために、腎臓切片をピクロシリウスレッド溶液(ヴァルデック(Waldeck)社、ドイツ)を用いて染色した。間質性線維化領域の定量化のために、皮髄領域の明視野画像をデジタルカメラ(DFC295)を用いて200倍の倍率で撮影し、1切片当たり5つの視野について、陽性領域をImageJソフトウェア(国立衛生研究所、米国)を用いて測定した。
【0093】
[I型コラーゲンmRNAの定量的RT-PCR]
RNAiso(タカラバイオ社、日本)を取扱説明書に従って用い、腎臓サンプルから全RNAを抽出した。1μgのRNAの逆転写を、4.4mM MgCl2(エフ・ホフマン・ラ・ロシュ社、スイス)、40U リボヌクレアーゼ阻害剤(東洋紡社、日本)、0.5mM dNTP(プロメガ社、米国)、6.28μM ランダムヘキサマー(プロメガ社)、5倍希釈の第一鎖緩衝液(プロメガ社)、10mM ジチオスレイトール(インビトロジェン社、米国)、および200U MMLV-RT(インビトロジェン社)を含む反応混合物を最終体積20μLで用いて行った。前記反応は、37℃で1時間、次いで99℃で5分間行った。
【0094】
リアルタイムPCRは、リアルタイムPCR DICEおよびSYBRプレミックスTaq(タカラバイオ社)を用いて行った。I型コラーゲン遺伝子のmRNAの相対発現レベルを算出するために、その発現を、対照遺伝子であるGAPDHの発現に対して正規化した。使用したPCRプライマーセットは、下記の通りである。
【0095】
GAPDH:
フォワード:5'-TGTGTCCGTCGTGGATCTGA-3' (配列番号1)
リバース:5'-TTGCTGTTGAAGTCGCAGGAG-3' (配列番号2)
I型コラーゲン
フォワード:5'-CCAACAAGCATGTCTGGTTAGGAG-3' (配列番号3)
リバース:5'-GCAATGCTGTTCTTGCAGTGGTA-3' (配列番号4)
[統計的検定]
グラフパッドプリズム(GraphPad Prism)6(グラフパッドソフトウェア社、米国)上で行うボンフェローニ多重比較検定(Bonferroni Multiple Comparison Test)を用いて統計解析を行った。P値が0.05未満の場合を、統計的に有意とみなした。片側t検定において0.1未満のP値が得られた場合、動向または傾向があると仮定した。結果を、平均値±標準偏差(SD)で表した。
【0096】
[結果]
[生化学的分析]
異なる群から採取した血漿サンプルにおいて測定した血漿中尿素窒素(BUN)には、有意差は認められなかった(データ示さず)。ヒドロキシプロリンに関し、ビヒクル群は、偽対照群と比較して、腎臓中ヒドロキシプロリン含量の有意な増加を示した(p<0.0001)。化合物Bは、用量依存的に腎臓ヒドロキシプロリンを減少させた(表2)。
【0097】
【表2】
【0098】
[組織学的解析]
[シリウスレッド染色]
シリウスレッド染色した腎臓切片の代表的な顕微鏡写真を図1に示す。間質線維化領域を定量したところ(表3)、ビヒクル群における線維化領域(シリウスレッド陽性領域)は、偽対照群と比較して、有意に増加していた(p<0.0001)。化合物B高投与量群では、線維化領域は、ビヒクル群と比較して有意に減少していた(p<0.05)。化合物B低用量群でも、線維化領域は、ビヒクル群と比較して減少傾向にあった(表3)。
【0099】
【表3】
【0100】
[PAS染色]
PAS染色(過ヨウ素酸シッフ)した腎臓切片の代表的な顕微鏡写真を図2に示す。ビヒクル群の腎臓切片では、皮質領域および髄質領域の両方で、炎症性細胞浸潤、重度の尿細管拡張、萎縮、およびPAS陽性円柱形成が見られた。炎症性細胞浸潤は、化合物Bによる治療で、特に高投与量治療群において減少した。ビヒクル群と化合物B治療群との間で、尿細管損傷に明らかな差は認められなかった。
【0101】
[体重、化合物の毒性、および死亡率]
治療期間中に、有意な体重変化は認められなかった。検証中に死亡した動物はおらず、全身状態の悪化を示した動物もいなかった。これらの結果は、化合物Bによる治療に毒性がないことを示していた。
【0102】
[I型コラーゲンのmRNA発現]
ビヒクル群は、偽対照群と比較して、I型コラーゲンのmRNA発現レベルの有意なアップレギュレーションを示した(p<0.0001)。高投与量の化合物Bにより、ビヒクル群と比較して、I型コラーゲンのmRNA発現レベルの有意なダウンレギュレーションが見られた(p<0.0001)。化合物Bの低投与量群においても、ビヒクル群と比較して、I型コラーゲンのmRNA発現レベルがダウンレギュレーションされる傾向が見られた(表4)。
【0103】
【表4】
【0104】
この例から分かるように、UUOは、C57Bマウスにおいて、UUOの14日後に、有意な腎線維症を誘発した。化合物Bを用いた治療により、用量依存的に、線維化領域の有意な減少が見られた。化合物Bは、さらに、腎臓ヒドロキシプロリン含量およびI型コラーゲンのmRNA発現も低減させた。PAS染色により、化合物B治療群における炎症性細胞浸潤が、ビヒクル群と比較して減少することが示された。これらの結果により、化合物BがUUOモデルにおいて抗線維化効果および抗炎症効果を有することが示された。
【0105】
[実施例2]化合物Bは、TGF-β1によって誘導される線維化マーカーおよびPGE2の発現を阻害する。
【0106】
線維化は、組織傷害と慢性的な炎症の結果であると理解されている。TGF-β1は、最終的には腎臓、肺、または肝臓等の臓器の機能を損なったり、あるいは消失させる線維化において、結合組織および瘢痕組織の沈着の中心的な制御因子であることが報告されている。以下のデータは、特に、cPLA2α阻害剤が、いくつかの線維化細胞モデルにおいて、主要な線維化因子の転写レベルを効率的かつ用量依存的に低下させ、炎症誘発性エイコサノイドPGE2の産生を低減することを示す。
【0107】
3つの異なる細胞株をTGF-β1で処理し、線維化マーカーを誘導した。化合物Bの抗線維化効果は、主要な線維化マーカーのmRNA発現によって測定した。これらの細胞株のうちの1つにおいて、化合物Bが代謝物PGE2のレベルに及ぼす効果も見られた。
【0108】
下記の材料および方法を、必要に応じて用いた。
【0109】
[細胞培養]
NRK-49F(正常ラット腎線維芽細胞、ATCC(登録商標)CRL-1570(商標))を、4500mg/L グルコース、5%FBS、L-グルタミン、およびゲンタマイシンを含有するDMEM中で維持した。実験のために、6ウェルプレートに、3×105細胞/ウェルとなるように播種した。3日後、コンフルエントに達した後の細胞を、24時間血清飢餓状態とした。次いで、それらを阻害剤で90分間プレインキュベートした後、10ng/mlのTGF-β1で24時間(mRNA発現)または72時間(PGE2)処理した。
【0110】
MRC-5(ヒト肺線維芽細胞、ATCC(登録商標)CCL-171(商標))を、10%FBS、L-グルタミン、およびゲンタマイシンを含有するMEM中で維持した。実験のために、6ウェルプレートに、1×105細胞/ウェルとなるように播種した。2日後、コンフルエントに達する前の細胞を、24時間血清飢餓状態とした。その後、前記細胞を阻害剤で90分間プレインキュベートした後、2ng/mlのTGF-β1で24時間処理した。
【0111】
RMC(ラットメサンギウム細胞、ATCC(登録商標)CRL-2573(商標))を、4500mg/Lグルコース(シグマ社)、15%FBS、L-グルタミン、および0.4mg/ml G418を含有するDMEM中で維持した。実験のために、6ウェルプレートに、3×105細胞/ウェルとなるように播種した。5日後、コンフルエントに達した後の細胞を、24時間血清飢餓状態とした。その後、前記細胞を阻害剤で90分間プレインキュベートした後、5ng/mlのTGF-β1で24時間処理した。
【0112】
[qRT-PCR]
RNeasy Mini Kit(キアゲン社)を用いて、全RNAを単離した。cDNA合成は、QuantiTect Reverse Transcription Kit(キアゲン社)の20μl反応液中、全RNAを1μg用いて行った。合成後、cDNAを、リボヌクレアーゼを含まない水に対して1:6の割合で希釈した。LightCycler 480 SYBR Green I Master(ロシュ社)を用いてqRT-PCRを行い、Lightcycler 96 system(ロシュ社)を用いてqRT-PCR分析を行った。プライマー配列を表5に示す。
【0113】
【表5】
【0114】
[PGE2の酵素結合免疫測定検出]
細胞上清サンプルを、キットのプロトコールに従い、PGE2(Cayman#514010)に対する酵素結合免疫吸着測定(EIA)によって分析した。細胞上清は、希釈せずに分析した。上清を一晩インキュベートしてハイブリダイズさせ、基質の酵素変換を420nmの光学密度で読み取った。データは、4パラメータロジスティックフィットモデルを使用して処理した。
【0115】
トランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β1)は、線維化の主要なドライバーであり、線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化を誘導することが報告されている。筋線維芽細胞への分化は、α平滑筋アクチン(α-SMA)のデノボ合成によって特徴付けられると言われている。図3a~cに示すように、TGF-β1は、試験に供した線維芽細胞株およびメサンギウム細胞株の両方において、α-SMAのmRNAの強力な誘導因子である。cPLA2α阻害剤である化合物B(5μM)は、NRK-49F細胞において、TGF-β1が誘導するα-SMAのmRNA発現を50%阻害している(図3a)。MRC-5では、化合物Bが、α-SMAのmRNA発現を76%低下させており、最も効率的である(図3b)。メサンギウム細胞系であるRMCにおいても、化合物Bは、α-SMAのmRNA発現を35%程度低下させてはいるが、顕著な効果ではない(図3c)。
【0116】
活性化された筋線維芽細胞とメサンギウム細胞は、いずれもECM産生の有意な増加に寄与すると言われている。コラーゲンは、ECMに最も豊富に含まれる成分であり、TGF-β1は、NRK-49F、およびMRC-5において、数種のコラーゲンを誘導する。化合物B処理により、コラーゲンレベルが用量依存的に低下した。NRK-49F細胞において、10μMの化合物Bにより、Col1a2のレベルが34%減少し(図3d)、Col3a1のレベルが46%減少している(図3f)。MRC-5細胞において、5μMの化合物Bにより、Col4a1のレベルが50%減少し(図3e)、Col3a1のレベルが38%減少している(図3g)。
【0117】
フィブロネクチンは、細胞表面受容体と、ECM中のコラーゲンやプロテオグリカンのような化合物との間の橋かけを形成するため、マトリックス形成において「マスターオーガナイザー」の役割を果たすと考えられている(HalperおよびKjaer,2014年)。NRK-49F細胞において、化合物Bに対する反応として、フィブロネクチンレベルの用量依存的な減少が観察された。10μMの化合物Bによる処理により、フィブロネクチンレベルが30%低下した(図3h)。さらに、我々は、MRC-5細胞をTGF-β1で処理することで、ECMの産生を調節し、かつ線維化の原因となり得るマトリクス細胞タンパク質の結合組織増殖因子(CTGF)のmRNA発現が誘導されることを示している(Rayego-Mateos,2018年)。5μMの化合物Bによる処理により、CTGFのmRNAレベルが42%有意に低下している(図3i)。
【0118】
cPLA2αは、エイコサノイド生合成のためのアラキドン酸(AA)の放出を調節する重要な因子であると考えられている(Hao、2007年)。シクロオキシゲナーゼ(COX)の酵素経路により、AAが、生物学的に活性な炎症誘発性エイコサノイドプロスタグランジンE2(PGE2)に変換される。TGF-β1は、3種類全ての細胞系でPtgs2(COX2タンパク質をコードする)のmRNA発現を誘導する。5μMの化合物Bにより、NRK-49F細胞において、TGF-β1が誘導するPtgs2発現が44%低下している(図3j)。MRC-5細胞において、5μMの化合物Bにより、Ptgs2の発現が、それぞれ44%および58%低下している(図3k)。RMCにおいても、5μMの化合物Bにより、Ptgs2のmRNAレベルが低下しているようである(図3l)。また、我々は、観察されたPtgs2の発現低下に伴い、TGF-β1が誘導するPGE2の産生は、化合物Bの存在下で用量依存的に低下することを示している(図4)。2μMの化合物Bにより、PGE2レベルが26%低下し、5μMの化合物Bにより、当該レベルが58%低下している。
【0119】
図3の1列目は、コンフルエントに達した後のNRK-49F細胞を、阻害剤で90分間前処理してから、TGF-β1(10ng/mL、24時間)で処理した結果を示す。図示した結果は、生物学的に独立した3つの実験の平均値である。
【0120】
2列目は、コンフルエントに達する前のMRC-5細胞を、阻害剤で90分間前処理してから、TGF-β1(2ng/mL、24時間)で処理した結果を示す。図示した結果は、生物学的に独立した3つの実験の平均値である。
【0121】
3列目は、コンフルエントに達した後のRMC細胞を、阻害剤で90分間前処理してから、TGF-β1(5ng/mL、8時間(α-SMA)または24時間(Ptgs2))処理した結果を示す。一つの実験で得られた結果を示している。
【0122】
図4では、コンフルエントに達した後のNRK-49F細胞を、阻害剤で90分間前処理してから、10ng/mlのTGF-β1で72時間処理している。図示した結果は、生物学的に独立した2つの実験の平均値である。
【0123】
図中では、次の略語を使用している。
TGF-β1:トランスフォーミング増殖因子β1
αSMA:α平滑筋アクチン
Ptgs2:プロスタグランジンエンドペルオキシド合成酵素2/シクロオキシゲナーゼ2
Col1a2:コラーゲン1a2
Col3a1:コラーゲン3a1
Col4a1:コラーゲン4a1
CTGF:結合組織増殖因子。
【0124】
[実施例3]高投与量の化合物Bを繰り返し投与したUUOモデルでは腎線維症が軽減する
以下に示す変更事項以外は、実施例1で説明したUUOモデル実験の手順を繰り返した。以下に記載されていない材料および方法については、本明細書中の他の箇所に見出すことができる。
【0125】
化合物Bを12mg/kgおよび15mg/kg使用した以外は実施例1と同様に実施したこのUUO実験においては、抗線維化効果および抗炎症効果について、同様の結果が得られた。簡潔には、29匹の雌のC57BL/6Jマウスを複数の群に分け、化合物Bを、6ml/kgの投与体積で12mg/kg、7.5ml/kgの投与体積で15mg/kg投与したこと以外は、表1に記載の計画に従って治療を行った(最初の実験:化合物Bを3ml/kgの投与体積で6ml/kg、6ml/kgの投与体積で12mg/kg投与)。この実験の結果を、下記表6および表7に示す。
【0126】
【表6】
【0127】
【表7】
【0128】
シリウスレッド染色した腎臓切片の代表的な顕微鏡写真を図5に示し、PAS染色(過ヨウ素酸シッフ)した腎臓切片の代表的な顕微鏡写真を図6に示す。全体的に見て、実験結果は少なくとも以下のことを示している。
【0129】
ヒドロキシプロリン(表6)については、ビヒクル群は、偽対照群と比較して、腎臓ヒドロキシプロリン含量の有意な増加を示した(p<0.0001)。化合物Bは、特に低投与量群(12mg/kg)において、腎臓ヒドロキシプロリンを減少させるようであった。
【0130】
ビヒクル群と偽対照群を比較すると、線維化領域の有意な増加(シリウスレッド陽性領域)が認められた(p<0.0001)。化合物Bを15mg/kgで投与した場合、ビヒクル群と比較して、線維化領域の有意な減少が見られた(p<0.01)。化合物Bを12mg/kg投与した場合にもまた、ビヒクル群と比較して、線維化領域の有意な減少が見られた(p<0.05)。
【0131】
ビヒクル群の腎臓切片では、皮質領域および髄質領域の両方で、炎症性細胞浸潤、重度の尿細管拡張、萎縮、およびPAS陽性円柱形成が見られた。炎症性細胞浸潤は、15mg/kgの化合物Bによる治療により減少した。ビヒクル群と化合物Bを12mg/kg投与した群との間で、尿細管損傷に明らかな差は認められなかった。
【0132】
最後に、実施例1に記載したUUO実験の場合と同様に、治療期間中に有意な体重の変化は認められなかった。検証中に死亡した動物はおらず、全身状態の悪化を示した動物もいなかった。これらの結果により、化合物Bによる治療に毒性がないことが確認された。
【0133】
UUOは、C57Bマウスにおいて、UUOの14日後に、有意な腎線維症を誘導した。化合物Bを用いた治療により、線維化領域の有意な減少が見られた。PAS染色により、高投与量の化合物Bによる治療群では、炎症性細胞浸潤がビヒクル群と比較して減少することが示された。これらの結果は、化合物BがUUOモデルにおいて抗線維化効果および抗炎症効果を有することを示していた。
【0134】
[実施例4]化合物Bは、特発性肺線維症のブレオマイシンモデルにおいて抗線維化活性を示す。
【0135】
特発性線維症(IPF)のブレオマイシンモデルは、特徴がはっきりしており、かつ、i)疾患の多くの側面を再現する能力、ii)良好な再現性、およびiii)誘発の容易さのため、現在広く使用されている間質性肺疾患(ILD)の動物モデルである。総合的に、ブレオマイシンモデルを用いた種々の研究により、これまでに、IPFの病態形成においてに重要であると現在認識されている多くの細胞機構および分子機構が特定されるとともに、ILDに対する新たな治療法が見出された。このモデルは、マウスにブレオマイシンを気管内投与し、これにより、21日以内に肺胞上皮の損傷、肺胞の炎症、および線維化を引き起こすことに基づいている。したがって、このモデルによれば、新規薬剤の治療試験を適度に短期間で行うことができる(Liu T et al,Methods Mol Biol.2017;1627:27-42)。
【0136】
[被験物質および製剤]
化合物B(シンセティカ エーエス(Synthetica A/S)社、ノルウェー)を、皮下投与用として、化合物Bを2mg/ml、MCTオイル(類脂質)を2mg/ml、ポリソルベート80(フルカ社)を2mg/ml、クエン酸ナトリウム緩衝液を10mM(pH7)含有するナノエマルジョンとして製剤化した。最終溶液をろ過により滅菌し、アルゴン5.0AGAで飽和した後、10mlの試験管に分注し、さらなる使用時まで-20℃で保存した。また、化合物BおよびMCTオイルを含まない、別個のポリソルベート80およびクエン酸ナトリウム緩衝液ベースのビヒクル溶液を調製し、滅菌、分注、保存したものを、UUO動物試験に使用するビヒクル皮下投与対照とした。ニンテダニブ(Ofev/Vargatefの商品名でIPF用に認可され商品化されている)を、陽性対照として用いた。前記化合物は、ケムエクスプレス社(Chemexpress Co., Ltd.)(中国)から購入し、1%メチルセルロースに懸濁した。
【0137】
[動物]
週齢6週の雌のC57BL/6Jマウスを、日本エスエルシー社(日本)から得た。動物は、12時間の明暗周期(8時から20時まで点灯)の下、動物飼育室設備内で23℃±2℃の温度、45±10%の湿度で飼育した。汚染防止のため、実験室内は、20±4Paの高圧を維持した。動物は、TPXケージ(日本クレア社、各ケージ最大6匹)内に収容され、自由に摂取できるようケージの上の金属蓋に置かれた滅菌済みの一般飼料(CE-2、日本クレア社、日本)を与えられた。滅菌済みのペーパークリーン(日本エスエルシー社)を床敷として使用し、週に一度交換した。また、ゴム栓とシッパーチューブを備えた水筒から自由に摂取できるように純水を供給した。
【0138】
[ブレオマイシン(BLM)誘発性肺線維症モデルの誘発]
0日目に、48匹のマウスをペントバルビタールナトリウム(共立製薬社、日本)で麻酔し、ミクロスプレーヤー(登録商標)(ペン・センチュリー(Penn-Century)社、米国)を用いて、動物1匹当たり50μLの体積で、生理食塩水に溶解した3mg/kg投与量のBLM(ロット番号761820、日本化薬社、日本)を気管内投与した。マウスを清潔なケージ(休息ケージ)に移し、麻酔から回復するまで静置した。BLM投与は別個の2日間に行い、各投与日に同数のマウスを割り当てた。治療開始の前日である7日目に、マウスを、体重変化に基づいて、6匹づつの4群に分けて無作為化した。対照マウスにはBLMの代わりに生理食塩水を気管内投与し、これらを対照群とした。
【0139】
[実験計画]
当該計画では、上述のように生理食塩水を投与したマウス12匹およびBLMを投与したマウス48匹からなる、雌のC57BL/6Jマウス60匹を用いた。これらの動物を複数の群に分け、下記表8に示す計画に従って治療した。化合物B(投与量7mg/kgまたは14mg/kg)またはビヒクルを、7日目~20日目に皮下投与(SC)した(2群~4群)。ニンテダニブを、一日当たり投与量100mg/kg(5群)で経口投与した。21日目に動物を屠殺した。
【0140】
【表8】
【0141】
[各群の評価]
生存率、臨床徴候、および挙動を毎日モニターした。BLMの投与開始日(0日)後、体重を毎日記録した。動物は、標準的な倫理的手順に従い、ペントバルビタールナトリウムによる麻酔下で腹部大動脈から失血させて屠殺した。
【0142】
[サンプル採取、アッセイ、および測定]
[肺ヒドロキシプロリン含量の測定]
肺ヒドロキシプロリン含量を定量するために、凍結した左肺全体のサンプルを、酸加水分解法によって以下のように処理した。肺サンプルを、300μLの6N HClを用いて121℃で20分間酸加水分解し、活性炭を10mg/mL含有する300μLの4N NaOHで中和した。AC緩衝液(2.2M 酢酸/0.48M クエン酸、300μL)を前記サンプルに添加し、次いで、遠心分離して上清を回収した。ヒドロキシプロリンの標準曲線を、16μg/mLを開始濃度としたトランス-4-ヒドロキシ-L-プロリン(シグマ-アルドリッチ社、米国)の段階希釈により構築した。調製したサンプルおよび標準物質(各400μL)を、クロラミンT溶液(和光純薬工業社)400μLと混合し、室温で25分間インキュベートした。次いで、前記サンプルをエールリッヒ溶液(400μL)と混合し、65℃で20分間加熱して発色させた。サンプルを氷上で冷却し、遠心分離して沈殿物を除去した後、各上清の光学密度を560nmで測定した。ヒドロキシプロリンの濃度は、ヒドロキシプロリン標準曲線から算出した。肺ヒドロキシプロリンレベルは、左肺当たりのμgとして表した。
【0143】
[組織病理解析]
10%中性緩衝ホルマリンで前固定した右肺組織をパラフィン包埋し、4μmに薄切した。マッソントリクローム染色では、マッソントリクローム染色キット(シグマ社、米国)を取扱説明書に従って用い、切片を染色した。肺線維症の程度は、定量的な組織学的解析のためのアシュクロフトスコア(Ashcroft, T., et al.,J Clin Pathol,1988;41:467-70)を用いて評価した。
【0144】
[サンプルの採取]
凍結肺サンプルについては、大静脈後葉(post caval lobe)を採取し、液体窒素中で急速凍結し、-80℃で保存した。パラフィン包埋肺組織ブロックを、室温で保存した。
【0145】
[統計的検定]
統計解析は、プリズムソフトウェア6(グラフパッドソフトウェア社、米国)を用いて行った。生存分析のため、ログランク検定を用いたカプラン・マイヤー分析を行った。他のデータについては、ボンフェローニ多重比較試験を用いて統計解析を行った。P値が0.05未満の場合を、統計的に有意とみなした。片側t検定において0.1未満のP値が得られた場合、動向または傾向があると仮定した。結果は全て、平均値±SDで表した。
【0146】
[体重変化および全身状態]
体重は、ベースライン(0日)からの体重変化のパーセンテージとして表した。ビヒクル群の平均体重変化は、6日目~11日目において、対照群の平均体重変化と比べて有意に低かった。化合物Bを7mg/kgで投与した群の平均体重変化は、14日目において、ビヒクル群の平均体重変化と比べて有意に低かった。ビヒクル群と他の治療群との間で、試験期間中のいずれの日においても、平均体重変化に有意差はなかった(データ示さず)。
【0147】
ビヒクル群の屠殺時の平均体重変化は、対照群と比べて減少傾向にあった。ビヒクル群と治療群との間で、屠殺時の平均体重変化に有意差はなかった(表1)。
【0148】
治療期間中、21日目に達する前に死亡が確認されたマウスは、以下の通りであった。ビヒクル群とニンテダニブ群において、12匹中3匹の死亡、化合物B群で、12匹中4匹のマウスの死亡が確認された。全群でこの実験中に観察された死亡率は、標準モデルの特徴であり、観察された死亡は、BLMモデルマウスの既存範囲(historical range)内であった。
【0149】
【表9】
【0150】
[生存分析]
対照群とビヒクル群との間で、生存率に有意差はなかった。ビヒクル群と治療群との間で、生存率に有意差はなかった(データ示さず)。
【0151】
[肺ヒドロキシプロリン含量(表10)]
ビヒクル群は、対照群と比較して、肺ヒドロキシプロリン含量の有意な増加を示した(P<0.05)。化合物B群(7mg/kgおよび14mg/kg)およびニンテダニブ群における肺ヒドロキシプロリン含量は、ビヒクル群と比較して減少傾向にあった(P<0.1)。
【0152】
【表10】
【0153】
[組織学的解析]
[マッソントリクローム染色およびアシュクロフトスコア]
表11は、マッソントリクローム染色した組織に基づいて決定したアシュクロフトスコアを示す。これらのアッセイにおいて、ビヒクル群は、対照群と比較して、アシュクロフトスコアの有意な増加を示した(P<0.05)。ニンテダニブ群におけるアシュクロフトスコアは、ビヒクル群と比較して低下傾向にあった(P<0.1)。化合物Bで治療した動物の両群においてアシュクロフトスコアは減少していたが、ビヒクル群と化合物B治療群の間で、アシュクロフトスコアに有意差はなかった。
【0154】
【表11】
【0155】
この例は、少なくとも次のことを示している。肺ヒドロキシプロリン含量およびアシュクロフトスコアが証明するように、本検証では、ビヒクル群において肺線維症が確立された。化合物Bによる治療により、ビヒクル群と比較して、肺ヒドロキシプロリン含量が減少する傾向が見られた(P<0.1)。アシュクロフトスコアでも全般的な低下がみられた。ニンテダニブによる治療では、ビヒクル群と比較して、肺ヒドロキシプロリン含量とアシュクロフトスコアが減少傾向を示した(P<0.1)。ニンテダニブが前記徴候のために臨床的に認可された薬剤であることを考慮すると、これらの結果は、化合物BがBLMモデルにおいて抗線維化活性を有することを示唆している。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4
図5
図6
【配列表】
0007305562000001.app