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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】接合形タービンロータの曲がり修正方法
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/00 20060101AFI20230703BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20230703BHJP
   F01D 5/02 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
F02C7/00 D
F01D25/00 X
F01D25/00 F
F01D5/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020008123
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2021116689
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仁木 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】小川 剛史
(72)【発明者】
【氏名】上村 健司
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-053349(JP,A)
【文献】特開2001-317301(JP,A)
【文献】特開平11-230733(JP,A)
【文献】特表2008-535665(JP,A)
【文献】特開2000-176547(JP,A)
【文献】特開2008-280998(JP,A)
【文献】特開昭47-023705(JP,A)
【文献】特開2010-131629(JP,A)
【文献】特開2015-117625(JP,A)
【文献】特開2013-245383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/02-5/10
F01D 25/00
F02C 7/00
B21D 3/00
B23P 6/00
C21D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合形タービンロータの袋状中空部を形成する環状部分を有する接合部における曲がりの修正方法であって、
前記曲がりの凸部の変位または前記接合形タービンロータの周方向における前記凸部と反対側の表面の変位を測定する変位計測器を設定する変位計測器設定ステップと、
前記変位計測器設定ステップの後に前記環状部分の前記凸部を加熱する加熱ステップと、
前記加熱ステップの後に、前記接合部を冷却する冷却ステップと、
を有することを特徴とする接合形タービンロータの曲がり修正方法。
【請求項2】
前記加熱ステップは、前記接合形タービンロータの構成材料の変態点を超える温度において行われることを特徴とする請求項1に記載の接合形タービンロータの曲がり修正方法。
【請求項3】
前記変位計測器設定ステップ、前記加熱ステップ、および前記冷却ステップの前に、前記接合形タービンロータを支持する支持ステップをさらに有し、
前記支持ステップにおいては、前記接合形タービンロータは前記凸部を上にして支持されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接合形タービンロータの曲がり修正方法。
【請求項4】
前記冷却ステップの後に、前記曲がり量が所定の範囲内であるか否かを判定する判定ステップを有し、
前記判定ステップにおいて、前記曲がり量が前記所定の範囲内ではないと判定した場合には、前記加熱ステップおよび前記冷却ステップを繰り返し行う、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の接合形タービンロータの曲がり修正方法。
【請求項5】
前記所定の範囲は、前記接合形タービンロータが、最初の前記曲がり量の20%以下であることを特徴とする請求項4に記載の接合形タービンロータの曲がり修正方法。
【請求項6】
前記所定の範囲は、前記接合形タービンロータが、最初の前記曲がり方向の逆方向であることを特徴とする請求項5に記載の接合形タービンロータの曲がり修正方法。
【請求項7】
前記判定ステップにおいて、前記曲がり量が前記所定の範囲内であるとは判定された場合に、
前記判定ステップの後に、前記凸部を再び加熱する再加熱ステップと、
前記再加熱ステップの後に、前記接合部を再度冷却する再冷却ステップと、
をさらに有することを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれか一項に記載の接合形タービンロータの曲がり修正方法。
【請求項8】
前記再加熱ステップは、前記接合形タービンロータの構成材料の変態点を超えない温度において行われることを特徴とする請求項7に記載の接合形タービンロータの曲がり修正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、接合形タービンロータの曲がり修正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タービンロータの製造コストの低減、およびカップリングレスによるコンパクト化の観点から、たとえば溶接などにより接合された接合形タービンロータが採用されている。
【0003】
正常な状態を逸脱する運転条件を含む運用、経年的な使用などの結果、溶接形タービンロータの曲がりが発生するリスクがある。
【0004】
一般に、タービンロータに曲がりが生じた場合の対策としては、ジャーナル修正加工、すなわち軸受との取り合い部の修正加工、あるいは、タービンロータの重量を局所的に調整するバランスウェイトの追設などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-204082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
たとえば、材料の異なる素材が溶接により接合された接合形タービンロータの場合、溶接部は、概ね合金元素が均一に分布しているが、一部で合金元素に偏りがある場合もあり、経年的に曲がり量が大きくなる可能性がある。タービンロータに曲がりが生じた場合に、上述のように、ジャーナル修正加工あるいはバランスウェイトの追設など、いくつかの対策はあるものの、これら従来の対策では対応しきれない可能性があり、従来の方法では、対応できる範囲に限界がある。
【0007】
そこで、本発明の実施形態は、接合形タービンロータの接合部に曲がりが発生した場合に、これを修正する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本実施形態に係る接合形タービンロータの曲がり修正方法は、接合形タービンロータの袋状中空部を形成する環状部分を有する接合部における曲がりの修正方法であって、前記曲がりの凸部の変位または前記接合形タービンロータの周方向における前記凸部と反対側の表面の変位を測定する変位計測器を設定する変位計測器設定ステップと、前記変位計測器設定ステップの後に前記環状部分の前記凸部を加熱する加熱ステップと、前記加熱ステップの後に、前記接合部を冷却する冷却ステップと、を有することを特徴とする。

【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】接合形タービンロータの構成を示す縦断面図である。
図2】接合形タービンロータの接合部の近傍を示す縦部分断面図である。
図3】実施形態に係る接合形タービンロータの曲がり修正方法の手順を示すフロー図である。
図4】実施形態に係る接合形タービンロータの曲がり修正方法の対象とする接合形タービンロータの最初の曲がりの状態を示す概念図である。
図5】実施形態に係る接合形タービンロータの曲がり修正方法のステップS01での状態を示す接合形タービンロータの概念図である。
図6】実施形態に係る接合形タービンロータの曲がり修正方法のステップS02での状態を示す接合形タービンロータの詳細な部分側面図である。
図7】実施形態に係る接合形タービンロータの曲がり修正方法のステップS03での加熱箇所を示す接合形タービンロータの概念図である。
図8】実施形態に係る接合形タービンロータの曲がり修正方法における局所加熱箇所を示す接合形タービンロータの部分平面図である。
図9】実施形態に係る接合形タービンロータの曲がり修正方法のステップS04での状態を示す接合形タービンロータの概念図である。
図10】実施形態に係る接合形タービンロータの曲がり修正方法のステップS05での状態を示す接合形タービンロータの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る接合形タービンロータの曲がり修正方法について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、接合形タービンロータ10の構成を示す縦断面図である。また、図2は、接合形タービンロータ10の接合部13の近傍を示す縦部分断面図である。
【0012】
接合形タービンロータ10は、複数のロータが軸方向に接合されたタービンロータを言うものとする。具体的構造では、図2に示す場合は、第1ロータ10aと第2ロータ10bが、第1ロータ環状部10cと第2ロータ環状部10dとの突き合わせ部分において接合されて、この間に接合部13が形成されている。接合部13が、たとえば溶接における溶け込み部である。
【0013】
ここで、接合は、たとえば、溶接、圧接などによるが、その他の方式によってもよい。
【0014】
第1ロータ10aと第2ロータ10bの材質は、互いに異なる材料でもよい。あるいは、同じ材料でもよい。
【0015】
たとえば、高中圧タービンのような高温側においては、クリープ現象を考慮して高温クリープ強度の確保が重要である。一方、低圧タービンにおいては、動翼が長くなり遠心力が大きくなることから引張強度と靭性の確保が重要である。したがって、たとえば、クロム・モリブデン・バナジウム鋼であっても、低合金鋼から、たとえば12Cr鋼などの高クロム材まで、多種の材料が用いられる。あるいは、高強度材として、3.5NiCrMoV鋼のように高い引張強度と靭性を確保するためにニッケル等が添加される。
【0016】
このように、第1ロータ10aと第2ロータ10bのそれぞれを異なる材料で製作した後に、接合した場合でもよい。あるいは、製造設備、加工工程の要件を緩和する観点から、同一の材料であっても、それぞれを製作した後に接合する場合であってもよい。
【0017】
第1ロータ10aおよび第2ロータ10bの接合によって、接合形タービンロータ10は、袋状中空部14が形成された袋状構造となっている。すなわち、第1ロータ10aの環状の第1ロータ環状部10cと、第2ロータ10bの環状の第2ロータ環状部10dとの突き合わせての接合によることから、接合形タービンロータ10の接合部13は、袋状中空部14を形成する環状部分により形成されている。
【0018】
第1ロータ10aには、中心軸に沿って袋状中空部14から第1端部12aまで貫通する中心孔15が形成されており、袋状中空部14は、中心孔15を介して、外部に開放されている。
【0019】
なお、接合形タービンロータ10を用いるタービンは、たとえば、蒸気タービン、ガスタービンであるが、その他のタービンであってもよい。
【0020】
上述のような接合形タービンロータを用いる場合、正常な状態を逸脱する運転条件を含む運用、経年的な使用などの結果、溶接形タービンロータの曲がりが発生するリスクがある。本実施形態に係る接合形タービンロータの曲がり修正方法は、このような課題を解決しようとするものである。
【0021】
図3は、実施形態に係る接合形タービンロータの曲がり修正方法の手順を示すフロー図である。以下、図3に示す手順に従って、順次、説明する。
【0022】
図4は、実施形態に係る接合形タービンロータの曲がり修正方法の対象とする接合形タービンロータ10の最初の曲がりの状態を示す概念図である。図4は、最大曲がり方向、すなわち凸部側が、図中の上方である場合を示している。
【0023】
ここで、接合形タービンロータ10の接合部13における中心軸の、曲がりのない状態における中心軸(以下、直軸と呼ぶ)からの変位あるいはズレを、曲がり量dと呼ぶこととする。図4に示す状態は、曲がり量d0の状態であるとする。
【0024】
本実施形態による接合形タービンロータの曲がり修正方法としては、まず、対象とする接合形ロータシャフト10を支持する(ステップS01)。
【0025】
図5は、実施形態に係る接合形タービンロータの曲がり修正方法のステップS01での状態を示す接合形タービンロータ10の概念図である。
【0026】
接合形タービンロータ10は、回転子鉄心を挟んだ軸方向の両側で支持する。支持する箇所は、たとえば、当該接合形タービンロータ10を用いたタービンの組み立て状態において軸受により支持される被支持部18a、18bで、それぞれ、軸受を代替する支持部21a、21bにより行う。
【0027】
ここで、支持された状態においては、接合部13の凸部13aの方向は、上側、下側、あるいは横方向を特に問わない。ただし、凸部13aを下側に向けて接合形タービンロータ10を設置した場合に、後述する加熱段階で、凸部13a側への加熱の影響が上方の部分に及ぶ、あるいは周方向の熱的な影響範囲のアンバランスが発生するなどの懸念がある場合には、図5に示すように、接合部13の凸部13aを上方にして支持することが好ましい。
【0028】
次に、接合部13の変位測定用の変位測定器31を設定する(ステップS02)。
【0029】
図6は、実施形態に係る接合形タービンロータの曲がり修正方法のステップS02での状態を示す接合形タービンロータ10の詳細な部分側面図である。
【0030】
変位の測定箇所は、周方向に凸部13aの側とは反対の部分、すなわち周方向に180度ずれた部分すなわち、凹部13b側の最も変位の大きな箇所、あるいは凸部13aの側のいずれかである。ただし、凸部13aの側を測定する場合は、加熱中は測定できないなどの制約があることから、図6に示すように、凹部13bを測定することが好ましい。
【0031】
ここで、変位測定器31は、図6では、ダイアルゲージ型を例にとって示しているがこれに限定されない。たとえば、ひずみゲージ型の変位測定器でもよいし、あるいは、レーザ変位計でもよい。最初の曲がり量を把握しておくことにより、変位測定器13により、後述する加熱あるいは冷却等の各過程において、変位を測定することにより、それぞれの曲がり量を把握することができる。
【0032】
次に、凸部の局所加熱箇所41(図8)を加熱する(ステップS03)。
【0033】
図7は、実施形態に係る接合形タービンロータ曲がり修正方法における加熱箇所を示す接合形タービンロータ10の概念図である。また、図8は、実施形態に係る接合形タービンロータ10の曲がり修正方法における局所加熱箇所41を示す接合形タービンロータの部分平面図である。すなわち、図8は、凸部13aが上向きの場合において、上側から凸部13aを見た図である。
【0034】
ここで、これまで凸部13aと呼んでいる部分は、図8に示すように、接合部13を挟む第1ロータ環状部10cおよび第2ロータ環状部10dを含めた領域における凸部側の部分を言うものとする。すなわち、凸部13aは、周方向には、最も凸状となっている部分を中心に周方向に幅を有する部分であり、軸中心から見て周方向の円周角がたとえば30度程度の範囲でもよい。
【0035】
局所加熱箇所41は、凸部13aにおいて、接合部13あるいは、接合部13そのものではなく、第1ロータ環状部10cあるいは第2ロータ環状部10d内の箇所を一つ選定する。図8は、後述するように複数回の加熱を実施した場合に順次、加熱箇所を変更することから、これらの全ての箇所の例を示している。
【0036】
局所加熱の方法は、バーナによるスポットヒーティングや、高周波誘導加熱、また溶接アークによる加熱を用いることができる。本ステップS03においては、局所加熱により、加熱対象部分の温度を、第1ロータ10aおよび第2ロータ10bの変態点を超える温度まで上昇させる。
【0037】
次に、加熱により到達した変態点を超える温度で所定時間保持する(ステップS04)。
【0038】
一般に、局所加熱した領域は硬化し易く、延性低下が懸念されるため、凸部13aに塑性変形を生ずる結果が得られれば、材料への影響を最小とする温度および保持時間とすることが好ましい。
【0039】
このような局所加熱は、熱容量の小さな第1ロータ環状部10cまたは第2ロータ環状部10dを加熱することから、小さな入熱で修正効果を確保することができ、3.5NiCrMoV鋼などの割れ易いタービンロータ材質に対しても、曲がり直し可能となる。
【0040】
なお、ステップS03、S04に関しては、3.5NiCrMoV鋼などの割れ易いタービンロータ材質の場合には注意を要する。このような材質の場合には、第1ロータ10aと第2ロータ10bとの接合に際して割れ感受性の低めな溶接材料を採用し母材の化学組成を希釈させる方式を採用し、割れ感受性が低い化学組成である接合部13の方を局所加熱することにより、割れの発生を回避してもよい。
【0041】
図9は、実施形態に係る接合形タービンロータの曲がり修正方法のステップS04での状態を示す接合形タービンロータの概念図である。
【0042】
凸部13aを加熱することにより、当初の曲がり量d0から、これより大きな値である曲がり量d1の状態となる。このような変形に際しては、加熱される凸部13a側は、塑性変形領域までに至り、一方、周方向に反対側の凹部13bは、弾性領域内の変形に留まる。
【0043】
次に、接合形ロータシャフト10を冷却する(ステップS05)。ここで、冷却は、自然放熱による冷却、あるいは、空冷等による。この場合、たとえば、保温材を巻いて冷却温度勾配を緩やかにする。これによって、性状の大きな変化を抑制することができる。
【0044】
図10は、実施形態に係る接合形タービンロータの曲がり修正方法のステップS05での状態を示す接合形タービンロータ10の概念図である。以上のような変態点を超える温度までの加熱とその後の冷却により、接合形タービンロータ10の接合部13における曲がり量d2は、当初の曲がり量d0に比べて減少した値となる。図10では、最終的に、曲がりの方向が逆転するに至った場合を示している。
【0045】
このように、曲がり量dが減少するのは、以下のような理由による。
【0046】
前述のように、加熱される凸部13a側は、ステップS03における加熱過程では非弾性領域に至る変形をするが、その後のステップS05における冷却過程では、弾性的に変形する。すなわち、ヒステリシスを描くように変形する。
【0047】
一方、非加熱側である凹部13b側は、ステップS03における加熱過程でも、その後のステップS05における冷却過程でも、弾性的に変形する。
【0048】
以上のような、変形過程と、凸部13a側と凹部13b側とが、接合形タービンロータ10内において一体で結合しているという条件とから、冷却後の釣り合い状態としては、接合型タービンロータ13は、当初とは反対の曲げ方向に変位する。すなわち、直軸状態に近づく。たとえば、複数回、このような操作を行うことにより、最終的には、元々の凹部13b側が、凸部側に変わってくる、すなわち、曲がりが当初とは反対側となる。
【0049】
次に、冷却後の接合形ロータシャフト10の曲がり量d2が所定値以内であるか否かを判定する(ステップS06)。
【0050】
ここで、判定の基準となる所定値としては、たとえば、曲がり量d2の絶対値が、所定の値以下であるという条件を用いてもよい。この際、所定の値としては、たとえば、接合形ロータシャフト10の振動等に影響しない程度の範囲とする値を用いてもよい。
【0051】
あるいは、判定の基準となる所定値としては、たとえば、曲がり量d2の絶対値が、初期の曲がり量d0の所定の割合以下であるという条件を用いてもよい。この場合、所定の割合として、たとえば、20%等の値を用いてもよい。
【0052】
さらに、当該曲がり修正方法を適用した以降の、同様の曲がりの可能性を考慮して、図10に示すように、曲がり量dが、初期の曲がり量d0とは符号が逆転するという条件を付してもよい。
【0053】
曲がり量が所定値以内であると判定されなかった場合(ステップS06 NO)には、ステップS03に戻り、凸部13aにおいて他の位置の局所加熱箇所41を選定して、加熱を行い、また、その後のステップS04ないしステップS06を繰り返す。
【0054】
曲がり量が所定値以内であると判定された場合(ステップS06 YES)には、次に、変態点以下の温度に上昇し所定時間保持する(ステップS07)。すなわち、接合型タービンロータ13の一部あるいは全体を再加熱し、応力除去のための焼きなましを行う。温度は、第1ロータ10aおよび第2ロータ10bの変態点に至らない温度とする。保持時間は、通常の焼きなまし時の条件でよい。
【0055】
次に、接合形ロータシャフト10を冷却する(ステップS08)。このステップにおいても、ステップS05と同様に急冷を避けて行う。
【0056】
以上、説明したように、本実施形態による接合形タービンロータの曲がり修正方法においては、接合形タービンロータ10の接合部に曲がりが発生した場合に、接合部13の凸部13aを局所加熱することにより曲がり修正を行うことができる。この際、局所加熱は、熱容量の小さな第1ロータ環状部10cまたは第2ロータ環状部10dを加熱することから、小さな入熱で修正効果を確保することができる。
【0057】
このため、3.5NiCrMoV鋼などの割れ易いタービンロータ材質に対しても、曲がり直し可能となる。
【0058】
以上のように、本実施形態による接合形タービンロータの曲がり修正方法によって、効果的な曲がり修正を行うことができる。
【0059】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0060】
また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。また、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0061】
実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
10…接合形タービンロータ、10a…第1ロータ、10b…第2ロータ、10c…第1ロータ環状部、10d…第2ロータ環状部、11…タービン翼植込み部、12a…第1端部、12b…第2端部、13…接合部、13a…凸部、13b…凹部、14…袋状中空部、15…中心孔、18a、18b…被支持部、21a、21b…支持部、31…変位測定器、41…局所加熱箇所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10