(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】回転電機の回転子
(51)【国際特許分類】
H02K 1/32 20060101AFI20230703BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
H02K1/32 B
H02K9/19 B
(21)【出願番号】P 2020046148
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】原川 崇
(72)【発明者】
【氏名】久保 伸二
(72)【発明者】
【氏名】加幡 安雄
(72)【発明者】
【氏名】谷山 賀浩
(72)【発明者】
【氏名】淵本 遼
(72)【発明者】
【氏名】安藤 耕治
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-112006(JP,A)
【文献】特公昭44-003281(JP,B1)
【文献】特開2001-016813(JP,A)
【文献】実開平02-139450(JP,U)
【文献】特開2010-029060(JP,A)
【文献】特開2018-191386(JP,A)
【文献】特開平10-285853(JP,A)
【文献】特開平08-317580(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02403110(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第04011450(DE,A1)
【文献】西独国特許出願公開第02943608(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/32
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子コイルを収納するコイルスロットと、鉄心端部から冷却ガスを導入し鉄心中央部へ向けて回転子軸方向に通風するサブスロットと、前記回転子コイルに設けられ前記サブスロットを流れる冷却ガスを導入し回転子外径側へ通風する複数の回転子軸方向に配列されるコイル通風路とを備え、冷却ガスが前記サブスロットに流入し更に個々のコイル通風路に分岐して流入するように構成された回転電機の回転子において、
前記複数のコイル通風路のうち、少なくとも1つのコイル通風路は、
当該コイル通風路の冷却ガス入口部の鉄心中央部側にある第1の壁面と、
当該コイル通風路の内部の鉄心中央部側にあり、
前記第1の壁面に対して前記サブスロットを流れる冷却ガスの流れ方向と反対の側であって、前記第1の壁面よりも回転子外径側に位置し且つ鉄心端部側に位置する第2の壁面と、
前記第1の壁面と前記第2の壁面とを繋ぎ、回転子径方向に対して垂直な面を有する第3の壁面とを備え
、
前記サブスロットからコイル通風路内の前記第1の壁面側に流入する冷却ガスが前記第3の壁面に衝突して前記サブスロットを流れる冷却ガスの流れ方向と反対の方向へ向かうように構成されている、
回転電機の回転子。
【請求項2】
前記少なくとも1つのコイル通風路は、
前記サブスロットを流れる冷却ガスの一部を、当該コイル通風路の冷却ガス入口部において、第1の構造物により分断される複数の流路に流入させ、これらの流路を通った冷却ガスを当該コイル通風路内で合流させる構造を有する、
請求項1に記載の回転電機の回転子。
【請求項3】
前記少なくとも1つのコイル通風路は、
当該コイル通風路の冷却ガス入口部の鉄心端部側にある第4の壁面と、
当該コイル通風路の内部の鉄心端部側にあり、前記第4の壁面よりも回転子外径側に位置し且つ鉄心中央部側に位置する第5の壁面と、
前記第4の壁面と前記第5の壁面とを繋ぎ、回転子径方向に対して垂直な面を有する第6の壁面とを備えている、
請求項1又は2に記載の回転電機の回転子。
【請求項4】
前記複数の流路は、回転子軸方向に配列するように配置されている、
請求項2に記載の回転電機の回転子。
【請求項5】
前記複数の流路は、回転子回転方向に配列するように配置されている、
請求項2に記載の回転電機の回転子。
【請求項6】
前記少なくとも1つのコイル通風路は、
当該コイル通風路の内部の鉄心中央部側にある前記第2の壁面が、
当該コイル通風路の冷却ガス入口部の鉄心端部側にある壁面よりも、鉄心端部側に位置する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回転電機の回転子。
【請求項7】
回転子コイルを収納するコイルスロットと、鉄心端部から冷却ガスを導入し鉄心中央部へ向けて回転子軸方向に通風するサブスロットと、前記回転子コイルに設けられ前記サブスロットを流れる冷却ガスを導入し回転子外径側へ通風する複数の回転子軸方向に配列されるコイル通風路とを備え、冷却ガスが前記サブスロットに流入し更に個々のコイル通風路に分岐して流入するように構成された回転電機の回転子において、
前記複数のコイル通風路のうち、少なくとも1つのコイル通風路は、
当該コイル通風路の冷却ガス入口部の鉄心端部側にある第4の壁面と、
当該コイル通風路の内部の鉄心端部側にあり、前記第4の壁面よりも回転子外径側に位置し且つ鉄心中央部側に位置する第5の壁面と、
前記第4の壁面と前記第5の壁面とを繋ぎ、回転子径方向に対して垂直な面を有する第6の壁面とを備え、
当該コイル通風路の冷却ガス入口部において、第1の構造物により分断される複数の
回転子軸方向に配列される流路を通じて冷却ガスを導入し、導入した冷却ガスを当該コイル通風路内で合流させる構造を有し、
当該コイル通風路の内部の鉄心端部側にある前記第
5の壁面が、当該コイル通風路の冷却ガス入口部の鉄心中央部側にある壁面よりも、鉄心中央部側に位置する、
回転電機の回転子。
【請求項8】
前記複数の流路は、流入する冷却ガスが前記第6の壁面に衝突するように配置されるとともに、回転子軸方向に配列するように配置されている、
請求項7に記載の回転電機の回転子。
【請求項9】
前記少なくとも1つのコイル通風路は、回転子回転方向に配列するように配置されている複数の流路を含む、
請求項7に記載の回転電機の回転子。
【請求項10】
前記少なくとも1つのコイル通風路は、
前記第1の構造物により分断される複数の流路を通って合流した冷却ガスを、さらに当該コイル通風路の内部において第2の構造物により分断される複数の流路に流入させ、これらの流路を通った冷却ガスを当該コイル通風路内で合流させる構造を有する、
請求項2に記載の回転電機の回転子。
【請求項11】
回転子コイルを収納するコイルスロットと、鉄心端部から冷却ガスを導入し鉄心中央部へ向けて回転子軸方向に通風するサブスロットと、前記回転子コイルに設けられ前記サブスロットを流れる冷却ガスを導入し回転子外径側へ通風する複数の回転子軸方向に配列されるコイル通風路とを備え、冷却ガスが前記サブスロットに流入し更に個々のコイル通風路に分岐して流入するように構成された回転電機の回転子において、
前記複数のコイル通風路のうち、少なくとも1つのコイル通風路は、
当該コイル通風路の冷却ガス入口部の鉄心中央部側にある第1の壁面と、
当該コイル通風路の内部の鉄心中央部側にあり、前記第1の壁面よりも回転子外径側に位置し且つ鉄心端部側に位置する第2の壁面と、
前記第1の壁面と前記第2の壁面とを繋ぎ、回転子径方向に対して垂直な面を有する第3の壁面とを備えており、
前記少なくとも1つのコイル通風路は、
前記サブスロットを流れる冷却ガスの一部を、当該コイル通風路の冷却ガス入口部において、第1の構造物により分断される複数の流路に流入させ、これらの流路を通った冷却ガスを当該コイル通風路内で合流させる構造を有し、
前記複数のコイル通風路の各々において前記第1の構造物により分断されている複数の流路の数は、鉄心端部から鉄心中央部へ向かうにつれ減少する、
回転電機の回転子。
【請求項12】
回転子コイルを収納するコイルスロットと、鉄心端部から冷却ガスを導入し鉄心中央部へ向けて回転子軸方向に通風するサブスロットと、前記回転子コイルに設けられ前記サブスロットを流れる冷却ガスを導入し回転子外径側へ通風する複数の回転子軸方向に配列されるコイル通風路とを備え、冷却ガスが前記サブスロットに流入し更に個々のコイル通風路に分岐して流入するように構成された回転電機の回転子において、
前記複数のコイル通風路のうち、少なくとも1つのコイル通風路は、
当該コイル通風路の冷却ガス入口部の鉄心中央部側にある第1の壁面と、
当該コイル通風路の内部の鉄心中央部側にあり、前記第1の壁面よりも回転子外径側に位置し且つ鉄心端部側に位置する第2の壁面と、
前記第1の壁面と前記第2の壁面とを繋ぎ、回転子径方向に対して垂直な面を有する第3の壁面とを備えており、
前記少なくとも1つのコイル通風路は、
当該コイル通風路の冷却ガス入口部の鉄心端部側にある第4の壁面と、
当該コイル通風路の内部の鉄心端部側にあり、前記第4の壁面よりも回転子外径側に位置し且つ鉄心中央部側に位置する第5の壁面と、
前記第4の壁面と前記第5の壁面とを繋ぎ、回転子径方向に対して垂直な面を有する第6の壁面とを備えており、
前記複数のコイル通風路の各々は、
鉄心中央部側の壁面が、前記第1乃至第3の壁面と前記第4乃至第6の壁面の少なくとも一方を備えており、
前記複数のコイル通風路の各々は、前記第3の壁面の面積が、鉄心端部から鉄心中央部へ向かうにつれ小さくなる、もしくは、前記第6の壁面の面積が、鉄心端部から鉄心中央部へ向かうにつれ大きくなる、
回転電機の回転子。
【請求項13】
回転子コイルを収納するコイルスロットと、鉄心端部から冷却ガスを導入し鉄心中央部へ向けて回転子軸方向に通風するサブスロットと、前記回転子コイルに設けられ前記サブスロットを流れる冷却ガスを導入し回転子外径側へ通風する複数の回転子軸方向に配列されるコイル通風路とを備え、冷却ガスが前記サブスロットに流入し更に個々のコイル通風路に分岐して流入するように構成された回転電機の回転子において、
前記複数のコイル通風路のうち、少なくとも1つのコイル通風路は、
冷却ガスが流れる方向を、回転子外径方向から回転子周方向へ変え、さらに回転子軸方向へ変える第1の部分と、
冷却ガスが流れる方向を、回転子軸方向から回転子内径方向へ変え、再び回転子軸方向へ戻す第2の部分と、
冷却ガスが流れる方向を、回転子軸方向から回転子周方向へ変え、さらに回転子外径方向へ変える第3の部分と
のうちの少なくとも1つを含む、
回転電機の回転子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機の回転子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な回転電機、例えばタービン発電機の回転子の構造の例を、
図24~
図26に示す。
【0003】
図24は、回転子鉄心を回転子軸方向に見たときの断面形状の例を示す断面図であり、
図25は、
図24中に示されるコイルスロット周辺を拡大して示す断面図であり、
図26は、回転子(片側の鉄心端部から鉄心中央付近までの範囲)を回転子回転方向に見たときの断面形状の例を示す断面図である。
【0004】
図24に示されるように、回転子鉄心1には、周方向に複数のコイルスロット2が所定の間隔で配置され、各コイルスロット2の内周側には、サブスロット3が設けられている。各コイルスロット2には回転子コイル4が収納されている。
【0005】
各回転子コイル4は、
図25に示されるように、複数の界磁導体を積層して構成されている。当該回転子コイル4は、絶縁材5により回転子鉄心1や回転子楔6と絶縁され、回転子楔6をコイルスロット開口端部(図示せず)に挿入することで固定される。具体的には、
図25に示されるように絶縁材5が、回転子鉄心1と回転子コイル4との間、回転子楔6と回転子コイル4との間、更には
図26に示されるように保持環10と回転子コイル4との間に挿入されることで、回転子コイル4の絶縁性が確保されている。また、
図25には図示されていないが、個々の回転子コイル4の間にも絶縁材が挿入されている。
【0006】
各サブスロット3は、
図25および
図26に示されるように、回転子鉄心1に施され、各コイルスロット2の内径側において、回転子軸方向(
図26中のA方向)に延在する冷却ガス流路を構成している。各サブスロット3の回転子外径側(
図26中のR方向側)には、当該サブスロット3と連通するように回転子径方向に延在する複数のコイル通風路7(回転子コイル4の通風流路)が回転子軸方向に所定の間隔で設けられている。各コイル通風路7の回転子外径側には、絶縁材5および回転子楔6を回転子外径方向に貫通する通風路が設けられている。
【0007】
冷却ガスFは、回転子の回転による遠心ファン効果により、
図26に示されるように鉄心端11よりサブスロット3に導入され、回転子鉄心1の軸方向中央部に向かって回転子軸方向に流れ、個々のコイル通風路7に分岐して流入する。各コイル通風路7を流れる冷却ガスFは、回転子コイル4で発生した熱を冷却・吸収した後、回転子楔6の通風路より排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
回転子コイルに対する冷却性能を向上させるために、様々な技術が提案されているが、冷却性能を十分に向上させることは難しく、回転子コイルを効果的に冷却することができなかった。
【0010】
発明が解決しようとする課題は、回転子コイルを効果的に冷却することができる回転電機の回転子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態による回転電機の回転子は、回転子コイルを収納するコイルスロットと、鉄心端部から冷却ガスを導入し鉄心中央部へ向けて回転子軸方向に通風するサブスロットと、前記回転子コイルに設けられ前記サブスロットを流れる冷却ガスを導入し回転子外径側へ通風する複数の回転子軸方向に配列されるコイル通風路とを備え、冷却ガスが前記サブスロットに流入し更に個々のコイル通風路に分岐して流入するように構成された回転電機の回転子において、前記複数のコイル通風路のうち、少なくとも1つのコイル通風路は、当該コイル通風路の冷却ガス入口部の鉄心中央部側にある第1の壁面と、当該コイル通風路の内部の鉄心中央部側にあり、前記第1の壁面よりも回転子外径側に位置し且つ鉄心端部側に位置する第2の壁面と、前記第1の壁面と前記第2の壁面とを繋ぎ、回転子径方向に対して垂直な面を有する第3の壁面とを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回転子コイルを効果的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態に係る回転電機の回転子に適用されるコイル通風路を含む構造を回転子回転方向に見たときの断面形状の例を示す断面図。
【
図2】第2の実施形態に係る回転電機の回転子に適用されるコイル通風路を含む構造を回転子回転方向に見たときの断面形状の例を示す断面図。
【
図6】
図2中に示されるA-A’断面、B-B’断面のそれぞれの断面形状(回転子軸方向に見たときの断面形状)の例、C-C’断面、D-D’断面、E-E’断面のそれぞれの断面形状(回転子径方向に見たときの断面形状)の例を示す断面図。
【
図7】第3の実施形態に係る回転電機の回転子に適用されるコイル通風路を含む構造を回転子回転方向に見たときの断面形状の例を示す断面図。
【
図10】
図9中に示されるF-F’断面、G-G’断面、H-H’断面のそれぞれの断面形状(回転子軸方向に見たときの断面形状)の例、I-I’断面、J-J’断面のそれぞれの断面形状(回転子径方向に見たときの断面形状)の例を示す断面図。
【
図11】
図8に示される構造の変形例を示す断面図。
【
図12】
図8に示される構造の変形例を示す断面図。
【
図13】第4の実施形態に係る回転電機の回転子に適用されるコイル通風路を含む構造を回転子軸方向に見たときの断面形状の例を示す断面図(
図9に示される構造の変形例(H-H’断面の断面形状の変形例)を示す断面図)。
【
図18】第5の実施形態に係る回転電機の回転子に適用される複数のコイル通風路を含む構造を回転子回転方向に見たときの断面形状の例を示す断面図(
図1及び
図2に示される構造を応用した変形例を示す断面図)。
【
図19】第6の実施形態に係る回転電機の回転子に適用される複数のコイル通風路を含む構造を回転子回転方向に見たときの断面形状の例を示す断面図(
図1乃至
図3等に示される構造を応用した変形例を示す断面図)。
【
図21】第7の実施形態に係る回転電機の回転子に適用されるコイル通風路を含む構造を回転子回転方向に見たときの断面形状の例を示す断面図、および、コイル通風路を回転子軸方向に透過して見たときの形状を示す概念図である。
【
図22】
図21中に示されるa-a’断面、b-b’断面、c-c’断面のそれぞれの断面形状(回転子軸方向に見たときの断面形状)の例を示す断面図。
【
図23】
図21中に示されるd-d’断面、e-e’断面のそれぞれの断面形状(回転子径方向に見たときの断面形状)の例を示す断面図。
【
図24】回転子鉄心を回転子軸方向に見たときの断面形状の例を示す断面図。
【
図25】
図24中に示されるコイルスロット周辺を拡大して示す断面図。
【
図26】回転子(片側の鉄心端部から鉄心中央付近までの範囲)を回転子回転方向に見たときの断面形状の例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
最初に、
図1を参照して、第1の実施形態について説明する。ここでは、前述した
図24乃至
図26も適宜参照する。
【0016】
図1は、第1の実施形態に係る回転電機の回転子に適用されるコイル通風路を含む構造を回転子回転方向に見たときの断面形状の例を示す断面図である。なお、この
図1では、
図24乃至
図26と共通する要素には同一の符号を付している。
【0017】
図24でも示したように、回転子鉄心1には、周方向に複数のコイルスロット2が所定の間隔で配置され、各コイルスロット2の内周側には、サブスロット3が設けられている。各コイルスロット2には回転子コイル4が収納されている。
【0018】
また、各サブスロット3は、
図25及び
図26でも示したように、回転子鉄心1に施され、各コイルスロット2の内径側において、回転子軸方向に延在する冷却ガス流路を構成している。各サブスロット3の回転子外径側には、当該サブスロット3と連通するように回転子径方向に延在する複数のコイル通風路7が回転子軸方向に所定の間隔で設けられている。各コイル通風路7の回転子外径側には、絶縁材5および回転子楔6を回転子外径方向に貫通する通風路が設けられている。
【0019】
冷却ガスFは、回転子の回転による遠心ファン効果により、
図26に示されるように鉄心端11よりサブスロット3に導入され、回転子鉄心1の軸方向中央部に向かって回転子軸方向に流れ、個々のコイル通風路7に分岐して流入する。個々のコイル通風路7においては、
図1に示されるように、サブスロット3から冷却ガスFがコイル通風路7に流入し、当該コイル通風路7を冷却しながら通過する。
【0020】
第1の実施形態に係る回転電機の回転子の基本的な構造は、
図24乃至
図26に示したものと同様であるが、回転子コイル4におけるコイル通風路7の形状などが異なる。
【0021】
本実施形態では、複数の回転子軸方向に配列されるコイル通風路7のうち、少なくとも1つのコイル通風路7は、当該コイル通風路7の冷却ガス入口部の鉄心中央部側にある壁面4a-1(第1の壁面)と、当該コイル通風路7の内部の鉄心中央部側にあり、壁面4a-1よりも回転子外径側に位置し且つ鉄心端部側に位置する壁面4a-2(第2の壁面)と、壁面4a-1と壁面4a-2とを繋ぎ、回転子径方向に対して垂直な面を有する壁面4a(第3の壁面)とを備えている。
【0022】
このように壁面4a-1と壁面4a-2との間に壁面4aが存在するため、壁面4a-1と壁面4a-2との間に段差が生じており、コイル通風路7の流路幅(もしくは流路面積)は当該コイル通風路7の入り口部よりも内部の方が小さくなっている。
【0023】
一方、コイル通風路7の鉄心端部側には、回転子径方向に対して垂直な面を有する壁面4aのようなものは無く、当該コイル通風路7の冷却ガス入口部から内部まで回転子径方向に連続する1つの面を構成する壁面4-1がある。但し、この例に限定されるものではない。
【0024】
なお、壁面4aは、積層された回転子コイル4の層毎の回転子軸方向の長さを適宜変えることにより形成されてもよいし、一つの回転子コイル4の層を所望の形状に加工することにより形成されてもよい。
【0025】
また、壁面4aの回転子径方向の高さは、異なるコイル通風路7間で同じになるように形成される必要はなく、また、1つのコイル通風路7内で均一に形成される必要はない。適宜、高さの異なる部分が複数存在するように形成されてもよい。壁面4aの回転子軸方向の長さについても同じことが言える。
【0026】
また、コイル通風路7内において、回転子径方向に対して垂直な面を有する壁面4aを、鉄心中央部側に設ける代わりに、鉄心端部側に設けることも考えられるが、特に鉄心端に近いコイル通風路7においては冷却ガスFが鉄心中央部側に偏流するため、その流れを遮断する観点から、壁面4aは
図1の例のように鉄心中央部側に形成されることが好ましい。
【0027】
このような構成において、サブスロット3から冷却ガスFがコイル通風路7の冷却ガス入口部に流入すると、その冷却ガスFの一部が壁面4aに衝突し、その冷却ガスFの流れ方向が壁面4aにより強制的に変えられる。壁面4aにより流れ方向が変えられた冷却ガスFは、コイル通風路7内の他の冷却ガスFとさらに衝突するため、乱流の発生が促進される。乱流の発生が促進された冷却ガスFはコイル通風路7の内部にて回転子コイル4を冷却しながら回転子外径方向へ流れる。このとき、冷却ガスの温度は、移流によって均一な状態に近づき、乱流作用が無いときよりもコイル通風路の壁面近傍における冷却ガスFの温度が下がる。冷媒による個体からの除熱能力は、界面近傍の温度差に比例するため、向上することになる。
【0028】
第1の実施形態によれば、コイル通風路7内の冷却ガスFの乱流促進効果を、特に鉄心端部に近いコイル通風路7において得ることができ、冷却能力を向上させることができる。
【0029】
(第2の実施形態)
次に、
図2乃至
図6を参照して、第2の実施形態について説明する。以下では、第1の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0030】
図2は、第2の実施形態に係る回転電機の回転子に適用されるコイル通風路を含む構造を回転子回転方向に見たときの断面形状の例を示す断面図である。なお、この
図2では、
図1と共通する要素には同一の符号を付している。
【0031】
本実施形態では、複数の回転子軸方向に配列されるコイル通風路7のうち、少なくとも1つのコイル通風路7は、当該コイル通風路7の冷却ガス入口部が、構造物8(第1の構造物)によって複数に分断される構造になっている。具体的には、少なくとも1つのコイル通風路7は、サブスロット3を流れる冷却ガスFの一部を、当該コイル通風路7の冷却ガス入口部において、壁面4-1と壁面4a-1との間にある構造物8によって分断される複数の流路(本例では、2つの流路)に流入させ、これらの流路を通った冷却ガスFを当該コイル通風路7内で合流させる構造を有する。
【0032】
なお、構造物8が分断する流路の数は2つでもよいし、3つ以上であってもよい。また、構造物8は、コイル4の一部であってもよいし、コイル4以外の部材であってもよい。また、構造物8の回転子径方向の厚さは、加工性の観点から回転子コイル4の回転子径方向の厚さと一致させてもよいし、冷却性能の観点から回転子コイル4の回転子径方向の厚さと一致させなくてもよい。また、構造物8の形状は、加工性の観点から直角な角を有する単純な形状としてもよいし、冷却性能の観点から鋭角、鈍角、円弧状のいずれの形状としてもよい。
【0033】
このような構成において、サブスロット3から冷却ガスFがコイル通風路7の冷却ガス入口部に流入する際には、構造物8によって分断される複数の流路(鉄心端部側の流路と鉄心中央部側の流路)にそれぞれ冷却ガスFが流入する。鉄心中央部側の流路に流入した冷却ガスFは壁面4aに衝突して流れ方向が変わり、さらに鉄心端部側の流路に流入した冷却ガスFと衝突して合流し、回転子外径側の流路へ向かう。
【0034】
このように冷却ガスFの衝突がより多く生じることから、コイル通風路7内における冷却ガスFの乱流促進効果が一層向上し、コイル4に対する冷却能力が一層向上する。
【0035】
図2の例では、コイル通風路7の鉄心端部側には、回転子径方向に対して垂直な面を有する壁面4aのようなものが無い場合が例示されているが、この例に限定されるものではない。
【0036】
例えば
図3に示されるように、コイル通風路7は、当該コイル通風路7の冷却ガス入口部の鉄心端部側にある壁面4b-1(第4の壁面)と、当該コイル通風路7の内部の鉄心端部側にあり、壁面4b-1よりも回転子外径側に位置し且つ鉄心中央部側に位置する壁面4b-2(第5の壁面)と、壁面4b-1と壁面4b-2とを繋ぎ、回転子径方向に対して垂直な面を有する壁面4b(第6の壁面)とを備えていてもよい。
【0037】
このように構成すれば、冷却ガスFの壁面4bへの衝突による乱流作用も加わることから、コイル通風路7内における冷却ガスFの乱流促進効果が一層向上し、コイル4に対する冷却能力が一層向上する。
【0038】
なお、
図3の例では、壁面4aと壁面4bの回転子径方向の高さが同じである場合が例示されているが、この例に限定されるものではなく、壁面4aと壁面4bの回転子径方向の高さが異なるように構成されてもよい。例えば
図4に示されるように、壁面4bよりも壁面4aの方が、回転子外径方向側に位置するように構成されてもよい。
【0039】
また、
図2乃至
図4の例では、構造物8によって分断される複数の流路が、回転子軸方向に配列するように配置される場合が例示されているが、この例に限定されるものではなく、例えば、回転子回転方向に配列するように配置されてもよい。この場合の具体例を
図5及び
図6を参照して説明する。
【0040】
図5は、
図2に示される構造の変形例を示す断面図である。また、
図6は、
図2中に示されるA-A’断面、B-B’断面のそれぞれの断面形状(回転子軸方向に見たときの断面形状)の例、C-C’断面、D-D’断面、E-E’断面のそれぞれの断面形状(回転子径方向に見たときの断面形状)の例を示す断面図である。
【0041】
図5中に示される構造物8は、
図6のA-A’断面、B-B’断面に示されるように、壁面4a-3と壁面4a-4との間に回転子回転方向に配列される複数の流路(本例では、2つの流路)を形成するように配置される。また、壁面4aの位置よりも回転子外径側にある流路は、
図6のB-B’断面に示されるように、壁面4a-5と壁面4a-6とにより狭められている。
【0042】
コイル通風路7は、サブスロット3を流れる冷却ガスFの一部を、当該コイル通風路7の冷却ガス入口部において、
図6のC-C’断面に示されるように構造物8により分断される複数の流路に流入させ、これらの流路を通った冷却ガスFをD-D’断面に示される流路にて合流させる構造を有する。また、D-D’断面に示される流路よりも回転子外径側には、E-E’断面に示されるように、壁面4aの長さx分だけ回転子軸方向の幅が狭まった流路、即ち、前述した壁面4a-5と壁面4a-6とにより狭められた流路がある。
【0043】
このような構成において、サブスロット3から冷却ガスFがコイル通風路7の冷却ガス入口部に流入する際には、構造物8によって分断される複数の流路にそれぞれ冷却ガスFが流入する。鉄心中央部側の流路に流入した冷却ガスFは壁面4aなどの壁面に衝突し、さらに他の流入した冷却ガスFと衝突して合流し、回転子外径側にある壁面4a-5と壁面4a-6とにより狭められた流路へ向かう。
【0044】
このように構成すれば、冷却ガスFの衝突がより多く生じることから、コイル通風路7内における冷却ガスFの乱流促進効果が一層向上し、コイル4に対する冷却能力が一層向上する。
【0045】
第2の実施形態によれば、構造物8の配置により、コイル通風路7内における冷却ガスFの乱流促進効果を一層向上させることができ、冷却能力を一層向上させることができる。
【0046】
(第3の実施形態)
次に、
図7乃至
図12を参照して、第3の実施形態について説明する。以下では、第2の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0047】
図7は、第3の実施形態に係る回転電機の回転子に適用されるコイル通風路を含む構造を回転子回転方向に見たときの断面形状の例を示す断面図である。なお、この
図7では、
図2と共通する要素には同一の符号を付している。
【0048】
本実施形態では、複数の回転子軸方向に配列されるコイル通風路7のうち、少なくとも1つのコイル通風路7は、当該コイル通風路7の内部の鉄心中央部側にある壁面4a-2が、当該コイル通風路7の冷却ガス入口部の鉄心端部側にある壁面4-2よりも、鉄心端部側に位置する構造を有する。
【0049】
このような構成において、サブスロット3から冷却ガスFがコイル通風路7の冷却ガス入口部に流入する際には、構造物8によって分断される複数の流路(鉄心端部側の流路と鉄心中央部側の流路)にそれぞれ冷却ガスFが流入する。鉄心端部側の流路に流入した冷却ガスFは壁面4aに衝突する。その一方で、鉄心中央部側の流路に流入した冷却ガスFも壁面4aに衝突する。鉄心中央部側の流路に流入して壁面4aに衝突した冷却ガスFは、壁面4aに沿って鉄心端部側へと進み、鉄心端部側の流路に流入した冷却ガスFとさらに衝突して合流する。合流した冷却ガスFは、さらに壁面4aに沿って鉄心端部側へと進み、壁面4-3に衝突し、壁面4-3と壁面4-4との間の流路へ向かう。
【0050】
このように構成すれば、構造物8によって分断される複数の流路にそれぞれ流入した冷却ガスFが、双方とも壁面4aに衝突することから、コイル通風路7内における冷却ガスFの乱流促進効果が一層向上し、コイル4に対する冷却能力が一層向上する。
【0051】
なお、
図7の例では、コイル通風路7内で合流した冷却ガスFが鉄心端部側へ進む場合が例示されているが、この例に限定されるものではなく、例えばコイル通風路7内で合流した冷却ガスFが鉄心中央部側へ進むように構成してもよい。この場合の例を
図8に示す。
【0052】
図8は、
図7に示される構造の変形例を示す断面図である。
【0053】
図8に示されるように、コイル通風路7は、当該コイル通風路7の内部の鉄心端部側にある壁面4b-2が、当該コイル通風路7の冷却ガス入口部の鉄心
中央部側にある壁面4-4よりも、鉄心中央部側に位置する構造を有する。
【0054】
このような構成において、サブスロット3から冷却ガスFがコイル通風路7の冷却ガス入口部に流入する際には、構造物8によって分断される複数の流路(鉄心端部側の流路と鉄心中央部側の流路)にそれぞれ冷却ガスFが流入する。鉄心端部側の流路に流入した冷却ガスFは壁面4bに衝突する。その一方で、鉄心中央部側の流路に流入した冷却ガスFも壁面4bに衝突する。鉄心端部側の流路に流入して壁面4bに衝突した冷却ガスFは、壁面4bに沿って鉄心中央部側へと進み、鉄心端部側の流路に流入した冷却ガスFとさらに衝突して合流する。合流した冷却ガスFは、壁面4bに沿って鉄心中央部側へと進み、壁面4-5に衝突し、壁面4b-2と壁面4-5との間の流路へ向かう。
【0055】
このように、構造物8によって分断される複数の流路にそれぞれ流入した冷却ガスFが、双方とも壁面4bに衝突することから、コイル通風路7内における冷却ガスFの乱流促進効果が一層向上し、コイル4に対する冷却能力が一層向上する。
【0056】
また、
図7に示されるコイル通風路7と
図8に示されるコイル通風路7の両方を回転子に適用してもよい。例えば、回転子回転方向に、
図7に示されるコイル通風路7と
図8に示されるコイル通風路7とが交互に配置される構成としてもよい。その場合、軸方向のコイル温度ばらつきを小さくできるので、コイル4に対する冷却能力を向上させることができる。
【0057】
図7及び
図8の例では、構造物8によって分断される複数の流路が、回転子軸方向に配列するように配置される場合が例示されているが、この例に限定されるものではなく、例えば、回転子回転方向に配列するように配置されてもよい。この場合の具体例を
図9及び
図10を参照して説明する。
【0058】
図9は、
図8に示される構造の変形例を示す断面図である。また、
図10は、
図9中に示されるF-F’断面、G-G’断面、H-H’断面のそれぞれの断面形状(回転子軸方向に見たときの断面形状)の例、I-I’断面、J-J’断面のそれぞれの断面形状(回転子径方向に見たときの断面形状)の例を示す断面図である。
【0059】
図9中に示される構造物8は、
図10のF-F’断面に示されるように、壁面4b-3と壁面4b-4との間に回転子回転方向に配列される複数の流路(本例では、2つの流路)を形成するように配置される。また、構造物8の上側の空間から回転子中央部側へ向かう流路は、G-G’断面に示されるように、壁面4b-5と壁面4b-6とにより狭められており、さらに回転子外径側へと向かう流路も、H-H’断面に示されるように、壁面4b-7と壁面4b-8とにより狭められている。
【0060】
コイル通風路7は、サブスロット3を流れる冷却ガスFの一部を、当該コイル通風路7の冷却ガス入口部において、
図10のI-I’断面に示されるように構造物8により分断される複数の流路に流入させ、これらの流路を通った冷却ガスFをJ-J’断面に示される壁面4b-3、壁面4b-4、壁面4b-1及び壁面4-4により囲まれた流路にて合流させる構造を有する。流路ガスが合流する空間の回転子中央部側には、回転子回転方向の幅が狭まった流路、即ち、前述した壁面4b-5と壁面4b-6とにより狭められた流路がある。
【0061】
このような構成において、サブスロット3から冷却ガスFがコイル通風路7の冷却ガス入口部に流入する際には、構造物8によって分断される複数の流路にそれぞれ冷却ガスFが流入する。流入したそれぞれの冷却ガスFは壁面4bに衝突して合流し、さらに壁面4-4に衝突するなどした後、回転子外径側にある壁面4b-5と壁面4b-6とにより狭められた流路を通り、壁面4-5の衝突し、回転子外径側にある壁面4b-7と壁面4b-8とにより狭められた流路へ向かう。
【0062】
このようにコイル通風路7を構成した場合も、冷却ガスFの衝突がより多く生じることから、コイル通風路7内における冷却ガスFの乱流促進効果が一層向上し、コイル4に対する冷却能力が一層向上する。
【0063】
そのほか、
図11に示される変形例や
図12に示される変形例を採用してもよい。
【0064】
図11に示される変形例では、コイル通風路7は、構造物8の鉄心中央部側の流路に流入する冷却ガスFが衝突する壁面4aを有するほか、コイル通風路7内で合流した冷却ガスFが壁面4b-1と壁面4a-2との間を回転子外径側へ進んで衝突する壁面4bや、壁面4bに沿って壁面鉄心中央部側へ進んで衝突する鉄心壁面4-6を有する。
【0065】
また、
図12に示される変形例では、コイル通風路7は、構造物8により分断される2つの流路に流入する冷却ガスFがそれぞれ衝突する壁面4bを有するほか、コイル通風路7内で合流した冷却ガスFが壁面4bに沿って鉄心中央部側へ進んで衝突する壁面4c-1、さらに壁面4b-2と壁面4c-1との間を回転子外径側へ進んで衝突する壁面4c、さらに壁面4cに沿って鉄心端部側へ進んで衝突する壁面4d-1、さらに壁面4d-1と壁面4c-2との間を回転子外径側へ進んで衝突する壁面4d、さらに壁面4dに沿って鉄心中央部側へ進んで衝突する壁面4-7を有する。
【0066】
このように構成すれば、冷却ガスFの衝突がより多く生じることから、コイル通風路7内における冷却ガスFの乱流促進効果が一層向上し、また回転子軸方向に均一にコイル4が冷却されるので、回転子軸方向のコイル温度のばらつきが小さく、コイル4に対する冷却能力が一層向上する。
【0067】
第3の実施形態によれば、冷却ガスFの乱流作用をより多く得られるので、サブスロット3での流速が小さく分岐流入後の偏流が小さい鉄心中央部側のコイル通風路7においても高い冷却性能を実現できる。
【0068】
なお、上述した第2及び第3の実施形態では、コイル通風路7が冷却ガス入口部において流路を複数に分断する構造物8(第1の構造物)を有する場合を例示したが、これに加え、コイル通風路7の内部においても、さらに流路を複数に分断する構造物9(第2の構造物)を有するように構成してもよい。第1の構造物などにより乱流作用が得られても、流路の等価直径に対して一定以上の距離を冷却ガスFが移動すると乱流が解消されてしまうが、コイル通風路7の内部に第2の構造物を設けることで、再び乱流作用を得ることができる。この場合の具体例を次の実施形態にて説明する。
【0069】
(第4の実施形態)
次に、
図13乃至
図17を参照して、第4の実施形態について説明する。以下では、第2及び第3の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0070】
図13は、
図9に示される構造の変形例(H-H’断面の断面形状の変形例)を示す断面図である。この
図13に示されるH-H’断面の形状は、
図10中に示されるH-H’断面の形状とは異なる。
【0071】
本実施形態では、複数の回転子軸方向に配列されるコイル通風路7のうち、少なくとも1つのコイル通風路7は、構造物8により分断される複数の流路(本例では、2つの流路)を通って合流した冷却ガスFを、さらに当該コイル通風路7の内部において壁面4b-9と壁面4b-12との間にある構造物9により分断される複数の流路(本例では、2つの流路)に流入させる構造を有する。
【0072】
なお、構造物9が分断する流路の数は2つでもよいし、3つ以上であってもよい。また、複数の構造物9が回転子径方向に離間して設けられてもよい。また、構造物9は、コイル4の一部であってもよいし、コイル4以外の部材であってもよい。また、構造物9の回転子径方向の厚さは、加工性の観点から回転子コイル4の回転子径方向の厚さと一致させてもよいし、冷却性能の観点から回転子コイル4の回転子径方向の厚さと一致させなくてもよい。また、構造物8の形状は、加工性の観点から直角な角を有する単純な形状としてもよいし、冷却性能の観点から鋭角、鈍角、円弧状のいずれの形状としてもよい。
【0073】
このような構成において、構造物8により分断される複数の流路(本例では、2つの流路)を通って合流した冷却ガスFが壁面4b-9と壁面4b-12とに挟まれた空間に入ると、当該冷却ガスFは回転子外径側に進み、構造物9に衝突し、この構造物9により分断される複数の流路、即ち、壁面4b-9と壁面4b-10との間の流路および壁面4b-11と壁面4b-12との間の流路をそれぞれ通って進む。
【0074】
このように構成すれば、構造物8より発生した乱流が解消されてしまう前に構造物9により新たな乱流を発生させることができるので、コイル4に対する冷却能力が一層向上する。
【0075】
そのほか、
図14乃至
図17にそれぞれ示される変形例を採用してもよい。
【0076】
図14は、冷却ガス入口部の周辺が
図2に示される構造と同様の構造を有するコイル通風路7の外径側流路に構造物9を配置した例を示す断面図である。この例では、構造物8により分断される複数の流路を通って合流した冷却ガスFが、壁面4-8と壁面4a-2との間を通り、壁面4f-1と壁面4e-1との間にある構造物9に衝突し、この構造物9により分断される複数の流路をそれぞれ通り、壁面4fと壁面4eとにそれぞれ衝突して合流し、壁面4f-2と壁面4e-2との間を通って進む。
【0077】
図15は、冷却ガス入口部の周辺が
図8に示される構造と同様の構造を有するコイル通風路7の外径側流路に構造物9を配置した例を示す断面図である。この例では、構造物8により分断される複数の流路を通って合流した冷却ガスFが、壁面4b-2と壁面4-5との間を通り、壁面4f-1と壁面4e-1との間にある構造物9に衝突し、この構造物9により分断される複数の流路をそれぞれ通り、壁面4fと壁面4eとにそれぞれ衝突して合流し、壁面4f-2と壁面4e-2との間を通って進む。
【0078】
図16は、
図15に示される構造の変形例を示す断面図である。この例では、構造物8により分断される複数の流路を通って合流した冷却ガスFが、壁面4b-2と壁面4e-1との間を通り、壁面4-9と壁面4e-1との間にある構造物9により分断される複数の流路をそれぞれ通る。その際に、分流される冷却ガスの一方は構造物9と壁面4-9との間を通り、もう一方の冷却ガスは構造物9と壁面4e-1との間を通って壁面4eに衝突し、鉄心端部側へ進む。双方の冷却ガスは、合流して鉄心端部側へ進んで壁面4-10に衝突し、壁面4-10と壁面4e-2との間を通って進む。
【0079】
図17は、
図16に示される構造の変形例を示す断面図である。この例では、構造物8により分断される複数の流路を通って合流した冷却ガスFが、壁面4b-2と壁面4c-1との間を通って壁面4cに衝突し、鉄心端部側へ進み、壁面4-9と壁面4e-2との間にある構造物9により分断される複数の流路をそれぞれ通る。その際に、分流される冷却ガスの一方は壁面4-9に衝突し、構造物9と壁面4-9との間を通り、もう一方の冷却ガスは構造物9と壁面4c-2との間を通って壁面4eに衝突し、鉄心端部側へ進む。双方の冷却ガスは、合流して鉄心端部側へ進んで壁面4-10に衝突し、壁面4-10と壁面4e-2との間を通って進む。
【0080】
このように、構造物9は構造物8と組み合わせて様々な形態のコイル通風路7に適用することができる。
【0081】
なお、構造物9は乱流作用を得るために、冷却ガスFの流れをせき止めるように配置されるが、冷却ガス量を極端に低下させてはならないので、構造物9により冷却ガスFが分流される流路の断面積は、他の箇所の流路の断面積以上であることが望ましい。
【0082】
第4の実施形態によれば、コイル通風路7の内部にて乱流が解消されることなく冷却ガスFが進行するため、回転子内径側の流路のみならず回転子外径側の流路においても高い冷却能力を発揮させることができる。
【0083】
(第5の実施形態)
次に、
図18を参照して、第5の実施形態について説明する。以下では、第1及び第2の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0084】
図18は、
図1及び
図2に示される構造を応用した変形例を示す断面図である。
【0085】
本実施形態では、複数の回転子軸方向に配列されるコイル通風路7の各々において、構造物8により分断されている複数の流路の数が、鉄心端部から鉄心中央部へ向かうにつれ減少するように構成される。
【0086】
サブスロット3からコイル通風路7に流入する冷却ガスFは、冷却ガス入口部で偏流するため、構造物8により分断される複数の流路の設置は衝突による乱流作用を得るために有効である。しかし、鉄心中央部側に近いコイル通風路7ほど当該偏流は弱くなるため、構造物8により分断される流路は圧力損失を生む障壁としての作用が強くなる。従って、構造物8により軸方向に分断される流路の数は、鉄心中央部側に近いコイル通風路7ほど少ないことが望ましい。
【0087】
図18の例では、複数の回転子軸方向に配列されるコイル通風路7のうち、鉄心端部に最も近い位置にあるコイル通風路7が、構造物8の数が最も多く(本例では、2個)、そのために構造物8により分断される流路の数が最も多い(本例では、流路の数は3本)。一方、鉄心中央部に最も近い位置にあるコイル通風路7は、構造物8の数が最も少なく(本例では、0個)、そのために構造物8により分断される流路の数が最も多い(本例では、構造物8が無いため、流路の数は1本)。
【0088】
また、複数の回転子軸方向に配列されるコイル通風路7の各々は、構造物8により分断される流路の数が、自身の鉄心端部側に隣接して配置されるコイル通風路7が有する構造物8により分断される流路の数よりも少ない数となるように構成される。但し、この構成に限定されるものではなく、例えば回転子軸方向に隣接して配置されるいくつかのコイル通風路7は、構造物8により分断される流路の数が同じになるように構成されてもよい。
【0089】
第5の実施形態によれば、各コイル通風路7の配置位置に応じて、構造物8により分断される流路の数を適切に設定することにより、乱流作用増加と圧力損失低減の両立を実現でき、高い冷却性能を実現できる。
【0090】
(第6の実施形態)
次に、
図19及び
図20を参照して、第6の実施形態について説明する。以下では、第1及び第2の実施形態と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0091】
図19は、
図1乃至
図3等に示される構造を応用した変形例を示す断面図である。また、
図20は、
図19に示される構造の変形例を示す断面図である。
【0092】
本実施形態では、複数の回転子軸方向に配列されるコイル通風路7の各々において、壁面4aの面積が、鉄心端部から鉄心中央部へ向かうにつれ小さくなる、もしくは、壁面4bの面積が、鉄心端部から鉄心中央部へ向かうにつれ大きくなるように構成される。壁面4aの面積および壁面4bの面積は、例えば回転子軸方向の長さを変化させることにより変えられる。
【0093】
サブスロット3からコイル通風路7に流入する冷却ガスFは、冷却ガス入口部で偏流するため、冷却ガス入口部の鉄心中央部側にある壁面4aの設置は衝突による乱流作用を得るために有効である。しかし、鉄心中央部側に近いコイル通風路7ほど当該偏流は弱くなるため、壁面4aは圧力損失を生む障壁としての作用が強くなる。従って、壁面4aの面積は、鉄心中央部側に近いコイル通風路7ほど小さいことが望ましい。一方、壁面4bは、偏流が弱くなれば、圧力損失を生む障壁としての作用よりも、衝突による乱流作用の方が大きくなる。従って、壁面4bの面積は、鉄心中央部側に近いコイル通風路7ほど大きいことが望ましい。
【0094】
図19の例では、複数の回転子軸方向に配列されるコイル通風路7のうち、鉄心端部に最も近い位置にあるコイル通風路7が、壁面4aの面積が最も大きく、壁面4bの面積が最も小さい(本例では、壁面4bの面積が0となり、段差の無い壁面4-1が形成される)。一方、鉄心中央部に最も近い位置にあるコイル通風路7は、壁面4aの面積が最も小さく(本例では、壁面4aの面積が0となり、段差の無い壁面4-11が形成される)、壁面4bの面積が最も大きい。
【0095】
また、複数の回転子軸方向に配列されるコイル通風路7の各々は、壁面4aの面積が、自身の鉄心端部側に隣接して配置されるコイル通風路7が有する壁面4aの面積よりも小さくなるように構成され、また、壁面4bの面積が、自身の鉄心端部側に隣接して配置されるコイル通風路7が有する壁面4bの面積よりも大きくなるように構成される。但し、この構成に限定されるものではなく、例えば回転子軸方向に隣接して配置されるいくつかのコイル通風路7は、壁面4a,4bの面積が同じになるように構成されてもよい。
【0096】
なお、
図19の例では、壁面4aの面積と壁面4bの面積の両方を、回転子軸方向に変化させる場合を例示したが、この例に限定されるものではない。例えば、
図20に示されるように、壁面4aについてのみ面積を回転子軸方向に変化させる構成としてもよい。
【0097】
第6の実施形態によれば、各コイル通風路7の配置位置に応じて、壁面4aの面積もしくは壁面4bの面積を適切に設定することにより、乱流作用増加と圧力損失低減の両立を実現でき、高い冷却性能を実現できる。
【0098】
(第7の実施形態)
次に、
図21乃至
図23を参照して、第7の実施形態について説明する。以下では、第1乃至第3の実施形態等と共通する部分の説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0099】
図21(A)は、第7の実施形態に係る回転電機の回転子に適用されるコイル通風路を含む構造を回転子回転方向に見たときの断面形状の例を示す断面図である。
図21(B)は、
図21(A)に示されるコイル通風路を回転子軸方向に透過して見たときの形状を示す概念図である。
【0100】
また、
図22は、
図21(A)中に示されるa-a’断面、b-b’断面、c-c’断面のそれぞれの断面形状(回転子軸方向に見たときの断面形状)の例を示す断面図である。
図23は、
図21(A)中に示されるd-d’断面、e-e’断面のそれぞれの断面形状(回転子径方向に見たときの断面形状)の例を示す断面図である。
【0101】
本実施形態では、複数の回転子軸方向に配列されるコイル通風路7のうち、少なくとも1つのコイル通風路7は、冷却ガスFが流れる方向を、回転子外径方向から回転子周方向へ変え、さらに回転子軸方向へ変える第1の部分(例えば、流れ方向変更部210a,210d)と、冷却ガスFが流れる方向を、回転子軸方向から回転子内径方向へ変え、さらに回転子軸方向へ戻す第2の部分(例えば、流れ方向変更部210b,210e)と、冷却ガスFが流れる方向を、回転子軸方向から回転子周方向へ変え、さらに回転子外径方向へ変える第3の部分(例えば、流れ方向変更部210c,210f)のうちの少なくとも1つを含む。
【0102】
図21乃至
図23には、回転子が上述した第1乃至第3の部分の全てを含む場合の例が示されている。
【0103】
当該回転子は、サブスロット3の回転子外径側に、下敷板30、回転子コイル4、クリページブロック50、および回転子ウェッジ60を備えている。これらを順次貫通するように形成されている通風路は、下敷板30の流路RP1、回転子コイル4の流路RP2(コイル通風路7に相当)、クリページブロック50の流路RP3、および回転子ウェッジ60の流路RP4からなる。
【0104】
回転子コイル4の流路RP2の各要所には、冷却ガスFが流れる方向を変化させる複数の流れ方向変更部210a,210b,210c,210d,210e,210fが配置されている。
【0105】
このような構成において、サブスロット3から冷却ガスFが通風路RP1及びRP2に流入すると、鉄心端部側から剥離して鉄心中央部側の壁側に偏った流れが生じ、流れ方向変更部210aの壁面4aに冷却ガスFが衝突すると、渦流れVFが生じるとともに、その壁面4aに沿って冷却ガスFが回転子周方向へ進み(広がり)、回転子周方向に広い流路RP2を通じて鉄心端部側へと誘導されて進む。
【0106】
流れ方向変更部210aから鉄心端部側へ進む冷却ガスFは、その先にある流れ方向変更部210bの壁面に衝突し、流れ方向が回転子内径方向へと変えられ、さらに流れ方向変更部210bの別の壁面に衝突し、流れ方向が再び鉄心端部側へと戻されて進む。
【0107】
流れ方向変更部210bから鉄心端部側へ進む冷却ガスFは、その先にある流れ方向変更部210cの壁面に衝突し、その壁面に沿って冷却ガスFが回転子周方向へ進み、回転子周方向に狭められた流路RP2を通じて回転子外径側へと誘導されて進む。
【0108】
流れ方向変更部210cから回転子外径側へ進む冷却ガスFは、その先にある流れ方向変更部210dの壁面に衝突し、その壁面4aに沿って回転子周方向へ進み(広がり)、回転子周方向に広い流路RP2を通じて鉄心中央部側へと誘導されて進む。
【0109】
流れ方向変更部210dから鉄心中央部側へ進む冷却ガスFは、その先にある流れ方向変更部210eの壁面に衝突し、流れ方向が回転子内径方向へと変えられ、さらに流れ方向変更部210eの別の壁面に衝突し、流れ方向が再び鉄心中央部側へと戻されて進む。
【0110】
流れ方向変更部210eから鉄心端部側へ進む冷却ガスFは、その先にある流れ方向変更部210fの壁面に衝突し、その壁面に沿って冷却ガスFが回転子周方向へ進み、回転子周方向に狭められた流路RP2を通じて回転子外径側へと誘導されて進む。
【0111】
第7の実施形態によれば、流路RP2(コイル通風路7に相当)に各種の流れ方向変更部が設けられているので、それぞれの流れ方向変更部の壁面に冷却ガスが衝突することで乱流が生じて伝熱が促進されるともに、流路幅が拡張する流路部分も設けられているので、その部分において伝熱面積及び冷却範囲が大きくなり、冷却性能を一層向上させることができる。
【0112】
以上詳述したように、各実施形態によれば、回転子コイルを効果的に冷却することができる。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0114】
1…回転子鉄心、2…コイルスロット、3…サブスロット、4…回転子コイル、4-1,4-2,4-3,4-4,4-5,4-6,4-7,4-8,4-9,4-10,4-11,4a,4a-1,4a-2,4a-3,4a-4,4a-5,4a-6,4b,4b-1,4b-2,4b-3,4b-4,4b-5,4b-6,4b-7,4b-8,4b-9,4b-10,4b-11,4b-12…壁面、5…絶縁材、6…回転子楔、7…コイル通風路、8…構造物(第1の構造物)、9…構造物(第2の構造物)、10…保持環、11…鉄心端、30…下敷板、50…クリページブロック、60…回転子ウェッジ、210a,210b,210c,210d,210e,210f…流れ方向変更部、F…冷却ガス、RP1,RP2,RP3,RP4…流路、VF…渦流れ。