(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】併用がん療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7068 20060101AFI20230703BHJP
A61K 31/53 20060101ALI20230703BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20230703BHJP
A61K 31/437 20060101ALI20230703BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20230703BHJP
A61K 31/395 20060101ALI20230703BHJP
A61K 31/444 20060101ALI20230703BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230703BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230703BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A61K31/7068 ZMD
A61K31/53
A61K31/506
A61K31/437
A61K31/454
A61K31/395
A61K31/444
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2020501304
(86)(22)【出願日】2018-07-09
(86)【国際出願番号】 IB2018000852
(87)【国際公開番号】W WO2019012328
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-07-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518181121
【氏名又は名称】バイオサイト リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ベン ヤカール ルース
(72)【発明者】
【氏名】ゲングリノヴィッチ ステラ
(72)【発明者】
【氏名】テスラー ショシ
(72)【発明者】
【氏名】フライション リアット
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/093993(WO,A1)
【文献】特表2006-508119(JP,A)
【文献】国際公開第2018/014067(WO,A1)
【文献】特表2018-504145(JP,A)
【文献】国際公開第2017/132518(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/066599(WO,A1)
【文献】特表2007-533670(JP,A)
【文献】国際公開第2017/066611(WO,A1)
【文献】LEE, E. M. et al,Efficacy of an Fc-modified anti-CD123 antibody (CSL362) combined with chemotherapy in xenograft models of acute myelogenous leukemia in immunodeficient mice,Haematologica,2015年,Vol.100(7),pp.914-926
【文献】SAVONA, M. R. et al,Phase Ib Study of Glasdegib, a Hedgehog Pathway Inhibitor, in Combination with Standard Chemotherapy in Patients with AML or High-Risk MDS,Clin Cancer Res,2018年05月15日,Vol.24(10),pp.2294-2303
【文献】RAVANDI, F. et al,Phase I/II Study of Combination Therapy With Sorafenib, Idarubicin, and Cytarabine in Younger Patients With Acute Myeloid Leukemia,Journal of Clinical Oncology,2010年,Vol.28, No.11,pp.1856-1862
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
A61P 1/00-43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるがん細胞増殖の低減またはがんの治療における使用のための第1の薬学的組成物および第2の薬学的組成物であって、前記第1の薬学的組成物が、式(1)の構造によって表される治療有効量の化合物、
【化1】
またはその薬学的に許容される塩と、
薬学的に許容される賦形剤と、を含み、
前記第2の薬学的組成物が、治療有効量の少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤を含み、
前記第1および第2の薬学的組成物が、同時にまたは互いに連続して使用される、第1および第2の薬学的組成物
であって、
前記少なくとも1つの抗悪性腫瘍剤が、ピリミジン類似体、fms様キナーゼ-3(FLT-3)阻害剤、Bcl-2阻害剤、ソニックヘッジホッグ経路阻害剤、抗体、またはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)阻害剤であり、
前記ピリミジン類似体が、アザシチジンであり、
前記FLT-3阻害剤が、ギルテリチニブであり、
前記Bcl-2阻害剤がベネトクラクス(ABT-199)であり、
前記ソニックヘッジホッグ経路阻害剤がグラスデギブであり、
前記抗体が抗CD47抗体であり、
前記IDH阻害剤が、AG-120(イボシデニブ)、又はAG221(エナシデニブ)である、前記薬学的組成物。
【請求項2】
式(1)の前記化合物の前記薬学的に許容される塩が、有機酸または無機酸の塩であり、酢酸、塩酸、メタンスルホン酸、リン酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、ホウ酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アスコルビン酸、硫酸、マレイン酸、ギ酸、マロン酸、ニコチン酸、またはシュウ酸である、請求項1に記載
の第1および第2の薬学的組成物。
【請求項3】
式(1)の前記化合物の前記薬学的に許容される塩が、塩酸の塩である、請求項2に記載
の第1および第2の薬学的組成物。
【請求項4】
前記抗悪性腫瘍剤が、がん細胞成長を阻害することができる免疫細胞に結合または付着しており、前記免疫細胞が、キメラ抗原受容体T細胞(CART)である、請求項1~3のいずれか1項に記載
の第1および第2の薬学的組成物。
【請求項5】
前記CARTが、CART123である、請求項
4に記載
の第1および第2の薬学的組成物。
【請求項6】
がんの治療のための使用をさらに含み、前記がんが、血液学的がんまたは非血液学的がんである、請求項1に記載
の第1および第2の薬学的組成物。
【請求項7】
前記血液学的がんが、白血病、リンパ腫、骨髄腫、または骨髄異形成症候群(MDS)である、請求項
6に記載
の第1および第2の薬学的組成物。
【請求項8】
前記白血病が、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、または慢性リンパ芽球性白血病(CLL)である、請求項
7に記載
の第1および第2の薬学的組成物。
【請求項9】
前記AMLが、新たに診断されたAML、続発性AML、または再発性/治療抵抗性AMLである、請求項
8に記載
の第1および第2の薬学的組成物。
【請求項10】
前記リンパ腫が、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫である、請求項
7に記載
の第1および第2の薬学的組成物。
【請求項11】
前記対象が、ヒトである、請求項1に記載
の第1および第2の薬学的組成物。
【請求項12】
前記ヒトが、医学的に易感染性のヒトであるか、または前記ヒトが、医学的に易感染性のヒトである、請求項
11に記載
の第1および第2の薬学的組成物。
【請求項13】
前記医学的に易感染性のヒトが、高齢のヒト、肝機能障害を有するヒト、腎機能障害を有するヒト、膵機能障害を有するヒト、骨髄機能障害を有するヒト、小脳機能障害を有するヒト、免疫障害を有するヒト、治療抵抗性もしくは再発性血液学的がんを有するヒト、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項
12に記載
の第1および第2の薬学的組成物。
【請求項15】
式(1)の前記化合物を含む前記薬学的組成物が、非経口投与される、請求項1~
14のいずれか1項に記載
の第1および第2の薬学的組成物。
【請求項16】
前記第1の薬学的組成物が、静脈内投与される、請求項1~
14のいずれか1項に記載
の第1および第2の薬学的組成物。
【請求項17】
前記対象に投与される式(1)の前記化合物の投薬量が、1日あたり前記対象の体表面積の約0.3g/m
2~約6g/m
2の範囲である、請求項
16に記載
の第1および第2の薬学的組成物。
【請求項18】
前記対象に投与される式(1)の前記化合物の投薬量が、1日あたり前記対象の体表面積の約0.8g/m
2~約6g/m
2の範囲である、請求項
16に記載
の第1および第2の薬学的組成物。
【請求項19】
前記第2の薬学的組成物が、前記第1の薬学的組成物の投与前、それと同時、またはその後に、または互いの4時間以内に投与される、請求項1~
18のいずれか1項に記載
の第1および第2の薬学的組成物。
【請求項20】
投与が、シタラビンおよび前記少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤、またはシタラビンおよび前記少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤を含む第2の薬学的組成物で治療した対象において観察される副作用と比較して、前記対象における副作用の低減をもたらし、前記副作用が、粘膜炎、下痢、または脱毛症のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~
19のいずれか1項に記載
の第1および第2の薬学的組成物。
【請求項21】
がん細胞増殖の低減またはがんの治療におけ
る薬学的組成物であって、
(i)式(1)の構造によって表される治療有効量の化合物、
【化2】
またはその薬学的に許容される塩と、
(ii)治療有効量の追加の抗悪性腫瘍剤と、
(iii)薬学的に許容される賦形剤と、を含む、薬学的組成物
であって、
前記抗悪性腫瘍剤が、ピリミジン類似体、fms様キナーゼ-3(FLT-3)阻害剤、Bcl-2阻害剤、ソニックヘッジホッグ経路阻害剤、抗体、またはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)阻害剤であり、
前記ピリミジン類似体が、アザシチジンであり、
前記FLT-3阻害剤が、ギルテリチニブであり、
前記Bcl-2阻害剤がベネトクラクス(ABT-199)であり、
前記ソニックヘッジホッグ経路阻害剤がグラスデギブであり、
前記抗体が抗CD47抗体であり、
前記IDH阻害剤が、AG-120(イボシデニブ)、又はAG221(エナシデニブ)である、前記薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年7月9日出願の米国仮特許出願第62/530,213号の優先権を主張し、その全体は、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、がん細胞成長を阻害するための、シタラビン共役体および1つ以上の追加の抗悪性腫瘍剤の併用療法に関する。具体的には、本発明は、血液学的がんの治療における使用のための、1つ以上の追加の抗悪性腫瘍剤と併用したシタラビンとアスパラギン酸との共役体に関する。
【背景技術】
【0003】
抗悪性腫瘍剤
抗増殖薬、抗代謝剤、または共有結合性DNA結合薬としても知られる抗悪性腫瘍剤は、重要な代謝経路を阻害することによって作用し、悪性疾患の治療において一般的に使用されている。しかしながら、正常細胞に対するそれらの高い毒性および重度の副作用は、治療剤としてのそれらの使用を制限している。望ましくない副作用には、骨髄内の幹細胞、腸管の上皮細胞、毛包細胞などの急速に分裂する正常細胞に対する細胞毒性効果が原因の、貧血、嘔吐、および脱毛などが含まれる。
【0004】
抗増殖薬に関連する別の主要な問題は、薬物に対する腫瘍の固有のまたは後天的な耐性である。例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)患者におけるL-アスパラギナーゼでの治療後の初期寛解率は非常に高いが、再発および関連する薬物耐性は重大な臨床的問題を提起する。研究は、アスパラギナーゼ耐性細胞内のアスパラギンシンテターゼ(AS)発現の増加を実証しており、これは、AS活性の上昇が悪性細胞の薬物耐性生存を可能にするという仮説につながっている。
【0005】
ヌクレオチド/ヌクレオシド類似体
ヌクレオシド類似体は、核酸への組み込みについてそれらの生理学的対応物と競合し、急性白血病の治療において重要な地位を獲得している。
【0006】
これらのうちの最も重要なのは、アラビノースヌクレオシドであり、これは、元々は海綿Cryptothethya cryptaから単離されていたが、現在では合成的に生成されている、ある特有のクラスの抗代謝剤である。それらは、シトシンとアラビノシド糖との間のN-グリコシル結合と比較して、シス構成における2’-OH基の存在によって、生理学的デオキシリボヌクレオシドとは異なっている。いくつかのアラビノースヌクレオシドは、有用な抗腫瘍効果および抗ウイルス効果を有する。このクラスの最も活性な細胞毒性剤は、シトシンアラビノシド(シタラビンまたはara-C)である。シタラビンは現在、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)、および骨髄異形成症候群(MDS)などの白血球のがんの治療に使用されている。しかしながら、シタラビンは、高度に毒性であり、小脳毒性および骨髄抑制などの重度の副作用を有する。したがって、シタラビン治療は制限されており、多くの場合、高齢の患者、および肝機能障害、腎機能障害、または小脳機能障害を有する患者では限定されている。
【0007】
シチジン抗代謝剤の領域における類似体開発の1つの目的は、シタラビンよりも安定しており、かつそれよりも高い生物学的利用率を示す、シタラビンの阻害活性を保存する化合物を見出すことである。いくつかの臨床治験において抗白血病活性を示すが、望ましくない副作用を有する、シクロ-シチジンおよびN4-ベヘノイルara-Cを含む、いくつかのデアミナーゼ耐性類似体が開発されている。他の代表的な化合物は、ポリ-H5(2-ヒドロキシエチル)-L-グルタミンに共役したシタラビン、ジヒドロ-5-アザシチジン、エラシタラビンと呼ばれるシタラビンの脂質共役誘導体、およびアミノ酸共役体Valシタラビンである(Chhikara et al.Expert.Opin.Drug Deliv.7:1399-1414,2010)。
【0008】
ヌクレオチド類似体はまた、非がん用途においても使用されている。例えば、フッ素化シトシン類似体であるフルシトシンは、抗真菌剤として使用されている。
【0009】
がん治療に関連する副作用が一般に、重度かつ衰弱性であり得るという点で、毒性および副作用が制限された治療有効用量の抗がん薬を提供する、改善されたがん療法に対する満たされていない必要性が存在する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、がん細胞成長の阻害における使用のための、シタラビンおよびアスパラギン酸を含む共役体またはその薬学的に許容される塩、ならびに1つ以上の追加の抗悪性腫瘍剤の併用療法を提供する。本発明の方法は、がん細胞増殖の低減、がん負荷の低減、および/または血液学的がんの治療に特に有用である。
【0011】
本発明は、一部には、シタラビンがアスパラギン酸の側鎖のカルボキシル基に共有結合しているアスパラギン酸とシタラビンとの共役体(本明細書以下でAsp-シタラビン(本明細書でAsp-CytまたはBST-236とも称される)と呼ばれる)とともに、血液学的がん細胞をインビトロでインキュベートすることで、別の抗悪性腫瘍薬(例えば、ピリミジン類似体アザシチジン)と併せて、血液学的がん細胞の増殖および生存に対する相乗的な阻害効果がもたらされるという予想外の発見に基づく。類似した効果が、複数の血液学的がん細胞型について得られた。
【0012】
上記に付言すると、ヒト白血病の動物モデル、つまりヒト白血病が導入されている免疫低下マウスの治療は、Asp-シタラビンおよびアザシチジンの併用が、併用で治療したマウスの(脾臓サイズの低下によって反映される)脾臓内のがん細胞数の著しい低下によって証拠付けられる相乗効果を呈することを実証した。Asp-シタラビンまたはアザシチジンのいずれかで治療したマウスもまた、脾臓重量の低減を呈したが、2つの薬剤の併用の効果は、各々単独での相加効果を超えるものであった。
【0013】
Asp-シタラビンおよびアザシチジンの投与を含む併用療法は、がんを患っている任意の患者の治療のために想起される。特定の実施形態では、がんは、血液学的がんである。その特定の実施形態では、本明細書に開示される併用療法を使用して、急性リンパ球性白血病(ALL)または急性骨髄性白血病(AML)を患っている対象を治療する。より特定の実施形態では、対象は、医学的に易感染性の対象である。さらにより特定の実施形態では、医学的に易感染性の対象は、標準的なシタラビン化学療法または他の標準的な化学療法治療を受けることができず、これは、その対象の健康状態および/またはそのような治療に対する既知の感受性もしくは疑わしい感受性が原因である。したがって、本明細書に記載のものなどの併用療法は、許容できる副作用を有し、かつ生命の維持に必要な器官および組織に対してより少ない損傷を引き起こすため、高用量のAsp-シタラビン、および例えば、アザシチジンの併用は、医学的に易感染性の対象の治療によく適合している。さらに、Asp-シタラビンおよびアザシチジンの併用治療は、各々の治療単独と比較して、治療した患者の寛解期間および寿命を延長する上で有効であるようである。
【0014】
したがって、本発明は、一般的ながん患者のための、および化学療法に対する低い許容性が原因で標準的な化学療法レジメンが典型的に奪われている医学的に易感染性の血液学的がん患者のための、Asp-シタラビンおよび他の抗悪性腫瘍薬(複数可)の有効な併用療法を提供する。したがって、本発明は、それががん患者のための高度に有効な化学療法併用治療を提示し、かつ他の併用がん治療(例えば、他の抗悪性腫瘍薬と併用したシタラビンを含む)の用量制限毒性の妨害を克服するという点で、満たされていない必要性を満たす。
【0015】
一態様によると、がん細胞増殖の低減における使用のための第1の薬学的組成物および第2の薬学的組成物が提示され、第1の薬学的組成物は、式(1)の構造によって表される治療有効量の化合物、
【化1】
またはその薬学的に許容される塩と、
薬学的に許容される賦形剤とを含み、
第2の薬学的組成物は、治療有効量の少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤であって、ピリミジン類似体、fms様キナーゼ-3(FLT-3)阻害剤、Bcl-2阻害剤、アントラサイクリン、またはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)阻害剤である、少なくとも1つの抗悪性腫瘍剤と、
薬学的に許容される賦形剤とを含み、
第1および第2の薬学的組成物は、同時にまたは互いの4時間以内に使用される。
【0016】
加えてまたはあるいは、がん細胞増殖の低減における使用のための上記の第1の薬学的組成物および第2の薬学的組成物は、以下の特徴のうちの1つ以上を個々にまたは組み合わせて含むことができる:式(1)の共役体の薬学的に許容される塩は、有機酸または無機酸の塩であり、酢酸、塩酸、メタンスルホン酸、リン酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、ホウ酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アスコルビン酸、硫酸、マレイン酸、ギ酸、マロン酸、ニコチン酸、またはシュウ酸である;薬学的に許容される塩は、塩酸の塩である;ピリミジン類似体は、アザシチジン、デシタビン、グアデシタビン(SGI-110)、ゲムシタビン、またはジドブジンである;ピリミジン類似体は、アザシチジンである;Bcl-2阻害剤は、ベネトクラクス(ABT-199)である;FLT-3阻害剤は、ソラフェニブ、ミドスタウリン、キザルチニブ、クレノラニブ、またはギレルチニブ(gilertinib)である;アントラサイクリンは、ダウノルビシン、イダルビシン、またはドキソルビシンである;IDH阻害剤は、IDH1阻害剤、IDH2阻害剤、インボシデニブ(invosidenib)(AG-120)、エナシデニブ(AG221)、IDH305、またはFT-2102である;IDH阻害剤は、IDH1阻害剤(例えば、AG-120)またはIDH2阻害剤である;使用は、がんの治療のための使用をさらに含む;がんは、血液学的がんまたは非血液学的がんである;血液学的がんは、白血病、リンパ腫、骨髄腫、または骨髄異形成症候群(MDS)である;白血病は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、または慢性リンパ芽球性白血病(CLL)である;AMLは、新たに診断されたAML、続発性AML、または再発性/治療抵抗性AMLである;リンパ腫は、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫である;対象は、哺乳動物である;哺乳動物は、ヒトである;哺乳動物は、医学的に易感染性の哺乳動物であるか、またはヒトは、医学的に易感染性のヒトである;医学的に易感染性の哺乳動物またはヒトは、高齢の哺乳動物もしくはヒト、肝機能障害を有する哺乳動物もしくはヒト、腎機能障害を有する哺乳動物もしくはヒト、膵機能障害を有する哺乳動物もしくはヒト、骨髄機能障害を有する哺乳動物もしくはヒト、小脳機能障害を有する哺乳動物もしくはヒト、免疫障害を有する哺乳動物もしくはヒト、治療抵抗性もしくは再発性血液学的がんを有する哺乳動物もしくはヒト、またはそれらの任意の組み合わせである;高齢のヒトは、70歳以上である;式(1)の共役体を含む薬学的組成物は、非経口投与される;第1の薬学的組成物は、静脈内投与される;対象に投与される式(1)の共役体は、1日あたり対象の体表面積の約0.3g/m2~約6g/m2の範囲である;対象に投与される式(1)の共役体の投薬量は、1日あたり対象の体表面積の約0.8g/m2~約6g/m2の範囲である;第2の薬学的組成物は、第1の薬学的組成物の投与前、それと同時、またはその後に投与される;および/あるいは第2の薬学的組成物は、第1の薬学的組成物と同時に投与される。
【0017】
別の態様によると、がん細胞増殖の低減における使用のための薬学的組成物が提示され、本薬学的組成物は、(i)式(1)の構造によって表される治療有効量の化合物、
【化2】
またはその薬学的に許容される塩と、
(ii)治療有効量の追加の抗悪性腫瘍剤であって、少なくとも1つの抗悪性腫瘍剤が、ピリミジン類似体、FLT-3阻害剤、Bcl-2阻害剤、アントラサイクリン、またはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)阻害剤である、治療有効量の追加の抗悪性腫瘍剤と、
(iii)薬学的に許容される賦形剤とを含む。
【0018】
加えてまたはあるいは、がん細胞増殖の低減における使用のための、(i)と、(ii)と、(iii)とを含む、上記の薬学的組成物は、以下の特徴のうちの1つ以上を個々にまたは組み合わせて含むことができる:式(1)の共役体の薬学的に許容される塩は、有機酸または無機酸の塩であり、有機酸または無機酸は、酢酸、塩酸、メタンスルホン酸、リン酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、ホウ酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アスコルビン酸、硫酸、マレイン酸、ギ酸、マロン酸、ニコチン酸、またはシュウ酸である;式(1)の共役体の薬学的に許容される塩は、塩酸の塩である;ピリミジン類似体は、アザシチジン、デシタビン、グアデシタビン(SGI-110)、ゲムシタビン、またはジドブジンである;ピリミジン類似体は、アザシチジンである;Bcl-2阻害剤は、ベネトクラクス(ABT-199)である;FLT-3阻害剤は、ソラフェニブ、ミドスタウリン、キザルチニブ、クレノラニブ、またはギレルチニブである;アントラサイクリンは、ダウノルビシン、イダルビシン、またはドキソルビシンである;IDH阻害剤は、IDH1阻害剤、IDH2阻害剤、AG-120(インボシデニブ)、AG221(エナシデニブ)、IDH305、またはFT-2102である;IDH阻害剤は、IDH1阻害剤、IDH2阻害剤、またはAG-120(インボシデニブ)である;がん細胞増殖の低減は、がんの治療をさらに含み、がんは、血液学的がんまたは非血液学的がんである;血液学的がんは、白血病、リンパ腫、骨髄腫、または骨髄異形成症候群(MDS)である;白血病は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、または慢性リンパ芽球性白血病(CLL)である;AMLは、新たに診断されたAML、続発性AML、または再発性/治療抵抗性AMLである;リンパ腫は、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫である;対象は、哺乳動物である;哺乳動物は、ヒトである;哺乳動物は、医学的に易感染性の哺乳動物であるか、またはヒトは、医学的に易感染性のヒトである;医学的に易感染性の哺乳動物またはヒトは、高齢の哺乳動物もしくはヒト、肝機能障害を有する哺乳動物もしくはヒト、腎機能障害を有する哺乳動物もしくはヒト、膵機能障害を有する哺乳動物もしくはヒト、骨髄機能障害を有する哺乳動物もしくはヒト、小脳機能障害を有する哺乳動物もしくはヒト、免疫障害を有する哺乳動物もしくはヒト、治療抵抗性もしくは再発性血液学的がんを有する哺乳動物もしくはヒト、またはそれらの任意の組み合わせである;高齢のヒトは、70歳以上である;使用のための薬学的組成物は、非経口投与される;使用のための薬学的組成物は、静脈内投与される;対象に投与される式(1)の共役体の投薬量は、1日あたり対象の体表面積の約0.3g/m2~約6g/m2の範囲である;対象に投与される式(1)の共役体の投薬量は、1日あたり対象の体表面積の約0.8g/m2~約6g/m2の範囲である。
【0019】
別の態様によると、がんを患っている対象におけるがん細胞増殖を低減するための方法が提示され、本方法は、
(a)式(1)の構造によって表される治療有効量の化合物、
【化3】
もしくはその薬学的に許容される塩、
または式(1)の化合物もしくはその薬学的に許容される塩を含む第1の薬学的組成物を投与することと、
(b)治療有効量の少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤、または少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤を含む第2の薬学的組成物を投与することであって、少なくとも1つの抗悪性腫瘍剤が、ピリミジン類似体、fms様キナーゼ-3(FLT-3)阻害剤、Bcl-2阻害剤、アントラサイクリン、またはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)阻害剤である、投与することとを含み、
第1および第2の薬学的組成物は、同時にまたは互いの4時間以内に対象に投与され、それにより対象におけるがん細胞増殖を低減する。
【0020】
別の態様によると、がんを患っている対象におけるがんを治療するための方法であって、本方法は、
(a)式(1)の構造によって表される治療有効量の化合物、
【化4】
もしくはその薬学的に許容される塩、
または式(1)の化合物もしくはその薬学的に許容される塩を含む第1の薬学的組成物を投与することと、
(b)治療有効量の少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤、または少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤を含む第2の薬学的組成物を投与することであって、少なくとも1つの抗悪性腫瘍剤が、ピリミジン類似体、fms様キナーゼ-3(FLT-3)阻害剤、Bcl-2阻害剤、アントラサイクリン、またはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)阻害剤である、投与することとを含み、
第1および第2の薬学的組成物は、同時にまたは互いの4時間以内に対象に投与され、それにより対象におけるがんを治療する。
【0021】
加えてまたはあるいは、がん細胞増殖を低減するための上記の方法またはがんを治療するための上記の方法は、以下の特徴のうちの1つ以上を個々にまたは組み合わせて含むことができる:第2の薬学的組成物は、第1の薬学的組成物の投与前、それと同時、またはその後に投与される;第2の薬学的組成物は、第1の薬学的組成物と同時に投与される;式(1)の共役体の薬学的に許容される塩は、有機酸または無機酸の塩であり、酢酸、塩酸、メタンスルホン酸、リン酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、ホウ酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アスコルビン酸、硫酸、マレイン酸、ギ酸、マロン酸、ニコチン酸、またはシュウ酸である;薬学的に許容される塩は、塩酸の塩である;ピリミジン類似体は、アザシチジン、デシタビン、グアデシタビン(SGI-110)、ゲムシタビン、またはジドブジンである;ピリミジン類似体は、アザシチジンである;Bcl-2阻害剤は、ベネトクラクス(ABT-199)である;FLT-3阻害剤は、ソラフェニブ、ミドスタウリン、キザルチニブ、クレノラニブ、またはギレルチニブである;アントラサイクリンは、ダウノルビシン、イダルビシン、またはドキソルビシンである;IDH阻害剤は、IDH1阻害剤、IDH2阻害剤、AG-120(インボシデニブ)、AG221(エナシデニブ)、IDH305、またはFT-2102である;IDH阻害剤は、IDH1阻害剤、IDH2阻害剤、またはAG-120(インボシデニブ)である;がんは、血液学的がんまたは非血液学的がんである;血液学的がんは、白血病、リンパ腫、骨髄腫、または骨髄異形成症候群(MDS)である;白血病は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、または慢性リンパ芽球性白血病(CLL)である;AMLは、新たに診断されたAML、続発性AML、または再発性/治療抵抗性AMLである;リンパ腫は、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫である;対象は、哺乳動物である;哺乳動物は、ヒトである;哺乳動物は、医学的に易感染性の哺乳動物である;ヒトは、医学的に易感染性のヒトである;医学的に易感染性の哺乳動物またはヒトは、高齢の哺乳動物もしくはヒト、肝機能障害を有する哺乳動物もしくはヒト、腎機能障害を有する哺乳動物もしくはヒト、膵機能障害を有する哺乳動物もしくはヒト、骨髄機能障害を有する哺乳動物もしくはヒト、小脳機能障害を有する哺乳動物もしくはヒト、免疫障害を有する哺乳動物もしくはヒト、治療抵抗性もしくは再発性血液学的がんを有する哺乳動物もしくはヒト、またはそれらの任意の組み合わせである;高齢のヒトは、70歳以上である;式(1)の共役体を含む薬学的組成物は、非経口投与される;第1の薬学的組成物は、静脈内投与される;対象に投与される式(1)の共役体の投薬量は、1日あたり対象の体表面積の約0.3g/m2~約6g/m2の範囲である;対象に投与される式(1)の共役体の投薬量は、1日あたり対象の体表面積の約0.8g/m2~約6g/m2の範囲である。
【0022】
別の態様によると、がんを患っている対象におけるがん細胞増殖を低減するための方法が提示され、本方法は、
(a)式(1)の構造によって表される治療有効量の化合物、
【化5】
もしくはその薬学的に許容される塩、
または式(1)の化合物もしくはその薬学的に許容される塩を含む第1の薬学的組成物を投与することと、
(b)治療有効量の少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤、または少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤を含む第2の薬学的組成物を投与することであって、少なくとも1つの抗悪性腫瘍剤が、ピリミジン類似体、fms様キナーゼ-3(FLT-3)阻害剤、Bcl-2阻害剤、アントラサイクリン、またはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)阻害剤である、投与することとを含み、
第1および第2の薬学的組成物は、同時にまたは互いの4時間以内に対象に投与され、それにより対象におけるがん細胞増殖を低減し、
投与は、シタラビンおよび少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤、またはシタラビンおよび少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤を含む第2の薬学的組成物で治療した対象において観察される副作用と比較して、対象における副作用の低減をもたらし、副作用は、粘膜炎、下痢、または脱毛症のうちの少なくとも1つを含む。
【0023】
加えてまたはあるいは、がん細胞増殖を低減するための上記の方法であって、投与が、対象における副作用の低減をもたらす、方法は、以下の特徴のうちの1つ以上を個々にまたは組み合わせて含むことができる:第2の薬学的組成物は、第1の薬学的組成物の投与前、それと同時、またはその後に投与される;第2の薬学的組成物は、第1の薬学的組成物と同時に投与される;式(1)の共役体の薬学的に許容される塩は、有機酸または無機酸の塩であり、酢酸、塩酸、メタンスルホン酸、リン酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、ホウ酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アスコルビン酸、硫酸、マレイン酸、ギ酸、マロン酸、ニコチン酸、またはシュウ酸である;薬学的に許容される塩は、塩酸の塩である;ピリミジン類似体は、アザシチジン、デシタビン、グアデシタビン(SGI-110)、ゲムシタビン、またはジドブジンである;ピリミジン類似体は、アザシチジンである;Bcl-2阻害剤は、ベネトクラクス(ABT-199)である;FLT-3阻害剤は、ソラフェニブ、ミドスタウリン、キザルチニブ、クレノラニブ、またはギレルチニブである;アントラサイクリンは、ダウノルビシン、イダルビシン、またはドキソルビシンである;IDH阻害剤は、IDH1阻害剤、IDH2阻害剤、AG-120(インボシデニブ)、AG221(エナシデニブ)、IDH305、またはFT-2102である;IDH阻害剤は、IDH1阻害剤、IDH2阻害剤、またはAG-120(インボシデニブ)である;がんは、血液学的がんまたは非血液学的がんである;血液学的がんは、白血病、リンパ腫、骨髄腫、または骨髄異形成症候群(MDS)である;白血病は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、または慢性リンパ芽球性白血病(CLL)である;AMLは、新たに診断されたAML、続発性AML、または再発性/治療抵抗性AMLである;リンパ腫は、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫である;対象は、哺乳動物である;哺乳動物は、ヒトである;哺乳動物は、医学的に易感染性の哺乳動物である;ヒトは、医学的に易感染性のヒトである;医学的に易感染性の哺乳動物またはヒトは、高齢の哺乳動物もしくはヒト、肝機能障害を有する哺乳動物もしくはヒト、腎機能障害を有する哺乳動物もしくはヒト、膵機能障害を有する哺乳動物もしくはヒト、骨髄機能障害を有する哺乳動物もしくはヒト、小脳機能障害を有する哺乳動物もしくはヒト、免疫障害を有する哺乳動物もしくはヒト、治療抵抗性もしくは再発性血液学的がんを有する哺乳動物もしくはヒト、またはそれらの任意の組み合わせである;高齢のヒトは、70歳以上である;式(1)の共役体を含む薬学的組成物は、非経口投与される;第1の薬学的組成物は、静脈内投与される;対象に投与される式(1)の共役体の投薬量は、1日あたり対象の体表面積の約0.3g/m2~約6g/m2の範囲である;対象に投与される式(1)の共役体の投薬量は、1日あたり対象の体表面積の約0.8g/m2~約6g/m2の範囲である。
【0024】
別の態様によると、本発明は、対象におけるがん細胞成長を阻害する方法を提供し、本方法は、(A)治療有効量のアスパラギン酸とシタラビンとの共役体(本明細書以下でAsp-シタラビンと呼ばれる)またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物であって、シタラビンが、シタラビンが、式(1)によって表されるように、アスパラギン酸の側鎖官能基を通して該アスパラギン酸に結合している、薬学的組成物と、
【化6】
(b)治療有効量の少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤を含む薬学的組成物とを、対象に投与することを含む。特定の実施形態では、シタラビンに共役したAspは、L異性体である。別の特定の実施形態では、シタラビンに共役したAspは、D異性体である。
【0025】
いくつかの実施形態によると、Asp-シタラビンの薬学的に許容される塩は、有機酸もしくは無機酸または酸残基の塩である。追加の実施形態によると、酸は、酢酸、塩酸、メタンスルホン酸、リン酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、ホウ酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アスコルビン酸、硫酸、マレイン酸、ギ酸、マロン酸、ニコチン酸、およびシュウ酸からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0026】
一実施形態によると、薬学的に許容される塩は、酢酸の塩である。別の実施形態によると、薬学的に許容される塩は、塩酸(HCl)の塩である。
【0027】
追加の実施形態によると、抗悪性腫瘍剤は、小化学物質である。
【0028】
さらなる実施形態によると、小化学物質は、低メチル化剤/DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)阻害剤、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、ブロモドメインおよび末端外(BET)阻害剤、テロメアサイレンシング-1様の破壊因子(DOT1L)阻害剤、リジン特異的デメチラーゼ-1(LSD1)阻害剤、ならびにzeste相同体2のエンハンサー(EZH2)阻害剤からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0029】
いくつかの実施形態によると、低メチル化剤/DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)阻害剤は、アザシチジン、デシタビン、グアデシタビン(SGI-110)、ゲムシタビン、およびジドブジンからなる群から選択されるピリミジン類似体である。
【0030】
追加の実施形態によると、IDH阻害剤は、IDH1阻害剤、IDH2阻害剤、AG-120(インボシデニブ)、AG221(エナシデニブ)、IDH305、およびFT-2102からなる群から選択される。
【0031】
さらなる実施形態によると、HDAC阻害剤は、ベリノスタット、パノビノスタット、ボリノスタット、エンチノスタット、プラシノスタット(pracinostat)、レナリドミド、およびロミデプシンからなる群から選択される。
【0032】
またさらなる実施形態によると、BET阻害剤は、OTX015、TEN-010、GSK525762、およびCPI-0610からなる群から選択される。
【0033】
追加の実施形態によると、DOT1L阻害剤は、ピノメトスタット(pinometostat)である。
【0034】
追加の実施形態によると、LSD1阻害剤は、トラニルシプロミド(tranylcypromide)(TCP)、GSK2879552、ORY-1001、およびIMG-7289からなる群から選択される。
【0035】
またさらなる実施形態によると、EZH2阻害剤は、GSK126またはタゼメトスタット(Tazemetostat)である。
【0036】
追加の実施形態によると、小化学物質は、抗代謝剤、Bcl-2阻害剤、アントラサイクリン、アントラセンジオン、抗微小管剤、アルキル化剤、シスプラチンおよびシスプラチン類似体、抗腫瘍抗生剤、トポイソメラーゼ阻害剤、サリドマイドおよびサリドマイド類似体、血管新生阻害剤、プロテアソーム阻害剤、ソニックヘッジホッグ経路阻害剤、キナーゼ阻害剤、タンパク質翻訳阻害剤、熱ショックタンパク質阻害剤、サイトカイン経路阻害剤、テロメアサイレンシング阻害剤、細胞周期阻害剤、マウス二重微小染色体-2(Mdm-2)阻害剤、副腎皮質ステロイド、全トランス型レチノイン酸、フェンレチニド、三酸化ヒ素、ならびにヒドロキシ尿素からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0037】
またさらなる実施形態によると、抗代謝剤は、ピリミジン類似体、プリン類似体、キノロン誘導体、および葉酸代謝拮抗剤からなる群から選択される。
【0038】
依然さらなる実施形態によると、ピリミジン類似体は、アザシチジン、デシタビン、グアデシタビン(SGI-110)、ゲムシタビン、およびジドブジンからなる群から選択される。
【0039】
またさらなる実施形態によると、プリン類似体は、クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、ネララビン、ペントスタチン、6-メルカプトプリン、およびガンシクロビルからなる群から選択される。
【0040】
またさらなる実施形態によると、キノロン誘導体は、ボサロキシンである。
【0041】
依然さらなる実施形態によると、葉酸代謝拮抗剤は、メトトレキサートおよびプララトレキサートからなる群から選択される。
【0042】
別の実施形態によると、Bcl-2阻害剤は、ベネトクラクス(ABT-199)である。
【0043】
またさらなる実施形態によると、アントラサイクリンは、ダウノルビシン、イダルビシン、およびドキソルビシンからなる群から選択される。
【0044】
別の実施形態によると、アントラセンジオンは、ミトキサントロンである。
【0045】
追加の実施形態によると、抗微小管剤は、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびビノレルビンからなる群から選択される。
【0046】
またさらなる実施形態によると、アルキル化剤は、シクロホスファミド、ベンダムスチン、クロラムブシル、およびイホスファミドからなる群から選択される。
【0047】
またさらなる実施形態によると、シスプラチン類似体は、オキサリプラチンおよびカルボプラチンからなる群から選択される。
【0048】
依然さらなる実施形態によると、抗腫瘍抗生剤は、シクロスポリン、ブレオマイシン、シロリムス(ラパマイシン)、およびエバロリムス(evarolimus)からなる群から選択される。
【0049】
またさらなる実施形態によると、トポイソメラーゼ阻害剤は、エトポシド、ボサロキシン、およびトポテカンからなる群から選択される。
【0050】
さらなる実施形態によると、サリドマイド類似体は、レナリドミドおよびポマリドミドからなる群から選択される。
【0051】
依然さらなる実施形態によると、血管新生阻害剤は、イトラコナゾール、カルボキシアミドトリアゾール、アンジオスタチン、エンドスタチン、サリドマイド、およびレナリドミドからなる群から選択される。
【0052】
またさらなる実施形態によると、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、イキサゾミブ、ペボネジスタット、カルフィルゾミブ、およびパノビノスタットからなる群から選択される。
【0053】
別の実施形態によると、ソニックヘッジホッグ経路阻害剤は、グラスデギブである。
【0054】
またさらなる実施形態によると、キナーゼ阻害剤は、チロシンキナーゼ阻害剤、セリン/チロシンキナーゼ阻害剤、イノシトールリン脂質キナーゼ阻害剤、およびサイクリン依存性キナーゼ阻害剤からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0055】
依然さらなる実施形態によると、チロシンキナーゼ阻害剤は、fms様チロシンキナーゼ阻害剤3(FLT3)、成長因子チロシンキナーゼ阻害剤、Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤、脾臓チロシンキナーゼ阻害剤、ヤヌスキナーゼ(jak)阻害剤、ブルトンチロシンキナーゼ阻害剤、および未分化リンパ腫キナーゼ(Alk)阻害剤からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0056】
またさらなる実施形態によると、FLT3阻害剤は、ミドスタウリン、ギルテリチニブ、キザルチニブ、ボルテゾミブ、レスタウルチニブ、カボザンチニブ(cabozantanib)、スニチニブ、およびクレノラニブからなる群から選択される。
【0057】
別の実施形態によると、成長因子チロシンキナーゼ阻害剤は、ソラフェニブである。
【0058】
いくつかの実施形態によると、Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤は、イマチニブ(Gleevec)、ポナチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ボスチニブ、およびアスシミニブ(asciminib)からなる群から選択される。
【0059】
またさらなる実施形態によると、脾臓チロシンキナーゼ阻害剤は、エントプレチニブ(entoplentinib)およびホスタマチニブからなる群から選択される。
【0060】
他の実施形態によると、ヤヌスキナーゼ(Jak)阻害剤は、トファシチニブ、ルキソリチニブ、オクラシチニブ、イタシチニブ、およびバリシチニブからなる群から選択される。
【0061】
いくつかの実施形態によると、ブルトンチロシンキナーゼ阻害剤は、イブルチニブ、チラブルチニブ(tirabrutinib)、およびスペブルチニブ(spebrutinib)からなる群から選択される。
【0062】
追加の実施形態によると、未分化リンパ腫キナーゼ(Alk)阻害剤は、ブリガチニブ、セリチニブ(seritinib)、クリゾチニブ、およびアレクチニブからなる群から選択される。
【0063】
またさらなる実施形態によると、セリン/チロシンキナーゼ阻害剤は、ベムラフェニブおよびボラセルチブからなる群から選択される。
【0064】
またさらなる実施形態によると、イノシトールリン脂質キナーゼ阻害剤は、イダレリシブ(idalelisib)、デュベリシブ、ペリホシン、ウムブラリシブ、コパンリシブ、およびブパリシブからなる群から選択される。
【0065】
依然さらなる実施形態によると、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤は、パルボシクリブ、アルボシジブ、およびディナシクリブからなる群から選択される。
【0066】
別の実施形態によると、タンパク質翻訳阻害剤は、オマセタキシンである。またさらなる実施形態によると、熱ショックタンパク質阻害剤は、ガネテスピド(ganetespid)およびガミトリニブからなる群から選択される。
【0067】
またさらなる実施形態によると、サイトカイン経路阻害剤は、ウロクプルマブである。
【0068】
またさらなる実施形態によると、テロメアサイレンシング阻害剤は、EPZ-5676である。
【0069】
依然さらなる実施形態によると、細胞周期阻害剤は、p27Kip1である。
【0070】
別の実施形態によると、Mdm-2阻害剤は、イダサヌツリンである。
【0071】
依然さらなる実施形態によると、副腎皮質ステロイドは、プレドニゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、およびヒドロコルチゾンからなる群から選択される。
【0072】
いくつかの実施形態によると、抗悪性腫瘍剤は、抗悪性腫瘍活性を有する、ペプチド、タンパク質、または抗体である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0073】
さらなる実施形態によると、抗悪性腫瘍活性を有するペプチドは、ペプチド抗生物質、ペプチドアンタゴニスト、またはペプチド模倣薬である。
【0074】
一実施形態によると、ペプチド抗生物質は、ブレオマイシンである。
【0075】
別の実施形態によると、ペプチドアンタゴニストは、BL-8040(CXCR4アンタゴニスト)である。
【0076】
さらなる実施形態によると、ペプチド模倣薬は、TL32711である。
【0077】
追加の実施形態によると、抗悪性腫瘍活性を有するタンパク質は、サイトカインまたはそれらの融合タンパク質、インターフェロンまたはそれらの融合タンパク質、エリスロポエチン類似体、およびアスパラギナーゼからなる群から選択される。
【0078】
またさらなる実施形態によると、サイトカイン、インターフェロン、またはそれらの融合タンパク質は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF/CSF-3)、インターフェロン-アルファ、およびインターフェロンの融合タンパク質、CD123阻害剤(例えば、SL-401)からなる群から選択される。
【0079】
別の実施形態によると、エリスロポエチン類似体は、ダルベポエチンである。
【0080】
またさらなる実施形態によると、抗悪性腫瘍活性を有する抗体は、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD30抗体、抗CD33抗体、抗CD37抗体、抗CD38抗体、抗CD47抗体、抗CD52抗体、抗CD79抗体、抗CD80抗体、抗CD123(IL3)抗体、免疫チェックポイント阻害剤、抗CXCR抗体、抗成長因子抗体または成長因子受容体抗体、抗メタロプロテイナーゼ抗体、抗セレクチン抗体、および抗体-薬物共役体からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0081】
またさらなる実施形態によると、抗CD19抗体は、ブリナツモマブおよびコルツキシマブからなる群から選択される。
【0082】
依然さらなる実施形態によると、抗CD20抗体は、リツキシマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、ベルツズマブ、オカラツズマブ、およびウブリツキシマブからなる群から選択される。
【0083】
またさらなる実施形態によると、抗CD22抗体は、ベプラツズマブ(bepratuzumab)およびイノツズマブからなる群から選択される。
【0084】
一実施形態によると、抗CD30抗体は、ブレンツキシマブである。
【0085】
追加の実施形態によると、抗CD33抗体は、ゲムツズマブである。
【0086】
さらなる実施形態によると、抗CD37抗体は、オトレルツズマブである。
【0087】
またさらなる実施形態によると、抗CD38抗体は、ダラツゾモマブ(daratuzomomab)およびイザツキシマブ(izatuximab)からなる群から選択される。
【0088】
またさらなる実施形態によると、抗CD47抗体は、Hu5F9およびCC-90002からなる群から選択される。
【0089】
またさらなる実施形態によると、抗CD52抗体は、アレムツズマブである。
【0090】
別の実施形態によると、抗CD79抗体は、ポラツズマブである。
【0091】
さらなる実施形態によると、抗CD80抗体は、ガリキシマブである。
【0092】
またさらなる実施形態によると、抗CD123抗体は、CSL362およびタラコツズマブ(talacotuzumab)からなる群から選択される。
【0093】
またさらなる実施形態によると、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、および抗細胞毒性T-リンパ球関連タンパク質(CTLA)抗体からなる群から選択される。
【0094】
依然さらなる実施形態によると、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、およびピディリズマブからなる群から選択される。
【0095】
またさらなる実施形態によると、抗PD-L1抗体は、デュルバルマブおよびアテゾリズマブからなる群から選択される。
【0096】
一実施形態によると、抗CTLA抗体は、イピリムマブである。
【0097】
追加の実施形態によると、抗CXCR抗体は、ウロクプルマブである。
【0098】
またさらなる実施形態によると、抗成長因子抗体または成長因子受容体抗体はそれぞれ、ベバシズマブ(Avastin)またはパニツムマブ(抗EGFR抗体)である。
【0099】
一実施形態によると、抗メタロプロテイナーゼ抗体は、アンデカリキシマブ(抗MMP9抗体)である。
【0100】
追加の実施形態によると、抗セレクチン抗体は、クリザンリズマブ(抗p-セレクチン抗体)である。
【0101】
またさらなる実施形態によると、抗体-薬物共役体は、ゲムツズマブ-オゾガマイシン(ozogamycin)、イノツズマブ-オゾガマイシン、コルツキシマブ-ラブタンシン、ポラツズマブ-ベドチン、バダスツキシマブ-タリリン、およびデニノツズマブ(deninotuzumab)-マホドチンからなる群から選択される。
【0102】
いくつかの実施形態によると、抗悪性腫瘍剤は、がん細胞成長を阻害することができる免疫細胞に結合または付着している。
【0103】
またさらなる実施形態によると、免疫細胞は、キメラ抗原受容体T細胞(CART)である。一実施形態によると、CARTは、CART123である。
【0104】
追加の実施形態によると、がん細胞成長を阻害する方法は、血液学的がんおよび非血液学的がんからなる群から選択されるがんを治療することをさらに含む。
【0105】
またさらなる実施形態によると、血液学的がんは、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、および骨髄異形成症候群(MDS)からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0106】
またさらなる実施形態によると、白血病は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、および慢性リンパ芽球性白血病(CLL)からなる群から選択される。
【0107】
依然さらなる実施形態によると、AMLは、新たに診断されたAML、続発性AML、および再発性/治療抵抗性AMLからなる群から選択される。
【0108】
またさらなる実施形態によると、リンパ腫は、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫(NHL)から選択される。
【0109】
いくつかの実施形態によると、対象は、標準的な用量のシタラビンによる治療または他の標準的な化学療法治療が受け入れられない、医学的に易感染性の対象である。
【0110】
いくつかの実施形態によると、医学的に易感染性の対象は、高齢の対象、肝機能障害を有する対象、腎機能障害を有する対象、膵機能障害を有する対象、骨髄機能障害を有する対象、小脳機能障害を有する対象、免疫障害を有する対象、シタラビンの使用を制限する任意の他の器官の機能障害を有する対象、再発性または治療抵抗性血液学的がんを有する対象、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0111】
追加の実施形態によると、高齢の対象は、75または85歳以上の対象などの70歳以上の対象である。
【0112】
またさらなる実施形態によると、Asp-シタラビンを含む薬学的組成物、および抗悪性腫瘍剤を含む薬学的組成物は各々、非経口、経口、経鼻、局所、経皮、腟内、および直腸経路からなる群から選択される経路によって独立して投与される。
【0113】
またさらなる実施形態によると、非経口投与経路は、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、皮内、および経皮投与経路からなる群から選択される。一実施形態によると、Asp-シタラビンを含む薬学的組成物は、静脈内投与される。例示的な実施形態によると、Asp-シタラビンを含む薬学的組成物は、静脈内注入によって投与される。別の例示的な実施形態によると、抗悪性腫瘍剤は、経口、皮下、または静脈内投与されるアザシチジンである。別の例示的な実施形態によると、抗悪性腫瘍剤は、皮下または静脈内投与されるABT-199である。
【0114】
またさらなる実施形態によると、Asp-シタラビンは、対象の表面積の約0.3g/m2、0.5g/m2、0.8g/m2、1g/m2、1.5g/m2、2g/m2、2.3g/m2、2.5g/m2、3g/m2、3.5g/m2、4g/m2、4.5g/m2、もしくは6g/m2の1日用量、またはそれらの間の任意の用量などの、対象の体表面積の約0.3g/m2~約10g/m2の範囲の1日用量で投与される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0115】
追加の実施形態によると、Asp-シタラビンを含む薬学的組成物は、4日間にわたって、5、6、8、10、12、もしくは15日間連続で、またはそれらの間の任意の整数などの、少なくとも3日間にわたって1日1回投与される。またさらなる実施形態によると、Asp-シタラビンを含む薬学的組成物は、1ヶ月に1回または2回、6日間連続で1日1回投与される。
【0116】
またさらなる実施形態によると、Asp-シタラビンを含む薬学的組成物は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、3週間、または少なくとも1ヶ月にわたって、1日おきに投与される。
【0117】
またさらなる実施形態によると、追加の抗悪性腫瘍剤を含む薬学的組成物は、4日間にわたって、5、6、8、10、12、もしくは20日間連続で、またはそれらの間の任意の整数などの、少なくとも3日間にわたって1日1回または2回投与される。
【0118】
またさらなる実施形態によると、追加の抗悪性腫瘍剤を含む薬学的組成物は、1ヶ月に1回または2回、3~15日間連続で1日1回または2回投与される。
【0119】
追加の実施形態によると、追加の抗悪性腫瘍剤を含む薬学的組成物は、Asp-シタラビンを含む薬学的組成物の投与前、それと同時、および/またはその後に投与される。
【0120】
別の態様によると、本発明は、対象におけるがん細胞成長を阻害する方法を提供し、本方法は、(i)治療有効量のアスパラギン酸とシタラビンとの共役体(本明細書でAsp-シタラビンと呼ばれる)またはその薬学的に許容される塩であって、シタラビンが、以下の式(1)によって表されるように、アスパラギン酸の側鎖官能基を通して該アスパラギン酸に結合している、治療有効量のアスパラギン酸とシタラビンとの共役体またはその薬学的に許容される塩と、
【化7】
(ii)治療有効量の少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤とを含む、薬学的組成物を、対象に投与することとを含む。
【0121】
いくつかの実施形態によると、Asp-シタラビンの薬学的に許容される塩は、有機酸もしくは無機酸または酸残基の塩である。追加の実施形態によると、酸は、酢酸、塩酸、メタンスルホン酸、リン酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、ホウ酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アスコルビン酸、硫酸、マレイン酸、ギ酸、マロン酸、ニコチン酸、およびシュウ酸からなる群から選択される。特定の実施形態によると、薬学的に許容される塩は、酢酸の塩である。別の実施形態によると、薬学的に許容される塩は、塩酸の塩である。
【0122】
追加の実施形態によると、抗悪性腫瘍剤は、小化学物質である。
【0123】
さらなる実施形態によると、小化学物質は、低メチル化剤/DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)阻害剤、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、ブロモドメインおよび末端外(BET)阻害剤、テロメアサイレンシング-1様の破壊因子(DOT1L)阻害剤、リジン特異的デメチラーゼ-1(LSD1)阻害剤、ならびにzeste相同体2のエンハンサー(EZH2)阻害剤からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0124】
いくつかの実施形態によると、低メチル化剤/DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)阻害剤は、アザシチジン、デシタビン、グアデシタビン(SGI-110)、ゲムシタビン、およびジドブジンからなる群から選択されるピリミジン類似体である。
【0125】
追加の実施形態によると、IDH阻害剤は、IDH1阻害剤、IDH2阻害剤、AG-120(インボシデニブ)、AG221(エナシデニブ)、IDH305、およびFT-2102からなる群から選択される。
【0126】
さらなる実施形態によると、HDAC阻害剤は、ベリノスタット、パノビノスタット、ボリノスタット、エンチノスタット、プラシノスタット、レナリドミド、およびロミデプシンからなる群から選択される。
【0127】
またさらなる実施形態によると、BET阻害剤は、OTX015、TEN-010、GSK525762、およびCPI-0610からなる群から選択される。
【0128】
追加の実施形態によると、DOT1L阻害剤は、ピノメトスタットである。
【0129】
追加の実施形態によると、LSD1阻害剤は、トラニルシプロミド(TCP)、GSK2879552、ORY-1001、およびIMG-7289からなる群から選択される。
【0130】
またさらなる実施形態によると、EZH2阻害剤は、GSK126またはタゼメトスタットである。
【0131】
追加の実施形態によると、小化学物質は、抗代謝剤、Bcl-2阻害剤、アントラサイクリン、アントラセンジオン、抗微小管剤、アルキル化剤、シスプラチンおよびシスプラチン類似体、抗腫瘍抗生剤、トポイソメラーゼ阻害剤、サリドマイドおよびサリドマイド類似体、血管新生阻害剤、プロテアソーム阻害剤、ソニックヘッジホッグ経路阻害剤、キナーゼ阻害剤、タンパク質翻訳阻害剤、熱ショックタンパク質阻害剤、サイトカイン経路阻害剤、テロメアサイレンシング阻害剤、細胞周期阻害剤、マウス二重微小染色体-2(Mdm-2)阻害剤、副腎皮質ステロイド、全トランス型レチノイン酸、フェンレチニド、三酸化ヒ素、ならびにヒドロキシ尿素からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0132】
またさらなる実施形態によると、抗代謝剤は、ピリミジン類似体、プリン類似体、キノロン誘導体、および葉酸代謝拮抗剤からなる群から選択される。
【0133】
依然さらなる実施形態によると、ピリミジン類似体は、アザシチジン、デシタビン、グアデシタビン(SGI-110)、ゲムシタビン、およびジドブジンからなる群から選択される。
【0134】
またさらなる実施形態によると、プリン類似体は、クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、ネララビン、ペントスタチン、6-メルカプトプリン、およびガンシクロビルからなる群から選択される。
【0135】
またさらなる実施形態によると、キノロン誘導体は、ボサロキシンである。
【0136】
依然さらなる実施形態によると、葉酸代謝拮抗剤は、メトトレキサートおよびプララトレキサートからなる群から選択される。
【0137】
別の実施形態によると、Bcl-2阻害剤は、ベネトクラクス(ABT-199)である。
【0138】
またさらなる実施形態によると、アントラサイクリンは、ダウノルビシン、イダルビシン、およびドキソルビシンからなる群から選択される。
【0139】
別の実施形態によると、アントラセンジオンは、ミトキサントロンである。
【0140】
追加の実施形態によると、抗微小管剤は、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびビノレルビンからなる群から選択される。
【0141】
またさらなる実施形態によると、アルキル化剤は、シクロホスファミド、ベンダムスチン、クロラムブシル、およびイホスファミドからなる群から選択される。
【0142】
またさらなる実施形態によると、シスプラチン類似体は、オキサリプラチンおよびカルボプラチンからなる群から選択される。
【0143】
依然さらなる実施形態によると、抗腫瘍抗生剤は、シクロスポリン、ブレオマイシン、シロリムス(ラパマイシン)、およびエバロリムスからなる群から選択される。
【0144】
またさらなる実施形態によると、トポイソメラーゼ阻害剤は、エトポシド、ボサロキシン、およびトポテカンからなる群から選択される。
【0145】
さらなる実施形態によると、サリドマイド類似体は、レナリドミドおよびポマリドミドからなる群から選択される。
【0146】
依然さらなる実施形態によると、血管新生阻害剤は、イトラコナゾール、カルボキシアミドトリアゾール、アンジオスタチン、エンドスタチン、サリドマイド、およびレナリドミドからなる群から選択される。
【0147】
またさらなる実施形態によると、プロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ、イキサゾミブ、ペボネジスタット、カルフィルゾミブ、およびパノビノスタットからなる群から選択される。
【0148】
別の実施形態によると、ソニックヘッジホッグ経路阻害剤は、グラスデギブである。
【0149】
またさらなる実施形態によると、キナーゼ阻害剤は、チロシンキナーゼ阻害剤、セリン/チロシンキナーゼ阻害剤、イノシトールリン脂質キナーゼ阻害剤、およびサイクリン依存性キナーゼ阻害剤からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0150】
依然さらなる実施形態によると、チロシンキナーゼ阻害剤は、fms様チロシンキナーゼ阻害剤3(FLT3)、成長因子チロシンキナーゼ阻害剤、Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤、脾臓チロシンキナーゼ阻害剤、ヤヌスキナーゼ(jak)阻害剤、ブルトンチロシンキナーゼ阻害剤、および未分化リンパ腫キナーゼ(Alk)阻害剤からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0151】
またさらなる実施形態によると、FLT3阻害剤は、ミドスタウリン、ギルテリチニブ、キザルチニブ、ボルテゾミブ、レスタウルチニブ、カボザンチニブ、スニチニブ、およびクレノラニブからなる群から選択される。
【0152】
別の実施形態によると、成長因子チロシンキナーゼ阻害剤は、ソラフェニブである。
【0153】
いくつかの実施形態によると、Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤は、イマチニブ(Gleevec)、ポナチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ボスチニブ、およびアスシミニブからなる群から選択される。
【0154】
またさらなる実施形態によると、脾臓チロシンキナーゼ阻害剤は、エントプレチニブおよびホスタマチニブからなる群から選択される。
【0155】
他の実施形態によると、ヤヌスキナーゼ(Jak)阻害剤は、トファシチニブ、ルキソリチニブ、オクラシチニブ、イタシチニブ、およびバリシチニブからなる群から選択される。
【0156】
いくつかの実施形態によると、ブルトンチロシンキナーゼ阻害剤は、イブルチニブ、チラブルチニブ、およびスペブルチニブからなる群から選択される。
【0157】
追加の実施形態によると、未分化リンパ腫キナーゼ(Alk)阻害剤は、ブリガチニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、およびアレクチニブからなる群から選択される。
【0158】
またさらなる実施形態によると、セリン/チロシンキナーゼ阻害剤は、ベムラフェニブおよびボラセルチブからなる群から選択される。
【0159】
またさらなる実施形態によると、イノシトールリン脂質キナーゼ阻害剤は、イダレリシブ、デュベリシブ、ペリホシン、ウムブラリシブ、コパンリシブ、およびブパリシブからなる群から選択される。
【0160】
依然さらなる実施形態によると、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤は、パルボシクリブ、アルボシジブ、およびディナシクリブからなる群から選択される。
【0161】
別の実施形態によると、タンパク質翻訳阻害剤は、オマセタキシンである。
【0162】
またさらなる実施形態によると、熱ショックタンパク質阻害剤は、ガネテスピドおよびガミトリニブからなる群から選択される。
【0163】
またさらなる実施形態によると、サイトカイン経路阻害剤は、ウロクプルマブである。
【0164】
またさらなる実施形態によると、テロメアサイレンシング阻害剤は、EPZ-5676である。
【0165】
依然さらなる実施形態によると、細胞周期阻害剤は、p27Kip1である。
【0166】
別の実施形態によると、Mdm-2阻害剤は、イダサヌツリンである。
【0167】
依然さらなる実施形態によると、副腎皮質ステロイドは、プレドニゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、およびヒドロコルチゾンからなる群から選択される。
【0168】
いくつかの実施形態によると、抗悪性腫瘍剤は、抗悪性腫瘍活性を有する、ペプチド、タンパク質、または抗体である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0169】
さらなる実施形態によると、抗悪性腫瘍活性を有するペプチドは、ペプチド抗生物質、ペプチドアンタゴニスト、またはペプチド模倣薬である。
【0170】
一実施形態によると、ペプチド抗生物質は、ブレオマイシンである。
【0171】
別の実施形態によると、ペプチドアンタゴニストは、BL-8040(CXCR4アンタゴニスト)である。
【0172】
さらなる実施形態によると、ペプチド模倣薬は、TL32711である。
【0173】
追加の実施形態によると、抗悪性腫瘍活性を有するタンパク質は、サイトカインまたはそれらの融合タンパク質、インターフェロンまたはそれらの融合タンパク質、エリスロポエチン類似体、およびアスパラギナーゼからなる群から選択される。
【0174】
またさらなる実施形態によると、サイトカイン、インターフェロン、またはそれらの融合タンパク質は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF/CSF-3)、インターフェロン-アルファ、およびインターフェロンの融合タンパク質、CD123阻害剤(例えば、SL-401)からなる群から選択される。
【0175】
別の実施形態によると、エリスロポエチン類似体は、ダルベポエチンである。
【0176】
またさらなる実施形態によると、抗悪性腫瘍活性を有する抗体は、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD30抗体、抗CD33抗体、抗CD37抗体、抗CD38抗体、抗CD47抗体、抗CD52抗体、抗CD79抗体、抗CD80抗体、抗CD123(IL3)抗体、免疫チェックポイント阻害剤、抗CXCR抗体、抗成長因子抗体または成長因子受容体抗体、抗メタロプロテイナーゼ抗体、抗セレクチン抗体、および抗体-薬物共役体からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0177】
またさらなる実施形態によると、抗CD19抗体は、ブリナツモマブおよびコルツキシマブからなる群から選択される。
【0178】
依然さらなる実施形態によると、抗CD20抗体は、リツキシマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、ベルツズマブ、オカラツズマブ、およびウブリツキシマブからなる群から選択される。
【0179】
またさらなる実施形態によると、抗CD22抗体は、ベプラツズマブおよびイノツズマブからなる群から選択される。
【0180】
一実施形態によると、抗CD30抗体は、ブレンツキシマブである。
【0181】
追加の実施形態によると、抗CD33抗体は、ゲムツズマブである。
【0182】
さらなる実施形態によると、抗CD37抗体は、オトレルツズマブである。
【0183】
またさらなる実施形態によると、抗CD38抗体は、ダラツゾモマブおよびイザツキシマブからなる群から選択される。
【0184】
またさらなる実施形態によると、抗CD47抗体は、Hu5F9およびCC-90002からなる群から選択される。
【0185】
またさらなる実施形態によると、抗CD52抗体は、アレムツズマブである。
【0186】
別の実施形態によると、抗CD79抗体は、ポラツズマブである。
【0187】
さらなる実施形態によると、抗CD80抗体は、ガリキシマブである。
【0188】
またさらなる実施形態によると、抗CD123抗体は、CSL362およびタラコツズマブからなる群から選択される。
【0189】
またさらなる実施形態によると、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、および抗細胞毒性T-リンパ球関連タンパク質(CTLA)抗体からなる群から選択される。
【0190】
依然さらなる実施形態によると、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、およびピディリズマブからなる群から選択される。
【0191】
またさらなる実施形態によると、抗PD-L1抗体は、デュルバルマブおよびアテゾリズマブからなる群から選択される。
【0192】
一実施形態によると、抗CTLA抗体は、イピリムマブである。
【0193】
追加の実施形態によると、抗CXCR抗体は、ウロクプルマブである。またさらなる実施形態によると、抗成長因子抗体または成長因子受容体抗体はそれぞれ、ベバシズマブ(Avastin)またはパニツムマブ(抗EGFR抗体)である。
【0194】
一実施形態によると、抗メタロプロテイナーゼ抗体は、アンデカリキシマブ(抗MMP9抗体)である。
【0195】
追加の実施形態によると、抗セレクチン抗体は、クリザンリズマブ(抗p-セレクチン抗体)である。
【0196】
またさらなる実施形態によると、抗体-薬物共役体は、ゲムツズマブ-オゾガマイシン、イノツズマブ-オゾガマイシン、コルツキシマブ-ラブタンシン、ポラツズマブ-ベドチン、バダスツキシマブ-タリリン、およびデニノツズマブ-マホドチンからなる群から選択される。
【0197】
いくつかの実施形態によると、抗悪性腫瘍剤は、がん細胞成長を阻害することができる免疫細胞に結合または付着している。
【0198】
またさらなる実施形態によると、免疫細胞は、キメラ抗原受容体T細胞(CART)である。一実施形態によると、CARTは、CART123である。
【0199】
追加の実施形態によると、がん細胞成長を阻害する方法は、血液学的がんおよび非血液学的がんからなる群から選択されるがんを治療することをさらに含む。
【0200】
またさらなる実施形態によると、血液学的がんは、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、および骨髄異形成症候群(MDS)からなる群から選択される。
【0201】
またさらなる実施形態によると、白血病は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、および慢性リンパ芽球性白血病(CLL)からなる群から選択される。
【0202】
依然さらなる実施形態によると、AMLは、新たに診断されたAML、続発性AML、および再発性/治療抵抗性AMLからなる群から選択される。
【0203】
またさらなる実施形態によると、リンパ腫は、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫(NHL)から選択される。
【0204】
いくつかの実施形態によると、対象は、標準的な用量のシタラビンによる治療または他の標準的な化学療法治療が受け入れられない、医学的に易感染性の対象である。
【0205】
またさらなる実施形態によると、医学的に易感染性の対象は、高齢の対象、肝機能障害を有する対象、腎機能障害を有する対象、膵機能障害を有する対象、骨髄機能障害を有する対象、小脳機能障害を有する対象、免疫障害を有する対象、シタラビンの使用を制限する任意の他の器官の機能障害を有する対象、再発性または治療抵抗性血液学的がんを有する対象、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0206】
追加の実施形態によると、高齢の対象は、75、80、または85歳以上の対象などの70歳以上の対象である。
【0207】
またさらなる実施形態によると、Asp-シタラビンは、対象の表面積の約0.3g/m2、0.5g/m2、0.8g/m2、1g/m2、1.5g/m2、2g/m2、2.3g/m2、2.5g/m2、3g/m2、3.5g/m2、4g/m2、4.5g/m2、もしくは6g/m2の1日用量、またはそれらの間の任意の用量などの、対象の体表面積の約0.3g/m2~約10g/m2の範囲の1日用量で投与される。
【0208】
依然さらなる実施形態によると、本薬学的組成物は、非経口投与される。またさらなる実施形態によると、本薬学的組成物は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、くも膜下腔内、皮内、経皮、または小胞内投与経路によって投与される。特定の実施形態によると、本薬学的組成物は、好ましくは注入によって静脈内投与される。
【0209】
追加の実施形態によると、本薬学的組成物は、4日間にわたって、5、6、8、10、12、もしくは20日間連続で、またはそれらの間の任意の整数などの、少なくとも3日間にわたって1日1回投与される。またさらなる実施形態によると、本薬学的組成物は、1ヶ月に1回または2回、6日間連続で1日1回投与される。またさらなる実施形態によると、本薬学的組成物は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、3週間、または少なくとも1ヶ月にわたって、1日おきに投与される。
【0210】
別の態様によると、本発明は、がん細胞成長の阻害における使用のための第1の薬学的組成物および第2の薬学的組成物を提供し、第1の薬学的組成物は、治療有効量のアスパラギン酸とシタラビンとの共役体またはその薬学的に許容される塩を含み、シタラビンは、以下の式(1)によって表されるように、アスパラギン酸の側鎖官能基を通して該アスパラギン酸に結合しており、
【化8】
第2の薬学的組成物は、本発明の原理に従う、治療有効量の少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤を含む。
【0211】
別の態様によると、本発明は、がん細胞成長の阻害における使用のための薬学的組成物を提供し、本薬学的組成物は、(i)式(1)の治療有効量のアスパラギン酸とシタラビンとの共役体またはその薬学的に許容される塩と、(ii)本発明の原理に従う、治療有効量の追加の抗悪性腫瘍剤とを含む。
【0212】
本発明のこれらおよび他の実施形態は、以下の図面、発明を実施するための形態、および特許請求の範囲と組み合わせて、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【
図1】インビトロでのU937細胞の増殖および生存に対するAsp-シタラビン(Asp-Cyt)およびアザシチジン(AZA)の併用の阻害効果を示す。
【
図2】インビトロでのMolt-4細胞の増殖および生存に対するAsp-シタラビン(Asp-Cyt)およびアザシチジン(AZA)の併用の阻害効果を示す。
【
図3】インビトロでのU937細胞の増殖および生存に対するAsp-シタラビン(Asp-Cyt)およびABT-199(ABT)の併用の阻害効果を示す。
【
図4】BST-236(BST、Asp-シタラビン)およびアザシチジン(AZA)の併用のインビボデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0214】
本発明は、対象におけるがん細胞増殖を低減する方法を提供し、本方法は、アスパラギン酸に共有結合したシタラビンの共役体(本明細書でBST-236、Asp-シタラビン、またはAsp-Cytと称される)を、1つ以上の追加の抗悪性腫瘍剤と併用して、対象に投与することを含む。本発明の方法は、がんの治療を必要とする対象におけるがんの治療に特に有用である。1つ以上の追加の抗悪性腫瘍剤と併用したBST-236の相乗効果は、その併用で治療した対象に治療利益を与え、それにより罹患率および/または死亡率に関する予後の改善とともに、そのような対象に治療レジメンの改善を提供する。
【0215】
特定の実施形態では、対象は、医学的に易感染性の対象である。そのような対象/患者は、典型的には、重度の有害作用が原因で、他の抗悪性腫瘍剤と併用した非共役の高用量のシタラビンで治療することができないため、十分に有効ではない低用量のシタラビンが与えられるか、または支持療法のみが与えられる。
【0216】
したがって、この実施形態では、本発明は、血液学的がんを有すると診断されているが、高用量のシタラビンで治療することができない、医学的に易感染性の患者を治療することに対する長年にわたる必要性を満たす。本発明の共役体は、非共役形態で投与した場合、特に1つ、2つ、またはそれ以上の追加の抗悪性腫瘍剤と併用した場合に毒性である用量のシタラビンを用いた、これらのがん患者の併用療法を可能にする。
【0217】
アミノ酸および増殖性疾患
アスパラギンは、急速に増殖する細胞によって必要とされる非必須アミノ酸である。哺乳動物細胞は、ATP依存性酵素アスパラギンシンテターゼ(EC6.3.5.4)を使用して、アスパラギン酸からアスパラギンを合成することができ、アスパラギンシンテターゼは、以下のように表され得る反応において、アミノ基をグルタミンのアミドからアスパラギン酸のβ-カルボキシルへと伝達する:
グルタミン+アスパラギン酸+ATP+H2O=グルタミン酸+アスパラギン+AMP+PPi。
【0218】
悪性細胞は、多くの場合、それらの代謝および増殖を支持するために、より多量のアミノ酸(アスパラギンを含む)を必要とする。多量のアミノ酸に対する必要性を満たすために、悪性細胞は、アミノ酸をそれらの環境から能動的に輸送する能力を発達させる。さらに、アスパラギンシンテターゼの欠乏は、特定の腫瘍において生じ、それにより腫瘍は、血清などの他の供給源からのアスパラギンの外部供給に依存せざるを得なくなる。この観察は、化学療法剤としての酵素L-アスパラギナーゼ(CE3.5.1.1)の開発につながった。L-アスパラギナーゼは、L-アスパラギンをアスパラギン酸およびアンモニアに加水分解し、それにより血清からのL-アスパラギンを枯渇させ、腫瘍成長を阻害する。L-アスパラギナーゼは主に、急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療において使用されており、急性非リンパ球性白血病を含む他の血液学的がんに対して、いくらかの活性を示している。
【0219】
診療所で使用されるL-アスパラギナーゼは、細菌源から精製される2つの無修飾(天然)形態、およびペグ化化合物として1つの修飾形態で入手可能である。米国特許第4,179,337号は、ペグ化L-アスパラギナーゼを教示しており、この酵素は、約500~20,000ダルトンの分子量を有するPEGに結合している。
【0220】
アスパラギンシンテターゼのインビボ下方制御は、腫瘍成長を阻害するための効率的な機構を提供することができる。しかしながら、細胞は、アスパラギンシンテターゼ遺伝子の転写制御に関与するアスパラギンシンテターゼmRNA、タンパク質、および酵素活性の協奏的な増加によって、アミノ酸欠乏に応答する。
【0221】
本発明の本発明者らの数名に対する国際特許出願公開第WO2005/072061号は、アミノ酸側鎖の官能基に共有結合した薬物を含む化合物を開示しており、そのような化合物は、薬物を腫瘍細胞に標的化するのに有用である。
【0222】
本発明の本発明者らの数名に対する国際特許出願公開第WO2017/094011号は、細胞毒性剤、細胞分裂阻害剤、または化学療法剤(シチジン類似体薬物など)とアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、またはグルタミン)との共役体の薬学的に許容される塩、およびがんの治療のためのそれらの使用を開示している。
【0223】
本発明の本発明者らの数名に対する国際特許出願公開第WO2017/093993号は、医学的に易感染性の患者におけるがんの治療のための、シタラビンとアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、およびグルタミンからなる群から選択される)との共役体を開示している。
【0224】
がんにおける併用療法
抗がん薬のほとんどは、典型的には、他の抗がん薬との併用療法で投与され、独立した治療としては投与されない。
【0225】
AMLの治療では、3日間のダウノルビシン(50~60mg/m2)またはイダルビシンと併用して、標準的な用量のシタラビン(体表面の100~200mg/m2)が7日間投与される。この標準的なレジメンは、第8日目から21日目まで、12時間おきのミドスタウリン(50mg/m2)の経口投与、または5日間のクラドリビン(5mg/m2)もしくは15日間の全トランス型レチノイン酸(ATRA、45mg/m2)と併用することができる。7日間投与されるシタラビン(100~200mg/m2)はまた、3日間のミトキサントロン(12mg/m2)と併用して投与することもできる。高用量のシタラビン(50歳未満の患者では2g/m2および50~60歳の患者では1.5g/m2)が5日間にわたって12時間おきに投与されるAML地固め療法では、この併用は、3日間の45mg/m2の用量のダウノルビシンに制限される(NCCN Guidelines,Acute Myeloid,Version3.2017)。
【0226】
医学的に健康なより高齢の患者(60歳超)では、NCCNは、アントラサイクリンおよび標準的な用量のシタラビンの併用を用いた治療を推奨している一方で、不良な身体状態にあるか、または肝臓、心臓、もしくは腎臓機能障害を有する、医学的に健康ではないより高齢の患者では、NCCNは、DNA低メチル化剤(例えば、アザシチジン、デシタビン)を用いたより低い強度の化学療法、つまり低用量のシタラビンの投与、または支持療法のみを推奨している。
【0227】
ALL患者の治療には、高用量のメトトレキサートおよびシタラビンと交互での、hyper-CVAD(シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、およびデキサメタゾン)と併用した、ポナチニブ、イマチニブ、またはダサチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)が含まれる。ALLの他の併用レジメンには、任意でリツキシマブ免疫療法と併用した、イダルビシン、デキサメタゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、およびシタラビンが含まれ得る(NCCN Guidelines,Acute Lymphoblastic Leukemia,Version1.2017)。
【0228】
B細胞リンパ腫の第1選択レジメンには、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン(CHOPレジメン)と、リツキシマブとの併用が含まれる。侵襲的な第1選択レジメンには、高用量のメトトレキサート、シタラビン、およびリツキシマブと交互での、hyper-CVADが含まれる。第2選択療法導入レジメンには、エトポシド、シタラビン、およびリツキシマブ、またはデキサメタゾン、シスプラチン、シタラビン、およびリツキシマブが含まれ得る(NCCN Guidelines,B-cell Lymphoma,Version3.2017)。T細胞リンパ腫の好ましい第1選択レジメンは、hyper-CVADと交互での、または高用量のメトトレキサートおよびシタラビンと併用した、CHOP、CHOEP(エトポシドを含む)である。第2選択治療は、デキサメタゾン、シスプラチン、およびシタラビン(NCCN Guidelines,T-cell Lymphoma,Version2.2017)である。
【0229】
がんの治療のための様々な薬物併用が利用可能であるものの、低い有効性、用量制限毒性、および薬物間の相互作用が原因で、有効な併用は限られている。
【0230】
したがって、限られた毒性および副作用を有する、治療有効用量の抗がん薬の投与を可能にする改善されたがん併用療法に対する、満たされていない必要性が存在する。
【0231】
定義
利便性および明確さのため、本明細書、実施例、および特許請求の範囲で用いられる特定の用語を、本明細書で説明する。
【0232】
本明細書で使用される場合、「非共役のシタラビン」という用語は、遊離型であり、アミノ酸に共有結合していない、シタラビンを指す。非共役のシタラビンは、本明細書および特許請求の範囲全体を通して「シタラビン」と呼ばれる。
【0233】
シタラビンを用いた治療は、「強度」治療として知られる。シタラビンを用いた「強度」治療という用語は、「標準的な用量」(100~200mg/m2/日を指す)のシタラビンを用いた治療、および任意で「高用量」(≧1g/m2/日を指す)のシタラビンを用いた治療を意味する。典型的には、若年かつ医学的に健康な成人患者(18~75歳)は、標準的な用量(100~200mg/m2/日)のシタラビンで治療される。高シタラビン用量(≧1g/m2)もまた、導入療法または地固め療法のいずれかで、医学的に健康な患者に投与されてもよい。しかしながら、シタラビンの高い毒性が原因で、75歳以上の対象のほとんどは、シタラビンの強度治療で治療することができず、対象の表面積の20mg/m2の1日用量のシタラビン(「低用量」のシタラビンとして知られる)で治療され得る。75歳以上の数名の対象は、その重度の有害事象のために、シタラビン治療から全く利益を得ない。
【0234】
本明細書で使用される場合、「医学的に易感染性の」対象という用語は、高齢である、かつ/または衰弱もしくは医学的に障害があるために、重度の有害事象が原因で、高用量(≧1g/m2/日)もしくは標準的な用量(100~200mg/m2/日)のシタラビン(強度治療)すらも許容することができない、対象の部分集団を指す。したがって、これらの対象は、典型的には、低用量のシタラビン(20mg/m2/日)で治療される。いくつかの実施形態によると、医学的に易感染性の対象は、非共役のシタラビンを全く許容することができない。医学的に易感染性の対象には、腎機能障害、肝機能障害、膵機能障害、骨髄機能障害、小脳機能障害、免疫障害、その重度の副事象が原因でシタラビンの使用を制限する、任意の他の器官、組織、または系の機能障害、およびそれらの組み合わせを患っているか、またはそれを有する対象が含まれるが、これらに限定されない。
【0235】
本発明の本明細書全体を通して開示される各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0236】
本明細書で使用される場合、「高齢の対象」という用語は、70歳以上、およびより具体的には75歳以上の対象を指す。
【0237】
「腎機能障害」、「肝機能障害」、「膵機能障害」、「骨髄機能障害」、および「小脳機能障害」という用語は、健康な個体(正常/対照状態)の機能と比較して、器官/組織(例えば、腎臓、肝臓、膵臓、骨髄、および小脳)機能が低下している状態を指す。一般に、器官/組織機能障害は、器官機能の検査項目のうちの任意の1つ以上の測定値が、健康な個体について決定されている正常値(基準値)の範囲から逸脱することを特徴とする状態である。
【0238】
いくつかの実施形態では、シタラビンによって引き起こされる副事象は、シタラビンおよび追加の抗悪性腫瘍薬(複数可)の併用療法を使用している場合に、より重度であることを理解されたい。
【0239】
本明細書で使用される場合、「併用療法」および「併用治療」という語句は、2種類以上の療法の使用を指す。異なる種類の療法は、連続で、同時に、または様々なタイミング形式で使用することができる。療法には、化学療法、放射線療法、および/または手術が含まれる。本発明の原理によると、併用療法は、Asp-シタラビンおよび任意の他の抗悪性腫瘍薬の投与を指す。しかしながら、Asp-シタラビンおよびシタラビンの併用は、本明細書に記載の併用療法からは除外される。
【0240】
「用量制限毒性」という用語は、Common Terminology Criteria of Adverse Events Version3.0(CTCAE)に従って定義される。用量制限毒性は、薬物治療サイクル中に以下の事象のいずれかが観察される場合、対象への化合物の投与時に生じる。グレード4、5日以上連続で好中球減少症(すなわち、500個以下の細胞/mm3の好中球絶対数(ANC))または発熱性好中球減少症(すなわち、1000個以下の細胞/mm3のANCを伴う38.5℃以下の発熱);グレード4、血小板減少症(すなわち、25,000個以下の細胞/mm3または血小板輸血を必要とする出血エピソード);グレード4、疲労、またはECOG活動指標の二点識別低下;グレード3以上、適切/最大の医学的介入の使用にも関わらず、悪心、下痢、嘔吐、および/または筋肉痛;グレード3以上、非血液学的毒性(疲労を除く);化合物を用いた治療に関連する毒性からの回復の遅延が原因の、2週間超の再治療遅延;グレード2以上、臨床的に有意な心臓毒性(例えば、40%~50%以下までの静止時駆出分画率の低下、または15%~24%以下までの分画率の短縮;0.05ng/mL以上の心筋トロポニンT)。
【0241】
「がん」という用語は、ある細胞集団が未制御の細胞成長によって特徴付けられる、哺乳動物における生理的病態を指す。がんの例には、白血病、リンパ腫、癌腫、芽細胞腫、および肉腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0242】
「腫瘍」および「悪性腫瘍」は、前がん性病変を含む、良性(非がん性)または悪性(がん性)のいずれかの、過剰な細胞成長または増殖から生じる任意の組織集団を指す。
【0243】
「がん細胞」または「腫瘍細胞」という用語は、腫瘍細胞集団の大部分を構成する、腫瘍または前がん性病変に由来する細胞、および腫瘍形成幹細胞(がん幹細胞)の全集団を指す。
【0244】
本明細書および特許請求の範囲全体を通して互換的である、「がん細胞成長の阻害」または「がん細胞の増殖の阻害」または「がん細胞生存の阻害」という用語は、がん細胞、悪性腫瘍、または腫瘍の成長、増殖および/または生存を予防、低減、または抑止する能力を指す。したがって、がん細胞成長の阻害は、Asp-シタラビンおよび少なくとも1つの他の抗悪性腫瘍剤を含む治療剤または併用療法の不在下でのがん細胞成長と比較して、少なくとも10%、または少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または好ましくは100%の、がん細胞成長の低減として定義される。
【0245】
本明細書で使用される場合、「抗悪性腫瘍活性」は、薬剤が、悪性腫瘍または腫瘍の成長を阻害、予防、または抑止する能力を指す。換言すると、抗悪性腫瘍活性を有する薬剤は、該抗悪性腫瘍剤の不在下での腫瘍成長と比較して、少なくとも10%だけ、または少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%だけ、または好ましくは100%だけ、腫瘍成長を阻害することができる。
【0246】
本明細書で使用される場合、「副作用の低減」は、治療剤または治療剤の併用が、異なる治療剤またはそれらの併用について観察される作用と比較して、より少ない有害副作用および/またはより軽度の副作用と関連しているという観察を指す。そのような副作用の低減は、異なる治療剤またはそれらの併用に関連する副作用と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の低減であり得る。
【0247】
本明細書で使用される場合、「エピジェネティック修飾因子」という用語は、ゲノムの化学標識を改変することによって、遺伝子発現および機能に影響を与える薬剤を指す。エピジェネティック標識には、例えば、DNAメチル化、ならびにDNAに関連するタンパク質(ヒストンなど)のメチル化およびアセチル化が含まれる。エピジェネティック修飾因子の効果は、DNA配列の変化を伴わない。
【0248】
「治療有効量」の化合物という用語は、その化合物が投与される対象に有益な効果を提供するのに十分な量の化合物である。有効量の化合物は、個体の病状、年齢、性別、および体重などの因子に従って変動し得る。
【0249】
「治療」、「治療する」、および「治療すること」などの用語は、がん疾患の進行の減速、抑止、または反転を含むことが意図される。これらの用語にはまた、疾患が実際には除去されていないとしても、かつ疾患の進行自体が減速または反転していないとしても、がん疾患の1つ以上の症状の軽減、寛解、減弱、除去、または低減も含まれる。対象は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。
【0250】
本明細書で使用される場合、「相乗作用」(または「相乗的な」)という用語は、本開示の方法および併用で達成される効果が、個々の薬剤単独での使用、例えば、BST-236(またはその塩)単独での使用および少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤(例えば、アザシチジン)単独での使用から生じる効果の合計よりも大きいことを意味する。例えば、BST-236(またはその塩)および少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤(例えば、アザシチジン)の併用で達成される効果(例えば、本明細書に記載のように、細胞のアポトーシス、細胞生存率の低下、細胞毒性、細胞増殖の低下、がん細胞生存の低下、腫瘍成長の阻害、腫瘍体積の低減、腫瘍停滞、全生存、および/または疾患進行までの期間など)は、BST-236(もしくはその塩)単独での使用または少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤(例えば、アザシチジン)単独での使用から生じる効果の合計の、約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、約1.8倍、約1.9倍、約2倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約5.5倍、約6倍、約6.5倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約12倍、約15倍、約20倍、約25倍、約30倍、約50倍、約100倍、少なくとも約1.2倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約5.5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約6.5倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍である。
【0251】
併用の相乗効果はまた、いずれかの薬剤が単独で投与された場合には生じない追加の新規の効果によって、またはいずれかの薬剤が単独で投与された場合の有害副作用の低減によっても証明することができる。
【0252】
細胞の増殖(例えば、低減された増殖)を決定するための方法には、本明細書に記載の薬剤/組成物の細胞毒性効果を測定するためのアッセイが含まれる。細胞毒性効果は、(例えば、トリパンブルーもしくはヨウ化プロピジウムなどの色素を使用する、または乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)アッセイを使用する)細胞膜の統合性の評価、酵素活性の測定、細胞接着の測定、ATP生成の測定、補酵素生成の測定、ヌクレオチド取り込み活性の測定、クリスタルバイオレット法、トリチウム標識チミジン取り込み法、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性の測定、3-(4,5-ジメチル-2-チアゾリル)-2,5-ジフェニル-2H-テトラゾリウムブロミド(MTT)またはMTSアッセイ、スルホローダミンB(SRB)アッセイ、WSTアッセイ、クローン原性アッセイ、細胞数計数、細胞成長の監視、アポトーシスなどを含むがこれらに限定されない、任意の好適なアッセイによって決定することができる。
【0253】
細胞のアポトーシスは、TUNEL(タネル染色)アッセイ、チトクロムC放出のレベルのアッセイ、切断型/活性化カスパーゼのレベルのアッセイ、5-ブロモ-2’-デオキシウリジン標識断片化DNAのアッセイ、サバイビンのレベルのアッセイなどを含むがこれらに限定されない、任意の好適な方法によってアッセイすることができる。
【0254】
本方法、薬学的組成物、および併用の相乗効果を示すのに使用することができる他の方法には、細胞生存および/または増殖の低下を示すためのクローン原性アッセイ(コロニー形成アッセイ)、動物モデルにおける(マウスなどにおける)腫瘍体積低減の研究が含まれるが、これらに限定されない。
【0255】
がん負荷の低減は、血液中および/または骨髄内のがん細胞数の決定によって、(存在する場合)腫瘍サイズを測定するためのノギスの使用、ならびにインサイチュで腫瘍サイズを可視化するための様々な方法(コンピュータ支援断層撮影(CAT)スキャン、ポジトロン放出断層撮影(PET)スキャン、3次元超音波検査、X線、超音波を含む)を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で既知の方法を使用して決定することができ、これらの各々は、造影剤ありまたはなしで実行することができる。
【0256】
一実施形態では、有利なことに、そのような相乗作用は、同じ用量もしくはより低い用量でのより大きな有効性、副作用の低減、および/または多剤耐性の発達の予防もしくは遅延を提供する。
【0257】
本明細書に記載の数値に関する「約」という用語は、記載値の+/-10%として理解されたい。
【0258】
本発明で使用されるアスパラギン酸は、L構成またはD構成のいずれかである。
【0259】
ある薬物の「薬学的に許容される塩」という用語は、国際純正および応用化学連合の慣習に従う塩を指す。薬学的に許容される塩は、薬物と組み合わされた塩形態の不活性成分である。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、生物体に対して実質的に非毒性である化合物(1)の塩を指す。典型的な薬学的に許容される塩には、本発明の化合物と薬学的に許容される鉱物、塩基、酸、または塩との反応によって調製される塩が含まれる。酸塩はまた、酸付加塩としても知られている(本明細書以下を参照されたい)。薬学的に許容される塩は、当該技術分野で既知である(Stahl and Wermuth,2011,Handbook of pharmaceutical salts,Second edition)。
【0260】
Asp-シタラビンの塩の調製に使用され得る薬学的に許容される酸には、酢酸、塩酸、メタンスルホン酸、リン酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、ホウ酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アスコルビン酸、硫酸、マレイン酸、ギ酸、マロン酸、ニコチン酸、およびシュウ酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0261】
例示的な実施形態によると、共役体Asp-シタラビンの塩形態は、酢酸塩または塩酸塩である。
【0262】
薬学的組成物
本発明は、式(1)の化合物および/または少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含み、任意で1つ以上の賦形剤をさらに含む、薬学的組成物を提供する。
【0263】
「薬学的に許容される」という用語は、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認されているか、または米国薬局方もしくは動物、およびより具体的にはヒトにおける使用のための他の一般に認識されている薬局方に列挙されていることを意味する。
【0264】
「担体」という用語は、治療化合物が一緒に投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような薬学的担体は、水ならびに油(ピーナッツ油、ダイズ油、鉱物油、およびゴマ油など、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの、石油、動物、植物、または合成起源の油を含む)などの無菌液体であり得る。
【0265】
治療化合物の静脈内投与では、水が、好ましい担体である。生理食塩水ならびに水性デキストロース溶液およびグリセロール溶液もまた、用いることができる。
【0266】
いくつかの実施形態によると、Asp-シタラビンを含む組成物は、約200~400mOsmのモル浸透圧濃度および4~8のpHを有する等張水溶液中で、静脈内投与用に製剤化される。Asp-シタラビンの薬学的に許容される担体は、例えば、約200~300mOsm、好ましくは約300mOsmのモル浸透圧濃度および4~8のpHを有する、緩衝生理食塩水、緩衝デキストロース溶液、または緩衝グリセロール溶液であってもよい。
【0267】
あるいは、Asp-シタラビン組成物のための緩衝生理食塩水は、例えば、ハンクス平衡塩類溶液、アール平衡塩類溶液、ゲイ平衡塩類溶液、HEPES緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水、Plasma-lyte、リンゲル溶液、酢酸リンゲル液、乳酸リンゲル液、クエン酸食塩水、またはトリス緩衝食塩水であってもよい。
【0268】
Asp-シタラビン組成物のための緩衝デキストロース溶液は、例えば、クエン酸デキストロース溶液またはエリオットB溶液であってもよい。
【0269】
例示的な実施形態によると、Asp-シタラビンの注射用の溶液は、多電解質注射剤または化合乳酸ナトリウムである。
【0270】
本薬学的組成物は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カルシウム、および乳酸ナトリウムなどの等張化剤を含むがこれらに限定されない、薬学的賦形剤をさらに含み得る。所望の場合、本組成物はまた、少量の糖アルコール;湿潤剤または乳化剤;およびpH調整剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの酸化防止剤;ならびにエチレンジアミン四酢酸などのキレート剤を含有してもよい。
【0271】
非経口投与用の薬学的組成物は、活性化合物の溶液、懸濁液、または乳剤などとして製剤化することができる。そのような懸濁液は、油性注射用懸濁液または水性注射用懸濁液として調製されてもよい。油性懸濁液注射剤では、脂肪油(ゴマ油など)または合成脂肪酸エステル(オレイン酸エチル、トリグリセリド、もしくはリポソームなど)を含む、好適な親油性溶媒またはビヒクルを使用することができる。水性注射用懸濁液は、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの、懸濁液の粘度を増加させる物質を含有してもよい。任意で、懸濁液はまた、高度に濃縮された溶液の調製を可能にするために、好適な安定剤、または化合物の溶解度を増加させる薬剤を含有してもよい。
【0272】
経粘膜および経皮投与では、透過される障壁にとって適切な浸透剤が、本組成物に添加されてもよい。そのような浸透剤には、例えば、DMSO、ポリエチレングリコール、または当該技術分野で既知の任意の浸透剤が含まれる。
【0273】
経口投与では、化合物は、活性化合物を、当該技術分野で既知の薬学的に許容される担体および賦形剤と組み合わせることによって製剤化されてもよい。そのような担体により、本発明の化合物を錠剤、対象による経口摂取用の錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、および懸濁液などとして製剤化することが可能となる。経口使用のための薬理学的調製物は、固体賦形剤を使用し、任意で得られる混合物を粉砕し、所望の場合には好適な補助剤を添加した後に、顆粒の混合物を加工して、錠剤または糖衣錠コアを得ることで、作製することができる。具体的には、好適な賦形剤は、ラクトース、スクロース、マンニトール、もしくはソルビトールを含む糖などの充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボメチルセルロースナトリウムなどのセルロース調製物;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理的に許容されるポリマーである。所望の場合、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤が添加されてもよい。
【0274】
加えて、胃環境に対する本発明の化合物の曝露の予防が望ましい場合、腸溶コーティングが有用であり得る。
【0275】
経口で使用され得る薬学的組成物には、ゼラチンからなる押し込み型カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(グリセロールまたはソルビトールなど)からなる軟質密封カプセルが含まれる。押し込み型カプセルは、充填剤(ラクトースなど)、結合剤(デンプンなど)、潤滑剤(タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)、および任意で安定剤との混合で、活性成分を含有してもよい。
【0276】
軟質カプセル中では、活性化合物は、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に溶解または懸濁されてもよい。加えて、安定剤が添加されてもよい。
【0277】
本発明の薬学的組成物は、当該技術分野で周知のプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、粉砕、微粉砕、糖衣錠作製、ゲル状化、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥プロセスの手段によって、製造することができる。
【0278】
抗悪性腫瘍剤を含む薬学的組成物は、化合物(1)を含む薬学的組成物の製剤と類似した形態またはそれとは異なる形態で、製剤化することができる。例えば、化合物(1)の薬学的組成物は、静脈内注入に適合した形態で製剤化することができる一方で、抗悪性腫瘍剤の薬学的組成物は、経口、皮下、または静脈内投与に適合した形態で製剤化することができる。
【0279】
本発明の方法に従って投与される、化合物(1)の投薬量および抗悪性腫瘍剤の投薬量は、治療される対象の年齢、がん疾患の段階、投与経路、および処方医師の判断を含む多くの因子に依存する。
【0280】
本発明の方法は、1つ以上の追加の薬学的組成物の投与をさらに含んでもよく、各々が、異なる抗悪性腫瘍剤を含み、例えば、本方法は、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の薬学的組成物の投与を含んでもよく、各々が、化合物(1)を含む薬学的組成物の投与前、それと同時、および/またはその後に投与される異なる抗悪性腫瘍剤を含むことを理解されたい。特定の実施形態では、1つ以上の追加の薬学的組成物は、互いの4時間以内または互いの2時間以内に投与される。
【0281】
治療的使用
本発明は、がん細胞増殖を低減する方法、および/またはがん細胞成長を阻害する方法、および/またはがん細胞生存を阻害する方法を提供し、本方法は、本明細書に上述される、(a)治療有効量の化合物(1)またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物と、(b)治療有効量の1つ、2つ、またはそれ以上の追加の抗悪性腫瘍剤を含む薬学的組成物とを、対象に投与することを含む。
【0282】
特定の実施形態では、がんを患っている対象におけるがんを治療するための方法が提示され、本方法は、本明細書に上述される、(a)治療有効量の化合物(1)またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物と、(b)治療有効量の1つ、2つ、またはそれ以上の追加の抗悪性腫瘍剤を含む薬学的組成物とを、対象に投与することを含む。
【0283】
いくつかの実施形態によると、がん細胞は、血液学的がんまたは非血液学的がんのがん細胞である。したがって、本発明の方法は、血液学的がんおよび非血液学的がんからなる群から選択されるがんの治療に有用である。
【0284】
血液学的がんには、白血病、リンパ腫、骨髄腫、および骨髄異形成症候群(MDS)が含まれ、これらには、白血病、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML);リンパ球性白血病、例えば、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL);ホジキンリンパ腫;非ホジキンリンパ腫;多発性骨髄腫;およびワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症が含まれるが、これらに限定されない。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0285】
「骨髄異形成症候群」(MDS)という用語は、血球減少、無効造血、過形成性骨髄を特徴とする造血障害の混成群を指す。MDSは、約30~40%の症例で急性骨髄性白血病(AML)への転換が生じる、前白血病の病態である。同種幹細胞移植が提供されない限り、MDSは一般に、不治の病態であると見なされる。
【0286】
固形腫瘍としても知られる非血液学的がんには、肉腫、癌腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、中皮腫、ユーイング腫瘍平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、星細胞腫、カポジ肉腫、および黒色腫が含まれるが、これらに限定されない。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0287】
非血液学的がんには、器官のがんが含まれ、器官のがんには、乳癌、膀胱癌、結腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、肺癌、子宮頸癌、膵癌、前立腺癌、精巣癌、甲状腺癌、卵巣癌、脳癌(上衣腫を含む)、神経膠腫、神経膠芽腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、松果体腫、聴神経腫瘍、血管芽細胞腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫、およびそれらの転移が含まれるが、これらに限定されない。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0288】
本発明の方法は、肝機能障害、腎機能障害、膵機能障害、骨髄機能障害、および小脳機能障害などの器官機能障害を有する対象における悪性腫瘍疾患の治療に有用であり得る。
【0289】
「肝機能障害」という用語は、正常な状態と比較して、肝臓機能が低下している状態を指す。一般に、肝機能障害は、肝臓機能の検査項目(例えば、血液AST、ALT、ALP、TTT、ZTT、総ビリルビン量、総タンパク質量、アルブミン、乳酸デヒドロゲナーゼ、およびコリンエステラーゼなど)のうちの1つ以上の測定値が正常値(基準値)の範囲から逸脱することを特徴とする状態である。肝機能障害は、劇症肝炎、慢性肝炎、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、肝線維症、肝硬変症、肝癌、肝炎、薬物アレルギー性肝障害、および原発性胆汁性肝硬変を含むがこれらに限定されない、疾患を特徴とする。
【0290】
腎機能障害は、急性腎不全、糸球体腎炎、慢性腎不全、高窒素血症、尿毒症、免疫腎疾患、急性腎炎症候群、急速進行性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、ベルジェ病、慢性腎炎/蛋白尿症候群、尿細管間質障害、腎毒性障害、腎梗塞、アテローム塞栓性腎疾患、腎皮質壊死、悪性腎血管硬化症、腎静脈血栓症、尿細管性アシドーシス、腎性糖尿、腎性尿崩症、バーター症候群、リドル症候群、多発性嚢胞腎、間質性腎炎、急性溶血性尿毒症症候群、腎髄質嚢胞、海綿腎、遺伝性腎炎、および爪膝蓋骨症候群を含むがこれらに限定されない、疾患を特徴とする。
【0291】
膵機能障害は、糖尿病、高血糖症、耐糖能障害、およびインスリン抵抗性を含むがこれらに限定されない、疾患を特徴とする。
【0292】
骨髄機能障害は、例えば、骨髄炎、造血不全、鉄欠乏性貧血、悪性貧血、巨赤芽球症、溶血性貧血、および再生不良性貧血などの疾患を特徴とする。
【0293】
小脳機能障害は、例えば、筋緊張低下、構音障害、測定障害、反復拮抗運動不全、反射障害、および企図振戦などの運動障害および神経行動学障害を特徴とする。
【0294】
本発明の薬学的組成物は、非経口、経口、経鼻、局所、経皮、腟内、および直腸投与経路からなる群から選択される任意の好適な投与経路によって投与することができる。いくつかの実施形態によると、投与経路は、非経口投与を介したものである。非経口投与経路には、例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脳内、脳室内、くも膜下腔内、または皮内投与経路が含まれる。本薬学的組成物は、例えば、静脈内(i.v.)または皮下(s.c.)注射または注入によって、全身投与することができる。特定の実施形態によると、Asp-シタラビンを含む薬学的組成物は、30分間~2時間にわたって(1時間にわたってなど)静脈内注入によって投与される。
【0295】
本明細書に記載の化合物の毒性および治療有効性は、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順によって、例えば、主題の化合物のIC50(細胞成長の50%の阻害を提供する濃度)およびMTD(試験した動物における最大耐用量)を決定することによって、決定することができる。細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒト対象における使用のための様々な投薬量を製剤化する上で使用することができる。正確な製剤、投与経路、および投薬量は、患者の病態を考慮して、個々の医師によって選択され得る(例えば、Fingl,et al.,1975,in“The Pharmacological Basis of Therapeutics”,Ch.1pp.1を参照されたい)。
【0296】
化合物(1)は、対象の体表面積の約0.3g/m2~約10g/m2の範囲の1日用量で投与することができる。いくつかの実施形態によると、化合物Asp-シタラビンは、対象の表面積の約0.5g/m2~約6g/m2の範囲の1日用量で投与することができる。他の実施形態によると、化合物Asp-シタラビンは、対象の表面積の約0.3、0.5、0.8、1、1.5、2、2.3、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10g/m2の1日用量、またはそれらの間の任意の用量で投与することができる。
【0297】
いくつかの実施形態によると、Asp-シタラビンは、対象の体表面積の0.3g/m2~6g/m2の範囲の1日用量で静脈内注入によって投与される。より特定の実施形態では、Asp-シタラビンは、対象の体表面積の0.4g/m2~6g/m2の範囲の1日用量で静脈内注入によって投与される。依然より特定の実施形態では、Asp-シタラビンは、対象の体表面積の0.5g/m~6g/m2、対象の体表面積の0.6g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.7g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.8g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.9g/m2~6g/m2、または対象の体表面積の1g/m2~6g/m2の範囲の1日用量で静脈内注入によって投与される。
【0298】
いくつかの実施形態によると、Asp-シタラビンは、対象の体表面積の0.3g/m2~10g/m2の範囲の1日用量で静脈内注入によって投与される。さらなる実施形態では、対象の体表面積の0.3g/m2~10g/m2の範囲のAsp-シタラビンの1日用量は、Asp-シタラビンが少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤との併用療法で投与される場合、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%だけ低減されてもよい。Asp-シタラビン用量の低減は、Asp-シタラビンを少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤と併用して使用した場合に観察される相乗的な治療活性のために促進され得る。
【0299】
血液学的悪性疾患の治療のための本発明の併用療法は、以下の抗悪性腫瘍薬の同時投与または連続投与を含み得る:
Asp-シタラビン+アザシチジン
Asp-シタラビン+デシタビン
Asp-シタラビン+グアデシタビン
Asp-シタラビン+ベネトクラクス(ABT-199)
Asp-シタラビン+ダウノルビシン/イダルビシン
Asp-シタラビン+ミトキサントロン
Asp-シタラビン+ミドスタウリン
Asp-シタラビン+クレノラニブ
Asp-シタラビン+ギルテリチニブ
Asp-シタラビン+ソラフェニブ
Asp-シタラビン+キザルチニブ
Asp-シタラビン+ボサロキシン
Asp-シタラビン+AG221(エナシデニブ)
Asp-シタラビン+AG120
Asp-シタラビン+イダサヌツリン
Asp-シタラビン+グラスデギブ
Asp-シタラビン+SL-401
Asp-シタラビン+プラシノスタット
Asp-シタラビン+エンチノスタット
Asp-シタラビン+ニボルマブ
Asp-シタラビン+メトトレキサート
Asp-シタラビン+三酸化ヒ素
Asp-シタラビン+ベバシズマブ(Avastin)
Asp-シタラビン+リツキシマブ
Asp-シタラビン+インターフェロン
Asp-シタラビン+イマチニブ
Asp-シタラビン+ダウノルビシン+ミドスタウリン
Asp-シタラビン+ダウノルビシン+クレノラニブ
Asp-シタラビン+ダウノルビシン+キザルチニブ
Asp-シタラビン+ダウノルビシン+ギルテリチニブ
Asp-シタラビン+ダウノルビシン+ソラフェニブ
Asp-シタラビン+ヒドロキシ尿素+アザシチジン
Asp-シタラビン+ダウノルビシン+全トランス型レチノイン酸
Asp-シタラビン+ダウノルビシン+ミトキサントロン
Asp-シタラビン+ダウノルビシン+クラドリビン
Asp-シタラビン+イダルビシン+ミトキサントロン
Asp-シタラビン+メトトレキサート+副腎皮質ステロイド(複数可)
Asp-シタラビン+メトトレキサート+リツキシマブ
Asp-シタラビン+メトトレキサート+メルカプトプリン
Asp-シタラビン+ミトキサントロン+エトポシド
Asp-シタラビン+エトポシド+リツキシマブ
Asp-シタラビン+ミトキサントロン+クラドリビン+G-CSF
Asp-シタラビン+ミトキサントロン+エトポシド+G-CSF
Asp-シタラビン+イダルビシン+フルダラビン+トポテカン
Asp-シタラビン+デキサメタゾン+シスプラチン+リツキシマブ。
【0300】
抗悪性腫瘍剤のいくつかの治療有効用量および投与レジメンを、以下に例示する:ヒドロキシ尿素は、0.5g~1gの1日用量で経口投与することができ、アザシチジンは、75mg/m2の1日用量で7日間静脈内または皮下投与することができ、ダウノルビシンは、60mg/m2~90mg/m2の1日用量で3日間投与することができ、ミドスタウリンは、50mg/m2の1日用量で14日間投与することができ、イダルビシンは、10mg/m2~12mg/m2の1日用量で投与することができ、全トランス型レチノイン酸は、45mg/m2の1日用量で15日間投与することができ、ミトキサントロンは、10mg/m2~12mg/m2の1日用量で3日間投与することができ、エトポシドは、50mg/m2の1日用量で5日間~70mg/m2の1日用量で7日間投与することができる。
【0301】
本明細書に記載の併用療法/治療の特定の実施形態では、少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤は、表1に提示される一覧の薬剤から選択され、以下に示される範囲内で投薬され得る。
【表1】
【0302】
表1には、特定の薬剤/化合物を購入することができる企業もまた示されている。上記の薬剤/化合物の各々は、少なくとも上記に示される供給業者/企業から市販されている。
【0303】
より特定の実施形態では、少なくとも1つの追加の抗悪性腫瘍剤は、Asp-シタラビンとの併用療法で投与される場合、より低い範囲で投薬されてもよい。したがって、表1に示される用量は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%だけ低減されてもよい。
【0304】
加えてまたはあるいは、Asp-シタラビンとの併用療法に関係し、表1に列挙される上記の用量を要求する使用および方法、ならびに抗悪性腫瘍剤の各々の上記の用量の低減%の各々は、以下の特徴のうちの1つ以上を個々にまたは組み合わせて含むことができる:Asp-シタラビンは、対象の体表面積の0.3g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.4g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.5g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.6g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.7g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.8g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.9g/m2~6g/m2、対象の体表面積の1g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.3g/m2~10g/m2の範囲の1日用量で、(例えば、静脈内注入によって)非経口投与される;対象の体表面積の0.3g/m2~6g/m2の範囲もしくは0.3g/m2~10g/m2の範囲は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、もしくは90%だけ低減される;かつ/またはAsp-シタラビンおよび追加の抗悪性腫瘍剤は、同時にもしくは連続的に使用される;かつ/または連続的に使用される場合、Asp-シタラビンは、追加の抗悪性腫瘍剤の前もしくは後に使用/投与され得る。
【0305】
第I/II相研究のPK分析は、注入中止後、BST-236の濃度が明らかな二相様式で急速に低下し、注入の完了から6~10時間の時点で(依然として検出可能ではあるが)ピークの5%以下に達することを明らかにしたことに注目すべきである。したがって、BST-236の投与の6~10時間以内に、相乗相互作用が観察され得る。
【0306】
一実施形態では、Asp-シタラビン(BST-236)は、ピリミジン類似体(例えば、アザシチジン、デシタビン、グアデシタビン(SGI-110)、ゲムシタビン、またはジドブジンのうちの少なくとも1つ)と併用して使用され、本明細書に記載の使用および方法において、アザシチジンの少なくとも1つは、75mg~100mg/m2/日で静脈内もしくは皮下に7日間投薬されるか、デシタビンは、8時間おきに3時間にわたって15mg/m2、もしくは1日1回1時間にわたって20mg/m2で(静脈内)投薬されるか、グアデシタビン(SGI-110)は、60mg/m2で(皮下)投薬されるか、ゲムシタビンは、1000mg/m2で(静脈内)投薬されるか、またはジドブジンは、100~600mg/日で(経口)投薬されるか、あるいはこれらそれぞれの用量範囲の各々は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%だけ低減されてもよく、加えてまたはあるいは、そのようなピリミジン類似体を要求する使用および方法は、以下の特徴のうちの1つ以上を個々にまたは組み合わせて含むことができる:Asp-シタラビンは、対象の体表面積の0.3g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.4g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.5g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.6g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.7g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.8g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.9g/m2~6g/m2、対象の体表面積の1g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.3g/m2~10g/m2の範囲の1日用量で、(例えば、静脈内注入によって)非経口投与される;対象の体表面積の0.3g/m2~6g/m2の範囲もしくは0.3g/m2~10g/m2の範囲は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、もしくは90%だけ低減される;かつ/またはAsp-シタラビンおよびピリミジン類似体は、同時にもしくは連続的に使用される;かつ/または連続的に使用される場合、Asp-シタラビンは、ピリミジン類似体の前もしくは後に使用/投与され得る。
【0307】
一実施形態では、Asp-シタラビン(BST-236)は、BCl-2阻害剤(例えば、ベネトクラクスのうちの少なくとも1つ)と併用して使用され、例えば、ベネトクラクスは、本明細書に記載の使用および方法において、20~600mg/日で(経口)投薬されるか、またはこの用量範囲は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、もしくは90%だけ低減されてもよく、加えてまたはあるいは、そのようなBCl-2阻害剤を要求する使用および方法は、以下の特徴のうちの1つ以上を個々にまたは組み合わせて含むことができる:Asp-シタラビンは、対象の体表面積の0.3g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.4g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.5g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.6g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.7g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.8g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.9g/m2~6g/m2、対象の体表面積の1g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.3g/m2~10g/m2の範囲の1日用量で、(例えば、静脈内注入によって)非経口投与される;対象の体表面積の0.3g/m2~6g/m2の範囲もしくは0.3g/m2~10g/m2の範囲は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、もしくは90%だけ低減される、かつ/またはAsp-シタラビンおよびBCl-2阻害剤は、同時にもしくは連続的に使用される、かつ/または連続的に使用される場合、Asp-シタラビンは、BCl-2阻害剤の前もしくは後に使用/投与され得る。
【0308】
一実施形態では、Asp-シタラビン(BST-236)は、キナーゼ阻害剤(例えば、ソラフェニブを含む、例えば、少なくとも1つのキナーゼ阻害剤)と併用して使用され、ソラフェニブの少なくとも1つは、本明細書に記載の使用および方法において、200~800mg/日で(経口)投薬されるか、またはこの用量範囲は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、もしくは90%だけ低減されてもよく、加えてまたはあるいは、そのようなキナーゼ阻害剤を要求する使用および方法は、以下の特徴のうちの1つ以上を個々にまたは組み合わせて含むことができる:Asp-シタラビンは、対象の体表面積の0.3g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.4g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.5g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.6g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.7g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.8g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.9g/m2~6g/m2、対象の体表面積の1g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.3g/m2~10g/m2の範囲の1日用量で、(例えば、静脈内注入によって)非経口投与される;対象の体表面積の0.3g/m2~6g/m2の範囲もしくは0.3g/m2~10g/m2の範囲は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、もしくは90%だけ低減される、かつ/またはAsp-シタラビンおよびキナーゼ阻害剤は、同時にもしくは連続的に使用される、かつ/または連続的に使用される場合、Asp-シタラビンは、キナーゼ阻害剤の前もしくは後に使用/投与され得る。
【0309】
一実施形態では、Asp-シタラビン(BST-236)は、FLT3阻害剤(例えば、ミドスタウリン、ギルテリチニブ、キザルチニブ、またはクレノラニブを含む、少なくとも1つのFLT3阻害剤)と併用して使用され、本明細書に記載の使用および方法において、ミドスタウリンの少なくとも1つは、100~200mg/日で(経口)投薬されるか、ギルテリチニブは、120mg/日で(経口)投薬されるか、キザルチニブは、20~30mg/日で(経口)投薬されるか、もしくはクレノラニブは、300mg/日(経口)で投薬され、またはこれらそれぞれの用量範囲の各々は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、もしくは90%だけ低減されてもよく、加えてまたはあるいは、そのようなFLT3阻害剤を要求する使用および方法は、以下の特徴のうちの1つ以上を個々にまたは組み合わせて含むことができる:Asp-シタラビンは、対象の体表面積の0.3g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.4g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.5g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.6g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.7g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.8g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.9g/m2~6g/m2、対象の体表面積の1g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.3g/m2~10g/m2の範囲の1日用量で、(例えば、静脈内注入によって)非経口投与される;対象の体表面積の0.3g/m2~6g/m2の範囲もしくは0.3g/m2~10g/m2の範囲は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、もしくは90%だけ低減される、かつ/またはAsp-シタラビンおよびFLT3阻害剤は、同時にもしくは連続的に使用される、かつ/または連続的に使用される場合、Asp-シタラビンは、FLT3阻害剤の前もしくは後に使用/投与され得る。
【0310】
一実施形態では、Asp-シタラビン(BST-236)は、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、イダロルビシン(idarorubicin)、またはドキソルビシンを含む、少なくとも1つのアントラサイクリン)と併用して使用され、本明細書に記載の使用および方法において、ダウノルビシンの少なくとも1つは、75mg~100mg/m2で(静脈内)投薬されるか、イダロルビシンは、5mg~12mg/m2で(静脈内)投薬されるか、ドキソルビシンは、40mg~75mg/m2で(静脈内)投薬され、またはこれらそれぞれの用量範囲の各々は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、もしくは90%だけ低減されてもよく、加えてまたはあるいは、そのようなアントラサイクリンを要求する使用および方法は、以下の特徴のうちの1つ以上を個々にまたは組み合わせて含むことができる:Asp-シタラビンは、対象の体表面積の0.3g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.4g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.5g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.6g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.7g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.8g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.9g/m2~6g/m2、対象の体表面積の1g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.3g/m2~10g/m2の範囲の1日用量で、(例えば、静脈内注入によって)非経口投与される;対象の体表面積の0.3g/m2~6g/m2の範囲もしくは0.3g/m2~10g/m2の範囲は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、もしくは90%だけ低減される、かつ/またはAsp-シタラビンおよびアントラサイクリンは、同時にもしくは連続的に使用される、かつ/または連続的に使用される場合、Asp-シタラビンは、アントラサイクリンの前もしくは後に使用/投与され得る。
【0311】
一実施形態では、Asp-シタラビン(BST-236)は、IDH阻害剤(例えば、AG-120(インボシデニブ)、AG-221(エナシデニブ、IDHIFA)、IDH-305、またはFT-2102を含む、少なくとも1つのIDH阻害剤)と併用して使用され、本明細書に記載の使用および方法において、AG-120(インボシデニブ)の少なくとも1つは、500mg/日で(経口)投薬されるか、AG-221は、100mg/日で(経口)投薬されるか、IDH-305は、100~900mg/日で(経口)投薬されるか、もしくはFT-2102は、150~300mg/日で(経口)投薬されるか、またはこの用量範囲は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、もしくは90%だけ低減されてもよく、加えてまたはあるいは、そのようなIDH阻害剤を要求する使用および方法は、以下の特徴のうちの1つ以上を個々にまたは組み合わせて含むことができる:Asp-シタラビンは、対象の体表面積の0.3g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.4g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.5g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.6g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.7g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.8g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.9g/m2~6g/m2、対象の体表面積の1g/m2~6g/m2、対象の体表面積の0.3g/m2~10g/m2の範囲の1日用量で、(例えば、静脈内注入によって)非経口投与される;対象の体表面積の0.3g/m2~6g/m2の範囲もしくは0.3g/m2~10g/m2の範囲は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、もしくは90%だけ低減される、かつ/またはAsp-シタラビンおよびIDH阻害剤は、同時にもしくは連続的に使用される、かつ/または連続的に使用される場合、Asp-シタラビンは、IDH阻害剤の前もしくは後に使用/投与され得る。
【0312】
いくつかの実施形態によると、化合物(1)を含む薬学的組成物、抗悪性腫瘍剤を含む薬学的組成物、またはそれらの併用は、少なくとも1ヶ月に1回投与される。追加の実施形態によると、本薬学的組成物は、少なくとも1ヶ月に2回投与される。またさらなる実施形態によると、本薬学的組成物は、少なくとも1週間に1回投与される。またさらなる実施形態によると、本薬学的組成物は、少なくとも1週間に2回投与される。依然さらなる実施形態によると、本薬学的組成物は、少なくとも1週間にわたって少なくとも1日1回投与される。またさらなる実施形態によると、本薬学的組成物は、少なくとも1週間にわたって、または対象が治癒もしくは寛解するまで、少なくとも1日1回投与される。
【0313】
いくつかの実施形態によると、本薬学的組成物は、1ヶ月に1回、少なくとも2、3、4、5、6、8、10、12、または少なくとも15日間連続で1日1回投与することができる。あるいは、本薬学的組成物は、1ヶ月に2回、少なくとも2、3、4、5、6、もしくは15日間連続で1日1回投与することができ、またはさらにあるいは、本薬学的組成物は、対象が治癒もしくは寛解するまで、毎日もしくは1週間に2回投与することができる。
【0314】
本薬学的組成物ががんの再発の予防に使用されるいくつかの実施形態では、本薬学的組成物は、医師の指示に従って、長期間にわたって定期的に投与することができる。
【0315】
いくつかの実施形態では、大負荷用量の後に、治療期間にわたって定期的(例えば、毎週)な維持用量を投与することが有利であり得る。化合物はまた、徐放送達系、ポンプ、および持続注入用の他の既知の送達系によって送達することもできる。その薬物動態に基づいて、特定の化合物の所望の循環レベルを提供するために、投薬レジメンを変動させてもよい。したがって、用量は、治療剤の所望の循環レベルが維持されるように計算される。
【0316】
典型的には、有効用量は、治療される対象の体重または表面積だけでなく、化合物の活性および有効性ならびに対象の病態によっても決定される。用量および投薬レジメンはまた、特定の対象における化合物の投与に付随する任意の有害事象の存在、性質、および程度によっても決定される。
【0317】
以下の実施例は、例示的であるに過ぎず、非限定的な性質のものであると見なされるべきである。本発明の範囲から逸脱することなく、多くの修正、並べ替え、および変更がなされ得ることが、本発明が関係する当業者に明らかになるであろう。
【0318】
実施例1
U937細胞の増殖および生存に対するAsp-シタラビン/BST-236およびアザシチジン(Vidaza)の効果
U937ヒト血液学的がん細胞を、10%のFCSを補充したRPMI中で培養した。この細胞を、96ウェルプレート内に、250μlの全体積、1×10
5個の細胞/ウェルで播種した。アザシチジン(AZA)を、5つの異なる濃度(0、100、250、1000、5000nM)で細胞培養物に添加した。本明細書以下でBST-236とも呼ばれるAsp-シタラビンを、250nMの濃度で培養物に添加した。全ての群を三連で分析した。37℃、5%のCO
2で72時間のインキュベーション後、細胞を採取し、ヨウ化プロピジウム(PI)で染色し、直ちにFACSによって読み取った。培養物中の生(PI陰性)細胞の数およびパーセンテージ、ならびに死(PI陽性)細胞の数およびパーセンテージを、CellQuestソフトウェアを使用するFACScaliburによって決定した。阻害のパーセンテージを計算した。
【表2】
【0319】
図1および表2に示されるように、Asp-シタラビンおよびアザシチジンでのヒト血液学的がん細胞の併用治療は、血液学的がん細胞の増殖および生存の明白な相乗的阻害をもたらした。
【0320】
Asp-シタラビンおよびアザシチジンの併用の相乗的な性質は、表3に提示される結果によって強調され、表3は、250nMの濃度のAsp-シタラビンが、U937細胞の最大阻害を提供することが決定されている濃度をはるかに下回ることを示す。実際、250nMのAsp-シタラビンは、単独投与した場合、一貫してU937細胞の20%未満の阻害を与える。したがって、250nMのAsp-シタラビンで実行した実験を描写する、
図1および表2に提示される結果は、低レベルのAsp-シタラビンの存在が、様々な濃度のアザシチジンとともに、治療的に実証可能な様式で相乗作用を与えることを明らかにする。
【表3】
【0321】
実施例2
Molt-4細胞増殖に対するAsp-シタラビンおよびアザシチジンの効果
Molt-4ヒト白血病細胞株を、ATCCから得た。この細胞を、10%のFBSおよび1%のグルタミンを含有するRPMI培地中で成長させた。細胞を、96ウェルプレート内に、50,000個の細胞/ml、1ウェルあたり0.2mlで播種した。試験物質をPBS中に希釈し、20μlの体積、0.1nM~10μΜの最終濃度で添加した。研究を三連で実行した。PBSを対照として使用した。プレートを、37℃、5%のCO2で72時間インキュベートした。治療期間の終了時、MTT試薬[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド]を使用するMTTアッセイを実行した。MTTを、0.02mlの体積、5mg/mlの濃度で各ウェルに添加した。プレートを、37℃で3時間インキュベートした。プレートを3500rpmで5分間遠心分離し、上清を吸引した。MTT結晶を含有するペレットを各々、0.2mlのDMSO中に溶解させた。570nmの波長でELISAリーダーを使用して、吸光度を決定した。
【0322】
図2に示されるように、Asp-シタラビンおよびアザシチジンを各々8nMの濃度で用いたヒト白血病細胞の併用治療は、ヒト白血病細胞の増殖の明白な相乗的阻害をもたらした。
【0323】
表4は、上記の実験において観察される、Molt-4細胞増殖に対するAsp-シタラビン、アザシチジン、およびそれらの併用のIC
50値を要約する。
【表4】
【0324】
Asp-シタラビンおよびアザシチジンの併用の相乗的な性質は、表5に提示される結果によって強調され、表5は、10nMの濃度のAsp-シタラビンが、Molt-4細胞の最大阻害を提供することが決定されている濃度をはるかに下回ることを示す。実際、10nMのAsp-シタラビンは、一貫してMolt-4細胞の10%未満の阻害を与える。アザシチジンと併用した8nMのみのAsp-シタラビンについてIC
50値が決定されたという点で、これらの結果は、併用して使用した場合、Asp-シタラビンは、より低い用量で投与することができ、依然としてアザシチジンとの相乗作用を呈することを実証している。したがって、併用療法は、より高い投薬量を要求する治療プロトコルから生じ得る有害副作用を低減しながら、有効性の改善を提供する。
【表5】
【0325】
実施例3
U937細胞の増殖および生存に対するAsp-シタラビンおよびABT-199(ベネトクラクス)の効果
U937細胞を、10%のFCSを補充したRPMI培地中で培養し、96ウェルプレート内に、250μlの全体積、1×105個の細胞/ウェルで播種した。ABT-199を、3つの異なる濃度(0、250、および1000nM)で細胞培養物に添加した。Asp-シタラビンを、250nMの濃度で培養物に添加した。全ての群を三連で分析した。37℃、5%のCO2で24時間のインキュベーション後、細胞を採取し、ヨウ化プロピジウム(PI)で染色し、直ちにFACSによって読み取った。培養物中の生(PI陰性)細胞の数およびパーセンテージ、ならびに死(PI陽性)細胞の数およびパーセンテージを、CellQuestソフトウェアを使用するFACScaliburによって決定した。阻害のパーセンテージを計算した。
【0326】
図3に示されるように、24時間にわたるAsp-シタラビンおよびABT-199でのヒト血液学的がん細胞の併用治療は、U937細胞の増殖および生存の有意な阻害をもたらした。
【0327】
さらなる実験では、U937細胞を、10%のFCSを補充したRPMI培地中で培養し、96ウェルプレート内に、250μlの全体積、1×105個の細胞/ウェルで播種する。ABT-199を、6つの異なる濃度(0、10、100、250、1000、および3000nM)で細胞培養物に添加し得る。Asp-シタラビンを、250nMの濃度で培養物に添加し得る。これらの濃度のABT-199を、Asp-シタラビン添加の24時間前、Asp-シタラビン添加の12時間前、Asp-シタラビンと同時、および/またはAsp-シタラビン添加の12時間後に添加する。37℃、5%のCO2での24または48時間のインキュベーション後、細胞を採取し、コールターカウンターまたは許容される染色方法のいずれかを使用して計数し得る。細胞総数に対する生細胞または死細胞の相対数に基づいて、阻害のパーセンテージを計算する。
【0328】
実施例4
白血病の動物モデルにおけるアザシチジンと併用したBST-236の効果
次に、インビボでのU937白血病細胞の生存に対するアザシチジンと併用したBST-236の効果を試験した。NOD scidガンマ(NSG)マウスを、U937細胞を注射する24時間前に200ラドで照射した。0日目、マウス(1群あたり4~5匹の動物)に、200μL全体積で7×106個のU937細胞、PBSを静脈内(IV)注射した。16~22(7日間、第1の研究)または13~18(6日間、第2の研究)日目、マウスに、BST-236(5mg/マウス、約250mg/kg)、アザシチジン(AZAと呼ばれる、6mg/kg)、またはBST-236(5mg/マウス、約250mg/kg)およびAZA(6mg/kg)を、1日1回皮下(s.c.)注射した。最後の注射の24時間後、マウスを屠殺し、蛍光標識細胞分取(FACS)を使用して、脾臓、血液、および骨髄を、マウスおよびヒトCD45+細胞について分析した。
【0329】
結果は、血液中、脾臓内、および骨髄内で、死亡率につながる、低レベルの血中正常マウス白血球(WBC)を示したため、これは、NSGマウスがU937細胞の注射後に白血病を発症したことを示した。
【0330】
第1の研究では、対照群の全てのマウス(n=5)およびAZA治療群の1匹の動物(1/4)が、23日目の屠殺予定前に死亡した。BST-236(4/4)およびBST-236+AZAの併用(5/5)で治療した全ての動物が、屠殺予定まで生存した。屠殺後、脾臓重量、血液中および脾臓内のヒト白血病CD+45細胞数およびマウスCD+45細胞数を試験した。血液試料は、屠殺前に死亡した5匹の対照マウスについては入手不能であった。
【0331】
図4に示されるように、対照マウスの脾臓は、治療したマウスの脾臓よりも有意に大きかった。治療の各々、BST-236またはAZAのいずれかは、対照マウスと比較して、脾臓サイズの低減をもたらした。しかしながら、BST-236およびAZAの併用が、脾臓重量の低減に対する最大の効果を有した。実際、BST-236およびAZAの併用は、脾臓内のU937がん細胞数の低減の指標である脾臓サイズを低減する上で相乗効果を実証した。
【0332】
実施例5
白血病の動物モデルにおけるアザシチジンと併用したBST-236の効果
NSGマウスにおける追加の実験は、BST-236を5mg/マウス(約250mg/kg、実施例4に示されるとおり)で投薬した時と比較して、BST-236を1.7mg/マウス(約85mg/kg)で投薬した時と類似した活性を明らかにした。その発見を考慮して、さらにより低い用量のBST-236を使用して実験を実行して、例えば、AZAとの相乗的な活性を評価する。例えば、20mg/kgのBST-236が有効であることが予想される。したがって、特定の実施形態では、NSGマウスに、20mg/kgのBST-236単独、6mg/kgのAZA単独、または20mg/kgのBST-236および6mg/kgのAZAの併用を投薬して、この投薬レジメンでの相乗的な活性を調査する。相乗的な活性はまた、20mg/kgのBST-236と併用したより低い用量のAZAでも観察され得ることが理解される。
【0333】
実施例6
BST-236およびAZAの併用療法の臨床研究
AML患者およびALL患者における、アザシチジンと併用したBST-236の性能および安全性を評価するための臨床研究を実行する。
【0334】
研究設計
第I/IIa相、非盲検、非対照の単一施設研究に、再発性もしくは治療抵抗性急性白血病を有する18歳以上の患者、または治療する医師が強度治療に適合しないと判断する患者を登録する。
【0335】
任意の年齢の患者を、4つのBST-236用量増大コホート(各々が3人の患者を含む)に登録する。BST-236を、6日間連続で1時間の1日1回注入として投与する。
●BST-236用量:1.5g/m2、3g/m2、4.5g/m2、および6g/m2
●AZA用量:7日間にわたって50~75mg/m2を1日1回、注射または注入によって(静脈内または皮下投与)
BST-236もしくはAZAのいずれか、またはそれらの併用での治療を、同日に開始する。
【0336】
併用の許容性、併用の安全性(血液学的および非血液学的有害事象)、循環AMLまたはALLがん細胞数の低減、ならびに骨髄内のAMLまたはALLがん細胞数の低減を含むがこれらに限定されない、様々なパラメータに基づいて、患者応答を決定する。
【0337】
本発明は、本明細書上記に具体的に示され、記載されていることによっては制限されないことが当業者に理解される。むしろ、本発明の範囲は、本明細書に上述される様々な特徴の組み合わせおよび部分的組み合わせ、ならびに変更および修正の両方を含む。したがって、本発明は、具体的に記載される実施形態に限定されるものと解釈されるべきではなく、本発明の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲を参照することによって、より容易に理解されるであろう。