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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】歯科用ねじ
(51)【国際特許分類】
   A61C 8/00 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020512596
(86)(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2018073094
(87)【国際公開番号】W WO2019042974
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】102017119657.9
(32)【優先日】2017-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517297348
【氏名又は名称】ボティス バイオマテリアルズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【弁理士】
【氏名又は名称】川内 英主
(74)【代理人】
【識別番号】100202119
【弁理士】
【氏名又は名称】岩附 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】ビーレンスタイン,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】タディック,ドラツェン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッテ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】マッシス,ロマノ
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0218750(US,A1)
【文献】米国特許第06117162(US,A)
【文献】特表2015-536176(JP,A)
【文献】特表2010-524643(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101732098(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
A61F 2/00
A61B 17/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラントを固定するねじであって、
該ねじは生体吸収性材料からなり、
該ねじは、骨にねじ込まれるねじ山を有し、
該ねじは、キャップとドライブとを含む頭部を有し、
前記キャップは、前記インプラントのための基本的に平坦な接触面を有し、
前記ドライブと前記キャップとの間には、前記キャップの上部と前記ドライブとの間の狭窄部として設計された、所定の破壊点が存在し、前記ねじの柄部は前記キャップに向かう方向に厚みを増し、前記ねじ山の歯の幅は、前記歯の底部の幅の少なくとも0.5倍である、ねじ。
【請求項2】
前記所定の破壊点は、狭窄部として設計されることを特徴とする、請求項1に記載のねじ。
【請求項3】
前記キャップは板状に設けられ、前記キャップの前記所定の破壊点までの最大高さは、2mm未満である、又は1mm未満である、又は0.8mm未満であるとを特徴とする、請求項1又は2に記載のねじ。
【請求項4】
前記ねじは柄部を有し、前記柄部の最小直径は、記ねじ山のコア径と同じであことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のねじ。
【請求項5】
前記ねじ山は、ねじ込まれたときに、骨組織にねじ溝を切削するセルフタッピング先端部を有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のねじ。
【請求項6】
前記キャップの直径は1mm乃至6mmであ又は2mm~4mmである及び/又は、
前記キャップの前記直径は、前記柄部、及び/又は前記ねじ山のコアの直径の1.5倍~5倍であ又は2倍~4倍である及び/又は、
前記ねじ山のピッチは、0.5mm~1.6mmであり、及び/又は、
前記ねじ山の前記歯の外側は平坦に設計され、及び/又は、
前記ねじ山の前記歯は、前記歯の底部が丸みをもって前記歯のフランクに合流するよう、適切に設計され、及び/又は、
前記ねじがセンタリング先端部を有することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のねじ。
【請求項7】
前記ねじは、マグネシウム、又はマグネシウム合金からなり、前記マグネシウム合金は、イットリウム、亜鉛、マンガン、及び/又はカルシウムを含むとを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のねじ。
【請求項8】
前記ねじはコーティングを有し、ッ化マグネシウム製のコーティングを有することを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のねじ。
【請求項9】
前記柄部は、前記頭部に隣接する円錐形状の部分又は円錐台形状の部分を有することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のねじ。
【請求項10】
前記円錐形状の部分の中心軸に対する角度が、前記キャップへの移行領域において、より鋭角となっており、記移行領域は、放射状として設計されていることを特徴とする、請求項9に記載のねじ。
【請求項11】
前記移行領域の長さは0.5mm~2mmであることを特徴とする、請求項10に記載のねじ。
【請求項12】
前記ねじは、前記キャップの下に円錐形状の部分を有し、前記円錐形状の部分は、前記ねじの中心軸に対して20度~40度であ又は平均35度~45度である及び/又は、前記円錐形状の部分の長さは、0.2mm~10mmであ又は0.4mm~0.6mmであるとを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のねじ。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の少なくとも1つのねじとインプラントとを備えるキットであって、前記インプラントがシート状の構造物として設計される、キット。
【請求項14】
イロットドリルを更に備え、前記パイロットドリルは、前記ねじの前記柄部とおおよそ同じ直径であり、及び/又は、ねじを保持するアダプターを備え前記アダプターは、ハンドピース、又は歯科用ドリルを接続するための連結部及び/又は複数のねじのためのホルダーを有することを特徴とする、請求項13に記載のキット
【請求項15】
インプラントを固定するねじであって、
該ねじは、生体吸収性材料、つまりマグネシウム、又はマグネシウム合金からなり、
該ねじは、骨にねじ込まれるねじ山を有し、
該ねじは、キャップとドライブとを含む頭部を有し、前記キャップは、前記インプラントのための基本的に平坦な接触面を有し、
前記ドライブと前記キャップとの間には、前記キャップの上部と前記ドライブとの間の狭窄部として設計された、所定の破壊点が存在し、
該ねじの柄部は、前記キャップに向かう方向に厚みを増し、
前記ねじ山は、前記ねじ山の歯の外側が平坦、又は丸みをもつよう設計され、前記ねじ山の前記歯の底部が丸みをもって前記歯のフランクに合流するよう、適切に設計されており、
前記ねじ、ねじ込まれたときに、骨組織にねじ溝を切削するセルフタッピング先端部を有する、ねじ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科医術分野で特に使用されるインプラントを固定する生体吸収性ねじに関する。本発明は特に、骨欠損を充填するために使用される生体吸収性膜、及びインプラントを固定するねじに関する。本発明は、更に、インプラント、及び少なくとも1つの生体吸収性ねじを備えるセットに関する。
【背景技術】
【0002】
特にコラーゲンフィルム等の生体吸収性インプラントは、実際には、釘又はワイヤで通常固定されるが、これらの釘又はワイヤは、インプラントが分解された後に入念に抜去する必要がある。
【0003】
例えば、骨接合板に使用されるもの等を含む、市場で入手可能な生体吸収性ねじは、一般的には、顎の領域にインプラントを固定する目的にはあまり適さない。特に、市場で入手可能なほとんどのねじは、密で堅く剛性の部材を取り付けるよう設計されており、そのために、コラーゲン製のフィルム又は膜等の、厚みの薄い可撓性のシートを固定する目的又は多孔質の成形体には適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この背景に鑑みて、本発明の目的は、一方では、生体吸収性を有するように形成され、他方では、密で堅く剛性の材料から構成されていないインプラントを、取り扱いし易く、確実に取り付けることが可能なねじを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、独立請求項のいずれか一項に記載の、インプラントを固定するねじによって既に達成されている。
【0006】
本発明の好ましい実施形態、及び更なる発展形態は、従属請求項、明細書、及び図面の主題から明らかである。
【0007】
本発明は、インプラントを固定するねじに関する。本発明は特に、歯科医術分野、特に口腔外科学分野で使用されるねじに関する。
【0008】
しかしながら、本発明の範囲内で、腱若しくは靱帯を固着させる目的又は小骨片を固着させる目的において、特に手、及び足の手術においてねじを使用することも十分に可能である。腱付き骨(bony tendon)の断裂の際の使用、母指CM関節症(rhizarthrosis)における関節包の固定での使用、又はスペーサーの挿入時の使用も想到される。ねじは、臀部若しくは肩に、又は膝の関節鏡検査に使用することも可能である。
【0009】
更なる用途分野として、欠損場所に導入可能であり、骨の成長を促すことを目的とした、骨の代替材料ブロック又はマグネシウム粒子の焼結体、及び/又はマグネシウム繊維の焼結体ブロックの取付けが挙げられる。
【0010】
骨補填における用途も想到される。
【0011】
ねじは、生体吸収性材料からなる。
【0012】
ねじは、金属、特にマグネシウム又はマグネシウム合金からなることが好ましい。
【0013】
好ましい実施形態においては、ねじは、イットリウム、亜鉛、マンガン、及び/又はカルシウムを、特に主要な合金の構成成分として含むマグネシウム合金からなる。イットリウム含有マグネシウム合金は、腐蝕の観点における特性に優れる。すなわち、ねじの腐蝕する速度が、純マグネシウムと比較して遅い。
【0014】
ねじは、骨へのねじ込みのためのねじ山と、ドライブ、及びキャップを含む頭部とを有する。キャップは、インプラント用に、実質的に平坦であることが好ましい接触面を含む。本発明によれば、ドライブとキャップとの間に、所定の破壊点が存在する。
【0015】
したがって、ねじの挿入を容易にするために、ドライブは、電気的、又は空圧式に動作するスクリュードライバー(例えば、回転の遅い歯科用ドリル)、又は機械式スクリュードライバー等のハンドリング治具に接続される。
【0016】
ドライブ、及び治具は、ドライブが、特にクランプ、又はロックを用いて治具ホルダーに固定されるよう適切に設計されることが好ましい。
【0017】
このように、ねじは、ハンドリング治具によるねじ込みが可能であり、ねじがねじ込まれた後に、所定の破壊点における破壊によってドライブが取り除かれ、この際にねじの脱落の危険はない。
【0018】
1つの実施形態によれば、キャップの接触面がインプラントの上に到達することでねじがそれ以上ねじ込まれなくなると、ねじをそれ以上ねじ込もうとする際のねじりモーメントによってドライブが破壊されるよう、所定の破壊点が適切に設計される。
【0019】
別の選択肢としては、ハンドリング治具を傾けることによって、ドライブを破壊するというものがある。例えば、或る特許の骨の構造が非常に柔らかく、ねじによって破壊されるおそれがある場合、ドライブを治具によって断裂させることもできる。
【0020】
ドライブの破壊後に、マッシュルーム形状であることが好ましいキャップがインプラントの上に平坦に設置されるため、脆弱、又は厚みの薄いインプラントであっても、比較的確実に取り付けられるようになっている。
【0021】
特に、マグネシウム、及び/又はコラーゲンのフィルム等の、可撓性のシート材料を確実に取り付けることもできる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、所定の破壊点が、狭窄部の形態で設計される。好ましい狭窄部の形態は、最小直径が、柄部、及び/又はねじ山の谷底部の最小直径よりも小さい。特に、狭窄部は、柄部、及び/又はねじ山の谷底部の最小直径の0.70倍~0.99倍の直径を有する。
【0023】
狭窄部の直径が、柄部、又はねじ山の谷底部の最小直径の0.90倍~0.99倍であったとしても、それぞれの場合において、ねじが別の点、特に柄部、又はねじ山の領域で破壊する危険を伴わずに、所定の破壊点における破壊を十分確実にすることが明らかである。
【0024】
キャップは板状に設計されることが好ましい。キャップの所定の破壊点までの最大高さは、2mm未満であることが好ましく、1mm未満であると特に好ましく、0.8mm未満であると最も好ましい。
【0025】
離脱式ドライブに起因して、治具による係合のための相互係止部材を設ける必要がないために、高さの低いキャップを提供することが可能となる。
【0026】
本発明の1つの実施形態においては、ねじの柄部の最小直径が、最大限で、ねじ山の谷底部の直径と同じ大きさである。特に、柄部の最小直径は、ねじ山の谷底部の直径と実質的に同じ大きさである。
【0027】
この結果、柄部、及びねじ山の谷底部は、少なくとも部分的に円柱形を形成する。ねじ溝(thread flights)の歯は、当該円柱から突出する。
【0028】
通常、骨ねじは、皮質骨内のみにおいて確実に保持される。ここで、老齢の患者に特によく見られるように、皮質骨の厚みが薄い場合、ねじを完全にねじ込んだときに、柄部のみが皮質骨に固定されて、ねじ山は固定されない場合がある。したがって、ねじ山が、海綿質骨に、支えられることなくねじ込まれることとなる。
【0029】
しかしながら、本願によると、皮質骨に穴があり、穴の直径が、ねじ山の谷底部の直径におおよそ対応しているので、穴は、ねじのねじ山に相当するねじ溝のみを有することから、ねじは、「完全にねじ込まれた」場合であっても、少なくとも軸方向変位しないように固定されることとなり、ねじ山を皮質骨に押し入れなくても、脱落することがない。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において、ねじ山は、セルフタッピング先端部を有する。
【0031】
本発明の更なる実施形態において、ねじを打ち込むことができるように適切に設計されている。特に、ねじの先端部の円錐角は、60度未満であり、40度未満であることが好ましい。
【0032】
1つの実施形態によれば、ねじ山が一条に設計される。特に1つの実施形態においては、多条、特に二条のねじ山を伴う更なる発展形態を有することも想到され、またこの場合には、ねじをねじ込みではなく、打ち込むことができる。
【0033】
ただし、本発明による、ねじの好ましい実施形態において、ねじは、セルフタッピング先端部を有する。セルフタッピング先端部は、ねじがねじ込まれたときに、骨組織にねじ溝を切削する。
【0034】
しかしながら、ねじをねじ込む前に、特にねじ山の谷底部の直径から最大で25%異なっている直径を有するドリルを用いて、事前穿孔しておくことが好ましい。
【0035】
しかしながら、1つの実施形態によれば、セルフタッピング先端部は、ブレードが、先端部の中央部分にではなく、エッジ領域のみに存在するよう、適切に設計される。
【0036】
特に、セルフタッピング先端部の少なくとも1つのブレードが、ねじ山の外径の10%~80%、好ましくは、20%~60%の範囲に延在している。
【0037】
この結果、ねじのセルフタッピングねじ山が、穿孔動作の全てを行う必要がなくなり、ねじをねじ込む際に生ずるトルクが減少する。
【0038】
更に、1つの実施形態において想定されるように、ブレードが設けられていないねじの領域に、センタリングコーンを設けることができる。こうすることによって、ねじを削孔の中央部に容易に挿入することができる。
【0039】
別の実施形態では、セルフタッピング先端部が、ねじの前端部にまで延在している。この実施形態は、打ち込むことができるねじに特に適している。
【0040】
1つの実施形態によれば、キャップの直径が1mm~6mmであり、2mm~4mmであることが好ましい。
【0041】
キャップの直径は、柄部、及び/又はねじ山の谷底部の直径の1.5倍~5倍であり、2倍~4倍であると特に好ましい。
【0042】
ねじ山のピッチは、0.5mm~1.6mmであることが好ましい。ねじを打ち込むことができる実施形態では、ピッチは、1.6mmより大きいことが好ましく、1.6mm~2.5mmであると特に好ましい。
【0043】
好ましい実施形態において、ねじ山の歯の外側が、平坦、又は丸みをもつよう設計される。
【0044】
ねじ山の歯は、歯の底部が丸みをもって歯のフランクに合流するよう、適切に設計することができる。
【0045】
特に、ねじ山は、丸みをもつ歯の底部を有する、一条、又は二条の台形のねじ山として設計される。歯のフランクは、丸みをもって歯の先端部に合流することが好ましい。
【0046】
こうすることにより、ねじ山が、移植後により急速に腐蝕する鋭い端部を有することを防ぐ。
【0047】
特に、歯の幅は、歯の底部の幅の少なくとも0.5倍であり、0.7倍であることが好ましい。
【0048】
本発明の発展形態においては、ねじにコーティングが施される。特に、ねじは、フッ化マグネシウム製のコーティングを施される。挿入後の初期の腐蝕を防止するこのような不動態化コーティングは、フッ化水素酸に、マグネシウム、又はマグネシウム合金製のねじを液浸させることで容易に提供することができる。
【0049】
特に、ねじにより取り付けられる、生理食塩水で膨潤したコラーゲン膜の塩素濃度が比較的高いことによる腐蝕の進展が低減する。
【0050】
同様に、金属同士が隣接することに起因したガルバニ電池の形成、及び関連する初期の腐蝕の増加を低減することができる。
【0051】
本発明は更に、ねじに関し、特に、上述した特徴のうちの1つ以上を有するねじに関する。
【0052】
特に、ねじは、生体吸収性材料からなり、骨にねじ込まれるねじ山を有する。
【0053】
更に、ねじは、離脱式ドライブを含んでも含まなくてもよい。
【0054】
ねじは柄部を更に有し、柄部には、キャップを含む頭部が隣接している。
【0055】
本発明の更なる態様によれば、キャップが接触面を有し、接触面は、インプラントのために基本的に平坦であることが好ましく、柄部はキャップに向かう方向に厚みを増し、キャップは場合によってはドライブとともにねじの頭部を形成する。
【0056】
したがって、柄部は、ねじ山の方向に隣接する領域より、キャップの直下の領域において厚みが大きい。
【0057】
この結果、ねじのねじ込み工程の最後に、厚みの増した領域が、インプラントの上側に接触するため、ねじを更にねじ込むために必要なトルクが急速に大きくなり、ねじはユーザーにより更にねじ込まれないようになっている。
【0058】
こうすることによって、ねじがインプラントにねじ込まれる間に、キャップの接触面が損傷を受けるような強い圧迫に曝されないことを確実にする。
【0059】
このことは、可撓性のシート状の構造物として設計されるインプラントに、特に当てはまる。
【0060】
キャップの下部の厚みが増していることによって、骨と接触面との間に、所謂、間隙が形成され、この部分にシート状の構造物が収容される。
【0061】
この厚みが増した領域は、特に、柄部が頭部に隣接する円錐状の部分を有するよう、適切に設計される。こうすることによって、進行中のねじをねじ込む工程の最後に、ねじが動かなくなるが、ねじのキャップが皮質骨から依然として離れているため、インプラントにキャップによって穿孔が生じることが防止される。
【0062】
したがって、通常、円錐状の部分により、段状の部分とは異なり、インプラントにおいて、クランプが動かなくなるまでの間、削孔が拡大する。この結果、摩擦クラッチによって接触面を経由してインプラントに伝達され、ひいては、ねじがねじ込まれるときに穿孔を生じさせる可能性のあるトルクが低減する。
【0063】
円錐状の部分は、特に、円錐台形状に設計されてもよい。
【0064】
本発明の更なる発展形態において、円錐形状の部分の中心軸に対する角度が、キャップへの移行領域において、より鋭角となっている。特に、円錐形状の部分と、隣接するキャップとの間の移行領域が、放射状として設計されている。
【0065】
この結果、柄部の直径が、接触面の直前に急激に増加して、最も遅くとも、この領域がインプラントに接触するときには、ねじが固定されるようになっている。
【0066】
移行領域の長さ(ねじの中心軸に沿った長さ)は、0.5mm~2mmであることが好ましい。したがって、ねじは、シート状の構造物をインプラントとして固定する目的に特に適している。
【0067】
本発明の1つの実施形態によれば、円錐形状の部分が、ねじの中心軸に対して20度~40度、好ましくは、35度~45度の(平均)角度で延在する表面線を含むことができる。好ましくは、円錐形状の部分の軸長は、0.2mm~10mmであり、0.4mm~0.6mmであることが好ましい。
【0068】
円錐形状の部分の最大直径は、柄部の最小直径の1.1倍~2.5倍であることが好ましく、1.3倍~1.8倍であると特に好ましい。
【0069】
本発明は更に、上述したタイプの少なくとも1つのねじとインプラントとを備えるキットに関する。
【0070】
インプラントは、特に、可撓性のシート状の構造物として、特にコラーゲン膜、及び/又はマグネシウム箔として設計される。
【0071】
キットは、1つの実施形態によって想定されるように、パイロットドリルを更に含むことができ、パイロットドリルは、柄部とおおよそ同じ直径、及び/又はねじのねじ山の谷底部の直径を有することが好ましい。
【0072】
骨質の状態に応じて、パイロットドリルは、ねじ山の谷底部の直径より小さい直径の事前穿孔のために使用することができ、特に打ち込むことができるねじの実施形態の場合には、事前穿孔は行わなくてもよい。
【0073】
キットは、複数のねじ、及び/又はパイロットドリルを配置するテンプレートのためのホルダーを更に含むことができる。ホルダーは、ねじの中間保存場所として機能し、滅菌可能であることが好ましい。特に、ホルダーは、無金属の滅菌材料、例えばポリシロキサンからなる。こうすることによって、ねじを触ることなく滅菌状態で処理することが可能となる。
【0074】
更に、キットは、ねじを手動でねじ込むためのハンドピース、又は歯科用ドリルに接続するための連結部を含む、ねじのためのアダプターを含んでもよい。
【0075】
以下に、図1図9の図面に基づく例示的な実施形態を参照しつつ、本発明をより詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】特に口腔外科用に設計され、特にコラーゲン膜、又はマグネシウム箔等のシート状の構造物を取り付けるねじの第1の実施形態の側面図である。
図2】ねじの先端部の上面図である。
図3図2のA-Aに沿った断面図である。
図4図1のB-Bに沿った断面図である。
図5】ねじの別の例示的な実施形態の側面図であり、特に骨欠損の充填に使用されるブロックの取付けのために、より長く設計されている。
図6図5の拡大図である。
図7】インプラントをねじの1つに取り付けることができる方法の概略図である。
図8】打ち込むことができるねじの一実施形態を示す。
図9】打ち込むことができるねじの一実施形態を示す。
図10】歯科用ドリル、又は手動式スクリュードライバーに連結可能なねじのうちの1つのためのアダプターを示す。
図11】歯科用ドリル、又は手動式スクリュードライバーに連結可能なねじの1つのためのアダプターを示す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
図1は、本発明の第1の例示的な実施形態によるねじ1の側面図である。
【0078】
一般的に、ねじの全長(ドライブ7を含む頭部2を含む)は、3mm~20mmが好ましい。図5、及び図6に示すものとの比較で本実施形態に示される、より短いバージョンの全長は、5mm~10mmが好ましい。
【0079】
ねじ1は頭部2を有し、頭部2は、キャップ5及びドライブ7からなる。頭部2に隣接して、本例示的な実施形態のねじ山3に直接合流する柄部4が存在している。
【0080】
本実施形態において、キャップ5は板状に設計されており、上部9が丸みをもつ。
【0081】
底面は、意図される用途に使用された際にインプラントを固定する、好ましくは、平坦な接触面6を形成している。
【0082】
ドライブ7は、キャップ9に隣接している。
【0083】
ドライブ7は、ハンドリング治具(図示せず)にねじ1を挿入するために使用することができる。ドライブ7は、脱落することができないようにハンドリング治具で固定されることが好ましい。
【0084】
キャップ5の上部9とドライブ7との間には、所定の破壊点8を形成する狭窄部が存在している。
【0085】
ねじ1の直径は、所定の破壊点8の領域において最小となっている。
【0086】
特に、所定の破壊点8は、柄部4、又はねじ山3のねじ山の谷底部の直径の最も厚みの薄い点よりも5%~10%小さい直径を有することができる。
【0087】
破壊点8は、キャップ5に直接隣接する位置に配置され、ドライブ7の破壊後に、そのときには平坦となるキャップ5のみが残存するようになっている。
【0088】
ねじ1の直径は、特に放射状として設計することができる所定の破壊点8からドライブ7に向かう方向に大きくなり、本実施形態では、領域21において、例えば40度~80度の先端角を有する円錐台形状である。
【0089】
ねじ山3は、一条に設計される。ねじ溝16は、コアの周りに、10周未満であることが好ましく、6周未満であると特に好ましい。こうすることによって、ねじ1をねじ込む回数が少なくなる。
【0090】
ねじ1の先端部17は、一方がセルフタッピングするよう設計されており、ブレード14が設けられている。ねじ溝は、予め穿孔された穿孔にねじ1がねじ込まれる際にブレード14によって骨に形成される。
【0091】
更に、先端部17はセンタリングコーン13を有し、本例示的な実施形態において、このセンタリングコーン13の表面線は、ねじ1の中心軸23に対して、ブレード14の切断縁22よりも鋭角とされている。
【0092】
切断縁22は、特に、中心軸23に対して10度~30度の角度を有することができる。
【0093】
本例示的な実施形態において、ねじ山3は、ねじ1の頭部2にほとんど届く範囲に延在している。ねじ1の本例示的な実施形態において、柄部4の円錐形状の部分10が、ねじ山3に直接隣接している。
【0094】
柄部4の直径は、底面、すなわちキャップ5の接触面6に隣接する位置において、ねじ山3からキャップ5に向かう方向に広がっている。
【0095】
本例示的な実施形態によって、好ましくは、表面線が中心軸23に対して20度~40度の角度を有する円錐形状の部分10が提供される。
【0096】
柄部4の直径は、円錐形状の部分10の領域において、柄部4の最小直径、及び/又はねじ山3のコア径の1.2倍~1.7倍まで、広がっていることが好ましい。
【0097】
本実施形態において、柄部の円錐形状の部分10から頭部2にかけての移行領域11が、放射状として設計されている。
【0098】
特に0.1mm~0.5mmの放射状を有することができる移行領域11においては、直径が急激に広がっており、ねじ1は、ねじ込まれているときに、最も遅くとも上記移行領域11によって停止するようになっている。
【0099】
円錐形状の部分10のねじ山側の移行領域12は、丸みをもつよう設計されることが好ましい。
【0100】
その結果、特に、コラーゲン膜、又はフィルム等の可撓性のシート状の構造物の取付け中に、接触面6が、インプラントを圧迫して穿孔が生じることが防止される。
【0101】
キャップ5の直径は2mm~4mmであることが好ましく、柄部の直径は0.6mm~1.5mmであることが好ましい。
【0102】
センタリングコーン13の先端角は、70度~110度とすることができる。
【0103】
本発明による骨ねじのねじ山の長さは、2mm~18mmであると好ましく、本実施形態における子ねじの長さは2mm~5mmであると好ましい。
【0104】
ねじ溝16は、ねじ1の周りに、5周未満が好ましく、4周未満が特に好ましい。このようにすることで、数回回すだけでねじ締めが可能となる。
【0105】
図2は、ねじ1の先端部の上面図を示している。
【0106】
図3は、図2の線A-Aに沿った断面の詳細図である。
【0107】
本明細書において、ねじ溝16が、丸みをもつ凹部として設計されていることが明らかであり、凹部のフランク18のフランク角αは90度~150度であることが好ましい。ねじ山の歯15は、平坦に設計されることが好ましく、特に、0.2mm~0.5mmの軸長を有する。
【0108】
本例示的な実施形態において、ねじ山3は、丸みのある歯の底部を有する、一条の台形のねじ山として設計されている。
【0109】
ねじ山の歯15の幅b1は、歯の底部の幅b2(歯のフランクを含む)の少なくとも0.5倍とすることができる。
【0110】
先端部は初期に著しい腐蝕を受け、ひいては、ねじの接続部の強度がごく早期に失われるおそれがあるために、ねじ山の歯15は先端部を形成しない。
【0111】
図4は、図1の線B-Bに沿った断面図である。
【0112】
本実施形態において、ドライブ7は、断面形状が三角形であり、先端部に丸みがあるよう設計される。しかしながら、ドライブ7の形状は自由度が高いことを理解されたく、十分なトルクの伝達が保証されさえすればよい。したがって、例えば六角形、又は星形状の実施形態も想定される(図示せず)。
【0113】
図5は、ねじの代替的な実施形態の側面図であり、このねじは、図1図4に示されているねじよりも長い。全長は8mmより大きいことが好ましい、12mmより大きいと特に好ましい。
【0114】
本例示的な実施形態でも、ねじ1は頭部2を有し、頭部2は、ドライブ7、及び平坦なキャップ5を含む。
【0115】
本例示的な実施形態においては、ねじ山を有さないねじ1の柄部4の長さは、ねじ山3の少なくとも2倍であり、少なくとも3倍であると好ましい。柄部4、及びねじ山3を合わせた長さは、8mm~18mmの間であることが好ましい。
【0116】
その他の点において、ねじは、図1図4を参照して示したねじと同様に設計されており、特に、柄部4の頭部側にある円錐形状の部分10と、ブレード14が設けられた先端部17とを同様に有する。
【0117】
図6は、図5の詳細図であり、本図に示されているねじ1の長いバージョンは、図1図4の図面によるより短いバージョンと、設計面で基本的に同じであることが明らかである。
【0118】
しかしながら、ねじ1の柄部4、及びねじ山3のコア径は、いくらか厚みが大きいことが好ましい。直径は、特に、1.0mm~1.3mmである。
【0119】
柄部4より少し小さい直径、特に0.01mm~0.05mm小さい直径を有する狭窄部であっても、所定の破壊点8が十分に確保されることが明らかである。
【0120】
先端部17も、図1にしたがって設計されており、ねじ溝をもたらすブレード14と、ブレードを備えないセンタリングコーン13とを含む。
【0121】
図7は、例えばコラーゲンフィルム等のシート状の構造物として設計されたインプラント19の概略図である。インプラント19は、例えば骨欠損に覆いを提供する目的で、創傷の上に配置される。続いて、ドリルを使用して穿孔20を設ける。穿孔20は、ねじの柄部の直径、及び/又はねじ山のコアの直径に、基本的に対応している。
【0122】
続いて、インプラント19を、少なくとも1つのねじによって取り付ける。
【0123】
この文脈において、ねじは、円錐状の部分(図1、及び図6の10)の端部で回転が止まるまで、穿孔20にねじ込まれる。
【0124】
ドライブは、その後、ねじの頭部がインプラント、及び/又は骨に接触したときにねじがねじ込まれる際のトルクによって破壊される。しかしながら、ユーザーがねじり切ることでドライブを破壊することもできる。
【0125】
ねじは、マグネシウム合金からなることが好ましい。マグネシウム箔をインプラント19として使用する場合、電圧差が些細なものとなるため、腐蝕が増加せず、インプラント19、及びねじが両方とも、治癒後になってはじめて劣化するようになっている。
【0126】
図8、及び図9は、ねじ1の代替的な実施形態であり、このねじは打ち込むことも可能である。
【0127】
図8に示す通り、セルフタッピング先端部17は、ねじ1の前端部にまで延在している。セルフタッピング先端部17の円錐角は、45度未満であり、40度未満であると好ましい。円錐角が異なる別個のセンタリングコーン(図1の13)は設けられない。
【0128】
更に、ねじ山8は多条に設計されており、特に二条に設計されており、図1図6による実施形態のねじ山よりもピッチが大きい。
【0129】
図9は、図8のB-Bに沿った断面図である。ドライブ7は、図1図6によるドライブと異なる形状、すなわち1面が切り取られた円柱形状を有する。しかしながら、ドライブが図4に示す形状を有してもよいことは明らかである。
【0130】
その他の点においては、図8、及び図9に示すねじは、図1による例示的な実施形態と基本的に同じである。
【0131】
図10は、歯科用ドリル、又は手動式スクリュードライバー(図示せず)に設置することができる、ねじのためのアダプター24の断面図である。
【0132】
この目的のために、アダプター24は、歯科用ドリル、又は手動式スクリュードライバーに接続可能であるとともに、この文脈において使用されるドリル又はスクリュードライバーに適合するような任意の設計とすることができる連結部26を有する。
【0133】
更に、アダプターは、特にバイトホルダー同様に、ねじのドライブのためのホルダー25を有する。
【0134】
図11による前面の上面図から明らかなように、本例示的な実施形態のホルダー25の形状は、図4に示すねじのドライブの形状に適合されている。
【0135】
ねじのドライブは、ホルダー25内に押し入れる、又は嵌め込むことができることが好ましい。ねじが完全にねじ込まれると、破壊されたドライブはホルダー25内に残存する。
【0136】
1つの実施形態(図示せず)によれば、ドライブはその後、ハンドリング器具によって、例えば、アダプター24内に軸方向に変位可能でありドライブを押し出すピン、又はラッチ機構の解除によって取り除かれてもよい。
【0137】
本発明は、特に歯科用インプラントの簡単かつ信頼性のある取付けを提供する。
【符号の説明】
【0138】
1 ねじ
2 頭部
3 ねじ山
4 柄部
5 キャップ
6 接触面
7 ドライブ
8 所定の破壊点
9 上部
10 円錐形状の部分
11 移行領域
12 移行領域
13 センタリングコーン
14 ブレード
15 ねじ山の歯
16 ねじ溝
17 先端部
18 フランク
19 インプラント
20 削孔
21 領域
22 切断縁
23 中心軸
24 アダプター
25 ホルダー
26 連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11