(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】軌道構築機械および軌道の高さを調整する方法
(51)【国際特許分類】
E01B 27/17 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
E01B27/17
(21)【出願番号】P 2020534395
(86)(22)【出願日】2018-11-19
(86)【国際出願番号】 EP2018081745
(87)【国際公開番号】W WO2019120814
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-19
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】514318345
【氏名又は名称】プラッサー ウント トイラー エクスポート フォン バーンバウマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Plasser & Theurer, Export von Bahnbaumaschinen, Gesellschaft m.b.H.
【住所又は居所原語表記】Johannesgasse 3, A-1010 Wien, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン アウアー
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-360902(JP,A)
【文献】特開昭60-109401(JP,A)
【文献】特開昭59-008803(JP,A)
【文献】特表2010-523854(JP,A)
【文献】特開昭53-116607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 27/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチプルタイタンパ用の、前検測された軌道(3)の高さ位置(2)を整正する走行可能な装置(1)であって、基本基準として移動弦(14)を有する検測システム(4)と、作業箇所(22)において前記移動弦(14)によって設定された目標高さ(8)に前記軌道(3)を持ち上げるこう上装置(5)とを備える、走行可能な装置(1)において、
前記移動弦(14)は、整正されていない領域(11)の前記軌道(3)に対するその位置が、2つの基準箇所(27,28)において決定されており、前記作業箇所(22)およびこう上装置(5)は、作業方向(29)において前記基準箇所(27,28)の後方に配置されていることを特徴とする、走行可能な装置(1)。
【請求項2】
前記こう上装置(5)を制御するための制御ユニット(34)が設けられており、該制御ユニット(34)には、前記作業箇所(22)における前記軌道(3)の前記高さ位置(2)を、前記移動弦(14)を用いて調整するための検測信号が供給されている、請求項1記載の装置(1)。
【請求項3】
前記移動弦(14)および/または高さ調整ピックアップ(23)の高さ調整を、機械的な変位の代わりに、電気基準信号の同等の変化によって仮想的に実行する切替え装置(31)が設けられている、請求項1または2記載の装置(1)。
【請求項4】
前記切替え装置(31)は、整正されていない前記軌道(3)の位置(7)が記憶されたメモリ装置(32)に接続されている、請求項3記載の装置(1)。
【請求項5】
前記移動弦(14)は、2つの検測台車(10,12)の間に張設された高さ調整弦として形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置(1)。
【請求項6】
前記移動弦(14)は、前記軌道(3)に沿って可動の2つの検測装置の間の光軸として形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置(1)。
【請求項7】
作業方向(29)において前記作業箇所(22)の後方に後検測箇所(30)が、該箇所(30)における前記軌道(3)の前記高さ位置(2)を検出するために配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置(1)。
【請求項8】
前記軌道(3)の両レール(36)のそれぞれに、専用の移動弦(14)が対応して配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置(1)。
【請求項9】
前記基準箇所(27,28)および前記作業箇所(22)に、それぞれ傾斜検測装置(38)が配置されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置(1)。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の走行可能な装置(1)を用いて軌道(3)を整正する方法において、
移動弦(14)を、作業方向(29)において前記軌道(3)に沿って移動させ、このとき、基準箇所(27,28)において対応する目標高さ(8)に従って仮想的に、または高さ調整装置(20)を用いて持ち上げ、作業箇所(22)において前記軌道(3)を、前記移動弦(14)によって設定されたこう上量(21)だけ、こう上装置(5)を用いて持ち上げることを特徴とする、方法。
【請求項11】
後検測箇所(30)において検出された検測値を前記切替え装置(31)に伝送し、前記検測値に応じて前記切替え装置(31)により前記目標高さ(8)の適合を行う、
請求項3または4を引用する請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記後検測箇所(30)において検出された前記検測値が、作業プロトコル作成用に記憶される、請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にマルチプルタイタンパ用の、前検測された軌道の高さ位置を整正する走行可能な装置であって、基本基準として移動弦を有する検測システムと、作業箇所において移動弦により設定された目標高さに軌道を持ち上げるこう上装置とを備える、走行可能な装置に関する。さらに本発明は、対応する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道交通手段の荷重ならびに天候の影響により必然的に生じる軌道の位置変化は、保守対策を繰り返すことによって整正する必要がある。このためには一般に、請求項1の上位概念に記載の装置を使用して、軌道を設定された高さ位置に持ち上げる。このこう上作業には一般に、軌道の横方向の整正ならびに突固めが伴う。通常はさらに、ずれを検出するための軌道の前検測と、いわゆる精密法による絶対軌道位置整正のための軌道こう上とを実施することができる。
【0003】
例えばオーストリア国特許発明第382410号明細書から公知のマルチプルタイタンパでは、軌道の各レールの上方に、機械と共に移動する検測弦(移動弦)が基準系として設けられている。対応するレールに対する各検測弦の位置は、前後の検測装置によって決定されている。この場合、前検測装置は未だ未整正の軌道領域を通り、後検測装置は既に整正された軌道領域を通る。軌道は、整正された領域では設定された高さに位置していると仮定することから出発する。
【0004】
オーストリア国特許発明第515208号明細書が開示する装置では、機械フレームが仮想の移動弦として用いられる。この場合、検測システムは、各レールを非接触式に走査するように形成されており、垂直線に関して不変に、機械フレームと結合されている。さらに、光学式の移動弦を有する、請求項1の上位概念に記載の装置が、例えば米国特許第3107168号明細書から公知である。
【0005】
様々な態様の移動弦検測原理が、例えば独国特許発明第102008062143号明細書または独国特許出願公開第10337976号明細書において明らかになっている。ここでは、移動弦を用いて実施される相対検測から、垂直方向の軌道位置の形に忠実な検測信号を検出するための方法が開示されている。このようにして、移動弦検測原理は、軌道の形に忠実な前検測に使用可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の根底を成す課題は、冒頭で述べた形式の装置および方法に関し、従来技術に比べて改良点を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明により、独立請求項1および10の記載に基づき解決される。本発明の有利な改良は、各従属請求項から明らかである。
【0008】
この場合、移動弦は、整正されていない領域の軌道に対するその位置が、2つの基準箇所において決定されており、作業箇所は、作業方向において基準箇所の後方に配置されている。このようにして、移動弦の位置が、常時一義的かつ正確に規定されている。つまり前検測により、整正されていない領域の軌道の位置は既知となっている。軌道が、既に整正された領域では設定された高さ位置を占めていると仮定する必要は一切ない。これにより、一方では軌道こう上の精度が高まり、他方では誤ったこう上作業の際に迅速な補正が可能になる。特に、(定点に対する)絶対軌道位置の精度が向上する。これにより、EN規格13231に記載された、突固め後の絶対軌道位置の品質に対する要件を、確実な手順で実現することができる。
【0009】
走行可能な装置の有利な構成は、こう上装置を制御するための制御ユニットが設けられており、制御ユニットには、作業箇所における軌道の高さ位置を、移動弦を用いて調整するための検測信号が供給されることを想定している。これにより、こう上装置を制御する簡単な装置が提供されることになる。
【0010】
さらに有利なのは、移動弦および/または高さ調整ピックアップの仮想こう上用の切替え装置が設けられている場合である。これにより、軌道の設定された高さ位置に沿って移動弦を通すための機械的な高さ調整装置が省略される。その代わり、移動弦が作業箇所において仮想的に持ち上げられ、これにより、軌道はこの箇所で、対応する目標高さに持ち上げられることになる。
【0011】
有利には、切替え装置は、整正されていない軌道の位置が記憶されたメモリ装置に接続されている。この場合、走行可能な装置は、軌道を自動補正するように装備されており、データの調整は、連続的な位置決定を介して行われる。これに対して代替的に、前置された検測装置による同時前検測および位置検測値の遠隔伝送が行われてもよい。
【0012】
本発明の簡単な構成では、移動弦は、2つの検測台車の間に張設された高さ調整弦として形成されている。有意には、前検測台車は前方の基準箇所に配置されており、後検測台車は、軌道こう上量を決定する作業箇所に配置されている。この場合、直線的に方向付けられた移動弦では、作業箇所において設定された目標高さが達成されることになる。
【0013】
別の構成は、移動弦は、軌道に沿って可動の2つの検測装置の間の光軸として形成されていることを想定している。これは、基準点における移動弦の仮想のこう上を容易にする。さらに、機械的な誤差による不正確さが生じることも一切ない。
【0014】
本装置の改良では、作業方向において作業箇所の後方に後検測箇所が、この箇所における軌道の高さ位置を検出するために配置されている。この場合、検測システムは軌道高さ検出用の4つの箇所を有しており、前方の基準箇所は、移動弦の位置を決定する。作業箇所は、軌道のこう上量を決定し、後検測箇所においてこう上作業が検査される。後検測箇所における第4の検測により、特に故障した検測センサに基づく大幅な不整合点を特定することができる(冗長性)。これにより、手順の確実性がさらに向上することになる。
【0015】
有利には、軌道の両レールのそれぞれに、専用の移動弦が対応して配置されている。これにより、軌道の両レールの直接的な補正が実施可能である。この場合、カーブに設けられるカントは、それぞれ異なって持ち上げられた両移動弦により設定されている。作業箇所でのカント値の個別の考慮は不要である。
【0016】
さらに有利なのは、カーブおよび緩和曲線の領域での軌道こう上用に、追加的な検測信号を使用することができるようにするために、基準箇所および作業箇所に、それぞれ傾斜検測装置が配置されている場合である。
【0017】
本発明による、軌道を整正する方法は、移動弦を、作業方向において軌道に沿って移動させ、このとき、基準箇所において対応する目標高さに従って仮想的に、または高さ調整装置を用いて持ち上げ、作業箇所において軌道を、移動弦により設定されたこう上量だけ、こう上装置を用いて持ち上げることを想定している。
【0018】
本方法の改良では、後検測箇所において検出された検測値を切替え装置に伝送し、この検測値に応じて切替え装置により目標高さの適合が行われる。このようにして、軌道パラメータの変更(例えば道床バラスト特性)に自動的に応じる。有意の誤差が生じた場合には、こう上設定が迅速に適合されることによって緩和される。したがって、こう上は対話式の調整によって設定される。
【0019】
この場合、後検測箇所において検出された検測値が、作業プロトコル作成用に記憶されると有利である。このようにして、軌道整正直後に、進路開通に必要な作業成果の記録が提出される。
【0020】
以下に、添付の図面を参照して本発明を例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来技術に基づく走行可能な装置を示す図である。
【
図2】従来技術に基づくこう上線図を示す図である。
【
図3】従来技術に基づくこう上作業を示す図である。
【
図4】4つの検測箇所を備えた走行可能な装置を示す図である。
【
図5】高さ調整弦を用いたこう上作業および後検測を示す図である。
【
図7】光軸を用いたこう上作業および後検測を示す図である。
【
図8】緩和曲線におけるこう上作業を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示すマルチプルタイタンパの走行可能な装置1が、従来技術から知られている。装置1は、前検測された軌道3の高さ位置2を整正するために用いられ、検測システム4と、こう上装置5と、突固めユニット6とを有している。この場合、整正されていない軌道3の位置7は、前検測に基づき既知となっている。さらに、軌道3の各箇所に対して所望の目標高さ8(目標高低延在部)が設定されており、これらの位置それぞれに関して必要とされるこう上も既知となっている。具体的には、いわゆるこう上補正値9が設定されている。
【0023】
検測システム4は、公知の三点検測(移動弦検測原理)を利用しており、この場合は前検測台車10が、整正されていない領域11の軌道3を通る。後検測台車12が、既に整正された領域13を通る。両検測台車10,12の間には移動弦14が張設されており、軌道3の各高さ位置2は、ロッド15を介して移動弦14に伝えられる。真ん中の検測台車16は、移動弦14を用いた軌道こう上の調整に用いられる。
【0024】
この既知の検測システム4では、
図2に示すように、整正された軌道位置が、各箇所で所望される目標高さ8に正確に対応していると仮定される。したがって、後方の弦終端点17は常に正しい高さに位置するはずである。実際高さ18を起点として、前方の弦終端点19が、この箇所に設定されたこう上補正値9だけ持ち上げられる。これは、高さ調整装置20による機械的な変位によって行われるか、または電気基準信号の同等の変化によって仮想的に行われる。
【0025】
このようにして、移動弦14により、作業箇所22において実施されるべきこう上量21が設定される。具体的には、この箇所22において軌道は、こう上装置5により、真ん中の検測台車16に設けられた高さ調整ピックアップ23が所定の高さに到達したことを示すまで、持ち上げられる。
【0026】
図3では、従来技術において成されるこれらの仮定が、連続する誤差につながることが明らかである。つまり、実際には、整正された軌道位置は、各目標高さから僅かにずれていることが多い。例えば
図3に示すように、軌道3を突き固めたにもかかわらず、レール走行装置24の荷重が加えられることにより、沈下が生じる場合がある。
【0027】
この場合、こう上作業後の軌道延在部25は実線で示されている。こう上作業前の軌道延在部26は破線で示されている。点線は、前検測された、整正されていない軌道3の位置7を示している。前方の弦終端点19において正しいこう上補正値9だけ、こう上が行われるにもかかわらず、移動弦14は設定された目標高さ8に対応して延在してはいない。そのため、移動弦14は極小のこう上量21を設定することになり、この場合、オペレータがこう上補正値9を適合させるまで、または機械前進中に点状の誤差が次第に解消されるまで、この誤差は継続することになる。
【0028】
この欠点は、
図4に例示するような、本発明による走行可能な装置1によって回避される。この場合、移動弦14は、整正されていない領域11の軌道3に対するその位置を、2つの基準箇所27,28において決定されている。作業方向29において、作業箇所22は、これらの基準箇所27,28の後方に配置されている。任意には、装置1の後方領域には、整正された領域13の高さ位置2を検査するために、後検測箇所30が設けられている。
【0029】
図示の構成では、移動弦14は、第1の基準箇所27における前検測台車10と、作業箇所22における後検測台車12との間に張設されている。この場合、前方の弦終端点19が、対応するこう上補正値9だけ持ち上げられている。これは、高さ調整装置20によって機械的に行われるか、または有利には、切替え装置31による信号適合によって電子的に行われる。この場合、切替え装置31は、整正されていない軌道3の位置7の場所もしくは距離に関するデータ、またはこう上補正値9が記憶されたメモリ装置32に接続されている。距離測定装置33により、装置1が定点まで進んだ距離35が検出される。これにより、目下の基準箇所27,28および目下の作業箇所22、ならびに場合により後検測箇所30に対して、記憶されたデータが対応付けられる。
【0030】
第2の基準箇所28において、移動弦14の高さは、この箇所28における目標高さ8に調整される。この目標高さ8は、この箇所28における既知の実際高さ18と、対応するこう上補正値9とから得られる。調整は、例えば高さ調整装置20により目標高さに合わされた高さ調整ピックアップ23によって行われる。有利には、この場合も機械的な高さ調整に対して代替的に、切替え装置31による電子的な適合が想定されている。
【0031】
第2の基準箇所28において移動弦14が対応する目標高さ8に到達したことが確認されると直ちに、制御ユニット34がこう上作業を終了させる。このために、こう上装置5の制御用に設けられた制御ユニット34に、高さ調整ピックアップ23の信号が送られる。精度を向上させるために、後検測によって高さ設定の適合が行われてもよい。
【0032】
このために、移動弦14が後検測箇所30まで延長されている。検測過程のために、例えば作業箇所22において移動弦14が一時的に外されて、基準箇所27,28および後検測箇所30が三点検測に使用される。これに対して代替的に、整正された軌道位置の後検測用に、別の移動弦14が張設されていてもよい。
【0033】
図5~
図8には、移動弦14が対応して配置された、軌道3のレール36の例示的な高低延在部が示されている。簡単で丈夫な構成は、移動弦14として物理的な高さ調整弦(例えば鋼弦)が、検測台車10,12の間に張設されていることを想定している(
図5)。より高い精度は、軌道に沿って可動の2つの検測装置の間の光軸によって達成される(
図7、
図8)。このような構成は、例えば本出願人のオーストリア国特許出願第3252016号明細書に開示されている。
図7、
図8には、光軸として形成された移動弦14が一点鎖線で示されている。
【0034】
直線軌道区間では、基準点27,28において同一の目標高さ8にこう上が行われる(
図5~
図7)。これにより、軌道3も必然的に、作業箇所22において同一の目標高さ8に持ち上げられる。任意には、後検測箇所30を含む三点検側による後検測が行われる(
図5および
図7)。
【0035】
図8には、傾斜変化時および湾曲時の状態が示されている。これらはカントおよび勾配変化の際に生じる。この場合、移動弦14は第1の基準箇所27においてのみ、目標高さ8の延在部に沿って通される。第2の基準箇所28では、この箇所28に設定された目標高低延在部の曲率から得られる矢37をこう上補正値9に加算した分だけ、こう上が行われる。設定された目標高さ8の延在部と、移動弦長とから、対応する値を簡単に求めることができる。有利には、対応する計算を実施するための切替え装置31が設けられている。
【0036】
カーブには通常、カントが存在している。この場合、軌道3のカーブの外側のレール36に対しては、所定のカント値だけ高められた目標高さ8が設定される。これは、各こう上補正値9についても同様に当てはまる。軌道3の、このように区別されるこう上量21に対しては、例えば各レール36に専用の移動弦14が対応して配置されている。
【0037】
これに対して代替的または補足的に、基準箇所27,28および作業箇所22には、傾斜検測装置38(振り子)が設けられている。この場合は、カーブの内側のレール36に対する目標高さ8の設定で足りる。カーブの外側のレール36は、設定された傾斜角度でもって追加的に、対応するカント値だけ持ち上げられる。この場合、単一の移動弦14が軌道中心に配置されていてもよく、レール36の高さ位置は、傾斜角度を考慮して得られる。
【0038】
図9には、以下で説明する数式に関する幾何学的な関係が示されている。機械は、軌道3に沿って作業方向29に移動し、軌道3は、4つの箇所22,27,28,30で移動弦14に対して検測される。この場合、2つの前検測車軸は軌道3において、元の、まだ整正されていない領域11内を移動する。このとき、前検測に基づき、実際高さ18に対応する高さ値h
0ist,h
1istは既知となっている。移動弦14と軌道3との間において、各箇所27,28では対応するこう上量z
0,z
1が得られる。さらに、各目標高さ8の値h
0soll,h
1sollまたはこう上補正値9が、それぞれの高さ変化量Δh
0,Δh
1として設定されている:すなわち
Δh=h
soll-h
ist
である。
【0039】
作業箇所22、つまり軌道突固め位置では、別の検測車軸により、持ち上げられた状態の軌道3の高さ位置が検測される。具体的には、この箇所22における高さ値h2を決定するために、移動弦14と軌道3との間のこう上量z2が検出される。後検測箇所30では後検測車軸により、移動弦14と、突き固められて整正された軌道3の領域13との間のこう上量z3の検測が行われる。場合により、こう上量21は作業箇所22に合わされ、これにより、この箇所30における高さ値h3を、設定された値に対応させる。つまり、軌道こう上を、後検測によって連続して検査可能かつ調整可能である。
【0040】
一番前の検測車軸(第1の基準箇所27)から、後続の検測車軸(第2の基準箇所28、作業箇所22、後検測箇所30)は、軌道方向においてそれぞれ所定の距離x
1、x
2およびx
3だけ離れている。この場合、傾斜した長さと水平投影との差は原則として補正可能であるが、軌道敷設に見られる縦方向の傾斜は無視することができる。任意の位置の移動弦14に対応するこう上量z
0,z
1,z
2およびz
3は、連続的に検測されるか、または検測方法(張設された弦、光学式の弦)に応じて、いずれにしろ部分的に既知となっている。図示の幾何学的な関係を用いて、作業箇所22および後検測箇所30における高さh
2,h
3を導出することができる。すなわち:
【数1】
【数2】
となる。