(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】ウォゴニンで疼痛を治療するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/353 20060101AFI20230703BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230703BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230703BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20230703BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20230703BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20230703BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20230703BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230703BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230703BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230703BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230703BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20230703BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20230703BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230703BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230703BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230703BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230703BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A61K31/353
A61K45/00
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/06
A61K9/70 401
A61K9/12
A61K47/12
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/36
A61K47/20
A61K47/44
A61K47/32
A61K47/34
A61P19/02
A61P29/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2020538049
(86)(22)【出願日】2019-01-09
(86)【国際出願番号】 US2019012869
(87)【国際公開番号】W WO2019139965
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2022-01-07
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592087647
【氏名又は名称】ブリガム・ヤング・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】BRIGHAM YOUNG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】コーイマン,デイビッド,リー
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-537073(JP,A)
【文献】特表2008-504336(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0136811(US,A1)
【文献】特開2007-182384(JP,A)
【文献】国際公開第2003/015766(WO,A1)
【文献】Free Radical Biology and Medicine,2017年02月22日,Vol.106,pp.288-301
【文献】日本内科学会雑誌,2011年,Vol.100, No.10,pp.2888-2901
【文献】Biomolecules and Therapeutics,2015年,Vol.23, No.5,pp.442-448
【文献】Clinical Reviews in Oral Biology and Medicine,2016年,Vol.95, No.12,pp.1341-1349
【文献】Molecular Pathogenesis of Genetic and Inherited Diseases,2008年,Vol.172, No.1,pp.112-122
【文献】PNAS,2011年,Vol.108, No.51,pp.20678-20683
【文献】Oncotarget,2017年06月06日,Vol.8, No.37,pp.61440-61456
【文献】The Journal of Immunology,2014年,Vol.193,pp.130-138
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 45/00-45/08
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 19/00
A61P 29/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者において
関節炎痛を軽減または緩和するためのウォゴニン
を含む医薬組成物であって、約1μM~約500μMの治療有効量で、
関節炎痛を有する前記患者の1か所以上の部位に
局所投与され、前記
関節炎痛を軽減または緩和する、医薬組成物。
【請求項2】
前記関節炎痛が変形性関節症痛である、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ウォゴニンの単回用量が3.73×10
-9g/Kg~約1.87×10
-6g/Kgである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
ウォゴニンの1日用量が1日当たり1.12×10
-8g/Kg~約5.61×10
-6g/Kgである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ウォゴニンが、即時放出局所製剤、遅延放出局所製剤、連続的放出局所製剤、または持続放出局所製剤として投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
1種以上の追加の抗炎症薬が、前記ウォゴニンの投与の前、後、または同時に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物が、約1μM、5μM、10μM、20μM、40μM、60μM、80μM、100μM、120μM、140μM、160μM、180μM、200μM、220μM、240μM、260μM、280μM、300μM、320μM、340μM、360μM、380μM、400μM、420μM、440μM、460μM、480μM、および500μMのウォゴニンから選択されるウォゴニンの濃度を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物が、液体、擦式剤、フォーム、クリーム、溶液、乳剤、ゲル、スプレー、ワイプ、ローション、もしくはパッチまたはそれらの組み合わせの形態である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物がクリームである、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記クリームが1種以上の経皮浸透促進剤を含む、請求項
9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記患者による前記
関節炎痛の知覚が、前記ウォゴニンの投与後に約10%~約100%軽減される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
患者において関節炎の関節を治療し、治癒を促進するための、約1μM~約500μMの治療有効量のウォゴニン
を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物を前記患者の1か所以上の関節炎の関節に
局所投与し、それによって前記関節炎の関節を治療し、治癒を促進する、医薬組成物。
【請求項13】
前記投与が前記関節炎の関節内の炎症を軽減する、請求項
12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
ウォゴニンで治療されていない関節炎の関節と比較して、軟骨および滑液を含む前記関節炎の関節内またはその近くを取り囲むセラミドの発現が増加し、TGF-β1が増加し、MMP-13が減少し、HtrA1が減少し、NFκBが減少し、AGEが減少する、請求項
12に記載の医薬組成物。
【請求項15】
ウォゴニンで治療されていない関節炎の関節と比較して、サイトカインHtrA1、MMP-13、NFκB、およびAGEの前記発現が少なくとも20%低下し、TGF-β1、セラミド、およびBBS3が少なくとも20%上昇する、請求項
14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記関節炎の関節が変形性関節症の関節である、請求項
12に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記治療有効量が、嚢胞様病変(CLL)の減少、OARSIスコアの低下、および軟骨分解の一次繊毛経路の阻害のうちの1つ以上を含む効果を誘発する、請求項
12に記載の医薬組成物。
【請求項18】
約1μM~約500μMの濃度のウォゴニン
と、美容的にまたは皮膚科学的に許容される担体とを含む
、局所
投与される、関節炎痛を軽減または緩和するための組成物。
【請求項19】
前記組成物が、液体、擦式剤、フォーム、クリーム、溶液、乳剤、ゲル、スプレー、ワイプ、ローション、もしくはパッチ、またはそれらの組み合わせの形態である、請求項
18に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、界面活性剤、乳化剤、脂肪、脂肪酸、トリグリセリド、溶媒、増粘剤、皮膚コンディショニング剤、キレート剤、芳香剤、浸透促進剤、およびそれらの組み合わせから選択される1種以上の賦形剤を含む、請求項
18に記載の組成物。
【請求項21】
前記1種以上の賦形剤が、セテアリルアルコール、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、グリセリン、シアバター、エトキシジグリコール、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸peg-100、ステアリン酸、ブチレングリコール、ジメチコン、セイヨウハッカ(ペパーミント)油、ヤシ油、ポリエチレングリコール、プルーナスアミグダルスダルシス(スイートアーモンド)油、
アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムコポリマー、セテアレス-20、ジメチルスルホン、スクアラン、フェノキシエタノール、カプリリルグリコール、アクリレーツ/アクリル酸アルキルc10-30クロスポリマー、キサンタンガム、エチルヘキシルグリセリン、ヘキシレングリコール、グルタミン酸二酢酸四ナトリウム、ポリソルベート60、イソステアリン酸ソルビタン、アロエバーバデンシス葉汁、およびメントール、ならびにそれらの組み合わせから選択される、請求項
20に記載の組成物。
【請求項22】
ジメチルスルホン、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール、ペパーミント油、ヤシ油、およびシアバターのうちの1つ以上を含む、請求項
18に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が
a).約0.03%~約5%のジメチルスルホン、
b).約1%~約8%のポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール、
c).約1%~約7%のペパーミント油、
d).約0.3%~約50%のシアバター、
e).約0.14%~約26%のヤシ油、および
f).約15%~約85%の水を含む、請求項
22に記載の組成物。
【請求項24】
前記ウォゴニンが約90%~約100%純粋である、請求項
18に記載の組成物。
【請求項25】
患者において関節炎痛を軽減または緩和するための、局所投与される医薬組成物であって、式I
【化1】
(式中、R
1
、R
2
、およびR
3
は、それぞれ独立して、-H、-ハロ、-OH、C
1
-C
4
アルキル、C
1
-C
4
アルコキシ、-NO
2
、および-SXから選択され、XはC
1
-C
4
アルキルである)の化合物を、
含む組成物を約1μM~約500μMの治療有効量で含み、前記医薬組成物が、関節炎痛を有する前記患者の1か所以上の部位に局所投与される、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年1月9日に提出された米国仮特許出願第62/615,072号、および2018年11月6日に提出された米国仮特許出願第62/756,188号の利益を主張し、それぞれの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に記載の発明は、ウォゴニンで疼痛を治療するための組成物および方法に関する。特に、本明細書に記載されるのは、筋骨格痛および関節炎痛を治療するための組成物および方法である。
【背景技術】
【0003】
筋骨格痛と関節炎痛は世界中の人々にとって重要な問題である。これらの状態から生じる疼痛は、炎症の異常と関連している。特に問題となるのは、変形性関節症(OA)であり、この疾患は、とりわけ米国(U.S.)において2700万人以上が影響を受けている慢性疾患である。OAは、肥満、関節負荷、急性損傷、加齢、関節のずれなどの危険因子に関連する多因子性疾患であると認識されている。肥満率が増加し、人口の平均年齢が進むにつれて、OAの発生率も大幅に増加している。
【0004】
関節の関節面を物理的に劣化させる異常なまたは過剰な機械的負荷の結果であるとかつては考えられていたが、最近の研究は、OAの理解を「磨耗および断裂」の疾患から、疾患の進行を促進する炎症性バイオマーカーとリピドームバイオマーカーの両方が関与する代謝的に活性なプロセスに次第に移行している。研究者らは、OAの進行におけるHtrA1およびMmp-13などのサイトカインの重要性を示している。OAの進行を促進する炎症経路の一部として、マトリックス分解プロテアーゼHtrA1およびMMP-13は軟骨細胞から細胞周囲および細胞外マトリックスに分泌され、マトリックスの完全性および機能の低下となる。
【0005】
これに関連して、研究者らは、OAを治療するための可能性のある治療手段として、炎症の強力なブロッキングを探究している。例えば、炎症誘発性シグナル伝達の「強力かつ特定の抗サイトカイン治療」または「ブロッキング」などの言葉を用いて、OAの治療への答えが説明されてきた(例えば、Kapoor M,et al.,Nature Reviews Rheumatology.2011;7(1):33~42およびKalaitzoglou E et al.,Curr Rheumatol Rep.2017;19(8)を参照)。
【0006】
しかし、今日まで、OAに関連する疾患の病因を逆転させることができる良好な治療選択肢は存在しない。したがって、関節の再生と修復をもたらしながら、OAの疼痛を治療するとともに、根本的な疾患メカニズムを処置できる安全で効果的な治療法に対する満たされていないニーズがある。さらに、筋骨格痛から生じる状態の安全かつ効果的な治療のための選択肢は限定されている。
【発明の概要】
【0007】
OA疼痛および筋骨格痛を含む疼痛の治療における前述の限定は、低用量のウォゴニンまたはその誘導体の投与(例えば、局所投与)によって対処される。したがって、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、約1μM~約500μMの治療有効量のウォゴニンまたはその誘導体を含む組成物を、疼痛を有する患者の1か所以上の部位に局部投与することと、疼痛を軽減または緩和することとを含む、患者において疼痛を軽減または緩和する方法である。いくつかの実施形態では、疼痛は、筋骨格痛および関節炎痛から選択される。いくつかの実施形態では、治療される筋骨格痛は、筋肉痛、筋挫傷、筋打撲、または筋断裂から生じる。他の実施形態では、筋骨格痛は、腱痛、腱挫傷、腱打撲、または腱断裂から生じる。いくつかの実施形態では、関節炎痛は、変形性関節症痛および関節リウマチ痛を含む。いくつかの実施形態では、患者による疼痛の知覚は、ウォゴニンの投与後に約10%~約100%軽減する。
【0008】
いくつかの実施形態では、疼痛を軽減または緩和するための局所投与は経皮投与である。いくつかの実施形態では、ウォゴニンの単回用量は3.73×10-9g/Kg~約1.87×10-6g/Kgであり、ウォゴニンの1日用量は1日当たり1.12×10-8g/Kg~約5.61×10-6である。いくつかの実施形態では、ウォゴニンは、即時放出局所製剤、遅延放出局所製剤、連続的放出局所製剤、または持続放出局所製剤として投与される。いくつかの実施形態では、1種以上の追加の抗炎症薬が、ウォゴニンの局部投与の前、後、または同時に投与される。
【0009】
いくつかの実施形態では、ウォゴニンで疼痛を治療または軽減するための組成物は、約1μM、5μM、10μM、20μM、40μM、60μM、80μM、100μM、120μM、140μM、160μM、180μM、200μM、220μM、240μM、260μM、280μM、300μM、320μM、340μM、360μM、380μM、400μM、420μM、440μM、460μM、480μM、および500μMのウォゴニンから選択される濃度のウォゴニンを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、液体、擦式剤、フォーム、クリーム、溶液、乳剤、ゲル、スプレー、ワイプ、ローション、もしくはパッチまたはそれらの組み合わせの形態である。いくつかの実施形態では、組成物はクリームであり、クリームは1種以上の経皮浸透促進剤を含む。
【0010】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、患者の1か所以上の関節炎の関節に局部的に約1μM~約500μMの治療有効量のワゴニンを含む組成物を局所投与し、それにより、関節炎の関節を治療し、治癒を促進することを含む、患者において関節炎の関節を治療し、および治癒を促進する方法である。いくつかの実施形態では、ウォゴニンの投与は、関節炎の関節内の炎症を軽減する。いくつかの実施形態では、治療有効量は、嚢胞様病変(CLL)の減少、OARSIスコアの低下、および軟骨分解の一次繊毛経路の阻害を含む効果を誘発する。
【0011】
ウォゴニンの投与後のいくつかの実施形態では、ウォゴニンで治療されていない関節炎の関節と比較して、軟骨および滑液を含む関節炎の関節内またはその近くを取り囲むセラミドの発現が増加し、TGF-β1が増加し、MMP-13が減少し、HtrA1が減少し、NFκBが減少し、AGEが減少する。ウォゴニンの投与後のいくつかの実施形態では、ウォゴニンで治療されていない関節炎の関節と比較して、サイトカインHtrA1、MMP-13、NFκB、およびAGEの発現が20%低下し、TGF-β1およびセラミドの発現が20%上昇する。いくつかの実施形態では、関節炎の関節は変形性関節症の関節である。
【0012】
他のいくつかの実施形態は、約1μM~約500μMの濃度のウォゴニンと、美容的にまたは皮膚科学的に許容される担体とを含む局所疼痛組成物である。いくつかの実施形態では、ウォゴニンは、約90%~約100%純粋である。いくつかの実施形態では、局所疼痛組成物は、液体、擦式剤、フォーム、クリーム、溶液、乳剤、ゲル、スプレー、ワイプ、ローション、もしくはパッチまたはそれらの組み合わせの形態である。いくつかの実施形態では、局所疼痛組成物は、界面活性剤、乳化剤、脂肪、脂肪酸、トリグリセリド、溶媒、増粘剤、皮膚コンディショニング剤、キレート剤、芳香剤、浸透促進剤、およびそれらの組み合わせから選択される1種以上の賦形剤を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、局所疼痛組成物中の担体は、セテアリルアルコール、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、グリセリン、シアバター、エトキシジグリコール、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸peg-100、ステアリン酸、ブチレングリコール、ジメチコン、セイヨウハッカ(ペパーミント)油、ヤシ油、ポリエチレングリコール、プルーナスアミグダルスダルシス(スイートアーモンド)油、アクリル酸ヒドロキシエチル/、アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムコポリマー、セテアレス-20、ジメチルスルホン、スクアラン、フェノキシエタノール、カプリリルグリコール、アクリレーツ/アクリル酸アルキルc10-30クロスポリマー、キサンタンガム、エチルヘキシルグリセリン、ヘキシレングリコール、グルタミン酸二酢酸四ナトリウム、ポリソルベート60、イソステアリン酸ソルビタン、アロエバーバデンシス葉汁、メントール、およびそれらの組み合わせから選択される1種以上の賦形剤を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、ジメチルスルホン、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール、ペパーミント油、ヤシ油、およびシアバターを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、a).約0.03%~約5%のジメチルスルホン、b).約1%~約8%のポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール、c).約1%~約7%のペパーミン油、d).約0.3%~約50%のシアバター、e).約0.14%~約26%のヤシ油、およびf).約15%~約85%の水を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】DMM膝不安定化手術を受けた後、10μMのウォゴニンまたはビヒクルで処置されたマウスの修正Mankinスコアを比較する棒グラフである(*p>0.05)。
【
図2】DMM手術後のマウス膝関節におけるHtrA1の組織染色である。パネルAは、術後、ビヒクルで処置されたマウスの組織染色を表し、パネルBは、術後10μMのウォゴニンで処置されたマウスの組織染色を表す。
【
図3】DMM膝不安定化手術後、表7に記載の試験クリーム組成物(TC)と偽クリーム組成物(偽)とで処置したマウスのOARSIスコアを比較した棒グラフである(*p>0.05)。
【
図4】DMM膝不安定化手術後、表7に記載の試験クリーム組成物(TC)と偽クリーム組成物(偽)とで処置したマウスの嚢胞様病変の数を比較した棒グラフである(*p>0.01)。
【
図5】DMM膝不安定化手術後、表7に記載の試験クリーム組成物(TC)と偽クリーム組成物(偽)とで処置したマウス膝関節の関節軟骨からのNFκβ陽性細胞の数を比較した棒グラフである(*p>0.01)。
【
図6】DMM膝不安定化手術後、表7に記載の試験クリーム組成物(TC)と偽クリーム組成物(偽)とで処置したマウス膝関節の関節軟骨からのMmp-13陽性細胞の数を比較した棒グラフである(*p>0.01)。
【
図7】DMM膝不安定化手術後、表7に記載の試験クリーム組成物(TC)と偽クリーム組成物(偽)とで処置したマウス膝関節の関節軟骨からのTGF-β1陽性細胞の数を比較した棒グラフである(*p>0.05)。
【
図8】10μMのウォゴニン、IL-1β、またはウォゴニン前処置に続いてIL-1βで処置したヒト軟骨細胞からと、処置なしヒト軟骨細胞からのRNAを用いた定量的RTPCR後のTGF-β1PCR産物を比較した棒グラフである。
【
図9】10μMのウォゴニン、IL-1β、またはウォゴニン前処置に続いてIL-1βで処置したヒト軟骨細胞からと、処置なしヒト軟骨細胞からのRNAを用いた定量的RTPCR後のBBS3PCR産物を比較した棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明は、本明細書に記載の本発明の実施形態をより詳細に明らかにする。本明細書に記載の本発明の範囲、実施形態、または特定の態様から逸脱することなく、適切な修正および適合がなされ得ることが当業者には容易に明らかであるので、以下の実施形態は、本発明を限定することまたはその範囲を狭めることを意味しない。本明細書に引用されるすべての特許および刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0017】
本明細書を解釈する目的で、以下の用語および定義が適用され、適切な場合はいつでも、単数形で使用される用語は複数形も含み、逆もまた同様である。以下に記載の定義が参照により本明細書に組み込まれている文書と矛盾する場合、以下に記載の定義が優先するものとする。
【0018】
「患者」という用語は、哺乳動物およびヒトを含む任意の対象を指す。患者は、疾患を有しているか、または疾患を有している疑いがあり、そのため薬物で治療されている。場合によっては、患者は、イヌ、ニワトリ、ネコ、ウマ、または霊長類などの哺乳動物である。いくつかの例では、本明細書で使用される「患者」という用語は、ヒト(例えば、男性、女性、または子供)を指す。場合によっては、本明細書で使用される「患者」という用語は、動物モデル調査の実験動物を指す。患者または対象は、任意の年齢、性別、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0019】
本明細書で使用される「有効成分」、「医薬品有効成分」、「生物活性剤」または「治療薬」という用語は、薬理効果、多くの場合、有益な効果をもたらす医薬品、有効成分、化合物、物質もしくは薬物、組成物、またはそれらの混合物を指す。有効成分は、任意の薬学的に許容される塩、水和物、結晶形またはその多形であってもよい。
【0020】
本明細書で単独でまたは別の基の一部として使用される「アルキル」という用語は、1個以上の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の炭化水素を指す。いくつかの実施形態では、アルキルは、1~4個の炭素原子を表す。アルキルの代表的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、およびtert-ブチルが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アルキルは直鎖であってもよい。いくつかの実施形態では、アルキルは分岐していてもよい。
【0021】
本明細書で単独または別の基の一部として使用される「アルコキシ」という用語は、オキシ基、-O-を介して親分子部分に付加された、本明細書で定義される(したがって、ポリアルコキシなどの置換型を含む)アルキル基を指す。アルコキシの代表的な例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2-プロポキシ、ブトキシ、tert-ブトキシ、ヘキシルオキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書で使用される「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、-F、-Cl、-Br、および-Iを含む任意の適切なハロゲンを指す。
【0023】
本明細書で使用される「単離された」および「精製された」という用語は、互換的に使用され、化合物、または化合物が自然に関連している自然発生の有機分子と、タンパク質とを含まない、少なくとも約30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、99重量%、または100重量%である化合物を含む組成物を指す。本明細書に記載のいくつかの実施形態では、ウォゴニンは、当技術分野で既知のまたは本明細書に記載の、例えば、高圧液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーを含む任意の方法によって、または合成によって精製または単離される。
【0024】
本明細書で使用される「製剤」または「組成物」という用語は、薬学的に許容される賦形剤と組み合わせた有効成分または薬物を指す。
【0025】
本明細書で使用される「投与量」または「用量」という用語は、単回投与で治療効果を生み出すのに十分な量を含む有効成分製剤の任意の形態を表す。
【0026】
本明細書で使用される「調節放出」という用語は、生理学的条件下またはインビトロ試験において、即時放出製剤よりも遅い速度で有効成分を放出する組成物を指す。
【0027】
本明細書で使用される「即時放出」という用語は、投与後に有効成分の大部分(例えば、有効成分の50%超)を放出する組成物を指す。
【0028】
本明細書で使用される「徐放」という用語は、すべての有効成分よりも少ないものが最初に放出されるように、有効成分を長期間、例えば、数分、数時間、または数日にわたって放出する組成物を指す。徐放速度は、例えば、生理学的条件下またはインビトロ試験において、一定期間にわたって、剤形から特定の量の薬物または有効成分の放出をもたらすことができる。
【0029】
本明細書で使用される「遅延放出」という用語は、遅延期間後に所望のプロファイルに従って有効成分を放出する組成物を指す。遅延期間は、組成物の投与から少なくとも約5分、10分、20分、約30分、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約14時間、約16時間、約18時間、約20時間、約24時間、またはさらに長い時間であり得る。遅延期間の後、組成物は、即時放出されるか、または徐放プロファイルもしくは持続放出プロファイルに従って放出され得る。
【0030】
本明細書で使用される「持続放出」という用語は、例えば、少なくとも約20分、約30分、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約14時間、約16時間、約18時間、約20時間、約24時間、またはさらに長く、長時間にわたって有効成分を放出する組成物を指す。
【0031】
「治療する」という用語は、ある障害に関連する状態、症状、またはパラメータを改善するのに有効な量、様式、またはモードで治療を施すことを指す。いくつかの実施形態では、治療するとは、関節炎(例えば、変形性関節症)または筋骨格痛から生じる疼痛の回復を指す。いくつかの実施形態では、治療するとは、関節炎(例えば、変形性関節症)および永久治癒などの疾患プロセスの回復を指す。
【0032】
「局部投与」または「限局投与」という用語は、OA、OA疼痛、または筋骨格痛を有する1か所以上の組織への治療薬(すなわち、ウォゴニン)の投与を指す。局部投与とは、治療薬が、全身に投与されることなく、罹患した組織の近くに投与されることを意味する。局部投与後、活性剤はリンパ系または血管系で吸収され、その後組織から除去され得ると考えられる。しかし、作用機序は、主に、治療薬と罹患した組織との局部的相互作用によって生じると考えられている。
【0033】
「予防」という用語は、統計的に有意な程度、または当分野の当業者が検出可能な程度のいずれかまで、障害の進行を防止または軽減することを指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、「a」または「an」は、別段の指定がない限り、1つ以上を意味する。
【0035】
本明細書に記載されるように、本発明者らは、いくつかの実施例では、約1μM~約500μMの局所的に適用される低用量のウォゴニンを用いて、OAおよび筋骨格痛を治療する驚くほど効果的なアプローチを発見した。ウォゴニンの局所投与が関節の恒常性を回復させ、OA疾患プロセスの進行を抑止することも発見した。さらに、本発明者らは、ウォゴニンの局所投与が軟骨細胞の活性化を逆転させ、その結果、患部の軟骨にアポトーシスが生じ、それにより損傷した関節軟骨の治癒が促進されることを見出した。
【0036】
ウォゴニンの局所投与によるこれらの実質的な効果は、これまで実現されたことはなかった。ウォゴニンは、伝統的な漢方薬であるコガネバナ(Scutellaria baicalensis)の根に由来するフラボノイドである。ウォゴニンは、アトピー性皮膚炎、高脂血症、アテローム動脈硬化症などの炎症性疾患の治療に使用されている。最近では、ウォゴニンは、炎症を減少させ得るプロスタグランジンE2、TLR4、NO、およびMMPの産生をブロックすることにより、他の炎症性疾患、癌、および疼痛管理におけるその使用について調査されている。例えば、米国特許出願公開第2013/0136811号は、大用量のウォゴニン(すなわち、200mg/kg)の腹腔内注射による全身適用に続くマウスホルマリン試験における疼痛症状の改善を記載した。しかし、このアプローチは、低用量でのウォゴニンの局所投与および局部投与が、OAから生じる疼痛または筋骨格痛を軽減し得るかどうかを決定していない。この調査はまた、ウォゴニンがOA疾患の進行を逆転させる関節の恒常性の回復に何らかの影響を与え得るかどうかを示さなかった。Park et al.,Biomolecules & Therapeutics.23(5)pp.442~448(2015)によって記述された別の調査では、OAの疾患進行に関与し得る、IL-1βによる炎症の開始に続く関節軟骨内でのMMP-3発現に対するウォゴニンの関節内注射の効果が評価された。著者らはMMP-3発現の低下を示したが、この調査では、低用量のウォゴニンの局所投与が変形性関節症から生じる疼痛または筋骨格痛を寛解させ得るかどうか、または変形性関節症滑膜関節の機能的回復になり得るかどうかは決定されなかった。
【0037】
それとは対照的に、本明細書に記載の方法および組成物は、全身に、または注射によって適用されるOAを治療するための非常に強力な抗炎症薬および他のアプローチを使用するという従来の予想に反している。本明細書に示すように、局所的なウォゴニンを低用量で利用することにより、ウォゴニンが炎症を最適に調節し、治癒プロセスを助ける自然の保護機構を増強する関節の修復および治癒を加速させることができる。したがって、OAの炎症性要素を治療することは、かみそりの縁を歩くようなものであり、少ないと効果がなく、過度だとOAが悪化する。さらに、炎症のみを治療しても不十分である。プロテオグリカン、コラーゲン原線維などを生成し続け、関節の治癒につながるように、軟骨細胞がアポトーシス経路からオートファジーに切り替わることも必要である。したがって、本明細書に記載の方法および組成物は、あらゆる種類の変形性関節症の治療に適している。さらに、関節リウマチ痛を含む他の種類の関節炎は、低用量のウォゴニンの投与により回復し得ることが考えられる。
【0038】
本明細書に記載するように、本発明者らは、開示した組成物が一次繊毛との新規の相互作用を通じて保護作用を示すことを発見した。一次繊毛は軟骨細胞に存在し、マウス軟骨細胞の一次繊毛は、負荷の増加に応じてシグナルプロセシングと関連する。一次繊毛は、以前に同定された、OAに共通のHTRA1-DDR2-MMP13分解経路の増加によるOAを含む、軟骨の恒常性に関連している。
【0039】
MMP-13発現の増加におけるHes1の関与などのOA進行での一次繊毛の役割に関するさらなる証拠が存在する。Hes1は、一次繊毛を介してソニックヘッジホッグシグナル伝達を調節するNotchシグナル伝達経路を介して作用する。
【0040】
OAにおける炎症の役割は明確に示されているが、それでも強力な抗炎症剤の使用によってこの疾患の進行を止められない。この疾患は単純な炎症よりも複雑に見える。例えば、ペプチドホルモンレプチンなどのアディポカインの相互作用、およびOAの開始における炎症が知られている。インスリン感受性の維持に関与するレプチンは、肥満者において高レベルで発現し、軟骨細胞でMMP-13発現を増加することによる変形性関節症と相互関係がある。極度の肥満の場合、変形性関節症者のBMIとともにMMP-13の増加と、レプチン発現との間に強い正の相関が存在する。一次繊毛はレプチンの恒常性に密接に関与している。さらに、核因子カッパベータ(NFκβ経路は、OAの進行と密接に関連していることが示されている。NFκβは一次繊毛によって調節されることが知られている。
【0041】
一次繊毛は軟骨の恒常性の維持に密接に関与しており、OAの治療はそれを考慮に入れなければならないが、炎症のブロッキングのみに依存してはならない。本明細書において、本発明者らは、ウォゴニン組成物が一次繊毛を通して作用することにより全体的に軟骨細胞に対して保護作用を示し、ウォゴニンの局所適用がOA進行を減衰させ、それにより疾患を治療することを示す。これは、以前はウォゴニンによるものと考えられなかった新規の経路であり、局所的に適用される(例えば、クリームとして)と、変形性関節症の関節に強力で全体的な利点がある理由を説明する。
【0042】
本明細書に示すように、局所的な経皮クリームで適用されるウォゴニンは、OAの進行を抑止するのに有用である。本明細書に記載の方法により、および組成物で適用されたウォゴニンは、OA疾患が膝の不安定化手術により誘発されたマウスにおいてOAの進行をブロックする。本明細書に記載のように、いくつかの主要な指標によって明らかなように、関節の健康状態が回復する。さらに、本明細書に記載の方法および組成物によるウォゴニンの使用は、疾患が誘発された後に関節の健康状態を回復させ、治療前に進行させることができる。抗炎症薬は、関節の健康状態を回復させることは言うまでもなく、疾患の進行をブロックすることなく、OAの症状(すなわち、疼痛)を治療するために長年にわたり使用されてきた。本明細書とともに提供されるデータは、局所的な経皮的治療が、ストレスを受けた軟骨細胞においてアポトーシスからオートファジーへの切り替えをもたらし、関節の健康状態、OAの根本的な疾患病状を治療するためのプロセスを回復することを示している。
【0043】
開示された方法および組成物の利点は2つある。第一に、方法および組成物は、OAに部位特異的(すなわち、関節)治療を提供する。第二に、OAに関連する軟骨細胞の活性化の生理学的結果を治療する。さらに、開示されたウォゴニンによる治療は、全身的に作用し、内臓への添加または損傷などの有害な副作用をもたらす、非ステロイド系抗炎症薬およびアヘン剤の使用を制限するまたは未然に防ぐ。
【0044】
さらに、本明細書に記載の方法および組成物は、筋肉痛、筋挫傷、筋打撲、または筋断裂から生じる他の非関節炎性炎症性の筋骨格痛の局部投与および緩和に適している。同様に、本明細書に記載の方法および組成物は、腱痛、腱挫傷、腱打撲、または腱断裂から生じる疼痛の局部投与および緩和に適している。
【0045】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、疼痛の治療のための化合物ウォゴニンまたはその誘導体の使用に関する。特に、本明細書に記載されているのは、OA、OA疼痛、および筋骨格痛の治療のためのウォゴニンまたはその誘導体の使用である。ウォゴニンの例示的な誘導体は知られており(例えば、Gurung S K,およびKim H P,Park H.Arch Pharm Res.Nov 32(11 pp.1503~8(2009)を参照)、式Iによって表される。
【化1】
式中、R
1、R
2、およびR
3は、それぞれ独立して、-H、-ハロ、-OH、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、-NO
2、および-SXから選択され、XはC
1-C
4アルキルである。
【0046】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法および組成物は、疼痛の治療のためのウォゴニン(5,7-ジヒドロキシ-8-メトキシフラボン;CAS登録番号632-85-9)(以下に式IIとして表示する)の使用に関する。特に、本明細書に記載するのは、OA、OA疼痛、および筋骨格痛の治療のための式IIによるウォゴニンの使用である。
【化2】
【0047】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、治療有効量でウォゴニンを含む組成物を投与することを含む、患者のOAから生じる疼痛を軽減または緩和するための方法である。ウォゴニンによる治療に適したOAの影響を受けた滑膜関節には、脊椎、上肢、肘、頭部、頸部、胸部、骨盤、会陰、または下肢の関節からの1か所以上の関節が含まれる。したがって、治療される滑膜関節としては、関節突起間関節、肩峰鎖骨関節、指手根中手骨関節、親指手根中手骨関節、烏口鎖骨関節、肘関節、中手骨間関節、指節間関節、中手指節間関節、手根中央関節、手首放射手根、遠位とう尺関節、中間とう尺関節、近位とう尺関節、肩関節、胸鎖関節、手首関節、顎関節、胸肋関節、胸骨剣結合、腰仙骨関節、仙腸関節、足首関節、股関節、指節間関節、または膝関節が挙げられる。
【0048】
いくつかの実施形態では、ウォゴニンは、OAを発症しやすい1か所以上の滑膜関節を含む手術に続いて投与される。ウォゴニンは、1か所以上の滑膜関節を含む手術の前、同時、または手術後に投与され得る。関節手術の種類としては、関節形成術、関節鏡手術、骨切り術、滑膜切除術、関節置換術、もしくは椎弓切除術、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
いくつかの実施形態では、ウォゴニンの投与は、筋骨格痛またはOA痛を軽減または除去するのに有効な量を有する局所投与である。この量のウォゴニンは、OAを有する関節の治癒を促進するのにも効果的である。一実施形態では、ウォゴニンの量は、列挙された範囲内の各整数を含めて、約1μM~約500μMである。別の実施形態では、ウォゴニンの量は、列挙された範囲内の各整数を含めて、約1μM~約400μM、約1μM~約300μM、約1μM~約200μM、約1μM~約10μM、または約1μM~約50μMである。別の実施形態では、ウォゴニンの量は、列挙された範囲内の各整数を含めて、約10μM~約500μM、約10μM~約400μM、約10μM~約300μM、約10μM~約200μM、約10μM~約100、または約10μM~約50μMである。別の実施形態では、ウォゴニンの量は、約1μM、5μM、10μM、20μM、40μM、60μM、80μM、100μM、120μM、140μM、160μM、180μM、200μM、220μM、240μM、260μM、280μM、300μM、320μM、340μM、360μM、380μM、400μM、420μM、440μM、460μM、480μMまたは約500μMである。
【0050】
いくつかの実施形態では、ウォゴニンは、OAまたは筋骨格痛から生じる疼痛を軽減するために治療上有効な単回用量として投与される。一実施形態では、用量は、指定範囲内の各整数を含めて、約3.73×10-9g/Kg~約1.87×10-6g/Kgである。別の実施形態では、用量は、指定範囲内の各整数を含めて、約3.73×10-9g/Kg~約1.49×10-6g/Kgである。別の実施形態では、用量は、指定範囲内の各整数を含めて、約3.73×10-9g/Kg~約1.12×10-6g/Kgである。別の実施形態では、用量は、指定範囲内の各整数を含めて、約3.73×10-9g/Kgから約7.5×10-7g/Kgである。別の実施形態では、用量は、指定範囲内の各整数を含めて、約3.73×10-9g/Kg~約4.48×10-7g/Kgである。別の実施形態では、用量は、指定範囲内の各整数を含めて、約3.73×10-9g/Kg~約2.24×10-7g/Kgである。別の実施形態では、用量は、約3.73×10-9g/Kg、1.87×10-8g/Kg、3.73×10-8g/Kg、7.47×10-8g/Kg、1.49×10-7gである。/Kg、2.24×10-7g/Kg、2.99×10-7g/Kg、3.73×10-7g/Kg、4.48×10-7g/Kg、5.23×10-7g/Kg、5.97×10-7g/Kg、6.72×10-7g/Kg、7.5×10-7g/Kg、8.2×10-7g/Kg、8.96×10-7g/Kg、9.71×10-7g/Kg、1.05×10-6g/Kg、1.12×10-6g/Kg、1.19×10-6g/Kg、1.27×10-6g/Kg、1.34×10-6g/Kg、1.42×10-6g/Kg、1.49×10-6g/Kg、1.57×10-6g/Kg、1.64×10-6g/Kg、1.72×10-6g/Kg、1.79×10-6g/Kg、または1.87×10-6g/Kgである。
【0051】
いくつかの実施形態では、1日当たりのウォゴニンの総用量は、1日当たり約1.12×10-8g/kg~約5.61×10-6g/kgである。別の実施形態では、用量は、指定範囲内の各整数を含めて、約1.12×10-8g/Kg~約4.47×10-6g/Kgである。別の実施形態では、用量は、指定範囲内の各整数を含めて、約1.12×10-8~約3.36×10-6g/Kgである。別の実施形態では、用量は、指定範囲内の各整数を含めて、約1.12×10-8~約2.3×10-6g/Kgである。別の実施形態では、用量は、指定範囲内の各整数を含めて、約1.12×10-8~約1.34×10-6g/Kgである。別の実施形態では、用量は、指定範囲内の各整数を含めて、約1.12×10-8g/Kg~約6.72×10-7g/Kgである。別の実施形態では、用量は、約1.12×10-8g/Kg、5.61×10-8g/Kg、1.12×10-7g/Kg、2.2×10-7g/Kg、4.47×10-7g/Kg、6.72×10-7g/Kg、8.97×10-7g/Kg、1.12×10-6g/Kg、1.34×10-6g/Kg、1.57×10-6g/Kg、1.8×10-6g/Kg、2.0×10-6g/Kg、2.3×10-6g/Kg、2.5×10-6g/Kg、2.7×10-6g/Kg、2.9×10-6g/Kg、3.1×10-6g/Kg、3.4×10-6g/Kg、3.6×10-6g/Kg、3.8×10-6g/Kg、4.0×10-6g/Kg、4.3×10-6g/Kg、4.5×10-6g/Kg、4.7×10-6g/Kg、4.9×10-6g/Kg、5.1×10-6g/Kg、5.3×10-6g/Kg、または5.6×10-6g/Kgである。
【0052】
一部の実施形態では、ウォゴニンの投与は、セラミド、TGF-β1、MMP-13、HtrA1、NFκB、およびAGEを含むがこれらに限定されない1つ以上の炎症性バイオマーカー遺伝子の発現を調節する。いくつかの実施形態では、ウォゴニンが投与される組織におけるTGF-β1の発現は、ウォゴニンで処置されていない組織と比較して、指定範囲内の各整数を含めて、約10%~約40%増加する。いくつかの実施形態では、ウォゴニンが投与される組織におけるセラミドの発現は、ウォゴニンで処置されていない組織と比較して、指定範囲内の各整数を含めて、約10%~約40%増加する。いくつかの実施形態では、ウォゴニンが投与される組織におけるMMP-13の発現は、ウォゴニンで処置されていない組織と比較して、指定範囲内の各整数を含めて、約10%~約40%増加する。いくつかの実施形態では、ウォゴニンが投与される組織におけるNFκBの発現は、ウォゴニンで処置されていない組織と比較して、指定範囲内の各整数を含めて、約10%~約40%減少する。いくつかの実施形態では、ウォゴニンが投与される組織におけるAGEの発現は、ウォゴニンで処置されていない組織と比較して、指定範囲内の各整数を含めて、約10%~約40%減少する。遺伝子発現のレベルの決定は、当技術分野で周知である。例えば、遺伝子発現のレベルは、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、ウエスタンブロッティング、免疫組織化学などによって決定することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、疼痛を有する1つ以上の組織における疼痛の知覚は、組織へのウォゴニンの投与後に軽減される。一部の実施形態では、ウォゴニンの投与後、疼痛の知覚は少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%も軽減される。いくつかの実施形態では、疼痛の軽減は、筋骨格組織にある。他のいくつかの実施形態では、疼痛の軽減は、OAから生じる関節炎痛を有する関節にある。いくつかの他の実施形態では、疼痛の軽減は、関節リウマチから生じる関節炎痛を有する関節にある。疼痛を評価する方法は当技術分野で知られている。例えば、McGill疼痛質問票(MPQ)、Intermittent and Constant Osteoarthritis(ICOAP)質問票、またはOsteo-Arthritis Symptom Inventory Scale(OASIS)を使用して、変形性関節症の患者の疼痛を評価できる。
【0054】
さらに、Osteoarthritis Society International(OARSI)スケールは、OAの進行および関節の健康状態を評価するための全体的な手順を表しており、これを使用して、本明細書に記載の方法においてOA疾患を評価できる。OARSIスコアの減少は、関節の健康状態の改善およびOA疾患の軽減を示す。したがって、いくつかの実施形態では、ウォゴニンの投与後、OARSIスコアは少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%減少する。いくつかの実施形態では、OARSIスコアは、完全に治癒した関節または変形性関節症を有さない関節を表す量だけ減少する。
【0055】
いくつかの実施形態では、有効用量は、疼痛を有する患者の部位に1日1回以上投与される。投与量は、例えば、1日当たり1回、2回、3回、4回、5回、6回、またはそれ以上の回数で投与され得る。いくつかの実施形態では、投与量は少なくとも1日当たり3回投与される。1種以上の剤形を、例えば、1、2、3、4、5、6、7日間、またはそれより長く投与することができる。1種以上の剤形を、例えば、1、2、3、4週間、またはそれより長く投与することができる。1種以上の剤形を、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12カ月(1年)、2年、3年、4年、5年、5年以上、10年、数十年、またはそれより長く投与することができる。対象またはそれを必要とする対象が疼痛の治療を必要としなくなるまで、1種以上の剤形を定期的な間隔で投与することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、化合物が、ウォゴニンと自然に関連する他の成分を実質的に含まないように、ウォゴニンが単離および精製される。いくつかの実施形態では、ウォゴニンは、少なくとも約20%純粋、30%純粋、40%純粋、50%純粋、60%純粋、70%純粋、80%純粋、90%純粋、95%純粋、99%純粋、または100%純粋である。いくつかの実施形態では、ウォゴニンは、ウォゴニンが少なくとも約20%純粋、30%純粋、40%純粋、50%純粋、60%純粋、70%純粋、80%純粋、90%純粋、95%純粋、99%純粋、または100%純粋になるように合成される。ウォゴニンの単離および精製は、当技術分野で既知の方法(例えば、米国特許公開第2013/013681号を参照)によって行うことができ、または合成的に調製することもでき、およびSigma-Aldrich(St.Louis,MO,USA)からも市販されている。
【0057】
いくつかの実施形態では、ウォゴニンは、組成物の一部として投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、局所投与、経皮投与、皮下投与または局部注射用に製剤化される。特に、本明細書に記載の組成物は、経皮投与用に製剤化される。いかなる理論にも縛られることなく、ウォゴニンを含む経皮組成物が適用されると、ウォゴニンは表皮の角質層を通過して、表皮、真皮、および皮下の組織層のより深い組織層に入ることができ、そこでウォゴニンは限局的な抗侵害受容効果、抗炎症効果、および関節治癒効果を発揮することができると考えられている。
【0058】
いくつかの実施形態では、ウォゴニンは、1か所以上の組織に局所的に投与される。いくつかの実施形態では、組織は筋骨格組織である。いくつかの実施形態では、組織は、OA疼痛を示している、またはOA疼痛を受けやすい1か所以上の滑膜関節を覆う。ウォゴニンは、局部投与部位に一定時間、例えば少なくとも約30分~8時間以上留まり、疼痛を有する組織における疼痛の限局的軽減を示す。
【0059】
いくつかの実施形態では、ウォゴニンを含む経皮組成物は、液体、擦式剤、フォーム、クリーム、溶液、乳剤、ゲル、スプレー、ワイプ、ローション、軟膏、またはパッチの一部として提供される。いくつかの実施形態では、ウォゴニンまたはその誘導体を含む経皮製剤は、クリーム、ローション、軟膏または擦式剤である。
【0060】
クリームまたは擦式剤などの適切な局所経皮組成物には、美容的にまたは皮膚科学的に許容される賦形剤および担体が含まれる。ウォゴニンは、組成物中に分散、溶解、または懸濁され得る。適切な賦形剤および担体には、当技術分野で知られている油、界面活性剤、乳化剤、増粘剤、芳香剤、溶媒、キレート剤、および浸透促進剤のうちの1種以上が含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
適切な浸透促進剤は、皮膚に浸透し、活性物質の浸透の主要な障害である角質層の成分と相互作用することができるものである。浸透促進剤は、皮膚の抵抗を低下させ、したがって、皮膚を通過する活性物質の通過(流量)を増加させる。ほとんどの場合、それらは皮膚とビヒクルとの間の活性物質の分配比にも有益な影響を与える。例示的かつ非限定的な浸透促進剤としては、ジオキソラン誘導体、酢酸エチル、尿素、エタノール、短鎖一価アルコール(C2~C6)、プロピレングリコール、エタノール、DMSO、DMF、ラウロカプラムおよび誘導体、脂肪酸(例えば、オレイン酸)、界面活性剤(例、デシルメチルスルホキシド)、テルペン、イソプロパノール、グリセロール、一価アルコール(C8~C14)、アルカン、ハロゲン化アルキル、アミド、ピロリドン誘導体、脂肪酸エステル、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、ペパーミント油などのエッセンシャルオイル、および当技術分野で既知の他の浸透促進剤(例えば、Herman,AおよびHerman A.P.,Journal of Pharmacy and Pharmacology.,67,pp.473~485(2014)を参照)が挙げられる。
【0062】
いくつかの実施形態では、ウォゴニンを含む経皮組成物は、調節放出経皮製剤、即時放出経皮製剤、遅延放出経皮製剤、徐放性経皮製剤、または持続放出経皮製剤として製剤化される。化合物の経皮投与に適した例示的で非限定的な製剤は、米国特許第6,238,284号、同第5,725,876号、同第5,716,635号、同第5,633,008号、同第5,603,947号、同第5,422,361号、同第5,411,739号、同第5,364,630号、同第5,230,896号、同第5,004,610号、同第4,943,435号、同第4,908,213号、および同第4,839,174号に記載されている。例示的な経皮クリーム組成物を表1に示す。
【表1】
【0063】
いくつかの実施形態では、局所および経皮投与用の組成物は、以下の賦形剤または担体:セテアリルアルコール、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、グリセリン、シアバター、エトキシジグリコール、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸peg-100、ステアリン酸、ブチレングリコール、ジメチコン、セイヨウハッカ(ペパーミント)油、ヤシ油、ポリエチレングリコール、プルーナスアミグダルスダルシス(スイートアーモンド)油、アクリル酸ヒドロキシエチル/、アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムコポリマー、セテアレス-20、ジメチルスルホン、スクアラン、フェノキシエタノール、カプリリルグリコール、アクリレーツ/アクリル酸アルキルC10~C30クロスポリマー、キサンタンガム、エチルヘキシルグリセリン、ヘキシレングリコール、グルタミン酸二酢酸四ナトリウム、ポリソルベート60、イソステアリン酸ソルビタン、アロエバーバデンシス葉汁、もしくはメントールのうちの1種以上またはすべてを含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、組成物は、ロールオン局所製剤である。いくつかの実施形態では、組成物は、以下の賦形剤または担体:水、アルコール、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、プロパンジオール、エトキシジグリコール、セイヨウハッカ(ペパーミント)油、ジメチコン、セテアリルアルコール、ステアリン酸グリセリル、オリーブ油脂肪酸加水分解カラスムギタンパクカリウム、セチルアルコール、キサンタンガム、フェノキシエタノール、カプリリルグリコール、オレイン酸グリセリル、スクレロチウムガム、レシチン、エチルヘキシルグリセリン、ヘキシレングリコール、プルラン、メントール、およびフィチン酸ナトリウムのうちの1種以上もしくはすべてを含む。
【0065】
経皮組成物の適用は、知覚される疼痛に非常に近い皮膚上のいかなるところでもよい。例えば、筋骨格痛を治療するために、ウォゴニンを有する経皮クリームを、疼痛が知覚される罹患した組織の上にある皮膚に適用することができる。さらなる例として、膝から生じる関節炎痛を治療するために、ウォゴニンを有する経皮クリームを膝の周囲の皮膚に塗布することができる。疼痛および炎症の治療のための経皮クリームおよび局所クリームの適用は、当該技術分野で認められており、クリームの配置は、疼痛の種類に基づいて適合させることができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、ウォゴニンを含む組成物は、局部注射用に製剤化される。局部注射には、疼痛を示すか、または受けやすい組織の近くにウォゴニンを含む組成物を提供する任意の注射が含まれる。例えば、筋骨格痛を治療するために、疼痛が知覚されている場所の近くにウォゴニンを含む組成物を注射することができる。さらなる例として、関節炎の関節の治療は、関節へのウォゴニンを含む組成物の関節内注射によって達成することができる。関節内注射を含む注射用の方法および装置は、当業者に周知である。ウォゴニンの局部注射のための例示的な注射用組成物としては、ハンクス液、リンゲル液、または415生理食塩水緩衝液などの生理学的に適合する水溶液が挙げられる。
【0067】
他の非経口投与のための他の組成物には、本発明の水溶性型の化合物の水溶液が含まれる。さらに、ウォゴニンの懸濁液は、適切な油性注射用懸濁液として調製することができる。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。水性注射用懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、デキストランなどの、懸濁液の粘度を高める物質を含んでいる。任意に、懸濁液は、本発明の化合物の溶解度を増加させて高濃度の溶液の調製を可能にする適切な安定剤または薬剤を含む。
【0068】
精製されたウォゴニンは、注射による、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与用に製剤化することができる。注射用製剤は、例えば、アンプルまたは複数回投与用容器などの単位剤形で、任意に保存剤を添加して提供される。組成物は、油性または水性ビヒクルでの懸濁液、溶液、または乳剤などの形態をとり、懸濁剤、安定剤、または分散剤などの製剤化剤を含む。あるいは、化合物または抽出物は、使用前に適切なビヒクル、例えば、滅菌発熱性物質除去蒸留水で構成するための粉末形態である。ウォゴニンを含む注射用製剤は、携帯用キットまたはパッケージの形態で提供されてもよい。
【0069】
組成物中のウォゴニンの量は、組成物の種類に依存し、本明細書に記載の所望の用量が投与されるように変えることができる。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、指定範囲内のすべての整数を含めて、組成物の総質量の約0.01重量%~約99重量%の量でウォゴニンを含む。一実施形態では、ウォゴニンは、指定範囲内のすべての整数を含めて、組成物の総質量の約0.01%~約75%である。別の実施形態では、ウォゴニンは、指定範囲内のすべての整数を含めて、組成物の総質量の約0.01%~約50%である。別の実施形態では、ウォゴニンは、指定範囲内のすべての整数を含めて、組成物の総質量の約0.01%~約30%である。別の実施形態では、ウォゴニンは、指定範囲内のすべての整数を含めて、組成物の総質量の約0.01%~約10%である。別の実施形態では、ウォゴニンは、指定範囲内のすべての整数を含めて、組成物の総質量の約0.1%~約5%である。別の実施形態では、ウォゴニンは、指定範囲内のすべての整数を含めて、組成物の総質量の約0.01%~約1%である。
【0070】
いくつかの実施形態では、ウォゴニンは、治療有効量の第2の薬剤、または第3の薬剤と組み合わせて患者に投与される。第2の薬剤は、対象において疼痛の治療または予防に有益であることが知られているかまたは推測される任意の薬理作用のある物質であり得る。例えば、第2の薬剤は、二次鎮痛剤である。二次鎮痛剤は、当技術分野の当業者に周知である。このような薬剤の非限定的な例としては、アスピリン、アセトアミノフェン(タイレノール)、または非ステロイド性抗炎症薬(nsaid)と呼ばれる他のアスピリン様薬物、コデイン(コデインとともにタイレノール)、ヒドロコドン(ビコジンもしくはロータブ)、パーコセット、ペルコダン、もしくはプロポキシフェン(ダーボン)などの弱い麻薬、モルヒネ、デメロール、ジラウジッド、フェンタニル(デュラゲシクパッチ)、およびメサドンなどの強力なオピオイドが挙げられる。
【0071】
本明細書で提供される医薬組成物での使用に適した治療薬のさらなる非限定的な例としては、例えば、ブチルピラゾリジン、フェニルブタゾン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、クロフェゾン、ケブゾン、酢酸誘導体および関連物質、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ゾメピラック、ジクロフェナク、アルクロフェナク、ブマジゾン、エトドラク、ロナゾラク、フェンチアザック、アセメタシン、ジフェンピラミド、オキサメタシン、プログルメタシン、ケトロラク、アセクロフェナク、ブフェキサマク、オキシカム、ピロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、メトトレキサート、プロピオン酸誘導体、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、ベノキサプロフェン、スプロフェン、ピルプロフェン、フルルビプロフェン、インドプロフェン、チアプロフェン酸、オキサプロジン、イブプロキサム、デキシブプロフェン、フルノキサプロフェン、アルミノプロフェン、デクスケトプロフェン、フェナム酸、メフェナム酸、トルフェナム酸、フルフェナム酸、メクロフェナム酸、コキシブ、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、ナブメトン、ニフルミン酸、アザプロパゾン、グルコサミン、ベンジダミン、グルコサミノグリカンポリサルフェート、プロカゾン、オルゴテイン、ニメスリド、フェプラゾン、ジアセレイン、モルニフルメート、テニダップ、オキサセプロール、コンドロイチン硫酸、フェプラゾン、ジピロセチル、アセチルサリチル酸、キノリン、オキシシンコフェン、金剤、金チオリンゴ酸ナトリウム、金チオ硫酸ナトリウム、オーラノフィン、オーロチオグルコース、オーロチオプロール、ペニシラミン、もしくはブシラミンなどの抗炎症性および抗リウマチ性の活性原薬が挙げられる。
【0072】
さらなる治療薬には、例えば、オピオイド、天然アヘンアルカロイド、モルヒネ、アヘン、ヒドロモルホン、ニコモルヒネ、オキシコドン、ジヒドロコドン、ジアモルヒネ、タペンタドール、パパベレタム、パパベレタム、コデイン、フェニルピペリジン誘導体、ケトベミドン、ペチジン、フェンタニル、ジフェニルプロピルアミン誘導体、デキストロモラミド、ピリトラミド、デキストロプロポキシフェン、ベジトラミド、メタドン、ベンゾモルファン誘導体、ペンタゾシン、フェナゾシン、オリパビン誘導体、ブプレノルフィン、モルフィナン誘導体、ブトルファノール、ナルブフィン、チリジン、トラマドール、デゾシン、サリチル酸と誘導体、アセチルサリチル酸、アロキシプリン、サリチル酸コリン、サリチル酸ナトリウム、サリチルアミド、サルサレート、エテンザミド、サリチル酸モルホリン、ジピロセチル、ベノリラート、ジフルニサル、サリチル酸カリウム、グアセチサール、カルバサラートカルシウム、サリチル酸イミダゾール、ピラゾロン、フェナゾン、メタミゾールナトリウム、アミノフェナゾン、プロピフェナゾン、ニフェナゾン、アニリド、パラセタモール、フェナセチン、ブセチン、プロパセタモールなどの鎮痛剤、例えば、リマゾリウム、グラフェニン、フロクタフェニン、ビミノール、ネホパム、フルピルチン、またはジコノチドなどの他の鎮痛剤および解熱剤を挙げることができる。
【0073】
さらなる治療薬は、例えば、エーテル、ジエチルエーテル、ビニルエーテル、ハロゲン化炭化水素、ハロタン、クロロホルム、メトキシフルラン、エンフルラン、トリクロロエチレン、イソフルラン、デスフルラン、セボフルラン、バルビツール酸塩、メトヘキシタール、ヘキソバルビタール、チオペンタール、ナルコバルビタール、オピオイド麻酔薬、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、フェノペリジン、アニレリジン、レミフェンタニルなどの麻酔薬、例えば、ドロペリドール、ケタミン、プロパニジド、アルファキサロン、エトミデート、プロポフォール、ヒドロキシ酪酸、亜酸化窒素、エスケタミン、キセノン、アミノ安息香酸エステル、メタブテタミン、プロカイン、テトラカイン、クロロプロカイン、ベンゾカイン、アミド、ブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、ブタニリカイン、シンコカイン、エチドカイン、アルチカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、安息香酸エステル、コカインなどの他の一般的な麻酔薬、例えば、塩化エチル、ジクロニン、フェノール、カプサイシンなどの他の局所麻酔薬を挙げることができる。
【0074】
以下に記載されるのは、本明細書に記載の実施形態、組成物、および方法の例であり、本開示にさらに記載される本発明の範囲を限定することは意図されない。
【実施例】
【0075】
実施例1.クリームとして製剤化されたウォゴニンの変形性関節症のマウスモデルの処置
変形性関節症(OA)疼痛の治療のためのウォゴニンの使用を調べた。具体的には、浸透促進剤を含むクリームで局所的に適用される少量のウォゴニンを使用する利点を調べた。この調査では、表2に示すクリーム製剤を使用した。ウォゴニンを投与するための追加の例示的なクリーム製剤を表3に示す。
【0076】
OAマウスモデルを使用して、ウォゴニン処置の有効性を決定した。OA様疾患を、実験室のマウスの内側半月靭帯(DMM)を外科的不安定化することで誘発した。膝関節の組織学的評価によるOA進行を客観的に比較する方法として広く受け入れられている修正Mankinスコアを使用して、膝の修復を評価した(Larkin DJ et al.,Frontiers in physiology.2013;4:121およびMankin HJ.The New England journal of medicine.1974;291(24):1285-92を参照)。マウスは、実験期間を通して活動を追跡するためにコンピューターにリンクされたアクティビティホイールケージに収容した。外科的介入から24時間後に、患部の膝に以下の処置を局所的に適用した:0.00000142gウォゴニン(500μMウォゴニン)(n=6);0.0000000028gウォゴニン(10μMウォゴニン)(n=6);および10μLのビヒクル(n=6)。処置は3日ごとに28日間行なった。
【表2】
【表3】
【0077】
実験を開始してから7日後、ビヒクルを投与されたマウスは、対照よりも大幅に高いホイール使用を示した。10μMおよび500μMのウォゴニンを投与されたマウスは、対照またはビヒクルのみよりも大幅に高いホイール使用を示した。14日目まで、ビヒクルを投与されたマウスは、対照よりも大幅に高いホイール使用を示した。しかし、10μMのウォゴニンを投与されたマウスは、500μMを投与されたマウスよりも高いアクティビティホイールの使用を示した。28日目に、このパターンが繰り返された。結果を表4にまとめる。
【表4】
【0078】
バイオマーカーの発現およびMankinスコア
ホイール使用のデータは有望であったが、炎症のみを阻害して疼痛をブロックすることは、OAの進行をブロックするには不十分である。実験の終わりに(28日目)、マウスを犠牲にし、膝を収集して、固定し、以前にSpencer K MSおよびJeffrey Z Kartchner W.Journal of Arthritis.2015;04(03)に報告されているように、修正MankinスコアおよびHtrA1発現について調査した。HtrA1は、OAの進行に関連するバイオマーカーカスケードの最初のものである。
【0079】
図1に示すように、薬理学的用量のウォゴニンにより、膝の不安定化手術を受けやすい関節が救出される。マウスの膝OAは、内側半月靭帯の外科的不安定化(DMM手術)によって誘発され、マウスを10μMのウォゴニンで処置した。対照はDMM+ビヒクルであった。OAの修正Mankinスコアは、10μMのウォゴニン処置を受けたマウスにおいて統計的に(p>0.05)低くかった。同様の結果が低用量で観察された。
図2に示すように、DMM手術を受けた膝関節の免疫組織化学染色を評価したところ、ウォゴニンはHtrA1発現を阻害していた。対照/ビヒクルマウス(A)は、軟骨細胞においてHtrA1のユビキタス染色を示した。対照の膝における亀裂と粗い関節軟骨表面(矢印を参照)に注目されたい。HtrA1の発現は、10μMウォゴニンで処置されたマウスの膝において本質的に存在しなかった(B)。亀裂は認められず、関節軟骨表面は本質的に正常であった。
【0080】
ウォゴニンで処置した膝の修正Mankinスコア(
図1)およびHtrA1発現(
図2)は、ウォゴニンの投与量を減らすとOAに対してさらなる保護が提供されたという点で、アクティビティホイールデータと同様のパターンをたどった。OA疼痛を治療し、OA疾患のプロセスを逆転させるためのウォゴニンなどの抗炎症剤の適度の量という考えは、現在の考えに対して反直感的である。我々の調査は、低用量のウォゴニン(500μMと比較して10μM)がOAの進行を軽減する際に大きな利点をもたらすことを示した。実際、局所的に適用された1μMの用量のウォゴニンは、修正Mankinスコアで測定されたように、OAを大幅に軽減するのに十分であることが観察されている。さらに、1μM未満の投与量のウォゴニンでは効果をもたらすには不十分であることが観察されている。500μMを超える投与量では、炎症およびバイオマーカーの抑制が多すぎる。したがって、従来の知識に反して、適度の用量の抗炎症剤を提供することにより、軟骨細胞が恒常性に戻り、軟骨修復/恒常性を示すことが可能になる。
【0081】
実施例2.クリームまたは液体に製剤化されたウォゴニンの変形性関節症のマウスモデルの処置
DMSOまたは浸透促進剤を含むクリームのいずれかで局所的に適用される少量のウォゴニンを使用して第2の実験を行った。表1に示すクリーム製剤を使用した。この調査では、OAはDMM手術によって誘発された。手術から24時間後に、処置を患部の膝に適用した。処置には、膝蓋腱の位置の皮膚に適用された10μLのDMSO(500μMウォゴニン)中の0.00000142gウォゴニン(n=5)、膝蓋腱の位置の皮膚に適用された10μLのDMSO(n=5)、膝蓋腱の位置の皮膚に適用された0.0000000028gウォゴニン(10μLのG2クリームE/10μMのウォゴニン)(n=5)が含まれた。処置は3日ごとに28日間行なった。手術直後、マウスをアクティビティホイールケージに入れ、ケージ内のホイールの使用をコンピューターで記録した。実験を開始してから7日後、DMSOまたはクリーム中のいずれかのウォゴニンを投与されたマウスは、DMSOのみよりも大幅に高いホイール使用を示した。14日目まで、クリームを投与されたマウスは、依然として大幅に高いホイール使用を示したが、一方、DMSO処置またはDMSO+ウォゴニン処置の間には差はなかった。28日目に、このパターンが繰り返された。結果を表5にまとめる。
【表5】
【0082】
バイオマーカーおよび膝のMankinスコアリングは、同様のパターンをたどり、したがって、高用量のウォゴニンは最初のうちは有益であったが、低用量のウォゴニンは実験を通して有益のままであった。これらのデータから、ウォゴニンの理想的用量は1μM~500μMであると結論づける。ここでも、1μM未満では、ウォゴニンが効果をもたらすには不十分である。500μMを超えると、炎症およびセラミドの抑制が強すぎる。TGF-β1が阻害され、軟骨細胞は恒常性に戻ることができず、軟骨修復となる。
【0083】
実施例3.ウォゴニンの投与のためのロールオン製剤
ウォゴニンの投与のための例示的なロールオン製剤を表6に示す。
【表6】
【0084】
実施例4.変形性関節症におけるウォゴニンクリームの適用および膝関節の健康状態
方法
マウスおよび関節不安定化の手順
17日齢、28日齢のC57BL/6マウス(処置n=12)、(偽n=5)を性別で無作為化し、内側半月板(DMM)の不安定化を以前に記載されているのと同様に実施した(Larkin DJ et al.,Frontiers in physiology.2013;4:121およびMankin HJ.The New England journal of medicine.1974;291(24):1285~92を参照)。手短に言うと、室内気を補充したイソフルランガスを使用してマウスに麻酔をかけ、毛皮を切り取り、外科用ヨードスクラブ剤で洗浄し、続いて70%アルコールで洗浄して、右膝関節周囲の皮膚を準備した。残りの手順は、無菌技術を使用して、Wild Heerbrugg 355110(Wild Heerbrugg AG,Switzerland)外科用顕微鏡下で行なった。内側半月靱帯を鈍的切開により露出させ、関節領域を視覚化した。続いて、11番メスを使用して半月靭帯を横に切開し、内側半月板の変位を可能にした。関節半月板の変位を目視で確認した。関節包および皮膚の両方を、7-0吸収性Vicryl縫合糸(Ethicon,Inc.,Somerville,NJ,USA)を使用して閉じた。これらの手順は、Brigham Young University IACUCによって承認されたプロトコル16-0501に基づいて行った。
【0085】
クリームの調製
治療クリームは、10μMのウォゴニンを含有するArthritis Wonder(登録商標)であった。偽クリームは、基本的にはウォゴニンを含まないArthritis Wonder(登録商標)であった。具体的には、表7に示すように、450mLのバッチは、384mLの再蒸留水、0.128gのジメチルスルホン(MSM)、30.9mLのポリエチレングリコール、35.5mLのペパーミント油、0.64gのヤシ油、および1.28gのシアバターからなった。
【表7】
【0086】
組織調製
手術後28日目にマウスを安楽死させ、右膝を回収し、4%パラホルムアルデヒドで固定してから、以前に記載されているように脱灰、およびパラフィン包埋を行った(Larkin DJ et al.,Frontiers in physiology.2013;4:121およびMankin HJ.The New England journal of medicine.1974;291(24):1285~92)を参照)。以前に記載されているように(Larkin et al.,2013)、膝を切断し、対応する切片をサフラニンOおよびファストグリーンで染色した。関節組織の写真は、CellSens(登録商標)ソフトウェアとOlympus BX51光学顕微鏡に接続したOlympus DP72デジタルカメラとを使用して、10倍と20倍の倍率で撮像した。
【0087】
関節の健康状態の分析
OAスコアリング The Osteoarthritis Research Society International(OARSI)(Glasson,S.S.,et al.,2010を参照)のスコアリングシステムを使用して、以前に記載されているようにOAの重症度を評価した(Holt,D.W.,et al.,Osteoarthritis-like changes in the heterozygous sedc mouse associated with the HtrA1-Ddr2-Mmp-13 degradative pathway:a new model of osteoarthritis.Osteoarthritis Cartilage,2012.20(5):p.430~9を参照)。
【0088】
嚢胞様病変 嚢胞様病変は、以前に記載されているように、ImageJを使用して10倍の倍率で計数した(Zhang,Z.J.,J.Beckett,およびL.Schon,Cyst-Like Lesions at Chondro-Osseous Junction.Calcified Tissue International,2017.101(5):p.549~552を参照)。
【0089】
免疫組織化学
以前に記載されているように、すべてのマウスからのマウス膝関節の連続切片を表すスライド上のNFκβの免疫組織化学(IHC)(Zhang,H.X.,et al.,Renal-protective effect of thalidomide in streptozotocin-induced diabetic rats through anti-inflammatory pathway.Drug Design Development and Therapy,2018.12:p.89~98を参照)。手短に言うと、スライドを脱パラフィンし、次いで5%ウシ血清アルブミンで1時間ブロックした。1:200希釈のNFκβに対するウサギポリクローナル一次抗体(ab16502 Abcam,Cambridge,MA,United States)、1:200希釈のMmp-13(ab39012 Abcam,Cambridge,MA,United States)、1:100希釈のTGF-β1(ab64715 Abcam,Cambridge,MA,United States)。これらの抗体を検体に適用し、4℃で一晩インキュベートした。2日目に、スライドをPBSですすぎ、ヤギ抗ウサギビオチン化二次抗体(ab64256 Abcam,Cambridge,MA,United States)とともにインキュベートした。スライドをPBSですすぎ、次いでアビジン/ビオチンABCミックス(Vectastain elite ABCキット)とともにインキュベートした。3回目のすすぎの後、ペルオキシダーゼ基質(Vector Labs,NovaRED)を使用して呈色反応を開始した。陰性対照は、一次抗体を添加せずに染色することにより、調製した。染色強度の違いを、野生型対照と定性的に比較した。染色した細胞のブラインド計数は、ImageJ(NIH,Bethesda,MD,United States)を使用して行った。
【0090】
細胞培養
ヒト軟骨細胞(TC28a2 Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)を、10%ウシ胎児血清(F-2442-50ML Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)を補充したEmbryoMax(登録商標)DMEM(SLM-120 B Millipore,St.Louis,MO,USA)中で80%コンフルエンスまで培養した。処置は、以下からなった:
1.無処置プレート:古い培地を除去し、10mLの新鮮な培地と交換する。4時間インキュベートする。培地を除去し、PBSで3回すすぎ、製造元のプロトコル(R1054 ZYMO Research,Irvine,CA,USA)に従って全RNAを収集する。
2.(DMSOに溶解した)10μMのウォゴニンで処置する。古い培地を除去し、ウォゴニンを含む10mLの馴化培地と交換する。4時間インキュベートする。培地を除去し、PBSで3回すすぎ、製造元のプロトコル(R1054 ZYMO Research,Irvine,CA,USA)に従って全RNAを収集する。
3.(dds水に溶解した)1ng/mLのIL-1βで処置する。古い培地を除去し、IL-1βを含む10mLの馴化培地と交換する。4時間インキュベートする。培地を除去し、PBSで3回すすぎ、製造元のプロトコル(R1054 ZYMO Research,Irvine,CA,USA)に従って全RNAを収集する。
4.10μMのウォゴニンで処置し、1時間待って、1ng/mLのIL-1βを加え、4時間インキュベートする。古い培地を除去し、ウォゴニンを含む10mLの馴化培地と交換する。1時間インキュベートする。10μLの1ng/mLのIL-1βを加える。細胞培養皿内で培地をピペットで静かに上下させて3回混合する。4時間インキュベートする。培地を除去し、PBSで3回すすぎ、製造元のプロトコル(R1054 ZYMO Research,Irvine,CA,USA)に従って全RNAを収集する。
【0091】
製造元のプロトコル(1725038 BIO-RAD,Hercules,CA,USA)に従って、全RNAからcDNAを作製した。
【0092】
定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRTPCR)は、Life Technologies One Step Plus Sequence Detection Systemと、ソフトウェア(Life Technologies)とを使用して行った。SYBR-greenベースのPrimeTimeアッセイ(IDT)を使用して、ヒトTGF-β1およびBBS3を検出した。プライマー配列は以下の通りであった。
【表8】
【0093】
統計分析
処置したマウスおよび無処置マウスの28日目のMankinスコアおよびOARSIスコアの統計的有意性を、二元配置分散分析検定を使用して得た。嚢胞様病変(CLL)とNFκβ染色された細胞との違いを、混合モデル(ANOVA)統計的手法によって決定した。すべての統計分析は、Brigham Young Universityの統計学部によって行われた。
【0094】
結果
変形性関節症の評価
The Osteoarthritis Society International(OARSI)は、従来のMankinスコアリングシステムの代わりに関節のOAを評価するためのさらに全体的な手順を開発した(Glasson,S.S.,et al.,The OARSI histopathology initiative - recommendations for histological assessments of osteoarthritis in the mouse.Osteoarthritis Cartilage,2010.18 Suppl 3:p.S17-23を参照)。OARSIスコアリングを、関節の健康状態を評価するために、サフラニンOで染色した膝切片で行なった。表7(TC)による試験組成物で処置されたマウスは、0.426の平均スコアを有したが、偽クリーム(SC)で処置されたマウスは、1.332の平均スコアを有した(
図3)。二元配置分散分析検定で分析した場合、TCで処置されたマウスは、SCで処置されたマウスと比較して、OARSIスコアが有意に低かったP<0.05。TCを使用すると、OARSIスコアが大幅に減少した。*P<0.05
【0095】
嚢胞様病変
関節の健康状態のために新たに識別されるマーカーは、タイドマーク、軟骨の石灰化ゾーン、およびセメントラインからなる軟骨骨接合部の嚢胞様病変(CLL)の欠如または存在である(Zhang,Z.J.,J.Beckett,およびL.Schon,Cyst-Like Lesions at Chondro-Osseous Junction.Calcified Tissue International,2017.101(5):p.549~552参照)。CLLの数は、TCおよびSC処置マウスのサフラニンO/ファストグリーン染色した膝切片で計数した。TCを投与されたマウスは、SCマウスの11と比較して、平均6.2のCLLを示した(
図4)。混合モデル(ANOVA)統計的手法によって決定されたように、SCマウス(p<0.01)と比較して、TCマウスにおいてCLLが有意に少なかった。TCを使用すると、CCLの数が大幅に減少した。*P<0.01
【0096】
免疫組織化学分析
免疫組織化学を行って、TCおよびSC処置したマウスからのマウス膝関節の切片で、ウォゴニンと一次繊毛との相互作用を評価した。スライドをNFκβ、Tgf-β1またはMmp-13に対する抗体で染色した。免疫組織化学染色の定性的な結果を、脛骨プラトーのすぐ遠位にある関節軟骨の定義された200×900ピクセル領域内の、それぞれのバイオマーカーに対して陽性染色された細胞のパーセンテージと、軟骨細胞の総数とを算出することにより定量的に分析した。すべての定量分析はImageJ(National Institutes of Health,Bethesda,MD)を使用して行った。ANOVA検定を使用して、活性化NFκβに対して陽性染色された軟骨細胞が大幅に少ないことを観察し、TC試料とSC試料間のNFκβに対する陽性染色の平均パーセンテージと平均軟骨細胞数の違いを検出した(
図5)。TCを使用すると、NFκβに対する染色細胞数が大幅に減少した。*P<0.01
【0097】
ANOVA検定を使用して、活性化TGF-β1に対して陽性染色された軟骨細胞が大幅に多いことを観察し、TC試料とSC試料間のTGF-β1に対する陽性染色の平均パーセンテージと平均軟骨細胞数の違いを検出した(
図7)。TCを使用すると、TGF-β1に対する染色細胞数が大幅に増加した。*P<0.05
【0098】
ANOVA検定を使用して、活性化Mmp-13に対して陽性染色された軟骨細胞が大幅に少ないことを観察し、TC試料とSC試料間のMmp-13に対する陽性染色の平均パーセンテージと平均軟骨細胞数の違いを検出した(
図5)。TCを使用すると、Mmp-13に対する染色細胞数が大幅に減少した。*P<0.01
【0099】
リアルタイムPCRでアッセイすると、IL-1βへの曝露後にヒト軟骨細胞におけるTGF-β1の遺伝子発現の80%の低下が観察された。しかし、細胞をウォゴニンで前処置した場合、低下は40%未満であった。ウォゴニン単独でも同様の結果が得られた。
【0100】
ウォゴニンへの暴露後、ヒト軟骨細胞におけるBBS3の遺伝子発現の125%の増加が観察された。IL-1βはBBS3遺伝子発現に影響を及ぼさなかったが、ウォゴニン応答をほぼ半分まで低下させた。
【0101】
膝の不安定化手術後ランニングホイールの使用が大幅に高いにも関わらず、NFκβ、Mmp-13の活性化が少ない、Tgf-β1の活性化が多いとともに、CLLが少ない、OARSIスコアが低いことは、低レベルのウォゴニンを含むTCが軟骨の恒常性を促進するように軟骨分解の一次繊毛経路をブロックすることを示唆している。
【0102】
BBS3は、BBSomeの構成成分である(Zhang et al.,Bardet-Biedl syndrome 3(Bbs3)knockout mouse model reveals common BBS-associated phenotypes and Bbs3 unique phenotypes.PNAS 108(51):20678~20683を参照)。BBSomeが繊毛に入るにはBBS3を必要とする。BBSomeは、繊毛タンパク質を繊毛に運ぶ、または繊毛からそれを除去する役割を果たすことができる。したがって、繊毛の存在下でのBBS3の増加は、BBSomeが何をどの方向に輸送しているかによる、抗炎症反応であり得る。いずれにせよ、これらの結果は、ウォゴニンが一次繊毛に大幅な影響(BBS3発現の1.25倍の増加)を及ぼすことを明確に示している。局所クリーム中の適度の用量のウォゴニンは、関節の健康状態を促進し、この疾患の新規の療法となる。
【0103】
膝の不安定化手術後、Arthritis Wonder(登録商標)によるウォゴニンの局所適用で処置したマウスにおいて、OARSIスコアおよびCLLが大幅に減少することを我々は立証する。さらに、我々が立証するのは、一次繊毛が、軟骨の恒常性の維持に密接に関与し、NFκβに対して陽性染色された細胞数の大幅な減少またはTGF-β1の増加によって証明され、治療に関連して、これらはともに、一次繊毛によって調節されることである。OAの治療では、炎症のブロックのみに依存するのではなく、一次繊毛が関節の恒常性に果たす役割を考慮する必要がある。ウォゴニンが一次繊毛を介して作用することにより、軟骨細胞に対する保護作用を全体的に示しており、ウォゴニンの局所適用によりOAの進行が弱まり、疾患が治療されることを我々は立証する。これは、以前はウォゴニンによるものと考えられなかった新規の経路であり、クリームで局所的に適用されると変形性関節症の関節に強力で全体的な利点をもたらす理由を説明している。
【0104】
本明細書では本発明は、その記載の実施形態に関連して説明されているが、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、具体的に説明されていない追加、修正、置換、および削除を行うことができることを当業者には理解されよう。したがって、前述の詳細な説明は、限定ではなく例示と見なされることを意図しており、本発明の趣旨および範囲を定義することを意図するのは、すべての均等物を含む、以下の請求項であることを理解されたい。
【配列表】