(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】成形体を製造する装置
(51)【国際特許分類】
B22F 12/60 20210101AFI20230703BHJP
B22F 12/70 20210101ALI20230703BHJP
B22F 12/90 20210101ALI20230703BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20230703BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20230703BHJP
B29C 64/35 20170101ALI20230703BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20230703BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230703BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20230703BHJP
【FI】
B22F12/60
B22F12/70
B22F12/90
B29C64/153
B29C64/295
B29C64/35
B29C64/393
B33Y30/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2020545157
(86)(22)【出願日】2019-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2019054621
(87)【国際公開番号】W WO2019166374
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】102018203013.8
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518171878
【氏名又は名称】リアライザー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Realizer GmbH
【住所又は居所原語表記】Hauptstrasse 35, 33178 Borchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マティアス フォッケレ
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/211610(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0072468(US,A1)
【文献】国際公開第2017/084957(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0004192(US,A1)
【文献】特表2016-527390(JP,A)
【文献】国際公開第2017/179001(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 12/60
B22F 12/70
B22F 12/90
B29C 64/153
B29C 64/295
B29C 64/35
B29C 64/393
B33Y 30/00
B33Y 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス室(8)内で粉末状の素材(4)を層状に積み上げて造形することで成形体(2)を製造する装置であって、
プロセス制御装置(5)と、
層積み上げ造形用の支持体(14)と、
前記支持体(14)上にその都度目下最上位に準備された素材粉末層(7)に対して、前記成形体(2)の、前記層(7)に割り当てられた横断面領域において、放射(29)を照射する照射装置(40,42)であって、前記放射(29)は、前記素材粉末(4)を前記横断面領域で加熱により溶融または場合によっては焼結させる照射装置(40,42)と、
その都度追って照射すべき素材粉末層(7)を前記支持体(14)上に準備する平坦化兼平滑化装置(13)であって、素材粉末層(7)を形成すべく、前記支持体(14)上のその都度の量の素材粉末(4)を均して平坦化する、モータにより可動の少なくとも1つの平滑化スライダ(15)を有する平坦化兼平滑化装置(13)と、
プロセス煙を前記プロセス室(8)から吸い出す吸引ノズル装置(33)を有する吸い出し装置であって、前記吸引ノズル装置(33)の少なくとも1つの吸引ノズル(35)は、駆動装置(34)により前記プロセス室(8)内で可動であり、前記吸引ノズル(35)は、移動の際、前記照射装置(40,42)が、前記支持体(14)上に目下準備されたそれぞれの前記素材粉末層(7)に対して照射を行うべく作動している間、吸引運転で運転可能である吸い出し装置と、
を備える、成形体(2)を製造する装置において、
前記平滑化スライダ(15)は、照射のその都度の目下の場所に対して相対的に可動であり、前記プロセス室(8)内で可動の少なくとも1つの前記吸引ノズル(35)は、前記平滑化スライダ(15)に連動するように連結されており、前記吸引ノズル(35)の前記駆動装置(34)は、同時に、前記平滑化スライダ(15)を移動させる前記平滑化スライダ(15)の駆動装置でもあ
り、
少なくとも1つのシールドガスブローノズル(52)を有する、前記プロセス室(8a)内でモータにより可動のシールドガス吹き込み装置(50)をさらに備え、
前記シールドガス吹き込み装置(50)は、前記吸引ノズル装置(33a)に連動するように連結されており、
少なくとも1つの前記シールドガスブローノズル(52)は、前記吸引ノズル装置(33a)の少なくとも1つの前記吸引ノズル(35a)に向けられている、
ことを特徴とする、成形体(2)を製造する装置。
【請求項2】
前記プロセス室(8)内で可動の少なくとも1つの前記吸引ノズル(35)と、前記平滑化スライダ(15)とは、1つの共通のフレーム(18)を介して連結されており、好ましくは、前記駆動装置(34)は、前記共通のフレーム(18)を駆動することを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記平滑化スライダ(15)は、変位装置により前記共通のフレーム(18)に対して相対的に鉛直方向で変位可能であることを特徴とする、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記プロセス制御装置(5)は、プロセス制御モードにおいて、前記照射装置(40,42)の作業形式と、前記吸い出し装置の作業形式とを互いに調整して、プロセス煙を吸い出すために作動している前記吸引ノズル(35)と、前記粉末層(7)の照射のその都度の目下の場所(27)との間のその都度の間隔ができる限り小さく、所定の最大値を超過しないように構成されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記プロセス制御装置(5)は、プロセス煙を吸い出すために作動している前記吸引ノズル(35)の移動を制御して、プロセス煙を吸い出すために作動している前記吸引ノズル(35)と、前記粉末層(7)の照射のその都度の目下の場所(27)との間のその都度の間隔ができる限り小さく、所定の最大値を超過しないように構成されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記照射装置(40,42)は、前記放射(29)としてレーザビーム(29)を発生させるレーザ(40)と、ビーム偏向装置(42)とを有し、前記プロセス制御装置(5)は、前記ビーム偏向装置(42)と、平坦化兼平滑化装置(13)および吸引ノズル装置(33)を有する構成群(12,33)の移動とを制御して、前記レーザビーム(29)と前記構成群(12,33)とが互いに重ならないように構成されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
少なくとも1つの前記吸引ノズル(35)は、可動でフレキシブルな管路(36)または/およびテレスコピック管路を介して前記吸い出し装置の外部の吸引源に接続されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
少なくとも1つの前記吸引ノズル(35)は、前記支持体(14)の幅に少なくとも略相当する幅を有するワイドノズル形状を呈することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記吸引ノズル(35)は、前記平滑化スライダ(15)が前記支持体(14)上をその都度の量の素材粉末(4)を均して平坦化すべく移動するとき、最後に照射される前記層にわたって前記平滑化スライダ(15)に付き従うように配置されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記吸引ノズル(35)は、前記平滑化スライダ(15)が停止状態でも吸引運転で運転可能であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
前記平滑化スライダ(15)は、前記支持体にわたっての水平の第1の方向での移動時も、前記支持体(14)にわたっての前記第1の方向とは反対の方向での移動時も、その都度の量の素材粉末(4)を均して平坦化すべく運転可能であるように構成されており、前記吸引ノズル装置(33)も、吸い出し運転中、前記平滑化スライダ(15)の移動方向によらず運転可能であるように構成されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
前記平滑化スライダ(15)は、様々な平滑化スライダ要素(20,22,24)、すなわち、均して平坦化する運転時の前記平滑化スライダ(15)の移動方向で相次いで、少なくとも1つのブラシ要素(20)と、少なくとも1つのブレード要素(22)と、平らな水平の下側の払拭面を有する少なくとも1つのゴム状の要素(24)とを有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
前記平滑化スライダ要素(20,22,24)は、それぞれ2つ組に対称的な配置で前記平滑化スライダ(15)に設けられており、少なくとも1つの前記吸引ノズル(35)に対しては、この吸引ノズル(35)に対して対称的な配置で少なくとも1つの別の吸引ノズル(35)が設けられていることを特徴とする、請求項12記載の装置。
【請求項14】
前記平滑化スライダ(15)および少なくとも1つの前記吸引ノズル(35)には、粉末放出装置(17)が連動するように連結されており、前記平滑化スライダ(15)および前記吸引ノズル(35)の前記駆動装置(34)は、同時に、前記粉末放出装置(17)を移動させる前記粉末放出装置(17)の駆動装置でもあることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の装置。
【請求項15】
前記粉末放出装置(17)は、少なくとも1つの前記吸引ノズル(35)および前記平滑化スライダ(15)に前記共通のフレーム(18)を介して連結されていることを特徴とする、請求項2を直接的または間接的に引用する請求項14記載の装置。
【請求項16】
前記粉末放出装置(17)は、前記平滑化スライダとともに前記変位装置により前記共通のフレーム(18)に対して相対的に鉛直方向で変位可能であることを特徴とする、請求項3を間接的に引用する請求項15記載の装置。
【請求項17】
前記対称的な配置は、前記粉末放出装置(17)に関して対称であり、かつ/または前記粉末放出装置(17)は、平面図で見て、対称である2つ組に前記平滑化スライダ(15)に設けられた前記平滑化スライダ要素(20,22,24)の対称軸線に接し、かつ/または前記粉末放出装置(17)は、前記平滑化スライダ要素(20,22,24)間の中央にあることを特徴とする、請求項11を直接的または間接的に引用する請求項14記載の装置または請求項11を間接的に引用する請求項15または16記載の装置。
【請求項18】
前記プロセス室(8)内にシールドガス雰囲気を発生させる装置を備えることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項記載の装置。
【請求項19】
可動の前記吸引ノズル(35)には、溶融飛散物用の受け板(47)が連結されており、前記受け板(47)は、前記吸引ノズル(35)の下で吸引ノズル(35)を越えて外側に向かって突出していることを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項記載の装置。
【請求項20】
前記照射装置(40,42)は、前記プロセス制御装置(5)により制御可能な複数の照射サブシステム(142a~142d)を有し、前記照射サブシステム(142a~142d)は、その都度目下照射すべき前記素材粉末層(7)の様々な箇所で素材粉末を場所選択的に溶融させるべく、同時に運転可能であることを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項記載の装置。
【請求項21】
前記吸引ノズル装置(33)の近傍にイメージセンサ装置(48)が配置され、前記吸引ノズル装置(33)とともに可動であり、前記イメージセンサ装置(48)は、それぞれの溶融領域(27)を画像として検出するように運転可能であることを特徴とする、請求項1から20までのいずれか1項記載の装置。
【請求項22】
前記吸引ノズル装置(33)の近傍に放射加熱装置が配置され、前記吸引ノズル装置(33)とともに可動であり、前記放射加熱装置は、前記素材粉末(4)をそれぞれの溶融領域(27)で加熱するように運転可能であることを特徴とする、請求項1から21までのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセス室内で粉末状の特に金属またはセラミックの素材を層状に積み上げて造形することで成形体を製造する装置であって、
プロセス制御装置と、
層積み上げ造形用の支持体と、
支持体上にその都度目下最上位に準備された素材粉末層に対して、成形体の、この層に割り当てられた横断面領域において、放射、特に集光されたレーザ放射を照射する照射装置であって、放射は、素材粉末をこの横断面領域で加熱により溶融または場合によっては焼結させる照射装置と、
その都度追って照射すべき素材粉末層を支持体上に準備する平坦化兼平滑化装置であって、素材粉末層を形成すべく、支持体上のその都度の量の素材粉末を均して平坦化する、モータにより可動の少なくとも1つの平滑化スライダを有する平坦化兼平滑化装置と、
プロセス煙をプロセス室から吸い出す吸引ノズル装置を有する吸い出し装置であって、吸引ノズル装置の少なくとも1つの吸引ノズルは、駆動装置によりプロセス室内で可動であり、吸引ノズルは、移動の際、照射装置が、支持体上に目下準備されたそれぞれの素材粉末層に対して照射を行うべく作動している間、吸引運転で運転可能である吸い出し装置と、
を備える、成形体を製造する装置に関する。
【0002】
本発明は、特に選択的レーザ溶融の分野に関し、方法に関しても、装置に関しても、例えば国際公開第2010/068327号、独国特許出願公開第19905067号明細書、独国特許出願公開第10112591号明細書、国際公開第98/24574号、国際公開第2006/024373号、国際公開第2017/084781号および独国特許出願公開第102006014835号明細書に記載されているような技術から出発する。
【0003】
選択的レーザ溶融、選択的粉末溶融、選択的レーザ焼結等の概念の下、最近、物品(その幾何学形状が比較的複雑であっても)を製造する性能の高い方法が公知となっており、しばしば「ラピッドプロトタイピング(Rapid Prototyping)」または「ラピッドマニュファクチャリング(Rapid Manufacturing)」または「3Dプリント」という概念の下にまとめられる方法は、実質的に以下の原理に基づいている:
製造したい物品は、描写データ、例えばCADデータあるいはそこから導き出される幾何学的な描写データにしたがい細粒の粉末の原材料からプロセス室内で支持体上に、この原材料が、物品の、それぞれの層に割り当てられた横断面パターンに応じて場所選択的な照射により固化あるいは溶融されることで、層状に積み上げられて造形される。照射は、普通、レーザ放射により実施され、照射装置の、レーザビームを偏向させるビーム偏向装置の制御は、制御装置により、製造したい物品の、該当する幾何学的な描写データに基づいて実施される。制御情報は、通常、マイクロコンピュータにより処理され、準備される。
【0004】
レーザビームは、粉末からなる、支持体上に目下最上位に準備された原材料層上に、物品の、この層に割り当てられた横断面パターンを描画し、これにより、原材料を横断面パターンに応じて選択的に溶融させることができる。その後、通常は、最後に照射により選択的かつ部分的に溶融された層上において次なる素材粉末層の準備を開始し、続いて再び照射工程を前述のように実施する。物品は、これにより層の繰り返しにより生じ、物品の、相次いで製造される横断面層は、互いに固着するように互いに溶融される。粉末材料として考えられるのは、種々の金属および合金であり、その例は、鋼、チタン、金、タンタル、アルミニウム、インコネル等である。セラミックの素材粉末も、選択的レーザ溶融の場合、使用可能である。さらに選択的レーザ溶融法により、物品の考え得る略すべての形状が作製可能であり、これにより、選択的レーザ溶融法は、複雑な形状、機械要素、プロテーゼ、装飾品等の製造に好適である。
【0005】
ビーム源あるいはビーム偏向装置に対して相対的な層位のその都度の調整は、普通、その上に物品が層状に積み上げられて造形される支持体を形成するプラットフォームを相応に下降させることで実施される。選択的レーザ溶融の場合、使用される素材粉末の照射は、特に酸化効果を抑制するために、通常はシールドガス雰囲気下、例えばアルゴン雰囲気下で実施される。選択的レーザ溶融法の実施中、プロセス室を連続的にシールドガスでパージすることが公知である。パージは、プロセス室の一方の側でシールドガスを入れ、プロセス室ハウジングの対向する側でシールドガスを程よく再び吸い出すことで行われる。吸い出されたシールドガスは、回路内で、場合によっては濾過した後、プロセス室に再び供給され得る。
【0006】
照射により素材粉末を溶融させると、運転条件に応じて程度の差こそあれプロセス煙が蒸発効果により生じる。従来技術の該当する装置の場合、プロセス煙は、プロセス室内で立ち上り、少なくとも部分的にプロセス室内壁、特にプロセス室天井と、プロセス室内に存在するその他の面とに凝縮物として結露してしまう。プロセス室と、プロセス室内に存在する設備とは、これにより凝縮物が堆積することで徐々に汚れていく。このことは、照射装置のコンポーネント、例えば窓、レンズ等にもいえる。照射装置のこのようなコンポーネントの汚損は、放射の一部が凝縮物材料により吸収され、ひいては素材粉末の溶融に供されないことに繋がってしまう。さらに、このとき、望ましくない加熱効果が、光学式の照射装置の該当するコンポーネントにおいて吸収により発生してしまうことがある。煙ガスは、レーザビームの光路内でレーザビームを不都合に散乱させてしまうあるいは吸収してしまうこともある。
【0007】
特定の素材粉末、特にチタン粉末を溶融させたときに生じるプロセス煙は、プロセス室内において当初シールドガス雰囲気で堆積されたその凝縮物が、後に空気と接触したときに高い反応性を示し、臨界的な量が集積すると、自然に自己着火あるいは炎形成する傾向を示してしまうことがある。
【0008】
素材粉末を溶融させると、通常、火花飛散も生じ、その結果、溶融飛散物は、対策を講じない限り、場合によっては、溶融されて既に繋ぎ合わされた面領域をなす粉末および/またはプロセス室の壁もしくはプロセス室内に存在する機器類に降下し、そこに固体粒子として不都合に付着してしまうことがある。
【0009】
欧州特許第1839781号明細書において、プロセス室内の都合の悪い箇所で煙ガスが結露してしまうのを回避する策を講じた、粉末状の素材を層状に積み上げて造形することで物品を製造する装置が記載されている。この策は、シールドガス圧送装置を用いてプロセス室を通してシールドガスを導くことを含み、シールドガス圧送装置は、造形エリアと、プロセス室ハウジングの、造形エリアに上方にて対向する側との間にシールドガス流動層の形で、プロセス煙をほとんど通さない分離域を発生させて維持する手段を有している。プロセス煙は、シールドガスとともにプロセス室から導き出され、フィルタステーションに供給され、その結果、シールドガスは、濾過後、場合によっては引き続き使用され得る。
【0010】
技術的背景には、同じく、吸引装置と、プロセス室内でのガス形成を監視するセンサとを示す欧州特許出願公開第2431113号明細書、および新しい粉末層を形成する枠内で独立して可動の複数の工具を相次いで使用することを示す米国特許出願公開第2011/0285060号明細書も属している。
【0011】
請求項1の上位概念部に応じた装置は、国際公開第2014/199150号において公知である。
【0012】
本発明の課題は、柔軟な煙ガス排出コンセプトを有する冒頭で挙げた形態の装置を提供することである。
【0013】
上記課題を解決すべく、請求項1記載の装置を提案する。有利な発展形は、従属請求項の対象である。
【0014】
冒頭で挙げた形態の装置から出発して、本発明により、プロセス室内で可動の少なくとも1つの吸引ノズルが、平滑化スライダに連動するように連結されており、吸引ノズルの駆動装置が、同時に、平滑化スライダを移動させる平滑化スライダの駆動装置でもあることを提案する。
【0015】
本発明により、可動の少なくとも1つの吸引ノズルは、平坦化兼平滑化装置の平滑化スライダに連動するように連結されており、その結果、吸引ノズルの駆動装置は、同時に平滑化スライダの駆動装置でもある。
【0016】
好ましくは、吸引ノズルと平滑化スライダとは、1つの共通のフレームを介して互いに連結されている。好ましくは、駆動装置は、この共通のフレームを移動させる。さらに、この場合、平滑化スライダが、変位装置により共通のフレームに対して相対的に鉛直方向で変位可能である発展形も可能である。
【0017】
本発明に係る装置によれば、吸い出し装置の吸引ノズルは、大抵の場合、それぞれ、粉末の只今の溶融の場所のまさに近傍に、ひいては煙ガスの源のまさに近傍に配置され得る。このことは、煙ガス、さらには溶融飛散物も、発生後直ちにその大部分を吸引ノズルにより捕集することができ、ひいてはプロセス室壁またはプロセス室内のその他のコンポーネントに積もる可能性はほとんどないことを意味する。
【0018】
本発明の一構成によれば、可動の吸引ノズルには、溶融飛散物用の受け板が連結されており、受け板は、吸引ノズルの下の直接的な近傍で外側に向かって突出している。吸引ノズルは、多くの場合、溶融飛散物も受け板に向かって、そして受け板から吸い出すことが可能である。
【0019】
プロセス制御装置は、好ましいプロセス制御モードにおいて、照射装置および平坦化兼平滑化装置ならびに吸い出し装置の作業形式を互いに調整して、プロセス煙を吸い出すために作動している吸引ノズルと、粉末層の照射のその都度の目下の場所との間のその都度の間隔ができる限り小さく、所定の最大値を超過しないように構成されている。最大値は、好ましくは3~15cmの間にある。
【0020】
好ましくは、本発明に係る装置も、プロセス室を通るシールドガス回路を運転中維持するシールドガスシステムを備えている。吸引ノズルは、シールドガス回路に接続されていてよく、その結果、煙ガスおよび場合によっては火花飛散凝縮物は、吸い出されるシールドガスとともにプロセス室から、そして好ましくは、濾過するためにフィルタシステムに供給される。粗いものを濾過するために、サイクロンフィルタが設けられていてもよい。
【0021】
本発明の一実施の形態によれば、一方では、その都度の最上位の素材粉末層の準備の工程と、他方では、素材粉末層の場所選択的な照射および煙ガス吸い出しの工程とは、個別にかつ相前後して実施可能である。
【0022】
本発明の一変化態様によれば、吸引ノズルと平滑化スライダとは、支持体上の造形エリアをなぞるようにして移動するとき、それぞれの機能を同時に移動中に実行することができ、すなわち、一方では、煙ガスを吸い出し、他方では、粉末を均して平坦化することができる。その間、照射装置は作用してもよく、これにより、平坦化兼平滑化装置により既に、それも直前に均された造形エリアの領域で素材粉末を溶融させることができる。これにより、この運転形式は、極めて効果的な煙ガス導出をしながら、装置の迅速な作業を実現する。
【0023】
平滑化スライダに設けられた少なくとも1つの吸引ノズルは、好ましくは、可動でフレキシブルな管路またはテレスコピック管路を介して吸い出し装置の外部の吸引源に接続されている。
【0024】
好ましい一変化態様によれば、吸引ノズルは、吸引ノズルの移動方向に対して横方向に造形エリアの少なくとも略全幅にわたって延在する幅を有するワイドノズル形状を呈している。
【0025】
一実施の形態によれば、ワイドノズル内には、複数の小さなノズル通路が相並んで設けられていてもよい。本実施の形態の一変化態様によれば、このようなノズル通路は、個々にまたはグループ毎に別々にプロセス制御装置のコントロール下でオン/オフされ得る。
【0026】
吸引ノズルは、好ましくは、平滑化スライダが造形エリア上を移動するとき、平滑化スライダに付き従うように配置されている。
【0027】
好ましくは、吸引ノズルは、平滑化スライダが停止状態でも吸引運転で運転可能である。その際、平滑化スライダは、造形エリア上のあるポジションに留置されていてよい。平滑化スライダは、吸引ノズルが作動しているとき、造形エリアの側方にパーキングされていてもよい。
【0028】
好ましくは、平滑化スライダは、造形エリアにわたっての水平の第1の方向での移動時も、造形エリアにわたっての第1の移動とは反対の方向での移動時も、最後に照射された層上のその都度の量の素材粉末を均して平坦化すべく運転可能であるように構成されており、吸引ノズル装置も、吸い出し運転中、平滑化スライダの移動方向によらず運転可能であるように構成されている。これにより、装置の運転の柔軟性は、改善される。
【0029】
本発明のさらに好ましい一実施の形態は、平滑化スライダが、様々な平滑化スライダ要素、すなわち、均して平坦化する運転時の平滑化スライダの移動方向で相次いで、少なくとも1つのブラシ要素と、少なくとも1つのブレード要素と、略平らな水平の下側の払拭面を有する少なくとも1つのゴム状の要素、特にシリコーン要素とを有することを特徴とする。このような平滑化スライダは、極めて良好に機能することが判明している。特に平滑化スライダ要素は、それぞれ2つ組に略対称的な配置で平滑化スライダに設けられていてよく、さらに、少なくとも1つの吸引ノズルに対しては、この吸引ノズルに対して少なくとも略対称的な配置で少なくとも1つの別の吸引ノズルが設けられている。平滑化スライダおよび吸引ノズルアッセンブリのこの種の構成により、平滑化スライダの往復走行時、同じ条件が均しプロセスのために維持され、かつ実質的に吸い出しプロセスのためにも維持され得ることが達成される。
【0030】
好ましくは、平滑化スライダ要素間の中央に、素材粉末を支持体上に平滑化スライダの移動中投下する粉末放出装置が存在している。
【0031】
好ましくは、粉末放出装置は、平滑化スライダおよび少なくとも1つの吸引ノズルに連動するように連結されており、平滑化スライダおよび吸引ノズルの駆動装置は、同時に、粉末放出装置を移動させる粉末放出装置の駆動装置でもある。
【0032】
吸引ノズルおよび平滑化スライダのフレームが共通である場合、好ましくは、粉末放出装置は、少なくとも1つの吸引ノズルおよび平滑化スライダに共通のフレームを介して連結されている。
【0033】
平滑化スライダが変位装置により相対的に鉛直方向で変位可能である場合、好ましくは、粉末放出装置は、平滑化スライダとともに変位装置により共通のフレームに対して相対的に鉛直方向で変位可能である。
【0034】
一般に、粉末放出装置が、平滑化スライダおよび少なくとも1つの吸引ノズルと連動するように平滑化スライダおよび吸引ノズルに連結されている場合、2つ組に平滑化スライダ要素および吸引ノズルを有する前述の対称的な配置が有利であって、特にこの対称的な配置は、粉末放出装置に関して対称であり、かつ/または粉末放出装置は、平面図で見て、対称である2つ組に平滑化スライダに設けられた平滑化スライダ要素の対称軸線に接し、かつ/または粉末放出装置は、平滑化スライダ要素間の中央にある。
【0035】
吸引ノズル装置は、装置の照射運転中、普通、その都度の溶融領域の近傍にポジショニングされているので、イメージセンサ装置、例えばCCDセンサアレイまたは相応のカメラを配置するのに特に好適であり、イメージセンサ装置は、この溶融領域を撮影するように方向付けられており、ひいては溶融工程または/および粉末準備装置の分析に使用され得る。イメージセンサ装置は、例えば、好ましくはワイヤレスのウェブカメラであってもよい。本発明の一実施の形態では、少なくとも1つのこのようなイメージセンサ装置が設けられている。画像は、画面モニタに出力されてもよい。必要であれば、場合によっては自動的な修正、例えば放射源の強度の調整を行うことができるように、画像情報を例えばプロセス制御装置により自動的に評価する可能性もある。このためにスペクトル分解イメージングシステムが存在していてもよい。
【0036】
さらに付言すると、吸引ノズル装置を有する吸い出し装置は、素材粉末を加熱する放射源の支持体としても好適である。それというのも、吸い出し装置は、運転上、溶融領域の近傍にポジショニングされており、ひいては吸い出し装置に配置された放射源は、近距離で溶融領域を照射し、これにより加熱することが可能であるからである。これらの放射源は、好ましくは付加放射源、例えば高出力赤外線照射器である。
【0037】
さらなる拡張形において、このような放射源は、場合によっては造形プロセスのための主放射源としても、またはそれどころか単一の放射源としても、可動の吸い出し装置、あるいは吸引ノズル装置と層準備装置とからなる構成群に、例えば放射源マトリックスまたはレーザ装置として配置されていてもよい。
【0038】
本発明の興味深い一発展形によれば、装置は、少なくとも1つのシールドガス吹き込みノズルを有する、プロセス室内でモータにより可動のシールドガス吹き込み装置を備えている。好ましくは、シールドガス吹き込み装置は、吸引ノズル装置に連動するように連結されており、その結果、シールドガス吹き込み装置の少なくとも1つのシールドガスブローノズルと、吸引ノズル装置の少なくとも1つの吸引ノズルとは、大きすぎない間隔を互いに有している。吸引ノズルによりプロセス煙とともに吸い出されるシールドガスは、これにより完全にまたは部分的にシールドガスブローノズルによりプロセス室内で置換することができ、その結果、その際に発生するガス流は、プロセス室ハウジングの可及的小さな領域に特に作用する。
【0039】
さらに、吹き込まれるシールドガス、例えばアルゴンは、プロセス煙をプロセス室の特定箇所から遠ざけ、特に吸引ノズルに向かって追いやる。
【0040】
特に吸引ノズル装置とともにプロセス室内でモータにより可動のシールドガス吹き込み装置の態様には、独立した発明の意義があり得る。
【0041】
本発明の実施例について、以下に図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明による物品を製造する装置を正面からプロセス室内を見た概略断面図であって、新しい上位の素材粉末層を準備する運転状態にある平坦化兼平滑化装置を示す図である。
【
図2】
図1に相当する描写の仕方で、予め準備された最上位の素材粉末層に対して場所選択的に照射を行い、プロセス煙吸い出しを行っている運転状態にある、物品を製造する装置を示す図である。
【
図3】
図1あるいは
図2に相当する描写の仕方で、上位の素材粉末層の準備と、この素材粉末層が既に完成した箇所でのこの層の照射と、プロセス煙の吸い出しとを同時に行う特別運転形態にある、物品を製造する装置を示す図である。
【
図4】本発明の別の一実施例のコンポーネントの概略斜視図である。
【
図5】
図1ないし3に相当する描写の仕方で本発明の別の一実施例を示す図である。
【0043】
図1に示す説明に用いるスケッチは、粉末4を層状に積み上げて造形することで物品2を製造する枠内での粉末層準備ステップの一瞬を捉えたものである。粉末4の例は、例えば10μm~60μmの粒度を有するチタン粉末、または相応の粒度の鋼粉末である。物品2の積み上げ造形は、プロセス室8内で実施され、プロセス室8は、プロセス室ハウジングにより画定されている。プロセス室8内は、プロセス室8を通るシールドガス回路(図示せず)が維持され、シールドガス雰囲気、好ましくはアルゴン雰囲気が支配している。物品2の層状の積み上げ造形は、支持体プラットフォーム14上で実施される。支持体プラットフォーム14は、鉛直方向駆動ユニットにより制御されて鉛直方向で可動であり、鉛直方向で様々な位置に調整可能、つまりポジショニング可能である。平坦化兼平滑化装置13を有する粉末層準備装置12は、その都度後続する素材粉末層7を支持体14上に準備するために用いられる。粉末層準備装置12は、
図1で見て左から右に、そして右から左に造形エリア全体にわたって、ひいては支持体14全体にわたって走行可能である。粉末層準備装置12は、中央に、図平面に対して横方向に造形エリア全体にわたって延在する粉末放出リザーバ17を有し、粉末放出リザーバ17から素材粉末を、新しい上位の粉末層7を造形エリアに形成すべく、層準備装置12の移動中、投下することができる。粉末放出リザーバ17の左右に、層準備装置12は、平滑化スライダ15のところに、対称的な配置でそれぞれ3つの様々な平滑化スライダ要素20,22,24を有している。平滑化スライダ要素20は、プラスチックブラシである。平滑化スライダ要素22は、刃先を下にした金属のブレードである。平滑化スライダ要素24は、平らな払拭面を下に有するシリコーンブロックである。粉末積層工程中、平滑化スライダ15の移動方向で粉末放出リザーバ17に付き従うそれぞれ3つの積層要素20,22,24が作用する。積層要素20,22,24は、支持体14上に生じつつある新しい上位の粉末層7の、平滑化された平らで一様な素材粉末表面を提供する。層準備装置12は、左から右に造形エリア上を移動するときも、右から左に造形エリア上を移動するときも、最上位の粉末層7を準備するために運転可能であるので、払拭要素20~24のセットは、層準備装置12の移動方向に応じて使用される。
【0044】
図1に示す描写では、層準備装置12は、平滑化スライダ15とともに左から右に移動しており、上位の粉末層7を形成しているところである。
【0045】
図1~3において、符号32は、層準備装置12用の支持兼案内レールを指している。このレール32は、プロセス室の背壁に沿って水平方向に延在している。レール32は、層準備装置12の電気モータ式の駆動装置34の駆動輪がレール32に沿って転動可能であることにより、この駆動装置34とも協働し、而して層準備装置12の送りをプロセス制御装置5のコントロール下で発生させることができる。
【0046】
粉末層準備装置12が支持体14にわたって走行させられ、粉末層7を後にすると直ちに、既に粉末リザーバ17から出た余分な粉末は、オーバフロー開口45を通して粉末集合容器46内に落下することができる。粉末放出リザーバ17は、予め閉鎖可能であり、その結果、粉末放出リザーバ17内に存在する粉末は、次なる粉末層準備工程のために準備可能である。
【0047】
図2は、物品の製造に際して
図1に示した粉末層の準備が既に終わっており、今やこの粉末層7の場所選択的な照射が、製造したい物品の、この層に割り当てられた横断面領域において実施される運転状態にある、物品を製造する装置を示している。このために照射装置40,42が設けられており、照射装置40,42は、レーザ40と、制御可能なビーム偏向装置(スキャナ)42とを有している。照射装置40,42により、造形エリア上のすべての点に、プロセス制御装置5による制御にしたがい照射装置40,42のレーザビーム29が到達可能である。符号27のところに、レーザビーム29の只今の衝突点、ひいては粉末溶融点が存在している。そこでは、素材粉末4の溶融が只今行われている。その際、通常は、煙ガス31および場合によっては火花飛散が生じる。この煙ガス31および場合によっては生じる火花または溶融飛散物の少なくとも大部分を捕捉するために、吸引ノズル装置33が用いられる。吸引ノズル装置33は、平滑化スライダ15のフレーム18に配置される2つの吸引ノズル35を有している。吸引ノズル35は、ワイドノズルであり、ワイドノズルは、図紙面に対して横方向に造形エリアの少なくとも略全幅にわたって延在しており、平滑化スライダ要素20~24の側方外側において平滑化スライダ15のフレームに配置されて側方外側に向かって方向付けられたノズル開口37を有している。代替的には、ワイドノズルは、相並んで配置された個々のノズルの列に置換されていてもよい、またはこのような個々のノズルの列を含んでいてもよい。吸引ノズル装置33によりプロセス室8からともに吸い出されたシールドガスは、(図示しない)シールドガス供給部を介して絶えず置換される。この置換は、シールドガス濾過・再循環プロセスの枠内で行われ得る。
【0048】
図2には、平滑化スライダ15の左側に配置された吸引ノズル35が、煙ガス31および場合によっては生じる火花を溶融場所から捕捉することができるように、只今の溶融箇所27の近傍にポジショニングされていることが看取可能である。プロセス制御装置5は、ビーム偏向装置42と、層準備装置12および吸引ノズル装置33からなる構成群12,33の移動とを相応に制御することによって、レーザビーム29と構成群12,33とが互いに重なってしまわないようにしている。粉末層準備装置12の駆動装置34は、同時に吸引ノズル装置33の駆動装置でもある。それというのも、粉末層準備装置12と吸引ノズル装置33とは、駆動装置34により案内レール32に沿って駆動され得る1つの共通のフレーム18を介して連結されているからである。
【0049】
符号47を溶融飛散物用のそれぞれの受け板に付してある。受け板47は、それぞれの吸引ノズル35の下に取り付けられており、その結果、吸引ノズル35の縁部を越えて外側に向かって突出している。受け板47は、粉末床の上方に例えば0.5mm~2mmの極めて小さな間隔を置いて延在している。この種の受け板が、吸引ノズル35の吸引作用により該当する方向に移動される溶融飛散物を集めるのに極めて良好に好適であることが判明している。
【0050】
符号48をそれぞれのイメージセンサ装置、例えばワイヤレスのウェブカメラに付してある。イメージセンサ装置48は、ノズル開口37の近傍で構成群12,33に配置されて、造形エリアに向けられているので、これにより、それぞれの溶融領域27を観察することが可能である(溶融池分析)。こうして、粉末層7を作成する際に粉末層7の品質も監視することが可能である。
【0051】
素材粉末層7を照射する作業ステップが実施された後、支持体14は、次に続く素材粉末層の厚さの分だけ下降でき、その結果、その後、粉末層準備装置12は、次なる最上位の素材粉末層7を準備することができ、このステップは、場合によってはプロセス室8の右端から左端へ後退する際に実施される。
【0052】
平滑化スライダ15は、(図示しない)変位装置により制御されて鉛直方向に少量変位可能である。
図1に示す粉末層準備時、平滑化スライダ15は、その下降位置にある。
図2に示す照射工程時、平滑化スライダ15は、その上昇位置にある。
【0053】
図3は、特別モードを示しており、この特別モードでは、物品を製造する装置が、最上位の粉末層7を準備すると同時に、層が既に完成した箇所では、層に対して場所選択的にレーザビーム29を照射し、それぞれのビーム衝突点27の近傍において、プロセス煙31および場合によっては火花飛散を吸引ノズル装置33により吸い出している運転状態にある。
図3には、層準備装置12が平滑化スライダ15とともに左から右に移動している状況も示されている。
【0054】
層準備装置12がその平滑化スライダ15とともに既に通過した後方の領域25では、照射装置40,42が、既に上位の素材粉末層7の場所選択的な照射を開始し、そこでは粉末4が、成形体2の幾何学形状の設定にしたがいその限りにおいて溶融されている。粉末層準備プロセスと、プロセス煙および溶融飛散物の吸い出しを含む最上位の層7の選択的な照射とは、これにより装置のこの特別モードにおいて同時に実施され得る。
【0055】
図4には、本発明の別の一実施例の個々のコンポーネントを、斜め上方から造形エリアを見た斜視図で示してある。
図4に示した実施例は、前述の実施例と同様、粉末層準備装置112と吸引ノズル装置133とからなる、モータにより可動の構成群112,133を有している。
図4は、この構成群を上部後方から見た斜視図で示している。
図4では、符号142a~142dを、それぞれのビーム偏向装置を有する4つの異なる照射サブシステムに付してある。これらのサブシステム142a~142dの各々は、固有のレーザビーム129a,129b,129cあるいは129dを造形エリアに向け、これにより、制御された形で、予め準備された最上位の素材粉末層の粉末を、製造したい1つの物品の幾何学形状描写データにしたがい、または場合によっては、同時に複数の物品が製造されることが望ましければ、製造したい複数の物品の幾何学形状描写データにしたがい、溶融させることができる。照射サブシステムは、プロセス制御装置による動作制御に応じて個々に、グループ毎にまたはすべて一緒に同時に運転され得る。このことは、造形エリアが大きくても省時間の加工を可能にする。吸引ノズルは、構成群112,133の両側で同時に運転されてもよい。
【0056】
図4に示した実施例の運転は、基本的には、予め既に本発明の第1の実施例に関して説明した運転に応じて実施され得る。しかし、
図4に示した実施例の場合、制御部は、レーザビームが複数存在することを考慮しなければならない。
【0057】
図5は、本発明の別の一実施例を
図1~3の描写の仕方に応じた描写の仕方で示している。
図1~3に示した実施例のコンポーネントあるいは要素に具象的または機能的に実質的に相当する、
図5に示した実施例のコンポーネントおよび要素は、
図5において、相応に同じ符号の後に小文字のアルファベットaを付して示したので、以下では、
図5に示した実施例を説明するために、主として、
図5に示した実施例と、
図1~3の先の実施例との相違点について立ち入ることとする。
【0058】
図5に示した実施例の特徴は、吸引ノズル装置33aと粉末層準備装置12aとが互いに分離されていることである。
図5は、既に前もって粉末層準備装置12aにより準備された粉末層7aに対して場所選択的な照射を行っている運転状態にある本発明に係る装置の一瞬を捉えたものである。粉末層準備装置12aは、
図5ではパーキング状態で造形エリアの右隣に存在している。
【0059】
符号27aのところに、レーザビーム29aの只今の衝突点、ひいては粉末溶融点が存在している。そこでは、素材粉末4aの溶融が只今行われている。その際に生じる煙ガス31aおよび場合によっては生じる火花あるいは溶融飛散物の少なくとも大部分を捕捉するために、吸引ノズル装置33aが用いられる。吸引ノズル装置33aは、吸引ノズル開口37aを有する吸引ノズル35aを有している。
図5には、吸引ノズル装置33aが只今右向きに移動していることを略示してある。吸引ノズル装置33aの左側に配置された吸引ノズル35aは、只今溶融箇所27aの近傍にポジショニングされており、その結果、煙ガス31aおよび場合によっては生じる火花を最適に捕捉することができる。プロセス制御装置5aは、ビーム偏向装置42aと、吸引ノズル装置33aの移動とを相応に制御することによって、レーザビーム29aと吸引ノズル装置33aとが互いに重なってしまわないようにしている。
【0060】
図5に示す実施例の有利な特徴は、吸引ノズル装置33aとともに可動のシールドガス吹き込み装置50である。
図5には、シールドガス吹き込み装置50が吸引ノズル装置33aに連動するように連結された好ましい実施の形態を示してある。しかし、改変した実施の形態では、シールドガス吹き込み装置50は、制御装置5aにより制御可能な固有の駆動手段を有し、ひいては独立的に可動であってもよい。
【0061】
シールドガス吹き込み装置50は、2つのシールドガスブローノズル52を有し、シールドガスブローノズル52により、シールドガス54はプロセス室8a内に導入可能である。このシールドガスは、完全にまたは部分的に、吸引ノズル装置33aによりその都度プロセス煙31aとともに吸い出されたシールドガスを置換することができる。しかし、プロセス室8aへのさらに別のシールドガス供給部、特に定置のシールドガス供給部が設けられていてもよい。このことは、シールドガス排出部についても当てはまる。
【0062】
図5に示した状況では、ビーム衝突点27aに直接隣接する左側の吸引ノズル35aが、プロセス煙31aおよび場合によっては溶融飛散物を吸い出すために作動している。同時にシールドガス吹き込み装置50の右側のシールドガスブローノズル52が、作動中の吸引ノズル35aに向かってシールドガスを吹くために只今作動している。こうして、煙ガスが、吸引ノズル装置33aとシールドガス吹き込み装置50とからなる構成群の下の領域に到達することは、回避される傾向にある。
【0063】
ノズル35aおよび52は、制御装置5aにより制御可能であり、その結果、所望の運転形態に応じて1つ、2つ、3つまたはすべてのノズル35a,52をオンにすることが可能である。
【0064】
ここで念のため付言しておくと、
図1~5に示した実施例の組み合わせも可能である。而してシールドガス吹き込み装置は、例えば吸引ノズル装置および層準備装置に連動するように連結されていてもよい。
【0065】
図5に示した簡単化された実施例では、特に示してはいないが、一方では、構成群33a,50と、他方では、12aとが、入れ替え箇所で互いにすれ違うことができ、その結果、層準備装置12aは、常に吸い出し装置33aとシールドガス吹き込み装置50とからなる構成群の前に、プロセス室8a内での移動方向によらず作動させられ得る。シールドガスとして考えられるのは、特に希ガス、例えばアルゴンである。