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特許7305668可変曲げ剛性プロファイルを有する医療用器具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】可変曲げ剛性プロファイルを有する医療用器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/005 20060101AFI20230703BHJP
   A61B 1/01 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A61B1/005 513
A61B1/01 511
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020551846
(86)(22)【出願日】2019-02-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 US2019018819
(87)【国際公開番号】W WO2019190657
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】62/649,460
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518083032
【氏名又は名称】オーリス ヘルス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アル-ジャッダ・アーデル
(72)【発明者】
【氏名】カートン・カーティス・ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】クック・クリストファー・アンドリュー
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/171471(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0217184(US,A1)
【文献】特表2008-502433(JP,A)
【文献】特開2006-141976(JP,A)
【文献】特開2001-333883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
G02B 23/24-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療システムであって、
遠位端と近位端との間に延在する長さを有する細長部材であって、前記細長部材は、前記細長部材の前記長さに沿って配置されたn個の曲げ剛性区間を更に有し、nは2以上であり、前記n個の曲げ剛性区間のそれぞれは異なる曲げ剛性を有し、前記n個の曲げ剛性区間のそれぞれの前記曲げ剛性は、前記曲げ剛性区間の長さに沿ってほぼ均一である、細長部材と、
シース遠位端とシース近位端との間に延在するシース長さを有するシースであって、前記シースは内側通路を有し、前記シースは、前記シースの前記長さに沿って配置されたm個の曲げ剛性区間を更に有し、mは2以上であり、前記m個の曲げ剛性区間のそれぞれは異なる曲げ剛性を有し、前記m個の曲げ剛性区間のそれぞれの前記曲げ剛性は、前記曲げ剛性区間の長さに沿ってほぼ均一である、シースと、
前記シースの移動とは独立した前記細長部材の移動を制御するように構成された第1の駆動機構と、
前記細長部材の移動とは独立した前記シースの移動を制御するように構成された第2の駆動機構と、を備え、
前記細長部材は、前記細長部材と前記シースとが複合構造体を形成するように、前記シースの前記内側通路内で移動するように構成され、前記複合構造体は、
前記細長部材の前記遠位端が前記シース遠位端と揃えられる場合の第1の曲げ剛性プロファイルと、
前記細長部材の前記遠位端が前記シース遠位端を越えて延在する場合の、前記第1の曲げ剛性プロファイルとは異なる第2の曲げ剛性プロファイルと、を有し、
前記第1の曲げ剛性プロファイル及び前記第2の曲げ剛性プロファイルのそれぞれは、複数の曲げ剛性区間を含み、
前記医療システムは、前記シースの前記内側通路内の前記細長部材の位置を前記シースに対して調節して、前記複合構造体の意図される運動に基づいて前記第1の曲げ剛性プロファイルと前記第2の曲げ剛性プロファイルとの間で選択するように、前記第1の駆動機構と前記第2の駆動機構を制御するように構成されたプロセッサを更に備える、医療システム。
【請求項2】
前記細長部材の遠位端が前記シース遠位端の遠位に配置されるように前記細長部材が前記シースを通じて前進させられた場合に、前記複合構造体が少なくともn+1個の曲げ剛性区間を含む、請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
前記細長部材の前記n個の曲げ剛性区間が、前記細長部材の前記長さに沿って配置された少なくとも3つの曲げ剛性区間を含み、
前記少なくとも3つの曲げ剛性区間のそれぞれの前記曲げ剛性が、隣接する曲げ剛性区間の曲げ剛性よりも大きいか又はそれよりも小さい、請求項1に記載の医療システム。
【請求項4】
医療システムであって、
遠位端と近位端との間に延在する長さを有する細長部材であって、前記細長部材は、前記細長部材の前記長さに沿って配置されたn個の曲げ剛性区間を更に有し、nは2以上であり、前記n個の曲げ剛性区間のそれぞれは異なる曲げ剛性を有し、前記n個の曲げ剛性区間のそれぞれの前記曲げ剛性は、前記曲げ剛性区間の長さに沿ってほぼ均一である、細長部材と、
シース遠位端とシース近位端との間に延在するシース長さを有するシースであって、前記シースは内側通路を有し、前記シースは、前記シースの前記長さに沿って配置されたm個の曲げ剛性区間を更に有し、mは2以上であり、前記m個の曲げ剛性区間のそれぞれは異なる曲げ剛性を有し、前記m個の曲げ剛性区間のそれぞれの前記曲げ剛性は、前記曲げ剛性区間の長さに沿ってほぼ均一である、シースと、を備え、
前記細長部材は、前記細長部材と前記シースとが複合構造体を形成するように、前記シースの前記内側通路内で移動するように構成され、前記複合構造体は、
前記細長部材の前記遠位端が前記シース遠位端と揃えられる場合の第1の曲げ剛性プロファイルと、
前記細長部材の前記遠位端が前記シース遠位端を越えて延在する場合の、前記第1の曲げ剛性プロファイルとは異なる第2の曲げ剛性プロファイルと、を有し、
前記第1の曲げ剛性プロファイル及び前記第2の曲げ剛性プロファイルのそれぞれは、複数の曲げ剛性区間を含み、
前記医療システムは、前記シースの前記内側通路内の前記細長部材の位置を前記シースに対して調節して、前記複合構造体の意図される運動に基づいて前記第1の曲げ剛性プロファイルと前記第2の曲げ剛性プロファイルとの間で選択するように構成されたプロセッサを更に備え、
前記細長部材が移行区間を更に含み、前記移行区間は、前記曲げ剛性区間の各対の間の前記移行区間の長さにわたって延在する可変曲げ剛性を有し、前記移行区間の前記可変曲げ剛性が、前記移行区間の第1の側の第1の曲げ剛性から前記移行区間の第2の側の第2の曲げ剛性まで変化する、医療システム。
【請求項5】
各移行区間において、前記可変曲げ剛性が、前記移行区間の前記第1の側の前記第1の曲げ剛性から前記移行区間の前記第2の側の前記第2の曲げ剛性までほぼ直線的な勾配で変化する、請求項4に記載の医療システム。
【請求項6】
医療システムであって、
遠位端と近位端との間に延在する長さを有する細長部材であって、前記細長部材は、前記細長部材の前記長さに沿って配置されたn個の曲げ剛性区間を更に有し、nは2以上であり、前記n個の曲げ剛性区間のそれぞれは異なる曲げ剛性を有し、前記n個の曲げ剛性区間のそれぞれの前記曲げ剛性は、前記曲げ剛性区間の長さに沿ってほぼ均一である、細長部材と、
シース遠位端とシース近位端との間に延在するシース長さを有するシースであって、前記シースは内側通路を有し、前記シースは、前記シースの前記長さに沿って配置されたm個の曲げ剛性区間を更に有し、mは2以上であり、前記m個の曲げ剛性区間のそれぞれは異なる曲げ剛性を有し、前記m個の曲げ剛性区間のそれぞれの前記曲げ剛性は、前記曲げ剛性区間の長さに沿ってほぼ均一である、シースと、を備え、
前記細長部材は、前記細長部材と前記シースとが複合構造体を形成するように、前記シースの前記内側通路内で移動するように構成され、前記複合構造体は、
前記細長部材の前記遠位端が前記シース遠位端と揃えられる場合の第1の曲げ剛性プロファイルと、
前記細長部材の前記遠位端が前記シース遠位端を越えて延在する場合の、前記第1の曲げ剛性プロファイルとは異なる第2の曲げ剛性プロファイルと、を有し、
前記第1の曲げ剛性プロファイル及び前記第2の曲げ剛性プロファイルのそれぞれは、複数の曲げ剛性区間を含み、
前記医療システムは、前記シースの前記内側通路内の前記細長部材の位置を前記シースに対して調節して、前記複合構造体の意図される運動に基づいて前記第1の曲げ剛性プロファイルと前記第2の曲げ剛性プロファイルとの間で選択するように構成されたプロセッサを更に備え、
前記遠位端に最も近い前記曲げ剛性区間の前記曲げ剛性が、他の前記曲げ剛性区間のそれぞれの前記曲げ剛性よりも小さい、医療システム。
【請求項7】
医療システムであって、
遠位端と近位端との間に延在する長さを有する細長部材であって、前記細長部材は、前記細長部材の前記長さに沿って配置されたn個の曲げ剛性区間を更に有し、nは2以上であり、前記n個の曲げ剛性区間のそれぞれは異なる曲げ剛性を有し、前記n個の曲げ剛性区間のそれぞれの前記曲げ剛性は、前記曲げ剛性区間の長さに沿ってほぼ均一である、細長部材と、
シース遠位端とシース近位端との間に延在するシース長さを有するシースであって、前記シースは内側通路を有し、前記シースは、前記シースの前記長さに沿って配置されたm個の曲げ剛性区間を更に有し、mは2以上であり、前記m個の曲げ剛性区間のそれぞれは異なる曲げ剛性を有し、前記m個の曲げ剛性区間のそれぞれの前記曲げ剛性は、前記曲げ剛性区間の長さに沿ってほぼ均一である、シースと、を備え、
前記細長部材は、前記細長部材と前記シースとが複合構造体を形成するように、前記シースの前記内側通路内で移動するように構成され、前記複合構造体は、
前記細長部材の前記遠位端が前記シース遠位端と揃えられる場合の第1の曲げ剛性プロファイルと、
前記細長部材の前記遠位端が前記シース遠位端を越えて延在する場合の、前記第1の曲げ剛性プロファイルとは異なる第2の曲げ剛性プロファイルと、を有し、
前記第1の曲げ剛性プロファイル及び前記第2の曲げ剛性プロファイルのそれぞれは、複数の曲げ剛性区間を含み、
前記医療システムは、前記シースの前記内側通路内の前記細長部材の位置を前記シースに対して調節して、前記複合構造体の意図される運動に基づいて前記第1の曲げ剛性プロファイルと前記第2の曲げ剛性プロファイルとの間で選択するように構成されたプロセッサを更に備え、
前記近位端に最も近い前記曲げ剛性区間の前記曲げ剛性が、他の前記曲げ剛性区間のそれぞれの前記曲げ剛性よりも大きい、医療システム。
【請求項8】
前記曲げ剛性区間のそれぞれの長さが少なくとも50mmである、請求項3に記載の医療システム。
【請求項9】
前記移行区間のそれぞれの長さが少なくとも10mmである、請求項4に記載の医療システム。
【請求項10】
前記細長部材が、内側層及び外側層を含む、請求項1に記載の医療システム。
【請求項11】
医療システムであって、
遠位端と近位端との間に延在する長さを有する細長部材であって、前記細長部材は、前記細長部材の前記長さに沿って配置されたn個の曲げ剛性区間を更に有し、nは2以上であり、前記n個の曲げ剛性区間のそれぞれは異なる曲げ剛性を有し、前記n個の曲げ剛性区間のそれぞれの前記曲げ剛性は、前記曲げ剛性区間の長さに沿ってほぼ均一である、細長部材と、
シース遠位端とシース近位端との間に延在するシース長さを有するシースであって、前記シースは内側通路を有し、前記シースは、前記シースの前記長さに沿って配置されたm個の曲げ剛性区間を更に有し、mは2以上であり、前記m個の曲げ剛性区間のそれぞれは異なる曲げ剛性を有し、前記m個の曲げ剛性区間のそれぞれの前記曲げ剛性は、前記曲げ剛性区間の長さに沿ってほぼ均一である、シースと、を備え、
前記細長部材は、前記細長部材と前記シースとが複合構造体を形成するように、前記シースの前記内側通路内で移動するように構成され、前記複合構造体は、
前記細長部材の前記遠位端が前記シース遠位端と揃えられる場合の第1の曲げ剛性プロファイルと、
前記細長部材の前記遠位端が前記シース遠位端を越えて延在する場合の、前記第1の曲げ剛性プロファイルとは異なる第2の曲げ剛性プロファイルと、を有し、
前記第1の曲げ剛性プロファイル及び前記第2の曲げ剛性プロファイルのそれぞれは、複数の曲げ剛性区間を含み、
前記医療システムは、前記シースの前記内側通路内の前記細長部材の位置を前記シースに対して調節して、前記複合構造体の意図される運動に基づいて前記第1の曲げ剛性プロファイルと前記第2の曲げ剛性プロファイルとの間で選択するように構成されたプロセッサを更に備え、
前記細長部材が、内側層及び外側層を含み、
前記外側層が編組ジャケットを含み、前記内側層が内骨格を含む、医療システム。
【請求項12】
前記編組ジャケットが、前記編組ジャケットを通じて延在する1本以上のプルワイヤを含む、請求項11に記載の医療システム。
【請求項13】
前記編組ジャケットの曲げ剛性が、ジャケット材料のデュロメータ硬さ、編組の幾何形状、及び編組のピック数のうちの少なくとも1つによって調節されるように構成されている、請求項11に記載の医療システム。
【請求項14】
前記内骨格が、ニチノールで形成された第1の部分と、ステンレス鋼で形成された第2の部分と、を含む、請求項11に記載の医療システム。
【請求項15】
前記内骨格の前記第2の部分が、少なくとも第1のピッチを有するコイルを含む第1の区分と、少なくとも第2のピッチを有するコイルを含む第2の区分と、を含む、請求項14に記載の医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、本明細書に参照によりその全容を援用するところの2018年3月28日出願の米国特許仮出願第62/649,460号に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、医療用器具に関する。より詳細には、本出願は、可変曲げ剛性プロファイルを有する医療用器具に関する。
【背景技術】
【0003】
内視鏡検査(例えば、気管支鏡検査)などの医療処置では、診断及び/又は治療目的で患者の管腔(例えば、気道)の内部にアクセスし可視化を行う場合がある。
【0004】
気管支鏡検査は、医師が気管支及び細気管支などの患者の肺内の気道を検査することを可能とする医療処置である。この処置では、気管支鏡として知られる細い可撓性の管状ツール又は器具が患者の口に挿入され、患者の喉から肺気道内へと、その後の診断及び/又は治療を行うために特定された組織部位に向かって通される。
【0005】
特定の処置では、ロボット制御可能な医療システムを使用して、器具の挿入及び/又は操作を制御することができる。ロボット制御可能な医療システムは、処置中の器具の位置決めを制御するために使用されるマニピュレータアセンブリを有するロボットアーム又はその他の器具位置決め装置を含むことができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様では、医療用器具が記載される。医療用器具は、遠位端と近位端との間に延在する細長シャフトを含む。細長シャフトは、細長シャフトの長さに沿って配置された少なくとも3つの曲げ剛性区間を含み、各曲げ剛性区間は、曲げ剛性区間の長さにわたって延在する曲げ剛性を有し、曲げ剛性区間のそれぞれの曲げ剛性は隣接する曲げ剛性区間の曲げ剛性よりも大きいか又は小さく、曲げ剛性区間のそれぞれの曲げ剛性はその長さに沿ってほぼ均一である。細長シャフトはまた、少なくとも2つの移行区間を含み、各移行区間は、少なくとも3つの曲げ剛性区間の各対の間の長さにわたって延在する可変曲げ剛性を有し、各移行区間の可変曲げ剛性は、移行区間の第1の側の第1の曲げ剛性から、移行区間の第2の側の第2の曲げ剛性まで変化する。
【0007】
医療用器具はまた、以下の特徴、すなわち、(a)各移行区間において、可変曲げ剛性が、移行区間の第1の側の第1の曲げ剛性から移行区間の第2の側の第2の曲げ剛性までほぼ直線的な勾配で変化すること、(b)遠位端に最も近い曲げ剛性区間が、3つの他の曲げ剛性区間のそれぞれよりも小さい曲げ剛性を有すること、(c)近位端に最も近い曲げ剛性区間が、3つの他の曲げ剛性区間のそれぞれよりも大きい曲げ剛性を有すること、(d)近位端から遠位端まで、少なくとも4つの曲げ剛性区間のそれぞれの曲げ剛性が増大すること、(e)曲げ剛性区間のそれぞれが、少なくとも50mmの最小長さを有すること、(f)移行区間のそれぞれが、少なくとも10mmの最小長さを有すること、(g)細長シャフトが、内側層及び外側層を含むこと、(h)外側層が編組ジャケットを含み、内側層が内骨格を含むこと、(i)編組ジャケットが、編組ジャケットを通じて延在する1本以上のプルワイヤを含むこと、(j)編組ジャケットの曲げ剛性が、ジャケット材料のデュロメータ硬さ、編組の幾何形状、及び編組のピック数のうちの少なくとも1つによって調節できること、(k)内骨格が、ニチノールで形成された第1の部分と、ステンレス鋼で形成された第2の部分と、を含むこと、(l)形成された第2の部分が、少なくとも第1のピッチを有するコイルを有する第1の区分と、少なくとも第2のピッチを有するコイルを有する第2の区分と、を含むこと、(m)ステンレス鋼によって形成された第2の部分が、剛性ハイポチューブとして形成された第3の区分を更に含むこと、(n)医療用器具が内視鏡を含むこと、(o)細長シャフトが、全方向性の曲げ剛性プロファイルを有すること、(p)細長シャフトが、段差状の曲げ剛性プロファイルを有すること、並びに/又は(q)移行区間のそれぞれが、緩やかな勾配の形の曲げ剛性を有すること、のうちの1つ以上を任意の組み合わせで有することができる。
【0008】
別の態様では、医療システムが記載される。医療システムは、遠位端と近位端との間に延在する長さを有する細長部材を含み、細長部材は、異なる曲げ剛性のn個の曲げ剛性区間を更に含み、n個の曲げ剛性区間のそれぞれはその長さに沿ってほぼ均一である曲げ剛性を有する。システムはまた、シース遠位端とシース近位端との間に延在するシース長さを有するシースであって、内側通路を有する、シースを含む。細長部材は、細長部材とシースとが少なくともn+1個の曲げ剛性区間を有する複合構造体を形成するように、シースの内側通路内で移動可能であり、n+1個の曲げ剛性区間のそれぞれは、その長さに沿ってほぼ均一である曲げ剛性を有する。
【0009】
いくつかの実施形態では、システムは、以下の特徴、すなわち、(a)スコープ遠位端がシース遠位端の遠位に配置されるようにスコープがシースを通って前進させられた場合に、複合構造体が、少なくともn+1個の曲げ剛性区間を含むこと、(b)シースが、異なる曲げ剛性の少なくともn個の曲げ剛性区間を含み、n個の曲げ剛性区間のそれぞれはその長さにわたってほぼ均一である曲げ剛性を有し、スコープは、複合構造体が少なくとも2n個の曲げ剛性区間を含むようにシースに対して配置されることができること、(c)スコープが4つの曲げ剛性区間を有し、複合構造体が4つよりも多い曲げ剛性区間を有すること、(d)スコープとシースとが異なる長さであること、(e)シースが、複数の曲げ剛性区間を含むこと、(f)シースが、少なくとも4つの曲げ剛性区間を含むこと、及び/あるいは(g)スコープが取り付けられた第1のロボットアームと、シースが取り付けられた第2のロボットアームと、を備え、第1のロボットアームは、スコープをシースに対して前進又は後退させるように構成され、第2のロボットアームは、シースをスコープに対して前進又は後退させるように構成されていること、のうちの1つ以上を任意の組み合わせで有することができる。
【0010】
別の態様では、患者体内の医療用器具を誘導するための方法が記載される。本方法は、医療用器具を患者の管腔内に挿入することであって、医療用器具は、スコープであって、スコープの長さに沿って配置された複数の曲げ剛性区間を含み、曲げ剛性区間のそれぞれがほぼ均一な曲げ剛性を有する、スコープと、シースであって、シースの長さに沿って配置された複数の曲げ剛性区間を含み、内側通路を更に有し、スコープがシースの内側通路内に配置されている、シースと、を備える、医療用器具を患者の管腔内に挿入することと、スコープ及びシースのうちの少なくとも一方の位置をスコープ及びシースのうちの他方に対して調整することによって医療用器具の曲げ剛性プロファイルを調節することと、を含む。
【0011】
本方法は、以下の特徴、すなわち、(a)医療用器具の曲げ剛性プロファイルを調節することが、スコープがシースから遠位に延在するようにスコープを前進させるか又はシースを後退させることを含むこと、(b)医療用器具の曲げ剛性プロファイルを調節することが、スコープの遠位端がシースの内側通路内に配置されるようにシースを前進させるか又はスコープを後退させることを含むこと、(c)シースの遠位端がスコープの遠位端を越えて遠位に配置されていること、(d)スコープの遠位端がシースの遠位端と揃えられること、(e)スコープが、それぞれが区間の長さに沿ってほぼ一定の曲げ剛性を有する少なくとも4つの曲げ剛性区間を含むこと、(f)スコープが、それぞれが一対の少なくとも4つの曲げ剛性区間の間に配置された少なくとも3つの区間を含むこと、(g)スコープが、それぞれが区間の長さに沿ってほぼ一定の曲げ剛性を有する少なくとも3つの曲げ剛性区間を含むこと、(h)スコープが、それぞれが一対の少なくとも4つの曲げ剛性区間の間に配置された少なくとも2つの区間を含むこと、(i)患者の管腔が気管支気道を含むこと、(j)第1の曲げ剛性区間が、その他の曲げ剛性区間に対して低い曲げ剛性を有すること、(k)第3の曲げ剛性区間が、イントロデューサーを通って延在すること、及び/又は(l)第4の曲げ剛性区間が、患者の管腔を通って延在せず、また、イントロデューサーを通って延在しないこと、のうちの1つ以上を任意の組み合わせで有することができる。
【0012】
別の態様では、医療用器具が記載される。医療用器具は、遠位端と近位端との間に延在する細長シャフトを含む。細長シャフトは、細長シャフトの曲げ剛性を調節するための第1のモダリティであって、第1のモダリティのモダリティが、遠位端と近位端との間の第1の点において変化する、第1のモダリティと、細長シャフトの曲げ剛性を調節するための第2のモダリティであって、第2のモダリティのモダリティが、第1の点と異なる、遠位端と近位端との間の第2の点において変化する、第2のモダリティと、を有する。第1の点及び第2の点は、細長シャフトの曲げ剛性プロファイルが、第1の曲げ剛性を有する第1の曲げ剛性区間と、第2の曲げ剛性を有する第2の曲げ剛性区間と、第1の曲げ剛性区間と第2の曲げ剛性区間との間に配置された移行区間と、を含むように配置され、移行区間は、移行区間の曲げ剛性が第1の曲げ剛性から第2の曲げ剛性にまで移行する長さを含む。
【0013】
医療用器具は、以下の特徴、すなわち、(a)第1のモダリティが第1の層内に配置され、第2のモダリティが第2の層内に配置されていること、(b)第1のモダリティと第2のモダリティとが、同じ層内に配置されていること、(c)第1のモダリティが材料特性を含むこと、(d)材料特性が硬度を含むこと、(e)第2のモダリティが機械的特性を含むこと、(f)機械的特性が、編組の幾何形状及び編組のピック数のうちの少なくとも一方を含み、及び/又は(g)曲げ剛性を調節するための第3のモダリティを有すること、のうちの1つ以上を任意の組み合わせで有することができる。
【0014】
別の実施形態では、命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体が開示される。命令は、デバイスのプロセッサに、少なくとも、医療用器具を患者の管腔内に挿入させるように構成されている。医療用器具は、スコープであって、スコープの長さに沿って配置された複数の曲げ剛性区間を含み、曲げ剛性区間のそれぞれがほぼ均一な曲げ剛性を有する、スコープと、シースであって、シースの長さに沿って配置された複数の曲げ剛性区間を含み、内側通路を更に有し、スコープがシースの内側通路内に配置されている、シースと、を備える。命令はまた、デバイスのプロセッサに、少なくとも、スコープ及びシースのうちの少なくとも一方の位置をスコープ及びシースのうちの他方に対して調整することによって医療用器具の曲げ剛性プロファイルを調節することを行わせるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
開示される態様は、以下、添付の図面と併せて説明され、開示された態様を例示するが、限定するものではなく、同様の指定は同様の要素を示す。
図1】診断及び/又は治療用気管支鏡検査処置(複数可)のために配置されたカートベースのロボットシステムの一実施形態を示す。
図2図1のロボットシステムの更なる態様を描写する。
図3】尿管鏡検査のために配置された図1のロボットシステムの一実施形態を示す。
図4】血管処置のために配置された図1のロボットシステムの一実施形態を示す。
図5】気管支鏡検査処置のために配置されたテーブルベースのロボットシステムの一実施形態を示す。
図6図5のロボットシステムの代替的な図を提供する。
図7】ロボットアーム(複数可)を格納するように構成された例示的なシステムを示す。
図8】尿管鏡検査処置のために構成されたテーブルベースのロボットシステムの一実施形態を示す。
図9】腹腔鏡処置のために構成されたテーブルベースのロボットシステムの一実施形態を示す。
図10】ピッチ又は傾斜調整を備えた図5~9のテーブルベースのロボットシステムの一実施形態を示す。
図11図5~10のテーブルベースのロボットシステムのテーブルとカラムとの間のインターフェースの詳細図を提供する。
図12】例示的な器具ドライバを示す。
図13】対になった器具ドライバを備えた例示的な医療用器具を示す。
図14】駆動ユニットの軸が器具の細長シャフトの軸に平行である、器具ドライバ及び器具の代替的な設計を示す。
図15】例示的な一実施形態による、図13及び14の器具の位置などの、図1~10のロボットシステムの1つ以上の要素の位置を推定する位置特定システムを示すブロック図を描写する。
図16A】内視鏡として構成され、可変曲げ剛性プロファイルを有する医療用器具の一実施形態の側面図である。
図16B図16Aの医療用器具の例示的な可変曲げ剛性プロファイルを示す。
図16C】その例示的な多モダリティ構造を示す、図16Aの医療用器具の断面図を示す。
図16D図16Aの医療用器具について図16Bの例示的な可変曲げ剛性プロファイルを得るためにどのように多モダリティ構造の個々のモダリティを変化させることができるかの一例を概略的に示す。
図17】可変曲げ剛性プロファイルを有する医療用器具の内骨格の一実施形態の側面図を示す。
図18A】シースとして構成され、可変曲げ剛性プロファイルを有する医療用器具の一実施形態の側面図である。
図18B図18Aの医療用器具の例示的な可変曲げ剛性プロファイルを示す。
図18C】その例示的な多モダリティ構造を示す、図18Aの医療用器具の断面図を示す。
図18D図18Aの医療用器具について図18Bの代表的な可変曲げ剛性プロファイルを得るためにどのように多モダリティ構造の個々のモダリティを変化させることができるかの一例を概略的に示す。
図19A】スコープ及びシースを含み、スコープの遠位端がシースの遠位端と揃っている複合構造体の一実施形態の平面図を示す。
図19B図19Aのスコープ、シース、及び複合構造体の例示的な曲げ剛性プロファイルを示す。
図19C】スコープの遠位端がシースの遠位端を超えて延びている、図19Aの複合構造体の一実施形態の平面図を示す。
図19D図19Cのスコープ、シース、及び複合構造体の例示的な曲げ剛性プロファイルを示す。
図20A】本明細書に記載される原理に従って構成されたスコープ及びシースを含む複合構造体の第1の実施形態に関する実験データを示す。
図20B】本明細書に記載される原理に従って構成されたスコープ及びシースを含む複合構造体の第1の実施形態に関する実験データを示す。
図20C】本明細書に記載される原理に従って構成されたスコープ及びシースを含む複合構造体の第1の実施形態に関する実験データを示す。
図21A】本明細書に記載される原理に従って構成されたスコープ及びシースを含む複合構造体の第2の実施形態に関する実験データを示す。
図21B】本明細書に記載される原理に従って構成されたスコープ及びシースを含む複合構造体の第2の実施形態に関する実験データを示す。
図22】一実施形態による、患者の肺の気道内で誘導される医療用器具の例を示す。医療用器具は、可変曲げ剛性プロファイルを有することができる。
図23】患者の管腔内で医療用器具を誘導するための例示的な方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.概論
本開示の態様は、腹腔鏡検査などの低侵襲性、及び内視鏡検査などの非侵襲性の両方の処置を含む、様々な医療処置を行うことができるロボット制御可能な医療システムに統合され得る。内視鏡検査のうち、本システムは、気管支鏡検査、尿管鏡検査、胃腸検査などを行うことができる。
【0017】
幅広い処置を実行することに加えて、システムは、医師を支援するための改善された撮像及び誘導などの追加の利益を提供することができる。加えて、システムは、厄介なアーム運動及び位置を必要とせずに、人間工学的位置から処置を行う能力を医師に提供することができる。また更に、システムは、システムの器具のうちの1つ以上が単一のユーザによって制御され得るように、改善された使いやすさで処置を行う能力を医師に提供することができる。
【0018】
以下に、説明を目的として、図面と併せて様々な実施形態が説明される。開示された概念の多くの他の実施態様が可能であり、開示された実施態様で様々な利点が達成され得ることを理解されたい。見出しが、参照のために本明細書に含まれ、様々な区分の位置を特定するのを助ける。これらの見出しは、それに関して説明される概念の範囲を限定することを意図するものではない。そのような概念は、本明細書全体にわたって適用可能性を有し得る。
【0019】
A.ロボットシステム-カート
ロボット制御可能な医療システムは、特定の処置に応じて様々な方法で構成され得る。図1は、診断及び/又は治療用気管支鏡検査処置のために配置された、カートベースのロボット制御可能なシステム10の一実施形態を示す。気管支鏡検査の間、システム10は、気管支鏡検査のための処置特有の気管支鏡であり得る操縦可能な内視鏡13などの医療用器具を、診断及び/又は治療ツールを送達するための自然オリフィスアクセスポイント(すなわち、本実施例ではテーブル上に位置付けられた患者の口)に送達するための1つ以上のロボットアーム12を有するカート11を含み得る。図示のように、カート11は、アクセスポイントへのアクセスを提供するために、患者の上部胴体に近接して位置付けられ得る。同様に、ロボットアーム12は、アクセスポイントに対して気管支鏡を位置付けるために作動され得る。図1の配置はまた、胃腸管(gastro-intestinal、GI)処置を胃鏡、GI処置のための特殊な内視鏡を用いて実行するときに利用され得る。図2は、カートの例示的な一実施形態をより詳細に描写する。
【0020】
図1を引き続き参照すると、一旦カート11が適切に位置付けられると、ロボットアーム12は、操縦可能な内視鏡13をロボットで、手動で、又はそれらの組み合わせで患者内に挿入することができる。図示のように、操縦可能な内視鏡13は、内側リーダー部分及び外側シース部分などの少なくとも2つの入れ子式部品を含んでもよく、各部分は、器具ドライバのセット28から別個の器具ドライバに結合され、各器具ドライバは、個々のロボットアームの遠位端に結合されている。リーダー部分をシース部分と同軸上に整列させるのを容易にする器具ドライバ28のこの直線配置は、1つ以上のロボットアーム12を異なる角度及び/又は位置に操作することによって空間内に再配置され得る「仮想レール」29を作り出す。本明細書に記載される仮想レールは、破線を使用して図に示されており、したがって、破線は、システムの任意の物理的構造体を示さない。仮想レール29に沿った器具ドライバ28の並進は、外側シース部分に対して内側リーダー部分を入れ子にするか、又は内視鏡13を患者から前進若しくは後退させる。仮想レール29の角度は、臨床用途又は医師の好みに基づいて調整、並進、及び枢動されてもよい。例えば、気管支鏡検査では、示されるような仮想レール29の角度及び位置は、内視鏡13を患者の口内に曲げ入れることによる摩擦を最小限に抑えながら内視鏡13への医師のアクセスを提供する妥協を表す。
【0021】
内視鏡13は、標的目的地又は手術部位に到達するまで、ロボットシステムからの正確なコマンドを使用して挿入後に患者の気管及び肺の下方に指向され得る。患者の肺網を通したナビゲーションを高め、及び/又は所望の標的に到達するために、内視鏡13を操作して、内側リーダー部分を外側シース部分から入れ子状に延在させて、高められた関節運動及びより大きな曲げ半径を得てもよい。別個の器具ドライバ28の使用により、リーダー部分及びシース部分が互いに独立して駆動されることも可能になる。
【0022】
例えば、内視鏡13は、例えば、患者の肺内の病変又は小結節などの標的に生検針を送達するように指向され得る。針は、内視鏡の長さにわたる作業通路の下方に展開されて、病理医によって分析される組織試料を得ることができる。病理の結果に応じて、追加の生検のために追加のツールが内視鏡の作業通路の下方に展開されてもよい。小結節を悪性と特定した後、内視鏡13は、潜在的な癌組織を切除するためにツールを内視鏡的に送達してもよい。場合によっては、診断及び治療的処置は、別個の処置で送達される必要がある場合がある。それらの状況において、内視鏡13はまた、標的の小結節の位置を「マーク」するために基準を送達するように使用されてもよい。他の例では、診断及び治療的処置は、同じ処置中に送達されてもよい。
【0023】
システム10はまた、カート11に支持ケーブルを介して接続されて、カート11への制御、電子機器、流体工学、光学系、センサ、及び/又は電力のための支持を提供し得る移動可能なタワー30を含み得る。タワー30内にそのような機能を置くことにより、手術を行う医師及びそのスタッフにより容易に調整及び/又は再配置され得るより小さいフォームファクタのカート11が可能となる。追加的に、カート/テーブルと支持タワー30との間の機能の分割は、手術室の乱雑を低減し、臨床ワークフローの改善を促進する。カート11は患者に近接して配置されてよいが、タワー30は、処置中に邪魔にならないように遠隔位置に収容され得る。
【0024】
上述のロボットシステムの支持において、タワー30は、例えば、永続的な磁気記憶ドライブ、ソリッドステートドライブなどの非一時的コンピュータ可読記憶媒体内にコンピュータプログラム命令を記憶するコンピュータベースの制御システムの構成要素(複数可)を含み得る。これらの命令の実行は、実行がタワー30内で行われてもカート11内で行われても、そのシステム全体又はサブシステム(複数可)を制御することができる。例えば、コンピュータシステムのプロセッサによって実行されるときに、命令は、ロボットシステムの構成要素に、関連するキャリッジ及びアームマウントを作動させ、ロボットアームを作動させ、医療用器具を制御させることができる。例えば、制御信号の受信に応答して、ロボットアームの関節内のモータは、アームをある特定の姿勢に配置することができる。
【0025】
タワー30はまた、内視鏡13を通して展開され得るシステムに制御された灌注及び吸引能力をもたらすために、ポンプ、流量計、弁制御、及び/又は流体アクセスを含んでもよい。これらの構成要素はまた、タワー30のコンピュータシステムを使用して制御されてもよい。いくつかの実施形態では、灌注及び吸引能力は、別個のケーブル(複数可)を通して内視鏡13に直接送達されてもよい。
【0026】
タワー30は、フィルタリングされ保護された電力をカート11に提供するように設計された電圧及びサージ保護具を含んでもよく、それによって、カート11内の電力変圧器及び他の補助電力構成要素の配置を回避して、より小さくより移動可能なカート11をもたらす。
【0027】
タワー30はまた、ロボットシステム10全体に展開されたセンサのための支持機器を含んでもよい。例えば、タワー30は、ロボットシステム10を通して光センサ又はカメラから受信したデータを検出、受信、及び処理するためのオプトエレクトロニクス機器を含んでもよい。制御システムと組み合わせて、そのようなオプトエレクトロニクス機器は、タワー30内を含むシステム全体に展開された任意の数のコンソール内に表示するためのリアルタイム画像を生成するために使用され得る。同様に、タワー30はまた、展開された電磁(electromagnetic、EM)センサから受信した信号を受信及び処理するための電子サブシステムを含んでもよい。タワー30はまた、医療用器具内又は医療用器具上のEMセンサによる検出のためにEM場発生器を収容し配置するために使用されてもよい。
【0028】
タワー30はまた、システムの残りの部分で利用可能な他のコンソール、例えば、カートの上部に装着されたコンソールに追加して、コンソール31を含んでもよい。コンソール31は、医師操作者のためのユーザインターフェース及びタッチスクリーンなどの表示画面を含んでもよい。システム10内のコンソールは、一般に、ロボット制御、並びに内視鏡13のナビゲーション情報及び位置特定情報などの処置の術前及びリアルタイム情報の両方を提供するように設計されている。コンソール31が医師に利用可能な唯一のコンソールではないときに、それは、看護師などの第2の操作者によって使用されて、患者の健康状態又はバイタル及びシステムの動作を監視し、並びにナビゲーション及び位置特定情報などの処置固有のデータを提供してもよい。
【0029】
タワー30は、1つ以上のケーブル又は接続部(図示せず)を介してカート11及び内視鏡13に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、タワー30からの支持機能は、単一のケーブルを通してカート11に提供されて、手術室を簡略化し、きれいに片づけることができる。他の実施形態では、特定の機能は、別個のケーブル及び接続部で結合されてもよい。例えば、単一の電力ケーブルを通してカートに電力が供給されてもよいが、制御、光学、流体工学、及び/又はナビゲーションのための支持は、別個のケーブルを通して提供されてもよい。
【0030】
図2は、図1に示されるカートベースのロボット制御可能なシステムからのカートの一実施形態の詳細図を提供する。カート11は、概して、細長い支持構造体14(「カラム」と呼ばれることが多い)、カート基部15、及びカラム14の頂部にあるコンソール16を含む。カラム14は、1つ以上のロボットアーム12(図2には3つ示されている)の展開を支持するためのキャリッジ17(代替的に「アーム支持体」)などの1つ以上のキャリッジを含み得る。キャリッジ17は、患者に対してより良好に配置するために、ロボットアーム12の基部を調整するために、垂直軸に沿って回転する個別に構成可能なアームマウントを含んでもよい。キャリッジ17はまた、キャリッジ17がカラム14に沿って垂直方向に並進することを可能にするキャリッジインターフェース19を含む。
【0031】
キャリッジインターフェース19は、キャリッジ17の垂直方向の並進を案内するためにカラム14の両側に配置されたスロット20などのスロットを通してカラム14に接続されている。スロット20は、カート基部15に対して様々な垂直方向の高さでキャリッジを配置及び保持するための垂直方向の並進インターフェースを含む。キャリッジ17の垂直方向の並進により、カート11は、様々なテーブルの高さ、患者のサイズ、及び医師の好みを満たすようにロボットアーム12の届く範囲を調整することができる。同様に、キャリッジ17上の個別に構成可能なアームマウントにより、ロボットアーム12のロボットアーム基部21は様々な構成で角度付けされることができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、スロット20には、キャリッジ17が垂直方向に並進する際に、カラム14の内部チャンバ及び垂直方向の並進インターフェース内への汚れ及び流体の侵入を防止するために、スロット表面と同一平面及び平行であるスロットカバーが追加されてもよい。スロットカバーは、スロット20の垂直方向の頂部及び底部付近に配置されたばねスプールの対を通じて展開され得る。カバーは、キャリッジ17が垂直方向に上下に並進する際に、延在するように展開しそれらがコイル状から後退するまで、スプール内でコイル巻きにされている。スプールのばね荷重は、キャリッジ17がスプールに向かって並進するときにカバーをスプール内に後退させるための力を提供する一方で、キャリッジ17がスプールから離れるように並進するときに密封も維持する。カバーは、キャリッジ17が並進する際にカバーの適切な延在及び後退を確実にするために、例えば、キャリッジインターフェース19内のブラケットを使用してキャリッジ17に接続されてもよい。
【0033】
カラム14は、例えば、コンソール16からの入力などのユーザ入力に応答して生成された制御信号に応答してキャリッジ17を機械的に並進させるために垂直方向に整列した主ねじを使用するように設計された歯車及びモータなどの機構を内部的に含んでもよい。
【0034】
ロボットアーム12は、一般に一連の関節24によって接続されている一連の連結部23によって分離したロボットアーム基部21及びエンドエフェクタ22を含んでもよく、各関節は独立したアクチュエータを含み、各アクチュエータは、独立して制御可能なモータを含む。それぞれ独立して制御可能な関節は、ロボットアームに利用可能な独立した自由度を表す。アーム12の各々は7つの関節を有し、したがって、7つの自由度を提供する。多数の関節は、多数の自由度をもたらし、「冗長」自由度を可能にする。冗長自由度は、ロボットアーム12が、異なる連結位置及び関節角度を使用して空間内の特定の位置、向き、及び軌道で、それらのそれぞれのエンドエフェクタ22を配置することを可能にする。これにより、システムは、医師がアーム関節を患者から離れる臨床的に有利な位置へと移動させて、アーム衝突を回避しながら、よりアクセスしやすくすることを可能にする一方で、空間内の所望の点から医療用器具を配置及び指向させることを可能にする。
【0035】
カート基部15は、床の上のカラム14、キャリッジ17及びアーム12の重量の釣り合いをとる。したがって、カート基部15は、電子機器、モータ、電源、並びにカートの移動及び/又は固定化のいずれかを可能にする構成要素などの、より重い構成部品を収容する。例えば、カート基部15は、処置前にカートが部屋中を容易に移動することを可能にする、転動可能なホイール形状のキャスター25を含む。適切な位置に到達した後、キャスター25は、処置中にカート11を定位置に保持するために、ホイールロックを使用して固定化されてもよい。
【0036】
カラム14の垂直方向の端部に配置されたコンソール16は、ユーザ入力を受信するためのユーザインターフェース及び表示画面(又は、例えば、タッチスクリーン26などの二重目的デバイス)の両方を可能にして、術前データ及び術中データの両方を医師のユーザに提供する。タッチスクリーン26上の潜在的な術前データは、術前計画、術前コンピュータ断層撮影(computerized tomography、CT)スキャンから導出されたナビゲーション及びマッピングデータ、及び/又は術前患者インタビューからのメモを含み得る。ディスプレイ上の術中データは、ツールから提供される光学情報、センサからのセンサ及び座標情報、並びに呼吸、心拍数、及び/又は脈拍などのバイタル患者統計値を含み得る。コンソール16は、医師が、キャリッジ17の反対側でカラム14の側からコンソールにアクセスすることを可能にするように配置及び傾斜されてもよい。この位置から、医師は、コンソール16をカート11の背後から操作しながらコンソール16、ロボットアーム12及び患者を見ることができる。図示のように、コンソール16はまた、カート11の操作及び安定化を支援するハンドル27を含む。
【0037】
図3は、尿管鏡検査のために配置されたロボット制御可能なシステム10の一実施形態を示す。尿管鏡検査処置では、カート11は、患者の尿道及び尿管を横断するように設計された処置専用内視鏡である尿管鏡32を患者の下腹部領域に送達するように配置され得る。尿管鏡検査では、尿管鏡32が患者の尿道と直接整列して、その領域内の敏感な解剖学的構造に対する摩擦及び力を低減することが望ましいことがある。図示のように、カート11は、ロボットアーム12が患者の尿道への直接的な線形アクセスのために、尿管鏡32を配置することを可能にするためにテーブルの脚部に整列され得る。テーブルの脚部から、ロボットアーム12は、尿道を通して患者の下腹部内に直接、仮想レール33に沿って尿管鏡32を挿入することができる。
【0038】
尿道への挿入後、気管支鏡検査と同様の制御技法を使用して、尿管鏡32は、診断及び/又は治療用途のために膀胱、尿管、及び/又は腎臓にナビゲートされ得る。例えば、尿管鏡32は、尿管及び腎臓内に指向されて、尿管鏡32の作業通路の下方に展開されたレーザー又は超音波砕石デバイスを使用して、大きくなっている腎臓結石を破壊することができる。砕石術が完了した後、得られた結石片は、尿管鏡32の下方に展開されたバスケットを使用して除去することができる。
【0039】
図4は、血管処置のために同様に配置されたロボット制御可能なシステムの一実施形態を示す。血管処置において、システム10は、カート11が、操縦可能なカテーテルなどの医療用器具34を、患者の脚内の大腿動脈内のアクセスポイントに送達することができるように構成され得る。大腿動脈は、ナビゲーションのためのより大きな直径と、患者の心臓への迂回性及び蛇行性が比較的少ない経路と、の両方を呈し、これによりナビゲーションが単純化する。尿管鏡処置と同様に、カート11は、患者の脚及び下腹部に向かって配置されて、ロボットアーム12が患者の大腿/腰領域内の大腿動脈アクセスポイントへの直接的な線形アクセスで仮想レール35を提供することを可能にしてもよい。動脈内への挿入後、医療用器具34は、器具ドライバ28を並進させることによって指向され、挿入されてもよい。代替的には、カートは、例えば、肩及び手首付近の頚動脈及び腕動脈などの代替的な血管アクセスポイントに到達するために、患者の上腹部の周囲に配置されてもよい。
【0040】
B.ロボットシステム-テーブル
ロボット制御可能な医療システムの実施形態は、患者のテーブルを組み込んでもよい。テーブルの組み込みは、カートを除去することによって手術室内の資本設備の量を低減し、患者へのより大きなアクセスを可能にする。図5は、気管支鏡検査処置のために配置されたそのようなロボット制御可能なシステムの一実施形態を示す。システム36は、床の上にプラットフォーム38(「テーブル」又は「ベッド」として図示)を支持するための支持構造体又はカラム37を含む。カートベースのシステムと同様に、システム36のロボットアーム39のエンドエフェクタは、器具ドライバ42の線状配列から形成された仮想レール41を通して、又はそれに沿って、図5の気管支鏡40などの細長い医療用器具を操作するように設計された器具ドライバ42を含む。実際には、X線透視撮像を提供するためのCアームは、放射器及び検出器をテーブル38の周囲に置くことによって、患者の上部腹部領域の上方に配置されてもよい。
【0041】
図6は、説明を目的として患者及び医療用器具なしのシステム36の代替図を提供する。図示のように、カラム37は、1つ以上のロボットアーム39がベースとなり得るシステム36内でリング形状として図示される1つ以上のキャリッジ43を含み得る。キャリッジ43は、カラム37の長さにわたる垂直方向のカラムインターフェース44に沿って並進して、ロボットアーム39が患者に到達するように配置され得る異なるバンテージポイントを提供し得る。キャリッジ(複数可)43は、カラム37内に配置された機械的モータを使用してカラム37の周りを回転して、ロボットアーム39が、例えば患者の両側などのテーブル38の複数の側面へのアクセスを有することを可能することができる。複数のキャリッジを有する実施形態では、キャリッジはカラム上に個別に配置されてもよく、他のキャリッジとは独立して並進及び/又は回転してもよい。キャリッジ43はカラム37を取り囲む必要はなく、又は更には円形である必要はないが、図示されるようなリング形状は、構造的バランスを維持しながらカラム37の周りでキャリッジ43の回転を容易にする。キャリッジ43の回転及び並進により、システムは、内視鏡及び腹腔鏡などの医療用器具を患者の異なるアクセスポイントに整列させることが可能になる。
【0042】
アーム39は、ロボットアーム39に追加の構成可能性を提供するために個別に回転及び/又は入れ子式に延在し得る一連の関節を含む一組のアームマウント45を通じてキャリッジに装着されてもよい。加えて、アームマウント45は、キャリッジ43が適切に回転されるとき、アームマウント45がテーブル38の同じ側(図6に示すように)、テーブル38の両側(図9に示すように)、又はテーブル38の隣接する側(図示せず)のいずれかに配置され得るように、キャリッジ43に配置され得る。
【0043】
カラム37は、テーブル38の支持及びキャリッジの垂直方向の並進のための経路を構造的に提供する。内部的に、カラム37には、キャリッジの垂直方向の並進を案内するための主ねじ、及び主ねじに基づくキャリッジの並進を機械化するためのモータが備えられ得る。カラム37はまた、キャリッジ43及びその上に装着されたロボットアーム39に電力及び制御信号を伝達し得る。
【0044】
テーブル基部46は、図2に示すカート11のカート基部15と同様の機能を果たし、テーブル/ベッド38、カラム37、キャリッジ43及びロボットアーム39の釣り合いをとるためにより重い構成要素を収容する。テーブル基部46はまた、処置中に安定性をもたらすために剛性キャスターを組み込んでもよい。テーブル基部46の底部から展開されるキャスターは、基部46の両側で反対方向に延在し、システム36を移動させる必要があるときに後退させてもよい。
【0045】
引き続き図6によれば、システム36はまた、テーブルとタワーとの間でシステム36の機能を分割して、テーブルのフォームファクタ及びバルクを低減するタワー(図示せず)を含んでもよい。先に開示された実施形態と同様に、タワーは、処理、計算、及び制御能力、電力、流体光学、並びに/又は光学及びセンサ処理などの様々な支持機能をテーブルに提供することができる。タワーはまた、医師のアクセスを改善し、手術室をきれいに片づけるために、患者から離れて配置されるように移動可能であってもよい。加えて、タワー内に構成要素を置くことにより、ロボットアームの潜在的な収納のために、テーブル基部内により多くの保管空間を可能にする。タワーはまた、キーボード及び/又はペンダントなどのユーザ入力のためのユーザインターフェース、並びにリアルタイム撮像、ナビゲーション、及び追跡情報などの術前及び術中情報のための表示画面(又はタッチスクリーン)の両方を提供するコンソールを含んでもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、テーブル基部は、使用されていないときにロボットアームを収容し格納してもよい。図7は、テーブルベースのシステムの一実施形態におけるロボットアームを収容するシステム47を示す。システム47では、キャリッジ48は基部49に垂直方向に並進されて、ロボットアーム50、アームマウント51及びキャリッジ48を基部49内に収容してもよい。基部カバー52は、キャリッジ48、アームマウント51及びアーム50をカラム53の周りに展開させるように開放し、使用されていないときにそれらを保護するために収容するよう閉鎖されるように、並進及び後退してもよい。基部カバー52は、閉鎖したときに汚れ及び流体の侵入を防止するために、その開口の縁部に沿ってメンブレン54で封止されてもよい。
【0047】
図8は、尿管鏡検査処置のために構成されたロボット制御可能なテーブルベースのシステムの一実施形態を示す。尿管鏡検査では、テーブル38は、患者をカラム37及びテーブル基部46から偏角に配置するためのスイベル部分55を含んでもよい。スイベル部分55は、スイベル部分55の底部をカラム37から離すように配置するために、旋回点(例えば、患者の頭部の下に位置)の周りで回転又は旋回してもよい。例えば、スイベル部分55の旋回により、Cアーム(図示せず)は、テーブル38の下のカラム(図示せず)と空間を競合することなく、患者の下部腹部の上方に配置されることができる。カラム37の周りでキャリッジ35(図示せず)を回転させることにより、ロボットアーム39は、尿道に到達するように、仮想レール57に沿って患者の鼠径部領域内に直接尿管鏡56を挿入し得る。尿管鏡検査では、あぶみ58はまた、処置中に患者の脚の位置を支持し、患者の鼠径部領域への明確なアクセスを可能にするために、テーブル38のスイベル部分55に固定され得る。
【0048】
腹腔鏡処置では、患者の腹壁内の小さな切開部(複数可)を通して、低侵襲性器具(1つ以上の切開部のサイズに適応するように形状が細長い)を患者の解剖学的構造に挿入してもよい。患者の腹腔の膨張後、腹腔鏡と呼ばれることが多い器具は、把持、切断、アブレーション、縫合などの外科的又は医療タスクを行うように指向されてもよい。図9は、腹腔鏡処置のために構成されたロボット制御可能なテーブルベースのシステムの一実施形態を示す。図9に示されるように、システム36のキャリッジ43は回転し、垂直方向に調整されて、腹腔鏡59が患者の両側の最小切開部を通過して患者の腹腔に到達するようにアームマウント45を使用して配置され得るように、ロボットアーム39の対をテーブル38の両側に配置してもよい。
【0049】
腹腔鏡処置に対応するために、ロボット制御可能なテーブルシステムはまた、プラットフォームを所望の角度に傾斜させてもよい。図10は、ピッチ又は傾斜調整を有するロボット制御可能な医療システムの一実施形態を示す。図10に示すように、システム36は、テーブル38の傾斜に適応して、テーブルの一方側の部分を他方側の部分よりも床から遠い距離に配置することができる。加えて、アームマウント45は、アーム39がテーブル38と同じ平面関係を維持するように、傾斜に一致するように回転してもよい。急角度に適応するために、カラム37はまた、テーブル38が床に接触するか、又は基部46と衝突するのを防ぐために、カラム37の垂直方向の延在を可能にする入れ子部分60を含んでもよい。
【0050】
図11は、テーブル38とカラム37との間のインターフェースの詳細図を提供する。ピッチ回転機構61は、複数の自由度で、カラム37に対するテーブル38のピッチ角を変更するように構成されることができる。ピッチ回転機構61は、カラム-テーブルインターフェースでの直交軸1、2の配置によって可能にされ得、各軸は、電気ピッチ角コマンドに応答して別個のモータ3、4によって作動される。一方のねじ5に沿った回転は、一方の軸1における傾斜調整を可能にし、他方のねじ6に沿った回転は、他方の軸2に沿った傾斜調整を可能にする。
【0051】
例えば、ピッチ調整は、トレンデレンブルグ位置にテーブルを配置、すなわち下腹部手術のために患者の下腹部よりも床からより高い位置に患者の下腹部を配置させようとするときに、特に有用である。トレンデレンブルグ位置は、患者の内臓を重力によって患者の上腹部に向かってスライドさせて、低侵襲性ツールが入るように腹腔を空にし、腹腔鏡前立腺切除術などの下腹部の外科的又は医療処置を行う。
【0052】
C.器具ドライバ及びインターフェース
システムのロボットアームのエンドエフェクタは、(i)医療用器具を作動させるための電気機械的手段を組み込む器具ドライバ(代替的には、「器具駆動機構」又は「器具デバイスマニピュレータ」と呼ばれる)と、(ii)モータなどの任意の電気機械的構成要素を欠いていてもよい除去可能な又は取り外し可能な医療用器具と、を含む。この二分法は、医療処置に使用される医療用器具を滅菌する必要性、それらの複雑な機械的アセンブリ及び敏感な電子機器により高価な資本設備を十分に滅菌することができないことが動因であり得る。したがって、医療用器具は、医師又は医師のスタッフによる個々の滅菌又は廃棄のために、器具ドライバ(したがってそのシステム)から取り外し、除去、及び交換されるように設計され得る。対照的に、器具ドライバは交換又は滅菌される必要がなく、保護のために掛け布がされてよい。
【0053】
図12は、例示的な器具ドライバを示す。ロボットアームの遠位端に配置される器具ドライバ62は、駆動シャフト64を介して医療用器具に制御トルクを提供するために平行軸を伴って配置された1つ以上の駆動ユニット63を含む。各駆動ユニット63は、器具と相互作用するための個々の駆動シャフト64と、モータシャフトの回転を所望のトルクに変換するためのギヤヘッド65と、駆動トルクを生成するためのモータ66と、モータシャフトの速度を測定し、制御回路にフィードバックを提供するエンコーダ67と、制御信号を受信し、駆動ユニットを作動させるための制御回路68と、を含む。各駆動ユニット63は独立して制御及び電動化され、器具ドライバ62は、複数(図12に示すように4つ)の独立した駆動出力を医療用器具に提供してもよい。動作中、制御回路68は、制御信号を受信し、モータ66にモータ信号を送信し、エンコーダ67によって測定されたモータ速度を所望の速度と比較し、モータ信号を変調して所望のトルクを生成する。
【0054】
無菌環境を必要とする処置のために、ロボットシステムは、器具ドライバと医療用器具との間に位置する無菌ドレープに接続された無菌アダプタなどの駆動インターフェースを組み込んでもよい。無菌アダプタの主な目的は、器具ドライバの駆動シャフトから器具の駆動入力に角度運動を伝達する一方で、物理的分離を維持し、したがって、駆動シャフトと駆動入力部との間で無菌性を維持することである。したがって、例示的な無菌アダプタは、器具ドライバの駆動シャフトと嵌合されることを意図した一連の回転入力部及び出力部と器具に対する駆動入力部で構成され得る。無菌アダプタに接続される無菌ドレープは、透明又は半透明プラスチックなどの薄い可撓性材料で構成され、器具ドライバ、ロボットアーム、及び(カートベースのシステムにおける)カート又は(テーブルベースのシステムにおける)テーブルなどの資本設備を覆うように設計される。ドレープの使用は、滅菌を必要としない領域(すなわち、非滅菌野)に依然として位置している間に、資本設備が患者に近接して配置することを可能にするであろう。滅菌ドレープの他方の側では、医療用器具は、滅菌(すなわち、滅菌野)を必要とする領域において患者とインターフェースすることができる。
【0055】
D.医療用器具
図13は、対になった器具ドライバを備えた例示的な医療用器具を示す。ロボットシステムと共に使用するように設計された他の器具と同様に、医療用器具70は、細長シャフト71(又は細長い本体)及び器具基部72を含む。医師による手動相互作用のために意図された設計により「器具ハンドル」とも呼ばれる器具基部72は、概して、ロボットアーム76の遠位端で器具ドライバ75上の駆動インターフェースを通って延在する駆動出力部74と嵌合するように設計された、回転可能な駆動入力部73、例えば、レセプタクル、プーリ、又はスプールを含み得る。物理的に接続、ラッチ、かつ/又は結合されるときに、器具基部72の嵌合された駆動入力部73は、器具ドライバ75の駆動出力部74と回転軸線を共有してもよく、駆動出力部74から駆動入力部73へのトルクの伝達を可能する。いくつかの実施形態では、駆動出力部74は、駆動入力部73上のレセプタクルと嵌合するように設計されたスプラインを含んでもよい。
【0056】
細長シャフト71は、例えば内視鏡検査におけるような解剖学的開口部若しくは管腔、又は腹腔鏡検査におけるような低侵襲性切開部のいずれかを通して送達されるように設計されている。細長シャフト66は、可撓性(例えば、内視鏡と同様の特性を有する)若しくは剛性(例えば、腹腔鏡と同様の特性を有する)、又は可撓性部分及び剛性部分の両方のカスタマイズされた組み合わせを含むこと、のいずれかであってよい。腹腔鏡検査のために設計されるとき、剛性の細長シャフトの遠位端は、回転軸を有するクレビスから形成された接合された手首と、例えば、駆動入力部が器具ドライバ75の駆動出力部74から受け取るトルクに応答して回転する際に、腱からの力に基づいて作動され得る把持具又ははさみである手術用ツール又は医療用器具と、を含むエンドエフェクタに接続され得る。内視鏡検査のために設計されるとき、可撓性の細長シャフトの遠位端は、器具ドライバ75の駆動出力部74から受け取るトルクに基づいて関節運動及び屈曲され得る操縦可能又は制御可能な屈曲部を含み得る。
【0057】
器具ドライバ75からのトルクは、シャフト71内の腱を使用して細長シャフト71の下方に伝達される。プルワイヤなどのこれらの個々の腱は、器具ハンドル72内の個々の駆動入力部73に個別に固定されてもよい。ハンドル72から、腱は、細長シャフト71内の1つ以上のプルルーメン(pull lumen)の下方に指向され、細長シャフト71の遠位部分に固設される。腹腔鏡検査では、これらの腱は、手首、把持具、又ははさみなどの遠位に装着されたエンドエフェクタに結合されてもよい。このような構成の下で、駆動入力部73に及ぼされるトルクは、腱に張力を伝達し、それによってエンドエフェクタを何らかの方法で作動させる。腹腔鏡検査では、腱は、関節を軸周りに回転させることができ、それによってエンドエフェクタをいずれかの方向に移動させる。あるいは、腱は、細長シャフト71の遠位端で把持具の1つ以上のジョーに接続されてもよく、そこで腱からの張力によって把持具が閉鎖される。
【0058】
内視鏡検査では、腱は、接着剤、制御リング、又は他の機械的固定を介して、細長シャフト71に沿って(例えば、遠位端に)配置された屈曲又は関節運動部に結合されてもよい。屈曲部の遠位端に固定的に取り付けられるときに、駆動入力部73に及ぼされるトルクは、腱の下方に伝達されて、より軟質の屈曲部に(関節運動可能部又は領域と呼ばれることがある)を屈曲又は関節運動させる。非屈曲部に沿って、個々の腱を内視鏡シャフトの壁に沿って(又は内側に)指向する個々のプルルーメンを螺旋状又は渦巻状にして、プルワイヤの張力からもたらされる半径方向の力の釣り合いをとることが有利であり得る。それらの間の螺旋及び/又は間隔の角度は、特定の目的のために変更又は操作されてもよく、よりきつい螺旋は負荷力下でより小さいシャフト圧縮を呈する一方で、より少ない量の螺旋は負荷力下でより大きなシャフト圧縮をもたらすが、屈曲制限も呈する。対照的に、プルルーメンは、細長シャフト71の長手方向軸に平行に指向されてもよく、所望の屈曲又は関節運動可能部における制御された関節運動を可能にする。
【0059】
内視鏡検査では、細長シャフト71は、ロボット処置を支援する多数の構成要素を収容する。シャフトは、手術ツール(又は医療用器具)の展開、灌注、及び/又はシャフト71の遠位端における手術領域への吸引のための作業通路で構成され得る。シャフト71はまた、光学カメラを含む場合がある遠位先端部で光学アセンブリに/光学アセンブリから信号を伝達するために、ワイヤ及び/又は光ファイバを収容してもよい。シャフト71はまた、発光ダイオードなどの近位に位置する光源からシャフトの遠位端に光を搬送するための光ファイバを収容してもよい。
【0060】
器具70の遠位端では、遠位先端部はまた、診断及び/又は治療、潅注、及び吸引のためのツールを手術部位に送達するための作業通路の開口を含んでもよい。遠位先端部はまた、内部解剖学的空間の画像を捕捉するために、ファイバスコープ又はデジタルカメラなどのカメラのためのポートを含んでもよい。関連して、遠位先端部はまた、カメラを使用するときに解剖学的空間を照明するための光源のためのポートを含んでもよい。
【0061】
図13の例では、駆動シャフト軸、したがって駆動入力軸は、細長シャフトの軸に直交する。しかしながら、この配置は、細長シャフト71のロール能力を複雑にする。駆動入力部73を静止させながら、細長シャフト71をその軸に沿ってロールさせることにより、駆動入力部73から延出し、細長シャフト71内のプルルーメンに入る際に、腱の望ましくない絡まりをもたらす。そのような腱の得られたもつれは、内視鏡処置中の可撓性の細長シャフトの移動を予測することを意図した任意の制御アルゴリズムを破壊し得る。
【0062】
図14は、駆動ユニットの軸が器具の細長シャフトの軸に平行である、器具ドライバ及び器具の代替的な設計を示す。図示されるように、円形の器具ドライバ80は、ロボットアーム82の端部において平行に整列された駆動出力部81を備えた4つの駆動ユニットを含む。駆動ユニット及びそれらのそれぞれの駆動出力部81は、アセンブリ83内の駆動ユニットのうちの1つによって駆動される器具ドライバ80の回転アセンブリ83内に収容されている。回転駆動ユニットによってもたらされるトルクに応答して、回転アセンブリ83は、回転アセンブリ83を器具ドライバの非回転部分84に接続する円形ベアリングに沿って回転する。電力及び制御信号は、電気接点を通して器具ドライバ80の非回転部分84から回転アセンブリ83に伝達され得、ブラシスリップリング接続(図示せず)による回転を通して維持され得る。他の実施形態では、回転アセンブリ83は、非回転可能部分84に一体化され、したがって他の駆動ユニットと平行ではない、別個の駆動ユニットに応答することができる。回転機構83は、器具ドライバ80が、単一ユニットとして駆動ユニット及びそれらのそれぞれの駆動出力部81に器具ドライバ軸85周りを回転させることを可能にする。
【0063】
先に開示した実施形態と同様に、器具86は、細長シャフト部分88と、器具ドライバ80内の駆動出力部81を受けるように構成された複数の駆動入力部89(レセプタクル、プーリ、及びスプールなど)を含む器具基部87(説明目的のために透明な外部スキンで示される)と、を含み得る。以前に開示されている実施形態とは異なり、器具シャフト88は、図13の設計のように直交するのではなく、駆動入力部89の軸にほぼ平行な軸を有する器具基部87の中心から延在する。
【0064】
器具ドライバ80の回転アセンブリ83に結合されるときに、器具基部87及び器具シャフト88を含む医療用器具86は、器具ドライバ軸85を中心に回転アセンブリ83と組み合わせされて回転する。器具シャフト88は器具基部87の中心に配置されているため、器具シャフト88は、取り付けられたときに器具ドライバ軸85と同軸である。したがって、回転アセンブリ83の回転により、器具シャフト88は、それ自体の長手方向軸を中心に回転する。更に、器具基部87が器具シャフト88と共に回転すると、器具基部87内の駆動入力部89に接続された任意の腱は、回転中に絡まらない。したがって、駆動出力部81、駆動入力部89及び器具シャフト88の軸の平行性は、任意の制御腱を絡めることなくシャフト回転を可能にする。
【0065】
E.ナビゲーション及び制御
従来の内視鏡検査は、(例えば、Cアームを通して送達され得るような)蛍光透視法の使用、及び操作者の医師に腔内誘導を提供するための他の形態の放射線ベースの撮像モダリティの使用を伴うことがある。対照的に、本開示によって企図されるロボットシステムは、放射線への医師の曝露を低減し、手術室内の機器の量を低減するための非放射線ベースのナビゲーション及び位置特定手段を提供することができる。本明細書で使用するとき、用語「位置特定」は、基準座標系内の物体の位置を判定及び/又は監視することを指し得る。術前マッピング、コンピュータビジョン、リアルタイムEM追跡、及びロボットコマンドデータなどの技術は、放射線を含まない手術環境を達成するために、個別に又は組み合わせて使用されてもよい。放射線ベースの撮像モダリティが依然として使用される場合、術前マッピング、コンピュータビジョン、リアルタイムEM追跡、及びロボットコマンドデータは、放射線ベースの撮像モダリティによってのみ取得される情報を改善するために、個別に又は組み合わせて使用されてもよい。
【0066】
図15は、例示的な一実施形態による、器具の位置などの、ロボットシステムの1つ以上の要素の位置を推定する位置特定システム90を示すブロック図である。位置特定システム90は、1つ以上の命令を実行するように構成されている1つ以上のコンピュータデバイスのセットであってもよい。コンピュータデバイスは、プロセッサ(又は複数のプロセッサ)及び上述の1つ以上の構成要素内のコンピュータ可読メモリによって具現化され得る。例として、限定するものではないが、コンピュータデバイスは、図1に示されるタワー30内にあってもよく、図1~4に示されるカートであってもよく、図5~10に示されるベッドなどであってもよい。
【0067】
図15に示すように、位置特定システム90は、入力データ91~94を処理して医療用器具の遠位先端部のための位置データ96を生成する位置特定モジュール95を含んでもよい。位置データ96は、基準系に対する器具の遠位端の位置及び/又は配向を表すデータ又は論理であり得る。基準系は、患者の解剖学的構造、又はEM場発生器(EM場発生器について以下の説明を参照)などの既知の物体に対する基準系とすることができる。
【0068】
ここで、様々な入力データ91~94についてより詳細に説明する。術前マッピングは、低用量CTスキャンの収集物を使用することにより達成され得る。術前CTスキャンは、例えば、患者の内部解剖学的構造の切欠き図の「スライス」として可視化される3次元画像に再構成される。まとめて分析されるときに、患者の肺網などの患者の解剖学的構造の解剖学的空腔、空間、及び構造のための画像ベースのモデルが生成され得る。中心線幾何学などの技法を判定し、CT画像から概算して、モデルデータ91と呼ばれる(術前CTスキャンのみを用いて生成される場合には「術前モデルデータ」とも呼ばれる)患者の解剖学的構造の3次元体積を生成することができる。中心線幾何学の使用は、本明細書に参照によりその全容を援用する米国特許出願第14/523,760号に記載されている。ネットワークトポロジカルモデルはまた、CT画像から導出されることもでき、気管支鏡検査に特に適している。
【0069】
いくつかの実施形態では、器具はカメラを装備して、ビジョンデータ92を提供してもよい。位置特定モジュール95は、ビジョンデータを処理して、1つ以上のビジョンベースの位置追跡を可能にすることができる。例えば、術前モデルデータは、医療用器具のコンピュータビジョンベースの追跡を可能にするために、ビジョンデータ92と共に使用され得る(例えば、内視鏡又は器具が内視鏡の作業通路を通って前進する)。例えば、術前モデルデータ91を使用して、ロボットシステムは、内視鏡の予想される移動経路に基づいてモデルから予測される内視鏡画像のライブラリを生成することができ、各画像はモデル内の位置にリンクされている。術中には、このライブラリは、カメラ(例えば、内視鏡の遠位端のカメラ)でキャプチャされたリアルタイム画像を画像ライブラリのものと比較して、位置特定を支援するために、ロボットシステムによって参照され得る。
【0070】
他のコンピュータビジョンベースの追跡技法は、カメラ、したがって内視鏡の動きを判定するための特徴追跡を使用する。位置特定モジュール95のいくつかの特徴は、解剖学的管腔に対応する術前モデルデータ91内の円形幾何形状を特定し、それらの幾何学的形状の変化を追跡して、どの解剖学的管腔が選択されたか、並びにカメラの相対的な回転及び/又は並進運動を判定することができる。トポロジカルマップの使用は、ビジョンベースのアルゴリズム又は技法を更に向上させ得る。
【0071】
別のコンピュータビジョンベースの技法である光学フローは、カメラの動きを推測するために、ビジョンデータ92内のビデオシーケンス内の画像ピクセルの変位及び並進を分析することができる。光学フロー技術の例としては、運動検出、オブジェクト分割計算、輝度、運動補償符号化、立体視差測定などを挙げることができる。複数の反復にわたって複数のフレームを比較することにより、カメラ(したがって内視鏡)の運動及び位置を決定することができる。
【0072】
位置特定モジュール95は、リアルタイムEM追跡を使用して、術前モデルによって表される患者の解剖学的構造に位置合わせされ得るグローバル座標系内で内視鏡のリアルタイム位置を生成し得る。EM追跡では、医療用器具(例えば、内視鏡ツール)内の1つ以上の位置及び配向に埋め込まれた1つ以上のセンサコイルを含むEMセンサ(又はトラッカー)は、既知の位置に配置された1つ以上の静的EM場発生器によって生成されるEM場の変動を測定する。EMセンサによって検出された位置情報は、EMデータ93として記憶される。EM場発生器(又は送信機)は、埋め込まれたセンサが検出し得る低強度磁場を生成するために、患者に近接して置くことができる。磁場はEMセンサのセンサコイル内に小さな電流を誘導し、これを分析して、EMセンサとEM場発生器との間の距離及び角度を判定することができる。これらの距離及び配向は、患者の解剖学的構造の術前モデル内の位置と座標系内の単一の位置を位置合わせする幾何学的変換を判定するために、患者の解剖学的構造(例えば、術前モデル)に術中「登録」され得る。一旦登録されると、医療用器具の1つ以上の位置(例えば、内視鏡の遠位先端)に埋め込まれたEMトラッカーは、患者の解剖学的構造を通る医療用器具の進行のリアルタイム表示を提供することができる。
【0073】
ロボットコマンド及び運動学データ94も、ロボットシステムのための位置特定データ96を提供するために、位置特定モジュール95によって使用され得る。関節運動コマンドから生じるデバイスピッチ及びヨーは、術前較正中に判定され得る。術中、これらの較正測定値は、既知の挿入深度情報と組み合わせて使用されて、器具の位置を推定することができる。あるいは、これらの計算は、ネットワーク内の医療用器具の位置を推定するために、EM、ビジョン、及び/又はトポロジカルモデリングと組み合わせて分析され得る。
【0074】
図15が示すように、ある数の他の入力データが位置特定モジュール95によって使用され得る。例えば、図15には示されていないが、形状検知ファイバを利用する器具は、位置特定モジュール95が器具の位置及び形状を判定するために使用することができる形状データを提供することができる。
【0075】
位置特定モジュール95は、入力データ91~94を組み合わせて使用し得る。場合によっては、そのような組み合わせは、位置特定モジュール95が入力データ91~94の各々から判定された位置に信頼重みを割り当てる確率的アプローチを使用し得る。したがって、EMデータが信頼できない可能性がある場合(EM干渉が存在する場合など)、EMデータ93によって判定された位置の信頼性を低下させ得、位置特定モジュール95は、ビジョンデータ92並びに/又はロボットコマンド及び運動学データ94により重く依存し得る。
【0076】
上述のように、本明細書で論じられるロボットシステムは、上記の技術のうちの1つ以上の組み合わせを組み込むように設計され得る。タワー、ベッド、及び/又はカートに基づいて、ロボットシステムのコンピュータベースの制御システムは、例えば、永続的な磁気記憶ドライブ、ソリッドステートドライブなどの非一時的コンピュータ可読記憶媒体内に、コンピュータプログラム命令を記憶してもよく、コンピュータプログラム命令は、実行されると、システムに、センサデータ及びユーザコマンドを受信及び分析させ、システム全体の制御信号を生成させ、グローバル座標系内の器具の位置、解剖学的マップなどのナビゲーション及び位置特定データを表示させる。
【0077】
2.可変曲げ剛性プロファイルを有する医療用器具。
本節は、可変曲げ剛性プロファイルを有する医療用器具(本出願では「可変曲げ剛性医療用器具」、又は場合により単に「医療用器具」とも称する)に関する。いくつかの実施形態では、可変曲げ剛性プロファイルを有する医療用器具は、図1~15を参照して上記に述べたロボット制御可能な医療システムと共に使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、上記の医療用器具はいずれも(例えば、内視鏡13、尿管鏡32、医療用器具34、気管支鏡40、尿管鏡56、医療用器具70など)、本明細書に記載されるような可変曲げ剛性プロファイルを有することができる。ロボットでの実施に加えて、可変曲げ剛性プロファイルを有する医療用器具は、手動で使用(すなわち、非ロボット使用)するために構成することもできる。
【0078】
可変曲げ剛性プロファイルを有する医療用器具は、患者の解剖学的構造内の蛇行した経路を通じて誘導するうえで有用であり得る。いくつかの実施形態では、可変曲げ剛性プロファイルを有する医療用器具は、患者の肺気道を通じて誘導する際に特に有用であり得る。肺気道は、蛇行した経路であり得る。いくつかの医療処置において、医療用器具を肺気道を通じて誘導して、腫瘍などの異常な増殖を検出、診断、及び/又は治療することができる。肺気道内に送られるスコープは、間違った経路に入っていくことが往々にしてあり、正しい経路に入れるのに手間取ることがある。本明細書に記載される医療用器具は、その可変曲げ剛性プロファイルにより正しい経路を通じて誘導することが可能であり、有利である。
【0079】
図22は、患者の肺内で誘導される医療用器具100の例を示している。器具は、例えば、スコープ、シース、又はシースの内側通路内に配置されたスコープを含む複合型の器具であり得る。図に示される例では、器具100は、肺内の気道を通じて、肺の上葉178内の標的部位182に向かって誘導されている。図に示されるように、気道は蛇行した経路を有している。器具100が肺に挿入される際、器具の遠位端を関節運動させることにより器具を特定の経路内に誘導することができる。しかしながら、このようなナビゲーションは、肺の蛇行した経路のために困難を伴い得る。
【0080】
本出願は、肺気道を含むがそれに限定されない、患者体内の蛇行した経路に通すことができる可変曲げ剛性を有する医療用器具について記載する。いくつかの実施形態では、可変曲げ剛性を有する医療用器具は、細長シャフトを有することができる。他の実施形態では、可変曲げ剛性を有する医療用器具は、カテーテル又はシースの内側通路内に配置された細長シャフトであり得る。細長シャフトは、リーダー又はスコープを含むことができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、可変曲げ剛性医療用器具は、異なる曲げ剛性特性を有する複数の区分を含む、医療処置中に患者体内に挿入されるように構成された細長シャフトを有することができる。最初の例として、可変曲げ剛性医療用器具は、近位区分の曲げ剛性よりも低い曲げ剛性を有する(例えば、より容易に撓曲又は屈曲する、及び/又は撓曲若しくは屈曲させるのに必要な力が小さい)遠位区分を有することができる。この実施例では、遠位区分が医療用器具の操縦又はナビゲーションを容易にするためにより容易に屈曲可能であるのに対して、近位区分は患者の管腔を通じて医療用器具を容易に押し込めるような剛性を有している。
【0082】
引き続きこの実施例について述べると、遠位区分は、その長さに沿ってほぼ一定の曲げ剛性を有する曲げ剛性区間を含んでもよい。近位区分もまた、その長さに沿ってほぼ一定の曲げ剛性を有する曲げ剛性区間を含むことができる。遠位区分のほぼ一定の曲げ剛性は、近位区分の曲げ剛性よりも低くてもよい(ただし、いくつかの実施形態ではその逆であってもよい)。
【0083】
この最初の例の可変曲げ剛性医療用器具はまた、遠位区分の曲げ剛性区間と近位区分の曲げ剛性区間との間に移行区間を有することができる。移行区間は、例えば、遠位区分の曲げ剛性区間のほぼ一定の曲げ剛性から近位区分の曲げ剛性区間のほぼ一定の曲げ剛性まで曲げ剛性が徐々に変化する長さを有することができる。いくつかの実施形態では、移行部分の曲げ剛性は、概ね直線的な勾配、割合、又は傾度で変化するが、これはすべての実施形態でそうである必要はない。いくつかの実施形態では、移行区間の勾配はほぼ一定である。
【0084】
したがって、最初の例によって示されるように、可変曲げ剛性器具は、それぞれがその長さに沿ってほぼ一定の曲げ剛性を有する複数の曲げ剛性区間と、それぞれが隣接する対の曲げ剛性区間の間に配置され、その対の曲げ剛性区間の間で曲げ剛性が徐々に移行する1つ以上の移行区間と、を含むことができる。
【0085】
可変曲げ剛性医療用器具の細長シャフトの長さに沿って曲げ剛性をプロットすると、曲げ剛性プロファイルが生成される。グラフでは、各曲げ剛性区間(その長さに沿ってほぼ一定の曲げ剛性を有する)は、曲げ剛性プロファイル内の平坦部として示されており、各移行区間は、隣接する平坦部間の勾配又は傾斜(概ね増加するか又は概ね減少するかのいずれか)として示されている。例えば、以下に詳述する図16Bを参照されたい。
【0086】
医療用器具の細長シャフトの構成の材料及び方法(本明細書でしばしばモダリティ又は特性と呼ぶ)は、その長さに沿った各点の曲げ剛性を決定する。例えば、細長シャフトをより剛性の材料で製造することにより、曲げ剛性はより高くなる。
【0087】
いくつかの実施形態では、可変曲げ剛性を有する医療用器具を作り出すために、構成の材料及び/又は方法は、細長シャフトの長さに沿って変化させることができる。例えば、上記の実施形態では、より剛性の材料を近位区分に使用することができ、より可撓性の材料を遠位区分に使用することができる。しかしながら、長さに沿って1つのモダリティ(例えば、構成の材料又は方法)を変化させただけでは、上述のような曲げ剛性区間及び移行区間を有する曲げプロファイルが得られないおそれがある。例えば、細長シャフトの唯一の変化が上記に述べた材料の変化である場合(剛性の近位区分及びより可撓性の遠位区分)、曲げ剛性プロファイルは恐らく、垂直段差によって接続された2つの平坦部のみで構成されることになる。これは、曲げ剛性が徐々に移行する長さを有する移行区間を含まなくてもよい。これは、材料間の移行において応力集中点又は破断点を形成し得るものであり、不利である。
【0088】
このため、以下により詳細に記載するように、可変曲げ剛性医療用器具は、各移行区間内の細長シャフトの1つを超えるモダリティにおいて、交互に変化する構造を有してもよい。これは、モダリティ変化に伴う応力を細長シャフトの長さに沿って分配し、上記に述べたようなより緩やかな(例えば、勾配又は傾斜の)移行区間を作り出すことができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、可変曲げ剛性を有する医療用器具は、内視鏡などのスコープ(リーダーとも呼ばれる)として構成することができる。スコープは、例えば、図19A及び19Cに示されるように、シースの作業通路すなわち内側通路を通じて挿入されるように構成することができる。すなわち、スコープは、シースの内側通路内で伸縮させることができる。いくつかの実施形態では、シースも可変曲げ剛性を有する医療用器具として構成することができる。スコープ及びシースは、共に複合構造体を形成することができる。いくつかの実施形態では、複合構造体は、スコープ単独又はシース単独の曲げ剛性プロファイルとは異なる曲げ剛性プロファイルを有する。スコープがシースの内側通路内に配置された状態で、複合構造体は、スコープ及びシースの個々の曲げプロファイルの組み合わせとしての曲げプロファイルを有することができる。当業者であれば、「複合構造体」なる用語は、スコープがシースの内側通路内に配置されているときには、シースから遠位に延在し得るスコープの部分、又はスコープから遠位に延在し得るシースの部分を含む、スコープ及びシースのすべての部分を包含する点が理解されよう。
【0090】
更に、以下により詳細に記載されるように、シースに対してスコープを移動させることにより(又はその逆)、複合構造体の曲げ剛性プロファイルを調節(すなわち、変化又は変更)することが可能である。例えば、スコープ及びシースはどちらも、移行区間によって分離された複数の異なる曲げ剛性区間を有することができる。例えば、スコープの遠位先端がシースの遠位先端と揃えられると、複数の異なる曲げ剛性区間及び移行区間は、第1の形で整列して、複合構造体の第1の複合曲げ剛性プロファイルを作り出す。例えば、スコープの遠位先端がシースの遠位先端を越えて延在するようにスコープがシースを通じて更に挿入されると、複数の異なる曲げ剛性区間及び移行区間は、第2の形で整列して、第1の複合曲げ剛性プロファイルとは異なり得る第2の複合曲げ剛性プロファイルを作り出す。
【0091】
いくつかの実施形態では、第1の複合曲げ剛性プロファイルは、第1の数の曲げ剛性区間を含むことができ、第2の複合曲げ剛性プロファイルは、第2の数の曲げ剛性区間を含むことができる。したがって、シースに対してスコープを移動させる(又はその逆)ことによって、複合構造体の曲げ剛性区間の数を変えることが可能である。この例では、複合構造体の2つの曲げ剛性プロファイルについて触れているが、(例えば、スコープの遠位端とシースの遠位端との間の相対距離を変化させることによって)スコープをシースに対して配置することができる多くの形が存在し、これらのそれぞれがその複合構造体の固有の曲げ剛性プロファイルを作り出すことができる点が理解されよう。
【0092】
いくつかの実施形態では、複合構造体は、複合構造体の曲げ剛性がスコープに対するシースの位置に応じて変化するような曲げ剛性プロファイルを有してもよい。曲げ剛性が変化するのに従って、曲げ剛性は、スコープの長さに沿ってカバー範囲又はカバー領域をとることができる。例えば、曲げ剛性の異なる領域を以下に、例えば図16Dに示す。
【0093】
シースの内側通路内に配置されたスコープを有する複合構造体を含むいくつかの実施形態では、スコープ及びシースは、異なる長さを有することができる。例えば、スコープ及びシースは、長さが同一の広がりを持っていなくてもよい。いくつかの実施形態では、シースはスコープよりも短い。
【0094】
複合構造体(例えば、組み合わせられたスコープ及びシース)の曲げ剛性プロファイルを調節又は変化できることは、様々な理由で有利であり得る。例えば、処置中に医師(又は場合によっては、ロボット制御可能な医療システム)は、患者の解剖学的構造の特定の部分のナビゲーションを容易にするために、複合構造体の曲げ剛性プロファイルを調整することができる。これは、例えば、シースに対してスコープを移動させることによって行うことができる。
【0095】
より具体的な例として、気管支鏡検査では、医師は、気管支及び細気管支などの患者の肺内の気道を検査することができる。例えば、図22に示されるように、この処置では、医療用器具100(例えば、スコープ及びシース)を患者の口内に挿入し、患者の気管に通して、後の診断及び/又は治療を行うために特定された組織部位(例えば、標的182)に向かって患者の肺の気道内に通すことができる。肺気道は、誘導することが特に困難な蛇行した経路である。二次気管支、三次気管支、細気管支、及び肺の上部葉178を誘導することは特に困難であり得る。多くの場合、肺のこれらの部分で誘導することは、医療用器具が急ターンする必要がある。医師は、器具の特定の曲げ剛性プロファイルが、特定のターン又は操作にあまり適していないと感じる場合がある。例えば、特定の曲げ剛性プロファイルでは、医療用器具が誤った経路に入っていくように傾斜する場合があり、かつ/又は正しい経路になかなか入りづらい場合がある。そのような状況では、医師は、曲げ剛性プロファイルを調節するためにスコープをシースに対して動かすことによって(例えば、スコープがシースから延び出るようにシースを通して更にスコープを挿入すること、スコープとシースとをそれらの遠位端同士が揃うように配置すること、又はスコープがシースを越えて延びるようにシース内のスコープを後退させることによって)、医療用器具の曲げ剛性プロファイルを調節又は変更することができる。医師は、医療用器具が所望の操作により適した曲げ剛性プロファイルを有するようにスコープ及びシースを配置してから操作を行うことができる。
【0096】
次に、可変曲げ剛性を有する医療用器具のこれらの特徴及び利点、並びにその他の特徴及び利点を、図に示されるいくつかの実施形態を参照してより詳細に説明する。ここに示される実施形態はあくまで例として示されるものであり、限定を意図したものではない。
【0097】
A.可変曲げ剛性プロファイルを有する例示的な医療用器具。
図16A~16Dは、例示的な可変曲げ剛性プロファイル102を有する医療用器具100の一実施形態に関する。図に示した実施形態では、医療用器具100は、スコープ(例えば、内視鏡又は気管支鏡)などのカテーテルとして構成されている。しかしながら、この例示された例を参照して説明する原理及び特徴は、他の種類の医療用器具、例えば、他の種類のスコープ(例えば、尿管鏡、気管支鏡など)、シースなどにも適用することができる。図16Aは、医療用器具100の側面図である。図16Bは、医療用器具100の例示的な可変曲げ剛性プロファイル102を示す。図16Cは、その例示的な多モダリティ構造を示す、医療用器具100の断面図を示す。図16Dは、医療用器具100の可変曲げ剛性プロファイル102を得るためにどのように多モダリティ構造の個々のモダリティを変化させることができるかの一例を概略的に示す。
【0098】
図16Aに示されるように、医療用器具100は、器具基部104と細長シャフト106とを有している。ハンドルと呼ぶ場合もある器具基部104は、例えば、図13に示すような器具駆動機構(器具駆動機構75に取り付けられるように構成された例示的な器具基部72を示す)に取り付けられるように構成することができる。器具駆動機構は、医療用器具100をロボット制御することができるように、器具基部104と電子的及び/又は機械的に連結することができる。図に示される実施形態はロボット制御用に構成されているが、実施形態によっては、器具基部104は、医療用器具100の手動による操作及び制御を可能とするように構成された器具ハンドルに置き換えることもできる。
【0099】
細長シャフト106は、医療処置中に患者に挿入されるように構成することができる。例えば、細長シャフト106は、例えば内視鏡検査におけるような解剖学的開口部若しくは管腔、又は例えば腹腔鏡検査におけるような低侵襲性切開部のいずれかを通じて送達されるように設計することができる。気管支鏡検査の場合、細長シャフト106は、イントロデューサーを通して患者の口内に挿入され、気管に沿って肺内へと挿入することができる。患者の体内を誘導するために、細長シャフト106の少なくとも一部分は可撓性であってよい。いくつかの実施形態では、細長シャフト106は、(例えば、図16Cに示すような)1本以上のプルワイヤ108を含むことができる。1本以上のプルワイヤ108は、細長シャフト106の1つ以上の部分を屈曲させて、その形状又は姿勢を制御するように作動させることができる。例えば、処置中、1本以上のプルワイヤ108を作動させて、細長シャフト106を患者の解剖学的構造を通じて標的部位に案内することができる。気管支鏡検査の場合、これは、分岐した気道の複雑な網目構造を通じて細長シャフトを案内することを伴い得る。いくつかの実施形態では、細長シャフト106は、患者体内の細長シャフト106の位置特定及び/又はナビゲーションを支援する1つ以上のセンサを備えることができる(例えば、図15を参照して上記に述べたもの)。これに加えて、又はこれに代えて、いくつかの実施形態では、細長シャフト106は、細長シャフト106の形状を決定するための1本以上の光ファイバを含むことができる。
【0100】
細長シャフト106は近位端110と遠位端112との間に延在してよい。近位端110は器具基部104から延び、器具基部に取り付けることができる。遠位端112は、医療用器具100の細長シャフト106の先端部であり得る。例えば、遠位端112は患者に導入される最初の点であり得、医療処置の際、遠位端112が患者体内の標的部位に向かって前進するように医療用器具100を案内又は駆動することができる。いくつかの実施形態では、遠位端112は、標的部位を可視化及び/又は治療するための様々な機構を有する。例えば、遠位端112は、カメラ、光源、エンドエフェクタ(例えば、把持具、カッター、バスケット装置など)、及び/又は更なる医療ツール又は器具を進めることができる作業通路への開口部を有することができる。作業通路を通じて送達することができる医療ツール又は器具としては、これらに限定されるものではないが、ガイドワイヤ、診断及び生検ツール(例えば、超音波装置、ワイヤ、ブラシ、及び他のディザリング及び非ディザリングツール)、並びに治療効果を送達するためのツール(例えば、小線源療法ツール)が挙げられる。いくつかの実施形態では、カメラは、他のツール又は器具と異なる通路を通じて送達してもよいが、他の実施形態では、他の医療ツール又は器具と同じ作業通路を通じてカメラを送達してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、カメラは、スコープ内の作業通路を通じて送達し、その後、抜去することにより、異常増殖を検出及び治療するための診断及び/又は治療ツール(ディザリング又は非ディザリングツールなど)のための空間を空けることができる。図16Cに示される特定の機構について、以下でより詳細に説明する。
【0101】
細長シャフト106は、近位端110と遠位端112との間で測定される長さLを有している。長さLは、医療用器具100が使用される医療処置又は様々な医療処置を容易にするように選択することができる。長さLを選択するための関連因子としては、標的部位までの経路長、患者の解剖学的構造、患者のサイズ、操縦性及び制御性、動作環境条件(例えば、手術室内の配置又はロボットアーム)などを挙げることができる。いくつかの実施形態では、例えば、長さLは、約700~1200mm、約800~1100mm、又は約900~1000mmであってよい。1つの例では、長さLは約930mmである。
【0102】
図に示される実施形態では、細長シャフト106は、4つの異なる区分、すなわち、屈曲部(能動的屈曲部とも呼ばれる)114、受動的屈曲部116、内部シャフト部118(追従部分とも呼ばれる)、及び外部シャフト部120を有している。各区分は、細長シャフト106の長さLに沿って遠位端112と近位端110との間に連続的に配置することができる。図には4つの区分が示されているが、実施形態によっては、医療用器具はこれよりも多いか又は少ない区分を有してもよい。例えば、医療用器具は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又はそれ以上の区分を含むことができる。
【0103】
各区分は、医療処置を容易にし、かつ/又は医療用器具100の操縦性及び制御性を向上させるために、異なる可撓性又は曲げ剛性をもたらすように構成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、より遠位に位置する区分(例えば、能動的屈曲部114及び受動的屈曲部116)は、細長シャフト106の操作性を促進するためにより高い可撓性を有し、より近位に位置する区分(例えば、内部シャフト部118及び外部シャフト部120)は、細長シャフト106の押し込み性を与える一方で座屈の可能性を防止又は低減するようにより高い剛性を有している。更に、いくつかの実施形態では、能動的屈曲部114は受動的屈曲部116よりも高い可撓性を有してよく、外部シャフト部120は内部シャフト部118よりも高い剛性を有してよい。他の構成も可能である。
【0104】
いくつかの実施形態では、能動的屈曲部114は、医療用器具100の遠位端に操縦性をもたらす。いくつかの実施形態では、受動的屈曲部116は、例えば気管支鏡検査の場合に、肺の末梢又は上葉へと有利に辿るのに充分な可撓性を与える。いくつかの実施形態では、内部シャフト部118は、イントロデューサー及び管屈曲部を通じて挿入されるのに充分な可撓性を有するが、細長シャフト106に支持を与えるのに充分な押し込み性/剛性を有する。いくつかの実施形態では、外部シャフト部120は、処置中に患者の外部に留まる細長シャフト106の部分であり(例えば、イントロデューサーに入らない)、細長シャフト106の遠位端112に支持を与え、座屈を防止するのに充分な剛性を有する。
【0105】
いくつかの実施形態では、能動的屈曲部114は、約50~80mm、又は約65mmとすることができる。いくつかの実施形態では、能動的屈曲部114は、スコープの関節運動半径を画定する。いくつかの実施形態では、受動的屈曲部116は、約150mm~190mm、又は約170mmとすることができる。いくつかの実施形態では、内部シャフト部118は、約540mm~600mm、又は約572mmとすることができる。いくつかの実施形態では、外部シャフト部120は、約90mm~150mm、又は約123mmとすることができる。有利な点として、4つの異なる区間の異なる長さは、細長シャフト106を、被されるシースの部分と望ましく整列させることにより、以下に述べるように異なる長さに沿って所望の可変剛性を有する複合構造体を形成するように設計されている。いくつかの実施形態では、これらの区分のうちの1つ、それ以上、又はすべてについて、他の長さも可能である。
【0106】
いくつかの実施形態では、これらの異なる機能を実現するために、各区分は、異なる曲げ剛性特性又は性質を有する。上記の段落では、各区分を可撓性及び剛性について説明した。これらの特性のそれぞれは曲げ剛性に関連している点が理解されよう。例えば、曲げ剛性は可撓性に概ね反比例する。すなわち、曲げ剛性が増加するにつれて可撓性は低下する。曲げ剛性はまた、剛性に概ね比例する。すなわち、曲げ剛性が増加するにつれて剛性も増加する。
【0107】
図16Bは、医療用器具100の細長シャフト106の例示的な曲げ剛性プロファイル102を示す。曲げ剛性プロファイル102は、遠位端112と近位端110との間の長さLの関数として、又はその長さLに沿った細長シャフト106の曲げ剛性を示している。図に示される例では、x軸は、遠位端112と近位端110との間の細長シャフト106の長さLを表し、y軸は、ニュートン(N)で測定される、細長シャフト106の最大力曲げ剛性の尺度である。いくつかの例では、最大力曲げ剛性を計算するために、カンチレバー曲げ試験が行われる。カンチレバー曲げ試験では、力試験機(例えば、アンビル)を使用して、細長シャフト106を一定の距離まで押し下げる(折り曲げる)。細長シャフト106を一定の距離まで折り曲げるのに必要な力は、最大力曲げ剛性として測定されるが、厳密に言えば、測定される力は、細長シャフト106からの反力である。一般に、最大力曲げ剛性が低いほど、スコープの可撓性はより高くなる。
【0108】
図16Bの例示的な曲げ剛性プロファイル102によって示されるように、細長シャフト106の曲げ剛性は、その長さに沿って変動又は変化する。したがって、医療用器具100は、可変曲げ剛性プロファイル102を有する。
【0109】
図示の実施形態では、例示的な曲げ剛性プロファイル102に見られるように、医療用器具100の細長シャフト106は、曲げ剛性がほぼ一定である複数の曲げ剛性区間(曲げ剛性プロファイル102内の平坦部として表される)及び複数の移行区間(曲げ剛性プロファイル102内の傾斜部として表される)を含む。図に示されるように、医療用器具100は、ほぼ一定の曲げ剛性の4つの曲げ剛性区間及び3つの移行区間を含み、各移行区間は、隣接する一対の曲げ剛性区間の間に位置している。図に示される例では、医療用器具100は、(遠位方向から近位方向に配置された)ほぼ一定の曲げ剛性の第1の曲げ剛性区間122、第1の移行区間124、ほぼ一定の曲げ剛性の第2の曲げ剛性区間126、第2の移行区間128、ほぼ一定の曲げ剛性の第3の曲げ剛性区間130、第3の移行区間132、及びほぼ一定の曲げ剛性の第4の曲げ剛性区間134を有している。
【0110】
いくつかの実施形態では、各区分は、ある曲げ剛性の区間として見ることができ、それにより、細長シャフト106は、4つの曲げ剛性の区間を含み、各区間は、最も遠位の屈曲部114から最も近位の区分120にかけて剛性が増加している。いくつかの実施形態では、第1の曲げ剛性区間122は、約1N~5Nの曲げ剛性を有し、第2の曲げ剛性区間126は、約5N~10Nの曲げ剛性を有し、第3の曲げ剛性区間130は、約15N~25Nの曲げ剛性を有し、第4の曲げ剛性区間134は、30Nよりも高い曲げ剛性を有する。いくつかの実施形態では、曲げ剛性区間の1つ、それ以上、又はすべては、記載された値以外(例えば、より高い、又はより低い)の曲げ剛性を有することができる。
【0111】
4つの曲げ剛性区間及び3つの移行区間が図示及び説明されているが、他の実施形態は、他の数の曲げ剛性区間及び移行区間を含んでもよい。例えば、医療用器具は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の移行区間によって分離された、ほぼ一定の曲げ剛性の2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上の曲げ剛性区間を含むことができる。
【0112】
本明細書で使用するところの「ほぼ一定の曲げ剛性を有する曲げ剛性区間」(単に「曲げ剛性区間」と呼ぶ場合もある)なる用語は、曲げ剛性がほぼ一定に保たれる細長シャフト106の長さを指す。いくつかの例では、この長さは、約10mm~200mmであり得る。いくつかの実施形態では、この長さは、約10mm、25mm、50mm、75mm、100mm、150mm、200mm、300mm、400mm、500mm、又はそれ以上である。いくつかの例では、「ほぼ一定」とは、その長さにわたる曲げ剛性の変化が、その長さにわたる細長シャフト106の平均曲げ剛性値の約2.5%、5%、又は10%未満であることを意味する。いくつかの例では、「ほぼ一定」とは、その長さにわたる曲げ剛性の変化が、0.1N、0.25N、0.5N、1N、5N、又は10Nなどの閾値力未満であることを意味する。
【0113】
本明細書で使用するところの「移行区間」とは、曲げ剛性が変化するか、又は1つの値から別の値へと移行する細長シャフト106の長さを指す。いくつかの例では、この長さは、約10mm~200mmであり得る。いくつかの実施形態では、この長さは、10mm~200mm、又は約10mm、25mm、50mm、75mm、100mm、150mm、200mm、300mm、400mm、500mm、又はそれ以上である。いくつかの実施形態では、移行区間は、ほぼ一定の曲げ剛性の一対の曲げ剛性区間の間に配置され、移行区間は、曲げ剛性が、移行区間の一方の側の曲げ剛性区間のほぼ一定の曲げ剛性から、移行区間の他方の側の曲げ剛性区間のほぼ一定の曲げ剛性に移行する長さを含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、移行区間内で、曲げ剛性は、移行区間の勾配がほぼ一定となるように、概ね又はほぼ一定若しくは直線的な割合で変化し得る。このことに関連して、いくつかの例では、「ほぼ一定」とは、移行区間のある長さにわたる勾配の変化が、移行区間のその長さにわたる細長シャフト106の平均の勾配の値の約2.5%、5%、又は10%未満であることを意味する。いくつかの実施形態では、曲げ剛性が概ね又はほぼ一定若しくは直線的な割合で変化する移行区間を有することが好ましい場合がある。しかしながら、移行区間は、すべての実施形態で直線的である必要はない。いくつかの実施形態では、移行区間は湾曲した傾斜形状を有する。
【0115】
例示される実施形態では、第1の曲げ剛性区間122は最小のほぼ一定の曲げ剛性を有し、第2の曲げ剛性区間126は、第1の曲げ剛性区間122の曲げ剛性よりも高いほぼ一定の曲げ剛性を有し、第3の曲げ剛性区間130は、第2の曲げ剛性区間126の曲げ剛性よりも高いほぼ一定の曲げ剛性を有し、第4の曲げ剛性区間134は、第3の曲げ剛性区間130の曲げ剛性よりも高いほぼ一定の曲げ剛性を有する。したがって、医療用器具100の曲げ剛性は、遠位端112から近位端110へと概ね増加することができる。これは、すべての実施形態でそうである必要はない。例えば、曲げ剛性は、増加し、減少し、その後、再び増加してもよいし、又は概して減少してもよい。
【0116】
更に、図に示される実施形態では、移行区間124、128、132は、概ね又はほぼ一定の勾配を有している。各移行区間の勾配は異なってもよい点が理解されよう。例えば、第1の移行区間124の勾配は第2の移行区間128の勾配よりも小さくてもよく、第2の移行区間128の勾配は第3の移行区間132の勾配よりも小さくてもよい。これもやはり、すべての実施形態においてそうである必要はない。
【0117】
参照のために、図16Bはまた、1つの例において、曲げ剛性プロファイル102がどのように能動的屈曲部114、受動的屈曲部116、内部シャフト部118、及び外部シャフト部120と整列しているかを示している。例示されている実施形態では、各区分は、ほぼ一定の曲げ剛性の1つの曲げ剛性区間を含んでいる。例えば、第1の曲げ剛性区間122は能動的屈曲部114内に位置し、第2の曲げ剛性区間126は受動的屈曲部116内に位置し、第3の曲げ剛性区間130は内部シャフト部118内に位置し、第4の曲げ剛性区間134は外部シャフト部120内に位置する。細長シャフト106は、その区分内に位置する曲げ剛性区間のほぼ一定の曲げ剛性が、その区分がその指定された機能を実行することを容易に又は可能とするように構成することができる。
【0118】
移行区間124、128、132は、細長シャフト106の曲げ剛性が、より低い値からより高い値まで(又はその逆)徐々に変化し得る長さを提供する。曲げ剛性が徐々に(急激にではなく)変化する領域を有することは、細長シャフト106内の応力集中点及び破損点を回避するうえで役立ち得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、各区分は、ほぼ一定の曲げ剛性の少なくとも1つの曲げ剛性区間を含む。いくつかの実施形態では、各区分は、ほぼ一定の曲げ剛性の曲げ剛性区間をちょうど1つだけ含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の区分は、ほぼ一定の曲げ剛性の1つを超える曲げ剛性区間を含む。
【0120】
図に示される実施形態では、移行区間124、128、132は、隣接する区分と重なり合うように配置されている。例えば、第1の移行区間124は、能動的屈曲部114と受動的屈曲部116との間に配置され、これらと部分的に重なり合っている。第2の移行区間128は、受動的屈曲部116と内部シャフト部118との間に配置され、これらと部分的に重なり合っている。第3の移行区間132は、内部シャフト部118と外部シャフト部120との間に配置され、これらと部分的に重なり合っている。移行区間の他の配置及び位置も可能である。例えば、移行区間は、例えば、その区分の遠位端に、又はその区分の近位端に、又は近位端と遠位端との間の区分の長さに沿って、完全に1つの区分内に配置されてもよい。
【0121】
上述したように、医療用器具100の細長シャフト106の構成の材料及び方法(本明細書ではモダリティ又は特性と呼ばれる)は、曲げ剛性を決定するため、可変曲げ剛性を有する(例えば、図16に示されるような曲げ剛性プロファイルを有する)医療用器具100を製造するには、構成の材料及び/又は方法を細長シャフト106の長さに沿って変化させることができる。更に、上記に述べた緩やかな移行区間を得るには、細長シャフト106は、交互に変化する複数のモダリティを有するように製造することができる。次に、可変曲げ剛性プロファイルを生成するための例示的なモダリティ及びモダリティの配置について、図16C及び16Dを参照しながら説明する。
【0122】
図16Cは、例えば図16Cに示されるような可変曲げ剛性プロファイル102を得るように構成された多モダリティ構造を有する医療用器具100の細長シャフト106の断面図である。医療用器具100の多モダリティ構造は、複数の層で構成され得る。例えば、図に示されるように、医療用器具100は内側層144と外側層146とを備える。内側層144及び外側層146は、医療用器具100の機能の一部を可能とする他の様々な要素を包囲することができる。例えば、図16A~16Dに示されるように、医療用器具100は、スコープ(例えば、内視鏡、気管支鏡、尿管鏡、血管鏡など)として構成されている。スコープは、例えば図に示されるように、カメラ136、1つ以上の光源138、位置センサ140(例えば、EMコイル)、及び作業通路142を含むことができる。
【0123】
細長シャフト106の多モダリティ構造は、複数のモダリティ又は特性を有することができる。この関連で使用される場合、モダリティ又は特性とは、細長シャフト106の長さに沿った異なる領域において変化させることで可変曲げ剛性プロファイルを生成することができる材料又は製造方法を指す。次に、図16Cの細長シャフト106の内側層144及び外側層146を参照しながら実施例を説明するが、当業者であれば、他のモダリティ及び特性も可変曲げ剛性を有する医療用器具の構成に用いることができる点が理解されよう。
【0124】
例えば、細長シャフト106の各区分の機械的特性は、図16Cの2層構造を用いて調節することができる。この実施形態では、内側層144は、内骨格150を構成している。以下に記載され、また図17に示すように、内骨格150は、ニチノール又はステンレス鋼などの金属から作製されたレーザー切断ハイポチューブとして構成することができる。材料は、細長シャフト106内のどこに配置されるかに応じて異なり得る。いくつかの実施形態では、外側層146は、編組ジャケットとすることができる。編組ジャケットは、プルワイヤ管腔及びプルワイヤ108を含む編組152と、熱可塑性材料154と、を含むことができ、これらを融合させて複合構造体とすることができる。以下に述べるように、編組ジャケットの様々な特性を細長シャフトの異なる領域で調節することで異なる曲げ剛性を作り出すことができる。いくつかの実施形態では、内側層144と外側層146とを反転させることができる(例えば、内骨格150を外側層の中に配置することができる)。
【0125】
図16Cに示されるように、内側層144と外側層146とは、ライナー148によって分離することができる。ライナー148は、製造時のリフロー操作において編組ジャケットからの熱可塑性材料154が内骨格150に流入しないように構成することができ、使用時に内骨格150が編組ジャケットの下で自由に動くことができるように構成することができる。
【0126】
内骨格150は、可変曲げ剛性プロファイルを形成するために変化させることができる1つのモダリティとなり得る。例えば、内骨格150の各要素をその長さに沿って変化させることで、細長シャフト106の異なる領域において異なる曲げ剛性を作り出すことができる。いくつかの実施形態では、内骨格150は、細長シャフト106のフープ強度及びねじれ抵抗を提供する。
【0127】
内骨格150は、いくつかの実施形態では、ニチノール又はステンレス鋼のいずれかで形成することができるが、他の材料を使用することもできる。いくつかの実施形態では、内骨格150は一部をニチノールで、別の部分をステンレス鋼で形成することができる。いくつかの実施形態では、細長シャフト106の能動的屈曲部114でニチノール曲げ設計を採用し、それにより急な屈曲部を通過させることができる。能動的屈曲部114にニチノール曲げ設計156を含む例示的な内骨格150を図17に示す。ニチノール曲げ設計156は、プルワイヤ荷重がかかる際の収縮に抵抗するための高い軸方向剛性と、細長シャフト106を関節屈曲させるのに要する力を低減するための低い曲げ剛性と、をもたらすように設計された様々な切込みパターンを含むことができる。いくつかの実施形態では、ニチノール材料のこの区分における使用は、この区分が使用中に直面する高い歪み及び急な屈曲のために有利となり得る。ニチノールの超弾性は、この区分が大きく関節運動させられた場合にも真っ直ぐな形態に跳ね返り、また、多くの関節運動の後であっても疲労に抵抗することを可能とする。
【0128】
いくつかの実施形態では、内骨格150の残りの部分(例えば、受動的屈曲部116、内部シャフト部118、及び外部シャフト部120)は、例えば、ステンレス鋼で形成することができる。特定の区分(例えば、受動的屈曲部116、内側シャフト部118)では、ステンレス鋼を異なるピッチでレーザー切断することができるが、ピッチが小さいほど曲げ剛性は低くなる(かつ可撓性が大きくなる)。この1つの例が、例えば、図17の内骨格150の区分158、160によって示されている。いくつかの実施形態では、レーザー切断された区分は低い軸方向剛性を示す場合があり、これらの区分に剛性の高い編組ジャケットを使用して曲げ剛性を増大させることができる。外部シャフト部120では、内骨格150は、実施形態によっては図17の区分162によって示されるように、剛性のハイポチューブに移行してもよい。これは、医療用器具100のこの領域に最大軸方向及び曲げ剛性を与え、スコープのこの部分はしばしばシースの外部で支持されないことから、細長シャフト106が座屈することを防止することができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、細長シャフト106は、全方向又は均一な曲げ剛性を周方向に有利に与える内骨格150を有することができる。「全方向」なる用語は、細長シャフト106が、複数の方向に同じ曲げ剛性を有し得ることを示す。いくつかの実施形態では、曲げ剛性は、任意の曲げ方向について2~10%以内で変化する。全方向性の又は均一な曲げ剛性の利点は、細長シャフト106の性能が細長シャフトの向きによらないことである。いくつかの実施形態では、細長シャフト106は、双方向及び一方向の操縦の両方を有することができる。
【0130】
内骨格150は、異なる区分に異なる曲げ剛性を作り出すために、細長シャフトの長さに沿って変化又は調節することができる様々なモダリティを与えることができる。これらのモダリティとしては、例えば、材料、曲げ設計、レーザー切断、ピッチなどを挙げることができる。これらのモダリティを内骨格150の長さに沿って変化させることにより、異なる領域又は区分に異なる曲げ剛性を与えることができる。
【0131】
外側層146もまた、異なる区分に異なる曲げ剛性を作り出すために、細長シャフト106の長さに沿って変化又は調節することができる様々なモダリティを有することができる。前述したように、外側層146は、編組ジャケットを含むことができる。いくつかの実施形態では、編組ジャケットは、屈曲部の関節運動に使用されるプルワイヤ108を収容し、医療用器具に機械的構造及び安定性を与え、外部環境からスコープの内部を封止するように設計することができる。
【0132】
編組ジャケットは、ジャケット材料154及び編組152を含むことができ、それらを通じてプルワイヤ108が延在する。いくつかの実施形態では、編組ジャケットは、医療用器具100に機械的構造及び安定性を与えることができる。編組ジャケットは、細長シャフト106の特性に作用するように調節することができる多くのパラメータを有し得る。例えば、編組ジャケットのジャケット材料154は、特定のデュロメータ硬さ又は硬度を有し得る。異なるデュロメータ硬さの異なる材料を異なる区分に使用することで異なる曲げ剛性を作り出すことができる。更に、編組ジャケットの編組152は、特定の幾何形状又は編組角度を有するように製造することができる。幾何形状及び編組角度を細長シャフト106の長さに沿って変化させることで異なる曲げ剛性を作り出すことができる。
【0133】
図に示される実施形態では、編組ジャケットの機械的特性は、以下のモダリティ、すなわち、ジャケット材料154のデュロメータ硬さ、編組152の幾何形状、及び編組ピック数(すなわち、編組角度)のうちの1つ以上を調整することによって調節することができる。一般に、デュロメータ硬さが低い材料ほど低い曲げ剛性を与え、デュロメータ硬さが高い材料ほど高い曲げ剛性を与える。編組ジャケットに使用できる材料の例としては、25~72Dの範囲のデュロメータ硬さで提供されるポリエーテルブロックアミド(例えば、Pebax)、及びPebaxよりも高い剛性を有し得るNylon12が挙げられる。プラスチックなどの他の材料を使用してもよい。編組形状に関しては、編組層に使用される編組の形状及び数を調整することが可能である。当業者には、多くの異なる編組形態が可能である点が理解されよう。最後に、編組ピック数(編組角度)も調節することができる。いくつかの実施形態では、編組ジャケットは、やはり調整することができる更なるモダリティを有し得る。
【0134】
上記に述べたモダリティは、あくまで例として示したものである。記載されたモダリティの代わりに、又はそれに加えて、他のモダリティを医療用器具100の可変曲げ剛性プロファイルを形成するうえで用いてもよい。
【0135】
図16Dは、一実施形態に基づいて医療用器具100の多層構造において異なるモダリティを調節することにより、図16Bに示される曲げ剛性プロファイル102を形成する方法を概略的に示す。参照のため、医療用器具100の側面図が図16Dに示されており、能動的屈曲部114、受動的屈曲部116、内部シャフト部118、及び外部シャフト部120、並びにほぼ一定の曲げ剛性の第1の曲げ剛性区間122、第1の移行区間124、ほぼ一定の曲げ剛性の第2の曲げ剛性区間126、第2の移行区間128、ほぼ一定の曲げ剛性の第3の移行区間130、第3の移行区間132、及びほぼ一定の曲げ剛性の第4の曲げ剛性区間134が示されている。
【0136】
図に示される実施形態では、医療用器具100の第1及び第2の層が概略的に示されている。第1の層は、例えば上記に述べた内側層144であってよく、第2の層は、例えば外層146であってよい。異なるクロスハッチングによって表されるように、第1の層のモダリティは、細長シャフト106の長さに沿って遠位端112と近位端110との間で変化している。図に示される例では、第1の層のモダリティは、4つの別個の区分を含んでいる。これらの区分のそれぞれは、医療用器具100の曲げ剛性全体に異なる寄与をもたらす異なる特性を有することができる。一例として、第1の層は内骨格150を構成することができ、第1の層の4つの別個の区分は、図17に示される4つの区分156、158、160、162を表すことができる。図16Dに示されるように、第1の層の4つの区分間の移行は通常、移行区間124、128、132内で生じる。
【0137】
図に示される実施形態では、第2の層は、3つの異なるモダリティを含んでいる。いくつかの実施形態では、第2の層は編組ジャケットであってよく、3つのモダリティは、上記に述べたようなジャケット材料、編組形状、及び編組ピック数を表すことができる。図に示される例では、第1のモダリティは、4つの別個の区分を含んでいる。各区分は、例えば、異なるデュロメータ硬さ又は硬度の材料を表すことができる。図に示される例では、第2のモダリティは、4つの別個の区分を含んでいる。各区分は、例えば、異なる編組形状を有する区分を表すことができる。図に示される例では、第3のモダリティは、6つの別個の区分を含んでいる。各区分は、例えば、異なるピックカウントの区分を表すことができる。一般に区分間の移行は移行区間124、128、132内で生じるが、例えば第2及び第3のモダリティに示されるように、これは常にそうである必要はない。
【0138】
第1及び第2の層の様々なモダリティの異なる区分の配置は、共に、医療用器具100の細長シャフト106の曲げ剛性を規定する。いくつかの実施形態では、ほぼ一定の曲げ剛性を有する曲げ剛性区間(例えば、曲げ剛性区間122、126、130、134)を得るには、第1の層及び第2の層の様々なモダリティの異なる区分間の移行は、曲げ剛性区間122、126、130、134内で通常生じないか、又はこれらの区間内に限定される。細長シャフト106の構成はこれらの曲げ剛性区間内では概ね一定に保たれるため、これらの区間の長さにわたる屈曲はほぼ一定となり得る。いくつかの実施形態では、ほぼ一定の曲げ剛性の曲げ剛性区間内で第1及び第2の層の様々なモダリティの異なる区分間の移行は生じない。いくつかの実施形態では、第1及び第2の層の様々なモダリティの異なる区分間の最大で1つ、2つ、又は3つの移行が、ほぼ一定の曲げ剛性の曲げ剛性区間内で生じる。
【0139】
いくつかの実施形態では、その区間の曲げ剛性が第1の曲げ剛性から第2の曲げ剛性に徐々に移行する長さを有する移行区間(例えば、移行区間124、128、132)を実現するために、第1の層及び第2の層の様々なモダリティの異なる区分間の移行は、概ね移行区間内で生じる。例えば、いくつかの実施形態では、第1及び第2の層の様々なモダリティの異なる区分間の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上の移行が概ね移行区間内で生じる。更に、移行区間内で緩やかな(例えば、勾配又は傾斜した)移行を形成するには、第1及び第2の層の様々なモダリティの異なる区分間の移行を概ね交互に配置することができる。すなわち、移行区間内において、第1及び第2の層の様々なモダリティの異なる区分間の移行は、通常、その区間内で起こり、一般に細長シャフト106の長さに沿った同じ点で生じない。これは、移行区間124、128、132内の医療用器具100の曲げ剛性プロファイル102全体をなだらかにする効果を有することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の層の様々なモダリティの異なる区分間の少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上の移行が、各移行区間内で交互に配置される。
【0140】
図16Dは、実施形態によっては、医療用器具100は、多層構造を有し得ることを示す。ある層は単一のモダリティ(例えば、第1の層)を含んでもよく、ある層は複数のモダリティ(例えば、第2の層)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、医療用器具は、単一層のみで構成されてもよい。いくつかの実施形態では、医療用器具は、2つを超える層で構成されてもよい。更に、図16Dに示される例示されたモダリティ及び区分間の移行は、あくまで例として示したものにすぎない。当業者には、必要に応じて様々な曲げ剛性プロファイルを作り出すための他の構成が可能であることは直ちに理解されよう。
【0141】
図18A~18Dは、例示的な可変曲げ剛性プロファイル202を有する別の医療用器具200の一実施形態に関する。図に示される実施形態では、医療用器具200はシースとして構成されている。以下で述べるように、いくつかの実施形態では、医療用器具200(シース)を医療用器具100(スコープ)と共に使用して複合構造体を形成することができ、医療用器具200(シース)と医療用器具100(スコープ)との相対運動を利用してこの複合構造体の曲げ剛性プロファイルを調節することができる。図18Aは、医療用器具200の側面図である。図18Bは、医療用器具200の可変曲げ剛性プロファイル202を示す。図18Cは、その例示的な多モダリティ構造を示す、医療用器具200の断面図を示す。図18Dは、医療用器具200の可変曲げ剛性プロファイル202を得るためにどのように多モダリティ構造の個々のモダリティを変化させることができるかの一例を概略的に示す。
【0142】
多くの点で、医療用器具200は医療用器具100と似ている。図18Aに示されるように、医療用器具200は、器具基部204と細長シャフト206とを有している。細長シャフト206が近位端210と遠位端212との間に延在してよい。近位端210は器具基部204から延び、器具基部に取り付けることができる。遠位端212は、医療用器具200の細長シャフト206の先端部であってよい。細長シャフト206は、近位端210と遠位端212との間で測定される長さLを有している。いくつかの実施形態では、医療用器具200(シース)の長さLは、医療用器具100(スコープ)の長さLよりも小さいが、他の実施形態では、医療用器具200(シース)の長さLは、医療用器具100(スコープ)に等しいか又はそれよりも大きい。いくつかの実施形態では、医療用器具200(シース)の長さLは、医療用器具100(スコープ)の長さLよりも約50~300mm小さい。いくつかの実施形態では、医療用器具200(シース)の長さLは、医療用器具100(スコープ)の長さLよりも約100mm、約150mm、約200mm、約250mm、又は約300mm小さい。いくつかの実施形態では、医療用器具200(シース)の長さLは、医療用器具100(スコープ)の長さLの約60%、約70%、約80%、又は約90%である。いくつかの実施形態では、例えば、医療用器具200の長さLは、約600~約750mmであってよい。一例では、長さLは約680mmである。
【0143】
図に示される実施形態では、細長シャフト206は、3つの異なる区分、すなわち、屈曲部214(能動的屈曲部とも呼ばれる)、受動的屈曲部216、及び内部シャフト部218(追従部分とも呼ばれる)を有している。各区分は、細長シャフト206の長さLに沿って遠位端212と近位端210との間に連続的に配置することができる。図には3つの区分が示されているが、実施形態によっては、医療用器具はこれよりも多いか又は少ない区分を有してもよい。例えば、医療用器具は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又はそれ以上の区分を含むことができる。
【0144】
医療用器具100と同様に、医療用器具200の各区分は、医療処置を容易にし、かつ/又は医療用器具200の操縦性及び制御性を向上させるための異なる機能を提供するように構成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、より遠位に位置する区分は、細長シャフト206の操作性を促進するためにより高い可撓性を有し、より近位に位置する区分は、細長シャフト206の押し込み性を与える一方で座屈の可能性を防止又は低減するようにより高い剛性を有している。いくつかの実施形態では、能動的屈曲部214は、医療用器具200の遠位端に操縦性を与える。いくつかの実施形態では、受動的屈曲部216は、例えば気管支鏡検査の場合に、肺の上葉へと辿るのに充分な可撓性を与える。いくつかの実施形態では、内部シャフト部218は、イントロデューサー及び管屈曲部を通じて挿入されるのに充分な可撓性を有するが、細長シャフト206に支持をもたらすのに充分な押し込み性/剛性を有する。いくつかの実施形態では、これらの異なる機能を実現するため、各区分は、異なる曲げ剛性特性又は性質を有する。
【0145】
いくつかの実施形態では、能動的屈曲部214は、約50mm~80mm、又は約65mmの長さを有する。いくつかの実施形態では、受動的屈曲部216は、約45mm~75mm、又は約60mmの長さを有する。いくつかの実施形態では、内側シャフト部218は、内部区間について約410~500mm、又は約450mmの長さを有することができる。有利な点として、異なる長さの3つの異なる区間は、細長シャフト206をその下のスコープの一部と望ましく整列させることにより、異なる長さに沿って所望の可変剛性を有する複合構造体を形成するように設計されている。いくつかの実施形態では、これらの区分のうちの1つ、それ以上、又はすべての長さは、記載される値と異なっていてもよい。
【0146】
図18Bは、医療用器具200の細長シャフト206の代表的な曲げ剛性プロファイル202を示す。例示の実施形態では、例示的な曲げ剛性プロファイル202に見られるように、医療用器具200の細長シャフト206は、ほぼ一定の曲げ剛性の3つの曲げ剛性区間及び2つの移行区間を含み、各移行区間は、隣接する一対の曲げ剛性区間の間に位置している。図に示される例では、医療用器具200は、(遠位から近位に配置された)ほぼ一定の曲げ剛性の第1の曲げ剛性区間222、第1の移行区間224、ほぼ一定の曲げ剛性の第2の曲げ剛性区間226、第2の移行区間228、及びほぼ一定の曲げ剛性の第3の曲げ剛性区間230を有している。
【0147】
3つの曲げ剛性区間と2つの移行区間を図示し説明するが、他の実施形態は他の数の曲げ剛性区間及び移行区間を含んでもよく、例えば、医療用器具は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の移行区間によって分離された、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ又はそれ以上のほぼ一定の曲げ剛性の曲げ剛性区間を含むことができる。
【0148】
例示される実施形態では、第1の曲げ剛性区間222は最小のほぼ一定の曲げ剛性を有し、第2の曲げ剛性区間226は、第1の曲げ剛性区間222の曲げ剛性よりも高いほぼ一定の曲げ剛性を有し、第3の曲げ剛性区間230は、第2の曲げ剛性区間226の曲げ剛性よりも高いほぼ一定の曲げ剛性を有する。したがって、医療用器具200の曲げ剛性は、遠位端212から近位端210へと概ね増加する。これは、すべての実施形態でそうである必要はない。例えば、曲げ剛性は、増加し、減少し、その後、再び増加するか、又は概して減少してもよい。
【0149】
更に、図に示される実施形態では、移行区間224、228は、概ね又はほぼ一定の勾配を有している。各移行区間の勾配は異なってもよい点が理解されよう。例えば、第1の移行区間224の勾配は第2の移行区間228の勾配よりも小さくてもよい。これもやはり、すべての実施形態においてそうである必要はない。
【0150】
参照として、図18Bはまた、1つの例において、曲げ剛性プロファイル202が、どのように、屈曲部214、受動的屈曲部216、及び内部シャフト部218と整列しているかを示している。例示される実施形態では、各部分は、ほぼ一定の曲げ剛性の1つの曲げ剛性区間を含んでいる。例えば、第1の曲げ剛性区間222は屈曲部214内に位置し、第2の曲げ剛性区間226は受動的屈曲部216内に位置し、第3の曲げ剛性区間230は内部シャフト部218内に位置する。細長シャフト206は、その区分内に位置する曲げ剛性区間のほぼ一定の曲げ剛性が、その区分がその指定された機能を実行することを容易に又は可能とするように構成することができる。移行区間224、228は、細長シャフトの曲げ剛性が、より低い値からより高い値まで(又はその逆)徐々に変化し得る長さを提供する。上記と同様に、曲げ剛性が徐々に(急激にではなく)変化する領域を有することは、細長シャフト206内の応力集中点及び破損点を回避するうえで役立ち得る。
【0151】
図に示される実施形態では、移行区間224、228は、隣接する区分と重なり合うように配置されている。例えば、第1の移行区間224は、屈曲部214と受動的屈曲部216との間に配置され、これらと部分的に重なり合っている。第2の移行区間228は、受動的屈曲部216と内部シャフト部218との間に配置され、これらと部分的に重なり合っている。移行区間の他の配置及び位置も可能である。例えば、移行区間は、例えば、その区分の遠位端に、又はその区分の近位端に、又は近位端と遠位端との間の区分の長さに沿って、完全に1つの区分内に配置されてもよい。
【0152】
図18Cは、例えば図18Cに示されるような可変曲げ剛性プロファイル202を得るように構成された多モダリティ構造を有する医療用器具200の細長シャフト206の断面図である。医療用器具200の多モダリティ構造は、複数の層で構成され得る。例えば、図に示されるように、医療用器具200は内側層244と外側層246とを備える。内側層244及び外側層246は、図に示されるように、作業通路すなわち内側通路242を包囲することができる。内側通路242は、その内部にスコープ(例えば、医療用器具100)を受容するサイズ及び形状に構成することができる。いくつかの実施形態では、スコープは、内側通路242を通って伸縮させることができる。内側通路242の周囲にはライナー248を設けることができる。ライナー248は、使用時に第1の医療用器具100が内側通路242を通って自由に動くことを可能とするように構成することができる。
【0153】
図に示される実施形態では、内側層244及び外側層246はどちらも、編組ジャケットを含み得る。編組ジャケットは、熱可塑性材料で作られた編組を含み得る。いくつかの実施形態では、内側層244及び外側層246のうちの一方は、プルワイヤ208を含む。上記に述べたように、編組ジャケットの様々な特性を細長シャフトの異なる領域で調節することで異なる曲げ剛性を作り出すことができる。例えば、各層244,246の編組材料(デュロメータ硬さ)、編組幾何形状、及び編組ピック数を調節して異なる曲げ剛性を作り出すことができる。記載されたモダリティの代わりに、又はそれに加えて、他のモダリティを医療用器具200の可変曲げ剛性プロファイルを形成するうえで用いてもよい。
【0154】
図18Dは、一実施形態に基づいて医療用器具200の多層構造において異なるモダリティを調節することにより、図18Bに示される曲げ剛性プロファイル202を形成する方法を概略的に示す。参照のため、医療用器具200の側面図が図18Dに示されており、能動的屈曲部214、受動的屈曲部216、及び内部シャフト部218、並びにほぼ一定の曲げ剛性の第1の曲げ剛性区間222、第1の移行区間224、ほぼ一定の曲げ剛性の第2の曲げ剛性区間226、第2の移行区間228、及びほぼ一定の曲げ剛性の第3の曲げ剛性区間230が示されている。
【0155】
図に示される実施形態では、医療用器具200の第1及び第2の層は概略的に示されている。第1の層は内側層244を表すことができ、第2の層は外側層246を表すことができ、これらは上記に述べたようにどちらも編組ジャケットであってよい。図18Dに示すように、第1の層及び第2の層はいずれも、少なくとも2つの異なるモダリティを含むことができる。図に示される例では、第1の層の第1のモダリティは4つの別個の区分を含み、第1の層の第2のモダリティは4つの別個の区分を含んでいる。図に示される例では、第2の層の第1のモダリティは4つの別個の区分を含み、第2の層の第2のモダリティは6つの別個の区分を含んでいる。医療用器具100と同様に、通常、区分間の移行は、ほぼ一定の曲げ剛性の曲げ剛性区間222、226、230内で生じないか又はそれら内に限定され、区分間の移行は移行区間224、228内で生じるが、これは常にそうである必要はない。異なる数のモダリティ及び異なる数の区分を有する他の数の層を用いることもできる。
【0156】
B.曲げ剛性プロファイルの調節。
上記で簡単に述べたように、いくつかの実施形態では、複合構造体(医療用器具と呼ぶ場合もある)は、シース(例えば、医療用器具200)の内側通路内に配置されたスコープ(例えば、医療用器具100)として構成することができる。上記に述べたように、「複合構造体」なる用語は、スコープがシースの内側通路内に配置された場合に、シースから遠位に延在し得るスコープの部分、又はスコープから遠位に延在し得るシースの部分を含む、スコープ及びシースのすべての部分を指し、包含し得る。上記に述べたように、スコープ及びシースのうちの一方又は両方は、可変曲げ剛性プロファイルを有することができる(例えば、図16B及び18Bを参照)。複合構造体は、スコープ及びシースの個々の可変曲げ剛性プロファイルの組み合わせとしての可変曲げ剛性プロファイルを有することができる。更に、複合構造体の可変曲げ剛性プロファイルは、スコープ及びシースの相対位置を調整することによって調節、変更、又は変化させることができる。いくつかの実施形態では、医療処置を容易にするために、複合構造体の可変曲げ剛性プロファイルの調節を、医療処置中(例えば、手術中)に、手動又はロボットを用いて行うことができる。
【0157】
図19Aは、医療用器具又は複合構造体300を示す。複合構造体300は、例えば、図18A~18Dの医療用器具200などのシース200の内側通路内に配置された、例えば、図16A~16Dの医療用器具100などのスコープ100を含んでいる。具体的には、スコープ100の細長シャフト106は、シース200の細長シャフト206の内側通路242を通って延在することができる。いくつかの実施形態では、スコープ100とシース200とは同軸である。図19Aの例示の実施形態では、スコープ100とシース200とは、スコープ100の遠位端112がシース200の遠位端212と揃うように互いに対して配置されている。
【0158】
スコープ100とシース200とは同軸であってもよいが、これらは互いに対して独立して制御されることができる。例えば、スコープ100は、第1のロボットアーム上の器具駆動機構に取り付けることができる器具基部104を有する。第1のロボットアームは、器具基部104を動かしてスコープ100を方向107に挿入又は後退させることができる。同様に、シース200は、第2のロボットアーム上の器具駆動機構に取り付けることができる器具基部204を有する。第2のロボットアームは、器具基部204を動かしてシース200を方向207に挿入又は後退させることができる。方向107へのスコープの移動は、シース200の方向207への移動とは独立していてよい。いくつかの実施形態では、スコープ100とシース200とは長さが同一の範囲にわたっていないため、一方(通常はシース200)が他方(通常はスコープ100)よりも短くなる。
【0159】
図19Bは、スコープ100、シース200及び複合構造体300のそれぞれの例示的な曲げ剛性プロファイル102、202、302を示す。スコープ100は、上記に述べたような可変曲げ剛性プロファイル102を有することができる(例えば、図16Bを参照)。図に示される例では、スコープ100の曲げ剛性プロファイル102は、ほぼ一定の曲げ剛性の4つの曲げ剛性区間と3つの移行区間とを含んでいる。シース200もまた、上記に述べたような可変曲げ剛性プロファイル202を有することができる(例えば、図18Bを参照)。図に示される実施例では、シース200の曲げ剛性プロファイル202は、ほぼ一定の曲げ剛性の3つ曲げ剛性区間と2つの移行区間とを含んでいる。
【0160】
図19Bに示すように、複合構造体300は、スコープ100及びシース200の曲げ剛性プロファイル102、202に基づく曲げ剛性プロファイル302を有している。例示される実施形態では、曲げ剛性プロファイル302は、ほぼ一定の曲げ剛性の5つの曲げ剛性区間と4つの移行区間とを含んでいる。したがって、いくつかの実施形態では、複合構造体300の曲げ剛性プロファイル302は、スコープ100及びシース200の曲げ剛性プロファイル102、202の一方又は両方よりも多くのほぼ一定の曲げ剛性の曲げ剛性区間及び/又はより多くの移行区間を有する。いくつかの実施形態では、複合構造体300の曲げ剛性プロファイル302は、スコープ100及びシース200の曲げ剛性プロファイル102、202の一方又は両方と同数のほぼ一定の曲げ剛性の曲げ剛性区間及び/又はより多くの移行区間を有する。
【0161】
例えば、スコープ100がn個の曲げ剛性区間を含む場合、複合構造体300は、いくつかの実施形態では、n+1~2n(端点を含む)以上の任意の数の曲げ剛性区間を含むことができる。別の例として、スコープ200がm個の曲げ剛性区間を含む場合、複合構造体300は、いくつかの実施形態では、m+1~2m(端点を含む)以上の任意の数の曲げ剛性区間を含むことができる。更なる例として、スコープがn個の曲げ剛性区間を含み、シース200がm個の曲げ剛性区間を含む場合、複合構造体300は、いくつかの実施形態では、n+m+1~2(n+m)(端点を含む)以上の任意の数の曲げ剛性区間を含むことができる。
【0162】
更に、複合構造体300の曲げ剛性プロファイル302は、スコープ100とシース200との相対位置を調整することによって調節、変更、又は変化させることができる。図19Cは、スコープ100の位置がシース200に対して調整された例を示す。具体的には、図に示される例では、スコープ100の遠位端112は、シース200の遠位端212を越えて(より遠位側に)配置されている。これは、例えば、スコープ100を前進させるか、シース200を後退させるか、又はそれらの組み合わせを行うことによって実現することができる。
【0163】
図19Dは、スコープ100及びシース200が図19Cに示されるように配置された状態でのスコープ100、シース200、及び複合構造体300それぞれの曲げ剛性プロファイル102、202、302を示す。図に示される例では、複合構造体300の曲げ剛性プロファイル302は、移行区間によって分離された6つのほぼ一定の曲げ剛性の曲げ剛性区間を含んでいる。更に、図19Dの曲げ剛性プロファイル302は、図19Bの曲げ剛性プロファイル302に対して調節又は変更されている点を理解されたい。これは、スコープ100とシース200とが異なる位置にある場合、曲げ剛性プロファイル102、202は異なる形で整列して、異なる曲げ剛性プロファイル302をもたらすことによる。
【0164】
したがって、複合構造体300は、スコープ100の遠位端112がシース200の遠位端212を越えて配置されている相対位置、シース200の遠位端212がスコープ100の遠位端112を越えて配置されている相対位置、及びスコープ100の遠位端112がシース200の遠位端212と揃えられている相対位置を含む、スコープ100とシース200との複数の相対位置に基づいて、その曲げ剛性プロファイル302を有利に調節又は変更することができる。
【0165】
いくつかの実施形態では、スコープ100をシース200に対して動かす(又はその逆)ことにより、動かす前と比較して、より多い、より少ない、又は同数のほぼ一定の曲げ剛性の曲げ剛性区間を有する複合構造体の曲げ剛性プロファイル302を得ることができる。
【0166】
いくつかの実施形態では、図19Dに示されるように、シース200によるスコープ100の調節はシース200内に位置するスコープ100の部分に沿ってのみ行うことができ、スコープ100の残りの部分(例えば、シース200の遠位に延びる部分)はその元の曲げ剛性プロファイルを有する。
【0167】
医療処置中に、医師及び/又はロボット制御可能な医療システムは、スコープ100とシース200との相対位置を調整して複合構造体の曲げ剛性プロファイル302を調節することができる。これは、実施しようとする特定の操作により適した曲げ剛性プロファイル302を作り出すために行うことができる。いくつかの実施形態では、これは手動で行われる。いくつかの実施形態では、これは自動的に行われる(例えば、プロセッサ又はナビゲーションシステムによって制御される)。いくつかの実施形態では、これは手術中に行われる。これにより、医療用器具を交換する必要なく、処置の異なる場面において異なる曲げ剛性プロファイルを用いることを有利に可能とする。
【0168】
図20A~20Cは、本明細書に記載される原理に従って構成された複合構造体(スコープ及びシース)の第1の実施形態に関する実験データを示す。この例では、スコープ及びシースはいずれも、可変曲げ剛性プロファイルを有している。図20Aは、スコープ及びシースの曲げ剛性プロファイル、並びにスコープとシースの遠位端同士が揃えられた場合の複合構造体の複合曲げ剛性プロファイルを示す。図20Bは、スコープ及びシースの曲げ剛性プロファイル、並びにスコープの遠位端がシースの遠位端を超えて60mm延びている場合の複合構造体の複合曲げ剛性プロファイルを示す。図20Cは、スコープ及びシースの曲げ剛性プロファイル、並びにスコープの遠位端がシースの遠位端を超えて150mm延びている場合の複合構造体の複合曲げ剛性プロファイルを示す。図20A~20Cに示される複合構造体の複合曲げ剛性プロファイルを比較すると、複合曲げ剛性プロファイルは、スコープとシースとの相対位置を調整することによって調節することができることが分かる。
【0169】
図21A及び21Bは、本明細書に記載される原理に従って構成された複合構造体(スコープ及びシース)の第2の実施形態に関する実験データを示す。この例では、スコープ及びシースはいずれも、可変曲げ剛性プロファイルを有している。図21Aは、シースに対するスコープの異なる延長長さにおける複合構造体の可変剛性プロファイルを示す。図に示されるように、複合構造体の5つの可変剛性プロファイルはすべて異なっている。図21Bは、シースに対するスコープの延長長さに応じた複合構造体の可変剛性プロファイルを示す。ここでもやはり、シースに対するスコープの位置を調整することによって、複合構造体の曲げ剛性プロファイルが調節されることが示されている。
【0170】
図23は、患者の管腔内で医療用器具を誘導するための例示的な方法400を示すフローチャートである。いくつかの実施形態では、医療用器具は、上記に述べた複合構造体300のように、スコープ及びシースを含み得る。方法400は、ロボット医療システムにおいて実施することができる。いくつかの実施形態では、方法400は手動で実施することができる。
【0171】
方法400は、ブロック402で開始する。ブロック402において、医療用器具が患者の管腔に挿入される。医療用器具は、スコープ及びシースで構成されたものでよい。スコープは、スコープの長さに沿って配置された複数の曲げ剛性区間を含むことができる。いくつかの実施形態では、曲げ剛性区間のそれぞれは、ほぼ均一である曲げ剛性を有する。シースは、シースの長さに沿って配置された複数の曲げ剛性区間と、内側通路と、を有することができる。スコープは、シースの内側通路内に配置することができる。患者の管腔は気管支気道を含み得るが、方法400は患者の他の管腔で使用されるように実施することもできる。
【0172】
次に、ブロック404において、スコープ及びシースのうちの少なくとも一方の位置をスコープ及びシースのうちの他方に対して調整することによって医療用器具の曲げ剛性プロファイルを調節することができる。いくつかの実施形態では、医療用器具の曲げ剛性プロファイルを調節することは、スコープがシースから遠位に延在するように、スコープを前進させること、及びシースを後退させることのうちの少なくとも一方を含む。いくつかの実施形態では、医療用器具の曲げ剛性プロファイルを調節することは、スコープの遠位端がシースの内側通路内に位置するように、シースを前進させること、及びスコープを後退させることのうちの少なくとも一方を含む。いくつかの実施形態では、シースの遠位端は、スコープの遠位端を越えて遠位に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、スコープの遠位端は、シースの遠位端と揃えられる。
【0173】
いくつかの実施形態では、スコープは、少なくとも4つの曲げ剛性区間を含み、それぞれはその曲げ剛性区間の長さに沿ってほぼ一定の曲げ剛性を有する。いくつかの実施形態では、スコープは少なくとも3つの移行区間を含み、少なくとも3つの移行区間のそれぞれは一対の少なくとも4つの曲げ剛性区間の間に配置されている。いくつかの実施形態では、スコープは、少なくとも3つの曲げ剛性区間を含み、それぞれはその曲げ剛性区間の長さに沿ってほぼ一定の曲げ剛性を有する。いくつかの実施形態では、スコープは少なくとも2つの移行区間を含み、少なくとも2つの移行区間のそれぞれは一対の少なくとも3つの曲げ剛性区間の間に配置されている。いくつかの実施形態では、第1の曲げ剛性区間は、他の曲げ剛性区間の曲げ剛性よりも低い曲げ剛性を有する。いくつかの実施形態では、第3の曲げ剛性区間は、イントロデューサーを通って延在する。いくつかの実施形態では、第4の曲げ剛性区間は、患者の管腔を通って延在せず、また、イントロデューサーを通って延在しない。
【0174】
3.システムの実施及び用語
本明細書に開示される実施態様は、可変曲げ剛性プロファイルを有する医療用器具のためのシステム、方法、及び装置を提供する。
【0175】
本明細書で使用するとき、用語「結合する」、「結合している」、「結合された」、又は単語結合のその他の変形は、間接的接続又は直接的接続のいずれかを示し得ることに留意されたい。例えば、第1の構成要素が第2の構成要素に「結合される」場合、第1の構成要素は、別の構成要素を介して第2の構成要素に間接的に接続されるか、又は第2の構成要素に直接的に接続されてもよい。
【0176】
本明細書に記載される位置推定及びロボッド運動作動機能は、プロセッサ可読媒体又はコンピュータ可読媒体上の1つ以上の命令として記憶することができる。用語「コンピュータ可読媒体」は、コンピュータ又はプロセッサによってアクセスすることができる任意の利用可能な媒体を指す。一例として、これらに限定されるものではないが、かかる媒体は、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、読み出し専用メモリ(read-only memory、ROM)、電気的消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(electrically erasable programmable read-only memory、EEPROM)、フラッシュメモリ、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(compact disc read-only memory、CD-ROM)、又はその他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置若しくはその他の磁気記憶デバイス、又は命令若しくはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを記憶するために使用することができ、コンピュータによってアクセスすることができる任意の他の媒体を含み得る。コンピュータ可読媒体は、有形であり、非一時的であってもよいことを留意されたい。本明細書で使用するとき、用語「コード」は、コンピューティングデバイス又はプロセッサによって実行可能であるソフトウェア、命令、コード、又はデータを指し得る。
【0177】
本明細書に開示される方法は、記載される方法を達成するための1つ以上の工程又は行為を含む。方法工程及び/又は行為は、特許請求の範囲から逸脱することなく互いに交換され得る。換言すれば、記載されている方法の適切な動作のために特定の順序の工程又は行為が必要とされない限り、請求項の範囲から逸脱することなく、特定の工程及び/又は行為の順序及び/又は使用を修正し得る。
【0178】
本明細書で使用するとき、用語「複数」は、2つ以上を意味する。例えば、複数の構成要素は、2つ以上の構成要素を示す。用語「判定する」は、多種多様な行為を包含し、したがって、「判定する」は、計算する、演算する、処理する、導出する、調査する、ルックアップする(例えば、表、データベース又は別のデータ構造を見ること)、確認することなどを含み得る。また、「判定する」は、受容する(例えば、情報を受信すること)、アクセスする(例えば、メモリ内のデータにアクセスすること)などを含み得る。また、「判定する」は、解決する、選択する、選出する、確立するなどを含み得る。
【0179】
語句「に基づく」は、別途明示的に指定されない限り、「のみに基づく」ことを意味しない。換言すれば、語句「に基づく」は、「のみに基づく」及び「少なくとも~に基づく」の両方を述べる。
【0180】
本明細書で使用するところの「およそ」又は「約」なる用語は、長さ、厚さ、量、時間、又はその他の測定可能な値の測定範囲を指す。かかる測定範囲には、変動が開示される装置、システム、及び技法において機能するうえで適切である限り、指定された値の、及び指定された値からの+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、更により好ましくは+/-0.1%以下の変動が包含される。
【0181】
開示される実施態様の前述の説明は、いずれの当業者も本発明を製造すること、又は使用することを可能にするために提供される。これらの実施態様に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかになり、本明細書で規定される一般的な原理は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施態様に適用され得る。例えば、当業者であれば、締結、装着、結合、又は係合ツール構成要素の同等の手段、特定の作動運動を生み出すための同等の機構、及び電気エネルギーを送達するための同等の機構など、多くの対応する代替的かつ同等の構造的詳細を使用することができると理解されるであろう。したがって、本発明は、本明細書に示される実施態様に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原則及び新規な特徴と一致する最も広い範囲が与えられるものである。
【0182】
〔実施の態様〕
(1) 医療用器具であって、
遠位端と近位端との間に延在する細長シャフトであって、
前記細長シャフトの長さに沿って配置された少なくとも3つの曲げ剛性区間であって、各曲げ剛性区間は、前記曲げ剛性区間の長さにわたって延在する曲げ剛性を有し、前記少なくとも3つの曲げ剛性区間のそれぞれの前記曲げ剛性は隣接する曲げ剛性区間の曲げ剛性よりも大きいか又は小さく、前記少なくとも3つの曲げ剛性区間のそれぞれの前記曲げ剛性はその長さに沿ってほぼ均一である、少なくとも3つの曲げ剛性区間と、
少なくとも2つの移行区間であって、各移行区間は、前記少なくとも3つの曲げ剛性区間の各対の間の前記移行区間の長さにわたって延在する可変曲げ剛性を有し、各移行区間の前記可変曲げ剛性は、前記移行区間の第1の側の第1の曲げ剛性から前記移行区間の第2の側の第2の曲げ剛性まで変化する、少なくとも2つの移行区間と、
を有する、細長シャフトを備える、医療用器具。
(2) 各移行区間において、前記可変曲げ剛性が、前記移行区間の前記第1の側の前記第1の曲げ剛性から前記移行区間の前記第2の側の前記第2の曲げ剛性までほぼ直線的な勾配で変化する、実施態様1に記載の医療用器具。
(3) 前記遠位端に最も近い前記曲げ剛性区間が、2つの他の前記曲げ剛性区間のそれぞれの曲げ剛性よりも小さい曲げ剛性を有する、実施態様1に記載の医療用器具。
(4) 前記近位端に最も近い前記曲げ剛性区間が、2つの他の前記曲げ剛性区間のそれぞれの曲げ剛性よりも大きい曲げ剛性を有する、実施態様1に記載の医療用器具。
(5) 前記近位端から前記遠位端まで、前記少なくとも3つの曲げ剛性区間のそれぞれの前記曲げ剛性が増加する、実施態様1に記載の医療用器具。
【0183】
(6) 前記曲げ剛性区間のそれぞれが、少なくとも50mmの長さを有する、実施態様1に記載の医療用器具。
(7) 前記移行区間のそれぞれが、少なくとも10mmの長さを有する、実施態様1に記載の医療用器具。
(8) 前記細長シャフトが、内側層及び外側層を有する、実施態様1に記載の医療用器具。
(9) 前記外側層が編組ジャケットを含み、前記内側層が内骨格を含む、実施態様8に記載の医療用器具。
(10) 前記編組ジャケットが、前記編組ジャケットを通じて延在する1本以上のプルワイヤを含む、実施態様9に記載の医療用器具。
【0184】
(11) 前記編組ジャケットの曲げ剛性が、ジャケット材料のデュロメータ硬さ(jacket material durometer)、編組の幾何形状、及び編組のピック数のうちの少なくとも1つによって調節されるように構成されている、実施態様9に記載の医療用器具。
(12) 前記内骨格が、ニチノールで形成された第1の部分と、ステンレス鋼で形成された第2の部分と、を含む、実施態様9に記載の医療用器具。
(13) 前記内骨格の前記第2の部分が、少なくとも第1のピッチを有するコイルを含む第1の区分と、少なくとも第2のピッチを有するコイルを含む第2の区分と、を含む、実施態様12に記載の医療用器具。
(14) 前記内骨格の前記第2の部分が、剛性ハイポチューブとして形成された第3の区分を更に含む、実施態様13に記載の医療用器具。
(15) 内視鏡を含む、実施態様1に記載の医療用器具。
【0185】
(16) 前記細長シャフトが、全方向性の曲げ剛性プロファイルを有する、実施態様1に記載の医療用器具。
(17) 前記細長シャフトが、段差状の曲げ剛性プロファイルを有する、実施態様1に記載の医療用器具。
(18) 前記移行区間のそれぞれが、緩やかな勾配の形の曲げ剛性を有する、実施態様1に記載の医療用器具。
(19) 医療システムであって、
遠位端と近位端との間に延在する長さを有する細長部材であって、異なる曲げ剛性のn個の曲げ剛性区間を更に含み、前記n個の曲げ剛性区間のそれぞれはその長さに沿ってほぼ均一である曲げ剛性を有する、細長部材と、
シース遠位端とシース近位端との間に延在するシース長さを有するシースであって、内側通路を有する、シースと、を含み、
前記細長部材と前記シースとが少なくともn+1個の曲げ剛性区間を有する複合構造体を形成するよう、前記細長部材が前記シースの前記内側通路内で動くように構成され、前記n+1個の曲げ剛性区間のそれぞれは、その長さに沿ってほぼ均一である曲げ剛性を有する、医療システム。
(20) 前記細長部材の遠位端が前記シース遠位端の遠位に配置されるように前記細長部材が前記シースを通って前進させられた場合に、前記複合構造体が、少なくともn+1個の曲げ剛性区間を含む、実施態様19に記載の医療システム。
【0186】
(21) 前記シースが、異なる曲げ剛性の少なくともn個の曲げ剛性区間を含み、前記n個の曲げ剛性区間のそれぞれはその長さにわたってほぼ均一な曲げ剛性を有し、前記細長部材は、前記複合構造体が少なくとも2n個の曲げ剛性区間を含むように前記シースに対して配置されるように構成されている、実施態様19に記載の医療システム。
(22) 前記細長部材が4つの曲げ剛性区間を有し、前記複合構造体が4つよりも多い曲げ剛性区間を有する、実施態様19に記載の医療システム。
(23) 前記細長部材と前記シースとは異なる長さである、実施態様19に記載の医療システム。
(24) 前記シースが、複数の曲げ剛性区間を含む、実施態様19に記載の医療システム。
(25) 前記シースが、少なくとも4つの曲げ剛性区間を含む、実施態様19に記載の医療システム。
【0187】
(26) 前記細長部材が取り付けられた第1のロボットアームと、
前記シースが取り付けられた第2のロボットアームと、を更に備え、
前記第1のロボットアームが、前記細長部材を前記シースに対して前進又は後退させるように構成され、前記第2のロボットアームが、前記シースを前記細長部材に対して前進又は後退させるように構成されている、実施態様19に記載の医療システム。
(27) 患者の体内で医療用器具を誘導するための方法であって、
前記医療用器具を患者の管腔内に挿入することであって、前記医療用器具は、
スコープであって、前記スコープの長さに沿って配置された複数の曲げ剛性区間を含み、前記曲げ剛性区間のそれぞれがほぼ均一な曲げ剛性を有する、スコープと、
シースであって、前記シースの長さに沿って配置された複数の曲げ剛性区間を含み、内側通路を更に有し、前記スコープが前記シースの前記内側通路内に配置されている、シースと、を備える、前記医療用器具を患者の管腔内に挿入することと、
前記スコープ及び前記シースのうちの少なくとも一方の位置を前記スコープ及び前記シースのうちの他方に対して調整することによって前記医療用器具の曲げ剛性プロファイルを調節することと、
を含む、方法。
(28) 前記医療用器具の前記曲げ剛性プロファイルを調節することは、前記スコープが前記シースから遠位に延在するように前記スコープを前進させるか又は前記シースを後退させることを含む、実施態様27に記載の方法。
(29) 前記医療用器具の前記曲げ剛性プロファイルを調節することは、前記スコープの遠位端が前記シースの前記内側通路内に配置されるように前記シースを前進させるか又は前記スコープを後退させることを含む、実施態様27に記載の方法。
(30) 前記シースの遠位端が前記スコープの前記遠位端を越えて遠位に配置されている、実施態様29に記載の方法。
【0188】
(31) 前記スコープの前記遠位端が前記シースの遠位端と揃えられる、実施態様29に記載の方法。
(32) 前記スコープは、それぞれが区間の長さに沿ってほぼ一定の曲げ剛性を有する少なくとも4つの曲げ剛性区間を含む、実施態様27に記載の方法。
(33) 前記スコープは、それぞれが一対の前記少なくとも4つの曲げ剛性区間の間に配置された少なくとも3つの区間を含む、実施態様27に記載の方法。
(34) 前記スコープは、それぞれが区間の長さに沿ってほぼ一定の曲げ剛性を有する少なくとも3つの曲げ剛性区間を含む、実施態様27に記載の方法。
(35) 前記スコープは、それぞれが一対の前記少なくとも4つの曲げ剛性区間の間に配置された少なくとも2つの区間を含む、実施態様34に記載の方法。
【0189】
(36) 前記患者の管腔が気管支気道を含む、実施態様27に記載の方法。
(37) 第1の曲げ剛性区間が、その他の曲げ剛性区間に対して低い曲げ剛性を有する、実施態様27に記載の方法。
(38) 第3の曲げ剛性区間が、イントロデューサーを通って延在する、実施態様27に記載の方法。
(39) 第4の曲げ剛性区間が、前記患者の管腔を通って延在せず、また、前記イントロデューサーを通って延在しない、実施態様38に記載の方法。
(40) 医療用器具であって、
遠位端と近位端との間に延在する細長シャフトであって、
前記細長シャフトの曲げ剛性を調節するための第1のモダリティであって、前記第1のモダリティのモダリティが、前記遠位端と前記近位端との間の第1の点において変化する、第1のモダリティと、
前記細長シャフトの前記曲げ剛性を調節するための第2のモダリティであって、前記第2のモダリティのモダリティが、前記第1の点と異なる、前記遠位端と前記近位端との間の第2の点において変化する、第2のモダリティと、を有する、細長シャフトを備え、
前記第1の点及び前記第2の点は、前記細長シャフトの曲げ剛性プロファイルが、第1の曲げ剛性を有する第1の曲げ剛性区間と、第2の曲げ剛性を有する第2の曲げ剛性区間と、前記第1の曲げ剛性区間と前記第2の曲げ剛性区間との間に配置された移行区間と、を含むように配置され、前記移行区間は、前記移行区間の曲げ剛性が前記第1の曲げ剛性から前記第2の曲げ剛性にまで移行する長さを含む、医療用器具。
【0190】
(41) 前記第1のモダリティが第1の層内に配置され、前記第2のモダリティが第2の層内に配置されている、実施態様40に記載の医療用器具。
(42) 前記第1のモダリティと前記第2のモダリティとが、同じ層内に配置されている、実施態様40に記載の医療用器具。
(43) 前記第1のモダリティが材料特性を含む、実施態様40に記載の医療用器具。
(44) 前記材料特性が硬度を含む、実施態様41に記載の医療用器具。
(45) 前記第2のモダリティが機械的特性を含む、実施態様40に記載の医療用器具。
【0191】
(46) 前記機械的特性が、編組の幾何形状及び編組のピック数のうちの少なくとも一方を含む、実施態様45に記載の医療用器具。
(47) 曲げ剛性を調節するための第3のモダリティを更に有する、実施態様40に記載の医療用器具。
(48) 非一時的コンピュータ可読媒体であって、
デバイスのプロセッサに、少なくとも、
医療用器具を患者の管腔内に挿入することであって、前記医療用器具は、
スコープであって、前記スコープの長さに沿って配置された複数の曲げ剛性区間を含み、前記曲げ剛性区間のそれぞれがほぼ均一な曲げ剛性を有する、スコープと、
シースであって、前記シースの長さに沿って配置された複数の曲げ剛性区間を含み、内側通路を更に有し、前記スコープが前記シースの前記内側通路内に配置されている、シースと、を備える、医療用器具を患者の管腔内に挿入することと、
前記スコープ及び前記シースのうちの少なくとも一方の位置を前記スコープ及び前記シースのうちの他方に対して調整することによって前記医療用器具の曲げ剛性プロファイルを調節することと、を行わせるように構成された命令を記憶する、非一時的コンピュータ可読媒体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図16D
図17
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図18B
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図18D
図19A
図19B
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図20A
図20B
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図21A
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図23