(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】複数の糸を溶融紡糸し、巻き取るための方法および装置
(51)【国際特許分類】
D01D 13/02 20060101AFI20230703BHJP
D01D 5/08 20060101ALI20230703BHJP
B65H 67/04 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
D01D13/02
D01D5/08 Z
B65H67/04 Z
(21)【出願番号】P 2020566766
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2019056533
(87)【国際公開番号】W WO2019228688
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】102018004250.3
(32)【優先日】2018-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェルク フートマッヒャー
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァン フック
(72)【発明者】
【氏名】アンディレ ドラミニ
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/120187(WO,A1)
【文献】英国特許出願公開第02469734(GB,A)
【文献】特開昭62-016991(JP,A)
【文献】特開平11-107030(JP,A)
【文献】特表2007-505801(JP,A)
【文献】特表2011-521120(JP,A)
【文献】特開2018-177449(JP,A)
【文献】スイス国特許発明第00686156(CH,A5)
【文献】独国特許出願公開第04216286(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第04421232(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第10040182(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014010961(DE,A1)
【文献】特表2020-521066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00-13/02
B65H 67/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の糸を溶融紡糸し、巻き取るための方法であって、紡糸された糸を糸群としてガイドし、処理し、前記糸を、突出した状態で駆動される巻取りスピンドルにおいて緊締されている巻管の周面に並行して巻き取ってパッケージを形成し、最後まで巻成された前記パッケージを前記巻取りスピンドルから引出し、搬出する方法において、
パッケージのコーディングが予定されていて、それぞれ1つのRFIDラベルを形成し、かつ/またはそれぞれ1つのRFIDラベルへの書込みを実施し、各パッケージに、前記巻取りスピンドルからの引出し直後に、識別コード
が割り当て
られ、各識別コードに、プロセスデータ、機械データおよび製品データのデータセットが割り当てられ、該データセットがデータメモリ内に記憶されることを特徴とする、複数の糸を溶融紡糸し、巻き取るための方法。
【請求項2】
前記RFIDラベルに、前記パッケージの
前記巻取りスピンドルからの引出し時に順次書込みを行い、前記RFIDラベルを前記巻管において保持する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記RFIDラベルを前記巻管の装着時に順次読み取る、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記パッケージの前記引出し前に、それぞれの識別コードを備えた前記RFIDラベルを印刷し、前記RFIDラベルをオペレータが引き出された前記パッケージに添付する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
後続プロセスにおいて、前記パッケージの前記識別コードを読み込み、前記糸の引き続き行われる加工に前記識別コードを割り当てる、請求項1から
4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記後続プロセスの前記機械データ、前記プロセスデータおよび前記製品データを、前記識別
コードに割り当てられて記憶された前記データセットと関連付ける、請求項
5記載の方法。
【請求項7】
紡糸装置(2)および巻取り装置(7)を備えた、複数の糸を溶融紡糸し、巻き取るための装置であって、前記巻取り装置(7)が、複数の巻取り箇所(7.5)と、複数の巻管(12)を緊締するための、駆動される少なくとも1つの巻取りスピンドル(7.1)とを有している、装置において、
データおよび制御信号を伝達するために機械制御装置(9)に接続されているパッケージ追跡システム(10)を備えており、該パッケージ追跡システム(10)が、識別コードを生成するためのコーディングモジュール(10.1)と、データおよび識別コードを記憶するためのデータメモリ(10.2)とを有しており、
前記巻取り装置(7)に、コーディング装置(14)が割り当てられていて、該コーディング装置(14)が、RFIDラベル(11)の形成および/または書込みのために
前記パッケージ追跡システム(10)に接続されていることを特徴とする、紡糸装置(2)および巻取り装置(7)を備えた複数の糸を溶融紡糸し、巻き取るための装置。
【請求項8】
前記コーディング装置(14)が、ラベル印刷機(14.1)および/またはRFIDスキャナ(14.2)を有している、請求項
7記載の装置。
【請求項9】
前記コーディング装置(14)が、RFIDアンテナ(14.3)を有していて、該RFIDアンテナ(14.3)が、前記パッケージ追跡システム(10)にワイヤレスに接続されている、請求項
7記載の装置。
【請求項10】
前記巻取りスピンドル(7.1)に保持された前記巻管(12)が、書込み可能かつ読取り可能なそれぞれ1つのRFIDラベル(11)を有している、請求項7から
9までのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
前記RFIDスキャナ(14.2)または前記RFIDアンテナ(14.3)が、前記巻取りスピンドル(7.1)の自由端に対応配置されている、請求項
10記載の装置。
【請求項12】
前記ラベル印刷機(14.
1)により形成された前記RFIDラベル(11)は、前記巻取りスピンドル(7.1)から引き出された前記パッケージ(13)に、手動で割り当てることができる、請求項
7から
9までのいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
前記パッケージ追跡システム(10)および/または前記データメモリ(10.2)が、後続プロセスのプロセス制御装置に接続されている、請求項7から
12までのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の形式の複数の糸を溶融紡糸し、巻き取るための方法と、請求項7の前提部に記載の形式の複数の糸を溶融紡糸し、巻き取るための装置とに関する。
【0002】
多数の繊細なフィラメントストランドをポリマ溶融物から押し出し、1本の糸に纏め、処理し、最終的に巻き取って1つのパッケージを形成する合成糸の製造時には、糸品質の尺度として糸に割り当てられているプロセスパラメータまたは製品パラメータを検出することが通常である。このような品質データは、特に糸の引き続き行われる加工が実施される後続プロセスにとって重要である。
【0003】
国際公開第2016/120187号からは、複数の糸を溶融紡糸し、巻き取るための冒頭で述べた形式の方法および冒頭で述べた形式の装置が知られている。これらの糸には、直接に後続プロセスが割り当てられている。この場合、糸製造のプロセスデータおよび製品データは、巻成されたパッケージに直接に割り当てられる。パッケージのデータは、デジタル式に後続プロセスに割り当てられるか、または識別記号によりパッケージに直接に割り当てられる。パッケージは、包装前に対応して識別記号を付けられるので、後続プロセスにおいて識別およびデータ割当てが保証されている。
【0004】
複数の糸を溶融紡糸し、巻き取るための公知の方法および公知の装置は、オンライン運転およびオフライン運転において求められたデータを最終的にパッケージに割り当て、パッケージへの対応する識別記号付与を実施するために、ロジスティクスについて多くの手間を要する。たとえば、合成糸を製造するために、糸のそれぞれ1つの群、ひいては複数のパッケージを相並んで並行して形成する複数の紡糸位置を使用することが知られている。したがって、オフライン法においてデータを求めることには時間的な手間がよりかかるので、オンライン運転において製造されたパッケージをまず中間貯蔵することが通常である。この場合、包装の直前にデータ識別記号の代わりにパッケージにおけるコーディングを形成しても役に立たない。パッケージが後続プロセスにおいて誤ったデータと結び付けられる危険は極めて大きい。
【0005】
さらに、完成したパッケージの取出しを溶融紡糸プロセスにおいてオペレータにより手動で行うことが同様に通常である。その限りでは、溶融紡糸プロセスから包装に至るまでのパッケージの搬出の自動化された順序は保証されていない。
【0006】
したがって、本発明は、複数の糸を溶融紡糸し、巻き取るための方法ならびに複数の糸を溶融紡糸し、巻き取るための装置を改良し、巻成されたパッケージに対するデータの正確な割当てが常に保証されているようにする、という課題を有している。
【0007】
本発明の別の課題は、各パッケージに、巻成された糸の該当するプロセスパラメータおよび製品パラメータをより大量に割り当てることができるようにすることである。
【0008】
この課題は、本発明によれば、パッケージのコーディングが予定されていて、それぞれ1つのRFIDラベルを形成し、かつ/またはそれぞれ1つのRFIDラベルに書込みを行い、各パッケージに、巻取りスピンドルからの引出しの直後に識別コードを割り当てることにより解決される。
【0009】
本発明に係る装置のためには、巻取り装置に、コーディング装置が割り当てられていて、該コーディング装置が、RFIDラベルの形成および/または書込みのためにパッケージ追跡システムに接続されているという解決手段が生じる。
【0010】
本発明の有利な変化形は、それぞれの従属請求項の特徴および特徴の組み合わせにより定義されている。
【0011】
本発明は、溶融紡糸プロセスにより形成された各パッケージが、完成の直後に、巻取り装置により識別コードを受け取るという特別な利点を有している。識別コードは、RFIDラベルに組み込まれ、パッケージを識別するために。各時点で読み取られる。これにより、製造場所および紡糸位置ならびに紡糸位置の糸を1つのパッケージに割り当てる、若しくは関連づける可能性が生じる。隣接する巻取り箇所において形成されたパッケージに対する互いに異なる識別記号の付与を可能にする識別コードは、取違え不能な識別記号としてパッケージに貼付される。その限りでは、溶融紡糸プロセス中に巻成された糸において測定された製品パラメータおよびプロセスパラメータが識別コードを介して一義的にそれぞれのパッケージに割り当てられる。コーディングのためには、直接にそれぞれのRFIDラベルを形成することができ、代替的には既に存在するRFIDラベルへの書込みが行われる。さらに、RFIDラベルは、純粋な識別コードの他に、付加的なデータをもRFIDラベルに収録することができるという利点を有している。
【0012】
本発明に係る方法の1つの有利な変化形では、RFIDラベルに、巻取りスピンドルからのパッケージの引出し時に直接に、順次それぞれの識別コードを書き込み、RFIDラベルを、巻管において保持する。したがって、巻管は、データを収録するために適している受動的なRFIDラベルを備えて構成されていてよい。
【0013】
巻管に取り付けられたRFIDラベルが既に巻管コードまたは巻管検査に関するデータを有している場合のためには、巻管のRFIDラベルを巻取りスピンドルへの巻管装着時にRFIDスキャナにより読み取る方法のバリエーションが特に有利である。これにより巻管コードまたは巻管のデータを、パッケージのコーディング時に考慮することができる。
【0014】
しかし、代替的には、パッケージの引出し前に、それぞれの識別データを備えたRFIDラベルを印刷し、RFIDラベルを引き出されたパッケージにオペレータが貼付するという方法のバリエーションも実施可能である。この方法のバリエーションは、紡糸位置におけるパッケージの手動の操作および手動の取出しにとって特に有利である。
【0015】
識別コードにより、複数のデータを直接にパッケージに関連付けることができる。その限りでは、各識別コードに、プロセスデータ、機械データおよび製品データのデータセットが割り当てられていて、データセットがデータメモリ内に保存されている方法のバリエーションが好適に実施される。これにより、各時点において、パッケージ内の糸に該当するデータセットを識別コードにより呼び出すことができる。データセットのサイズに応じて、代替的には、データセットを直接にRFIDラベルに記憶させる可能性も生じる。
【0016】
糸が精製加工、たとえばテキスタイル加工を受けるか、または糸が直接に織物工場に供給されるかの後続プロセスとは関係なしに、パッケージの識別コードは、後続プロセス時に読み込まれ、糸の引き続き行われる加工に割り当てられる。
【0017】
その限りでは、糸の引き続きの加工時に対応する措置を考慮するために、全ての機械データ、プロセスデータおよび製品データが後続プロセスに提供されている。識別コードのうちの1つ識別コードのデータセットが、たとえばオフライン運転においてパッケージの試験時に獲得された別のデータにより、該当する識別コードに割り当てられてよい。
【0018】
パッケージのコーディングを巻取りの直後に実施することができるようにするためには、コーディング装置が、ラベル印刷機および/またはRFIDスキャナを有している本発明に係る装置の変化態様が特に有利である。これにより、RFIDラベルが直接に巻取り装置において対応する識別コードを備えて形成される。ラベル印刷機の使用時に、各巻取り装置に別個の1つのラベル印刷機を割り当てる可能性と、代替的には巻取り装置の1つの群に複数のラベル印刷機のうちの1つのラベル印刷機を割り当てる可能性が生じる。
【0019】
RFIDラベルの書込みおよび読取りのためには、RFIDスキャナが書込み/読取り器として構成されている。各巻取り装置に、別個のRFIDスキャナが割り当てられている。したがって、パッケージは巻取りスピンドルからの各引出し時に自動的にコーディングされる。
【0020】
巻取り装置における各パッケージ交換後に、対応する識別コードが存在するようにするために、パッケージ追跡システムが、データおよび制御信号の伝達のために機械制御装置に接続されていて、パッケージ追跡システムが、識別コードを生成するためのコーディングモジュールを有している、本発明に係る装置の変化形が有利に実施されている。したがって、パッケージ追跡装置は、一方では迫っているパッケージ交換の情報を適時に得ることができ、他方では識別コードの生成後にそれぞれのデータとの関連付けを実施することができる可能性が生じる。
【0021】
複数のデータおよび識別コードを収容および記憶するために、パッケージ追跡システムは、データメモリを有している。データが多数であることに基づいて、データメモリは有利にはクラウドメモリにより実現される。このクラウドメモリは、データ交換のための別の自由なインタフェースを有している。
【0022】
識別コードを直接にパッケージの引出し時にRFIDラベル上に組み込むためには、巻取りスピンドルに保持された巻管が、書込み可能かつ読取り可能なそれぞれ1つのRFIDラベルを有している本発明の変化形態が有利である。
【0023】
この場合、RFIDスキャナが巻取りスピンドルの自由端に対応配置されていて、各巻取り装置が別個のRFIDスキャナを支持していることにより、コーディングが簡単な形式で自動化される。その限りでは、パッケージの完全な追跡が可能である。
【0024】
代替的には、それぞれ1つの識別コードを備えた、ラベル印刷機により形成されたRFIDラベルが、巻取りスピンドルから引き出されたパッケージに手動で割り当てられる。これにより、RFIDラベルを直接にパッケージに付着させることができる。
【0025】
パッケージに割り当てられたデータを後続プロセスで使用することができるように、パッケージ追跡システムおよび/またはデータメモリが、後続プロセスのプロセス制御装置に接続されていることがさらに規定されている。これにより、糸の製造時に重要である全てのデータをそれぞれの識別コードを介して後続プロセスに割り当てることができる。
【0026】
したがって、本発明は、糸の溶融紡糸時に検出された全てのデータを糸の引き続き行われる加工のために利用することに特に適している。この場合、形成された糸が巻成されてパッケージを形成する全ての溶融紡糸プロセスが本発明に関連している。したがって、たとえばPOY,FDY,IDY,HOY,またはBCFパッケージをこのようにコーディングすることができる。
【0027】
複数の糸を溶融紡糸し、巻き取るための本発明に係る方法を、以下に本発明に係る装置の1つの実施例につき添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】複数の紡糸位置を備えた本発明に係る装置の1つの実施例の概略的な正面図である。
【
図2】
図1に示した実施例の概略的な側面図である。
【
図3】
図1に示した実施例の複数の紡糸位置のうちの1つの紡糸位置をパッケージ交換の直前に示す概略的な正面図である。
【
図4】糸を溶融紡糸し、巻き取るための本発明に係る装置の1つの別の実施例の概略的な側面図である。
【
図5】複数の紡糸位置を備えた本発明に係る装置の1つの別の実施例の概略的な正面図である。
【0029】
図1および
図2には、複数の糸を溶融紡糸し、巻き取るための本発明に係る装置の第1の実施例が正面図および側面図で図示されている。以下の説明は、両図面のうちの一方の図面に明示的に関連付けがなされない限り、両図面に適用される。
【0030】
本発明に係る装置の実施例は、複数の紡糸位置1.1~1.7を有している。これらの紡糸位置1.1~1.7は、列状の配置で相並んで設置されていて、機械長手方向側を形成する。
図1に図示された紡糸位置の個数は、単に例示的である。基本的には、このような装置は、複数の同一の紡糸位置を含んでいる。
【0031】
図1および
図2に図示されている紡糸位置1.1~1.7の構造は、同一に構成されている。
図2に側面図で図示されている紡糸位置1.1の例について、構成を以下に詳細に説明する。
【0032】
各紡糸位置1.1~1.7は、紡糸装置2を有している。紡糸装置2は、紡糸ビーム2.2を含んでいる。紡糸ビーム2.2は、下面において複数の紡糸ノズル2.1を支持している。紡糸ノズル2.1は、紡糸ポンプ2.3に連結されている。紡糸ポンプ2.3は、好適にはマルチポンプとして構成されていて、各紡糸ノズル2.1のための別個の溶融物流を生ぜしめる。紡糸ポンプ2.3は、溶融物供給部2.4を介して溶融物源(図示せず)、たとえば押出し機に接続されている。紡糸装置2の下には、冷却装置3が配置されている。冷却装置3は、本実施例ではブローチャンバ3.3内の冷却シャフト3.1により形成されている。冷却シャフト3.1には、糸走行方向で降下シャフト3.2が続いている。
【0033】
降下シャフト3.2の下側には、集合装置4が配置されている。集合装置4は、紡糸ノズル2.1毎に押し出されたフィラメントを1本の糸に纏めるために、複数の糸ガイド4.1を有している。この実施例では、紡糸装置2は4本の糸を形成し、これらの糸は参照符号8で示されている。糸の本数は例示的である。このような紡糸装置2は、紡糸位置毎に32本までの糸を同時に形成することができる。
【0034】
集合装置4には、油剤供給装置5が対応配置されている。この油剤供給装置5により、糸8が湿潤される。糸は、糸群としてゴデット装置6により延伸され、巻取り装置7に供給される。この実施例では、ゴデット装置6は、駆動された2つのゴデット6.1により形成されている。ゴデット6.1の間には、糸8を別個に交絡させるために、交絡装置6.2が配置されている。
【0035】
巻取り装置7は、糸8毎にそれぞれ1つの巻取り箇所7.5を有している。全部で4つの巻取り箇所7.5は、巻取りスピンドル7.1に沿って延びている。巻取りスピンドル7.1は、巻取りリボルバ7.2において突出するように保持されている。巻取りリボルバ7.2は、2つの巻取りスピンドル7.1を支持している。これらの巻取りスピンドル7.1は交互に巻き取り領域と、交換領域とにガイドされる。巻取りスピンドル7.1の周面には、巻取り箇所7.5毎にそれぞれ1つの巻管12が緊締されていて、これにより糸を巻管12の周面に巻き取り、それぞれ1つのパッケージ13を形成することができる。
【0036】
各巻取り箇所7.5には、糸8の分配および分離のために、複数の変向ローラ7.6のうちのそれぞれ1つの変向ローラ7.6が対応配置されている。この変向ローラ7.6は、ゴデット装置6に直接に後置されている。糸8を巻き取り、敷設してパッケージ13を形成するために、各巻取り箇所7.5は、綾振り装置7.3を有している。綾振り装置7.3は、押圧ローラ7.4と協働する。押圧ローラ7.4は、巻取りスピンドル7.1に対して平行に配置されていて、糸の巻取り時にパッケージ13の表面に載置している。
【0037】
機械フレーム7.7の、巻取りスピンドル7.1とは反対の側には、複数の駆動装置7.8が配置されている。これらの駆動装置7.8は、巻取りスピンドル7.1、巻取りリボルバ7.2および綾振り装置7.3に対応配置されている。駆動装置7.8は、機械制御装置9に接続されている。
【0038】
機械制御装置9は、同様にゴデット装置6のゴデット6.1と、紡糸装置2の紡糸ポンプ2.3とに接続されている。
【0039】
巻取り装置7により形成されたパッケージ13を製造直後にコーディングするために、パッケージ追跡システム10が設けられている。パッケージ追跡システム10は、機械制御装置9にデータおよび制御信号の伝達のために接続されている。パッケージ追跡システム10は、コーディングモジュール10.1を有している。コーディングモジュール10.1により、各紡糸位置1.1~1.7においてそれぞれ完成したパッケージに対して個別の識別コードが生成される。識別コードの伝達のためには、コーディングモジュール10.1がコーディング装置14に接続されている。このコーディング装置14は、巻取り装置7に割り当てられている。この実施例では、コーディング装置14は、RFIDスキャナ14.2により構成されている。RFIDスキャナ14.2は、書込み/読取り器として構成されていて、これによりRFIDラベルからデータを読み取るか、またはRFIDラベルにデータを書き込むことができる。RFIDスキャナ14.2は、巻取りスピンドル7.1の突出した端部に対応配置されていて、巻取りスピンドル7.1のすぐ上側で機械フレーム7.7に保持されている。
【0040】
特に
図2の図面から明らかであるように、各巻管12はRFIDラベル11を有している。巻管12に設けられたRFIDラベル11は、受動的に書込み可能かつ読取り可能に形成されている。RFIDラベル11は、巻管12の管表面の外側または内側に取り付けられていてよい。基本的には、巻管12の周面にマイクロチップとしてRFIDラベルを統合することも可能である。
【0041】
パッケージ追跡システム10は、データメモリ10.2を有している。このデータメモリ10.2は、後続プロセスへの接続のために少なくとも1つの別のインタフェース15を有している。
【0042】
パッケージ追跡システムのさらなる説明のために、以下では
図3も参照される。
図3には、
図1に示した実施例の紡糸位置1.1が正面図で図示されていて、巻取りリボルバ7.2は、パッケージ交換を開始するために作動されている。
【0043】
巻成されたパッケージ13が予め規定された最大のパッケージ直径または予め規定されたパッケージ重量を有すると、巻取り装置7においてパッケージ交換が開始される。機械制御装置9を介してパッケージ追跡システム10に、紡糸位置1.1の巻取り装置7においてパッケージ交換が迫っていることが信号で伝えられる。今、パッケージ追跡システム10が作動され、紡糸位置1.1の巻取り装置7のために全部で4つの識別コードがコーディングモジュール10.1を介して生成され、これらの識別コードは紡糸位置1.1の巻取り装置7に設けられたRFIDスキャナ14.2に伝達される。最後まで形成されたパッケージを備えた巻取りスピンドル7.1がその交換位置へと到達したあとに、パッケージ13は、順次、巻取りスピンドル7.1から引き出される。その際に、REIDスキャナ14.2を介して、巻成されたパッケージ13の巻管12に設けられた各RFIDラベル11にそれぞれ伝達された識別コードが与えられる。巻成されたパッケージ13の巻管12に設けられた各RFIDラベル11には、今や個別の識別コードが付与されている。この識別コードは、パッケージ追跡システム10内で、巻取り期間中に該当する糸に関して検出された製品データ、機械データおよびプロセスデータに結びつけられる。このようにして生成されたデータセットは、識別コードを介してアドレス指定され、データメモリ10.2内に保存される。その限りでは、データメモリ10.2内には、各識別コードに対してそれぞれ1つのデータセットが保存されていて、このデータセットは、糸の製造履歴を含んでいる。識別コードを介して、データセットがその都度データメモリ10.2から呼び出され、これにより後続プロセスのプロセス制御は対応する情報を考慮することができる。その限りでは、データメモリ10.2は、好適には仮想(バーチャル)メモリとして構成されていて、ワイヤレスの接続部を介して後続プロセスに接続されている。
【0044】
しかし、実験室テスト時に求められた、溶融紡糸プロセスにおいて付加的に求められたデータを、識別コードを介してデータメモリ10.2内のデータセットに付加する可能性もさらに生じる。その限りでは、データセットを、データメモリ10.2内で、各パッケージ13に関して補充することができる。
【0045】
しかし、基本的には、RFIDスキャナ14.2がRFIDラベル11にデータを書き込むことによって、少なくとも幾つかのデータがパッケージに直接に割り当てられる可能性も生じる。その限りでは、各RFIDラベルは、識別コードの他に、たとえば分類のための付加的な製品情報を含んでいてよい。
【0046】
図1の図面から判るように、紡糸位置1.1~1.7の各巻取り装置7は、それぞれ1つの別個のRFIDスキャナ14.2を有している。したがって、溶融紡糸プロセスにおいて形成された各パッケージを一義的な識別コードでコーディングすることができる。
【0047】
糸を溶融紡糸し、巻き取るための本発明に係る装置の
図1および
図2に図示した実施例は、特に自動化のために適している。この場合、全ての工程がオペレータの介入なしに実施される。
【0048】
巻成されたパッケージ13を手動で巻取りスピンドル7.1から取り出さなければならない場合のために、本発明に係る装置の代替的な構成が
図4に図示されている。
図4は、紡糸位置1.1を側面図で概略的に示している。
図4に示した実施例は、実質的に
図2に示した実施例と同一であるので、以下では差異のみを説明し、その他の点については上述の説明が参照される。
【0049】
糸を溶融紡糸し、巻き取るための本発明に係る装置の
図4に図示された実施例では、コーディング装置14がラベル印刷機14.1により形成されている。このラベル印刷機14.1は、パッケージ追跡システム10としてのコーディングモジュール10.1により制御可能であり、これにより識別コードを備えたRFIDラベル11を形成することができる。RFIDラベル11は、オペレータによりラベル印刷機14.1から取り出され、直接にパッケージ13へと供給される。したがって、RFIDラベル11は好適にはパッケージ13の周面に取り付けられる。巻取りスピンドル7.1から引き出された各パッケージ13には順次、RFIDラベル11が装着される。各RFIDラベル11は、個別の識別コードを含んでいる。
【0050】
糸の製造履歴に関するデータセットと識別コードとの関連付けは、上述の実施例と同様である。データセットおよび識別コードは、両方ともデータメモリ10.2内に保存される。
【0051】
図4に示した実施例では、紡糸位置1.1~1.7の各巻取り装置7が、それぞれ1つの個別のラベル印刷機14.1を有していてよい。しかし、好適には、複数のラベル印刷機14.1のうちの1つが、巻取り装置7の1つの群に割り当てられている。したがって、たとえば紡糸位置1.1および1.2に、1つの共通のラベル印刷機14.1が割り当てられていてよい。手動の操作に基づいて、本発明のこの構成は、特に部分的に自動化された設備のために特に適している。この場合、ラベル印刷機14.1により、付加的なデータまたは品質特徴をRFIDラベル11に印刷することができる。したがって、たとえばパッケージの品質レベルを直接表示することができる。
【0052】
パッケージ13の巻管12に、またはパッケージ13に直接に貼付されたRFIDラベル11は、糸の引き続き行われる加工まで維持され、それぞれの後続プロセスにおいて識別コードを読み取るために使用される。読み込まれた識別コードにより、パッケージの糸の製造に関連する全てのデータを呼び出し、後続プロセスに引き渡すことができる。
【0053】
図5には、複数の糸を溶融紡糸し、巻き取るための本発明に係る装置の別の実施例が正面図で図示されている。
図5に示した実施例は、
図1に示した実施例とほぼ同一であるので、以下では差異についてのみ説明し、その他の点については上述の説明が参照される。
【0054】
図5に示した実施例では、巻取り装置7に割り当てられたコーディング装置14が、RFIDアンテナ14.3により構成されている。巻取り装置7の紡糸位置1.1~1.7に割り当てられた各RFIDアンテナ14.3は、同一に構成されていて、RFIDラベルを読み取り、または書き込むために、読取り/書込み器として構成されている。RFIDアンテナ14.3は、ワイヤレスにたとえば無線接続部を介してパッケージ追跡システム10ならびにコーディングモジュール10.1に接続されている。
【0055】
巻取り装置7において形成されたパッケージをコーディングするための紡糸位置1.1~1.7内の機能は、
図1および
図2に示した上述の実施例と同一である。したがって、たとえば既に巻管内に存在しているRFIDラベルが、複数の巻取りスピンドルのうちの1つの巻取りスピンドルへの巻管装着時に読み取られ、これによって場合によっては存在する巻管データまたは巻管コードをパッケージ追跡システム10に伝達することができる。機械制御装置9とパッケージ追跡システム10との間の関連付けにより、それぞれの紡糸位置内で、各巻管が、糸、ひいては紡糸ノズルに割り当てられる。これにより、パッケージの巻成中にそれぞれの糸毎に求められたプロセスデータおよび製品データは、機械制御装置9を介してパッケージ追跡システム10に引き渡すことができる。コーディングモジュール10.1内で、形成された各パッケージに対して個別の識別コードが生成され、RFIDアンテナ14.3に伝達される。RFIDアンテナ14.3は、次いでパッケージの引出し時に、識別コードを、対応するRFIDラベルに書き込むことができる。しかし、代替的には、予め読み込まれた巻管コードを引き続き識別コードとして使用する可能性も生じ、これにより巻管データの他に、パッケージデータも引き続き行われる加工プロセスにおいて既知のものとなる。
【0056】
したがって、複数の糸を溶融紡糸し、巻き取るための本発明に係る方法および本発明に係る装置は、合成糸の製造履歴をデータ収集の形で提供するために特に適している。したがって、巻成された糸のパッケージ内のこのデジタル情報は、後続のプロセスを対応して制御するために特に適している。さらに、このデータは、引き続き行われる加工において生成される別の製品データおよびプロセスデータにより補うことができる。したがって、糸の履歴を最終的に最終製品に割り振ることができる。