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特許7305705温度制御媒体の輸送用管路装置の製造方法
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  • 特許-温度制御媒体の輸送用管路装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】温度制御媒体の輸送用管路装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/20 20060101AFI20230703BHJP
   B29C 49/42 20060101ALI20230703BHJP
   F16L 9/12 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
B29C49/20
B29C49/42
F16L9/12
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021089310
(22)【出願日】2021-05-27
(65)【公開番号】P2022001427
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】20178064.0
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518148098
【氏名又は名称】テーイー オートモーティブ テクノロジー センター ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ウィンター
(72)【発明者】
【氏名】トシュテン シェーファー
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン デイベル
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-050495(JP,A)
【文献】特開平04-229231(JP,A)
【文献】特開平08-057963(JP,A)
【文献】特開2015-199241(JP,A)
【文献】特開平08-068490(JP,A)
【文献】特開昭63-251325(JP,A)
【文献】特開2006-037885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80,65/00-65/82,
F16L 9/00-11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度制御媒体の輸送用管路装置(1)の製造方法であって、
ポリマー材料製のプリフォームを準備し、
前記プリフォームは、ブロー金型内に配置され、長手方向に延びる基体(2)の形状にブロー成形され、前記成形された基体(2)が長手方向に沿った平面に沿って開かれて、分離面(8)を有する部分基体(6、7)が準備され、
分離された前記部分基体(6、7)の間には、少なくとも1つの機能要素(3)が、前記温度制御媒体と接触できるような態様で配置され、
前記部分基体(6、7)は、前記分離面(8)に沿って接合され材料が結合するような態様でつながった状態になり、
前記管路装置(1)が形成されるものであり、
前記部分基体(6、7)の前記分離面(8)は、互いに合致するように構成されている方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記部分基体(6、7)を作るために、
前記基体(2)は、前記分離面(8)に沿って裂開又は切開される
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記ブロー金型は、ブロー成形中において前記基体(2)内に更なる機能要素(3′)が少なくとも1つ成形されるように、設計される
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
前記基体(2)から形成される前記更なる機能要素(3′)は、絞り弁又は接続要素又はコネクタをなす
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法であって、
少なくとも1つの流路(4)が、前記基体(2)内へ成形され、
前記少なくとも1つ流路(4)には、少なくとも1つ機能要素(3)が配置される
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
複数の流路(4)が、前記基体(2)から形成され、
前記複数の流路(4)の間には、流路壁(5)が位置する
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法であって、
前記少なくとも1つの機能要素(3)は、弁、絞り弁、逆止弁、センサ、ポンプ、接続要素、コネクタのいずれかとして設計される
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度制御媒体の輸送用管路装置の製造方法、及び、温度制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電気を利用した移動手段(Elektromobilitat)には温度制御媒体が必要である。電気自動車の電池、特にリチウムイオン電池は、限定された温度範囲内でのみ、最適な能力を発揮する。このため、周囲温度に応じて電池の加熱又は冷却が必要になることがある。よって、電池のセルを所望の温度範囲内で温度制御するために、電気自動車のドライブユニットは、通常、管路装置を有する温度制御回路を備えており、この管路装置を通して、温度制御媒体をセルに導くことができる。設置するスペースが限られているため、温度制御装置はできるかぎりコンパクトでなければならない。
【0003】
更に、電気自動車のドライブユニット全体の構成要素の温度を制御する、特に冷却することが必要な場合がある。これらの構成要素には、電池のほかに、パワーエレクトロニクス機器(Leistungselektronik)や電気モータが含まれる。充電エレクトロニクス機器(Ladeelektronik)やこれに関連するプラグ接続部や回路も、温度制御装置によって冷却することができる。高速充電処理に関しては、このことは特に重要である。
【0004】
また、ドライブユニット内での使用に加えて、車両エレクトロニクス機器(Fahrzeugelektronik)におけるその他の部分、特にセンサ及びオンボードコンピュータに関連する更なる応用分野がある。車両が自動運転用に装備される場合、強力なセンサ及び強力なコンピュータが必要になり、この場合、各システムは冗長になる。設置するスペースが限られているため、これらのシステム内でも温度制御装置による温度制御/冷却が必要とある。
【0005】
空調システム内でも温度制御媒体が使用される。空調システム、特に移動式空調システムは、温度制御媒体を空調システムの個々の装置間で輸送可能にする管路装置を備える。移動式空調システム、例えば自動車の車内空調用の空調システムでは、管路装置は、比較的複雑な構造を有し、各管が異なる材料で作られていることが多く、例えば、金属製の管、熱可塑性物質製の部分管、ゴム様材料製の部分管を有する。部分管を使用する条件は各要件に最適に適合可能であるが、管路装置は、高価であり且つ組立てが複雑で、再利用が困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、安価に且つ簡単に製造可能な、温度制御媒体輸送用の管路装置を提供するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴により達成される。従属請求項は有利な構成を示す。
【0008】
温度制御媒体輸送用の管路装置を製造するための本発明による方法では、分離面を有する各部分基体がまず準備され、少なくとも1つの部分基体には、少なくとも1つの機能要素が、温度制御媒体と接触できるような態様で配置され、その後、部分基体は、分離面に沿って接合され互いに材料が結合するような態様でつながった状態になり、管路装置が形成される。これらの部分基体の分離面(8)は互いに合致するように構成されている。
【0009】
温度制御回路の管路装置は、温度制御回路の機能にとって必要な幾つかの機能要素を備える。これらの機能要素としては、例えば、絞り弁、逆止弁、切り換え可能弁、ポンプ、流量センサ、接続要素、コネクタ、温度センサがある。本発明による管路装置では、これらの機能要素のうちの少なくとも1つが基体内に配置され、つまり、温度制御媒体と接触するように管路装置内部に配置される。
【0010】
部分基体の製造は、好ましくは、ポリマー材料製のプリフォームを準備し、プリフォームをブロー金型内に配置して基体の形状にブロー成形し、この成形された基体を開いて分離面を有する部分基体を作ることにより行われる。基体は、分離面に沿って裂開又は切開することができる。有利な点は、ここでは、部分基体を迅速に且つ安価に製造できることである。更に言えば、分離面に沿って部分基体の優れた嵌め合いが得られる。
【0011】
別の方法として、深絞り又は射出成形等により、部分基体を別々に生成することも考えられる。
【0012】
管路装置は、ブロー成形によって製造されるポリマー材料製の基体からなる。ブロー成形により、複雑な形状の基体を製造することが可能になる。例えば、基体は1つ又は複数の流路を有することができ、この流路を、湾曲させる等、設置場所に必要な形状に成形することができる。更に、流路内で断面形状を変えて成形することが、特に簡単に行える。例えば、流路の一部を円形にすることができるが、流路の残りの部分は、丸形ではなく、例えば楕円形又は矩形に形成される。これにより、管路装置を、特に省スペースに設計し、且つ、設置場所に適合させることが可能となる。基体が、まず形成され、続いて切開され、その後機能要素が備え付けられて再度接合されることにより、基体内に複雑な機能要素を配置することが可能になる。更に、例えば温度安定性又は圧力安定性が充分でないためにブロー成形工程に晒されることに適していない機能要素を、基体の内部に配置することができる。
【0013】
機能要素は、基体とは別に形成される。従って、機能要素は、特に、非熱可塑性材料製の構成要素を有するか又は能動的に制御するか又はその両方が可能である。このような機能要素として、例えば、金属材料製の絞り弁、切り換え可能弁、金属ばね本体を備えた逆止弁、センサ(温度センサ、圧力センサ、流量センサ等)、ポンプ、管路装置を装置等に接続するための接続要素又はコネクタがある。機能要素は、冷却器として設計することも可能であり、温度制御媒体の温度に影響を与えることができる。
【0014】
別々に形成された機能要素は、基体内部に配置される。また、基体は、ブロー成形によって製造され且つポリマー材料製の基体からなり、単一材料で一体に形成されている。部分基体が閉じられた後、機能要素は、固定された態様で基体内に配置される。これにより、複雑な幾何学形状を有する機能的な管路装置が、単純な工程で製造可能になる。
【0015】
基体から、更なる機能要素を少なくとも1つ形成することができる。このため、ブロー金型は、ブロー成形中において基体内に更なる機能要素が成形されるように設計することができる。特に、機能要素が受動的な機能要素であり可動部品を一切持たない場合に、このことは考えられる。例えば、機能要素を絞り弁となしてもよい。絞り弁又は膨脹弁が流れ断面を局所的に狭めることにより、流れる温度制御媒体の圧力が低減し、同時に温度制御媒体が膨張する。絞り弁は、不規則な絞り弁として設計されており、流路のくびれをなす。
【0016】
絞り弁が基体から直接形成されるため、管路装置は特に安価に且つ簡単に製造することができる。機能要素は、流体分配要素として設計することもできる。機能要素は、接続要素又はコネクタとして設計することも考えられる。これにより、管路装置を、温度制御回路の他の構成要素に接続するように設けることができる。
【0017】
少なくとも1つの流路を基体内に成形することができ、この少なくとも1つの流路には、少なくとも1つの機能要素が配置されている。これにより、機能要素は、温度制御媒体に直接接触することになり、温度制御媒体の体積流量に直接影響を与えること、又は、温度制御媒体のステータス情報、例えば温度、体積流量又は圧力を直接把握すること、のいずれかが可能となる。幾つかの流路を基体内に成形することができ、これらの流路の間に、流路壁が形成される。これにより、基体は、空調回路の、異なる部分管を、例えば蒸発器の前後にある流路区域を収容することができる。流路壁により、両方の体積流量が互いから分離される。
【0018】
本発明におけるある使用において、管路装置は、温度制御回路の一部をなす。
【0019】
第1実施形態においては、管路装置は、空調システムの空調回路の一部である。空調システムは、特に、移動式空調システムとして設計可能である。また、移動式空調システムは、自動車の一部とすることができ、空調システムは車内の空調に使用される。管路装置の基体は、複雑な幾何学形状を有しているが機能要素を幾つか有することができるので、管路装置はそれにも関わらず組立てが簡単であり、有する部品は数個のみである。この点で、本発明による管路装置は、特に自動車の移動式空調システムの複雑さを単純にする。電気駆動式の自動車に関して言えば、電気駆動に電池が必要であるために設置するスペースが非常に限られていることから、このことは特に有利である。利用可能な設置スペースに管路装置を適合させることがブロー成形方法により可能になるので、温度制御媒体の輸送用の流路は、温度制御媒体の最適な輸送が可能になるような大きさにされる。
【0020】
第2実施形態においては、管路装置は、電気自動車のドライブユニットの温度制御回路の一部である。管路装置は、温度制御されるべきドライブユニットの要素に温度制御媒体を供給し、これらの要素を所望の温度範囲内で温度制御できるようにする。例えば、要件に応じて、電池を加熱又は冷却することができる。更に、温度制御媒体によって、電気モータ及びパワーエレクトロニクスの構成要素、ならびにプラグ接続部をも、冷却することができる。高速充電処理では、プラグ接続部の冷却に特に有利であり、これは、高充電電流に起因して高速充電中にプラグ接続部が非常に熱くなり得るからである。管路装置はブロー成形されるため、多種多様な形状に製造することができる。管路装置を供する前述の構成要素の設置するスペースが限られている複雑な形状であることに関して言えば、このことは特に有利である。
【0021】
第3実施形態においては、管路装置は、車両エレクトロニクスの構成要素を温度制御用に、特に冷却用に設定される温度制御装置の一部である。車両エレクトロニクスの構成要素として、例えば、自動運転用のセンサ及びコンピュータ、ならびにオンボードコンピュータがある。
【0022】
以下で、本発明による管路装置の幾つかの実施形態を、図を参照して、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】絞り弁が基体内に成形されている管路装置を示す。
図2】幾つかの機能要素が別々に形成されている管路装置を示す。
図3】幾つかの機能要素が別々に形成されている別の管路装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、ブロー成形によって製造されるポリマー材料製の基体2を備える、温度制御媒体輸送用の管路装置1を示す。基体2には、温度制御媒体と接触する機能要素3が少なくとも1つ配置されている。機能要素3は流路4に配置されており、機能要素3は基体2と一体に形成されている。機能要素3は絞り弁をなしており、流路4の断面を狭くることにより形成されている。
【0025】
図2は、図1による管路装置1を示す。基体2は、複数の機能要素3を備えており、これらの機能要素3は、基体2とは別に形成されており、基体2の内部に配置されている。また、基体2は、複数の流路4を有し、これらの流路4の間それぞれに流路壁5が存在する。
【0026】
管路装置1は、幾つかの機能要素3を備え、逆止弁3′、温度センサ、圧力センサ、流量センサ、隣接する装置や管路に管路装置1を接続するための接続ブロック3″の形態のコネクタを備える。更に、管路装置1は、絞り弁3″′を有し、この絞り弁3″′は、流路4に直接成形されており、基体2から単一材料で一体に形成されている。
【0027】
図3は、図2に示す管路装置1の、代替となる実施形態を示す。逆止弁3′及び幾つかのコネクタ3″″の形態の幾つかの機能要素3が、管路装置1に導入されている。
【0028】
図1図3に示す管路装置1は、空調システムの空調回路の一部をなしており、自動車用の移動式空調システムとして設計されている。更なる実施形態によれば、管路装置1は、電気自動車のドライブユニットの温度制御回路の一部をなしており、管路装置1は、電池のセルや電気制御コンポーネントやプラグ接続部に、温度制御媒体を供給する。
【0029】
更なる実施形態においては、管路装置1は、温度制御装置の一部をなしており、電気自動車のドライブユニットの構成要素の温度を制御するよう設定されている。これらの構成要素には、電池のほかに、パワーエレクトロニクス機器や電気モータが含まれる。更に、充電エレクトロニクス機器やこれに関連するプラグ接続部や回路を冷却するように、温度制御装置は設定されており、高速充電処理に関連しては、このことは特に有利である。
【0030】
更に、温度制御装置は、車両エレクトロニクス機器におけるその他の構成要素を温度制御するように、特に冷却するように設定可能である。このような構成要素として、例えば、自動運転用のセンサ及びコンピュータ、オンボードコンピュータがある。
【0031】
図1図3のうちの1つにおける温度制御媒体の輸送用管路装置1の、本発明による製造方法では、まず、ポリマー材料製のプリフォームを準備し、このプリフォームをブロー金型内に配置し、基体2の形状にブロー成形する。続いて、成形された基体2が開くと、分離面8を有する部分基体6、7ができる。このようにするために、基体2は、分離面8に沿って裂開される。少なくとも1つの部分基体6、7には、少なくとも1つの機能要素3が、温度制御媒体と接触できるような態様で配置される。その後、部分基体6、7は、分離面8に沿って接合され互いに材料が結合するような態様でつながった状態になり、管路装置1が形成される。材料が結合するような態様での接続は、部分基体6、7を分離面に沿って加熱することにより行うことができ、部分基体6、7の超音波溶接や接着剤を用いることができる。
図1
図2
図3