(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】木材パルプを含むセルロース複合材料および同セルロース複合材料を製造するプロセス
(51)【国際特許分類】
C08L 1/00 20060101AFI20230703BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230703BHJP
C08L 97/00 20060101ALI20230703BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230703BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20230703BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20230703BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20230703BHJP
【FI】
C08L1/00
C08L101/00
C08L97/00
C08K3/013
C08J3/22 CEP
B33Y80/00
B33Y70/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021143325
(22)【出願日】2021-09-02
(62)【分割の表示】P 2019502120の分割
【原出願日】2017-03-30
【審査請求日】2021-09-30
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518348920
【氏名又は名称】ウエスト フレイザー ミルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】WEST FRASER MILLS LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】マクリーン、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ピース、エドウィン
(72)【発明者】
【氏名】サーノハウス、ジェフリー ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】エリオット、ディーン ジャスティン
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-310312(JP,A)
【文献】特開2011-116838(JP,A)
【文献】特表2015-511187(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0210964(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08J 3/20-3/22
B33Y 80/00
B33Y 70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース複合材料を製造するためのプロセスであって、前記プロセスは、10重量%を超える水分を有する湿潤パルプおよびポリマーマトリックスを含む混合物を溶融加工するステップを含み、
前記パルプは実質的に均一に分散されており、前記溶融加工するステップの間に水分が除去され、前記パルプの割合が前記セルロース複合材料の80重量%~99重量%の範囲である、プロセス。
【請求項2】
前記パルプの水分含有量が、前記パルプの少なくとも15重量%である、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記パルプの水分含有量が、前記パルプの少なくとも20重量%である、請求項
2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記パルプの水分含有量が、前記パルプの少なくとも30重量%である、請求項
3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記セルロース複合材料を形成するために、前記溶融加工するステップにより形成されたマスターバッチをさらに溶融加工するステップをさらに含む、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記さらに溶融加工するステップの前に前記マスターバッチを希釈することをさらに含む、請求項
5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記混合物が、添加剤および充填材のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項
5に記載のプロセス。
【請求項8】
前記溶融加工するステップおよび前記さらに溶融加工するステップのそれぞれが、コンパウンディング、射出成形および押し出しのうちの1つである、請求項
5に記載のプロセス。
【請求項9】
前記マスターバッチが50~99重量%の範囲のパルプを含有し、前記さらに溶融加工するステップの後に、複合材料が5~50重量%の範囲のパルプを含有する、請求項
5に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ポリマーマトリックスが熱可塑性ポリマーマトリックスである、請求項
5に記載のプロセス。
【請求項11】
前記溶融加工するステップの前にパルプの水分含有量を増加させるステップをさらに含む、請求項
5に記載のプロセス。
【請求項12】
製造の物品を形成するプロセスであって、前記プロセスは、
10重量%を超える水分を有する湿潤パルプおよびポリマーマトリックスを含む混合物を溶融加工するステップであって、前記パルプの割合が複合材料の80重量%~99重量%の範囲である溶融加工するステップと、
溶融加工された混合物を前記物品に押し出す、圧縮成形する、または射出成形するステップと、
を含むプロセス。
【請求項13】
前記押し出すステップの前に溶融加工された混合物をペレット化することをさらに含む、請求項
12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記溶融加工するステップは、押し出し、射出成形、ブロー成形、回転成形、熱力学的混合およびバッチ混合のうちの少なくとも1つを含む、請求項
1に記載のプロセス。
【請求項15】
前記溶融加工するステップは、押し出し、射出成形、ブロー成形、回転成形、熱力学的混合およびバッチ混合のうちの少なくとも1つを含む、請求項
12に記載のプロセス。
【請求項16】
前記熱力学的混合は、ペレット粉砕を含む、請求項
14に記載のプロセス。
【請求項17】
前記熱力学的混合は、ペレット粉砕を含む、請求項
15に記載のプロセス。
【請求項18】
木材パルプ及びポリマーマトリックスを含むセルロース複合材料であって、前記木材パルプは前記ポリマーマトリックス内に実質的に均一に分散されており、前記セルロース複合材料は添加剤を含み、前記添加剤はカップリング剤であり、前記木材パルプは、10重量%を超える初期水分含有量を有する、セルロース複合材料。
【請求項19】
前記木材パルプの前記水分含有量は、少なくとも20重量%である、請求項
18に記載のセルロース複合材料。
【請求項20】
前記木材パルプの前記水分含有量は、少なくとも25重量%である、請求項
19に記載のセルロース複合材料。
【請求項21】
前記木材パルプが機械パルプおよび化学パルプのうちの1つである、請求項
18に記載のセルロース複合材料。
【請求項22】
前記木材パルプが前記化学パルプである、請求項
21に記載のセルロース複合材料。
【請求項23】
前記化学パルプが、クラフトプロセスにより得られたクラフトパルプである、請求項
22に記載のセルロース複合材料。
【請求項24】
前記木材パルプが前記機械パルプである、請求項
21に記載のセルロース複合材料。
【請求項25】
前記機械パルプがリグニンを含み、前記リグニンが前記パルプの乾燥重量の5%~35%を構成する、請求項
24に記載のセルロース複合材料。
【請求項26】
前記木材パルプの割合が前記複合材料の50重量%を超え、かつ99重量%までの範囲である、請求項
18に記載のセルロース複合材料。
【請求項27】
前記木材パルプの割合が、前記複合材料の50重量%を超え、かつ95重量%までの範囲である、請求項
26に記載のセルロース複合材料。
【請求項28】
前記木材パルプの割合が前記複合材料の50重量%を超え、かつ90重量%までの範囲である、請求項
27に記載のセルロース複合材料。
【請求項29】
前記木材パルプの割合が前記複合材料の80重量%~99重量%の範囲である、請求項
26に記載のセルロース複合材料。
【請求項30】
前記ポリマーマトリックスは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリオレフィンベースのイオノマーを含む機能性ポリオレフィンコポリマー、ポリプロピレン、ポリオレフィンコポリマー、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリ乳酸(PLA)、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタンおよび熱可塑性エラストマーのうちの少なくとも1つを含む、請求項
18に記載のセルロース複合材料。
【請求項31】
前記ポリマーマトリックスは、生物ベースのポリエステル、生分解性のポリエステル、堆肥化可能なポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリオレフィン、熱可塑性デンプン、セルロース系、PLA(ポリ乳酸)、PHA(ポリヒドロキシアルカノエート)、PBAT(ポリブチレンアジピン酸テレフタレート)、PBS(ポリブチレンサクシネート)、PCL(ポリカプロラクトン)およびPGA(ポリグリコール酸)のうちの少なくとも1つを含むバイオプラスチックポリマーを含む、請求項
18に記載のセルロース複合材料。
【請求項32】
前記ポリオレフィンコポリマーは、エチレン-ブテン、エチレン-オクテンおよびエチレンビニルアルコールのうちの1つを含み、かつ前記ポリスチレンコポリマーが、耐衝撃性ポリスチレンおよびアクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマーのうちの1つを含む、請求項
30に記載のセルロース複合材料。
【請求項33】
酸化防止剤、光安定剤、繊維、発泡剤、起泡性添加剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、衝撃改質剤、殺生物剤、抗菌性添加剤、相溶化剤、可塑剤、粘着付与剤、加工助剤、潤滑剤、難燃剤、顔料および着色剤から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項
18に記載のセルロース複合材料。
【請求項34】
前記カップリング剤が、シラン、ジルコネート、チタネート、官能化ポリマーおよび無水マレイン酸グラフトポリマーのうちの少なくとも1つである、請求項
18に記載のセルロース複合材料。
【請求項35】
前記カップリング剤が前記複合材料の0.1重量%~10重量%の範囲にある、請求項
18に記載のセルロース複合材料。
【請求項36】
追加の充填材をさらに含む、請求項
18に記載のセルロース複合材料。
【請求項37】
前記追加の充填材が、タルク、マイカ、粘土、シリカ、アルミナ、炭素繊維、カーボンブラック、ガラス繊維、木粉、木材繊維、非木材植物繊維、おがくず、木削りくず、新聞紙、紙、亜麻、大麻、小麦わら、籾殻、ケナフ、ジュート、サイザル、ピーナッツ殻、大豆殻、リグニン、炭酸カルシウムおよびセルロース系繊維のうちの少なくとも1つを含む、請求項
36に記載のセルロース複合材料。
【請求項38】
前記追加の充填材が前記複合材料の1重量%~90重量%の範囲である、請求項
36に記載のセルロース複合材料。
【請求項39】
前記追加の充填材が前記複合材料の5重量%~75重量%の範囲である、請求項
38に記載のセルロース複合材料。
【請求項40】
前記複合材料が、96時間の水中での浸漬後に1重量%未満の水分摂取量を有する、請求項
18に記載のセルロース複合材料。
【請求項41】
前記セルロース複合材料が、自動車部品、デッキ用材料、フェンス用材料、レール、屋根ふき材、サイディング、消費者用品、家電用部品および3D印刷部品からなる群より選択される物品の少なくとも一部を形成する、請求項
40に記載のセルロース複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的または化学的な木材パルプを含むセルロース複合材料、およびそのようなセルロース複合材料の製造方法に関する。そのような複合材料の実施形態は、従来のセルロース系供給原料から生ずる複合材料と比較して、改善された機械的特性および耐湿性を示し得る。
【背景技術】
【0002】
再生可能な供給原料から得られる費用対効果の高い複合材料の需要が増加してきている。セルロース系材料は、従来、熱可塑性樹脂の充填材として使用されてきた。例えば、木材プラスチック複合材料(WPC)は近年、多数の市販用の製品にその用途が見いだされてきており、WPCの全市場は年間数十億ドルと推定されている。WPCは、建設および自動車産業において広く使用されている。WPCは、多くの場合、従来の鉱物またはガラス充填複合材料よりも費用対効果が高い。WPCはまた、一般に天然木の外観を有し、それは望ましいものである。しかしながら、従来のWPCは、典型的には、鉱物およびガラス充填複合材料よりも機械的特性に乏しく、かつ耐湿性が低い。
【0003】
化学的に処理されたパルプに基づくセルロース複合材料が最近開発され、商品化されている。化学的に処理されたパルプは、化学処理および高温を伴うクラフトまたは亜硫酸塩プロセスなどの化学的パルプ化プロセスを使用して製造されたセルロース系材料である。これらの化学的パルプ化プロセスは、パルプからヘミセルロースおよびリグニンの大部分を除去するので、得られる化学パルプは残留リグニンをほとんどまたは全く含まない。例えば、化学パルプのリグニン含有量は、通常、5重量%未満、多くの場合1重量%未満である。
【0004】
化学的に処理されたパルプに基づく複合材料は、一般に、WPCよりも改善された機械的特性、より低い臭気を有する。さらに、化学的に処理されたパルプ複合材料は、従来の熱可塑性樹脂のように染色または着色することができる。しかしながら、化学的に処理されたパルプに基づく複合材料は、典型的にはWPCおよび無機充填複合材料よりも高価である。また、それらは、鉱物またはガラス充填複合材料と比較して機械的特性および耐湿性が劣る。これらの理由から、今日まで、化学的に処理されたパルプに基づく複合材料の商業的な採用は、通常、ニッチ用途で行われてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、従来の公知のセルロース複合材料よりも改善された耐湿性又は改善された機械的特性を有するセルロース複合材料を見出すことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、リグニンおよびポリマーマトリックスを有する機械パルプを含むセルロース複合材料が提供される。機械パルプ中のリグニンは、機械パルプの乾燥重量の約15%~35%である。
【0007】
本発明の別の態様によれば、機械パルプとポリマーマトリックスとを含む混合物を溶融加工してマスターバッチ(masterbatch)を形成するステップと、マスターバッチをさらに溶融加工して複合材料を形成するステップと、を含むセルロース複合材料を製造するためのプロセスが提供される。
【0008】
本発明のさらに別の態様によれば、機械パルプおよびポリマーマトリックスを含む混合物を溶融加工するステップと、溶融加工された混合物を物品に押し出すステップと、を含む製造の物品(article of manufacture)を形成するためのプロセスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】セルロース複合材料およびそれから製造される物品を形成するための例示的なプロセスのステップを示す簡略化されたフローチャートである。
【
図2】機械パルプを含むセルロース複合材料を調製するための、本発明の実施形態の一例である、プロセスに含まれるステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面において、本発明の実施形態を例のみにて示す。
本開示の態様は、木材パルプに基づくセルロース複合材料に関する。これらの複合材料のいくつかの実施形態は、化学的に処理されたパルプに基づく複合材料のような、当該技術分野で知られているセルロース複合材料と比較した場合、より費用対効果が高く、改善された耐湿性および/または改善された機械的特性を有する。
【0011】
木材パルプおよびポリマーマトリックスを含有するセルロース複合材料が記載されている。このようなパルプがポリマーマトリックスに組み込まれると、得られるポリマー複合材料の特定の特性を改善することができる。特定の実施形態では、そのような複合材料は、改善された機械的特性および改善された耐湿性を示していた。
【0012】
ポリマーマトリックス中に組み込まれた木材パルプを有するセルロース複合材料の調製のための例示的なプロセスも記載されている。これらのプロセスの例示的な実施形態は、比較的高い水分含有量を有するパルプを溶融加工することを含む。いくつかの実施形態では、溶融加工前のパルプの水分含有量は10重量%より大きくてもよく、他の実施形態では、水分含有量は20重量%よりも大きく、そしてさらに他の実施形態では、水分含有量は30重量%より大きくてもよい。
【0013】
セルロース複合材料を作製するためのこれらのプロセスは、ポリマーマトリックス中に実質的に均一に分散されたパルプを有する複合材料の調製を可能にすることができる。いくつかの実施形態において、それらは、ポリマーマトリックス中に高濃度のパルプを含むマスターバッチを製造するために使用される。マスターバッチは、さらなるポリマーマトリックスを用いて所望の充填レベルに下げるか、または希釈されてもよい。
【0014】
本明細書に記載のプロセスのこれらの例示的な実施形態における湿ったパルプまたは水分含有量の高いパルプの使用は、ポリマーマトリックス中に実質的に均一に分散したパルプを有する複合材料の調製を可能にするといった有益な効果を有する。パルプはマトリックス内でよりよく分離されランダム化され、親水性凝集塊(clumps)も少ない。
【0015】
本明細書に記載された例示的なセルロース複合材料はまた、複合材料の機械的または化学的特性の一方または両方をさらに改善する1つまたは複数の添加剤を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、セルロース複合材料は、カップリング剤または酸化防止剤を含み得る。
【0016】
他の例示的なセルロース複合材料は、複合材料の機械的または化学的特性をさらに改善する1つまたは複数の追加の充填材も含むことができる。
本明細書に記載されたセルロース複合材料のさらに他の実施形態は、従来の押出成形技術を用いて物品に変換することができる。これらの物品は、とりわけ、自動車、建築および建設、消費用用途および家電製品用途、3D印刷など、さまざまな市場で実用化されている。
【0017】
本開示において見出される以下の用語は以下のように使用される:
「セルロース複合材料(Cellulosic Composite)」は、ポリマーマトリックスとセルロース系充填材とを含む複合材料を指すために使用される。
【0018】
「化学的に処理されたパルプ」または「化学パルプ」は、化学的パルプ化プロセス、例えばクラフトまたは亜硫酸パルプ化プロセスを使用して製造されたセルロース材料を指すために使用される。
【0019】
「複合材料」は、ポリマーマトリックスおよび充填材を含む材料を指すために使用される。
「カップリング剤」は、ポリマーマトリックスとセルロース系充填材との間の界面接着を改善する添加剤を指すために使用される。
【0020】
「機械パルプ」は、機械パルプ化プロセスまたは化学機械パルプ化プロセスを使用して製造されたセルロース材料を指すために使用される。例えば、「機械パルプ」は、熱機械パルプ(TMP)、リファイナー機械パルプ(RMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(chemi-thermomechanical pulp)(CTMP)、中密度繊維(MDF)、砕木パルプ(GWP)および漂白したケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)を含む。
【0021】
「溶融加工可能な組成物」は、典型的には高温で、例えば押出成形または射出成形などの従来のポリマー溶融加工技術によって溶融加工することができる配合物(formulation)を指すために使用される。
【0022】
「溶融加工技術」は、例えば押し出し、射出成形、ブロー成形、回転成形、熱力学的混合またはバッチ混合を含み得る様々な溶融加工技術を指すために使用される。
「ポリマーマトリックス」は、溶融加工可能なポリマー材料を指すために使用される。
【0023】
この説明は、本発明の技術のすべての実施形態またはすべての可能な実施形態を説明することを意図するものではない。詳細な説明は、いくつかの例示的な実施形態を提供することを意図している。
【0024】
本開示は、少なくともいくつかの実施形態において、公知のセルロース複合材料と比較して、より費用対効果が高く、および/または改善された耐湿性を有し、および/または改善された機械的特性を有する木材パルプをベースとする複合材料に関する。本明細書に記載されるセルロース複合材料は、ポリマーマトリックスに組み込まれる木材パルプを含む。
【0025】
セルロース複合材料に組み込まれる木材パルプは、機械的プロセスまたはケミサーモメカニカルプロセスを用いて製造することができる。機械的パルプの製造において、木材は、一般に、回転石のような水潤滑研磨面に対して研磨される。粉砕によって生成された熱は、繊維を結合するリグニンを軟化させ、機械力は、粉砕木材(ground wood)(GWD)と称される繊維を分離する。
【0026】
本発明の実施形態では、リファイナー(refiner)を使用することができる。リファイナーは20世紀後半に開発されたものである。リファイナーにおいて、木材チップは、回転するスチールディスクと固定プレートとの間にて集中的なせん断力を受けて、リファイナー機械パルプ(RMP)を生成する。このプロセスのその後の変更では、木材チップは熱により予め軟化され、フィブリル化をより効果的にし、一般に淡色で長繊維を有するサーモメカニカルパルプ(TMP)を生成する。
【0027】
サーモメカニカルパルプのさらなる開発は、粉砕ステップの前に木材チップに亜硫酸ナトリウムのような化学物質を含浸させるCTMPである。得られたCTMPは、一般に色がより薄く、より優れた強度特性を有する。粉砕後、パルプを選別して未精製繊維束を除去する。その後、高付加価値製品に使用するために過酸化物でさらに漂白してBCTMPを製造することができる。
【0028】
記載された複合材料に使用される機械パルプは、高い含有量の残留リグニンを有することを特徴とする。特に機械パルプ中のリグニン含有量は化学パルプ中のリグニン含有量よりも高い。いくつかの実施形態では、機械パルプ中のリグニン含有量は10重量%よりも大きく、他の実施形態では、機械パルプ中のリグニン含有量は15重量%よりも大きく、さらに他の実施形態では、機械パルプ中のリグニン含有量は20重量%より大きい可能性がある。場合によっては、機械パルプは、リグニン含有量が15重量%~35重量%の範囲のケミサーモメカニカルパルプである。これらは機械パルプ中のリグニンの乾燥重量百分率である。
【0029】
木材パルプは、機械的および化学的特性が向上したセルロース複合材料を形成するために、任意の適切なポリマーマトリックスに組み込むことができる。いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックス中のパルプ充填量は約5~99重量%の範囲であり、他の実施形態ではパルプ充填量は約10~95重量%の範囲であり、さらに他の実施形態では、パルプ充填量は10~90重量%である。いくつかの実施形態では、マスターバッチ中のパルプ充填量は、50~99重量%の範囲である。これらは、最終的な複合材料またはマスターバッチ中のパルプの乾燥重量百分率である。
【0030】
ポリマーマトリックスは、1種以上のポリマーを含むことができる。本発明のセルロース複合材料の実施形態において使用できるポリマーの非限定的な例は、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリオレフィンベースのイオノマーを含む機能性ポリオレフィンコポリマー、ポリプロピレン(PP)、ポリオレフィンコポリマー(例えば、エチレン-ブテン、エチレン-オクテン、エチレンビニルアルコール)、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー(例えば、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリ乳酸(PLA)、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー(例えば、SIS、SEBS、SBS)、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの最終用途の適用では、ポリオレフィンは、例えば自動車部品として有用な物品において、ポリマーマトリックスとして供するのに適している。
【0031】
本発明において有用なバイオプラスチックポリマーには、バイオベースの、生分解性の、または堆肥化可能な(compostable)ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリオレフィン、熱可塑性デンプンおよびセルロースが含まれる。特に興味深いバイオプラスチックには、バイオベースの、生分解性の、または堆肥化可能なポリエステルが含まれる。バイオベースの、生分解性の、または堆肥化可能なポリエステルの非限定的な例は、PLA(ポリ乳酸)、PHA(ポリヒドロキシアルカノエート)、PBAT(ポリブチレンアジピン酸テレフタレート)、PBS(ポリブチレンサクシネート)、PCL(ポリカプロラクトン)、PGA(ポリグリコール酸)を含む。
【0032】
ポリ乳酸は、多くの用途において、石油化学系プラスチックに対する実用的な代替物であることがますます証明されている。PLAは再生可能な資源から生産され、生分解性である。これは環境に優しい、または環境に敏感な用途に適している。加えて、PLAは、紙コーティング、繊維、フィルム、包装材料などを含むいくつかの産業用途において有用である独自の物理的特性を有する。
【0033】
ポリマーマトリックスは、任意選択的に、1種以上の添加剤を含有してもよい。従来の添加剤の非限定的な例は、酸化防止剤、光安定剤、繊維、発泡剤(blowing agents)、起泡性添加剤(foaming additives)、ブロッキング防止剤、熱安定剤、衝撃改質剤、殺生物剤、抗菌性添加剤、相溶化剤(compatibilizers)、可塑剤、粘着付与剤、加工助剤、潤滑剤、カップリング剤、難燃剤、顔料および着色剤を含む。添加剤は、粉末、ペレット、顆粒の形態で、または他の押出成形可能な形態で、溶融加工可能な組成物に組み込むことができる。溶融加工可能な組成物に組み込まれる添加剤の量および種類は、ポリマーマトリックスおよび完成した組成物の所望の物理的特性に応じて、適切に選択することができる。溶融加工の当業者は、完成した複合材料の所望の物理的特性を達成するために、特定のポリマーマトリックスおよび機械パルプ充填材のための添加剤の適切な量および種類を選択することができる。
【0034】
本発明のセルロース組成物のいくつかの実施形態は、カップリング剤および/または酸化防止剤を添加剤として含む。カップリング剤の非限定的な例としては、シラン、ジルコネート、チタネートおよび官能化ポリマーが挙げられる。好ましいカップリング剤としては、シランおよび無水マレイン酸グラフトポリマーが挙げられる。無水マレイン酸グラフトポリマーの非限定な例には、Polybond(登録商標)(Addivant)、Extinity(商標名)(NWP)、Integrate(Lyondell Basell)、およびFusabond(登録商標)(DuPont)の商品名で販売されているものが含まれる。好ましい酸化防止剤としては、モノマー、ポリマーおよびオリゴマーフェノールが挙げられる。酸化防止剤の非限定的な例には、Irganox(登録商標)、Irgaphos(BASF)およびHostanox(登録商標)(Clariant)の商品名で販売されているものが含まれる。カップリング剤および酸化防止剤の典型的な充填レベルは、複合材料処方物の約0.1~10重量%である。
【0035】
本発明のセルロース組成物のいくつかの実施形態は、1つ以上の追加の充填材を含む。これらは、溶融加工可能な組成物に組み込むことができ、最終的なセルロース複合材料またはそれから製造された物品の機械的特性を調整するために使用することができる。例えば、充填材は、セルロース複合材料の機械的および熱的特性を改善するように機能することができる。充填材はまた、セルロース複合材料の熱膨張係数(CTE)を調整して、例えばそれとともに使用される他の材料との適合性をより高めるように使用することもできる。充填材の非限定的な例には、無機および有機充填材(例えば、タルク、マイカ、粘土、シリカ、アルミナ、炭素繊維、カーボンブラック、ガラス繊維)および従来のセルロース系材料(例えば、木粉、木材繊維、非木材植物繊維、おがくず、木削りくず(wood shavings)、新聞紙、紙、亜麻、大麻、小麦わら、籾殻、ケナフ、ジュート、サイザル、ピーナッツ殻、大豆殻、または他のセルロース含有材料)および任意選択的に追加のリグニンが含まれる。溶融加工可能な組成物中の充填材の量および種類は、ポリマーマトリックスおよび完成した組成物の所望の物理的特性に応じて適切に選択することができる。炭酸カルシウム、タルク、粘土およびセルロース系繊維のような充填材は、多くの用途に適している。いくつかの実施形態では、追加の充填材は複合材料の1重量%~90重量%を構成し、いくつかの実施形態では、複合材料の5重量%~75重量%を構成し、いくつかの実施形態では、複合材料の1重量%~60重量%を構成する。
【0036】
パルプをベースとし、任意の添加剤および/または追加の充填材を組み込んだセルロース複合材料は、成分をポリマーマトリックスに混和する(blending)ことによって調製することができる。ポリマーマトリックスの種類および性質に応じて、これは様々な従来の混合プロセスを用いて行うことができる。溶融加工可能な熱可塑性組成物の場合、ポリマーマトリックスおよび添加剤は、コンパウンディングミル、バンバリーミキサーまたは混合押出機などのプラスチック業界で一般的に使用される任意の適切な混和技術によって混合することができる。混合操作は、ポリマーマトリックスの融点または軟化点を超える温度で好都合に実施することができる。ある場合には、混合物の溶融加工は、80℃~400℃の温度で行われるが、適切な操作温度は、複合材料配合物の融点、溶融粘度、および熱安定性に応じて選択される。押出機のような異なるタイプの溶融加工装置を使用して、本明細書に記載された溶融加工可能な組成物を加工することができる。
【0037】
得られた溶融混和混合物は、最終製品形状の形態に直接押し出されるか、またはペレット化、そうでなければ粉砕されて所望の粒径または粒度分布にされ得、次いで、混和された混合物を溶融加工する二軸押出機のような押出機に供給されて、最終製品の形状を形成してもよい。
【0038】
図1に示すフローチャートは、上記した例示的なプロセスを示す。例示的なプロセスS100は、ステップS102において、湿ったパルプをポリマーマトリックスに混合することから開始する。ステップS104において添加剤の任意の使用が所望される場合、添加剤が混合物に添加され(ステップS106)、そうでなければステップS106は考慮されない(bypassed)。同様に、充填材の任意の使用が所望される場合(ステップS108)、充填材が混合物に添加される(ステップSI10)が、そうでなければステップSI10は考慮されない。上記のように、溶融加工可能な熱可塑性組成物の場合、ポリマーマトリックスおよび添加剤は、コンパウンディングミル、バンバリーミキサーまたは混合押出機などの任意の適切な混和技術によって混合することができる。ステップSI12では溶融加工が使用され、この実施形態ではそれは80℃~400℃の温度であってもよい。ステップS114でペレット化/粉砕するかどうかの決定に応じて、ステップS112の排出物(output)は、最終生成物形状の形態に直接押し出されるか(ステップS120)、またはペレット化、そうでなければ粉砕されて(ステップS116)所望の粒径または粒度分布にされ得、次いで、混和された混合物を溶融加工する二軸押出機のような押出機に供給されて、最終製品の形状を形成する(ステップS120)。
【0039】
セルロース複合材料の調製のための公知のプロセスにおいて、パルプは、典型的には乾燥しているか、または水分含有量が低い。パルプを引き離すか、または破砕し、ポリマーマトリックス中にパルプを十分に均一に分散させることは困難であり得る。
【0040】
機械パルプまたは化学パルプを含むセルロース複合材料の調製のためのプロセスの好ましい実施形態は、比較的高い水分含有量を有するパルプを溶融加工することを含む。いくつかの実施形態では、溶融加工前のパルプの水分含有量は10重量%よりも大きく、好ましい実施形態では、水分含有量は20重量%よりも大きく、特に好ましい実施形態では、水分含有量は30重量%より大きい。いくつかの実施形態では、溶融加工前のパルプの水分含有量は40重量%~60重量%の範囲である。
【0041】
比較的高い水分含有量を有する機械パルプまたは化学パルプを使用することにより、混合物の溶融加工時のポリマーマトリックス中のパルプの分散が促進され得ることが分かった。溶媒の添加は、分散をさらに改善することができる。水分は、パルプ繊維の分離を助長する傾向があり、湿気を含んだパルプは、もつれて固まる傾向がある乾燥したパルプよりも容易に崩壊する傾向がある。水は、溶融加工ステップの間に、例えば蒸発によって徐々に除去される。この革新的な湿式処理アプローチは、ポリマーマトリックス中に実質的に均一に分散されたパルプを有する複合材料の調製を可能にし、ポリマーマトリックス中へのパルプの高充填量を伴う複合材料の調製を可能にする。例えば、複合材料中に95重量%を超える充填量を達成することができる。
【0042】
パルプを含むセルロース複合材料の調製のためのプロセスのいくつかの実施形態では、パルプは乾燥しているか、または低い水分含有量で供給され、パルプの水分含有量はポリマーマトリックスでパルプを溶融加工する前に増加される。例えば、パルプの乾燥ケーキは、水を添加することによって再水和され、次いで、パルプは、本明細書に記載されているように、ポリマーマトリックスおよび複合材料の任意の他の所望の成分とともに溶融加工され得る。
【0043】
本発明のセルロース複合材料およびそれから製造される物品を調製するプロセスのいくつかの実施形態では、セルロース複合材料は、2つの溶融加工ステップを含むプロセスで製造される。第1に、パルプ複合材料のマスターバッチは、上記のような高い水分含有量のパルプを、熱可塑性ポリマーマトリックス、および任意選択的に他の添加剤または充填材と溶融加工することによって製造される。得られたマスターバッチは、高濃度のパルプを有し、その後、第2の溶融加工ステップ(例えば、コンパウンディング、射出成形または押し出し)を用いて、最終用途のために、より適切な充填レベルに下げる(letdown)(または希釈する)ことができる。好ましい実施形態では、マスターバッチは、約50重量%~99重量%の範囲のパルプ含有量を有し、下げられたもの(letdown)は、約5重量%~50重量%の範囲のパルプ含有量を有する。
【0044】
上記の例示的なプロセスを
図2に示す。図示されるように、例示的なプロセスS200は、パルプS201を得ることから始まる。上述のように、ステップS201におけるパルプは、乾燥した状態で供給されても、低い水分含有量で供給されてもよい。ステップS202において、例えば水を加えることによって水分がパルプに導入される。
【0045】
ステップS203において、パルプは、ポリマーマトリックスと混合または配合される。ステップS204において添加剤の任意の使用が所望される場合、添加剤が混合物に添加され(ステップS206)、そうでなければステップS206は考慮されない。同様に、充填材の任意の使用が所望される場合(ステップS208)、充填材が混合物に添加され(ステップS210)、そうでなければステップS210は考慮されない。
【0046】
ステップS212において、2つの溶融加工ステップのうちの第1のステップが、マスターバッチを形成するために使用される。得られるマスターバッチは、高濃度のパルプを有し得る。いくつかの実施形態では、ステップS212から得られたマスターバッチは、約50重量%~99重量%の範囲のパルプを含むことができる。
【0047】
ステップS212からのこのマスターバッチは、続いて、ステップS214において、下げるか又は希釈される。ステップS214からの希釈されたマスターバッチは、約5重量%~50重量%の範囲のパルプを含有していてもよい。
【0048】
続いて、第2の溶融加工ステップS216が、パルプを含む所望のセルロース複合材料を得るために使用される。ステップS216における溶融加工は、コンパウンディング、射出成形または押し出しを含んでもよい。
【0049】
本明細書に記載されるセルロース複合材料の実施形態は、自動車、建築および建設、消費用および家電用市場において幅広い有用性を有する。本開示のセルロース複合材料の潜在的用途の非限定的な例としては、自動車部品、デッキ用材料(decking)、フェンス用材料(fencing)、レール(railing)、屋根ふき材(roofing)、サイディング、消費者用品、容器および3D印刷部品が挙げられる。
【0050】
本明細書に記載のセルロース複合材料を溶融加工することによって製造された物品は、優れた特性を示すことができる。例えば、それらは改善された機械的特性および/または耐湿性を有し得る。
【0051】
【0052】
【0053】
【表3】
乾燥重量に基づいて約50%の水分含有量および約25%重量%のリグニン含有量を有する機械パルプ、この場合はCTMPを、まず、ペレットマスターズ(Pellet Masters)(チペワフォールズ(Chippewa Falls)、ウィスコンシン州)から市販されているような5インチ(5’’)(12.7cm)の電気ペレットミルを動作させて緻密化し、材料をペレット化する。4つの異なるマスターバッチサンプルであるMB1~4は、それぞれが高濃度のCTMP(95%)を有する表2に示すような異なる組成で調製した。マスターバッチサンプルは、プラスチックバッグ内にて、ペレット化した湿ったCTMPをHDPEまたはPPと、および2つの場合では酸化防止添加剤も一緒に、乾燥混和することによって調製され、次いで27mmの二軸押出機(52:1 L:D、Entek Extruders社(オレゴン州レバノン)より市販されている)内に混合物を重量測定的に(gravimetrically)供給した。コンパウンディングは、ゾーン1~13において以下の温度プロファイル(°F):100°F(37.8℃),350°F(176.7℃),400°F(204.4℃),400°F(204.4℃),400°F(204.4℃),400°F(204.4℃),400°F(204.4℃),400°F(204.4℃),400°F(204.4℃),400°F(204.4℃),400°F(204.4℃),400°F(204.4℃),400°F(204.4℃)を用いて行った。ダイを取り出しながら材料は押出機を通過させ、乾燥した粒状物として回収した。
【0054】
表3に示すように、さらなる量の熱可塑性ポリマーマトリックス(HDPEまたはPP)(そして、2つの場合ではカップリング剤も一緒に)と混合することによって、マスターバッチサンプルMB1~4を引き続いて下げて(希釈し)、6つの複合材料サンプル1~6を形成した。成分をプラスチックバッグ中で乾燥混和し、次いで27mmの二軸押出機(52:1 L:D、Entek Extruders社(オレゴン州レバノン)より市販されている)内に重量測定的に供給した。コンパウンディングは、ゾーン1~13において以下の温度プロファイル(°F):100°F(37.8℃),350°F(176.7℃),400°F(204.4℃),400°F(204.4℃),400°F(204.4℃),400°F(204.4℃),400°F(204.4℃),400°F(204.4℃),400°F(204.4℃),400°F(204.4℃),400°F(204.4℃),400°F(204.4℃),400°F(204.4℃)および380°F(193.3℃)のダイの温度を用いて行った。複合材料をストランドに押し出し、約1~2mmの長さのペレットにペレット化した。
【0055】
表3に示す組成を有するサンプルCE1~4も、比較例として同様に調製した。タルクおよびガラス繊維は、ゾーン6の下流側に供給された。サンプルCE5は、Weyerhaeuser社から得られた。
【0056】
得られた複合材料サンプルを試験用試料に射出成形し、その特性をASTM D790(曲げ特性)およびASTM D638(引張特性)に従って試験した。比重はアルキメデス法を用いて決定した。衝撃試験(アイゾット衝撃)は、ASTM D256に従って実施した。水分摂取は、水中で24時間および96時間浸漬した後の重量分析によって決定した。この試験の結果を以下の表4に示す。
【0057】
【表4】
サンプルCE1~CE5の結果は比較例として提供され、従来のガラス及びタルクで充填されたPP及びHDPE複合材料の特性を示す。CE5は、クラフトパルプ化プロセスからの化学パルプを含む商業的に入手可能なセルロース充填ポリプロピレン複合材料であるThrive(登録商標)について報告された特性を実証している。サンプル1~6の結果は、本発明の特定の実施形態に従うセルロース系機械パルプベース複合材料の特性を示す。
【0058】
機械パルプ(CTMP)を含む複合材料サンプルのいくつかは、曲げ弾性率および水分摂取に関して、CE5(Thrive(登録商標))と比較して同等またはそれより優れた特性を示した。ポリプロピレンマトリックスおよびカップリング剤を含むサンプル5および6が特に良好に実施された。カップリング剤は、サンプル3とサンプル5、サンプル4とサンプル6との結果を比較することによって観察されるように、特性を向上させるようであった。
【0059】
本明細書に記載の機械パルプの他に、他のリグニン含有物質をポリマーマトリックスに組み込んで同様の方法で複合材料を製造することができる。例えば、草およびリサイクルされた材料を含む木質および非木質源由来のリグニン含有繊維は、加工され、複合材料に組み込まれ得る。非木質材料およびパルプのリグニン含有量は、5重量%から上方に変動し得る。
【0060】
特定の実施形態が本明細書に図示され説明されてきたが、広範な代替実施形態または同等の実施形態が、本発明の範囲から逸脱することなく、示され説明された特定の実施形態の代わりに用いられてもよいことが当業者には理解されよう。この出願は、本明細書で論じる実施形態の適応または変形を包含することを意図されている。したがって、本発明は特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることが明白に意図されている。
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
木材パルプ及びポリマーマトリックスを含むセルロース複合材料であって、パルプはポリマーマトリックス内に実質的に均一に分散されているセルロース複合材料。
[付記2]
前記木材パルプが機械パルプおよび化学パルプのうちの1つである、付記1に記載のセルロース複合材料。
[付記3]
前記木材パルプが前記化学パルプである、付記2に記載のセルロース複合材料。
[付記4]
前記化学パルプが、クラフトプロセスにより得られたクラフトパルプである、付記3に記載のセルロース複合材料。
[付記5]
前記パルプが前記機械パルプである、付記2に記載のセルロース複合材料。
[付記6]
前記機械パルプがリグニンを含み、前記リグニンが前記パルプの乾燥重量の5%~35%を構成する、付記5に記載のセルロース複合材料。
[付記7]
前記パルプの割合が前記複合材料の5重量%~99重量%の範囲である、付記1に記載のセルロース複合材料。
[付記8]
前記パルプの割合が、前記複合材料の10重量%~95重量%の範囲である、付記7に記載のセルロース複合材料。
[付記9]
前記パルプの割合が前記複合材料の10重量%~90重量%の範囲である、付記8に記載のセルロース複合材料。
[付記10]
前記パルプの割合が前記複合材料の80重量%~99重量%の範囲である、付記7に記載のセルロース複合材料。
[付記11]
前記ポリマーマトリックスは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリオレフィンベースのイオノマーを含む機能性ポリオレフィンコポリマー、ポリプロピレン、ポリオレフィンコポリマー、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリ乳酸(PLA)、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタンおよび熱可塑性エラストマーのうちの少なくとも1つを含む、付記1に記載のセルロース複合材料。
[付記12]
前記ポリマーマトリックスは、生物ベースのポリエステル、生分解性のポリエステル、堆肥化可能なポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリオレフィン、熱可塑性デンプン、セルロース系、PLA(ポリ乳酸)、PHA(ポリヒドロキシアルカノエート)、PBAT(ポリブチレンアジピン酸テレフタレート)、PBS(ポリブチレンサクシネート)、PCL(ポリカプロラクトン)およびPGA(ポリグリコール酸)のうちの少なくとも1つを含むバイオプラスチックポリマーを含む、付記1に記載のセルロース複合材料。
[付記13]
前記ポリオレフィンコポリマーは、エチレン-ブテン、エチレン-オクテンおよびエチレンビニルアルコールのうちの1つを含み、かつ前記ポリスチレンコポリマーが、耐衝撃性ポリスチレンおよびアクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマーのうちの1つを含む、付記11に記載のセルロース複合材料。
[付記14]
添加剤を含む、付記1に記載のセルロース複合材料。
[付記15]
前記添加剤が、酸化防止剤、光安定剤、繊維、発泡剤、起泡性添加剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、衝撃改質剤、殺生物剤、抗菌性添加剤、相溶化剤、可塑剤、粘着付与剤、加工助剤、潤滑剤、カップリング剤、難燃剤、顔料および着色剤のうちの少なくとも1つである、付記14に記載のセルロース複合材料。
[付記16]
前記添加剤がカップリング剤である、付記14に記載のセルロース複合材料。
[付記17]
前記カップリング剤が、シラン、ジルコネート、チタネート、官能化ポリマーおよび無水マレイン酸グラフトポリマーのうちの少なくとも1つである、付記16に記載のセルロース複合材料。
[付記18]
前記カップリング剤が前記複合材料の0.1重量%~10重量%の範囲にある、付記16に記載のセルロース複合材料。
[付記19]
追加の充填材をさらに含む、付記1に記載のセルロース複合材料。
[付記20]
前記追加の充填材が、タルク、マイカ、粘土、シリカ、アルミナ、炭素繊維、カーボンブラック、ガラス繊維、木粉、木材繊維、非木材植物繊維、おがくず、木削りくず、新聞紙、紙、亜麻、大麻、小麦わら、籾殻、ケナフ、ジュート、サイザル、ピーナッツ殻、大豆殻、リグニン、炭酸カルシウムおよびセルロース系繊維のうちの少なくとも1つを含む、付記19に記載のセルロース複合材料。
[付記21]
追加の充填材が前記複合材料の1重量%~90重量%の範囲である、付記19に記載のセルロース複合材料。
[付記22]
追加の充填材が前記複合材料の5重量%~75重量%の範囲である、付記21に記載のセルロース複合材料。
[付記23]
前記複合材料が、96時間の水中での浸漬後に1重量%未満の水分摂取量を有する、付記1乃至22のいずれか一項に記載のセルロース複合材料。
[付記24]
前記ポリマー複合材料が、自動車部品、デッキ用材料、フェンス用材料、レール、屋根ふき材、サイディング、消費者用品、家電用部品および3D印刷部品からなる群より選択される物品の少なくとも一部を形成する、付記23に記載のセルロース複合材料。
[付記25]
セルロース複合材料を製造するためのプロセスであって、前記プロセスは、湿潤パルプおよびポリマーマトリックスを含む混合物を溶融加工する第1のステップを含む、プロセス。
[付記26]
前記パルプの水分含有量が、前記パルプの少なくとも10重量%である、付記25に記載のプロセス。
[付記27]
前記パルプの水分含有量が、前記パルプの少なくとも20重量%である、付記26に記載のプロセス。
[付記28]
前記パルプの水分含有量が、前記パルプの少なくとも30重量%である、付記27に記載のプロセス。
[付記29]
前記第1のステップから形成されたマスターバッチを溶融加工して前記複合材料を形成する第2のステップをさらに含む、付記25に記載のプロセス。
[付記30]
前記第2の溶融加工ステップの前に前記マスターバッチを希釈することをさらに含む、付記29に記載のプロセス。
[付記31]
前記混合物が、添加剤および充填材のうちの少なくとも1つをさらに含む、付記29に記載のプロセス。
[付記32]
溶融加工の第1のステップおよび第2のステップのそれぞれが、コンパウンディング、射出成形および押し出しのうちの1つである、付記29に記載のプロセス。
[付記33]
溶融加工の第1のステップの後に、マスターバッチが50~99重量%の範囲のパルプを含有し、溶融加工の第2のステップの後に、複合材料が5~50重量%の範囲のパルプを含有する、付記29に記載のプロセス。
[付記34]
前記ポリマーマトリックスが熱可塑性ポリマーマトリックスである、付記29に記載のプロセス。
[付記35]
溶融加工の第1のステップの前にパルプの水分含有量を増加させるステップをさらに含む、付記29に記載のプロセス。
[付記36]
付記25乃至35のいずれか一項に記載のプロセスに従って製造されたセルロース複合材料。
[付記37]
製造の物品を形成するプロセスであって、前記プロセスは、
a)湿潤パルプおよびポリマーマトリックスを含む混合物を溶融加工するステップと、
b)溶融加工された混合物を前記物品に押し出すステップと、
を含むプロセス。
[付記38]
前記押し出すステップの前に溶融加工された混合物をペレット化することをさらに含む、付記37に記載のプロセス。