(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】体積弾性波フィルタ
(51)【国際特許分類】
H03H 3/02 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
H03H3/02 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021170644
(22)【出願日】2021-10-19
(62)【分割の表示】P 2019569947の分割
【原出願日】2018-06-11
【審査請求日】2021-10-19
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518132499
【氏名又は名称】アールエフエイチアイシー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】リー,ウォン サン
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0000058(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0157632(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0073640(US,A1)
【文献】特開2008-219529(JP,A)
【文献】特開2016-076798(JP,A)
【文献】特開2007-129776(JP,A)
【文献】特開2010-136317(JP,A)
【文献】特開平10-209794(JP,A)
【文献】特表2015-501102(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0228876(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0296586(US,A1)
【文献】国際公開第2013/031617(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/105237(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積弾性波フィルタを製造する方法であって:
圧電層を形成するステップと;
前記圧電層の第一の表面上に第一の金属層を形成するステップと;
前記第一の金属層上に第一のパッシベーション層を形成するステップと;
前記第一のパッシベーション層上にダイヤモンド基板を形成するステップと;
前記圧電層の第二の表面上に第二の金属層を形成するステップと;
前記圧電層の一部を除去して前記第一の金属層の一部を露出させるステップと;
前記第一の金属層の露出部分上に金属パッドを形成するステップとを含
み、
圧電層を形成する前記ステップが:
基板上に前記圧電層を形成するステップと;
前記圧電層上に第二のパッシベーション層を形成するステップと;
前記第二のパッシベーション層上にダミー・ウェーハを形成するステップと;
前記基板を除去するステップとを含む、
方法。
【請求項2】
ダイヤモンド基板を形成する前記ステップが:
前記第一のパッシベーション層上にシード層を形成するステップと;
前記シード層上に前記ダイヤモンド基板を成長させるステップとを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記シード層がダイヤモンド粉末で形成される、請求項
2記載の方法。
【請求項4】
ダイヤモンド基板を形成する前記ステップの後に、前記ダミー・ウェーハおよび前記第二のパッシベーション層を除去するステップをさらに含む、
請求項
1記載の方法。
【請求項5】
前記ダミー・ウェーハがシリコンから形成される、請求項
1記載の方法。
【請求項6】
前記圧電層が、GaN、AlNおよびZnOのうちの少なくとも一つを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記第一の金属層、第二の金属層および金属パッドのそれぞれが電気伝導性の金属から形成される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記第一のパッシベーション層が、ポリSiおよびSiNの少なくとも一つを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
体積弾性波フィルタを作製するためのパターン・データの一つまたは複数のシーケンスを担持する非一時的なコンピュータ可読可能媒体であって、一つまたは複数のプロセッサによ
って、体積弾性波フィルタを作製するためのコンピュータ・プログラムと一緒にパターン・データの前記一つまたは複数のシーケンス
をロードすることは、
前記コンピュータ・プログラムを適応させて、該一つまたは複数のプロセッサに:
圧電層を形成するステップと;
前記圧電層の第一の表面上に第一の金属層を形成するステップと;
前記第一の金属層上に第一のパッシベーション層を形成するステップと;
前記第一のパッシベーション層上にダイヤモンド基板を形成するステップと;
前記圧電層の第二の表面上に第二の金属層を形成するステップと;
前記圧電層の一部を除去して、前記第一の金属層の一部を露出させるステップと;
前記第一の金属層の露出部分上に金属パッドを形成するステップとを実行させる
ようにし、
前記一つまたは複数のプロセッサによって、体積弾性波フィルタを作製するための前記コンピュータ・プログラムと一緒にパターン・データの前記一つまたは複数のシーケンスをロードすることが、前記コンピュータ・プログラムを適応させて、該一つまたは複数のプロセッサに、圧電層を形成する前記ステップを:
基板上に前記圧電層を形成するステップと;
前記圧電層上に第二のパッシベーション層を形成するステップと;
前記第二のパッシベーション層上にダミー・ウェーハを形成するステップと;
前記基板を除去するステップとを実行することによって実行させるようにする、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項10】
一つまたは複数のプロセッサ
によって、体積弾性波フィルタを作製するための前記コンピュータ・プログラムと一緒にパターン・データの前記一つまたは複数のシーケンス
をロードすることが、前記コンピュータ・プログラムを適応させて、該一つまたは複数のプロセッサに、ダイヤモンド基板を形成する前記ステップを:
前記第一のパッシベーション層上にシード層を形成するステップと;
前記シード層上に前記ダイヤモンド基板を成長させるステップとを実行することによって実行させる
ようにする、
請求項
9記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線周波数(RF)信号フィルタに関し、より詳細には、体積弾性波(bulk acoustic wave、BAW)フィルタおよび体積弾性波フィルタを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
望まれない周波数範囲の信号を除去するBAWフィルタは、携帯電話のようなさまざまな無線周波数通信装置で一般的に使用されている。さまざまな機能が装置に付加される一方で、モバイル装置のサイズおよび重量が低減されたことで、現代のモバイル装置は、低減された形状因子および向上された品質(quality)因子をもつBAWフィルタを必要とする。よって、過去10年間に、体積弾性波(BAW)フィルタ技術は、通信装置の要求を満たすために急速に成長してきた。
【0003】
典型的には、BAWフィルタは、シリコン、ガリウムヒ素、またはガラス基板上に作製されたBAW共振器を有する。動作中に、BAW共振器は熱エネルギーを発生することがあるが、かかる熱エネルギーは、基板を通じてBAWフィルタの外側に放出される必要がある。熱エネルギーは、適切に放出されなければ、BAWフィルタの共振周波数、全体的な性能、および耐久性に影響を及ぼす可能性がある。従来の基板の熱特性は、BAW共振器から熱エネルギーを効果的に除去するのに好適でない可能性があり、そのため、BAWフィルタは、大量の熱エネルギーを発生する装置において使用されない可能性がある。
【0004】
図10Aおよび10Bは、従来のBAWフィルタ1000を形成するためのプロセスを示している。図示されるように、圧電層1004がシリコン・ウェーハ1002上に堆積され、第一の金属層1006が圧電層1004上に堆積される。シリコンは比較的低い音波速度を有するので、圧電層1004の動作領域の下のシリコン・ウェーハの部分1010を除去して、圧電層1004が第一の金属層1006および第二の金属層1008と直接接触するようにする必要がある。すなわち、BAWフィルタは、自立構成を有する。このプロセスは、製造プロセスを増加させる。また、従来の製造プロセスは、圧電層1004をシリコン・ウェーハ1002上に堆積するために、スパッタリング技術を使用する。しかしながら、スパッタリング技術が使用される場合、圧電層1004の厚さが100オングストローム未満であるならば、圧電層1004の厚さおよび均一性を制御することは非常に困難である。
【0005】
よって、圧電層の品質を損なうことなくBAWフィルタの製造コストが低減される一方で、効率的な仕方でBAWフィルタから熱エネルギーを放出する機構を有するBAWフィルタが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
諸実施形態において、体積弾性波(BAW)フィルタは:ダイヤモンド基板と、ダイヤモンド基板上に形成されたパッシベーション層と、パッシベーション層上に形成された第一の金属層と、第一の金属層上に形成された圧電層と、圧電層上に形成された第二の金属層と、第一の金属層上に形成された金属パッドとを含む。金属パッド、第一の金属層、圧電層、および第二の金属層は、事前設定された周波数範囲内の電気信号を通過させる電気経路を形成する。
【0007】
諸実施形態では、体積弾性波フィルタを製造する方法は:圧電層を形成するステップと、圧電層の第一の表面上に第一の金属層を形成するステップと、第一の金属層上に第一のパッシベーション層を形成するステップと、第一のパッシベーション層上にダイヤモンド基板を形成するステップと、圧電層の第二の表面上に第二の金属層を形成するステップと、第一の金属層の一部を露出させるために圧電層の一部を除去するステップと、第一の金属層の露出部分上に金属パッドを形成するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の実施形態を参照するが、その例が添付の図面に示されることがある。これらの図面は限定ではなく例解することを意図したものである。本発明は、これらの実施形態のコンテキストで一般的に記載されるが、本発明の範囲をこれらの特定の実施形態に限定することは意図されていないことを理解しておくべきである。
【0009】
【
図1】本開示の諸実施形態によるBAWフィルタを形成するための例示的なプロセスを示す。
【
図2】本開示の諸実施形態によるBAWフィルタを形成するための例示的なプロセスを示す。
【
図3】本開示の諸実施形態によるBAWフィルタを形成するための例示的なプロセスを示す。
【
図4】本開示の諸実施形態によるBAWフィルタを形成するための例示的なプロセスを示す。
【
図5】本開示の諸実施形態によるBAWフィルタを形成するための例示的なプロセスを示す。
【
図6】本開示の諸実施形態によるBAWフィルタを形成するための例示的なプロセスを示す。
【
図7】本開示の諸実施形態によるBAWフィルタを形成するための例示的なプロセスを示す。
【0010】
【
図8】本開示の諸実施形態による、
図7のBAWフィルタの上面図である。
【0011】
【
図9】本開示の諸実施形態による、BAWフィルタを製造するための例示的なプロセスのフローチャートを示す。
【0012】
【
図10】AおよびBは、従来のBAWフィルタを形成するプロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明において、説明の目的で、本開示の理解を提供するために、具体的な詳細が記載される。しかしながら、当業者には、本開示がこれらの詳細なしに実施可能であることが明白であろう。さらに、当業者であれば、以下に説明する本開示の実施形態が、プロセス、装置、システム、デバイス、または有形のコンピュータ可読媒体上の方法などの多様な仕方で実装されうることを理解するであろう。
【0014】
図に示されるコンポーネントまたはノードは、本開示の例示的な実施形態を示すものであり、本開示を埋没させないようにすることが意図されている。また、本稿の議論を通じてコンポーネントは、サブユニットを有することもある別個の機能ユニットとして記述されることがあることが理解されるが、当業者であれば、さまざまなコンポーネントまたはその一部が別個のコンポーネントに分割されてもよく、あるいは単一のシステムまたはコンポーネント内に一体化されることを含めて、一緒に一体化されてもよいことを理解するであろう。本明細書で論じられる機能または動作は、コンポーネントとして実装可能であることに注意しておくべきである。コンポーネントは、ソフトウェア、ハードウェア、またはそれらの組み合わせで実装されうる。
【0015】
さらに、当業者は:(1)ある種のステップが任意的に実施されてもよいこと;(2)ステップが本明細書に記載される特定の順序に限定されなくてもよいこと;および(3)ある種のステップが、同時的に実行されることを含め、異なる順序で実施されてもよいことを認識する。
【0016】
図面に示される要素/コンポーネントは、本開示の例示的な実施形態を示すものであり、本開示を埋没させないようにすることが意図されている。明細書中の「一実施形態」、「好ましい実施形態」、「ある実施形態」または「諸実施形態」への言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、特性または機能が、本開示の少なくとも一つの実施形態に含まれており、二つ以上の実施形態にあってもよいことを意味する。明細書中の随所における語句「一実施形態において」、「ある実施形態において」、または「諸実施形態において」という句の出現は、必ずしもすべてが同じの実施形態(単数または複数)を参照しているわけではない。「含む」、「包含する」、「有する」という用語は、開放的な用語であると理解されるものとし、それに伴ういかなるリストも例であり、リストされた項目に限定されることは意図されていない。本明細書において使用される見出しがあったとしても、単に編成上の目的のためであり、明細書または請求項の範囲を限定するために使用されないものとする。さらに、明細書中の随所におけるある種の用語の使用は例解のためのものであり、限定するものと解釈されるべきではない。
【0017】
図1~
図7は、本開示の諸実施形態によるBAWフィルタを形成するための例示的なプロセスを示している。
図1に描かれるように、層のスタック100は:基板102上に順次積層される圧電層104、パッシベーション層106、およびダミー・ウェーハ108を含んでいてもよい。
【0018】
諸実施形態において、基板102は、シリコン基板などの半導体基板であってもよい。しかしながら、圧電層104が基板102上に形成されうる限り、基板102が他の好適な材料から形成されてもよいことは当業者には明白であるはずである。
【0019】
諸実施形態において、圧電層104は、圧電効果をもつ材料から形成されてもよい。諸実施形態において、圧電層104は、GaN、AlNおよびZnOのうちの一つまたは複数で形成され、有機金属化学蒸着(MOCVD)法によって堆積されてもよい。基板102および圧電層104の材料に依存して、他の好適な堆積技術が圧電層104を形成するために使用されうることは明らかであるはずである。
【0020】
MOCVD技術は、一種のエピタキシャル成長技法であり、そのため、MOCVD技法は、従来のスパッタリング技法よりも良好に圧電層104の均一性および厚さを制御することができうることを注意しておく。圧電層104の厚さは、BAWフィルタの共振周波数特性に影響を与えうる。よって、MOCVD技法によって形成される圧電層104は、BAWフィルタの全体的な性能を向上させることができる。諸実施形態において、圧電層104の厚さは10nm以下であってもよい。
【0021】
諸実施形態において、パッシベーション層106は、BAWフィルタ製造プロセス中に生じうる熱的および機械的損傷から圧電層104を保護しうる。また、ダミー・ウェーハ108が圧電層104に直接取り付けられる場合、圧電層104とダミー・ウェーハ108との間の熱膨張係数(coefficients of thermal expansion、CTE)の不整合は、圧電層104に対する応力を発生させ、圧電層104の性能に負の影響を生じる可能性がある。諸実施形態において、パッシベーション層106の材料および厚さは、CTEの不整合に起因する応力を緩和するように選択されてもよい。諸実施形態において、パッシベーション層104は、ポリSiまたはSiNから形成されてもよい。
【0022】
諸実施形態において、ダミー・ウェーハ108は、それに結合された他の層に機械的支持を提供することができる。諸実施形態において、ダミー・ウェーハ108は、シリコンで形成され、加熱チャンバ内で加熱されることによってパッシベーション層106に固定されてもよい。ダミー・ウェーハ108をパッシベーション層106に固定するために、他の好適な方法が使用されてもよいことを注意しておく。たとえば、接着材料を使用して、ダミー・ウェーハ108をパッシベーション層106に固定してもよい。
【0023】
図2に描かれるように、基板102が層のスタック100から除去されて、圧電層104の底面を露出してもよい。すると、
図3に描かれるように、層のスタックはひっくり返されて、圧電層104の上に複数の層が形成されてもよい。諸実施形態において、層のスタック109は:第一の金属層110、パッシベーション層111、シード層112、およびダイヤモンド層114を含んでいてもよく、これらの4つの層は、圧電層104の露出表面上に順次形成される。
【0024】
諸実施形態において、第一の金属層110は、Au、Ag、Ni、Ti、Al、またはそれらの任意の組み合わせなどの電気伝導性の金属から形成されてもよい。第一の金属層110を形成するために、さまざまな製造方法が使用されうることを注意しておく。諸実施形態において、第一の金属層は、第一の金属層110と圧電層104との間の接触抵抗を低減するためにアニールされてもよい。
【0025】
諸実施形態において、パッシベーション層111は、第一の金属層110上に形成されてもよく、パッシベーション層111は、SiNのような誘電体材料から形成されてもよい。諸実施形態において、シード層112を形成するために、層104、106、108、110および111を含む層のスタックは、ダイヤモンド・ナノ粒子(ダイヤモンド・シード粒子)の水性懸濁液中に浸漬されて、パッシベーション層111の上面が水性懸濁液と直接接触しうるようにされてもよい。ダイヤモンド粒子は、パッシベーション層111の表面に吸着されて、シード層112を形成してもよい。懸濁液中の曝露時間およびダイヤモンド粒子の濃度に依存して、シード層112における粒子の密度が決定されてもよい。ダイヤモンド粒子は、第一の金属層110よりも良好にパッシベーション層111に付着しうるため、パッシベーション層111は、シード層112の粒子数密度を高めうる。
【0026】
諸実施形態において、パッシベーション層111は、シード層112およびダイヤモンド層114を形成するためのプロセスの間の熱損傷から第一の金属層110および圧電層111を保護することができる。さらに、パッシベーション層111は、第一の金属層110をダイヤモンド層114から電気的に絶縁することができる。
【0027】
諸実施形態において、ダイヤモンド層114は、化学蒸着(CVD)技法によって形成されてもよいが、他の好適な技術が使用されてもよい。諸実施形態において、シード層112中のダイヤモンド・シード粒子が、ダイヤモンド層114の成長のためのシードとして作用してもよい。諸実施形態において、ダイヤモンド層114は、単結晶構造または多結晶構造で形成されてもよく、層のスタック109における他の層に機械的支持を提供してもよい。よって、用語「ダイヤモンド層」および「ダイヤモンド基板」は、交換可能に使用される。図面からわかるように、ダイヤモンド基板は、いかなる貫通孔ももたないダイヤモンド基板であってもよい。
【0028】
図4に描かれるように、ダミー・ウェーハ108およびパッシベーション層106は、層のスタック109から除去され、それにより圧電層104の底面を露出させることができる。諸実施形態において、研削および/またはエッチング方法を使用して、これら二つの層を除去してもよい。次いで、
図5に描かれるように、第二の金属層116が圧電層104上に形成されてもよい。
【0029】
諸実施形態において、第二の金属層116は、Au、Ag、Ni、AlまたはTiなどの電気伝導性の金属から形成されてもよい。第二の金属層116は、任意の好適なウェーハ製造プロセスによって製造されうることを注意しておく。たとえば、圧電層104上に金属層が堆積させられてもよく、フォトリソグラフィー技術を用いて該金属層をパターニングしてもよい。次いで、パターニングされた金属層はアニールされて、第二の金属層116を形成してもよい。このアニーリング・プロセスは、第二の金属層と圧電層との間の接触抵抗を減少させることができる。
【0030】
諸実施形態において、圧電層104の一部が除去されて、パターニングされた圧電層104'を形成し、第一の金属層110の一部を露出させてもよい。パターニングされた圧電層104'の形状および寸法は、BAWフィルタを通過する信号の周波数範囲を決定しうる。諸実施形態では、フォトリソグラフィー技法のような任意の好適なウェーハ製造技法を用いて、圧電層をパターニングすることができる。
【0031】
諸実施形態において、金属パッド120が、
図7に描かれるように、第一の金属層110の露出された部分上に形成されてもよい。諸実施形態において、フォトリソグラフィー技法のような任意の好適なウェーハ製造技法を使用して、金属パッド120を形成してもよい。
図8は、本開示の諸実施形態によるBAWフィルタ130の上面図を示している。
【0032】
諸実施形態において、BAWフィルタ130は、特定の周波数範囲内の信号を通過させ、他の周波数において信号を弁別するフィルタとして使用されてもよい。諸実施形態において、金属パッド120は、一つのワイヤ150の端部に結合されてもよく、第二の金属層116は、別のワイヤ(単数または複数)152の端部に結合されてもよい。さまざまな周波数の電気信号を含みうる入力信号162は、ワイヤ152を通じて伝送され、BAWフィルタ130に入力されてもよい。BAWフィルタ130は、特定の周波数範囲内の入力電気信号の一部を通過させ、それらの信号を出力信号160としてワイヤ150を通じて伝送することができる。BAWフィルタ130によって弁別される前記入力電気信号のうちの他方は、矢印163によって示されるように、ワイヤ152の他端に向かってはね返されてもよく、または熱エネルギーに変換されてもよい。諸実施形態において、RF帯域フィルタリングの性能を高めるために、DCバイアス電圧がワイヤ152の他端に印加されてもよい。熱エネルギーは、矢印164によって示されるように、ダイヤモンド層(基板)114に伝導され、BAWフィルタの外側に放出されてもよい。
【0033】
例解のために、
図7では、信号はワイヤ152を通じて入力され、ワイヤ150を通じて出力される。しかしながら、場合によっては、信号はワイヤ150を通じて入力され、ワイヤ152を通じて出力されてもよく、すなわち、信号は矢印160および162と反対の方向に流れる。BAWフィルタ130は、いずれの信号流れ方向でも機能しうることを注意しておく。
【0034】
例解のために、
図7は、一つのワイヤ150のみが金属パッド120に直接接続されていることを示している。しかしながら、二つ以上のワイヤが金属パッド120に直接接続されてもよいことは、当業者には明白であるはずである。同様に、ワイヤのインダクタンスを制御するために二つより多いワイヤが第二の金属層116に直接結合されてもよい。また、諸実施形態において、ワイヤ・インダクタンスを低減するために、複数のワイヤが金属パッド120に接続されてもよい。また、諸実施形態において、ワイヤ・インダクタンスを制御するために、ワイヤ間の間隔が調節されてもよい。
【0035】
諸実施形態において、金属パッド120、第一の金属層110、圧電層104'および第二の金属層116は、事前設定された周波数範囲内の電気信号を通過させ、前記事前設定された周波数範囲外の電気信号を弁別する電気経路を形成する。諸実施形態において、事前設定された周波数範囲は、圧電層104'、第二の金属層116、および金属パッド120のそれぞれの形状、材料、および/または寸法などのさまざまなパラメータによって決定されてもよい。
【0036】
運転中、BAWフィルタは、基板を通じてBAWフィルタの外側に放出される必要のある熱エネルギーを発生することがある。熱エネルギーは、適切に放出されないと、BAWフィルタの共振周波数、全体的な性能、および耐久性に影響を及ぼす可能性がある。低い熱伝導率をもつ材料(たとえば、シリコン、窒化ガリウムまたはガラス)で形成された基板を有する従来のBAWフィルタとは異なり、BAWフィルタ130は、優れた熱伝導率を有するダイヤモンド層(基板)114を含む。よって、従来のBAWフィルタと比較して、BAWフィルタ130は、熱エネルギーを効率的に放出することができ、よって、BAWフィルタ130の全体的な性能および耐久性は、動作中の熱エネルギーによって影響されにくくなる。
【0037】
図9は、本発明の諸実施形態による、BAWフィルタを製造するための例示的なプロセスのフローチャート400を示している。ステップ402において、圧電層および第一のパッシベーション層が基板上に順次形成されてもよい。諸実施形態において、圧電層は、圧電効果をもつGaN、AlNおよびZnOなどの材料から形成され、有機金属化学蒸着(MOCVD)法によって堆積されてもよい。第一の基板および圧電層の材料に依存して、圧電層を形成するために、他の好適な型の堆積技法が使用されてもよいことは明白であるはずである。諸実施形態において、第一のパッシベーション層は、ポリSiまたはSiNのような誘電体材料から形成され、BAWフィルタ製造プロセスの間に生じうる熱的および機械的損傷から圧電層を保護することができる。
【0038】
ステップ404において、シリコン・ウェーハのようなダミー・ウェーハが第一のパッシベーション層に取り付けられてもよい。諸実施形態において、ダミー・ウェーハは、加熱によりまたは接着材料を使用することによって、第一のパッシベーション層に取り付けられてもよい。諸実施形態において、第一のパッシベーション層は、ダミー・ウェーハと圧電層との間のCTEの不整合に起因する応力を緩和しうる。
【0039】
ステップ406では、前記基板を除去して、圧電層の第一の表面を露出させてもよい。次いで、ステップ408として、第一の金属層、第二のパッシベーション層、シード層、およびダイヤモンド層(基板)が、圧電層の露出された第一の表面上に順次形成されてもよい。諸実施形態において、第一の金属層は、電気伝導性の金属から形成されてもよい。諸実施形態において、第一の金属層は、圧電層の露出された第一の表面上に堆積されてもよい。諸実施形態において、第一の金属層は、第一の金属層と圧電層との間の接触抵抗を低減するためにアニールされてもよい。諸実施形態において、第二のパッシベーション層は、SiNなどの誘電体材料から形成されてもよい。第二のパッシベーション層は、シード層およびダイヤモンド層を形成するためのプロセスの間の熱損傷から第一の金属層および圧電層を保護することができる。さらに、第二のパッシベーション層は、第一の金属層をシード層およびダイヤモンド層から電気的に絶縁してもよい。
【0040】
シード層を形成するために、ダイヤモンド層、第一のパッシベーション層、圧電層、第一の金属層、および第二のパッシベーション層を含む層のスタックは、ダイヤモンド・ナノ粒子(ダイヤモンド・シード粒子)の水性懸濁液中に浸漬され、第二のパッシベーション層の表面が水性懸濁液と直接接触しうるようにされてもよい。諸実施形態において、ダイヤモンド・シード粒子は、第二のパッシベーション層の表面に吸着されて、ダイヤモンド・シード層を形成してもよい。懸濁液中の曝露時間およびダイヤモンド粒子の濃度に依存して、シード層における前記粒子の数密度が決定されうる。ダイヤモンド粒子は、第一の金属層よりも良好に第二のパッシベーション層に付着しうるため、第二のパッシベーション層は、シード層の粒子数密度を高めることができる。諸実施形態において、ダイヤモンド層(基板)は、CVD技法によってシード層上に成長させることができる。
【0041】
ステップ410では、ダミー・ウェーハおよび第一のパッシベーション層を除去して、圧電層の第二の表面を露出させてもよい。次いで、ステップ412において、電気伝導性の金属から形成される第二の金属層が、圧電層の露出された第二の表面上に形成されてもよい。諸実施形態において、第二の金属層は、金属層を堆積およびパターニングし、パターニングされた金属層をアニールすることによって形成されてもよい。
【0042】
ステップ414において、圧電層の一部を除去して、第一の金属層の一部を露出させてもよい。諸実施形態において、好適なエッチング技法を使用して、圧電層の前記一部を除去してもよい。次いで、ステップ416において、金属パッドが、第一の金属層の露出された表面上に形成されてもよい。諸実施形態において、金属層を堆積し、パターニングするために、好適な技法が使用されてもよい。諸実施形態において、金属パッドと第一の金属層との間の接触抵抗を低減するために、パターニングされた金属層がアニールされてもよい。
【0043】
図10Aおよび10Bとの関連で上記で論じたように、従来のBAWフィルタでは、第一の金属層1006および第二の金属層1008が圧電層1004と直接接触するよう、シリコン基板1002の一部分1010を除去する必要がある。従来のシステムでは、シリコンが低い音波速度をもつため、このエッチング・プロセスが必要である。対照的に、従来のBAWフィルタの製造プロセスとは異なり、本開示の実施形態では、ダミー・ウェーハ108がパッシベーション層106に取り付けられた後に基板102の全部が除去されてもよく、従来のエッチング・プロセスをなくして、それにより製造コストを低減することができる。
【0044】
諸実施形態において、ダイヤモンド層(基板)114は高い熱伝導率を有するため、BAWフィルタ130の動作中に生成される熱エネルギーは、BAWフィルタの外側に効果的に放出されうる。よって、BAWフィルタの動作特性は、シリコン、サファイアまたはガラスのような従来の基板材料で形成された基板を有する従来のBAWフィルタと比較して、熱エネルギーによる影響を受けにくくなりうる。
【0045】
図9に関連して述べたプロセスの一つまたは複数は、コンピュータ・ソフトウェアによって実行されてもよい。本開示の実施形態は、さらに、さまざまなコンピュータ実装された動作を実行するためのコンピュータ・コードをその上に有する非一時的な有形のコンピュータ可読媒体を有するコンピュータ製品に関係しうることを注意しておく。媒体およびコンピュータ・コードは、本開示の目的のために特別に設計および構築されたものであってもよく、または関連技術の当業者に公知または利用可能な種類のものであってもよい。有形のコンピュータ可読媒体の例は:ハードディスク、フロッピーディスク、磁気テープのような磁気媒体;CD-ROMおよびホログラフィック・デバイスのような光学式媒体;光磁気媒体;および特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、フラッシュメモリデバイス、およびROMおよびRAMデバイスのようなプログラム・コードを格納または格納かつ実行するように特別に構成されたハードウェア・デバイスを含むが、これらに限定されない。コンピュータ・コードの例は、コンパイラによって生成されるような機械コード、およびインタープリタを使用してコンピュータによって実行される、より高レベルのコードを含むファイルを含む。本開示の諸実施形態は、全体的にまたは部分的に、処理装置によって実行されるプログラム・モジュール内にあってもよい機械実行可能命令として実施されてもよい。プログラム・モジュールの例は、ライブラリ、プログラム、ルーチン、オブジェクト、コンポーネント、およびデータ構造を含む。分散コンピューティング環境では、プログラム・モジュールは、ローカル、リモート、またはその両方の場面に物理的に配置されてもよい。
【0046】
当業者であれば、いかなるコンピュータ・システムまたはプログラミング言語も、本開示の実施にとって枢要ではないことを認識するであろう。また、当業者であれば、上述の要素のいくつかは、物理的および/または機能的にサブモジュールに分離されてもよく、または一緒に組み合わされてもよいことを理解するであろう。
【0047】
本発明にはさまざまな修正および代替形がありうるが、その個別的な例が図面に示されて、本明細書において詳細に記載されている。しかしながら、本発明は、開示された特定の形態に限定されるものではなく、反対に、本発明は、添付の請求項の範囲内にはいるあらゆる修正、均等物、および代替物をカバーするものであることが理解されるべきである。
【0048】
いくつかの態様を記載しておく。
〔態様1〕
ダイヤモンド基板を有する、
体積弾性波(BAW)フィルタ。
〔態様2〕
前記ダイヤモンド基板上に形成されたパッシベーション層と;
前記パッシベーション層上に形成された第一の金属層と;
前記第一の金属層上に形成された圧電層と;
圧電層上に形成された第二の金属層と;
前記第一の金属層上に形成された金属パッドとをさらに有しており、
前記金属パッド、第一の金属層、圧電層、および第二の金属層は、ある周波数範囲内の電気信号を通過させる電気経路を形成する、
態様1記載の体積弾性波フィルタ。
〔態様3〕
前記ダイヤモンド基板と前記パッシベーション層との間に配置され、ダイヤモンド粉末で形成され、その上に前記ダイヤモンド基板を成長させるために使用されたシード層をさらに有する、
態様2記載の体積弾性波フィルタ。
〔態様4〕
前記パッシベーション層は誘電体材料から形成される、態様1記載の体積弾性波フィルタ。
〔態様5〕
前記圧電層は、圧電効果もつ材料から形成される、態様1記載の体積弾性波フィルタ。
〔態様6〕
前記圧電層は、GaN、AlNおよびZnOのうちの少なくとも一つを含む、態様1記載の体積弾性波フィルタ。
〔態様7〕
前記第一の金属層、第二の金属層、および金属パッドのそれぞれが、電気伝導性の金属から形成される、態様2記載の体積弾性波フィルタ。
〔態様8〕
前記ダイヤモンド基板は、単結晶構造および多結晶構造のうちの少なくとも一つを有する、態様1記載の体積弾性波フィルタ。
〔態様9〕
体積弾性波フィルタを製造する方法であって:
圧電層を形成するステップと;
前記圧電層の第一の表面上に第一の金属層を形成するステップと;
前記第一の金属層上に第一のパッシベーション層を形成するステップと;
前記第一のパッシベーション層上にダイヤモンド基板を形成するステップと;
前記圧電層の第二の表面上に第二の金属層を形成するステップと;
前記圧電層の一部を除去して前記第一の金属層の一部を露出させるステップと;
前記第一の金属層の露出部分上に金属パッドを形成するステップとを含む、
方法。
〔態様10〕
ダイヤモンド基板を形成する前記ステップが:
前記第一のパッシベーション層上にシード層を形成するステップと;
前記シード層上に前記ダイヤモンド基板を成長させるステップとを含む、
態様9記載の方法。
〔態様11〕
前記シード層がダイヤモンド粉末で形成される、態様9記載の方法。
〔態様12〕
圧電層を形成する前記ステップが:
基板上に前記圧電層を形成するステップと;
前記圧電層上に第二のパッシベーション層を形成するステップと;
前記第二のパッシベーション層上にダミー・ウェーハを形成するステップと;
前記基板を除去するステップとを含む、
態様9記載の方法。
〔態様13〕
ダイヤモンド基板を形成する前記ステップの後に、前記ダミー・ウェーハおよび前記第二のパッシベーション層を除去するステップをさらに含む、
態様12記載の方法。
〔態様14〕
前記ダミー・ウェーハがシリコンから形成される、態様12記載の方法。
〔態様15〕
前記圧電層が、GaN、AlNおよびZnOのうちの少なくとも一つを含む、態様9記載の方法。
〔態様16〕
前記第一の金属層、第二の金属層および金属パッドのそれぞれが電気伝導性の金属から形成される、態様9記載の方法。
〔態様17〕
前記第一のパッシベーション層が、ポリSiおよびSiNの少なくとも一つを含む、態様9記載の方法。
〔態様18〕
体積弾性波フィルタを作製するためのパターン・データの一つまたは複数のシーケンスを担持する非一時的なコンピュータ可読可能媒体であって、一つまたは複数のプロセッサによるパターン・データの前記一つまたは複数のシーケンスの実行は、該一つまたは複数のプロセッサに:
圧電層を形成するステップと;
前記圧電層の第一の表面上に第一の金属層を形成するステップと;
前記第一の金属層上に第一のパッシベーション層を形成するステップと;
前記第一のパッシベーション層上にダイヤモンド基板を形成するステップと;
前記圧電層の第二の表面上に第二の金属層を形成するステップと;
前記圧電層の一部を除去して、前記第一の金属層の一部を露出させるステップと;
前記第一の金属層の露出部分上に金属パッドを形成するステップとを実行させる、
非一時的なコンピュータ可読媒体。
〔態様19〕
一つまたは複数のプロセッサによるパターン・データの前記一つまたは複数のシーケンスの前記実行が、該一つまたは複数のプロセッサに、ダイヤモンド基板を形成する前記ステップを:
前記第一のパッシベーション層上にシード層を形成するステップと;
前記シード層上に前記ダイヤモンド基板を成長させるステップとを実行することによって実行させる、
態様18記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
〔態様20〕
一つまたは複数のプロセッサによるパターン・データの前記一つまたは複数のシーケンスの前記実行が、該一つまたは複数のプロセッサに、圧電層を形成する前記ステップを:
基板上に前記圧電層を形成するステップと;
前記圧電層上に第二のパッシベーション層を形成するステップと;
前記第二のパッシベーション層上にダミー・ウェーハを形成するステップと;
前記基板を除去するステップとを実行することによって実行させる、
態様18記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。