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特許7305722特定共振周波数を有する薄膜バルク音響共振装置を製造する方法
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  • 特許-特定共振周波数を有する薄膜バルク音響共振装置を製造する方法 図1
  • 特許-特定共振周波数を有する薄膜バルク音響共振装置を製造する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】特定共振周波数を有する薄膜バルク音響共振装置を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20230703BHJP
   G01N 29/02 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
G01N29/24
G01N29/02
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021171821
(22)【出願日】2021-10-20
(65)【公開番号】P2022068856
(43)【公開日】2022-05-10
【審査請求日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】109136755
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】518099893
【氏名又は名称】タイワン・カーボン・ナノ・テクノロジー・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】顏 聰富
(72)【発明者】
【氏名】張 光瑞
(72)【発明者】
【氏名】蔡 群賢
(72)【発明者】
【氏名】李 庭鵑
(72)【発明者】
【氏名】蔡 群榮
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-160056(JP,A)
【文献】特開2005-210681(JP,A)
【文献】特開2005-160057(JP,A)
【文献】特開2010-136317(JP,A)
【文献】特開2008-005186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
H03H 3/00 - H03H 3/10
H03H 9/00 - H03H 9/76
A61B 8/00 - A61B 8/15
G01B 17/00 - G01B 17/08
H04R 17/00 - H04R 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定共振周波数を有する薄膜バルク音響共振装置を製造する方法であって、
凹部を有する基板を提供する工程であって、前記凹部が深さを有する前記工程と、
前記基板に第一絶縁層を配置し、前記第一絶縁層に第二絶縁層を配置し、前記第二絶縁層に第一圧電材料層を配置し、前記凹部を前記第一絶縁層と前記基板との間のエアギャップ形成する工程と、
前記第一圧電材料層に下部電極を配置し、前記下部電極と上部電極との間に第二圧電材料層を配置する工程と、
み、
前記深さが第一範囲にあると、前記薄膜バルク音響共振装置の共振周波数が前記深さに対して負の第一勾配を有し、前記深さが第二範囲にあると、前記共振周波数が前記深さに対して正の第二勾配を有し、前記第一勾配の絶対値が前記第二勾配の絶対値よりも小さいことを特徴とする方法。
【請求項2】
記エアギャップの内部は、真空状態を示すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板は、シリコンを含み、
前記第一絶縁層は、窒化ケイ素を含み、
前記第二絶縁層は、二酸化ケイ素を含み、
前記上部電極及び前記下部電極は、モリブデンを含み、
前記第一圧電材料層及び前記第二圧電材料層は、窒化アルミニウム又はチタン酸ジルコン酸鉛を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記深さは、1μm~5μmであり、
前記第一範囲は、1μm~3μmであり、
前記第二範囲は、3μm~5μmであり、
前記第一絶縁層、前記第二絶縁層、前記第一圧電材料層、前記上部電極及び前記下部電極の厚さは、すべて0.2μmであり、
前記第二圧電材料層の厚さは、1μmであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記基板、前記第一絶縁層、前記第二絶縁層、前記第一圧電材料層、前記下部電極及び前記第二圧電材料層は、第一シリンダを形成し、
前記第一シリンダは、第一直径が200μmであり、
前記エアギャップは、第二シリンダを形成し、
前記第二シリンダは、第二直径が140μmであり、
前記上部電極は、第三シリンダを形成し、
前記第三シリンダは、第三直径が100μmであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記特定共振周波数に対応する前記凹部の前記深さが前記第一範囲又は前記第二範囲にあることに応じて、特定の深さを選択して前記薄膜バルク音響共振装置を製造する工程を更に含み、
前記エアギャップの第一深さ変化量が1μmから3μmに増加すると、前記薄膜バルク音響共振装置の共振周波数が増加した第一変化量が24kHzであり、
前記エアギャップの第二深さ変化量が1μmから5μmに増加すると、前記薄膜バルク音響共振装置の前記共振周波数が増加した第二変化量が0.418Hzであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
特定共振周波数を有する薄膜バルク音響共振装置を製造する方法であって、
凹部を有する基板を提供する工程であって、前記凹部が深さを有する前記工程と、
前記基板に第一絶縁層を配置し、前記第一絶縁層に第二絶縁層配置し、前記第二絶縁層に第一圧電材料層を配置し、前記凹部を前記第一絶縁層と前記基板との間のエアギャップを形成する工程と、
前記第一圧電材料層に下部電極を配置し、前記下部電極と上部電極との間に第二圧電材料層を配置する工程であって、前記深さが第一範囲にあると、前記薄膜バルク音響共振装置の共振周波数が前記深さに対する比例関係が逆比例の第一勾配によって定義され、前記深さが第二範囲にあると、前記比例関係が前記第一勾配の絶対値よりも大きい正比例の第二勾配によって定義される前記工程と、
前記特定共振周波数に対応する前記凹部の前記深さが前記第一範囲又は前記第二範囲にあることに応じて、特定の深さを選択して前記薄膜バルク音響共振装置を製造する工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
記エアギャップの内部は、真空状態を示し、
前記深さは、1μm~5μmであり、
前記第一範囲は、1μm~3μmであり、
前記第二範囲は、3μm~5μmであり、
前記第一絶縁層、前記第二絶縁層、前記第一圧電材料層、前記上部電極及び前記下部電極の厚さは、すべて0.2μmであり、
前記第二圧電材料層の厚さは、1μmであることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記基板は、シリコンを含み、
前記第一絶縁層は、窒化ケイ素を含み、
前記第二絶縁層は、二酸化ケイ素を含み、
前記上部電極及び前記下部電極は、モリブデンを含み、
前記第一圧電材料層及び前記第二圧電材料層は、窒化アルミニウム又はチタン酸ジルコン酸鉛を含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小電気機械システム(MEMS)に使用される半導体技術に関する。 特に、本発明は、センサ及びエネルギー関連装置に使用されるMEMSに関する。
【背景技術】
【0002】
既存のセンサー技術には、純粋な機械センサー、CMOSセンサー、MEMSセンサーなどが含まれる。ただし、上記のセンサーの感度では、携帯電話などのポータブルデバイスなどを介したヒトの揮発性有機化合物(VOC)ガスの検出要件を満たすことができない。チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を備えた薄膜バルク音響共振(FBAR)装置はこれを行うことができる。
【0003】
既存のFBAR技術を改善して、効率を向上させたり、構造を単純化したり、製造コストを削減したりする方法は、改善の余地がある。
【0004】
本願の発明者は、先行技術の欠如を考慮し、発明を改善するという考えを持っており、ついに「特定共振周波数を有する薄膜バルク音響共振装置を製造する方法」を発明することができた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特定共振周波数を有する薄膜バルク音響共振装置を製造する方法を提出することを主な目的とする。前記方法は、凹部を有する基板を提供する工程であって、前記凹部が高さを有する前記工程と、前記基板に第一圧電材料層を配置し、前記凹部にエアギャップを形成する工程と、前記第一圧電材料層に下部電極を配置する工程と、前記高さが第一範囲にあると、前記薄膜バルク音響共振装置の共振周波数が前記高さに対して第一勾配を有するようにする工程と、前記高さが第二範囲にあると、前記共振周波数が前記高さに対して第二勾配を有するようにする工程と、前記第二勾配を前記第一勾配よりも小さくなるようにする工程と、を含む。前記方法でされた異なる高さのエアギャップを有するFBAR装置は、それぞれ異なる共振周波数を生成する。多周波制御により、異なる高さのエアギャップを有する複数のFBAR装置を使用して、さまざまな揮発性有機化合物(VOC)ガスを同時に検出できる。また、製造コストを削減するために、同じウェハにおいて、異なる高さのエアギャップを有するFBAR装置を含むことができる。
【0006】
本発明は、特定共振周波数を有する薄膜バルク音響共振装置を製造する方法を更に提出することを別の主な目的とする。前記方法は、凹部を有する基板を提供する工程であって、前記凹部が高さを有する前記工程と、前記基板に第一圧電材料層を配置し、前記凹部にエアギャップを形成する工程と、前記第一圧電材料層に下部電極を配置する工程と、前記高さが第一範囲にあると、前記薄膜バルク音響共振装置の共振周波数が前記高さに対して第一勾配を有するようにする工程と、前記高さが第二範囲にあると、前記共振周波数が前記高さに対して第二勾配を有するようにする工程と、前記第二勾配を前記第一勾配よりも小さくなるようにする工程と、を含む。
【0007】
本発明は、特定共振周波数を有する薄膜バルク音響共振装置を製造する方法を更に提出することを別の主な目的とする。前記方法は、凹部を有する基板を提供する工程であって、前記凹部が高さを有する前記工程と、前記基板に第一圧電材料層を配置し、前記凹部にエアギャップを形成する工程と、前記第一圧電材料層に下部電極を配置し、前記薄膜バルク音響共振装置の共振周波数が前記高さに対して関数関係を形成する工程であって、前記高さが第一範囲にあると、前記関数関係が第一勾配によって定義され、前記高さが第二範囲にあると、前記関数関係が前記第一勾配よりも大きい第二勾配によって定義される前記工程と、前記特定共振周波数に対応する前記凹部の前記高さが前記第一範囲又は前記第二範囲にあることに応じて、特定の高さを選択して前記薄膜バルク音響共振装置を製造する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の好ましい実施形態に係るFBAR装置を示す断面図である。
図2】本発明の好ましい実施形態に係るFBAR装置のエアギャップの深さに対するFBAR装置の共振周波数を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の好ましい実施形態による係る薄膜バルク音響共振(FBAR)装置を示す断面図である。図1において、薄膜バルク音響共振装置1は、基板10、第一絶縁層12、第二絶縁層13、第一圧電材料層14、下部電極15、第二圧電材料層(圧電材料薄膜)16及び上部電極17を含む。第一絶縁層12は、基板10に配置され、第二絶縁層13は、第一絶縁層12に配置され、第一圧電材料層14は、第二絶縁層13に配置される。下部電極15は、第一圧電材料層14に配置され、第二圧電材料層16は、下部電極15に配置され、上部電極17は、第二圧電材料層16上に配置される。また、第一絶縁層12と基板10との間にエアギャップ11があり、エアギャップ11の内部は真空状態を示す。
【0010】
基板10は、シリコンを含み、第一絶縁層12は、窒化ケイ素(SiN)を含み、第二絶縁層13は、二酸化ケイ素を含み、上部電極17及び下部電極15は、モリブデンを含み、第一圧電材料層14及び第二圧電材料層16は、窒化アルミニウム(AlN)又はチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を含む。
【0011】
図1において、エアギャップ11深さ(高さ)は、例えば1μm(第一好ましい実施形態)、3μm(第二好ましい実施形態)又は5μm(第三好ましい実施形態)である。第一絶縁層12、第二絶縁層13、第一圧電材料層14、上部電極17及び下部電極15の厚さは、すべて0.2μmであり、第二圧電材料層16の厚さは、1μmである。
【0012】
図1に示すように、基板10、第一絶縁層12、第二絶縁層13、第一圧電材料層14、下部電極15及び第二圧電材料層16は、第一シリンダを形成し、
前記第一シリンダの第一直径は、例えば200μmである。エアギャップ11は、第二シリンダを形成し、前記第二シリンダの第二直径は、例えば140μmである。上部電極17は、第三シリンダを形成し、前記第三シリンダの第三直径は、例えば100μmである。
【0013】
図2は、本発明の好ましい実施形態に係る薄膜バルク音響共振装置のエアギャップの深さに対する薄膜バルク音響共振装置の共振周波数を示す波形図である。
【0014】
図2に示すように、前記エアギャップ11の深さが1μmから3μmに増加すると、薄膜バルク音響共振装置1の共振周波数が増加した第一差値が24kHzであり、エアギャップ11の深さがμmから5μmに増加すると、薄膜バルク音響共振装置1の前記共振周波数が増加した第二差値が418kHzである。つまり、図2から見れば、エアギャップ11の深さが線形変化している場合(例えば、エアギャップ11の深さが1μmから3μmに増加する、或いはμmから5μmに増加する場合)、薄膜バルク音響共振装置1の共振周波数は、非線形変化を示す。例えば、エアギャップ11の深さが1μmから3μmに増加した場合、前記共振周波数が減少した第一差値は約24kHz、或いは、エアギャップ11の深さがμmから5μmに増加した場合、前記共振周波数が増加した第二差値は約418kHzである。
【0015】
本発明の第四好ましい実施形態によれば、特定共振周波数を有する薄膜バルク音響共振装置1を製造する方法を提出し、前記方法は、凹部11を有する基板10を提供する工程であって、凹部11が高さを有する前記工程と、基板10に第一圧電材料層14を配置し、凹部11にエアギャップ11を形成する工程と、第一圧電材料層14に下部電極15を配置する工程と、前記高さが第一範囲にあると、薄膜バルク音響共振装置1の共振周波数が前記高さに対して第一勾配を有するようにする工程と、前記高さが第二範囲にあると、前記共振周波数が前記高さに対して第二勾配を有するようにする工程と、前記第二勾配を前記第一勾配よりも小さくなるようにする工程と、を含む。
【0016】
本発明の第四好ましい実施形態に記載の方法によれば、前記特定共振周波数に対応する前記凹部の前記高さが前記第一範囲又は前記第二範囲にあることに応じて、特定の高さを選択して薄膜バルク音響共振装置1を製造する工程を更に含み、エアギャップ11の第一深さ変化量が1μmから3μmに増加すると、薄膜バルク音響共振装置1の共振周波数が減少した第一変化量が24kHzであり、エアギャップ11の第二深さ変化量がμmから5μmに増加すると、薄膜バルク音響共振装置1の前記共振周波数が増加した第二変化量が0.418Hzである。
【0017】
本発明の第五好ましい実施形態によれば、特定共振周波数を有する薄膜バルク音響共振装置1を製造する方法を提出し、前記方法は、凹部11を有する基板10を提供する工程であって、凹部11が高さを有する前記工程と、基板10に第一圧電材料層14を配置し、凹部11にエアギャップ11を形成する工程と、第一圧電材料層14に下部電極15を配置し、基板10及び第一圧電材料層14により薄膜バルク音響共振装置1の共振周波数決定構造(10 + 14 + 15)を形成し、薄膜バルク音響共振装置1の共振周波数が前記高さに対して関数関係を形成する工程であって、前記高さが第一範囲にあると、前記関数関係が第一勾配によって定義され、前記高さが第二範囲にあると、前記関数関係が前記第一勾配よりも大きい第二勾配によって定義される前記工程と、前記特定共振周波数に対応する前記凹部の前記高さが前記第一範囲又は前記第二範囲にあることに応じて、特定の高さを選択して前記薄膜バルク音響共振装置を製造する工程と、を含む。
【0018】
結論として、本発明は、特定共振周波数を有する薄膜バルク音響共振装置を製造する方法を提出し、前記方法は、凹部を有する基板を提供する工程であって、前記凹部が高さを有する前記工程と、前記基板に第一圧電材料層を配置し、前記凹部にエアギャップを形成する工程と、前記第一圧電材料層に下部電極を配置する工程と、前記高さが第一範囲にあると、前記薄膜バルク音響共振装置の共振周波数が前記高さに対して第一勾配を有するようにする工程と、前記高さが第二範囲にあると、前記共振周波数が前記高さに対して第二勾配を有するようにする工程と、前記第二勾配を前記第一勾配よりも小さくなるようにする工程と、を含む。前記方法でされた異なる高さ(深さ)のエアギャップを有するFBAR装置は、それぞれ異なる共振周波数を生成する。多周波制御により、異なる高さのエアギャップを有する複数のFBAR装置を使用して、さまざまな揮発性有機化合物(VOC)ガスを同時に検出できる。また、製造コストを削減するために、同じウェハにおいて、異なる高さのエアギャップを有するFBAR装置を含むことができる。従って、本発明は新規性と進歩性を有している。
【0019】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0020】
1 薄膜バルク音響共振装置
10 基板
11 エアギャップ(凹部)
12 第一絶縁層
13 第二絶縁層
14 第一圧電材料層
15 下部電極
16 第二圧電材料層
17 上部電極
図1
図2