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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 37/244 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
F16L37/244
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021183158
(22)【出願日】2021-11-10
(65)【公開番号】P2023070810
(43)【公開日】2023-05-22
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】391001169
【氏名又は名称】櫻護謨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 哲治
(72)【発明者】
【氏名】玉田 和之
(72)【発明者】
【氏名】戸城 賢三
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-083219(JP,A)
【文献】実開昭62-140296(JP,U)
【文献】特開平09-196271(JP,A)
【文献】実開昭55-122587(JP,U)
【文献】実開平05-071588(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/244
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ軸を中心とした円環状である結合リング、内リングおよび外リングを備え、
前記結合リングは、前記軸を中心とした径方向における内側の内周面と、前記径方向における外側の外周面と、前記軸と平行な軸方向と交わる第1面と、前記第1面から前記軸方向に突出するとともに前記軸を中心とした周方向に並ぶ複数のフックと、前記内周面に設けられた第1規制部と、を有
前記内リングは、前記内周面と嵌め合う環状の本体と、前記第1規制部とともに前記結合リングの前記軸方向への移動を規制する第2規制部と、を有
前記外リングは、前記外周面と嵌め合い、前記内リングとともに前記結合リングの一部を挟むことで前記結合リングの前記径方向への移動を規制
前記第1規制部は、前記内周面において前記周方向に延びる、前記軸を囲う環状の溝を含み、
前記第2規制部は、前記本体から前記径方向の外側に向けて突出する、前記溝に挿入される環状の突起を含み、
前記溝に前記突起が挿入されることで前記結合リングの前記軸方向への移動が規制され、
前記結合リングは、前記周方向に並ぶ複数のフラグメントに分割され
前記フックと同形状のフックを有する他の継手と結合可能である、継手。
【請求項2】
前記は、前記内周面において前記周方向に連続的に延びる第1部分と、前記第1部分から前記軸方向に延びる複数の第2部分と、を含み、
前記突起は、前記第1部分に挿入される第3部分と、前記複数の第2部分にそれぞれ挿入される複数の第4部分と、を含む、
請求項1に記載の継手。
【請求項3】
前記結合リングは、前記内リングに対して前記周方向に回動可能である、
請求項1に記載の継手。
【請求項4】
前記結合リングは、前記外周面において前記周方向に延びる溝である第3規制部を有し、
前記外リングは、円筒状の本体と、当該本体から前記径方向の内側に突出するとともに前記第3規制部の前記溝に挿入可能な突起である第4規制部と、を有する、
請求項1乃至のうちいずれか1項に記載の継手。
【請求項5】
前記外リングは、前記周方向に並ぶ複数の前記第規制部と、隣り合う前記第規制部の間にそれぞれ位置し、前記外リングの前記本体の前記軸方向における一端から他端に向けて形成された複数のノッチと、を有する、
請求項に記載の継手。
【請求項6】
前記複数のフックの少なくとも1つは、前記複数のフラグメントのうち2つ以上の前記フラグメントにより構成されている、
請求項1乃至のうちいずれか1項に記載の継手。
【請求項7】
前記複数のフラグメントの各々は、前記周方向における一端に第1係合部を有し、前記周方向における他端に前記第1係合部と係合可能な第2係合部を有している、
請求項1乃至のうちいずれか1項に記載の継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路の連結等に用いられる継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送水用の配管やホースのような流路の連結には種々のタイプの継手が用いられている。例えば特許文献1には、軸方向における端面に周方向に並ぶ複数のフック(嵌合突部)が設けられた一対の円筒状の金具本体を備え、これら金具本体のフック同士を係合させることでホース等の流路を結合可能とした結合金具が開示されている。
【0003】
近年では、災害の大規模化等に対応するために、大口径のホースを用いた送水および排水の活動が増えている。大口径のホースを用いる場合には、ポンプとホースの接続やホース同士の接続に用いられる継手も大型化する。
【0004】
大型の継手はその製造コストが高く、さらには継手を構成する部品も大型化するために材料や加工機の制約から製造に時間を要し、納期が長期化する傾向にある。そのため、継手の製造コストの低減や製造効率の改善が求められている。大型ではない一般的なサイズの継手においても同様の要望がある。
【0005】
また、継手に用いられる性能や形状は、例えば使用が想定される流路の水圧等の種々の要素に応じて異なる。そのため、同タイプかつ同口径の継手であっても、納品先に応じて設計を変更しなければならないケースもあり得る。このような事情により、容易に仕様を変更可能な継手も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-119577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、製造コストや製造効率を改善可能であり、また、仕様変更が容易な継手を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る継手は、結合リングと、内リングと、外リングとを備えている。前記結合リングは、内周面と、外周面と、軸方向に突出するとともに周方向に並ぶ複数のフックと、前記内周面に設けられた第1規制部と、を有している。前記内リングは、前記内周面と嵌め合い、前記第1規制部とともに前記結合リングの前記軸方向への移動を規制する第2規制部を有している。前記外リングは、前記外周面と嵌め合い、前記内リングとともに前記結合リングの径方向への移動を規制する。さらに、前記結合リングは、前記周方向に並ぶ複数のフラグメントに分割されている。
【0009】
例えば、前記第1規制部は、前記内周面において前記周方向に延びる溝を含んでもよい。この場合において、前記第2規制部は、前記溝に挿入される突起を含んでもよい。
【0010】
他の例として、前記第1規制部は、前記内周面において前記周方向に連続的に延びる第1部分と、前記第1部分から前記軸方向に延びる複数の第2部分とを含んでもよい。この場合において、前記第2規制部は、前記第1部分と嵌め合う第3部分と、前記第2部分と嵌め合う複数の第4部分とを含んでもよい。
【0011】
さらに他の例として、前記第1規制部は、前記内周面において前記周方向に延びる第1溝を含んでもよく、前記第2規制部は、前記第1溝と対向し、前記周方向に延びる第2溝を含んでもよい。この場合において、前記継手は、前記第1溝および前記第2溝により形成される空間に配置される複数の係止片を備えてもよい。
【0012】
前記結合リングは、前記内リングに対して前記周方向に回動可能であってもよい。
【0013】
前記結合リングは、前記外周面に設けられた第3規制部を有し、前記外リングは、前記第3規制部とともに前記結合リングの前記軸方向への移動を規制する第4規制部を有してもよい。
【0014】
前記外リングは、前記周方向に並ぶ複数の前記第3規制部と、隣り合う前記第3規制部の間にそれぞれ位置する複数のノッチとを有してもよい。
【0015】
他の実施形態に係る継手は、結合リングと、ベースリングとを備えている。前記結合リングは、軸方向と交わる第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面と、前記第1面に設けられ周方向に並ぶ複数のフックと、前記第2面に設けられ前記周方向に並ぶ複数の第1規制部とを有している。前記ベースリングは、前記第1規制部と係合して前記結合リングの前記軸方向への移動を規制する第2規制部を有している。さらに、前記結合リングは、前記周方向に並ぶ複数のフラグメントに分割され、前記複数のフラグメントの各々は、少なくとも1つの前記第1規制部を有している。
【0016】
前記第1規制部は、前記第2面から前記軸方向に突出する第1爪を含んでもよい。この場合において、前記第2規制部は、前記ベースリングの端面において前記軸方向に窪み前記第1爪を挿入可能な溝と、前記溝に挿入された前記第1爪と係合する第2爪とを含んでもよい。
【0017】
例えば、前記溝は、前記周方向に延びる環状である。また、前記第2規制部は、前記周方向に間隔を空けて並ぶ複数の前記第2爪を含む。
【0018】
さらに他の実施形態に係る継手1は、結合リングと、線材とを備えている。前記結合リングは、軸方向に突出するとともに周方向に並ぶ複数のフックを有している。さらに、前記結合リングは、前記周方向に並ぶとともに貫通孔をそれぞれ有する複数のフラグメントに分割され、前記線材を前記複数のフラグメントの各々の前記貫通孔に通すことにより、前記複数のフラグメントが連結されている。
【0019】
例えば、前記複数のフラグメントの各々において、前記貫通孔は、前記フラグメントの前記周方向における両側面の間を貫通している。
【0020】
また、前記複数のフラグメントの各々において、前記貫通孔は、前記フラグメントの前記周方向における側面と、前記フラグメントの外周面との間を貫通していてもよい。
【0021】
各実施形態に係る継手において、前記複数のフックの少なくとも1つは、前記複数のフラグメントのうち2つ以上の前記フラグメントにより構成されてもよい。
【0022】
また、各実施形態に係る継手において、前記複数のフラグメントの各々は、前記周方向における一端に第1係合部を有し、前記周方向における他端に前記第1係合部と係合可能な第2係合部を有してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、製造コストや製造効率を改善可能であり、また、仕様変更が容易な継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、第1実施形態に係る継手の概略的な斜視図である。
図2図2は、第1実施形態に係る継手の概略的な分解斜視図である。
図3図3は、第1実施形態に係るフラグメントの概略的な斜視図である。
図4図4は、複数のフラグメントを内リングに取り付けた状態における第1実施形態に係る継手の概略的な斜視図である。
図5図5は、第1実施形態の適用例を示す図である。
図6図6は、第2実施形態に係る継手の概略的な分解斜視図である。
図7図7は、第2実施形態に係るベースリングの一部を拡大して示す概略的な斜視図である。
図8図8は、第2実施形態に係るベースリングの周方向に沿う概略的な断面図である。
図9図9は、第2実施形態の適用例を示す図である。
図10図10は、第3実施形態に係る継手の一例を示す概略的な側面図である。
図11図11は、図10に示す継手の概略的な平面図である。
図12図12は、図10に示すフラグメントの概略的な斜視図である。
図13図13は、図10に示す線材を締めるための構成の一例を示す図である。
図14図14は、第3実施形態に係る継手の他の一例を示す概略的な側面図である。
図15図15は、図14に示す継手の概略的な平面図である。
図16図16は、第1変形例に係るフラグメントの概略的な斜視図である。
図17図17は、第1変形例に係る内リングの概略的な斜視図である。
図18図18は、第2変形例に係る内リングの一部およびフラグメントの概略的な斜視図である。
図19図19は、第3変形例に係るフラグメントの概略的な斜視図である。
図20図20は、第3変形例に係る外リングの一部の概略的な斜視図である。
図21図21は、第4変形例に係る継手の概略的な断面図である。
図22図22は、第5変形例に係る内リングの概略的な斜視図である。
図23図23は、第6変形例に係る外リングの概略的な斜視図である。
図24図24は、第7変形例に係る内リングの概略的な斜視図である。
図25図25は、第8変形例に係る複数のフラグメントの概略的な側面図である。
図26図26は、図25に示す複数のフラグメントの概略的な平面図である。
図27図27は、第9変形例に係る複数の結合リングの概略的な平面図である。
図28図28は、第10変形例に係るフラグメントの概略的な斜視図である。
図29図29は、第10変形例に係る構成を適用した他のフラグメントの概略的な斜視図である。
図30図30は、第10変形例に係る構成を適用したさらに他のフラグメントの概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
いくつかの実施形態につき図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る継手1Aの概略的な斜視図である。図2は、継手1Aの概略的な分解斜視図である。これらの図に示すように、継手1Aは、結合リング2と、内リング3と、外リング4とを備えている。図2においては、結合リング2、内リング3および外リング4の一部を破断している。
【0026】
結合リング2、内リング3および外リング4は、軸AXを中心とした円環状である。以下、軸AXと平行な方向を軸方向Xと定義する。また、図1および図2に示すように、軸AXを中心とした径方向Rおよび周方向θを定義する。
【0027】
結合リング2は、複数のフラグメント5に分割されている。本実施形態においては、これら複数のフラグメント5が同じ形状を有し、周方向θに並んでいる。
【0028】
図3は、フラグメント5の概略的な斜視図である。フラグメント5は、周方向θに沿って円弧状に曲がったベース6と、ベース6に設けられたフック7とを有している。図1乃至図3の例においては、1つのフラグメント5に対して1つのフック7が設けられているが、この例に限られない。例えば、1つのフラグメント5が2つ以上のフック7を有してもよい。また、複数のフラグメント5のうちの一部がフック7を有さなくてもよいし、2つ以上のフラグメント5の組み合わせにより1つのフック7が構成されてもよい。
【0029】
図3に示すように、ベース6は、第1面61(上面)と、第1面61の反対側の第2面62(下面)と、径方向Rにおける内側の内周面63と、径方向Rにおける外側の外周面64と、周方向θと直交する第1側面65および第2側面66とを有している。第1面61および第2面62は、いずれも軸方向Xと垂直に交わる平面である。図3の例においては、外周面64の軸方向Xにおける一端(フック7側の端部)に段差部67が設けられている。段差部67は、外周面64よりも径方向Rの外側に突出している。
【0030】
フック7は、第1面61から軸方向Xに突出している。図1乃至図3に示すように、フック7は、周方向θにおける第1側面71および第2側面72と、第1側面71に設けられた係止部73と、第2側面72に設けられたプランジャ74とを有している。例えば、第1側面71は軸方向Xと平行であり、第2側面72は軸方向Xに対して傾いている。これにより、フック7の周方向θにおける幅は先端に近づくほど小さくなる。係止部73は、例えば第1側面71に設けられた窪みである。プランジャ74は、例えばフック7の内部に配置された弾性体と、この弾性体により第2側面72の法線方向に付勢されるボールとを有するボールプランジャである。
【0031】
結合リング2が備える各フック7は、いずれも同じ形状を有している。隣り合うフック7の間には、凹部70が形成されている。図1および図2の例においては、凹部70の底面が隣り合うフラグメント5の第1面61により構成されている。
【0032】
図2および図3に示すように、フラグメント5は、内周面63において周方向θに延びる溝68を有している。溝68は、側面65,66の間にわたって形成されている。各フラグメント5の溝68は互いに接続され、結合リング2の全体においては軸AXを囲う環状である。
【0033】
図2に示すように、内リング3は、環状の本体30と、溝68に挿入可能な突起31とを有している。突起31は、本体30の軸方向Xにおける一端から径方向Rの外側に向けて突出しており、図2の例においては本体30の全体にわたり連続している。このような形状の突起31は、フランジと呼ぶこともできる。
【0034】
本実施形態において、結合リング2の溝68は第1規制部RT1として機能し、内リング3の突起31は第2規制部RT2として機能する。これら第1規制部RT1および第2規制部RT2は、結合リング2および内リング3の軸方向Xへの相対的な移動を規制する。
【0035】
外リング4は、例えば図2に示すように軸方向Xに長尺な長方形の断面形状を有する環状である。一例として、外リング4の軸方向Xにおける長さは、フラグメント5の外周面64の軸方向Xにおける長さと同じである。
【0036】
図4は、各フラグメント5を内リング3に取り付けた状態の継手1の概略的な斜視図である。各フラグメント5は、溝68と突起31を嵌め合わせることにより内リング3に取り付けることができる。全てのフラグメント5を内リング3に取り付けた状態においては、隣り合うフラグメント5のベース6の周方向θにおける端部同士(側面65,66同士)が接触するとともに、各フラグメント5の外周面64が環状に繋がる。このように環状に繋がった外周面64は、外リング4の内周面と同径である。
【0037】
外リング4は、第2面62側から結合リング2に取り付けることができる。外リング4を結合リング2に取り付けた状態(図1参照)においては、外リング4の内周面が各フラグメント5の外周面64に接触する。さらに、外リング4の軸方向Xにおける一端が各フラグメント5の段差部67に接触する。
【0038】
組み立てられた継手1において、各フラグメント5のベース6は、内リング3と外リング4の間に位置している。これにより、結合リング2、内リング3および外リング4の径方向Rへの相対的な移動が規制される。さらに、溝68に突起31が挿入されているため、結合リング2と内リング3の軸方向Xへの相対的な移動が規制される。
【0039】
本実施形態において、継手1は、結合リング2、内リング3および外リング4の周方向θへの相対的な移動を規制する要素を有していない。すなわち、結合リング2は、内リング3および外リング4によって周方向θに回動可能に支持されている。
【0040】
以上のような構成の継手1は、例えば当該継手1と同形状の他の継手1と結合可能である。すなわち、一方の継手1のフック7が他方の継手1の凹部70に入るように両継手1の結合リング2を軸方向Xに押し合わせる。このとき、両継手1のフック7のプランジャ74同士が押し合って周方向θへの付勢力が生じ、これによって両継手1のフック7の係止部73同士が係合する(後述する図5参照)。
【0041】
2つの継手1Aの結合を解除する際には、プランジャ74の反発力に抗して両継手1Aの結合リング2を逆方向に回動させる。これにより、両継手1Aのフック7の係合が解除される。なお、継手1Aは、同形状の他の継手1Aだけでなく、結合リング2と同形状の結合リングを有する他の継手とも接続可能である。この場合において、当該他の継手の結合リングは、複数のフラグメントに分割されていなくてもよい。
【0042】
本実施形態に係る継手1Aの構造は、例えば、配管やホースなどの流路同士の結合に用いられる継手や、柱状の構造物などの連結に用いられる継手などに適用することができる。以下に、流路同士の結合に用いられる継手への適用例を開示する。
【0043】
図5は、当該適用例を示す図である。この図においては、本実施形態に係る継手1Aの構造を適用した2つの継手1P,1Qが連結された状態を示している。軸AXより下方の部分は継手1P,1Qの側面図に相当し、軸AXより上方の部分は継手1P,1Qの断面図に相当する。継手1Pが備える結合リング2、内リング3および外リング4を、それぞれ結合リング2P、内リング3Pおよび外リング4Pと呼ぶ。また、継手1Qが備える結合リング2、内リング3および外リング4を、それぞれ結合リング2Q、内リング3Qおよび外リング4Qと呼ぶ。
【0044】
内リング3P,3Qの本体30は、結合リング2P,2Qよりも軸方向Xに長尺な円筒状である。内リング3P,3Qの内側の空間は、例えば水などの流体が流れる流路を形成する。
【0045】
内リング3P,3Qの外周面のうち結合リング2P,2Qによって覆われていない部分には、配管やホースを継手1P,1Qに連結するための連結構造32が設けられている。連結構造32は、例えば雄ねじであるが、この例に限られない。また、連結構造32は、内リング3P,3Qの内周面に設けられてもよい。この場合において、連結構造32は、雌ねじであってもよい。連結構造32は、外リング4に設けることもできる。
【0046】
図5の例では、内リング3P,3Qのそれぞれにおいて、連結構造32と突起31(第2規制部RT2)の間にシール材33が配置されている。これらシール材33は、例えば環状のパッキンであり、内リング3P,3Qの外周面に設けられた環状の溝34に嵌められている。これらシール材33は、連結構造32により継手1P,1Qに連結された配管等と内リング3P,3Qの間の隙間を塞ぐ。連結構造32が内リング3P,3Qの内周面に設けられている場合、シール材33および溝34は当該内周面に設けられてもよい。
【0047】
内リング3P,3Qの先端には、環状のシール材35が配置されている。これらシール材35は、内リング3P,3Qの先端に設けられた環状の溝36に嵌められている。継手1P,1Qが連結された状態においては、これらシール材35が接触し、内リング3P,3Qの間の隙間を塞ぐ。
【0048】
内リング3Pおよび外リング4Pにより結合リング2Pを支持する構造、および、内リング3Qおよび外リング4Qにより結合リング2Qを支持する構造は、図1乃至図4に示した継手1Aにおいて内リング3および外リング4が結合リング2を支持する構造と同様である。
【0049】
以上の本実施形態に係る継手1Aにおいては、複数のフック7を有する結合リング2が複数のフラグメント5に分割され、これらフラグメント5が内リング3および外リング4によって保持されている。このような構造の継手1Aは、種々の好適な効果を奏する。
【0050】
例えば、仮に結合リング2がフラグメント5に分割されていない場合には、結合リング2の製造に際して、取り扱い難く高額な大きなワーク(被削材)が必要となる。また、本実施形態のように複雑な形状の結合リング2を1つのワークから形成する場合には、高性能で大型の加工機が必要となるし、加工時間も長くなる。結果として、継手1Aの製造コストが上昇し、客先への納期も長期化する。
【0051】
これに対し、結合リング2がフラグメント5に分割されている場合には、個々のフラグメント5を取り扱いが容易で安価な小さなワークから形成することができる。これにより、加工機の制約が低減され、短時間での加工も可能となる。結果として、継手1の製造コストが低減されるとともに製造効率が改善され、客先への納期も短縮できる。
【0052】
本実施形態に係る継手1Aの構成であれば、例えばフラグメント5、内リング3および外リング4を交換することで容易に継手1Aの仕様を変更することが可能である。例えば、周方向θにおけるフック7の幅が異なる複数通りのフラグメント5を用意しておけば、フック7の数が異なる複数種類の結合リング2を実現できる。
【0053】
また、図5に示した適用例において、シール材33および溝34を備える内リング3と備えない内リング3など、異なる形状の内リング3を用意し、用途に応じて使い分けてもよい。同様に、例えばハンドル(取っ手)のような付加要素が設けられた外リング4と当該要素が設けられていない外リング4など、異なる形状の外リング4を用意し、用途に応じて使い分けてもよい。
【0054】
本実施形態において、結合リング2は、内リング3および外リング4によって周方向θに回動可能に支持されている。このような構造であれば、継手1Aと他の継手との結合時や結合解除時に、内リング3や外リング4を静止させたまま結合リング2を回動させることが可能である。これにより、結合や結合解除の作業が容易となる。
【0055】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。第1実施形態と同一または類似の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略することがある。
【0056】
図6は、第2実施形態に係る継手1Bの概略的な分解斜視図である。この図に示すように、継手1Bは、結合リング2と、ベースリング9とを備えている。結合リング2は、第1実施形態と同じく複数のフラグメント5に分割されている。図6においては、結合リング2を構成するフラグメント5の一部の図示を省略している。
【0057】
第1実施形態と同じく、各フラグメント5は、ベース6およびフック7を有している。さらに、各フラグメント5は、ベース6の第2面62から軸方向X(図中下方)に突出する第1爪10を有している。結合リング2の全体においては、複数の第1爪10が周方向θに並んでいる。図6の例においては各フラグメント5が1つの第1爪10を有しているが、各フラグメント5が周方向θに並ぶ複数の第1爪10を有してもよい。
【0058】
例えば、周方向θにおける第1爪10の長さは、周方向θにおけるベース6の長さよりも小さい。この場合、図6に示すように、隣り合うフラグメント5の第1爪10の間に隙間が形成される。
【0059】
第1爪10は、径方向Rにおける内側の内周面11と、径方向Rにおける外側の第1係合面12(外周面)と、これら内周面11および第1係合面12を繋ぐ底面13とを有している。内周面11および第1係合面12は、軸AXを曲率中心とした曲面である。底面13は、例えば径方向Rおよび周方向θと平行な平面である。
【0060】
内周面11は、軸方向Xと平行である。一方、第1係合面12は、第2面62に近づくほど内周面11との距離が小さくなるように軸方向Xに対して傾斜している。すなわち、第2面62に近づくほど第1爪10の径方向Rにおける幅が小さくなる。
【0061】
ベースリング9は、軸AXを中心とした円環状である。ベースリング9は、軸方向Xと交わる端面90と、端面90に設けられた溝91と、溝91に設けられた複数の第2爪92とを有している。一例では、ベースリング9に設けられる第2爪92の数と、結合リング2が備えるフラグメント5の数とが同じである。
【0062】
図6の例において、溝91は、軸方向Xに窪むとともに周方向θに延びる環状である。他の例として、ベースリング9は、周方向θに並ぶ円弧状の複数の溝91を有してもよい。
【0063】
本実施形態において、第1爪10は第1規制部RT1として機能し、溝91および第2爪92は第2規制部RT2として機能する。これら第1規制部RT1および第2規制部RT2は、結合リング2およびベースリング9の軸方向Xおよび径方向Rへの相対的な移動を規制する。
【0064】
図7は、ベースリング9の一部を拡大して示す概略的な斜視図である。溝91は、周方向θに延びる環状の内壁93と、内壁93に対向する環状の外壁94と、これら内壁93および外壁94を接続する底壁95とで囲われている。
【0065】
第2爪92は、外壁94から内壁93に向けて突出している。第2爪92は、内壁93と対向する第2係合面97を有している。第2係合面97は、底壁95から離れるに連れて徐々に内壁93との間の距離が減少するように軸方向Xに対して傾斜している。すなわち、第2爪92の外壁94からの突出量は、底壁95から離れるに連れて増加する。例えば、軸方向Xと第2係合面97とが成す角度は、図6に示した第1爪10の第1係合面12と軸方向Xとが成す角度と実質的に同じである。
【0066】
周方向θに隣り合う第2爪92の間には、図6に示した第1爪10を挿入可能な挿入領域96が形成されている。図7の例においては、第2爪92と挿入領域96が周方向θにおいて交互に並んでいる。
【0067】
図8は、周方向θに沿うベースリング9の概略的な断面図である。ここでは、第2爪92の断面を示すとともに、溝91に挿入されたフラグメント5の第1爪10の断面も示している。
【0068】
フラグメント5をベースリング9に装着する際には、フラグメント5の第1爪10を挿入領域96から溝91の内部に挿入する。さらに、フラグメント5を周方向θ(矢印ARで示す方向)にスライドして、第2爪92の第2係合面97と底壁95との間に第1爪10を位置させる。これにより、第1爪10と第2爪92が係合する。具体的には、第1爪10の第1係合面12が第2係合面97と接触し、フラグメント5とベースリング9の軸方向Xにおける相対的な移動が規制される。
【0069】
図7および図8の例においては、第2爪92と挿入領域96が周方向θにおいて交互に並んでいる。そのため、各フラグメント5の第1爪10を係合対象の第2爪92に隣接する挿入領域96から溝91に挿入することが可能である。フラグメント5の数と挿入領域96の数が同じである場合、これら挿入領域96にそれぞれフラグメント5を挿入した後に、全てのフラグメント5を一括して周方向θにスライドさせてもよい。
【0070】
全てのフラグメント5をベースリング9に装着した状態においては、溝91が各フラグメント5のベース6により塞がれる。他の例として、隣り合うフラグメント5の間において溝91がベース6から露出してもよい。
【0071】
図8に示す例においては、第1係合面12および第2係合面97が周方向θに対して僅かに傾斜している。すなわち、第1爪10は、周方向θに沿う断面における厚さが小さい第1端部10aと、当該断面における厚さが第1端部10aの厚さよりも大きい第2端部10bとを有している。また、第2爪92は、周方向θに沿う断面における厚さが小さい第1端部92aと、当該断面における厚さが第1端部92aの厚さよりも大きい第2端部92bとを有している。
【0072】
第1爪10は、第2爪92の第1端部92aと底壁95との間に第1端部10aから挿入される。第1爪10を矢印ARで示す方向にスライドさせると第1係合面12と第2係合面97が接触し、さらに第1爪10をスライドさせるとこれら係合面12,97の接触面圧が高まる。これにより、第1爪10と第2爪92を強固に係合させることができる。
【0073】
なお、第2爪92の第2端部92bと底壁95との間に第1爪10を第2端部10bから挿入しようとした場合に、第2端部10b,92bが周方向θに接触してもよい。この場合には、第1爪10と第2爪92を係合させることができないので、不適切な態様でのフラグメント5の取り付けを抑制できる。
【0074】
本実施形態に係る継手1Bの構造は、第1実施形態に係る継手1Aと同じく、例えば配管やホースなどの流路同士の結合に用いられる継手や、柱状の構造物などの連結に用いられる継手などに適用することができる。以下に、流路同士の結合に用いられる継手への適用例を開示する。
【0075】
図9は、当該適用例を示す図である。この図においては、本実施形態に係る継手1Bの構造を適用した2つの継手1R,1Sが連結された状態の断面を示している。継手1Rが備える結合リング2およびベースリング9をそれぞれ結合リング2Rおよびベースリング9Rと呼ぶ。また、継手1Sが備える結合リング2およびベースリング9をそれぞれ結合リング2Sおよびベースリング9Sと呼ぶ。
【0076】
ベースリング9R,9Sは、円筒状の本体100と、本体100の外周面から径方向Rに突出した環状の突起101とを有している。本体100の内側の空間は、例えば水などの流体が流れる流路を形成する。
【0077】
さらに、本体100の外周面には、配管やホースを継手1R,1Sに連結するための連結構造102が設けられている。連結構造102は、例えば図5に示した連結構造32と同様の雄ねじであるが、この例に限られない。連結構造102は、本体100の内周面に設けられてもよい。この場合において、連結構造102は、雌ねじであってもよい。
【0078】
図9の例では、ベースリング9R,9Sのそれぞれにおいて、連結構造102と突起101の間にシール材103が配置されている。これらシール材103は、例えば環状のパッキンであり、本体100の外周面に設けられた環状の溝104に嵌められている。これらシール材103は、図5に示したシール材33と同じく、連結構造102により継手1R,1Sに連結された配管等とベースリング9R,9Sの本体100との間の隙間を塞ぐ。連結構造102が本体100の内周面に設けられている場合、シール材103および溝104は当該内周面に設けられてもよい。
【0079】
本体100の先端面には、環状のシール材105が配置されている。シール材105は、本体100の先端面に設けられた環状の溝106に嵌められている。継手1R,1Sが連結された状態においては、これらのシール材105が接触し、ベースリング9R,9Sの間の隙間を塞ぐ。
【0080】
本適用例において、溝91および第2爪92(第2規制部RT2)は、突起101に設けられている。図9においては、第2爪92が設けられた位置のベースリング9Rの断面を示すとともに、第2爪92が設けられていない位置(挿入領域96の位置)のベースリング9Sの断面を示している。溝91および第2爪92によりフラグメント5を支持する構造は、図6乃至図8に示した構造と同様である。
【0081】
以上の本実施形態に係る継手1Bにおいても、第1実施形態に係る継手1Aと同様に、製造コストの低減や製造効率の改善が可能となり、仕様変更も容易に実施できる。さらに、本実施形態に係る継手1Bは、ベースリング9に各フラグメント5を装着することにより、これらの軸方向Xおよび径方向Rの双方への相対的な移動を規制できる。
【0082】
なお、第1爪10および第2爪92の形状は、図6乃至図9に示した例に限られない。他の例として、第1爪10および第2爪92は、図9と同様の断面において、L字型やT字型の形状を有してもよい。
【0083】
また、第1規制部RT1および第2規制部RT2は、本実施形態にて開示した他にも、種々の構造を採用し得る。例えば、第1規制部RT1は、フラグメント5に設けられた溝と当該溝の一部に突出する爪であってもよい。この場合において、第2規制部RT2は、フラグメント5の溝に挿入可能であり、かつフラグメント5の爪と係合する形状の爪であってもよい。
【0084】
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。上述の各実施形態と同一または類似の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略することがある。
【0085】
図10は、第3実施形態に係る継手1Cの一例を示す概略的な側面図である。図11は、図10に示す継手1Cの概略的な平面図である。継手1Cは、結合リング2と、2本の線材201,202とを備えている。結合リング2は、上述の各実施形態と同じく複数のフラグメント5に分割されている。図10および図11においては、結合リング2を構成するフラグメント5の一部の図示を省略している。
【0086】
図12は、図10に示すフラグメント5の概略的な斜視図である。上述の各実施形態と同じく、各フラグメント5は、ベース6およびフック7を有している。図10乃至図12に示すように、ベース6は、2つの貫通孔TH1,TH2を有している。例えば、貫通孔TH1,TH2は軸方向Xに並んでいる。ただし、貫通孔TH1,TH2は、径方向Rに並んでもよいし、軸方向Xおよび径方向Rのそれぞれにおいて位置がずれていてもよい。
【0087】
図10および図11の例において、貫通孔TH1,TH2は、ベース6の第1側面65と第2側面66の間を貫通している。例えば、貫通孔TH1,TH2は、図11に示す貫通孔TH1のようにベース6の内周面63および外周面64と平行な円弧状である。ただし、貫通孔TH1,TH2は、全体的に直線状であってもよいし、直線状の部分と屈曲した部分とを含む形状であってもよい。
【0088】
線材201,202は、貫通孔TH1,TH2に通すことが可能な直径を有している。線材201,202は、金属により形成されてもよいし、繊維やゴムにより形成されてもよい。また、線材201,202は、複数の細線により構成されたワイヤーであってもよい。
【0089】
各フラグメント5の貫通孔TH1,TH2に線材201,202を通すことにより、各フラグメント5を連結することができる。図10および図11の例においては、隣り合うフラグメント5の側面65,66の間に隙間が形成されているが、継手1Cの使用時には隣り合うフラグメント5の側面65,66が接触するように線材201,202が締められる。このように締めた状態の線材201,202は、例えば適宜の手段により保持され、当該締めた状態が保たれる。
【0090】
図13は、線材201,202を締めるための構成の一例を示す図である。この図の例において、継手1Cは、ホルダ210(スリーブ)をさらに備えている。ホルダ210には、各フラグメント5の貫通孔TH1に通された線材201の両端部が通されている。
【0091】
ホルダ210から線材201を矢印D1で示す方向にさらに引き出すと、矢印D2で示すように隣り合うフラグメント5の側面65,66が互いに近づく方向に移動する。ホルダ210から線材201を最大限に引き出した状態においては、例えば破線で示すように側面65,66が近接する。側面65,66が接触可能となるように、線材201を通すための溝が側面65,66に設けられてもよい。線材202も同様のホルダ210により締めることができる。
【0092】
図14は、本実施形態に係る継手1Cの他の一例を示す概略的な側面図である。図15は、図14に示す継手1Cの概略的な平面図である。これらの図においては、各フラグメント5が4つの貫通孔TH11,TH12,TH21,TH22を有している。
【0093】
貫通孔TH11,TH12は、第1側面65と外周面64の間を貫通している。貫通孔TH21,TH22は、第2側面66と外周面64の間を貫通している。例えば、貫通孔TH11,TH12は軸方向Xに並んでいる。同様に、貫通孔TH21,TH22は軸方向Xに並んでいる。ただし、貫通孔TH11,TH12は、径方向Rに並んでもよいし、軸方向Xおよび径方向Rのそれぞれにおいて位置がずれていてもよい。同様に、貫通孔TH21,TH22は、径方向Rに並んでもよいし、軸方向Xおよび径方向Rのそれぞれにおいて位置がずれていてもよい。
【0094】
例えば、貫通孔TH11,TH12,TH21,TH22は直線状である。ただし、貫通孔TH11,TH12,TH21,TH22は、円弧状などの他の形状であってもよい。
【0095】
線材201は、貫通孔TH11,TH21に通される。線材201のうち貫通孔TH11,TH21の間に位置する部分は、ベース6の外周面64と対向している。同様に、線材202は、貫通孔TH12,TH22に通される。線材202のうち貫通孔TH12,TH22の間に位置する部分は、ベース6の外周面64と対向している。
【0096】
線材201,202を締めると、隣り合うフラグメント5の側面65,66が接触する。さらに、線材201のうち貫通孔TH11,TH21の間に位置する部分、および、線材202のうち貫通孔TH12,TH22の間に位置する部分がそれぞれ外周面64と接触する。
【0097】
図14および図15の例においても、線材201,202を締め付ける際には、図13に示したようなホルダ210を用いることができる。この場合において、1つのフラグメント5の貫通孔TH11,TH21から線材201の両端部を延出させ、これら両端部をホルダ210に通してもよい。同様に、1つのフラグメント5の貫通孔TH12,TH22から線材202の両端部を延出させ、これら両端部をホルダ210に通してもよい。このようにホルダ210を装着すれば、線材201,202の両端部を隣り合うフラグメント5の間から延出させる必要がないので、各フラグメント5の側面65,66を良好に密着させることができる。
【0098】
図10乃至図15に示した継手1Cの構造は、上述の各実施形態に係る継手1A,1Bと同じく、例えば配管やホースなどの流路同士の結合に用いられる継手や、柱状の構造物などの連結に用いられる継手などに適用することができる。各フラグメント5は、配管、ホースおよび各種の構造物と連結するための、雌ねじや雄ねじのような接続構造を有してもよい。
【0099】
本実施形態に係る継手1Cにおいても、上述の各実施形態に係る継手1A,1Bと同様に、製造コストの低減や製造効率の改善が可能となり、仕様変更も容易に実施できる。さらに、本実施形態に係る継手1Cのように各フラグメント5を線材201,202によって連結する構造であれば、第1実施形態における内リング3および外リング4や、第2実施形態におけるベースリング9のようなフラグメント5を保持するための要素を用意する必要がない。したがって、継手1Cの製造コストの低減や製造効率の改善の効果が一層高まる。
【0100】
各実施形態に係る継手1A,1B,1Cの構造は、種々の態様に変形可能である。以下に、継手1A,1B,1Cに適用し得るいくつかの変形例を開示する。各変形例に係る構成は、単独で継手1A,1B,1Cに適用することもできるし、複数を組み合わせて継手1A,1B,1Cに適用することもできる。
【0101】
[第1変形例]
第1変形例においては、継手1Aのフラグメント5および内リング3に適用し得る他の構成を開示する。
図16は、第1変形例に係るフラグメント5の概略的な斜視図である。この図の例において、フラグメント5の溝68(第1規制部RT1)は、第1部分681および第2部分682を有している。
【0102】
第1部分681は、図3に示した溝68と同じく周方向θに延びている。第2部分682は、第1部分681から軸方向Xに延びている。図16の例において、第2部分682は、フラグメント5の周方向θにおける中央付近に位置し、第2面62に到達している。
【0103】
図17は、第1変形例に係る内リング3の概略的な斜視図である。この図の例において、内リング3の突起31(第2規制部RT2)は、第1部分681と嵌め合う形状の第3部分311と、第2部分682と嵌め合う形状の複数の第4部分312とを有している。
【0104】
第3部分311は、図2に示した突起31と同じく内リング3の本体30の端部において周方向θに延びている。各第4部分312は、第3部分311から軸方向Xに延びている。複数の第4部分312は、周方向θにおいて一定のピッチで配置されている。このピッチは、複数のフラグメント5が周方向θに配置されるピッチと同じである。
【0105】
本変形例において、各フラグメント5は、第1部分681に第3部分311を挿入し、第2部分682に第4部分312を挿入することにより内リング3に取り付けられる。この場合においては、第2部分682および第4部分312により、各フラグメント5と内リング3の周方向θにおける相対的な移動が規制される。したがって、各フラグメント5と内リング3を強固に接続することができる。
【0106】
なお、各フラグメント5には複数の第2部分682が設けられてもよい。また、図16の例においては第1部分681と第2部分682がT字型に接続されているが、第1部分681と第2部分682は十字型などの他の形状を成すように接続されてもよいし、互いに離れていてもよい。第3部分311および第4部分312の形状についても、第1部分681および第2部分682の形状に合わせて種々の態様に変形し得る。
【0107】
[第2変形例]
第2変形例においては、継手1Aのフラグメント5および内リング3に適用し得るさらに他の構成を開示する。
図18は、第2変形例に係る内リング3の一部およびフラグメント5の概略的な斜視図である。フラグメント5は、図3の例と同じく内周面63に溝68(第1溝)を有している。さらに、内リング3は、周方向θに沿う溝37(第2溝)を外周面に有している。溝37は、例えば内リング3の全周にわたる環状である。
【0108】
溝37,68の軸方向Xにおける幅は同じである。内リング3をフラグメント5の内周面63に押し当てた際には、溝37,68が合わさる。このとき溝37,68により形成される空間に係止片8が配置される。
【0109】
係止片8は、周方向θに沿って曲がった円弧状であり、径方向Rにおいて溝37,68のそれぞれの幅よりも大きく、かつこれらの幅の合計よりも小さい幅を有している。すなわち、係止片8によってフラグメント5と内リング3の軸方向Xへの相対的な移動が規制される。
【0110】
例えば、継手1Aは、結合リング2を構成するフラグメント5と同じ数の複数の係止片8を有している。他の例として、継手1Aは、結合リング2を構成するフラグメント5より少数または多数の係止片8を有してもよい。
【0111】
内リング3、フラグメント5および係止片8は、周方向θにおいて相対的に移動可能である。これにより、内リング3に対してフラグメント5が円滑に回動する。フラグメント5が円滑に回動すれば、2つの継手1Aを連結する作業および連結を解除する作業が極めて容易となる。
【0112】
[第3変形例]
第3変形例においては、継手1Aのフラグメント5および外リング4に適用し得る他の構成を開示する。
図19は、第3変形例に係るフラグメント5の概略的な斜視図である。この図に示すフラグメント5は、外周面64に設けられた溝69を有している。溝69は、ベース6の側面65,66の間において周方向θに沿って延びている。
【0113】
図20は、第3変形例に係る外リング4の一部の概略的な斜視図である。この図に示す外リング4は、円筒状の本体40と、周方向θに延びる複数の突起41と、隣り合う突起41の間に設けられた複数のノッチ42とを有している。
【0114】
突起41は、本体40の内周面から径方向Rの内側に突出している。図20の例においては、突起41が本体40の軸方向Xにおける一端(図中の上側の端部)寄りに位置している。ノッチ42は、当該一端から本体40の他端に向けて形成されている。
【0115】
複数のノッチ42は、周方向θにおいて一定のピッチで配置されている。このピッチは、例えば複数のフラグメント5が周方向θに配置されるピッチと同じであるが、この例に限られない。
【0116】
突起41は、フラグメント5の溝69に挿入可能である。ノッチ42が設けられていることにより、本体40のうち突起41の近傍の部分は、径方向Rに撓みやすくなる。これにより、各フラグメント5に外リング4を装着する作業が容易化される。
【0117】
本変形例において、溝69は第3規制部RT3として機能し、突起41は第4規制部RT4として機能する。第3規制部RT3および第4規制部RT4は、結合リング2および外リング4の軸方向Xへの相対的な移動を規制する。これにより、結合リング2と外リング4を強固に接続することができる。
【0118】
第3規制部RT3および第4規制部RT4は、溝69および突起41に限られない。例えば、第3規制部RT3は、フラグメント5の外周面64に設けられた突起であってもよい。この場合において、第4規制部RT4は、外リング4の内周面に設けられた溝であってもよい。
【0119】
[第4変形例]
第4変形例においては、継手1Aに適用し得る他の構成を開示する。
図21は、第4変形例に係る継手1Aの概略的な断面図である。この図においては、図5の適用例と同様の継手1P,1Qが連結された状態を示している。
【0120】
図21に示す継手1P,1Qにおいては、雄ねじMS1により各フラグメント5と内リング3P,3Qとが連結されている。さらに、雄ねじMS2により各フラグメント5と外リング4P,4Qとが連結されている。
【0121】
継手1Pの雄ねじMS1は、フラグメント5のベース6を径方向Rに貫通する孔H1を通り、内リング3Pに設けられた雌ねじFS1に捻じ込まれている。また、継手1Pの雄ねじMS2は、外リング4Pを径方向Rに貫通する孔H2を通り、フラグメント5に設けられた雌ねじFS2に捻じ込まれている。継手1Qにおける雄ねじMS1,MS2も同様の態様にてフラグメント5、内リング3Qおよび外リング4Qを連結している。
【0122】
図21に示す構造は、継手1P,1Qが備える複数のフラグメント5の全てに対して適用されてもよいし、これらフラグメント5の一部に対して適用されてもよい。
【0123】
本変形例の構成であれば、フラグメント5、内リング3(3P,3Q)および外リング4(4P,4Q)を強固に固定することができる。また、本変形例の構成であれば、フラグメント5、内リング3および外リング4が周方向θに回動しない。したがって、本変形例の構造は、このような周方向θへの回動を抑制する必要がある場合に適している。
【0124】
継手1Bにおいても本変形例と同様に、フラグメント5とベースリング9が雄ねじなどの適宜の手段によって連結されてもよい。
【0125】
[第5変形例]
第5変形例においては、継手1Aの内リング3に適用し得る他の構成を開示する。
図22は、第5変形例に係る内リング3の概略的な斜視図である。この図に示す内リング3は、周方向θに並ぶ3つのフラグメント3A,3B、3Cに分割されている。フラグメント3A,3B,3Cは、これらの近接する端部同士を接続するための構造を有してもよい。
【0126】
内リング3は、2つあるいは4つ以上のフラグメントに分割されてもよい。内リング3の各フラグメントは同じ形状であってもよいし、例えば周方向θにおける長さが異なるなど他の形状を有してもよい。
【0127】
[第6変形例]
第6変形例においては、継手1Aの外リング4に適用し得る他の構成を開示する。
図23は、第6変形例に係る外リング4の概略的な斜視図である。この図に示す外リング4は、周方向θに並ぶ3つのフラグメント4A,4B、4Cに分割されている。フラグメント4A,4B,4Cは、これらの近接する端部同士を接続するための構造を有してもよい。
【0128】
外リング4は、2つあるいは4つ以上のフラグメントに分割されてもよい。外リング4の各フラグメントは同じ形状であってもよいし、例えば周方向θにおける長さが異なるなど他の形状を有してもよい。
【0129】
なお、継手1Bにおけるベースリング9も第5変形例に係る内リング3や第6変形例に係る外リング4と同様に、周方向θに並ぶ複数のフラグメントに分割されてもよい。
【0130】
[第7変形例]
第7変形例においては、継手1Aの内リング3に適用し得るさらに他の構成を開示する。
図24は、第7変形例に係る内リング3の概略的な斜視図である。この図に示す内リング3は、図2等に示したような環状ではなく、開口を有さない円板状である。内リング3の外周部には、例えば図2に示した例と同様の突起31(第2規制部RT2)が形成されている。
【0131】
このような形状の内リング3を用いた場合、継手1Aの内部の空間が内リング3により塞がれる。このような継手1Aは、例えば流路を閉塞するためのキャップとして利用することができる。すなわち、当該継手1Aを配管やホースなどの流路に設けられた他の継手に接続すれば、当該他の継手の不使用時などに流路を閉塞することができる。
【0132】
なお、継手1Bにおけるベースリング9も本変形例に係る内リング3と同様に、開口を有さない形状であってもよい。このような継手1Bも、流路を閉塞するためのキャップとして利用することができる。
【0133】
[第8変形例]
第8変形例においては、継手1A,1B,1Cのフラグメント5に適用し得る他の構成を開示する。
図25は、第8変形例に係る複数のフラグメント5の概略的な側面図である。図26は、図25に示す複数のフラグメント5の概略的な平面図である。これらの図においては、図6に示したフラグメント5と同様に第1爪10を備えるフラグメント5に対し、本変形例に係る特徴的な構成を適用した場合を例示する。
【0134】
本変形例に係るフラグメント5は、周方向θにおける一端(第1側面65)に設けられた第1係合部EG1と、周方向θにおける他端(第2側面66)に設けられた第2係合部EG2とを有している。第1係合部EG1および第2係合部EG2は、互いに係合可能な形状を有している。
【0135】
図26の例において、第1係合部EG1は、第1側面65から周方向θに突出するとともに先端部が径方向Rに拡幅した突起である。また、第2係合部EG2は、第2側面66から周方向θに窪むとともに第1係合部EG1と嵌め合う形状を有した窪みである。2つのフラグメント5の一方の第1係合部EG1を軸方向Xに移動させて他方の第2係合部EG2に挿入することにより、これらフラグメント5を連結することができる。
【0136】
隣り合うフラグメント5の第1係合部EG1と第2係合部EG2が係合した状態においては、これらフラグメント5の周方向θおよび径方向Rへの移動が規制される。これにより、結合リング2の安定性が向上する。
【0137】
第1係合部EG1および第2係合部EG2は、継手1A,1Cのフラグメント5に対して設けることもできる。例えば継手1Cのフラグメント5に対して第1係合部EG1および第2係合部EG2を設ける場合、線材201,202を用いることなく結合リング2を組み立てることも可能である。
【0138】
[第9変形例]
第9変形例においては、継手1A,1B,1Cの結合リング2に適用し得る他の構成を開示する。
図27は、第9変形例に係る複数の結合リング2の概略的な平面図である。この図の例において、結合リング2は、12個のフラグメント5を含む。
【0139】
図27のように結合リング2を平面視した場合に、各フラグメント5のベース6が有する内周面63および外周面64は、互いに平行な直線状である。内周面63は、外周面64よりも短い。さらに、第1側面65および第2側面66は、内周面63と鈍角を成し、外周面64と鋭角を成す。
【0140】
図27の例においては、このような12個のフラグメント5を周方向θに並べることにより、平面視において正12角形の結合リング2が構成されている。この例に限られず、結合リング2が6角形などの他の多角形状を有するように各フラグメント5の形状が定められてもよい。
【0141】
本変形例に係る結合リング2を継手1Aに適用する場合、内リング3および外リング4も当該結合リング2の保持に適した形状、例えば結合リング2と同様の多角形状に形成される。また、本変形例に係る結合リング2を継手1Bに適用する場合、ベースリング9も当該結合リング2の保持に適した形状、例えば結合リング2と同様の多角形状に形成される。
【0142】
[第10変形例]
第1乃至第3実施形態においては、主に1つのフラグメント5が1つのフック7を有する場合を想定した。第10変形例においては、複数のフラグメント5により1つのフック7が構成される場合を例示する。
【0143】
図28は、第10変形例に係るフラグメント5の概略的な斜視図である。この図においては、隣り合う2つのフラグメント5A,5Bを示している。フラグメント5A,5Bは、いずれも図1乃至図4に示した継手1Aのフラグメント5と同様のベース6を有している。
【0144】
フラグメント5Aは、フック7の一部に相当する第1側部7Aを有している。フラグメント5Bは、フック7の一部に相当する第2側部7Bを有している。図28の例においては、第1側部7Aが第1側面71および係止部73を含み、第2側部7Bが第2側面72を含む。図28には表れていないが、第2側部7Bはプランジャ74も含む。
【0145】
図28の例では、フラグメント5Bが周方向θにおいてフラグメント5Aよりも大きい長さを有している。他の例として、フラグメント5Aが周方向θにおいてフラグメント5Bよりも大きい長さを有してもよいし、フラグメント5A,5Bの周方向θにおける長さが同じであってもよい。
【0146】
フラグメント5A,5Bを周方向θに密着させると、第1側部7Aおよび第2側部7Bにより図3に示したフック7が形成される。結合リング2の全体においては、フラグメント5A,5Bが周方向θにおいて交互に並べられる。
【0147】
図29は、本変形例に係る構成を適用した他のフラグメント5の概略的な斜視図である。この図の例においては、4つのフラグメント5A,5B,5C,5Dを示している。フラグメント5A,5B,5C,5Dは、いずれも図3に示したフラグメント5と同様のベース6を有している。フラグメント5Cは、周方向θにおいてフラグメント5A,5Bの間に位置している。フラグメント5Bは、周方向θにおいてフラグメント5C,5Dの間に位置している。
【0148】
図28の例と同じく、図29に示すフラグメント5A,5Bは、それぞれ第1側部7Aおよび第2側部7Bを有している。フラグメント5Cは、フック7の一部に相当する中間部7Cを有している。第1側部7A、第2側部7Bおよび中間部7Cを周方向θに密着させると、1つのフック7が形成される。フラグメント5Cは、フック7の周方向θにおける幅を定めるスペーサとして機能する。
【0149】
フラグメント5Dは、フック7の一部に相当する部分を含んでいない。すなわち、フラグメント5Dは、周方向θに並ぶフック7の間の距離(図1等に示した凹部70の幅)を定めるスペーサとして機能する。
【0150】
図30は、本変形例に係る構成を適用したさらに他のフラグメント5の概略的な斜視図である。この図の例においては、フラグメント5A,5Bの間に3つのフラグメント5C(5C1,5C2,5C3)が配置されている。さらに、フラグメント5Bの隣に3つのフラグメント5D(5D1,5D2,5D3)が配置されている。
【0151】
フラグメント5C1,5C2,5C3の周方向θにおける幅は例えば同じであるが、互いに異なってもよい。また、フラグメント5D1,5D2,5D3の周方向θにおける幅は例えば同じであるが、互いに異なってもよい。
【0152】
図28乃至図30においては、継手1Aの結合リング2に適用可能なフラグメント5の形状を例示した。継手1B,1Cの結合リング2においても同様に、複数のフラグメント5により1つのフック7や1つの凹部70が構成されてもよい。
【0153】
本変形例の構成であれば、結合リング2の仕様を容易に変更することが可能となる。すなわち、フラグメント5A,5Bの間に配置するフラグメント5Cの数や、隣り合うフック7の間に配置するフラグメント5Dの数を変更することにより、結合リング2全体に含まれるフック7の数と個々のフック7のサイズを変更することができる。
【0154】
本変形例において、各フラグメント5(5A,5B,5C,5D)は、配管、ホースおよび各種の構造物と連結するための、雌ねじや雄ねじのような接続構造を有してもよい。また、各フラグメント5は、雄ねじなどの適宜の手段によって内リング3、外リング4またはベースリング9と連結されてもよい。さらに、各フラグメント5は、図26に示したような第1係合部EG1および第2係合部EG2を有してもよい。
【0155】
以上の各変形例の他にも、各実施形態に係る継手は種々の態様に変形することができる。各実施形態および各変形例に開示した構成は、適宜に組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0156】
1A,1B,1C…継手、2…結合リング、3…内リング、4…外リング、5…フラグメント、6…ベース、7…フック、9…ベースリング、201,202…線材、RT1…第1規制部、RT2…第2規制部、RT3…第3規制部、RT4…第4規制部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図28
図29
図30