(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】ファラディック多孔性セル
(51)【国際特許分類】
C02F 1/48 20230101AFI20230703BHJP
C02F 1/461 20230101ALI20230703BHJP
【FI】
C02F1/48 B
C02F1/461 101Z
(21)【出願番号】P 2021501035
(86)(22)【出願日】2019-07-23
(86)【国際出願番号】 US2019043129
(87)【国際公開番号】W WO2020023565
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-06-01
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521011628
【氏名又は名称】パワーテック ウォーター インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】POWERTECH WATER INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ベーメ, リンジィ
(72)【発明者】
【氏名】リッパート, キャメロン
(72)【発明者】
【氏名】ランドン, ジェームズ
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04226685(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0221844(US,A1)
【文献】特表平11-505463(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038220(WO,A1)
【文献】特開2015-099856(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0031201(KR,A)
【文献】特開2005-152743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46-1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液を浄化するための電気化学的デバイスであって、
少なくとも1つの炭素系アノードと少なくとも1つの炭素系カソード(前記アノード及びカソードはそれぞれ、EPZCシフトのない純粋な電極である)が、容器内に交互に並んでおり、前記容器は、水溶液を前記容器に供給する少なくとも1つの入口と、浄化されたアウトプットを前記容器から排出する少なくとも1つの出口とを備えて構成されており、セパレータが各電極の間に配置されており、関連する配線を備えた電源が、DC定電圧又は定電流を前記炭素系電極に供給し、
除去すべき少なくとも1種の標的種を含有する水溶液が、前記入口を通って送り込まれ、前記電極のそば又は中を通って前記少なくとも1つの出口につながる排出チャネルに至り、
前記少なくとも1つのアノードに印加される前記DC電圧と前記少なくとも1つのカソードに印加される前記DC電圧が、前記少なくとも1種の標的種のプールベ線図に関連し、容量吸着、ファラディック固定化、及び容量吸着とファラディック固定化の両方からなる群から選択されるメカニズムにより、前記少なくとも1種の標的種を電極に凝集させるDC電圧であ
り、前記少なくとも1種の標的種の前記凝集が、前記少なくとも1つのアノードの近くの4未満のpH領域における前記標的種の酸化により引き起こされる、デバイス。
【請求項2】
前記少なくとも1種の標的種の前記凝集が、前記少なくとも1つのアノードの近くの4未満のpH領域における前記標的種の酸化により引き起こされ、前記酸化が、前記少なくとも1つのカソードの近くの8を超えるpH領域における酸化剤の生成から生じる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記電源が、プロセスコントローラにより、又は手動で制御される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記電極を作製する材料が
、活性炭布、ミクロ多孔性とメソ多孔性の活性炭の混合物、メソ多孔性とマクロ多孔性の活性炭の混合物、及びミクロ多孔性とメソ多孔性とマクロ多孔性の活性炭の混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記セパレータの厚さが、1nm~100ミクロン、2nm~50ミクロン、2nm~30ミクロン、1~100ミクロン、1~50ミクロン、及び1~30ミクロンの範囲からなる群から選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
ファラディック固定化を達成するために使用される前記DC電圧が、0.6V未満、1.2V未満、及び2.5V未満からなる群から選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記電極が、不透過性の絶縁体により分離されており、通過流が、
排出チャネルに到達する前に前記電極の中のみを通っ
て流れる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記電極が、透過性のセパレータによって分離されており、通過流が、前記電極のそばを流れ、前記セパレータを通って前記排出チャネルに至る、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
イオン交換膜が前記少なくとも1つのアノード、前記少なくとも1つのカソード、又は両方の電極を覆っている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
少なくとも1つの炭素系電極のゼロ電荷の電位が、カソードの還元、カソードの酸化、アノードの還元、及びアノードの酸化からなる群から選択されるメカニズムによりシフトされている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
少なくとも1つの炭素系アノードが、
0%~30%のミクロ多孔性活性炭であって、導電率値が10S/cmを超える炭素を含むミクロ多孔性活性炭と、70%~100%のメソ多孔性活性炭の細孔口径プロファイルを用いて達成される2.0~10nmの平均細孔口径、
0%~20%のマクロ多孔性活性炭と、80%~100%のメソ多孔性活性炭であって、導電率値が10S/cmを超えるメソ多孔性活性炭の細孔口径プロファイルを用いて達成される平均細孔口径2.5~10nmからなる群から選択される平均細孔口径を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
少なくとも1つの炭素系カソードが、
0%~30%のミクロ多孔性活性炭であって、導電率値が10S/cmを超える炭素を含むミクロ多孔性活性炭と、70%~100%のメソ多孔性活性炭の細孔口径プロファイルを用いて達成される2.0~10nmの平均細孔口径、
0%~20%のマクロ多孔性活性炭と、80%~100%のメソ多孔性活性炭であって、導電率値が10S/cmを超えるメソ多孔性活性炭の細孔口径プロファイルを用いて達成される平均細孔口径2.5~10nmからなる群から選択される平均細孔口径を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
電極間の間隔が、1mm未満、200ミクロン未満、50ミクロン未満、及び20ミクロン未満からなる群から選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
セル設計が、巻回、積層、又は炭素ブロックである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
平均細孔口分布範囲が0~50nmであり、標的種とFPCパラメータが、
FPCパラメータが0~1.2Vのアノード電圧範囲、-1.1未満のカソード電圧、及び1.2V
の作動電圧であるマンガン;
FPCパラメータが0~1.2Vのアノード電圧範囲、-0.5V未満のカソード電圧、及び0.4~1.2V
の作動電圧範囲である鉄;
FPCパラメータが0Vを超えるアノード電圧範囲、及び-0.5V未満のカソード電圧であるコバルト;
FPCパラメータが0~1.0Vのアノード電圧範囲、-0.4V未満のカソード電圧、及び1.2V
の作動電圧であるニッケル;
FPCパラメータが0Vを超えるアノード電圧、0V未満のカソード電圧、及び0.8~1.2V
の作動電圧範囲である銅;
FPCパラメータが0Vを超えるアノード電圧、-0.8V未満のカソード電圧、及び0.8~1.2V
の作動電圧範囲である亜鉛;
FPCパラメータが0Vを超えるアノード電圧、-1.3V未満のカソード電圧、及び0.4V
の作動電圧であるアルミニウム;
FPCパラメータが0.5Vを超えるアノード電圧、-0.4V未満のカソード電圧、及び1.2V
の作動電圧である鉛;
FPCパラメータが、0Vを超えるアノード電圧、及び0V未満のカソード電圧であるパラジウム;
FPCパラメータが0Vを超えるアノード電圧、及び0V未満のカソードである銀;
FPCパラメータが0.4Vを超えるアノード電圧、及び0V未満のカソード電圧であるイリジウム;
FPCパラメータが0Vを超えるアノード電圧、及び0V未満のカソード電圧である白金;
FPCパラメータが0.8Vを超えるアノード電圧、及び0V未満のカソード電圧である金;
FPCパラメータが0.3Vを超えるアノード電圧、及び0V未満のカソード電圧である水銀;
FPCパラメータが対NHEで1.5V未満のアノード電位、及びアノードとカソードの両端に印加される2.5V未満の全セル電位である塩素;
FPCパラメータが対NHEで1.2V未満のアノード電位、対NHEで-1.0Vを超えるカソード電位、及びアノードとカソードの両端に印加される2.2V未満の全セル電位である臭素;並びに
FPCパラメータが対NHEで1.4V未満のアノード電位、対NHEで-1.0Vを超えるカソード電位、及びアノードとカソードの両端に印加される2.4V未満の全セル電位であるクロラミン、からなる群から選択される、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の背景]
(発明の分野)
[001]本発明の分野は、選択したファラディック反応を炭素電極細孔口径プロファイリングと組み合わせることによる、溶液からの金属イオン、ハロゲン化物イオン、金属及びハロゲン化物の誘導体、並びにイオン性粒子状物質の除去、例えば、水からの鉛の除去である。
【0002】
[定義]
[002]「吸着」は、インプット流中のイオンを電極表面に引きつけ、そのイオンを電極表面に保持することを意味する。
【0003】
[003]「凝集」は、金属イオン、ハロゲン化物イオン、金属若しくはハロゲン化物の誘導体、又は粒子状金属を、下記のうちの1つ又は複数によりセルへのインプット流から除去することを意味する:(i)物理吸着;(ii)容量吸着;(iii)電気化学的pH調節及び金属固定化;(iv)電気化学的過酸化物(H2O2)発生及び金属酸化;(v)電着又は電気めっき;(vi)電気化学的酸化又は還元;(vii)析出;(viii)細孔口径プロファイル、(ix)電極処理、(x)電極間隔、並びに(xi)フローバイ対フロースルー対炭素ブロックセル設計。
【0004】
[004]「BET表面積」は、窒素を使用して材料の表面積を判定する物理吸着ベースの方法である、ブルナウアー-エメット-テラー法により判定される表面積を意味する。
【0005】
[005]「破過曲線」は、固定吸着器の出口での流出物の吸着濃度の経過を意味する。破過曲線は、技術的に使用可能な収着容量の計算を可能とする。破過曲線は、典型的には、標的種濃度対処理された体積をプロットする。例えば、
図14を参照されたい。
【0006】
[006]「炭素ブロック」は、炭素粒子がポリマーと結合してバルク固体形態となっている押し出し炭素材料である。典型的には、脱塩素及び粒子フィルターに使用される。FPCで使用される炭素ブロックセルの設計では、1つ又は複数の純粋な炭素ブロックのそれぞれが、典型的にはFPCにおいて電気的に絶縁された2つの半分に分割され;各ブロックの一方の半分がアノードとして使用され、各ブロックの他方の半分がカソードとして使用される。
【0007】
[007]「容量吸着」は、電気的引力の結果としてのイオン又は他の荷電種の電極への吸着を意味する。
【0008】
[008]「CCC」又は「容量性凝固セル」又は「CCCデバイス」は、主に容量吸着を使用して、金属イオン、金属の誘導体、又は粒子状金属を液体(典型的には水性)インプット流から除去し、政府が規制する制限を下回る金属、金属誘導体、又は微粒子含有量のアウトプット流を生成する浄化セルを意味する。例えば、米国EPAは、飲用水又は灌漑用水に対する「対策レベル」として、15ppbの鉛含有量を規定している。
【0009】
[009]「CCCパラメータ」は、CCCにおいてユーザが選択したFPCパラメータを意味する。
【0010】
[0010]「セル」は、一般に、インプット流(流入物)にさらされる複数の電極を意味し、動作時のアウトプット流(流出物)用の出口、電極に取り付けられた短絡スイッチ又は電源、電源と任意の流入バルブを制御する手動又はコンピュータ化された手段、及びセルの動作を監視し、手動又はコンピュータ化された制御手段とインターフェース接続するセンサを備える。セルは、例えば、セルの動作中に様々なアウトプット流収集容器又は他の配置を選択するために、インプット流及びアウトプット流を制御する更なる手段を任意選択で含むことができる。容量性脱イオン化セルとは異なり、FPCは、動作中に電極を再生(脱着とも呼ばれる)して脱着された標的種の廃棄物流を生成しない。代わりに、例えば、アウトプット流中の標的種の濃度がユーザが選択した閾値を超えた場合、CCC又はEDCを含むFPCは交換される。アウトプット流中の標的種濃度以外の交換基準、例えば、所与のFPCに関する通過流の累積体積、及び特定の反応副生成物の存在を指定してもよい。
【0011】
[0011]「充電電位」は、作業を遂行するためにセルに印加される電圧を意味する。
【0012】
[0012]「導電率」は、インプット流、通過流、アウトプット流、又は廃棄物流の電気導電率を意味する。導電率は、インプット流、アウトプット流、又は廃棄物流中のイオンのモル濃度の代理測定である。導電率は、そうした液体流中のイオンのモル濃度に正比例する。
【0013】
[0013]「CG」は、主にメソ多孔性構造を有し、公称表面積が約700m2/gの炭素を意味する。CGは、本発明者らにより、本明細書に開示する細孔口径プロファイル法を用い策定され、Calgon Corporation(Naperville、IL)により、本発明者らのために作製された。CGは、表においてカルゴン(Calgon)(登録商標)と記載される場合がある。
【0014】
[0014]「CV」は、サイクリックボルタモグラムを意味する。
【0015】
[0015]「CX」は、炭素キセロゲルを意味する。CX電極は、メソ多孔性構造を有し、公称表面積が約200m2/gである。
【0016】
[0016]「サイクル」は、正に次いで負、又は負に次いで正の一連の電位がFPC電極に印加される動作のサイクルを意味する。
【0017】
[0017]「DO」は、溶存酸素を意味する。
【0018】
[0018]「E」は、電圧を意味し、電位とも呼ばれる。直流の場合、Eは一定の極性(正又は負)を有する。
【0019】
[0019]「電極」は、導電性の材料、典型的には多孔質炭素を意味する。
【0020】
[0020]「EDC」は、本願に開示される電気脱ハロゲン化セルを意味する。EDCは、FPCに属する水浄化セルの一種である。
【0021】
[0021]「EDCパラメータ」は、EDCにおいてユーザが選択したFPCパラメータを意味する。
【0022】
[0022]「EDX」は、エネルギー分散型X線分析を意味する。
【0023】
[0023]「Eo」は、電極が短絡しているときの対参照電極電位である(即ち、Eoは、短絡状態時の電位である)。
【0024】
[0024]「EPZC」又は「ゼロ電荷の電位」は、表面でのイオン吸着が最小になる電極の電位を意味する。EPZCは、炭素電極の表面改質により意図的にシフトさせることができる、又は拡張された印加電位又は電圧による電極表面の酸化の結果として本質的に移動させることができる。純粋な炭素電極のEPZCは、典型的には-0.1Vから+0.1Vの間である。表面改質による電極のEpzcのシフトは、本明細書に組み込まれる米国特許仮出願第62/702286号に詳細に開示されている。所与の標的種の場合のFPC電極のEPZCは、水の化学的性質によって異なり、実験的に判定される。
【0025】
[0025]「ファラディック固定化」は、電解質中の標的種への電子移動、又は電解質中の種への電子移動と、それに続く対象の標的種との溶液中での均一反応を意味し、その後、反応生成物は、電極に吸着される。
【0026】
[0026]「フローバイ」セル設計は、FPC内の通過流が、電極を通過するのではなく、FPC内の電極の表面を横切って流れることを意味する。フローバイセル設計は、フロースルーセル設計と比較して、下記の利点を提供することができる:低い圧力降下、高い流量、炭素電極の同等の劣化、各電極のペアに対して生成される同等のpH領域。
【0027】
[0027]「流量」は、インプット、スループット、アウトプット、又は廃棄物流の流量を意味し、典型的にはL/時、ml/分等の単位である。
【0028】
[0028]「フロースルー」セル設計は、FPC内の通過流を強制的にFPC内の電極を通過させることを意味する。フロースルーセル設計は、フローバイセル設計と比較して下記の利点を提供することができる:極端なpH領域、出口pHに対する良好な制御。
【0029】
[0029]「FPC」又は「ファラディック多孔性セル」又は「FPCデバイス」は、凝集を使用して液体(典型的には水性)インプット流から金属イオン、ハロゲン化物イオン、標的金属若しくは標的ハロゲン化物の誘導体(例えば、他の種)、又は粒子状金属を除去し、金属、ハロゲン化物、又は微粒子含有量が低下したアウトプット流を生成する浄化セルを意味する。異なる種のFPCを直列又は並列に使用して浄化システムへの水性流入物から複数の標的種を除去することができる。「FPCシステム」は、1つ又は複数のFPCと、任意選択で他のタイプの浄化セル(「ハイブリッドシステム」の定義を参照されたい)、例えば容量性脱イオン化(「CDI」)セル、膜CDIセル(「MCDI」)、逆CDI(「i-CDI」)セル、並びに非電気化学セル及びフィルターとを含有する水浄化システムを意味する。CDI、MCDI、i-CDIセル、又は類似の脱着セルのFPCシステムへの組み入れには、廃棄物流の提供と、CDI、MCDI、i-CDI、及び類似の脱着セルからの廃棄物流への脱着に対応するためのFPCシステムにおける関連するセルの制御が必要である。CCC及びEDCは、FPCの一種である。
【0030】
[0030]「FPCパラメータ」は、(i)物理吸着;(ii)容量吸着;(iii)電気化学的pH調節;(iv)電気化学的過酸化物(H2O2)発生及び標的種の酸化;(v)電着(例えば、電気めっき、電気泳動堆積);(vi)電気化学的酸化又は還元;(vii)析出;(viii)細孔口径プロファイル、(ix)電極処理、(x)電極間隔、並びに(xi)フローバイ対フロースルー対炭素ブロックセル設計のFPCにおいてユーザが選択した値を意味する。1つ又は複数のFPCパラメータが、所与のインプット水の化学的性質に関する実験的データに基づき、通過流から標的種を除去するために選択、又は「調整」される。
【0031】
[0031]「ハロゲン化物誘導体」は、ハロゲン化物を含有する分子又は化合物を意味する。
【0032】
[0032]「HE」は、高効率のメソ多孔性炭素を意味する。HE炭素で作られた電極は、主にメソ多孔性構造を有し、公称表面積が約380m2/gである。HEは、メソ多孔性炭素が98%を超え、残部がマクロ多孔性炭素である配合を有する。HEは、本明細書に組み込まれる米国特許仮出願第62/702286号に開示の細孔口径プロファイル法を使用して策定される。
【0033】
[0033]「ハイブリッドシステム」は、少なくとも1つのFPC(CCC又はEDC)と、少なくとも1つの他のタイプの水浄化セル、例えば、過酸化セル、CDI、MCDI、i-CDI、又は非電気化学セル若しくはフィルターを収容する水浄化システムを意味する。ハイブリッドシステムの最小構成は、直列(FPCが他のセルタイプに供給する、又はその逆)である。より大きなシステムは、直列のみとすることも、並列にした直列通路を(スループットを増加させるために)有することもできる。
【0034】
[0034]「固定化」は、その後の浄化されたアウトプット流への脱着を伴わない標的種のFPC電極への吸着を意味する。
【0035】
[0035]「インプット流」は、セルへの入口を通って送り込まれる、様々なイオン及び金属を含有する液体、典型的には水を意味する。
【0036】
[0036]「KN」は、American Kynol,Inc(ニューヨーク州プレザントビル)から入手可能なカイノール(Kynol)(登録商標)として販売されているミクロ多孔性炭素を意味する。KN炭素で作られた電極は、ミクロ多孔性構造を有し、公称表面積が約1800m2/gである。
【0037】
[0037]「金属」は、プールベ線図が存在し、As、Se、Pb、Ni、Zn、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuを含む群から選択される金属を含有する金属、金属イオン、金属錯体、金属粒子、又は毒素を意味する。
【0038】
[0038]「金属誘導体」は、金属又は半金属を含有する分子又は化合物を意味する。
【0039】
[0039]「金属種形成」は、所与の環境における金属の様々な化学形態(「種」)を意味する。例えば、As(III)及びAs(V)は、所与のpHの水溶液中に共存できるヒ素の種である。
【0040】
[0040]「NHE」は、通常の水素電極を意味する。
【0041】
[0041]「アウトプット流」は、FPCを通過して、インプット流よりも低いモル濃度の標的種を含有する液体を意味する。
【0042】
[0042]「並列システムアーキテクチャ」は、並列に接続されたFPC(及び任意選択で他のタイプのセルとフィルター)を意味し、即ち、各FPC(及び任意選択で他のタイプのセルとフィルター)の出口が、システムアウトプットを供給する。並列システムアーキテクチャは、固定することも、複数のFPC、プロセスコントローラ、相互接続ライン、センサ、及びラインとセルに配置されたバルブを含むこともできる。
【0043】
[0043]「物理吸着」は、標的種の電極細孔への物理的捕捉を意味する。
【0044】
[0044]「PMD」は、細孔口径を意味し、それは、炭素電極表面での細孔の直径である。細孔は、炭素電極内の行き止まりチャネルでも貫通チャネルでもよく、典型的には可変のチャネル直径を有する。
【0045】
[0045]「流入地点」又は「POE」は、給水設備が住宅、商業/工業ビル、又は他の構造物における配水システムに供水する場所を意味する。
【0046】
[0046]「使用地点」又は「POU」は、配水システムから消費者、飲料ディスペンサ、厨房機器、又は他の最終用途に水が分配される場所を意味する。
【0047】
[0047]「極性」は、DC電圧の正又は負いずれかの極性を意味する。
【0048】
[0048]「細孔口径プロファイル」は、本明細書に組み込まれる米国特許仮出願第62/702,286号及び米国特許出願第16/417,574号に開示の細孔口径プロファイル法に従い作製された、電極中のミクロ多孔性、メソ多孔性、及びマクロ多孔性炭素の体積比(複数可)を意味する。一般的に言えば、平均細孔口径が大きいほど、電極の耐用年数が長く、通過流に対する電極の透過性が高い。平均細孔口径は、所与の炭素電極を作製するために使用するミクロ多孔性、メソ多孔性、及びマクロ多孔性炭素の比により制御される。
【0049】
[0049]「プールベ線図」(電位/pH図、EH-pH図又はpE/pH図とも呼ばれる)は、水性電気化学系の可能な安定(平衡)相を示す。優勢なイオン境界が、線で表される。そのため、プールベ線図は、軸の組が異なる標準的な状態図と同様に読み取ることができる。状態図と同様に、プールベ線図は、反応速度又は速度効果を扱わない。可溶性の種の場合、プールベ線図の線は通常、1M又は10-6Mの濃度について描画される。他の濃度の場合は、追加の線が描画されることもある。
【0050】
[0050]「プールベ作動領域」は、FPC中の所与の電極でのpH及び印加されるEをプールベ線図と関連づけて、所与の水の化学的性質において標的種の固定化を選択することを意味する。
【0051】
[0051]電極に関連する「純粋」は、表面改質されていないことを意味する。例えば、スペクトラカーボ(Spectracarb)(商標)電極は、製造業者から供給された状態では、純粋である。
【0052】
[0052]「プロセスコントローラ」は、FPC(及び任意選択で他のタイプのセルとフィルター)のシステム内に配置されたセンサを監視して、1つ又は複数のFPC、及び任意選択で1つ又は複数の他のタイプの水浄化セル又はフィルターを含む水浄化システムにおけるインプット、通過、及び/又はアウトプット流、並びにFPC(及び任意選択で他のタイプのセルとフィルター)の状態をサンプリングするプロセス制御アプリケーションを操作するコンピュータを意味する。プロセスコントローラは、処理すべき水溶液の供給源、FPC(及び任意選択で他のタイプのセルとフィルター)、及びシステム出口を相互接続するライン内のバルブを作動させ、それにより、様々なFPC(及び任意選択で他のタイプのセルとフィルター)が、直列システムアーキテクチャ、直並列システムアーキテクチャ、又は並列システムアーキテクチャで構成されることを可能にする。センサデータに基づき、プロセスコントローラは、システム内のFPCのFPCパラメータを動的に調節する(任意選択でシステム内の他のセルとフィルターも調節する)ことができる。
【0053】
[0053]「浄化する」は、通過流から1又は複数種の標的種を除去することを意味する。浄化は、プールベ線図が存在する金属(例えば、As、Pb、Ni、Zn、Al、Cr、Mn、Fe、及びCu)、ハロゲン化物(例えば、Cl、Br、クロラミン)、有機物、及び生体化合物の除去を含む。
【0054】
[0054]「巻回セル設計」は、連続セパレータと多孔質炭素系電極材料が物理的にらせん状に巻回されて、多孔質炭素電極の中を通る複数の、主にフローバイ通過流通路を備えるシリンダが創出されるFCPセル設計を意味する。巻回セルを製造するため、アノード材料、セパレータ材料、及びカソード材料のシートを積層し、次いで、巻回してシリンダを形成する。集電体が、電気的損失を低減するため、通常は複数箇所でアノードとカソードに取り付けられる。
【0055】
[0055]「SC」は、Engineered Fibers Technology,LLC(コネチカット州シェルトン)から入手可能な、スペクトラカーボ(商標)として販売されているミクロ多孔性炭素を意味する。SC炭素で作られた電極は、ミクロ多孔性構造を有し、公称表面積が約1900m2/gである。
【0056】
[0056]「SCE」は、飽和カロメル電極を意味し、例えば、サイクリックボルタンメトリにおいて、参照電極として一般に使用される標準的な参照電極である。
【0057】
[0057]「直列システムアーキテクチャ」は、直列に接続されたFPC(及び任意選択で他のタイプのセルとフィルター)を意味し、即ち、第1のFPCの出口が入口と第2のFPCに供給し、第2のFPCの出口が入口と第3のFPCに供給する、等となる。直列システムアーキテクチャは、固定することも、複数のFPC(及び任意選択で他のタイプのセルとフィルター)、プロセスコントローラ、センサ、相互接続供給ライン、及び1つのFPCの出口と第2のFPCの入口との間の供給ラインに配置されるバルブを含むこともできる。
【0058】
[0058]「直並列システムアーキテクチャ」は、FPC(及び任意選択で他のタイプのセルとフィルター)を直列又は並列に接続することができるシステムを意味する。直並列システムアーキテクチャは、固定することも、複数のFPC(及び任意選択で他のタイプのセルとフィルター)、プロセスコントローラ、相互接続供給ライン、センサ、及び1つのFPCの出口と第2のFPCの入口との間の供給ラインに配置されるバルブを含むこともでき、そのバルブは、プロセスコントローラが作動させる。典型的な直並列システムアーキテクチャは、複数のランクの所与の一連のセルを含み、それにより、複数の直列通路によりスループットが向上した状態で通過流を同様に処理する。
【0059】
[0059]「SHE」は、標準水素電極を意味する。
【0060】
[0060]「シフト」は、本明細書に組み込まれる米国特許仮出願第62/702,286号に開示の方法を使用した、電極表面の意図的又は非意図的な化学的又は電気化学的改質(例えば、印加電位又は電圧による電気化学的酸化)により、電極のEPZCの電位(「位置」とも呼ばれる)を変更することを意味する。
【0061】
[0061]「種」は、水流中の、又はセル電極に吸着された分子、化合物、又は微粒子を意味する。
【0062】
[0062]「種形成」は、システム内又はFPC内での定義された化学種間の元素の分布を意味する。例えば、所与の金属の非荷電性金属粒子、金属イオン、及び金属錯体は、所与のpHで溶液又は懸濁液中に共存することがあり、その分布は、pHが変化するにつれて変化し得る。
【0063】
[0063]「積層セル設計」は、セパレータと多孔質炭素系電極材料の別々の小片が層毎に積層されて、多孔質炭素電極の中及び/又は近くを通る複数の、主にフローバイ通過流通路を備えるシリンダを創出するFCPセル設計を意味する。集電体が、電気的損失を低減するため、通常は複数箇所でアノードとカソードに取り付けられる。
図23は、積層セル設計を示す。
【0064】
[0064]「表面電荷強化面」は、化学的又は電気化学的方法によって表面電荷が付与された電極表面を意味する。
【0065】
[0065]「システム」は、手動で、又はプロセスコントローラにより制御される、複数の相互接続されたFPC(及び任意選択で他のタイプのセルとフィルター)である。
【0066】
[0066]「標的金属」は、CCCを使用して除去される所与の金属又は金属誘導体の1又は複数の種を意味する。
【0067】
[0067]「標的種形成」は、標的種のプールベ線図に示すように、セル電極に印加されるEとpHの関数として、標的種が水性電気化学セルにおいて取り得るいくつかのイオン状態又は錯体形成のうちの1つを意味する。
【0068】
[0068]「標的種」は、FPCを使用して除去される分子、化合物、又は微粒子を意味する。「標的種」は、FPCへのインプット流中に検出される(「プールベ線図において種として識別される」とも呼ばれる)分子、化合物、又は微粒子だけでなく、分子、化合物、又は微粒子を含むFPCにおいて創出される1又は複数種の中間体及び最終反応生成物も含む。
【0069】
[0069]「通過流」は、セル内で処理されている液体流を意味する。別の言い方をすれば、通過流は、セル内であって、セルへの入口とセルからの出口の間にある液体流を意味する。
【0070】
[0070]「処理する」は、作動中のFPC又はFPCを収容するシステムにインプット流を供給し、浄化されたアウトプット流を回収することを意味する。
【0071】
[0071]「処理済電極」は、本明細書に開示される電極表面改質を受けた電極を意味する。
【0072】
[0072]「TDS」は、総溶解固体を意味する。一般的な操作的定義は、固体は、2ミクロンの細孔を備えるフィルターを通してのろ過に耐える程度に十分に小さくなければならない、というものである。
【0073】
[0073]「未処理電極」は、本明細書に開示される電極表面改質を受けていない電極、即ち、純粋な炭素電極を意味する。
【0074】
[0074]「電圧」及び「電位」は、本明細書においては同義語である。電圧は、特別の定めがない限り直流電流(「DC」)である。
【0075】
[0075]「廃棄物流」は、CDI、MCDI、i-CDIセル、逆浸透、イオン交換、又は吸着と脱着を繰り返す他の水浄化セルを通過して、インプット流よりも高いモル濃度のイオンを含有する液体を意味する。脱イオン化セル、例えば、容量性脱イオン化セルを、FPCを収容するシステムに使用することができる。FPCは、廃棄物流を有さない。FPCからのアウトプット流は、浄化水である。分子を定期的に脱着する脱イオン化セルを収容するシステムは、(i)FPCアウトプット流と組み合わされた、吸着状態で作動する脱イオン化セルからの浄化されたアウトプット流、及び(ii)脱着状態で作動する脱イオン化セルからの廃棄物流を有する。
【0076】
(関連技術)
[0076]飲用水及び作物灌漑用水に含まれる有毒金属、とりわけ鉛は、主要な、世界的な健康問題である。この問題、及び健康への影響は、都市水道システムの水が鉛汚染によって有毒となるような危機が発生するまで、ほとんど報告されることがない。昨年、少なくとも1800万人のアメリカ人が、鉛で汚染された水を飲む危険にさらされていた。5,000を超える公共給水システムが、連邦鉛規則に違反していた。小児における血液鉛レベルの上昇は、不可逆的な神経及び行動障害を引き起こし、たとえ低レベルでも、IQ及び生涯達成度の低下に関連してきた。米国環境保護局(「EPA」)は、鉛曝露の安全なレベルは存在しないことを強調している。住居用の使用地点/流入地点(POU/POE)の鉛低減用に最も一般に使用されているフィルター、例えば、ゼオライト及びイオン交換を使用するフィルターでは、不十分である。それらは、有効寿命が限られ、実質的な鉛特異性に欠け、高価である。
【0077】
[0077]
図1は、都市飲用水中の鉛レベルが危険なほど高い米国の場所と、米国の幼児における血液鉛レベル上昇の発生頻度を示し、そこでは、幼児は、永続的な脳損傷、発作、昏睡、更には鉛中毒死のリスクにさらされている。米国天然資源保護協議会(「NRDC」)は最近、水中の鉛と銅のレベルを監視する連邦基準であるEPAの鉛及び銅規則(https://www.epa.gov/dwreginfo/lead-and-copper-rule)に違反する5,363の公共給水システムを発見した。NRDC報告書は、鉛についての対策レベル(試験を行った住宅の少なくとも10パーセントで15ppb)を超える1,110の水道システムも発見している。これらのシステムは、合計で約4百万人にサービスを提供している。EPAは、1991年の鉛と銅規則を改定して規制をより厳格にすることを検討しており、EPAの行政官は、EPAが「鉛に対する戦争を宣言する」という野心的な10年間の戦略に取り組んでいると述べており、飲用水中の鉛について、「我々が国として直面する最大の環境脅威の1つ」であると説明した。
【0078】
[0078]ミシガン州フリントにおける都市水道システムの2018年の試験では、13,000ppbの鉛レベルが示され、これは、飲用水における鉛についてのEPA対策レベルの866倍である。人々は、家庭、学校、及び地域社会での水質に対してより意識するようになり、懸念を強めている。ニューヨーク州、カリフォルニア州、オハイオ州、及びイリノイ州の公立学校の水飲み器は、試験で15ppbの対策レベルを遙かに超えていた。古いインフラから飲用水システムへパイプが鉛を浸出させるリスクを最小限に抑えるために公共水道当局が講じた腐食防止策にもかかわらず、飲用水中の鉛濃度は一般に、全国的に上昇している。飲用水から鉛を排除する最も効果的な方法は、鉛ラインを交換することであるが、それには、推定300億ドルの費用がかかる。飲料水用のより良好なPOU/POEデバイスは、遙かに簡単で費用効果の高い解決策となり得る。既存の解決策は、高額な費用、不十分な有効性、及び/又は短いデバイス寿命に圧倒されているため、鉛汚染の問題は、十分に対処されていない。
【0079】
[0079]現在市場に出回っている鉛除去デバイスは、鉛に対する特異性に欠けており、デバイス寿命は、鉛の濃度に関係なく、ろ過した水体積の総量によって制限される。時間の経過と共に、フィルター前後の圧力降下が大きくなり、フィルター内の吸着剤が完全に消費されていなくても、水がフィルターを通って流れることができなくなって、役に立たなくなる。
【0080】
[0080]塩素及び/又はクロラミンは、微生物の増殖を制御するための消毒剤として米国の飲用水供給に日常的に添加されている。微生物の除去は人間の消費にとって有益であるが、塩素及び/又はクロラミンは、水道水の不快な味や臭いの一因となる。したがって、最終使用の前に塩素及びクロラミンを除去することが望ましい。塩素は、クロラミンよりも揮発性が高く、典型的な消費者のフィルターピッチャーで容易に除去することができる。しかし、クロラミンを除去するには、活性炭(触媒炭素)を含有する特別に配合したフィルターが必要である。塩素及び/又はクロラミンの存在はまた、高分子膜、例えば逆浸透(RO)に依存する水浄化プロセスにとっても有害である。ほとんどの膜はこれらの消毒剤に耐性がなく、曝露されると分解し、不可逆的損傷及び高価なRO膜の交換の原因となる。飲用水及び熱電プラントや他の工業プロセスで使用する他の水(「プロセス水」)は、プロセスシステムの腐食及び汚染を低減するため、塩素、クロラミン、及び他のハロゲン化物(とりわけ、臭素及びヨウ素)、並びにハロゲン化物誘導体を除去する必要がある。RO膜に損傷を与えることなく、活性炭フィルターの使用を低減して水の供給源から塩素とクロラミンの両方を除去するという技術的問題の解決策は、水浄化コストを削減するだけでなく、飲用水及びプロセス水の質を改善する。水浄化プロセスとしての水質汚染物質の酸化は通常、過酸化水素又はオゾンを用いて行われる。ある特定の水質汚染物質の酸化は、更なる介入なしに汚染物質の更なる分解と最終的な破壊を促進する。
【0081】
[0081]解決すべき技術的問題は、(i)浄化水を生成するためのより効率的でより安価な浄化デバイス、とりわけ、飲料水中の可溶性及び不溶性の鉛を15ppb未満にまで除去するデバイスを提供することであり、その浄化デバイスは、(ii)住居用、都市用、商業用、及び工業用として容易に拡張可能であることである。出願人は、標的種の凝集によりこの技術的問題を解決するファラディック多孔性セル(「FPC」)を開発した。本明細書では電気脱ハロゲン化セル(「EDC」)と呼ばれる、新規な電気脱ハロゲン化技術を使用して水から塩素、他のハロゲン化物、クロラミン消毒剤、及び他のハロゲン化物誘導体を除去する第1の種;及び、本明細書では、容量性凝固セル(「CCC」)と呼ばれる、新規な容量性凝固技術を使用して金属、金属誘導体、及び粒子状金属を除去する第2の種の2種のFPCが、本明細書に開示される。出願人のファラディック多孔性技術は、一般に使用されるプロセス、例えば化学凝固、イオン交換、及び吸着剤よりも、水の浄化に著しく効果的である。EDCは、飲用水及びプロセス水から塩素、クロラミン、並びに他のハロゲン化物及びハロゲン化物誘導体を除去するコストを削減し、効率を向上させるという技術的問題を解決する。CCCは、飲用水及びプロセス水から金属、金属誘導体、及び粒子状金属を除去するコストを削減し、効率を向上させるという技術的問題を解決する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1】国家資源防衛審議会が作製した、水道システムがEPAの鉛及び銅規則に違反している郡の地図(左)、及び2012年の血中鉛レベルが高い小児の症例数(右)。
【
図2】CCCコアの一部の概略図。概略図は、CCCコア内の2対(1対につきアノードとカソード)の電極を示す。CCCは、典型的には10対を超える電極を有する。
【
図3】出願人のCCCデバイスと市販の先行技術のPOUデバイスとの鉛除去の比較。
図2において「PTW」と示されている出願人のCCCは、鉛含有量がEPA対策レベルを超える様々な都市水道の化学的性質について試験を行った。出願人のCCCは、先行技術のデバイス全てを上回った。
【
図4】アノードとカソードに印加されるEと、各電極付近で結果として得られるpHの交点での鉛種除去の場合のプールベ作動領域を示す、炭酸塩溶液中の鉛(Pb)のプールベ線図。
【
図5】鉛種形成とPb種の固定化のための径路を示す、鉛(Pb)除去の場合の凝集機構。
【
図6】次亜塩素酸塩の場合のプールベ線図(Debiemme-Chouvy,Catherine&Hua,Y&Hui,F&Duval,Jean-Luc&Cachet,H.(2014)。「Electrochemical treatments using tin oxide anode to prevent biofouling」の正誤表[Electrochimica Acta56/28(2011)10364~10370ページ]。Electrochimica Acta.121.461.10.1016/j.electacta.2014.01.130.)。
【
図7】次亜臭素酸塩の場合のプールベ線図(前掲)。
【
図8】モノクロラミン(NH
2Cl)の場合のプールベ線図(www.sedimentaryores.net/Pipe%20Scales/Chlorine-chloramine.html)。
【
図9】印加電圧と短絡電圧を繰り返す間に市販のミクロ多孔性炭素[スペクトラカーボ(SC)及びカイノール(KN)]、主にメソ多孔性炭素[カルゴン(CG)]、メソ多孔性炭素[炭素キセロゲル(CX)]、並びに発明者の高効率(HE)炭素電極を用いた場合に通過した電荷。凡例の炭素タイプの順序は、CXがHEよりも低いy軸値であることを除き、通過した開始比電荷(y軸)の痕跡の順序でもある。
【
図10】4.3mMのNaCl中の4電極設定におけるカイノール電極の場合の電位分布であり、純粋なカイノールがアノードとカソード、Ptが対電極、標準カロメル電極(SCE)が参照であった。電圧は、1.6Vから0.8Vまで0.2V刻みで低下させて印加され、1.6Vまで戻された。E
0,avgは、システムの開回路電圧を表す。
【
図11】
図8a~eは、作用電極として炭素、対電極としてPtコーティングしたTi、参照として標準カロメル電極(SCE)を用いた、4.3mMのNaCl中、0.5mV/sのスキャン速度でのサイクリックボルタモグラム(CV)を示す。CVは、電解質中に配置され、同一の実験期間中、定電圧に保持された炭素電極(示したような様々なタイプ)を使用して収集した。アノードとカソードの間に印加される電圧をスキャン速度で上昇させ、次いで下降させ、電流反応をCVとして記録した。純粋な(0h)電極のCVに加え、各プロットは、2.0Vの一定の印加電位で3及び6時間電極を使用した後に遂行された加速酸化研究の結果(3時間及び6時間の痕跡)を示す。
図8aは、ミクロ多孔性SCの場合のCVを示す。3時間の電気化学的酸化の後、E
PZCは、右にシフトしており、酸素含有官能基と炭素電極の炭素表面の間に共有結合が形成されたことを示した。6時間後、ゼロ電荷(E
pzc)の電位はもはや存在せず、電流が顕著に低下し、細孔の崩壊を示している。同じ傾向が、ミクロ多孔性KNの場合の
図8bで観察される。
図8cは、主にメソ多孔性炭素であるCGの場合のCVを示す。3及び6時間の電気化学的酸化の後、E
PZCは、右にシフトしているが、未崩壊の細孔のために電流は維持されている。それぞれメソ多孔性CX及びメソ多孔性HEである
図8d及び8eは、
図8cのCGの場合に観察されたのと同じ傾向を示すが、HEは、電気化学的活性表面積が大きいため、CXと比較して、3時間及び6時間の時点でCVプロット内により大きな面積を呈し、そのため、より大きな電流反応を実現する。CXの細孔径は、HEよりも10倍大きく、それが、電極の安定性と最終的な寿命に関係している。ただし、CXの細孔径が大きいほど、表面積はHEよりも遙かに小さくなる。
【
図13】固定化された鉛種の最終状態を示す、SEM顕微鏡写真及びEDXマッピング。炭素(C)、鉛(Pb)、及び酸素(O)が下の3つのパネルにマッピングされ、それぞれの対応するグレースケール画像において、最も明るいコントラストで表されている。写真に相当するグレースケールでは、炭素電極は、黒色で、銅は灰色で示されている。EDXマッピングのカラー写真が利用可能である。
【
図14】先行技術の活性炭充填カラム(パネルa)、及び出願人のCCCデバイス(パネルb及びc)の実験での破過曲線。左側のy軸は、初期鉛濃度に対して正規化されている:(a)126ppb、(b)296ppb、及び(c)10,000ppb。右側のy軸は、処理された体積に対し除去された総Pbをmg単位で示す。
【
図15】1.2VでのDO還元。DO還元は、強力な酸化剤である過酸化水素を発生させる。
【
図16】Pbの場合のプールベ線図(Schock,M.R.、Hyland,R.N.、及びWelch,M.M.(2008)。Occurrence of contaminant accumulation in lead pipe scales from domestic drinking-water distribution systems.Environ.Sci.Technol.42(12)、4285~4291ページ)。
【
図17】除去方法を示す、Cuの場合のプールベ線図:(a)水酸化銅[Cu(OH)
2]形成、及び(b)銅電着又は電気めっき[Cu
(s)](https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cu-pourbaix-diagram.svg)。
【
図18】Niの場合のプールベ線図(Ciesielczyk,F.,Bartczak,P.,Wieszczycka,K.,Siwinska-Stefanska,K.,Nowacka,M.,及びJesionowski,T.(2013).Adsorption of Ni(II) from model solutions using co-precipitated inorganic oxides.Adsorption.19,423~434ページ)。
【
図19】Feの場合のプールベ線図(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Pourbaix_Diagram_of_Iron.svg)。
【
図20】Mnの場合のプールベ線図(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Mn_pourbaix_diagram.png)。
【
図21】Alの場合のプールベ線図(https://corrosion-doctors.org/Corrosion-Thermodynamics/Potential-pH-diagram-aluminum.htm)。
【
図22】Znの場合のプールベ線図(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Zn-pourbaix-diagram.svg)。
【
図23】積層セル設計のEDCデバイスの概略図。供給物(流入物、又はインプット流)は、デバイスの底物に流入し、セルハウジングの壁の近くの環状空間を通って進み、次いで、電極表面上を中心に向かって軸方向チャネルへと流れ、次いで、軸方向チャネルを通ってFPC出口へと排出(流出物又はアウトプット流)される。供給物スペーサは、任意選択である;供給物スペーサ(
図23及び29に示す)は、アノードとカソード間の材料の追加層であり、通過流のためのより大きな流路を創出するために任意選択で追加することができる。
【
図24】カルゴンを両方の電極として行ったEDC実験での、300~500ml/分の流量で処理した体積の関数としての印加電圧と過渡電流。約1500及び約1600ガロンでの電流スパイクは、ノイズ(電気リード線の不用意な物理的な動き)によるものであり、無視できる。約1800ガロンで、定電圧の印加から約0.2Aの定電流の印加に操作が切り替えられ、直線として観察された。この条件で見られる電圧減衰(電圧は負であると読み取られるが、合計セル電圧は、定電流と共に上昇する)は、定電流の印加の結果である。それに続く切り替えも定電流で行われたが、電圧は、すぐにカットオフ値に達し、システムは、本質的に定電圧であるかのような挙動を示した。
【
図25】1.2Vの印加電位で(a)カソードに生じ、(b)アノードには生じない銅堆積。写真のグレースケール同等物において、炭素電極は黒色で、銅は灰色で示されている。カソード上に堆積した銅のカラー写真が利用可能である。
【
図26】実験後のカソード表面のセパレータ上のさび色のFe酸化物堆積物。写真のグレースケール同等物において、白色のセパレータ上に炭素電極は黒色で、鉄は灰色の堆積物として示されている。カソード上の銅堆積物のカラー写真が利用可能である。
【
図27】(a)白色析出物のある炭素布、及び(b)Pb結晶を示す布の走査電子顕微鏡法(SEM)顕微鏡写真。
【
図28】鉛と酸素の両方が存在することにより、結晶が酸化鉛であることを確認する
図27からのPb結晶のEDXマッピング。炭素(C)、鉛(Pb)、及び酸素(O)が右側の3つのパネルにマッピングされており、それぞれの対応するグレースケール画像において最も明るいコントラストで表されている。EDXマッピングのカラー写真が利用可能である。
【
図29】連続セパレータと多孔質炭素系電極材料が物理的にらせん状に巻回されて、多孔質炭素電極を貫通する複数の、主にフローバイ通過流通路を備えるシリンダが創出される巻回セル設計の概略図。
【
図30】カイノールを両方の電極として行ったEDC実験。500ml/分の流量で処理した体積の関数として、供給物及び生成物流中の全塩素の濃度と印加電圧を示す。
【
図31】カイノールを両方の電極として行ったEDC実験。500ml/分の流量で処理した体積の関数として、供給物及び生成物流中の遊離塩素の濃度と印加電圧を示す。
【
図32】カイノールを両方の電極として行ったEDC実験。500ml/分の流量で処理した体積の関数として、供給物及び生成物流中のクロラミンの濃度と印加電圧を示す。
【
図33】カイノールを両方の電極として行ったEDC実験。500ml/分の流量で処理した体積の関数として、水道水をEDCで処理した後の全塩素、遊離塩素、クロラミン及び過酸化物の除去率と印加電圧を示す。
【
図34】酸化させたカイノールを一方の電極として、フュールセルアース(Fuel Cell Earth)を他方の電極として行ったEDC実験。300~500ml/分の流量で処理した体積の関数としての供給物及び生成物流中の全塩素の濃度と印加電圧である。
【
図35】酸化させたカイノールを一方の電極として、フュールセルアースを他方の電極として行ったEDC実験。300~500ml/分の流量で処理した体積の関数としての供給物及び生成物流中の遊離塩素の濃度と印加電圧である。
【
図36】酸化させたカイノールを一方の電極として、フュールセルアースを他方の電極として行ったEDC実験。300~500ml/分の流量で処理した体積の関数としての供給物及び生成物流中のクロラミンの濃度と印加電圧である。
【
図37】酸化させたカイノールを一方の電極として、フュールセルアースを他方の電極として行ったEDC実験。処理した体積の関数としての水道水をEDCで処理した後の全塩素、遊離塩素、クロラミン及び過酸化物の除去率と印加電圧である。
【
図38】カルゴンを両方の電極として行ったEDC実験。300~500ml/分の流量で処理した体積の関数としての供給物及び生成物流中の全塩素の濃度と印加電圧である。
【
図39】カルゴンを両方の電極として行ったEDC実験。300~500ml/分の流量で処理した体積の関数としての供給物及び生成物流中の遊離塩素の濃度と印加電圧である。
【
図40】カルゴンを両方の電極として行ったEDC実験。300~500ml/分の流量で処理した体積の関数としての供給物及び生成物流中のクロラミンの濃度と印加電圧である。
【
図41】カルゴンを両方の電極として行ったEDC実験。処理した体積の関数としての水道水をEDCで処理した後の全塩素、遊離塩素、クロラミン及び過酸化物の除去率と印加電圧である。
【0083】
[発明の概要]
[00123]典型的には一定の印加電位下で作動する電気化学的デバイスを使用して水から金属及びハロゲン化物汚染物質を除去する効率を高めるために、出願人は、容量吸着、セル電極付近又は上でのファラディック反応、及び電極細孔口径プロファイリングを組み合わせて、新しいタイプの電気化学的デバイスである、ファラディック多孔性セルを創出する。ファラディック多孔性セルにおける第1の考慮事項は、反応を起こし、アノード(水による炭素酸化)とカソード(溶存酸素還元)の両方で、長期間にわたりpHを変化させることができる炭素系材料の選択及び使用である。適切な多孔性とバルク材料特性を有する炭素材料は、長期間にわたりこれらの反応を引き起こすことができ、それにより、水溶液から除去すべき入ってくる成分(標的種)との標的反応が可能となる。
【0084】
[00124]次の設計上の考慮事項は、アノードとカソードの間の間隔である。間隔を減少させると、電極間の電気的な絶縁を維持したまま反応速度を上げることが可能であり、ある特定の「反応及び固定化」プロセスを達成するために必要な滞留時間が制限される。電極間隔は、典型的には1mm未満であり、アノードとカソードの短絡を引き起こしたり、FPC内での許容できない圧力降下(その結果としての滞留時間の増加と流量の減少)を引き起こしたりしなければ、可能な限り近いことが望ましい。好ましい電極間隔は、1mm未満、好ましくは200ミクロン未満、より好ましくは50ミクロン未満、最も好ましくは20ミクロン未満である。
【0085】
[00125]標的種のうちのいくつかの種は、物理的な捕捉(「物理吸着」)により、又は電気的引力(「容量吸着」)により、電極に吸着する。標的種の他の種は、電極に固定化される標的種の新しい種を直接的又は間接的に創出する反応(典型的には、酸化)のための出発物質である。固定化は、標的種を溶液から除去する。電極間の所与の間隔と、対応する炭素電極材料の特性で、インプット流中の標的種のプールベ線図に基づき、アノードとカソードに印加される電位が選択される。様々な標的種の場合のFPCパラメータの例を、表1に示す。例えば、銅を除去するには、めっきによる電極への固定化は、0~14のpH領域では、対NHEで約0.3V~-0.4Vの範囲の電位で起こる可能性がある。加えて、対NHEで0Vを超える電位及び4より高いpH値では、アノードで水酸化銅(Cu(OH)
2)の形態で析出が起こる可能性がある(
図17参照)。ファラディック多孔性セルでの銅の除去には、約0.4Vの総セル電位が望ましい。
【0086】
[00126]他の標的種は、同様の機構であるが、異なる電圧領域で除去することができる。例えば、鉛の析出は、電極表面で生成されるpHと電位から発生する可能性がある。対NHEで約-0.4Vよりも負の電位及び0~14のpH領域で、鉛は、カソードで固体としてめっきされる可能性がある。pHを1.5より高く保ち、対NHEで0.5Vを超える電位を使用した場合、アノードでの析出は、PbO
2としても起こる可能性がある(
図16)。最後に、カソードで発生するH
2O
2からの酸化も、標的種の析出を引き起こす可能性がある。カソード近くでの溶存酸素(「DO」)の還元速度は、例えば、カソードのE
PZCの酸化的シフトによる、又はin situでの使用の結果としてのカソード炭素の酸化に依存する。
【0087】
[00127]材料に関するプールベ線図を使用すると、ファラディック多孔性セルにおいて対象の標的種を除去するのに必要なpHと電圧を定義することができる。ファラディック多孔性セルは、一連の多孔質炭素アノードとカソードを含み、典型的には還元カソード(負のE
PZCと正の表面電荷)と純粋なアノード(ただし、アノードは、使用中に正のE
PZCシフト((負の表面電荷))を被る)からなり、電極両端に小さな電圧、例えば、1.2Vを印加することにより作動する。FPCのCCC実施形態の概略図を
図2に示す。浄化すべき水性インプット流がセルへの入口を通ってFPCに導入され、FPC中の電極が水流に漬かり、標的種が通過流から除去される。FPCでの標的種の除去後、通過流は、使用、保存、又は更なる処理のために、出口を通ってセルから排出される。セルの電極は、E+又はE-を所与の電極に印加できる電源に接続されている。FPCの中核となる進歩性は、セルアノードに印加されるE+とセルカソードに印加されるE-との正確なマッチング、電極材料の細孔口径プロファイル、及び選択されるプールベ作動領域であり、それにより浄化効率が向上し、費用/便益が向上する。プールベ線図作動領域は、印加されるEとpHに基づく種形成を示す。FPCにおいて、種形成は、電極に印加される電位E+及びE-によって推進される。細孔口分布(「PMD」)プロファイルが最適化された電極を用い、選択したプールベ作動領域でFPC動作を維持すると、未処理電極で発生する従来の吸着を遙かに超えるほど標的種の除去が増加する。
【0088】
[00128]好ましい平均細孔口径は、0.8nm~50nmの範囲であり、より好ましい平均細孔口径の範囲は、2nm~20nmである。印加される電位は、標的種の酸化還元反応(例えば、めっき、酸化、還元、過酸化等)を引き起こし、アノード(酸性)及びカソード(塩基性)での局所的pH領域を変化させる炭素電極上でのファラディック反応を推進する。標的種の反応とpHの変化の組み合わせは、印加される電位により制御される。印加されるEは、典型的には定電圧であり、定常状態でほぼ定電流に到達する。一般的に言って、印加される電圧は、どんなファラディック反応がFPC内で起こるかを決定づける。FPCは、処理済(即ち、シフトされたEPZC)電極を使用することなく通過流から標的種を除去するが、処理済電極を使用すると、ある特定の水の化学的性質では標的種の除去が増加する。処理済電極を使用した場合、使用電圧ウィンドウ(アノードのEPZCとカソードのEPZCの電位差)は、典型的には0.3V~1.23Vの範囲である。
【0089】
[00129]FPCの発明は、電極の多孔性、印加されるE、及びプールベ作動領域を最適化することにより、標的種(例えば、鉛、鉄、マンガン、カドミウム、クロム、塩素、クロラミン等)の吸着(物理的及び容量性)と、吸着された標的種の固定化(凝固とも呼ばれる)を組み合わせるものである。(i)物理吸着;(ii)容量吸着;(iii)電気化学的pH調節及び標的種固定化;(iv)電気化学的過酸化物(H2O2)発生;(v)電着(例えば、電気めっき、電気泳動堆積);(vi)電気化学的酸化又は還元;(vii)析出;(viii)細孔口径プロファイル;(ix)電極処理、(x)電極間隔、並びに(xi)フローバイ対フロースルー対炭素ブロックセル設計の最適化は、標的種、インプット流の水の化学的性質、及び通過流の水の化学的性質に依存する。
【0090】
[00130]還元は、FPCのカソードでのみで起こる。電気化学的還元は通常、セルに印加される電位として説明される。アノードとカソードの間の電圧分布は、印加される電圧の量、電極の材料特性、及び水溶液の化学的性質に基づいて自発的に起こる。
【0091】
[00131]本発明の一実施形態は、プールベ線図が存在する金属イオン又は粒子状金属、例えばAs、Se、Pb、Ni、Zn、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuを、それぞれがCCCパラメータである下記の方法のうちの1つ又は複数によりインプット流から除去する1つ又は複数の容量性凝固セルを使用する容量性凝固システム及び方法である:(i)物理吸着;(ii)容量吸着;(iii)電気化学的pH調節及び金属固定化;(iv)電気化学的過酸化物(H2O2)発生及び金属酸化;(v)電着(例えば、電気めっき、電気泳動堆積);(vi)電気化学的酸化又は還元;(vii)析出;(viii)細孔口径プロファイル;(ix)電極処理、(x)電極間隔、並びに(xi)フローバイ対フロースルー対炭素ブロックセル設計。CCCは、水から鉛を除去して、鉛濃度が飲用又は灌漑用水用のEPA対策レベルである15ppb未満の水を生成することができる。
【0092】
[00132]先行技術のデバイスと比較して、出願人のCCCは、鉛及び他の金属に対する特異度が高く、溶解及び微粒子の鉛と他の金属の両方を除去し、日又は週単位ではなく、年単位で測定できるデバイス寿命を有し、低コスト材料を使用する。出願人のCCCは、電気化学と炭素材料とを組み合わせて水中の他の成分、例えば鉄、揮発性有機化合物(VOC)、粒子状物質及び天然有機物(NOM)により飽和、汚染、又は阻害されないシステムを提供することにより、その長寿命と効率を達成する。出願人のデバイスの寿命は、炭素ろ過、イオン交換ろ過、ゼオライト吸着剤、及び逆浸透(RO)の先行技術よりも、数倍長い。
【0093】
[00133]CCCにおいて、最適化されたPMD、印加されるE、化学的操作、及び電気化学的操作を組み合わせることで、鉛の炭素電極への固定化(凝固)が容易になる。吸着された鉛は、溶液から恒久的に除去される(
図13)。この方法論は、鉄、マンガン、カドミウム、クロム、並びに他の金属及び金属誘導体の処理に容易に適合可能であり、適用可能である。CCCを「調整」することは、主に、(ii)標的種のプールベ線図における作動領域を分析し選択することに基づき、(i)CCCアノードとカソードの間に印加される電圧を選択すること、及び(iii)標的種の除去を最大化するCCC炭素電極の細孔口径プロファイルを選択することを意味する。CCCからの流出物は、更なる処理をせずに使用することも、他の標的種の更なる除去のために1つ又は複数のEDC、CCC、又は先行技術の水浄化セルに送ることもできる。調整は、任意選択で、電極処理によって更に最適化することができる。
【0094】
[00134]金属の種形成と化学的性質を活用して、水の化学的性質に関係なく、高い有効性と選択性で水から鉛(及び他の標的金属)を選択的に除去することができる。この操作により、出願人のCCCは、(i)飲用水源から鉛及び他の標的種を電気化学的、化学的、及び物理的に除去することができ、現在必要とされ、インプット流の状態及びpHを変化させることにより駆動される多数の分離技法の必要性を排除し、(ii)飲用水及びプロセス水を浄化するためのより効率的で、安価で、拡張可能なデバイス、とりわけ、可溶性及び不溶性の鉛を15ppb未満にまで除去するデバイスを提供するという技術的問題を解決する。インプット流のpHの調節は、標的種の凝集を改善するために、とりわけ金属の除去のために必要な場合がある。
【0095】
[00135]FPC技術のEDCの実施形態において、EDCパラメータは、EDC流入物から他の非金属標的種、例えば、塩素、クロラミン、並びに他のハロゲン化物及びハロゲン化物誘導体を除去するように「調整」される。EDCを「調整」することは、主に、(ii)標的種のプールベ線図における作動領域を分析し選択することに基づき、(i)EDCアノードとカソードの間に印加される電圧を選択すること、及び(iii)標的種の除去を最大化するEDC炭素電極の細孔口径プロファイルを選択することを意味する。EDCからの流出物は、更なる処理をせずに使用することも、他の標的種の更なる除去のために1つ又は複数のEDC、CCC、又は先行技術の水浄化セルに送ることもできる。調整は、任意選択で、電極処理によって更に最適化することができる。デバイスの特徴及び利点を以下並びに図面の表2及び表3に列挙する。
【0096】
[00136]EDC又はCCCは、任意選択で、一方又は両方の電極のEpzcが、純粋な電極のEpzcと比較してシフトされている炭素で作られた処理済アノード及びカソードを使用する。電極のEpzcをシフトさせると、起こる反応の速度を(正方向又は負方向のいずれかに)変化させることができる。シフトさせるのをアノードのみとするか、カソードのみとするか、両方のタイプの電極とするか、及びどの程度のEpzcシフトを使用するかは、インプット水の化学的性質と標的種に依存する。
【0097】
[00137]炭素電極は、3Vの高電位が電極に印加された場合に、電気分解又は水分解を回避又は低減する点で、金属電極よりも優れている。1.23Vを超える印加電位(「過電位」)は、水の電気分解を引き起こす可能性があり、それは、危険な水素ガスを生成する。金属電極は、2V未満で水素ガスの生成を引き起こす可能性がある。対照的に、炭素電極は、実質的な水の電気分解を回避しながらより高い印加電圧に耐えることができる。
【0098】
[00138]EDCの進歩性は、(i)特定の炭素電極と印加電圧による塩素及びクロラミン(味と臭いの原因)の削減に必要な電力消費の削減、(ii)オンデマンドで、又は連続処理として使用できること、(iii)大幅に低コストのPOU/POEデバイスと低コストの都市、商業、及び工業用の大規模システムを実現する、拡張可能性が非常に高く、単純な設計であること、(iv)従来の炭素ブロック(例えば活性炭/活性木炭)と同様の性能であるが、必要な炭素が大幅に少ないこと、(v)遙かに短い滞留時間での同様な遊離塩素の除去性能、(vi)使用する炭素が少ないこと、(vii)とりわけ塩素及びクロラミンの除去の場合の電極寿命が長いこと、(viii)特定の除去量とアウトプット水質に対するより微細な制御、(ix)標的種除去対電極寿命のバランスを取る速度に対するより良好な制御、及び(x)FPC電極用の炭素の選択によりFPCの費用/便益が調節できること、である。
【0099】
[好ましい実施形態の詳細な説明]
[00139]容量性充電プロセス中は、一定の電流又は電圧を使用して、エネルギー貯蔵、脱塩、又は他の有用な容量性技法を目的として電極表面を充電する。電極の充電とそれに続く放電は多くの場合、意図する用途に応じ、ある範囲の電圧と電流にわたって数千サイクル行われる。活性炭で作られた炭素電極は、(i)比表面積が大きく、その結果静電容量が大きいこと、及び、(ii)官能基を追加して、とりわけ、金属及び他の標的種の除去、エネルギー貯蔵、並びに脱イオン化(例えば、海水又は汽水の脱塩)を改善する表面改質を行う機会があるため、こうした容量ベースの充電及び放電プロセスに採用されることが多い。活性炭は、吸着又は化学反応に利用可能な表面積を増加させる多数の小さな低体積の細孔を有するように処理された炭素の形態である。FPCは、廃水、冷却水、洗濯廃水、人間の消費のために浄化すべき水、農業用に浄化すべき水、園芸用に浄化すべき水、食品に使用するために浄化すべき水、軟化すべき水、人間の消費のために浄化すべき海水、実験室での使用のために浄化すべき水、人間の消費又は農業での使用のために浄化すべき汽水、及び医療用の使用のために浄化すべき水の浄化に使用することができる。
【0100】
[00140]炭素電極中の細孔径の分布は、従来の水浄化技術では見過ごされてきた重要なFPCパラメータである。
【0101】
[00141]電極特性を表4に示す。電極の供給元が、表4の最初の列に記載されている。細孔径、又は細孔口径(「PMD」)は、通過する電荷を維持する上で極めて重要であり、EDC電極の寿命に直接関係する。PMDは通例、炭素電極内の関連する細孔チャネルの直径の代表として使用される。
図9は、通過する電荷の安定性に対するPMDの影響を示している。電圧又は電位の印加とそれに続く逆電圧又は電位(又はアノード(複数可)及びカソード(複数可)の短絡若しくは開回路)のサイクルが繰り返された後、細孔チャネルが(及び細孔口さえも)「崩壊」する(より正確には、細孔が閉塞する)ことがある。細孔口が「屋根付き」となる、及び/又は細孔チャネルが「閉鎖」となり、炭素の表面積(とりわけ、細孔チャネルの直径及び長さ)が減少し、その結果、細孔がもはや効果的に機能しなくなる。「屋根付き」細孔口は、細孔内部へのアクセスをブロックする。細孔口の屋根形成及び細孔チャネルの崩壊は、先行技術セルの電極性能の低下や最終的な故障を引き起こす。
【0102】
[00142]FPCにおいて、標的種は、イオン化されている、電荷を帯びている、又は化学結合における電子の非対称分布のために部分的な電荷を帯びている場合、印加された電位のために炭素電極に引きつけられる可能性があり、それが標的種を炭素電極に近づける(又は接触させる)駆動力を発生させる。標的種の非イオン及び非荷電種は、電極表面に衝突する可能性がある。電極表面と接触すると、標的種の固定化への多数の径路が生じる可能性がある。局所的で大きなpHの変動を制御してアルカリ性の環境を電気化学的に生成することができ、それにより、例えば、不溶性の金属酸化物が生成され、電極の近く又は上に析出し、電極細孔に捕捉される。ファラディック反応、例えばカソードでの酸素還元反応は、過酸化水素を生成する可能性があり、過酸化水素は、電極から拡散して近接している標的金属分子を酸化する可能性がある。過酸化水素は、無差別な酸化を遂行する。電極により近い標的種が局所的に高濃度であるほど、過酸化水素が標的種を酸化する統計的確率が高くなる。他のファラディック反応、例えば標的種と電極の間の直接的な電子移動(還元又は酸化)も起こる可能性がある。標的種が電極表面に引きつけられると、炭素電極は、(1)電極から標的種へ電子(複数可)を移動させて標的種を還元し、電極上に堆積するようにするか、(2)標的種から炭素電極に電子(複数可)を移動させて標的種を酸化し、不溶性の酸化物若しくは水酸化物のいずれかにする、又は追加の電子移動反応若しくはpH調節により固定化できるより反応性の高い種にすることができる。析出した種及び電気的に引きつけられた種は、電極細孔に捕捉される。
【0103】
[00143]活性炭内の実際の細孔のサイズ及び体積は、所与の細孔の形状、屈曲度(通常、細孔直径の変化に関連する)、及びチャネル長さに依存する。活性木炭の顕微鏡写真に基づき、活性化及び/又は合成手順に応じ、活性炭内の細孔は、チューブ状チャネル、多角形チャネル、回転楕円体チャンバ、表面スリット等となるものがある。チャネル及びチャンバは、「行き止まり」又は「貫通」(即ち、「細孔口」とも呼ばれる2つの表面出現部を有し、2つの細孔口間にチャネル連続性のあるチャネル又はチャンバ)であり得る。活性炭内の細孔は、平均細孔チャネル直径(以下、「細孔チャネル直径」)及び平均細孔口径を有するチューブ状のチャネルであるとして一般化される。活性炭の塊の中で一定の細孔チャネル直径を持つことがほとんどない数十億の細孔の実際の細孔チャネル直径を測定することは非常に困難な作業であり、ここでは報告されない。一般化として、細孔チャネル直径は、細孔口径と同一であると仮定される。
【0104】
[00144]細孔口の直径、即ち、細孔の電解質への開口部は、吸着のためのその細孔の利用、及び容量性凝固におけるマルチサイクル性能に大きな影響を与え、小さな細孔口径では、影響は支配的である。細孔口径(したがって、細孔口表面積)が大きいほど、細孔チャネルと電解質との間に有意な接触面積を提供する。小さな細孔口径は、より限定された接触面積(即ち、「細孔口表面積」)を有する。細孔口径は、IUPACにより、細孔口径が2nm未満、2~50nm、及び50nm超がそれぞれミクロ多孔性、メソ多孔性、及びマクロ多孔性であると定義されている。吸着媒体の寿命は、材料の表面に存在する細孔口径と直接的な相関関係を有する。活性炭電極を使用した吸着と脱着のサイクルを繰り返した後の、細孔口閉塞とも呼ばれる「細孔口屋根形成」の概念と影響について、以下に説明する。FPCの極性反転サイクルを繰り返した後に細孔口は「屋根形成」又は「閉鎖」し、細孔チャネルが「崩壊」し、その結果、細孔の表面積は、標的種の捕捉及び吸着に効果的に機能しなくなる。
【0105】
[00145]容量性凝固技術を組み込んだ出願人のデバイスは、最大約300ppbの鉛濃度を混入させたサンプルの水道水から可溶性(溶解)及び不溶性(微粒子)の鉛種を、EPA対策レベルを遙かに下回るまで除去した。効率的な鉛除去は、インプット流中の鉛の濃度が5ppbと低く、対策レベルを遙かに下回っていても実証された。プロトタイプのデバイスは、水道水に一般に見られる他の成分、例えばカルシウム(Ca2+)よりも、鉛除去に対して90%以上、多くの場合99%を超える特異度を達成した。出願人の容量性凝固の発明は、鉛種が市販の既製製品では除去することが難しい錯体形成種を形成する傾向がある硬アルカリ性水でこの性能を達成することができた。CCCはまた、可溶性(溶解)及び不溶性(微粒子)両方の鉛、ヒ素、ニッケル、及び銅種を予想外に除去することができる。
【0106】
[00146]出願人の容量性凝固の発明は、鉛除去のための一実施形態において、インプット水源条件、即ち硬度、pH、アルカリ度、及び消毒のタイプに関係なく、1ガロン毎分(gpm)の最小流量で、NSF/ANSI53及び61認証を満たすことができるPOU/POE水浄化デバイスを提供する。加えて、デバイスは、(i)標的金属、例えば、ヒ素、鉛、ニッケル、銅、カドミウム、鉛、マンガン、水銀、及び放射性金属に対して高度に特異的であり、最新の解決策よりも(ii)信頼性が高く、(iii)効率的であり、(iv)長持ちする。出願人の容量性凝固セルは、可溶性及び不溶性の鉛を15ppb未満にまで除去し、住居用としてだけでなく、より高度なスループットシステムへの規模拡大にも好適な、より効率的で、安価な、非常に拡張性の高い水浄化デバイスを実現する。以下の詳細な実施例は、容量性凝固セルを使用した鉛除去に焦点を当てているが、CCCパラメータの調節により、CCCを「調整」して、プールベ線図が存在する任意の他の金属又は金属誘導体、例えばヒ素、カドミウム、マンガン、及び水銀、更にSe、Ni、Zn、Al、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuを除去することが可能である。
【0107】
[00147]
図3に示す直接比較において、出願人のCCCは、市販のPOU/POE水浄化デバイス、例えばブリタ(Brita)(登録商標)ロングラスト(Longlast)(商標)及びブリタ(登録商標)PURフィルター、並びにカルゴンGACフィルター材料よりも優れていた。ブリタ(登録商標)ロングラスト(商標)ピッチャーフィルターは、ケンタッキー州レキシントン都市水道システムにより供給されている水の化学的性質の変化に基づき、異なる2日に試験を行った際に、極端に異なる性能であった。この異なる性能は、日々発生する変化する水の化学的性質で良好に機能するより信頼性の高いデバイスに対する必要性を強調するものである。出願人の発明は、どちらの場合でもブリタ(登録商標)ロングラスト(商標)デバイスよりも優れていた。
【0108】
[00148]可溶性の鉛イオンは、物理的及び/又は化学吸着により炭素電極に吸着し、このプロセスは、十分に立証されており(J.Chem.Technol.Biotechnol.2002、77、458~464ページ、Shekinah,P.;Kadirvelu,K.;Kanmani,P.;Senthilkumar,P.;Subburam,V.及びCarbon.2004、42、3057~3069ページ、Swiatkowski,A.;Pakula,M.;Biniak,S.;Walczyk,M.)、印加電位の下では、カソードへの更なる電気的吸着を受ける。pHの調節も、水道水中の鉛の種形成を制御するのに活用することができる。1.2Vの作動電圧(
図4に示すような)では、デバイス全体の電位分布によりアノードで+0.9V、カソードで-0.3Vが得られ、電極間でpHが変動し、全体ではほぼ中性のpHが生成される。しかし、全体のpHは比較的一定のままであるが、pH2の酸性からpH10のアルカリ性まで大幅なpHの変動(「プラグ」とも呼ばれる)があり、電極表面での酸/塩基の化学的性質に大きな変化をもたらす。各電極での電圧とpHをプールベ線図と関連づけると、作動条件を選択して、所与の水の化学的性質において所望の鉛種形成を得ることができる(
図4、図中、DICは溶存無機炭素である)。pHを操作する同様のアプローチを利用し、容量性脱イオン化(CDI)を使用してホウ酸が除去されている。Electrochimica Acta.2011、56、248~54ページ、Avraham,E.;Noked,M.;Soffer,A.;Aurbach,D。ほとんどの住居及び商業用途では、インプット流の圧力は60psi未満であり、電極の多孔性は、典型的には、入口圧力と比較してFPC出口での20psiを超える低下を回避する。
【0109】
[00149]CCCにおいては、作動中、鉛除去に関し、複数の作用メカニズム、即ち物理的及び電気化学的吸着、酸/塩基化学作用を生じるpH調節、及び酸化鉛や他の不溶性種を生成する電気化学的/化学的酸化が同時に発生する。水道水からの鉛除去に対する印加電位とH2O2発生の影響を、実験データにより検証した。表5に示すように、開回路での炭素電極では、ある程度の鉛の物理吸着が起こる。短絡では、鉛除去にわずかな改善が見られるが、最も劇的な結果は、1.2Vの印加電圧で発生し、鉛濃度はほぼ0ppbに低下する。実験で使用したCCCでは、「供給物」はインプット流であり、「処理済」はアウトプット流である。
【0110】
[00150]
図4では、炭酸塩水溶液中の鉛(Pb)のプールベ線図において、アノードとカソードに印加されるEの交点におけるCCCでの鉛種除去のためのプールベ作動領域が示されている。フロースルーセルでは、カソードの開始時のpH領域が酸性(pH2~3)であるのに対し、アノードの開始時のpH領域は塩基性(pH9~10)であることを
図2が示している。フロースルーセル設計(
図2)では、これらのpH領域は、電極表面で起こる反応の結果であり、2~10のpHの変動をもたらす。
図4において、Pb
2+は、暗色のPbO
2(s)とPb(s)の領域の間のほとんどの白色領域(約pH7)で溶液平衡状態にある。しかし、アノードとカソードに最も近い溶液中では、Pb
2+は、(i)反応性となるか、(ii)他のPb種として固定化される。
図5は、Pbが溶液から除去される反応機構を示す。フロースルーセルでは、アノード近くのアルカリ性(pH9~pH10)領域(0.9Vの印加されるEで、カソードから生じたpHから発生)では、Pb
2+は、PbCO
3-2Pb(OH)
2、2Pb(OH)
2、及びPbO
2として固定化される(アノードに吸着される)。アノード近くのアルカリ性領域では、Pb
2+は、イオン性化合物と水酸化鉛(
図5の中央のボックスに示すように)も形成し、それらは次いで酸化されてPbO
2、Pb
3O
4、及びPb(OH)
2となり、次いで、これらの反応生成物は、固定化される(吸着される)。また、フロースルーセルでは、溶存酸素の還元によってカソードで発生し、-0.4Vの印加されるEでアノードから生じる酸性のpH(pH2~pH3)と組み合わされる過酸化水素は、強力な酸化剤である。過酸化水素は、それが上記の中間反応で鉛種を酸化するアノード近くの領域を含む通過流中に拡散する。これにより、固定化された鉛種は、溶液から除去される。追加の鉛種は、カソードでの酸素還元により発生する過酸化水素との反応により固定化されやすくなる(「過酸化セル」)。Water Research.2017、120、229~237ページ、Tang,W.;He,D.;Zhang,C.;Kovalsky,P.;Waite,T.D。ハイブリッドシステムでは、FPCを過酸化セルと直列に使用して、鉛除去の増加を実現することができる。
【0111】
[00151]EDCでは、化学-電気化学-化学-電気化学反応のカスケード連鎖が発生しており、遊離塩素とクロラミンを分解する。pHと作動電圧は、標的種についてのプールベ線図を介して相関している。次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、及びモノクロラミンについての例を以下に示し、それぞれ
図6、
図7及び
図8に示す。各電極でのpHと電位分布に基づき、pHと印加する電圧を選択することにより標的種形成を制御することができる。この較正プロセスが、所与の流入物の水の化学的性質において、どの種がどの電圧で分解されるかを決定し、制御する。
図6~8において、y軸は、アノードとカソードの間に印加される対標準水素電極(SHE)電圧であり、x軸は、pHである。
【0112】
[00152]
図6を参照すると、対NHEで1.5V未満のアノード電位及びアノードとカソードの両端に印加される2.5V未満の全セル電位では、電気化学的に発生する過酸化水素が、pHが7を超える溶液中の「遊離塩素」と反応する。炭素カソードからの次亜塩素酸(HOCl)と次亜塩素酸イオン(OCl
-)の直接的な電気化学的還元は、それらを遊離塩化物イオンと水に変換する。次いで、塩化物イオンは容量的に吸着(固定化)される。pHに上限はないが(例えば、H
2O
2を使用して苛性/塩素臭気洗浄装置からの流出物を脱塩素化することができる)、現実問題としては、瞬間的な反応を実現するには、pH8.5が好ましい。
【0113】
[00153]次亜塩素酸塩の場合のプールベ線図である
図7を参照すると、対NHEで1.2V未満のアノード電位、対NHEで-1.0Vを超えるカソード電位、及びアノードとカソードの両端に印加される2.2V未満の全セル電位では、電気化学的に発生する過酸化水素が、pHが7を超える溶液中の「遊離臭素」と反応する。炭素カソードからの次亜臭素酸(HOBr)と次亜臭素酸イオン(OBr
-)の直接的な電気化学的還元は、それらを遊離塩化物イオンと水に変換する。次いで、臭素イオンは、容量的に吸着(固定化)される。
【0114】
[00154]モノクロラミンについてのプールベ線図である
図8を参照すると、対NHEで1.4V未満のアノード電位、対NHEで-1.0Vを超えるカソード電位、及びアノードとカソードの両端に印加される2.4V未満の全セル電位では、酸性条件下でのクロラミンの直接的な電気化学的変化がアンモニウム塩を生成する。電気化学的に発生する(EDCカソードで)過酸化水素は、クロラミンと直接反応して生成物、即ち塩化物イオン、亜硝酸イオン、プロトン(酸)、及び水の混合物を生成する。クロラミンは、電気化学的に発生する過酸化水素と反応してアンモニアを生成し、アンモニアは、1)電気化学的に発生する過酸化水素と反応して窒素及び水素ガスと水を生じる、又は2)酸と反応してアンモニウム塩を生じる、2つの方式で更に反応する。クロラミンは、電気化学的に発生する酸ともカスケードプロセスで直接反応してトリクロラミンを生じ、これは、水中で次亜塩素酸に変換される。
【0115】
[00155]EDCは、典型的には、アノードとカソードの両端に印加される3.0V未満の全セル電位で作動する。標的種とインプット水の化学的性質に応じ、EDC内のアノードとカソードの両端に印加される3.0V未満の全セル電位は、通常1.0Vから3.0Vの間である。
【0116】
[00156]
図9に示すように、SC、KN、及びCG炭素電極の活性表面積は、印加電圧のサイクルへの曝露によって減少する。CXの通過する比電荷は、サイクルを繰り返しても安定しているが、試験を行った他の炭素よりも低い。対照的に、PMDを伴って策定された出願人のHE電極は、約220サイクル後でも他の電極より良好に機能し、優れた性能を維持する。SC、KN、CG、及びCX電極では、酸化物基が表面に形成され、細孔屋根形成及び細孔崩壊を引き起こし、抵抗の増加を招く(バルク酸化)。或いは、酸化物基は、抵抗性酸化物層を形成する可能性がある(表面酸化)。どちらのシナリオも、オームの法則に従い、同じ量の電流を維持してこの抵抗の増加を補償するため、印加電圧を増加させることが必要である:V=IR、式中、Vは電圧(V)、Iは電流(A)、Rは抵抗(Ω)である。
【0117】
[00157]
図10は、所与の印加電圧で、CCC内のアノードとカソードの間に電位分布が存在することを示している。電圧は電極間で分割されるが、等しくならない場合がある。例えば、1.6VがFPCに印加される場合、カソードは、対SCEで-0.9Vとなり、アノードは対SCEで+0.7Vとなり得る(
図10)。これは次に、FPCの作動パラメータと、EDCにおける操作の各サイクルで遂行される極性切り替えの頻度に影響する。活性表面積、炭素材料、及び印加電圧は、とりわけ、電位分布に影響する。電極のEpzcは、電極の最初の使用時に印加されるEの分布に影響を与え、電位分布はわずかに変化する。アノード及びカソードでのファラディック反応速度のバランスを取ることが、究極的には電位分布を安定化させる。
【0118】
[00158]
図11に示す加速酸化研究は、ミクロ多孔性炭素で観察される細孔の「崩壊及び屋根形成」の影響を示す。これは、メソ多孔性炭素が、電荷効率を維持し、細孔崩壊及び屋根形成の影響を回避しながら大きな印加電圧を処理できることを強調する。FPCデバイスに使用するPMDを慎重に選択すると、デバイスの信頼性と寿命が大幅に向上し、それによって水処理コストが削減される。
【0119】
[00159]ベンチスケールのCCCシステムを、
図12に示す。容量性凝固システムは、非金属イオンに対して50%を超える鉛除去選択性を実現する。鉛を除去するように(CCCパラメータを用いて)調整されたCCC(「鉛除去CCC」)では、鉛除去は、100%に近づく可能性がある。鉛除去CCCの一実施形態において、様々な酸素ベースの表面基が電極に付加され、1.2VのCCC作動電圧で、鉛が約50ppbの水道水インプット流に対して全ての場合に15ppb未満の鉛除去が達成される。本明細書に組み込まれる米国特許仮出願第62/702286号に記載されるようなカルボキシル官能化電極(処理済電極とも呼ばれる)を使用すると、鉛除去CCCは、アウトプット流の鉛の濃度をわずか0.05ppbにまで低下させ、これは、99.9%の除去効率に相当する。
【0120】
[00160]ICP-MSで確認し、種の除去率として計算すると、溶存鉛の除去選択性は、鉛濃度が約10ppmと高い水道水の連続5ガロンの処理では、Ca
2+と比較して、一貫して99%以上であった(表6)。鉛固定化が確認されたろ過後の電極の走査電子顕微鏡法(SEM)及びエネルギー分散型X線分光法(EDX)分析を、
図13に示す。
【0121】
[00161]鉛除去に対する印加電位の影響を更に研究するため、鉛を混入させた水道水を、活性炭で満たされた充填カラムで電位を印加せずにろ過し(受動的ろ過/物理吸着)、1.2Vで作動させたCCC(能動的ろ過/容量性凝固)と比較した。両方の実験には同量の炭素と流量を使用した。これらの研究に関する破過曲線を、
図14に示す。充填カラムは、濃度の急激な低下によって示されるように、当初は鉛を吸着したが、わずか約0.3Lの水が炭素を通過した後、飽和し始めた。対照的に、CCCは、5ガロン(約19L)の水を驚異的な10,000ppbまでろ過し、性能を維持し、2ppbの濃度未満の鉛を一貫して除去することができた。これは、外挿すると、炭素電極1グラム当たり1g以上の鉛が除去される推定デバイス容量になる。
図9に示すプロトタイプデバイスは、500g以上の鉛の全体容量を生み出し、それは、150ppbの鉛というインプット流濃度を仮定すると、約880万ガロンの理論体積容量に相当する。他の要因もPOU構成のCCC性能影響を与え、100,000ガロンの予測CCC体積容量をもたらす。対照的に、現在のPOUフィルターは、約1,500ガロンの体積容量しか有さない。
【0122】
[00162]加えて、溶存酸素(DO)は、飽和の約10%に低下し、それは、1ppm未満のDOに相当し、1.2Vの印加電位でのろ過後に1.25ppmのH
2O
2が測定された(
図15)。これらの観察結果は、鉛除去が、電位とH
2O
2発生の組み合わせによって影響を受けることを明らかにする。
図4のプールベ線図は、鉛種形成がわずかな水の化学的性質の変化、例えばpH及び電圧の変動にいかに影響を受けやすいかを強調する。これらの機構の組み合わせが、CCCで使用される容量性凝固で観察される利点を生み出す。
【0123】
[00163]出願人のCCCデバイスの限界を試験するため、鉛濃度が5ppbと低い水道水と、10,000ppbと高い水道水をCCCで処理した。1.2Vの印加電圧で、全ての場合において鉛の除去に成功した(表7)。平衡ベースの吸着からなる受動的なろ過では難しい極めて希薄な条件であっても、容量性凝固の能動的ろ過プロセスは卓越しており、選択性は99%以上である(表6)。
先行技術のデバイスに対するCCCデバイス性能の重要な向上:
99.9%の鉛除去
約5ppbの鉛に至るまで維持される99%以上の選択性
開発された能動的鉛ろ過システム(容量性凝固)
恒久的鉛除去
【0124】
[00164]より高いスループットのCCCシステムは、より多くの容量性凝固セルを追加することにより、及び/又は各セルにより大きな電極を使用することにより、作製される。こうした大型のシステムは、1gpm以上の流量で150ppb~10ppb以下の鉛除去有効性を実現する。
【0125】
[00165]FPCを使用したAl、Ag、Au、Br、Cl、Co、Cu、Fe、Hg、Ir、Mn、Pb、Pd、Pt、Ni、Zn、及びクロラミンの除去のために好ましい印加されるEを、表1に示す。
【0126】
[00166]CCCシステムは、インプット流が鉛含有量、水硬度、アルカリ度、消毒剤、及びpHの様々な組み合わせを有する場合でも、EPA対策レベル未満にまで鉛を除去する。水の化学的性質は、鉛の種形成に影響を与える(例えば、都市水道の化学的性質は日々変動し、その影響は、上記の
図4に示されている)。現在、全ての形態の鉛を処理できる1つのデバイスは存在しない。先行技術のデバイスは、典型的にはより高いpHでは物理的捕捉を、より低いpHではゼオライト媒体を使用する。対照的に、CCCは、飲用水源に一般に見られる全ての形態(種)の鉛を除去することができる。
【0127】
[00167]水のタイプに応じて様々な作動パラメータが検討される。内部材料の腐食は、電気化学ベースのシステムに共通の懸念事項であるが、FPCシステムでは、腐食の証拠はほとんど観察されていない。極めて堅牢で、安定し、電解及び化学腐食に対して不活性となるように内部部品は設計され、材料が選ばれている。本発明の一実施形態において、オン/オフ操作後、又はクロラミンの添加により鉛の浸出が発見された場合、FPCシステムは、使用されていないときに開回路又は小さな電位に切り替わるように設計することができ、クロラミンを除去するために、安価な炭素ブロック前置フィルターが追加される。時間の経過と共に炭素布の小片が剥がれ落ちたことが発見された場合は、任意選択の後置フィルターが追加される。
【0128】
[00168]特定の水の化学的性質ための操作上の調節。所与のFPCデバイスに供給される典型的なインプット流の分析により、特定の水の化学的性質用に作動パラメータを最適化するための調節が可能となる(調節は、鉛の物理的及び電気化学的吸着、pH調節、並びに酸化鉛及び他の不溶性種への酸化を最適化するためのものである)。典型的な作動パラメータは、下記のように調節される:
【0129】
[00169]作動電圧。電位分布を得るため、カソード、アノード、及び参照としての標準カロメル電極(SCE)を用いた3電極設定を使用する。各電極での電位が、開回路、短絡、及び0.2V刻みで1.4Vの電圧まで記録される。pHと作動電圧は、プールベ線図を介して相互に関連づけられる。各電極でのpHと電位分布に基づき、印加する電圧を選択することにより鉛種形成を制御することができる。この較正プロセスが、所与のインプット流の水の化学的性質において、どの鉛種がどの電圧で析出するかを決定し、制御する。
【0130】
[00170]酸素還元及びH2O2発生。カソードでの酸素還元によりH2O2が発生し、鉛種と反応して酸化鉛の形成を促進することができる。1.2Vの印加電圧でDOが大幅に減少し、ろ過した水で1.25ppmのH2O2が測定される。作動電圧は、この反応を増幅して鉛除去が最大となるように制御される。開回路、短絡、及び0.2V刻みで最大電圧1.4Vまで実験を行い、出口でのpH、DO、及びH2O2濃度が、典型的には鉛をEPA対策レベル未満にまで除去する。
【0131】
[00171]炭素導電率。FPCデバイスは、典型的には、導電率が中程度のミクロ多孔性炭素(表8の炭素B)を使用する。容量性凝固による鉛除去への影響を解明するため、表8の特性が異なる炭素の比較研究を行った。
【0132】
[00172]CCC鉛除去技術は、(i)物理吸着;(ii)容量吸着;(iii)電気化学的pH調節及び金属固定化;(iv)電気化学的過酸化物(H2O2)発生&金属酸化;(v)電着(例えば、電気めっき、電気泳動堆積);(vi)電気化学的酸化;(vii)析出;(viii)細孔口径プロファイル、(ix)電極処理、(x)電極間隔、及び(xi)フローバイ対フロースルー対炭素ブロックセル設計に依存する。これらの要因の組み合わせ、又はこれらの要因のカスケードが、炭素電極の細孔ネットワークに捕捉される標的種の種形成と固定化を引き起こし、それにより、浄化された流出物がもたらされる。炭素電極は導電性であることが不可欠である。炭素材料の導電率が高いほど、電極全体の電流分布が均一となり、典型的にはH2O2の発生の増加とより効率的な鉛除去プロセスがもたらされる。細孔径と表面積は、材料の吸着容量と屈曲度に関連している。細孔径と表面積は、FPCデバイスにおけるH2O2発生にも影響を及ぼす。
【0133】
[00173]POU/POEデバイス設計。POU/POEのFPC製品の設計パラメータは、(1)1.5gpmの流量を達成するために特定される、デバイスの滞留時間とサイズ;及び(2)1.5gpmで少なくとも150ガロンの水を処理した際に、150ppbから10ppb以下への溶存鉛レベルの低下と、非金属二価イオンに対する90%を超える除去選択性により定義される効果的な鉛除去を含む。
【0134】
[00174]水の滞留時間:滞留時間は、ある体積の水がデバイス内に留まる平均時間(体積/流量)の尺度である。換言すれば、所与の量の水をろ過するのに必要な時間である。デバイスの内部容積と流量によって、滞留時間が決まる。ベンチスケールのCCCデバイスでは、20ml/分の流量で、5分の滞留時間で典型的には所望の除去が得られる。性能がピークに達する流量での滞留時間が設計仕様として選択され、デバイスは適切なサイズにされる。
【0135】
[00175]圧力降下:FPCデバイス前後の圧力降下は、流量の増加と共に、益々重要となる。20psi未満の圧力降下は許容できるとみなされ、住居及び都市のビル用の通常の入口水圧である約45psiを下回る。
【0136】
[00176]FPCデバイスの極限容量。NSF/ANSI認証では、鉛濃度を150から10ppbに低下させなければならず、市場に出回っているPOUシステムは、最大120ガロンの水を処理すると評価されている。これは、ピッチャーシステムの場合、炭素1グラム当たり約1ガロンの水が処理され、シンク下のシステムの場合、炭素1グラム当たり約1.6ガロンの水が処理されることを意味する。CCCデバイスの一実施形態は、1.5gpmで2ガロンの水を処理し、鉛レベルを150ppbから10ppb以下にすることができる。システムの極限容量は、鉛除去曲線から得られる。圧力降下の問題は、典型的には、FPC炭素電極1グラム当たり1gを超える鉛を除去した後に生じる。POU/POE使用のためのCCCの実施形態は、ユーザにデバイスの交換を警告するための鉛センサ及び/又は圧力降下センサを含むことができる。
【0137】
[00177]様々な実施形態の場合のFPC交換閾値範囲。一般に、CCCは、アウトプット流中の標的金属濃度が関連する閾値レベル、例えば、鉛濃度の場合は15ppb、銅の場合は1.3ppmを超えると交換される(1991年にEPAが公表した規制であるthe Lead and Copper Rule(https://www.epa.gov/ground-water-and-drinking-water/national-primary-drinking-water-regulations)を参照されたい)。閾値レベル(収着容量とも呼ばれる)は、政府機関が指定することも、ユーザが選択することもできる。都市及び産業廃水排出制限は、飲用水の制限とは異なる。金属濃度閾値は、典型的にはより高くなっている。様々な業界向けの排水ガイドラインが存在する(https://www.epa.gov/eg)。
【0138】
[00178]FPCの再生。FPCアウトプット流の金属濃度が閾値レベル以上となった場合、FPCを交換する代わりに、ある種のFPCは、再生する(例えば、CCCにおいて、吸着された金属イオン及び粒子をCCC電極から脱着(除去)する)ことができる。CCC再生の1つの方法は、セルに酸を流して凝固した金属を溶解させ、電極を再生することである。この「酸再生」工程の間、アウトプット流は、容器に送られ、そこに高度に濃縮された廃棄物流が他の処理のために収集される。酸再生工程の後、CCCにはアウトプット流がpH7(又は他の標的pH)に到達するまで水が流され、その後通常のCCC操作(即ち、通過流からの金属イオン及び粒子の除去)が再開される。CCC再生の別の方法は、酸性溶液中での電気分解又は電気化学的再生によるものである。電気分解(電気化学的とも呼ばれる)再生は、金属酸化物を可溶性の金属イオンに変換し、それをCCCから水で洗い流し、廃棄物容器に収集する。電気分解は、非自発的な反応を促進するための外部電圧の印加を必要とする電気化学反応である。電極上に形成された不溶性金属種はいずれも、CCCの両端に印加される小さな電圧、典型的には5V以下を使用して溶液に溶解させることができる。CCC再生はまた、酸再生とそれに続く電気分解の連続、又はその逆とすることができる。
【0139】
[00179]それぞれ同じ種又は異なる種を標的とする直列の複数のFPC。同じ標的種を除去するように調整された、直列(出口から入口)に接続された複数のFPCは、直列に接続されたFPCにインプット流を1回通すと、標的種の濃度を連続的に低下させるように作用する(バッチモードの単一のセルを複数回作動させるのと同じレベルの標的種除去を達成する)。直列に接続された複数のセルのFPCパラメータ、例えば、通過流のpH及び所与のセルのセル電極に印加される電圧を、異なるFPCパラメータ及びEDCパラメータに調節することで、場合によっては、1回の通過で直列の各セルが通過流から異なる標的種を除去することを可能にする。所与の電圧及びpHでの標的種の種形成を示すプールベ線図は、「セル直列」の概念を最もよく説明する。鉛(
図16)及び銅(
図17)の場合のプールベ線図は、CCC直列における異なる金属の固定化を説明するために使用される。水平の破線は印加電圧を表し、印加電圧は、縦軸に沿って移動する可能性がある。垂直な破線はpHを表し、pHは、横軸に沿って移動する可能性がある。これらの線が交差する領域が、これらの条件で存在する金属の種を表す。
図16及び
図17aに図示する作動条件は、PbとCuをPbO
2(s)(
図16)及びCu(OH)
2(s)(
図17)として固定化(CCC電極に吸着)し、それぞれの金属を供給物流から効果的に除去する。
図17bに図示する作動条件では、Cuが電極にCu
(s)として電着又は電気めっきされる。ニッケル、鉄、マンガン、アルミニウム、及び亜鉛の場合のプールベ線図も含まれている(
図18~
図22)。印加電圧とpHを操作する同様のアプローチを用いて、これらの金属を除去することができる。不溶性種を形成するために選択される作動条件は、標的種毎に異なる場合があり、プールベ線図に図示される種形成に応じ、所与の標的種に対していくつかの可能性があり得る。
【0140】
[00180]以下に説明するように、それぞれ
図18~22に示すプールベ線図を使用して、印加電圧と電気化学的pH調節が、Ni、Fe、Mn、Al、及びZnの標的種をCCC流入物から除去するために選択される。当業者は、印加電圧と電気化学的pH調節を選択して、標的元素又は錯体の所与の種を除去することができる。銅は、電着、水酸化物析出、及び/又は酸化銅への酸化により、CCCによって除去される。
【0141】
[00181]FPC制御システム。所与のFPCに関するFPCパラメータが、様々なセンサ、インターフェース、バルブ、及び周辺機器を監視及び/又は制御するコンピュータシステムを使用して監視及び制御され、これは、一般にプロセス制御コンピュータ(プロセスコントローラとも呼ばれる)として公知であり、一般に、液体、固体、又は気相を問わず、材料、例えば化学物質及び石油に関連する連続又は半連続生産活動と関連づけられたコンピュータである。プロセス制御コンピュータは、FPCパラメータをシステム内の1つ又は複数のFPCに適用すること、及び通過流の径路の変更、例えば、直列システムアーキテクチャを直並列システムアーキテクチャに変換する変更を可能とする。
【0142】
[00182]プールベ線図が存在する他の標的種へのFPC設計の拡張。Pb、Ni、Zn、Al、Cu、Fe、Mn、Cl、Br、及びクロラミンに加えて、FPCパラメータ、及び上記に開示するシステムと方法は、As、Se、Sc、Ti、V、Cr、Co、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及び他のハロゲン化物の場合のプールベ線図で特定される金属及びハロゲン化物種の除去に適用することができる。
【0143】
[00183][実施例]
[00184]EDCの性能試験を行い、炭素電極と3.0V未満の電圧を使用して全塩素、遊離塩素、クロラミン、及び過酸化物(H
2O
2)の除去を検証した。測定は、分析試験キットを使用して行った。実験は、フローバイセル設計と、アノード-カソード-アノード-カソード(アノード-カソードの可変数の繰り返し)アノード-カソードと交互に連続する14対の電極を用いて行った(
図23)。
図23に示すフローバイ設計では、インプット流は、セル容器の壁近くの環状の空間を通って進み、次いで、電極表面上を中心に向かって軸方向チャネルへと流れ、次いで、軸方向チャネルを通ってFPC出口へと排出される。正電圧がアノードに印加され、負電圧がカソードに印加される。全ての電極が同じ速度で劣化することを確実にし、EDCデバイスの寿命を伸ばすため、所与の電極に印加される電圧の極性は定期的に切り替えられる(各アノードをカソードに、各カソードをアノードに変換する)。一例を
図24に示す。所与のEDCの場合の極性切り替えの間隔は、任意に(例えば、1時間毎に)設定することも、1つ又は複数のEDCパラメータ、例えば、電流閾値、電圧閾値、定電圧での電流減少速度、定電圧での電流減少率、定電流での電圧減少速度、定電流での電圧減少率、処理した総体積、及びEDC流出物中の標的種の濃度に基づき設定することもできる。好ましい極性切り替えポイントは、(i)一定の印加電圧での電流の低下率、(ii)一定の印加電流での電圧の増加率、(iii)処理した総体積、及び(iii)流出物中の標的種の濃度である。標的種によっては、流出物中の標的種の濃度上昇が検出される前に減少又は増加率が検出されることがあり、その逆もある(V対流出物中の標的種の濃度をプロットした以下の図を参照されたい)。3種類の炭素を調べた。電極特性を表4に示す。
【0144】
[00185]容量性凝固実験を行い、16対の炭素電極(約13gの炭素)を使用してCu除去を試験した。カソードは純粋なSCであり、アノードは硝酸で酸化させたSCであった。FPCは、短絡(0V)で作動させた。直接注入(「DI」)したH2O中Cu[Cu(NO3)2]が約100ppmの供給物溶液1Lを20ml/分の流量で処理した。サンプルを光学発光分光計(OES)を用いた誘導結合プラズマ(ICP)により分析し、表9の結果は、1回の通過でCuの約1/3が除去されたことを示している。
【0145】
[00186]容量性凝固実験を行い、12対の炭素電極(約10gの炭素)を使用してCu除去を試験した。カソードとアノードは、両方とも純粋なSCであった。FPCは、カソードへの印加電位1.2Vで作動させた。DIH
2O中Cu[Cu(NO
3)
2]が約50ppmでCa(CaCl
2)が約50ppmの供給物溶液18.5Lを20ml/分の流量で処理した。作動中、Cuが溶液からカソードにめっきされ、
図25aに灰色がかった堆積物として示されている。
【0146】
[00187]14対の炭素電極(約30gの炭素)を使用してフローバイ容量性凝固実験を行い、Cu除去を試験した。カソードは、硝酸で酸化させたKNであり、アノードは、純粋な炭素であった。FPCは、0.8、1.0、及び1.2Vの印加電位で作動させた。水道H2O中Cu[Cu(NO3)2]が約2ppmの供給物溶液1.5Lを100mL/分の流量で処理した。セルでのろ過の前後にサンプルを採取し、Cu2+濃度をICP-OESで測定した。試験を行った全ての条件で、約78%のCu除去が達成された(表10)。
【0147】
[00188]14対の炭素電極(約30gの炭素)を使用してフローバイ容量性凝固実験を行い、低pHでのCu除去を試験した。カソードは、硝酸で酸化させたKNであり、アノードは、純粋な炭素であった。FPCは、1.2Vで作動させた。水道H2O中Cu[Cu(NO3)2]が約10ppmの供給物溶液1.5Lを100mL/分の流量で処理した。pHは、濃H2SO4を使用して2.8に調節した。セルでのろ過の前後にサンプルを採取し、Cu2+濃度をICP-OESで測定した。Cuは、非常に効果的に除去され(表11)、99.8%の除去であった。
【0148】
[00189]14対の炭素電極(約30gの炭素)を使用してフローバイ容量性凝固実験を行い、Ni除去を試験した。カソードは、硝酸で酸化させたKNであり、アノードは、純粋な炭素であった。FPCは、0.8、1.0、及び1.2Vの印加電位で作動させた。水道H2O中Ni[Ni(Cl)2]が約50ppmの供給物溶液1.5Lを100mL/分の流量で処理した。セルでのろ過の前後にサンプルを採取し、Ni2+濃度をICP-OESで測定した。1.2Vで約63%の最大除去が達成された(表12)。
【0149】
[00190]16対の炭素電極(約14gの炭素)を使用して容量性凝固実験を行い、Fe除去を試験した。カソードは、純粋なSCであり、アノードは、硝酸で酸化させたSCであった。セルは、短絡(0V)で作動させた。DIH
2O中Fe[Fe(Cl)
3]が100ppm又はFeCl
3が25ppmの供給物溶液18.5Lを20ml/分の流量で処理した。Feの濃度は、処理により着実に低下し、ICP-OESの結果を表13に示す。高濃度の実験(Fe100ppm)の場合、Fe酸化物がカソードでさび色の析出物としてセパレータ上に形成され、灰色がかった堆積物として示されている(
図26)。
【0150】
[00191]14対の炭素電極(約30gの炭素)を使用してフローバイ容量性凝固実験を行い、Fe除去を試験した。カソードは、硝酸で酸化させたKNであり、アノードは、純粋な炭素であった。FPCは、0.8、1.0、及び1.2Vの印加電位で作動させた。水道H2O中Fe[Fe(Cl)3]が約15ppmの供給物溶液1.5Lを100mL/分の流量で処理した。セルでのろ過の前後にサンプルを採取し、Fe3+濃度をICP-OESで測定した。試験を行った全ての条件で約99.9%のFe除去が達成された(表14)。
【0151】
[00192]14対の炭素電極(約30gの炭素)を使用してフローバイ容量性凝固実験を行い、Mn除去を試験した。カソードは、硝酸で酸化させたKNであり、アノードは、純粋な炭素であった。FPCは、0.8、1.0、及び1.2Vの印加電位で作動させた。水道H2O中Mn[Mn(SO4)]が約20ppmの供給物溶液1.5Lを100mL/分の流量で処理した。セルでのろ過の前後にサンプルを採取し、Mn2+濃度をICP-OESで測定した。1.2Vで約99.8%のMn除去が達成された(表15)。
【0152】
[00193]14対の炭素電極(約30gの炭素)を使用してフローバイ容量性凝固実験を行い、Al除去を試験した。カソードは、硝酸で酸化させたKNであり、アノードは、純粋な炭素であった。FPCは、0.4、0.8、及び1.2Vの印加電位で作動させた。廃水サンプルからのAlが約30ppmの供給物溶液1.5Lを100mL/分の流量で処理した。セルでのろ過の前後にサンプルを採取し、Al3+濃度をICP-OESで測定した。0.4Vで約99.9%のAl除去が達成された(表16)。
【0153】
[00194]14対の炭素電極(約30gの炭素)を使用してフローバイ容量性凝固実験を行い、Zn除去を試験した。カソードは、硝酸で酸化させたKNであり、アノードは、純粋な炭素であった。FPCは、0.4、0.8、及び1.2Vの印加電位で作動させた。水道H2O中Zn[Zn(Cl2)]が約35ppmの供給物溶液1.5Lを100mL/分の流量で処理した。セルでのろ過の前後にサンプルを採取し、Zn2+濃度をICP-OESで測定した。1.2Vで約40.8%のZn除去が達成された(表17)。
【0154】
[00195]純粋及び酸化させたカイノールへのPbの物理吸着を調査するため、充填カラムを約5gの炭素で満たし、Pb[Pb(NO
3)
2]が約100ppmのDIH
2Oを1L、20ml/分の流量でろ過した。表18の結果は、Pbが炭素に物理的に吸着している証拠を提供する。加えて、ろ過後、純粋なカイノール電極上に、相当量の白色析出物が存在し(
図27)、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により、酸化鉛であることが確認された(
図28)。
【0155】
[00196]水道H2O中Pb[Pb(NO3)2]が約50ppbの供給物溶液1L、12対の純粋な炭素電極(約10g)及び20mL/分の流量を使用したフロースルー容量性凝固実験は、1回の通過で連邦対策レベル15ppbを遙かに下回るまでのPb除去を示した(表19及び表20)。セルは、短絡(0V)、並びに0.8及び1.2Vの印加電位で作動させた。除去を試験するため、Pbを数回混入させた。表20の実験は、純粋なアノードと硝酸で酸化させたカソードを使用し、1.2Vで遂行した。セルを通すろ過の前後にサンプルを採取し、Pb2+濃度を、ANDalyze製手持ち式センサ及び/又は誘導結合プラズマ質量分光法(ICP-MS)で測定した。表中の「\」は、「測定されず」を意味する。
【0156】
[00197]水道H2O中Pb[Pb(NO3)2]が約5~約275ppbの供給物溶液1.5L、14対の炭素電極(約30g)、純粋なアノードと硝酸で酸化させたカソード、及び100mL/分の流量を使用したフローバイ容量性凝固実験も、1回の通過で連邦対策レベル15ppbを遙かに下回るまでのPb除去を示した(表21)。セルは、1.2Vの印加電位で作動させた。セルでのろ過の前後にサンプルを採取し、Pb2+濃度をANDalyze製手持ち式センサ及び/又はICP-MSで測定した。結果から、Pbが溶液から恒久的に除去されていることが明らかとなった。
【0157】
[00198]水道H2O中Pb[Pb(NO3)2]が約50ppbの供給物溶液1L、12対の炭素電極(約10g)、及び20mL/分の流量を使用したフロースルー容量性凝固実験を、開回路電圧(OCV)、短絡(0V)、及び0.2V刻みの0.4~1.4Vの印加電位で行った。様々な酸素含有表面基と、特性が異なる炭素を試験した。セルに1回通過させた後にサンプルを採取し、Pb2+濃度をANDalyze製手持ち式センサ及び/又はICP-MSで測定した。
【0158】
[00199]表22の実験結果は、純粋なアノードとクエン酸で酸化させたカソードの場合である。Pbは、OCV及び短絡で除去されたが、印加電位下ではより効果的に除去された。最良の結果は、1.2Vで得られ、92%のPbが除去された。
【0159】
[00200]表23の実験結果は、純粋なアノードと硝酸で酸化させたカソードの場合である。測定されたPbの濃度は、混入させた値の約50ppbを下回っている。pHは、9に近く、測定では不溶性のPb種が含まれていない可能性があった。最後の純粋な炭素片(アノード)上には橙色の析出物も観察され、フィルター紙の周囲に認められた。
【0160】
[00201]表24の実験結果は、純粋なアノードとオーブンで340℃で72時間酸化させたカソードの場合である。Pb除去は、短絡及び1.2Vで観察された。溶存酸素(DO)も実験を通して監視され、印加電圧と共に減少し、酸素がH2O2に還元されていることを示唆する(表25)。
【0161】
[00202]カイノール、ゾーフレックス(Zorflex)、及びフュールセルアースの3種の炭素を試験した。これらの特性を、表26に列挙する。ゾーフレックスを使用した結果を表27及び表28に示す。印加電圧によりDOは減少し、鉛除去が向上した。
【0162】
[00203]カイノールを使用した結果は、表18~表24と、以下の表29、表32及び表36に示されている。表29に示す結果では、OCV、短絡、及び1.2Vの印加電位のみ試験を行った。約10ppbの開始濃度であっても、非常に低いレベルへの鉛除去が達成され、DO濃度は、1.2Vで6%未満に低下した。SEM/EDXにより、電極上へのPb堆積が確認された(
図13)。
【0163】
[00204]フュールセルアース(www.fuelcellstore.com)は、グラファイト布であり、高度に導電性である。結果を表30及び表31に示す。表面積が非常に小さいため、どちらの場合も、測定可能な電流はなかった。最初の実験(表30)後にセルを分解すると、セル内での位置に関係なく、全てのフィルター紙上に橙色の析出物があった。アノードとカソードの両方に純粋な炭素を用いて実験を繰り返し、1回の通過ではなく、3時間の繰り返しの後にサンプルを採取した(表31)。この場合、開回路では鉛は除去されず、短絡では幾分除去され、1.2Vの印加電位では遙かに多く除去された。DOは、印加電位に関係なく変化しないままで、H2O2は、1.2Vで0ppmであると測定された。Pb除去は、H2O2との反応によって起こるのではなく、電極表面でのpH変動により起こる可能性がある。
【0164】
[00205]Pbを合成水道水に混入して上記と同じ一連の実験を行った(表32及び表33)。この水は、炭酸塩を含有せず、他のイオン種の濃度は、我々の水道水と同様であった。OCV及び短絡でPb除去が観察され、1.2Vではわずかに多く除去された。DO濃度は、実験を通して低かった。
【0165】
[00206]純粋又は硝酸で酸化させた炭素(約5g)の充填カラムの場合の破過曲線を得て、Pb[Pb(NO3)2]が約150ppbの水道H2O1Lを20mL/分の流量でろ過した(表34及び表35)。この場合、Pb除去は、我々のデバイスによる容量吸着及び凝固(能動的ろ過)ではなく、物理吸着(受動的ろ過)により起きている。初期Pb濃度は劇的に低下するが、約0.3Lの水を処理した時点で炭素は両方とも急速に飽和し、効果がなくなる。試験を行った条件では、酸化させた炭素と比較して、純粋な炭素が鉛の物理吸着により効果的であるように見える。FPCデバイスのフロースルーの実施形態がいつ飽和するかを判定するため、12対の電極(約10g)を用い、1回の通過で5ガロンの水を1.2Vで20mL/分で処理した。処理した5ガロンの水に対し、持続的な性能が得られた(表36)。ろ過後の鉛の濃度は低いままであった一方、カルシウム(Ca2+)の濃度はほぼ一定であり、鉛に対する99%を超える選択性が実証された。この実験をフローバイデバイスを用いて繰り返し、14対の電極(約30g)を用い、5ガロンの水を1.2Vで100mL/分で1回の通過で処理した(表37)。Pb除去は、極端に高い開始Pb濃度からでも、通過させた総体積に対して維持された。
【0166】
[00207]水道H2O中Pb[Pb(NO3)2]が約150ppbの供給物溶液1.5L、14対の炭素電極(約30g)、及び300mL/分の流量を用いたフローバイ容量性凝固実験を、印加電位1.2Vで行った(表38)。セルに1回通過させる前後にサンプルを採取し、Pb2+濃度をANDalyze製手持ち式センサで測定した。処理したサンプルは、センサの検出限界であった。
【0167】
[00208]濃H2SO4で調節したpH2.83の水道H2O中Pb[Pb(NO3)2]が約150ppbの供給物溶液1.5L、14対の炭素電極(約30g)、及び100ml/分の流量を用いたフローバイ容量性凝固実験を、印加電位1.2Vで行った(表39)。セルに1回通過させる前後にサンプルを採取し、Pb2+濃度をANDalyze製手持ち式センサで測定した。処理したサンプルは、センサの検出限界未満であった。
【0168】
[00209]Pbが約150ppbのPb酸バッテリー製造業者の廃水サンプルの供給物溶液1.5L、14対の炭素電極(約30g)、及び100ml/分の流量を用いたフローバイ容量性凝固実験を、印加電位1.2Vで行った(表40)。セルに1回通過させる前後にサンプルを採取し、Pb2+濃度をANDalyze製手持ち式センサで測定した。流出物は、割り当てられたPb排出制限の0.6ppmを遙かに下回っていた。
【0169】
[00210]水道H2O中Pb[Pb(NO3)2]が約150ppbの供給物溶液1.5L、約14gの炭素電極、純粋なアノードと硝酸で酸化させたカソード、及び50、100、及び200ml/分の流量を用いた容量性凝固実験に巻回セル設計を使用し、全て1回の通過で連邦対策レベルの15ppb未満へのPb除去を示した(表41)。セルは、1.2Vの印加電位で作動させた。セルでのろ過の前後にサンプルを採取し、Pb2+濃度をANDalyze製手持ち式センサで測定した。
【0170】
[00211]水道H
2O中Pb[Pb(NO
3)
2]が約50ppbとPbが2.5ppm、及び水道水中Cuが約10ppmである供給物溶液1.5Lを用いた容量性凝固実験に巻回セル設計を使用した。Pb除去は、低濃度の場合は連邦対策レベルの15ppb未満であり、高濃度の場合は1ppm未満であった(表42)。Cu除去は、99%を超えていた(表43)。巻回セルの概略図を
図29に示す。
【0171】
[00212]水道H2O中Pb[Pb(NO3)2]が2.5ppmの溶液、及び約30gの炭素電極を1.2Vで用いた容量性凝固実験に直列セルアーキテクチャを使用した。連続5ガロンの水を処理し、濃度は一貫して48ppb未満であった(表44)。
【0172】
[00213]水道H2O中Pb[Pb(NO3)2]が約50ppbの供給物溶液1.5Lを用いた容量性凝固実験に炭素ブロックを使用した(表45)。Pb除去は、連邦対策レベルの15ppb未満であった。
【0173】
[00214]複数の金属種、Cu、Fe、及びMnをppm範囲の濃度で含有する工業廃水をフローバイ容量性凝固実験に使用した。0.5、1.0、及び1.5L/分の流量を1.2Vで試験した。Cuは、98%を超え、Feは14%を超え、Mnは87%を超える減少であった(表46)。
【0174】
[00215]複数の金属種、Cu、Fe、及びMnをppb範囲の濃度で含有する逆浸透(RO)濃縮物、又はブラインを、フローバイ容量性凝固実験に使用した。0.1、0.5、及び1.0L/分の流量を1.2Vで試験した。Cuは、99%を超え、Feは、99%を超え、Mnは、74%を超える減少であった(表47)。
【0175】
[00216]全塩素及び遊離塩素を、塩素除去用に調整したEDCでの処理の前後に測定した。クロラミンは、全塩素と遊離塩素との差から推定した。99%を超える遊離塩素除去と、最大99%のクロラミン除去が得られた。作動中、3.0V未満の電圧をセルに印加した。100~500ml/分の流量を試験した。厳密には細孔崩壊による電荷損失による性能の低下が観察される前に、合計約210ガロンの水が処理された。
【0176】
[00217]V>0の場合、酸化させたカイノール(硝酸処理)をアノードとして、純粋なカイノールをカソードとして使用し、V<0の場合、電極を切り替えた。供給物(流入物)及び生成物(流出物)流中の全塩素を、
図30に示す。流出物中の全塩素の明らかな減少が観察された。
図31及び
図32は、それぞれ供給物及び生成物流中の遊離塩素とクロラミンの濃度を示す。
図33は、各消毒剤の除去%を示す。99%を超える遊離塩素除去と、約80%のクロラミン除去が得られた。EDCでの処理後に、最大100%の過酸化物除去も達成された。
【0177】
[00218]酸化させたカイノール(硝酸処理)をカソードとして、フュールセルアースをアノードとして使用した。供給物及び生成物流中の全塩素を、
図34に示す。2.0Vの印加電圧で、流出物中の全塩素の明らかな減少が観察された。
図35及び
図36は、それぞれ供給物及び生成物流中の遊離塩素とクロラミンの濃度を示す。
図37は、各消毒剤の除去%である。99%を超える遊離塩素除去と、約40%のクロラミン除去が得られた。EDCでの処理後に、約60%の過酸化物除去も達成された。
【0178】
[00219]V>0の場合、酸化させたカルゴン(硝酸及び電気化学的処理)をアノードとして、純粋なカルゴンカソードとして使用し、V<0の場合、電極を切り替えた。供給物及び生成物流中の全塩素を、
図38に示す。流出物中の全塩素の明らかな減少が観察された。
図39及び
図40はそれぞれ、供給物及び生成物流中の遊離塩素とクロラミンの濃度を示す。
図41は、各消毒剤の除去%を示す。最大96%の遊離塩素除去と、約57%のクロラミン除去が得られた。EDCでの処理後に、約57%の過酸化物除去も達成された。
【0179】
[要約]
[00220]要約すると、FPCの発明は、水溶液を浄化するための電気化学的デバイスであって、少なくとも1つの炭素系アノードと少なくとも1つの炭素系カソード(前記アノード及びカソードはそれぞれ、Epzcシフトのない純粋な電極である)が、容器内に交互に並んでおり、前記容器は、水溶液を容器に供給する少なくとも1つの入口と、浄化されたアウトプットを容器から排出する少なくとも1つの出口とを備えて構成されており、セパレータが各電極の間に配置されており、関連する配線を備えた電源が、DC定電圧又は定電流を炭素系電極に供給し、除去すべき少なくとも1種の標的種を含有する水溶液が、入口を通って送り込まれ、電極のそば又は中を通って少なくとも1つの出口につながる排出チャネルに至り、少なくとも1つのアノードに印加されるDC電圧と少なくとも1つのカソードに印加されるDC電圧が、少なくとも1種の標的種のプールベ線図に示され、容量吸着、ファラディック固定化、及び容量吸着とファラディック固定化の両方からなる群から選択されるメカニズムにより、少なくとも1種の標的種を電極に凝集させるDC電圧である、デバイスを含む。少なくとも1種の標的種の凝集は、少なくとも1つのアノードの近くの4未満のpH領域における標的種の酸化により引き起こされる。或いは、少なくとも1種の標的種の凝集は、少なくとも1つのアノードの近くの4未満のpH領域における標的種の酸化により引き起こされ、酸化は、少なくとも1つのカソードの近くの10を超えるpH領域における酸化剤の生成から生じる。電源は、プロセスコントローラにより、又は手動で制御される。電極を作製する材料は、高い透水性を有し、活性炭布、ミクロ多孔性とメソ多孔性の活性炭の混合物、メソ多孔性とマクロ多孔性の活性炭の混合物、及びミクロ多孔性とメソ多孔性とマクロ多孔性の活性炭の混合物からなる群から選択される。セパレータの厚さは、1nm~100ミクロン、2nm~50ミクロン、2nm~30ミクロン、1~100ミクロン、1~50ミクロン、及び1~30ミクロンの範囲からなる群から選択される。ファラディック固定化を達成するために使用されるDC電圧は、0.6V未満、1.2V未満、及び2.0V未満からなる群から選択される。電極は、任意選択で不透過性の絶縁体により分離されていてもよく、その場合、通過流は、多孔質の電極の中のみを通って流れて排出チャネルに到達する、或いは、透過性のセパレータにより分離されていてもよく、その場合、通過流は、電極のそばを流れ、セパレータを通って排出チャネルに至る。イオン交換膜が、任意選択で少なくとも1つのアノード、少なくとも1つのカソード、又は両方の電極を覆うことができる。少なくとも1つの炭素系電極のゼロ電荷の電位を、カソードの還元、カソードの酸化、アノードの還元、及びアノードの酸化からなる群から選択されるメカニズムによりシフトさせることができる。電極間の間隔は、1mm未満、200ミクロン未満、50ミクロン未満、及び20ミクロン未満からなる群から選択される。FPCのセル設計は、巻回又は積層とすることができる。
【0180】
[00221]FPCにおけるアノードは、0%~30%のミクロ多孔性活性炭であって、導電率値が10S/cmを超える炭素を含むミクロ多孔性活性炭と、70%~100%のメソ多孔性活性炭の細孔口径プロファイルを用いて達成される2.0~10nmの平均細孔口径、及び0%~20%のマクロ多孔性活性炭と、80%~100%のメソ多孔性活性炭であって、導電率値が10S/cmを超えるメソ多孔性活性炭の細孔口径プロファイルを用いて達成される平均細孔口径2.5~10nmからなる群から選択される平均細孔口径を有することができる。FPCにおけるカソードは、0%~30%のミクロ多孔性活性炭であって、導電率値が10S/cmを超える炭素を含むミクロ多孔性活性炭と、70%~100%のメソ多孔性活性炭の細孔口径プロファイルを用いて達成される2.0~10nmの平均細孔口径、及び0%~20%のマクロ多孔性活性炭と、80%~100%のメソ多孔性活性炭であって、導電率値が10S/cmを超えるメソ多孔性活性炭の細孔口径プロファイルを用いて達成される平均細孔口径2.5~10nmからなる群から選択される平均細孔口径を有することができる。
【0181】
[参考文献一覧]
[00222] Smith, A. (2014, December 13). Health Problems Associated with Impure Tap Water. Retrieved from:http://www.macrohealth.net/health-problems-associated-with-impure-tap-water/
[00223] White, J. (2017, November 16)Nearly 4,000 US communities have higher rates of lead poisoning than Flint. Retrieved from: https://www.wsws.org/en/articles/2017/11/16/lead-n16.html
[00224] Schneyer, J. (2017, November 17). Reuters finds 3,810 U.S. areas with lead poisoning double Flint’s. Retrieved from: https://www.reuters.com/article/us-usa-lead-map/reuters-finds-3810-u-s-areas-with-lead-poisoning-double-flints-idUSKBN1DE1H2
[00225] (2017, March 12). Test Your School’s Drinking Water for Lead. Retrieved from: https://tapwaterwatch.com/school-drinking-water/
[00226] Pure Water Technology SD. (2016,July 7). 5,300 U.S. water systems are in violation of lead rules. Retrieved from:http://www.purewatertechsandiego.com/5300-u-s-water-systems-violation-lead-rules/
[00227] Siegel, J. (2018, February 5). Pruitt asks Cabinet to help him with ’war on lead’ in drinking water. Washington Examiner. Retrieved from:http://www.washingtonexaminer.com/pruitt-asks-cabinet-to-help-him-with-war-on-lead-in-drinking-water/article/2648158
[00228] Akshay P. (2018, January 19). Water Treatment Systems (PoE) Market by technology (Water Softeners, Filtration Methods, Reverse Osmosis, Distillation Systems, Disinfection Methods and Others), by Application (Residential and Non-Residential) - Global Forecast to2020, MarketsandMarketsTM Report. Retrieved from MarketandMarketTM database.
https://www.linkedin.com/pulse/point-of-entry-water-treatment-systems-market-worth-569-akshay-p/
[00229] Nilesh R. (2016, June). Point-of-Entry Water Treatment Systems Market by Technology (Water Softening, Filtration, Reverse Osmosis (RO), Disinfection, Sedimentation, Distillation) and Application (Residential, Commercial, Industrial) - Global Opportunity Analysis and Industry Forecast, 2015 - 2022. Allied Market Research Report.Retrieved from Allied Market Research Database. https://www.alliedmarketresearch.com/water-treatment-systems-point-of-entry-market
[00230] Point of Use Water Treatment Systems Market Analysis, By Technology (RO, Distillation, Disinfection, Filtration), By Device (Pitchers, Faucet Filters, Countertop), By Region, And Segment Forecasts, 2018 - 2025. (2017, October) Retrieved from:
https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/point-of-use-water-treatment-systems-market
[00231] Suh, R. (2016, June 28). Our Drinking-Water Crisis Goes Far Beyond Flint. Natural Resources Defense Council. Retrieved from:https://www.nrdc.org/experts/rhea-suh/our-drinking-water-crisis-goes-far-beyond-flint
[00232] Environmental Protection Agency. Lead and Copper Rule. Retrieved from:
https://www.epa.gov/dwreginfo/lead-and-copper-rule
[00233] R. Levin et al. (2008). Lead Exposures in U.S. Children, 2008: Implications for Prevention, Environ. HealthPerspect. 116(10), 1285-1293.
[00234] T. A. Jusko et al. (2008). Blood lead concentrations < 10 microg/dL and child intelligence at 6 years of age. Environ. Health Perspect. 116(2): 243-248.
[00235] Olsen, E. D. and Fedinick, K. P.(2016, June 28). What’s in Your Water? Flint and Beyond. Natural Resources Defense Council. Retrieved from:https://www.nrdc.org/resources/whats-your-water-flint-and-beyond
[00236] U. S. Environmental Protection Agency Office of Water. (2016, October). Lead and Copper Rule Revisions White Paper, Washington, DC 20460.
[00237] Torrice, M. (2018, January 15). A ‘war on lead’ may be on the horizon. Chemical & Engineering News. A Retrieved from: https://cen.acs.org/articles/96/i3/us-policy-outlook-for-2018.html
[00238] Pattani, A. (2018, March 6). NYC Lags in Reinstating Public School Water Fountains Ager Finding Lead. WNYC News.Retrieved from:https://www.wnyc.org/story/nyc-lags-repairing-water-fountains-lead-public-schools/
[00239] Seewer, J. (2018, January 1).Hundreds of water fixtures in Ohio schools founds with lead. The News-Herald Available: http://www.news-herald.com/article/HR/20180108/NEWS/180109566
[00240] CBS SF Bay Area. (2018, January 25). High lead Levels Found in Water Fountains at Berkeley Schools. Retrieved from:http://sanfrancisco.cbslocal.com/2018/01/25/lead-found-in-drinking-water-at-berkeley-schools/
[00241] Girardi, L. (2017, March 28). Elevated lead levels found at some Geneva school water fountains. Chicago Tribune, Beacon News. Retrieved from:http://www.chicagotribune.com/suburbs/aurora-beacon-news/news/ct-abn-geneva-water-st-1214-20171213-story.html
[00242] Brown, R., McTigue, N., and Cornwall, D. (2015). Controlling Lead in Drinking Water. American Waterworks Association and Water Research Foundation. Newport News, VA.
[00243] Schock, M. R., Hyland, R. N., and Welch, M. M. (2008). Occurrence of contaminant accumulation in lead pipe scales from domestic drinking-water distribution systems. Environ. Sci. Technol.42(12), 4285-4291.
[00244] Xie, Y. (2010). Dissolution,Formation, and Transformation of the Lead Corrosion Product PbO2:Rates and Mechanisms of Reactions that Control Lead Release in Drinking Water Distribution Systems, PhD Thesis, Washington University in St. Louis, St.Louis, Missouri.
[00245] Edwards, M. and McNeill, L. S.(2002). Effect of phosphate inhibitors on lead release from pipes. J. Am. Water Works Assoc. 94(1), 79-90.
[00246] Siegel, J. (2018, February 5).Pruitt asks Cabinet to help him with ’war on lead’ in drinking water. Washington Examiner. Retrieved from:http://www.washingtonexaminer.com/pruitt-asks-cabinet-to-help-him-with-war-on-lead-in-drinking-water/article/2648158
[00247] Shekinah, P., Kadirvelu, K.,Kanmani, P., Senthilkumar, P., and Subburam, V. (2002). Adsorption of lead(II)from aqueous solution by activated carbon prepared from. J. Chem. Technol.Biotechnol. 77, 458-464.
[00248] Swiatkowski, A., Pakula, M.,Biniak, S., and Walczyk, M. (2004). Influence of the surface chemistry of modified activated carbon on its electrochemical behaviour in the presence of lead(II) ions. Carbon. 42, 3057-3069.
[00249] El-Wakil, A.M., Abou El-Maaty,W.M., and Awad, F.S. (2014). Removal of Lead from Aqueous Solution on Activated Carbon and Modified Activated Carbon Prepared from Dried Water Hyacinth Plant.J Anal. Bioanal. Tech. 5(2), 1000187.
[00250] Holubowitch, N., Omosebi, A., Gao,X., Landon, J. and Liu, K. (2017). Quasi-Steady-State Polarization Reveals the Interplay of Capacitive and Faradaic Processes in Capacitive Deionization. ChemElectroChem. 4, 2404-2413.
[00251] Avraham, E., Noked, E. M., Soffer,A. and Aurbach, D. (2011). The feasibility of boron removal from water by capacitive deionization. Electrochimica Acta. 56, 6312- 6317.
[00252] Tang, W., He, D., Zhang, C.,Kovalsky, P., and Waite, T. D. (2017). Comparison of Faradaic reactions in capacitive deionization (CDI) and membrane capacitive deionization (MCDI) water treatment processes. Water Research. 120, 229 237.
[00253] Edwards, M. and Dudi, A. (2004). Role of chlorine and chloramine in corrosion of lead-bearing plumbing materials. J Am Water Works Assoc. 96, 10, 69-81.
【0182】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【表31】
【表32】
【表33】
【表34】
【表35】
【表36】
【表37】
【表38】
【表39】
【表40】
【表41】
【表42】
【表43】
【表44】
【表45】
【表46】
【表47】