(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】界面媒体と共に使用するための透析デバイス、透析システム、透析デバイスの使用、透析システムを確立するための方法、透析システムを充填および/またはプライミングするための方法、ならびに透析システムから空気を除去するための方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20230703BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20230703BHJP
B01D 61/00 20060101ALI20230703BHJP
B01D 69/04 20060101ALI20230703BHJP
B01D 69/06 20060101ALI20230703BHJP
B01D 69/08 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A61M1/16 130
A61M1/16 183
A61M1/16 190
A61M1/36 121
B01D61/00
B01D69/04
B01D69/06
B01D69/08
(21)【出願番号】P 2021517204
(86)(22)【出願日】2018-09-29
(86)【国際出願番号】 CN2018108602
(87)【国際公開番号】W WO2020062135
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】501276371
【氏名又は名称】フレセニウス・メディカル・ケア・ドイチュラント・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ジョー、キー
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03682172(US,A)
【文献】米国特許第03839200(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0258268(US,A1)
【文献】特表2012-529321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
A61M 1/36
B01D 61/00
B01D 69/04
B01D 69/06
B01D 69/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の膜および第2の膜を備える透析デバイスであって、
前記第1の膜によって形成された第1のチャンバが、第1の流体を受容するように構成され、
前記第2の膜によって形成された第2のチャンバが、第2の流体を受容するように構成され、
共通のハウジング、前記第1の膜、および前記第2の膜間に形成された第3のチャンバが、第3の流体を受容するように構成され、
前記第1の膜を通過して流れる前記第1の流体は、前記第3の流体を介して、前記第2の膜を通過して流れる前記第2の流体と間接的に連通することがで
き、
前記第1の膜および前記第2の膜は、中空糸によって形成された膜から選択され、
個別の中空糸としての前記第1の膜および前記第2の膜は、前記第3の流体が前記個別の中空糸の間に充填されるように、前記共通のハウジング内に配設され、
前記第3の流体は、電解質溶液である、
透析デバイス。
【請求項2】
前記第1の膜は、少なくとも第1のグループの中空糸を備え、
前記第2の膜は、少なくとも第2のグループの中空糸を備える、
請求項1に記載の透析デバイス。
【請求項3】
前記第1のグループの中空糸および前記第2のグループの中空糸の各々は、それぞれ別個の中空糸束として構成されているか、または、
前記第1のグループの中空糸の少なくとも一部分が、前記第2のグループの中空糸の少なくとも一部分によって囲まれており、
好ましくは、前記第1のグループの中空糸の少なくとも1つのサブグループが、前記第2のグループの中空糸の少なくとも1つのサブグループによって囲まれており、
好ましくは、前記第1のグループの中空糸の少なくとも1つのサブグループと、前記第2のグループの中空糸の少なくとも1つのサブグループとが交互に配置され、
好ましくは、前記第1のグループの中空糸の少なくとも1つの行のサブグループと、前記第2のグループの中空糸の少なくとも1つの行のサブグループとが交互に配置され、および/または、
好ましくは、前記第1のグループの中空糸の少なくとも1つの列のサブグループと、前記第2のグループの中空糸の少なくとも1つの列のサブグループとが交互に配置される、
請求項
2に記載の透析デバイス。
【請求項4】
前記第1のグループの中空糸の数、材料、構造、および製造プロセスは、前記第2のグループの中空糸の数、材料、構造、および製造プロセスと同じであっても異なってもよい、
請求項
2または
3に記載の透析デバイス。
【請求項5】
前記第1の流体は、患者または動物の処理される血液であり、
前記第2の流体は生物学的透析流体であり、および/または、
前記第3の流体は
、界面媒体として作用する生理食塩水である、
請求項1~
4のいずれか一項に記載の透析デバイス。
【請求項6】
前記透析デバイスは、
前記第1のチャンバと連通するように構成された少なくとも第1の対のポート、
前記第2のチャンバと連通するように構成された少なくとも第2の対のポート、および/または、
前記第3のチャンバと連通するように構成された少なくとも第3の対のポート、
をさらに備える、請求項1~
5のいずれか一項に記載の透析デバイス。
【請求項7】
前記第1のグループの中空糸を流れる前記第1の流体の方向は、前記第2のグループの中空糸を流れる前記第2の流体の方向と反対であり、および/または、
前記第3の流体は、前記第3のチャンバ内に完全に充填され、好ましくは循環ループ内を流れる、
請求項
2~
4のいずれか一項に記載の透析デバイス。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の少なくとも1つの透析デバイスを備える、透析システム。
【請求項9】
前記透析システムは、
前記第3の流体への漏血を検出するように構成された少なくとも1つの検出器、
前記第3のチャンバを通る前記第3の流体の循環流を生成するように構成された駆動デバイス、好ましくはポンプ、および/または、
前記第2のチャンバを通過した後に新しい第2の流体を再生するように構成された流体再生デバイス、
をさらに備える、請求項
8に記載の透析システム。
【請求項10】
少なくとも第1の透析デバイスおよび第2の透析デバイスを備える透析システムであって、
第1の膜によって形成された第1のチャンバが、第1の流体を受容するように構成され、
第2のチャンバが、前記第1の透析デバイスの第1のハウジングと前記第1の膜との間に形成され、
第2の膜によって形成された第3のチャンバが、第2の流体を受容するように構成され、
第4のチャンバが、前記第2の透析デバイスの第2のハウジングと前記第2の膜との間に形成され、
前記第2のチャンバおよび前記第4のチャンバは、第3の流体を受容するように構成され、前記第1の膜を通過して流れる前記第1の流体は、前記第3の流体を介して、前記第2の膜を通過して流れる前記第2の流体と間接的に連通することがで
き、
前記透析システムは、前記第3の流体を循環させるために前記第2のチャンバを前記第4のチャンバと流体接続するように構成された循環手段をさらに備え、
前記循環手段は、前記第3の流体の流れを閉鎖システム内に保つために前記第2のチャンバおよび前記第4のチャンバを流れる前記流体のバランスをとるように構成されたバランシングデバイスをさらに備える、
透析システム。
【請求項11】
前記透析システムは
、
前記第2のチャンバと前記第4のチャンバとの間に前記第3の流体の循環流を生成するように構成された駆動デバイス、好ましくはポンプ、
をさらに備える、請求項
10に記載の透析システム。
【請求項12】
前記循環手段は、
前記第3の流体への漏血を検出するように構成された少なくとも1つの検出器、好ましくは、少なくとも2つの検出器をさらに備え、
前記少なくとも2つの検出器のうちの一方が、前記第2のチャンバから出力された前記第3の流体への漏血を検出するように構成され、他方が、前記第4のチャンバから出力された前記第3の流体への漏血を検出するように構成される、
請求項
11に記載の透析システム。
【請求項13】
前記透析システムは、
前記第3のチャンバを通過した後に新しい第2の流体を再生するように構成された流体再生デバイス、および/または、
限外濾過量を制御するように構成された限外濾過手段、好ましくは限外濾過ポンプ、
をさらに備える、請求項
10~
12のいずれか一項に記載の透析システム。
【請求項14】
前記第1の透析デバイスは、前記第2の透析デバイスと同じであっても異なってもよく、
前記第1の流体は、患者または動物の処理される血液であり、
前記第2の流体は、生物学的透析流体であり、および/または、
前記第3の流体は、電解質溶液であり、好ましくは、界面媒体として作用する生理食塩水である、
請求項
10~
13のいずれか一項に記載の透析システム。
【請求項15】
前記循環手段は、少なくとも、
流体流れを患者側と透析液流体再生デバイス側とで交互に方向付けるように構成された、
前記バランシングデバイスをさらに備え、
好ましくは、
前記バランシングデバイスは、第1のバランシング区画および第2のバランシング区画を備えるシングルバランシングチャンバを有するか、または、
前記バランシングデバイスは、各々が第1のバランシング区画および第2のバランシング区画を備えるデュアルバランシングチャンバを有する、
請求項
10~
14のいずれか一項に記載の透析システム。
【請求項16】
前記循環手段は、
空気分離チャンバ内の空気の存在を検出するように構成され、かつ好ましくは前記第3の流体の循環ループ内に流体接続された空気検出手段、ここにおいて、前記空気分離チャンバは、前記空気が検出された後に前記空気分離チャンバから前記空気を除去するように構成され、好ましくは、前記空気検出手段は、前記空気分離チャンバ内に配設または一体化され、および/または、
前記第3の流体の循環ループと流体接続され、新しい第3の流体を供給するように構成された容器、
をさらに備え、好ましくは、前記第3の流体は、オンラインで生成される、請求項
10~
15のいずれか一項に記載の透析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面媒体(interface media)を用いた革新的な間接的透析方法、透析デバイス、透析システム、少なくとも1つの透析デバイスの使用、透析システムを確立するための方法、透析システムを充填および/またはプライミングするための方法、ならびに透析システムから空気を除去するための方法に関し、特に、界面媒体と共に使用するための透析器、界面媒体を用いた透析方法および対応する装置、デュアル透析器処置方法および対応する装置、デュアル透析器処置装置のための循環水圧のバランシングに関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析は、通常は腎臓によって除去される毒性物質および代謝産物を除去し、体液と電解質のバランスの調節を支援するための処置である。血液透析は、通常、透析流体を使用する透析装置によって行われる。典型的な透析処置には約120Lの透析流体を必要とする。
【0003】
透析装置の重要な一部として、一般的な透析器は、膜面積を増加させるために中空糸束からなる。新しい透析流体が中空糸の外表面を通過し、透析プロセスを介して血液から老廃物を除去する。
【0004】
現在、血漿、血球、および血小板を有する血液組成に似た生物学的透析流体が、従来の透析流体の代わりに使用されている。かかる生物学的透析流体は、能動的な生物学的再生デバイスを通して際限なくリサイクルされ、透析処置を連続して行うことができる。この場合、少量の透析流体しか必要でない。
【0005】
血液と同様に、生物学的透析流体は粘性があり、従来の透析流体よりも流れに対して抵抗性がある。処置プロセスで利用可能な量に限りがある。さらに、それは流路内でゆっくりと凝固しやすい。したがって、従来の透析器および透析システムは、以下の理由から好適ではない。
1.外部流路空間が繊維間で不均一である。生物学的透析流体の粘性を考慮すると、中空糸の外表面に沿う不均一な流れは、処置効率を損なう。
2.停滞し密集した領域は、凝固のリスクにさらされ、処置効率をさらに損なう。中空糸間の空間に沿う流れが、透析処置中に阻害される可能性がある。透析処置に効果的な生物学的透析流体の流れおよび界面が減少する。同じ理由で、かなりの量の生物学的透析流体が透析器の中で動かなくなる場合があり、もはや再生のために戻されることができない。
3.透析液側区画の流体体積が、血液側区画よりも大きい。
4.一般的に使用されるポリスルホン中空糸膜は非対称構造を有する。比較的ゆるい外表面構造は、血液のような流体向けに設計されていない。
5.膜破損に関する安全性リスクが検出不可能である。これは、透析流体が血液成分を含んでいるとき特に危険である。
【0006】
上記に鑑みて、血液のような生物学的透析流体に向けた安全かつ効果的に透析処置を実施するための革新的な解決法が必要である。
【発明の概要】
【0007】
先行技術に存在する課題に鑑みて、本発明の目的は、透析デバイス、透析システム、少なくとも1つの透析デバイスの使用、透析システムを確立するための方法、透析システムを充填および/またはプライミングするための方法、ならびに透析システムから空気を除去するための方法を提供することである。
【0008】
この目的を達成するために、第1の態様では、少なくとも第1の膜および第2の膜を備える透析デバイスが提供され、第1の膜によって形成された第1のチャンバが、第1の流体を受容するように構成され、第2の膜によって形成された第2のチャンバが、第2の流体を受容するように構成され、ハウジング、第1の膜、および第2の膜間に形成された第3のチャンバが、第3の流体を受容するように構成され、第1の膜を通過して流れる第1の流体は、第3の流体を介して、第2の膜を通過して流れる第2の流体と間接的に連通することができる。
【0009】
任意選択の実施形態によれば、第1の膜および/または第2の膜は、中空糸によって形成された膜、平膜、スパイラル膜、または円筒膜から選択される。
【0010】
任意選択の実施形態によれば、第1の膜は少なくとも第1のグループの中空糸を備え、第2の膜は少なくとも第2のグループの中空糸を備える。
【0011】
任意選択の実施形態によれば、第1のグループの中空糸および第2のグループの中空糸の各々は、それぞれ別個の中空糸束として構成されるか、または、第1のグループの中空糸の少なくとも一部分が、第2のグループの中空糸の少なくとも一部分によって囲まれており、好ましくは、第1のグループの中空糸の少なくとも1つのサブグループが、第2のグループの中空糸の少なくとも1つのサブグループによって囲まれており、好ましくは、第1のグループの中空糸の少なくとも1つのサブグループと、第2のグループの中空糸の少なくとも1つのサブグループとが交互に配置され、好ましくは、第1のグループの中空糸の少なくとも1つの行のサブグループと、第2のグループの中空糸の少なくとも1つの行のサブグループとが交互に配置され、および/または、好ましくは、第1のグループの中空糸の少なくとも1つの列のサブグループと、第2のグループの中空糸の少なくとも1つの列のサブグループとが交互に配置される。
【0012】
任意選択の実施形態によれば、第1のグループの中空糸の数、材料、構造、および製造プロセスは、第2のグループの中空糸の数、材料、構造、および製造プロセスと同じであっても異なってもよい。
【0013】
任意選択の実施形態によれば、第1の流体は、患者または動物の処理される血液であり、第2の流体は、生物学的透析流体であり、および/または第3の流体は、電解質溶液、好ましくは、界面媒体として作用する生理食塩水である。
【0014】
任意選択の実施形態によれば、本透析デバイスは、第1のチャンバと連通するように構成された少なくとも第1の対のポート、第2のチャンバと連通するように構成された少なくとも第2の対のポート、および/または第3のチャンバと連通するように構成された少なくとも第3の対のポートをさらに備える。
【0015】
任意選択の実施形態によれば、第1のグループの中空糸を流れる第1の流体の方向は、第2のグループの中空糸を流れる第2の流体の方向と反対であり、および/または、第3の流体は、第3のチャンバ内に完全に充填され、好ましくは循環ループ内を流れる。
【0016】
第2の態様では、少なくとも1つの透析デバイスの使用が提供される。
【0017】
第3の態様では、少なくとも1つの透析デバイスを備える透析システムが提供される。
【0018】
任意選択の実施形態によれば、本透析システムは、第3の流体への漏血を検出するように構成された少なくとも1つの検出器、第3のチャンバを通る第3の流体の循環流を生成するように構成された駆動デバイス、好ましくはポンプ、および/または、第2のチャンバを通過した後に新しい第2の流体を再生するように構成された流体再生デバイスをさらに備える。
【0019】
第4の態様では、透析システムが提供され、本透析システムは、少なくとも第1の透析デバイスおよび第2の透析デバイスを備え、第1の膜によって形成された第1のチャンバが、第1の流体を受容するように構成され、第2のチャンバが、第1の透析デバイスの第1のハウジングと第1の膜との間に形成され、第2の膜によって形成された第3のチャンバが、第2の流体を受容するように構成され、第4のチャンバが、第2の透析デバイスの第2のハウジングと第2の膜との間に形成され、第2のチャンバおよび第4のチャンバは、第3の流体を受容するように構成され、第1の膜を通過して流れる第1の流体は、第3の流体を介して、第2の膜を通過して流れる第2の流体と間接的に連通することができる。
【0020】
任意選択の実施形態によれば、本透析システムは、第3の流体を循環させるために第2のチャンバを第4のチャンバと流体接続するように構成された循環手段、および/または第2のチャンバと第4のチャンバとの間に第3の流体の循環流を生成するように構成された駆動デバイス、好ましくはポンプをさらに備える。
【0021】
任意選択の実施形態によれば、循環手段は、第3の流体への漏血を検出するように構成された少なくとも1つの検出器、好ましくは少なくとも2つの検出器をさらに備え、少なくとも2つの検出器のうちの一方は、第2のチャンバから出力された第3の流体への漏血を検出するように構成され、他方は、第4のチャンバから出力された第3の流体への漏血を検出するように構成される。
【0022】
任意選択の実施形態によれば、本透析システムは、第3のチャンバを通過した後に新しい第2の流体を再生するように構成された流体再生デバイス、および/または、限外濾過量を制御するように構成された限外濾過手段、好ましくは限外濾過ポンプをさらに備える。
【0023】
任意選択の実施形態によれば、第1の透析デバイスは、第2の透析デバイスと同じであっても異なってもよい。
【0024】
任意選択の実施形態によれば、循環手段は、第3の流体流れを閉鎖システム(closed system)内に保つために、第2のチャンバおよび第4のチャンバを流れる流体のバランスをとるように構成された少なくともバランシングデバイスをさらに備え、好ましくは、バランシングデバイスは、第1のバランシング区画および第2のバランシング区画を備えるシングルバランシングチャンバを有するか、または、バランシングデバイスは、各々が第1のバランシング区画および第2のバランシング区画を備えるデュアルバランシングチャンバを有する。
【0025】
任意選択の実施形態によれば、循環手段は、空気分離チャンバ内の空気の存在を検出するように構成され、かつ好ましくは第3の流体の循環ループ内に流体接続された空気検出手段であって、空気分離チャンバは、空気が検出された後に空気分離チャンバから空気を除去するように構成され、好ましくは、空気検出手段は、空気分離チャンバ内に配設または一体化される、空気検出手段、および/または、第3の流体の循環ループと流体接続され、新しい第3の流体を供給するように構成された容器とをさらに備え、好ましくは、第3の流体は、オンラインで生成される。
【0026】
第5の態様では、透析システムを確立するための方法が提供される。
【0027】
第6の態様では、透析システムを充填および/またはプライミングするための方法が提供される。
【0028】
任意選択の実施形態によれば、本方法は、バランスチャンバ流体体積で第3の流体の循環ループ内に第3の流体を充填することと、1分ごとに予め設定されたサイクルにわたって循環ループ内の第3の流体を循環させることと、好ましくは、循環ループ内の第3の流体を新しくするために、充填および循環を繰り返すこととをさらに備える。
【0029】
第7の態様では、透析システムから空気を除去するための方法が提供される。
【0030】
任意選択の実施形態によれば、本方法は、空気が検出された後、現在のサイクルの完了時にバランシングデバイスをオフにすることと、空気が検出されなくなるまで空気分離チャンバ内に新しい第3の流体を充填することとをさらに備える。
【0031】
本発明によれば、透析デバイスおよび透析システムは、粘性のある生物学的透析流体を使用するのに好適であり、患者と生物学的透析流体との間に直接的な流れがないので、異常が検出された場合に、より安全な隔離が可能となる。
【0032】
本発明およびその利点が、いくつかの好ましい例示的な実施形態の下記の詳細な説明を以下の図面を参照して読むことによってさらに理解される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の例示的な実施形態による透析デバイスを備える透析システムを概略的に示す。
【
図3】本発明の例示的な実施形態による、ハウジング内の第1のグループの中空糸および第2のグループの中空糸の配置を示す。
【
図4】本発明の別の例示的な実施形態による、ハウジング内の第1のグループの中空糸および第2のグループの中空糸の配置を示す。
【
図5】本発明のさらなる例示的な実施形態による、ハウジング内の第1のグループの中空糸および第2のグループの中空糸の配置を示す。
【
図7】透析システムの別の例示的な実施形態を示す。
【
図8】本発明の例示的な実施形態による透析システムを示す。
【
図9】本発明の例示的な実施形態による別の透析システムを示す。
【
図10】本発明の例示的な実施形態によるさらなる透析システムを示す。
【好ましい実施形態の詳細な説明】
【0034】
本発明のいくつかの例示的な実施形態について、本発明の基本概念および様々な利点をより理解するために、図面を参照してより詳細に以下に説明する。
【0035】
図1は、本発明の例示的な実施形態による透析デバイス1を備える透析システム10を概略的に示し、透析デバイス1の動作原理をより説明する。
図2は、透析デバイス1の断面図を示す。
【0036】
図1および
図2に示すように、透析デバイス1は、ハウジング11、第1のチャンバ12、第2のチャンバ13、および第3のチャンバ14を備える。ハウジング11は、一般的な既存の透析器向けに円筒として構成されてもよいし、または矩形断面などを有する柱として形成されてもよい。第1のチャンバ12は、第1の膜15によって形成され、第2のチャンバ13は、第2の膜16によって形成され、第3のチャンバ14は、ハウジング11、第1の膜15、および第2の膜16間に形成されている。
【0037】
第1のチャンバ12は、第1の流体を受容するように構成され、第2のチャンバ13は、第2の流体を受容するように構成され、第3のチャンバ14は、第3の流体を受容するように構成され、第1の膜15を通過して流れる第1の流体は、第3の流体を介して、第2の膜16を通過して流れる第2の流体と間接的に連通することができる。したがって、透析デバイス1は、界面媒体を用いて動作する。
【0038】
例えば、
図1に示す透析システム10では、第1のチャンバ12は、患者2に流体接続されて、処理されることになる血液を受容し、第2のチャンバ13は、生物学的透析流体デバイス3と流体接続されて生物学的透析流体デバイス3から生物学的透析流体を受容し、第3のチャンバ14には、第3の流体が充填される。この場合、第1の流体は処理される血液であり、第2の流体は生物学的透析流体、例えば透析溶液または正常な血液であり、透析プロセスは、界面媒体として作用する第3の流体を介して間接的に行われ、すなわち、血液対界面媒体、次いで界面媒体対生物学的透析流体、そしてその逆も同様にして行われ、これを2つの双方向矢印4によって概略的に示す。
【0039】
この配置を用いると、生物学的透析流体用の流路が、血液用の均一な流路と同一となり、透析デバイス1内の停滞流問題を最小限に抑えることができる。さらに、第2のチャンバ13の中の流路内の生物学的透析流体の体積も所望通りに最適化することができる。
【0040】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、第3の流体は、電解質溶液、好ましくは生理食塩水である。
【0041】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、第1の膜15および/または第2の膜16は、中空糸によって形成された膜、平膜、またはスパイラル膜、または円筒膜から選択され得る。
【0042】
例えば、第1の膜15は、第1のグループの中空糸を備え得るかまたはそれからなり得、第2の膜16は、第2のグループの中空糸を備え得るかまたはそれからなり得る。この場合、第1のチャンバ12は、第1のグループの中空糸の内部空洞によって形成され得、第2のチャンバ13は、第2のグループの中空糸の内部空洞によって形成され得る。
【0043】
図3は、本発明の例示的な実施形態による、ハウジング11内の第1のグループの中空糸および第2のグループの中空糸の配置を示す。
【0044】
図3に示すように、第1のグループの中空糸17および第2のグループの中空糸18の各々は、それぞれ別個の中空糸束として構成されている。
【0045】
図4は、本発明の別の例示的な実施形態による、ハウジング11内の第1のグループの中空糸17および第2のグループの中空糸18の配置を示す。
【0046】
図4に示すように、第1のグループの中空糸17の少なくとも1つのサブグループと、第2のグループの中空糸18の少なくとも1つのサブグループとは、ハウジング11内に交互に配置される。
【0047】
図5は、本発明のさらなる例示的な実施形態による、ハウジング11内の第1のグループの中空糸17および第2のグループの中空糸18の配置を示す。
【0048】
図5に示すように、第1のグループの中空糸17および第2のグループの中空糸18は、交互配置でハウジング11内に配置される。ここでは、ハウジング11は円形断面を有する。
【0049】
当業者によって理解され得るように、ハウジング11は任意の好適な形状を有してよい。
【0050】
また当業者によって理解され得るように、第1のグループの中空糸17および第2のグループの中空糸18は、他の任意の好適な方法でハウジング11内に配置されてもよい。
【0051】
例えば、ハウジング11内の第1のグループの中空糸17および第2のグループの中空糸18の配置はまた、次の配置のいずれか1つまたはいずれかの組合せであってもよい。1)第1のグループの中空糸が第2のグループの中空糸によって囲まれている、2)第1のグループの中空糸の少なくとも1つのサブグループが第2のグループの中空糸の少なくとも1つのサブグループによって囲まれている、3)第1のグループの中空糸の少なくとも1つの行のサブグループと、第2のグループの中空糸の少なくとも1つの行のサブグループとが交互に配置される、および4)第1のグループの中空糸の少なくとも1つの列のサブグループと、第2のグループの中空糸の少なくとも1つの列のサブグループとが交互に配置される。
【0052】
本発明の例示的な実施形態によれば、第1のグループの中空糸17の数、材料、構造、および製造プロセスは、第2のグループの中空糸18のそれらと同じであっても異なってもよい。
【0053】
本発明の例示的な実施形態によれば、透析デバイス1は、第1のチャンバ12と連通するように構成された少なくとも第1の対のポート、第2のチャンバ13と連通するように構成された少なくとも第2の対のポート、および/または第3のチャンバ14と連通するように構成された少なくとも第3の対のポートをさらに備える。
【0054】
例えば、
図6は、透析デバイス1を備える透析システムを示し、透析デバイス1は、第1のチャンバ12と連通するように構成された第1の対のポート19、第2のチャンバ13と連通するように構成された第2の対のポート20、および第3のチャンバ14と連通するように構成された第3の対のポート21を備える。
【0055】
好ましくは、第1の対のポート19のうちの一方、第2の対のポート20のうちの一方、および第3の対のポート21のうちの一方は、ハウジング11の一端に配設され、第1の対のポート19のうちの他方、第2の対のポート20のうちの他方、および第3の対のポート21のうちの他方は、ハウジング11の反対側の他端に配設される。
【0056】
図6に示すように、第1のチャンバ12、例えば第1のグループの中空糸17を流れる第1の流体、例えば血液の方向は、第2のチャンバ13、例えば第2のグループの中空糸18を流れる第2の流体、例えば生物学的透析流体の方向と反対であり、これにより処置効率を向上させることができる。
【0057】
本発明の例示的な実施形態によれば、第3の対のポート21のうちの一方は、プライミングおよび充填プロセスを実施するために界面媒体流体バッグに流体接続され得る。例えば、界面媒体流体バッグは、IVポール上に懸架され得る。このプロセスが終了した後に、透析処置の準備をするためにポートは閉じられ得る。
【0058】
本発明の例示的な実施形態によれば、第3の流体は、第3のチャンバ14内に完全に充填される。さらに好ましくは、第3の流体は循環ループ内を流れる。
【0059】
また、当業者によって理解され得るように、透析デバイス1は、限定されるものではないが、透析処置によって同じ種または場合により異なる種の健康な動物からの新しい血液で動物の血液を処理するために使用され得、血液は戻され、健康な動物自体によって再生されることができる。
【0060】
図7は、透析システム10の別の例示的な実施形態を示す。
図7に示すように、透析システム10はさらに、第3のチャンバ14を通る第3の流体の循環流を生成するように構成された駆動デバイス5、好ましくはポンプ、および/または第3の流体への漏血を検出するように構成された少なくとも1つの検出器6を備える。
【0061】
容易に理解できるように、駆動デバイス5は処置効率を向上させることができ、検出器6は安全対策を提供することができる。例えば、膜破損が検出器6によって検出された場合、患者の血液ポンプは、静脈クランプを閉じて停止し、処置を安全に終了する。
【0062】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、検出器6は、駆動デバイス5と第3の対のポート21のうちの出口、すなわち
図6の右側のポートとの間の流路内に配設される。
【0063】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、透析システム10は、第2のチャンバ14を通過した後に新しい第2の流体を再生するように構成された流体再生デバイス7をさらに備える。
【0064】
生物学的透析流体デバイス3が流体再生デバイスとして構成され得ることに留意されたい。
【0065】
図8は、本発明の例示的な実施形態による別の透析システム100を示す。
【0066】
図8に示すように、透析システム100は、少なくとも第1の透析デバイス101および第2の透析デバイス102を備え、第1のチャンバ103が、第1の膜104によって形成され、第1の流体を受容するように構成されており、第2のチャンバ105が、第1の透析デバイス101の第1のハウジング106と第1の膜104との間に形成され、第3のチャンバ107が、第2の膜108によって形成され、第2の流体を受容するように構成されており、第4のチャンバ109が、第2の透析デバイス102の第2のハウジング110の間に形成され、第2のチャンバ105および第4のチャンバ109は、第3の流体を受容するように構成され、第1の膜104を通過して流れる第1の流体は、第3の流体を介して、第2の膜108を通過して流れる第2の流体と間接的に連通することができる。
【0067】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、透析システム100はさらに、第3の流体を循環させるために第2のチャンバ105を第4のチャンバ109と流体接続するように構成された循環手段111、および/または第2のチャンバ105と第4のチャンバ109との間に第3の流体の循環流を生成するように構成された駆動デバイス112、好ましくはポンプを備える。
【0068】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、循環手段111はさらに、第3の流体への漏血を検出するように構成された少なくとも1つの検出器113を備える。
【0069】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、循環手段111は、少なくとも2つの検出器113を備え、そのうちの一方は、第2のチャンバ105から出力された第3の流体への漏血を検出するように構成され、そのうちの他方は、第4のチャンバ109から出力された第3の流体への漏血を検出するように構成される。したがって、第3の流体への漏血をより迅速に検出して、適時に安全対策を講じることが可能である。
【0070】
例えば、一方の検出器113は、第2のチャンバ105の出口ポートにまたはそれに隣接して配設され、および/または他方の検出器113は、第4のチャンバ109の出口ポートにまたはそれに隣接して配設される。
【0071】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、透析システム100はさらに、第3のチャンバ107を通過した後に新しい第2の流体を再生するように構成された流体再生デバイス114を備える。
【0072】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、第1の透析デバイス101は、第2の透析デバイス102と同じであっても異なってもよい。好ましくは、第1の透析デバイス101および/または第2の透析デバイス102は、従来の標準的な透析器であり得る。
【0073】
同様に、第1の流体は患者または動物の処理される血液であり得、第2の流体は、生物学的透析流体であり得、および/または第3の流体は、電解質溶液、好ましくは、界面媒体として作用する生理食塩水であり得る。
【0074】
図9は、本発明の例示的な実施形態による別の透析システム1000を示す。
【0075】
以下では、透析システム100と透析システム1000との相違点について主に説明する。
【0076】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、透析システム1000は、限外濾過量を制御するように構成された、限外濾過手段1001、好ましくは限外濾過ポンプを備える。第2のチャンバ105および第4のチャンバ109内を流れる流体のバランスが、バランシングデバイス1002によって達成されて、第3の流体流れを閉鎖システム内に保つ。当業者は、典型的な透析装置設計に適用されるバランシングチャンバの概念を理解するであろう。限外濾過手段1001は、患者側のみに適用され、好ましくは、第2のチャンバ105と接続している第3の流体の循環ループ内に流体接続される。
【0077】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、循環手段111は、流体流れを患者側と透析液流体再生デバイス側とで交互に方向付けるためのバランシングデバイス1002を備える。各サイクル中、第2のチャンバ105からの定量吐出された(dispensed)流体が、第4のチャンバ109からの再生された流体と交換される。
【0078】
図9に示すように、バランシングデバイス1002は、第1のバランシング区画および第2のバランシング区画1004を備えるシングルバランシングチャンバを有し得、またはシングルバランシングチャンバであり得る。
【0079】
シングルバランシングチャンバは、第1のバランシング区画と連通する第1の入口ポート1005および第1の出口ポート1006と、第2のバランシング区画1004と連通する第2の入口ポート1007および第2の出口ポート1008とを有する。これらのポートの各々には、それぞれのポートを開閉するための制御弁1009(
図9には1つの制御弁のみが示されている)が設けられている。第1の入口ポート1005と第2の出口ポート1008は、膜を介して接続され(interfaced)、流体を第1のバランシング区画内に充填し、第2のバランシング区画1004内の流体を定量吐出して、チャンバ容積の量の循環で第2のチャンバ105内の流体を新しくし、同様に、第1の出口ポート1006と第2の入口ポート1007は、膜を介して接続され、再生された流体を第2のバランシング区画1004内に充填し、第1のバランシング区画内の定量吐出された流体を、チャンバ容積の量の循環流で第4のチャンバ109に定量吐出する。
【0080】
バランシングデバイス1002を用いると、第1のバランシング区画1003が完全に満たされるまで、流体を第1のバランシング区画1002内に駆動し、同時に流体を第2のバランシング区画1004から外に駆動することによって、患者側の流体バランスを達成することができる。本ステップにおける流体流れを可能にするために、第1の入口ポート1005および第2の出口ポート1008は、それぞれの弁1008によって開かれる。次のステップでは、第1の出口ポート1006および第2の入口ポート1007が、それぞれの弁1008によって開かれ、再生された流体を第2のバランシング区画1004に充填し、それと同時に、患者側からの定量吐出された流体が、第4のチャンバ9に通過して新しくされる。閉鎖システムでは、バランシングチャンバに向かう流体流入とバランシングチャンバから出る流体流れは等しい。したがって、患者2および流体再生デバイス114間の制御不能な流体移動はない。さらに、バランシングデバイス1002、例えばバランシングデバイス1002のサイクル流量を制御することによって、循環手段111内の第3の流体の正確な流量を達成することができる。
【0081】
具体的には、循環手段111は、第1の透析デバイス101のための第1の界面媒体循環ループ1015と、第2の透析デバイス102のための第2の界面媒体循環ループ1016とを備え、ここにおいて、第1の界面媒体循環ループ1015は、バランシングデバイス1002によって第2の界面媒体循環ループ1016と流体接続され、その結果、第1の界面媒体循環ループ1015内の界面媒体および第2の界面媒体循環ループ1016内の界面媒体を制御可能に交換することができる。
【0082】
第1の界面媒体循環ループ1015は、使用済み界面媒体を第1の透析デバイス101からバランシングデバイス1002の第1のバランシング区画1003に定量吐出するように構成され、第2の界面媒体循環ループ1016は、浄化済み界面媒体を第2の透析デバイス102からバランシングデバイス1002の第2のバランシング区画1004に充填するように構成される。
【0083】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、限外濾過手段1001は、第1の界面媒体循環ループ1015と流体接続される。
【0084】
シングルバランシングチャンバは、駆動デバイスによって駆動され得る。この場合、駆動デバイスは、好ましくは、第1のバランシング区画1003を駆動するように構成された第1のポンプ1010と、第2のバランシング区画1004を駆動するように構成された第2のポンプ1011とを備える。
【0085】
シングルバランシングチャンバの動作原理およびプロセスは周知のものであり、したがって、本明細書では詳細に説明しない。
【0086】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、循環手段111はさらに、空気分離チャンバ1013内の空気の存在を検出するように構成された空気検出手段1012を備える。空気検出手段1012は、好ましくは、第3の流体の循環ループ内に流体接続される。空気分離チャンバ1013は、空気が検出された後に、空気分離チャンバ1013の上部に接続された弁または蠕動ポンプを介して空気分離チャンバ1013から空気を除去するように構成される。
【0087】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、空気検出手段1012および空気分離チャンバ1013は、第2の界面媒体循環ループ1016内に配設されるが、これに限定されるものではない。
【0088】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、空気分離チャンバ1013は、第1および第2の界面媒体循環ループの両方の廃棄流体を定量吐出して、新しい界面媒体を充填し、第2のチャンバ105および第4のチャンバ109のプライミングを実施することを可能にするように構成され得る。
【0089】
好ましくは、空気検出手段1012は、空気分離チャンバ1013内に配設または一体化される。
【0090】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、循環手段111はさらに、第3の流体の循環ループと流体接続され、かつ所望通りに新しい第3の流体を供給するように構成された容器1014を備える。
【0091】
第3の流体の循環ループにおける流体バランス制御性に起因して、限外濾過は、好ましくは第1の界面媒体循環ループ1015に接続しているバランシングデバイスのデッドタイム中に限外濾過手段を用いて簡単に行うことができる。限外濾過手段からの流体は、直接ドレインバッグへと処分され得る。
【0092】
図10は、本発明の例示的な実施形態によるさらなる透析システム10000を示す。
【0093】
図9を
図10と比較することによって、
図10に示す透析システム10000が、主に、異なるバランシングデバイスを使用する点で
図9に示す透析システム1000とは異なることが分かる。具体的には、バランシングデバイスはデュアルバランシングチャンバ10001を有し、その各々が、第1バランシング区画および第2バランシング区画を備える。デュアルバランシングチャンバデバイスは、2つの循環ループの定量吐出および充填を並行して実施することができ、したがって、血流量が高い場合に最適な透析効率を達成するように循環流量を増加させることができる。
【0094】
デュアルバランシングチャンバの動作原理およびプロセスも周知のものであり、したがって本明細書では詳細に説明しない。
【0095】
上記から分かるように、本発明は、実際には、透析システムを確立するための方法も提供する。
【0096】
さらに、本発明は、透析システムを充填および/またはプライミングするための方法をさらに提供する。
【0097】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、透析システムを充填および/またはプライミングするための方法は、各サイクルにおいてバランシングチャンバの流体体積で第3の流体の循環ループ内に第3の流体を充填することと、1分ごとに予め設定されたサイクルにわたって循環ループ内の第3の流体を循環させることとを備える。
【0098】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、透析システムを充填および/またはプライミングするための方法は、循環ループ内の第3の流体を新しくするために必要に応じて充填および循環を繰り返すことをさらに備える。
【0099】
加えて、本発明はさらに、透析システムから空気を除去するための方法を提供する。
【0100】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、透析システムから空気を除去するための方法はさらに、空気が検出された後、現在のサイクルの完了時にバランシングデバイスをオフにすることと、空気が検出されなくなるまで空気分離チャンバ内に新しい第3の流体を充填することとを備える。
【0101】
本発明によれば、透析デバイスおよび透析システムは、粘性のある生物学的透析流体を使用するのに好適であり、患者と生物学的透析流体との間の直接的な流れを防止し、これにより、異常が検出された場合に、より安全な隔離が可能となる。
【0102】
特定の実施形態が説明されてきたが、これらの実施形態は例として提示されているだけであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物は、本発明の趣旨および範囲内に入る修正、置換、および変更をすべて網羅することを意図している。
以下に、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
少なくとも第1の膜および第2の膜を備える透析デバイスであって、
前記第1の膜によって形成された第1のチャンバが、第1の流体を受容するように構成され、
前記第2の膜によって形成された第2のチャンバが、第2の流体を受容するように構成され、
ハウジング、前記第1の膜、および前記第2の膜間に形成された第3のチャンバが、第3の流体を受容するように構成され、
前記第1の膜を通過して流れる前記第1の流体は、前記第3の流体を介して、前記第2の膜を通過して流れる前記第2の流体と間接的に連通することができる、透析デバイス。
[C2]
前記第1の膜および/または前記第2の膜は、中空糸によって形成された膜、平膜、スパイラル膜、または円筒膜から選択される、
C1に記載の透析デバイス。
[C3]
前記第1の膜は、少なくとも第1のグループの中空糸を備え、
前記第2の膜は、少なくとも第2のグループの中空糸を備える、
C1に記載の透析デバイス。
[C4]
前記第1のグループの中空糸および前記第2のグループの中空糸の各々は、それぞれ別個の中空糸束として構成されているか、または、
前記第1のグループの中空糸の少なくとも一部分が、前記第2のグループの中空糸の少なくとも一部分によって囲まれており、
好ましくは、前記第1のグループの中空糸の少なくとも1つのサブグループが、前記第2のグループの中空糸の少なくとも1つのサブグループによって囲まれており、
好ましくは、前記第1のグループの中空糸の少なくとも1つのサブグループと、前記第2のグループの中空糸の少なくとも1つのサブグループとが交互に配置され、
好ましくは、前記第1のグループの中空糸の少なくとも1つの行のサブグループと、前記第2のグループの中空糸の少なくとも1つの行のサブグループとが交互に配置され、および/または、
好ましくは、前記第1のグループの中空糸の少なくとも1つの列のサブグループと、前記第2のグループの中空糸の少なくとも1つの列のサブグループとが交互に配置される、
C3に記載の透析デバイス。
[C5]
前記第1のグループの中空糸の数、材料、構造、および製造プロセスは、前記第2のグループの中空糸の数、材料、構造、および製造プロセスと同じであっても異なってもよい、
C3または4に記載の透析デバイス。
[C6]
前記第1の流体は、患者または動物の処理される血液であり、
前記第2の流体は生物学的透析流体であり、および/または、
前記第3の流体は、電解質溶液であり、好ましくは、界面媒体として作用する生理食塩水である、
C1~5のいずれか一項に記載の透析デバイス。
[C7]
前記透析デバイスは、
前記第1のチャンバと連通するように構成された少なくとも第1の対のポート、
前記第2のチャンバと連通するように構成された少なくとも第2の対のポート、および/または、
前記第3のチャンバと連通するように構成された少なくとも第3の対のポート、
をさらに備える、C1~6のいずれか一項に記載の透析デバイス。
[C8]
前記第1のグループの中空糸を流れる前記第1の流体の方向は、前記第2のグループの中空糸を流れる前記第2の流体の方向と反対であり、および/または、
前記第3の流体は、前記第3のチャンバ内に完全に充填され、好ましくは循環ループ内を流れる、
C1~7のいずれか一項に記載の透析デバイス。
[C9]
C1~8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの透析デバイスの使用。
[C10]
C1~8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの透析デバイスを備える、透析システム。
[C11]
前記透析システムは、
前記第3の流体への漏血を検出するように構成された少なくとも1つの検出器、
前記第3のチャンバを通る前記第3の流体の循環流を生成するように構成された駆動デバイス、好ましくはポンプ、および/または、
前記第2のチャンバを通過した後に新しい第2の流体を再生するように構成された流体再生デバイス、
をさらに備える、C10に記載の透析システム。
[C12]
少なくとも第1の透析デバイスおよび第2の透析デバイスを備える透析システムであって、
第1の膜によって形成された第1のチャンバが、第1の流体を受容するように構成され、
第2のチャンバが、前記第1の透析デバイスの第1のハウジングと前記第1の膜との間に形成され、
第2の膜によって形成された第3のチャンバが、第2の流体を受容するように構成され、
第4のチャンバが、前記第2の透析デバイスの第2のハウジングと前記第2の膜との間に形成され、
前記第2のチャンバおよび前記第4のチャンバは、第3の流体を受容するように構成され、前記第1の膜を通過して流れる前記第1の流体は、前記第3の流体を介して、前記第2の膜を通過して流れる前記第2の流体と間接的に連通することができる、透析システム。
[C13]
前記透析システムは、
前記第3の流体を循環させるために前記第2のチャンバを前記第4のチャンバと流体接続するように構成された循環手段、および/または、
前記第2のチャンバと前記第4のチャンバとの間に前記第3の流体の循環流を生成するように構成された駆動デバイス、好ましくはポンプ、
をさらに備える、C12に記載の透析システム。
[C14]
前記循環手段は、
前記第3の流体への漏血を検出するように構成された少なくとも1つの検出器、好ましくは、少なくとも2つの検出器をさらに備え、
前記少なくとも2つの検出器のうちの一方が、前記第2のチャンバから出力された前記第3の流体への漏血を検出するように構成され、他方が、前記第4のチャンバから出力された前記第3の流体への漏血を検出するように構成される、
C13に記載の透析システム。
[C15]
前記透析システムは、
前記第3のチャンバを通過した後に新しい第2の流体を再生するように構成された流体再生デバイス、および/または、
限外濾過量を制御するように構成された限外濾過手段、好ましくは限外濾過ポンプ、
をさらに備える、C12~14のいずれか一項に記載の透析システム。
[C16]
前記第1の透析デバイスは、前記第2の透析デバイスと同じであっても異なってもよく、
前記第1の流体は、患者または動物の処理される血液であり、
前記第2の流体は、生物学的透析流体であり、および/または、
前記第3の流体は、電解質溶液であり、好ましくは、界面媒体として作用する生理食塩水である、
C12~15のいずれか一項に記載の透析システム。
[C17]
前記循環手段は、少なくとも、
前記第3の流体の流れを閉鎖システム内に保つために前記第2のチャンバおよび前記第4のチャンバを流れる前記流体のバランスをとるように構成され、好ましくは、流体流れを患者側と透析液流体再生デバイス側とで交互に方向付けるように構成された、バランシングデバイスをさらに備え、
好ましくは、
前記バランシングデバイスは、第1のバランシング区画および第2のバランシング区画を備えるシングルバランシングチャンバを有するか、または、
前記バランシングデバイスは、各々が第1のバランシング区画および第2のバランシング区画を備えるデュアルバランシングチャンバを有する、
C13~16のいずれか一項に記載の透析システム。
[C18]
前記循環手段は、
空気分離チャンバ内の空気の存在を検出するように構成され、かつ好ましくは前記第3の流体の循環ループ内に流体接続された空気検出手段、ここにおいて、前記空気分離チャンバは、前記空気が検出された後に前記空気分離チャンバから前記空気を除去するように構成され、好ましくは、前記空気検出手段は、前記空気分離チャンバ内に配設または一体化され、および/または、
前記第3の流体の循環ループと流体接続され、新しい第3の流体を供給するように構成された容器、
をさらに備え、好ましくは、前記第3の流体は、オンラインで生成される、C13~17のいずれか一項に記載の透析システム。
[C19]
C12~18のいずれか一項に記載の透析システムを確立するための方法。
[C20]
C10~18のいずれか一項に記載の透析システムを充填および/またはプライミングするための方法。
[C21]
前記方法は、
バランスチャンバ流体体積で前記第3の流体の循環ループ内に前記第3の流体を充填することと、
1分ごとに予め設定されたサイクルにわたって前記循環ループ内の前記第3の流体を循環させることと、
好ましくは、前記循環ループ内の前記第3の流体を新しくするために、前記充填および前記循環を繰り返すことと、
をさらに備える、C20に記載の方法。
[C22]
C10~18のいずれか一項に記載の透析システムから空気を除去するための方法。
[C23]
前記方法は、
空気が検出された後、現在のサイクルの完了時に前記バランシングデバイスをオフにすることと、
空気が検出されなくなるまで、前記空気分離チャンバ内に新しい第3の流体を充填することと、
をさらに備える、C22に記載の方法。