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特許7305761尾筒、燃焼器、ガスタービン、及びガスタービン設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】尾筒、燃焼器、ガスタービン、及びガスタービン設備
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/42 20060101AFI20230703BHJP
   F02C 7/12 20060101ALI20230703BHJP
   F02C 7/24 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
F23R3/42 D
F02C7/12
F02C7/24 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021522640
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2020009303
(87)【国際公開番号】W WO2020240970
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2019097550
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】木下 泰希
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡介
(72)【発明者】
【氏名】宮内 宏太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢治
(72)【発明者】
【氏名】谷口 健太
(72)【発明者】
【氏名】水上 聡
(72)【発明者】
【氏名】脇田 祥成
(72)【発明者】
【氏名】赤松 真児
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-274774(JP,A)
【文献】特開2000-171038(JP,A)
【文献】特開2012-077660(JP,A)
【文献】特開2016-108964(JP,A)
【文献】特開2015-222022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/42
F02C 7/12
F02C 7/24
F01D 25/12
F01D 25/00
G10K 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに筒状を成し、内周側で燃料が燃焼する筒と、
前記筒を形成する板の一部と、前記板の一部と共同して前記筒の外周側に音響空間を形成する音響カバーと、を有する音響減衰器と、
前記筒を形成する前記板のうちで前記音響減衰器を形成する部分を除く他の一部と共同して、前記筒の外周側の空間である外側空間から隔離された冷却空気空間を形成し、前記外側空間内の空気より温度が低く且つ圧力が高い空気が供給される冷却空気ジャケットと、
を備え、
前記筒は、
前記軸線が延びる軸線方向における一方側である上流側の端に形成されている入口開口と、
前記軸線方向における他方側である下流側の端に形成されている出口開口と、
前記外周側を向く外周面と、
前記内周側を向く内周面と、
前記外周面と前記内周面との間に形成されている第一空気流路と、
前記外周面と前記内周面との間に形成されている第二空気流路と、
前記音響空間から前記筒の内周側の空間である燃焼空間に貫通する音響孔と、
を有し、
前記冷却空気ジャケットは、前記音響カバーよりも前記下流側に位置し、
前記第一空気流路は、前記冷却空気空間に臨み、前記冷却空気空間内の空気を前記第一空気流路内に導く入口と、前記音響空間に臨み、前記第一空気流路内を通ってきた空気を前記音響空間内に導く出口と、を有し、
前記第二空気流路は、前記外側空間に臨み、前記外側空間内の空気を前記第二空気流路内に導く入口と、前記音響空間に臨み、前記第二空気流路内を通ってきた空気を前記音響空間内に導く出口と、を有し、
前記第二空気流路の前記入口は、前記音響カバーよりも前記上流側に位置する、
尾筒。
【請求項2】
請求項1に記載の尾筒において、
前記筒の前記下流側の端であって前記筒の前記外周面から、前記外周側に広がる取付フランジを有し、
前記冷却空気ジャケットは、前記取付フランジに接している、
尾筒。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の尾筒において、
複数の前記音響カバーを有し、
前記第一空気流路の前記出口は、前記複数の音響カバーのうち、少なくとも一の音響カバーで形成される前記音響空間に臨んでいる、
尾筒。
【請求項4】
請求項3に記載の尾筒において、
前記第二空気流路の前記出口は、前記複数の音響カバーのうち、少なくとも一の音響カバーで形成される前記音響空間に臨み、前記第二空気流路内を通ってきた空気を前記音響空間内に導くことが可能である、
尾筒。
【請求項5】
請求項4に記載の尾筒において、
前記筒は、前記複数の音響カバー毎に、各音響カバーで形成される前記音響空間に連通する前記第一空気流路と前記第二空気流路とを有する、
尾筒。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の尾筒において、
前記筒は、前記外周面と前記内周面との間に形成されている第三空気流路を有し、
前記第三空気流路は、前記冷却空気空間に臨み、前記冷却空気空間内の空気を前記第三空気流路内に導く入口と、前記外側空間に臨み、前記第三空気流路内を通ってきた空気を前記外側空間に導く出口と、を有する、
尾筒。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の尾筒において、
前記第一空気流路内を通ってきた空気を前記音響空間内に導く出口の開口面積は、前記第二空気流路内を通ってきた空気を前記音響空間内に導く出口の開口面積より大きい、
尾筒。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の尾筒と、
前記燃焼空間に燃料及び空気を噴射するバーナと、
を備える燃焼器。
【請求項9】
請求項8に記載の燃焼器と、
圧縮機と、
タービンと、
中間ケーシングと、
を備え、
前記圧縮機は、ロータ軸線を中心として回転する圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータを覆う圧縮機ケーシングと、有し、
前記タービンは、前記ロータ軸線を中心として、前記圧縮機ロータと一体回転するタービンロータと、前記タービンロータを覆うタービンケーシングと、を有し、
前記中間ケーシングは、前記ロータ軸線が延びるロータ軸線方向で、前記圧縮機ケーシングと前記タービンケーシングとの間に配置され、前記圧縮機ケーシングと前記タービンケーシングとを接続し、前記圧縮機から吐出された圧縮空気が流入し、
前記燃焼器は、前記中間ケーシングに設けられている、
ガスタービン。
【請求項10】
請求項9に記載のガスタービンと、
前記中間ケーシング内の前記圧縮空気を前記中間ケーシング外に導いてから、前記冷却空気ジャケット内に導く冷却空気ラインと、
前記冷却空気ラインに設けられ、前記冷却空気ライン内を通る前記圧縮空気を冷却する冷却器と、
前記冷却空気ラインに設けられ、前記冷却器で冷却された前記圧縮空気を昇圧するブースト圧縮機と、
を備えるガスタービン設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内周側で燃料が燃焼する筒を有する尾筒、これを備える燃焼器、ガスタービン、ガスタービン設備に関する。
本願は、2019年5月24日に日本に出願された特願2019-097550号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、圧縮空気中で燃料を燃焼させる燃焼器と、燃料の燃焼で生成された燃焼ガスにより駆動するタービンと、中間ケーシングと、を備える。圧縮機は、圧縮機ロータと、この圧縮機ロータを覆う圧縮機ケーシングと、を有する。燃焼器は、内周側で燃料が燃焼する尾筒(又は燃焼筒)と、尾筒内に燃料を噴射するバーナと、を有する。タービンは、タービンロータと、このタービンロータを覆うタービンケーシングと、を有する。圧縮機ケーシングとタービンケーシングとは、中間ケーシングを介して接続されている。中間ケーシング内には、圧縮機から吐出された圧縮空気が流入する。燃焼器は、この中間ケーシングに設けられている。
【0003】
以下の特許文献1には、燃焼器の尾筒について開示されている。この尾筒は、内周側で燃料が燃焼する筒と、筒の外周側に音響空間を形成する音響減衰器と、筒の外周側に冷却空気空間を形成する冷却空気ジャケットと、を有する。音響減衰器は、筒の上流側の部分に設けられている。また、冷却空気ジャケットは、筒の下流側の部分に設けられている。中間ケーシング内の圧縮空気のほとんどは、燃焼器に流入する。また、中間ケーシング内の圧縮空気の一部は、中間ケーシング外に抽気される。抽気された圧縮空気は、ブースト圧縮機で昇圧された後、強制冷却空気として、冷却空気空間に流入する。筒の外周面と内周面との間には、冷却空気流路Aと、冷却空気流路Bとが形成されている。筒を形成する板中で、音響減衰器が設けられている部分には、筒の外周面から内周面に貫通する音響孔が形成されている。
【0004】
冷却空気流路Aは、筒の外周面中で冷却空気ジャケットが設けられている部分で開口している入口と、筒の外周面中で音響減衰器及び冷却空気ジャケットが設けられていない部分で開口している出口と、を有する。冷却空気流路Aには、冷却空気空間内の強制冷却空気が流入する。この強制冷却空気は、冷却空気流路Aを通過する過程で、燃焼ガスに晒される筒と熱交換して、筒を冷却する。この強制冷却空気は、筒との熱交換後に、冷却空気流路Aの出口から、中間ケーシング内に流出する。
【0005】
冷却空気流路Bは、筒の外周面中で音響減衰器及び冷却空気ジャケットが設けられていない部分で開口している入口と、筒の外周面中で音響減衰器が設けられている部分で開口している出口と、を有する。冷却空気流路Bには、筒の外周側の空間である中間ケーシング内に存在する圧縮空気が流入する。この圧縮空気は、冷却空気流路Bを通過する過程で、燃焼ガスに晒される筒と熱交換して、筒を冷却する。この圧縮空気は、音響空間内に流入した後、音響孔から筒の内周側の空間に流出する。音響空間内には、音響孔を介して、筒の内周側の空間で生成された高温の燃焼ガスが流入しないよう、この音響空間内から、音響孔を介して、圧縮空気を筒の内周側の空間に流出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-077660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
音響空間内から筒の内周側の空間に流出する空気の質量流量は、NOxの発生量を抑える観点から、少ない方が好ましい。また、音響空間内から筒の内周側の空間に流出する空気は、筒の内周側の空間で生成された燃焼ガスの温度を下げて、ガスタービンの効率を低下させるため、この空気の質量流量は少ない方が好ましい。
【0008】
そこで、本発明は、音響空間内から筒の内周側の空間に空気を流出させつつも、この空気の質量流量を抑えることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための発明に係る一態様の尾筒は、
軸線回りに筒状を成し、内周側で燃料が燃焼する筒と、前記筒を形成する板の一部と、前記板の一部と共同して前記筒の外周側に音響空間を形成する音響カバーと、を有する音響減衰器と、前記筒を形成する前記板のうちで前記音響減衰器を形成する部分を除く他の一部と共同して、前記筒の外周側の空間である外側空間から隔離された冷却空気空間を形成し、前記外側空間内の空気より温度が低く且つ圧力が高い空気が供給される冷却空気ジャケットと、を備える。前記筒は、前記軸線が延びる軸線方向における一方側である上流側の端に形成されている入口開口と、前記軸線方向における他方側である下流側の端に形成されている出口開口と、前記外周側を向く外周面と、前記内周側を向く内周面と、前記外周面と前記内周面との間に形成されている第一空気流路と、前記外周面と前記内周面との間に形成されている第二空気流路と、前記音響空間から前記筒の内周側の空間である燃焼空間に貫通する音響孔と、を有する。前記冷却空気ジャケットは、前記音響カバーよりも前記下流側に位置する。前記第一空気流路は、前記冷却空気空間に臨み、前記冷却空気空間内の空気を前記第一空気流路内に導く入口と、前記音響空間に臨み、前記第一空気流路内を通ってきた空気を前記音響空間内に導く出口と、を有する。前記第二空気流路は、前記外側空間に臨み、前記外側空間内の空気を前記第二空気流路内に導く入口と、前記音響空間に臨み、前記第二空気流路内を通ってきた空気を前記音響空間内に導く出口と、を有する。前記第二空気流路の前記入口は、前記音響カバーよりも前記上流側に位置する。
【0010】
本態様では、冷却空気空間内の空気が第一空気流路に流入し、この第一空気流路内を流れる。空気は、第一空気流路を流れる過程で、燃焼ガスに晒される筒との熱交換で加熱される一方で、筒を冷却する。第一空気流路内を通ってきた空気は、第一空気流路の出口から音響空間内に流入する。音響空間内に流入した空気は、音響孔から燃焼空間に流出する。このため、燃焼空間内の燃焼ガスは、音響空間内に流入しない。
【0011】
燃焼空間内の燃焼ガスが確実に音響空間内に流入しないようにするためには、音響空間内の圧力Psが燃焼空間内の圧力Pcよりも高く、両圧力差ΔP(=Ps-Pc>0)が一定の値以上である必要がある。
圧力差ΔPは、以下の式で示されるように、流体の密度ρに比例し、且つ流体の流速vの二乗に比例する。
ΔP∝ρ・v
上記式から理解できるように、圧力差ΔPを一定の値以上にする場合、流体の密度ρを大きくするよりも、流体の流速vを大きくする方が効果的である。また、流体の密度ρを小さくしつつ流体の体積を増加させて、流体の流速vを大きくすることで、音響空間から燃焼空間に流出させる流体の質量流量を抑えることができる。流体の密度ρを小さくしつつ流体の体積を増加させる方法としては、流体に対する加熱量を多くして、流体を膨張させる方法がある。
【0012】
ここで、以下の説明を分かり易くするために、本態様の比較例について説明する。比較例の筒は、本態様の第一空気流路を有せず、第二空気流路を有する。この第二空気流路は、筒の外周面と内周面との間に形成されている。この第二空気流路は、外側空間に臨み、外側空間内の空気を第二空気流路内に導く入口と、音響空間に臨み、第二空気流路内を通ってきた空気を音響空間内に導く出口と、を有する。外側空間内の空気は、第二空気流路の入口から第二空気流路内に流入し、この第二空気流路内を流れる。空気は、第二空気流路を流れる過程で、燃焼ガスに晒される筒との熱交換で加熱される一方で、筒を冷却する。第二空気流路内を通ってきた空気は、第二空気流路の出口から音響空間内に流入する。音響空間内に流入した空気は、音響孔から燃焼空間に流出する。
【0013】
比較例では、外側空間内の空気の圧力及び温度が一定である場合に、第二空気流路を流れる空気に対する加熱量を多くする方法として、例えば、第二空気流路の流路長を長くする方法がある。この方法では、以下のような不具合が生じる。
(1)第二空気流路での圧力損失が大きくなり、外側空間内の空気が音響空間に至らない、若しくは音響孔から燃焼空間に流出しない、可能性がある。
(2)空気が音響空間に至るまでに、この空気の温度が極めて高温になり、筒を冷却する能力がなくなる可能性がある。
【0014】
また、他の方法として、筒中で、燃焼ガスで加熱され易い領域に第二空気流路を形成する方法もある。この方法でも、上記(2)の不具合が生じる。
【0015】
本態様では、外側空間に対して隔離された冷却空気空間内の空気が第一空気流路を流れる。よって、本態様では、第一空気流路には、外側空間内の空気とは異なる圧力及び温度の空気を流すことができる。このため、本態様では、冷却空気空間に、外側空間内の空気よりも高圧で且つ低温の空気を供給することで、空気に対する加熱量を多くする方法として、第一空気流路の流路長を長くする方法、及び/又は、筒中で、燃焼ガスで加熱され易い領域に第一空気流路を形成する方法を採用しても、上記(1)(2)の不具合が生じない。
【0016】
従って、本態様では、音響空間内の圧力Psと燃焼空間Sc内の圧力Pcとの圧力差ΔP(=Ps-Pc)を一定の値以上にして、音響空間内から筒の内周側の燃焼空間に空気を流出させつつも、この空気の質量流量を抑えることができる。また、本態様では、筒中で第一空気流路を流れる空気で冷却できない、音響カバーより上流側の部分を、第二空気流路を流れる空気により冷却することができる。
【0018】
燃焼空間中で、燃料の燃焼で形成される火炎の先端部よりも下流側の温度は、火炎の先端部より上流側の温度よりも高い。よって、筒中で音響カバーより下流側の領域は、音響カバーより上流側の領域よりも燃焼ガスで加熱され易い領域である。このため、本態様では、筒中で加熱され易い音響カバーより下流側の領域に第一空気流路が形成されていることになり、この第一空気流路を流れる空気の加熱量を多くすることができる。
【0019】
前記態様の尾筒において、前記筒の前記下流側の端であって前記筒の前記外周面から、前記外周側に広がる取付フランジを有してもよい。この場合、前記冷却空気ジャケットは、前記取付フランジに接している。
【0022】
また、以上のいずれかの前記態様の尾筒において、複数の前記音響カバーを有してもよい。この場合、前記第一空気流路の出口は、前記複数の音響カバーのうち、少なくとも一の音響カバーで形成される前記音響空間に臨んでいる。
【0023】
複数の前記音響カバーを有する前記態様の尾筒において、前記第二空気流路の前記出口は、前記複数の音響カバーのうち、少なくとも一の音響カバーで形成される前記音響空間に臨み、前記第二空気流路内を通ってきた空気を前記音響空間内に導くことが可能である。
【0024】
本態様では、筒中で第一空気流路を流れる空気で冷却できない部分を、第二空気流路を流れる空気により冷却することができる。
【0025】
複数の前記音響カバーと前記第二空気流路とを有する前記態様の尾筒において、前記筒は、前記複数の音響カバー毎に、各音響カバーで形成される前記音響空間に連通する前記第一空気流路と前記第二空気流路とを有してもよい。
【0028】
以上のいずれかの前記態様の尾筒において、前記筒は、前記外周面と前記内周面との間に形成されている第三空気流路を有してもよい。この場合、前記第三空気流路は、前記冷却空気空間に臨み、前記冷却空気空間内の空気を前記第三空気流路内に導く入口と、前記外側空間に臨み、前記第三空気流路内を通ってきた空気を前記外側空間に導く出口と、を有する。
【0029】
本態様では、筒中で第一空気流路を流れる空気で冷却できない部分を、第三空気流路を流れる空気により冷却することができる。
【0030】
前記第二空気流路を有する前記態様の尾筒において、前記第一空気流路内を通ってきた空気を前記音響空間内に導く出口の開口面積は、前記第二空気流路内を通ってきた空気を前記音響空間内に導く出口の開口面積よりも大きくしてもよい。
本態様では、第一空気流路内を通ってきた空気が音響空間に流入する際に、その流速を低下させることができるため、音響空間内の静圧低下を抑えて、音響空間内への燃焼ガスの流入を抑えることができる。
【0031】
上記目的を達成するための発明に係る一態様の燃焼器は、
以上のいずれかの前記態様の尾筒と、前記燃焼空間に燃料及び空気を噴射するバーナと、を備える。
【0032】
上記目的を達成するための発明に係る一態様のガスタービンは、
前記燃焼器と、圧縮機と、タービンと、中間ケーシングと、を備える。前記圧縮機は、ロータ軸線を中心として回転する圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータを覆う圧縮機ケーシングと、有する。前記タービンは、前記ロータ軸線を中心として、前記圧縮機ロータと一体回転するタービンロータと、前記タービンロータを覆うタービンケーシングと、を有する。前記中間ケーシングは、前記ロータ軸線が延びるロータ軸線方向で、前記圧縮機ケーシングと前記タービンケーシングとの間に配置され、前記圧縮機ケーシングと前記タービンケーシングとを接続し、前記圧縮機から吐出された圧縮空気が流入する。前記燃焼器は、前記中間ケーシングに設けられている。
【0033】
上記目的を達成するための発明に係る一態様のガスタービン設備は、
前記態様のガスタービンと、前記中間ケーシング内の前記圧縮空気を前記中間ケーシング外に導いてから、前記冷却空気ジャケット内に導く冷却空気ラインと、前記冷却空気ラインに設けられ、前記冷却空気ライン内を通る前記圧縮空気を冷却する冷却器と、前記冷却空気ラインに設けられ、前記冷却器で冷却された前記圧縮空気を昇圧するブースト圧縮機と、を備える。
【発明の効果】
【0034】
本発明の一態様によれば、音響減衰器の音響空間内から筒の内周側の空間に空気を流出させつつも、この空気の質量流量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明に係る第一実施形態におけるガスタービン設備の構成を示す概念図である。
図2】本発明に係る第一実施形態におけるガスタービン設備の要部断面図である。
図3】本発明に係る第一実施形態における尾筒の要部断面図である。
図4図3におけるIV矢視図である。
図5図3におけるV-V線断面図である。
図6】本発明に係る第二実施形態における尾筒の要部断面図である。
図7図6におけるVII矢視図である。
図8】本発明に係る第三実施形態における尾筒の要部断面図である。
図9図8におけるIX矢視図である。
図10】本発明に係る第四実施形態における尾筒の要部断面図である。
図11図10におけるXI矢視図である。
図12】本発明に係る第五実施形態における図6に相当する断面図である。
図13】本発明に係る第五実施形態における図7に相当する矢視図である。
図14】本発明に係る第五実施形態の変形例における図13に相当する矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係るガスタービン設備の各種実施形態及びその変形例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0037】
「第一実施形態」
以下、本発明に係るガスタービン設備の第一実施形態について、図1図5を参照して説明する。
【0038】
本実施形態のガスタービン設備は、図1に示すように、ガスタービン10と、このガスタービン10の構成部品の一部を冷却する冷却装置70と、を備える。
【0039】
ガスタービン10は、空気Aを圧縮する圧縮機20と、圧縮機20で圧縮された空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスGを生成する複数の燃焼器40と、燃焼ガスGにより駆動するタービン30と、を備えている。
【0040】
圧縮機20は、ロータ軸線Lrを中心として回転する圧縮機ロータ21と、圧縮機ロータ21を回転可能に覆う圧縮機ケーシング25と、複数の静翼列26と、を有する。なお、以下では、ロータ軸線Lrが延びる方向をロータ軸線方向Da、このロータ軸線方向Daの一方側を軸線上流側Dau、他方側を軸線下流側Dadとする。また、このロータ軸線Lrを中心とした周方向を単に周方向Dcとし、ロータ軸線Lrに対して垂直な方向を径方向Drとする。さらに、径方向Drでロータ軸線Lrに近づく側を径方向内側Driとし、その反対側を径方向外側Droとする。
【0041】
圧縮機ロータ21は、ロータ軸線Lrに沿ってロータ軸線方向Daに延びるロータ軸22と、このロータ軸22に取り付けられている複数の動翼列23と、を有する。複数の動翼列23は、ロータ軸線方向Daに並んでいる。各動翼列23は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列23のそれぞれの軸線下流側Dadには、複数の静翼列26のうちのいずれかの静翼列26が配置されている。各静翼列26は、圧縮機ケーシング25の内側に設けられている。各静翼列26は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。ロータ軸22の径方向外側Droと圧縮機ケーシング25の径方向内側Driとの間であって、ロータ軸線方向Daで静翼及び動翼が配置されている領域の環状の空間は、空気が流れつつ圧縮される空気圧縮流路を成す。
【0042】
タービン30は、圧縮機20の軸線下流側Dadに配置されている。このタービン30は、ロータ軸線Lrを中心として回転するタービンロータ31と、タービンロータ31を回転可能に覆うタービンケーシング35と、複数の静翼列36と、を有する。タービンロータ31は、ロータ軸線Lrに沿ってロータ軸線方向Daに延びるロータ軸32と、このロータ軸32に取り付けられている複数の動翼列33と、を有する。複数の動翼列33は、ロータ軸線方向Daに並んでいる。各動翼列33は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列33のそれぞれの軸線上流側Dauには、複数の静翼列36のうちのいずれかの静翼列36が配置されている。各静翼列36は、タービンケーシング35の内側に設けられている。各静翼列36は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。ロータ軸32の径方向外側Droとタービンケーシング35の径方向内側Driとの間であって、ロータ軸線方向Daで静翼及び動翼が配置されている領域の環状の空間は、燃焼器40からの燃焼ガスGが流れる燃焼ガス流路を成す。
【0043】
圧縮機ロータ21とタービンロータ31とは、同一ロータ軸線Lr上に位置し、互いに接続されてガスタービンロータ11を成す。このガスタービンロータ11には、例えば、発電機GENのロータが接続されている。ガスタービン10は、さらに、ロータ軸線Lrを中心として筒状の中間ケーシング16を備える。中間ケーシング16は、ロータ軸線方向Daで、圧縮機ケーシング25とタービンケーシング35との間に配置されている。圧縮機ケーシング25とタービンケーシング35とは、この中間ケーシング16を介して接続されている。圧縮機ケーシング25と中間ケーシング16とタービンケーシング35とは、互い接続されてガスタービンケーシング15を成す。中間ケーシング16内には、圧縮機20からの圧縮空気Acomが流入する。複数の燃焼器40は、この中間ケーシング16に設けられている。
【0044】
冷却装置70は、冷却空気ライン71と、冷却器75と、ブースト圧縮機76と、を有する。冷却空気ライン71は、中間ケーシング16内の圧縮空気Acomをこの中間ケーシング16内から抽気して、この圧縮空気Acomを燃焼器40に導く。冷却空気ライン71は、抽気ライン72と、冷却空気メインライン73と、複数の冷却空気分岐ライン74と、を有する。抽気ライン72は、中間ケーシング16に接続され、中間ケーシング16内の圧縮空気Acomをブースト圧縮機76に導く。冷却空気メインライン73は、ブースト圧縮機76の吐出口に接続されている。この冷却空気メインライン73には、ブースト圧縮機76で昇圧された空気である強制冷却空気Aclが流れる。冷却空気分岐ライン74は、冷却空気メインライン73から複数の燃焼器40毎に分岐したラインである。複数の冷却空気分岐ライン74のそれぞれは、いずれか一の燃焼器40に強制冷却空気Aclを導く。冷却器75及びブースト圧縮機76は、冷却空気ライン71中の抽気ライン72に設けられている。冷却器75は、抽気ライン72を流れる圧縮空気Acomを冷却する。ブースト圧縮機76は、冷却器75で冷却された圧縮空気Acomを昇圧して、この圧縮空気Acomを強制冷却空気Aclとして燃焼器40に送る。
【0045】
燃焼器40は、図2に示すように、高温高圧の燃焼ガスGをタービン30の燃焼ガス流路内に送る尾筒(又は燃焼筒)50と、この尾筒50内に圧縮空気Acomと共に燃料Fを噴射する燃料噴射器41と、を有する。燃料噴射器41は、尾筒50内に燃料Fを噴射する複数のバーナ42と、複数のバーナ42を支持する枠43を有する。各バーナ42には、燃料ライン45が接続されている。燃料ライン45には、複数のバーナ42へ供給する燃料Fの流量を調節する燃料流量調節弁46が設けられている。燃焼器40の尾筒50は、中間ケーシング16内に配置されている。
【0046】
尾筒50は、燃焼器軸線Lcom回りに筒状を成す筒51と、筒51の外周側に音響空間Ssを形成する音響減衰器61と、筒51の外周側に冷却空気空間Saを形成する冷却空気ジャケット65と、取付フランジ66と、を有する。なお、以下では、燃焼器軸線Lcomが延びる方向を燃焼器軸線方向Dcom(以下、単に軸線方向Dcomとする)とする。また、この軸線方向Dcomの一方側を燃焼器上流側Dcu(以下、単に上流側Dcuとする)とし、この軸線方向Dcomの他方側を燃焼器下流側Dcd(以下、単に下流側Dcdとする)とする。
【0047】
筒51は、上流側Dcuの端に形成されている入口開口54iと、下流側Dcdの端に形成されている出口開口54oと、外周側を向く外周面55oと、内周側を向く内周面55iと、を有する。この筒51の内周側の空間は、燃料Fが燃焼して、これによって生成された燃焼ガスGが流れる燃焼空間Scである。取付フランジ66は、筒51の下流側Dcdの端で且つ筒51の外周面55oから外周側に広がっている。この取付フランジ66は、筒51をタービンケーシング35に取り付けるためのフランジである。
【0048】
音響減衰器61は、筒51を形成する板の一部と、この筒51の一部と共同して、筒51の外周側に音響空間Ssを形成する音響カバー62と、を有する。この音響カバー62は、筒51の上流側Dcuの部分に設けられている。音響カバー62は、燃焼器軸線Lcomに対する周方向に延びている。
【0049】
冷却空気ジャケット65は、筒51を形成する板のうちで音響減衰器61を形成する部分を除く他の一部及び取付フランジ66と共同して、筒51の外周側に冷却空気空間Saを形成する。このため、冷却空気ジャケット65の縁の一部が取付フランジ66に接し、冷却空気ジャケット65の縁の残りが筒51に接している。この冷却空気空間Saは、筒51の外周側の空間である外側空間Soから隔離されている。なお、外側空間Soとは、筒51の外周側の空間で且つ中間ケーシング16内の空間であって、音響空間Ss及び冷却空気空間Saを除く空間のことである。この外側空間Soには、ガスタービン10の運転中、圧縮機20から吐出された圧縮空気Acomが存在する。また、冷却空気空間Saが外側空間Soから隔離されているとは、外側空間So中の圧縮空気Acomが冷却空気空間Sa内に直接流入しない構成になっていることである。前述したように、冷却空気ジャケット65は、筒51の下流側Dcdの端に設けられている取付フランジ66に接している関係で、音響カバー62よりも下流側Dcdに位置している。この冷却空気ジャケット65には、前述した冷却装置70の冷却空気分岐ライン74が接続されている。よって、冷却空気空間Saには、冷却装置70からの強制冷却空気Aclが流入する。
【0050】
筒51は、図3及び図4に示すように、複数の音響孔59と、複数の第一空気流路56と、複数の第三空気流路58と、を有する。なお、図3は、燃焼器軸線Lcomを含む仮想面での尾筒50の要部断面図であり、図4は、図3におけるIV矢視図である。
【0051】
音響孔59は、筒51を形成する板を音響空間Ssから燃焼空間Scに貫通している。よって、この音響孔59は、音響カバー62で覆われている筒51の部分で、筒51の外周面55oから内周面55iに貫通した孔である。
【0052】
第一空気流路56及び第三空気流路58は、いずれも、筒51の外周面55oと内周面55iとの間に形成されている。第一空気流路56は、冷却空気空間Saに臨み、冷却空気空間Sa内の空気を第一空気流路56内に導く入口56iと、音響空間Ssに臨み、第一空気流路56内を通ってきた空気を音響空間Ss内に導く出口56oと、を有する。よって、第一空気流路56の入口56iは、筒51の外周面55oであって冷却空気ジャケット65で覆われている部分に形成されている。また、第一空気流路56の出口56oは、筒51の外周面55oであって音響カバー62で覆われている部分に形成されている。第三空気流路58は、冷却空気空間Saに臨み、冷却空気空間Sa内の空気を第三空気流路58内に導く入口58iと、外側空間Soに臨み、第三空気流路58内を通ってきた空気を外側空間Soに導く出口58oと、を有する。よって、第三空気流路58の入口58iは、筒51の外周面55oであって冷却空気ジャケット65で覆われている部分に形成されている。また、第三空気流路58の出口58oは、筒51の外周面55oであって音響カバー62及び冷却空気ジャケット65で覆われていない部分に形成されている。複数の第三空気流路58のうち、一部の第三空気流路58の出口58oは、筒51の外周面55oであって音響カバー62で覆われている部分よりも上流側Dcuの部分に形成されている。
【0053】
筒51を形成する板は、図5に示すように、外周壁板52oと内周壁板52iとがろう付け等で接合されて形成されている。外周壁板52oと内周壁板52iとのうち、一方の壁板には、他方側から離れる方向に凹み、軸線方向Dcomに長い複数の溝53が形成されている。この溝53の内面と他方の壁板の面との間は、空気が流れる空気流路56(58)を成している。なお、本実施形態では、外周壁板52oに溝53が形成されている。
【0054】
次に、以上で説明したガスタービン10の動作について説明する。
【0055】
圧縮機20は、外気Aを吸込んで、これが空気圧縮流路を通る過程でこの空気を圧縮する。圧縮された空気、つまり圧縮空気Acomは、圧縮機20の空気圧縮流路から中間ケーシング16内に流入する。この圧縮空気Acomは、燃焼器40の燃料噴射器41を介して、尾筒50の筒51内に供給される。燃料噴射器41の複数のバーナ42からは、尾筒50の筒51内に燃料Fが噴射される。この燃料Fは、筒51の燃焼空間Scに供給された圧縮空気Acom中で燃焼する。この燃焼の結果、燃焼ガスGが生成され、この燃焼ガスGが尾筒50からタービン30の燃焼ガス流路内に流入する。この燃焼ガスGが燃焼ガス流路を通ることで、タービンロータ31が回転する。
【0056】
燃料Fが燃焼空間Sc内で燃焼している間、冷却装置70のブースト圧縮機76は、駆動している。このため、外側空間So内の圧縮空気Acom、言い換えると、中間ケーシング16内の圧縮空気Acomの一部は、中間ケーシング16内から抽気されて、冷却装置70の冷却器75に流入し、ここで冷却される。冷却器75で冷却された圧縮空気Acomは、ブースト圧縮機76で昇圧されてから、強制冷却空気Aclとして、尾筒50の冷却空気空間Sa内に流入する。この強制冷却空気Aclは、中間ケーシング16内の圧縮空気Acomを冷却した後、昇圧した空気であるため、中間ケーシング16内の圧縮空気Acomよりも、温度が低く且つ圧力が高い。
【0057】
冷却空気空間Sa内の強制冷却空気Aclは、筒51の第一空気流路56及び第三空気流路58に流入し、これらの空気流路56,58内を流れる。強制冷却空気Aclは、空気流路56,58を流れる過程で、高温の燃焼ガスGに晒されている筒51との熱交換で、加熱される一方で、筒51を冷却する。
【0058】
第三空気流路58内を通ってきた強制冷却空気Aclは、第三空気流路58の出口58oから外側空間Soに流出し、外側空間So中に存在する圧縮空気Acomに混ざる。また、第一空気流路56内を通ってきた強制冷却空気Aclは、第一空気流路56の出口56oから音響空間Ss内に流入する。音響空間Ss内に流入した強制冷却空気Aclは、音響孔59から燃焼空間Scに流出する。このため、燃焼空間Sc内の燃焼ガスGは、音響空間Ss内に流入しない。
【0059】
燃焼空間Sc内の燃焼ガスGが確実に音響空間Ss内に流入しないようにするためには、音響空間Ss内の圧力Psが燃焼空間Sc内の圧力Pcよりも高く、両圧力差ΔP(=Ps-Pc>0)が一定の値以上である必要がある。
【0060】
圧力差ΔPは、以下の式で示されるように、流体の密度ρに比例し、且つ流体の流速vの二乗に比例する。
ΔP∝ρ・v
【0061】
上記式から理解できるように、圧力差ΔPを一定の値以上にする場合、流体の密度ρを大きくするよりも、流体の流速vを大きくする方が効果的である。また、流体の密度ρを小さくしつつ流体の体積を増加させて、流体の流速vを大きくすることで、音響空間Ssから燃焼空間Scに流出させる流体の質量流量を抑えることができる。流体の密度ρを小さくしつつ流体の体積を増加させる方法としては、流体に対する加熱量を多くして、流体を膨張させる方法がある。
【0062】
ここで、以下の説明を分かり易くするために、本態様の比較例について説明する。比較例の筒は、第一空気流路56を有せず、図3中の想像線(二点鎖線)で示す第二空気流路57を有する。この第二空気流路57は、筒51の外周面55oと内周面55iとの間に形成されている。この第二空気流路57は、外側空間Soに臨み、外側空間So内の空気を第二空気流路57内に導く入口57iと、音響空間Ssに臨み、第二空気流路57内を通ってきた空気を音響空間Ss内に導く出口57oと、を有する。第二空気流路57の入口57iは、音響カバー62よりも上流側Dcuに位置している。外側空間So内の空気は、第二空気流路57の入口57iから第二空気流路57内に流入し、この第二空気流路57内を流れる。空気は、第二空気流路57を流れる過程で、燃焼ガスGに晒される筒51との熱交換で加熱される一方で、筒51を冷却する。第二空気流路57内を通ってきた空気は、第二空気流路57の出口57oから音響空間Ss内に流入する。音響空間Ss内に流入した空気は、音響孔59から燃焼空間Scに流出する。
【0063】
比較例では、外側空間So内の空気、つまり圧縮空気Acomの圧力及び温度が一定である場合に、第二空気流路57を流れる空気に対する加熱量を多くする方法として、例えば、第二空気流路57の流路長を長くする方法がある。この方法では、以下のような不具合が生じる。
(1)第二空気流路57での圧力損失が大きくなり、外側空間So内の空気が音響空間Ssに至らない、若しくは音響孔59から燃焼空間Scに流出しない、可能性がある。
(2)空気が音響空間Ssに至るまでに、この空気の温度が極めて高温になり、筒51を冷却する能力がなくなる可能性がある。
【0064】
また、他の方法として、筒51中で、燃焼ガスGで加熱され易い領域に第二空気流路57を形成する方法もある。この方法でも、上記(2)の不具合が生じる。
【0065】
本実施形態では、外側空間Soに対して隔離された冷却空気空間Sa内の強制冷却空気Aclが第一空気流路56を流れる。よって、本実施形態では、第一空気流路56には、外側空間So内の圧縮空気Acomとは異なる圧力及び温度の空気を流すことができる。そこで、本実施形態では、外側空間So内の圧縮空気Acomよりも高圧で且つ低温の強制冷却空気Aclを第一空気流路56に流す。このため、本実施形態では、空気に対する加熱量を多くする方法として、第一空気流路56の流路長を長くする方法、及び/又は、筒51中で、燃焼ガスGで加熱され易い領域に第一空気流路56を形成する方法を採用しても、上記(1)(2)の不具合が生じない。
【0066】
従って、本実施形態では、音響空間Ss内の圧力Psと燃焼空間Sc内の圧力Pcとの圧力差ΔP(=Ps-Pc)を一定の値以上にして、音響空間Ss内から筒51の内周側の燃焼空間Scに空気を流出させつつも、この空気の質量流量を抑えることができる。
【0067】
以上のように、本実施形態では、音響空間Ss内から筒51の内周側の燃焼空間Scに流出する空気の質量流量を抑えることができるので、NOxの発生量を抑えることができる。さらに、本実施形態では、燃焼空間Scに流出する空気による燃焼ガスGの希釈量が少なくなるので、タービン30に送られるガスの温度低下を抑えることができて、ガスタービン10の効率低下を抑えることができる。
【0068】
ところで、本実施形態では、空気に対する加熱量を多くする方法として、第一空気流路56の流路長を長くする方法、及び、筒51中で、燃焼ガスGで加熱され易い領域に第一空気流路56を形成する方法を採用している。具体的に、本実施形態では、筒51の下流側Dcdの部分に冷却空気ジャケット65を設け、この冷却空気ジャケット65内の冷却空気空間Saと筒51の上流側Dcuの部分に配置されている音響減衰器61内の音響空間Ssとを第一空気流路56で連通させることで、この第一空気流路56の流路長を長くしている。筒51の燃焼空間Sc中で、燃料Fの燃焼で形成される火炎の先端部よりも下流側Dcdの温度は、火炎の先端部より上流側Dcuの温度よりも高い。よって、筒51中で下流側Dcdの領域は、上流側Dcuの領域よりも燃焼ガスGで加熱され易い領域である。そこで、本実施形態では、筒51中で加熱され易い下流側Dcdの領域に第一空気流路56を形成している。
【0069】
なお、本実施形態では、以上のように、空気に対する加熱量を多くする方法として、第一空気流路56の流路長を長くする方法と、筒51中で、燃焼ガスGで加熱され易い領域に第一空気流路56を形成する方法との両方を採用している。しかしながら、以上の二つの方法のうち、一方のみを採用してもよい。
【0070】
「第二実施形態」
以下、本発明に係るガスタービン設備の第二実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。なお、本実施形態のガスタービン設備は、燃焼器の尾筒の構成のみが第一実施形態のガスタービン設備と異なる。よって、以下では、本実施形態の尾筒50aの構成について主として説明する。
【0071】
本実施形態の尾筒50aは、第一実施形態と同様、筒51aと、音響減衰器61と、冷却空気ジャケット65と、取付フランジ66と、を有する。筒51aは、第一実施形態の筒51と同様、入口開口54iと、出口開口54oと、外周面55oと、内周面55iと、複数の第一空気流路56と、複数の第三空気流路58と、を有する。本実施形態の筒51aは、さらに、複数の第二空気流路57を有する。第二空気流路57は、筒51aの外周面55oと内周面55iとの間に形成されている。この第二空気流路57は、外側空間Soに臨み、外側空間So内の圧縮空気Acomを第二空気流路57内に導く入口57iと、音響空間Ssに臨み、第二空気流路57内を通ってきた圧縮空気Acomを音響空間Ss内に導く出口57oと、を有する。第二空気流路57の入口57iは、音響カバー62よりも上流側Dcuに位置している。なお、本実施形態の筒51aは、第三空気流路58を有しているが、この第三空気流路58を有していなくてもよい。
【0072】
本実施形態においても、第一実施形態と同様、冷却空気空間Sa内の強制冷却空気Aclは、筒51aの第一空気流路56及び第三空気流路58に流入し、これらの空気流路56,58内を流れる。強制冷却空気Aclは、空気流路56,58を流れる過程で、高温の燃焼ガスGに晒されている筒51aとの熱交換で、加熱される一方で、筒51aを冷却する。第三空気流路58内を通ってきた強制冷却空気Aclは、第三空気流路58の出口58oから外側空間Soに流出し、外側空間So中に存在する圧縮空気Acomに混ざる。また、第一空気流路56内を通ってきた強制冷却空気Aclは、第一空気流路56の出口56oから音響空間Ss内に流入する。
【0073】
外側空間So内の圧縮空気Acomは、第二空気流路57の入口57iから第二空気流路57内に流入し、この第二空気流路57内を流れる。圧縮空気Acomは、第二空気流路57を流れる過程で、燃焼ガスGに晒される筒51aとの熱交換で加熱される一方で、筒51aを冷却する。第二空気流路57内を通ってきた圧縮空気Acomは、第二空気流路57の出口57oから音響空間Ss内に流入する。
【0074】
よって、本実施形態では、音響空間Ss内には、第一空気流路56を流れてきた強制冷却空気Aclと、第二空気流路57を流れてきた圧縮空気Acomとが流入する。音響空間Ss内に流入した空気は、音響孔59を介して、燃焼空間Scに流出する。このように、本実施形態では、音響空間Ssから音響孔59を介して燃焼空間Scに流出する空気には、第一実施形態と同様、第一空気流路56を流れてきた強制冷却空気Aclが含まれるので、空気に対する加熱量の多い空気を燃焼空間Scに流出させることができる。従って、本実施形態でも、第一実施形態と同様、音響空間Ss内から燃焼空間Scに空気を流出させつつも、この空気の質量流量を抑えることができる。
【0075】
第一実施形態では、筒51中で音響カバー62よりも上流側Dcuの部分を、第三空気流路58を流れる空気で冷却する。第三空気流路58を流れる空気は、音響カバー62に至るまでの加熱量が大きい。一方、本実施形態では、筒51a中で音響カバー62よりも上流側Dcuの部分を、第二空気流路57を流れる空気で冷却する。筒51a中で音響カバー62よりも上流側Dcuの部分で、第二空気流路57を流れる空気の温度は、第三空気流路58を流れる空気の温度よりも低い。このため、本実施形態では、第一実施形態よりも、筒51a中で音響カバー62よりも上流側Dcuの部分の冷却能力を高めることができる。
【0076】
「第三実施形態」
以下、本発明に係るガスタービン設備の第三実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。なお、本実施形態のガスタービン設備は、燃焼器の尾筒の構成のみが第一実施形態のガスタービン設備と異なる。よって、以下では、本実施形態の尾筒50bの構成を主として説明する。
【0077】
本実施形態の尾筒50bは、第一実施形態と同様、筒51bと、音響減衰器61a,61bと、冷却空気ジャケット65と、取付フランジ66と、を有する。但し、本実施形態の尾筒50bは、複数の音響減衰器61a,61bを有する。筒51bは、第一実施形態の筒51と同様、入口開口54iと、出口開口54oと、外周面55oと、内周面55iと、複数の第一空気流路56と、複数の第三空気流路58と、を有する。本実施形態の第一空気流路56の出口56oは、複数の音響減衰器61a,61bのうち、第一音響減衰器61aの第一音響空間Ssaのみに臨んでおり、第二音響減衰器61bの第二音響空間Ssbに臨んでいない。よって、本実施形態では、冷却空気空間Sa内の強制冷却空気Aclは、第一空気流路56を介して、第一音響空間Ssaに流入するものの、第二音響空間Ssbには流入しない。本実施形態の筒51bは、さらに、複数の第二空気流路57を有する。第二空気流路57は、筒51bの外周面55oと内周面55iとの間に形成されている。この第二空気流路57は、外側空間Soに臨み、外側空間So内の空気を第二空気流路57内に導く入口57iと、第二音響空間Ssbのみに臨み、第二空気流路57内を通ってきた空気を第二音響空間Ssb内に導く出口57oと、を有する。よって、本実施形態では、外側空間So内の圧縮空気Acomは、第二空気流路57を介して、第二音響空間Ssbに流入するものの、第一音響空間Ssaには流入しない。第二空気流路57の入口57iは、複数の音響減衰器61a,61bがそれぞれ有する音響カバー62よりも上流側Dcuに位置している。なお、本実施形態の筒51bは、第三空気流路58を有しているが、この第三空気流路58を有していなくてもよい。
【0078】
本実施形態においても、第一実施形態と同様、冷却空気空間Sa内の強制冷却空気Aclは、筒51bの第一空気流路56及び第三空気流路58に流入し、これらの空気流路56,58内を流れる。強制冷却空気Aclは、空気流路56,58を流れる過程で、高温の燃焼ガスGに晒されている筒51bとの熱交換で、加熱される一方で、筒51bを冷却する。第三空気流路58内を通ってきた空気は、第三空気流路58の出口58oから外側空間Soに流出し、外側空間So中に存在する圧縮空気Acomに混ざる。また、第一空気流路56内を通ってきた強制冷却空気Aclは、第一空気流路56の出口56oから第一音響空間Ssa内に流入する。第一音響空間Ssa内に流入した空気は、第一音響減衰器61aの第一音響孔59aから燃焼空間Scに流出する。
【0079】
外側空間So内の圧縮空気Acomは、第二空気流路57の入口57iから第二空気流路57内に流入し、この第二空気流路57内を流れる。圧縮空気Acomは、第二空気流路57を流れる過程で、燃焼ガスGに晒される筒51bとの熱交換で加熱される一方で、筒51bを冷却する。第二空気流路57内を通ってきた圧縮空気Acomは、第二空気流路57の出口57oから第二音響空間Ssb内に流入する。第二音響空間Ssb内に流入した圧縮空気Acomは、第二音響減衰器61bの第二音響孔59bから燃焼空間Scに流出する。
【0080】
以上のように、本実施形態では、複数の音響空間Ssのうち、第一音響空間Ssa内には、第一空気流路56を流れてきた強制冷却空気Aclが流入する。第一音響空間Ssa内に流入した空気は、第一音響孔59aを介して、燃焼空間Scに流出する。このため、本実施形態では、全ての音響空間Ssa,Ssbに、第二空気流路57を流れてきた圧縮空気Acomのみを流入させる場合よりも、全ての音響空間Ssa,Ssbから燃焼空間Scに流出する空気の総質量流量を抑えることができる。
【0081】
また、本実施形態では、第二実施形態と同様、第二空気流路57を有しているので、第一実施形態よりも、筒51b中で音響カバー62よりも上流側Dcuの部分の冷却能力を高めることができる。
【0082】
「第四実施形態」
以下、本発明に係るガスタービン設備の第四実施形態について、図10及び図11を参照して説明する。なお、本実施形態のガスタービン設備は、第三実施形態の変形例で、燃焼器の尾筒の構成のみが第三実施形態のガスタービン設備と異なる。よって、以下では、本実施形態の尾筒50cの構成を主として説明する。
【0083】
本実施形態の尾筒50cは、第三実施形態と同様、筒51cと、複数の音響減衰器61a,61bと、冷却空気ジャケット65と、取付フランジ66と、を有する。筒51cは、第三実施形態の筒51bと同様、入口開口54iと、出口開口54oと、外周面55oと、内周面55iと、複数の第一空気流路56と、複数の第二空気流路57と、を有する。本実施形態では、複数の第一空気流路56のうち、一部の第一空気流路56の出口56oは、複数の音響減衰器61a,61bのうち、第一音響減衰器61aの第一音響空間Ssaのみに臨んでおり、第二音響減衰器61bの第二音響空間Ssbに臨んでいない。また、複数の第一空気流路56のうち、他の一部の第一空気流路56の出口56oは、複数の音響減衰器61a,61bのうち、第二音響減衰器61bの第二音響空間Ssbのみに臨んでおり、第一音響減衰器61aの第一音響空間Ssaに臨んでいない。よって、本実施形態では、複数の音響減衰器61a,61b毎の音響空間Ssa,Ssbには、冷却空気空間Sa内の強制冷却空気Aclが、複数の第一空気流路56のうちのいずれかを介して流入する。本実施形態では、複数の第二空気流路57のうち、一部の第二空気流路57の出口57oは、複数の音響減衰器61a,61bのうち、第一音響減衰器61aの第一音響空間Ssaのみに臨んでおり、第二音響減衰器61bの第二音響空間Ssbに臨んでいない。また、複数の第二空気流路57のうち、他の一部の第二空気流路57の出口57oは、複数の音響減衰器61a,61bのうち、第二音響減衰器61bの第二音響空間Ssbのみに臨んでおり、第一音響減衰器61aの第一音響空間Ssaに臨んでいない。よって、本実施形態では、複数の音響減衰器61a,61b毎の音響空間Ssa,Ssbには、外側空間So内の圧縮空気Acomが、複数の第二空気流路57のうちのいずれかを介して流入する。
【0084】
以上のように、本実施形態では、複数の音響減衰器61a,61b毎の音響空間Ssa,Ssb内には、第二実施形態と同様、第一空気流路56を流れてきた強制冷却空気Aclと、第二空気流路57を流れてきた圧縮空気Acomとが流入する。第一音響空間Ssa内に流入した空気は、第一音響孔59aを介して、燃焼空間Scに流出する。第二音響空間Ssb内に流入した空気は、第二音響孔59bを介して、燃焼空間Scに流出する。従って、本実施形態でも、第二実施形態と同様、音響空間Ssa,Ssb内から筒51cの内周側の燃焼空間Scに空気を流出させつつも、この空気の質量流量を抑えることができる。
【0085】
なお、本実施形態の筒51cは、以上の各実施形態における第三空気流路58を有していない。しかしながら、本実施形態の筒51cは、第三空気流路58を有してもよい。
【0086】
「第五実施形態」
以下、本発明に係るガスタービン設備の第五実施形態について、図12及び図13を参照して説明する。なお、本実施形態のガスタービン設備は、燃焼器の尾筒の構成のみが第二実施形態のガスタービン設備と異なる。よって、以下では、本実施形態の尾筒50dの構成を主として説明する。
【0087】
本実施形態の尾筒50dは、第二実施形態と同様、筒51aと、音響減衰器61と、冷却空気ジャケット65と、取付フランジ66と、を有する。筒51aは、第二実施形態の筒51aと同様、入口開口54iと、出口開口54oと、外周面55oと、内周面55iと、複数の第一空気流路56と、複数の第三空気流路58と、を有する。本実施形態の筒51aは、さらに、複数の第二空気流路57を有する。なお、本実施形態の筒51aは、第三空気流路58を有しているが、この第三空気流路58を有していなくてもよい。
【0088】
本実施形態においても、第二実施形態と同様、冷却空気空間Sa内の強制冷却空気Aclは、筒51aの第一空気流路56及び第三空気流路58に流入し、これらの空気流路56,58内を流れる。強制冷却空気Aclは、空気流路56,58を流れる過程で、高温の燃焼ガスGに晒されている筒51aとの熱交換で、加熱される一方で、筒51aを冷却する。第三空気流路58内を通ってきた強制冷却空気Aclは、第三空気流路58の出口58oから外側空間Soに流出し、外側空間So中に存在する圧縮空気Acomに混ざる。また、第一空気流路56内を通ってきた強制冷却空気Aclは、第一空気流路56の出口156oから音響空間Ss内に流入する。
【0089】
外側空間So内の圧縮空気Acomは、第二空気流路57の入口57iから第二空気流路57内に流入し、この第二空気流路57内を流れる。圧縮空気Acomは、第二空気流路57を流れる過程で、燃焼ガスGに晒される筒51aとの熱交換で加熱される一方で、筒51aを冷却する。第二空気流路57内を通ってきた圧縮空気Acomは、第二空気流路57の出口57oから音響空間Ss内に流入する。
【0090】
よって、本実施形態では、音響空間Ss内には、第一空気流路56を流れてきた強制冷却空気Aclと、第二空気流路57を流れてきた圧縮空気Acomとが出口156o及び出口57oからそれぞれ流入する。音響空間Ss内に流入した空気は、音響孔59を介して、燃焼空間Scに流出する。このように、本実施形態では、音響空間Ssから音響孔59を介して燃焼空間Scに流出する空気には、第一実施形態と同様、第一空気流路56を流れてきた強制冷却空気Aclが含まれるので、空気に対する加熱量の多い空気を燃焼空間Scに流出させることができる。従って、本実施形態でも、第二実施形態と同様、音響空間Ss内から燃焼空間Scに空気を流出させつつも、この空気の質量流量を抑えることができる。
【0091】
上述した第二実施形態では、出口56oの開口面積と出口57o開口面積とが同一の場合を例示したが、本実施形態では、第一空気流路56を通ってきた強制冷却空気Aclを音響空間Ss内に導く出口156oの開口面積が、第二空気流路57を通ってきた圧縮空気Acomを音響空間Ss内に導く出口57oの開口面積よりも大きい。このため、本実施形態では、第二実施形態の出口56oから音響空間Ss内へ流入する強制冷却空気Aclの流速よりも、出口156oから音響空間Ss内へ流入する強制冷却空気Aclの流速を低くすることができる。これにより、第二実施形態よりも、強制冷却空気Aclが流入することによる音響空間Ss内の静圧低下を抑えることができるため、音響孔59を介して燃焼空間Sc内の燃焼ガスGが音響空間Ssに流入することを抑えることができる。また、本実施形態では、第二空気流路57よりも質量流量の大きい第一空気流路56の開口156の開口面積を大きく形成しているため、効率よく音響空間Ss内の静圧低下を抑えることが可能となっている。
【0092】
「第五実施形態の変形例」
上述した第五実施形態では、筒51に出口57oよりも開口面積の大きい出口156oを形成する場合を例示した。言い換えれば、第五実施形態では、一つの第一空気流路56に対して一つの出口156oを設ける場合について説明した。しかし、図14に示すように、一つの第一空気流路56に対して音響空間Ss内に臨む複数(例えば、二つ)の出口256oを設けるようにしてもよい。これら一つの第一空気流路56に設けられた複数の出口256oの開口面積の合計は、一つの出口57oの開口面積よりも大きい。このような第五実施形態の変形例においても、上記第五実施形態と同様に、音響空間Ss内へ流入する強制冷却空気Aclの流速を低下させて、音響空間Ssへの燃焼ガスGの流入を抑えることができる。
なお、第三実施形態及び第四実施形態の出口56oの代わりに、第五実施形態の出口156o及び第五実施形態の変形例の出口256oを設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の一態様によれば、音響減衰器の音響空間内から筒の内周側の空間に空気を流出させつつも、この空気の質量流量を抑えることができる。
【符号の説明】
【0094】
10:ガスタービン
11:ガスタービンロータ
15:ガスタービンケーシング
16:中間ケーシング
20:圧縮機
21:圧縮機ロータ
22:ロータ軸
23:動翼列
25:圧縮機ケーシング
26:静翼列
30:タービン
31:タービンロータ
32:ロータ軸
33:動翼列
35:タービンケーシング
36:静翼列
40:燃焼器
41:燃料噴射器
42:バーナ
43:枠
45:燃料ライン
46:燃料流量調節弁
50,50a,50b,50c,50d:尾筒(又は燃焼筒)
51,51a,51b,51c:筒
52i:内周壁板
52o:外周壁板
53:溝
54i:入口開口
54o:出口開口
55i:内周面
55o:外周面
56:第一空気流路
56i:入口
56o,156o,256o:出口
57:第二空気流路
57i:入口
57o:出口
58:第三空気流路
58i:入口
58o:出口
59:音響孔
59a:第一音響孔
59b:第二音響孔
61:音響減衰器
61a:第一音響減衰器
61b:第二音響減衰器
62:音響カバー
65:冷却空気ジャケット
66:取付フランジ
70:冷却装置
71:冷却空気ライン
72:抽気ライン
73:冷却空気メインライン
74:冷却空気分岐ライン
75:冷却器
76:ブースト圧縮機
A:空気
Acom:圧縮空気
Acl:強制冷却空気
G:燃焼ガス
Lcom:燃焼器軸線(又は単に軸線)
Lr:ロータ軸線
Da:ロータ軸線方向
Dau:軸線上流側
Dad:軸線下流側
Dc:周方向
Dr:径方向
Dri:径方向内側
Dro:径方向外側
Dcom:燃焼器軸線方向(又は単に軸線方向)
Dcu:燃焼器上流側(又は単に上流側)
Dcd:燃焼器下流側(又は単に下流側)
Sc:燃焼空間
Ss:音響空間
Ssa:第一音響空間
Ssb:第二音響空間
Sa:冷却空気空間
So:外側空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14