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特許7305764試料を検査するための顕微鏡システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】試料を検査するための顕微鏡システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/26 20060101AFI20230703BHJP
   G02B 21/36 20060101ALN20230703BHJP
【FI】
G02B21/26
G02B21/36
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021525678
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2019080926
(87)【国際公開番号】W WO2020099353
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】102018128281.8
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ブラウン
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-141391(JP,A)
【文献】特開2005-091893(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0018013(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00 - 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡(102)と制御装置(104)とを含む、試料(118)を検査するための顕微鏡システム(100、200)であって、前記顕微鏡(102)は、移動可能な顕微鏡ステージ(116)を備えており、前記顕微鏡ステージ(116)上に検査すべき前記試料(118)をポジショニング可能であり、
前記制御装置(104)は、以下のように構成されている。すなわち、
第1のポジション信号を前記顕微鏡ステージ(116)に伝達し、前記第1のポジション信号に基づき、前記顕微鏡ステージ(116)は、第1のステージポジションまで移動可能であり、
前記顕微鏡ステージ(116)が前記第1のステージポジションまで移動させられると、第1の検査ステップにおいて、前記第1のステージポジションに割り当てられた前記試料(118)の第1の領域を検査するよう、前記顕微鏡(102)に指示し、
少なくとも1つの第2のポジション信号を前記顕微鏡ステージ(116)に伝達し、前記第2のポジション信号に基づき、前記顕微鏡ステージ(116)は第2のステージポジションまで移動可能であり、
前記顕微鏡ステージ(116)が前記第2のステージポジションまで移動させられると、時間的に前記第1の検査ステップに続く第2の検査ステップにおいて、前記第2のステージポジションに割り当てられた前記試料(118)の第2の領域を検査するよう、前記顕微鏡(102)に指示する、
顕微鏡システム(100、200)において、
前記制御装置(104)は、さらに、
前記顕微鏡ステージ(116)が前記第1のステージポジションまで移動させられる間に、前記第2のポジション信号を前記顕微鏡ステージ(116)に伝達し、
前記第1の検査ステップにおいて前記顕微鏡(102)により検出された検査結果に応じて、第3のポジション信号を生成し、前記顕微鏡ステージ(116)が前記第2のステージポジションまで移動させられる間に、前記第3のポジション信号を前記顕微鏡ステージ(116)に伝達し、
前記顕微鏡ステージ(116)が第3のステージポジションまで移動させられると、時間的に前記第2の検査ステップに続く第3の検査ステップにおいて、前記第3のステージポジションに割り当てられた前記試料(118)の第3の領域を検査するよう、前記顕微鏡(102)に指示する、
ように構成されている、
顕微鏡システム(100、200)。
【請求項2】
前記顕微鏡ステージ(116)は、前記顕微鏡(102)の対物レンズ(120)の光軸(O)に対し垂直な平面内で移動可能である、
請求項1記載の顕微鏡システム(100、200)。
【請求項3】
前記顕微鏡(102)は、検出器(122)を含み、前記検出器(122)は、前記第1の検査ステップおよび/または前記第2の検査ステップにおいて求められた検査結果を、前記制御装置(104)に送信するように構成されている、
請求項1または2記載の顕微鏡システム(100、200)。
【請求項4】
前記顕微鏡ステージ(116)は、ステージ駆動部(121)およびステージ制御ユニット(130)を有し、前記ステージ制御ユニット(130)は、前記制御装置(104)から伝達された個々のポジション信号を受信し、受信した前記ポジション信号に基づき前記顕微鏡ステージ(116)を移動させるために前記ステージ駆動部(121)を作動させるように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の顕微鏡システム(100)。
【請求項5】
前記顕微鏡ステージ(116)は、記憶装置(131)を有し、前記記憶装置(131)内に個々のポジション信号を記憶可能である、
請求項1から4までのいずれか1項記載の顕微鏡システム(100、200)。
【請求項6】
前記顕微鏡(102)は、落射型顕微鏡または透過型顕微鏡である、
請求項1から5までのいずれか1項記載の顕微鏡システム(100)。
【請求項7】
前記顕微鏡(102)は、正立顕微鏡または倒立顕微鏡である、
請求項1から6までのいずれか1項記載の顕微鏡システム。
【請求項8】
顕微鏡(102)を用いて試料(118)を検査するための方法であって、前記方法は、
検査すべき前記試料(118)を、前記顕微鏡(102)の移動可能な顕微鏡ステージ(116)上にポジショニングするステップと、
第1のポジション信号を前記顕微鏡ステージ(116)に伝達するステップと、
前記第1のポジション信号に基づき、前記顕微鏡ステージ(116)を第1のステージポジションまで移動させるステップと、
第1の検査ステップにおいて、前記第1のステージポジションに割り当てられた前記試料(118)の第1の領域を検査するよう、前記顕微鏡(102)に指示するステップと、
少なくとも1つの第2のポジション信号を前記顕微鏡ステージ(116)に伝達するステップと、
前記第2のポジション信号に基づき、前記顕微鏡ステージ(116)を第2のステージポジションまで移動させるステップと、
時間的に前記第1の検査ステップに続く第2の検査ステップにおいて、前記第2のステージポジションに割り当てられた前記試料(118)の第2の領域を検査するよう、前記顕微鏡(102)に指示するステップと、
を含む、
方法において、
前記顕微鏡ステージ(116)が前記第1のステージポジションまで移動される間に、前記第2のポジション信号を前記顕微鏡ステージ(116)に伝達し、
前記第1の検査ステップにおいて前記顕微鏡(102)により検出された検査結果に応じて、第3のポジション信号を生成し、前記顕微鏡ステージ(116)が前記第2のステージポジションまで移動させられる間に、前記第3のポジション信号を前記顕微鏡ステージ(116)に伝達し、
前記顕微鏡ステージ(116)が第3のステージポジションまで移動させられると、時間的に前記第2の検査ステップに続く第3の検査ステップにおいて、前記第3のステージポジションに割り当てられた前記試料(118)の第3の領域を検査するよう、前記顕微鏡(102)に指示する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡と制御装置とを含む、試料を検査するための顕微鏡システムに関する。顕微鏡は移動可能な顕微鏡ステージを備えており、この顕微鏡ステージ上に検査すべき試料をポジショニング可能であり、制御装置は以下のように構成されている。すなわち、第1のポジション信号を顕微鏡ステージに伝達し、この第1のポジション信号に基づき顕微鏡ステージは第1のステージポジションまで移動可能であり、顕微鏡ステージが第1のステージポジションまで移動させられると、第1の検査ステップにおいて、第1のステージポジションに割り当てられた試料の第1の領域を検査するよう顕微鏡に指示し、少なくとも1つの第2のポジション信号を顕微鏡ステージに伝達し、この第2のポジション信号に基づき顕微鏡ステージは第2のステージポジションまで移動可能であり、顕微鏡ステージが第2のステージポジションまで移動させられると、時間的に第1の検査ステップに続く第2の検査ステップにおいて、第2のステージポジションに割り当てられた試料の第2の領域を検査するよう、顕微鏡に指示する。本発明はさらに、顕微鏡を用いて試料を検査するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学顕微鏡による実験を実施する際にしばしば必要とされるのは、さまざまな試料領域を1台の顕微鏡によって検査することである。このために必要とされるのは、試料を複数のステップで顕微鏡の顕微鏡対物レンズに対し相対的にポジショニングすることである。しばしばこの目的で、移動可能な顕微鏡ステージが使用され、このステージ上に試料が配置されており、このステージは対物レンズの光軸に対し垂直な平面内で動くことができる。その際に顕微鏡ステージの移動を、手動でまたはモータにより行うことができる。
【0003】
実験の状況によっては、例えば多数の試料領域を観察しなければならないなどの理由で、顕微鏡ステージの移動を自動化することが要求されることも多い。従来技術からこのために、顕微鏡ステージの位置調整を自動化する実質的に2つの方法が知られている。
【0004】
以下では「シーケンシャルリロード」とも称する1つめの公知の方法の場合、第1のステップにおいて顕微鏡ステージにポジション信号が伝達される。第2のステップにおいて、顕微鏡ステージがポジション信号に基づき所望のステージポジションまで移動させられる。第3のステップにおいて、ステージポジションに割り当てられた試料領域が検査される。これらのステップは、検査すべきすべての試料領域について時間的に相前後して、すなわちシーケンシャルに実施される。この方法の欠点は、ポジション信号の伝達に要する時間が試料の本来の検査のために使用されない、ということである。
【0005】
以下では「プレロード」とも称する2つめの方法の場合、実験進行中に向かうべきすべてのステージポジションが、すでに実験開始時にポジション信号の形態で顕微鏡ステージに伝達される。すべてのポジション信号が伝達されてしまった後、それらのポジション信号に対応するステージポジションまで、顕微鏡ステージが相前後して移動させられ、個々のステージポジションに割り当てられた試料領域が検査される。この方法の欠点は一方では、すべてのポジション信号が伝達されてしまうまで実験開始が遅れてしまう、ということである。他方、すべてのポジション信号が実験開始前にすでに伝達されてしまっているので、検査すべき試料領域に関する実験の整合を実験進行中にはもはや行えない、という点で不都合である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来技術から出発して、本発明の課題は、検査すべき試料領域の実験進行中の整合、ならびにこれまでよりも高速な試料検査を可能にした、試料を検査するための顕微鏡システムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1記載の特徴を備えた顕微鏡システムおよび請求項9記載の特徴を備えた方法によって解決される。従属請求項には有利な実施形態が記載されている。
【0008】
試料を検査するための本発明による顕微鏡システムは、顕微鏡と制御装置とを含み、顕微鏡は移動可能な顕微鏡ステージを備え、この顕微鏡ステージ上に検査すべき試料をポジショニング可能である。制御装置は以下のように構成されている。すなわち、第1のポジション信号を顕微鏡ステージに伝達し、この第1のポジション信号に基づき、顕微鏡ステージは第1のステージポジションまで移動可能であり、顕微鏡ステージが第1のステージポジションまで移動させられると、第1の検査ステップにおいて、第1のステージポジションに割り当てられた試料の第1の領域を検査するよう、顕微鏡に指示し、少なくとも1つの第2のポジション信号を顕微鏡ステージに伝達し、この第2のポジション信号に基づき、顕微鏡ステージは第2のステージポジションまで移動可能であり、顕微鏡ステージが第2のステージポジションまで移動させられると、時間的に第1の検査ステップに続く第2の検査ステップにおいて、第2のステージポジションに割り当てられた試料の第2の領域を検査するよう、顕微鏡に指示する。制御装置はさらに、顕微鏡ステージが第1のステージポジションまで移動させられる間に、第2のポジション信号を顕微鏡ステージに伝達するように構成されている。
【0009】
制御装置により指示されるポジション信号の伝達は、顕微鏡システムを用いて実施される実験の進行中に初めて行われることから、検査すべき試料領域は実験開始時にはまだ明確には規定されていない。これによって例えば、検査すべき試料における動的なプロセスに合わせて反応することができ、顕微鏡ステージのポジショニングに関して実験のさらなる進行を相応に整合させることができる。本発明によれば、顕微鏡ステージを第1のステージポジションまで移動させるために必要とされる期間が、第2のポジション信号を顕微鏡ステージに送信するために利用される。したがって第1の検査ステップが終了するとただちに、顕微鏡ステージをすぐに、すなわちいかなる遅延もなく、第2のステージポジションまで動かすことができる。よって、ポジション信号を伝達するために時間が浪費されず、節約された時間を本来の実験のために利用することができる。したがって本発明による顕微鏡システムによれば、検査すべき試料領域の実験進行中のフレキシブルな整合のほか、従来よりも高速な光学顕微鏡検査が可能となる。
【0010】
本明細書では、個々のポジション信号と、作動信号またはトリガ信号と、を区別する必要がある。この場合、制御装置は所与の時点で顕微鏡ステージに個々のポジション信号を伝達し、以降の時点で顕微鏡ステージはこのポジション信号に基づき、配属されたステージポジションまで移動可能であり、作動信号またはトリガ信号は、上述の以降の時点で顕微鏡ステージの移動による所望のステージポジショニングを実際にトリガする。
【0011】
本発明による顕微鏡システムのさらなる利点は、顕微鏡ステージ、および/または顕微鏡駆動部を制御する制御装置が、顕微鏡ステージを所望のように移動させるために、僅かな個数のポジション信号を保持するだけでよい、ということである。このため、ここで挙げた顕微鏡コンポーネントに高性能の記憶素子を設ける必要がなくなる。
【0012】
自明のとおり、本発明による顕微鏡システムを用いることで、3つ以上の試料領域を検査することもできる。この目的で、さらなるポジション信号が制御ユニットにより顕微鏡ステージに伝達され、その間、顕微鏡ステージは、このさらなるポジション信号に先立つポジション信号に割り当てられたステージポジションまで移動させられる。次いで顕微鏡ステージはこのさらなるポジション信号に基づき、やはりさらなる試料領域が割り当てられているステージポジションまで移動させられる。その後、時間的に第2の検査ステップに続くさらなる検査ステップにおいて、このさらなる試料領域が顕微鏡を用いて検査される。これまでに挙げたステップは、すべての所望の試料領域が顕微鏡により検査されてしまうまで繰り返される。
【0013】
好ましくは、顕微鏡システムの制御装置は以下のように構成されている。すなわち、第1の検査ステップにおいて顕微鏡により検出された検査結果に応じて、第3のポジション信号を生成し、顕微鏡ステージが第2のステージポジションまで移動させられる間に、この第3のポジション信号を顕微鏡ステージに伝達し、顕微鏡ステージが第3のステージポジションまで移動させられると、時間的に第2の検査ステップに続く第3の検査ステップにおいて、第3のステージポジションに割り当てられた試料の第3の領域を検査するよう、顕微鏡に指示する。この特に有利な実施形態によれば、顕微鏡ステージが向かうべきステージポジションの選択に関して、ひいてはそれらのステージポジションに割り当てられた検査すべき試料領域に関して、それまでに行われた検査の結果に実験をフレキシブルに整合させることができる。
【0014】
顕微鏡ステージが顕微鏡の対物レンズの光軸に対し垂直な平面内で移動可能であると、有利である。これによって、試料のできるかぎり多くの領域を検査することができる。択一的に顕微鏡ステージが、顕微鏡の対物レンズの光軸に対し垂直な1つの方向に沿ってのみ移動可能であるようにすることができる。
【0015】
1つの有利な実施形態によれば、顕微鏡は検出器を含み、この検出器は、第1の検査ステップおよび/または第2の検査ステップにおいて求められた検査結果を、制御装置に送信するように構成されている。この検査結果に基づき、検査すべきさらなる試料領域の選択を行うことができる。これによって、試料における動的なプロセスの自動化された検査が可能になる。
【0016】
好ましくは、顕微鏡ステージは、ステージ駆動部およびステージ制御ユニットを有し、このステージ制御ユニットは、制御装置から伝達された個々のポジション信号を受信し、受信したポジション信号に基づき顕微鏡ステージを移動させるためにステージ駆動部を作動させるように構成されている。すでに以前に説明したように、設定すべきステージポジションを表すポジション信号と、顕微鏡ステージの実際の位置調整をトリガする作動信号またはトリガ信号と、をここでは区別する必要がある。本実施形態の場合、顕微鏡ステージを所望のステージポジションまで移動させるよう、ステージ駆動部に指示するために、ステージ制御ユニットはかかるトリガ信号をステージ駆動部に送信する。ステージ駆動部は、例えば電動モータとして実装されており、供給されたポジション信号に応じて顕微鏡ステージを移動させることができる。
【0017】
好ましくは、顕微鏡ステージは記憶装置を有し、この記憶装置内に個々のポジション信号を記憶可能である。顕微鏡ステージが固有のステージ制御装置を有するケースであれば、上述の記憶装置は好ましくはステージ制御装置の一部である。択一的にまたは付加的に、顕微鏡システムの制御装置もポジション信号用の記憶装置を有することができる。
【0018】
顕微鏡を特に、透過型顕微鏡または落射型顕微鏡とすることができる。これに加え顕微鏡を、正立顕微鏡としても倒立顕微鏡としても構成することができる。
【0019】
本発明はさらに、顕微鏡を用いて試料を検査するための方法に関し、この方法は以下のステップを含む。すなわち、検査すべき試料を、顕微鏡の移動可能な顕微鏡ステージ上にポジショニングするステップと、第1のポジション信号を顕微鏡ステージに伝達するステップと、第1のポジション信号に基づき、顕微鏡ステージを第1のステージポジションまで移動させるステップと、第1の検査ステップにおいて、第1のステージポジションに割り当てられた試料の第1の領域を検査するよう、顕微鏡に指示するステップと、少なくとも1つの第2のポジション信号を顕微鏡ステージに伝達するステップと、第2のポジション信号に基づき、顕微鏡ステージを第2のステージポジションまで移動させるステップと、さらに時間的に第1の検査ステップに続く第2の検査ステップにおいて、顕微鏡ステージの第2のポジションに割り当てられた試料の第2の領域を検査するよう、顕微鏡に指示するステップと、を含む。さらに、顕微鏡ステージが第1のステージポジションまで移動される間に、第2のポジション信号を顕微鏡ステージに伝達するように構成されている。
【0020】
次に、図面を参照しながら本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例として顕微鏡システムを概略的に示す図である。
図2】さらなる実施例として顕微鏡システムを概略的に示す図である。
図3図1もしくは図2による顕微鏡システムを用いて試料を検査するための方法を概略的に示す図である。
図4】比較例として慣用の方法を概略的に示す図である。
図5】比較例としてさらなる慣用の方法を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1には、正立顕微鏡102および主制御ユニット104を含む顕微鏡システム100が示されている。主制御ユニット104はパーソナルコンピュータであって、これにはモニタ106と、キーボード108およびマウス110の形態の入力機器と、が接続されている。主制御ユニット104は、顕微鏡システム100の動作全体を制御する機能を有する。
【0023】
顕微鏡102は、照明装置114を備えた顕微鏡スタンド112を有する。顕微鏡スタンド112上に顕微鏡ステージ116が載置されており、その上に試料118が配置されている。顕微鏡ステージ116はステージ駆動部121を有し、これは例えば電動モータとして実装されていて、図1に2つの軸xおよびyで示唆されている平面内で顕微鏡ステージ116を移動させる機能を有する。顕微鏡ステージ116の上方に、検出器122に向けて試料118を結像する対物レンズ120が設けられている。検出器122は例えばCCDカメラである。図1に示されているように、ステージ駆動部121により顕微鏡ステージが移動可能である平面は、対物レンズ120の光軸Oに対し垂直に位置している。
【0024】
顕微鏡スタンド112および検出器122は、導線124もしくは126を介して、主制御ユニット104に接続されている。これに対しステージ駆動部121は、導線128を介してステージ制御ユニット130に接続されており、他方、ステージ制御ユニット130は導線132を介して主制御ユニット104に結合されている。ステージ制御ユニット130は、顕微鏡ステージ116が所望のように移動させられるように、ステージ駆動部121を制御する機能を有する。
【0025】
顕微鏡ステージ116を移動させるために、主制御ユニット104はx-yポジション信号をステージ制御ユニット130に伝達し、ステージ制御ユニット130は、伝達されたポジション信号を記憶する内部記憶装置131を有する。次いでステージ制御ユニット130は記憶されているポジション信号に基づき、顕微鏡ステージ116が所望のステージポジションまで動かされるように、ステージ駆動部121を制御する。ポジション信号の伝達およびそれに基づくステージ駆動部121の作動は、後で図3を参照しながら説明する時間体系に従って行われる。
【0026】
主制御ユニット104は、図1に示されている実施例の場合、接続されたモニタ106もしくは接続された入力機器108、110と共働して、入出力ユニットとしての役割も果たす。例えば操作員は、主制御ユニット104のキーボード108を介して、ステージポジションを予め設定することができ、主制御ユニット104はこのステージポジションを、ステージ駆動部121の作動のためにポジション信号の形態でステージ制御ユニット130に伝達する。さらに操作員に対し、本実施例では検出器122が顕微鏡画像の形態で供給する検査結果を、モニタ106上で表示させることができる。
【0027】
図1に示されている顕微鏡102は、正立透過型顕微鏡として構成されている。したがって図1の場合には、顕微鏡ステージ116の下方に照明装置114が設けられている。ただし択一的に顕微鏡102を、落射型顕微鏡として実装することもできる。かかる実施形態の場合には、図1に参照符号134で示されているように、顕微鏡ステージ116の上方に照明装置114が配置されている。
【0028】
図2には、さらなる実施例として顕微鏡システム200が概略的に示されている。
【0029】
図2に示されている顕微鏡システム200は、図1に示されている顕微鏡システム100とは、図2による顕微鏡102が倒立顕微鏡として構成されている、という点で実質的に異なる。したがって図2による実施例の場合、対物レンズ120および検出器122は顕微鏡ステージ116の下方に配置されている一方、照明装置114は顕微鏡ステージ116の上方に設けられている。同じ部材または同じように作用する部材には、図1および図2において同じ参照符号が付されている。
【0030】
図3には、試料118を本発明に従って検査するために顕微鏡システム100もしくは200を使用して実施可能な方法が、概略的に示されている。
【0031】
第1のステップS1において、主制御ユニット104により第1のポジション信号が顕微鏡ステージ116のステージ制御ユニット130に伝達され、そこにおいて内部記憶装置131に記憶される。
【0032】
第2のステップS2において、ステージ制御ユニット130はトリガ信号を送信することで、第1のポジション信号に割り当てられた第1のステージポジションまで顕微鏡ステージ116が移動させられるように、顕微鏡ステージ116のステージ駆動部121を制御する。これと同時に主制御ユニット104は、第2のポジション信号をステージ制御ユニット130に伝達し、この信号を自身の内部記憶装置131に記憶する。
【0033】
第3のステップS3において、顕微鏡ステージ116の第1のステージポジションに割り当てられた試料118の第1の領域が検査され、これは本実施例では、検出器122が試料領域の画像を撮影するようにして行われる。この画像は主制御ユニット104に伝達され、そこにおいて引き続き処理される。例えば画像はモニタ106に表示される。
【0034】
第4のステップS4において、ステージ制御ユニット130はトリガ信号を送信することで、第2のポジション信号に割り当てられた第2のステージポジションまで顕微鏡ステージ116が移動させられるように、顕微鏡ステージ116のステージ駆動部121を制御する。これと同時に主制御ユニット104は、第3のポジション信号をステージ制御ユニット130に伝達し、この第3のポジション信号を自身の内部記憶装置131に記憶する。
【0035】
第5のステップS5において、検出器122は、第2のステージポジションに割り当てられた試料118の第2の領域の画像を撮影し、この画像はやはり主制御ユニット104に伝達され、そこにおいて引き続き処理される。
【0036】
以降のステップにおいて、それぞれさらなるポジション信号が主制御ユニット104によってステージ制御ユニット130に伝達され、そこにおいて記憶され、その間、顕微鏡ステージ116が、個々のさらなるポジション信号に先立つポジション信号に割り当てられたポジションまで移動させられる。顕微鏡ステージ116は、個々のポジション信号の伝達後、トリガ信号に基づき、検査すべきさらなる試料領域が割り当てられているさらなるステージポジションまで移動させられる。次いでこのさらなる領域が、検出器122により画像生成という手法で検査された後、主制御ユニット104によって新たにポジション信号が伝達される。これは、試料118の検査が終わるまで繰り返される。
【0037】
本発明による方法と対比するために、従来技術により「シーケンシャルリロード」および「プレロード」という名称で知られる冒頭で挙げた2つの方法について、以下で図4および図5を参照しながらさらに説明する。
【0038】
図4によるシーケンシャルリロード方法の場合、第1のステップS11において顕微鏡ステージにポジション信号が伝達される。次いで、時間的に第1のステップS11に続く第2のステップS12において、事前に伝達されたこのポジション信号に対応するステージポジションまで、顕微鏡ステージが移動させられる。時間的に第2のステップS12に続く第3のステップS13において、このステージポジションに割り当てられた試料領域が検査される。検査すべきすべての試料領域のために、これまでに挙げたステップが相前後して繰り返される。
【0039】
図5によるプレロード方法の場合、本来の試料検査に先立つ開始フェーズ(ステップS21~S23)においてすでに、後で顕微鏡ステージが向かうべきすべてのステージポジションが、相前後して相応のポジション信号の形態で顕微鏡ステージに供給される。すべてのポジション信号が相前後して伝達されてしまった後、続いてステップS24において、事前に伝達された複数のステージポジションのうち最初のものに対応する第1のステージポジションまで、顕微鏡ステージが移動させられる。次いでステップS25において、第1のステージポジションに割り当てられた第1の試料領域が検査される。開始フェーズ中に伝達されてしまっているすべてのさらなるステージポジションのために、ステップS24およびS25が引き続き相前後して実施される。
【0040】
図4によるシーケンシャルリロード方法は、実験がいわば時間的に引き伸ばされる、という欠点を有する。これに対し図5によるプレロード方法の場合には一方では、実験の開始が遅れるという欠点がある。他方、プレロード方法は、実験中に向かうべきステージポジションに関して整合を行うことができない。しかも、ステージ制御ユニット130の利用可能なメモリサイズによって実験の規模が制限され、すなわち例えば実験進行中に向かうことのできるステージポジションの総数が制限される。
【0041】
これに対し本発明により提供される解決手段によれば、とりわけ高速な試料検査も、検査すべき試料領域の実験中のフレキシブルな整合も可能になり、その際に実験規模においていかなる制限もなされない。
【符号の説明】
【0042】
100 顕微鏡システム
102 顕微鏡
104 主制御ユニット
106 モニタ
108 キーボード
110 マウス
112 顕微鏡スタンド
114 照明装置
116 顕微鏡ステージ
118 試料
120 対物レンズ
121 ステージ駆動部
122 検出器
124、126、128 導線
130 ステージ制御ユニット
131 記憶装置
132 導線
134 照明装置
図1
図2
図3
図4
図5