(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】複合金属箔及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/01 20060101AFI20230703BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20230703BHJP
C23C 14/14 20060101ALI20230703BHJP
C25D 1/00 20060101ALI20230703BHJP
C25D 1/04 20060101ALI20230703BHJP
C25D 5/12 20060101ALI20230703BHJP
C25D 7/06 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
B32B15/01 H
B32B7/06
C23C14/14
C25D1/00 311
C25D1/04 311
C25D5/12
C25D7/06 A
(21)【出願番号】P 2021526419
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(86)【国際出願番号】 CN2019116090
(87)【国際公開番号】W WO2020119340
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】201811514597.6
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521204482
【氏名又は名称】広州方邦電子股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGZHOU FANGBANG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.28, Dongzhi Road, Huangpu District Guangzhou,Guangdong 510530 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】蘇 陟
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/149811(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
C23C 14/00 - 14/58
C25D 1/00 - 7/12
H05K 1/00 - 1/18
H05K 3/00 - 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合金属箔であって、キャリア層、バリア層、剥離層及び金属箔層を含み、
前記キャリア層、前記バリア層、前記剥離層及び前記金属箔層が順次積層されて設けられ、前記バリア層が積層されて設けられた金属接着層及び耐熱層を含み、前記金属接着層が前記キャリア層と前記耐熱層との間に設けられており、
前記金属接着層は、第1のタイプの金属の任意の1種類又は複数種類の材料で作製され、又は、前記金属接着層は、第1のタイプの金属の任意の1種類又は複数種類の材料と第2のタイプの金属の任意の1種類又は複数種類の材料で作製され、
前記第1のタイプの金属は、銅又は亜鉛であり、前記第2のタイプの金属は、ニッケル又は鉄又はマンガンであることを特徴とする複合金属箔。
【請求項2】
20-400℃の温度で、前記キャリア層と前記バリア層との間の剥離強度は、前記剥離層と前記金属箔層との間の剥離強度よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の複合金属箔。
【請求項3】
前記キャリア層と前記バリア層との間のクロスカットテストレベルは0又は1又は2であり、前記剥離層と前記金属箔層との間の剥離強度は0.001-2N/cmであることを特徴とする請求項2に記載の複合金属箔。
【請求項4】
前記剥離層と前記金属箔層との間の剥離強度は前記剥離層と前記バリア層との剥離強度以上であることを特徴とする請求項1に記載の複合金属箔。
【請求項5】
前記耐熱層は有機耐熱層であり、又は、前記耐熱層は、タングステン、クロム、ジルコニウム、チタン、ニッケル、モリブデン、コバルト及びグラファイトのいずれかの1種類又は複数種類の材料で作製されることを特徴とする請求項1に記載の複合金属箔。
【請求項6】
前記耐熱層は、単層合金構造であり、又は、前記耐熱層は、単一の材料層であり、又は合金層と単一の材料層で構成された多層構造であり、ここで、前記単一の材料層は、同じ化学元素で作製されることを特徴とする請求項1に記載の複合金属箔。
【請求項7】
前記金属接着層は、前記第1のタイプの金
属で作製された単金属層である、
または、前記金属接着層は、前記第1のタイプの金属及び前記第2のタイプの金属で作製された単層合金構造である、
または、前記金属接着層は、前記第1のタイプの金属で作製されかつ前記キャリア層に接続された単金属層を含み、前記金属接着層は、前記第2のタイプの金属で作製されかつ前記耐熱層に接続された単金属層をさらに含む、
または、前記金属接着層は、合金層と単金属層で構成された多層構造を含み、ここで、前記金属接着層の合金層は、前記第1のタイプの金属と前記第2のタイプの金属で作製され、前記金属接着層の単金属層は、前記第1のタイプの金属又は前記第2のタイプの金属で作製されることを特徴とする請求項6に記載の複合金属箔。
【請求項8】
前記剥離層は、ニッケル、シリコン、モリブデン、グラファイト、チタン及びニオブのいずれかの1種類又は複数種類の材料で作製され、又は、前記剥離層は、有機高分子材料で作製されることを特徴とする請求項1-7のいずれか一項に記載の複合金属箔。
【請求項9】
前記金属箔層の厚さは9μm以下であり、
前記金属箔層は、銅箔又はアルミ箔であり、及び/又は、前記キャリア層は、キャリア銅又はキャリアアルミニウム又は有機膜であり、
前記キャリア層の前記金属箔層に近い面の粗さRzが5μm以下であり、及び/又は、前記金属箔層の前記キャリア層から離れる面の粗さRzが3.0μm以下であることを特徴とする請求項1-7のいずれか一項に記載の複合金属箔。
【請求項10】
前記キャリア層の前記バリア層に近い側に第1の酸化防止層が設けられ、及び/又は、前記金属箔層の前記バリア層から離れる側に第2の酸化防止層が設けられていることを特徴とする請求項1-7のいずれか一項に記載の複合金属箔。
【請求項11】
請求項
1に記載の複合金属箔の製造方法は、
キャリア層(1)を形成するステップS11と、
前記キャリア層(1)の一側に金属接着層(22)を形成するステップS12と、
前記金属接着層(22)に耐熱層(21)を形成し、前記金属接着層(22)と前記耐熱層(21)がバリア層(2)を構成するステップS13と、
前記バリア層(2)に剥離層(3)を形成するステップS14と、
前記剥離層(3)に金属箔層(4)を形成するステップS15とを含む複合金属箔の製造方法。
【請求項12】
前記ステップS12、前記ステップS13及び前記ステップS14はいずれもスパッタリングにより実行されることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ステップS12、前記ステップS13及び前記ステップS14におけるスパッタリングプロセスの電流は、それぞれ6~12Aから独立して選択され、電圧は、それぞれ300~500Vから独立して選択されることを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記ステップS12を行う前に、前記ステップS11は、
前記キャリア層(1)に対して第1の粗面化処理を行い、粗面化されたキャリア層(1)を得るステップS111と、
粗面化されたキャリア層(1)に第1の酸化防止層を形成するステップS112とをさらに含むことを特徴とする請求項1
1に記載の製造方法。
【請求項15】
前記キャリア層(1)は銅金属層又はアルミニウム金属層であることを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記キャリア層(1)は、電気めっきにより形成され、前記キャリア層を形成するための第1のめっき液は、15~25g/Lの硫酸銅、0.1~2g/Lのスルホン酸ナトリウム、0.01~1g/Lのチオ尿素及び0.1~5g/Lのポリエチレングリコールを含み、pHが6~9であることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項17】
前記第1の粗面化処理プロセスは、第1の電気めっき液を用いた酸性電気めっきにより実行され、前記第1の電気めっき液は、10~15g/Lの銅イオン含有量、90~100g/Lの酸含有量、600-800PPMのモリブデンイオン含有量を含むことを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項18】
前記第1の酸化防止層は、亜鉛-ニッケル合金めっきにより形成されることを特徴とする請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記金属接着層(22)を形成するステップの前に、前記製造方法は、
前記キャリア層(1)に対してアニーリング処理を行うステップS113をさらに含み、前記アニーリング処理プロセスにおいて熱処理温度が200~300℃であり、加熱時間が30~300分であ
ることを特徴とする請求項11-18のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
前記加熱時間が1時間であることを特徴とする請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記製造方法は、電気めっきにより前記金属箔層(4)を形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1
7に記載の製造方法。
【請求項22】
前記金属箔層(4)を形成するプロセスで使用される第2のめっき液と前記第1の電気めっき液の組成は同じであることを特徴とする請求項
21に記載の製造方法。
【請求項23】
前記製造方法は、
前記金属箔層(4)の前記キャリア層(1)から離れる面に対して第2の粗面化処理を行うステップS31と、
粗面化された前記金属箔層(4)の前記キャリア層(1)から離れる面上に第2の酸化防止層を形成するステップS32とをさらに含むことを特徴とする請求項
21に記載の製造方法。
【請求項24】
前記第1の粗面化処理ステップは、第2の酸性めっき液を用いた酸性電気めっきにより実行され、前記第2の酸性めっき液では、銅イオン含有量が10~15g/Lであり、酸含有量が90~100g/Lであり、モリブデンイオン含有量が600~800PPMであることを特徴とする請求項
23に記載の製造方法。
【請求項25】
前記第2の酸化防止層は、亜鉛-ニッケル合金めっきにより形成されることを特徴とする請求項
23に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料技術分野に関し、特に複合金属箔及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、基板は、可撓性プリント基板(FPC:Flexible Printed Circuitboard)の加工材料であり、通常、可撓性絶縁ベースフィルムと複合金属箔で構成されている。従来技術では、基板を作製する場合、通常、まず複合金属箔(キャリア層及び金属箔層を含む)の金属箔層が設けられた側に可撓性絶縁ベースフィルムを圧着させて基板を得て、基板を使用するときに、キャリア層を剥離する必要がある。しかし、複合金属箔と可撓性絶縁ベースフィルムを高温条件下で圧着する必要があるが、キャリア層と金属箔層が高温条件下で相互に拡散しやすく、その結果、キャリア層と金属箔層が接着し、キャリア層と金属箔層との間の剥離が困難になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の実施例の目的は、複合金属箔のキャリア層と複合金属箔の金属箔層が高温で相互に拡散して接着することを回避して、キャリア層と金属箔層の剥離を容易にすることができる複合金属箔及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の技術的な問題を解決するために、本発明の実施例は、キャリア層、バリア層、剥離層及び金属箔層を含み、
前記キャリア層、前記バリア層、前記剥離層及び前記金属箔層が順次積層されて設けられ、前記バリア層が積層されて設けられた金属接着層及び耐熱層を含み、前記金属接着層が前記キャリア層と前記耐熱層との間に設けられている複合金属箔を提供する。
【0005】
好ましい解決策として、20-400℃の温度で、前記キャリア層と前記バリア層との間の剥離強度は、前記剥離層と前記金属箔層との間の剥離強度よりも大きい。
【0006】
好ましい解決策として、前記キャリア層と前記バリア層との間のクロスカットテストレベルは0又は1又は2であり、前記剥離層と前記金属箔層との間の剥離強度は0.001-2N/cmである。
【0007】
好ましい解決策として、前記剥離層と前記金属箔層との間の剥離強度は前記剥離層と前記バリア層との剥離強度以上である。
【0008】
好ましい解決策として、前記耐熱層は有機耐熱層であり、又は、前記耐熱層は、タングステン、クロム、ジルコニウム、チタン、ニッケル、モリブデン、コバルト及びグラファイトのいずれかの1種類又は複数種類の材料で作製される。
【0009】
好ましい解決策として、前記耐熱層は、単層合金構造であり、又は、前記耐熱層は、単一の材料層で構成された多層構造、又は合金層と単一の材料層で構成された多層構造であり、ここで、前記単一の材料層は、同じ化学元素で作製される。
【0010】
好ましい解決策として、前記金属接着層は、第1のタイプの金属の任意の1種類又は複数種類の材料で作製され、又は、前記金属接着層は、第2のタイプの金属の任意の1種類又は複数種類の材料で作製され、又は、前記金属接着層は、第1のタイプの金属の任意の1種類又は複数種類の材料と第2のタイプの金属の任意の1種類又は複数種類の材料で作製され、
ここで、前記第1のタイプの金属は、前記キャリア層に接着しやすい金属であり、前記第2のタイプの金属は、前記耐熱層に接着しやすい金属である。
【0011】
好ましい解決策として、前記第1のタイプの金属は、銅又は亜鉛であり、前記第2のタイプの金属は、ニッケル又は鉄又はマンガンである。
【0012】
好ましい解決策として、前記金属接着層は、前記第1のタイプの金属又は前記第2のタイプの金属で作製された単金属層である。
【0013】
好ましい解決策として、前記金属接着層は、前記第1のタイプの金属及び前記第2のタイプの金属で作製された単層合金構造である。
【0014】
好ましい解決策として、前記金属接着層は、第1のタイプの金属で作製されかつ前記キャリア層に接続された単金属層を含み、前記金属接着層は、第2のタイプの金属で作製されかつ前記耐熱層に接続された単金属層をさらに含む。
【0015】
好ましい解決策として、前記金属接着層は、合金層と単金属層で構成された多層構造を含み、ここで、前記金属接着層の合金層は、前記第1のタイプの金属と前記第2のタイプの金属で作製され、前記金属接着層の単金属層は、前記第1のタイプの金属又は前記第2のタイプの金属で作製される。
【0016】
好ましい解決策として、前記剥離層は、ニッケル、シリコン、モリブデン、グラファイト、チタン及びニオブのいずれかの1種類又は複数種類の材料で作製され、又は、前記剥離層は、有機高分子材料で作製される。
【0017】
好ましい解決策として、前記金属箔層の厚さは9μm以下である。
【0018】
好ましい解決策として、前記金属箔層は、銅箔又はアルミ箔であり、及び/又は、前記キャリア層は、キャリア銅又はキャリアアルミニウム又は有機膜である。
【0019】
好ましい解決策として、前記キャリア層の前記金属箔層に近い面の粗さRzが5μm以下であり、及び/又は、前記金属箔層の前記キャリア層から離れる面の粗さRzが3.0μm以下である。
【0020】
好ましい解決策として、前記キャリア層の前記バリア層に近い側に第1の酸化防止層が設けられ、及び/又は、前記金属箔層の前記バリア層から離れる側に第2の酸化防止層が設けられている。
【0021】
本発明の実施例に係る複合金属箔は、順次積層されて設けられたキャリア層、バリア層、剥離層及び金属箔層を含み、バリア層が積層されて設けられた金属接着層と耐熱層とを含み、金属接着層がキャリア層と耐熱層との間に設けられ、キャリア層と金属箔層との間に剥離層を設けることにより、キャリア層の剥離が容易になり、キャリア層と金属箔層との間にバリア層を設けることにより、キャリア層と金属箔層が高温で相互に拡散して接着することを回避し、それによってキャリア層と金属箔層の剥離が容易になり、また、キャリア層と耐熱層との間に金属接着層を設けることにより、バリア層は、キャリア層から容易に分離されなく、それによってバリア層とキャリア層との間の剥離が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る複合金属箔の1つの実施例の構造模式図である。
【
図2】本発明に係る複合金属箔の別の実施例の構造模式図である。
【
図3】本発明に係る複合金属箔の実施例の剥離模式図である。
【
図4】本発明に係る複合金属箔の実施例の別の剥離模式図である。
【
図5】本発明に係る複合金属箔の製造方法の1つの実施例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施例の図面を参照して本発明の実施例における技術的解決策を明確且つ完全に説明し、明らかに、説明される実施例は本発明の実施例の一部に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づき、当業者が創造的な労力を要せずに取得したすべての他の実施例は、本発明の保護範囲に属するべきである。
【0024】
図1に示すように、上記の技術的な問題を解決するために、本発明の実施例は、キャリア層1、バリア層2、剥離層3及び金属箔層4を含み、
前記キャリア層1、前記バリア層2、前記剥離層3及び前記金属箔層4が順次積層されて設けられ、前記バリア層2が積層されて設けられた金属接着層22及び耐熱層21を含み、前記金属接着層22が前記キャリア層1と前記耐熱層21との間に設けられている複合金属箔を提供する。
【0025】
本発明の実施例では、キャリア層1と金属箔層4との間に剥離層3を設けることにより、キャリア層1の剥離が容易になり、キャリア層1と金属箔層4との間にバリア層2を設けることにより、キャリア層1と金属箔層4が高温で相互に拡散して接着することを防止し、それによってキャリア層1と金属箔層4の剥離が容易になり、また、キャリア層1と耐熱層21との間に金属接着層22を設けることにより、バリア層2は、キャリア層1から容易に分離されなく、それによってバリア層2とキャリア層1との間の剥離が防止される。
【0026】
本発明の実施例では、前記複合金属箔を使用するときにキャリア層1、バリア層2及び剥離層3を同時に剥離させることを確保するために、20-400℃で、前記キャリア層1と前記バリア層2との間の剥離強度は、前記剥離層3と前記金属箔層4との間の剥離強度よりも大きい。好ましくは、前記キャリア層1と前記バリア層2との間のクロスカットテストレベルは0又は1又は2であり、前記剥離層3と前記金属箔層4との間の剥離強度は0.001-2N/cmである。本実施例における前記クロスカットテストレベルがISOレベルであり、標準「GBT9286-1998ペイント及びワニスフィルムのクロスカット試験」を参照でき、さらに、この実施例におけるクロスカットテストは、ASTMレベルに対応することができ、例えばクロスカットテストレベル0がASTMレベル5Bであり、クロスカットテストのレベル1がASTMのレベル4Bに対応し、これによって類推し、ここではより多くの説明を省略する。クロスカットテストレベルは、前記キャリア層1と前記バリア層2との間の剥離強度を示すことができ、レベルの順位が前になるほど、前記キャリア層1と前記バリア層2との間の剥離強度が大きくなる。前記キャリア層1と前記バリア層2との間のクロスカットテストレベルがすべてトップ3位であり、即ち前記キャリア層1と前記バリア層2との間の付着力が大きく、前記剥離層3と前記金属箔層4との間の剥離強度が非常に小さく、そのため、前記キャリア層1と前記バリア層2との間の剥離強度が常に前記剥離層3と前記金属箔層4との間の剥離強度よりもはるかに大きく、したがって、前記複合金属箔を使用する場合、前記キャリア層1、前記バリア層2及び前記剥離層3を同時に前記金属箔層4から容易に剥離することができる。
【0027】
図3に示すように、本発明の実施例では、前記剥離層3と前記金属箔層4との間の剥離強度は前記剥離層3と前記バリア層2との剥離強度以上である。前記剥離層3と前記金属箔層4との間の剥離強度が前記剥離層3と前記バリア層2との間の剥離強度以上であるため、前記複合金属箔を剥離する場合、前記剥離層3は、前記金属箔層4上に部分的に又は全部で残すことができ、それによって前記金属箔層4の酸化を防止し、さらに前記金属箔層4を効果的に保護することができる。当然、前記剥離層3と前記金属箔層4との間の剥離強度が前記剥離層3と前記バリア層2との間の剥離強度よりも小さくてもよく、そのため、前記複合金属箔を剥離するときに、前記剥離層3は、
図4に示すように、前記バリア層2上に部分的に又は全部で残すことができ、前記キャリア層1及び前記バリア層2と共に前記金属箔層4から同時に剥離され、ここでより多くの説明を省略する。
【0028】
図1に示すように、前記バリア層2の厚さは10Å以上であり、好ましくは、前記バリア層2の厚さは10~500Åである。ここで、前記耐熱層21は有機耐熱層21であり、かつ前記耐熱層21が有機耐熱層である場合、それは窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸から選択される1種類又は複数種類で作製された単一の材料層から形成され、又は複数の単一の材料層によって形成され、又は、前記耐熱層21は、タングステン、クロム、ジルコニウム、チタン、ニッケル、モリブデン、コバルト、グラファイトのいずれかの1種類又は複数種類で作製される。好ましくは、前記耐熱層21は、単層合金構造であり、又は、前記耐熱層21は、単一の材料層で構成された多層構造、又は合金層と単一の材料層で構成された多層構造であり、ここで、前記単一の材料層は、同じ化学元素で作製される。具体的には、前記単層合金構造は、合金材料で作製された単層構造であり、例えば、タングステン-クロム合金で作製された単層構造であり、前記耐熱層21は、単一の材料層で構成された多層構造又は合金層と単一の材料層で構成された多層構造、例えば、タングステン金属層とクロム金属層で構成された多層構造、又は、タングステン-クロム合金層とジルコニウム金属層で構成された多層構造である。
【0029】
図1と
図2に示すように、前記バリア層2と前記キャリア層1との間の剥離及び層化を防止するために、前記金属接着層22は、第1のタイプの金属の任意の1種類又は複数種類の材料で作製され、又は、前記金属接着層22は、第2のタイプの金属の任意の1種類又は複数種類の材料で作製され、又は、前記金属接着層22は、第1のタイプの金属の任意の1種類又は複数種類の材料と第2のタイプの金属の任意の1種類又は複数種類の材料で作製され、ここで、前記第1のタイプの金属は、前記キャリア層に接着しやすい金属であり、前記第2のタイプの金属は、前記耐熱層21に接着しやすい金属であり、これにより、キャリア層1とバリア層2との間の剥離が防止される。好ましくは、前記第1のタイプの金属は、銅又は亜鉛であり、前記第2のタイプの金属は、ニッケル又は鉄又はマンガンである。前記金属接着層22を設けることにより、前記バリア層2は、前記キャリア層1にしっかりと接続されてもよく、それによって前記バリア層2と前記キャリア層1との間の剥離が防止される。また、第1のタイプの金属と前記キャリア層1との間の接着力は強く、第2のタイプの金属と前記耐熱層21との間の接着力は強く、したがって、第1のタイプの金属で作製された単金属層を前記キャリア層1に接続させるとともに、第2のタイプの金属で作製された単金属層を前記耐熱層21に接続させることにより、前記バリア層2は、前記キャリア層1から容易に分離されない。
【0030】
本発明の実施例では、前記金属接着層22の構造は、(1)前記金属接着層22が前記第1のタイプの金属で作製された単金属層であること、(2)前記金属接着層22が前記第2のタイプの金属で作製された単金属層であること、(3)前記金属接着層22が前記第1のタイプの金属と前記第2のタイプの金属で作製された単層合金構造、例えば銅-ニッケル合金で作製された単層合金構造であること、(4)前記金属接着層22が第1のタイプの金属で作製されかつ前記キャリア層1に接続された単金属層を含み、前記金属接着層22が第2のタイプの金属で作製されかつ前記耐熱層21に接続された単金属層、例えば銅金属層とニッケル金属層で構成された多層構造を含み、かつ銅金属層が前記キャリア層1に接続され、ニッケル金属層が前記耐熱層21に接続されること、(5)前記金属接着層22が合金層と単金属層で構成された多層構造を含み、ここで前記金属接着層22の合金層が前記第1のタイプの金属と前記第2の金属タイプで作製され、前記金属接着層22の単金属層が前記第1のタイプの金属又は前記第2のタイプの金属で作製され、例えば銅-ニッケル合金で作製された合金層及びマンガンで作製された単金属層であることを含むが、これらに限定されない。
【0031】
以下に上記の状況(4)で前記金属接着層22の構造を詳しく説明する。
図2に示すように、この実施例では、前記金属接着層22は、第1のタイプの金属単層構造221と第2のタイプの金属単層構造222で作製され、ここで、前記第1のタイプの金属単層構造221は、第1のタイプの金属で作製されたかつ前記キャリア層1に接続された単金属層であり、前記第2のタイプの金属単層構造222は、第2のタイプの金属で作製されかつ前記耐熱層21に接続された単金属層である。
【0032】
本発明の実施例では、前記第1のタイプの金属単層構造221と第2のタイプの金属単層構造222との間には前記第1のタイプの金属の単層構造及び/又は前記第2のタイプの金属の単層構造で作製された構造が設けられてもよい。前記第1のタイプの金属単層構造221と第2のタイプの金属単層構造222との間に前記第1のタイプの金属の単層構造及び/又は前記第2のタイプの金属の単層構造で作製された構造を設けることにより、前記バリア層2と前記キャリア層1との間の接続の堅牢性をさらに向上させ、それによって前記バリア層2と前記キャリア層1との間の剥離をさらに防止する。
【0033】
本発明の実施例では、前記剥離層3は、ニッケル、シリコン、モリブデン、グラファイト、チタン及びニオブのいずれかの1種類又は複数種類の材料で作製され、又は、前記剥離層3は、有機高分子材料で作製される。ここで、前記剥離層3の厚さは好ましくは10~500Åである。前記剥離層3が厚すぎると、均一な金属箔層4を形成することが困難になり、その結果、金属箔層4に多数のピンホールが発生しやすく(金属箔層4にピンホールがある場合、それが回路にエッチングされた後、開路現像が発生しやすい)、前記剥離層3が薄すぎると、それが金属箔層4から剥離しにくくなるため、前記剥離層3の厚さを好ましく10~500Åにすることにより、均一な金属箔層4を形成できることを確保し、金属箔層4に多くのピンホールが発生することを回避し、同時に前記剥離層3と前記金属箔層4を容易に剥離させる。
【0034】
本実施例では、前記金属箔層4の厚さは9μm以下である。回路基板の微細回路の製造要件を満たすために、好ましくは、前記金属箔層4の厚さは、6μm、5μm、4μm又は2μmなどであってもよく、それによって微細回路の回路基板を形成することに有利な極薄の金属箔層4を得る。また、キャリア層1から剥離してピンホールが少なくかつ完全な極薄の金属箔層4(特に厚さ2μm、4μmなどの金属箔層)を得ることができるために、この実施例では、金属接着層22が設けられ、金属接着層22により、バリア層2とキャリア層1との剥離強度が強く、キャリア層1を金属箔層4から安定して剥離することができることが効果的に確保され、さらに完全な極薄の金属箔層4が得られ、また、金属接着層22により、キャリア層1の表面を処理し、キャリア層1の表面全体をより均一かつ緻密にし、それによってキャリア層1から剥離してピンホールの少ない極薄の金属箔層4を取得することに有利であり、さらに後続の回路の製造に有利である。また、前記金属箔層4は、好ましくは銅箔又はアルミ箔であり、前記キャリア層1は、キャリア銅、キャリアアルミニウム又は有機膜等であってもよく、キャリア層1が主に支持役割を果たすため、一定の厚みが必要であり、前記キャリア層1がキャリア銅又はキャリアアルミニウムである場合、前記キャリア層1の厚さは好ましくは9-50μmであり、前記キャリア層1が有機膜である場合、前記キャリア層1の厚さは好ましくは20~100μmである。
【0035】
本発明の実施例では、前記キャリア層1の前記金属箔層4に近い面の粗さRzが5μm以下であり、及び/又は、前記金属箔層4の前記キャリア層1から離れる面の粗さRzが3.0μm以下である。金属箔層4が銅箔である場合、銅箔の粗さが大きいほど、銅箔と他の材料との間の接着力が大きくなり、銅箔の粗さが大きすぎると、銅箔は高周波信号伝送用の回路基板に使用できなく、したがって、一般的な銅箔の粗さRzが0.5-3.0μmであり、銅箔が高周波用途で応用される場合、銅箔の粗さを0.5μm未満に設定することにより、銅箔と他の材料との接着力を確保する前提で、高周波信号伝送用の回路基板に銅箔を適用することができる。
【0036】
本発明の実施例では、前記キャリア層1の酸化を防止するために、本実施例での前記キャリア層1の前記バリア層2に近い側に第1の酸化防止層が設けられ、前記キャリア層1の酸化を防止するために、前記キャリア層1の前記バリア層2に近い側に第1の酸化防止層を設け、これにより、前記キャリア層1が保護される。前記金属箔層4の酸化を防止するために、前記金属箔層4の前記バリア層2から離れる側に第2の酸化防止層が設けられ、前記金属箔層4の酸化を防止するために、前記金属箔層4の前記バリア層2から離れる側に第2の酸化防止層を設けることにより、前記金属箔層4が保護される。
【0037】
図5に示すように、同じ技術的問題を解決するために、本発明の実施例は、前記複合金属箔を製造するための製造方法を提供する。前記方法は、
キャリア層1を形成するステップS11と、
前記キャリア層1の一側に金属接着層22を形成するステップS12と、
前記金属接着層22に耐熱層21を形成し、前記金属接着層22と前記耐熱層21がバリア層2を構成するステップS13と、
前記バリア層2に剥離層3を形成するステップS14と、
前記剥離層3に金属箔層4を形成するステップS15とを含む。
【0038】
前記複合金属箔を使用するときに前記キャリア層1、前記バリア層2及び前記剥離層3を同時に前記金属箔層4から容易に剥離させることを確保するために、本発明の実施例では、20-400℃の温度で、前記キャリア層1と前記バリア層2との間の剥離強度は、前記剥離層3と前記金属箔層4との間の剥離強度よりも大きい。好ましくは、20-400℃の温度で、前記キャリア層と前記バリア層との間のクロスカットテストレベルは0又は1又は2であり、前記剥離層3と前記金属箔層4との間の剥離強度は0.001-2N/cmである。
【0039】
本発明の実施例では、第1のタイプの金属は、前記キャリア層1に接着しやすい金属であり、第2のタイプの金属は、前記耐熱層21に接着しやすい金属であり、好ましくは、前記第1のタイプの金属は、銅又は亜鉛であり、前記第2のタイプの金属は、ニッケル又は鉄又はマンガンである。
【0040】
電気めっきにより前記バリア層2と前記剥離層3の粗さが電気めっき時の電流の影響を受けやすく、前記バリア層2と前記剥離層3を形成するための表面の粗さは非常に不均一であり、その結果、後で前記金属箔層4を形成するための表面の粗さも均一ではなく、さらに優れた剥離安定性及びピンホールの形成に不利であり、同時に後の回路の作製にも不利である。これに基づいて、本発明の実施例では、前記ステップS12、前記ステップS13及びステップS14では好ましくはスパッタリングが採用され、スパッタリングのための電流は好ましくは6-12Aであり、電圧は好ましくは300-500Vである。スパッタリングにより形成された前記金属接着層22及び前記耐熱層21は、均一かつ緻密なバリア層2を得ることを確保するように、バリア層2を構成し、スパッタリングにより均一かつ緻密な剥離層3を形成し、それによって複合金属箔の剥離の安定性を向上させることに有利であり、かつピンホールの数を効果的に減らすことができ、また、前記金属箔層4は、好ましくは、電気めっきにより形成され、金属箔層4が形成される前に、スパッタリングに均一かつ緻密なバリア層2と剥離層3を形成することにより、前記金属箔層4の均一な電気めっきに有利であり、それによって形成された前記金属箔層4の表面の粗さが均一になり、さらに後の回路の作製に有利であり、かつより薄い前記金属箔層4を作製することに有利である。
【0041】
本発明の実施例では、前記キャリア層1の一側に金属接着層22を形成することは、具体的には、前記キャリア層1の一側に単金属層を形成することであり、ここで、前記キャリア層1の一側に形成される単金属層は、第1のタイプの金属又は第2のタイプの金属で作製される。
【0042】
本発明の実施例では、前記キャリア層1の一側に金属接着層22を形成することは、具体的には、前記キャリア層1の一側に単層合金構造を形成することであり、ここで、前記キャリア層1の一側に形成された単層合金構造は、第1のタイプの金属と第2のタイプの金属で作製される。
【0043】
本発明の実施例では、前記キャリア層1の一側に金属接着層22を形成することは、具体的には、前記キャリア層1の一側に多層構造を形成することであってもよく、ここで、前記キャリア層1の一側に形成された多層構造は、第1のタイプの金属で作製されかつ前記キャリア層1に接続された単金属層を含み、前記キャリア層1に形成された多層構造は第2のタイプの金属で作製されかつ前記耐熱層21に接続された単金属層である。
【0044】
本発明の実施例では、前記キャリア層1の一側に金属接着層22を形成することは、具体的には、前記キャリア層1の一側に多層構造を形成することであってもよく、ここで、前記キャリア層1の一側に形成された多層構造は、合金層と単金属層を含み、前記キャリア層1の一側に形成された多層構造の合金層は、第1のタイプの金属と第2のタイプの金属で作製され、前記キャリア層1の一側に形成された多層構造の単金属層は、第1のタイプの金属又は第2のタイプの金属で作製される。
【0045】
前記耐熱層21は、有機耐熱層21であってもよく、又は、前記耐熱層21は、単層合金構造であり、又は、前記耐熱層21は、単一の材料層で構成された多層構造、又は合金層と単一の材料層で構成された多層構造であり、前記単一の材料層は、同じ化学元素で作製され、ここで、前記耐熱層21は、有機耐熱層21であり、又は、前記耐熱層21は、タングステン、クロム、ジルコニウム、チタン、ニッケル、モリブデン、コバルト及びグラファイトのいずれかの1種類又は複数種類の材料で作製される。
【0046】
本発明の実施例では、キャリア層1を形成する前記ステップの後、
前記キャリア層1を粗面化して、粗面化されたキャリア層1を得るステップS111と、
粗面化されたキャリア層1に第1の酸化防止層を形成するステップS112とをさらに含み、
ここで、前記キャリア層1は、キャリア銅又はキャリアアルミニウムであってもよい。
【0047】
前記キャリア層1は、電気めっきにより形成されてもよく、キャリア層1を形成するためのめっき液は、硫酸銅溶液を含むことができ、ここで、前記キャリア層1を形成するためのめっき液の銅含有量が15-25g/Lであり、pH値が6-9であり、前記キャリア層1を形成するためのめっき液は、さらに添加剤を含み、前記添加剤は光沢剤スルホン酸ナトリウム、レベリング剤チオ尿素、湿潤剤ポリエチレングリコールを含み、前記光沢剤スルホン酸ナトリウムの質量分率は好ましくは0.1-2g/Lであり、前記レベリング剤チオ尿素の質量分率は好ましくは0.01-1g/Lであり、湿潤剤ポリエチレングリコールの質量分率は好ましくは0.1-5g/である。前記キャリア層1は、酸性電気めっきにより粗面化されてもよく、ここで、酸性銅めっきのためのめっき液は、硫酸銅溶液を含むことができ、酸性銅めっきのためのめっき液の銅含有量は10-15g/Lであり、酸含有量が90-100g/Lであり、モリブデン含有量は600-800PPMである。
【0048】
ここで、前記第1の酸化防止層は、亜鉛-ニッケル合金めっきの形で形成されてもよく、また、粗面化されたキャリア層1上に第1の酸化防止層が形成された後、前記第1の酸化防止層に対してプラズマ(plasma)洗浄を行うことができ、ここで、プラズマ(plasma)洗浄を行うときの電圧は、好ましくは1500-2500Vであり、電流は好ましくは0.1-1.5Aである。
【0049】
本発明の実施例では、キャリア層1と金属箔層4との間の接着をさらに防止するために、本実施例におけるキャリア層1を形成する前記ステップの後に、
前記キャリア層1に対して熱処理条件下でアニーリング処理を行うステップであって、前記熱処理条件が、熱処理温度が200-300℃であり、加熱時間が30-300分であることであるステップS113をさらに含む。好ましくは、前記加熱時間は1時間である。前記キャリア層1に対して熱処理条件下でアニーリング処理を行って、加熱工程におけるキャリア層1の結晶成長を抑制することにより、加熱工程におけるキャリア層1の拡散を遅らせ、さらにキャリア層1及び金属箔層4との間の接着を防止する。
【0050】
本発明の実施例では、前記剥離層3は、ニッケル、シリコン、モリブデン、グラファイト、チタン及びニオブのいずれかの1種類又は複数材料で作製されてもよい。
【0051】
本発明の実施例では、前記金属箔層4は銅箔又はアルミ箔であってもよい。前記金属箔層4は、電気めっきにより形成されてもよく、前記金属箔層4を形成するためのめっき液は、硫酸銅溶液を含むことができ、ここで、前記金属箔層4を形成するためのめっき液の銅含有量が15-25g/Lであり、pH値が6-9であり、前記金属箔層4を形成するためのめっき液は、添加剤を含み、前記添加剤は光沢剤スルホン酸ナトリウム、レベリング剤チオ尿素、湿潤剤ポリエチレングリコールを含み、前記光沢剤スルホン酸ナトリウムの質量分率は好ましくは0.1-2g/Lであり、前記レベリング剤チオ尿素の質量分率は好ましくは0.01-1g/Lであり、前記湿潤剤ポリエチレングリコールの質量分率は好ましくは0.1-5g/である。本発明の実施例では、複合金属箔の反りを回避するために、前記キャリア層1と前記金属箔層4を作製するためのめっき液は、同じに設定され、これにより、前記キャリア層1と前記金属箔層4の応力作用と引っ張り力作用は同じであり、それによって前記キャリア層1と前記金属箔層4の曲がりは同じであり、さらに複合金属箔の反りを回避する。
【0052】
本発明の実施例では、前記複合金属箔層の作製方法は、
前記金属箔層4の前記キャリア層1から離れる面に対して粗面化処理を行うステップS31と、
粗面化された前記金属箔層4の前記キャリア層1から離れる面上に第2の酸化防止層を形成するステップS32とをさらに含む。
【0053】
ここで、前記金属箔層4の前記キャリア層1から離れる面に対して粗面化処理を行う前記ステップは、酸性電気めっきにより実行されてもよく、ここで、酸性銅めっきのためのめっき液は、硫酸銅溶液を含むことができ、酸性銅めっきのためのめっき液の銅含有量は10-15g/Lであり、酸含有量が90-100g/Lであり、モリブデン含有量は600-800PPMであり、ここで、前記第2の酸化防止層は、亜鉛-ニッケル合金めっきの形で形成されてもよく、また、第2の酸化防止層が形成された後、前記第2の酸化防止層に対してプラズマ(plasma)洗浄を行うことができ、ここで、プラズマ(plasma)洗浄を行うときの電圧は、好ましくは1500-2500Vであり、電流は好ましくは0.1-1.5Aである。
【0054】
以下、次の実施例は、複合金属箔の作製方法を説明するために提供され、具体的には次のとおりである。
【0055】
実施例1
S41において、電気めっきによりキャリア層1を形成し、前記キャリア層1を粗面化し、次にキャリア層1に第1の酸化防止層を形成し、前記キャリア層1に対して熱処理条件下でアニーリング処理を行い、ここで、前記熱処理条件は、熱処理温度が250℃であり、加熱時間が1時間であることであり、前記キャリア層1は、キャリア銅であり、前記キャリア層1を形成するためのめっき液は、硫酸銅溶液を含み、ここで、前記キャリア層1を形成するためのめっき液の銅含有量が20g/Lであり、pH値が7であり、前記キャリア層1を形成するためのめっき液は、さらに添加剤を含み、前記添加剤は光沢剤スルホン酸ナトリウム、レベリング剤チオ尿素、湿潤剤ポリエチレングリコールを含み、前記光沢剤スルホン酸ナトリウムの質量分率は好ましくは0.8g/Lであり、前記レベリング剤チオ尿素の質量分率は好ましくは0.5/Lであり、湿潤剤ポリエチレングリコールの質量分率は好ましくは3g/Lである。また、前記キャリア層1は、酸性電気めっきにより粗面化されてもよく、ここで、酸性銅めっきのためのめっき液は、硫酸銅溶液を含み、酸性銅めっきのためのめっき液の銅含有量は13g/Lであり、酸含有量が95g/Lであり、モリブデン含有量は700PPMである。ここで、前記第1の酸化防止層は、亜鉛-ニッケル合金めっきの形で形成される。
【0056】
S42において、スパッタリングにより金属接着層22を前記キャリア層1の一側に形成し、ここで、前記金属接着層22は、銅金属層とニッケル金属層で構成された構造であり、かつ銅金属層は、前記キャリア層1に接続され、ニッケル金属層は、前記耐熱層21に接続されている。
【0057】
S43において、スパッタリングにより耐熱層21を前記金属接着層22に形成し、前記金属接着層22と前記耐熱層21は、バリア層2を構成し、ここで、前記耐熱層21はタングステン-チタン合金で作製された単層合金構造である。
【0058】
S44において、スパッタリングにより剥離層3を前記バリア層2に形成し、ここで、前記剥離層3はグラファイト層である。
【0059】
S45において、電気めっきにより金属箔層4を前記剥離層3上に形成し、ここで、前記金属箔層4は銅箔であり、前記金属箔層4を形成するためのめっき液は、前記キャリア層1に使用されるめっき液と同じである。
【0060】
S46において、前記金属箔層4の前記キャリア層1から離れる面に対して粗面化処理を行い、酸性電気めっきにより、粗面化された前記金属箔層4の前記キャリア層1から離れる面に第2の酸化防止層を形成し、ここで、酸性銅めっきのためのめっき液は、硫酸銅溶液を含み、酸性銅めっきのためのめっき液の銅含有量は13g/Lであり、酸含有量が95g/Lであり、モリブデン含有量は700PPMであり、ここで、前記第2の酸化防止層は、亜鉛-ニッケル合金めっきの形で形成されてもよい。
【0061】
実施例2
本実施例と実施例1の違いは、前記耐熱層21がタングステン-ニッケル合金で作製された単層合金構造であることである。本実施例の他のプロセス及びステップは、実施例1と同じであるため、ここではより多くの説明を省略する。
【0062】
実施例3
本実施例と実施例1の違いは、前記耐熱層21がタングステン-モリブデン合金で作製された単層合金構造であることである。本実施例の他のプロセス及びステップは、実施例1と同じであるため、ここではより多くの説明を省略する。
【0063】
実施例4
本実施例と実施例1の違いは、前記耐熱層21がクロム-ニッケル合金で作製された単層合金構造であることである。本実施例の他のプロセス及びステップは、実施例1と同じであるため、ここではより多くの説明を省略する。
【0064】
実施例5
本実施例と実施例1の違いは、前記耐熱層21がジルコニウム-チタン合金で作製された単層合金構造であることである。本実施例のプロセス及びステップは、実施例1と同じであるため、ここではより多くの説明を省略する。
【0065】
実施例6
本実施例と実施例1の違いは、前記耐熱層21がチタン-ニッケル合金で作製された単層合金構造であることである。本実施例の他のプロセス及びステップは、実施例1と同じであるため、ここではより多くの説明を省略する。
【0066】
実施例7
本実施例と実施例1の違いは、前記耐熱層21がチタン-モリブデン合金で作製された単層合金構造であることである。本実施例の他のプロセス及びステップは、実施例1と同じであるため、ここではより多くの説明を省略する。
【0067】
実施例8
本実施例と実施例1の違いは、前記耐熱層21がチタン-コバルト合金で作製された単層合金構造であることである。本実施例の他のプロセス及びステップは、実施例1と同じであるため、ここではより多くの説明を省略する。
【0068】
実施例9
本実施例と実施例1の違いは、前記耐熱層21がニッケル-モリブデン合金で作製された単層合金構造であることである。本実施例のプロセス及びステップは、実施例1と同じであるため、ここではより多くの説明を省略する。
【0069】
実施例10
本実施例と実施例1の違いは、前記耐熱層21がモリブデン-コバルト合金で作製された単層合金構造であることである。本実施例のプロセス及びステップは、実施例1と同じであるため、ここではより多くの説明を省略する。
【0070】
実施例11
本実施例と実施例1の違いは、前記耐熱層21がタングステン金属層とグラファイト層で作製された構造であり、かつタングステン金属層は前記金属接着層22に接続され、グラファイト層は前記剥離層3に接続されている。本実施例の他のプロセス及びステップは、実施例1と同じであるため、ここではより多くの説明を省略する。
【0071】
実施例12
本実施例と実施例1の違いは、前記耐熱層21がクロム金属層とグラファイト層で作製された構造であり、かつクロム金属層は前記金属接着層22に接続され、グラファイト層は前記剥離層3に接続されている。本実施例の他のプロセス及びステップは、実施例1と同じであるため、ここではより多くの説明を省略する。
【0072】
実施例13
本実施例と実施例1の違いは、前記耐熱層21がニッケル金属層とグラファイト層で作製された構造であり、かつニッケル金属層は前記金属接着層22に接続され、グラファイト層は前記剥離層3に接続されている。本実施例の他のプロセス及びステップは、実施例1と同じであるため、ここではより多くの説明を省略する。
【0073】
実施例14
本実施例と実施例1の違いは、前記耐熱層21がタングステン-ニッケル合金とクロム金属層で作製された構造であり、かつタングステン-ニッケル合金は、前記金属接着層22に接続され、クロム金属層は前記剥離層3に接続されている。本実施例の他のプロセス及びステップは、実施例1と同じであるため、ここではより多くの説明を省略する。
【0074】
実施例15
本実施例と実施例1の違いは、前記耐熱層21がニッケル-モリブデン合金とクロム金属層で作製された構造であり、かつニッケル-モリブデン合金は前記金属接着層22に接続され、クロム金属層は前記剥離層3に接続されている。本実施例の他のプロセス及びステップは、実施例1と同じであるため、ここではより多くの説明を省略する。
【0075】
実施例16
本実施例と実施例1の違いは、前記耐熱層21がモリブデン-コバルト合金とクロム金属層で作製された構造であり、かつモリブデン-コバルト合金は、前記金属接着層22に接続され、クロム金属層は前記剥離層3に接続されている。本実施例の他のプロセス及びステップは、実施例1と同じであるため、ここではより多くの説明を省略する。
【0076】
実施例17
本実施例と実施例1の違いは、前記耐熱層21がチタン-ニッケル合金とクロム金属層で作製された構造であり、かつチタン-ニッケル合金は、前記金属接着層22に接続され、クロム金属層は前記剥離層3に接続されている。本実施例の他のプロセス及びステップは、実施例1と同じであるため、ここではより多くの説明を省略する。
【0077】
実施例18
S41において、電気めっきによりキャリア層1を形成し、前記キャリア層1を粗面化し、次にキャリア層1に第1の酸化防止層を形成し、前記キャリア層1に対して熱処理条件下でアニーリング処理を行い、ここで、前記熱処理条件は、熱処理温度が250℃であり、加熱時間が1時間であることであり、前記キャリア層1は、キャリア銅であり、前記キャリア層1を形成するためのめっき液は、硫酸銅溶液を含み、ここで、前記キャリア層1を形成するためのめっき液の銅含有量が20g/Lであり、pH値が7であり、前記キャリア層1を形成するためのめっき液は、さらに添加剤を含み、前記添加剤は光沢剤スルホン酸ナトリウム、レベリング剤チオ尿素、湿潤剤ポリエチレングリコールを含み、前記光沢剤スルホン酸ナトリウムの質量分率は好ましくは0.8g/Lであり、前記レベリング剤チオ尿素の質量分率は好ましくは0.5/Lであり、湿潤剤ポリエチレングリコールの質量分率は好ましくは3g/Lである。また、また、酸性電気めっきにより、前記キャリア層1に対して第1の粗面化処理を行うことができ、ここで、酸性銅めっきのためのめっき液は、硫酸銅溶液を含み、酸性銅めっきのためのめっき液の銅含有量は13g/Lであり、酸含有量が95g/Lであり、モリブデン含有量は700PPMである。ここで、前記第1の酸化防止層は、亜鉛-ニッケル合金めっきの形で形成される。
【0078】
S42において、スパッタリングにより金属接着層22を前記キャリア層1の一側に形成し、ここで、前記金属接着層22は、銅金属層とニッケル金属層で構成された構造であり、かつ銅金属層は、前記キャリア層1に接続され、ニッケル金属層は、前記耐熱層21に接続され、金属接着層22の厚さは60Åである。
【0079】
S43において、スパッタリングにより耐熱層21を前記金属接着層22に形成し、前記金属接着層22と前記耐熱層21は、バリア層2を構成し、ここで、前記耐熱層21はチタン金属層であり、耐熱層21の厚さは200Åである。
【0080】
S44において、スパッタリングにより剥離層3を前記バリア層2に形成し、ここで、前記剥離層3はグラファイト層であり、その厚さが45Åである。
【0081】
S45において、電気めっきにより金属箔層4を前記剥離層3上に形成し、ここで、前記金属箔層4は銅箔であり、前記金属箔層4を形成するためのめっき液は、前記キャリア層1に使用されるめっき液と同じであり、その厚さが4μmである。
【0082】
S46において、前記金属箔層4の前記キャリア層1から離れる面に対して第2の粗面化処理を行い、酸性電気めっきにより、粗面化された前記金属箔層4の前記キャリア層1から離れる面に第2の酸化防止層を形成し、ここで、酸性銅めっきのためのめっき液は、硫酸銅溶液を含み、酸性銅めっきのためのめっき液の銅含有量は13g/Lであり、酸含有量が95g/Lであり、モリブデン含有量は700PPMであり、ここで、前記第2の酸化防止層は、亜鉛-ニッケル合金めっきの形で形成されてもよい。
【0083】
実施例19
本実施例と実施例18の違いは、金属接着層22は、銅金属層である。本実施例の他のプロセス及びステップは、実施例1と同じであるため、ここではより多くの説明を省略する。
【0084】
実施例20
本実施例と実施例18の違いは、キャリア層1と金属箔層4を形成するためのめっき液の組成は同じであり、かつめっき液の銅含有量が20g/Lであり、pH値が7であり、添加剤は光沢剤スルホン酸ナトリウム、レベリング剤チオ尿素及び湿潤剤ポリエチレングリコールを含み、光沢剤スルホン酸ナトリウムの質量分率は0.8g/Lであり、レベリング剤チオ尿素の質量分率は0.5g/Lであり、湿潤剤ポリエチレングリコールの質量分率は3g/Lである。
【0085】
実施例21
本実施例と実施例18の違いは、金属接着層22、バリア層2及び剥離層3が蒸着めっきにより形成されていることである。
【0086】
実施例22
本実施例と実施例18の違いは、アニーリング処理温度が150℃であり、加熱時間が120分であることである。
【0087】
実施例23
本実施例と実施例18の違いは、第1の粗面化処理と第2の粗面化処理が行われないことである。
【0088】
比較例1
本実施例と実施例1の違いは、前記キャリア層1が形成された後、前記バリア層2を作製しないが、剥離層3を前記キャリア層1上に直接形成することである。本実施例の他のプロセス及びステップは、実施例1と同じであるため、ここではより多くの説明を省略する。
【0089】
比較例2
本実施例と実施例1の違いは、前記金属接着層22が形成された後、前記耐熱層21を作製せず、剥離層3を前記金属接着層22上に直接形成することである。本実施例の他のプロセス及びステップは、実施例1と同じであるため、ここではより多くの説明を省略する。
【0090】
比較例3
この実施例と実施例1の違いは、前記キャリア層1が形成された後、前記金属接着層22を作製せず、耐熱層21を前記前記キャリア層1上に直接形成することである。本実施例の他のプロセス及びステップは、実施例1と同じであるため、ここではより多くの説明を省略する。
【0091】
表1は実施例1-23で作製された複合金属箔に対して常温条件下(例えば16-27℃であり、25℃を例とする)で複数回のテストを行い、又は異なる温度(200℃と340℃)で可撓性絶縁ベースフィルムにそれぞれ圧着した後、常温条件下でテストを複数回行ったテスト結果、テストされた前記キャリア層1と前記キャリア層1との間の剥離強度、及び剥離層3と前記金属箔層4との間の剥離強度である。
【0092】
【0093】
前記キャリア層1と前記金属箔層4が高温条件下である程度の相互拡散が発生するため、前記キャリア層1と前記金属箔層4は、ある程度接着し、したがって、前記キャリア層1と前記バリア層2との間の剥離強度及び前記剥離層3と前記金属箔層4との間の剥離強度は、温度の上昇に伴って増加するが、表1から、実施例1-17で作製された複合金属箔は、常温又は高温条件に関わらず、前記キャリア層1と前記バリア層2との間のクロスカットテストレベルがすべてトップ3位であることがわかり、即ち前記キャリア層1と前記バリア層2との間の接着力が大きく、前記剥離層3と前記金属箔層4との間の剥離強度が非常に小さく、そのため、前記キャリア層1と前記バリア層2との間の剥離強度が常に前記剥離層3と前記金属箔層4との間の剥離強度よりもはるかに大きく、したがって、前記複合金属箔を使用する場合、前記キャリア層1、前記バリア層2及び前記剥離層3を同時に前記金属箔層4から容易に剥離することができる。実施例18-23を比較すると、金属箔の作製過程のプロセス条件は、本出願の好ましい範囲内に限定され、金属箔の総合性能を向上させることに有利できることがわかる。比較例1-3で作製された複合金属箔が高温条件下で相互に拡散する状況が深刻であるため、前記キャリア層1と前記金属箔層4は高度に接着し、その結果、複合金属箔を使用するときに、前記キャリア層1、前記バリア層2と前記剥離層3を金属箔層4から同時に剥離することは不便である。
【0094】
上述したように、本発明の実施例に係る複合金属箔及びその製造方法では、複合金属箔は、順次積層されて設けられたキャリア層1、バリア層2、剥離層3及び金属箔層4を含み、バリア層2が積層されて設けられた金属接着層22と耐熱層21とを含み、金属接着層22がキャリア層1と耐熱層21との間に設けられ、キャリア層1と金属箔層4との間に剥離層3を設けることにより、キャリア層1の剥離が容易になり、キャリア層1と金属箔層4との間にバリア層2を設けることにより、キャリア層1と金属箔層4が高温で相互に拡散して接着することを防止し、それによってキャリア層1と金属箔層4の剥離が容易になり、また、キャリア層1と耐熱層21との間に金属接着層22を設けることにより、バリア層2は、キャリア層1から容易に分離されなく、それによってバリア層2とキャリア層1との間の剥離が防止される。
【0095】
上記のものは、本発明の好ましい実施形態だけであり、当業者であれば、本発明の技術原理から逸脱することなく、いくつかの改良及び置換を行うことができ、これらの改良及び置換も本発明の保護範囲と見なされるべきである。
【符号の説明】
【0096】
1 キャリア層
2 バリア層
21 耐熱層
22 金属接着層
221 第1のタイプの金属単層構造
222 第2のタイプの金属単層構造
3 剥離層
4 金属箔層。