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▶ グラクソスミスクライン、インテレクチュアル、プロパティー、ディベロップメント、リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】組合せ処置およびその方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230703BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230703BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230703BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20230703BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20230703BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230703BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230703BHJP
【FI】
A61K39/395 U ZNA
A61K39/395 L
A61P37/04
A61K47/68
A61K38/07
A61K38/08
A61P35/00
A61P43/00 121
C07K16/28
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022017397
(22)【出願日】2022-02-07
(62)【分割の表示】P 2018528280の分割
【原出願日】2016-12-01
(65)【公開番号】P2022068232
(43)【公開日】2022-05-09
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】62/261,481
(32)【優先日】2015-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513032275
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン、インテレクチュアル、プロパティー、ディベロップメント、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE INTELLECTUAL PROPERTY DEVELOPMENT LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】パトリック、エイ.メイズ
(72)【発明者】
【氏名】ローラ、エム.シースタラー-ベーア
(72)【発明者】
【氏名】リューベン、ツベトコフ
(72)【発明者】
【氏名】ニランジャン、ヤナマンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ジンソン
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/069770(WO,A1)
【文献】ANONYMOUS,A PHASE I OPEN-LABEL, DOSE ESCALATION STUDY TO INVESTIGATE THE SAFETY, PHARMACOKINETICS,CLINICALTRIALS.GOV ARCHIVE,2015年11月13日,P1-6,https://clinicaltrials.gov/archive/NCT02064387/2015_11_13
【文献】LYMPHOID NEOPLASIA,REGULAR ARTICLE NOVEL ANTI-B-CELL MATURATION ANTIGEN ANTIBODY-DRUG CONJUGATE (GSK2857916),BLOOD,2014年02月25日,VOL:123, NR:20,,PAGE(S):3128 - 3138,https://doi.org/10.1182/blood-2013-10-535088
【文献】RYAN MAUREEN C,ANTIBODY TARGETING OF B-CELL MATURATION ANTIGEN ON MALIGNANT PLASMA CELLS,MOLECULAR CANCER THERAPEUTICS,2007年11月,VOL:6, NR:11,,PAGE(S):3009 - 3018,http://dx.doi.org/10.1158/1535-7163.MCT-07-0464
【文献】IGNACIO MELERO,EVOLVING SYNERGISTIC COMBINATIONS OF TARGETED IMMUNOTHERAPIES TO COMBAT CANCER,NATURE REVIEWS CANCER,2015年07月24日,VOL:15,PAGE(S):457-472,http://dx.doi.org/10.1038/nrc3973
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 45/00-45/08
A61K 47/00-47/69
A61K 38/00-38/58
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)治療上有効な量のBCMAに結合する抗体と、2)治療上有効な量のPD-1に結合する抗体とを含んでなり、前記BCMAに結合する抗体が免疫複合体として細胞傷害性薬剤とコンジュゲートされ、かつ、該細胞傷害性薬剤がMMAEまたはMMAFである、癌の処置において使用するための組合せ物。
【請求項2】
前記細胞傷害性薬剤がリンカーを介して前記BCMAに結合する抗体とコンジュゲートされ、かつ、該リンカーがシトルリン-バリンまたはマレイミドカプロイルである、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項3】
前記BCMAに結合する抗体が配列番号200のCDRH3変異体N99Dを含んでなる、請求項1または2に記載の組合せ物。
【請求項4】
前記BCMAに結合する抗体が配列番号3のCDRH3またはその変異体を含んでなる、請求項1または2に記載の組合せ物。
【請求項5】
前記BCMAに結合する抗体が配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項6】
前記BCMAに結合する抗体が配列番号23の重鎖可変領域と配列番号31の軽鎖可変領域とを含んでなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の組合せ物。
【請求項7】
PD-1に結合する抗体がペンブロリズマブまたはニボルマブである、請求項1に記載の組合せ物。
【請求項8】
i)配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体を含んでなり、MMAFとコンジュゲートされた免疫複合体
ii)ペンブロリズマブまたはニボルマブ
とを含んでなる、癌の処置において使用するための組合せ物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の組合せ物を含んでなる、癌の処置において使用するための医薬組成物。
【請求項10】
ヒトにおいて癌の処置において使用するための、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記癌が、多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病、くすぶり型多発性骨髄腫、ワルデンストロームマクログロブリン血症、形質細胞白血病、または非ホジキンリンパ腫性である、請求項または10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
BCMAに結合する抗体と、PD-1に結合する抗体を同時にまたはいずれの順序で逐次的に投与する、請求項11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
BCMAに結合する抗体と、PD-1に結合する抗体を同じまたは異なる経路で投与する、請求項12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
1)治療上有効な量のBCMAに結合する抗体と、2)治療上有効な量のPD-1に結合する抗体とを含んでなる組合せ物を含む、原発性アミロイドーシス(AL)の処置において使用するための医薬組成物であって、前記BCMAに結合する抗体が免疫複合体として細胞傷害性薬剤とコンジュゲートされ、かつ、該細胞傷害性薬剤がMMAEまたはMMAFである、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本出願は、2015年12月1日出願の米国出願第62/261,481号に対する優先権を主張するものであり、その開示は引用することにより本明細書の一部とされる。
【0002】
配列表
本出願はASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、これは引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる。2016年11月30日に作成された前記ASCIIコピーは、PB65987WO_SL.txtの名称で、293,882バイトのサイズである。
【技術分野】
【0003】
本発明は、ヒトBCMAに対するモノクローナル抗体を含む抗BCMA抗原結合タンパク質を、抗PD-1抗原結組合せおよび/または抗OX40抗原結合タンパク質などの免疫調節薬と組み合わせて含んでなる組合せに関する。さらに本発明は、ヒトなどの哺乳動物の癌の処置における前記組合せの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
癌を含む過剰増殖性障害の有効な処置は、腫瘍学の分野で継続的な目標である。一般に、癌は、細胞分裂、分化およびアポトーシス細胞死を制御する正常なプロセスの脱調節から生じ、無限成長、局部的拡大および全身転移の能力を有する悪性細胞の増殖を特徴とする。正常なプロセスの脱調節は、シグナル伝達経路の異常および正常細胞で視られるものとは異なる因子に対する応答を含む。
【0005】
免疫療法は過剰増殖性障害を処置するための1つのアプローチである。科学者および臨床医が様々なタイプの癌免疫療法の開発で遭遇した主要なハードルは、腫瘍退縮をもたらすロバストな抗腫瘍応答を惹起するために自己抗原(癌)に対する免疫寛容を破ることであった。腫瘍を標的とする低分子および高分子薬剤の従来の開発とは異なり、癌免疫療法は、より持続的な効果を誘導し、かつ、再発を最小にするために、エフェクター細胞の記憶プールを生成する能力を有する免疫系の細胞を標的とする。
【0006】
BCMA(CD269またはTNFRSF17)は、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーである。BCMAは、リガンドBAFFおよびAPRILに対する非グリコシル化内在性膜受容体である。BCMAのリガンドはまた、さらなる受容体、すなわち、APRILおよびBAFFに結合するTACI(膜貫通アクチベーターおよびカルシウムモジュレーターおよびシクロフィリンリガンドインターアクター(Transmembrane Activator and Calcium modulator and cyclophilin ligand Interactor))、ならびにBAFFに対して限定されているが高い親和性を示すBAFF-R(BAFF受容体またはBR3)にも結合する。考え合わせると、これらの受容体およびそれらの対応するリガンドは、体液性免疫、B細胞発達およびホメオスタシスの異なる側面を調節する。
【0007】
BCMAの発現は一般にB細胞系譜に限定され、最終的なB細胞分化を増大することが報告されている。BCMAは、ヒト血漿芽細胞、扁桃、脾臓および骨髄由来の形質細胞により発現されるが、扁桃記憶B細胞によっても、また、TACI-BAFFR低表現型を有する胚中心B細胞でも発現される(Darce et al,2007)。BCMAはナイーブB細胞および記憶B細胞には実質的に存在しない(Novak et al., 2004aおよびb)。BCMA抗原は細胞表面に発現されるので抗体に接近可能であるが、ゴルジ体でも発現される。その発現プロフィールによって示唆されるように、BCMAシグナル伝達は一般にB細胞の生存および増殖に関連し、B細胞分化の後期段階、ならびに長期生存型骨髄形質細胞(O’Connor et al.,2004)および血漿芽細胞(Avery et al.,2003)の生存に重要である。さらに、BCMAはAPRILに高い親和性で結合するので、BCMA-APRILシグナル伝達軸は、おそらく生理学上最も関連のある相互作用であるB細胞分化のより後期の段階で優勢となることが示唆される。
【0008】
BCMAに結合しシグナル伝達を調節する抗原結合タンパク質および抗体は当技術分野で公知であり、例えば癌のための免疫療法として開示されている。
【0009】
PD-1リガンドであるPD-L1およびPD-L2が、T細胞上に見られるPD-1受容体に結合すると、T細胞の増殖およびサイトカイン産生が阻害される。PD-1リガンドのアップレギュレーションがいくつかの腫瘍に見られ、この経路を介するシグナル伝達は、腫瘍の活発なT細胞免疫監視の阻害に寄与し得る。PD-1受容体と結合しPD-L1およびPD-L2とのその相互作用を遮断する抗原結合タンパク質および抗体は、抗腫瘍免疫応答を含む免疫応答のPD-1経路により媒介される阻害を解除する可能性がある。
【0010】
抗腫瘍T細胞機能の増進とT細胞増殖の誘導は、癌治療の有力かつ新規なアプローチである。3つの免疫腫瘍学的抗体(例えば、免疫調節薬)が現在上市している。抗CTLA-4(ヤーボイ(登録商標)/イピリムマブ)は、T細胞プライミングの点で免疫応答を増強すると思われ、抗PD-1抗体(オプジーボ(登録商標)/ニボルマブおよびキートルーダ(登録商標)/ペンブロリズマブ)は、すでにプライムされ活性化されている腫瘍特異的T細胞において阻害チェックポイントを解除することによって局部の腫瘍微小環境で働くと思われる。
【0011】
OX40(例えば、ヒトOX40(hOX40)またはhOX40R)は、他の細胞の中でも、活性化されたCD4およびCD8 T細胞で発現される腫瘍壊死因子受容体ファミリーメンバーである。その機能の1つは、これらの細胞の分化および長期生存である。
OX40に対するリガンド(OX40L)は、活性化された抗原提示細胞により発現される。
【0012】
癌治療には近年の多くの進展があるが、依然として癌の影響を被る個人のより有効かつ/または増強された処置の必要がある。抗腫瘍免疫を増強するための治療アプローチを組み合わせるに関する本明細書の組合せおよび方法はこの必要に取り組むものである。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、治療上有効な量の、免疫調節標的に結合する免疫調節標的とを含んでなる組合せを提供する。抗原結合タンパク質の例としては、PD-1およびOX40が挙げられる。
【0014】
別の実施態様では、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、免疫複合体(例えば、抗体-薬物複合体(antibody-drug conjugate)(ADC))として細胞傷害性薬剤とコンジュゲートされる。細胞傷害性薬剤はMMAEまたはMMAFを含み得、細胞傷害性薬剤は、シトルリン-バリンまたはマレイミドカプロイルなどのリンカーを介してBCMAに結合する抗原結合タンパク質とコンジュゲートされ得る。
【0015】
一つの実施態様では、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、アンタゴニストである。別の実施態様では、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、IgG1モノクローナル抗体である。
【0016】
一つの実施態様では、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、配列番号3のCDRH3、配列番号200のCDRH3変異体N99D、またはそれらの変異体を含んでなる抗体である。別の実施態様では、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号3のCDRH3または配列番号200のCDRH3変異体N99D、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3およびそれらの変異体を含んでなる抗体である。さらに別の実施態様では、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、配列番号23の重鎖可変領域と配列番号31の軽鎖可変領域とを含んでなる抗体である。
【0017】
本発明は、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と治療上有効な量の、PD-1に結合する抗原結合タンパク質とを含んでなる組合せを提供する。
【0018】
一つの実施態様では、PD-1に結合する抗原結合タンパク質はアンタゴニストである。別の実施態様では、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、IgG4モノクローナル抗体である。
【0019】
一つの実施態様では、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、配列番号201のCDRH1、配列番号202のCDRH2、配列番号203のCDRH3、配列番号204のCDRL1、配列番号205のCDRL2、配列番号206のCDRL3、およびそれらの変異体を含んでなる。さらに別の実施態様では、PD-1と結合する抗原結合タンパク質は、配列番号207の重鎖可変領域と配列番号208の軽鎖可変領域とを含んでなる。
【0020】
さらに別の実施態様では、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、またはペンブロリズマブまたはニボルマブのいずれかと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列相同性を含んでなる抗体である。
【0021】
本発明は、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と治療上有効な量の、OX40と結合する抗原結合タンパク質とを含んでなる組合せを提供する。
【0022】
一つの実施態様では、OX40と結合する抗原結合タンパク質は、アゴニストである。
別の実施態様では、OX40と結合する抗原結合タンパク質は、IgG1モノクローナル抗体である。
【0023】
一つの実施態様では、OX40と結合する抗原結合タンパク質は、配列番号219のCDRH1、配列番号220のCDRH2、配列番号221のCDRH3、配列番号222のCDRL1、配列番号223のCDRL2、配列番号224のCDRL3、およびそれらの変異体を含んでなる。さらに別の実施態様では、OX40と結合する抗原結合タンパク質は、配列番号229の重鎖可変領域と配列番号230の軽鎖可変領域とを含んでなる。
【0024】
また、本発明の組合せを含んでなる医薬組成物も提供される。
【0025】
また、必要とする哺乳動物(例えば、ヒト)において癌を処置する方法であって、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と治療上有効な量の、免疫調節標的に結合する少なくとも1種類の抗原結合タンパク質とを含んでなる、治療上有効な量の組合せを投与することを含んでなる方法も提供される。一つの実施態様では、免疫調節標的は、PD1またはOX40である。一つの実施態様では、癌は、多発性骨髄腫(MM)または非ホジキンリンパ腫B細胞白血病(NHL)である。一つの実施態様では、BCMAに結合する抗原結合タンパク質およびPD-1またはOX40に結合する抗原結合タンパク質(the antigen binding)は同時または逐次に投与される。方法は組合せの全身(例えば、静脈内)投与または腫瘍内投与を提供する。
【0026】
本明細書では、癌の処置における本明細書に記載の組合せが提供される。
【0027】
癌の処置のための薬剤の製造における本明細書に記載の組合せの使用が企図される。
【0028】
適切には、本発明の医薬組成物を1種類以上の薬学上許容可能な担体とともに含んでなるキットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1.BCMA ADCはBCMA発現癌細胞株において免疫原性細胞死を誘導する 図1A)BCMA発現癌細胞株における免疫原性細胞死(Immunogenic cell death)(ICD)を示す模式図。ICDは、ATPおよびHMGB1の細胞内放出、および細胞膜でのCRTの露出としばしば関連付けられる特殊なタイプのアポトーシスである。ICDは、樹状細胞(dendritic cells)(DC)による抗原提示プロセスの関与を介して免疫応答を誘導する。
【0030】
図1B)BCMA-MMAFはBCMA+ MM細胞株においてATP、CRTおよびHMGB1を誘導する
供試細胞株を、抗BCMA-MMAF抗体薬物複合体またはミトキサントロンで48時間処理した後、1)自動フローサイトメトリーにより細胞数の損失を評価し、2)カルレティキュリン(calreticulin)(CRT)露出をポリクローナル抗CRT抗体でマークし、フローサイトメトリーにより評価し、3)細胞上清中のHMGB1含量をELISAにより評価し、続いて吸光度評価を行い、4)細胞上清中のATPを続いての発光評価により評価した。抗BCMA-MMAFは、BCMA陽性MM細胞株であるNCI-H929でのみ、ATP放出、HMGB1放出およびCRT露出を誘導する。
図2図2:免疫原性細胞死の誘導を介した樹状細胞成熟活性化の誘導 図2A)BCMA ADCで処理したNCI-H929多発性骨髄腫細胞との24時間の共培養後、3名の健常ドナーからのHLA-DR+樹状細胞においてCD83細胞表面発現が増大した。
【0031】
図2B)BCMA ADCで処理したNCI-H929多発性骨髄腫細胞との24時間の共培養後の3名の健常ドナーからのCD11c+樹状細胞においてCD40細胞表面発現を増大した。マーカー発現を、(a)非処理(BCMA ADC無し)樹状細胞単独および(b~f)(b)非処理(BCMA ADC無し)、(c)IgG対照(10μg/mL)、(d)0.1、(e)1および(f)10μg/mL BCMA ADC処理(48時間)NCI-H929細胞と共培養した樹状細胞で測定した。(g)樹状細胞の3μg/mLリポ多糖(LPS)処理を陽性対照として含めた。X軸:対数平均蛍光強度(MFI)。水平な線は、IgG対照のMFIを表す。
図3図3.NCI-H929細胞およびBCMA ADC処理NCI-H929細胞と未熟樹状細胞の共培養系の両方からのIL-10産生の抑制 図3Aおよび3B.IL-10は、2名の健常ヒトドナー由来樹状細胞とBCMA ADC処理NCI-H929多発性骨髄腫細胞の共培養からの上清で減少した。IL-10を、(a)非処理(BCMA ADC無し)樹状細胞単独および(b~f)(b)非処理(BCMA ADC無し)、(c)IgG対照(10μg/mL)、(d)0.1、(e)1および(f)10μg/mL BCMA ADC処理(48時間)NCI-H929細胞と共培養した樹状細胞で測定した。(g)樹状細胞の3μg/mLリポ多糖(LPS)処理を陽性対照として含めた。
【0032】
図3C.IL-10は、単独で培養したNCI-H929多発性骨髄腫細胞からの上清においてBCMA ADC処置で減少した。IL-10を、非処理(a)、IgG対照(b)、0.1(c)、1(d)、および10μg/mL BCMA ADC(e)処理(48時間)NCI-H929多発性骨髄腫細胞で測定した。
図4図4:ヒトT細胞に対するBCMA ADCの効果 図4A)BCMA ADCの存在下での24および72時間の抗CD3/抗CD28刺激後のPBMC中のCD4細胞における平均変化率%(Avg)とそのパーセンテージ(%)の変動係数(CV)およびマーカーのMFI; 図4B)BCMA ADCの存在下での24および72時間の抗CD3/抗CD28刺激後のPBMC中のCD8細胞における平均変化率%(Avg)とそのパーセンテージ(%)の変動係数(CV)およびマーカーのMFI; 図4C)BCMA ADCの存在下での48および72時間の抗CD3/抗CD28刺激を用いた場合の、IFNγおよびIL-4を発現するCD4およびCD8細胞の平均変化率%(Avg)とそのパーセンテージ(%)の変動係数(CV); 4D)CD4+およびCD8+ T細胞の増殖に対するBCMA ADCの効果。CD4+およびCD8+ T細胞を種々の濃度のBCMA ADCの存在下または不在下で抗CD3抗体および抗CD28抗体で刺激した。96時間後、細胞増殖をフローサイトメトリーによって分析した。データは3名の異なるドナーからの平均±SDを表す。
【0033】
BCMA-ADCは、ヒトT細胞に対して直接的効果を持つとは思われない。
図5図5:EL4-Luc2-hBCMAマウスにおける、腫瘍体積に対する抗BCMA抗体と抗OX40抗体の組合せの効果(図5A)および生存率(図5B)を示すグラフ。
図6図6:EL4-Luc2-hBCMAマウスにおける腫瘍体積に対するMMAFとコンジュゲートされた抗BCMA抗体と抗PD-1抗体の組合せの効果を示すグラフ。
図7図7:EL4-Luc2-hBCMAマウスにおける腫瘍体積に対するMMAFとコンジュゲートされた抗BCMA抗体と抗PD-1抗体の組合せの効果を示すグラフ。
【発明の具体的説明】
【0034】
組合せ
本発明の一つの実施態様では、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質またはそのフラグメントと治療上有効な量の、免疫調節標的に結合する抗原結合タンパク質またはそのフラグメントとを含んでなる組合せが提供される。
【0035】
本発明の一つの実施態様では、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質またはそのフラグメントと治療上有効な量の、PD-1に結合する抗原結合タンパク質またはそのフラグメント(an antigen binding protein of fragment thereof)を含んでなる組合せが提供される。
【0036】
本発明の一つの実施態様では、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質またはそのフラグメントと治療上有効な量の、OX40に結合する抗原結合タンパク質またはそのフラグメントとを含んでなる組合せが提供される。
【0037】
一つの実施態様では、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質またはそのフラグメント、治療上有効な量の、PD-1に結合する抗原結合タンパク質またはそのフラグメント(an antigen binding protein of fragment thereof)、および治療上有効な量の、OX40に結合する抗原結合タンパク質またはそのフラグメントを含んでなる組合せが提供される。
【0038】
BCMAと結合する抗原結合タンパク質
一つの実施態様では、BCMAと特異的に結合する、例えば、ヒトBCMA(hBCMA)と特異的に結合する抗原結合タンパク質(例えば、抗体)またはフラグメントが提供される。別の実施態様では、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、BAFFおよび/またはAPRILの、BCMA受容体への結合を阻害する。
【0039】
さらなる実施態様では、抗原結合タンパク質またはそれらのフラグメントは、FcγRIIIAと結合し、FcgRIIIAにより媒介されるエフェクター機能を媒介する能力を有するか、またはFcγRIIIAにより媒介されるエフェクター機能が増強されている。本明細書に提供される本発明の一つの実施態様では、抗原結合タンパク質は内部移行能がある。本明細書で提供される本発明の一つの特定の実施態様では、本明細書に記載される抗原結合タンパク質は迅速な内部移行能がある。例えば、抗原結合タンパク質は、12時間未満、または6時間未満、または120分未満で内部移行する。一つの実施態様では、抗原結合タンパク質は、30分未満、例えば、15分で内部移行する。抗原結合タンパク質の内部移行は、当技術分野で公知の技術を用いて、例えば、受容体に結合し細胞内小胞(エンドソームおよびリソソーム)と共局在したもしくは細胞質中に存在するBCMAを可視化するための共焦点顕微鏡によって、あるいはまた、内部移行を示すBCMの消失を伴った、細胞表面のBCMAの存在の経時的変動を検出するためのフローサイトメトリーによって測定することができる。
【0040】
さらなる実施態様では、本発明の抗原結合タンパク質は、エフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を有し、例えば、抗原結合タンパク質はADCCエフェクター機能が増強されている。
【0041】
さらなる実施態様では、抗原結合タンパク質は、細胞傷害性薬剤である薬物とコンジュゲートされて免疫複合体(例えば、抗体-薬物複合体(ADC))を形成する。一つのこのような実施態様では、細胞傷害性薬剤はオーリスタチンである。なおさらなる実施態様では、細胞傷害性薬剤は、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)またはモノメチルオーリスタチチンF(MMAF)である。一つの実施態様では、免疫複合体はADCCも増強されている。
【0042】
一つの実施態様では、細胞傷害性薬剤は、バリン-シトルリン(VC)またはマレイミドカプロイル(mc)などのリンカーを介して、BCMAに結合する抗原結合タンパク質
とコンジュゲートされる。
【0043】
一つのこのような実施態様では、免疫複合体は、免疫原性細胞死を引き起こすことができる。本発明の一つの実施態様では、非膜結合型BCMA、例えば、血清BCMAと結合する本明細書に記載される本発明による抗原結合タンパク質が提供される。
【0044】
別の例では、BCMAと結合する抗原結合タンパク質は、BCMAとBAFFまたはAPRILなどのBCMAリガンドとの結合を遮断するアンタゴニストである。
【0045】
一つの実施態様では、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、免疫グロブリン様ドメインまたはそのフラグメントを含む。別の実施態様では、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、モノクローナル抗体、例えば、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgE、それらのサブクラス、またはそれらの修飾変異体である。さらに別の実施態様では、BCMAに結合する抗原結合タンパク質はIgG抗体である。
【0046】
本発明の一つの実施態様では、配列番号3のCDRH3、配列番号200のCDRH3変異体N99D、またはそれらの変異体を含んでなる。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号3または配列番号200で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH3領域を含んでなる、本明細書に記載される抗原結合タンパク質が提供される。
【0047】
本発明のさらなる実施態様では、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2および/または配列番号6のCDRL3およびまたはそれらの変異体のうち1以上をさらに含んでなる、本明細書に記載される抗原結合タンパク質が提供される。
【0048】
本発明の一つの実施態様では、配列番号184のCDRH3または配列番号184の変異体を含んでなる、本明細書に記載される抗原結合タンパク質が提供される。
【0049】
本発明のさらなる実施態様では、配列番号182のCDRH1、配列番号183のCDRH2、配列番号185のCDRL1、配列番号186のCDRL2および/または配列番号187のCDRL3およびまたはそれらの変異体のうち1以上をさらに含んでなる、本明細書に記載される抗原結合タンパク質が提供される。
【0050】
なおさらなる実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3変異体N99D、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2および配列番号6のCDRL3を含んでなる。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号200、配列番号4、配列番号5および配列番号6で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDR領域を含んでなる。
【0051】
さらなる実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号3のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、および配列番号6のCDRL3を含んでなる。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5および配列番号6で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDR領域を含んでなる。
【0052】
なおさらなる実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号184のCDRH3、配列番号183のCDRH2、配列番号182のCDRH1、配列番号185のCDRL1、配列番号186のCDRL2および配列番号187のCDRL3を含んでなる。
【0053】
本発明の抗原結合タンパク質は、列番号7および配列番号9に記載される可変領域を有するマウス抗体、またはその非マウス等価物、例えば、そのラット、ヒト、キメラまたはヒト化変異体に由来し、例えば、それらは配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27および配列番号29に記載される重鎖可変配列ならびに/または配列番号31、配列番号33および/もしくは配列番号35に記載される軽鎖可変配列を有する抗体に由来する。
【0054】
別の実施態様では、本発明の抗原結合タンパク質は、配列番号116もしくは配列番号118の重鎖可変領域および/または配列番号120もしくは配列番号122に記載される軽鎖可変配列を有する抗体に由来する。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号116もしくは配列番号118で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域および/または配列番号120もしくは配列番号122で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなる。
【0055】
別の実施態様では、本発明の抗原結合タンパク質は、配列番号140の重鎖可変領域配列および/または配列番号144の軽鎖可変領域配列を有する抗体に由来する。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号140で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域および/または配列番号144で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなる。
【0056】
本発明の一つの実施態様では、以下:配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号116または配列番号118のうちのいずれか一つから選択される単離された重鎖可変領域を含んでなる抗原結合タンパク質が提供される。
【0057】
本発明の別の実施態様では、以下:配列番号31、配列番号33または配列番号35、配列番号120または配列番号122のうちのいずれか一つから選択される単離された軽鎖可変領域を含んでなる抗原結合タンパク質が提供される。
【0058】
本発明のさらなる実施態様では、以下:配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27および配列番号29のうちのいずれか一つから選択される単離された重鎖可変領域と、以下:配列番号31、配列番号33および/または 配列番号35のうちのいずれか一つから選択される単離された軽鎖可変領域とを含んでなる抗原結合タンパク質が提供される。
【0059】
一つの実施態様では、本発明の抗原結合タンパク質は、配列番号23の重鎖可変領域と配列番号31の軽鎖可変領域とを含んでなる。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号23で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域と、配列番号31で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域とを含んでなる。
【0060】
一つの実施態様では、本発明の抗原結合タンパク質は、配列番号27の重鎖可変領域と配列番号31の軽鎖可変領域とを含んでなる。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号27で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域と、配列番号31で示されるアミノ酸配列と.少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有すアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域とを含んでなる。
【0061】
一つの実施態様では、本発明の抗原結合タンパク質は、配列番号29の重鎖可変領域と配列番号31の軽鎖可変領域を含んでなる。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号29で示されるアミノ酸配列少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域と、配列番号31で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有すアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域とを含んでなる。
【0062】
一つの実施態様では、本発明の抗原結合タンパク質は、配列番号116の重鎖可変領域と配列番号120の軽鎖可変領域とを含んでなる。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号116で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域と、配列番号120で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域とを含んでなる。
【0063】
一つの実施態様では、本発明の抗原結合タンパク質は、配列番号118の重鎖可変領域と配列番号122の軽鎖可変領域とを含んでなる。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号118で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域と、配列番号122で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域とを含んでなる。
【0064】
一つの実施態様では、免疫複合体は、GSK2857916である。Tai, Blood, 123(2):3128-38 (2014)。GSK2857916は、マレイミドカプロイル(mc)リンカーを介してモノメチルオーリスタチチンF(MMAF)とコンジュゲートされた抗BCMA抗体を含んでなる。GSK2857916は、クローンJ6M0に由来し、配列番号55、配列番号63、配列番号23、配列番号31、配列番号1、配列番号2、配列番号200、配列番号4、配列番号5、および配列番号6のアミノ酸配列を含んでなる。
【0065】
一つの実施態様では、配列番号12、または配列番号14、または配列番号16、または配列番号18、または配列番号20、または配列番号22、または配列番号24、または配列番号26、または配列番号28、または配列番号30または配列番号117または配列番号119または配列番号141の単離された重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0066】
一つの実施態様では、配列番号32、または配列番号34、または配列番号36または配列番号121または配列番号123または配列番号145の単離された軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0067】
さらなる実施態様では、配列番号24、または配列番号28または配列番号30の単離された重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドおよび配列番号32、または配列番号34の単離された軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0068】
なおさらなる実施態様では、配列番号24の単離された重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドおよび配列番号32の単離された軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0069】
なおさらなる実施態様では、配列番号117の単離された重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドおよび配列番号121の単離された軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0070】
なおさらなる実施態様では、配列番号119の単離された重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドおよび配列番号123の単離された軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0071】
なおさらなる実施態様では、配列番号141の単離された重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドおよび配列番号145の単離された軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0072】
さらなる実施態様では、抗原結合タンパク質は、本明細書で記載される重鎖可変領域のいずれか一つを本明細書で記載される軽鎖可変領域のいずれか一つと組み合わせて含んでなり得る。いくつかの実施態様では、抗原結合タンパク質は、BCMA、例えば、ヒトBCMAに結合する(例えば、かつ拮抗する)ことができる。
【0073】
一つの実施態様では、抗原結合タンパク質は、本明細書に記載される本発明による1以上のCDR、または本明細書に記載される本発明による重鎖可変領域または軽鎖可変領域の一方もしくは両方を含んでなる抗体またはその抗原結合フラグメントである。一つの実施態様では、抗原結合タンパク質は霊長類BCMAに結合する。一つのこのような実施態様では、抗原結合タンパク質は加えて、非ヒト霊長類BCMA、例えば、カニクイザル マカクザルBCMAにも結合する。
【0074】
別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、dAb、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニ抗体、およびミニボディからなる群から選択される。
【0075】
本発明の一つの実施態様では、抗原結合タンパク質は、ヒト化またはキメラ抗体であり、さらなる実施態様では、抗体はヒト化されている。
【0076】
一つの実施態様では、抗体はモノクローナル抗体である。
【0077】
本発明の一つの実施態様では、配列番号55または配列番号59または配列番号61で示される重鎖配列を有する抗体が提供される。
【0078】
本発明の一つの実施態様では、配列番号63または配列番号65で示される軽鎖配列を有する抗体が提供される。
【0079】
本発明のさらなる実施態様では、配列番号55の重鎖配列および配列番号63で示される軽鎖配列を有する抗体が提供される。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号55で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖領域と、配列番号63で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる軽鎖領域とを含んでなる。
【0080】
一つの実施態様では、本明細書に記載される本発明の抗原結合タンパク質と競合する抗原結合タンパク質またはそのフラグメントが提供される。よって、一つのこのような実施態様では、配列番号23の重鎖可変配列と配列番号31の軽鎖可変領域とを含んでなる抗原結合タンパク質と競合する抗原結合タンパク質が提供する。
【0081】
よって、さらなる実施態様では、配列番号27、配列番号29、配列番号116、配列番号118および配列番号140のうち一つから選択される重鎖可変配列と、配列番号31、配列番号120、配列番号122および配列番号144のうち一つから選択される軽鎖可変領域とを含んでなる抗原結合タンパク質と競合する抗原結合タンパク質が提供される。
【0082】
本発明の一つの実施態様では、抗原結合タンパク質は、キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor)(CAR)である。さらなる実施態様では、CARは、結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内エフェクタードメインを含んでなる。
【0083】
一つの実施態様では、膜貫通ドメインは、天然源または合成源のいずれかに由来し得る。一つの実施態様では、膜貫通ドメインは、いずれの膜結合または膜貫通タンパク質に由来してもよい。あるいは、膜貫通ドメインは合成することもでき、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主要に含んでなることができる。例えば、膜貫通ドメインは、CD4、CD8、CD3もしくはCD28などのCDタンパク質の膜貫通ドメイン、α、β、γもしくはδなどのT細胞受容体のサブユニット、IL-2受容体のサブユニット(α鎖)、低親和性神経成長因子受容体(LNGFRもしくはp75)のサブユニット(submit)(β鎖もしくはγ鎖)、またはFc受容体のサブユニット鎖であり得る。一つの実施態様では、膜貫通ドメインは、CD4、CD8またはCD28の膜貫通ドメインを含んでなる。
さらなる実施態様では、膜貫通ドメインは、CD4またはCD8の膜貫通ドメイン(例えば、引用することにより本明細書の一部とされるNCBI参照配列:NP_001139345.1に記載されるCD8α鎖)を含んでなる。なおさらなる実施態様では、膜貫通ドメインは、CD4の膜貫通ドメインを含んでなる。
【0084】
細胞内エフェクタードメインまたは「シグナル伝達ドメイン」は、標的結合ドメインが標的に結合した後に細胞内シグナル伝達を担う。細胞内エフェクタードメインは、CARが発現される免疫細胞の通常のエフェクター機能のうち少なくとも1つの活性化を担う。
例えば、T細胞のエフェクター機能は、細胞溶解活性またはサイトカインの分泌を含むヘルパー活性であり得る。CAR足場における使用のためのエフェクタードメインの好ましい例は、天然T細胞受容体および補助受容体の細胞質配列、ならびに抗原結合後のシグナル伝達の開始と強調して働くこれらの配列の任意の誘導体または変異体および同じ機能的能力を有する任意の合成配列であり得る。エフェクタードメインは、抗原依存的一次活性化を誘導するものと抗原非依存的に二次シグナルまたは補助刺激シグナルを提供する働きをするものの2つのクラスに分けることができる。一次活性化エフェクタードメインは、immunoreceptor tyrosine-based activation
motifs(ITAM)として知られるシグナル伝達モチーフを含んでなり得る。ITAMは、多様な受容体の細胞質内テールに共通に見られる、よく定義されたシグナル伝達 モチーフであり、syk/zap70クラスチロシンキナーゼの結合部位として機能する。本明細書で使用されるITAMは、限定されない例として、CD3ζ、FcRγ、FcRβ、FcRε、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79bおよびCD66dに由来するものを含み得る。一つの実施態様では、細胞内エフェクタードメインは、CD3ζシグナル伝達ドメイン(CD247としても知られる)を含んでなる。天然TCRはCD3ζシグナル伝達分子を含み、従って、このエフェクタードメインの使用が、自然界に存在するTCR構築物に最も近い。
【0085】
本発明の一つの実施態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζエフェクタードメインである。
【0086】
エフェクタードメインはまた、二次シグナルまたは補助刺激シグナルも提供し得る。T細胞は、例えば増殖の活性化、分化などを増強することによってT細胞応答を増強するために抗原提示細胞上の同族補助刺激リガンドと結合する補助刺激分子をさらに含んでなる。よって、一つの実施態様では、細胞内エフェクタードメインは、補助刺激ドメインさらに含んでなる。さらなる実施態様では、補助刺激ドメインは、CD28、CD27、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、ICOS(CD278)、CD30、CD40、PD-1(CD279)、CD2、CD7、NKG2C(CD94)、B7-H3(CD276)またはそれらの任意の組合せから選択される補助刺激分子の細胞内ドメインを含んでなる。なおさらなる実施態様では、補助刺激ドメインは、CD28、CD27、4-1BB、OX40、ICOSまたはそれらの任意の組合せから選択される補助刺激分子の細胞内ドメインを含んでなる。
【0087】
本発明の抗原結合タンパク質と参照抗体の間の競合は競合ELISA、FMATまたはBiacoreによって決定され得る。一つの実施態様では、競合アッセイは、Biacoreによって実施される。この競合にはいくつかの可能性のある理由が存在し、すなわち、2つのタンパク質が同じまたは重複するエピトープと結合する可能性があり、結合の立体阻害が存在する可能性もあり、または第1のタンパク質の結合が抗原に、第2のタンパク質の結合を妨げるもしくは低下させる立体配座変化を誘導する可能性もある。
【0088】
別の実施態様では、抗原結合タンパク質はヒトBCMAと高い親和性で結合し、例えば、Biacoreにより測定した場合、抗原結合タンパク質はヒトBCMAと20nM以下の親和性または15nM以下の親和性または5nM以下の親和性または1000pM以下の親和性または500pM以下の親和性または400pM以下、または300pM以下または例えば、約120pMの親和性で結合する。さらなる実施態様では、抗原結合タンパク質はヒトBCMAと、Biacoreにより測定した場合に、約100pM~約500pMの間または約100pM~約400pMの間、または約100pM~約300pMの間で結合する。本発明の一つの実施態様では、抗原結合タンパク質はBCMAと150pm未満の親和性で結合する。
【0089】
一つのこのような実施態様では、これは、例えば、引用することにより本明細書の一部とされるWO2012163805の実施例4に示されるようにBiacoreにより測定される。
【0090】
別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、細胞中和アッセイにおいてヒトBCMAと結合し、リガンドBAFFおよび/またはAPRILとBCMA受容体の結合を中和し、ここで、抗原結合タンパク質は、約1nM~約500nMの間、または約1nM~約100nMの間、または約1nM~約50nMの間、または約1nM~約25nMの間、または約5nM~約15nMの間のIC50を有する。本発明のさらなる実施態様では、抗原結合タンパク質は、細胞中和アッセイにおいてBCMAに結合し、BCMAを中和し、ここで、抗原結合タンパク質は、約10nMのIC50を有する。
【0091】
一つのこのような実施態様では、これは、例えば、引用することにより本明細書の一部とされるWO2012163805の実施例4.6に示されるように細胞中和アッセイにより測定される。
【0092】
PD-1と結合する抗原結合タンパク質
本明細書に記載される本発明の一つの実施態様では、組合せは、BCMAと特異的に結合する抗原結合タンパク質(例えば、抗体)とPD-1と特異的に結合する抗原結合タンパク質(例えば、抗体)またはそのフラグメントとを含んでなる。一例では、PD-1と特異的に結合する抗原結合タンパク質は、ヒトPD-1(hPD-1)に結合する。別の例では、PD-1と特異的に結合する抗抗原結合タンパク質は、PD-1とPD-L1またはPD-L2などのPD-1リガンドとの結合を遮断するアンタゴニストである。
【0093】
一つの実施態様では、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、免疫グロブリン様ドメインまたはそのフラグメントを含む。別の実施態様では、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、モノクローナル抗体、例えば、IgG、IgM、IgA、IgDもしくはIgE、それらのサブクラス、またはそれらの修飾変異体である。さらに別の実施態様では、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、IgG抗体である。別の実施態様では、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、IgG4抗体である。
【0094】
本発明の一つの実施態様では、配列番号203のCDRH3またはその変異体を含んでなる、本明細書に記載される抗原結合タンパク質が提供される。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号203で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH3領域を含んでなる。
【0095】
本発明のさらなる実施態様では、配列番号201のCDRH1、配列番号202のCDRH2、配列番号203のCDRH3、配列番号204のCDRL1、配列番号205のCDRL2、配列番号206のCDRL3、およびまたはそれらの変異体を含んでなる、本明細書に記載される抗原結合タンパク質が提供される。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号201、配列番号202、配列番号203、配列番号204、配列番号205および配列番号206で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDR領域を含んでなる。
【0096】
本発明の一つの実施態様では、配列番号213CDRH3のまたはその変異体を含んでなる、本明細書に記載される抗原結合タンパク質が提供される。
【0097】
本発明のさらなる実施態様では、配列番号211のCDRH1、配列番号212のCDRH2、配列番号214のCDRL1、配列番号215のCDRL2および/または配列番号216のCDRL3またはそれらの変異体のうち1以上をさらに含んでなる、本明細書に記載される抗原結合タンパク質が提供される。
【0098】
なおさらなる実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号203のCDRH3、配列番号202のCDRH2、配列番号201のCDRH1、配列番号204のCDRL1、配列番号205のCDRL2および配列番号206のCDRL3を含んでなる。
【0099】
なおさらなる実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号213のCDRH3、配列番号211のCDRH2、配列番号212のCDRH1、配列番号214のCDRL1、配列番号215のCDRL2および配列番号216のCDRL3を含んでなる。
【0100】
本発明の一つの実施態様では、配列番号207または配列番号217から選択される単離された重鎖可変ドメインを含んでなる抗原結合タンパク質が提供される。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号207または配列番号217で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域を含んでなる。
【0101】
本発明の別の実施態様では、配列番号208または配列番号218から選択される単離された軽鎖可変領を域含んでなる抗原結合タンパク質が提供される。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号208または配列番号218で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域を含んでなる。
【0102】
本発明のさらなる実施態様では、配列番号207または配列番号217から選択される単離された重鎖可変領域と、配列番号208または配列番号218から選択される単離された軽鎖可変ドメインとを含んでなる抗原結合タンパク質が提供される。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号207または配列番号217で示されるアミノ酸配列少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域と、配列番号208または配列番号218で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域とを含んでなる。
【0103】
一つの実施態様では、本発明の抗原結合タンパク質は、配列番号207によりコードされる重鎖可変領域と配列番号208によりコードされる軽鎖可変領域とを含んでなる。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号207で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域と、配列番号208で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域とを含んでなる。
【0104】
一つの実施態様では、本発明の抗原結合タンパク質は、配列番号217によりコードされる重鎖可変領域と配列番号218によりコードされる軽鎖可変領域とを含んでなる。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号217で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域と、配列番号218で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域とを含んでなる。
【0105】
企図される一つの組合せにおいて、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、MMAFとコンジュゲートされた、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体を含んでなる免疫複合体であり、かつ、PD-1に結合する抗原結合タンパク質は、配列番号201のCDRH1、配列番号202のCDRH2、配列番号203のCDRH3、配列番号204のCDRL1、配列番号205のCDRL2、配列番号206のCDRL3、またはそれらの変異体を含んでなる。
【0106】
一つの実施態様では、単離された配列番号207の重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドが提供される。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号207で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域を含んでなる。
【0107】
一つの実施態様では、配列番号201、配列番号202、配列番号203、配列番号204、配列番号205および配列番号206のCDR領域をコードするポリヌクレオチドが提供される。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号201、配列番号202、配列番号203、配列番号204、配列番号205および配列番号206で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDR領域を含んでなる。
【0108】
一つの実施態様では、抗原結合タンパク質は、本明細書に記載される本発明による1以上のCDR、または本明細書に記載される本発明による重鎖可変領域もしくは軽鎖可変領域の一方もしくは両方を含んでなる抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0109】
別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、dAb、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニ抗体、およびミニボディからなる群から選択される。
【0110】
一つの実施態様では、本発明の抗原結合タンパク質は、ヒト化またはキメラ抗体であり、さらなる実施態様では、抗体はヒト化されている。
【0111】
一つの実施態様では、抗体はモノクローナル抗体である。
【0112】
本発明の一つの実施態様では、配列番号209で示される重鎖配列を有する抗体が提供される。
【0113】
本発明の一つの実施態様では、配列番号210で示される軽鎖配列を有する抗体が提供される。
【0114】
本発明のさらなる実施態様では、配列番号209の重鎖配列と配列番号210で示され軽鎖配列を有する抗体が提供される。
【0115】
一つの実施態様では、本明細書に記載される本発明の抗原結合タンパク質と競合する抗原結合タンパク質またはそのフラグメントが提供される。よって、一つのこのような実施態様では、配列番号207の重鎖可変配列と配列番号208の軽鎖可変領域を含んでなる抗原結合タンパク質と競合する抗原結合タンパク質が提供される。
【0116】
本明細書で記載される単離された抗体は、ヒトPD-1と結合し、 遺伝子Pdcd1、またはそれと90パーセントの相同性もしくは90パーセントの同一性を有する遺伝子もしくはcDNA配列によりコードされるヒトPD-1と結合し得る。完全なhPD-1
mRNA配列は、GenBank受託番号U64863として見出すことができる。ヒトPD-1のタンパク質配列は、GenBank受託番号AAC51773で見出すことができる。
【0117】
別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、例えば、Biacoreにより測定した場合に、ヒトPD-1と高い親和性で結合し、抗原結合タンパク質は1nM以下の親和性でヒトPD-1と結合する。本発明の一つの実施態様では、抗原結合タンパク質は、100pm未満の親和性でPD-1に結合する。
【0118】
カニクイザルPD-1に対するペンブロリズマブの結合親和性は、ELISA、細胞ELISAおよび生体光干渉計により評価した。これらの試験では、カニクイザルおよびヒトPD-1に対するペンブロリズマブの結合親和性は、カニクイザルPD-1に対してはやや低いものの、同じ範囲にあることが判明した。動態分析により、KDは、ヒトPD-1に対しては29pM、カニクイザルPD-1に対しては118pMであった。機能的には、ペンブロリズマブは、ヒトまたはカニクイザルPD-1を発現する細胞へのヒトPD-1リガンドの結合を同等の効力で遮断した。当業者は、KD数値が小さいほど結合が強いことを認識するであろう。KDの逆数(すなわち、1/KD)は、M-1を単位とする平衡会合定数(KA)である。当業者は、KA数値が大きいほど結合が強いことを認識するであろう。
【0119】
解離速度定数(kd)または「解離速度」は、複合体の安定性、すなわち、毎秒に減衰する複合体画分を表す。例えば、0.01s-1のkdは、毎秒複合体の1%が減衰することに等しい。ある実施態様では、解離速度定数(kd)は、1×10-3s-1以下、1×10-4s-1以下、1×10-5s-1以下、または1×10-6s-1以下である。kdは1×10-5s-1~1×10-4s-1の間、または1×10-4s-1~1×10-3s-1の間であり得る。
【0120】
例えば、本発明の抗原結合タンパク質と参照抗体の間の競合は、競合ELISA、FMATまたはBIAcoreにより決定することができる。一つの実施態様では、競合アッセイはBiacoreにより行われる。この競合にはいくつかの可能性のある理由が存在し、すなわち、2つのタンパク質が同じまたは重複するエピトープと結合する可能性があり、結合の立体阻害が存在する可能性もあり、または第1のタンパク質の結合が抗原に、第2のタンパク質の結合を妨げるもしくは低下させる立体配座変化を誘導する可能性もある。
【0121】
本発明の一つの実施態様では、PD-1抗原結合タンパク質は、キートルーダ(登録商標)またはMK3475およびラムブロリズマブとしても知られるペンブロリズマブである。ペンブロリズマブは、PD-1受容体と結合し、そのPD-L1およびPD-L2との相互作用を遮断して腫瘍免疫応答を含む免疫応答のPD-1経路により媒介される阻害を解除するモノクローナル抗体である。
【0122】
同系マウス腫瘍モデルにおいて、PD-1活性の遮断は腫瘍成長の低下をもたらした。
ペンブロリズマブは、およその分子量149kDaのIgG4κ免疫グロブリンである。
【0123】
ペンブロリズマブ(キートルーダ(登録商標))は、切除不能または転移性黒色腫を有し、かつ、イピリムマブ後に疾患進行を示す患者の処置に指示されるヒトプログラム細胞死受容体-1(programmed death receptor-1)(PD-1)遮断抗体であり、BRAF V600突然変異陽性の場合には、BRAF阻害剤である。ペンブロリズマブの推奨用量は2mg/kgであり、疾患進行または許容不能の毒性まで、3週間ごとに30分の静注として投与される。
【0124】
ペンブロリズマブは、単回使用バイアル中の無菌、保存剤不含の白色~灰白色の凍結乾燥粉末である。各バイアルは静注用に再構成され、希釈される。各2mLの再構成溶液は50mgのペンブロリズマブを含有し、L-ヒスチジン(3.1 mg)、ポリソルベート-80(0.4mg)、スクロース(140mg)中に調剤される。pHを5.5に調整するために塩酸/水酸化ナトリウムを含有してもよい。
【0125】
ペンブロリズマブは、例えば、米国特許第8,354,509号および同第8,900,587号に記載されている。
【0126】
ペンブロリズマブは、切除不能または転移性黒色腫を有し、かつ、イピリムマブ後に疾患進行を示す患者の処置のために承認されており、BRAF V600突然変異陽性の場合には、BRAF阻害剤である。
【0127】
一つの実施態様では、組合せは、ペンブロリズマブとGSK2857916を含んでなる。
【0128】
別の例として、抗BCMA抗体は、ニボルマブ(オプジーボ(登録商標))と併用可能である。ニボルマブは、PD-1受容体と結合し、PD-L1およびPD-L2とのその相互作用を遮断して腫瘍免疫応答を含む免疫応答のPD-1経路により媒介される阻害を解除するヒト免疫グロブリンG4(IgG4)モノクローナル抗体である。同系マウス腫瘍モデルでは、PD-1活性の遮断は、腫瘍成長の低下をもたらした。
【0129】
ニボルマブ(オプジーボ(登録商標))は、切除不能または転移性黒色腫を有し、かつ、イピリムマブ後に疾患進行を示す患者の処置に指示されるプログラム細胞死受容体-1(PD-1)遮断抗体であり、BRAF V600突然変異陽性の場合には、BRAF阻害剤である。この適応は、腫瘍応答率および応答持続性に基づき迅速承認下で承認される。この適応に対する継続的承認は、検証的治験および白金に基づく化学療法中または療法後に進行を示す転移性扁平上皮非小細胞肺癌における臨床利益の立証および記述を条件とし得る。
【0130】
ニボルマブ(オプジーボ(登録商標))の推奨は3mg/kgであり、疾患進行または許容不能の毒性まで、2週間ごとに60分の静注として投与される。
【0131】
米国特許第8,008,449号では、7種の抗PD-1 HuMAb:17D8、2D3、4H1、5C4(本明細書ではニボルマブまたはBMS-936558とも呼ばれる)、4A1 1、7D3および5F4が例示されている。米国特許第8,779,105号も参照。これらの抗体、またはそれらのCDR(またはこれらのアミノ酸配列のいずれかと少なくとも90%(例えば90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%)の同一性を有するアミノ酸配列)のうちいずれか1つを本明細書に記載の組成物および方法で使用することができる。
【0132】
OX40と結合する抗原結合タンパク質
本明細書に記載される本発明の一つの実施態様では、組合せは、BCMAと特異的に結合する抗原結合タンパク質(例えば、抗体)とOX40と特異的に結合する抗原結合タンパク質(例えば、抗体)またはそのフラグメントとを含んでなる。一例では、OX40と特異的に結合する抗原結合タンパク質は、ヒトOX40(hOX40)に結合する。別の例では、OX40と結合する抗原結合タンパク質はアゴニストである。
【0133】
一つの実施態様では、OX40と結合する抗原結合タンパク質は、免疫グロブリン様ドメインまたはそのフラグメントを含む。別の実施態様では、OX40と結合する抗原結合タンパク質は、モノクローナル抗体、例えば、IgG、IgM、IgA、IgDもしくはIgE、それらのサブクラス、またはそれらの修飾変異体である。さらに別の実施態様では、OX40と結合する抗原結合タンパク質はIgG1抗体である。
【0134】
本発明の一つの実施態様では、配列番号221のCDRH3またはその変異体を含んでなる、本明細書に記載される抗原結合タンパク質が提供される。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号221で示されるアミノ酸配列となくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDRH3領域を含んでなる。
【0135】
本発明のさらなる実施態様では、配列番号219のCDRH1、配列番号220のCDRH2、配列番号221のCDRH3、配列番号222のCDRL1、配列番号223のCDRL2および配列番号224のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる、本明細書に記載される抗原結合タンパク質が提供される。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号219、配列番号220、配列番号221、配列番号222、配列番号223および配列番号224で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるCDR領域を含んでなる。
【0136】
本発明の一つの実施態様では、配列番号233のCDRH3またはその変異体を含んでなる、本明細書に記載される抗原結合タンパク質が提供される。
【0137】
本発明のさらなる実施態様では、配列番号231のCDRH1、配列番号232のCDRH2、配列番号234のCDRL1、配列番号235のCDRL2および/または配列番号236のCDRL3およびまたはそれらの変異体のうち1以上をさらに含んでなる、本明細書に記載される抗原結合タンパク質が提供される。
【0138】
本発明の一つの実施態様では、配列番号229、配列番号225、または配列番号237から選択される単離された重鎖可変領域を含んでなる抗原結合タンパク質が提供される。
【0139】
本発明の別の実施態様では、配列番号230、配列番号227、または配列番号239から選択される単離された軽鎖可変領域を含んでなる抗原結合タンパク質が提供される。
【0140】
本発明のさらなる実施態様では、配列番号225または配列番号237から選択される単離された重鎖可変領域と配列番号227または配列番号239から選択される単離された軽鎖可変領域とを含んでなる抗原結合タンパク質が提供される。
【0141】
一つの実施態様では、本発明の抗原結合タンパク質は、配列番号225の重鎖可変領域と配列番号227の軽鎖可変領域とを含んでなる。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号225で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域と、配列番号227で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域とを含んでなる。
【0142】
一つの実施態様では、本発明の抗原結合タンパク質は、配列番号237の重鎖可変領域と配列番号239の軽鎖可変領域とを含んでなる。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号237で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域と、配列番号239で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域とを含んでなる。
【0143】
本発明のさらなる実施態様では、単離された配列番号229の重鎖可変領域と単離された配列番号230の軽鎖可変領域とを含んでなる抗原結合タンパク質が提供される。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号229で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変領域と、配列番号230で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変領域とを含んでなる。
【0144】
本発明の一つの実施態様では、単離された配列番号243の重鎖領域と単離された配列番号244の軽鎖領域とを含んでなる抗原結合タンパク質が提供される。別の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号243で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる重鎖領域と、配列番号244で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる軽鎖領域とを含んでなる。
【0145】
企図される一つの組合せにおいて、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、MMAFとコンジュゲートされた、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体とを含んでなる免疫複合体であり、OX40と結合する抗原結合タンパク質は、配列番号219のCDRH1、配列番号220のCDRH2、配列番号221のCDRH3、配列番号222のCDRL1、配列番号223のCDRL2および配列番号224のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる。
【0146】
一つの実施態様では、単離された配列番号229、配列番号226、または配列番号238の重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0147】
一つの実施態様では、配列番号230、配列番号228、または配列番号240を含んでなる単離された軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0148】
さらなる実施態様では、単離された配列番号229、配列番号226、または配列番号238の重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドおよび単離された配列番号230、配列番号228、または配列番号240の軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0149】
一つの実施態様では、本発明の抗原結合タンパク質は、その標的(例えば、OX40)に高い親和性で結合する。例えば、Biacoreにより測定した場合、本抗体は、OX40、好ましくは、ヒトOX40と、1~1000nMまたは500nM以下の親和性または200nM以下の親和性または100nM以下の親和性または50nM以下の親和性または500pM以下の親和性または400pM以下または300pM以下の親和性で結合する。さらなる実施態様では、本抗体は、Biacoreにより測定した場合、OX40、好ましくは、ヒトOX40と約50nM~約200nMの間または約50nM~約150nMの間で結合する。本発明の一つの実施態様では、本抗体は、OX40、好ましくは、ヒトOX40に、100nM未満の親和性で結合する。
【0150】
例えば、本発明の抗原結合タンパク質と参照抗体の間の競合は、競合ELISA、FMATまたはBIAcoreにより決定することができる。一つの実施態様では、競合アッセイはBiacoreにより行われる。この競合にはいくつかの可能性のある理由が存在し、すなわち、2つのタンパク質が同じまたは重複するエピトープと結合する可能性があり、結合の立体阻害が存在する可能性もあり、または第1のタンパク質の結合が抗原に、第2のタンパク質の結合を妨げるもしくは低下させる立体配座変化を誘導する可能性もある。
【0151】
ある実施態様では、本発明の組合せまたはその方法または使用の抗原結合タンパク質とOX40、好ましくは、ヒトOX40の相互作用の平衡解離定数(KD)は、100nM以下、10nM以下、2nM以下または1nM以下である。あるいは、KDは5~10nMの間、または1~2nMの間であり得る。KDは、1pM~500pMの間、または500pM~1nMの間であり得る。当業者は、KD数値が小さくなるほど結合が強くなることを認識するであろう。
【0152】
さらなる実施態様では、抗原結合タンパク質は、本明細書で記載される重鎖可変鎖のいずれか1つを本明細書の表Aに記載される軽鎖のいずれか1つと組み合わせて含んでなり得る。
【0153】
一つの実施態様では、抗原結合タンパク質は、OX40と結合するモノクローナル抗体であり、約0.1mg/kg~約10mg/kgの用量で投与される。
【0154】
一つの実施態様では、抗原結合タンパク質は、OX40と結合するモノクローナル抗体であり、約0.003mg/kg、約0.01mg/kg、約0.03mg/kg、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約3mg/kg、および約10mg/kgからなる群から選択される用量で投与される。
【0155】
別の実施態様では、OX40と結合するモノクローナル抗体は、1日1回、週1回、2週間に1回(Q2W)、および3週間に1回(Q3W)からなる群から選択される頻度で投与される。
【0156】
さらに別の実施態様では、ヒトPD-1と結合するモノクローナル抗体は、約200mgの用量で投与される。
【0157】
一つの実施態様では、OX40と結合するモノクローナル抗体は、約0.1mg/kg~約10mg/kgの用量に投与される。OX40と結合するモノクローナル抗体は、1日1回、週1回、2週間に1回(Q2W)、および3週間に1回(Q3W)からなる群から選択される頻度で投与することができる。好適には、OX40と結合する抗体は、3週間に1回投与される。一つの態様において、ペンブロリズマブは、200mg Q3Wの用量で投与される。
【0158】
医薬組成物および処置方法
本発明はさらに、本明細書に記載の組合せ、および1以上の薬学上許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。本発明の組合せは2つの医薬組成物を含んでなり得、一方は抗BCMA抗原結合タンパク質またはフラグメントを含んでなり、他方は抗PD-1またはOX40抗原結合タンパク質またはそのフラグメントを含んでなり、そのそれぞれは同じまたは異なる担体、希釈剤または賦形剤を含み得る。担体、希釈剤または賦形剤は、その処方物の他の成分と適合し、医薬調剤能を有し、かつ、そのレシピエントに有害でないという意味で許容可能でなければならない。
【0159】
本発明の組合せの成分は、およびそのような成分を含んでなる医薬組成物は、いずれの順序で、異なる投与経路で逐次に投与されてもよく、前記成分およびそれらを含んでなる医薬組成物は同時に投与されてもよい。
【0160】
本明細書に記載の組合せの成分のそれぞれは、同じバイアル/容器中または異なるバイアル/容器中に製造してもよい。例えば、一つの実施態様では、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、PD-1と結合する抗原結合タンパク質またはOX40と結合する抗原結合タンパク質と同じバイアル/容器中に製造され、この組合せの総ての成分が同時に投与される。別の例示的実施態様では、BCMAに結合する抗原結合タンパク質は、PD-1と結合する抗原結合タンパク質またはOX40と結合する抗原結合タンパク質と異なるバイアル/容器中に製造され、この組合せの成分のそれぞれは同時に、逐次に、また、同じまたは異なる投与経路で投与することができる。
【0161】
また、本発明の別の実施態様によれば、本発明の組合せの成分と1種類以上の薬学上許容可能な担体、希釈剤または賦形剤を混合することを含む、医薬組成物の調製のための方法も提供される。
【0162】
本発明の成分は、いずれの適当な経路によって投与してもよい。いくつかの成分については、好適な経路は経口、直腸、鼻腔、局所(口内および舌下を含む)、膣、および非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、くも膜下腔内、および硬膜外を含む)を含む。好ましい経路は例えば組合せのレシピエントの状態および処置される癌によって異なり得ることが認識されるであろう。また、投与される薬剤のそれぞれは同じまたは異なる経路によって投与されてよいこと、およびこれらの成分は一緒に混合されていてもまたは別個の医薬組成物であってもよいことも認識されるであろう。
【0163】
一つの実施態様では、本発明の組合せの1以上の成分は静脈投与される。別の実施態様では、本発明の組合せの1以上の成分は腫瘍内投与される。別の実施態様では、本発明の組合せの1以上の成分は例えば脈内に全身投与され、本発明の組合せの1以上の他の成分は腫瘍内投与される。別の実施態様では、本発明の組合せの総ての成分は、例えば静脈内に全身投与される。別の実施態様では、本発明の組合せの総ての成分は腫瘍内投与される。例えば本段落におけるこれらの実施態様のいずれにおいても、本発明の成分は、1以上の医薬組成物として投与される。
【0164】
本発明の組合せの治療上有効な量(または組合せの成分のそれぞれの治療上有効な量)の投与には、それらの組合せが治療上有効な量の成分化合物の個々の投与に比べた場合に以下の改善特性のうち1以上を提供するという点で個々の成分化合物よりも有利である:i)最も活性の高い単剤よりも大きな抗癌作用、ii)相乗的または極めて相乗的な抗癌活性、iii)低減された副作用プロフィールで増強された抗癌活性を示す投与プロトコール、iv)毒性作用プロフィールの低減、v)治療域の増大、またはvi)成分化合物の一方または両方のバイオアベイラビリティの増大。
【0165】
一つの実施態様では、本発明は、必要とする哺乳動物(例えば、ヒト)においてB細胞障害の処置など、癌を処置する方法であって、治療上有効な量の本明細書に記載される組合せを投与することを含んでなる方法を提供する。一つの実施態様では、癌は多発性骨髄腫である。別の実施態様では、癌は非ホジキンリンパ腫である。
【0166】
一つの実施態様では、本発明のBCMAに結合する抗原結合タンパク質のいずれか1つまたはその抗体薬物複合体;およびペンブロリズマブ、またはそれと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列相同性を含んでなる抗体を投与することを含んでなる、癌を処置するための方法が提供される。
【0167】
一つの実施態様では、BCMAに結合する抗原結合タンパク質またはそれらの免疫複合体のうちのいずれか1つ;およびニボルマブ、またはそれと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列相同性を含んでなる抗体を投与することを含んでなる、癌を処置するための方法が提供される。
【0168】
一つの実施態様では、
i)MMAFとコンジュゲートされた、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体を含んでなる免疫複合体である、治療上有効な量のBCMAに結合する抗原結合タンパク質と、
ii)配列番号201のCDRH1、配列番号202のCDRH2、配列番号203のCDRH3、配列番号204のCDRL1、配列番号205のCDRL2、配列番号206のCDRL3、またはそれらの変異体を含んでなる、治療上有効な量の、PD-1に結合する抗原結合タンパク質と
を含んでなる治療上有効な量の組合せを投与することを含んでなる、必要とするヒトにおいて癌を処置するための方法が提供される。
【0169】
一つの実施態様では、
i)MMAFとコンジュゲートされた、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体を含んでなる免疫複合体である、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、
ii)治療上有効な量のペンブロリズマブまたはニボルマブと
を含んでなる治療上有効な量の組合せを投与することを含んでなる、必要とするヒトにおいて癌を処置するための方法が提供される。
【0170】
一つの実施態様では、
i)MMAFとコンジュゲートされた、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体を含んでなる免疫複合体である、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と
ii)配列番号219のCDRH1、配列番号220のCDRH2、配列番号221のCDRH3、配列番号222のCDRL1、配列番号223のCDRL2、配列番号224のCDRL3、またはそれらの変異体を含んでなる、治療上有効な量の、OX40と結合する抗原結合タンパク質と
を含んでなる治療上有効な量の組合せを投与することを含んでなる、必要とするヒトにおいて癌を処置するための方法が提供される。
【0171】
一つの実施態様では、
i)MMAFとコンジュゲートされた、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体を含んでなる免疫複合体である、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、
ii)配列番号201のCDRH1、配列番号202のCDRH2、配列番号203のCDRH3、配列番号204のCDRL1、配列番号205のCDRL2、配列番号206のCDRL3、またはそれらの変異体を含んでなる、治療上有効な量の、PD-1に結合する抗原結合タンパク質と、
を含んでなる治療上有効な量の組合せを投与することを含んでなる、必要とするヒトにおいて多発性骨髄腫を処置するための方法が提供される。
【0172】
一つの実施態様では、
i)MMAFとコンジュゲートされた、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体を含んでなる免疫複合体である、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、
ii)配列番号201のCDRH1、配列番号202のCDRH2、配列番号203のCDRH3、配列番号204のCDRL1、配列番号205のCDRL2、配列番号206のCDRL3、またはそれらの変異体を含んでなる、治療上有効な量の、PD-1に結合する抗原結合タンパク質と
を含んでなる治療上有効な量の組合せを投与することを含んでなる、必要とするヒトにおいて非ホジキンリンパ腫を処置するための方法が提供される。
【0173】
一つの実施態様では、
i)MMAFとコンジュゲートされた、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体を含んでなる免疫複合体である、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、
ii)配列番号219のCDRH1、配列番号220のCDRH2、配列番号221のCDRH3、配列番号222のCDRL1、配列番号223のCDRL2、配列番号224のCDRL3、またはそれらの変異体を含んでなる、治療上有効な量の、OX40と結合する抗原結合タンパク質と
を含んでなる治療上有効な量の組合せを投与することを含んでなる、必要とするヒトにおいて多発性骨髄腫を処置するための方法が提供される。
【0174】
一つの実施態様では、
i)MMAFとコンジュゲートされた、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体を含んでなる免疫複合体である、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、
ii)配列番号219のCDRH1、配列番号220のCDRH2、配列番号221のCDRH3、配列番号222のCDRL1、配列番号223のCDRL2、配列番号224のCDRL3、またはそれらの変異体を含んでなる、治療上有効な量の、OX40と結合する抗原結合タンパク質と
を含んでなる治療上有効な量の組合せを投与することを含んでなる、必要とするヒトにおいて非ホジキンリンパ腫を処置するための方法が提供される。
【0175】
前記哺乳動物における癌の腫瘍サイズが、単剤療法として使用されるBCMAに対する抗原結合タンパク質およびPD-1に結合する抗原結合タンパク質またはOX40と結合する抗原結合タンパク質のよる処置に比べて相加量よりも縮小される方法が提供される。
好適には、組合せは相乗作用性であり得る。
【0176】
一つの実施態様では、哺乳動物は、BCMAに対する抗原結合タンパク質またはPD-1もしくはOX40に対する抗原結合タンパク質を単剤療法として受容した哺乳動物に比べて、本明細書に記載される組合せで処理された場合に高い生存を示す。一つの実施態様では、これらの方法は、必要とする哺乳動物に少なくとも1種類の抗新生物薬を投与することをさらに含んでなる。
【0177】
必要とする哺乳動物(例えば、ヒト)の癌の処置、特に、B細胞障害の処置における使用が企図される。一つの実施態様では、癌は多発性骨髄腫である。別の実施態様では、癌は非ホジキンリンパ腫である。
【0178】
一つの実施態様では、癌を処置するための本明細書に記載の組合せの使用が提供され、前記組合せは、本発明のBCMAに結合する抗原結合タンパク質またはそれらの抗体薬物複合体のうちのいずれか1つ;およびペンブロリズマブ、またはそれと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列相同性を含んでなる抗体を含んでなる。
【0179】
一つの実施態様では、癌を処置するための本明細書に記載の組合せの使用が提供され、前記組合せは、BCMAに結合する抗原結合タンパク質またはそれらの免疫複合体のうちのいずれか1つ;およびニボルマブ、またはそれと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列相同性を含んでなる抗体を含んでなる。
【0180】
一つの実施態様では、必要とするヒトにおいて癌を処置するための組合せの使用が提供され、前記組合せは、
i)MMAFとコンジュゲートされた、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体を含んでなる免疫複合体である、治療上有効な量のBCMAに結合する抗原結合タンパク質と、
ii)配列番号201のCDRH1、配列番号202のCDRH2、配列番号203のCDRH3、配列番号204のCDRL1、配列番号205のCDRL2、配列番号206のCDRL3、またはそれらの変異体を含んでなる、治療上有効な量の、PD-1に結合する抗原結合タンパク質と
を含んでなる。
【0181】
一つの実施態様では、必要とするヒトにおいて癌を処置するための組合せの使用が提供され、前記組合せは、
i)MMAFとコンジュゲートされた、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体を含んでなる免疫複合体である、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、
ii)配列番号219のCDRH1、配列番号220のCDRH2、配列番号221のCDRH3、配列番号222のCDRL1、配列番号223のCDRL2、配列番号224のCDRL3、またはそれらの変異体を含んでなる治療上有効な量の、OX40と結合する抗原結合タンパク質と
を含んでなる。
【0182】
一つの実施態様では、必要とするヒトにおいて多発性骨髄腫を処置するための組合せの使用が提供され、前記組合せは、
i)MMAFとコンジュゲートされた、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体を含んでなる免疫複合体である、治療上有効な量のBCMAに結合する抗原結合タンパク質と、
ii)配列番号201のCDRH1、配列番号202のCDRH2、配列番号203のCDRH3、配列番号204のCDRL1、配列番号205のCDRL2、配列番号206のCDRL3、またはそれらの変異体を含んでなる、治療上有効な量の、PD-1に結合する抗原結合タンパク質と
を含んでなる。
【0183】
一つの実施態様では、必要とするヒトにおいて非ホジキンリンパ腫を処置するための組合せの使用が提供され、前記組合せは、
i)MMAFとコンジュゲートされた、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体を含んでなる免疫複合体である、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパクと
ii)配列番号201のCDRH1、配列番号202のCDRH2、配列番号203のCDRH3、配列番号204のCDRL1、配列番号205のCDRL2、配列番号206のCDRL3、またはそれらの変異体を含んでなる、治療上有効な量の、PD-1に結合する抗原結合タンパク質と
を含んでなる。
【0184】
一つの実施態様では、必要とするヒトにおいて多発性骨髄腫を処置するための組合せの使用が提供され、前記組合せは、
i)MMAFとコンジュゲートされた、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体を含んでなる免疫複合体である、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と
ii)配列番号219のCDRH1、配列番号220のCDRH2、配列番号221のCDRH3、配列番号222のCDRL1、配列番号223のCDRL2、配列番号224のCDRL3、またはそれらの変異体を含んでなる、治療上有効な量の、OX40と結合する抗原結合タンパク質と
を含んでなる。
【0185】
一つの実施態様では、必要とするヒトにおいて非ホジキンリンパ腫を処置するための組合せの使用が提供され、前記組合せは、
i)MMAFとコンジュゲートされた、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体を含んでなる免疫複合体である、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、
ii)配列番号219のCDRH1、配列番号220のCDRH2、配列番号221のCDRH3、配列番号222のCDRL1、配列番号223のCDRL2、配列番号224のCDRL3、またはそれらの変異体を含んでなる治療上有効な量の、OX40と結合する抗原結合タンパク質と
を含んでなる。
【0186】
また、本発明では、特にB細胞障害の処置などの癌の処置のための薬剤の製造における本発明の組合せまたは医薬組成物の使用も提供される。一つの実施態様では、癌は多発性骨髄腫である。別の実施態様では、癌は非ホジキンリンパ腫である。
【0187】
一つの実施態様では、癌の処置のための薬剤の製造における本発明の組合せまたは医薬組成物の使用は、本発明のBCMAに結合する抗原結合タンパク質またはそれらの抗体薬物複合体のうちのいずれか1つ;およびペンブロリズマブ、またはそれと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列相同性を含んでなる抗体を含んでなる組合せを含む。
【0188】
一つの実施態様では、癌の処置のための薬剤の製造における本発明の組合せまたは医薬組成物の使用は、BCMAに結合する抗原結合タンパク質またはそれらの免疫複合体のうちのいずれか1つ;およびニボルマブ、またはそれと90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列相同性を含んでなる抗体を含んでなる組合せを含む。
【0189】
一つの実施態様では、癌の処置のための薬剤の製造における組合せの使用が企図され、前記組合せは、
i)MMAFとコンジュゲートされた、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体を含んでなる免疫複合体である、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、
ii)配列番号201のCDRH1、配列番号202のCDRH2、配列番号203のCDRH3、配列番号204のCDRL1、配列番号205のCDRL2、配列番号206のCDRL3、またはそれらの変異体を含んでなる、治療上有効な量の、PD-1に結合する抗原結合タンパク質と
を含んでなる。
【0190】
一つの実施態様では、癌の処置のための薬剤の製造における組合せの使用が企図され、前記組合せは、
i)MMAFとコンジュゲートされた、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体を含んでなる免疫複合体である、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、
ii)配列番号219のCDRH1、配列番号220のCDRH2、配列番号221のCDRH3、配列番号222のCDRL1、配列番号223のCDRL2、配列番号224のCDRL3、またはそれらの変異体を含んでなる、治療上有効な量の、OX40と結合する抗原結合タンパク質と
を含んでなる。
【0191】
一つの実施態様では、多発性骨髄腫の処置のための薬剤の製造における組合せの使用が企図され、前記組合せは、
i)MMAFとコンジュゲートされた、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体を含んでなる免疫複合体である、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、
ii)配列番号201のCDRH1、配列番号202のCDRH2、配列番号203のCDRH3、配列番号204のCDRL1、配列番号205のCDRL2、配列番号206のCDRL3、またはそれらの変異体を含んでなる、治療上有効な量の、PD-1に結合する抗原結合タンパク質と
を含んでなる。
【0192】
一つの実施態様では、非ホジキンリンパ腫の処置のための薬剤の製造における組合せの使用が企図され、前記組合せは、
i)MMAFとコンジュゲートされた、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体を含んでなる免疫複合体である、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、
ii)配列番号201のCDRH1、配列番号202のCDRH2、配列番号203のCDRH3、配列番号204のCDRL1、配列番号205のCDRL2、配列番号206のCDRL3、またはそれらの変異体を含んでなる、治療上有効な量の、PD-1に結合する抗原結合タンパク質と
を含んでなる。
【0193】
一つの実施態様では、多発性骨髄腫の処置のための薬剤の製造における組合せの使用が企図され、前記組合せは、
i)MMAFとコンジュゲートされた、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体を含んでなる免疫複合体である、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、
ii)配列番号219のCDRH1、配列番号220のCDRH2、配列番号221のCDRH3、配列番号222のCDRL1、配列番号223のCDRL2、配列番号224のCDRL3、またはそれらの変異体を含んでなる、治療上有効な量の、OX40と結合する抗原結合タンパク質と
を含んでなる。
【0194】
一つの実施態様では、非ホジキンリンパ腫の処置のための薬剤の製造における組合せの使用が企図され、前記組合せは、
i)MMAFとコンジュゲートされた、配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号200のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3またはそれらの変異体を含んでなる抗BCMA抗体を含んでなる免疫複合体である、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質と、
ii)配列番号219のCDRH1、配列番号220のCDRH2、配列番号221のCDRH3、配列番号222のCDRL1、配列番号223のCDRL2、配列番号224のCDRL3、またはそれらの変異体を含んでなる、治療上有効な量の、OX40と結合する抗原結合タンパク質と
を含んでなる。
【0195】
また、癌を処置するための本発明の組合せを含んでなる医薬組成も提供される。本発明はまた、本発明の医薬組成物を1種類以上の薬学上許容可能な担体とともに含んでなる組合せキットも提供する。本キットは場合により使用説明書を含んでもよい。
【0196】
B細胞障害は、B細胞の発達/免疫グロブリン産生の欠陥(免疫不全)および過度の/制御を欠いた増殖(リンパ腫、白血病)に分けることができる。本明細書で使用する場合、B細胞障害は両タイプの疾患を指し、B細胞障害を抗原結合タンパク質で処置するための方法が提供される。
【0197】
癌、特に、B細胞介在または形質細胞介在疾患または抗体介在疾患または障害の例としては、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、非分泌型多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、意義不明単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)、孤立性形質細胞腫(骨、髄外)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、ワルデンストロームマクログロブリン血症、形質細胞白血病、原発性アミロイドーシス(AL)、H鎖病、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、POEMS症候群/骨硬化性骨髄腫、I型およびII型寒冷グロブリン血症、軽鎖沈着症、グッドパスチャー症候群、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、急性糸球体腎炎、天疱瘡および類天疱瘡障害、および後天性表皮水疱症;または任意の非ホジキンリンパ腫性B細胞白血病(NHL)またはホジキンリンパ腫(HL)が挙げられる。
【0198】
特定の実施態様では、疾患または障害は、多発性骨髄腫(MM)、非ホジキンリンパ腫性B細胞白血病(NHL)、濾胞性リンパ腫(FL)、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)からなる群から選択される。
【0199】
本発明の一つの実施態様では、疾患は、多発性骨髄腫、または非ホジキンリンパ腫性B細胞白血病(NHL)である。
【0200】
本発明の一つの実施態様では、疾患は多発性骨髄腫である。
【0201】
好適には、本発明は、本明細書に記載されるように癌を処置する、またはその重篤度を軽減するための方法に関する。
【0202】
本発明の組合せは、単独で使用してもよいし、または1以上の他の治療薬と併用してもよい。
【0203】
本発明の医薬組成物または組合せが癌の処置のために投与される場合、用語「投与する」およびその派生語は、本明細書で使用する場合、本明細書で記載される組合せ、および化学療法(例えば、抗新生物薬)、放射線処置、および手術を含む、癌の処置において有用であることが知られるさらなる有効成分または成分の同時投与または個別逐次投与の任意の様式のいずれかを意味する。さらなる有効成分または成分という用語は、本明細書で使用する場合、癌の処置を必要とする患者に投与された際に有利な特性を示すことが知られる、または有利な特性を示すいずれの化合物または治療薬も含む。好ましくは、投与が同時でない場合、これらの化合物は互いに近接した時間内に投与される。さらに、これらの化合物は同じ投与形で投与されるかどうかは問題ではなく、例えば、ある化合物を静脈内投与し、別の化合物を経口投与してもよい。
【0204】
一般に、処置される感受性腫瘍に対して活性を有するいずれの抗新生物薬も、本発明の癌の処置において本明細書に記載の組合せとともに投与してよい。このような薬剤の例としては、Cancer Principles and Practice f Oncology by V.T. Devita and S. Hellman (編),第6版 (2001年2月15日), Lippincott Williams & Wilkins Publishersに見出すことができる。当業者ならば、関与する薬物および癌の特定の性質に基づいて薬剤のどの組合せが有用であるかを識別することができるであろう。本発明において有用な典型的抗新生物薬なとしては、限定されるものではないが、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドなどの微小管阻害剤;白金錯体;ナイトロジェンマスタード、オキシアザホスホリン、アルキルスルホネート、ニトロソ尿素、およびトリアゼンなどのアルキル化剤;アントラサイクリン、アクチノマイシンおよびブレオマイシンなどの抗生物薬;エピポドフィロトキシンなどのトポイソメラーゼII阻害剤;プリンおよびピリミジン類似体ならびに葉酸拮抗化合物などの代謝拮抗物質;カンプトテシンなどのトポイソメラーゼI阻害剤;ホルモンおよびホルモン類似体;シグナル伝達経路阻害剤;非受容体型チロシン血管新生阻害剤;免疫治療薬;アポトーシス促進薬;および細胞周期シグナル伝達阻害剤が含まれる。抗新生物薬の非限定例を本明細書に示す。
【0205】
本明細書に記載の組合せとともに投与するためのさらなる1または複数の有効成分の例は化学療法薬である。
【0206】
微小管阻害剤または有糸分裂阻害剤は、細胞周期のM期、すなわち有糸分裂期の間に腫瘍細胞の微小管に対して活性である細胞周期特異的薬剤である。微小管阻害剤の例としては、限定されるものではないが、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドが挙げられる。
【0207】
ジテルペノイドは、天然源に由来し、細胞周期のG/M期に作用する細胞周期特異的抗癌剤である。ジテルペノイドは、微小管のβ-チューブリンサブユニットと結合することによりこのタンパク質を安定化させると考えられている。その後タンパク質の分解が阻害され、有糸分裂が停止し、細胞死をたどると思われる。ジテルペノイドの例としては、限定されるものではないが、パクリタキセルおよびその類似体であるドセタキセルが挙げられる。
【0208】
パクリタキセル、5β,20-エポキシ-1,2α,4,7β,10β,13α-ヘキサ-ヒドロキシタクス-11-エン-9-オン4,10-ジアセテート2-ベンゾエートの(2R,3S)-N-ベンゾイル-3-フェニルイソセリンとの13-エステルは、タイヘイヨウイチイ(Taxus brevifolia)から単離された天然ジテルペン生成物であり、注射液タキソール(TAXOL)(登録商標)として市販されている。パクリタキセルは、テルペンのタキサンファミリーのメンバーである。パクリタキセルは、1971年に、Wani et al. J. Am. Chem, Soc., 93:2325. 1971)によって初めて単離され、彼らは化学的方法およびX線結晶学的方法によってその構造を同定した。その活性の一つの機序は、パクリタキセルの、チューブリンに結合することで癌細胞の増殖を阻害する能力に関連する。Schiff et al., Proc. Natl, Acad, Sci. USA, 77:1561-1565 (1980); Schiff et al., Nature, 277:665-667 (1979); Kumar, J. Biol, Chem, 256: 10435-10441 (1981)。数種のパクリタキセル誘導体の合成および抗癌活性に関する総説としては、D. G. I. Kingston et al., Studies in Organic Chemistry vol. 26, entitled “New trends in Natural Products Chemistry 1986”, Attaur-Rahman, P.W. Le Quesne編(Elsevier, Amsterdam, 1986) pp 219-235を参照。
【0209】
パクリタキセルは、米国における難治性卵巣癌の治療に用(Markman et al., Yale Journal of Biology and Medicine, 64:583, 1991; McGuire et al., Ann. lntem, Med., 111:273,1989)および乳癌の治療(Holmes et al., J. Nat. Cancer Inst., 83:1797,1991)に承認されている。パクリタキセルは、皮膚における新生物(Einzig et. al., Proc. Am. Soc. Clin. Oncol., 20:46)および頭頸部癌(Forastire et. al., Sem. Oncol., 20:56, 1990)の治療のための潜在的候補である。またこの化合物は、多発性嚢胞腎疾患(Woo et. al., Nature, 368:750. 1994)、肺癌、およびマラリアの治療にも可能性を示している。パクリタキセルで患者を治療すると、閾値濃度(50nM)を超える投与期間に関連して(Kearns, C.M. et. al., Seminars in Oncology, 3(6) p.16-23, 1995)、骨髄抑制が起こる(複数の細胞系譜、Ignoff, R.J. et. al, Cancer Chemotherapy Pocket Guide, 1998)。
【0210】
ドセタキセル、(2R,3S)-N-カルボキシ-3-フェニルイソセリン,N-tert-ブチルエステルの5β-20-エポキシ-1,2α,4,7β,10β,13α-ヘキサヒドロキシタクス-11-エン-9-オン4-アセテート2-ベンゾエートとの13-エステルの三水和物は、注射液としてタキソテール(TAXOTERE)(登録商標)として市販されている。ドセタキセルは、乳癌の治療に指示される。ドセタキセルは、ヨーロッパイチイの針葉から抽出した天然の前駆物質10-デアセチル-バッカチンIIIを使用して製造された、パクリタキセル(前項参照)の半合成誘導体である。ドセタキセルの用量制限毒性は好中球減少症である。
【0211】
ビンカアルカロイドは、ニチニチソウ由来の細胞周期特異的抗新生物薬である。ビンカアルカロイドは、チューブリンと特異的に結合することによって細胞周期のM期(有糸分裂)に作用する。その結果、結合されたチューブリン分子は、重合して微小管になることができない。有糸分裂は中期で停止し、細胞死をたどると考えられている。ビンカアルカロイドの例としては、限定されるものではないが、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビンが挙げられる。
【0212】
ビンブラスチン、硫酸ビンカロイコブラスチンは、注射液としてベルバン(VELBAN)(登録商標)として市販されている。ビンブラスチンは、種々の固形腫瘍の第二選択療法として指示される可能性があるが、精巣癌、ならびにホジキン病、リンパ球性および組織球性リンパ腫を含む種々のリンパ腫の治療に主として指示される。骨髄抑制がビンブラスチンの用量制限副作用である。
【0213】
ビンクリスチン、ビンカロイコブラスチンの22-オキソ-硫酸塩は、注射液としてオンコビン(ONCOVIN)(登録商標)として市販されている。ビンクリスチンは、急性白血病の治療に指示されており、ホジキンおよび非ホジキン悪性リンパ腫の治療計画の中でも使用されている。脱毛および神経学的作用がビンクリスチンの最も一般的な副作用であり、程度は低いが、骨髄抑制および胃腸粘膜炎作用が生じる。
【0214】
酒石酸ビノレルビンの注射液(ナベルビン(NAVELBINE)(登録商標))として市販されているビノレルビン、3’,4’-ジデヒドロ-4’-デオキシ-C’-ノルビンカロイコブラスチン[R-(R,R)-2,3-ジヒドロキシブタン二酸(1:2)(塩)]は、半合成ビンカアルカロイドである。ビノレルビンは、単剤として、またはシスプラチンなどの他の化学療法薬と組み合わせて、種々の固形腫瘍、特に、非小細胞肺癌、進行性乳癌、およびホルモン不応性前立腺癌の治療に指示される。骨髄抑制がビノレルビンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0215】
白金配位錯体は、非細胞周期特異的抗癌剤であり、DNAと相互作用する。白金錯体は、腫瘍細胞に侵入し、アクア化を受け、DNAとの鎖内架橋および鎖間架橋を形成し、腫瘍に対して有害な生物学的作用を引き起こす。白金配位錯体の例としては、限定されるものではないが、シスプラチンおよびカルボプラチンが挙げられる。
【0216】
シスプラチン、シス-ジアンミンジクロロ白金は、注射液としてプラチノール(PLATINOL)(登録商標)として市販されている。シスプラチンは、主として転移性の精巣癌および卵巣癌ならびに進行性膀胱癌の治療に指示される。シスプラチンの主要な用量制限副作用は、腎毒性(これは水分補給および利尿により管理できる)、および耳毒性である。
【0217】
カルボプラチン、ジアンミン[1,1-シクロブタン-ジカルボキシレート(2-)-O,O’]白金は、注射液としてパラプラチン(PARAPLATIN)(登録商標)として市販されている。カルボプラチンは、主として進行性卵巣癌の第一選択および第二選択治療に指示される。骨髄抑制がカルボプラチンの用量制限毒性である。
【0218】
アルキル化剤は、非細胞周期特異的抗癌剤(non-phase anti-cancer specific agents)であり、かつ、強力な求電子試薬である。一般に、アルキル化剤は、アルキル化によって、リン酸基、アミノ基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、およびイミダゾール基などのDNA分子の求核部分を介してDNAと共有結合を形成する。このようなアルキル化によって核酸機能が破壊され細胞死に至る。アルキル化剤の例としては、限定されるものではないが、シクロホスファミド、メルファラン、およびクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード;ブスルファンなどのスルホン酸アルキル;カルムスチンなどのニトロ尿素;ならびにダカルバジンなどのトリアゼンが挙げられる。
【0219】
シクロホスファミド、2-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]テトラヒドロ-2H-1,3,2-オキシアザホスホリン2-オキシド一水和物は、注射液または錠剤としてシトキサン(CYTOXAN)(登録商標)として市販されている。シクロホスファミドは、単剤として、または他の化学療法薬と組み合わせて、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、および白血病の治療に指示される。脱毛症、悪心、嘔吐および白血球減少症がシクロホスファミドの最も一般的な用量制限副作用である。
【0220】
メルファラン、4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]-L-フェニルアラニンは、注射液または錠剤としてアルケラン(ALKERAN)(登録商標)として市販されている。メルファランは、多発性骨髄腫および切除不能な卵巣上皮癌の待期療法に指示される。骨髄抑制がメルファランの最も一般的な用量制限副作用である。
【0221】
クロラムブシル、4-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]ベンゼンブタン酸は、ロイケラン(LEUKERAN)(登録商標)錠剤として市販されている。クロラムブシルは、慢性リンパ性白血病、ならびにリンパ肉腫、巨大濾胞性リンパ腫、およびホジキン病などの悪性リンパ腫の待期療法に指示される。骨髄抑制がクロラムブシルの最も一般的な用量制限副作用である。
【0222】
ブスルファン、ジメタンスルホン酸1,4-ブタンジオールは、マイレラン(MYLERAN)(登録商標)錠剤として市販されている。ブスルファンは、慢性骨髄性白血病の待期療法に指示される。骨髄抑制がブスルファンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0223】
カルムスチン、1,3-[ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソ尿素は、BiCNU(登録商標)として凍結乾燥物質の単一バイアルとして市販されている。カルムスチンは、脳腫瘍、多発性骨髄腫、ホジキン病、および非ホジキンリンパ腫用に、単剤として、または他の薬剤と組み合わせて、待期療法に指示される。遅延型骨髄抑制がカルムスチンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0224】
ダカルバジン、5-(3,3-ジメチル-1-トリアゼノ)-イミダゾール-4-カルボキサミドは、材料の単一バイアルとしてDTIC-Dome(登録商標)として市販されている。ダカルバジンは、転移性悪性黒色腫の治療、および他の薬剤と組み合わせてホジキン病の第二選択治療に指示される。悪心、嘔吐、および食欲不振症がダカルバジンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0225】
抗生物質系抗新生物薬は、非細胞周期特異的薬剤であり、DNAと結合するかまたはDNAにインターカレートする。一般に、このような作用によって安定なDNA複合体かまたは鎖の切断が生じ、それにより核酸の通常機能が乱れ、細胞死に至る。抗生物質系抗新生物薬の例としては、限定されるものではないが、ダクチノマイシンなどのアクチノマイシン;ダウノルビシンおよびドキソルビシンなどのアントロサイクリン;ならびにブレオマイシンが挙げられる。
【0226】
ダクチノマイシンは、アクチノマイシンDとしても知られ、注射液の形態でコスメゲン(COSMEGEN)(登録商標)として市販されている。ダクチノマイシンは、ウィルムス腫瘍および横紋筋肉腫の治療に指示される。悪心、嘔吐、および食欲不振症がダクチノマイシンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0227】
ダウノルビシン、(8S-シス-)-8-アセチル-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リクソ-ヘキソピラノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-5,12ナフタセンジオン塩酸塩は、リポソーム注射形態としてダウノキソーム(DAUNOXOME)(登録商標)として、または注射液としてセルビジン(CERUBIDINE)(登録商標)として市販されている。ダウノルビシンは、急性非リンパ球性白血病および進行性HIV関連カポジ肉腫の治療における寛解導入に指示される。骨髄抑制がダウノルビシンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0228】
ドキソルビシン、(8S,10S)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リクソ-ヘキソピラノシル)オキシ]-8-グリコロイル,7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-1-メトキシ-5,12ナフタセンジオン塩酸塩は、注射可能な形態としてルベックス(RUBEX)(登録商標)またはアドリアマイシンRDF(ADRIAMYCIN RDF)(登録商標)として市販されている。ドキソルビシンは、主として急性リンパ芽球性白血病および急性骨髄芽球性白血病の治療に指示されるが、いくつかの固形腫瘍およびリンパ腫の治療における有用成分でもある。骨髄抑制がドキソルビシンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0229】
ブレオマイシン、ストレプトミセス・ヴェルチシルス(Streptomyces verticillus)の株から単離された細胞傷害性グリコペプチド系抗生物薬の混合物は、ベレノキサン(BLENOXANE)(登録商標)として市販されている。ブレオマイシンは、単剤として、または他の薬剤と組み合わせて、扁平上皮癌、リンパ腫、および精巣癌の待期療法に指示される。肺および皮膚毒性がブレオマイシンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0230】
トポイソメラーゼII阻害剤としては、限定されるものではないが、エピポドフィロトキシンが挙げられる。
【0231】
エピポドフィロトキシンは、マンドレイク植物由来の細胞周期特異的抗新生物薬である。エピポドフィロトキシンは、一般に、トポイソメラーゼIIとDNAとの三元複合体を形成してDNA鎖の切断を引き起こすことによって、細胞周期のS期およびG期において細胞に影響を及ぼす。この鎖切断が蓄積し、細胞死をたどる。エピポドフィロトキシンの例としては、限定されるものではないが、エトポシドおよびテニポシドが挙げられる。
エピポドフィロトキシンの例としては、限定されるものではないが、エトポシドおよびテニポシドが挙げられる。
【0232】
エトポシド、4’-デメチル-エピポドフィロトキシン9[4,6-0-(R)-エチリデン-β-D-グルコピラノシド]は、注射液またはカプセル剤としてベプシド(VePESID)(登録商標)として市販されており、一般にVP-16として知られている。エトポシドは、単剤として、または他の化学療法薬と組み合わせて、精巣癌および非小細胞肺癌の治療に指示される。白血球減少症の罹患率は血小板減少症よりも重篤である傾向がある。
【0233】
テニポシド、4’-デメチル-エピポドフィロトキシン9[4,6-0-(R)-テニリデン-β-D-グルコピラノシド]は、注射液としてブモン(VUMON)(登録商標)として市販されており、一般にVM-26として知られている。テニポシドは、単剤として、または他の化学療法薬と組み合わせて、小児における急性白血病の治療に指示される。骨髄抑制がテニポシドの最も一般的な用量制限副作用である。テニポシドは、白血球減少症および血小板減少症の両方を含み得る。
【0234】
代謝拮抗性抗新生物薬は、DNA合成を阻害すること、またはプリンもしくはピリミジン塩基の合成を阻害し、それによりDNA合成を制限することによって細胞周期のS期(DNA合成)に作用する、細胞周期特異的抗新生物薬である。その結果、S期は進行せず、細胞死をたどる。代謝拮抗性抗新生物薬の例としては、限定されるものではないが、フルオロウラシル、メトトレキサート、シタラビン、メカプトプリン(mecaptopurine)、チオグアニン、およびゲムシタビンが挙げられる。
【0235】
5-フルオロウラシル、5-フルオロ-2,4-(1H,3H)ピリミジンジオンは、フルオロウラシルとして市販されている。5-フルオロウラシルを投与すると、チミジル酸合成が阻害され、またRNAおよびDNAの両方に組み込まれる。その結果は一般に細胞死である。5-フルオロウラシルは、単剤として、または他の化学療法薬と組み合わせて、乳癌、結腸癌、直腸癌、胃癌、および膵癌の治療に指示される。骨髄抑制および粘膜炎が5-フルオロウラシルの用量制限副作用である。他のフルオロピリミジン類似体としては、5-フルオロデオキシウリジン(フロクスウリジン)および5-フルオロデオキシウリジン一リン酸が挙げられる。
【0236】
シタラビン、4-アミノ-1-β-D-アラビノフラノシル-2(1H)-ピリミジノンは、シトサール-U(CYTOSAR-U)(登録商標)として市販されており、一般にAra-Cとして知られている。シタラビンは、成長中のDNA鎖へのシタラビンの末端組み込みによってDNA鎖の伸長を阻害することにより、S期で細胞期特異性を示すと考えられている。シタラビンは、単剤として、または他の化学療法薬と組み合わせて、急性白血病の治療に指示される。他のシチジン類似体としては、5-アザシチジンおよび2’,2’-ジフルオロデオキシシチジン(ゲムシタビン)が挙げられる。シタラビンには、白血球減少症、血小板減少症、および粘膜炎が含まれる。
メルカプトプリン、1,7-ジヒドロ-6H-プリン-6-チオン一水和物は、プリントール(PURINETHOL)(登録商標)として市販されている。メルカプトプリンは、現時点でまだ特定されていないメカニズムによってDNA合成を阻害することにより、S期で細胞期特異性を示す。メルカプトプリンは、単剤として、または他の化学療法薬と組み合わせて、急性白血病の治療に指示される。骨髄抑制および消化管粘膜炎が高用量でのメルカプトプリンの予想される副作用である。有用なメルカプトプリン類似体はアザチオプリンである。
【0237】
チオグアニン、2-アミノ-1,7-ジヒドロ-6H-プリン-6-チオンは、タブロイド(TABLOID)(登録商標)として市販されている。チオグアニンは、現時点でまだ特定されていないメカニズムによってDNA合成を阻害することにより、S期で細胞期特異性を示す。チオグアニンは、単剤として、または他の化学療法薬と組み合わせて、急性白血病の治療に指示される。白血球減少症、血小板減少症、および貧血を含む骨髄抑制がチオグアニン投与の最も一般的な用量制限副作用である。しかしながら、消化管副作用も起こり、用量制限となり得る。他のプリン類似体としては、ペントスタチン、エリスロヒドロキシノニルアデニン、リン酸フルダラビン、およびクラドリビンが挙げられる。
【0238】
ゲムシタビン、2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン一塩酸塩(β-異性体)は、ジェムザール(GEMZAR)(登録商標)として市販されている。ゲムシタビンは、S期にて、またG1/S境界を通る細胞の進行を遮断することによって、細胞期特異性を示す。ゲムシタビンは、シスプラチンと組み合わせて局所進行性非小細胞肺癌の治療に指示され、また単独で局所進行性膵癌の治療に指示される。白血球減少症、血小板減少症、および貧血を含む骨髄抑制がゲムシタビン投与の最も一般的な用量制限副作用である。
【0239】
メトトレキサート、N-[4[[(2,4-ジアミノ-6-プテリジニル)メチル]メチルアミノ]ベンゾイル]-L-グルタミン酸は、メトトレキサートナトリウムとして市販されている。メトトレキサートは、プリンヌクレオチドおよびチミジル酸の合成に必要とされるジヒドロ葉酸レダクターゼの阻害を介して、DNAの合成、修復、および/または複製を阻害することによって、特にS期に細胞周期作用を示す。メトトレキサートは、単剤として、または他の化学療法薬と組み合わせて、絨毛癌、髄膜白血病、非ホジキンリンパ腫、ならびに乳癌、頭部癌、頸部癌、卵巣癌、および膀胱癌の治療に指示される。骨髄抑制(白血球減少症、血小板減少症、および貧血)および粘膜炎がメトトレキサート投与の予想される副作用である。
【0240】
カンプトテシンおよびカンプトテシン誘導体を含むカンプトテシン類は、トポイソメラーゼI阻害剤として入手可能または開発中である。カンプトテシン細胞傷害活性は、そのトポイソメラーゼI阻害活性に関連すると考えられている。カンプトテシンの例としては、限定されるものではないが、イリノテカン、トポテカン、および下記の7-(4-メチルピペラジノ-メチレン)-10,11-エチレンジオキシ-20-カンプトテシンの種々の光学形態が挙げられる。
【0241】
イリノテカンHCl、(4S)-4,11-ジエチル-4-ヒドロキシ-9-[(4-ピペリジノピペリジノ)カルボニルオキシ]-1H-ピラノ[3’,4’,6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-3,14(4H,12H)-ジオン塩酸塩は、注射液カンプトサール(CAMPTOSAR)(登録商標)として市販されている。
【0242】
イリノテカンは、その活性代謝物SN-38とともにトポイソメラーゼI-DNA複合体と結合する、カンプトテシンの誘導体である。細胞傷害性は、トポイソメラーゼI:DNA:イリンテカンまたはSN-38の三元複合体と複製酵素との相互作用により引き起こされる回復不能な二本鎖切断の結果として生じると考えられている。イリノテカンは、結腸または直腸の転移性癌の治療に指示される。イリノテカンHClの用量制限副作用は、好中球減少症を含む骨髄抑制、および下痢を含むGI効果である。
【0243】
トポテカンHCl、(S)-10-[(ジメチルアミノ)メチル]-4-エチル-4,9-ジヒドロキシ-1H-ピラノ[3’,4’,6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-3,14-(4H,12H)-ジオン一塩酸塩は、注射液ハイカムチン(HYCAMTIN)(登録商標)として市販されている。トポテカンは、トポイソメラーゼI-DNA複合体と結合して、DNA分子のねじれ歪みに応答してトポイソメラーゼIにより引き起こされる一本鎖切断の再連結を妨げるカンプトテシンの誘導体である。トポテカンは、転移性の卵巣癌および小細胞肺癌の第二選択治療に指示される。トポテカンHClの用量制限副作用は骨髄抑制、主として好中球減少症である。
【0244】
また、ラセミ混合物(R,S)形態ならびにRおよびS鏡像異性体を含む、現在開発中の下式Aのカンプトテシン誘導体も注目され、
【化1】
【0245】
化学名7-(4-メチルピペラジノ-メチレン)-10,11-エチレンジオキシ-20(R,S)-カンプトテシン(ラセミ混合物)または7-(4-メチルピペラジノ-メチレン)-10,11-エチレンジオキシ-20(R)-カンプトテシン(R鏡像異性体)または7-(4-メチルピペラジノ-メチレン)-10,11-エチレンジオキシ-20(S)-カンプトテシン(S鏡像異性体)として知られる。このような化合物ならびに関連化合物は、製造方法を含め、米国特許第6,063,923号;第5,342,947号;第5,559,235号;第5,491,237号および1997年11月24日出願の係属中米国特許出願第08/977,217号に記載されている。
【0246】
ホルモンおよびホルモン類似体は、ホルモンと癌の増殖および/または増殖の欠如との間に関係がある癌を治療するために有用な化合物である。癌治療に有用なホルモンおよびホルモン類似体の例としては、限定されるものではないが、小児の悪性リンパ腫および急性白血病の治療において有用なプレドニゾンおよびプレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド;副腎皮質癌およびエストロゲン受容体を含むホルモン依存性乳癌の治療において有用な、アミノグルテチミドおよびその他のアロマターゼ阻害剤、例えば、アナストロゾール、レトラゾール、ボラゾール、およびエキセメスタン;ホルモン依存性乳癌および子宮内膜癌の治療において有用な酢酸メゲストロールなどのプロゲクチン;前立腺癌および良性前立腺肥大の治療において有用なエストロゲン、アンドロゲン、および抗アンドロゲン作用薬、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、酢酸シプロテロンおよび5α-レダクターゼ、例えば、フィナステリドおよびデュタステライド;ホルモン依存性乳癌およびその他の感受性癌の治療において有用なタモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェンなどの抗エストロゲン作用薬、ならびに米国特許第5,681,835号、同第5,877,219号、および同第6,207,716号に記載されているものなどの選択的エストロゲン受容体調節薬(SERMS);ならびに前立腺癌の治療のために黄体形成ホルモン(LH)および/または卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出を刺激するゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)およびその類似体、例えば、LHRHアゴニストおよびアンタゴニスト、例えば、酢酸ゴセレリンおよびルプロリドが挙げられる。
【0247】
レトロゾール(商標フェマーラ)は、術後のホルモン応答性乳癌の治療のための経口非ステロイド系アロマターゼ阻害剤である。エストロゲンは、アロマターゼ酵素の活性を介したアンドロゲンの変換により産生される。次に、エストロゲンはエストロゲン受容体と結合し、細胞を分裂させる。レトロゾールは、そのシトクロムP450単位のヘムに競合的可逆的に結合することによりアロマターゼのエストロゲン産生を妨げる。この作用は特殊であり、レトロゾールは鉱質またはコルチコステロイドの産生を低下させない。
【0248】
シグナル伝達経路阻害剤は、細胞内変化を引き起こす化学プロセスを遮断または阻害する阻害剤である。本明細書で使用する場合、この変化は細胞増殖または分化である。本発明において有用なシグナル伝達阻害剤としては、限定されるものではないが、受容体チロシンキナーゼ、非受容体型チロシンキナーゼ、SH2/SH3ドメイン遮断剤、セリン/トレオニンキナーゼ、ホスファチジルイノシトール-3キナーゼ、ミオイノシトールシグナル伝達およびRas癌遺伝子の阻害剤が含まれる。
【0249】
いくつかのタンパク質チロシンキナーゼは、細胞増殖の調節に関与する種々のタンパク質の特定のチロシル残基のリン酸化を触媒する。このようなタンパク質チロシンキナーゼは、大きく受容体または非受容体型キナーゼとして分類することができる。
【0250】
受容体チロシンキナーゼは、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびチロシンキナーゼドメインを有する膜貫通タンパク質である。受容体チロシンキナーゼは細胞増殖の調節に関与し、一般に、成長因子受容体と呼ばれる。これらのキナーゼの多くの不適当なまたは制御を欠いた活性化、すなわち、例えば、過剰発現または突然変異による異常なキナーゼ成長因子受容体活性は、制御を欠いた細胞増殖をもたらすことが示されている。よって、このようなキナーゼの異常な活性は悪性組織増殖に関連付けられている。
結果として、このようなキナーゼの阻害剤は癌治療法を提供することができる。成長因子受容体には、例えば、上皮細胞成長因子受容体(EGFr)、血小板由来成長因子受容体(PDGFr)、erbB2、erbB4、血管内皮成長因子受容体(VEGFr)、免疫グロブリン様および上皮細胞成長因子同一性ドメインを有するチロシンキナーゼ(tyrosine kinase with immunoglobulin-like and epidermal growth factor homology domains)(TIE-2)、インスリン成長因子-I(IGFI)受容体、マクロファージコロニー刺激因子(cfms)、BTK、ckit、cmet、線維芽細胞成長因子(FGF)受容体、Trk受容体(TrkA、TrkB、およびTrkC)、エフリン(eph)受容体、およびRET癌原遺伝子が挙げられる。増殖受容体のいくつかの阻害剤が開発下にあり、リガンドアンタゴニスト、抗体、チロシンキナーゼ阻害剤およびアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれる。成長因子受容体および成長因子受容体機能を阻害する薬剤は、例えば、Kath, John C., Exp. Opin. Ther. Patents (2000) 10(6):803-818; Shawver et al DDT Vol 2, No. 2 February 1997;およびLofts, F. J. et al, “Growth factor receptors as targets”, New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy, Workman, Paul and Kerr, David編, CRC press 1994, Londonに記載
されている。
【0251】
成長因子受容体キナーゼでないチロシンキナーゼは、非受容体型チロシンキナーゼである。抗癌薬の標的または潜在的標的となる、本発明において有用な非受容体型チロシンキナーゼには、cSrc、Lck、Fyn、Yes、Jak、cAbl、FAK(接着斑キナーゼ)、ブルトン型チロシンキナーゼ、およびBcr-Ablが含まれる。このような非受容体型キナーゼおよび非受容体型チロシンキナーゼ機能を阻害する薬剤は、Sinh, S. and Corey, S.J., (1999) Journal of Hematotherapy and Stem Cell Research 8 (5): 465-80;およびBolen, J.B., Brugge, J.S., (1997) Annual review of Immunology. 15: 371-404に記載されている。
【0252】
SH2/SH3ドメイン遮断剤は、PI3-K p85サブユニット、Srcファミリーキナーゼ、アダプター分子(Shc、Crk、Nck、Grb2)およびRas-GAPをはじめとする、様々な酵素またはアダプタータンパク質においてSH2またはSH3ドメイン結合を混乱させる薬剤である。抗癌薬の標的としてのSH2/SH3ドメインは、Smithgall, T.E. (1995), Journal of Pharmacological and Toxicological Methods. 34(3) 125-32に記載されている。
【0253】
セリン/トレオニンキナーゼの阻害剤、例えば、MAPキナーゼカスケード遮断剤、これには、Rafキナーゼ(rafk)、マイトジェンまたは細胞外調節キナーゼ(Mitogen or Extracellular Regulated Kinase)(MEK)、および細胞外調節キナーゼ(ERK)の遮断剤;およびPKC(α、β、γ、ε、μ、λ、ι、ζ)の遮断剤を含むタンパク質キナーゼCファミリーメンバー遮断剤が含まれる。IkBキナーゼファミリー(IKKa、IKKb)、PKBファミリーキナーゼ、AKTキナーゼファミリーメンバー、およびTGFβ受容体キナーゼ。このようなセリン/トレオニンキナーゼおよびそれらの阻害剤は、Yamamoto, T., Taya, S., Kaibuchi, K., (1999), Journal of Biochemistry. 126 (5) 799-803; Brodt, P, Samani, A., and Navab, R. (2000), Biochemical Pharmacology, 60. 1101-1107; Massague, J., Weis-Garcia, F. (1996) Cancer Surveys. 27:41-64; Philip, P.A., and Harris, A.L. (1995), Cancer Treatment and Research. 78: 3-27, Lackey, K. et al Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, (10), 2000, 223-226;米国特許第6,268,391号;およびMartinez-Iacaci, L., et al, Int. J. Cancer (2000), 88(1), 44-52に記載されている。
【0254】
PI3-キナーゼ、ATM、DNA-PK、およびKの遮断剤を含むホスファチジルイノシトール(Phosphotidyl inositol)-3キナーゼファミリーメンバーの阻害剤もまた本発明において有用である。このようなキナーゼは、Abraham, R.T. (1996), Current Opinion in Immunology. 8 (3) 412-8; Canman, C.E., Lim, D.S. (1998), Oncogene 17 (25) 3301-3308; Jackson, S.P. (1997), International Journal of Biochemistry and Cell Biology. 29 (7):935-8; and Zhong, H. et al, Cancer res, (2000) 60(6), 1541-1545に記載されている。
【0255】
また、ホスホリパーゼC遮断剤およびミオイノシトール類似体などのミオイノシトールシグナル伝達阻害剤も本発明において有用である。このようなシグナル阻害剤は、Powis, G., and Kozikowski A., (1994) New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy, Paul Workman and David Kerr編, CRC press 1994, Londonに記載されている。
【0256】
シグナル伝達経路阻害剤の別の群は、Ras癌遺伝子の阻害剤である。このような阻害剤には、ファルネシルトランスフェラーゼ、ゲラニル-ゲラニルトランスフェラーゼ、およびCAAXプロテアーゼの阻害剤、ならびにアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムおよび免疫療法が含まれる。このような阻害剤は、野生型突然変異rasを含有する細胞においてras活性化を遮断し、それにより抗増殖薬として作用することが示されている。Ras癌遺伝子阻害は、Scharovsky, O.G., Rozados, V.R., Gervasoni, S.I. Matar, P. (2000), Journal of Biomedical Science. 7(4) 292-8; Ashby, M.N. (1998), Current Opinion in Lipidology. 9 (2) 9-102; and Bennett, C.F. and Cowsert, L.M. BioChim. Biophys. Acta, (1999) 1489(1):19-30で考察されている。
【0257】
前述のように、受容体キナーゼリガンド結合に対する抗体アンタゴニストもまたシグナル伝達阻害剤として働き得る。この群のシグナル伝達経路阻害剤には、受容体チロシンキナーゼの細胞外リガンド結合ドメインに対するヒト化抗体の使用が含まれる。例えば、Imclone C225 EGFR特異的抗体(Green, M.C. et al, Monoclonal Antibody Therapy for Solid Tumors, Cancer Treat. Rev., (2000), 26(4), 269-286参照)ハーセプチン(登録商標)erbB2抗体(Tyrosine Kinase Signalling in Breast cancer:erbB Family Receptor Tyrosine Kinases, Breast cancer Res., 2000, 2(3), 176-183参照);および2CB VEGFR2特異的抗体(Brekken, R.A. et al, Selective Inhibition of VEGFR2 Activity by a monoclonal Anti-VEGF antibody blocks tumor growth in mice, Cancer Res. (2000) 60, 5117-5124参照)。
【0258】
非受容体型キナーゼ血管新生阻害剤もまた、本発明において使用が見出せる。血管新生関連VEGFRおよびTIE2の阻害剤は、シグナル伝達阻害剤に関して上述されている(両受容体とも受容体型チロシンキナーゼである)。erbB2およびEGFRの阻害剤は血管新生、主としてVEGF発現を阻害することが示されているので、血管新生は一般に、erbB2/EGFRシグナル伝達に関連する。よって、erbB2/EGFR阻害剤と血管新生阻害剤の組合せは意味を成す。従って、非受容体型チロシンキナーゼ阻害剤は、本発明のEGFR/erbB2阻害剤と併用可能である。例えば、VEGFR(受容体型チロシンキナーゼ)を認識しないがそのリガンドと結合する抗VEGF抗体;血管新生を阻害するインテグリン(αβ)の小分子阻害剤;エンドスタチンおよびアンギオスタチン(非RTK)も、開示されているerbファミリー阻害剤と組み合わせると有用であることが分かり得る(Bruns CJ et al (2000), Cancer Res., 60: 2926-2935; Schreiber AB, Winkler ME, and Derynck R. (1986), Science, 232: 1250-1253; Yen L et al. (2000), Oncogene 19: 3460-3469参照)。
【0259】
ボトリエント(登録商標)として市販されているパゾパニブは、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)である。パゾパニブは、化学名5-[[4-[(2,3-ジメチル-2H-インダゾール-6-イル)メチルアミノ]-2-ピリミジニル]アミノ]-2-メチルベンゼンスルホンアミド一塩酸塩の、塩酸塩として提供されている。パゾパニブは、進行性腎細胞癌患者の治療に承認されている。
【0260】
アバスチン(登録商標)として市販されているベバシスマブは、VEGF-Aを遮断するヒト化モノクローナル抗体である。アバスチン(登録商標)は、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、腎癌、および膠芽腫を含む様々な癌の治療に承認されている。
【0261】
リツキシマブは、キメラモノクローナル抗体であり、リツキサン(登録商標)およびマブセラ(登録商標)として市販されている。リツキシマブは、B細胞上のCD20と結合し、細胞アポトーシスを引き起こす。リツキシマブは静脈内に投与され、関節リウマチおよびB細胞非ホジキンリンパ腫の治療に承認されている。
【0262】
オファツムマブは、完全ヒトモノクローナル抗体であり、アルゼラ(登録商標)として市販されている。オファツムマブは、B細胞上のCD20と結合し、フルダラビン(フルダラ)およびアレムツズマブ(キャンパス)治療に不応の成人において慢性リンパ球性白血病(CLL;白血球の癌の一種)を治療するために使用されている。
【0263】
トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))は、HER2受容体と結合するヒト化モノクローナル抗体である。その元の適応はHER2陽性乳癌である。トラスツズマブエメタシン(商標カドサイラ)は、細胞傷害性薬剤(DM1と連結されたモノクローナル抗体トラスツズマブ(ハーセプチン)からなる抗体-薬物複合体である。トラスツズマブは単独で、HER2/neu受容体と結合することにより癌細胞の増殖を停止させ、一方、DM1は細胞に入ってチューブリンと結合することによりそれらを破壊する。このモノクローナル抗体はHER2を標的とし、HER2は癌細胞においてのみ過剰発現されるので、この複合体は毒素を腫瘍細胞に特異的に送達する。[8]この複合体はT-DM1と略される。
【0264】
セツキシマブ(エルビタックス(登録商標))は、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)を阻害するキメラマウスヒト抗体である。
【0265】
mTOR阻害剤としては、限定されるものではないが、ラパマイシン(FK506)およびラパログ、RAD001またはエベロリムス(アフィニトール)、CCI-779またはテムシロリムス、AP23573、AZD8055、WYE-354、WYE-600、WYE-687およびPp121が挙げられる。
【0266】
エベロリムスは、ノバルティス社によりアフィニトール(登録商標)として販売され、シロリムスの40-O-(2-ヒドロキシエチル)誘導体であり、シロリムスと同様にmTOR(ラパマイシンの哺乳動物標的)阻害剤として働く。エベロリムスは現在、臓器移植拒絶の予防および腎細胞癌の治療のために免疫抑制薬として使用されている。また、複数の癌に使用するためにエベロリムスおよび他のmTOR阻害剤に対して多くの研究が行われてきた。エベロリムスは以下の化学構造(式II):
【化2】
【0267】
を有し、化学名はジヒドロキシ-12-[(2R)-1-[(1S,3R,4R)-4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メトキシシクロヘキシル]プロパン-2-イル]-19,30-ジメトキシ-15,17,21,23,29,35-ヘキサメチル-11,36-ジオキサ-4-アザトリシクロ[30.3.1.04,9]ヘキサトリアコンタ-16,24,26,28-テトラエン-2,3,10,14,20-ペントンである。
【0268】
ベキサロテンは、ターグレチン(登録商標)として販売され、レチノイドX受容体(RXR)を選択的に活性化するレチノイドのサブクラスのメンバーである。これらのレチノイド受容体は、レチノイン酸受容体(RAR)とは異なる生物活性を有する。化学名は4-[1-(5,6,7,8-テトラヒドロ-3,5,5,8,8-ペンタメチル-2-ナフタレニル)エテニル]安息香酸である。ベキサロテンは、疾患が少なくとも1種類の他の投薬で上手く治療できなかった人で、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL、皮膚癌の一種)を治療するために使用される。
【0269】
ネクサバール(登録商標)として市販されているソラフェニブは、マルチキナーゼ阻害剤と呼ばれる薬剤の一種である。その化学名は、4-[4-[[4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイルアミノ]フェノキシ]-N-メチル-ピリジン-2-カルボキサミドである。ソラフェニブは、進行性腎細胞癌(腎臓で始まる癌の一種)を治療するために使用される。ソラフェニブはまた、切除不能肝細胞癌(手術で治療できない肝臓癌一種)を治療するためにも使用される。
【0270】
免疫療法計画に使用される薬剤もまた式(I)の化合物を組み合わせて有用であり得る。erbB2またはEGFRに対する免疫応答を生成するためには複数の免疫戦略がある。これらの戦略は一般に腫瘍ワクチン接種の領域である。免疫アプローチの有効性は、小分子阻害剤を用いたerbB2/EGFRシグナル伝達経路の複合阻害を介して大幅に増強され得る。erbB2/EGFRに対する免疫/腫瘍ワクチンアプローチの考察は、Reilly RT et al. (2000), Cancer Res. 60: 3569-3576;およびChen Y, Hu D, Eling DJ, Robbins J, and Kipps TJ. (1998), Cancer Res. 58: 1965-1971に見出すことができる。
【0271】
erbB阻害剤の例としては、ラパチニブ、エルロチニブ、およびゲフィチニブが挙げられる。ラパチニブ、N-(3-クロロ-4-{[(3-フルオロフェニル)メチル]オキシ}フェニル)-6-[5-({[2-(メチルスルホニル)エチル]アミノ}メチル)-2-フラニル]-4-キナゾリンアミン(示されているように式IIIで表される)は、HER2-陽性転移性乳癌の治療にカペシタビンと組み合わせて承認されている、強力な経口、小分子の、erbB-1およびerbB-2(EGFRおよびHER2)チロシンキナーゼの二重阻害剤である。
【化3】
【0272】
式(III)の化合物の遊離塩基、HCl塩、および二トシル酸は、1999年7月15日公開のWO99/35146;および2002年1月10日公開のWO02/02552に開示されている手順に従って製造することができる。
【0273】
商標タルセバとして市販されているエルロチニブ、N-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス{[2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-4-キナゾリンアミンは示されているように式IVで表される。
【化4】
【0274】
エルロチニブの遊離塩基およびHCl塩は、例えば米国特許第5,747,498号の実施例20に従って製造することができる。
【0275】
ゲフィチニブ、4-キナゾリンアミン,N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-メトキシ-6-[3-4-モルホリン)プロポキシ]は、示されるような式IVで表される。
【化5】
【0276】
商標イレッサ登録商標)(Astra-Zenenca)として市販されているゲフィチニブは、白金に基づくおよびドセタキセルの両化学療法が上手くいかなかった後に局所進行性または転移性非小細胞肺癌患者の治療に単剤療法として指示されるerbB-1阻害剤である。ゲフィチニブの遊離塩基、HCl塩、および二HCl塩は、1996年4月23日に出願され、1996年10月31日にWO96/33980として公開された国際特許出願PCT/GB96/0096の手順に従って製造することができる。
【0277】
トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))は、HER2受容体と結合するヒト化モノクローナル抗体である。その元の適応は、HER2陽性乳癌である。
【0278】
セツキシマブ(エルビタックス(登録商標))は、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)を阻害するキメラマウスヒト抗体である。
【0279】
ペルツズマブ(2C4とも呼ばれる、商標オムニターグ)は、モノクローナル抗体である。「HER二量体化阻害剤」と呼ばれる薬剤系列のそのクラスの筆頭。HER2と結合することにより、それはHER2と他のHER受容体との二量体化を阻害し、腫瘍増殖の緩徐化をもたらすのではないかと推測されている。ペルツズマブは2001年1月4日公開のWO01/00245に記載されている。
【0280】
リツキシマブは、キメラモノクローナル抗体であり、リツキサン(登録商標)およびマブセラ(登録商標)として市販されている。リツキシマブは、B細胞上のCD20と結合し、細胞アポトーシスを引き起こす。リツキシマブは静脈内に投与され、関節リウマチおよびB細胞非ホジキンリンパ腫の治療に承認されている。
【0281】
オファツムマブは、完全ヒトモノクローナル抗体であり、アルゼラ(登録商標)として市販されている。オファツムマブは、B細胞上のCD20と結合し、フルダラビン(フルダラ)およびアレムツズマブ(キャンパス)治療に不応の成人において慢性リンパ球性白血病(CLL;白血球の癌の一種)を治療するために使用されている。
【0282】
アポトーシス誘導計画に使用される薬剤(例えば、bcl-2アンチセンスオリゴヌクレオチド)もまた、本発明の組合せにおいて使用可能である。Bcl-2ファミリータンパク質のメンバーはアポトーシスを遮断する。従って、bcl-2のアップレギュレーションは化学耐性に関連付けられている。研究によれば、上皮細胞成長因子(EGF)はbcl-2ファミリーの抗アポトーシスメンバー(すなわち、mcl-1)を刺激することが示されている。従って、腫瘍においてbcl-2の発現をダウンレギュレートするように設計された戦略は、実証された臨床利益を有し、現在、第II/III相治験下にある(すなわち、GentaのG3139 bcl-2アンチセンスオリゴヌクレオチド)。
bcl-2に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド戦略を使用するこのようなアポトーシス誘導戦略は、Water JS et al. (2000), J. Clin. Oncol. 18: 1812-1823;およびKitada S et al. (1994), Antisense Res. Dev. 4: 71-79に考察されている。
【0283】
細胞周期シグナル伝達阻害剤は、細胞周期の制御に関与する分子を阻害する。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)と呼ばれるタンパク質キナーゼファミリーおよびそれらとサイクリンと呼ばれるタンパク質ファミリーとの相互作用が、真核細胞周期の進行を制御している。細胞周期の正常な進行には、種々のサイクリン/CDK複合体の協調した活性化および不活化が不可欠である。細胞周期シグナル伝達のいくつかの阻害剤が開発下にある。例えば、CDK2、CDK4、およびCDK6をはじめとするサイクリン依存性キナーゼおよびそれらの阻害剤の例は、例えば、Rosania et al, Exp. Opin. Ther. Patents (2000) 10(2):215-230に記載されている。
【0284】
本明細書で使用する場合、「免疫調節薬」は、モノクローナル抗体を含め、免疫系に作用するいずれの物質も意味する。本発明のPD-1およびOX40抗原結合タンパク質結合タンパク質は、免疫調節薬と見なすことができる。免疫調節薬は癌の治療のために抗新生物薬として使用できる。例えば、免疫調節薬としては、限定されるものではないが、イピリムマブ(ヤーボイ(登録商標))などの抗CTLA-4抗体、ならびに抗PD-1抗体(オプジーボ/ニボルマブおよびキートルーダ/ペンブロリズマブ)が含まれる。他の免疫調節薬としては、限定されるものではないが、OX-40抗体、PD-L1抗体、LAG3抗体、TIM-3抗体、41BB抗体およびGITR抗体が含まれる。
【0285】
ヤーボイ(登録商標)(イピリムマブ)は、Bristol Myers Squibbにより市販されている完全ヒトCTLA-4抗体である。イピリムマブのタンパク質構造および使用方法は、米国特許第6,984,720号および第7,605,238号に記載されている。
【0286】
オプジーボ(登録商標)/ニボルマブは、Bristol Myers Squibbにより市販されている、免疫増強活性を有する、負の免疫調節ヒト細胞表面受容体PD-1(プログラム細胞死-1またはプログラム細胞死-1/PCD-1)に対する完全ヒトモノクローナル抗体である。ニボルマブは、Igスーパーファミリー膜貫通タンパク質であるPD-1と結合し、そのリガンドPD-L1およびPD-L2によるPD-1の活性化を遮断して、T細胞の活性化および腫瘍細胞または病原体に対する細胞媒介性免疫応答をもたらす。活性化PD-1は、T細胞の活性化、およびP13k/Akt経路の活性化の抑制を介したエフェクター機能に負の調節を行う。ニボルマブの他の名称としては、BMS-936558、MDX-1106、およびONO-4538が含まれる。ニボルマブのアミノ酸配列ならびに使用および製造方法は、米国特許第8,008,449号に開示されている。
【0287】
キートルーダ(登録商標)/ペンブロリズマブは、肺癌の治療のためにMerckにより市販されている抗PD-1抗体である。ペンブロリズマブのアミノ酸配列および使用方法は、米国特許第8,168,757号に開示されている。
【0288】
OX40としても知られるCD134は、CD28とは異なり、休止中のナイーブT細胞上には構成的に発現されない受容体のNFRスーパーファミリーのメンバーである。OX40は、活性化の24~72時間後に発現される二次的補助刺激分子であり;そのリガンドOX40Lもまた休止中の抗原提示細胞では発現されないが、それらの活性化後には発現される。OX40の発現は、T細胞の完全な活性化に依存し、CD28が無ければ、OX40の発現は遅れ、4分の1のレベルとなる。OX-40抗体、OX-40融合タンパク質およびそれらの使用方法は、米国特許第7,504,101号;同第7,758,852号;同第7,858,765号;同第7,550,140号;同第7,960,515号;WO2012027328;WO2013028231に開示されている。
【0289】
PD-L1(CD274またはB7-H1とも呼ばれる)に対する抗体および使用方法は、米国特許第7,943,743号;同第8,383,796号;US20130034559、WO2014055897、米国特許第8,168,179号;および同第7,595,048号に開示されている。PD-L1抗体は、癌治療のための免疫調節薬として開発中である。
【0290】
別の実施態様では、治療上有効な量の
a)本発明の組合せ;および
b)少なくとも1種類の抗新生物薬
を必要とする哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物において癌を処置する方補が提供される。
【0291】
別の実施態様では、治療上有効な量の
a)本発明の組合せ;および
b)少なくとも1種類の免疫調節薬
を必要とする哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物において癌を処置する方補が提供される。
【0292】
一つの実施態様では、治療上有効な量の本発明の組合せを投与することを含んでなる、必要とするヒトにおいて癌を処置する方法が提供され、前記組合せは、治療上有効な量の、BCMAに結合する抗原結合タンパク質および治療上有効な量の、PD-1に結合する抗原結合タンパク質および治療上有効な量の、OX-40に結合する抗原結合タンパク質を含んでなる。
【0293】
実施態様では、本発明の組合せは、癌処置の他の治療的方法と併用してもよい。特に、抗新生物療法では、他の化学療法薬、ホルモン薬、抗体薬ならびに上記のもの以外の外科的処置および/または放射線処置との併用療法が想定される。
【0294】
一つの実施態様では、さらなる抗癌療法は、外科的療法および/または放射線療法である。
【0295】
一つの実施態様では、さらなる抗癌療法は、少なくとも1種類の付加的抗新生物薬である。
【0296】
処置される感受性腫瘍に対して活性を有するいずれの抗新生物薬も本組合せで使用可能である。有用な典型的な抗新生物薬としては、限定されるものではないが、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドなどの微小管阻害剤;白金錯体;ナイトロジェンマスタード、オキシアザホスホリン、アルキルスルホネート、ニトロソ尿素、およびトリアゼンなどのアルキル化剤;アントラサイクリン、アクチノマイシンおよびブレオマイシンなどの抗生物薬;エピポドフィロトキシンなどのトポイソメラーゼII阻害剤;プリンおよびピリミジン類似体ならびに葉酸拮抗化合物などの代謝拮抗物質;カンプトテシンなどのトポイソメラーゼI阻害剤;ホルモンおよびホルモン類似体;シグナル伝達経路阻害剤;非受容体型チロシン血管新生阻害剤;免疫治療薬;アポトーシス促進薬;および細胞周期シグナル伝達阻害剤が含まれる。
【0297】
一つの実施態様では、本発明の組合せは、抗BCMA抗原結合タンパク質と、PD-1またはOX40抗原結合タンパク質のいずれかと、微小管阻害剤、白金錯体、アルキル化剤、抗生物薬、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモンおよびホルモン類似体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体型チロシンMEK血管新生阻害剤(non-receptor tyrosine MEKngiogenesis inhibitors)、免疫治療薬、アポトーシス促進薬、および細胞周期シグナル伝達阻害剤から選択される少なくとも1種類の抗新生物薬とを含んでなる。
【0298】
一つの実施態様では、本発明の組合せは、抗BCMA抗原結合タンパク質とPD-1またはOX40抗原結合タンパク質と少なくとも1種類の抗新生物薬、すなわち、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドから選択される微小管阻害剤とを含んでなる。
【0299】
さらなる実施態様では、少なくとも1種類の抗新生物薬は、ジテルペノイドである。
【0300】
さらなる実施態様では、少なくとも1種類の抗新生物薬は、ビンカアルカロイドである。
【0301】
一つの実施態様では、本発明の組合せは、抗BCMA抗原結合タンパク質とPD-1またはOX40抗原結合タンパク質と少なくとも1種類の抗新生物薬、すなわち、白金錯体とを含んでなる。
【0302】
さらなる実施態様では、少なくとも1種類の抗新生物薬は、パクリタキセル、カルボプラチン、またはビノレルビンである。
【0303】
さらなる実施態様では、少なくとも1種類の抗新生物薬は、カルボプラチンである。
【0304】
さらなる実施態様では、少なくとも1種類の抗新生物薬は、ビノレルビンである。
【0305】
さらなる実施態様では、少なくとも1種類の抗新生物薬は、パクリタキセルである。
【0306】
一つの実施態様では、本発明の組合せは、抗BCMA抗原結合タンパク質とPD-1またはOX40抗原結合タンパク質と少なくとも1種類の抗新生物薬、すなわち、シグナル伝達経路阻害剤とを含んでなる。
【0307】
さらなる実施態様では、シグナル伝達経路阻害剤は、成長因子受容体キナーゼVEGFR2、TIE2、PDGFR、BTK、erbB2、EGFr、IGFR-1、TrkA、TrkB、TrkC、またはc-fmsの阻害剤である。
【0308】
さらなる実施態様では、シグナル伝達経路阻害剤は、セリン/トレオニンキナーゼrafk、akt、またはPKC-ζの阻害剤である。
【0309】
さらなる実施態様では、シグナル伝達経路阻害剤は、srcファミリーのキナーゼから選択される非受容体型チロシンキナーゼの阻害剤である。
【0310】
さらなる実施態様では、シグナル伝達経路阻害剤は、c-srcの阻害剤である。
【0311】
さらなる実施態様では、シグナル伝達経路阻害剤は、ファルネシルトランスフェラーゼおよびゲラニルゲラニルトランスフェラーゼの阻害剤から選択されるRas癌遺伝子の阻害剤である。
【0312】
さらなる実施態様では、シグナル伝達経路阻害剤は、PI3Kからなる群から選択されるセリン/トレオニンキナーゼの阻害剤である。
【0313】
さらなる実施態様では、シグナル伝達経路阻害剤は、二重EGFr/erbB2阻害剤、例えば、N-{3-クロロ-4-[(3-フルオロベンジル)オキシ]フェニル}-6-[5-({[2-(メタンスルホニル) エチル]アミノ}メチル)-2-フリル]-4-キナゾリンアミン(以下の構造)である。
【化6】
【0314】
定義
本明細書で使用する場合、用語「アゴニスト」は、補助シグナル伝達受容体と接触した際に、(1)その受容体を刺激または活性化すること、(2)その受容体の活性、機能もしくは存在を増強、増大もしくは促進、誘導もしくは延長すること、(3)その受容体を介して1以上のシグナル伝達事象を誘発すること、天然リガンドの1以上の機能を模倣すること、またはその受容体を介した既知の機能もしくはシグナル伝達において見られる1以上の部分的もしくは完全な立体配座変化を誘発することを含むこと、および/または(4)その受容体の発現を増強、増大、促進または誘導することのうち1以上を生じる、限定されるものではないが抗体を含む抗原結合タンパク質を意味する。アゴニスト活性は、限定されるものではないが、細胞シグナル伝達、細胞増殖、免疫細胞活性化マーカー、サイトカイン産生の測定などの当技術分野で公知の様々なアッセイによってin vitroで測定することができる。アゴニスト活性はまた、限定されるものではないが、T細胞増殖またはサイトカイン産生の測定などのサロゲートエンドポイントを測定する様々なアッセイによってin vivoで測定することもできる。
【0315】
本明細書で使用する場合、用語「アンタゴニスト」は、補助シグナル伝達受容体と接触した際に、(1)その受容体を減弱、遮断もしくは不活性化すること、および/またはその天然リガンドによる受容体の活性化を遮断すること、(2)その受容体の活性、機能もしくは存在を低下、低減もしくは短縮すること、ならびに/または(3)その受容体の発現を低下、低減、排除することのうち1以上を生じさせる、限定されるものではないが抗体を含む、抗原結合タンパク質を意味する。アンタゴニスト活性は、限定されるものではないが、細胞シグナル伝達、細胞増殖、免疫細胞活性化マーカー、サイトカイン産生の増加または減少の測定などの当技術分野で公知の様々なアッセイによってin vitroで測定することができる。アンタゴニスト活性はまた、限定されるものではないが、T細胞増殖またはサイトカイン産生の測定などのサロゲートエンドポイントを測定する様々なアッセイによってin vivoで測定することもできる。
【0316】
よって、本明細書で使用する場合、用語「本発明の組合せ」は、抗BCMA抗原結合タンパク質、好適には、アンタゴニスト抗BCMA抗原結合タンパク質と、PD-1抗原結合タンパク質、好適には、アンタゴニスト抗PD-1抗原結合タンパク質またはOX40抗原結合タンパク質、好適には、アゴニストOX40抗原結合タンパク質のいずれかを含んでなる組合せを意味し、そのそれぞれは本明細書で記載されるよう個別に投与されても、または同時に投与されてもよい。
【0317】
本明細書で使用する場合、用語「癌」、「新生物」、および「腫瘍」は、単数形または複数形で互換的に使用され、悪性形質転換を受けた、または異常なもしくは調節を欠いた増殖もしくは過剰増殖をもたらす細胞変化を受けた細胞を意味する。このような変化または悪性形質転換は通常、このような細胞を宿主生物にとって病的とし、よって、病的となったまたは病的となる可能性があり、本発明からの利益を必要とするまたは受け得る前癌または前癌細胞も含まれるものとする。原発性癌細胞(すなわち、悪性形質転換の部位近傍から得られる細胞)は、十分に確立された技術、特に、組織検査によって非癌細胞から容易に識別することができる。癌細胞の定義は、本明細書で使用する場合、原発性癌細胞だけでなく、癌細胞祖先に由来するいずれの細胞も含む。これには転移癌細胞、ならびに癌細胞に由来するin vitro培養物および細胞株が含まれる。通常固形腫瘍として発現する癌のタイプに関して、「臨床的に検出可能な」腫瘍は、例えばCATスキャン、MRイメージング、X線、超音波または触診などの手法による腫瘍塊に基づいて検出可能なもの、および/または患者から取得可能なサンプル中での1以上の癌特異的抗原の発現のために検出可能なものである。言い換えれば、これらの用語は本明細書において、臨床医が前癌、腫瘍、上皮内増殖、ならびに後期転移性増殖と呼ぶものを含め、いずれの病期の細胞、新生物、癌、および腫瘍も含む。腫瘍は、造血系腫瘍、例えば、液性腫瘍を意味する血液細胞の腫瘍などであってもよい。このような腫瘍に基づく臨床状態の具体的な例として、慢性骨髄球性白血病または急性骨髄球性白血病などの白血病;多発性骨髄腫などの骨髄腫;リンパ腫などが挙げられる。
【0318】
本明細書で使用する場合、用語「薬剤」は、組織、系、動物、哺乳動物、ヒト、または他の対象において所望の効果をもたらす物質を意味するものと理解される。よって、用語「抗新生物薬」は、組織、系、動物、哺乳動物、ヒト、または他の対象において抗新生物効果をもたらす物質を意味するものと理解される。また、「薬剤」は、単一の化合物であっても、または2以上の化合物の組合せもしくは組成物であってもよいと理解される。
【0319】
用語「処置する」およびその派生語は、本明細書で使用する場合、治療的療法を意味する。特定の病態に関して処置は、(1)その病態の生物学的発現の1以上の状態を改善すること、(2)(a)その病態につながるもしくはその病態の原因である生物学的カスケードの1以上の点、もしくは(b)その病態の生物学的発現の1以上に干渉すること、(3)その病態に関連する症状、影響もしくは副作用の1以上、またはその病態もしくはその処置に関連する症状、影響もしくは副作用の1以上を緩和すること、(4)その病態もしくはその病態の生物学的発現の1以上の進行を緩徐化すること、および/または(5)寛解の期間に付加的処置無く、その発現に関して寛解状態であると見なされる期間、その病態の生物学的発現の1以上を排除するもしくは検出不能なレベルにまで軽減することにより、前記病態もしくは前記病態の生物学的発現の1以上を治癒させることを意味する。
当業者は、特定の疾患または病態に関して寛解と見なされる期間を理解するであろう。予防的療法もまた企図される療法である。当業者は、「予防」が絶対的な用語でないことを認識するであろう。医学では、「予防」は、ある病態もしくはその生物学的発現の尤度もしくは重篤度を実質的に減らすため、またはこのような病態もしくはその生物学的発現の発生を遅延させるための薬物の予防的投与を意味すると理解される。予防的療法は、例えば、対象が癌の強い家族歴を有する場合または対象が発癌物質に曝されていた場合など、対象に癌を発症する高いリスクがあると見なされる場合に適当である。
【0320】
本明細書で使用する場合、用語「有効量」は、例えば、研究者または臨床医により求められる組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を惹起する薬物または医薬剤の量を意味する。さらに、用語「治療上有効な量」は、そのような量を受容していない対応する対象に比べて、治療、治癒、予防の改善、または疾患、障害、もしくは副作用の改善、または疾患もしくは障害の進行速度の低下をもたらすいずれの量も意味する。この用語はまた、その範囲内に、正常な生理学的機能を増進するのに有効な量も含む。
【0321】
「抗原結合タンパク質」は、抗体または抗体と同様に機能する操作分子を含め、抗原と結合するタンパク質を意味する。このような別の抗体形式としては、トリアボディ、テトラボディ、ミニ抗体、およびミニボディが含まれる。また、本開示に従って任意の分子の1以上のCDRが、好適な非免疫グロブリンタンパク質足場または骨格上に配置された別の足場、例えば、アフィボディ、SpA足場、LDL受容体クラスAドメイン、アビマー(例えば、米国特許出願公開第2005/0053973号、同第2005/0089932号、同第2005/0164301号参照)またはEGFドメインも含まれる。ABPはまた、このような抗体または他の分子の抗原結合フラグメントも含む。さらに、本発明の組合せのABP、またはその方法もしくは使用は、適当な軽鎖と対合される場合、全長抗体、(Fab’)2フラグメント、Fabフラグメント、二重特異性もしくは二重パラトープ分子またはその等価物(例えば、scFV、ビ、トリまたはテトラボディ、Tandabsなど)形式とされたVH領域を含んでなってもよい。抗原結合タンパク質は、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4;またはIgM;IgA、IgEもしくはIgDまたはその修飾変異体である抗体を含んでなり得る。抗体重鎖の定常ドメインは相応に選択することができる。軽鎖定常ドメインは、κまたはλ定常ドメインであり得る。ABPはまた、抗原結合領域と非免疫グロブリン領域を含んでなるWO86/01533に記載のタイプのキメラ抗体であってもよい。
【0322】
抗原結合タンパク質はまたキメラ抗原受容体であってもよい。用語「キメラ抗原受容体」(「CAR」)は、本明細書で使用する場合、細胞外標的結合ドメイン(通常、モノクローナル抗体に由来する)、スペーサー領域、膜貫通領域、および1以上の細胞内エフェクタードメインからなる操作された受容体を意味する。ARはまたキメラT細胞受容体またはキメラ免疫受容体(CIR)とも呼称されてきた。CARは一般に、特異性を所望の細胞表面抗原に向け直すためにT細胞などの造血細胞に導入される。
【0323】
キメラ抗原受容体(CAR)は、MHC-抗原ペプチド複合体と結合する必要なくT細胞に新規な特異性を作り出すための人工TCRとして開発された。これらの合成受容体は、単一の融合分子中に、フレキシブルリンカーを介して1以上のシグナル伝達ドメインと会合された標的結合ドメインを含む。標的結合ドメインは、病的細胞の表面の特異的標的にT細胞を標的化するために使用され、シグナル伝達ドメインは、T細胞の活性化および増殖のための分子機構を含む。T細胞膜を貫通する(すなわち、膜貫通ドメインを形成する)フレキシブルリンカーは、CARの標的結合ドメインの細胞膜提示を可能とする。CARは、T細胞を、リンパ腫および固形腫瘍を含む種々の悪性腫瘍から腫瘍細胞の表面で発現される抗原に対して向け直すことを首尾良く可能とした(Jena et al. (2010) Blood, 116(7):1035-44)。
【0324】
CARの開発はこれまで3世代からなった。第1世代CARは、CD3ζの細胞質領域またはFc受容体γ鎖に由来するシグナル伝達ドメインに結合された標的結合ドメインを含んでなった。第1世代CARは、選択された標的にT細胞を首尾良く向け直すことが示されたが、in vivoにおいてそれらは長期的な拡大増殖および抗腫瘍活性を提供することができなかった。第2および第3世代CARは、CD28、OX-40(CD134)および4-1BB(CD137)などの補助刺激分子を含むことにより改変されたT細胞の生存の増進および増殖の増大に焦点を当てたものであった。
【0325】
CARを有するT細胞は、疾患状態で病的細胞を排除するために使用することができた。一つの臨床目的は、アフェレーシスおよびT細胞単離後に、ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)を介して患者細胞を組換えDNAを含有するCAR用の発現構築物で形質転換することであろう。T細胞の拡大増殖後、それらを病的標的細胞を標的化して死滅させる目的で患者に再注入する。
【0326】
用語「抗体」は、本明細書で使用する場合、抗原結合ドメイン、場合により、免疫グロブリン様ドメインまたはそのフラグメントを有する分子を意味し、モノクローナル(例えば、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgEおよびその修飾変異体)、組換え、ポリクローナル、キメラ、ヒト化、二重パラトープ性、二重特異性およびヘテロコンジュゲート抗体、または閉鎖立体配座多重特異性抗体が含まれる。「抗体」は、異種、同種異系、同系、または他のその修飾形態を含んだ。抗体は単離または精製されてよい。抗体はまた、組換え型、すなわち、組換え手段によって生産されてもよく、例えば、参照抗体と90%同一の抗体は、当技術分野で公知の組換え分子生物学技術を用い、特定の残基の突然変異誘発により作製することができる。よって、本発明の抗体は、天然抗体構造の形式とされてもよいし、あるいは適当な軽鎖と対合とされる場合、全長組換え抗体、(Fab’)2フラグメント、Fabフラグメント、二重特異性もしくは二重パラトープ分子またはその等価物(例えば、scFV、ビ、トリまたはテトラボディ、Tandabsなど)の形式とされてもよい、本発明の組合せ、またはその方法もしくは使用の重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含んでなり得る。抗体はIgG1、IgG2、IgG3,またはIgG4またはその修飾変異体であり得る。抗体重鎖の定常ドメインは相応に選択することができる。軽鎖定常ドメインは、κまたはλ定常ドメインであり得る。抗体はまた、抗原結合領域と非免疫グロブリン領域を含んでなるWO86/01533に記載のタイプのキメラ抗体であってもよい。
【0327】
当業者ならば、本発明の抗原結合タンパク質はそれらの標的上のエピトープと結合することを認識するであろう。抗原結合タンパク質のエピトープは、その抗原の、抗原結合タンパク質が結合する領域である。2つの抗原結合タンパク質は、それぞれがその抗原に対する他方の結合を競合的に阻害する(遮断する)場合には、同じまたは重複するエピトープに結合する。すなわち、競合結合アッセイで測定した場合に、競合抗体を含まない対照に比べて、1倍、5倍、10倍、20倍または100倍を超える一方の抗体が、他方の結合を少なくとも50%、好ましくは、75%、90%またはさらには99%阻害する(例えば、引用することにより本明細書の一部とされるJunghans et al., Cancer Res. 50:1495, 1990参照)。あるいは、一方の抗体の結合を低減または排除する抗原における本質的に総てのアミノ酸突然変異が他方の結合を低減または排除する場合には、2つの抗体は同じエピトープを有する。また、同じエピトープは、例えば、一方の抗体の結合を低減または排除するいくつかのアミノ酸突然変異が他方の結合を低減または排除する場合には、「重複するエピトープ」を含み得る。
【0328】
結合の強度は、本発明の組合せ、またはその方法もしくは使用の抗原結合タンパク質の用量および投与に重要であり得る。一つの実施態様では、本発明の抗原結合タンパク質は、その標的(例えば、BCMAまたはPD-1またはOX40)に高い親和性で結合する。親和性は、ある分子、例えば、本発明の組合せ、またはその方法もしくは使用の抗体と、別の分子、例えば、その標的抗原との単一の結合部位での結合の強度である。抗体とその標的との結合親和性は、平衡法(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA))、または速度論(例えば、BIACORE分析)によって決定することができる。例えば、当技術分野で公知のBiacore法が結合親和性を測定するために使用可能である。
【0329】
アビディティーは、例えば相互作用価を考慮した、2分子の複数部位の互いの結合の合計強度である。
【0330】
本明細書では、本発明の組合せ、またはその方法もしくは使用の抗原結合タンパク質の機能的フラグメントが企図される。
【0331】
よって、「結合フラグメント」および「機能的フラグメント」は、無傷抗体のFcフラグメントを欠き、循環からより急速に排除され、無傷抗体よりも非特異的組織結合が少ない可能性があるFabおよびF(ab’)2フラグメント (Wahl et al., J. Nuc. Med. 24:316-325 (1983)) であり得る。また、Fvフラグメント(Hochman, J. et al. (1973) Biochemistry 12:1130-1135; Sharon, J. et al.(1976) Biochemistry 15:1591-1594)も含まれる。これらの種々のフラグメントは、プロテアーゼ切断または化学切断(例えば、Rousseaux et al., Meth. Enzymol., 121:663-69 (1986)参照)などの従来の技術を用いて作製される。
【0332】
「機能的フラグメント」は、本明細書で使用する場合、抗原結合部位を含みかつ親抗原結合タンパク質と同じ標的と結合し得る、例えば、限定されるものではないが、同じエピトープと結合し得る、かつまた、本明細書に記載のまたは当技術分野で公知の1以上の調節または他の機能も保持する、本発明の組合せ、またはその方法もしくは使用の抗原結合タンパク質の部分またはフラグメントを意味する。
【0333】
本発明の抗原結合タンパク質は、天然抗体構造の形式とされ得る本発明の組合せ、またはその方法もしくは使用の重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含んでなり得るので、機能的フラグメントは、本明細書に記載の全長抗原結合タンパク質の結合または1以上の機能を保持するものである。よって、本発明の組合せ、またはその方法もしくは使用の抗原結合タンパク質の結合フラグメントは、適当な軽鎖と対合され得る場合、VLまたはVH領域、(Fab’)2フラグメント、Fabフラグメント、二重特異性もしくは二重パラトープ分子またはその等価物(例えば、scFV、ビ、トリまたはテトラボディ、Tandabsなど)のフラグメントを含んでなり得る。
【0334】
用語「CDR」は、本明細書で使用する場合、抗原結合タンパク質の相補性決定領域アミノ酸配列を意味する。これらは、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の超可変領域である。
免疫グロブリンの可変部分には3つの重鎖CDRと3つの軽鎖CDR(またはCDR領域)が存在する。
【0335】
CDR配列には様々なナンバリング規則が存在することは当業者には自明であろう;Chothia(Chothia et al. (1989) Nature 342: 877-883)、Kabat(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第4版, U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health (1987))、AbM(バース大学)およびContact(ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン)。「最小結合単位」を得るためには、Kabat、Chothia、AbMおよびcontact法のうち少なくとも2つを用いて最小オーバーラッピング領域を決定することができる。最小結合単位は、CDRの一部分であり得る。抗体の構造およびタンパク質フォールディングは、他の残基がCDR配列の一部と考えられ、また、当業者によりそのように理解されるであろうことを意味し得る。CDR定義のいくつかは使用される個々の刊行物によって異なる場合があることに留意されたい。
【0336】
そうではないことが述べられない限り、および/または具体的に示される配列がなければ、本明細書で「CDR」、「CDRL1」(または「LC CDR1」)、「CDRL2」(または「LC CDR2」)、「CDRL3」(または「LC CDR3」)、「CDRH1」(または「HC CDR1」)、「CDRH2」(または「HC CDR2」)、「CDRH3」(または「HC CDR3」)という場合には、既知の規則のいずれかに従ってナンバリングされたアミノ酸配列を意味し、あるいは、CDRは、可変軽鎖の「CDR1」、「CDR2」、「CDR3」、ならびに可変重鎖の「CDR1」、「CDR2」、および「CDR3」と呼称される。特定の実施態様では、ナンバリング規則は、Kabat規則である。
【0337】
用語「変異体」は、本明細書で使用する場合、少なくとも1つ、例えば、1、2または3つのアミノ酸置換、欠失または付加により修飾された重鎖可変領域または軽鎖可変領域を意味し、ここで、重鎖または軽鎖変異体を含んでなる修飾抗原結合タンパク質は、修飾前の抗原結合タンパク質の生物学的特徴を実質的に保持する。一つの実施態様では、変異体重鎖可変領域または軽鎖可変領域配列を含む抗原結合タンパク質は、修飾前の抗原結合タンパク質の60%、70%、80%、90%、100%の生物学的特徴を保持する。各重鎖可変領域もしくは軽鎖可変領域は単独で、または別の重鎖可変領域もしくは軽鎖可変領域と組み合わせて修飾され得ることが認識されるであろう。本開示の抗原結合タンパク質は、本明細書に記載の重鎖可変領域アミノ酸配列と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%相同な重鎖可変領域アミノ酸配列を含む。本開示の抗原結合タンパク質は、本明細書に記載の軽鎖可変領域アミノ酸配列と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%相同な軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。
【0338】
相同性パーセントは、全重鎖可変領域および/もしくは全軽鎖可変領域にわたってもよいし、または相同性パーセントはフレームワーク領域に限定されてもよいが、CDRに相当する配列は、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域内で本明細書に開示されるCDRと100%の同一性を有する。
【0339】
用語「CDR変異体」は、本明細書で使用する場合、少なくとも1つ、例えば、1、2または3つのアミノ酸置換、欠失または付加により修飾されたCDRを意味し、ここで、CDR変異体を含んでなる修飾抗原結合タンパク質は、修飾前の抗原結合タンパク質の生物学的特徴を実質的に保持する。一つの実施態様では、変異体CDRを含む抗原結合タンパク質は、修飾前の抗原結合タンパク質の60%、70%、80%、90%、100%の生物学的特徴を保持する。修飾可能な各CDRは単独で、または別のCDRと組み合わせて修飾され得ることが認識されるであろう。一つの態様では、修飾は、置換、特に、例えば表1に示されるような保存的置換である。
【表1】
【0340】
例えば、あるCDR変異体において、最小結合単位のアミノ酸残基は、KabatまたはChothia定義の一部としてCDRを含んでなるフランキング残基が保存的アミノ酸残基で置換されていてもよいこと以外は同じままであり得る。
【0341】
上記のような修飾CDRまたは最小結合単位を含んでなるこのような抗原結合タンパク質は、本明細書では、「機能的CDR変異体」または「機能的結合単位変異体」と呼称する場合がある。
【0342】
抗体は、いずれの種のものであってもよく、または交差種に投与するために好適となるように修飾されてもよい。例えば、マウス抗体由来のCDRはヒトへの投与のためにヒト化され得る。いずれの実施態様においても、抗原結合タンパク質は場合によりヒト化抗体である。
【0343】
「ヒト化抗体」は、非ヒトドナー免疫グロブリンに由来するそのCDRを有し、その分子の残りの免疫グロブリン由来部分は1つ(または複数)のヒト免疫グロブリンに由来する操作抗体の一種を意味する。加えて、フレームワーク支持残基は、結合親和性を保存するように変更されてもよい(例えば、Queen et al., Proc. Natl Acad Sci USA, 86:10029-10032 (1989), Hodgson et al., Bio/Technology, 9:421 (1991)参照)。好適なヒトアクセプター抗体は、従来のデータベース、例えば、KABAT(登録商標)データベース、Los Alamosデータベース、およびSwissタンパク質データベースから、ドナー抗体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列との相同性により選択されたものであり得る。ドナー抗体のフレームワーク領域との相同性(アミノ酸ベースでの)を特徴とするヒト抗体は、重鎖定常領域および/またはドナーCDRの挿入のための重鎖可変フレームワーク領域を提供するために好適であり得る。軽鎖定常または可変フレームワーク領域を供与し得る好適なアクセプター抗体も同様に選択され得る。アクセプター抗体重鎖および軽鎖は同じアクセプター抗体に起源する必要はないことに留意されたい。従来技術はこのようなヒト化抗体を生産するいくつかの方法を記載している-例えば、EP-A-0239400およびEP-A-054951参照。
【0344】
なおさらなる実施態様では、ヒト化抗体は、IgGであるヒト抗体定常領域である。別の実施態様では、IgGは、上記の参照文献または特許公報のいずれかに開示されている配列である。
【0345】
「増強されたFcγRIIIA媒介エフェクター機能」とは、本明細書で使用する場合、抗原結合タンパク質の通常のエフェクター機能がその通常レベルに比べて故意に増大されていることを表す。これは例えば、FcYRIIIA結合に対する親和性を増大させる突然変異による、または抗原結合タンパク質のグリコシル化の変更(例えば、フコシルトランスフェラーゼのノックアウト)によるなどの当技術分野で公知のいずれの手段によって行ってもよい。
【0346】
ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列に関して、用語「同一の」または「同一性」は、最適にアラインされ、適当な挿入または欠失を伴って比較された場合の2つの核酸配列または2つのアミノ酸配列の間の同一性の程度を示す。
【0347】
2配列間の同一性パーセントは、それらの2配列の最適なアラインメントのために導入する必要のあるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮した、それらの配列に共有される同一の位置の数の関数(すなわち、同一性%=同一の位置の数/位置の総数×100)である。2配列間の配列の比較および同一性パーセントの決定は、下記のように、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。
【0348】
クエリー核酸配列とサブジェクト核酸配列の間の同一性パーセントは、ペアワイズBLASTNアラインメントが実行された後にサブジェクト核酸配列がクエリー核酸配列と100%のクエリー被覆率を有する場合にBLASTNアルゴリズムにより計算される、パーセンテージとして表される「同一性」の値である。このようなクエリー核酸配列とサブジェクト核酸配列の間のペアワイズBLASTNアラインメントは、National Center for Biotechnology Instituteのウェブサイトで利用可能なBLASTNアルゴリズムのデフォルト設定を用い、低複雑性領域のフィルターを解除して行われる。重要なこととして、クエリー核酸配列は、本明細書の1以上の請求項で特定される核酸配列により記載され得る。
【0349】
クエリーアミノ酸配列とサブジェクトアミノ酸配列の間の同一性パーセントは、ペアワイズBLASTNアラインメントが実行された後にサブジェクトアミノ酸配列がクエリーアミノ酸配列と100%のクエリー被覆率を有する場合にBLASTPアルゴリズムにより計算される、パーセンテージとして表される「同一性」の値である。このようなクエリーアミノ酸配列とサブジェクトアミノ酸配列の間のペアワイズBLASTPアラインメントは、National Center for Biotechnology Instituteのウェブサイトで利用可能なBLASTPアルゴリズムのデフォルト設定を用い、低複雑性領域のフィルターを解除して行われる。重要なこととして、クエリーアミノ酸配列は、本明細書の1以上の請求項で特定される核酸配列により記載され得る。
【0350】
本明細書に記載される本発明の一つの実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列表に
示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。特定の実施態様では、抗原結合タンパク質は、配列表に見られるものと少なくとも98%、例えば、99%の配列同一性を有する。
【0351】
本明細書に記載されるいずれの参照文献または刊行物も、引用することにより本明細書の一部とされる。
【実施例
【0352】
以下の実施例は本発明の様々な限定されない態様を示す。
【0353】
実施例1 BCMA抗原結合タンパク質の生産
本明細書に記載される本発明による抗原結合タンパク質の生産および毒素とのコンジュゲーションおよびこのような抗原結合タンパク質の個々の結合親和性は、引用することにより本明細書の一部とされるWO2012163805に見出すことができる。
【0354】
実施例2 免疫原性細胞死(ICD)
免疫原性細胞死のプロセスは、樹状細胞の活性化をもたらす危険分子の産生を誘導し得る(図1A参照)。BCMA ADC(MMAFとコンジュゲートされた抗BCMA抗体:GSK285791)で処理したNCI-H929細胞は、細胞死滅の際に3つの危険分子(ATP、HMGB1およびCRT)を産生した(図1B)。樹状細胞の活性化に対する、BCMA ADCによるNCI-H929細胞死滅の効果を検討するために、BCMA ADCで処理したNCI-H929細胞およびin vitroにてGM-CSF/IL-4処理を用いてヒト単球から分化させた未熟樹状細胞(iDC)で共培養試験を行った。この過程で樹状細胞の活性化に対するBCMA ADCにより誘導される細胞死の効果を評価するために、複数の樹状細胞成熟マーカーならびに活性化時に樹状細胞により分泌される2つの主要サイトカインIL-10およびIL-12p70をモニタリングした。
【0355】
アッパープロビデンス献血施設から、3名の健常ドナーからの新鮮なヒト全血を、液体ナトリウムヘパリン(Sagent 10IU/mL終濃度)でコーティングしたシリンジを用いて取得した。新鮮なヒト全血から、RosetteSep単球濃縮キット(カタログ番号15068)を用いて単球を単離し、細胞表面CD14(BD Bioscienceカタログ番号562698)の発現を、フローサイトメトリーを用いて評価した。
単離された単球(1.5×10細胞/ウェル)を、1%自己血漿、50ng/mL組換えヒトGM-CSF(R&D、215-GM-050)および100ng/mL組換えヒトIL-4(R&D、204-IL-050)を添加した2mLのX-Vivo-15培地中、37℃/5%COにて7日間培養した。これらの培養物に対し、刺激因子濃度を維持しつつ、3日目または4日目に培地の半分を交換した。NCI-H929多発性骨髄腫細胞は、37℃、5%CO、湿度90%の空気にて、10%FBSを添加したRPMI-1640中、解凍から2代以上継代培養した。細胞を12ウェルプレートにて2mL中7.5×10細胞/mlの密度で播種した。J6M0 ADCにより増強された抗原結合タンパク質の用量応答を培地に加え、細胞を37℃/5%COで48時間インキュベートした。
【0356】
7日目にiDCを、96ウェルプレートにてJ6M0 ADCにより増強された抗原結合タンパク質で処理したNCI-H929細胞と1:1比で24時間共培養した。共培養の開始時に全細胞を計数し、X-Vivo-15培地で7.5×10細胞/mLの密度に希釈した。各7.5×10細胞/ウェル(100μl)のiDCと前処理済みのNCI-H929細胞を、96ウェルプレートの各ウェルで合わせた。共培養細胞を37℃/5%COで24時間インキュベートした。CD1a、CD11c、CD40、CD80、CD83、CD86、HLA-DR、およびCD14からなるフローサイトメトリーパネルを用い、FACS Canto IIにて新鮮なFcR遮断樹状細胞分化および成熟を評価した。加えて、細胞上清を回収し、-20℃で冷凍し、MSDキットを用いてIL-10およびIL-12p70に関してアッセイした。
【0357】
データ分析は、フローサイトメトリーパネル用のFlow Jo v7.6.5で行い、腫瘍細胞から樹状細胞を識別するためにCD11c+細胞またはHLA-DR+細胞のいずれかのゲート設定を使用した。NCI-H929細胞HLA-DR陰性であり、樹状細胞よりもはるかに低いCD11c発現を示し、これらの細胞集団の明瞭に異なるゲート設定が可能となる。共培養アッセイの上清からの分泌IL-10およびIL-12p70のデータをMSD Discovery Workbench v4.0.12で分析した。
【0358】
これらの結果は、BCMA ADCによるNCI-H929細胞の死滅は樹状細胞に対して刺激効果を持ち、樹状細胞の活性化に至り得ることを示唆する。IL-12p70およびIL-10をモニタリングしたところ、IL-12p70は総ての条件下で検出限界を下回った。IL-10は検出でき、Il-10産生に対してBCMA ADCの有意な阻害効果が存在した。しかしながら、BCMA ADC単独で処置したNCI-H929細胞でIL-10に対する阻害効果が見られたことから、この効果は、BCMA ADCにより誘導されるNCI-H929細胞の免疫原性細胞死による樹状細胞の活性化に関連付けることができない。IL-10産生に対する阻害効果は、免疫応答の刺激に有益である(図2および図3参照)。
【0359】
実施例3
T細胞は、細胞表面に発現されるT細胞受容体(TCR)および補助刺激分子の会合を介して活性化され得る。T細胞が活性化すると、複数の付加的な表面マーカーがアップレギュレートされる。T細胞の活性化および機能に対するBCMA ADC(MMAFとコンジュゲートされた抗BCMA抗体:GSK285791)のin vitro効果は、これらのT細胞活性化関連マーカーのいくつかをモニタリングすることにより特徴づけた。さらに、活性化の際、T細胞はIFNγおよびIL-4などのサイトカインを産生する。刺激されたT細胞におけるIFNγおよびIL-4産生に対するBCMA ADCの効果も検討した。これらの試験は、T細胞の活性化および機能に対するBCMA ADCの効果に関するデータを提供できる。加えて、BCMA ADCの存在下で刺激された際のヒトCD4+およびCD8+T細胞の増殖も評価した。ヒト血液を、グラクソスミスクライン社の血液ドナー獲得プログラムから取得した。末梢血単核細胞(PBMC)を、ヒト全血からのフィコール密度勾配遠心分離(GE Healthcare)により単離した。コーティングバッファー(Biolegend、カタログ番号421701)で希釈した抗ヒトCD3抗体(eBioscience、カタログ番号16-0037-85、クローンOKT3)で96ウェル平底プレートを一晩コーティングした。
【0360】
3.1 PBMCにおける抗CD3/抗CD28刺激によるT細胞活性化に対するBCMA ADCの効果
BCMA ADC(MMAFとコンジュゲートされた抗BCMA抗体:GSK285791)をPBMC T細胞活性化アッセイで試験した。この試験では、BCMA ADC処理とPBMC活性化を同時に行い、それらの効果を24時間および72時間でモニタリングした。この試験を2名の異なるドナーからの血液を用いて2回反復した(n=2)。
この試験では、10%FBSを含むRPMI-1640(Hyclone;カタログ番号SH30071.03)中、100μLのPBMC(2×10細胞/mL)を、可溶性0.5μg/mL抗CD28抗体(eBioscience、カタログ番号16-0289、クローンCD28.2)とともに、または伴わずに抗CD3抗体でコーティングしたウェルに加えた。9.6mg/mL BCMA ADCまたは4.6mg/mL BCMA Ab IgG対照の保存溶液をまず、抗体濃度が1mg/mLとなるようにRPMI-1640培地で希釈し、これをさらに抗体濃度が60、6および0.6μg/mLとなるように等量のRPMI-1640培地で希釈した。各100μLの最終希釈抗体溶液をRPMI-1640/10%FBS中100μLのPBMCに加え、抗体終濃度30、3および0.3μg/mLとした。各アッセイ条件について3回のテクニカル反復を含んだ。PBMCを37℃および5%COで、上記に示した様々な時間培養した。細胞を96ディープウェルプレートに移し、1mL染色バッファー(BD Biosciences、カタログ番号554656)で2回洗浄し、蛍光コンジュゲート抗体またはアイソタイプ対照で染色し(第3.3節 薬物および材料参照)、氷上で30分間インキュベートした。免疫蛍光分析はFACS CANTO IIフローサイトメーター(BD Biosciences)で行い、DIVAソフトウエア(BD Biosciences)で分析した。フローサイトメトリーを用いて、所与のマーカーを発現するCD4またはCD8細胞のパーセンテージ、およびCD4またはCD8細胞におけるこのマーカーの平均蛍光強度(MFI)をモニタリングした。
【0361】
3.2 PBMCにおける抗CD3/抗CD28刺激時のT細胞によるIFNγおよびIL-4産生に対するBCMA ADCの効果
この試験は、2名の異なるドナーからの血液を用いて2回反復した(n=2)。10%FBSを含むRPMI-1640中、100μLのPBMC(1×10細胞/mL)を、可溶性0.5μg/mL抗CD28抗体とともに、または伴わずに抗CD3抗体でコーティングしたウェルに加えた。次に、各100μLの希釈BCMA ADC(MMAFとコンジュゲートされた抗BCMA抗体:GSK285791)およびIgG対照溶液(抗体希釈プロトコールについては第3.1節を参照)を加え、PBMCを37℃および5%COで48時間および72時間培養した。各アッセイ条件について3回のテクニカル反復を含んだ。試験の終了時に、第3.1節に記載されているように細胞を移し、洗浄し、染色し、フローサイトメトリーにより分析した。細胞内染色については、細胞をサイトフィックスバッファー(BD Biosciences、カタログ番号554655)により室温で20分間固定し、透過処理/洗浄バッファー(BD Biosciences、カタログ番号554723)により室温で30分間透過処理を行った後、抗体またはアイソタイプ対照で染色した。
【0362】
3.3 抗CD3/抗CD28刺激時のT細胞増殖に対するBCMA ADCの効果
新鮮な正常末梢血から単離されたCD4+またはCD8+T細胞を受け取り、Beckman Coulter ViCellを用いて計数した後、330gで7分間遠心分離した。次に、細胞をPBS/0.5%BSA中、Molecular Probes Trace CFSE(カタログ番号C34554)増殖色素(5~10μM)で染色した。細胞を5分間氷上でインキュベートした後、氷上、冷RPMI 1640/10%FBS中で5分間さらにインキュベーションを行った。遊離している色素を300gで5分間のさらに2回の細胞の遠心分離により除去した。細胞を完全培地RPMI 1640/10%FBS/IL-2(2.8ng/mL)中に再懸濁した。次に、細胞を抗CD3(1μg/mL)および抗CD28(1μg/mL)で予めコーティングした96ウェル組織培養プレート中に播種した(10細胞/100μL容量/ウェル)。BCMA ADC(MMAFとコンジュゲートされた抗BCMA抗体:GSK285791)をプレートの播種直後に細胞に加え、37℃で96時間インキュベートした。
【0363】
4日のインキュベーションの後、細胞上清を採取し、-80℃で冷凍し、フローサイトメトリー染色のために細胞を回収した。CANTO IIフローサイトメーターを488nm励起フィルターおよびCell Trace CFSEのためのフルオレセイン(FITC)に適当な発光フィルターとともに用いて分析した。
【0364】
フローサイトメトリー分析によりモニタリングされるマーカーとしての抗体およびアイソタイプを以下の表2に示す。
【表2】
【0365】
各マーカーについて、BCMA ADCの各濃度でのパーセンテージおよびMFIの生データを、統計分析にて対応するIgG対照と比較した。異なる血液ドナーの変動を説明するために、データ分析に線形混合効果モデルを使用した。簡単に述べれば、ドナーおよびドナーと群(BCMA ADC処置またはIgG対照)の間の相互作用をランダム効果として処理し、群をそのモデルの固定効果として処理した。混合効果モデル分析の後、次いで、各BCMA ADC処理群をIgG対照群と比較した。多重比較のため、ダネットの方法を、全第一種誤り率を制御するために使用した。ダネットの方法による補正後p値≦0.05は、特定のBCMA ADC濃度でのパーセンテージまたはMFI値に関して有意であると認められた。BCMA ADCは、3つの濃度のうち少なくとも2つの濃度のBCMA ADCがあるマーカーのパーセンテージまたはMFI値の統計的に有意な(p値≦0.05)変化を誘導した場合に、そのマーカーの発現を有意に変化させると見なした。
【0366】
データ報告に関しては、各BCMA ADC濃度で3回のテクニカル反復間の平均パーセンテージまたは平均MFI値を出し、差分値%を、差分%=(Avg 916-Avg
IgG)100/Avg IgGとして算出し、式中、Avg 916およびAvg
IgGはそれぞれBCMA ADC処理群およびIgG対照群の平均値を表す。所与のBCMA ADC濃度および時点での、所与のマーカーに関する異なるドナーによる差分値%を用いて平均差分値%およびCV(変動係数)を計算し、これらを図4A~Cに報告した。正および負の差分値%はそれぞれマーカーのアップレギュレーションおよびダウンレギュレーションを表す。
【0367】
CD4%およびCD8%は、各試験の3群で独立に測定し、各群3回のテクニカル反復とした。各群で上記のように統計分析を行った。CD4%およびCD8%値の変化は、3群のうち少なくとも2群が有意な変化(p値≦0.05)を示した場合に有意と見なした。データ報告に関しては、3群のCVの平均を取ることによりプールされたCVを得た。
【0368】
この試験では、T細胞の活性化および機能に対するBCMA ADCのin vitro効果を、マーカーに関連するいくつかのT細胞活性化に対する化合物の効果をモニタリングすることにより特徴づけた。これらのマーカーの大多数はT細胞の活性化に際にアップレギュレートされる。これらのマーカーには、T細胞活性化マーカーCD25およびCD69;補助阻害マーカーPD-1、CTLA-4;補助刺激マーカーICOS、OX-40およびCD137;ならびにT細胞枯渇マーカーTIM3およびLAG3が含まれる。CD73およびCD39は、アデノシン経路の活性化に関与する表面タンパク質であり、T細胞の活性化の補助阻害分子と考えられる。それらの発現レベルとT細胞の活性化の間の相関はあまりよく理解されていない。全体的に見れば、これらのデータは、BCMA
ADCは、PBMCにおいて抗CD3/抗CD28により刺激されたCD4およびCD8 T細胞の活性化に最小の効果しか持たないことを示す。BCMA ADCは、抗CD3/抗CD28刺激の後に、PBMCにおいてCD4細胞およびCD8細胞の両方でIFNγおよびIL-4産生に対して有意な効果を持たない。これらのデータはヒトT細胞上にはBCMA発現がないことと一致する
実施例4: 抗OX40抗体との組み合わせた場合のBCMA ADCのin vivo有効性
動物に対する総ての手順は、試験開始前にGSK所内動物実験委員会(GSK Institutional Animal Care and Use Committee)により検証および承認された。
【0369】
4.1 同系EL4-Luc2-hBCMAマウスモデル
これらの試験の目的は、マウス同系腫瘍形成モデルにおいて本明細書に記載の組合せを評価することであった。EL4-Luc2(Bioware Ultra EL4-luc2 # 58230C40)を、ヒトBCMAをコードするプラスミドでトランスフェクトした。EL4は、C57BLマウスにおいてDBMA(ATCC TIB-39)により誘導されたマウスリンパ腫細胞である。13日前に、C57BL/6雌マウス(n=10)の体重を測定し、右側腹部に1×10の形質導入EL4-Luc2-hBCMA細胞を接種し、腫瘍体積が約700mmに達するまで成長させた。腫瘍成長はFowler「ProMax」デジタルノギスを用いて測定した。腫瘍の長さ(L)および幅(W)を測定し、式:腫瘍体積=0.52×L×Wを用いて腫瘍体積を求めた。
【0370】
4.2 投与計画
目的腫瘍体積に到達した0日目に、マウスを12の処置群に無作為化した。処置は4日目、7日目、11日目、および15日目に投与した。腫瘍体積および体重を0日目に開始し27日まで週に3回測定した。腫瘍が2000mmの体積に達した際に動物を安楽死させた。投与計画を表3にまとめる。
【表3】
【0371】
4.3 結果
実施例4の結果を図5に再現する。図5Aは腫瘍体積を表す。X軸は試験の日数を表し、Y軸は腫瘍体積(mm)を表す。図5Aの一つのグラフ内の各直線は一個体のマウスを表す(各処置群n=10マウス)。図5Bは全生存率を表す。これらの結果は、BCMA ACD(MMAFとコンジュゲートされた抗BCMA抗体:GSK285791)を抗OX40抗体と組み合わる場合に腫瘍体積の退縮がある程度増強されることを示す。
【0372】
実施例5:抗PD-1抗体と組み合わせた場合の抗BCMA抗体のin vivo有効性
動物に対する総ての手順は、試験開始前にGSK所内動物実験委員会により検証および承認された。
【0373】
5.1 同系EL4-Luc2-hBCMAマウスモデル
実施例4に記載されるものと同じEL4-Luc2-hBCMAマウスモデルを用いた。
【0374】
5.2 投与計画
腫瘍体積が平均200mmに到達した0日目に、マウスを13の処置群に無作為化した。処置は0日目、4日目、8日目、11日目、15日目、および17日目に投与した。
処置日および投与計画を表4にまとめる。腫瘍体積および体重を0日目に開始し57日まで測定した。腫瘍が2000mmの体積に達した際に動物を安楽死させた。投与計画を表4にまとめる。
【表4】
【0375】
5.3 結果
実施例5に関して得られた腫瘍体積を図6に表す。X軸は試験の日数を表し、Y軸は腫瘍体積(mm)を表す。図6の一つのグラフ内の各直線は一個体のマウスを表す(各処置群n=10マウス)。
【0376】
実施例6: 組合せのin vivo有効性
動物に対する総ての手順は、試験開始前にGSK所内動物実験委員会により検証および承認された。
【0377】
6.1 同系EL4-Luc2-hBCMAマウスモデル
実施例4に記載されるものと同じEL4-Luc2-hBCMAマウスモデルを用いた。
【0378】
6.2 投与計画
目的腫瘍体積に到達した0日目に、マウスを14の処置群に無作為化した。処置は0日目、3日目、7日目、10日目、14日目、および17日目に投与した。腫瘍体積および体重を0日目に開始し102日まで測定した。腫瘍が2000mmの体積に達した際に動物を安楽死させた。投与計画を表4にまとめる。投与計画を表5にまとめる。
【表5】
【0379】
6.3 結果
実施例6に関して得られた腫瘍体積を図7のグラフにより表す。X軸は試験の日数を表し、Y軸は腫瘍体積(mm)を表す。図7の一つのグラフ内の各直線は一個体のマウスを表す(各処置群n=10マウス)。結果は、BCMA ADC(MMAFとコンジュゲートされた抗BCMA抗体:GSK285791)と抗PD-1抗体の組合せによる処置は、BCMA ADC(MMAFとコンジュゲートされた抗BCMA抗体:GSK285791)単独または抗PD-1抗体単独による処置に比べて中等度の一貫した腫瘍体積の退縮をもたらすことを示す。
【表6】
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A-1】
図4A-2】
図4A-3】
図4B-1】
図4B-2】
図4B-3】
図4C
図4D
図5A-1】
図5A-2】
図5B
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
【配列表】
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