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特許7305825内毒素血症誘発分子を除去するための血液適合性多孔質ポリマービーズ収着材の使用
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  • 特許-内毒素血症誘発分子を除去するための血液適合性多孔質ポリマービーズ収着材の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】内毒素血症誘発分子を除去するための血液適合性多孔質ポリマービーズ収着材の使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20230703BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20230703BHJP
   A61M 1/02 20060101ALI20230703BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20230703BHJP
   A61J 1/10 20060101ALI20230703BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20230703BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20230703BHJP
   B01J 20/24 20060101ALI20230703BHJP
   C08F 12/06 20060101ALI20230703BHJP
   C08F 18/02 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
B01J20/26 H
A61M1/36 165
A61M1/02 130
B01J20/30
A61J1/10 330A
A61J1/05 350
B01D15/00 Z
B01J20/24 C
C08F12/06
C08F18/02
【請求項の数】 37
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022027038
(22)【出願日】2022-02-24
(62)【分割の表示】P 2018562075の分割
【原出願日】2017-05-18
(65)【公開番号】P2022071026
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】62/341,676
(32)【優先日】2016-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512254586
【氏名又は名称】サイトソーベンツ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】グリアシュヴィリ,タマズ
(72)【発明者】
【氏名】ゴロビシュ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】グルダ,マリアン
(72)【発明者】
【氏名】オサリヴァン,パメラ
(72)【発明者】
【氏名】シェイラー,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】カポニ,ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】チャン,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,ウェイ-タイ
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特許第7033083(JP,B2)
【文献】特表2016-514568(JP,A)
【文献】特開2003-320229(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102247817(CN,A)
【文献】特表2005-514127(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0195792(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0158604(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/22-20/34
A61L 1/00-19/06
A61M 1/00-1/38
C08C 19/00-19/44
C08F 6/00-246/00、301/00
B01D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類のポリマーを含む生体適合性ポリマー系であって、前記ポリマーがポリオールまたは双性イオン性官能基のいずれかを含み;前記ポリマー系がエンドトキシンを吸着することができ、
前記ポリマーが、生体適合性ヒドロゲルコーティングを有する固体支持体を含み、前記コーティングが、ポリ(メタクリル酸ジエチルアミノエチル)、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)、ポリ(アクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(アクリル酸ヒドロキシプロピル)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシプロピル)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)の塩、ポリ(メタクリル酸)の塩、またはその混合物を含み、
前記ポリマー系が、グラム陰性細菌、グラム陰性細菌フラグメント、およびグラム陰性細菌成分のうち1以上をも吸着することができる、
生体適合性ポリマー系。
【請求項2】
ポリマー系が広範囲のトキシンおよび炎症メディエーターをも吸着することができる、請求項1に記載の生体適合性ポリマー系。
【請求項3】
トキシンおよび炎症メディエーターが0.5kDa未満から1,000kDaまでの分子量を有する、請求項2に記載の生体適合性ポリマー系。
【請求項4】
トキシンおよび炎症メディエーターが0.5kDa未満から60kDaまでの分子量を有する、請求項2に記載の生体適合性ポリマー系。
【請求項5】
トキシンおよび炎症メディエーターが、サイトカイン、病原体関連分子パターン分子(PAMP)、ダメージ関連分子パターン分子(DAMP)、スーパー抗原、モノカイン、ケモカイン、インターフェロン、プロテアーゼ、酵素、ブラジキニンを含めたペプチド、可溶性CD40リガンド、生物活性脂質、酸化型脂質、無細胞ヘモグロビン、無細胞ミオグロビン、成長因子、糖タンパク質、プリオン、トキシン、細菌性およびウイルス性トキシン、薬物、血管作用物質、外来抗原、ならびに抗体のうち1以上を含む、請求項2に記載の生体適合性ポリマー系。
【請求項6】
グラム陰性細菌成分が、リポ多糖(LPS)を含む、請求項1に記載の生体適合性ポリマー系。
【請求項7】
ポリマーが、懸濁重合、乳化重合、バルク重合、または沈殿重合を用いて製造されている、請求項1に記載の生体適合性ポリマー系。
【請求項8】
ポリマーがセルロース系ポリマーの修飾により作成されていて、その修飾が、フリーラジカルまたはS2タイプの化学により付加されたポリオールまたは双性イオン性基質と共に、場合により、アリール基またはアルキル基を含む親油性基質の付加を含む、請求項1に記載の生体適合性ポリマー系。
【請求項9】
ポリマー系が固体支持体の形態を有し、それにはビーズ、ファイバー、モノリスカラム、フィルム、メンブレン、または半透膜を含めることができるが、それらに限定されない、請求項1に記載の生体適合性ポリマー系。
【請求項10】
固体支持体が生体適合性ヒドロゲルコーティングを有する、請求項に記載の生体適合性ポリマー系。
【請求項11】
ポリマーが多数の細孔を含み、ポリマーの細孔構造が10Åから40,000Åまでの範囲の細孔サイズの全容積0.1cc/gより大きく、5.0cc/g(乾燥ポリマー)未満を有する、請求項1に記載の生体適合性ポリマー系。
【請求項12】
ポリマーが非多孔質である、請求項1に記載の生体適合性ポリマー系。
【請求項13】
ポリマーが高架橋ポリマーである、請求項1に記載の生体適合性ポリマー系。
【請求項14】
ポリマーが血液適合性である、請求項1に記載の生体適合性ポリマー系。
【請求項15】
生体適合性を付与するために用いられる作用剤が(i)ヘパリンまたは(ii)ヘパリン模倣ポリマーのいずれかである、請求項1に記載の生体適合性ポリマー系。
【請求項16】
ポリマーが形成され、その後、生体適合性になるように修飾されている、請求項1に記載の生体適合性ポリマー系。
【請求項17】
生体適合性を付与するために用いられる作用剤が(i)ヘパリンまたは(ii)ヘパリン模倣ポリマーのいずれかである、請求項16に記載の生体適合性を付与する修飾。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか1項に記載の生体適合性ポリマー系を含む、エンドトキシンを生理的流体から除去するためのデバイス。
【請求項19】
デバイスが広範囲のトキシンおよび炎症メディエーターをも除去する、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
トキシンおよび炎症メディエーターが0.5kDa未満から1,000kDaまでの分子量を有する、請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
トキシンおよび炎症メディエーターが0.5kDa未満から60kDaまでの分子量を有する、請求項19に記載のデバイス。
【請求項22】
トキシンおよび炎症メディエーターが、サイトカイン、病原体関連分子パターン分子(PAMP)、ダメージ関連分子パターン分子(DAMP)、スーパー抗原、モノカイン、ケモカイン、インターフェロン、プロテアーゼ、酵素、ブラジキニンを含めたペプチド、可溶性CD40リガンド、生物活性脂質、酸化型脂質、無細胞ヘモグロビン、無細胞ミオグロビン、成長因子、糖タンパク質、プリオン、トキシン、細菌性およびウイルス性トキシン、薬物、血管作用物質、外来抗原、ならびに抗体のうち1以上を含む、請求項19に記載のデバイス。
【請求項23】
デバイスが、グラム陽性細菌成分をも除去し、グラム陽性細菌成分が、リポテイコ酸(LTA)を含む、請求項18に記載のデバイス。
【請求項24】
請求項1~16のいずれか1項に記載の生体適合性ポリマー系を含む、エンドトキシンを非生理的流体から除去するためのデバイス。
【請求項25】
デバイスが広範囲のトキシンおよび炎症メディエーターをも除去する、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
トキシンおよび炎症メディエーターが0.5kDa未満から1,000kDaまでの分子量を有する、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
トキシンおよび炎症メディエーターが0.5kDa未満から60kDaまでの分子量を有する、請求項25に記載のデバイス。
【請求項28】
トキシンおよび炎症メディエーターが、サイトカイン、病原体関連分子パターン分子(PAMP)、ダメージ関連分子パターン分子(DAMP)、スーパー抗原、モノカイン、ケモカイン、インターフェロン、プロテアーゼ、酵素、ブラジキニンを含めたペプチド、可溶性CD40リガンド、生物活性脂質、酸化型脂質、無細胞ヘモグロビン、無細胞ミオグロビン、成長因子、糖タンパク質、プリオン、トキシン、細菌性およびウイルス性トキシン、薬物、血管作用物質、外来抗原、ならびに抗体のうち1以上を含む、請求項25に記載のデバイス。
【請求項29】
デバイスが、グラム陽性細菌成分をも除去し、グラム陽性細菌成分が、リポテイコ酸(LTA)を含む、請求項24に記載のデバイス。
【請求項30】
ポリマーを保持するのに適切でありかつ体外回路へ組み込むのに適切であるデバイス内にある、請求項1~16のいずれか1項に記載の生体適合性ポリマー系。
【請求項31】
請求項1~16のいずれか1項に記載の生体適合性ポリマー系を含むデバイスに、適切な体外回路により生理的流体を1回または多数回導通することを含む潅流方法。
【請求項32】
ポリマーを保持するのに適した、全血、パックした赤血球、血小板、アルブミン、血漿またはそのいずれかの組合わせを含む血液製剤の輸注のための容器に収容された、請求項1~16のいずれか1項に記載の生体適合性ポリマー系。
【請求項33】
全血、血漿もしくは血清を含む血液製剤から、または他の生理的流体から、エンドトキシンを除去する、請求項1~16のいずれか1項に記載の生体適合性ポリマー系。
【請求項34】
ポリマーが経腸投与または直腸内投与される、請求項1~16のいずれか1項に記載の生体適合性ポリマー系。
【請求項35】
少なくとも1種類のポリマーを含むポリマー系であって、そのポリマーがポリオールまたは双性イオン性官能基のいずれかを含み;そのポリマー系がエンドトキシンを吸着することができ、
前記ポリマーが、生体適合性ヒドロゲルコーティングを有する固体支持体を含み、前記コーティングが、ポリ(メタクリル酸ジエチルアミノエチル)、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)、ポリ(アクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(アクリル酸ヒドロキシプロピル)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシプロピル)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)の塩、ポリ(メタクリル酸)の塩、またはその混合物を含み、
前記ポリマー系が、グラム陰性細菌、グラム陰性細菌フラグメント、およびグラム陰性細菌成分のうち1以上をも吸着することができる、
ポリマー系。
【請求項36】
ポリマー系が、広範囲のトキシンをも吸着することができ、トキシンが、0.5kDa未満から1,000kDaまでの分子量を有する、請求項35に記載のポリマー系。
【請求項37】
グラム陰性細菌成分が、リポ多糖(LPS)を含む、請求項35に記載の生体適合性ポリマー系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001] 本出願は、U.S. Patent Application No. 62/341,676, 2016年5月26日出願に
基づく優先権を主張し、それの開示内容全体を本明細書に援用する。
【0002】
技術分野
[0002] 開示した発明は、多孔質ポリマー系収着材の分野におけるものである。開示した発明はまた、血液および血液製剤中の内毒素血症を引き起こす可能性のあるエンドトキシンを広範に減少させる分野におけるものである。さらに、開示した発明は、潅流または血液潅流によりエンドトキシンを広範に除去する分野におけるものである。
【背景技術】
【0003】
[0003] グラム陰性細菌細胞壁は、エンドトキシンまたはリポ多糖(LPS)として知られる結合した有毒物質を含有する。構造的に、LPSは3つの異なる領域から構成される;O抗原、コアおよびリピドA。O抗原は、親水性である最外ドメインの分子を含む反復性グリカンポリマーであり、その組成はそれぞれのLPS系統について異なる。コアはO抗原を、リピドA、すなわち多数の疎水性脂肪酸テイルを含む生物活性リン酸化グルコサミン二糖に結合させる。これらの脂肪酸テイルは、LPSを細菌細胞壁内へ繋ぎ留めるのに関与する。コアおよびリピドAは両方とも種々のLPS系統にわたって高度に保存されており、リピドAは主要な有毒成分である。
【0004】
[0004] エンドトキシンが血流に進入して1ng/kg体重/時という低い静脈内量でヒトにおいて炎症反応を誘発できる2つの主要な経路がある。第1は外来グラム陰性細菌の局所または全身感染によるものであり、第2は内在グラム陰性細菌またはそのフラグメントが腸管膜を越えて移行することによるものである。いったん循環に入ると、LPSはリポ多糖結合タンパク質(lipopolysaccharide binding protein)(LPB)に結合してLPS-LPB複合体を形成し、その後、免疫系および組織細胞反応の引き金を引くことにより炎症反応を誘発する可能性がある。長期間のアップレギュレートされた炎症反応は敗血症または全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome)(SIR
S)に至る可能性があり、これらは両方とも、潜在的に致死性である敗血症性ショックおよび多臓器機能不全症候群(multiple organ dysfunction syndrome)(MODS)に進行
する可能性がある。
【0005】
[0005] エンドトキシンは無数の症候群および疾患とも関連付けられている。これらには、外傷、火傷および侵襲的外科処置からの合併症が含まれ、臓器特異的疾病、たとえば肝疾患、腎臓透析合併症、および自己免疫疾患も含まれる。
【0006】
[0006] 現在、多数の市販されているエンドトキシン吸着材がある。アガロースゲル上に固定化されたポリミキシンB(PMB)をベースとする、下記を含めた幾つかの製品を入手できる:Detoxi-Gel Endotoxin Removing Gel(Thermo Fisher Scientific)、AffiPrep Polymyxin Matrix(BioRad)、Polymyxin B agarose(Sigma-Aldrich)、およびEndotoxin Affisorbent(bioWORLD)。Toraymyxin(Toray Medical Co.)は、直接血液潅流による選択的なエンドトキシン血液精製のためにデザインされたPMBベースの体外デバイスであり、日本で健康保健制度により治療デバイスとして承認されている。ポリミキシンBはヘプタペプチド環、トリペプチド基、および脂肪酸テイルを特徴とし、主に耐性グラム陰性菌感染症に対して用いられる抗生物質である。PMBの正に荷電したジアミノ酪酸基がLPSの負に荷電したホスフェート基と相互作用して、PMBのN末端脂肪酸鎖とリピドA脂肪酸テイルとの相互作用をもたらし、きわめて安定なPMB-LPS複合体が形成される(Harm, Stephan, Dieter Falkenhagen, and Jens Hartmann.
“Endotoxin Adsorbents in Extracorporeal Blood Purification: Do They Fulfill Expectations?” Int J Artif Organs 37.3 (2014): 222-32.)。
【0007】
[0007] LPSの負に荷電した基を利用して、アニオン交換樹脂もLPS除去のために使用できる。ジエチルアミノエチル-セルロース(DEAE-セルロース)樹脂は第三級アミン官能基の結果として正に荷電しており、Bengschらは血漿中のLPSを生理的pH
において高い親和性および容量でDEAE-セルロース吸着材によって結合することをレポートした。しかし、エンドトキシンレベルの低下に付随して、一過性であるけれども可逆的なプロトロンビン時間延長が生じた(Bengsch S, Boos KS, Nagel D, Seidel D, Inthorn D. Extracorporeal plasma treatment for the removal of endotoxin in patients with sepsis: clinical results of a pilot study. Shock. 2005; 23(6): 494-500.)。Alteco LPS吸着材(Alteco Medical AB)は、特殊なカチオン性ペプチドHAE 27が固定化されたポリエチレンスラブからなり、それはLPSを選択的に結合および吸着する。さらにEndoTrap(Profos AG)吸着材はセファロースビーズ上に固定化されたバクテリオファージタンパク質からなり、その場合、バクテリオファージタンパク質がLPS分子に対して高い親和性をもつ。
【0008】
[0008] 多数の市販エンドトキシン吸着材の吸着容量が、Harmらの研究により査定された。試験された吸着材には、Toraymyxin PMX-20R、Alteco LPS吸着材、ジエチルアミノエチル-セファロース(DEAE-セファロース)、Polymyxin B agarose、およびEndoTrap redが含まれ、試験に用いられた移動相には緩衝液、タンパク質溶液、血清、ヘパリン加血漿、および全血が含まれる。Alteco LPS AdsorberおよびToraymyxin PMX-20Rのみが血液適合性(hemocompatible)であるので、これらの吸着材のみが全血において試験された。これら2種類の吸着材は、血液潅流適用のためにデザインされた前記製品のうちのわずか2つでもある。100ng FITC-LPS/mL溶液中に10%の吸着材を用いるバッチ吸着試験において、DEAE-セファロースの吸着能が他の被験材料と対比して最良であり、LPSレベルが10mM PBS緩衝液中で対照の18±8.5%に、4%(w/v)ヒト血清アルブミン(HSA)溶液中で対照の37±4%に低下した。Toraymyxinは、それぞれPBSおよびHSA溶液中で活性を70%および95%未満低下させて、結果としてPBS中で21±2%に、HSA溶液中で87±6%に低下させることができた、他の唯一の吸着材であった。5ng LPS/mLをスパイクした血清または血漿中に10%の吸着材を用いて、血清およびヘパリン加血漿中におけるバッチ試験が実施された。血清からのLPS除去についてDEAE-セファロースが最も有効であり、数値を対照の28±0.8%に低下させた;しかし、DEAE-セファロースのヘパリン結合能により血漿凝固が生じたため、それをヘパリン加血漿において試験することはできなかった。PMB-Agaroseは2番目に有効であり、LPSレベルをそれぞれ血清およびヘパリン加血漿中において対照の36±3.6%および64±6.8%に低下させた。Toraymyxinはレベルを対照の75%に低下させることができた他の唯一の吸着材であり、それぞれ血清およびヘパリン加血漿中においてLAL活性を対照の41±3.5%および65±4.5%に低下させた。全血中において5%(w/v)の吸着材および3ng/mLのLPS濃度を用いるバッチ試験において、Toraymyxinは活性を対照の60±14%に低下させたのに対し、Alteco LPS Adsorberは活性を90%未満に低下させることができなかった(Harm, Stephan, Dieter Falkenhagen, and Jens Hartmann. “Endotoxin Adsorbents in Extracorporeal Blood Purification: Do They Fulfill Expectations?” Int J Artif Organs 37.3 (2014): 222-32.)。
【0009】
[0009] 血液潅流適用について、ポリマー支持体に固定化したPMBの使用についての懸念は、非共有結合したPMBが支持体から再循環血液中へ滲出する可能性である。ポリミキシンBは静脈内処置を受けているある患者において神経毒性を誘発することが示された(Weinstein, L, TL Doan, and MA Smith. “Neurotoxicity in patients treated with
intravenous polymyxin B: Two case reports.” Am J Health Syst Pharm 2009 Feb 15; 66(4): 345-7.)。さらに、PMBは静脈内処置を受けているある患者において腎毒性を誘発することが示された(Sobieszczyk, ME, et. al. “Combination therapy with polymyxin B for the treatment of multidrug-resistant Gram-negative respiratory tract infections.” J Antimicrob Chemother. 2004 Aug; 54(2): 566-9)。前記で参照したHarmらによる研究においては、TorayファイバーおよびPMB-Agaroseビーズからの非共有結合したPMBが一連の洗浄工程で分離され、HPLCを用いて定量された。ファイバーまたはビーズは生理食塩水中で10回、続いて0.1N HCl溶液中で5回、インキュベートされた。Torayファイバーから、5回目の0.1N HCl洗浄工程の後、42±12ng PMB/mLが見出された。PMB-Agaroseビーズから、4回目の0.1N HCl洗浄工程の後、27±6ng PMB/mLが見出された。
【0010】
[0010] 前記のように、エンドトキシンはグラム陰性細菌の細胞壁の成分である。グラム陰性細菌は組換えタンパク質の製造に一般的に用いられ、希望する組換えタンパク質を細菌細胞から抽出するために用いられる手法の多くはリポ多糖をも遊離させる。LPSは特異的または非特異的な相互作用によりタンパク質との複合体を形成する傾向があり、複合体全体が交換カラムに固定化された状態になるので、イオン交換カラムを用いる組換えタンパク質の精製は、必ずしも完全に成功するわけではない。Roppらは、LPSをタンパク質-LPS複合体から分離させてタンパク質をイオン交換カラムに固定化されたままにするために、アルカンジオールを用いる手法を開発した(PCT Int. Appl. (2005), WO 2005003152 A1 20050113)。アルカンジオールが選択されたのは、類似の分離を達成する他の試薬と比較して毒性および炎症性が低いからである。
【0011】
[0011] さらに、アルカンジオールは広域の抗微生物活性を示し、化粧品中に保湿性の抗微生物剤として用いられている。水中における1,2-ヘキサンジオールおよび(S)-3-(ヘキシルオキシ)プロパン-1,2-ジオールのダイマーおよびトリマーの最適化構造において、2つのヒドロキシル基が接近し、脂肪族鎖がより長くなると、アルカンジオールの両親媒性が増大し、よって微生物細胞の膜二重層中へより容易に透過する可能性がある(Yoo IK, JII Kim, YK Kang. “Conformational preferences and antimicrobial activities of alkanediols.” Computational and Theoretical Chemistry 2015 vol 1064, 15-24.)。
【0012】
[0012] リポテイコ酸(lipoteichoic acid)(LTA)はグラム陽性細菌細胞壁の主成
分であり、LPSと同じ多くの病原性をもつ。LTAはLPSにおけるリピドAと類似の役割を果たす糖脂質により細胞壁内へ繋ぎ留められている(Morath S, et. al. “Structure/function relationships of lipoteichoic acids. J Endotoxin Res. 2005; 11(6): 348-56.)。それは、細胞壁から解離すると標的細胞の膜リン脂質に非特異的に結合し、あるいはtoll様受容体に特異的的に結合して、補体カスケードを活性化し、または反応性種およびサイトカインの放出の引き金を引くことができ、それらが細胞損傷を増幅する作用をする可能性がある。LTAはグラム陽性細菌により引き起こされる感染症において重要な役割を果たし、動物試験において髄膜炎、脳脊髄炎、および関節炎のほかに多臓器不全および敗血症性ショックをもたらすカスケードの引き金を引くことが示された(Ginsburg I. “Role of lipoteichoic acid in infection and inflammation.” Lancet Infect Dis. 2002 Mar; 2(3): 171-9.)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】PCT Int. Appl. (2005), WO 2005003152 A1 20050113
【非特許文献】
【0014】
【文献】Harm, Stephan, Dieter Falkenhagen, and Jens Hartmann. “Endotoxin Adsorbents in Extracorporeal Blood Purification: Do They Fulfill Expectations?” Int J Artif Organs 37.3 (2014): 222-32.
【文献】Bengsch S, Boos KS, Nagel D, Seidel D, Inthorn D. Extracorporeal plasma treatment for the removal of endotoxin in patients with sepsis: clinical results of a pilot study. Shock. 2005; 23(6): 494-500.
【文献】Weinstein, L, TL Doan, and MA Smith. “Neurotoxicity in patients treated with intravenous polymyxin B: Two case reports.” Am J Health Syst Pharm 2009 Feb 15; 66(4): 345-7.
【文献】Sobieszczyk, ME, et. al. “Combination therapy with polymyxin B for the treatment of multidrug-resistant Gram-negative respiratory tract infections.” J Antimicrob Chemother. 2004 Aug; 54(2): 566-9.
【文献】Yoo IK, JII Kim, YK Kang. “Conformational preferences and antimicrobial activities of alkanediols.” Computational and Theoretical Chemistry 2015 vol 1064, 15-24.
【文献】Morath S, et. al. “Structure/function relationships of lipoteichoic acids. J Endotoxin Res. 2005; 11(6): 348-56.
【文献】Ginsburg I. “Role of lipoteichoic acid in infection and inflammation.” Lancet Infect Dis. 2002 Mar; 2(3): 171-9.
【発明の概要】
【0015】
[0013] 本明細書に記載する新規な収着材は有害物質が浸出する可能性なしに生物学的流体中のエンドトキシンレベルを低下させるという点で既存の技術に優る利点を提供し、安全かつ有効な方法をもたらす。ポリマーマトリックスに共有結合した官能基の正味中性電荷のため、この収着材は他の既存の技術と異なる。LPSを新規な収着材によって蛇行路、収着、および細孔捕獲により保持することができる。ポリ(スチレン-co-ジビニルベンゼン)主鎖に共有結合したポリオール基または双性イオン性基(zwitterionic group)のいずれかを含むその樹脂を合成するためには、幾つかの経路を使用できる。血液潅流適用のためには、ポリマーが血液適合性であることが要求条件である。不活性化部分トロンボプラスチン時間(unactivated partial thromboplastin time)(uPTT)アッセイを血栓形成性の尺度として用いると、本明細書に記載するポリマーは最小の活性化を示し、これは血漿様相互作用の指標となる。さらに、それらの収着材はエンドトキシンを除去しながら同時にサイトカインおよび炎症性タンパク質部分を除去することができ、かつ抗微生物活性を示す可能性をもつ。エンドトキシンまたはサイトカインのいずれかを内毒素血症患者から除去するのでは不十分な処置である可能性がある;残留するエンドトキシンはさらにサイトカイン産生の引き金を引き、残留するサイトカインはなお敗血症をもたらす可能性があるからである。感染およびそれに続く過度の炎症応答の根源を両方とも除去することにより、この新規な収着材はエンドトキシン除去のために特異的にデザインされた既存の技術に優る利点を提供する。
【0016】
[0014] ある側面において、本発明は少なくとも1種類のポリマーを含む生体適合性ポリマー系に関するものであり、そのポリマーはポリオールまたは双性イオン性官能基のい
ずれかを含み;そのポリマー系はエンドトキシンを吸着することができる。好ましいポリマーは、約0.5kDa未満から約1,000kDaまでの分子量(またはある態様において約1kDaから約1,000kDaまで)を有する広範囲のトキシンおよび炎症メディエーターをも吸着することができる。ある好ましいポリマーは血液適合性である。ある好ましいポリマー系は球状ビーズの幾何学的形状をもつ。
【0017】
[0015] ある好ましいポリマーは、グラム陰性細菌、グラム陰性細菌フラグメント、およびグラム陰性細菌成分のうち1以上を吸着することもできる。グラム陰性細菌成分にはリポ多糖(LPS)が含まれるが、それに限定されない。他の好ましいポリマーは、グラム陽性細菌、グラム陽性細菌フラグメント、およびグラム陽性細菌成分のうち1以上を吸着することもできる。グラム陽性細菌成分にはリポテイコ酸(LTA)が含まれるが、それに限定されない。ある態様において、トキシンおよび炎症メディエーターには、下記のうち1以上が含まれる:サイトカイン、病原体関連分子パターン分子(pathogen-associated molecular pattern molecule)(PAMP)、ダメージ関連分子パターン分子(damage-associated molecular pattern molecule)(DAMP)、スーパー抗原(superantigen)、モノカイン、ケモカイン、インターフェロン、プロテアーゼ、酵素、ブラジキニンを含めたペプチド、可溶性CD40リガンド、生物活性脂質、酸化型脂質、無細胞ヘモグロビン、無細胞ミオグロビン、成長因子、糖タンパク質、プリオン、トキシン、細菌性およびウイルス性トキシン、薬物、血管作用物質、外来抗原、ならびに抗体。
【0018】
[0016] 前記ポリマーは適切な多孔質ポリマーを作成するための、当技術分野で既知のいずれかの手段により作成できる。ある好ましい態様において、ポリマーは懸濁重合を用いて作成される。他の態様において、ポリマーは乳化重合、バルク重合または沈殿重合により作成される。
【0019】
[0017] 前記ポリマーは固体支持体の形態である。ある好ましい態様において、固体支持体はビーズである。他の態様において、固体支持体はファイバー、モノリスカラム(monolithic column)、またはフィルムである。
【0020】
[0018] あるポリマー系は、10Åから40,000Åまでの細孔サイズの全容積0.1cc/gより大きく、5.0cc/g(乾燥ポリマー)未満をもつポリマー細孔構造をもち、一方、他のポリマー系は非多孔質である。他の態様は、10Åから40,000Åまでの細孔サイズの全容積0.1cc/gより大きく、3.0cc/g(乾燥ポリマー)未満をもつポリマー細孔構造をもち、一方、他のポリマー系は非多孔質である。
【0021】
[0019] ある態様において、ポリマーはポリオール基を含む高架橋した(hypercrosslinked)またはマクロ網状(macroreticular)多孔質ポリマービーズの形態である。ある他の態様において、ポリマーは双性イオン性基を含む高架橋またはマクロ網状多孔質ポリマービーズの形態である。好ましい態様において、ポリマーはジオール基を含む高架橋またはマクロ網状多孔質ポリマービーズの形態である。
【0022】
[0020] ある態様において、ポリマーはポリオール基を含む非多孔質ポリマービーズの形態である。ある他の態様において、ポリマーは双性イオン性基を含む非多孔質ポリマービーズの形態である。好ましい態様において、ポリマーはジオール基を含む非多孔質ポリマービーズの形態である。
【0023】
[0021] ある態様において、ポリマービーズはポリオール基を含む。ポリオール基を含むポリマービーズは、エポキシド基を含む予め作成したポリマーの開環反応により製造できる。好ましい態様において、ポリオール基はジオール基である。
【0024】
[0022] 他の態様において、ポリオール基を含むポリマービーズは、残留アセテート基を含む予め作成したポリマーのエステル加水分解反応により製造できる。好ましい態様において、ポリオール基はジオール基である。
【0025】
[0023] ある他の態様において、ポリマービーズは双性イオン性官能基を含む。双性イオン性官能基を含むポリマービーズは、重合に容易に利用できる二重結合を含む双性イオン性モノマーの存在下でのフリーラジカル反応により製造できる。
【0026】
[0024] あるポリマー系は、エポキシド基を含む重合性ビニルモノマーから構築され、それらを架橋剤、血液適合性モノマー、モノマー、および適切なポロゲン(porogen)の存
在下で共重合させて、エポキシド官能基を含む多孔質重合ポリマーを得る。これらのエポキシドを、次いで塩基の存在下での開環反応によりポリオールに変換する。好ましい系において、エポキシドをジオールに変換する。
【0027】
[0025] さらに他のポリマー系は、アセテート基を含む重合性ビニルモノマーから構築され、それらを架橋剤、血液適合性モノマー、モノマー、および適切なポロゲンの存在下で共重合させて、アセテート基を含む多孔質ポリマーを得る。これらのアセテート基を、塩基の存在下でのエステル加水分解によりポリオールに変換する。好ましい態様において、ポリオール基はジオール基である。
【0028】
[0026] あるポリマー系は、エポキシド基を含む重合性ビニルモノマーから構築され、それらを架橋剤、血液適合性モノマー、およびモノマーの存在下で共重合させて、エポキシド官能基を含む非多孔質重合ポリマーを得る。これらのエポキシドを、次いで塩基の存在下での開環反応によりポリオールに変換する。好ましい系において、エポキシドをジオールに変換する。
【0029】
[0027] 他のポリマー系は、アセテート基を含む重合性ビニルモノマーから構築され、それらを架橋剤、血液適合性モノマー、およびモノマーの存在下で共重合させて、アセテートを含む非多孔質重合ポリマーを得る。これらのアセテート基を、塩基の存在下でのエステル加水分解によりポリオールに変換する。好ましい態様において、ポリオール基はジオール基である。
【0030】
[0028] あるポリマーは、形成され、その後、生体適合性になるように修飾される。ある修飾は、生体適合性の表面コーティングまたは層を形成することを含む。さらに他の側面は、本明細書に記載する生体適合性ポリマー系を含む、生理的流体からエンドトキシンを除去するためのデバイスに関する。他の側面は、本明細書に記載する生体適合性ポリマー系を含む、生理的流体から0.5kDa未満から1,000kDaまでの広範囲のタンパク質ベースのトキシンをも除去するためのデバイスに関する。
【0031】
[0029] 他の側面は、本明細書に記載する生体適合性ポリマー系を含む、生理的流体からグラム陰性細菌、グラム陰性細菌フラグメント、およびグラム陰性細菌成分のうち1以上をも除去するためのデバイスに関する。さらに他の側面は、本明細書に記載する生体適合性ポリマー系を含む、生理的流体からグラム陽性細菌、グラム陽性細菌フラグメント、およびグラム陽性細菌成分のうち1以上をも除去するためのデバイスに関する。
【0032】
[0030] さらに他の側面は、本明細書に記載する生体適合性ポリマー系を含む、非生理的流体からエンドトキシンを除去するためのデバイスに関する。他の側面は、本明細書に記載する生体適合性ポリマー系を含む、非生理的流体から0.5kDa未満から1,000kDaまでの広範囲のタンパク質ベースのトキシンをも除去するためのデバイスに関する。
【0033】
[0031] 他の側面は、本明細書に記載する生体適合性ポリマー系を含む、非生理的流体からグラム陰性細菌、グラム陰性細菌フラグメント、およびグラム陰性細菌成分のうち1以上をも除去するためのデバイスに関する。さらに他の側面は、本明細書に記載する生体適合性ポリマー系を含む、非生理的流体からグラム陽性細菌、グラム陽性細菌フラグメント、およびグラム陽性細菌成分のうち1以上をも除去するためのデバイスに関する。
【0034】
[0032] 他の側面は、本明細書に記載する生体適合性ポリマー系を収容したデバイスに、適切な体外回路により生理的流体を1回または多数回導通することを含む潅流方法を含む。
【0035】
[0033] さらに他の側面は、本明細書に記載するポリマーを経腸投与または直腸内投与する適用に関する。
[0034] ある側面において、本発明は少なくとも1種類のポリマーを含む非-生体適合性ポリマー系に関するものであり、そのポリマーはポリオールまたは双性イオン性官能基のいずれかを含み;そのポリマー系は、生理的流体、実験室もしくは製造における流体、またはヘルスケア施設、家庭内ヘルスケア適用、医療施設、バイオテクノロジー施設、生物学的製造プロセス、細胞培養製造プロセス、および実験室のうち1以上における水系から、エンドトキシンを吸着することができる。好ましいポリマーは、広範囲のトキシン、細菌、細菌フラグメント、および細菌成分のうち1以上をも吸着することができる。
本発明の態様には、下記も含まれる。
態様1
少なくとも1種類のポリマーを含む生体適合性ポリマー系であって、そのポリマーがポリオールまたは双性イオン性官能基のいずれかを含み;そのポリマー系がエンドトキシンを吸着することができる、生体適合性ポリマー系。
態様2
ポリマー系が広範囲のトキシンおよび炎症メディエーターをも吸着することができる、態様1に記載の生体適合性ポリマー系。
態様3
トキシンおよび炎症メディエーターが約0.5kDa未満から約1,000kDaまでの分子量を有する、態様2に記載の生体適合性ポリマー系。
態様4
トキシンおよび炎症メディエーターが約0.5kDa未満から約60kDaまでの分子量を有する、態様2に記載の生体適合性ポリマー系。
態様5
トキシンおよび炎症メディエーターが、サイトカイン、病原体関連分子パターン分子(PAMP)、ダメージ関連分子パターン分子(DAMP)、スーパー抗原、モノカイン、ケモカイン、インターフェロン、プロテアーゼ、酵素、ブラジキニンを含めたペプチド、可溶性CD40リガンド、生物活性脂質、酸化型脂質、無細胞ヘモグロビン、無細胞ミオグロビン、成長因子、糖タンパク質、プリオン、トキシン、細菌性およびウイルス性トキシン、薬物、血管作用物質、外来抗原、ならびに抗体のうち1以上を含む、態様2に記載の生体適合性ポリマー系。
態様6
ポリマー系が、グラム陰性細菌、グラム陰性細菌フラグメント、およびグラム陰性細菌成分、たとえばリポ多糖(LPS)のうち1以上をも吸着することができる、態様1に記載の生体適合性ポリマー系。
態様7
ポリマー系が、グラム陽性細菌、グラム陽性細菌フラグメント、およびグラム陽性細菌成分、たとえばリポテイコ酸(LTA)のうち1以上をも吸着することができる、態様1に記載の生体適合性ポリマー系。
態様8
ポリマーが、懸濁重合、乳化重合、バルク重合、または沈殿重合を用いて製造される、態様1に記載の生体適合性ポリマー系。
態様9
ポリマーがセルロース系ポリマーの修飾により作成され、その修飾が、フリーラジカルまたはS 2タイプの化学により付加されたポリオールまたは双性イオン性基質と共に、場合により、アリール基またはアルキル基を含む親油性基質の付加を含む、態様1に記載の生体適合性ポリマー系。
態様10
ポリマー系が固体支持体の形態を有し、それにはビーズ、ファイバー、モノリスカラム、フィルム、メンブレン、または半透膜を含めることができるが、それらに限定されない、態様1に記載の生体適合性ポリマー系。
態様11
固体支持体が生体適合性ヒドロゲルコーティングを有する、態様10に記載の生体適合性ポリマー系。
態様12
ポリマーが多数の細孔を含み、ポリマーの細孔構造が10Åから40,000Åまでの範囲の細孔サイズの全容積0.1cc/gより大きく、5.0cc/g(乾燥ポリマー)未満を有する、態様1に記載の生体適合性ポリマー系。
態様13
ポリマーが非多孔質である、態様1に記載の生体適合性ポリマー系。
態様14
ポリマーが高架橋ポリマーである、態様1に記載の生体適合性ポリマー系。
態様15
ポリマーが血液適合性である、態様1に記載の生体適合性ポリマー系。
態様16
生体適合性を付与するために用いられる作用剤が(i)ヘパリンまたは(ii)ヘパリン模倣ポリマーのいずれかである、態様1に記載の生体適合性ポリマー系。
態様17
ポリマーを形成し、その後、生体適合性になるように修飾する、態様1に記載の生体適合性ポリマー系。
態様18
生体適合性を付与するために用いられる作用剤が(i)ヘパリンまたは(ii)ヘパリン模倣ポリマーのいずれかである、態様17に記載の生体適合性を付与する修飾。
態様19
態様1~18のいずれか1項に記載の生体適合性ポリマー系を含む、エンドトキシンを生理的流体から除去するためのデバイス。
態様20
デバイスが広範囲のトキシンおよび炎症メディエーターをも除去する、態様19に記載のデバイス。
態様21
トキシンおよび炎症メディエーターが約0.5kDa未満から約1,000kDaまでの分子量を有する、態様20に記載のデバイス。
態様22
トキシンおよび炎症メディエーターが約0.5kDa未満から約60kDaまでの分子量を有する、態様20に記載のデバイス。
態様23
トキシンおよび炎症メディエーターが、サイトカイン、病原体関連分子パターン分子(PAMP)、ダメージ関連分子パターン分子(DAMP)、スーパー抗原、モノカイン、ケモカイン、インターフェロン、プロテアーゼ、酵素、ブラジキニンを含めたペプチド、可溶性CD40リガンド、生物活性脂質、酸化型脂質、無細胞ヘモグロビン、無細胞ミオグロビン、成長因子、糖タンパク質、プリオン、トキシン、細菌性およびウイルス性トキシン、薬物、血管作用物質、外来抗原、ならびに抗体のうち1以上を含む、態様20に記載のデバイス。
態様24
デバイスが、グラム陰性細菌、グラム陰性細菌フラグメント、およびグラム陰性細菌成分、たとえばリポ多糖(LPS)のうち1以上をも除去する、態様19に記載のデバイス。
態様25
デバイスが、グラム陽性細菌、グラム陽性細菌フラグメント、およびグラム陽性細菌成分、たとえばリポテイコ酸(LTA)のうち1以上をも除去する、態様19に記載のデバイス。
態様26
態様1~18のいずれかに記載の生体適合性ポリマー系を含む、エンドトキシンを非生理的流体から除去するためのデバイス。
態様27
デバイスが広範囲のトキシンおよび炎症メディエーターをも除去する、態様26に記載のデバイス。
態様28
トキシンおよび炎症メディエーターが約0.5kDa未満から約1,000kDaまでの分子量を有する、態様27に記載のデバイス。
態様29
トキシンおよび炎症メディエーターが約0.5kDa未満から約60kDaまでの分子量を有する、態様27に記載のデバイス。
態様30
トキシンおよび炎症メディエーターが、サイトカイン、病原体関連分子パターン分子(PAMP)、ダメージ関連分子パターン分子(DAMP)、スーパー抗原、モノカイン、ケモカイン、インターフェロン、プロテアーゼ、酵素、ブラジキニンを含めたペプチド、可溶性CD40リガンド、生物活性脂質、酸化型脂質、無細胞ヘモグロビン、無細胞ミオグロビン、成長因子、糖タンパク質、プリオン、トキシン、細菌性およびウイルス性トキシン、薬物、血管作用物質、外来抗原、ならびに抗体のうち1以上を含む、態様27に記載のデバイス。
態様31
デバイスが、グラム陰性細菌、グラム陰性細菌フラグメント、およびグラム陰性細菌成分、たとえばリポ多糖(LPS)のうち1以上をも除去する、態様26に記載のデバイス。
態様32
デバイスが、グラム陽性細菌、グラム陽性細菌フラグメント、およびグラム陽性細菌成分、たとえばリポテイコ酸(LTA)のうち1以上をも除去する、態様26に記載のデバイス。
態様33
ポリマーを保持するのに適切でありかつ体外回路へ組み込むのに適切であるデバイス内にある、態様1~18のいずれかに記載の生体適合性ポリマー系。
態様34
態様1~18のいずれかに記載の生体適合性ポリマー系を収容したデバイスに、適切な体外回路により生理的流体を1回または多数回導通することを含む潅流方法。
態様35
ポリマーを保持するのに適した、全血、パックした赤血球、血小板、アルブミン、血漿またはそのいずれかの組合わせを含む血液製剤の輸注のための容器に収容された、態様1~18のいずれかに記載の生体適合性ポリマー系。
態様36
全血、血漿もしくは血清を含む血液製剤から、または他の生理的流体から、エンドトキシンを除去する、態様1~18のいずれかに記載の生体適合性ポリマー系。
態様37
ポリマーが経腸投与または直腸内投与される、態様1~18のいずれかに記載の生体適合性ポリマー系。
態様38
少なくとも1種類のポリマーを含むポリマー系であって、そのポリマーがポリオールまたは双性イオン性官能基のいずれかを含み;そのポリマー系がエンドトキシンを吸着することができる、ポリマー系。
態様39
ポリマー系が、広範囲のトキシン、グラム陰性細菌、グラム陰性細菌フラグメント、グラム陰性細菌成分、たとえばリポ多糖(LPS)、グラム陽性細菌、グラム陽性細菌フラグメント、およびグラム陽性細菌成分、たとえばリポテイコ酸(LTA)をも吸着することができる、態様38に記載のポリマー系。
態様40
トキシンが、約0.5kDa未満から約1,000kDaまでの分子量を有する、態様39に記載のポリマー系。
【図面の簡単な説明】
【0036】
[0035] 本開示のさらなる理解を提供するために採用する添付の図面は、本明細書に含まれ、その一部を構成し、本開示の側面を示す詳細な記載と共に本開示の原理を説明するためのものである。本開示およびそれを実施できる種々の方法の基礎的理解に必要と思われるもの以上に本開示の構造詳細を示すためのものではない。図面は下記を示す。
図1】[0036] 図1は、修飾ポリマーについての対数差示的細孔容積(log differential pore volume)プロットを示す。
図2図2は、修飾ポリマーについての対数差示的細孔容積プロットを示す。
図3図3は、修飾ポリマーについての対数差示的細孔容積プロットを示す。
図4図4は、修飾ポリマーについての対数差示的細孔容積プロットを示す。
図5】[0037] 図5は、修飾ポリマーCY15129、CY15154、およびCY16000について、ヒト血漿における動的モデルからのエンドトキシン除去データを、循環前濃度と比較した120分後に残存するエンドトキシンの量により決定したパーセントとして表わしたものを示す。
図6】[0038] 図6は、ポリマーCY15154およびそれの非修飾前駆体CY15077について、ヒト血漿における動的モデルからのエンドトキシン除去データを、循環前濃度と比較した120分後に残存するエンドトキシンの量により決定したパーセントとして表わしたものを示す。
図7】[0039] 図7は、全血における動的モデルからのサイトカイン除去データを、循環前濃度と比較した特定時点で残存するサイトカインの量により決定したパーセントとして表わしたものを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[0040] 必要に応じて本発明の詳細な態様を本明細書に開示する;開示した態様は種々の態様で実施できる本発明の例示にすぎないことを理解すべきである。したがって、本明細書に開示する具体的な構造および機能の詳細は、限定ではなく本発明を使用する当業者に教示するための基礎にすぎないと解釈すべきである。以下の具体例によって本発明をより良く理解できるであろう。ただし、それらは手引として示されるにすぎず、何らかの限定を意味するものではない。
【0038】
[0041] 本発明は、本開示の一部をなす添付の図面および例と合わせて以下の詳細な記載を参照することによってより容易に理解できる。本発明は本明細書に記載および/または提示する特定の材料、デバイス、方法、適用、状態またはパラメーターに限定されないこと、ならびに本明細書中で用いる用語は具体的な態様を例によって記述する目的のためのものにすぎず、特許請求の範囲に記載した本発明を限定することを意図したものではないことを理解すべきである。本明細書中で用いる用語“複数”は、1より多いことを意味する。ある範囲の数値を表示した場合、他の態様にはその一方の特定の数値から、および/または他方の特定の数値までが含まれる。同様に、先行詞“約”の使用により数値を概数として表示した場合、その特定の数値が他の態様をなすことは理解されるであろう。すべての範囲が包括的かつ組合わせ可能である。
【0039】
[0042] たとえば明確化のために別個の態様に関して本明細書に記載する本発明のある特徴を単一態様において組み合わせて提供できることも認識すべきである。逆に、簡略化のために単一態様に関して記載した本発明の種々の特徴を、別個に、またはいずれかの部分組合わせで提供することもできる。さらに、範囲で述べた数値には、その範囲内のありとあらゆる数値および数値の組合わせが含まれる。
【0040】
[0043] 以下の定義は本発明の理解を補助するためのものである。
[0044] 用語“生体適合性の(biocompatible)”は、収着材が生理的流体、生体組織ま
たは生物と接触している時間中に、許容できない臨床変化を生じることなくその収着材が生理的流体、生体組織または生物と接触できることを意味するために定義される。
【0041】
[0045] 用語“血液適合性の(hemocompatible)”は、生体適合性材料を全血または血漿と接触させた際に臨床的に許容できる生理学的変化を生じる状態と定義される。
[0046] 本明細書中で用いる用語“生理的流体(physiologic fluid)”は、身体に由来
する液体であり、鼻咽頭液、口腔液、食道液、胃液、膵液、肝臓液、胸膜液、心膜液、腹膜液、腸液、前立腺液、精液、膣分泌液、ならびに涙液、唾液、肺液、または気管支分泌液、粘液、胆汁、血液、リンパ液、血漿、血清、滑液、脳脊髄液、尿、ならびに間質液、細胞内液、および細胞外液、たとえば火傷または創傷から滲出する流体を含めることができるが、これらに限定されない。
【0042】
[0047] 本明細書中で用いる用語“実験室もしくは製造における流体”は、ライフサイエンス用途に用いられる液体と定義され、組織培養および細胞培養の培地および添加物、化学的および生物的アッセイ媒体、試料調製用緩衝液、生物学的製造媒体、増殖培地、およびバイオリアクター培地を含むことができるが、これらに限定されない。
【0043】
[0048] 本明細書中で用いる用語“収着材(sorbent)”には、吸着材および吸収材が含
まれる。
[0049] 本発明の目的に関して、用語“収着する(sorb)”は、“吸収および吸着により取り込んで結合する”と定義される。
【0044】
[0050] 本発明の目的に関して、用語“潅流”は、有毒分子を流体から除去するために、多孔質ポリマー系吸着材を収容したデバイスに、適切な体外回路により生理的流体を1回導通することであると定義される。
【0045】
[0051] 用語“血液潅流(hemoperfusion)”は、生理的流体が血液である特別な潅流例
である。
[0052] 用語“分散剤(dispersantまたはdispersing agent)”は、流動化剤中に懸濁した微細に分割された非混和性液滴のアレイに安定化作用を付与する物質であると定義され
る。
【0046】
[0053] 用語“ヘパリン模倣ポリマー”は、ヘパリンと同じ抗凝固および/または抗血栓形成特性をもついずれかのポリマーを表わす。
[0054] 用語“マクロ網状合成(macroreticular synthesis)”は、生長しつつあるポリマー分子を相平衡によって支配される特定の分子サイズでモノマー液体から押し出す不活性沈殿剤の存在下でモノマーを重合させてポリマーにして、球状またはほぼ球状の互いに対称充填された固体ナノサイズミクロゲル粒子を生じさせて開放セル構造の物理的細孔をもつビーズにすることであると定義される。[U.S. Patent 4,297,220, Meitzner and Oline, October 27, 1981; R.L. Albright, Reactive Polymers, 4, 155-174(1986)]。
【0047】
[0055] 用語“高架橋した(hypercrosslinked)”は、単一反復単位が2より多い結合性をもつポリマーを記載する。高架橋したポリマーは、モノマーの共重合ではなく膨潤または溶解したポリマー鎖を多数の堅牢な架橋スペーサーで架橋することにより製造される。架橋剤には芳香族炭化水素のビス(クロロメチル)誘導体、メチラール、モノクロロジメチルエーテル、および他の二官能性化合物を含めることができ、それらはフリーデル-クラフツ触媒の存在下でポリマーと反応する[Tsyurupa, M. P., Z. K. Blinnikova, N. A. Proskurina, A. V. Pastukhov, L. A. Pavlova, and V. A. Davankov. “Hypercrosslinked Polystyrene: The First Nanoporous Polymeric Material.”Nanotechnologies in Russia 4 (2009): 665-75.]。
【0048】
[0056] ある好ましいポリマーは、下記のものから選択される1種類以上のモノマーからの残基を含み、またはモノマーもしくはその混合物を含む:アクリロニトリル、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸セチル、メタクリル酸セチル、3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン、ジペンタエリトリトールジアクリレート、ジペンタエリトリトールジメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールトリアクリレート、ジペンタエリトリトールトリメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルホルムアミド、ジビニルナフタレン、ジビニルスルホン、3,4-エポキシ-1-ブテン、1,2-エポキシ-9-デセン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、エチルスチレン、エチルビニルベンゼン、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、ペンタエリトリトールジアクリレート、ペンタエリトリトールジメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、スチレン、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリビニルベンゼン、トリビニルシクロヘキサン、酢酸ビニル、ビニルベンジルアルコール、4-ビニル-1-シクロヘキセン 1,2-エポキシド、ビニルホルムアミド、ビニルナフタレン、2-ビニルオキシラン、およびビニルトルエン。
【0049】
[0057] 本発明のある態様は、有機溶媒および/または重合ポロゲン(polymeric porogen)をポロゲンまたは細孔形成剤として用い、重合中に誘発されて生じる相分離によって多孔質ポリマーが生成する。ある好ましいポロゲンは、下記のものから選択され、またはそのいずれかの組合わせからなる混合物である:ベンジルアルコール、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、デカン、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、ジ-2-エチルヘキシルリン酸、酢酸エチル、2-エチル-1-ヘキサン酸、2-エチル-1-ヘキサノール、n-ヘプタン、n-ヘキサン、酢酸イソアミル、イソアミルアルコール、n-オクタン、ペンタノール、ポリ(プロピレングリコール)、ポリスチレン、ポリ(スチレン-co-メタクリル酸メチル)、テトラリン、トルエン、リン酸トリ-n-ブチル、1,2,3-トリクロロプロパン、2,2,4-トリメチルペンタン、およびキシレン。
【0050】
[0058] さらに他の態様において、分散剤は下記のものからなる混合物から選択される:ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(アクリル酸ジエチルアミノエチル)、ポリ(メタクリル酸ジエチルアミノエチル)、ポリ(アクリル酸ジメチルアミノエチル)、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)、ポリ(アクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(アクリル酸ヒドロキシプロピル)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシプロピル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)の塩、ポリ(メタクリル酸)の塩、およびその混合物。
【0051】
[0059] 好ましい収着材は生体適合性である。他のさらなる態様において、ポリマーは生体適合性である。さらに他の態様において、ポリマーは血液適合性である。さらに、さらなる態様において、生体適合性ポリマーは血液適合性である。さらに、さらなる態様において、ポリマーの幾何学的形状は球状ビーズである。
【0052】
[0060] 他の態様において、生体適合性ポリマーはポリ(N-ビニルピロリドン)を含む。
[0061] 他の態様において、生体適合性ポリマーは1,2-ジオールを含む。他の態様において、生体適合性ポリマーは1,3-ジオールを含む。
【0053】
[0062] 他のさらなる態様において、生体適合性ポリマーはヘパリン模倣ポリマーを含む。
[0063] ポリ(スチレン-co-ジビニルベンゼン)樹脂上のコーティング/分散剤は、改善された生体適合性を材料に付与するであろう。
【0054】
[0064] さらにまた他の態様において、下記のものからなる一群の架橋剤を血液適合性ヒドロゲルコーティングの形成に使用できる:ジペンタエリトリトールジアクリレート、ジペンタエリトリトールジメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールトリアクリレート、ジペンタエリトリトールトリメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルホルムアミド、ジビニルナフタレン、ジビニルスルホン、ペンタエリトリトールジアクリレート、ペンタエリトリトールジメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリビニルベンゼン、トリビニルシクロヘキサン、およびその混合物。
【0055】
[0065] ある態様において、ポリマーは少なくとも1種類の架橋剤および少なくとも1種類の分散剤を含むポリマーである。分散剤は生体適合性であってもよい。分散剤は、化学物質、化合物または物質、たとえばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(アクリル酸ジエチルアミノエチル)、ポリ(メタクリル酸ジエチルアミノエチル)、ポリ(アクリル酸ジメチルアミノエチル)、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)、ポリ(アクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(アクリル酸ヒドロキシプロピル)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシプロピル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)の塩、ポリ(メタクリル酸)の塩、およびその混合物から選択できる;架橋剤は下記のものからなる群から選択される:ジペンタエリトリトールジアクリレート、ジペンタエリトリトールジメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレー
ト、ジペンタエリトリトールトリアクリレート、ジペンタエリトリトールトリメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルホルムアミド、ジビニルナフタレン、ジビニルスルホン、ペンタエリトリトールジアクリレート、ペンタエリトリトールジメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリビニルベンゼン、トリビニルシクロヘキサン、およびその混合物。好ましくは、ポリマーはコーティングの形成と同時に発現し、その際、分散剤がポリマーの表面に化学結合し、あるいは絡まる。
【0056】
[0066] さらに他の態様において、生体適合性ポリマーコーティングは下記のものからなる群から選択される:ポリ(メタクリル酸ジエチルアミノエチル)、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)、ポリ(アクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(アクリル酸ヒドロキシプロピル)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシプロピル)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)の塩、ポリ(メタクリル酸)の塩、およびその混合物。
【0057】
[0067] さらに他の態様において、生体適合性オリゴマーコーティングは下記のものからなる群から選択される:ポリ(メタクリル酸ジエチルアミノエチル)、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)、ポリ(アクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリ(アクリル酸ヒドロキシプロピル)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシプロピル)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)の塩、ポリ(メタクリル酸)の塩、およびその混合物。
【0058】
[0068] 本発明のある生体適合性収着材組成物は、多数の細孔から構成される。生体適合性収着材は、0.5kDa未満から1,000kDaまでの広範囲のトキシンを吸着するようにデザインされる。理論によって束縛されるつもりはないが、収着材は前決定した分子量の分子を細孔内に封鎖することにより作用すると考えられる。ポリマーが収着できる分子のサイズは、ポリマーの細孔サイズが増大するのに伴なって増大するであろう。逆に、細孔サイズが特定分子の吸着に最適な細孔サイズを超えるのに伴なって、そのタンパク質の吸着は低減する可能性があるか、あるいは低減するであろう。
【0059】
[0069] ある方法において、固体形態は多孔質である。ある固体形態は、10Åから40,000Åまでの細孔サイズの全容積0.1cc/gより大きく、5.0cc/g(乾燥ポリマー)未満をもつポリマー細孔構造をもつことを特徴とする。
【0060】
[0070] ある他の方法において、固体形態は非多孔質である。
[0071] ある態様において、ポリマーを0.1マイクロメートル~2センチメートルの範囲の直径をもつビーズ状に作成できる。あるポリマーは粉末、ビーズ、または他の規則的もしくは不規則な形状の粒子である。
【0061】
[0072] ある態様において、多数の固体形態が、0.1マイクロメートルから2センチメートルまでの範囲の直径をもつ粒子を含む。
[0073] ある方法において、望ましくない分子には、下記のものが含まれる:エンドトキシン、グラム陰性細菌、グラム陰性細菌フラグメント、グラム陰性細菌成分、グラム陽性細菌、グラム陽性細菌フラグメント、およびグラム陽性細菌成分、ならびに下記のものからなる炎症メディエーターおよび刺激因子:サイトカイン、病原体関連分子パターン分子(PAMP)、ダメージ関連分子パターン分子(DAMP)、スーパー抗原、モノカイン、ケモカイン、インターフェロン、プロテアーゼ、酵素、ブラジキニンを含めたペプチ
ド、可溶性CD40リガンド、生物活性脂質、酸化型脂質、無細胞ヘモグロビン、無細胞ミオグロビン、成長因子、糖タンパク質、プリオン、トキシン、細菌性およびウイルス性トキシン、薬物、血管作用物質、外来抗原、ならびに抗体。
【0062】
[0074] ある態様において、収着材には、架橋剤と下記の重合性モノマーのうち1以上との反応により誘導され、続いてエポキシ化および開環されてポリオールを形成した、架橋ポリマー材料が含まれる:アクリロニトリル、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸セチル、メタクリル酸セチル、3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン、ジペンタエリトリトールジアクリレート、ジペンタエリトリトールジメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールトリアクリレート、ジペンタエリトリトールトリメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルホルムアミド、ジビニルナフタレン、ジビニルスルホン、3,4-エポキシ-1-ブテン、1,2-エポキシ-9-デセン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、エチルスチレン、エチルビニルベンゼン、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、ペンタエリトリトールジアクリレート、ペンタエリトリトールジメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、スチレン、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリビニルベンゼン、トリビニルシクロヘキサン、酢酸ビニル、ビニルベンジルアルコール、4-ビニル-1-シクロヘキセン 1,2-エポキシド、ビニルホルムアミド、ビニルナフタレン、2-ビニルオキシラン、およびビニルトルエン。好ましい収着材において、形成されたポリオールはジオールである。
【0063】
[0075] 他の一態様において、ポリマー系収着材は架橋剤と酢酸ビニルの反応により製造され、続いて修飾されてポリオール基を含むビーズを形成する。その反応は共重合であるか、あるいは初期重合がほぼ終了した時点で酢酸ビニルを添加し、未使用開始剤を利用して第2のフリーラジカル重合を開始して酢酸ビニル基をポリマービーズの表面に付加するワンポット反応であってもよい。酢酸ビニル含有ポリマーの後続修飾には、順に下記が含まれる:アセテート基をヒドロキシル基に変換する加水分解、エピクロロヒドリンとの反応によるエポキシド基を含むポリマービーズの形成、およびエポキシド基をポリオール基に変換する開環。好ましい態様において、ポリオールはジオールである。
【0064】
[0076] 本発明のある態様は、エポキシド基を含むポリマービーズを直接合成し、続いてエポキシド基を開環してポリオールを形成することを伴なう。エポキシド基を含む下記の重合性ビニルモノマーのうち1以上を架橋剤およびモノマーの存在下で重合させて、前記の官能基を含むポリマービーズを得ることができる:アリルグリシジルエーテル、3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-1-ブテン、1,2-エポキシ-9-デセン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、メタクリル酸グリシジル、4-ビニル-1-シクロヘキセン 1,2-エポキシド、および2-ビニルオキシラン。エポキシド基を含むビニルモノマーを血液適合性モノマー(NVP、2-HEMAなど)と共重合させて、エポキシド基を含む血液適合性ビーズを得ることもできる。好ましい態様において、ポリオールはジオールである。
【0065】
[0077] さらに他の態様は、ビーズの表面にポリオール基を含む高架橋ポリマー系収着材からなる。これは、フリーラジカルまたはS2タイプの化学により得ることができる。上記の修飾において行なわれる収着材ビーズ表面の化学修飾は、高架橋ポリスチレンの顕著な特色によって促進される;すなわち、そのポリマーの反応性官能基は主にそれの表面に存在する。高架橋ポリスチレンは一般に、ポリスチレン鎖を大量の二官能性化合物、特に2つの反応性クロロメチル基を保有するもので架橋させることにより製造される。後者は2工程反応で隣接ポリスチレン鎖の2つのフェニル基をフリーデル-クラフツ反応によりアルキル化して、2分子のHClを発生させ、架橋を形成する。この架橋反応に際して、形成された三次元ネットワークが剛性を獲得する。この特性は第2工程の架橋反応の速度を次第に低下させる;最初の架橋試薬の第2ペンダント官能基の可動性の低減が、アルキル化反応に適した第2パートナーを次第に付加しにくくするからである。これは特に、ビーズの表面に偶然に露出した第2官能基の特徴である。したがって、最終的な高架橋ポリマー中のペンダント未反応クロロメチル基のうち、最大部分(大部分の基ではないとしても)はビーズの表面(または細孔の表面)にある。この状況は、生体適合性および血液適合性モノマーおよび/または架橋剤または低分子量オリゴマーの結合を可能にする種々の化学反応に前記のクロロメチル基を関与させることにより、主にポリマービーズの表面を修飾するのを可能にする。後続のヒドロキシル基導入、続いてエピクロロヒドリンとの反応により、エポキシド基をビーズの表面に含むポリマー収着材が生成する。これらのエポキシド基を次いで開環して、ポリオール基を形成することができる。ある好ましい態様において、ポリオールはジオールである。
【0066】
[0078] 他の態様において、ペンダント未反応クロロメチル基を含む高架橋ポリスチレンを、下記の試薬のうち1以上の存在下で直接修飾して、ビーズの表面(または細孔の表面)にポリオールを含む収着材ポリマービーズを形成する:(±)-3-アミノ-1,2-プロパンジオール、グリセロール、および他のポリオール。好ましい態様において、ポリオールはジオールである。
【0067】
[0079] さらに他の態様において、表面コーティングする生体適合性および血液適合性作用剤であるポリ(ビニルアルコール)も、ポリオール官能基として作用する。
[0080] ある他の態様において、収着材には、架橋剤と下記の重合性モノマーのうち1以上との反応、次いでその後のフリーラジカル開始剤の存在下での重合性双性イオン性モノマーとの反応から誘導される、架橋ポリマー材料が含まれる:アクリロニトリル、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸セチル、メタクリル酸セチル、3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン、ジペンタエリトリトールジアクリレート、ジペンタエリトリトールジメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールトリアクリレート、ジペンタエリトリトールトリメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルホルムアミド、ジビニルナフタレン、ジビニルスルホン、3,4-エポキシ-1-ブテン、1,2-エポキシ-9-デセン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、エチルスチレン、エチルビニルベンゼン、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、ペンタエリトリトールジアクリレート、ペンタエリトリトールジメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、スチレン、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリビニルベンゼン、トリビニルシクロヘキサン、酢酸ビニル、ビニルベンジルアルコール、4-ビニル-1-シクロヘキセン 1,2-エポキシド、ビニルホルムアミド、ビニルナフタレン、2-ビニルオキシラン、およびビニルトルエン。重合性である双性イオン性モノマーには、下記のうち1以上が含まれる:2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム塩、[3-(アクリロイルアミノ)プロピル]-トリメチルアンモニウムクロリド、3-[[2-(アクリロイルオキシ)エチル]-ジメチルアンモニオ]-プロピオネート、[2-(アクリロイルオキシ)エチル]-ジメチル-(3-スルホプロピル)-アンモニウムヒドロキシド、2-アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]-トリメチルアンモニウムクロリド、3-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]-ジメチルアンモニオ]-プロピオネート、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]-ジメチル-(3-スルホプロピル)-アンモニウムヒドロキシド、および2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン。
【0068】
[0081] 一態様において、本発明のポリマーは、配合した水相中において、形成されたポリマービーズに生体適合性および血液適合性の外面を付与するように選択した水相分散剤の存在下で、フリーラジカル開始による懸濁重合により作成される。ある態様において、ビーズは、適正な細孔構造を発生させるために適切に選択したポロゲン(細孔形成剤)および重合に適した時間-温度プロファイルによるマクロ網状合成によって多孔質になる。
【0069】
[0082] 他の態様において、生体適合性および血液適合性であるモノマーまたは低分子量オリゴマーをさらにグラフトすることにより、懸濁重合により作成したポリマーを生体適合性および血液適合性にすることができる。ラジカル重合法は共重合に導入されたDVBのビニル基をすべて消費するわけではないことが示されている。平均すると、DVB種の約30%は架橋として用いられず、2つのビニル基のうち1つだけによってネットワークに関与した状態に留まる。したがって、比較的多量のペンダントビニル基の存在は、この吸着材の特徴的な特色である。これらのペンダントビニル基は好ましくはポリマービーズの表面に露出していると予想でき、それらのマクロポア(存在すれば)を容易に化学修飾に利用できるはずである。DVB-コポリマーの表面の化学修飾は、表面露出したペンダントビニル基の化学反応に依存し、これらの基をより親水性の官能基に変換することを目的とする。モノマーおよび/または架橋剤または低分子量オリゴマーのフリーラジカルグラフティングによるこの変換は、血液適合特性を備えた最初の疎水性吸着材を提供する。
【0070】
[0083] さらに他の態様において、ラジカル重合開始剤は分散した有機相にまず添加され、懸濁重合において一般的であるように水性分散媒に添加されるのではない。重合に際して、多くの生長しつつあるポリマー鎖はそれらの鎖端ラジカルを相界面に提示し、分散媒中での重合を開始することができる。さらに、過酸化ベンゾイルのようなラジカル開始剤は比較的緩徐にラジカルを発生する。この開始剤は、ビーズ形成に際して数時間の重合後ですら一部が消費されるにすぎない。この開始剤は容易にビーズの表面へ向かって移動し、ビーズの表面に露出したジビニルベンゼン部分のペンダントビニル基を活性化し、こうして反応がある期間進行した後に添加された他のモノマーのグラフト重合を開始する。したがって、フリーラジカルグラフティングはモノマー滴がポリマービーズ内へ移行する間に起きることができ、それにより生体適合性または血液適合性を表面コーティングとして付与するモノマーおよび/または架橋剤または低分子量オリゴマーが取り込まれる。
【0071】
[0084] 血液潅流デバイスおよび潅流デバイスは、ビーズ床を容器の内部に保持するために出口末端と入口末端の両方にある保持スクリーンまたは混合後のビーズを採集するための後続の保持スクリーンのいずれかを備えたフロースルー容器に充填されたポリマービーズのビーズ床からなる。血液潅流および潅流の操作は、全血、血漿または生理的流体を充填ビーズ床に導通することにより行なわれる。ビーズ床を通した潅流に際して、有毒分子は収着、蛇行路、および/または細孔捕獲により保持され、一方、残りの流体および無傷細胞成分は本質的に濃度が変化することなく通過する。
【0072】
[0085] ある他の態様において、インラインフィルターは、ビーズ床を容器の内部に保持するために出口末端と入口末端の両方にある保持スクリーンを備えたフロースルー容器内におけるポリマービーズの充填ビーズ床で構成される。生物学的流体を貯蔵バッグから
充填ビーズ床に重力により1回導通すると、その間に有毒分子は収着、蛇行路、および/または細孔捕獲により保持され、一方、残りの流体および無傷細胞成分は本質的に濃度が変化することなく通過する。
【0073】
[0086] 本発明に有用なあるポリマー(そのもの、またはさらなる修飾後のもの)は、重合性モノマーであるスチレン、ジビニルベンゼン、エチルビニルベンゼン、ならびにアクリレートおよびメタクリレートモノマーから製造されたマクロ多孔質ポリマー、たとえば以下に製造業者ごとに列記するものである。Rohm and Haas Company(現在はDow Chemical Companyの一部):マクロ多孔質ポリマー系収着材、たとえばAmberlite(商標) XAD-1、Amberlite(商標) XAD-2、Amberlite(商標) XAD-4、Amberlite(商標) XAD-7、Amberlite(商標) XAD-7HP、Amberlite(商標) XAD-8、Amberlite(商標) XAD-16、Amberlite(商標) XAD-16 HP、Amberlite(商標) XAD-18、Amberlite(商標) XAD-200、Amberlite(商標) XAD-1180、Amberlite(商標) XAD-2000、Amberlite(商標) XAD-2005、Amberlite(商標) XAD-2010、Amberlite(商標) XAD-761、およびAmberlite(商標) XE-305、ならびにクロマトグラフィーグレードの収着材、たとえばAmberchrom(商標) CG 71,s,m,c、Amberchrom(商標) CG 161,s,m,c、Amberchrom(商標) CG 300,s,m,c、およびAmberchrom(商標) CG 1000,s,m,c。Dow Chemical Company:Dowex(商標) Optipore(商標) L-493、Dowex(商標) Optipore(商標) V-493、Dowex(商標) Optipore(商標) V-502、Dowex(商標) Optipore(商標) L-285、Dowex(商標) Optipore(商標) L-323、およびDowex(商標) Optipore(商標) V-503。Lanxess(以前はBayer and Sybron):Lewatit(商標) VPOC 1064 MD PH、Lewatit(商標) VPOC 1163、Lewatit(商標) OC EP 63、Lewatit(商標) S 6328A、Lewatit(商標) OC 1066、およびLewatit(商標) 60/150 MIBK。Mitsubishi Chemical Corporation:Diaion(商標) HP 10、Diaion(商標) HP 20、Diaion(商標) HP 21、Diaion(商標) HP 30、Diaion(商標) HP 40、Diaion(商標) HP 50、Diaion(商標) SP70、Diaion(商標) SP 205、Diaion(商標) SP 206、Diaion(商標) SP 207、Diaion(商標) SP 700、Diaion(商標) SP 800、Diaion(商標) SP 825、Diaion(商標) SP 850、Diaion(商標) SP 875、Diaion(商標) HP 1MG、Diaion(商標) HP 2MG、Diaion(商標) CHP 55A、Diaion(商標) CHP 55Y、Diaion(商標) CHP 20A、Diaion(商標) CHP 20Y、Diaion(商標) CHP 2MGY、Diaion(商標) CHP 20P、Diaion(商標) HP 20SS、Diaion(商標) SP 20SS、Diaion(商標) SP 207SS。Purolite Company:Purosorb(商標) AP 250およびPurosorb(商標) AP 400、ならびにKaneka Corp. Lixelleビーズ。
【0074】
[0087] 本発明に有用な他のあるポリマー(そのもの、またはさらなる修飾後のもの)は、セルロース系多孔質材料である。そのような修飾には、フリーラジカルまたはS2タイプの化学により付加されたポリオールまたは双性イオン性基質と共に、アリール基ま
たはアルキル基を含む親油性基質の付加を含めることができる。
【0075】
[0088] 本開示の組成物により種々のタンパク質を吸着することができる。これらのタンパク質の幾つかおよびそれらの分子量を下記の表に示す。
【0076】
【表1】
【実施例
【0077】
[0089] 以下の実施例は例示のためのものであり、限定ではない。
実施例1:ベース収着材合成CY14175およびCY15077
[0090] 反応器セットアップ:4首ガラス蓋を、ステンレススチール製フランジクランプおよびPFTEガスケットを用いて3Lのジャケット付き円筒形ガラス反応器に取り付けた。蓋にPFTEスターラーベアリング、RTDアダプター、および水冷式還流冷却器を設置した。5つの60°アジテーターを備えたステンレススチール製撹拌シャフトをスターラーベアリングに通し、ディジタルオーバーヘッドスターラーに挿入した。RTDを対応するアダプターに通し、PolyStat循環式加熱冷却ユニットに接続した。適合する配管を用いて反応容器ジャケットの入口および出口をPolyStat上の適切なポートに接続した。蓋の未使用ポートは反応器装填のために用いられ、他のすべての時点で塞がれていた。
【0078】
[0091] 重合:水相および有機相の組成をそれぞれ下記の表Iおよび表IIに示す。それぞれPFTEコートした磁気撹拌バーを入れた2つの別個のエルレンマイヤーフラスコ内へ超純水をほぼ等分に分注した。85.0~89.0モルパーセントの加水分解度、お
よび20℃の4%水溶液中で23.0~27.0cPの粘度をもつポリ(ビニルアルコール)(PVA)を第1フラスコ内の水に分散させ、ホットプレート上で撹拌しながら80℃に加熱した。塩類(参照:表1,MSP、DSP、TSPおよび亜硝酸ナトリウム)を第2フラスコ内の水に分散させ、ホットプレート上で撹拌しながら80℃に加熱した。PolyStatから反応容器ジャケットを通る熱伝達流体の循環を開始し、流体温度を60℃に加熱した。PVAおよび塩類が溶解した時点で、ガラス漏斗を用いて両方の溶液を反応器へ一度に装填した。ディジタルオーバーヘッドスターラーの電源を入れ、有機相添加に際して適切な液滴サイズを形成する値にrpmを設定した。ケトル内の水相の温度を70℃に設定した。有機相は、過酸化ベンゾイル(BPO)を2Lエルレンマイヤーフラスコ内のジビニルベンゼン(DVB)に添加して完全に溶解するまで搖動することにより調製された。2,2,4-トリメチルペンタンおよびトルエンをフラスコに添加し、それを搖動して十分に混合した。反応器内の水相の温度が70℃に達した時点で、細首ガラス漏斗を用いて有機相を反応器に装填した。有機相を添加すると反応体積の温度は低下した。PolyStatについての温度プログラムを開始し、反応体積を30分間かけて60℃から77℃まで、30分間かけて77℃から80℃まで加熱し、80℃の温度を960分間保持し、そして60分間かけて20℃に冷却した。
【0079】
【表2】
【0080】
[0092] 仕上げ処理:反応器内の反応体積レベルをマークした。オーバーヘッドスターラー撹拌を停止し、反応器から残留液体をサイフォン排出し、反応器にマークまで室温の超純水を満たした。オーバーヘッドスターラー撹拌を再開し、スラリーを可能な限り速やかに70℃にまで加熱した。30分後に撹拌を停止し、残留液体をサイフォン排出した。ポリマービーズをこの方法で5回洗浄した。最終洗浄に際して、スラリー温度は室温に冷却された。最終洗浄の後、ポリマービーズを同じ方法で99%イソプロピルアルコール(IPA)により洗浄した。99% IPAをサイフォン排出し、70% IPAで置き換えた後、スラリーを清浄な4Lガラス容器内へ移した。別に明記しない限り、必要に応じてポリマーをステンレススチール管内で8時間、スチームストリッピングし、70% IPA中で再湿潤させ、DI水中へ移し、篩分けして300~600μmの直径をもつビーズ部分のみを採取し、乾燥に際してさらなる重量損失がみられなくなるまで100℃で乾燥させた。
【0081】
[0093] それぞれ窒素脱着等温線(nitrogen desorption isotherm)および水銀圧入式ポロシメーター測定(mercury intrusion porosimetry)により測定したポリマーCY141
75およびCY15077についての累積細孔容積データを、それぞれ表IIIおよびIVに示す。
【0082】
【表3-1】
【0083】
【表3-2】
【0084】
実施例2:ポリマー修飾CY15129
[0094] エポキシド化:50.8gの乾燥したベースポリマーCY14175を、TeflonコートしたアジテーターおよびRTDプローブを備えた1Lのジャケット付きガラス反応器に添加した。300mLの無水酢酸(99%)を、乾燥したベースポリマーを入れた反応器に添加した。混合物を100RPMで定常撹拌しながら5℃に冷却した。30mLの過酸化水素溶液(水中30%)を30分間かけて添加した。100RPMで撹拌しながら反応温度を10~15℃に24時間維持した。
【0085】
[0095] 仕上げ処理:反応混合物を酢酸で洗浄し、次いで反応上清のpHが中性になるまでDI水で洗浄した。次いでポリマーを乾燥に際してさらなる損失がみられなくなるまで80℃で乾燥させた。乾燥ポリマー収量は61.6gであった。
【0086】
[0096] 上記のエポキシド化操作は、1Lを超える反応体積にまで規模拡大すべきでない。目的とする中間化合物である過酢酸が過剰の無水酢酸と結合すれば過酸化ジアセチルの形成が起きる可能性がある。過酸化ジアセチルは衝撃感受性爆発性であることが知られている(http://cen.acs.org/articles/89/i2/Chemical-Safety-Synthesis-Procedure.html)。したがって、可能な場合には常に別のエポキシド化操作を使用すべきであることを強調する。
【0087】
[0097] 開環:20.0gの乾燥エポキシド官能化ポリマーを、Teflon被覆アジテーターおよびRTDプローブを備えた500mLのジャケット付きガラス反応器に添加
した。70mLの70%イソプロパノール(IPA)を反応器に装填し、混合物を100RPMで撹拌した。70mLの1M NaOH水溶液を徐々に添加した。反応温度を70℃に上昇させ、100RPMで撹拌しながら70℃に24時間保持した。
【0088】
[0098] 仕上げ処理:反応物を室温に冷却し、反応上清のpHが中性になるまでDI水で洗浄した。この操作の結果、1,2-ジオール基で官能化されたポリ(スチレン-co-ジビニルベンゼン)樹脂が得られた。
【0089】
[0099] 窒素脱着等温線により測定したポリマーCY15129についての累積細孔容積データを下記の表Vに示す。表VIは、XPSにより測定したポリマーCY15129についての原子濃度を示す。ポリマーCY15129についての対数差示的細孔容積プロットを添付の図1に提示する。
【0090】
[0100] 血栓形成性をuPTTアッセイにより測定した;その際、材料を陰性対照(血漿のみ)、陽性対照(ガラスビーズ)および基準ビーズと比較して、接触活性化活性の程度を判定した。uPTTアッセイにおいて、基準材料と比較した凝血塊形成の経時変化率%を決定し、次いで下記に従ってグループ分けした:<25% 内在凝血経路の活性化物質、25~49% 中等度の活性化物質、50~74% 緩和な活性化物質、75~100% 最小の活性化物質、および>100% 非活性化物質。ポリマーCY15129(97%)は最小の活性化物質であった。
【0091】
【表4】
【0092】
実施例3:ポリマー修飾CY15154
[0101] 20.05gの乾燥したベースポリマーCY15077を、Teflon被覆
アジテーターおよびRTDプローブを備えた500mLのジャケット付きガラス反応器に添加した。乾燥ポリマーをDI水中へ再湿潤させて、100mLのスラリーを反応器内で調製した。9.00gの双性イオン性中性メタクリレートモノマーである[(2-メタクリロイルオキシ)エチル]-ジメチル-3-(スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、および1.1gの過硫酸アンモニウムを、100mLのDI水に溶解し、ベースポリマースラリーを入れた反応器にその溶液を添加した。混合物を75℃に加熱し、100RPMで撹拌しながら75℃に24時間保持した。
【0093】
[0102] 仕上げ処理:反応混合物を室温に冷却し、反応上清のpHが中性になるまでDI水で洗浄した。この操作の結果、スルホベタイン官能基をもつポリ(スチレン-co-ジビニルベンゼン)樹脂が得られた。
【0094】
[0103] 水銀圧入式ポロシメーター測定により測定したポリマーCY15154についての累積細孔容積データを下記の表VIIに示す。表VIIIは、XPSにより測定したポリマーCY15154についての原子濃度を表わす。ポリマーCY15154についての対数差示的細孔容積プロットを添付の図2に提示する。
【0095】
[0104] 血栓形成性をuPTTアッセイにより測定した;その際、材料を陰性対照(血漿のみ)、陽性対照(ガラスビーズ)および基準ビーズと比較して、接触活性化活性の程度を判定した。uPTTアッセイにおいて、基準材料と比較した凝血塊形成の経時変化率%を決定し、次いで下記に従ってグループ分けした:<25% 内在凝血経路の活性化物質、25~49% 中等度の活性化物質、50~74% 緩和な活性化物質、75~100% 最小の活性化物質、および>100% 非活性化物質。ポリマーCY15154(89%)は最小の活性化物質であった。
【0096】
【表5】
【0097】
実施例4:ポリマー修飾CY16029
[0105] DI水中で湿潤させた200mLのベースポリマーCY14175を、Tef
lon被覆アジテーターおよびRTDプローブを備えた1000mLのジャケット付きガラス反応器に添加した。真空ポンプおよびフィルターチューブを用いて過剰の水を反応器から除去した。500mLの1.0M水酸化ナトリウムを反応器に添加した。混合物を50℃に加熱し、100RPMで撹拌しながら50℃に24時間保持した。
【0098】
[0106] 仕上げ処理:反応混合物を室温に冷却し、反応上清のpHが中性になるまでDI水で洗浄した。この操作の結果、ジオール官能基をもつポリ(スチレン-co-ジビニルベンゼン)樹脂が得られた。
【0099】
実施例5:ベース収着材合成CY15186
[0107] 反応器セットアップ:4首ガラス蓋を、ステンレススチール製フランジクランプおよびPFTEガスケットを用いて1Lのジャケット付き円筒形ガラス反応器に取り付けた。蓋にPFTEスターラーベアリング、RTDアダプター、および水冷式還流冷却器を設置した。4つの60°アジテーターを備えたステンレススチール製撹拌シャフトをスターラーベアリングに通し、ディジタルオーバーヘッドスターラーに挿入した。RTDを対応するアダプターに通し、PolyStat循環式加熱冷却ユニットに接続した。適合する配管を用いて反応容器ジャケットの入口および出口をPolyStat上の適切なポートに接続した。蓋の未使用ポートは反応器装填のために用いられ、他のすべての時点で塞がれていた。
【0100】
[0108] 重合:水相および有機相の組成をそれぞれ下記の表IXおよび表Xに示す。PFTEコートした磁気撹拌バーを入れたエルレンマイヤーフラスコ内へ超純水を添加した。85.0~89.0モルパーセントの加水分解度、および20℃の4%水溶液中で23.0~27.0cPの粘度をもつポリ(ビニルアルコール)(PVA)をフラスコ内の水に分散させ、ホットプレート上で撹拌しながら80℃に加熱した。PolyStatから反応容器ジャケットを通る熱伝達流体の循環を開始し、流体温度を60℃に加熱した。PVAが溶解した時点で、ガラス漏斗を用いて溶液を反応器へ装填した。ディジタルオーバーヘッドスターラーの電源を入れ、有機相添加に際して適切な液滴サイズを形成する値にrpmを設定した。ケトル内の水相の温度を70℃に設定した。有機相は、過酸化ベンゾイル(BPO)を1Lエルレンマイヤーフラスコ内のジビニルベンゼン(DVB)およびアリルグリシジルエーテル(AGE)に添加して完全に溶解するまで搖動することにより調製された。2,2,4-トリメチルペンタンおよびトルエンをフラスコに添加し、それを搖動して十分に混合した。反応器内の水相の温度が70℃に達した時点で、細首ガラス漏斗を用いて有機相を反応器に装填した。有機相を添加すると反応体積の温度は低下した。PolyStatについての温度プログラムを開始し、反応体積を30分間かけて60℃から77℃まで、30分間かけて77℃から80℃まで加熱し、80℃の温度を960分間保持し、そして60分間かけて20℃に冷却した。
【0101】
【表6】
【0102】
[0109] 仕上げ処理:反応器内の反応体積レベルをマークした。オーバーヘッドスターラー撹拌を停止し、反応器から残留液体をサイフォン排出し、反応器にマークまで室温の超純水を満たした。オーバーヘッドスターラー撹拌を再開し、スラリーを可能な限り速やかに70℃にまで加熱した。30分後に撹拌を停止し、残留液体をサイフォン排出した。ポリマービーズをこの方法で5回洗浄した。最終洗浄に際して、スラリー温度は室温に冷却された。最終洗浄の後、ポリマービーズを同じ方法で99%イソプロピルアルコール(IPA)により洗浄した。99% IPAをサイフォン排出し、70% IPAで置き換えた後、スラリーを清浄な2Lガラス容器内へ移した。別に明記しない限り、必要に応じてポリマーをステンレススチール管内で8時間、スチームストリッピングし、70% IPA中で再湿潤させ、DI水中へ移し、篩分けして300~600μmの直径をもつビーズ部分のみを採取し、乾燥に際してさらなる重量損失がみられなくなるまで100℃で乾燥させた。
【0103】
[0110] 水銀圧入式ポロシメーター測定により測定したポリマーCY15186についての累積細孔容積データを下記の表XIに示す。
【0104】
【表7】
【0105】
実施例6:ポリマー修飾CY16000
[0111] 開環:70% IPA中で湿潤させた100mLのポリマーCY15186を、Teflon被覆アジテーターおよびRTDプローブを備えた1Lのジャケット付きガラス反応器に添加した。300mLの1M NaOH水溶液を徐々に添加した。反応温度を80℃に上昇させ、100RPMで撹拌しながら80℃に24時間保持した。
【0106】
[0112] 仕上げ処理:反応物を室温に冷却し、反応上清のpHが中性になるまでDI水で洗浄した。この操作の結果、1,2-ジオール基で官能化されたポリ(アリルグリシジルエーテル-co-ジビニルベンゼン)樹脂が得られた。
【0107】
[0113] 水銀圧入式ポロシメーター測定により測定したポリマーCY16000についての累積細孔容積データを下記の表XIIに示す。表XIIIは、XPSにより測定したポリマーCY16000についての原子濃度を表わす。ポリマーCY16000についての対数差示的細孔容積プロットを添付の図3に提示する。
【0108】
[0114] 血栓形成性をuPTTアッセイにより測定した;その際、材料を陰性対照(血漿のみ)、陽性対照(ガラスビーズ)および基準ビーズと比較して、接触活性化活性の程度を判定した。uPTTアッセイにおいて、基準材料と比較した凝血塊形成の経時変化率%を決定し、次いで下記に従ってグループ分けした:<25% 内在凝血経路の活性化物質、25~49% 中等度の活性化物質、50~74% 緩和な活性化物質、75~100% 最小の活性化物質、および>100% 非活性化物質。ポリマーCY16000(84%)は最小の活性化物質であった。
【0109】
【表8-1】
【0110】
【表8-2】
【0111】
実施例7:ベース収着材合成CY16207
[0115] 反応器セットアップ:4首ガラス蓋を、ステンレススチール製フランジクランプおよびPFTEガスケットを用いて3Lのジャケット付き円筒形ガラス反応器に取り付けた。蓋にPFTEスターラーベアリング、RTDアダプター、および水冷式還流冷却器を設置した。5つの60°アジテーターを備えたステンレススチール製撹拌シャフトをスターラーベアリングに通し、ディジタルオーバーヘッドスターラーに挿入した。RTDを対応するアダプターに通し、PolyStat循環式加熱冷却ユニットに接続した。適合する配管を用いて反応容器ジャケットの入口および出口をPolyStat上の適切なポートに接続した。蓋の未使用ポートは反応器装填のために用いられ、他のすべての時点で塞がれていた。
【0112】
[0116] 重合:水相および有機相の組成をそれぞれ下記の表XIVおよび表XVに示す。それぞれPFTEコートした磁気撹拌バーを入れた2つの別個のエルレンマイヤーフラスコ内へ超純水をほぼ等分に分注した。85.0~89.0モルパーセントの加水分解度、および20℃の4%水溶液中で23.0~27.0cPの粘度をもつポリ(ビニルアルコール)(PVA)を第1フラスコ内の水に分散させ、ホットプレート上で撹拌しながら80℃に加熱した。塩類(参照:表1,MSP、DSP、TSPおよび亜硝酸ナトリウム)を第2フラスコ内の水に分散させ、ホットプレート上で撹拌しながら80℃に加熱した。PolyStatから反応容器ジャケットを通る熱伝達流体の循環を開始し、流体温度を60℃に加熱した。PVAおよび塩類が溶解した時点で、ガラス漏斗を用いて両方の溶液を反応器へ一度に装填した。ディジタルオーバーヘッドスターラーの電源を入れ、有機相添加に際して適切な液滴サイズを形成する値にrpmを設定した。ケトル内の水相の温度を60℃に設定した。有機相は、過酸化ベンゾイル(BPO)を2Lエルレンマイヤーフラスコ内のジビニルベンゼン(DVB)および酢酸ビニル(VA)に添加して完全に溶解するまで搖動することにより調製された。2,2,4-トリメチルペンタンおよびトルエンをフラスコに添加し、それを搖動して十分に混合した。反応器内の水相の温度が60℃に達した時点で、細首ガラス漏斗を用いて有機相を反応器に装填した。有機相を添加すると反応体積の温度は低下した。PolyStatについての温度プログラムを開始し、反応体積を30分間かけて50℃から67℃まで、30分間かけて67℃から70℃まで加熱し、70℃の温度を960分間保持し、そして60分間かけて20℃に冷却した。
【0113】
【表9】
【0114】
[0117] 仕上げ処理:反応器内の反応体積レベルをマークした。オーバーヘッドスターラー撹拌を停止し、反応器から残留液体をサイフォン排出し、反応器にマークまで室温の超純水を満たした。オーバーヘッドスターラー撹拌を再開し、スラリーを可能な限り速やかに70℃にまで加熱した。30分後に撹拌を停止し、残留液体をサイフォン排出した。ポリマービーズをこの方法で5回洗浄した。最終洗浄に際して、スラリー温度は室温に冷却された。最終洗浄の後、ポリマービーズを同じ方法で99%イソプロピルアルコール(IPA)により洗浄した。99% IPAをサイフォン排出し、70% IPAで置き換えた後、スラリーを清浄な4Lガラス容器内へ移した。別に明記しない限り、必要に応じてポリマーをステンレススチール管内で8時間、スチームストリッピングし、70% IPA中で再湿潤させ、DI水中へ移し、篩分けして300~600μmの直径をもつビーズ部分のみを採取し、次いで70% IPA中に保存した。
【0115】
実施例8:ポリマー修飾CY16083
[0118] 開環:70% IPA中で湿潤させた100mLのポリマーCY16207を、Teflon(商標)被覆アジテーターおよびRTDプローブを備えた1Lのジャケット付きガラス反応器に添加した。300mLの1M NaOH水溶液を徐々に添加した。反応温度を50℃に上昇させ、100RPMで撹拌しながら50℃に24時間保持した。
【0116】
[0119] 仕上げ処理:反応物を室温に冷却し、反応上清のpHが中性になるまでDI水で洗浄した。この操作の結果、ジオール基で官能化されたポリ(酢酸ビニル-co-ジビニルベンゼン)樹脂が得られた。
【0117】
[0120] 水銀圧入式ポロシメーター測定により測定したポリマーCY16083についての累積細孔容積データを下記の表XVIに示す。ポリマーCY16083についての対数差示的細孔容積プロットを添付の図4に提示する。
【0118】
【表10】
【0119】
実施例9:細孔構造のまとめおよび分類
[0121] 細孔サイズ、細孔サイズ分布および表面特性を含めた細孔構造は、多孔質材料の吸着特性にとってきわめて重要である。IUPACは、細孔をミクロポア(micropore)
、メソポア(mesopores)、およびマクロポア(macropore)に分類した;これらは吸着、触媒作用その他の領域で広く用いられている用語である。
【0120】
[0122] ミクロポアは2nmより小さい(<20Å)幅をもつ。
[0123] メソポアは2~50nm(20Å~500Å)の幅をもつ。
[0124] マクロポアは50nmより大きい(>500Å)幅をもつ。
【0121】
[0125] IUPACの定義のもとで、細孔サイズ(または細孔直径)は細孔の2つの対向壁間の距離であり、したがって円筒形細孔の直径、またはスリット形細孔の幅を表わす。IUPAC分類のほかに、用語、輸送細孔(transport pore)(250Åより大きい細孔直径をもつ)は、活性炭吸着の領域で用いられている。本出願における説明の目的で、用語“大型輸送細孔(large transport pore)”はマクロポアのサブグループとして2,000Åより大きい直径をもつ細孔を表わす;用語“容量細孔(capacity pore)”は、100Åより大きい直径をもつ細孔を表わし、小および中間サイズの生体分子およびタンパク質(50kDaまで)を吸着できる;用語“有効細孔(effective pore)”は、100~250Åの範囲内の直径をもつポアを表わし、それはメソポアのサブグループであり、小および中間サイズのタンパク質の吸着に最も有効な細孔であることが示された。
【0122】
[0126] メソポアは有用吸着部位であるが、マクロポアは吸着物(adsorbate)が内部吸
着部位に到達するための移動路を提供する。大型輸送細孔は、大型分子、たとえば大型のタンパク質、エンドトキシン、および他の大型トキシン分子に対して特に重要なよりいっそう有効な移動路を提供する。本発明は、吸着用途における特殊なニーズを満たすために、大型輸送細孔、一般的なマクロポア、メソポアおよびミクロポアを含めた広範囲の細孔サイズ分布を生成する方法を開示する。表XVIIに、タンパク質および生体分子の吸着に重要なIUPAC分類およびサイズ画分を含めた、本出願に開示するポリマー例の細孔サイズ分布をまとめる。
【0123】
【表11】
【0124】
実施例10:再循環モデルにおける血漿からのエンドトキシン除去
[0127] 20mLの熱不活性化したクエン酸加ヒト血漿に、Associates of Cape Cod(マサチューセッツ州イースト・ファルマス)から購入した3EU/mlのエンドトキシンをスパイクし、次いで血漿レザバーにスパイクした。エンドトキシンを含む血漿を撹拌プレート上で15分間混合し、1.5mLポリマーカラムにて2.5mL/分の流速で再循環した。無菌ピペットティップを用いてリザバーから試料を採集し、エンドトキシンを含まない水に1:20希釈した。すべての希釈試料を、Life Technologies,Corp.(ニューヨーク州グランドアイランド)からのPierce LAL Endotoxin Assayで試験した。修飾ポリマーCY15129、CY15154、CY16000、およびCY16029を用いた動的再循環モデルにおける血漿からのエンドトキシン除去についてのデータを添付の図5に示す。図6は、ポリマーCY15154およびそれの非修飾前駆ポリマーCY15077についてのエンドトキシン除去データを提示する。
【0125】
実施例11:再循環モデルにおけるウシ全血からのサイトカイン除去
[0128] 精製したタンパク質を300mLの3.8%クエン酸加ウシ全血(Lampi
re Biologicals)に予想臨床濃度で添加し、20mLのポリマーを充填したデバイスに140mL/mL分の流速で5時間、再循環した。タンパク質および初期濃度は下記のとおりであった:IL-6 3000pg/mLおよびTNF-α 800pg/mL。血漿を酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)により、製造業者の指示(R&D Systems)に従って分析した。ポリマーCY15129を用いた動的再循環モデルにおける全血からのサイトカイン除去についてのデータを添付の図7に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7