(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】モータ駆動装置および冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
H02P 25/18 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
H02P25/18
(21)【出願番号】P 2022505676
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2020010958
(87)【国際公開番号】W WO2021181641
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 公志
(72)【発明者】
【氏名】野木 雅也
(72)【発明者】
【氏名】駒崎 就哉
(72)【発明者】
【氏名】三浦 賢
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-176554(JP,A)
【文献】特開2019-062726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 4/00
H02P 21/00-25/03
H02P 25/04
H02P 25/08-31/00
H02P 6/00-6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに非接続状態の複数の相巻線を有するモータと、
前記各相巻線の一端への通電を制御する第1インバータと、
前記各相巻線の他端への通電を制御する第2インバータと、
前記各相巻線の他端の相互間に接続された開閉接点を有するリレーと、
前記リレーの開放により前記各相巻線の他端を非接続状態とし前記第1および第2インバータを互いに連係してスイッチングするオープン巻線モード、及び前記リレーの閉成により前記各相巻線の他端を相互接続して前記第1インバータをスイッチングするスター結線モードを、前記モータに流れる電流の値に応じて切替えるコントローラと、
を備え
、
前記コントローラは、前記スター結線モード時、前記モータに流れる電流が前記リレーの定格通電電流と同じまたはそれより小さい第2閾値まで上昇した場合、前記オープン巻線モードに切替える、
ことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記オープン巻線モード時、前記モータに流れる電流が前記第2閾値より小さい第1閾値以下の状態を所定時間にわたり継続した場合、前記スター結線モードに切替える、
ことを特徴とする請求項
1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記スター結線モード時、前記モータに流れる電流が前記リレーの定格通電電流と同じまたはそれより小さい第2閾値まで上昇した場合、および前記モータの回転数が第2設定値以上に上昇してその状態が所定時間にわたり継続した場合、前記オープン巻線モードに切替える、
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記オープン巻線モード時、前記モータに流れる電流が前記第2閾値より小さい第1閾値以下の状態でかつ前記モータの回転数が前記第2設定値より低い第1設定値以下の状態を所定時間にわたり継続した場合、前記スター結線モードに切替える、
ことを特徴とする請求項
3に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記モータの起動に際し前記オープン巻線モードを設定する、
ことを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載のモータ駆動装置を備えた冷凍サイクル装置であって、
前記コントローラは、当該冷凍サイクル装置の除霜運転の実行に際し、その除霜運転の開始前に前記モータに流れる電流にかかわらず前記オープン巻線モードを設定し、その設定状態を前記除霜運転が終了するまで継続する、
ことを特徴とする冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに非接続状態の複数の相巻線を有するモータを駆動するモータ駆動装置およびそのモータ駆動装置を備えた冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機等の冷凍サイクル装置に搭載される圧縮機の駆動モータとして、複数の相巻線を有する永久磁石同期モータが使用される。また、永久磁石同期モータ(DCブラシレスモータともいう)の一例として、複数の相巻線を互いに非接続状態とした構成のオープン巻線モータ(Open-Windings Motor)が知られている。
【0003】
このオープン巻線モータ(モータと略称する)を駆動するモータ駆動装置は、モータの各相巻線の一端への通電を制御する第1インバータ、モータの各相巻線の他端への通電を制御する第2インバータ、各相巻線の他端の相互間に接続される開閉器を備え、この開閉器の閉成により各相巻線をスター結線(星形結線ともいう)して第1インバータを単独でスイッチングするスター結線モード、及び開閉器の開放により各相巻線を非接続状態として第1および第2インバータを互いに連係してスイッチングするオープン巻線モードを、選択的に設定する。オープン巻線モードの設定によりモータを高回転数で駆動することができ、低回転数域でのスター結線モードの設定によりモータを高効率で駆動することができ、よって高回転数から低回転数まで幅広い運転範囲にわたりモータをできるだけ効率よく駆動することが可能となる。モータの運転範囲の拡大とモータ駆動装置の効率向上を両立させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スター結線モードとオープン巻線モードを切替える開閉器として、例えば機械的な開閉接点を有する機械式のリレーが使用される。このリレーには、適正な動作を保証するため、開閉接点を流れる電流についての上限値がある。この上限値は、一般的に定格通電電流や接点定格電流と呼ばれる(以下、定格通電電流という)。この定格通電電流を超える過電流がリレーの開閉接点に流れ続けると、リレーが故障する恐れがある。また、機械式のリレーには作動の回数に応じた寿命がある。この寿命はスター結線モードとオープン巻線モードの切替え回数が多いほど短くなる。
【0006】
本発明の実施形態の目的は、過電流がリレーの開閉接点に流れる不具合を防ぐことができ、しかもリレーの作動回数をできるだけ少なくすることができ、これによりリレーの寿命向上が図れる冷凍サイクル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のモータ駆動装置は、互いに非接続状態の複数の相巻線を有するモータと;前記各相巻線の一端への通電を制御する第1インバータと;前記各相巻線の他端への通電を制御する第2インバータと;前記各相巻線の他端の相互間に接続された開閉接点を有するリレーと;このリレーの開放により前記各相巻線の他端を非接続状態とし前記第1および第2インバータを互いに連係してスイッチングするオープン巻線モード、及び前記リレーの閉成により前記各相巻線の他端を相互接続して前記第1インバータをスイッチングするスター結線モードを、前記モータに流れる電流の値に応じて切替えるコントローラと;を備える。コントローラは、当該冷凍サイクル装置の除霜運転の実行に際し、その除霜運転の開始前に前記モータに流れる電流にかかわらず前記オープン巻線モードを設定し、その設定状態を前記除霜運転が終了するまで継続する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態のモータ駆動装置を備える冷凍サイクル装置の構成を示すブロック図。
【
図2】一実施形態のモータ駆動装置の構成を示すブロック図。
【
図3】一実施形態のモータ駆動装置におけるモータ回転数とモータ電流との関係をスター結線とオープン巻線のモード別に示す図。
【
図4】一実施形態のモータ駆動装置におけるモータ回転数と効率との関係をスター結線とオープン巻線のモード別に示す図。
【
図5】一実施形態のモータ駆動装置におけるモード切換条件を示す図。
【
図6】一実施形態のモータ駆動装置の制御を示すフローチャート。
【
図7】一実施形態に関わる冷凍サイクル装置の除霜準備から除霜開始および除霜終了までのモータ回転数の変化の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態の冷凍サイクル装置について図面を参照しながら説明する。冷凍サイクル装置の例として、複数の室外機および複数の室内機を互いに並列接続したいわゆるマルチタイプの空気調和機について説明する。空気調和機に限らず、ヒートポンプ式チラーユニットや冷凍機など他の冷凍サイクル装置への適用も可能である。
【0010】
図1に示すように、室外機Aに液側管C1およびガス側管C2を介して、例えば2台の室内機B1,B2が互いに並列状態で接続されている。そして、室外機Aおよび室内機B1,B2の相互間にデータ伝送用および制御用の信号ラインEが接続されている。これら室外機Aおよび室内機B1,B2の接続により、冷暖房を行うマルチタイプの冷凍サイクル装置が構成される。この冷凍サイクル装置では、室外機Aが全体制御用の親機として機能し、室内機B1,B2が親機からの指示に従って動作する子機として機能する。
【0011】
室外機Aは、圧縮機1、四方弁2、室外熱交換器3、膨張弁(減圧器)4、アキュームレータ5、室外ファン6、室外温度センサ7、熱交換器温度センサTe、室外コントローラ8、および本実施形態のモータ駆動装置9を備える。冷房運転時、実線矢印で示すように、室内機B1,B2からガス側管C2に流れるガス冷媒が四方弁2およびアキュームレータ5を通って圧縮機1に吸込まれ、その圧縮機1で圧縮され吐出されるガス冷媒が四方弁2を通って室外熱交換器3(凝縮器)に流れ、その室外熱交換器3で外気と熱交換して凝縮する冷媒が膨張弁4および液側管C1を通って室内機B1,B2へ流れる。暖房運転時、四方弁2の流路が切替えられることにより、室内機B1,B2から液側管C1に流れる液冷媒が膨張弁4を通って室外熱交換器3(蒸発器)に流れ、その室外熱交換器3で外気と熱交換して気化する冷媒が四方弁2およびアキュームレータ5を通って圧縮機1に吸込まれ、その圧縮機1で圧縮され吐出されるガス冷媒が四方弁2およびガス側管C2を通って室内機B1,B2へ流れる。
【0012】
なお、暖房運転時、蒸発器として機能する室外熱交換器3の表面に徐々に霜が付着しそのままでは室外熱交換器3の熱交換量が減少する。対策として、室外コントローラ8は、室外熱交換器3の温度を熱交換器温度センサTeで検知し、その検知温度から室外熱交換器3の着霜量を監視し、着霜量が増えた場合は室外熱交換器3の除霜が必要であるとの判断の下に、モータ回転数Nを下降させる除霜準備に入り、モータ回転数Nが所定値に低下したところで四方弁2の流路を除霜用に切替えつつモータ回転数Nを高回転数域まで上昇させる除霜運転を開始し、室外熱交換器3に付いた霜を冷媒の熱で除去する。そして、室外コントローラ8は、熱交換器温度センサTeの検知温度に基づいて室外熱交換器3の着霜状態を監視し、着霜がなくなった時点でモータ回転数Nを下降させ、モータ回転数Nが所定値に低下したところで四方弁2の流路を元の暖房用に戻して除霜運転を終了する。また、室外コントローラ8は、除霜が必要と判断した時点で除霜要の旨をモータ駆動装置9に通知し、この通知に伴い上記除霜準備に入るとともに、除霜運転を終了した時点でその旨をモータ駆動装置9に通知する。
【0013】
室内機B1,B2は、それぞれ、流量調整弁11、室内熱交換器12、室内ファン13、室内温度センサ14、および室内コントローラ15を含む。冷房運転時、実線矢印で示すように、室外機Aから液側管C1に流れる液冷媒が流量調整弁11を通って室内熱交換器(蒸発器)12に流れ、その室内熱交換器12で室内空気と熱交換して気化する冷媒がガス側管C2を通って室外機Aへ戻る。暖房運転時、室外機Aからガス側管C2に流れるガス冷媒が室内熱交換器(凝縮器)12に流れ、その室内熱交換器12で室内空気と熱交換して凝縮する冷媒が液側管C1を通って室外機Aへ戻る。流量調整弁11は、供給される駆動電圧パルスの数に応じて開度が全閉から全開まで連続的に変化するパルスモータバルブ(PMV)である。室内ファン13は、室内空気を吸込んで室内熱交換器12に送る。室内温度センサ14は、室内ファン13により吸込まれる室内空気の流路に配置され、その室内空気の温度Taを検知する。室内コントローラ15は、室内温度センサ14の検知温度Taと予め設定される室内設定温度Tsとの差ΔTaを空調負荷として検出し、その空調負荷ΔTaに応じて流量調整弁11の開度を制御するとともに、その空調負荷ΔTaを信号ラインEにより室外コントローラ8に通知する。
【0014】
室外コントローラ8は、室内機B1,B2から通知される空調負荷ΔTaの合計負荷に対応する能力を室外機Aが発揮できるよう圧縮機1や室外ファン6の回転数等を制御する。
【0015】
圧縮機1は、
図2に示すモータ1Mを駆動モータとして圧縮部と共に密閉ケースに収容した密閉型圧縮機である。モータ1Mは、三相永久磁石同期モータであって、かつ互いに非接続状態の複数の相巻線Lu,Lv,Lwを有するいわゆるオープン巻線モータ(Open-Windings Motor)である。相巻線Lu,Lv,Lwは、低回転数域(低・中回転数域ともいう)で効率が向上するよう、細径の銅線を高い密度で多く巻回して構成される。
【0016】
室外機A1~A3のモータ駆動装置9は、
図2に示す駆動回路9aおよびコントローラ9bを含む。駆動回路9aは、三相交流電源50の交流電圧を全波整流して平滑し出力する直流電源部55、この直流電源部55の出力端とオープン巻線モータ1Mの相巻線Lu,Lv,Lwの一端との間の通電を制御するインバータ(第1インバータまたはマスタインバータともいう)30、および上記直流電源部55の出力端とオープン巻線モータ1Mの相巻線Lu,Lv,Lwの他端との間の通電を制御するインバータ(第2インバータまたはスレーブインバータともいう)40を含む。直流電源55をインバータ30,40の共通の直流電源とする電源共通方式を採用している。
【0017】
インバータ30は、スイッチング素子たとえばIGBT31,32を直列接続しそのIGBT31,32の相互接続点がオープン巻線モータ1Mの相巻線Luの一端に接続されるU相直列回路、IGBT33,34を直列接続しそのIGBT33,34の相互接続点がオープン巻線モータ1Mの相巻線Lvの一端に接続されるV相直列回路、IGBT35,36を直列接続しそのIGBT35,36の相互接続点がオープン巻線モータ1Mの相巻線Lwの一端に接続されるW相直列回路を含み、直流電源55の正側出力端から相巻線Lu,Lv,Lwの一端への通電および相巻線Lu,Lv,Lwの一端から直流電源55の負側出力端への通電をIGBT31~36のスイッチングにより制御する。IGBT31~36には、回生用ダイオード(フリー・ホイール・ダイオードともいう)31a~36aが逆並列接続されている。
【0018】
インバータ40は、IGBT41,42を直列接続しそのIGBT41,42の相互接続点がオープン巻線モータ1Mの相巻線Luの他端に接続されるU相直列回路、IGBT43,44を直列接続しそのIGBT43,44の相互接続点がモータ1Mの相巻線Lvの他端に接続されるV相直列回路、IGBT45,46を直列接続しそのIGBT45,46の相互接続点がオープン巻線モータ1Mの相巻線Lwの他端に接続されるW相直列回路を互いに並列接続し、直流電源55の正側出力端から相巻線Lu,Lv,Lwの他端への通電および相巻線Lu,Lv,Lwの他端から直流電源55の負側出力端への通電をIGBT41~46のスイッチングにより制御する。IGBT41~46には、回生用ダイオード41a~46aが逆並列接続されている。
【0019】
なお、インバータ30は、実際には、U相・V相・W相の上記3つの直列回路を互いに並列接続してなる主回路と、この主回路のIGBT31~36を駆動する駆動回路などの周辺回路とを、単一のパッケージに収納したモジュールいわゆるIPM(Intelligent Power Module)である。インバータ40も、同様の構成のIPMが使用される。
【0020】
モータ1Mの相巻線Luの他端と相巻線Lvの他端との相互間に、機械式のリレー51の常開形の開閉接点(リレー接点という)51aが接続されている。モータ1Mの相巻線Lvの他端と相巻線Lwの他端との相互間に、機械式のリレー52の常開形の開閉接点(リレー接点という)52aが接続されている。リレー51,52は、コントローラ9bにより、互いに同期した状態で付勢(通電オン)と消勢(通電オフ)が制御される。リレー51,52が付勢されるとリレー接点51a,52aが閉成し、相巻線Lu,Lv,Lwの他端が相互接続されて相巻線Lu,Lv,Lwがスター結線状態となる。リレー51,52が消勢されるとリレー接点51a,52aが開放し、相巻線Lu,Lv,Lwが非接続状態つまり電気的に分離したオープン巻線状態となる。
【0021】
リレー51,52には、その適正な動作を保つため、リレー接点51a,52aを流れる電流についての上限値いわゆる定格通電電流がある。定格通電電流を超える過電流がリレー接点51a,52aに流れると、リレー51,52が故障する可能性が高くなる。定格通電電流の大きなリレー51,52はサイズが大きくなるとともに高価となるため、できれば定格通電電流の小さなリレーを使うことが望ましい。また、リレー接点51a,52aの開閉回数がリレー51,52の寿命に大きく影響する。すなわち、リレー接点51a,52aの開閉回数が多くなると、リレー51,52が寿命を迎えて故障してしまう。
【0022】
インバータ30と相巻線Lu,Lv,Lwの一端との間の3つの通電ラインに電流センサ53u,53v,53wが配置され、これら電流センサ53u,53v,53wの出力信号がコントローラ9bに送られる。電流センサ53u,53v,53wは、相巻線Lu,Lv,Lwに流れる電流(モータ電流という)Iu,Iv,Iwを検知する。
【0023】
コントローラ9bは、後述のスター結線モード時はモータ電流Iからモータ1Mの回転数を推定しその推定回転数が室外コントローラ8からの指令に応じた目標回転数となるようインバータ30の単独のスイッチングを制御するセンサレス・ベクトル制御を実行し、後述のオープン巻線モード時は上記推定回転数が目標回転数となるようインバータ30,40のスイッチングを制御するオープン巻線モードのセンサレス・ベクトル制御を実行するもので、制御の中枢となる主制御部60、電流検出部61、リレー駆動部62、表示部63、リレー51,52などを含む。電流検出部61は、電流センサ53u,53v,53wで検知されるモータ電流Iu,Iv,Iwのそれぞれの瞬時値を検出する。モータ電流Iu,Iv,Iwのそれぞれ瞬時値のことをモータ電流Iという。リレー駆動部62は、主制御部60からの指令に応じてリレー51,52を付勢および消勢する。主制御部60は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路により構成され、室外コントローラ8からの指令および電流検出部62の検出結果などに応じてリレー接点51a,52aの開閉およびインバータ30,40のスイッチングを制御する。
【0024】
とくに、主制御部60は、リレー接点51a,52aの開放により相巻線Lu,Lv,Lwの他端を非接続状態としインバータ30,40を互いに連係してスイッチングするオープン巻線モード及びリレー接点51a,52aの閉成により相巻線Lu,Lv,Lwの他端を相互接続してインバータ30を単独でスイッチングするスター結線モードを少なくともモータ電流Iの値に応じて切替えるもので、この切替えに関する主要な機能として回転数検出部60aおよび第1,第2,第3制御部60b~60dを含む。
【0025】
回転数検出部60aは、インバータ30,40のスイッチング状態、および相巻線Lu,Lv,Lwの各モータ電流Iのうちいずれか1つのモータ電流Iに基づき、モータ1Mの回転数(速度)Nを検出(推定)する。以下、モータ1Mの回転数Nのことをモータ回転数Nという。
【0026】
第1制御部60bは、モータ1Mの起動に際し、オープン巻線モードを設定し、モータ回転数Nが高回転数域の所定値まで上昇するようインバータ30,40のスイッチングを制御するとともに、モータ回転数Nが上記所定値まで上昇したところで、一旦、圧縮機1中の潤滑油の油面の安定性を確保するため、モータ回転数Nが1分程度の所定時間にわたり上記所定値を保つようインバータ30,40のスイッチングを制御する。
【0027】
第2制御部60cは、第1制御部60bの制御に続き、モータ回転数Nが室外コントローラ8から指示される能力に対応する目標回転数(目標速度)Ntとなるようオープン巻線モードでのインバータ30,40のスイッチングを制御する。とくに、第2制御部60cは、リレー51,52の定格通電電流と同じまたはそれよりわずかに小さい第2閾値I2、およびその第2閾値I2より小さい第1閾値I1を内部メモリに記憶しており、この閾値I1,I2に基づいて次の(1)~(3)の制御を実行する。
【0028】
(1)スター結線モード時、モータ電流Iのピーク値が第2閾値I2まで上昇した場合、モータ回転数Nにかかわらず、モータ駆動を続けながら直ちにリレー接点51a,52aを開放してオープン巻線モードに切替え、切替えが完了したところでモータ回転数Nが目標回転数Ntとなるようインバータ30,40のスイッチングを制御する。すなわち、モータ電流Iのピーク値が閾値I2まで上昇した際にリレー接点51a,52aが閉成した状態のスター結線モードのままではリレー接点51a,52aに過電流が流れる可能性があるので、モータ回転数Nにかかわらず直ちにオープン巻線モードに切替える。リレー接点51a,52aを開放するオープン巻線モードであれば、そもそもリレー接点51a,52aに電流が流れないので、モータ1Mの駆動を続けながら、過電流によるリレー51,52の故障を防ぐことができる。
【0029】
(2)スター結線モード時、モータ電流Iのピーク値が第2閾値I2よりも低く、モータ回転数Nが第2設定値N2以上の高速度域に上昇してその状態が第2所定時間t2s(例えば1分間)にわたり継続した場合、上記同様、モータ駆動を続けながら直ちにリレー接点51a,52aを開放してオープン巻線モードに切替え、モータ回転数Nが目標回転数Ntとなるようインバータ30,40のスイッチングを制御する。すなわち、モータ回転数Nが第2設定値N2以上の高回転数域にあれば2つのインバータ30,40を動作させるオープン巻線モードの方がモータ駆動に必要な高レベルの電圧を得られて効率もよい点を考慮し、オープン巻線モードに切替える。ただし、空調負荷等の変動に伴いモータ回転数Nおよびモータ電流Iが頻繁に変動するおそれがあるので、モータ回転数Nおよびモータ電流Iに変動があってもその変動が収束するまでに要する少なくとも第2所定時間t2sは、スター結線モードからオープン巻線モードへの切替えを待つようにしている。これにより、リレー接点51a,52aの頻繁な開閉を防ぐことができ、ひいてはリレー接点51a,52aの開閉回数を減少させることができ、リレー51,52の長寿命化が図れる。
【0030】
(3)オープン巻線モード時、モータ電流Iのピーク値が第1閾値I1以下である状態が第1所定時間(例えば20分間)t1sにわたり継続した場合、モータ駆動を続けながらリレー接点51a,52aを閉成してスター結線モードに切替え、切替えが完了したところでモータ回転数Nが目標回転数Ntとなるようインバータ30のスイッチングを制御する(インバータ40のスイッチングは停止)。具体的には、オープン巻線モード時、モータ電流Iのピーク値が第1閾値I1以下である状態かつモータ回転数Nが第2設定値N2より低い第1設定値以下の低回転数域に存する状態が第1所定時間t1sにわたり継続した場合、モータ駆動を続けながらリレー接点51a,52aを閉成してスター結線モードに切替え、モータ回転数Nが目標回転数Ntとなるようインバータ30のスイッチングを制御する。すなわち、モータ電流Iのピーク値が第1閾値I1以下の状態に第1所定時間t1s以上にわたり継続的に収まる状態にあれば、リレー接点51a,52aを閉成するスター結線モードを設定してもリレー接点51a,52aに過電流が流れる心配がない点、またモータ回転数Nが第1設定値N1以下の低回転数域に第1所定時間t1sにわたり継続的に収まる状態にあれば、1つのインバータ30のみ動作させる高効率のスター結線モードでもモータ駆動に十分なレベルの電圧が得られる点を考慮し、スター結線モードに切替える。
【0031】
なお、オープン巻線モードからスター結線モードへ切替えの判定の基準である第1閾値I1をスター結線モードからオープン巻線モードへの切替えの判定基準である第2閾値I2よりも低く設定しているのは、オープン巻線モードからスター結線モードに切替えた場合、モータ1Mにおけるロータ軸上の界磁軸(d軸)座標に換算された界磁成分電流(d軸電流)の大きさなどの影響から、同じモータ回転数Nで駆動していてもスター結線モードの方がオープン巻線モード時よりもモータ電流Iが大きくなることに対処している。つまり、第1閾値I1を第2閾値I2よりも低く設定しておくことで、オープン巻線モードからスター結線モードに切替えた後、モータ電流Iのピーク値がすぐに第2閾値I2まで上昇してスター結線モードからオープン巻線モードに切替わる不具合を未然に防ぐことができる。この点でも、リレー接点51a,52aの開閉回数を減少させることができる。
【0032】
図3は、モータ回転数Nと電源電流Isとの関係をスター結線モードとオープン巻線モードのモード別に示している。モータ回転数Nが低いときはスター結線モード時の電源電流Isの方がオープン巻線モード時の電源電流Isよりも少し低くなりスター結線モード時の方が効率が良い。モータ回転数Nがそこから上昇するのに伴い、スター結線モード時の電源電流Isは速い速度で上昇し、オープン巻線モード時の電源電流Isはゆっくり上昇する。この際、スター結線モード時はモータ電流Iが高くなってしまうとともに、モータ1Mの逆起電力が大きくなってしまい、さらなる高回転数でモータ1Mを駆動することができなくなる。
図4は、モータ回転数Nと効率との関係をスター結線モードとオープン巻線モードのモード別に示している。モータ回転数Nが低いときはスター結線モードの方がオープン巻線モードよりも効率が高く、モータ回転数Nが高くなるとオープン巻線モードの方がスター結線モードよりも効率が高くなる。
【0033】
この
図3および
図4のモータ1Mの特性を考慮し、モータ電流Iがリレー51,52の定格通電電流を超えない範囲でできるだけ高い効率を得るための
図5に示すモード切換条件がコントローラ9bの第2制御部60cに格納されている。
【0034】
上記第3制御部60dは、室外コントローラ8による除霜運転の実行に際し、その除霜運転の開始前にモータ電流Iにかかわらずオープン巻線モードを設定し、その設定状態を除霜運転が終了するまで継続する。具体的には、第3制御部60dは、除霜要の旨の通知を室外コントローラ8から受けた時点、つまり四方弁2の流路が切替わって除霜運転が開始となる前の除霜準備の時点で、モータ電流Iにかかわらずオープン巻線モードを設定し、モータ回転数Nが室外コントローラ8からの指令に応じた除霜運転用の目標回転数Ntとなるようインバータ30,40のスイッチングを制御し、このモータ電流Iにかかわらないオープン巻線モードの設定状態を室外コントローラ8から除霜運転の終了通知を受けるまで継続する。
【0035】
つぎに、コントローラ9bが実行する制御を
図6のフローチャートを参照しながら説明する。フローチャート中のステップS1,S2…については単にS1,S2…と略称する。
【0036】
[モータ1Mの起動時]
室外コントローラ8から運転開始指令を受けた場合(S1のYES)、コントローラ9bは、タイムカウントt1,t2をそれぞれ“0”に初期化するとともに(S2)、リレー接点51a,52aの開放により相巻線Lu,Lv,Lwの他端を非接続状態としてインバータ30,40をスイッチングするオープン巻線モードを設定する(S3)。モータ1Mの停止時はリレー51,52の消勢(通電オフ)により常開形のリレー接点51a,52aがもともと開放状態にあって、相巻線Lu,Lv,Lwが互いに非接続状態となっているので、リレー接点51a,52aの作動を要することなくオープン巻線モードを設定することができる。
【0037】
このオープン巻線モードの設定に伴い、コントローラ9bは、室外コントローラ8から指示される能力に見合う目標回転数Ntを設定し(S4)、モータ回転数Nがその目標回転数Ntとなるようインバータ30,40のスイッチングを制御する(S5)。これにより、モータ1Mが起動する。この起動時の目標回転数Ntの設定およびスイッチング制御は、モータ回転数Nを高回転数域の所定値まで上昇させてその状態を1分程度の所定時間にわたり保つ制御を含む。
【0038】
オープン巻線モード時に形成される電流経路の一部を
図2に破線で示す。まず、インバータ30のIGBT31がオンしてインバータ40のIGBT42がオン,オフを繰返すとともに、インバータ40のIGBT43,45が共にオンしてインバータ30のIGBT34,36が互いに同期してオン,オフを繰返す。これにより、破線矢印で示すように、直流電源55の正側出力端からIGBT31を通って相巻線Luに電流が流れ、その相巻線Luを経た電流がIGBT42を通って直流電源55の負側出力端に流れるとともに、直流電源55の正側出力端からIGBT43,45を通って相巻線Lv,Lwに電流が流れ、その相巻線Lv,Lwを経た電流がIGBT34,36を通って直流電源55の負側出力端に流れる。次に、インバータ30のIGBT33がオンしてインバータ40のIGBT44がオン,オフを繰返すとともに、インバータ40のIGBT41,45が共にオンしてインバータ30のIGBT32,36が互いに同期してオン,オフを繰返す。これにより、直流電源55の正側出力端からIGBT33を通って相巻線Lvに電流が流れ、その相巻線Lvを経た電流がIGBT44を通って直流電源55の負側出力端に流れるとともに、直流電源55の正側出力端からIGBT41,45を通って相巻線Lu,Lwに電流が流れ、その相巻線Lu,Lwを経た電流がIGBT32,36を通って直流電源55の負側出力端に流れる。次に、インバータ30のIGBT35がオンしてインバータ40のIGBT46がオン,オフを繰返すとともに、インバータ40のIGBT41,43が共にオンしてインバータ30のIGBT32,34が互いに同期してオン,オフを繰返す。これにより、直流電源55の正側出力端からIGBT35を通って相巻線Lwに電流が流れ、その相巻線Lwを経た電流がIGBT46を通って直流電源55の負側出力端に流れるとともに、直流電源55の正側出力端からIGBT41,43を通って相巻線Lu,Lvに電流が流れ、その相巻線Lu,Lvを経た電流がIGBT32,34を通って直流電源55の負側出力端に流れる。これら3パターンの電流経路が順に切替わることにより、モータ1Mのロータが回転する。
【0039】
このオープン巻線モードの設定により、スター結線モード時の約√3倍の電圧を相巻線Lu,Lv,Lwに印加することができ、よって運転開始時の高空調負荷に対応する高回転数域へとモータ回転数Nを効率よく上昇させることが可能となる。とくに、空気調和装置の運転開始時は、空調負荷が高いだけでなく、室内ファン13が動き始めたばかりで新鮮な室内空気が室内温度センサ14にうまく流れないため室内温度検知が不安定な状態にあって、空調負荷を的確に捕らえることが難しい。このような運転開始時の状況では、リレー51,52を付勢せずリレー接点51a,52aを開放したままのオープン巻線モードを初めから設定してモータ1Mの回転数Nを高回転数域まで上昇させるほうが、リレー51,52を付勢してリレー接点51a,52aを閉成するスター結線モードを低回転数域で設定し、その後の高回転数域でオープン巻線モードに移行する場合よりも、リレー接点51a,52aの作動回数を確実に1回は少なくすることができる。つまり、リレー接点51a,52aの作動回数を少なく抑えながら、不安定な高空調負荷に対処し得る十分な空調能力を発揮することが可能となる。
【0040】
[モータ1Mの起動後]
上記オープン巻線モードによるモータ1Mの起動に伴い、コントローラ9bは、室外コントローラ8から除霜要の通知があるか確認する(S6)。除霜要の通知がない場合(S6のNO)、コントローラ9bは、現時点でオープン巻線モードを設定しているので(S10のYES)、モータ電流Iのピーク値が第1閾値I1以下に収まっていて(S11のYES)、かつモータ回転数Nが設定値N1以下に下降していれば(S12のYES)、タイムカウントt1を開始し(S13)、そのタイムカウントt1と所定時間(20分間)t1sとを比較する(S15)。
【0041】
タイムカウントt1が所定時間t1sに満たない間(S15のNO)、コントローラ9bは、室外コントローラ8からの運転停止指令を確認する(S25)。運転停止指令がなければ(S25のNO)、コントローラ9bは、上記S4に戻って目標回転数Ntを設定し(S4)、モータ回転数Nがその目標回転数Ntとなるようインバータ30,40のスイッチングを制御する(S5)。続いて、コントローラ9bは、除霜要の通知がなければ(S6のNO)、上記S10からの判定を繰り返す。
【0042】
上記S11の判定においてモータ電流Iのピーク値が第1閾値I1以下の領域から第1閾値I1超の領域に上昇した場合(S11のNO)、あるいは上記S11の判定においてモータ回転数Nが設定値N1以下の領域から設定値N1超の領域に上昇した場合(S12のNO)、コントローラ9bは、タイムカウントt1を“0”にクリアし(S14)、そのタイムカウントt1と所定時間t1sとを比較する(S15)。
【0043】
上記S11の判定においてモータ電流Iのピーク値が第1閾値I1以下に収まったまま(S11のYES)、しかも上記S12の判定においてモータ回転数Nが設定値N1以下に下降したまま(S12のYES)、タイムカウントt1が続いてそのタイムカウントt1が所定時間t1sに達した場合(S13,S15のYES)、コントローラ9bは、これまでのオープン巻線モードからスター結線モードに切替え(S16)、かつタイムカウントt1を“0”にクリアする(S17)。そして、コントローラ9bは、運転停止指令がなければ(S25のNO)、上記S4に戻って目標回転数Ntを設定し(S4)、モータ回転数Nがその目標回転数Ntとなるようインバータ30のスイッチングを制御する(S5)。
【0044】
続いて、コントローラ9bは、除霜要の通知がなければ(S6のNO)、現時点で設定しているのはスター結線モードなので(S10のNO)、モータ電流Iのピーク値が第2閾値I2未満であることを前提に(S18のNO)、モータ回転数Nが設定値N2以上であるか否かを判定する(S19)。モータ回転数Nが設定値N2以上の場合(S19のYES)、コントローラ9bは、タイムカウントt2を開始し(S20)、そのタイムカウントt2と所定時間(1分間)t2sとを比較する(S22)。
【0045】
タイムカウントt1が所定時間t1sに満たない間(S22のNO)、コントローラ9bは、運転停止指令がなければ(S25のNO)、上記S4に戻って目標回転数Ntを設定し(S4)、モータ回転数Nがその目標回転数Ntとなるようインバータ30のスイッチングを制御する(S5)。続いて、コントローラ9bは、除霜要の通知がなければ(S6のNO)、上記S10からの判定を繰り返す。
【0046】
上記S18の判定においてモータ電流Iのピーク値が第2閾値I2未満という前提条件が満たされたまま(S18のNO)、しかも上記S19の判定においてモータ回転数Nが設定値N2以上に上昇したまま(S19のYES)、タイムカウントt2が続いてそのタイムカウントt2が所定時間t2sに達した場合(S20,S22のYES)、コントローラ9bは、これまでのスター結線モードからオープン巻線モードに切替え(S23)、かつタイムカウントt2を“0”にクリアする(S24)。そして、コントローラ9bは、運転停止指令がなければ(S25のNO)、上記S4に戻って目標回転数Ntを設定し(S4)、モータ回転数Nがその目標回転数Ntとなるようインバータ30,40のスイッチングを制御する(S5)。続いて、コントローラ9bは、除霜要の通知がなければ(S6のNO)、上記S10からの判定を繰り返す。
【0047】
上記S18の判定においてモータ電流Iのピーク値が第2閾値I2未満という前提条件が満たされたままでも(S18のNO)、上記S19の判定においてモータ回転数Nが設定値N2未満の領域に下降した場合(S19のNO)、コントローラ9bは、タイムカウントt1を“0”にクリアし(S21)、そのタイムカウントt1と所定時間t1sとを比較する(S22)。
【0048】
ただし、上記S18の判定においてモータ電流Iのピーク値が第2閾値I2まで上昇すると(S18のYES)、リレー接点51a,52aに定格通電電流を超える過電流が流れ続けてしまう可能性があるので、コントローラ9bは、直ちに、スター結線モードからオープン巻線モードに切替える(S23)。リレー接点51a,52aを開放するオープン巻線モードではそもそもリレー接点51a,52aに電流が流れないので、過電流によるリレー51,52への悪影響を回避することができる。
【0049】
上記S6の判定において、除霜要の通知がある場合(S6のYES)、コントローラ9bは、モータ電流Iにかかわらずオープン巻線モードを強制的に設定し(S7)、モータ回転数Nが室外コントローラ8からの指令に応じた除霜運転用の目標回転数Ntとなるようそのインバータ30,40のスイッチングを制御する(S8)。そして、コントローラ9bは、室外コントローラ8からの除霜運転の終了通知を確認する(S9)。終了通知がなければ(S9のNO)、コントローラ9bは、上記S8のスイッチングの制御を繰り返す(S8)。
【0050】
除霜要の通知で除霜準備が始まり、続いて除霜運転が実行され終了するまでのモータ回転数Nの変化の例を
図7に示している。負荷が大きくなる除霜運転中はモータ回転数Nが高回転数域に達するので、除霜運転の開始前に予めオープン巻線モードを設定しておくことで、安定かつ確実な除霜運転が可能となる。
【0051】
[まとめ]
要するに、オープン巻線モード時、モータ電流Iのピーク値がリレー51,52の定格通電電流より小さい第1閾値I1以下の状態を所定時間t1sにわたり継続する状態にあれば、スター結線モードに切替えてもリレー接点51a,52aに過電流が流れる心配がない点を考慮し、かつモータ回転数Nが設定値N1以下の低回転数域に所定時間t1sにわたり継続して収まる状態にあれば1つのインバータ30のみ動作させる高効率のスター結線モードに切替えてもモータ駆動に十分なレベルの電圧が得られる点を考慮し、スター結線モードに切替える。
【0052】
スター結線モード時、モータ電流Iのピーク値が第2閾値I2未満という前提の下、モータ回転数Nが設定値N2以上の高回転数域に所定時間t2s以上にわたり収まる状態にあれば、2つのインバータ30,40を動作させるオープン巻線モードの方がより高効率を得られることから、オープン巻線モードに切替える。
【0053】
ただし、スター結線モード時、モータ電流Iのピーク値が第2閾値I2まで上昇した場合には、効率よりもリレー接点51a,52aにおける過電流防止を優先するべく、リレー接点51a,52aに電流が流れないオープン巻線モードに直ちに切替える。
【0054】
したがって、過電流がリレー接点51a,52aに流れる不具合を防ぎながら、できるだけ高い効率のモータ駆動を行うことができる。過電流がリレー接点51a,52aに流れないので、リレー接点51,52の寿命向上が図れる。
【0055】
オープン巻線モードとスター結線モードの切替えが頻繁に繰り返されないので、リレー51,52の作動回数をできるだけ少なく抑えることができる。この点でもリレー接点51,52の寿命が向上する。
【0056】
[変形例]
上記実施形態では、モータ電流値Iとして瞬時値のピーク値を用いてオープン巻線モードとスター結線モードの切替えを実施したが、瞬時値のピーク値の代わりに実効値Iaを用いてオープン巻線モードとスター結線モードの切替えを行ってもよい。
【0057】
さらに、上記実施形態では、モータの回転数に応じてオープン巻線モードとスター結線モードの切替えを実施したが、モータの回転数と均等と考えられる弱め界磁量であるd軸電流値やインバータのPWM電圧出力デューティー、または変調率等をモータ回転数の代わりに用いることができる。
【0058】
上記実施形態では、インバータ30,40を同じ直流電源55に接続する電源共通方式を採用したが、インバータ30,40を別々の直流電源に接続する電源絶縁方式においても、同様に実施できる。
【0059】
その他、上記各実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な各実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1…圧縮機、1M…オープン巻線モータ、Lu,Lv,Lw…相巻線、2…四方弁、3…室外熱交換器、4…膨張弁、8…室外コントローラ、9…モータ駆動装置、9a…駆動回路、9b…コントローラ、12…室内熱交換器、15…室内コントローラ、50…3相交流電源、55…直流電源部、30…インバータ(第1インバータ)、40…インバータ(第2インバータ)、51,52…リレー(開閉器)、51a,52a…常開形接点、53u,53v,53w…電流センサ、60…主制御部、60a…回転数検出部、60b~60d…第1,第2,第3制御部、61…電流検出部、62…リレー駆動部