(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】電気チェーンブロック
(51)【国際特許分類】
B66D 3/16 20060101AFI20230703BHJP
B66D 3/20 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
B66D3/16 F
B66D3/20 K
(21)【出願番号】P 2022505776
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2020048078
(87)【国際公開番号】W WO2021181820
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2020040047
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000129367
【氏名又は名称】株式会社キトー
(74)【代理人】
【識別番号】100120101
【氏名又は名称】畑▲崎▼ 昭
(72)【発明者】
【氏名】大村 真也
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-161297(JP,A)
【文献】実公昭49-35093(JP,Y2)
【文献】実開昭55-180698(JP,U)
【文献】実開昭56-170193(JP,U)
【文献】実開昭63-060576(JP,U)
【文献】実公昭48-038677(JP,Y2)
【文献】欧州特許出願公開第0692447(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/00- 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの駆動によりロードシーブを回転させて下フックに連結されたロードチェーンを巻上げまたは巻下げする電気チェーンブロックであって、
前記モータおよび前記ロードシーブを備える本体部と、
前記本体部の底面に設けられ、負荷側の前記ロードチェーンを出入りさせるチェーン出入口と、
を有し、
前記チェーン出入口は、
前記チェーン出入口の開口側に設けられていると共に、前記ロードチェーンの各リンクの長手方向の長さに対応させた溝長さを有する第1縦溝と第1横溝とを備え、これら第1縦溝と第1横溝とが直交状に交差している第1ガイド溝と、
前記第1ガイド溝よりも前記本体部の奥側に設けられていると共に、前記ロードチェーンの各リンクの短手方向の長さに対応させた溝長さを有する第2縦溝と第2横溝とを備え、これら第2縦溝と第2横溝とが直交状に交差している第2ガイド溝と、
を備えていて、
前記第1ガイド溝は、
前記第1縦溝の幅方向において前記ロードチェーンのリンクの線径に対応した溝幅を隔てて対向すると共に、前記第1横溝の幅方向において前記溝幅を隔てて対向することで、前記ロードチェーンの各リンクが引き込まれる際に、前記第1縦溝および前記第1横溝のいずれに導入されるかを規定する絞り部と、
前記絞り部よりも前記チェーン出入口の中心から離れた外側に設けられ、前記溝幅よりも大きな幅を有する溝膨出部と、
を有している、
ことを特徴とする電気チェーンブロック。
【請求項2】
請求項1記載の電気チェーンブロックであって、
前記底面に当接した前記リンクを支点として、前記第1縦溝または前記第1横溝に引き込まれる前記リンクが前記第2ガイド溝内に到達して倒立するように回転可能な深さに、前記第1縦溝および前記第1横溝が形成されている、
ことを特徴とする電気チェーンブロック。
【請求項3】
請求項1または2記載の電気チェーンブロックであって、
前記絞り部は、前記底面と面一かつ該底面と連なるように設けられている、
ことを特徴とする電気チェーンブロック。
【請求項4】
請求項3記載の電気チェーンブロックであって、
前記下フックの基部が前記チェーン出入口付近の前記底面に衝突する範囲内に位置するスペースには、リミットスイッチの押込部分の少なくとも一部が突起して配置されており、
前記押込部分を押し込むことで、前記モータの駆動が停止する、
ことを特徴とする電気チェーンブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気チェーンブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
モータの駆動力を利用して荷を昇降させる電気チェーンブロックにおいては、ロードチェーンを、本体部の底面における出入口(以下、チェーン出入口とする)から出入りさせることで、荷の昇降が可能となっている。このチェーン出入口は、縦溝と横溝とが直交することで、該チェーン出入口を平面視した場合に十字形状に設けられている。
【0003】
ところで、十字形状のチェーン出入口を介して本体部の内部にロードチェーンが引き込まれる場合、ロードチェーンへのテンションが上下方向に作用している状態(たとえば、本体部が吊り下げられている場合等)では、チェーン出入口に到達する前の段階で、リンクの方向が整えられる。それにより、ロードチェーンは、チェーン出入口付近で詰まる(スタックする)ことなく、スムーズに出入りすることができる。しかしながら、特に本体部が床に置かれる等のように、ロードチェーンにテンションが掛かっていない状態では、ロードチェーンを構成する各リンクの向きが不規則な状態で、チェーン出入口に到達する。このため、ロードチェーンがチェーン出入口付近でスタックしまうことがある。
【0004】
このようなチェーン出入口付近での、ロードチェーンのスタックを防止するための技術としては、たとえば特許文献1から特許文献3に開示のものがある。特許文献1では、底面部から突出する角柱体(d)を設け、その角柱体(d)は、既に十字溝に入り込んでいる3番目のリンク(3)を、底面から離している。それにより、3番目のリンク(3)の頭部が溝に突っ込むのが防止されるので、1番目のリンク(1;十字溝に入り込んでいるリンク)が引き込まれた場合、2番目のリンク(2)を若干回転させ、それに伴って3番目のリンク(3)も回転させることができ、スタックを防止している。
【0005】
また、特許文献2に開示の構成では、斜め方向からロードチェーンが十字状の溝に引き込まれる場合に対応させて、チェーン出入口の開口端部に、円弧面(9)を設けて、リンクのもつれを解くようにしている。これと共に、横リンク通孔(8)の一方側と他方側の深さを変えている。
【0006】
この特許文献2に開示の構成では、あるタイプのスタックを解除することができる。すなわち、チェーン出入口の縦溝および横溝は、長円形状のリンクの短手方向の長さに対応している。したがって、通常のチェーン出入口では、リンクの長手方向が縦溝または横溝を塞ぐような橋渡し状態となると容易にスタックしてしまうが、特許文献1に開示の構成では、深さBおよび深さCが存在することで、リンクが縦溝または横溝に傾斜した状態で入り込む。そのため、リンクが引き込まれる際に、そのリンクが容易に回転することで、ロードチェーンのスタックを解除可能となっている。
【0007】
また、特許文献3に開示の構成では、チェーン出入口付近が、他の底面よりも盛り上がっており、さらに縦溝および横溝には開口に向かうにつれて幅広となるような傾斜部が形成されている。それにより、ロードチェーンの引き込みに際して、盛り上がり部分の頂部側に位置するリンクを回転させることができ、それによってロードチェーンがスタックするのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特公昭45-36625号公報
【文献】特公昭49-41780号公報
【文献】EP2931650B1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、下フックが本体部の底面に衝突した状態で、モータが駆動を継続すると、本体部やモータ等に破損が生じる虞がある。したがって、下フックが本体部の底面に衝突することを検知する必要があるが、その検知の手段の1つとして、押し込み式のリミットスイッチを設ける場合がある。
【0010】
しかしながら、特許文献1から特許文献3に開示の構成では、チェーン出入口付近が本体部の底面よりも突出している。このため、リミットスイッチを押し込めないか、または押し込みのための別途の部材を追加する必要が生じてしまう。
【0011】
また、特許文献2に開示の構成では、上記のように、リンクが起き上がった状態で横溝または縦溝に入り込んだ際には、上記のスタックは解除することが可能となっている。しかしながら、チェーン出入口の縦溝および横溝は、リンクの直径に対応した溝幅しか有していない。そのため、リンクが完全には起き上がらずに、横倒しに傾斜または倒れた状態となり、さらに後続のリンクの位置によっては、ロードチェーンのスタックを解くことができない。
【0012】
本発明は上記の事情に鑑みなされたもので、下フックが本体部に衝突することでリミットスイッチを押し込むことが可能であること、およびリンクが横倒しまたは傾斜した場合でも、当該リンクを容易にチェーン出入口に入り込ませることが可能なことのうち少なくとも一方を解決することができる電気チェーンブロックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、モータの駆動によりロードシーブを回転させて下フックに連結されたロードチェーンを巻上げまたは巻下げする電気チェーンブロックであって、モータおよびロードシーブを備える本体部と、本体部の底面に設けられ、負荷側のロードチェーンを出入りさせるチェーン出入口と、を有し、チェーン出入口は、チェーン出入口の開口側に設けられていると共に、ロードチェーンの各リンクの長手方向の長さに対応させた溝長さを有する第1縦溝と第1横溝とを備え、これら第1縦溝と第1横溝とが直交状に交差している第1ガイド溝と、第1ガイド溝よりも本体部の奥側に設けられていると共に、ロードチェーンの各リンクの短手方向の長さに対応させた溝長さを有する第2縦溝と第2横溝とを備え、これら第2縦溝と第2横溝とが直交状に交差している第2ガイド溝と、を備えていて、第1縦溝の幅方向においてロードチェーンのリンクの線径に対応した溝幅を隔てて対向すると共に、第1横溝の幅方向において溝幅を隔てて対向することで、ロードチェーンの各リンクが引き込まれる際に、第1縦溝および第1横溝のいずれに導入されるかを規定する絞り部と、絞り部よりもチェーン出入口の中心から離れた外側に設けられ、溝幅よりも大きな幅を有する溝膨出部と、を有している、ことを特徴とする電気チェーンブロックが提供される。
【0014】
また、上述の実施の形態において、底面に当接したリンクを支点として、第1縦溝または第1横溝に引き込まれるリンクが前記第2ガイド溝内に到達して倒立するように回転可能な深さに、第1縦溝および第1横溝が形成されている、ことが好ましい。
【0015】
また、上述の実施の形態において、絞り部は、底面と面一かつ該底面と連なるように設けられている、ことが好ましい。
【0016】
また、上述の実施の形態において、下フックの基部がチェーン出入口付近の底面に衝突する範囲内に位置するスペースには、リミットスイッチの押込部分の少なくとも一部が突起して配置されており、押込部分を押し込むことで、モータの駆動が停止する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、下フックが本体部に衝突することでリミットスイッチを押し込むことが可能であると共に、リンクが横倒しまたは傾斜した場合でも、当該リンクを容易にチェーン出入口に入り込ませることが可能な電気チェーンブロックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る電気チェーンブロックの構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す電気チェーンブロックにおいて、逆さ吊りの状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す電気チェーンブロックのうちロードシーブ付近の構成を示す断面図である。
【
図4】
図1に示す電気チェーンブロックのボディのうち、ガイド部材を中心として、ロードシーブ、弧状覆い部材およびリミットスイッチの構成を示す斜視図である。
【
図5】
図1に示す電気チェーンブロックの本体部のうち、チェーン出入口付近の構成を示す部分的な斜視図である。
【
図6】
図1に示す電気チェーンブロックの本体部のうち、チェーン出入口付近の構成を示す平面図である。
【
図7】
図1に示す電気チェーンブロックの本体部のうち、チェーン出入口付近の構成を示す断面図であり、第1横溝に沿って切断した状態を示す図である。
【
図8】
図1の電気チェーンブロックで用いられるリンクを示す平面図である。
【
図9】現状のチェーン出入口の周囲で、ロードチェーンにスタックが生じている一例を示す図である。
【
図10】
図1に示す電気チェーンブロックに溝膨出部が存在することによって、チェーン出入口の周囲でのロードチェーンのスタックが解消されるイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態に係る、電気チェーンブロック10について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、Z方向とは、ロードチェーンC1を吊り下げる方向を指し、Z1側とは上フック70が位置する側を指し、Z2側とはそれとは逆の下フック80が位置する側を指す。したがって、通常吊りにおいては、Z1側は上側を指すと共にZ2側は下側を指すが、逆さ吊りにおいては、Z1側は下側を指すと共にZ2側は上側を指す状態となる。しかしながら、本明細書では、特に断りがない限り、Z1側は上側を指すと共に、Z2側は下側を指すものとする。
【0020】
また、X方向とは、本体部20の長手方向を指し、X1側とは
図1において右上側を指し、X2側とはそれとは逆の左下側を指す。また、Y方向とは、Z方向およびX方向に直交する方向を指し、Y1側とは
図1において右側を指し、Y2側とはそれとは逆の左側を指す。
【0021】
<チェーンブロックの全体構成について>
図1は、本発明の一実施の形態に係る電気チェーンブロック10の構成を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す電気チェーンブロック10において、逆さ吊りの状態を示す斜視図である。
図3は、
図1に示す電気チェーンブロック10のうちロードシーブ22付近の構成を示す断面図である。
図1に示すように、電気チェーンブロック10は、本体部20と、上フック70と、下フック80と、チェーンバケット90と、バケット取付金具100とを備えている。また、
図1および
図2に示すように、本実施の形態の電気チェーンブロック10は、通常吊りと、逆さ吊りの両方が可能なタイプである。
【0022】
<本体部20について>
本体部20は、ボディ30と、モータ40と、ロードシーブ50と、ガイド部材60とを主要な構成要素としている。これらの中で、ボディ30とガイド部材60とは、ボルト等で一体的に固定されることで、1つの筐体を構成する。
【0023】
<ボディ30について>
ボディ30は、たとえばアルミニウム系の金属や鉄系の金属を材質として形成されている。ボディ30は、
図3に示すように、側面31や天面32等のような外面を形成する部分と、その外面の内側に存在する構造部分とを有している。また、ボディ30には、後述するガイド部材60を取り付ける部位が、外面から凹んでいるものの、ガイド部材60をボディ30に取り付けた場合には、概ね凹みのない状態の本体部20が構成されている。
【0024】
ボディ30の内部には、モータ40と、ロードシーブ50とが外部に露出しない状態で設けられている。また、ボディ30にはロードチェーンC1の送りをガイドするためのガイド部材60も取り付けられている。ガイド部材60は、
図3に示す構成では、ボディ21と別部品となっているが、ガイド部材60はボディ30と一体的であっても良い(ボディ30と同一部品であっても良い)。なお、ガイド部材60の構成の詳細については、後述する。
【0025】
<モータ40およびロードシーブ50について>
また、ボディ30内部においては、モータ40からの駆動力は、ロードシーブ50へと伝達される。このロードシーブ50は複数のチェーンポケット51を備え、そのチェーンポケット51にはロードチェーンC1の金属輪が嵌まり込むことが可能となっている。したがって、モータ40の駆動によって、ロードチェーンC1の巻上げおよび巻下げを行うことを可能としている。
【0026】
<上フック70および繋ぎ軸S1について>
また、ボディ30には、該ボディ30の軸穴34に差し込まれる繋ぎ軸S1を介して、上フック70が取り付けられている。上フック70は、フック部71と、フック受部72とを備えている。フック部71は、荷物や天井等を掛ける部分である。また、フック受部72は、フック部71を回転自在に支持する部分である。このフック受部72には、当該フック受部72をY方向に貫通する取付孔72aが設けられていて、その取付孔72aに繋ぎ軸S1が差し込まれる。それにより、上フック70は、繋ぎ軸S1を介して本体部20(ボディ30)に支持される。
【0027】
<下フック80について>
下フック80は基部81を備え、その基部81がガイド部材60の第1ガイド通路610のチェーン出入口611(後述)から送り出されるロードチェーンC1の下端側(Z2側)に連結されている。また、下フック80は荷を掛けるためのフック部82を備え、そのフック部82は、基部81に対して回転自在な状態で取り付けられている。この下フック80は、ボディ30の底面33に衝突するが、その際に、後述するリミットスイッチ120を押し込む。それにより、モータ40の駆動を停止させ、下フック80の巻上を停止させることができる。
【0028】
<チェーンバケット90について>
図1に示すように、チェーンバケット90は、後述する側面チェーン出入口651から排出されたロードチェーンC1を収納するバケット状の部分である。このチェーンバケット90は、ロードチェーンC1の重量に十分に耐えつつ柔軟性を有する樹脂や布を材質として形成されている。このチェーンバケット90は、カラビナやワイヤその他の連結具110を介して、バケット取付金具100に取り付けられる。このため、チェーンバケット90は、連結具110およびバケット取付金具100を介して、本体部20(ボディ30およびガイド部材60)に取り付けられる状態となる。
【0029】
<バケット取付金具100について>
図1から
図3に示すように、バケット取付金具100は、バケット取付部105を有している。バケット取付部105は、連結具110を介してチェーンバケット90が取り付けられる部分である。本実施の形態では、バケット取付部105は、側面31側から突出する略U字形状の取付アーム105aを備え、その取付アーム105aで囲まれる取付孔105bに、連結具110の挿通部位を挿通させることができる。
【0030】
なお、取付孔105bは、Z方向に沿って所定の長さを有している(すなわち、Z方向に沿う長孔状となっている)。そして、通常吊りの際には、取付孔105bのZ2側(下側)に連結具110が位置し、この連結具110を介してチェーンバケット90を取り付けることができる。一方、逆さ吊りの際には、取付孔105bのZ1側(通常吊りにおける上側)に連結具110が位置し、この連結具110を介してチェーンバケット90を取り付けることができる。したがって、通常吊りおよび逆さ吊りのいずれの場合でも、自重によって垂れ下がるロードチェーンC1をチェーンバケット90内に良好に収納可能となっている。
【0031】
<ガイド部材60およびリミットスイッチ120について>
ガイド部材60は、上述したボディ30と共に、本体部20の構造部分を構成する。
図3に示すように、ガイド部材60は、所定の位置(第1位置および第2位置)でロードシーブ50に近接するように設けられている。それにより、ボディ30内部において既定の角度範囲内に位置するチェーンポケット51にロードチェーンC1が良好に嵌まり込みつつ送り出されている。なお、ガイド部材60は、たとえば炭素鋼や合金鋼等のような耐摩耗性を有すると共に強度を有する金属のブロック体から構成されている。
【0032】
図4は、ガイド部材60を中心として、ロードシーブ50、弧状覆い部材67およびリミットスイッチ120の構成を示す斜視図である。
図3および
図4に示すように、ガイド部材60には、第1ガイド通路610と、第2ガイド通路650とが設けられている。第1ガイド通路610は、下フック80側(Z2側)に向かって延伸するロードチェーンC1の移動を良好にガイドする部分である。なお、第1ガイド通路610のうち、ロードチェーンC1が出入りする側を、チェーン出入口611と称呼し、第2ガイド通路650のうちロードチェーンC1が出入りする側を、側面チェーン出入口651と称呼する。
【0033】
図5は、本体部20のうち、チェーン出入口611付近の構成を示す部分的な斜視図である。
図6は、本体部20のうち、チェーン出入口611付近の構成を示す平面図である。
図7は、本体部20のうち、チェーン出入口611付近の構成を示す断面図であり、第1横溝に沿って切断した状態を示す図である。
【0034】
図5から
図7に示すように、チェーン出入口611には、第1ガイド溝620と、第2ガイド溝630とが設けられている。具体的には、第1ガイド溝620は、第2ガイド溝630よりもチェーン出入口611の開口側に設けられている部分である。すなわち、第1ガイド溝620と第2ガイド溝630とは連なっているが、これらのうちチェーン出入口611の開口側に第1ガイド溝620が存在し、その第1ガイド溝620よりも本体部20の奥側に第2ガイド溝630が存在している。
【0035】
第1ガイド溝620には、第1縦溝621と、第1横溝622とが設けられていて、これらが直交状に交差している(すなわち、第1縦溝621と第1横溝622とで十字状に設けられている)。これら第1縦溝621と第1横溝622の長さL1は、ロードチェーンC1の各リンクC1aの長手方向の長さに対応させている。
図8は、リンクC1aを示す平面図である。
図8に示すように、リンクC1aの長手方向の長さをM1とするとき、第1縦溝621および第1横溝622の長さL1は、長さM1よりも大きくなるように設けられている。
【0036】
なお、リンクC1aの内孔の長手方向の寸法をP、第1縦溝621および第1横溝622の溝幅をL2、リンクC1aの直径をdとすると、第1縦溝621および第1横溝622の長さL1は、次の(式1)に設定されることが好ましい。
(式1) L1=(P-d+L2/2)×2
【0037】
なお、第1縦溝621がロードシーブ50の軸方向(X方向)に沿っているとした場合、第1縦溝621の溝幅L2(溝幅L21とする)の方が、第1横溝622の溝幅L2(溝幅L22とする)よりも大きくするのが好ましい。ロードシーブ50のチェーンポケット51を結んだ線は多角形であるので、ロードシーブ50の回転に伴ってリンクC1aがY方向に若干揺れる(振動する)ためである。
【0038】
また、第1縦溝621および第1横溝622には、絞り部623が設けられている。絞り部623は、第1縦溝621と第1横溝622に面する部分であり、
図6に示すように、4つ設けられている。この絞り部623には、先端部623aと、平面部623bとが設けられている。これらのうち、先端部623aは、リンクC1aの向きを限定するために、後述する溝膨出部624の角部分よりも曲率半径が小さくなるように設けられている。かかる曲率半径は、現状のチェーン出入口における絞り部と同程度の曲率半径に設けられることが好ましい。
【0039】
このように、先端部623aの曲率半径を溝膨出部624よりも大きくせずに現状のチェーン出入口の絞り部の曲率半径と同程度とすることにより、第1縦溝621または第1横溝622に入り込んだリンクC1aの方向を、第1縦溝621または第1横溝622のいずれかに沿うように、整えることができる。それにより、第1縦溝621または第1横溝622のいずれかの方向へと整えられない状態で、リンクC1aが第1縦溝621または第1横溝622の内部に入り込んでしまうのが防止され、それによってロードシーブ50での巻上げ不良となるのを防止している。
【0040】
また、平面部623bは、第1縦溝621または第1横溝622の長手方向に平行に設けられている部分である。それぞれの絞り部623における2つの平面部623bは、直交するように設けられている。かかる平面部623bが所定の長さを有することで、先端部623aが短期間で摩耗してしまうのを防止している。また、互いに対向している平面部623bの間が、第1縦溝621または第1横溝622における溝幅L2に対応している。
【0041】
なお、本実施の形態では、絞り部623は、底面33と面一となるように設けられている。それにより絞り部623の耐摩耗性を向上させている。
【0042】
また、第1縦溝621および第1横溝622には、溝膨出部624も設けられている。溝膨出部624は、第1縦溝621および第1横溝622のうち、絞り部623よりも溝方向の端部側の部位において、溝幅L2よりも大きな間隔を有するように溝幅を拡大した部分である。また、溝膨出部624の存在により、第1縦溝621および第1横溝622の溝長さが、溝長さL1まで長くなっている。すなわち、第1縦溝621および第1横溝622に溝膨出部624が存在することにより、第1縦溝621および第1横溝622の溝長さL1が、後述する第2ガイド溝630の第2縦溝631および第2横溝632の溝長さよりも長くなっている。
【0043】
この溝膨出部624には、第1縦溝621または第1横溝622の溝方向に対して若干傾斜すると共に起立状態から若干倒れた状態のリンクC1aの先頭部分を入り込ませるための部分である。
【0044】
この溝膨出部624に起立状態から若干倒れた状態のリンクC1aの先頭部分が入り込むことで、後述するようなリンクC1aの回転のきっかけが与えられる。それにより、ロードチェーンC1のスタックを解除することができる。
【0045】
なお、溝膨出部624は、その大きさが大きいほど好ましい。しかしながら、溝膨出部624が大きくなり過ぎると、チェーン出入口611の周囲のうち、下フック80が衝突する範囲内に、リミットスイッチ120を設置するスペースが存在しなくなる。そこで、隣り合う溝膨出部624の間には、リミットスイッチ120の押込部分121を設置するためのスペースSPが設けられている。このスペースSPは、チェーン出入口611の中心から溝膨出部624の最も離れた端部までを半径とする円の範囲内に存在することが好ましい。
【0046】
また、
図7に示すように、第1ガイド溝620のうち、本体部20の奥側(Z1側)には、段差底面部625が設けられている。段差底面部625は、第2ガイド溝630との境界となる部分である。すなわち、第1ガイド溝620と第2ガイド溝630とでは、溝膨出部624が存在する分だけ、溝長さが異なるので、
図7に示すような段差底面部625が形成されている。
【0047】
ここで、底面33から段差底面部625までの深さを深さH1とすると、底面33のうち、いずれかの絞り部623にリンクC1a(当接リンク)が存在し、そのリンクC1aを支点として隣り合うリンクC1a(隣接リンク)が回転するとき、当該リンクC1a(隣接リンク)が、段差底面部625に衝突しないように、深さH1が設定されている。それにより、第1ガイド溝620に入り込んだリンクC1aの回転は、段差底面部625によって阻害されないので、ロードチェーンC1のスタックを解除可能となっている。
【0048】
なお、段差底面部625のうち、チェーン出入口611の中央寄りの部分には、円弧状部625aが設けられている。このため、仮にリンクC1aが段差底面部625と衝突した場合でも、円弧状部625aの存在によって、リンクC1aは第2ガイド溝630側に滑らかにガイドされる。なお、段差底面部625を設けるのに代えて、第1ガイド溝620と第2ガイド溝630の境界部分を、全体的に湾曲状に設けるようにしても良い。
【0049】
また、第2ガイド溝630に存在する第2縦溝631は、リンクC1aの短手方向の長さM2に対応させているが、その幅M2は、リンクC1aのガイドに必要十分なものとなっている。また、第2ガイド溝630に存在する第2横溝632も、リンクC1aの短手方向の長さM2に対応させているが、その幅M2は、リンクC1aのガイドに必要十分なものとなっている。かかる第2縦溝631または第2横溝632にリンクC1aが入り込むと、そのリンクC1aの向きが一層整えられる。
【0050】
また、リミットスイッチ120は、下フック80が押し込むことが可能な機械式のスイッチである。このリミットスイッチ120の押込部分121は底面33から突出するが、その押込部分121は、下フック80が衝突する範囲内に設けられている。なお、押込部分121の少なくとも一部は、上述したスペースSPに差し掛かることが好ましい。
【0051】
なお、
図4に示すように、リミットスイッチ120を外部から保護するために、ガイド部材60のうちリミットスイッチ120の配置部位には、保護カバー130が取り付けられている。
【0052】
<作用について>
以上のような構成を有する電気チェーンブロック10の作用について、以下に説明する。電気チェーンブロック10において、ロードチェーンC1を巻上げ、リンクC1aがチェーン出入口611に順次入り込む際に、ロードチェーンC1にテンションが掛からずに弛みが生じている場合、チェーン出入口611にリンクC1aが入り込む前の段階で、リンクC1aの向きが整えられていない。
【0053】
このようなリンクC1aが整列していない状態で、ロードチェーンC1を巻上げると、ロードチェーンC1のスタックが生じてしまう場合がある。そのようなスタックの一例を
図9に示す。
図9は、現状のチェーン出入口611Bの周囲で、ロードチェーンC1にスタックが生じている一例を示す図である。なお、この
図9に示すチェーン出入口611Bは、溝幅が一定の縦溝641Bおよび横溝642Bを有している。
【0054】
この
図9に示す状態において、既にチェーン出入口611B(
図9では横溝642B)に入り込んでいるリンクC1aを第1リンクC11aとし、その第1リンクC11aに連結されているリンクC1aを第2リンクC12aとし、さらに第2リンクC12aに連結されている別のリンクC1aを第3リンクC13aとする。
【0055】
ここで、第2リンクC12aが底面33のうちチェーン出入口611付近の点Pに衝突し、さらに第3リンクC13aがチェーン出入口611の周囲に衝突している場合、ロードシーブ50の回転に伴って第1リンクC11aが引き込まれると、第2リンクC12aは、底面33を押し込む側(
図9における矢示F側)に回転しようとする。
【0056】
この場合、第3リンクC13aは、
図7に二点鎖線の円形で示すように、チェーン出入口611付近の底面33に衝突しているので、第2リンクC12aは、第3リンクC13a側が底面33から離れ、それとは逆に第3リンクC13aから離れる側の点Pで底面33に接触しているように傾斜している。このため、第1リンクC11aによって第2リンクC12aが引き込まれる場合、点Pをさらに底面33に押し込むように(すなわち矢示F周りに)第2リンクC12aを回転させようとする。
【0057】
しかしながら、第2リンクC12aの点Pへの衝突が支障となって、第2リンクC12aがそれ以上回転できなくなり、ロードチェーンC1のスタックが発生してしまう。
【0058】
図10は、溝膨出部624の存在によって、チェーン出入口611の周囲でのロードチェーンC1のスタックが解消されるイメージを示す図である。
図10に示すように、本実施の形態の電気チェーンブロック10では、溝膨出部624が設けられることにより、上述の点Pは、底面33には存在しなく、溝膨出部624に存在する状態となる。それにより、第2リンクC12aは、引き込みの先頭側が、第1縦溝621または第1横溝622に入り込んだ状態となる。したがって、第1リンクC11aによって第2リンクC12aが引き込まれる場合、底面33に点Pが存在している場合のような回転の支障となるつっかえが生じずに、第2リンクC12aが向きを変えることができる。
【0059】
なお、上述のように、第2リンクC12aの向きを変えることができるので、その後は、それぞれのリンクC1aをスムーズにチェーン出入口611に引き込むことができる。
【0060】
<効果について>
以上のような構成の電気チェーンブロック10では、モータ40およびロードシーブ50を備える本体部20と、本体部20の底面33に設けられ、負荷側のロードチェーンC1を出入りさせるチェーン出入口611と、を有し、チェーン出入口611は、第1ガイド溝620を有しているが、その第1ガイド溝620は、チェーン出入口611の開口側に設けられていると共に、ロードチェーンC1の各リンクC1aの長手方向の長さに対応させた溝長さを有する第1縦溝621と第1横溝622とを備えていて、これら第1縦溝621と第1横溝622とが直交状に交差している。また、チェーン出入口611は第2ガイド溝630を有しているが、その第2ガイド溝630は、第1ガイド溝620よりも本体部20の奥側に設けられていると共に、ロードチェーンC1の各リンクC1aの短手方向の長さに対応させた溝長さを有する第2縦溝631と第2横溝632とを備えていて、これら第2縦溝631と第2横溝632とが直交状に交差している。
【0061】
また、第1ガイド溝620は、第1縦溝621の幅方向においてロードチェーンC1のリンクC1aの線径に対応した溝幅L2を隔てて対向すると共に、第1横溝622の幅方向において溝幅L2を隔てて対向することで、ロードチェーンC1の各リンクC1aが引き込まれる際に、第1縦溝621および第1横溝622のいずれに導入されるかを規定する絞り部623を有している。さらに、第1ガイド溝620は、絞り部623よりもチェーン出入口611の中心から離れた外側に設けられ、溝幅L2よりも大きな幅を有する溝膨出部624を有している。
【0062】
このように、溝膨出部624の存在によって、上記の
図10に基づいて説明したように、第2リンクC12aの先頭側を、この溝膨出部624に入り込ませることができる。このため、第2リンクC12aが底面33に対し、
図9に示すような点Pで衝突するのが防止され、第2リンクC12aの引き込みの先頭側を、第1縦溝621または第1横溝622に入り込ませることができる。それにより、第1リンクC11aによって第2リンクC12aが引き込まれる場合、底面33に点Pが存在している場合のような回転の支障となるつっかえが生じずに、第2リンクC12aの向きを変えることができる。このため、第2リンクC12aの向きの変更後は、それぞれのリンクC1aをスムーズにチェーン出入口611に引き込むことができる。そのため、リンクC1aが横倒しまたは傾斜した場合でも、当該リンクC1aを容易にチェーン出入口611に入り込ませることが可能となる。
【0063】
また、第1ガイド溝620には、絞り部623が設けられているので、その絞り部623によって、リンクC1aの向きを限定することができる。すなわち、第1縦溝621または第1横溝622に入り込んだリンクC1aの方向を、第1縦溝621または第1横溝622のいずれかに沿うように、整えることができる。それにより、第1縦溝621または第1横溝622のいずれかの方向へと整えられない状態で、リンクC1aが第1縦溝621または第1横溝622の内部に入り込んでしまうのが防止され、それによってロードシーブ50での巻上げ不良となるのを防止することができる。
【0064】
また、上記のように、チェーン出入口611は、絞り部623と、溝膨出部624を有するので、底面33に対して、突出する部分を形成せずに済む。そのため、下フック80がチェーン出入口611付近の底面33に衝突した際に、リミットスイッチ120の押込部分121を容易に押し込むことができる。
【0065】
また、本実施の形態では、底面33に当接したリンクC1a(第2リンクC12a)を支点として、第1縦溝621または第1横溝622に引き込まれるリンクC1aが第2ガイド溝630内に到達して倒立するように回転可能な深さに、第1縦溝621および第1横溝622が形成されている。
【0066】
このように構成することにより、
図7に二点鎖線の円形で示すように、チェーン出入口611付近の底面33に衝突しているリンクC1aを支点として、そのリンクC1aに連結されているリンクC1a(隣接リンク)を、第1ガイド溝620に入り込ませた状態で、第2ガイド溝630内に到達して倒立するように回転させることができる。それにより、第1ガイド溝620に入り込んだリンクC1aの回転が阻害されないので、ロードチェーンC1のスタックを解除することができる。
【0067】
また、本実施の形態では、絞り部623は、底面33と面一かつ該底面33と連なるように設けられている。このため、絞り部623に十分な強度を与えることが可能となると共に、絞り部623の耐摩耗性を向上させることができる。
【0068】
また、本実施の形態では、下フック80の基部81がチェーン出入口611付近の底面33に衝突する範囲内に位置するスペースSPには、リミットスイッチ120の押込部分121の少なくとも一部が配置されている。そして、押込部分121を押し込むことで、モータ40の駆動が停止する。
【0069】
このように、スペースSPに押込部分121の少なくとも一部が配置されるので、下フック80が底面33に衝突するような上限位置まで上昇したときに、押込部分121を確実に押し込むことが可能となる。それにより、モータ40の駆動を確実に停止させることができる。このため、モータ40が駆動し続けることで、本体部20にダメージが生じるのを防止することができる。
【0070】
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0071】
上述の実施の形態では、下フック80側のチェーン出入口611について説明している。しかしながら、側面チェーン出入口651についても、上述した絞り部と溝膨出部とを有する第1ガイド溝620と同様の第1ガイド溝と、その奥側に位置する第2ガイド溝630と同様の第2ガイド溝とを備えるものとしても良い。
【0072】
また、上述の実施の形態では、絞り部623は、底面33と面一になるように設けられている。しかしながら、絞り部623は、底面33と面一ではなく、押込部分121の押込みを阻害しない範囲において若干突出したり、若干凹んでいても良い。
【符号の説明】
【0073】
10…電気チェーンブロック、20…本体部、30…ボディ、31…側面、32…天面、33…底面、34…軸穴、40…モータ、50…ロードシーブ、51…チェーンポケット、60…ガイド部材、67…弧状覆い部材、70…上フック、71…フック部、72…フック受部、72a…取付孔、80…下フック、81…基部、82…フック部、90…チェーンバケット、100…バケット取付金具、105…バケット取付部、105a…取付アーム、105b…取付孔、110…連結具、120…リミットスイッチ、121…押込部分、130…保護カバー、610…第1ガイド通路、611…チェーン出入口、611B…チェーン出入口、620…第1ガイド溝、621…第1縦溝、622…第1横溝、623…絞り部、623a…先端部、623b…平面部、624…溝膨出部、625…段差底面部、625a…円弧状部、630…第2ガイド溝、631…第2縦溝、632…第2横溝、641B…縦溝、642B…横溝、650…第2ガイド通路、651…側面チェーン出入口、B…深さ、C…深さ、C1…ロードチェーン、C11a…第1リンク、C12a…第2リンク、C13a…第3リンク、C1a…リンク、S1…繋ぎ軸、SP…スペース