(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】粉乳中の乳清タンパク、カゼインの含有量及び/又は両者の比率の検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/62 20210101AFI20230703BHJP
G01N 33/04 20060101ALI20230703BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20230703BHJP
G01N 30/06 20060101ALI20230703BHJP
G01N 30/72 20060101ALI20230703BHJP
A23C 9/00 20060101ALI20230703BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20230703BHJP
C07K 14/76 20060101ALI20230703BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230703BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20230703BHJP
C12Q 1/37 20060101ALN20230703BHJP
【FI】
G01N27/62 V ZNA
G01N27/62 X
G01N33/04
G01N30/88 J
G01N30/06 E
G01N30/72 C
A23C9/00
C07K14/47
C07K14/76
G01N33/50 U
G01N33/68
C12Q1/37
(21)【出願番号】P 2022539267
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(86)【国際出願番号】 CN2021143234
(87)【国際公開番号】W WO2022143936
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】202110904028.8
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522123382
【氏名又は名称】ベイジン サンユアン フーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】チェン リージュン
(72)【発明者】
【氏名】シュー タオ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ジンヤオ
(72)【発明者】
【氏名】チャオ ウェイカン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ ジュンイン
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0088515(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102331471(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112858561(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103642895(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112345763(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60 - G01N 27/70
G01N 30/00 - G01N 30/96
H01J 49/00 - H01J 49/48
G01N 33/48 - G01N 33/98
G01N 33/04
A23C 9/00 - A23C 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-ラクトアルブミン及びβ-ラクトグロブリンの特徴的なペプチドセグメントを使用し、α-ラクトアルブミン及びβ-ラクトグロブリンのそれぞれが乳清タンパクの20%、50%を占める配合比にしたがって、乳清タンパク標準品溶液を調製するステップ1)と、
α-カゼイン及びβ-カゼインの特徴的なペプチドセグメントを使用し、α-カゼイン及びβ-カゼインのそれぞれがカゼインの50%、40%を占める配合比にしたがって、カゼイン標準品溶液を調製するステップ2)と、
ステップ1)で得られた乳清タンパク標準品溶液とステップ2)で得られたカゼイン標準品溶液とを混合して
、混合タンパク質標準品溶液を調製するステップ3)と、
乳清タンパク
とカゼイン
との比率を横軸とし、
酵素切断後の測定対象粉乳を、マススペクトルを用いて選択性イオンスキャン分析で測定したα-ラクトアルブミンとβ-カゼインとの
特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比、β-ラクトグロブリンとα-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比を縦軸として、検量線を作成するステップ4)と、
酵素切断の後の測定対象粉乳
を、マススペクトルを用いて選択性イオンスキャン分析によりβ-ラクトグロブリンとα-カゼインとの
特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比、α-ラクトアルブミンとβ-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比を検出するステップ5)と、
検出された粉乳中のβ-ラクトグロブリンとα-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比を
前記ステップ4)で作成した検量線に代入して、乳清タンパクとカゼインとの比率Mを決定し、これから決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Mに基づいて、β-ラクトグロブリン及びα-カゼインの実際の量を算出し、
そして、検出された粉乳中のα-ラクトアルブミンとβ-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比を
前記ステップ4)で作成した検量線に代入して、乳清タンパクとカゼインとの比率Nを決定し、これから決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Nに基づいて、α-ラクトアルブミン及びβ-カゼインの実際の量を算出するステップ6)と、
前記ステップ6)で得られたα-ラクトアルブミン、β-カゼイン、β-ラクトグロブリン、α-カゼインの実際の量に基づいて、実際の乳清タンパク含有量、カゼイン含有量及び/又は乳清タンパク
とカゼイン
との比率を得るステップ7)と、を含む、
液体クロマトグラフィー-マススペクトルによる粉乳中の乳清タンパク含有量、カゼイン含有量及び/又は乳清タンパク
とカゼイン
との比率の検出方法。
【請求項2】
前記α-ラクトアルブミンの、β-カゼインの、β-ラクトグロブリンの、α-カゼインの特徴的なペプチドセグメントは、それぞれ、配列番号1に示されるようなLDQWLCEK、配列番号2に示されるようなVLPVPQK、配列番号3に示されるようなTPEVDDEALEK、配列番号4に示されるようなFALPQYLKである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ3)において、前記
混合タンパク質標準品溶液の乳清タンパク
とカゼイン
との比
率は、0.25、0.43、0.67、1、1.5、2.33の
いずれかである、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ6)において、
乳清タンパクとカゼインとの比率Mに基づいて、前記β-ラクトグロブリン及びα-カゼインの実際の量
を算出するための計算式は、それぞれ、
【数1】
であり、
ここで、M1
、M2は、
それぞれ、β-ラクトグロブリンとα-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比に基づいて決定された
、乳清タンパクとカゼインとの比
(乳清タンパク:カゼイン)の前項
と後項であり、
乳清タンパクとカゼインとの比率M=M1/M2
と規定し、M1+M2=1と規定し、
ここで、Xはサンプルの総タンパク質濃度である、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ6)において、
乳清タンパクとカゼインとの比率Nに基づいて、前記α-ラクトアルブミン及びβ-カゼインの実際の量
を算出するための計算式は、それぞれ、
【数2】
であり、
ここで、N1
、N2は、
それぞれ、α-ラクトアルブミンとβ-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比に基づいて決定された
、乳清タンパクとカゼインとの比
(乳清タンパク:カゼイン)の前項
と後項であり、
乳清タンパクとカゼインとの比率N=N1/N2
と規定し、N1+N2=1と規定し、
ここで、Xはサンプルの総タンパク質濃度である、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ7)において、
前記実際の乳清タンパク含有量の計算式は、
【数3】
であり、
前記実際のカゼイン含有量の計算式は、
【数4】
であり、
前記実際の乳清タンパク
とカゼイン
との比率
を算出するための計算式は、
【数5】
であり、
ここで、M1
、M2は、
それぞれ、β-ラクトグロブリンとα-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比に基づいて決定された
、乳清タンパクとカゼインとの比
(乳清タンパク:カゼイン)の前項
と後項であり、
乳清タンパクとカゼインとの比率M=M1/M2
と規定し、M1+M2=1と規定し、
N1
、N2は、
それぞれ、α-ラクトアルブミンとβ-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比に基づいて決定された
、乳清タンパクとカゼインとの比
(乳清タンパク:カゼイン)の前項
と後項であり、
乳清タンパクとカゼインとの比率N=N1/N2
と規定し、N1+N2=1と規定し、
ここで、Xはサンプルの総タンパク質濃度である、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ5)の検出には、サンプル処理及び酵素切断ステップ、即ち、
測定対象粉乳をタンパク質濃度が0.1~0.4mg/mlのサンプル溶液に溶解するステップと、孔径が0.45μm
の酢酸ろ過膜を使用して、予ろ過を行うステップと、予ろ過後のサンプル溶液に炭酸水素アンモニウム溶液を加えてから、ジチオスレイトール溶液を加え、65~75℃で水浴を25~35min行うステップと、冷却後、ヨードアセトアミド溶液を加え、光を避けて25~35min静置するステップと、光を8~12min照射し、塩化カルシウム溶液を加えるステップと、トリプシン溶液を加え、37℃で酵素切断を26~30h行うステップと、酢酸溶液を加え、酵素切断を終了するステップと、ポリエーテルスルホンろ過膜を用いてろ過してから、マススペクトルを用いて選択性イオンスキャン分析を行うステップと、が含まれる、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記方法の検出上限は、タンパク質総濃度が0.4mg/mlであることである、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記特徴的なペプチドセグメントは、アミノ酸配列のそれぞれが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4に示されるα-ラクトアルブミン、β-カゼイン、β-ラクトグロブリン、α-カゼインである特徴的なペプチドセグメントを含む、
液体クロマトグラフィー-マススペクトルによって乳清タンパク
とカゼイン
との比率を検出するための
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記特徴的なペプチドセグメントは、アミノ酸配列のそれぞれが配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4に示されるα-ラクトアルブミン、β-カゼイン、β-ラクトグロブリン、α-カゼインである特徴的なペプチドセグメント
のみから
なる、請求項9に記載の
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品検出技術の分野に関し、具体的には、液体クロマトグラフィー-マススペクトルによる粉乳中の乳清タンパク含有量、カゼイン含有量及び/又は両者の含有量の比率の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳清タンパクは、乳幼児用調製粉乳の重要な栄養成分の1つとして、調製粉乳中で占める栄養比率が特に重要である。乳清タンパクの主な成分は下述表のとおりである。
【0003】
【0004】
乳清タンパクには、人体に必須の様々なアミノ酸が含まれており、極めて高い生体利用効力を有する。含まれている分枝鎖アミノ酸(ロイシン、イソロイシン及びバリンなど)はそれの3分の1を占め、これらの分枝鎖アミノ酸は、生体にエネルギーを供給するとともに、人体内のグルタミン酸合成の重要な前駆体物質の1つであることが証明され、また、ロイシンは、骨格筋タンパク質の合成を調節する細胞内代謝経路に関与して、骨格筋タンパク質の合成をさらに強化することもできる。
【0005】
乳清タンパクは、人体内の含硫アミノ酸(システイン)の重要な供給源でもあり、含硫アミノ酸は、グルタチオン及びタウリンを構成する重要な前駆体物質である。グルタチオンは、フリーラジカル消去及び免疫応答において肝心な役割を果たし、それとタウリンはいずれも脂質過酸化を抑制し、抗酸化作用を発揮できる。乳清タンパク中のスレオニンが腸管によって取得された後、腸管ムチンに直接変換され、腸細胞及び腸管バリアの継続性に対する保護を提供する。最後に、乳清タンパク中のリジン及びアルギニンは、生体代謝ホルモンの分泌を刺激することにより、筋肉の成長を促進することができる。
【0006】
調製ミルク粉の1つの重要な検出指標として、食品安全国家基準GB 10765-2010に、乳幼児用調製ミルク粉中の乳清タンパクの含有量が60%より大きいべきであると規定されている。乳幼児用調製粉乳中の複雑な添加成分及び生産中の加熱により、乳清タンパクとカゼインとのタンパク空間構造が変化し、例えば、ジスルフィド結合が開き、凝集反応が起こり、さらに、様々なタンパクの集合体を形成することにより、調製粉乳中の乳清タンパクの検出が非常に困難になる。
【0007】
現在、乳清タンパクの含有量の検出に用いられる様々な方法がある。しかしながら、これらの方法において、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィー、高速キャピラリー電気泳動などは、いずれも加工プロセス中のタンパク質変性の影響を受けるので正確な定量化ができず、測定結果の偏差が大きい。アミノ酸換算法は、乳清タンパク含有量の測定方法の適用範囲が狭く、添加物の影響を受けやすい。同位体内部標準を利用する液体質量検出法は、内部標準同位体を合成する必要があるので、検出コストが高いため、実際の生産に広く適用できない。
【0008】
カゼインは、ミルクの主なタンパク質であり、胃腸管で消化された後、加水分解されて、生物学的に活性を有する様々なポリペプチドを形成する。現在、調製粉乳中のカゼインの検出は、主に、高速液体クロマトグラフィーによって行われるが、調製粉中のカゼインが高性能液相で呈するピーク形状は理想的ではなく、κ-カゼイン及びαS2-カゼインの両者のクロマトグラムピークを区別し難い。酵素結合免疫吸着及び液体クロマトグラフィー-マススペクトル法などの検出方法も相次いで提案されており、カゼインの検出ではよい効果を示す。
【0009】
当該背景技術部分に開示されている情報は、本発明の全体的な背景に対する理解を増進させることを意図するだけで、当業者に知られている先行技術を構成することを認めるか、又はいかなる形でも暗示するものとみなされるべきではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の先行技術における検出方法の欠陥について、本発明は、液体クロマトグラフィー-マススペクトルによる粉乳中の乳清タンパク含有量、カゼイン含有量及び/又は両者の含有量の比率の検出方法を提供することを目的とする。本発明の方法は、乳清タンパク及びカゼインのそれぞれの特徴的なペプチドセグメントを選択することにより、それぞれの特徴的なペプチドセグメントを使用する較正により、外部標準法のマススペクトルを使用してペプチドセグメントを検出する正確性と安定性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的を実現するために、本発明は、以下の技術案を用いる。
【0012】
第1態様では、本発明は、液体クロマトグラフィー-マススペクトルによる粉乳中の乳清タンパク含有量、カゼイン含有量及び/又は乳清タンパク/カゼイン比率の検出方法を提供し、前記方法は、
α-ラクトアルブミン及びβ-ラクトグロブリンの特徴的なペプチドセグメントを使用し、α-ラクトアルブミン及びβ-ラクトグロブリンのそれぞれが乳清タンパクの20%、50%を占める配合比にしたがって、乳清タンパク標準品溶液を調製するステップ1)と、
α-カゼイン及びβ-カゼインの特徴的なペプチドセグメントを使用し、α-カゼイン及びβ-カゼインのそれぞれがカゼインの50%、40%を占める配合比にしたがって、カゼイン標準品溶液を調製するステップ2)と、
ステップ1)で得られた乳清タンパク標準品溶液とステップ2)で得られたカゼイン標準品溶液とを混合して、一連の乳清タンパク:カゼイン比率の混合タンパク質標準品溶液を調製するステップ3)と、
乳清タンパク:カゼイン比率を横軸とし、α-ラクトアルブミンとβ-カゼインとの、β-ラクトグロブリンとα-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比を縦軸として、検量線を作成するステップ4)と、
測定対象粉乳中のβ-ラクトグロブリンとα-カゼインとの、α-ラクトアルブミンとβ-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比を検出するステップ5)と、
検出された粉乳中のβ-ラクトグロブリンとα-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比を検量線に代入して、乳清タンパクとカゼインとの比率Mを決定し、これから決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Mに基づいて、β-ラクトグロブリン及びα-カゼインの実際の量を算出し、
そして、検出された粉乳中のα-ラクトアルブミンとβ-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比を検量線に代入して、乳清タンパクとカゼインとの比率Nを決定し、これから決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Nに基づいて、α-ラクトアルブミン及びβ-カゼインの実際の量を算出するステップ6)と、
ステップ6)で得られたα-ラクトアルブミン、β-カゼイン、β-ラクトグロブリン、α-カゼインの実際の量に基づいて、実際の乳清タンパク含有量、カゼイン含有量及び/又は乳清タンパク/カゼイン比率を得るステップ7)と、を含む。
【0013】
上記方法において、好ましくは、前記α-ラクトアルブミンの、β-カゼインの、β-ラクトグロブリンの、α-カゼインの特徴的なペプチドセグメントは、それぞれ、配列番号1に示されるようなLDQWLCEK、配列番号2に示されるようなVLPVPQK、配列番号3に示されるようなTPEVDDEALEK、配列番号4に示されるようなFALPQYLKである。
【0014】
好ましくは、ステップ3)において、前記一連の乳清タンパク:カゼインの比率には、それぞれ0.25、0.43、0.67、1、1.5、2.33の乳清タンパク:カゼインの比率が含まれている。
【0015】
好ましくは、ステップ6)において、前記β-ラクトグロブリン及びα-カゼインの実際の量の計算式のそれぞれは、
【数1】
であり、
ここで、M1は、β-ラクトグロブリンとα-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比に基づいて決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Mの前項であり、M2は、β-ラクトグロブリンとα-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比に基づいて決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Mの後項であり、M=M1/M2、M1+M2=1と規定し、
ここで、Xはサンプルの総タンパク質濃度である。
【0016】
好ましくは、ステップ6)において、前記α-ラクトアルブミン及びβ-カゼインの実際の量の計算式のそれぞれは、
【数2】
であり、
ここで、N1は、α-ラクトアルブミンとβ-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比に基づいて決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Nの前項であり、N2は、α-ラクトアルブミンとβ-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比に基づいて決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Nの後項であり、N=N1/N2、N1+N2=1と規定し、
ここで、Xはサンプルの総タンパク質濃度である。
【0017】
好ましくは、ステップ7)において、
前記実際の乳清タンパク含有量の計算式は、
【数3】
であり、
前記実際のカゼイン含有量の計算式は、
【数4】
であり、
前記実際の乳清タンパク/カゼイン比率の計算式は、
【数5】
である。
ここで、M1は、β-ラクトグロブリンとα-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比に基づいて決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Mの前項であり、M2は、β-ラクトグロブリンとα-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比に基づいて決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Mの後項であり、M=M1/M2、M1+M2=1と規定し、
ここで、N1は、α-ラクトアルブミンとβ-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比に基づいて決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Nの前項であり、N2は、α-ラクトアルブミンとβ-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比に基づいて決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Nの後項であり、N=N1/N2、N1+N2=1と規定し、
ここで、Xはサンプルの総タンパク質濃度である。
【0018】
好ましくは、ステップ5)の検出には、サンプル処理及び酵素切断(enzyme digestion)ステップ、即ち、
測定対象サンプルミルク粉をタンパク質濃度が0.1~0.4mg/ml、好ましくは0.2mg/mlのサンプル溶液に溶解するステップと、純粋な酢酸ろ過膜(好ましくは孔径が0.45μmの純粋な酢酸ろ過膜)を使用して、予ろ過を行うステップと、予ろ過後のサンプル溶液に炭酸水素アンモニウム溶液を加えてから、ジチオスレイトール溶液を加え、65~75℃(好ましくは70℃)で、水浴を25~35min(好ましくは30min)行うステップと、冷却後、ヨードアセトアミド溶液を加え、光を避けて25~35min(好ましくは30min)静置するステップと、光を8~12min(好ましくは10min)照射し、塩化カルシウム溶液を加えるステップと、トリプシン溶液を加え、37℃で酵素切断を26~30h行うステップと、酢酸溶液を加え、酵素切断を終了するステップと、ポリエーテルスルホンろ過膜を用いてろ過してから、マススペクトルを用いて選択性イオンスキャン分析を行うステップと、が含まれる。
【0019】
具体的な実施形態において、本発明に記載の方法の検出上限は、タンパク質総濃度が0.4mg/mlであることである。
【0020】
第2態様では、本発明は、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4に示されるα-ラクトアルブミン、β-カゼイン、β-ラクトグロブリン、α-カゼインである特徴的なペプチドセグメントを含む、液体クロマトグラフィー-マススペクトルによって乳清タンパク:カゼイン比率を検出するための特徴的なペプチドセグメントの組合せを提供する。
【0021】
具体的な一実施形態において、前記特徴的なペプチドセグメントの組合せは、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4に示されるα-ラクトアルブミン、β-カゼイン、β-ラクトグロブリン、α-カゼインである特徴的なペプチドセグメントから構成される。
【発明の効果】
【0022】
先行技術と比べ、粉乳中の乳清タンパク含有量、カゼイン含有量及び/又は乳清タンパク/カゼイン比率を検出する本発明の相対的な定量化方法は、高い正確性と安定性を有する以外に、さらに次の利点を有する:試料の前処理が簡単で、コストが低く、適用性が広く、乳清タンパクの定量化検出を一度に完了でき、生産過程中のタンパク質変性の影響を受けず、同位体内部標準を合成する必要がなく、それ自体の複数の特徴的なペプチドセグメント比の手段により、マススペクトル検出におけるイオン化効率及びマトリックスの影響を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
1つ以上の実施例は、それらに対応する図面中の写真で例示的に説明し、これらの例示的な説明は、実施例を限定するものではない。本明細書に使用されている「例示的」という用語は、「例、実施例又は説明的なものとして使用される」ということを意味する。本明細書において、「例示的」として説明される任意の実施例は、必ずしも他の実施例よりも好ましい又はよいと解釈されるべきであるとは限らない。
【
図1】実施例に使用される混合標準物質のフルスキャンマススペクトルである。
【
図2】サンプルミルク粉のフルスキャンマススペクトルである。
【
図3】4つの特徴的なペプチドセグメントのPRMモードでのマススペクトルである。
【
図4】配列番号1に示されるような特徴的なペプチドセグメント(LDQWLCEK)の全フラグメントイオン図である。
【
図5】配列番号3に示されるような特徴的なペプチドセグメント(TPEVDDEALEK)の全フラグメントイオン図である。
【
図6】配列番号4に示されるような特徴的なペプチドセグメント(FALPQYLK)の全フラグメントイオン図である。
【
図7】配列番号2に示されるような特徴的なペプチドセグメント(VLPVPQK)の全フラグメントイオン図である。
【
図8】4つの特徴的なペプチドセグメントの定量化娘イオンのピーク形状図である。
【
図9】異なる酵素濃度で、異なる酵素分解時間を経過した後、特徴的なペプチドセグメントLDQWLCEK/VLPVPQKのピーク面積比の変化を示し、ここで、横軸が酵素分解時間であり、縦軸が2つの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比である。
【
図10】異なる酵素濃度で、異なる酵素分解時間を経過した後、特徴的なペプチドセグメントTPEVDDEALEK/FALPQYLKのピーク面積比の変化を示し、ここで、横軸が酵素分解時間であり、縦軸が2つの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比である。
【
図11】1:20の酵素濃度及び28hの酵素分解時間で、異なる基質濃度の特徴的なペプチドセグメントLDQWLCEK/VLPVPQKのピーク面積比に対する影響を示し、ここで、横軸が基質濃度であり、縦軸が2つの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比である。
【
図12】1:20の酵素濃度及び28hの酵素分解時間で、異なる基質濃度の特徴的なペプチドセグメントTPEVDDEALEK/FALPQYLKのピーク面積比に対する影響を示し、ここで、横軸が基質濃度であり、縦軸が2つの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比である。
【
図13】特徴的なペプチドセグメントTPEVDDEALEK/FALPQYLKのピーク面積比vs濃度比の検量線であり、ここで、横軸が2つの特徴的なペプチドセグメントの濃度比であり、縦軸が2つの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比であり、当該検量線の回帰方程(regression equation)のR2は0.9935である。
【
図14】特徴的なペプチドセグメントLDQWLCEK/VLPVPQKのピーク面積比vs濃度比の検量線であり、ここで、横軸が2つの特徴的なペプチドセグメントの濃度比であり、縦軸が2つの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比であり、当該検量線の回帰方程のR2は0.992である。
【
図15】脱塩ホエイパウダーの1次マススペクトル(first order spectrum)である。
【
図16】脱塩ホエイパウダータンパク質の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施例の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、本発明の実施例における技術案について明確且つ完全に説明するが、明らかに、記載された実施例は、本発明の全ての実施例ではなく、一部の実施例である。本発明の実施例に基づいて、創造的な労働をせずに当業者によって得られる他の全ての実施例は、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。
【0025】
また、本発明をよりよく説明するために、以下の詳細な実施形態では、多くの具体的な詳細が与えられる。当業者であれば、一部の具体的な詳細がなくても本発明を実施し得ることを理解するであろう。いくつかの実施例では、本発明の主旨を強調するために、当業者によく知られている原材料、要素、方法、手段などについて詳細に説明していない。
【0026】
特に明記しない限り、本明細書及び特許請求の範囲を通じて、「含む」という用語又はその変形「備える」や「含まれている」などは、述べられた要素又は構成部分を含むと理解されるべきであり、他の要素又は他の構成部分を排除するものではない。
【0027】
以下の実施例に使用される試薬は、次のとおりである。
ジチオスレイトール(sigma、≧98% HPLC)、ヨードアセトアミド(sigma、≧99% NMR)、α-ラクトアルブミン標準物質(sigma、≧85%)、β-ラクトグロブリン標準物質(sigma、≧90%)、α-カゼイン標準物質(sigma、≧70%)、β-カゼイン標準物質(sigma、≧98%)、アルカリ性ウシトリプシン(sigma、≧10,000 BAEE)、塩化カルシウム溶(AR)、炭酸水素アンモニウム(AR)、酢酸(AR)。
【0028】
以下の実施例において、ナノフロ高速液体クロマトグラフィー-静電場軌道トラップ組み合わせ式の高分解能マススペクトル(NanoLC-Orbitrap MS)を用いて、選択性イオンスキャン検出を行い、使用されたクロマトグラフィー条件は、次のとおりである。
ナノフロ高性能液体UltiMate 3000(ACCELA)
クロマトグラフィーカラム:Acclaim(登録商標) PepMap RSLC(75μm×15cm,nanoViper C18,2μm,100A Thermo Fisher Scientific); :Acclaim PepMapTM 100(75μm×2cm, nanoViper C18,3μm,100A Thermo Fisher Scientific)
カラム温度:50℃
移動相A:2%アセトニトリル+98%水+0.1%ギ酸
移動相B:80%アセトニトリル+20%水+0.1%ギ酸
Loading:2%アセトニトリル+98%水
流速:NC:0.25μl/min、ローディング流速:0.3μl/min
注入量:1μl
グラジエント溶離条件
グラジエント溶離
溶離時間(min) 流速(μl/min) A% B%
0 0.25 96 4
5 0.25 96 4
65 0.25 78 22
70 0.25 10 90
75 0.25 96 4
76 0.25 96 4
【0029】
以下の実施例において、特徴的なペプチドセグメントに対してPRMモードでのマススペクトルスキャンを行い、使用されるマススペクトル条件は次のとおりである。
マススペクトルQ Exactive(Thermo Fisher Scientific)
PRMモード
試薬の実行:5~75min
極性:陽性
解像度:17500
AGC目標:1e5
最大IT:100ms
分離ウィンドウ:1.0m/z
初期質量電荷比:Fixed first mass
NCE:27%,28%。
【0030】
実施例1:特徴的なペプチドセグメントの選択
α-ラクトアルブミンと、β-ラクトグロブリンと、α-カゼインと、β-カゼインとの混合標準品、及びサンプルミルク粉をマススペクトルフルスキャンを行い、マススペクトルがそれぞれ
図1、
図2に示される。
【0031】
expasy peptide massウェブサイトを使用して、NCBIデータベースを検索して得られたα-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリン、α-カゼイン及びβ-カゼインという4種類のタンパク質に対して、酵素切断シミュレーション(酵素切断シミュレーションのペプチドセグメントを下記表2に示した)を行って、比較した。比較後のペプチドセグメントをNCBIウェブサイトに代入して、BLAST比較分析を行ってから、応答値が高く、配列長さが5~25個のアミノ酸であるものを選択し、最終的に特異性ペプチドセグメントを決定し、それぞれ、
α-ラクトアルブミン(以下、α-laとも呼ばれる)特徴的なペプチドセグメント-LDQWLCEK(配列番号1に示すよう)、
β-ラクトグロブリン(以下、β-lgとも呼ばれる)特徴的なペプチドセグメント-TPEVDDEALEK(配列番号3に示すよう)、
α-カゼイン(以下、α-csとも呼ばれる)特徴的なペプチドセグメント-FALPQYLK(配列番号4に示すよう)、
β-カゼイン(以下、β-csとも呼ばれる)特徴的なペプチドセグメント-VLPVPQK(配列番号2に示すよう)である。
【0032】
上記4種類の特徴的なペプチドセグメントの詳細な情報は、表3を参照し、PRMモードでのマススペクトルは、
図3に示すとおりである。
【0033】
上記4種類の特徴的なペプチドセグメントのそれぞれのプロダクトイオン(product ion)情報の図は、それぞれ
図4、5、6、7に示すとおりであり、これから、実験に選択された定量化的なプロダクトイオンは、検出中に高い応答値を有することが分かった。
図8は、4つのペプチドセグメントプロダクトイオンを単独で検出したピーク(ここでは、それらを1枚の図上にまとめた)であり、検出中に独立でピークを形成し、互いに干渉しないことを説明するために用いられる。また、定量化的なフラグメントイオン情報が表4に示される。各特異性ペプチドセグメントの適切な応答値と質量数を有するフラグメントイオンを選択して定量化的なイオンとする。
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
実施例2:酵素分解条件の最適化、基質濃度の選択及びろ過膜の選択
酵素分解条件の最適化:
実験は、三元(登録商標)、愛力優(登録商標)のサンプルミルク粉(タンパク質濃度は11.6g/100gサンプルミルク粉)を基質とし、製品会社から提供される情報に基づいて、1:20、1:40、1:60、1:80、1:100の酵素濃度で酵素分解を行い、酵素分解中の特徴的なペプチドセグメントLDQWLCEK/VLPVPQKのピーク面積比の変化及び特徴的なペプチドセグメントTPEVDDEALEK/FALPQYLKのピーク面積比の変化に基づいて、酵素濃度を1:20に、酵素分解時間を28hに決定し、酵素濃度が1:20である場合、酵素分解時間が28h経た後、上記2種類のペプチドセグメントの比はいずれも安定する傾向があった(詳細は
図9、
図10を参照)。
【0038】
基質濃度の選択:
サンプルミルク粉を、タンパク質濃度が0.1~1.0mg/mlの間にある10個のグラジエントになるようにそれぞれ溶解し、孔径が0.45μmの純粋な酢酸ろ過膜を使用して予ろ過を行い、250μlのサンプル溶液に150μlの炭酸水素アンモニウム溶液を加え、10μlのジチオスレイトール溶液を加え、70℃で水浴を30min行った。冷却後に、30μlのヨードアセトアミド溶液を加え、光を避けて30min静置した。光を10min照射した後、10μlの塩化カルシウム溶液を加え、50μlのTrypsin溶液を加え、37℃で酵素切断を28h行い、10μlの酢酸溶液を加え、15min静置し、酵素切断を終了した。0.22μmのポリエーテルスルホンろ過膜でろ過した後、ナノフロー液体クロマトグラフィーを用いて選択性イオンスキャン分析を行った。その結果、タンパク質濃度が0.4mg/ml以下である場合、酵素分解後、2種類の特徴的なペプチドセグメントの比は比較的安定する一定値に保てば、検出効果が良好であった(
図11、12を参照)。
【0039】
ろ過膜の選択:
0.45nmの大きい孔径の純粋な酢酸ろ過膜を使用して、サンプルミルク粉を予備濾過し、添加物の一部を除去することにより、後続の実験への影響を回避し、方法の安定性を保証する。機械に設置する前に、0.22μmの、タンパク質の吸着性が極めて低いポリエーテルスルホンろ過膜を選択してろ過する。
【0040】
実施例3:本願に記載の方法の検出手順
1)検量線の作成:
α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリン、α-カゼイン、β-カゼインの4種類のタンパク質標準品を使用して、α-ラクトアルブミン及びβ-ラクトグロブリンがそれぞれ乳清タンパクの20%、50%を占めることに基づいて、乳清タンパク標準品溶液(即ち、ここで、α-ラクトアルブミン及びβ-ラクトグロブリンの含有割合はそれぞれ20%、50%である)を調製し、α-カゼイン及びβ-カゼインがそれぞれカゼインの50%、40%を占めることに基づいて、カゼイン標準品溶液(即ち、ここで、α-カゼイン及びβ-カゼインの含有割合はそれぞれ50%、40%である)を調製し、調製された乳清タンパク標準品溶液及びカゼイン標準品溶液の濃度が同じである。
【0041】
一定量の上記乳清タンパク標準品溶液及びカゼイン標準品溶液を吸い取って、乳清タンパク/カゼインが0.25、0.43、0.67、1、1.5、2.33(質量比)の混合溶液を1ml調製して検出を行い、検量線を作成した。特徴的なペプチドセグメントTPEVDDEALEK/FALPQYLKのピーク面積比vs濃度比の検量線は、
図13に示すとおりであり、特徴的なペプチドセグメントLDQWLCEK/VLPVPQKのピーク面積比vs濃度比の検量線は、
図14に示すとおりである。
【0042】
2)測定対象粉乳サンプルの処理と酵素切断:
測定対象粉乳サンプルをタンパク質濃度が0.2mg/mlのサンプル溶液に溶解し、孔径が0.45μmの純粋な酢酸ろ過膜を使用して、予ろ過を行った。予ろ過後のサンプル溶液に炭酸水素アンモニウム溶液を加えてから、ジチオスレイトール溶液を加え、70℃で水浴を30min行った。冷却後、ヨードアセトアミド溶液を加え、光を避けて30min静置した。光を10min照射し、塩化カルシウム溶液を加えた。トリプシン溶液を加え、37℃で酵素切断を26~30h行った。酢酸溶液を加え、酵素切断を終了した。
【0043】
3)ステップ2)で得られた酵素分解産物をポリエーテルスルホンろ過膜を用いてろ過してから、マススペクトルを用いて選択性イオンスキャン分析を行い、粉乳中のβ-ラクトグロブリンとα-カゼインとの、α-ラクトアルブミンとβ-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比を測定した。
【0044】
4)ステップ3)で検出された粉乳中のβ-ラクトグロブリンとα-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比を検量線に代入して、乳清タンパクとカゼインとの比率Mを決定し、これから決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Mに基づいて、β-ラクトグロブリン及びα-カゼインの実際の量を算出し、
そして、ステップ3)で検出された粉乳中のα-ラクトアルブミンとβ-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比を検量線に代入し、乳清タンパクとカゼインとの比率Nを決定し、これから決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Nに基づいて、α-ラクトアルブミン及びβ-カゼインの実際の量を算出した。
前記β-ラクトグロブリン及びα-カゼインの実際の量の計算式は、それぞれ、
【数6】
であり、
ここで、M1は、β-ラクトグロブリンとα-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比に基づいて決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Mの前項であり、M2は、β-ラクトグロブリンとα-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比に基づいて決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Mの後項であり、M=M1/M2、M1+M2=1と規定し、そして、Xはサンプルの総タンパク質濃度であり、
前記α-ラクトアルブミン及びβ-カゼインの実際の量の計算式は、それぞれ、
【数7】
であり、
ここで、N1は、α-ラクトアルブミンとβ-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比に基づいて決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Nの前項であり、N2は、α-ラクトアルブミンとβ-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比に基づいて決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Nの後項であり、N=N1/N2、N1+N2=1と規定し、そして、Xはサンプルの総タンパク質濃度である。
【0045】
5)ステップ4)で得られたα-ラクトアルブミン、β-カゼイン、β-ラクトグロブリン、α-カゼインの実際の量に基づいて、実際の乳清タンパク含有量、カゼイン含有量及び/又は乳清タンパク/カゼイン比率を得た。
前記実際の乳清タンパク含有量の計算式は、
【数8】
であり、
前記実際のカゼイン含有量の計算式は、
【数9】
であり、
前記実際の乳清タンパク/カゼイン比率の計算式は、
【数10】
であり、
ここで、M1は、β-ラクトグロブリンとα-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比に基づいて決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Mの前項であり、M2は、β-ラクトグロブリンとα-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比に基づいて決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Mの後項であり、M=M1/M2、M1+M2=1と規定し、
ここで、N1は、α-ラクトアルブミンとβ-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比に基づいて決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Nの前項であり、N2は、α-ラクトアルブミンとβ-カゼインとの特徴的なペプチドセグメントのピーク面積比に基づいて決定された乳清タンパクとカゼインとの比率Nの後項であり、N=N1/N2、N1+N2=1と規定し、
ここで、Xはサンプルの総タンパク質濃度である。
【0046】
実施例4:脱塩ホエイパウダーを使用して、本願に記載の検出方法について方法学的検証を行う
添加回収率試験(Spike and Recovery Test)
脱塩ホエイパウダーを添加した標準物質のサンプルとして選択し、脱塩ホエイパウダーの商品説明書によると、そのタンパク質含有量は12%を占め、機器で検出すると、そのタンパク質はいずれも乳清タンパクであり、カゼインはごく少量の無視できる量で存在し、使用された脱塩ホエイパウダーの1次マススペクトルは
図15に示すとおりであり、分析によると、その構成は
図16に示すとおりである。
【0047】
当該脱塩ホエイパウダーを使用して、本願に記載の検出方法を検証し、その結果は、表5に示すとおりである。
【0048】
【0049】
表5によると、本願の検出方法を使用して脱塩ホエイパウダーを検出すると、添加回収率は98.63%~113.33%であり、対応するRSDは0.84%~7.42%の間である。
【0050】
実施例5:市販の調製ミルク粉を使用して、本願に記載の検出方法について方法学的検証を行う
実施例3に記載された本願に記載の検出方法に基づいて、3つの登録商標の市販調製ミルク粉を6グループに分けて平行検出を行い、1日に1回検出し、合計3日検出して、本願に記載の検出方法の再現性と精密度を検証する。3つの登録商標の市販調製ミルク粉の検出結果は、それぞれ表6~8に示すとおりであり、表6~8において、LDは、α-ラクトアルブミンの特徴的なペプチドセグメント-LDQWLCEK(配列番号1に示すよう)を代表し、TPは、β-ラクトグロブリンの特徴的なペプチドセグメント-TPEVDDEALEK(配列番号3に示すよう)を代表し、FALは、α-カゼインの特徴的なペプチドセグメント-FALPQYLK(配列番号4に示すよう)を代表し、VLは、β-カゼインの特徴的なペプチドセグメント-VLPVPQK(配列番号2に示すよう)を代表する。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
表6~8から分かるように、上記検出したグループ内のRSDは2.03%~9.35%の間にあり、グループ間のRSDは0.61%~11.02%であることは、本願に記載の検出方法の再現性と精密度がいずれも良好であることを説明する。
【0055】
実施例6:本願に記載の検出方法の検出実例
実施例3に記載の本願に記載の検出方法によれば、市販の調製ミルク粉(雅培(Abbott, 登録商標)、経典恩美力の一階段)における乳清タンパク含有量を検出し、具体的な手順は、以下のとおりである。
【0056】
市販調製ミルク粉(雅培(Abbott, 登録商標)、経典恩美力の一階段)を0.2g量って、超純水を加えて200mlに定容し、孔径が0.45μmの純粋な酢酸ろ過膜を使用して予ろ過を行い、250μlのサンプル溶液に150μlの炭酸水素アンモニウム溶液、10μlのジチオスレイトール溶液を加え、70℃で水浴を30min行った。室温まで冷却した後、30μlのヨードアセトアミド溶液を加え、光を避けて30min静置した。光を10min照射し、10μlの塩化カルシウム溶液を加え、50μlのTrypsin溶液を加え、37℃で酵素切断を28h行い、10μlの酢酸溶液を加えて15min静置し、酵素切断を終了した。0.22μmのポリエーテルスルホンろ過膜を用いてろ過した後、機械に設置して検出を行った。サンプルにおける乳清タンパクが総タンパク質含有量の61.77%を占めると計算した。
【0057】
最後に、上述の実施例は、単に本発明の技術案を説明するためにのみ使用され、本発明を限定するものではないことに留意されたい。上述の実施例を参照して本発明について詳細に説明したが、当業者であれば、上述の各実施例に記載された技術案を変更するか、又は技術的特徴の一部を等価置換することができ、これらの変更又は置換によって、対応する技術案の本質を本発明の実施例の技術案の精神及び範囲から逸脱させないことを理解すべきである。
【配列表】