(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 5/20 20060101AFI20230703BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20230703BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20230703BHJP
E06B 3/40 20060101ALN20230703BHJP
【FI】
E06B5/20
E06B5/00 Z
E04B1/82 B
E06B3/40
(21)【出願番号】P 2023005516
(22)【出願日】2023-01-18
(62)【分割の表示】P 2019153590の分割
【原出願日】2019-08-26
【審査請求日】2023-01-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】安田 辰雄
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-159211(JP,A)
【文献】特開2002-294899(JP,A)
【文献】特開2019-044337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/32- 3/34
E06B 3/66- 3/72
E04B 2/56- 2/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部側パネ
ルと内部側パネ
ルと、外部側パネル及び内部側パネルを保持する枠体とを備え、外部側パネ
ルと内部側パネ
ルとの間に空気層を有し、外部側パネ
ルと内部側パネ
ルのうちの一方は、
複層パネル又はアルミ製パネルであり、外部側パネ
ルと内部側パネ
ルのうちの他方は、アルミ製パネルであ
り、外部側パネルと内部側パネルは、周縁部をガスケットにより枠体の溝に保持してあることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮音性能が優れた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高い遮音性を実現するには二重サッシ(例えば、非特許文献1参照)で対応していたが、二重サッシにするとコスト高になる上、枠の見込寸法が大きくなってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】三協立山株式会社 三協アルミ社発行のカタログ「ビル建材 サッシ 総合カタログ ビル用サッシ」(カタログNo.STB0528B Y.18.06-040)、2018年6月、p.210-211
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、遮音性能が向上した建具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による建具は、外部側パネルと内部側パネルと、外部側パネル及び内部側パネルを保持する枠体とを備え、外部側パネルと内部側パネルとの間に空気層を有し、外部側パネルと内部側パネルのうちの一方は、複層パネル又はアルミ製パネルであり、外部側パネルと内部側パネルのうちの他方は、アルミ製パネルであり、外部側パネルと内部側パネルは、周縁部をガスケットにより枠体の溝に保持してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明による建具は、外部側パネルと内部側パネルと、外部側パネル及び内部側パネルを保持する枠体とを備え、外部側パネルと内部側パネルとの間に空気層を有し、外部側パネルと内部側パネルのうちの一方は、複層パネル又はアルミ製パネルであり、外部側パネルと内部側パネルのうちの他方は、アルミ製パネルであり、外部側パネルと内部側パネルは、周縁部をガスケットにより枠体の溝に保持してあることで、遮音性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の建具の第1実施形態を示す横断面図である。
【
図3】本発明の建具の第2実施形態を示す横断面図である。
【
図5】本発明の建具の第3実施形態を示す横断面図である。
【
図7】(a)は本発明の実施例に係る試験体の断面図であり、(b)は試験体について行った試験結果をまとめた表である。
【
図8】(a)は本発明の比較例に係る試験体の断面図であり、(b)は試験体について行った試験結果をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1,2は、本発明の建具の第1実施形態(請求項1に係る発明の実施形態)を示している。本建具は、体育館、劇場等の建物の排煙窓として用いられるものであって、室内の音が室外に漏れないように高い遮音性能を有し、且つ室外から室内に光が射し込まないように遮光性を備えたものとなっている。
【0009】
本建具は、
図1,2に示すように、枠6と、枠6内に開閉自在に支持した障子7とを備えている。枠6は、アルミ形材よりなる上枠8と下枠と左右の縦枠9,9とを枠組みして構成されている。枠6は、躯体11に取付けた方立10に取付けられている。
【0010】
障子7は、
図1,2に示すように、アルミ形材よりなる上框12と下框と左右の縦框13,13とを框組みしてなる框体14と、框体14に室外側から嵌め込んで設けた外部側パネ
ル1と、框体14に室内側から嵌め込んで設けた内部側パネ
ル2とを有している。外部側パネ
ル1と内部側パネ
ル2との間には、空気層3を有している。空気層3の幅Dは、65mmである。
外部側パネ
ル1は、室外側パネル4と室内側パネル5とを有する複層パネルとなっている。室外側パネル4は板厚3mmのアルミ製パネルとしてあり、室内側パネル5は板厚1.6mmのスチール製パネルとしてある。室外側パネル4と室内側パネル5とは、両パネル間の四周に配置した防振ゴム15を介して接着されており、室外側パネル4と室内側パネル5との間には5mmの空気層16が設けてある。外部側パネ
ル1は、ガスケット17a,17bにより框体14の室外側の溝18に取付けてある。
内部側パネ
ル2は、板厚3mmのアルミ製パネルとしてある。内部側パネ
ル2は、ガスケット19a,19bにより框体14の室内側の溝20に取付けてある。
【0011】
室内で音が発生すると内部側パネル2が振動するが、内部側パネル2と外部側パネル1の間の空気層3により振動のパワーが弱められる上、外部側パネル1の室内側パネル5として重いスチール製パネルが配置されていることで、伝わってきた振動がその室内側パネル5で大きく抑えられる。さらに、スチール製の室内側パネル5の室外側に防振ゴム15により空気層16を形成してアルミ製の室外側パネル4が設けてあるので、振動がさらに抑えられる。これにより、非常に優れた遮音性能を発揮する。スチール製パネル(室内側パネル5)を用いることで、空気層3の幅Dを小さくでき、枠6の見込み寸法を小さくすることができる。スチール製パネルの室外側にアルミ製パネル(室外側パネル4)が配置されていることで、スチール製パネルが錆びるのを防止できる。内部側パネル2を熱伝導性の良いアルミ製パネルとしたことで、結露を防止することができる。
【0012】
第1実施形態の建具においては、外部側パネル1をアルミ製パネルとし、内部側パネル2をスチール製パネルとアルミ製パネルとの複層パネルとすることもできる。この場合でも、同等の遮音性能が期待できる。内部側パネル2は、室外側パネル4をスチール製パネル、室内側パネル5をアルミ製パネルとすることで、結露を防止することができる。
【0013】
図3,4は、本発明の建具の第2実施形態(請求項2に係る発明の実施形態)を示している。本実施形態は、第1実施形態と同様に、枠6と、枠6内に支持した障子7とを備え、障子7は外部側パネ
ル1と内部側パネ
ル2を有し、外部側パネ
ル1と内部側パネ
ル2との間に空気層3が設けてある。空気層3の幅Dは、118mmである。
外部側パネ
ル1は、室外側パネル4と室内側パネル5とを有する複層パネルであり、室外側パネル4は板厚10mmのガラスパネルとしてあり、室内側パネル5は板厚6mmのガラスパネルとしてある。室外側パネル4と室内側パネル5の間には、6mmの空気層16が設けてある。
内部側パネ
ル2は、板厚3mmのアルミ製パネルとしてある。
【0014】
第2実施形態の建具は、外部側パネル1と内部側パネル2との間に空気層3を設けたこと、外部側パネル1を複層パネルとしたことにより、第1実施形態と同様に優れた遮音性能を発揮する。内部側パネル2をアルミ製パネルとしたことで、障子7を軽くすることができる。また、内部側パネル2をアルミ製パネルとしたことで、結露を防止することができる。外部側パネル1をガラスパネルで構成したので、外観意匠が光沢感のあるものになる。
【0015】
第2実施形態の建具においては、外部側パネル1をアルミ製パネルとし、内部側パネル2を複層ガラスパネルとすることもできる。
【0016】
図5,6は、本発明の建具の第3実施形態(請求項3に係る発明の実施形態)を示している。本実施形態は、第1・第2実施形態と同様に、枠6と、枠6内に支持した障子7とを備え、障子7は外部側パネ
ル1と内部側パネ
ル2を有し、外部側パネ
ル1と内部側パネ
ル2との間に空気層3が設けてある。空気層3の幅Dは、118mmである。
外部側パネ
ル1は板厚5mmのアルミ製パネルとしてあり、内部側パネ
ル2は板厚3mmのアルミ製パネルとしてある。
【0017】
第3実施形態の建具は、外部側パネル1と内部側パネル2との間に空気層3を設けたこと、外部側パネル1と内部側パネル2をアルミ製パネルとしたことにより、第1・第2実施形態と同様に優れた遮音性能を発揮する。外部側パネル1と内部側パネル2の板厚を違わせてあることで、互いのパネルの振動を抑える作用を補正しあうため、遮音性能を向上できる。外部側パネル1と内部側パネル2を何れもアルミ製パネルとしたことで、障子7をより一層軽くすることができる。また、内部側パネル2をアルミ製パネルとしたことで、結露を防止することができる。
【0018】
以上に説明した第1~第3実施形態について、
図7に示すように、試験体を作成し、結露の有無、パネル重量、遮音性能を測定した。遮音性能は、JISA4706に規定されているT-1からT-4の遮音等級の何れに適合するかを判定した。
図7中の実施例1~5は、第1実施形態の実施例であって、外部側パネ
ル1のアルミ製パネルとスチール製パネルの板厚、及び両パネル間の空気層16の幅を変化させている。実施例6は、第2実施形態の実施例である。実施例7は、第3実施形態の実施例である。
比較のため、
図8に示すように、アルミ製パネルとスチール製パネルとを組み合わせた3層のパネルを有するもの(比較例1~3)、2層のパネルを有するもの(比較例4~6)についても試験体を作成し、同じように結露の有無、パネル重量、遮音性能を測定した。
【0019】
図7(b)に示すように、本発明の実施例はいずれもT-4遮音等級に適合し、結露も生じないことを確認した。特に、実施例5は、中間空気層幅Dが65mmと小さく、パネル重量が124.6kgと軽いながら、T-4遮音等級に適合する。また、外部側パネ
ル1と内部側パネ
ル2をいずれもアルミ製パネルとした実施例7は、パネル重量が93.3kgとさらに軽く、しかもT-4遮音等級に適合する。
これに対し比較例1~6は、金属製パネルを用いているにもかかわらず、
図8(b)に示すように、遮音性能がT-2又はT-1にしかならなかった。
【0020】
以上に述べたように第1実施形態(請求項1)の建具は、外部側パネル1と内部側パネル2とを備え、外部側パネル1と内部側パネル2との間に空気層3を有し、外部側パネル1と内部側パネル2のうちの一方は、室外側パネル4と室内側パネル5とを有する複層パネルであり、室外側パネル4と室内側パネル5のうちの一方はスチール製パネルで他方はアルミ製パネルであり、外部側パネル1と内部側パネル2のうちの他方は、アルミ製パネルであることで、遮音性能を向上させることができるとともに、枠6の見込み寸法を小さくすることができる。
外部側パネル1の室外側パネル4をアルミ製パネルとし、室内側パネル5をスチール製パネルとすることで、錆びを防止することができる。内部側パネル2をアルミ製パネルとすることで、結露を防止することができる。
【0021】
第2実施形態(請求項2)の建具は、外部側パネル1と内部側パネル2とを備え、外部側パネル1と内部側パネル2との間に空気層3を有し、外部側パネル1と内部側パネル2のうちの一方は、室外側パネル4と室内側パネル5とを有する複層パネルであり、室外側パネル4及び室内側パネル5はガラスパネルであり、外部側パネル1と内部側パネル2のうちの他方は、アルミ製パネルであることで、遮音性能を向上させることができるとともに、障子7を軽くすることができる。
内部側パネル2をアルミ製パネルとすることで、結露を防止することができる。
【0022】
第3実施形態の建具は、外部側パネル1と内部側パネル2とを備え、外部側パネル1と内部側パネル2との間に空気層3を有し、外部側パネル1と内部側パネル2は、アルミ製パネルであることで、遮音性能を向上させることができるとともに、障子を軽くすることができる。
外部側パネル1と内部側パネル2の厚みを違わせてあることで、遮音性能が向上する。内部側パネル2がアルミ製パネルであることで、結露を防止することができる。
【0023】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。枠や框の材質や形態は問わない。窓種はいかなるものであってもよく、例えば引き違い窓、開き窓、嵌め殺し窓等であってもよい。本発明は、窓に限らず、引き戸、ドア、カーテンウォール等、あらゆる建具に適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 外部側パネル
2 内部側パネル
3 空気層
4 室外側パネル
5 室内側パネル